WO2021171954A1 - 耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物、および耐衝撃材料 - Google Patents

耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物、および耐衝撃材料 Download PDF

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Abstract

少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体(A)に、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるブロック共重合体(B)を含むブロック共重合体組成物を含有する耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物を提供する。

Description

耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物、および耐衝撃材料
 本発明は、引張強度、低伸長速度での引張強度、耐疲労性、および耐衝撃性に優れ、耐衝撃材料用途に好適な熱可塑性エラストマー組成物に関する。
 従来、熱可塑性エラストマーは、常温でゴム弾性を示し、また加熱すると軟化して流動性を示し成形加工が容易であることから、伸縮性材料として種々の分野で利用されている。
 たとえば、本発明者らの一部は、特許文献1に開示するように、室温付近でガラス状態の硬いポリマーAと、室温付近で溶融状態の柔らかいポリマーBとからなるブロック共重合体を含むエラストマーにおいて、ポリマーBに非共有結合性の結合可能な官能基を有するモノマーが重合した部分を含ませることで、分子間および分子内でモノマー成分が非共有結合性の結合を形成し擬似架橋することにより、大きな破断伸びを示しつつも、より大きな最大応力、靱性等を示していることから弾性限界が大きく、高弾性を示すことを報告している。
 一方で、熱可塑性エラストマーは、自動車用材料、家電製品材料、食品容器・包装材料、情報機器材料、建築用材料等に用いられる際において、その適用される部品によっては、耐衝撃性に優れていることも求められる。
 たとえば、特許文献2には、耐衝撃性の向上の試みとして、(A)部分的または完全に架橋された飽和ゴム状重合体とポリオレフィン系樹脂よりなる熱可塑性エラストマー:95~5重量部、(B)熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂を除く):5~95重量部、および(C)相溶化剤:(A)成分と(B)成分100重量部に対して0.1~50重量部よりなる組成物であり、かつ、該組成物中の飽和ゴム状重合体が1~40重量%であることを特徴とする高耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この特許文献2に開示された熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性が必ずしも十分でなく、そのため、耐衝撃性のさらなる改善が望まれていた。
特開2016-89099号公報 特開2001-146533号公報
 本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、引張強度、低伸長速度での引張強度、耐疲労性、および耐衝撃性に優れ、耐衝撃材料用途に好適な熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、このような熱可塑性エラストマー組成物を用いて得られる耐衝撃材料を提供することも目的とする。
 本発明者等は、上記目的を達成すべく検討を行ったところ、熱可塑性エラストマーの中でも、特に弾性に富み、柔軟である、芳香族ビニル重合体ブロックおよび共役ジエン重合体ブロックを有するブロック共重合体を用い、このブロック共重合体に非共有結合性の結合可能な官能基を導入することにより、耐疲労性と耐衝撃性とが高いレベルで両立されることを見出し、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明によれば、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体(A)に、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるブロック共重合体(B)を含むブロック共重合体組成物を含有する耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
 本発明において、前記非共有結合性の結合可能な官能基が、水素結合可能な官能基、配位結合可能な官能基、およびイオン結合可能な官能基から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
 本発明において、前記非共有結合性の結合可能な官能基が、カルボキシル基もしくは酸無水物基と塩基とを反応させてなる基、および、酸無水物基を塩基により加水分解してなる基から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
 本発明において、前記酸無水物基が、不飽和ジカルボン酸無水物に由来する基であることが好ましい。
 本発明において、前記塩基が、アルカリ金属含有化合物、アルカリ土類金属含有化合物、アンモニアおよびアミン化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
 本発明において、前記非共有結合性の結合可能な官能基が、アレニウス酸およびアレニウス塩基を混合し、中和することにより生成するイオン性基、および、ブレンステッド酸およびブレンステッド塩基を混合し、中和することにより生成するイオン性基から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
 本発明において、前記非共有結合性の結合可能な官能基が、カルボン酸の塩を含む基であることが好ましい。
 本発明において、前記芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量が3,000~50,000の範囲内であり、 前記共役ジエン重合体ブロックのビニル結合含有量が0.1モル%~50モル%の範囲内であり、かつ前記共役ジエン重合体ブロックの重量平均分子量が10,000~500,000の範囲内であることが好ましい。
 本発明において、前記芳香族ビニル重合体ブロックがポリスチレンブロックであることが好ましい。
 本発明において、前記共役ジエン重合体ブロックが、ポリブタジエンブロック、ポリイソプレンブロック、またはポリブタジエン-ポリイソプレン共重合ブロックであることが好ましい。
 また、本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物は、さらに、前記ブロック共重合体組成物以外の他の重合体を含むことが好ましい。
 本発明において、前記ブロック共重合体組成物以外の他の重合体が、アクリル重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリスチレン系樹脂、スチレン-マレイミド系共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド-メタクリル酸メチル共重合体、ゴム強化耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ABS系共重合体樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
 本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物は、耐疲労性および耐衝撃性を有する材料用に用いられることが好ましい。
 さらに、本発明によれば、上記本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物を含有する耐衝撃材料が提供される。
 本発明によれば、引張強度、低伸長速度での引張強度、耐疲労性、および耐衝撃性に優れ、耐衝撃材料用途に好適な熱可塑性エラストマー組成物、および、このような熱可塑性エラストマー組成物を用いて得られる耐衝撃材料を提供することができる。
