WO2021182057A1

WO2021182057A1 - 密封装置および歯車減速機

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Publication number: WO2021182057A1
Application number: PCT/JP2021/006076
Authority: WO
Inventors: 幸貴伊藤
Original assignee: Nok株式会社
Priority date: 2020-03-10
Filing date: 2021-02-18
Publication date: 2021-09-16
Also published as: CN115244318A; JPWO2021182057A1; EP4119818A1; US20230089005A1; US11913552B2; EP4119818A4

Abstract

密封装置は、歯車減速機のハウジングと、双方向に回転する回転シャフトとの間の隙間を封止し、グリースが貯留されたハウジングの内部空間と大気側とを隔てる。密封装置は、内側円筒部の内周面から径方向内側に向けて突出する主シールリップを有する。主シールリップは、内部空間側に配置された内部側傾斜面と、大気側に配置された大気側傾斜面を有する。補助シールリップが主シールリップの内部側傾斜面から径方向内側かつ内部空間側に向けて突出する。主シールリップの大気側傾斜面と、補助シールリップの内周面の少なくとも一方には、複数の第１の螺旋構造体と複数の第２の螺旋構造体が形成されている。

Description

密封装置および歯車減速機

　本発明は、密封装置および歯車減速機に関する。

　関節型ロボットのリンク（例えばアーム）は、直接モーターで回転させることもできるが、モーターから歯車減速機を介して回転させることもできる。本明細書で、「回転」とは３６０度以上の角度範囲にわたる回転だけではなく、３６０度未満の限定された角度範囲での回転も含む。ロボットのリンクは、３６０度未満の角度範囲で双方向に回転することが多い。

　関節型ロボットのリンクを駆動するための歯車減速機に使用されるオイルシールが知られている（特許文献１）。このオイルシールは、ケースに配置された回転するシャフトとケースの間の隙間を封止する。

特開２０１１－８９６０９号公報

　歯車減速機では、部品の回転に伴い、ハウジングの内部空間に封入されたグリースの流動圧が部分的に上昇する。この場合、グリースが内部空間から密封装置のシールリップを乗り越えて漏出するおそれがある。相対回転する部品間に配置されるシールリップは、所定の空間から漏出した液体を所定の空間に戻す効果（ポンピング効果）を有することが知られている。

　しかし、一般に歯車減速機の最終出力軸など出力側の回転シャフトの回転速度は非常に低いため、シールリップのポンピング効果が得られにくい。

　歯車減速機の密封装置のシールリップは、歯車の摩耗粉およびグリース中のスラッジにさらされる。このような異物が多い環境においても、歯車減速機の内部空間から大気側へのグリースの漏出を抑制することが要望されている。

　そこで、本発明は、異物が多い環境においても、歯車減速機の内部空間から大気側へのグリースの漏出を抑制することができる密封装置および歯車減速機を提供する。

　本発明のある態様に係る密封装置は、歯車減速機のハウジングと、前記ハウジングに設けられた孔内に配置され、双方向に回転する回転シャフトとの間の隙間を封止し、グリースが貯留された前記ハウジングの内部空間と大気側とを隔てる。密封装置は、前記ハウジングに取り付けられる外側円筒部と、前記外側円筒部より径方向内側に配置された内側円筒部と、前記外側円筒部の大気側の端部と前記内側円筒部の大気側の端部を径方向において連結する連結円環部と、前記内側円筒部の内周面から径方向内側に向けて突出し、内部空間側に配置された内部側傾斜面と、大気側に配置された大気側傾斜面を有しており、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる主シールリップと、前記主シールリップの前記内部側傾斜面から径方向内側かつ内部空間側に向けて突出し、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる補助シールリップと、前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、斜めに延びる複数の第１の螺旋構造体と、前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、前記第１の螺旋構造体と対称に斜めに延びる複数の第２の螺旋構造体とを有する。

