WO2021177369A1

WO2021177369A1 - ラジアルころ軸受用保持器及びラジアルころ軸受

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Publication number: WO2021177369A1
Application number: PCT/JP2021/008252
Authority: WO
Inventors: 裕史熊谷
Original assignee: 日本精工株式会社
Priority date: 2020-03-04
Filing date: 2021-03-03
Publication date: 2021-09-10
Also published as: EP4116594A4; CN115244307A; EP4116594A1; JP2021139422A

Abstract

ラジアルころ軸受用保持器は、円環状の一対のリム部と、同心に配置されたリム部間を連結して、円周方向に所定の間隔で設けられた複数の柱部と、を有し、互いに隣り合う柱部と一対のリム部とにより、複数のころを転動自在に保持するための複数のポケットが構成されている。柱部は円周方向の両側にころを保持する保持面を有し、一方の保持面には、外径側脱落防止爪と、内径側脱落防止爪とが形成されており、他の保持面には、外径側及び内径側においてポケットに向けて突出する突起が形成されていない。

Description

ラジアルころ軸受用保持器及びラジアルころ軸受

　本発明は、車両の変速ギア支持部及びシャフト支持部等に装着されるラジアルころ軸受用保持器、及び該ラジアルころ軸受用保持器を備えたラジアルころ軸受に関する。

　近時、各種産業機械や自動車の変速機（トランスミッション）等の回転部分には、ケージアンドローラ及びラジアルころ軸受が多用されている。例えば、トランスミッションに使用されるラジアルころ軸受においても、自動車の高出力化及び高速化に伴って、高速回転条件下、及び、低粘度潤滑剤下で使用される場合が多くなっており、厳しい潤滑条件下で使用可能な軸受仕様が要求されている。

　例えば、図８に示すように、従来のラジアルころ軸受用保持器８０は、一対のリム部（不図示）と、一対のリム部間を連結して円周方向に所定の間隔で配列される複数の柱部８３と、を有する。そして、リム部と柱部８３とによって形成される各ポケットでころ８５を保持する構成となっている。
　また、上記図８に示す保持器８０の柱部８３は、保持器８０の外径面側及び内径面側において、ポケット側に突出した脱落防止爪８３ａ及び８３ｂを有しており、これらの脱落防止爪８３ａ及び８３ｂにより、保持器８０からころ８５が脱落することを防止できる。

　しかし、上記図８に示すラジアルころ軸受用保持器８０は、ころ８５と柱部８３との間に空隙部８７が形成され、この空隙部８７に潤滑油が滞留しやすくなる。その結果、保持器８０の外周面側から内周面側へ、又は、内周面側から外周面側への潤滑油の流動が困難となり、潤滑性能が低下する可能性がある。

　そこで、特許文献１には、高速回転及び低粘度潤滑剤使用時の潤滑性能を向上して、潤滑不良を解消できるラジアルニードル軸受が提案されている。上記特許文献１に記載のラジアルニードル軸受は、ころを保持する保持器を、内方部材である軸と、外方部材である外輪との間に配置したものである。なお、上記保持器の柱部の外周面は、外輪の軌道面（内周面）と接触しない形状であるとともに、柱部の外周面には軸方向に延びる溝が形成されている。このような構成によると、柱部の外周面が、外輪の内周面と接触して、外輪の内周面の潤滑剤を掻き取ることを防止でき、潤滑不良が生じる可能性を低減できる。また、ラジアルニードル軸受の回転に伴って、溝の中に溜まっていた潤滑剤が、遠心力により外輪軌道面に跳ね掛けて供給されるので、更に潤滑性能が向上する。

　また、上記特許文献１に記載のラジアルニードル軸受をさらに改良したものとして、高速回転時や低粘度潤滑の使用時であっても、十分な潤滑性能を発揮できるケージアンドローラが特許文献２に開示されている。上記ケージアンドローラの柱部には、柱部を径方向に貫通するように潤滑孔が形成されており、外周側から内周側に、又は内周側から外周側に潤滑剤が入り込みやすい構成となっている。

日本国特開２００６－２８３９３３号公報日本国特許第５５７２９５２号公報

　しかしながら、上記特許文献１に記載のラジアルニードル軸受は、柱部の溝に溜まった潤滑剤を遠心力により積極的に外輪の内周面に供給することはできるが、外輪側から軸側に対しては、潤滑剤を十分に供給することができなかった。
　また、上記特許文献２に記載のケージアンドローラは、柱部を径方向に貫通するように潤滑孔が形成されているため、円周方向における柱部の幅を大きく設計する必要があり、その結果、ころの本数が減少して、負荷容量が低下していた。