図1は、実施例1の引張試験の結果を示すグラフである。 図2は、実施例1および比較例1の歪み1000%における応力緩和試験の結果を示すグラフである。 図3は、サイクル引張試験における、時間に対する歪みの大きさを示すグラフである。 図4は、実施例1のサイクル引張試験の結果を示すグラフである。 図5は、実施例1、実施例2および比較例1の落錘衝撃試験における、試料に加えられたエネルギー量をストライカーが試料に衝突してからの時間に対してプロットしたグラフである。 図6は、実施例1~4および比較例1の落錘衝撃試験における衝撃吸収率を示すグラフである。 図7は、実施例1の落錘衝撃試験における、落下させる錘の高さhを、異なるものとしたときのエネルギー-時間曲線を示すグラフである。 図8は、実施例1~4および比較例1の落錘衝撃試験における、加えた衝撃エネルギーEと試験片に破壊が生じたか否かの関係を示すグラフである。 図9は、比較例1の引張試験の結果を示すグラフである。 図10は、比較例1のサイクル引張試験の結果を示すグラフである。 図11は、実施例2の引張試験の結果を示すグラフである。 図12は、実施例2のサイクル引張試験の結果を示すグラフである。 図13は、実施例2の落錘衝撃試験における、落下させる錘の高さhを、異なるものとしたときのエネルギー-時間曲線を示すグラフである。 図14は、実施例3の落錘衝撃試験における、落下させる錘の高さhを、異なるものとしたときのエネルギー-時間曲線を示すグラフである。 図15は、実施例4の落錘衝撃試験における、落下させる錘の高さhを、異なるものとしたときのエネルギー-時間曲線を示すグラフである。 図16は、実施例8の試料の光学顕微鏡写真である。 図17は、実施例9の試料の光学顕微鏡写真である。 図18は、実施例10の試料の光学顕微鏡写真である。
 本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物は、
 少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体(A)に、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるブロック共重合体(B)を含むブロック共重合体組成物を含有する、耐衝撃材料用に用いられる熱可塑性エラストマー組成物である。
<ブロック共重合体組成物>
 本発明で用いられるブロック共重合体組成物は、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体(A)に、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるブロック共重合体(B)を含むブロック共重合体組成物である。すなわち、本発明で用いられるブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体(A)に対して、非共有結合性の結合可能な官能基を導入するための変性処理を行うことにより得られる、ブロック共重合体の組成物である。
 本発明で用いるブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体(B)は、ブロック共重合体(A)に非共有結合性の結合可能な官能基(共有結合以外の物理的な結合を形成可能な官能基)が導入されてなるものである。ブロック共重合体(B)は、本発明で用いるブロック共重合体組成物の重合体成分として用いられる。
 なお、本明細書において、特に説明がない限り、「ブロック共重合体」とは、ピュアブロック共重合体、ランダムブロック共重合体、およびテーパーブロック構造を有する共重合体のいずれの態様も含む意味である。
 以下においては、まず、ブロック共重合体(A)について、説明する。
(ブロック共重合体(A))
 ブロック共重合体(A)は、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するものである。
 ブロック共重合体(A)が有する芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体を含む単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
 芳香族ビニル重合体ブロックの形成に用いる芳香族ビニル単量体としては、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されない。芳香族ビニル化合物としては、たとえば、スチレン;α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン等のアルキル基を置換基として有するスチレン類;4-アセトキシスチレン、4-(1-エトキシエトキシ)スチレン、4-メトキシスチレン、4-エトキシスチレン、4-t-ブトキシスチレン等のエーテル基やエステル基を置換基として有するスチレン類;2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2,4-ジブロモスチレン等のハロゲン原子を置換基として有するスチレン類;2-メチル-4,6-ジクロロスチレン等のアルキル基とハロゲン原子を置換基として有するスチレン類;ビニルナフタレン;等が挙げられる。これらの芳香族ビニル単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
 これら芳香族ビニル化合物の中でも、入手の容易さの観点から、スチレン、炭素数1~12のアルキル基を置換基として有するスチレン類、エーテル基やエステル基を置換基として有するスチレン類が好ましく、スチレンを用いることが特に好ましい。すなわち、芳香族ビニル重合体ブロックが、スチレンを主たる繰り返し単位として構成される、ポリスチレンブロックであることが好ましい。
 芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として含有するものである限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)等の共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β-不飽和ニトリル単量体;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等の不飽和カルボン酸エステル単量体;1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等の好ましくは炭素数が5~12の非共役ジエン単量体;等が挙げられる。
 また、ブロック共重合体(A)が複数の芳香族ビニル重合体ブロックを有する場合においては、複数の芳香族ビニル重合体ブロック同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。たとえば、複数の芳香族ビニル重合体ブロック同士は、同一の芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として含有するものであってもよいし、相異なっていてもよい。
 芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位の含有量が上記範囲であれば、耐疲労性と耐衝撃性を高いレベルで両立することができる。
 ブロック共重合体(A)の全単量体単位中における、芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常、5~90質量%の範囲内で選択され、好ましくは10~60質量%の範囲内で選択される。ブロック共重合体(A)中における芳香族ビニル単量体単位の含有量が上記範囲にあれば、耐疲労性と耐衝撃性を高いレベルで両立することができる。なお、ブロック共重合体(A)中の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、 H-NMRを用いて測定することができる。
 ブロック共重合体(A)が有する共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体を含む単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
 共役ジエン重合体ブロックの形成に用いる共役ジエン単量体としては、共役ジエン化合物であれば特に限定されない。共役ジエン化合物としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの共役ジエン単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
 これらの中でも、1,3-ブタジエンおよび/またはイソプレンを用いることが好ましい。すなわち、共役ジエン重合体ブロックが、1,3-ブタジエンを主たる繰り返し単位として構成されるポリブタジエンブロック、イソプレンを主たる繰り返し単位として構成されるポリイソプレンブロック、または、1,3-ブタジエンおよびイソプレンを主たる繰り返し単位として構成されるポリブタジエン-ポリイソプレン共重合ブロックであることが好ましい。