　本発明のある態様に係る歯車減速機は、グリースが貯留された内部空間を有する歯車減速機のハウジングと、前記ハウジングに設けられた孔内に配置され、双方向に回転する回転シャフトと、前記ハウジングと前記回転シャフトとの間の隙間を封止し、前記ハウジングの内部空間と大気側とを隔てる密封装置とを備える。前記密封装置は、前記ハウジングに取り付けられる外側円筒部と、前記外側円筒部より径方向内側に配置された内側円筒部と、前記外側円筒部の大気側の端部と前記内側円筒部の大気側の端部を径方向において連結する連結円環部と、前記内側円筒部の内周面から径方向内側に向けて突出し、内部空間側に配置された内部側傾斜面と、大気側に配置された大気側傾斜面を有しており、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる主シールリップと、前記主シールリップの前記内部側傾斜面から径方向内側かつ内部空間側に向けて突出し、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる補助シールリップと、前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、斜めに延びる複数の第１の螺旋構造体と、前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、前記第１の螺旋構造体と対称に斜めに延びる複数の第２の螺旋構造体とを有する。

　上記の態様においては、主シールリップの内部側傾斜面から補助シールリップが径方向内側かつ内部空間側に向けて突出する。補助シールリップは、回転シャフトの外周面に接触し、ハウジングの内部空間にある歯車の摩耗粉およびグリース中のスラッジのような異物が主シールリップに向けて移動することを阻止する。この補助シールリップのため、異物が主シールリップと回転シャフトの間に侵入することが抑制されて、これらの間に大きな隙間が発生したり、主シールリップが過大に摩耗したりすることが減少する。したがって、異物が多い環境においても、歯車減速機の内部空間から大気側へのグリースの漏出が抑制される。

　また、主シールリップと補助シールリップの少なくとも一方には、第１の螺旋構造体と第２の螺旋構造体が形成されている。回転シャフトが第１の方向に回転する時、当該リップを超えて内部空間側から大気側にグリースが漏出することがあっても、第１の螺旋構造体はグリースを内部空間側に戻す。逆に、回転シャフトが第２の方向に回転する時、大気側に漏出したグリースを第２の螺旋構造体はグリースを内部空間側に戻す。回転シャフトの回転速度が非常に低い場合であっても、ポンピング効果を助長する螺旋構造体によって、グリースを内部空間側に戻すことが可能である。したがって、歯車減速機の内部空間から大気側へのグリースの漏出が抑制される。

本発明の実施形態に係る密封装置が使用される関節型ロボットの斜視図である。本発明の実施形態に係る密封装置を示す部分断面図である。実施形態に係る密封装置の主シールリップの内周面の展開図である。実施形態の変形例に係る密封装置を示す部分断面図である。実施形態の他の変形例に係る密封装置を示す部分断面図である。

　以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。

　図１に示すように、本発明の実施形態に係る密封装置１は、例えば、産業用の関節型ロボットのリンク（アーム）Ａとリンク（アーム）Ｂの接合部Ｃ、リンク（アーム）Ｂとリンク（ハンド）Ｄの接合部Ｅなどに設けられる。

　図２に示すように、本発明の実施形態に係る密封装置１は、歯車減速機のハウジング２と、ハウジング２に設けられた孔２Ａ内に配置された回転シャフト４との間の隙間を封止し、ハウジング２の内部空間と大気側とを隔てる。回転シャフト４は、ロボットのリンク（例えばアーム）を駆動するためのシャフトである。回転シャフト４は、図示しない軸受により回転可能に支持され、孔２Ａに同軸に配置されている。回転シャフト４は、歯車減速機の最終出力軸であってよいが、歯車減速機の他の回転シャフトであってもよい。回転シャフト４は、回転シャフト４自身の軸線を中心にして３６０度未満の角度範囲で双方向に回転する。

　回転シャフト４は円柱状であり、孔２Ａは断面円形であり、密封装置１は環状であるが、図２においては、それらの左半分のみが示されている。

　ハウジング２と回転シャフト４は仮想線で示されている。密封装置１がハウジング２と回転シャフト４との間の隙間に配備された使用状態では、密封装置１（特に、リップ１６，１８，２０）は径方向において圧縮されて変形する。図２は、回転シャフト４に接触せず変形していない初期状態のリップ１６，１８，２０を示す。

　密封装置１は、弾性環６と剛性環８を有する複合構造を有する。弾性環６は、弾性材料、例えばエラストマーから形成されている。剛性環８は、剛性材料、例えば金属から形成されており、弾性環６を補強する。剛性環８は、Ｌ字形の断面を有しており、スリーブ８Ａと、スリーブ８Ａの大気側の端部から径方向内側に延びる円環部８Ｂを有する。