　本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷容量を低下させることなく、保持器の外周面側と内周面側との間の潤滑油の貫通性を良好にし、潤滑性能を向上させることができるラジアル軸受用保持器を提供することにある。

　本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
　円環状の一対のリム部と、前記一対のリム部間を連結して円周方向に所定の間隔で設けられた複数の柱部と、を備え、互いに隣り合う前記柱部と前記一対のリム部とにより構成されてころを転動自在に保持するための複数のポケットを有する、ラジアルころ軸受用保持器であって、
　前記柱部は円周方向の両側にころを保持する保持面を有し、
　各ポケットの円周方向両側に位置する前記保持面のうち、一方の保持面には、外径側において前記ポケットに向けて突出してころの脱落を防止する外径側脱落防止爪と、内径側において前記ポケットに向けて突出してころの脱落を防止する内径側脱落防止爪とが形成されており、
　各ポケットの円周方向両側に位置する前記保持面のうち、他方の保持面の少なくとも一部の領域には、外径側及び内径側において前記ポケットに向けて突出する突起を有さない、ラジアルころ軸受用保持器。

　本発明によれば、ころを保持する保持面の一部には脱落防止爪が形成されており、他の部分にはポケットに向けて突出する突起が形成されていないため、負荷容量を低下させることなく、保持器の外周面側と内周面側との間の潤滑油の貫通性を良好にし、潤滑性能を向上させることができる。

本発明の実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器を示す斜視図である。本発明の第１実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器及びころを示す断面図である。本発明の第２実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器及びころを示す断面図である。本発明の第３実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器及びころを示す断面図である。本発明の第４実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器及びころを示す断面図である。本発明の第５実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器の一部を拡大して示す展開図である。本発明の第６実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器の一部を拡大して示す展開図である。従来のラジアルころ軸受用保持器及びころを示す断面図である。

　以下、本発明に係るラジアルころ軸受用保持器について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。

（第１実施形態）
　まず、図１及び図２を参照して、本発明の第１実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器１０について説明する。

　本実施形態のラジアルころ軸受用保持器１０は、樹脂製であり、図１及び図２に示すように、円環状の一対のリム部１２ａ，１２ｂと、同心に配置されたリム部１２ａとリム部１２ｂとの間を連結して、円周方向に所定の間隔で設けられた複数の柱部１３と、を有し、円筒状に形成されている。そして、互いに隣り合う柱部１３と一対のリム部１２ａ，１２ｂとにより、複数のころ１７を転動自在に保持するための複数のポケット１６が構成されている。また、ころ１７は、円筒ころであり、棒状ころ、針状ころとすることもできる。そして、上記ラジアルころ軸受用保持器１０（以下、単に「保持器」ともいう。）と、各ポケット１６に保持された複数のころ１７と、により、所謂ケージアンドローラとなるラジアルころ軸受が構成される。なお、以下の説明において、特に記載がない場合には、軸方向、円周方向、外径側及び内径側とは、円筒状に形成された保持器の軸方向、円周方向、外径側及び内径側を示す。また、図１では、後述する外径側脱落防止爪１４ｂ及び内径側脱落防止爪１４ｃは表されていない。

　各柱部１３（柱部１３ａ，１３ｂ）は、円周方向の両側にころ１７を保持する保持面１４ａ，１４ｄを有する。ポケット１６の両側、即ち、ころ１７の両側（ころ並び方向の両側）に位置する柱部１３ａ，１３ｂのうち、一方の柱部の保持面１４ａの外径側には、柱部の軸方向全領域にわたって、ポケット１６に向けて突出する外径側脱落防止爪１４ｂが形成されている。また、保持面１４ａの内径側にも、柱部の軸方向の全領域にわたって、ポケット１６に向けて突出する内径側脱落防止爪１４ｃが形成されている。