 共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位として含有するものである限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。共役ジエン重合体ブロックに含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;α,β-不飽和ニトリル単量体;不飽和カルボン酸無水物単量体;不飽和カルボン酸エステル単量体;非共役ジエン単量体;等が例示される。なお、各単量体の具体例については、上述の芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体と同様とすることができる。
 また、ブロック共重合体(A)が複数の共役ジエン重合体ブロックを有する場合においては、複数の共役ジエン重合体ブロック同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。たとえば、複数の共役ジエン重合体ブロック同士は、同一の共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として含有するものであってもよいし、相異なっていてもよい。さらに、共役ジエン重合体ブロックの不飽和結合の一部は水素化されていてもよい。
 共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることがさらにより好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位の含有量が上記範囲であれば、耐疲労性と耐衝撃性を高いレベルで両立することができる。
 ブロック共重合体(A)の全単量体単位中における、共役ジエン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常、10質量%~95質量%の範囲内で選択され、好ましくは40質量%~90質量%の範囲内で選択される。ブロック共重合体(A)中における共役ジエン単量体単位の含有量が上記範囲にあれば、耐疲労性と耐衝撃性を高いレベルで両立することができる。なお、ブロック共重合体(A)中の共役ジエン量体単位の含有量は、 H-NMRを用いて測定することができる。
 また、共役ジエン重合体ブロックのビニル結合含有量(共役ジエン重合体ブロック中の全共役ジエン単量体単位において、1,2-ビニル結合と3,4-ビニル結合が占める割合)は、特に限定されないが、0.1~50モル%の範囲内であることが好ましく、1~30モル%の範囲内であることがより好ましく、3~10モル%の範囲内であることが特に好ましい。なお、共役ジエン重合体ブロックのビニル結合含有量は、H-NMRを用いて測定することができる。
 ブロック共重合体(A)は、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するものであれば、各重合体ブロックの数やそれらの結合形態は特に限定されない。
 ブロック共重合体(A)の形態の具体例としては、Arが芳香族ビニル重合体ブロックを表し、Dが共役ジエン重合体ブロックを表し、Xが単結合またはカップリング剤の残基を表し、nが2以上の整数を表すものとした場合において、Ar-Dとして表される芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体、Ar-D-Arまたは(Ar-D)-Xとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体、D-Ar-Dまたは(D-Ar)-Xとして表される共役ジエン-芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体、Ar-D-Ar-Dとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体、およびこれらの2種以上を任意の組み合わせで混合してなるブロック共重合体の混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。中でも、ブロック共重合体(A)としては、Ar-D-Arまたは(Ar-D)-Xとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体が好適である。
 上記の具体例において、カップリング剤としては、たとえば、ケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を1分子あたり2個以上有するアルコキシシラン化合物を用いることができる。アルコキシシラン化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリフェノキシシランなどのモノアルキルトリアルコキシシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラトルイロキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、アリルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどのアルケニルアルコシキシシラン化合物;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシランなどのアリールアルコキシシラン化合物;トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリプロポキシクロロシラン、トリブトキシクロロシラン、トリフェノキシクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン、ジフェノキシジクロロシラン、メトキシトリクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、プロポキシトリクロロシラン、フェノキシトリクロロシラン、トリメトキシブロモシラン、トリエトキシブロモシラン、トリプロポキシブロモシラン、トリフェノキシブロモシラン、ジメトキシジブロモシラン、ジエトキシジブロモシラン、ジフェノキシジブロモシラン、メトキシトリブロモシラン、エトキシトリブロモシラン、プロポキシトリブロモシラン、フェノキシトリブロモシラン、トリメトキシヨードシラン、トリエトキシヨードシラン、トリプロポキシヨードシラン、トリフェノキシヨードシラン、ジメトキシジヨードシラン、ジエトキシジヨードシラン、ジプロポキシヨードシラン、メトキシトリヨードシラン、エトキシトリヨードシラン、プロポキシトリヨードシラン、フェノキシトリヨードシランなどのハロゲノアルコキシシラン化合物;β-クロロエチルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシランなどのハロゲノアルキルアルコキシシラン化合物;ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)エタンなどが挙げられる。
 これらの中でも、重合体の活性末端と反応する官能基がアルコキシ基のみであるアルコキシシラン化合物が好ましく用いられる。具体的には、ジアルキルジアルコキシシラン化合物、モノアルキルトリアルコキシシラン化合物、またはテトラアルコキシシラン化合物がより好ましく用いられ、テトラアルコキシシラン化合物が特に好ましく用いられる。このようなアルコキシシラン化合物をカップリング剤として用いることにより、耐疲労性と耐衝撃性を高いレベルで両立することができる。
 また、カップリング剤としては、たとえば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等の2官能性ハロゲン化シラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタン等の2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズ等の2官能性ハロゲン化スズ;等を用いることもできる。
 これらのカップリング剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
 ブロック共重合体(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常、30,000~500,000、好ましくは60,000~470,000であることが好ましく、90,000~450,000であることがより好ましい。