　密封装置１は、外側円筒部１０、内側円筒部１２、連結円環部１４、主シールリップ１６、補助シールリップ１８およびダストリップ２０を有する。

　外側円筒部１０は、ハウジング２に取り付けられる。取付け方式は限定されないが、例えば、外側円筒部１０は孔２Ａに締まり嵌めされてもよい。外側円筒部１０は、弾性環６と剛性環８から構成されている。より具体的には、外側円筒部１０において、弾性環６は、剛性環８のスリーブ８Ａの外周面全体に固着され、剛性環８のスリーブ８Ａの内周面全体にも固着されている。したがって、外側円筒部１０は、スリーブ８Ａの外周面全体を覆う弾性部１０ａと、スリーブ８Ａの内周面全体を覆う弾性部１０ｂを有する。但し、スリーブ８Ａの内周面を弾性材料で覆うことは不可欠ではない。

　内側円筒部１２は、弾性環６のみから構成されており、外側円筒部１０より径方向内側に配置されている。内側円筒部１２は、径方向において外側円筒部１０に重なっている。

　連結円環部１４は、外側円筒部１０の大気側の端部と内側円筒部１２の大気側の端部を径方向において連結する。連結円環部１４は、弾性環６と剛性環８から構成されている。より具体的には、連結円環部１４において、弾性環６は、剛性環８の円環部８Ｂの大気側の面全体に固着され、剛性環８の円環部８Ｂの内部空間側の面にも固着されている。したがって、連結円環部１４は、円環部８Ｂの大気側の面全体を覆う弾性部１４ａと、円環部８Ｂの内部空間側の面を覆う弾性部１４ｂを有する。

　主シールリップ１６は、内側円筒部１２の内周面から径方向内側に向けて突出する突起であり、内部空間側に配置された円錐台状の内部側傾斜面１６ａと、大気側に配置された円錐台状の大気側傾斜面１６ｂと、内部側傾斜面１６ａと大気側傾斜面１６ｂの間の境界にあって周方向に延びるリップエッジ１６ｃを有する。主シールリップ１６は弾性環６のみから構成されている。

　内部側傾斜面１６ａは、リップエッジ１６ｃから離れるほど回転シャフト４から離れるよう傾斜する。大気側傾斜面１６ｂも、リップエッジ１６ｃから離れるほど回転シャフト４から離れるよう傾斜する。密封装置１がハウジング２と回転シャフト４との間の隙間に配備された使用状態では、主シールリップ１６のリップエッジ１６ｃおよびその付近は、常に回転シャフト４の外周面に摺動可能に接触させられる。

　補助シールリップ１８は、主シールリップ１６の内部側傾斜面１６ａから径方向内側かつ内部空間側に向けて突出する。補助シールリップ１８は、円錐台形状を有する薄板である。密封装置１がハウジング２と回転シャフト４との間の隙間に配備された使用状態では、補助シールリップ１８の先端は、回転シャフト４の外周面に摺動可能に接触させられる。補助シールリップ１８は弾性環６のみから構成されている。

　主シールリップ１６および補助シールリップ１８は、ハウジング２の内部空間内のグリースを封止するために設けられている。

　リップ１６，１８が回転シャフト４に接触せず変形していない初期状態では、図示のように、補助シールリップ１８の先端で設けられる円の直径は、リップエッジ１６ｃの直径より小さい。但し、補助シールリップ１８の先端で設けられる円の直径は、リップエッジ１６ｃの直径以上であってもよい。

　ダストリップ２０は、連結円環部１４と内側円筒部１２の連結部分から径方向内側かつ大気側に向けて斜めに延びる円錐台状の板である。ダストリップ２０は弾性環６のみから構成されている。ダストリップ２０は、径方向において剛性環８の円環部８Ｂに重なっている。ダストリップ２０は、大気側から内部空間側への異物（水または塵埃を含む）の侵入を抑制するために設けられている。

　この実施形態では、異物の侵入を低減するため、ダストリップ２０の先端が回転シャフト４の外周面に摺動可能に接触させられる。しかし、密封装置１が回転シャフト４に与えるトルクを低減するため、ダストリップ２０は回転シャフト４に接触させられなくてもよい。

　内側円筒部１２の外周面には周溝２１が形成され、周溝２１にはガータースプリング２２が配置されている。ガータースプリング２２は、主シールリップ１６および補助シールリップ１８を径方向内側に向けて押圧する。