　一方、ころ１７の両側に位置する柱部１３ａ，１３ｂのうち、他方の柱部１３ｂにおける保持面１４ｄは、全領域にわたって平面状となっており、外径側及び内径側においてポケット１６側に突出する突起（脱落防止爪）は形成されていない。
　即ち、保持器１０を構成する全ての柱部１３（柱部１３ａ，１３ｂ）は同一の断面形状を有しており、各柱部１３ａ，１３ｂについて、一方の保持面１４ａには外径側脱落防止爪１４ｂ及び内径側脱落防止爪１４ｃが形成され、他方の保持面１４ｄには突起が形成されていない。

　また、保持面１４ａにおいて、外径側脱落防止爪１４ｂ及び内径側脱落防止爪１４ｃが形成されていない部分は平面状となっており、該平面状の部分と他方の保持面１４ｄとの円周方向の距離は。外径側に向かうに従い大きくなっている。なお、一方の保持面１４ａの上記平面状の部分と他方の保持面１４ｄとが平行となるように構成することもできる。

　このように構成された本実施形態のラジアルころ軸受用保持器１０によれば、外径側脱落防止爪１４ｂにより、ころ１７が保持器１０の外周面側に脱落することを防止し、内径側脱落防止爪１４ｃにより、ころ１７が保持器１０の内周面側に脱落することを防止できる。
　また、ころ１７と一方の保持面１４ａとの間には、空隙部１８が形成され、この空隙部１８に潤滑油が滞留することがあるが、ころ１７と他方の保持面１４ｄとの間には、潤滑油が滞留する空隙部が形成されない。さらに、他方の保持面１４ｄは、全領域にわたって平面状に形成されているので、他方の保持面１４ｄに沿って潤滑油が容易に移動できる（ポケット側に突出して、潤滑油の径方向の移動を妨げる突起が存在しない）。
　従って、保持器１０の外周面側と内周面側との間の潤滑油の貫通性が良好になり、負荷容量を低下させることなく、保持器１０によりラジアルころ軸受の潤滑性能を向上できる。

　なお、上記第１実施形態においては、保持面１４ａの軸方向全領域にわたって、外径側脱落防止爪１４ｂ及び内径側脱落防止爪１４ｃが形成されているが、これらの脱落防止爪１４ｂ及び１４ｃは保持面１４ａの軸方向全領域に形成されている必要はない。例えば、ころ１７を基準として、円周方向における一方の保持面１４ａの一部の領域のみに外径側脱落防止爪１４ｂ及び内径側脱落防止爪１４ｃが形成されている場合に、これに対向する位置における保持面１４ｄに、ポケット１６側に向けて突出する突起が形成されていない領域があればよい。

（第２実施形態）
　次に、図３を参照して、本発明の第２実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器２０について説明する。なお、第２及び以降の第３～第６実施形態において、第１実施形態と同じ構成要素については、同一符号又は相当符号を付して、説明を省略する。

　第２実施形態では、第１実施形態と同様に、ころ１７の両側に配置される保持面１４ａ，１４ｄのうち、一方の保持面１４ａの外径側及び内径側には、ポケット１６に向けて突出する外径側脱落防止爪２４ｂ及び内径側脱落防止爪２４ｃが形成されている。但し、外径側脱落防止爪２４ｂ及び内径側脱落防止爪２４ｃは、いずれも、第１実施形態における外径側脱落防止爪１４ｂ及び内径側脱落防止爪１４ｃよりも長く形成されている。

　具体的に、第２実施形態では、保持面１４ａから突出する外径側脱落防止爪２４ｂの先端と、保持面１４ｄの外径側端部２４ｅとの距離は、ころ１７の直径より小さくなるように設定されている。同様に、保持面１４ａから突出する内径側脱落防止爪２４ｃの先端と、保持面１４ｄの内径側端部２４ｆとの距離は、ころ１７の直径より小さくなるように設定されている。

　第１実施形態では、他方の保持面１４ｄが平面状となっていることから、柱部１３ａ，１３ｂの形状によっては、ころ１７の脱落が懸念される。第２実施形態では、外径側脱落防止爪２４ｂ及び内径側脱落防止爪２４ｃが長く形成され、それぞれ、保持面１４ｄの外径側端部２４ｅ及び内径側端部２４ｆとの距離が狭くなっているため、これらの間からころ１７が脱落することを確実に防止できる。

（第３実施形態）
　次に、図４を参照して、本発明の第３実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器３０について説明する。