 また、ブロック共重合体(A)の各重合体ブロックの重量平均分子量も特に限定されない。芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000の範囲内であり、より好ましくは6,000~20,000の範囲内である。また、共役ジエン重合体ブロックの重量平均分子量は、好ましくは10,000~500,000の範囲内であり、より好ましくは40,000~400,000範囲内である。共役ジエン重合体ブロックの重量平均分子量が上記範囲にあれば、耐疲労性と耐衝撃性を高いレベルで両立することができる。
 ブロック共重合体(A)、およびブロック共重合体(A)を構成する各重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布も、特に限定されないが、それぞれ、通常1.8以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下である。ブロック共重合体(A)、およびブロック共重合体(A)を構成する各重合体ブロックの分子量分布が上述の範囲にあれば、耐疲労性と耐衝撃性を高いレベルで両立することができる。
 なお、ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、および数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とする高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
 ブロック共重合体(A)のメルトインデックスは、特に限定されないが、ASTM D-1238(G条件、200℃、5kg)に準拠して測定される値として、通常1~1000g/10分であり、3~700g/10分であることが好ましく、5~500g/10分であることがより好ましい。
 ブロック共重合体(A)は、常法に従って製造することが可能である。なお、ブロック共重合体(A)の製造方法については、後述する。
 また、本発明では、ブロック共重合体(A)として、市販のブロック共重合体を用いることも可能である。たとえば、「クインタック(登録商標)」(日本ゼオン社製)、「JSR-SIS(登録商標)」(JSR社製)、「Vector(登録商標)」(DEXCO polymers社製)、「アサプレン(登録商標)」(旭化成ケミカルズ社製)、「タフプレン(登録商標)」(旭化成ケミカルズ社製)、「タフテック(登録商標)」(旭化成ケミカルズ社製)、「セプトン(登録商標)」(クラレ社製)、「Kraton(登録商標)」(Kraton JSR Elastomers社製)等を使用することができる。
(ブロック共重合体(B))
 ブロック共重合体(B)は、上述したブロック共重合体(A)に非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるものである。
 本発明で用いるブロック共重合体組成物によれば、ブロック共重合体(B)が非共有結合性の結合可能な官能基(共有結合以外の物理的な結合を形成可能な官能基)を有することにより、非共有結合性の結合可能な官能基によって、ポリマー鎖間で非共有結合(共有結合以外の物理的な結合)を形成することで、擬似架橋を形成することができるものである。特に、非共有結合は解離したり再結合したりすることが可能であるため、本発明で用いるブロック共重合体組成物は、従来のブロック共重合体組成物とは異なる特性を実現することが可能である。具体的には、本発明で用いるブロック共重合体組成物は、高温ではブロック共重合体中の芳香族ビニル重合体ブロックが溶融し流動性を示すが、室温ではブロック共重合体中の芳香族ビニル重合体ブロックがガラス化し物理的架橋点となり弾性を示す。そして、このような状況において、非共有結合性の結合可能な官能基により形成される非共有結合は、ブロック共重合体中の芳香族ビニル重合体ブロックによる物理的架橋点とともに、非共有結合性の架橋点として働くため、ブロック共重合体組成物の弾性を維持あるいは向上させることができるものである。その一方で、応力やひずみを加えた際は、原理的には非共有結合性の架橋点が増えた分だけ応力を分散させることができ、また、非共有結合性の結合可能な官能基が組み替わることで応力が緩和され、物理的架橋点を保護することができる。すなわち、応力緩和が生じても物理的架橋点が維持されるため、破断を抑制しながら、優れた耐疲労性を実現できるものである。加えて、本発明で用いるブロック共重合体組成物によれば、高い衝撃を与えた際には、非共有結合性の結合可能な官能基により形成される非共有結合が解離することで、衝撃エネルギーを分散することができ、これにより、破断を抑制しながら、優れた衝撃吸収性を発揮し、高い耐衝撃性を実現できるものである。
 また、本発明においては、ブロック共重合体(B)はブロック共重合体(A)に、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるものであるため、芳香族ビニル重合体ブロックおよび共役ジエン重合体ブロックを有するブロック共重合体が備える引張強度を維持することができる。その一方で、非共有結合性の結合可能な官能基を有するモノマーを共重合してブロック共重合体(B)を得ようとしても大量合成することは容易ではなく、十分な量の所望のブロック共重合体を得ることは困難である。
 非共有結合性の結合可能な官能基としては、水素結合可能な官能基、配位結合可能な官能基、イオン結合可能な官能基等が挙げられる。これらのなかでも、水素結合可能な官能基であることが好ましい。水素結合は、結合一つあたりの会合力が適度であり(つまり結合力が弱く、もしくは緩和時間が短く)、再配列が可能だからである。
 非共有結合性の結合可能な官能基としては、たとえば、アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルボキシル基またはその塩、ヒドロキシル基またはその塩を挙げることができる。
 また、水素結合可能な官能基としては、アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルボキシル基、およびヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
 ブロック共重合体(B)は非共有結合性の結合可能な官能基を有していればよく、非共有結合性の結合可能な官能基は、たとえば、ブロック共重合体に直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。
 ブロック共重合体(B)は、ブロック共重合体(A)に非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるものである。非共有結合性の結合可能な官能基の導入方法としては、ブロック共重合体(A)に対して、非共有結合性の結合可能な官能基を導入できる方法であればよく、たとえば、変性剤による変性方法、アルケンの官能基変換反応を用いる方法等が挙げられる。中でも、変性剤による変性方法が好ましい。すなわち、非共有結合性の結合可能な官能基は、変性剤の残基を含むことが好ましい。
 また、変性剤による変性方法を用いる場合、変性剤による変性によって非共有結合性の結合可能な官能基を導入してもよく、変性剤による変性後、さらに反応させることによって非共有結合性の結合可能な官能基を導入してもよい。
 なお、「変性剤の残基」とは、変性剤がブロック共重合体(A)と反応した際に生じる反応生成物において、あるいは変性剤がブロック共重合体(A)と反応し、さらに他の化合物と反応した際に生じる反応生成物において、変性剤に由来する部分をいう。
 変性剤としては、たとえば、酸変性剤を挙げることができる。また、酸変性剤としては、たとえば、不飽和カルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物などを挙げることができる。中でも、反応の容易さ、経済性等の面から、不飽和ジカルボン酸無水物が好ましい。なお、不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物については後述する。
 酸変性剤が不飽和カルボン酸である場合、変性反応を行うことにより、ブロック共重合体(A)には、不飽和カルボン酸に由来するカルボキシル基が導入される。なお、カルボキシル基は、非共有結合性の結合可能な官能基に該当するものであるが、酸変性剤としての不飽和カルボン酸による変性を行った後、さらに反応させることにより、カルボキシル基を、別の非共有結合性の結合可能な官能基とすることができる。