　歯車減速機の密封装置１において、主シールリップ１６は、高い緊縛力で回転シャフト４に接触させられる。このため、内側円筒部１２は、他の用途の密封装置における内側円筒部よりも大きい厚さを有し、内側円筒部１２の周囲にはガータースプリング２２が配置されている。

　この実施形態においては、主シールリップ１６の内部側傾斜面１６ａから補助シールリップ１８が径方向内側かつ内部空間側に向けて突出する。補助シールリップ１８は、回転シャフト４の外周面に接触し、ハウジング２の内部空間にある歯車の摩耗粉およびグリース中のスラッジのような異物が主シールリップ１６に向けて移動することを阻止する。この補助シールリップ１８のため、異物が主シールリップ１６と回転シャフト４の間に侵入することが抑制されて、これらの間に大きな隙間が発生したり、主シールリップ１６が過大に摩耗したりすることが減少する。したがって、異物が多い環境においても、歯車減速機の内部空間から大気側へのグリースの漏出が抑制される。

　主シールリップ１６の大気側傾斜面１６ｂには、複数の第１の螺旋リブ（第１の螺旋構造体）１７ａおよび複数の第２の螺旋リブ（第２の螺旋構造体）１７ｂが形成されている。螺旋リブ１７ａ，１７ｂは、特許第４７０２５１７号明細書に記載されているように、内部空間側からリップエッジ１６ｃを超えて大気側に漏出したグリースを、回転シャフト４の回転に伴って、内部空間側に戻すポンピング効果をもたらす。つまり、主シールリップ１６を超えて内部空間側から大気側にグリースが漏出することがあっても、回転シャフト４の回転時に、螺旋リブ１７ａ，１７ｂは、グリースを内部空間側に戻す。

　図３は、主シールリップ１６の内周面の展開図である。図３では、主シールリップ１６の内周面の一部しか示されていないが、大気側傾斜面１６ｂには、各グループが複数の第１の螺旋リブ１７ａからなる複数のグループ２４と、各グループが複数の第２の螺旋リブ１７ｂからなる複数のグループ２５が設けられており、これらのグループ２４，２５は周方向に交互に並べられている。

　第１の螺旋リブ１７ａと第２の螺旋リブ１７ｂは、リップエッジ１６ｃから延びており、リップエッジ１６ｃに対して傾斜して螺旋状に延びる。この実施形態では、第１の螺旋リブ１７ａと第２の螺旋リブ１７ｂは、直線状の隆起である。第２の螺旋リブ１７ｂは、第１の螺旋リブ１７ａと鏡像対称に、リップエッジ１６ｃに対して傾斜して延びる。鏡像対称の鏡映面Ｍ１は、グループ２４，２５の間（第１の螺旋リブ１７ａと第２の螺旋リブ１７ｂの間）にあって、回転シャフト４の軸線を含む平面である。

　主シールリップ１６が回転シャフト４に接触させられた使用状態では、第１の螺旋リブ１７ａと第２の螺旋リブ１７ｂのうち、少なくともリップエッジ１６ｃの付近の部分は、回転シャフト４の外周面に接触する。

　上記の通り、回転シャフト４は、回転シャフト４自身の軸線を中心にして双方向に回転する。双方向の回転において、ポンピング効果が達成されるように、向きが異なる第１の螺旋リブ１７ａと第２の螺旋リブ１７ｂが主シールリップ１６に形成されている。具体的には、回転シャフト４が図３の第１の方向Ｒ１に回転する時に、矢印Ｐ１で示すように、第１の螺旋リブ１７ａが液体を大気側から内部空間側に戻す。逆に回転シャフト４が第２の方向Ｒ２に回転する時に、矢印Ｐ２で示すように、第２の螺旋リブ１７ｂが液体を大気側から内部空間側に戻す。このようなポンピング効果は、大気側傾斜面１６ｂの微細な凹凸によりもたらされ、螺旋リブ１７ａ，１７ｂは、それぞれの向きによって、ポンピング効果を助長すると理解されている。回転シャフト４の回転速度が非常に低い場合であっても、ポンピング効果を助長する螺旋リブ１７ａ，１７ｂによって、グリースを内部空間側に戻すことが可能である。したがって、歯車減速機の内部空間から大気側へのグリースの漏出が抑制される。