　第３実施形態では、断面形状が互いに異なる柱部３３ａ及び３３ｂが円周方向に沿って交互に配置されている。具体的に、柱部３３ａの円周方向両側に位置する保持面３４ａには、それぞれ、軸方向全領域にわたって、外径側脱落防止爪３４ｂ及び内径側脱落防止爪３４ｃが形成されている。一方、柱部３３ａに隣接する柱部３３ｂの円周方向両側に位置する保持面３４ｄには、ころ１７側に向けて突出する突起が形成されておらず、柱部３３ｂの断面形状は矩形となっている。

　このように構成された第３実施形態によれば、第１及び第２実施形態と同様に、ころ１７の円周方向両側に位置する保持面のうち、一方の保持面３４ａには外径側及び内径側に、柱部３３ａの軸方向全領域にわたって外径側脱落防止爪３４ｂ及び内径側脱落防止爪３４ｃが形成されているため、ころ１７の脱落を防止できる。
　また、他方の保持面３４ｄの外径側及び内径側には、柱部３３ｂの軸方向全領域にわたって突起が形成されていないため、保持面３４ｄところ１７との間では、潤滑油の流通が良好となり、保持器３０の外周面側と内周面側との間の潤滑油の貫通性が良好になる。

　第１及び第２実施形態では、ころ１７が自転する方向により、ころに巻き込まれた潤滑油の径方向への移動向きが決定されており、内輪側から外輪側、又は外輪側から内輪側への一方向の潤滑油の流通が優れたものとなった。上記第３実施形態では、図４に示すように、ころ１７が矢印Ａ１で示す時計回りの方向に自転した場合には、柱部３３ｂの両側において矢印Ａ２で表される方向に潤滑油が流れる。従って、内輪側から外輪側へ、及び外輪側から内輪側へのいずれの方向にも潤滑油の流通が優れたものとなる。これは、ころ１７が反時計回りの方向に自転した場合であっても同様であり、内輪側から外輪側へ、及び外輪側から内輪側へのいずれの方向にも潤滑油の流通が優れたものとなる。
　このように、第３実施形態では、潤滑油の径方向の流れはころの自転方向に影響されず、貫通する潤滑油量を確保できるため、軸受が組み込まれた装置全体として、優れた潤滑性能を安定して維持できる。

（第４実施形態）
　次に、図５を参照して、本発明の第４実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器４０について説明する。

　第４実施形態では、第１及び第２実施形態と同様に、ころ１７の円周方向両側に位置する柱部１３ａ及び１３ｂの断面形状は同じである。即ち、一方の保持面１４ａには、外径側及び内径側に、ころの脱落を防止する外径側脱落防止爪１４ｂ及び内径側脱落防止爪１４ｃが形成され、他方の保持面４４ｄの外径側及び内径側には、ころ１７側に突出する突起が形成されていない。
　但し、他方の保持面４４ｄの径方向中間部のみが平面状であり、その外径側端部及び内径側端部に、柱部１３ｂの軸方向全領域にわたって切り欠きが設けられており、保持面４４ｄの外径側及び内径側において、保持面４４ｄが突形状となるように傾斜する傾斜面４４ｅ，４４ｆが形成されている。

　このように構成された第４実施形態によれば、他方の保持面４４ｄに傾斜面４４ｅ，４４ｆが形成されているため、第１～第３実施形態と比較して、ころ１７と柱部１３ｂとの間に潤滑油が引き込まれやすくなる。従って、より一層、潤滑油の流通が良好になり、保持器４０の外周面側と内周面側との間の潤滑油の貫通性が良好になる。

（第５実施形態）
　次に、図６を参照して、本発明の第５実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器５０について説明する。

　第５実施形態では、第３実施形態と同様に、断面形状が互いに異なる柱部５３ａ及び５３ｂが交互に配置されている。具体的に、柱部５３ａの円周方向両側に位置する保持面５４ａには、それぞれ、軸方向全領域にわたって、外径側脱落防止爪５４ｂ及び内径側脱落防止爪５４ｃが形成されている。
　一方、柱部５３ａに隣接する柱部５３ｂの円周方向両側に位置する保持面５４ｄは、その軸方向中央の領域のみに、外径側端部からポケット１６に向かって突出する外径側脱落防止爪５４ｅと、内径側端部からポケット１６に向かって突出する内径側脱落防止爪５４ｆとが形成されている。また、保持面５４ｄの一部の領域（軸方向両端の領域）には、外径側及び内径側において、ポケット１６に向けて突出する突起が形成されておらず、断面が矩形状となっている。