 また、酸変性剤が不飽和ジカルボン酸無水物である場合、変性反応を行うことにより、ブロック共重合体(A)には、不飽和ジカルボン酸無水物に由来する酸無水物基が導入される。なお、酸変性剤が不飽和ジカルボン酸無水物である場合には、酸変性剤による変性を行った後、さらに反応させることにより、非共有結合性の結合可能な官能基とすることができる。具体的には、塩基処理によって、酸無水物基を塩基と反応させる、あるいは酸無水物基を塩基により加水分解することにより、非共有結合性の結合可能な官能基とすることができる。
 中でも、非共有結合性の結合可能な官能基の導入方法は、酸変性剤による変性後、さらに塩基処理することによって非共有結合性の結合可能な官能基を導入する方法であることが好ましい。すなわち、ブロック共重合体(B)は、ブロック共重合体(A)を酸変性することにより得られる変性ブロック共重合体(C)を、さらに塩基処理したものであることが好ましい。より具体的には、非共有結合性の結合可能な官能基は、ブロック共重合体(A)に導入されたカルボキシル基または酸無水物基と塩基とを反応させてなる基であることが好ましい。あるいは、非共有結合性の結合可能な官能基は、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基を塩基により加水分解してなる基であることが好ましい。特に、非共有結合性の結合可能な官能基は、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基と塩基とを反応させてなる基であることが好ましい。なお、このような非共有結合性の結合可能な官能基の導入方法については、後述する。
 また、非共有結合性の結合可能な官能基が、ブロック共重合体(A)に導入されたカルボキシル基または酸無水物基と塩基とを反応させてなる基である場合、ブロック共重合体(A)に導入されたカルボキシル基または酸無水物基は少なくとも一部が塩基と反応すればよく、カルボキシル基または酸無水物基の一部が塩基と反応してもよく、カルボキシル基または酸無水物基の全部が塩基と反応してもよい。すなわち、ブロック共重合体(B)は、ブロック共重合体(A)に導入されたカルボキシル基または酸無水物基と塩基とを反応させてなる基と、ブロック共重合体(A)に導入されたカルボキシル基または酸無水物基との両方を有していてもよい。
 また、非共有結合性の結合可能な官能基が、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基を塩基により加水分解してなる基である場合、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基は少なくとも一部が加水分解されればよく、酸無水物基の一部が加水分解されてもよく、酸無水物基の全部が加水分解されてもよい。すなわち、ブロック共重合体(B)は、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基を塩基により加水分解してなる基と、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基との両方を有していてもよい。
 カルボキシル基または酸無水物基と塩基とを反応させてなる基としては、具体的にはアミド基、カルボキシル基の金属塩などが挙げられる。また、酸無水物基を塩基により加水分解してなる基としては、具体的にはカルボキシル基などが挙げられる。
 このように、非共有結合性の結合可能な官能基は、酸変性剤の残基を有することが好ましく、具体的には不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物の残基を有することが好ましく、不飽和ジカルボン酸無水物の残基を有することがより好ましい。
 不飽和カルボン酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の炭素数8以下のエチレン性不飽和カルボン酸、および3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸のような共役ジエンと炭素数8以下のα,β-不飽和ジカルボン酸とのディールス・アルダー付加物が挙げられる。
 不飽和ジカルボン酸無水物としては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の炭素数8以下のα,β-不飽和ジカルボン酸無水物、および3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸のような共役ジエンと炭素数8以下のα,β-不飽和ジカルボン酸無水物とのディールス・アルダー付加物が挙げられる。
 反応の容易さや、経済性等の観点より、不飽和ジカルボン酸無水物が好ましく、炭素数8以下のα,β-不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
 非共有結合性の結合可能な官能基は、1種または2種以上の不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物の残基から構成されていてもよい。
 また、上記塩基としては、カルボキシル基または酸無水物基と反応して非共有結合性の結合可能な官能基を生成できるもの、あるいは酸無水物基を加水分解できるものであればよく、たとえば、アルカリ金属含有化合物、アルカリ土類金属含有化合物、アンモニアおよびアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。アルカリ金属含有化合物としては、たとえば、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。アルカリ土類金属含有化合物としては、たとえば、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。アミン化合物は、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物及び第3級アミン化合物のいずれであってもよい。また、アミン化合物は、モノアミンであってもよく、ジアミンであってもよいが、入手が容易であることから、モノアミンが好ましく用いられる。アミン化合物としては、たとえば、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン等が挙げられる。中でも、脂肪族アミンが好ましく、特に、炭素数1~12のアルキルアミンが好ましく、炭素数2、4または6のアルキルアミンがより好ましい。
 中でも、塩基は、アンモニア、第1級アミン化合物及び第2級アミン化合物からなる群から選択される1種であることが好ましい。これらは、カルボキシル基または酸無水物基と反応してアミド基を生成することができる。
 あるいは、非共有結合性の結合可能な官能基としては、イオン性基であることも好ましい。ここで、「イオン性基」とは、イオン性相互作用が生じ得る官能基であり、イオン結合可能な官能基をいう。
 非共有結合性の結合の中でも、イオン性相互作用は結合力が強いことから、ブロック共重合体(B)が非共有結合性の結合可能な官能基としてイオン性基を有することにより、非共有結合性の結合可能な官能基による効果をより効果的に発揮することができる。
 さらには、イオン性基の場合、非共有結合性の結合可能な官能基としての効果をより効果的に発揮することができることから、イオン性基の導入率が比較的少ない場合であっても、十分な効果を得ることが可能である。
 イオン性基は、ブロック共重合体(A)への導入が容易であるという観点より、アレニウス酸およびアレニウス塩基を混合し、中和することで生成するイオン性基、および/または、ブレンステッド酸およびブレンステッド塩基を混合し、中和することで生成するイオン性基であることが好ましい。
 このようなイオン性基としては、具体的には、カルボン酸の塩からなるイオン性基、リン酸の塩からなるイオン性基、スルホン酸の塩からなるイオン性基、アルコールのヒドロキシ基からプロトンを除去したアニオンが作る塩からなるイオン性基等を挙げることができる。カルボン酸、リン酸、およびスルホン酸の塩としては、たとえば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
 中でも、ブロック共重合体(A)への導入が容易であるという観点より、イオン性基は、カルボン酸の塩からなることが好ましい。カルボン酸の塩としては、中でも、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩等が好ましい。
 イオン性基の導入方法としては、ブロック共重合体(A)にイオン性基を導入できる方法であればよく、たとえば、変性剤による変性方法、アルケンの官能基変換反応を用いる方法等が挙げられる。中でも、変性剤による変性方法が好ましい。