　この実施形態では、螺旋リブ１７ａ，１７ｂは大気側傾斜面１６ｂから突出する隆起である。但し、ポンピング効果を促す複数の螺旋構造体は、大気側傾斜面１６ｂに形成された複数の溝であってよい。この場合、向きが同じ複数の斜めの溝と、これらの溝と向きが異なる複数の斜めの溝が大気側傾斜面１６ｂに形成される。

　図２に示すように、補助シールリップ１８の内周面にも、複数の第１の螺旋リブ（第１の螺旋構造体）１９ａおよび複数の第２の螺旋リブ（第２の螺旋構造体）１９ｂが形成されている。螺旋リブ１９ａ，１９ｂは、内部空間側から補助シールリップ１８の先端を超えて大気側に漏出したグリースを、回転シャフト４の回転に伴って、内部空間側に戻すポンピング効果をもたらす。つまり、補助シールリップ１８を超えて内部空間側から大気側にグリースが漏出することがあっても、回転シャフト４の回転時に、螺旋リブ１９ａ，１９ｂは、グリースを内部空間側に戻す。

　補助シールリップ１８の内周面の展開図は、省略するが、図３の主シールリップ１６の内周面の展開図と同様である。補助シールリップ１８の内周面には、各グループが複数の第１の螺旋リブ１９ａからなる複数のグループと、各グループが複数の第２の螺旋リブ１９ｂからなる複数のグループが設けられており、これらのグループは周方向に交互に並べられている。

　第１の螺旋リブ１９ａと第２の螺旋リブ１９ｂは、補助シールリップ１８の先端から延びており、補助シールリップ１８の円形の先端縁に対して傾斜して螺旋状に延びる。この実施形態では、第１の螺旋リブ１９ａと第２の螺旋リブ１９ｂは、直線状の隆起である。第２の螺旋リブ１９ｂは、第１の螺旋リブ１９ａと鏡像対称に、補助シールリップ１８の円形の先端縁に対して傾斜して延びる。鏡像対称の鏡映面Ｍ２は、異なるグループの間（第１の螺旋リブ１９ａと第２の螺旋リブ１９ｂの間）にあって、回転シャフト４の軸線を含む平面である。

　補助シールリップ１８が回転シャフト４に接触させられた使用状態では、第１の螺旋リブ１９ａと第２の螺旋リブ１９ｂのうち、少なくとも補助シールリップ１８の先端の付近の部分は、回転シャフト４の外周面に接触する。

　回転シャフト４が図３の第１の方向Ｒ１に回転する時に、第１の螺旋リブ１９ａが液体を大気側から内部空間に戻す。逆に回転シャフト４が第２の方向Ｒ２に回転する時に、第２の螺旋リブ１９ｂが液体を大気側から内部空間に戻す。このようなポンピング効果は、補助シールリップ１８の内周面の微細な凹凸によりもたらされ、螺旋リブ１９ａ，１９ｂは、それぞれの向きによって、ポンピング効果を助長すると理解されている。回転シャフト４の回転速度が非常に低い場合であっても、ポンピング効果を助長する螺旋リブ１９ａ，１９ｂによって、グリースを内部空間側に戻すことが可能である。したがって、歯車減速機の内部空間から大気側へのグリースの漏出が抑制される。

　この実施形態では、螺旋リブ１９ａ，１９ｂは補助シールリップ１８の内周面から突出する隆起である。但し、ポンピング効果を促す複数の螺旋構造体は、補助シールリップ１８の内周面に形成された複数の溝であってよい。この場合、向きが同じ複数の斜めの溝と、これらの溝と向きが異なる複数の斜めの溝が補助シールリップ１８の内周面に形成される。

　この実施形態によれば、主シールリップ１６と補助シールリップ１８の両方に、第１の螺旋構造体と第２の螺旋構造体が形成されているため、内部空間側から大気側に漏出したグリースをより多く、内部空間に戻すことができる。

　また、補助シールリップ１８には、補助シールリップ１８の内部空間側と大気側を連通する開口部が形成されていない。「開口部」とは、補助シールリップ１８と回転シャフト４の外周面の接触時に生ずる微小な隙間より大きいサイズを有する、補助シールリップ１８を貫通する開口部（切り欠きまたは孔）を意味する。つまり、「開口部」は、補助シールリップ１８の内周面の微細な凹凸、および／または螺旋構造体であるリブもしくは溝に起因する、補助シールリップ１８と回転シャフト４の外周面の間の微小な隙間を含まない。補助シールリップ１８にこのような大きな開口部が形成されていないので、内部空間内の異物が主シールリップ１６と回転シャフト４の間に侵入することが抑制される。