　このように構成された第５実施形態によれば、軸方向中央の領域では、ポケット１６の円周方向両側に位置する保持面５４ａ及び５４ｄが、外径側脱落防止爪５４ｂ及び５４ｅ、並びに内径側脱落防止爪５４ｃ及び５４ｆを有している。従って、第３実施形態と比較して、円周方向両側からころが確実に保持され、ころが保持器５０の外周面側又は内周面側に脱落することを防止できる。
　また、軸方向両端の領域においては、一方の保持面５４ａが外径側脱落防止爪５４ｂと内径側脱落防止爪５４ｃとを有しており、他方の保持面５４ｄは突起を有さない平面状となっている。従って、軸方向の両端において、保持器５０の外周面側と内周面側との間の潤滑油の貫通性が良好になる。

（第６実施形態）
　次に、図７を参照して、本発明の第６実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器６０について説明する。

　第６実施形態は、第５実施形態と同様に、断面形状が互いに異なる柱部６３ａ及び６３ｂが交互に配置されている。具体的に、柱部６３ａの円周方向両側に位置する保持面６４ａには、それぞれ、軸方向全領域にわたって、外径側脱落防止爪６４ｂ及び内径側脱落防止爪６４ｃが形成されている。
　一方、第６実施形態では、柱部６３ａに隣接する柱部６３ｂにおける外径側脱落防止爪６４ｅ及び内径側脱落防止爪６４ｆの位置が、第５実施形態と異なる。即ち、柱部６３ｂの円周方向両側に位置する保持面６４ｄは、その軸方向両端の領域のみに、外径側端部からポケット１６に向かって突出する外径側脱落防止爪６４ｅと、内径側端部からポケット１６に向かって突出する内径側脱落防止爪６４ｆとが形成されている。
　また、保持面６４ｄの一部の領域（軸方向中央の領域）には、外径側及び内径側において、ポケット１６に向けて突出する突起が形成されておらず、断面が矩形状となっている。

　このように構成された第６実施形態によれば、軸方向両端の領域では、ポケット１６の円周方向両側に位置する保持面６４ａ及び６４ｄが、外径側脱落防止爪６４ｂ及び６４ｅ、並びに内径側脱落防止爪６４ｃ及び６４ｆを有している。従って、第５実施形態と同様に、円周方向両側からころが確実に保持され、ころが保持器６０の外周面側又は内周面側に脱落することを防止できる。さらに、第６実施形態では、ころの軸方向両端を、円周方向両側から脱落防止爪６４ｂ、６４ｃ、６４ｅ及び６４ｆで保持するため、第５実施形態と比較して、より高い保持力が得られる。
　また、軸方向中央の領域においては、一方の保持面６４ａが外径側脱落防止爪６４ｂと内径側脱落防止爪６４ｃとを有しており、他方の保持面６４ｄは突起を有さない平面状となっている。従って、軸方向の中央において、保持器６０の外周面側と内周面側との間の潤滑油の貫通性が良好になる。

　なお、上記第１～第６実施形態として説明したラジアルころ軸受用保持器は、各ポケット１６でころ１７を保持することにより、ラジアルころ軸受を構成できる。上述の通り、ころ１７は円筒ころの他に、棒状ころ、針状ころを使用することもできる。