 変性剤としては、たとえば、アレニウス酸および/またはブレンステッド酸を用いることができ、具体的には、不飽和カルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和リン酸およびその酸無水物、不飽和スルホン酸およびその酸無水物等を挙げることができる。中でも、反応の容易さや、経済性等の面から、不飽和ジカルボン酸無水物が好ましい。
 酸変性剤が、不飽和ジカルボン酸無水物である場合、ブロック共重合体(A)には不飽和ジカルボン酸無水物に由来する酸無水物基が導入される。酸変性剤が不飽和ジカルボン酸無水物である場合には、酸変性剤による変性を行った後、さらに反応させることにより、酸無水物基を上記イオン性基とすることができる。また、この場合、酸変性剤による変性を行った後、さらに反応させることにより、酸無水物基を非イオン性の非共有結合性の結合可能な官能基とし、またさらに反応させることにより、上記イオン性基とすることができる。具体的には、塩基処理によって、酸無水物基を塩基と反応させることにより、酸無水物基をアミド基およびカルボキシル基とし、さらなる塩基処理によって、カルボキシル基を塩基と反応させることにより、カルボキシル基をカルボン酸の塩とすることができる。また、酸無水物基を加水分解することにより、酸無水物基をカルボキシル基とし、さらに塩基処理によって、カルボキシル基を塩基と反応させることにより、カルボキシル基をカルボン酸の塩とすることができる。
 本発明においては、上記イオン性基は、ブロック共重合体(A)に導入されたアレニウス酸に由来する酸性基とアレニウス塩基とを反応させてなる基、および/または、ブロック共重合体(A)に導入されたブレンステッド酸に由来する酸性基とブレンステッド塩基とを反応させてなる基であることが好ましい。
 アレニウス酸および/またはブレンステッド酸に由来する酸性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基等が挙げられる。また、アレニウス塩基および/またはブレンステッド塩基としては、金属含有化合物、アンモニウム、アミン化合物、ピリジン、イミダゾール等が挙げられる。
 具体的には、上記イオン性基は、ブロック共重合体(A)に導入されたカルボキシル基と第1塩基とを反応させてなる基、あるいは、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基と第2塩基とを反応させることにより形成されるカルボキシル基をさらに第3塩基と反応させてなる基、あるいは、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基を加水分解することにより形成されるカルボキシル基をさらに第4塩基と反応させてなる基のいずれかであることが好ましい。特に、上記イオン性基は、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基と第2塩基とを反応させることにより形成されるカルボキシル基をさらに第3塩基と反応させてなる基であることが好ましい。この場合、ブロック共重合体(B)を、非共有結合性の結合可能な官能基として、イオン性基、および、非イオン性の非共有結合性の結合可能な官能基を有するものとすることができ、特に、ブロック共重合体(B)を、イオン性基および水素結合可能な官能基を有することができる。なお、カルボキシル基と第1塩基、第3塩基または第4塩基とを反応させてなる基としては、具体的には、カルボン酸の塩が挙げられる。また、酸無水物基と第2塩基とを反応させてなる基としては、具体的には、アミド基、カルボキシル基が挙げられる。酸無水物基を加水分解してなる基としては、具体的にはカルボキシル基が挙げられる。
 また、上記イオン性基が、ブロック共重合体(A)に導入されたカルボキシル基と第1塩基とを反応させてなる基である場合、ブロック共重合体(A)に導入されたカルボキシル基のうち少なくとも一部を第1塩基と反応させればよく、カルボキシル基の一部が第1塩基と反応してもよく、カルボキシル基の全部が第1塩基と反応してもよい。すなわち、ブロック共重合体(B)は、ブロック共重合体(A)に導入されたカルボキシル基と第1塩基とを反応させてなる基と、ブロック共重合体(A)に導入されたカルボキシル基との両方を有していてもよい。
 また、上記イオン性基が、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基と第2塩基とを反応させることにより形成されるカルボキシル基をさらに第3塩基と反応させてなる基である場合、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基は少なくとも一部が第2塩基と反応すればよく、酸無水物基の一部が第2塩基と反応してもよく、酸無水物基の全部が第2塩基と反応してもよい。同様に、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基と第2塩基とを反応させることにより形成されるカルボキシル基は少なくとも一部が第3塩基と反応すればよく、カルボキシル基の一部が第3塩基と反応してもよく、カルボキシル基の全部が第3塩基と反応してもよい。すなわち、ブロック共重合体(B)は、たとえば、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基と第2塩基とを反応させることにより形成されるカルボキシル基をさらに第3塩基と反応させてなる基と、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基と、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基と第2塩基とを反応させてなる基とを有していてもよい。
 また、上記イオン性基が、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基を加水分解させることにより形成されるカルボキシル基をさらに第4塩基と反応させてなる基である場合、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基は少なくとも一部が加水分解されればよく、酸無水物基の一部が加水分解されてもよく、酸無水物基の全部が加水分解されてもよい。同様に、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基を加水分解させることにより形成されるカルボキシル基は少なくとも一部が第4塩基と反応すればよく、カルボキシル基の一部が第4塩基と反応してもよく、カルボキシル基の全部が第4塩基と反応してもよい。すなわち、ブロック共重合体(B)は、例えば、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基を加水分解してなるカルボキシル基をさらに第4塩基と反応させてなる基と、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基と、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基を加水分解してなる基とを有していてもよい。
 上記イオン性基を導入するために用いられる、アレニウス酸および/またはブレンステッド酸としての、不飽和カルボン酸、および不飽和ジカルボン酸無水物としては上述したものが挙げられる。反応の容易さや、経済性等の面では、不飽和ジカルボン酸無水物が好ましく、炭素数8以下のα,β-不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
 また、上記第1塩基、第3塩基および第4塩基としては、カルボキシル基と反応して上記イオン性基を生成できるものであればよく、アレニウス塩基および/またはブレンステッド塩基を用いることができ、たとえば、金属含有化合物、アンモニア、アミン化合物、ピリジン、イミダゾールを挙げることができる。
 中でも、第1塩基、第3塩基および第4塩基としては、安定して上記イオン性基を生成することができるという観点より、アルカリ金属含有化合物およびアルカリ土類金属含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。アルカリ金属含有化合物としては、たとえば、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属のアルコキシド、酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。アルカリ土類金属含有化合物としては、たとえば、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のアルコキシド、酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