　図４は実施形態の変形例に係る密封装置を示す。この変形例では、主シールリップ１６の大気側傾斜面１６ｂには、螺旋リブ１７ａ，１７ｂが形成されているが、補助シールリップ１８の内周面には、螺旋リブ１９ａ，１９ｂが形成されていない。

　図５は実施形態の他の変形例に係る密封装置を示す。この変形例では、補助シールリップ１８の内周面には、螺旋リブ１９ａ，１９ｂが形成されているが、主シールリップ１６の大気側傾斜面１６ｂには、螺旋リブ１７ａ，１７ｂが形成されていない。

　したがって、第１の螺旋構造体と第２の螺旋構造体は、主シールリップ１６の大気側傾斜面１６ｂと補助シールリップ１８の内周面の少なくとも一方に形成されてよい。

　以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。

　例えば、上記の実施形態において、密封装置は、関節型ロボットのリンクを駆動するための歯車減速機のハウジングの内部空間内にグリースを密封するために、歯車減速機のハウジング２と、ハウジング２に設けられた孔２Ａ内に配置された回転シャフト４との間の隙間を封止する。しかし、密封装置は、他の歯車減速機のハウジングの内部空間内にグリースを密封するために使用されてもよい。歯車減速機として、遊星歯車減速機や波動歯車減速機等、種々のものを用いることができる。

　螺旋リブの形状および寸法は様々に変形することができる。

　回転シャフト４の周囲に他の部品（例えば、スリーブ）を配置し、主シールリップ１６および補助シールリップ１８がこの部品の外周面に摺動可能に接触させられてもよい。この場合、回転シャフト４とこの部品の組み合わせを回転シャフトとみなすことができる。

　本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。

条項１．　歯車減速機のハウジングと、前記ハウジングに設けられた孔内に配置され、双方向に回転する回転シャフトとの間の隙間を封止し、グリースが貯留された前記ハウジングの内部空間と大気側とを隔てる密封装置であって、
　前記ハウジングに取り付けられる外側円筒部と、
　前記外側円筒部より径方向内側に配置された内側円筒部と、
　前記外側円筒部の大気側の端部と前記内側円筒部の大気側の端部を径方向において連結する連結円環部と、
　前記内側円筒部の内周面から径方向内側に向けて突出し、内部空間側に配置された円錐台状の内部側傾斜面と、大気側に配置された円錐台状の大気側傾斜面を有しており、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる主シールリップと、
　前記主シールリップの前記内部側傾斜面から径方向内側かつ内部空間側に向けて突出し、円錐台形状を有しており、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる補助シールリップと、
　前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、斜めに延びる複数の第１の螺旋構造体と、
　前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、前記第１の螺旋構造体と対称に斜めに延びる複数の第２の螺旋構造体とを有する
密封装置。

条項２．　複数の第１の螺旋構造体が、前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の両方に形成され、
　複数の第２の螺旋構造体が、前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の両方に形成されている
ことを特徴とする条項１に記載の密封装置。

　この条項によれば、主シールリップと補助シールリップの両方に、第１の螺旋構造体と第２の螺旋構造体が形成されているため、内部空間側から大気側に漏出したグリースをより多く、内部空間に戻すことができる。