　以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
（１）円環状の一対のリム部と、前記一対のリム部間を連結して円周方向に所定の間隔で設けられた複数の柱部と、を備え、互いに隣り合う前記柱部と前記一対のリム部とにより構成されてころを転動自在に保持するための複数のポケットを有する、ラジアルころ軸受用保持器であって、
　前記柱部は円周方向の両側にころを保持する保持面を有し、
　各ポケットの円周方向両側に位置する前記保持面のうち、一方の保持面には、外径側において前記ポケットに向けて突出してころの脱落を防止する外径側脱落防止爪と、内径側において前記ポケットに向けて突出してころの脱落を防止する内径側脱落防止爪とが形成されており、
　各ポケットの円周方向両側に位置する前記保持面のうち、他方の保持面の少なくとも一部の領域には、外径側及び内径側において前記ポケットに向けて突出する突起を有さない、ラジアルころ軸受用保持器。
（２）前記外径側脱落防止爪及び内径側脱落防止爪は、前記一方の保持面の軸方向全領域にわたって形成され、
　前記他方の保持面は、その軸方向両端の領域において前記ポケットに向けて突出する突起を有さない、（１）に記載のラジアルころ軸受用保持器。
（３）前記外径側脱落防止爪及び内径側脱落防止爪は、前記一方の保持面の軸方向全領域にわたって形成され、
　前記他方の保持面は、その軸方向中央の領域において前記ポケットに向けて突出する突起を有さない、（１）に記載のラジアルころ軸受用保持器。
（４）前記他方の保持面の少なくとも一部の領域は平面である、（１）～（３）のいずれか１つに記載のラジアルころ軸受用保持器。
（５）複数のころと、（１）～（４）のいずれか１つに記載のラジアルころ軸受用保持器と、を備えたラジアルころ軸受であって、
　前記一方の保持面における前記外径側脱落防止爪の先端と、前記他方の保持面における外径側端部との距離、及び、前記一方の保持面における前記内径側脱落防止爪の先端と、前記他方の保持面における内径側端部との距離は、いずれも前記ころの直径より小さい、ラジアルころ軸受。
　この構成によれば、ポケットの円周方向両側に位置する保持面のうち、一方の保持面には脱落防止爪が形成されており、他方の保持面にはポケットに向けて突出する突起が形成されていないため、脱落防止爪によりころの脱落を防止できる。また、突起が形成されていない領域において、ラジアルころ軸受用保持器の外周面側と内周面側との間の潤滑油の貫通性が良好になる。

　以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。

　なお、本出願は、２０２０年３月４日出願の日本特許出願（特願２０２０－３６５８６）に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。

　　１０，２０，３０，４０，５０，６０　ラジアルころ軸受用保持器
　　１２ａ，１２ｂ　リム部
　　１３，１３ａ，１３ｂ，３３ａ，３３ｂ，５３ａ，５３ｂ，６３ａ，６３ｂ　柱部
　　１４ａ，１４ｄ，３４ａ，３４ｄ，４４ｄ，５４ａ，５４ｄ，６４ａ，６４ｄ　保持面
　　１４ｂ，２４ｂ，３４ｂ，５４ｂ，５４ｅ，６４ｂ，６４ｅ　外径側脱落防止爪
　　１４ｃ，２４ｃ，３４ｃ，５４ｃ，５４ｆ，６４ｃ，６４ｆ　内径側脱落防止爪
　　１６　ポケット
　　１７　ころ

Claims

　円環状の一対のリム部と、前記一対のリム部間を連結して円周方向に所定の間隔で設けられた複数の柱部と、を備え、互いに隣り合う前記柱部と前記一対のリム部とにより構成されてころを転動自在に保持するための複数のポケットを有する、ラジアルころ軸受用保持器であって、
　前記柱部は円周方向の両側にころを保持する保持面を有し、
　各ポケットの円周方向両側に位置する前記保持面のうち、一方の保持面には、外径側において前記ポケットに向けて突出してころの脱落を防止する外径側脱落防止爪と、内径側において前記ポケットに向けて突出してころの脱落を防止する内径側脱落防止爪とが形成されており、
　各ポケットの円周方向両側に位置する前記保持面のうち、他方の保持面の少なくとも一部の領域には、外径側及び内径側において前記ポケットに向けて突出する突起を有さない、ラジアルころ軸受用保持器。
　前記外径側脱落防止爪及び内径側脱落防止爪は、前記一方の保持面の軸方向全領域にわたって形成され、
　前記他方の保持面は、その軸方向両端の領域において前記ポケットに向けて突出する突起を有さない、請求項１に記載のラジアルころ軸受用保持器。
　前記外径側脱落防止爪及び内径側脱落防止爪は、前記一方の保持面の軸方向全領域にわたって形成され、
　前記他方の保持面は、その軸方向中央の領域において前記ポケットに向けて突出する突起を有さない、請求項１に記載のラジアルころ軸受用保持器。
　前記他方の保持面の少なくとも一部の領域は平面である、請求項１～３のいずれか１項に記載のラジアルころ軸受用保持器。
　複数のころと、請求項１～４のいずれか１項に記載のラジアルころ軸受用保持器と、を備えたラジアルころ軸受であって、
　前記一方の保持面における前記外径側脱落防止爪の先端と、前記他方の保持面における外径側端部との距離、及び、前記一方の保持面における前記内径側脱落防止爪の先端と、前記他方の保持面における内径側端部との距離は、いずれも前記ころの直径より小さい、ラジアルころ軸受。