 また、第2塩基としては、酸無水物基と反応してカルボキシル基を生成できるものであればよく、たとえば、アンモニアおよびアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。アミン化合物は、第1級アミン化合物及び第2級アミン化合物のいずれであってもよい。また、アミン化合物は、モノアミンであってもよく、ジアミンであってもよいが、入手が容易であることから、モノアミンが好ましく用いられる。アミン化合物としては、たとえば、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン等が挙げられる。中でも、脂肪族アミンが好ましく、特に、炭素数1~12のアルキルアミンが好ましく、炭素数2、4または6のアルキルアミンがより好ましい。
 中でも、上記第2塩基としては、酸無水物基と反応してアミド基を生成することができるという観点より、アンモニア、第1級アミン化合物および第2級アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
 また、上記イオン性基としては、ブロック共重合体(A)に導入された酸無水物基とアミン化合物とを反応させることにより形成されるカルボキシル基をさらに第3塩基と反応させてなる基であることが好ましい。この場合には、酸無水物基とアミン化合物とが反応することにより、カルボキシル基およびアミド基を生成し、カルボキシル基が第3塩基と反応することで、カルボン酸の塩が生成することとなる。すなわち、ブロック共重合体(B)を、非共有結合性の結合可能な官能基として、イオン性基であるカルボン酸の塩と、非イオン性の非共有結合性の結合可能な官能基であり水素結合可能な官能基であるアミド基とを有するものとすることができる。
 ブロック共重合体(B)における非共有結合性の結合可能な官能基の導入率は、特に限定されないが、ブロック共重合体(B)中の共役ジエン単量体単位100モル%中に、0.1モル%以上75モル%以下の範囲内とすることができ、好ましくは0.5モル%以上50モル%以下の範囲内であり、さらにより好ましくは3モル%以上、17.5モル%以下の範囲内である。非共有結合性の結合可能な官能基の導入率を上記範囲とすることにより、非共有結合性の結合可能な官能基の再配列が生じる前に物理的架橋点に応力が集中してしまい、これにより、破断を生じやすくなってしまうことを有効に防止しながら、非共有結合性の結合可能な官能基の導入効果を適切に高めることができる。なお、非共有結合性の結合可能な官能基の導入率は、H-NMRを用いて算出することができる。また、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されたことは、H-NMRおよび/または赤外分光分析により確認することができる。
 あるいは、非共有結合性の結合可能な官能基を、上記イオン性基とする場合には、イオン性基の導入率は、ブロック共重合体(B)中の共役ジエン単量体単位100モル%中に、0.1モル%~25モル%であることが好ましく、0.5モル%~15モル%であることがより好ましく、3~8.5モル%であることがさらにより好ましい。
 また、非共有結合性の結合可能な官能基を、上記イオン性基とする場合には、ブロック共重合体(B)中の非イオン性の非共有結合性の結合可能な官能基に対するイオン性基のモル比率(イオン性基/非イオン性の非共有結合性の結合可能な官能基)は、0.1/100~100/0の範囲内であることが好ましく、1/99~100/0の範囲内であることがより好ましく、20/80~80/20の範囲内であることがさらに好ましく、40/60~60/40の範囲内であることがさらにより好ましい。なお、上記モル比率は、H-NMRおよび/または赤外分光分析を用いて算出することができる。
 また、本発明で用いるブロック共重合体組成物は、たとえば、ブロック共重合体(B)の他に、ブロック共重合体(A)を含んでいてもよい。すなわち、本発明で用いるブロック共重合体組成物が、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体を2種以上含む場合、少なくとも1種のブロック共重合体が、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されたものであればよい。
 ブロック共重合体組成物中のブロック共重合体(A)の含有量は、50質量%未満であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
 また、本発明で用いるブロック共重合体組成物は、重合体成分として、実質的に、ブロック共重合体(B)のみを含有するものであるか、あるいは、重合体成分として、実質的に、ブロック共重合体(B)およびブロック共重合体(A)のみを含有するものであることが好ましい。
<ブロック共重合体組成物の製造方法>
 本発明で用いるブロック共重合体組成物の製造方法としては、ブロック共重合体(A)に酸変性剤を反応させ、酸変性剤に由来する酸性基が導入されたブロック共重合体(C)を得る第1工程と、上記ブロック共重合体(C)を塩基処理し、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されたブロック共重合体(B)を得る第2工程とを有する製造方法が好適である。 
 以下、酸変性剤として不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物を用いる場合について、例を挙げて説明する。 
 すなわち、本発明で用いるブロック共重合体組成物の製造方法は、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体(A)に、不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物を反応させ、カルボキシル基または酸無水物基が導入された変性ブロック共重合体(C)を得る第1工程と、上記変性ブロック共重合体(C)を塩基処理し、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されたブロック共重合体(B)を得る第2工程とを有する、製造方法である。 
 第1工程に供されるブロック共重合体(A)は、常法に従って製造することが可能である。ラジカルリビング重合やカチオンリビング重合、開環メタセシス重合等を用いてもよいが、最も一般的な製造法としては、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とをそれぞれ逐次的に重合して重合体ブロックを形成し、必要に応じて、カップリング剤を反応させてカップリングを行う方法を挙げることができる。 
 また、ブロック共重合体(A)が2種以上のブロック共重合体の混合物である場合、ブロック共重合体の混合物を得る方法は特に限定されず、従来のブロック共重合体の製法に従って製造することができる。たとえば、2種以上のブロック共重合体をそれぞれ別個に製造し、必要に応じて、他の重合体成分や各種添加剤を配合した上で、それらを混練や溶液混合等の常法に従って混合することにより、製造することができる。
 ブロック共重合体の混合物を得る方法は、たとえば、芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体aを得た後、一部の芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体aの末端に芳香族ビニル重合体ブロックを結合し、芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体bを得る方法、すなわち2種のブロック共重合体を同時に調製する方法であってもよい。具体的には、国際公開第2009/123089号、特開2012-77158号公報等を参照することができる。 
 また、得られたブロック共重合体の混合物は、常法に従い、ペレット形状等に加工してから使用に供してもよい。 
 第1工程では、上記ブロック共重合体(A)に、不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物を反応させ、カルボキシル基または酸無水物基が導入された変性ブロック共重合体(C)を得る。すなわち、ブロック共重合体(A)の不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物による酸変性を行い、変性ブロック共重合体(C)を得る。なお、酸変性は1回または複数回行ってもよい。また、酸変性を複数回実施する場合、酸変性の条件は各回で同一であっても、または相異なっていてもよい。 