条項３．　前記補助シールリップには、補助シールリップの前記内部空間側と大気側を連通する開口部が形成されていない
ことを特徴とする条項１または２に記載の密封装置。

　この条項によれば、補助シールリップにこのような開口部が形成されていないので、内部空間内の異物が主シールリップと回転シャフトの間に侵入することが抑制される。

条項４．　グリースが貯留された内部空間を有する歯車減速機のハウジングと、
　前記ハウジングに設けられた孔内に配置され、双方向に回転する回転シャフトと、
　前記ハウジングと前記回転シャフトとの間の隙間を封止し、前記ハウジングの内部空間と大気側とを隔てる密封装置とを備え、
　前記密封装置は、
　　前記ハウジングに取り付けられる外側円筒部と、
　　前記外側円筒部より径方向内側に配置された内側円筒部と、
　　前記外側円筒部の大気側の端部と前記内側円筒部の大気側の端部を径方向において連結する連結円環部と、
　　前記内側円筒部の内周面から径方向内側に向けて突出し、内部空間側に配置された円錐台状の内部側傾斜面と、大気側に配置された円錐台状の大気側傾斜面を有しており、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる主シールリップと、
　　前記主シールリップの前記内部側傾斜面から径方向内側かつ内部空間側に向けて突出し、円錐台形状を有しており、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる補助シールリップと、
　前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、斜めに延びる複数の第１の螺旋構造体と、
　　前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、前記第１の螺旋構造体と対称に斜めに延びる複数の第２の螺旋構造体とを有する
歯車減速機。

条項５．　複数の第１の螺旋構造体が、前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の両方に形成され、
　複数の第２の螺旋構造体が、前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の両方に形成されている
ことを特徴とする条項４に記載の歯車減速機。

条項６．　前記補助シールリップには、補助シールリップの前記内部空間側と大気側を連通する開口部が形成されていない
ことを特徴とする条項４または５に記載の歯車減速機。

１　密封装置
２　ハウジング
２Ａ　孔
４　回転シャフト
１０　外側円筒部
１２　内側円筒部
１４　連結円環部
１６　主シールリップ
１６ａ　内部側傾斜面
１６ｂ　大気側傾斜面
１６ｃ　リップエッジ
１７ａ　第１の螺旋リブ（第１の螺旋構造体）
１７ｂ　第２の螺旋リブ（第２の螺旋構造体）
１８　補助シールリップ
１９ａ　第１の螺旋リブ（第１の螺旋構造体）
１９ｂ　第２の螺旋リブ（第２の螺旋構造体）

Claims

　歯車減速機のハウジングと、前記ハウジングに設けられた孔内に配置され、双方向に回転する回転シャフトとの間の隙間を封止し、グリースが貯留された前記ハウジングの内部空間と大気側とを隔てる密封装置であって、
　前記ハウジングに取り付けられる外側円筒部と、
　前記外側円筒部より径方向内側に配置された内側円筒部と、
　前記外側円筒部の大気側の端部と前記内側円筒部の大気側の端部を径方向において連結する連結円環部と、
　前記内側円筒部の内周面から径方向内側に向けて突出し、内部空間側に配置された内部側傾斜面と、大気側に配置された大気側傾斜面を有しており、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる主シールリップと、
　前記主シールリップの前記内部側傾斜面から径方向内側かつ内部空間側に向けて突出し、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる補助シールリップと、
　前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、斜めに延びる複数の第１の螺旋構造体と、
　前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、前記第１の螺旋構造体と対称に斜めに延びる複数の第２の螺旋構造体とを有する
密封装置。
　複数の第１の螺旋構造体が、前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の両方に形成され、
　複数の第２の螺旋構造体が、前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の両方に形成されている
ことを特徴とする請求項１に記載の密封装置。
　前記補助シールリップには、補助シールリップの前記内部空間側と大気側を連通する開口部が形成されていない
ことを特徴とする請求項１または２に記載の密封装置。
　グリースが貯留された内部空間を有する歯車減速機のハウジングと、
　前記ハウジングに設けられた孔内に配置され、双方向に回転する回転シャフトと、
　前記ハウジングと前記回転シャフトとの間の隙間を封止し、前記ハウジングの内部空間と大気側とを隔てる密封装置とを備え、
　前記密封装置は、
　　前記ハウジングに取り付けられる外側円筒部と、
　　前記外側円筒部より径方向内側に配置された内側円筒部と、
　　前記外側円筒部の大気側の端部と前記内側円筒部の大気側の端部を径方向において連結する連結円環部と、
　　前記内側円筒部の内周面から径方向内側に向けて突出し、内部空間側に配置された内部側傾斜面と、大気側に配置された大気側傾斜面を有しており、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる主シールリップと、
　　前記主シールリップの前記内部側傾斜面から径方向内側かつ内部空間側に向けて突出し、前記回転シャフトの外周面に摺動可能に接触させられる補助シールリップと、
　前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、斜めに延びる複数の第１の螺旋構造体と、
　　前記主シールリップの前記大気側傾斜面と、前記補助シールリップの内周面の少なくとも一方に形成され、前記第１の螺旋構造体と対称に斜めに延びる複数の第２の螺旋構造体とを有する
歯車減速機。