 酸変性反応に酸変性剤として用いられる不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物として、上述したものが挙げられる。不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物は、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。 
 不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の使用量は、ブロック共重合体(A)100質量部に対して、通常、0.01~200質量部、好ましくは0.05~100質量部である。 
 酸変性反応の反応温度は、通常、50~300℃の範囲内とすることができる。反応温度が低すぎると反応効率に劣り、変性ブロック共重合体(C)中の未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の含有量が増加するおそれがある。また、反応時間は、通常、5分~20時間の範囲内とすることができる。反応時間が短すぎると反応効率に劣り、変性ブロック共重合体(C)中の未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の含有量が増加するおそれがある。 
 また、酸変性反応の際に、必要に応じて、希釈剤、ゲル化防止剤および反応促進剤などを存在させてもよい。 
 変性ブロック共重合体(C)の酸価は、1.3~1050KOHmg/gであることが好ましく、なかでも6.5~700KOHmg/gであることが好ましい。なお、酸価は、たとえば、変性ブロック共重合体(C)についてJIS K 0070にしたがい測定した値である。 
 変性ブロック共重合体(C)におけるカルボキル基および酸無水物基の導入率は、たとえば、変性ブロック共重合体(C)中の共役ジエン単量体単位100モル%中、0.1モル%以上75モル%以下の範囲内とすることができ、好ましくは0.5モル%以上50モル%以下の範囲内である。なお、カルボキシル基および酸無水物基の導入率は、H-NMRを用いて算出することができる。また、カルボキシル基および酸無水物基が導入されたことは、H-NMRおよび/または赤外分光分析により確認することができる。 
 酸変性反応後は、未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物を除去することが好ましい。 
 第2工程では、上記変性ブロック共重合体(C)を塩基処理し、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されたブロック共重合体(B)を得る。なお、塩基処理は1回または複数回行ってもよい。また、塩基処理を複数回実施する場合、塩基処理の条件は各回で同一であっても、または相異なっていてもよい。 
 塩基処理に使用される塩基としては、上述したものを用いることができる。塩基は、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。 
 塩基処理は、変性ブロック共重合体(C)に導入されたカルボキシル基および酸無水物基の種類、ならびに塩基の種類に応じて異なる。たとえば、カルボキシル基および酸無水物基の場合であって、塩基としてアンモニア、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物を用いる場合、塩基処理では、カルボキシル基または酸無水物基と塩基とを反応させ、非共有結合性の結合可能な官能基とすることができる。すなわち、この場合、塩基処理では、変性ブロック共重合体(C)のアミンによる変性を行うことができる。また、たとえば、酸無水物基の場合であって、塩基としてアルカリ金属含有化合物、アルカリ土類金属含有化合物、第3級アミン化合物を用いる場合、塩基処理では、酸無水物基を塩基により加水分解し、非共有結合性の結合可能な官能基とすることができる。 
 塩基の使用量は、塩基処理の種類に応じて適宜選択される。たとえば、塩基処理において、カルボキシル基または酸無水物基と塩基とを反応させる場合や、アミンによる変性を行う場合、塩基の使用量は、変性ブロック共重合体(C)に導入されたカルボキシル基または酸無水物基に対して、等モル以上とすることができ、具体的には1~2倍モル程度とすることができる。また、たとえば、塩基処理において、酸無水物基を塩基により加水分解してカルボキシル基とする場合、塩基の使用量は特に限定されないが、変性ブロック共重合体(C)に導入された酸無水物基に対して、等モル以上とすることができる。 
 塩基処理は、無溶媒で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。塩基処理を溶媒中で行う場合、溶媒としては、たとえば、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン等の炭素数1~2の脂肪族ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族環状炭化水素、ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ピロリドン、水等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。 
 塩基処理の反応温度は、変性ブロック共重合体(C)に導入されたカルボキシル基および酸無水物基の種類、ならびに塩基の種類に応じて異なるが、たとえば、0~200℃とすることができ、好ましくは10~150℃である。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなり、また高すぎると変性ブロック共重合体(C)が熱分解するおそれがある。また、反応時間は、反応温度によって異なるが、たとえば、1分間~40時間とすることができ、好ましくは3分間~2時間である。反応時間が短すぎると反応が充分に進行せず、また長すぎると反応効率に劣るおそれがある。 
 塩基処理後は、残留している塩基を除去することが好ましい。除去方法は、塩基処理や塩基の種類に応じて適宜選択され、たとえば、洗浄、中和、ろ過、乾燥等を挙げることができる。 
 あるいは、非共有結合性の結合可能な官能基として、イオン性基とする場合において、酸変性剤として、不飽和ジカルボン酸無水物を用いる場合には、たとえば、次の製造方法により、本発明で用いるブロック共重合体組成物を製造することができる。
 すなわち、ブロック共重合体(A)に、不飽和ジカルボン酸無水物を反応させ、酸無水物基が導入された変性ブロック共重合体(C’)を得る第3工程と、上記変性ブロック共重合体(C’)を塩基処理または加水分解処理し、カルボキシル基が導入された変性ブロック共重合体(C’’)を得る第4工程と、上記変性ブロック共重合体(C’’)を塩基処理し、イオン性基が導入されたブロック共重合体(B)を得る第5工程とを有する製造方法により製造することができる。
 第3工程では、上記ブロック共重合体(A)に、不飽和ジカルボン酸無水物を反応させ、酸無水物基が導入された変性ブロック共重合体(C’)を得る。すなわち、ブロック共重合体(A)の不飽和ジカルボン酸無水物による酸変性を行い、変性ブロック共重合体(C’)を得る。なお、酸変性は1回または複数回行ってもよい。また、酸変性を複数回実施する場合、酸変性の条件は各回で同一であっても、または相異なっていてもよい。 
 酸変性反応に酸変性剤として用いられる不飽和ジカルボン酸無水物については、上述した通りである。不飽和ジカルボン酸無水物は、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。 
 不飽和ジカルボン酸無水物の使用量は、ブロック共重合体(A)100質量部に対して、通常、0.01~200質量部、好ましくは0.05~100質量部である。 
 酸変性反応については、上記第1工程と同様とすることができる。また、変性ブロック共重合体(C’)の酸価は、上記した変性ブロック共重合体(C)と同様とすることができる。 
 変性ブロック共重合体(C’)における酸無水物基の導入率は、たとえば、変性ブロック共重合体(C’)中の共役ジエン単量体単位100モル%中、0.1モル%~50モル%とすることができ、好ましくは0.5モル%~25モル%以下である。酸無水物基の導入率は、H-NMRを用いて算出することができる。また、酸無水物基が導入されたことは、H-NMRおよび/または赤外分光分析により確認することができる。 
 酸変性反応後は、未反応の不飽和ジカルボン酸無水物を除去することが好ましい。 
 第4工程では、上記変性ブロック共重合体(C’)を塩基処理または加水分解処理し、カルボキシル基が導入された変性ブロック共重合体(C’’)を得る。なお、塩基処理は1回または複数回行ってもよい。また、塩基処理を複数回実施する場合、塩基処理の条件は各回で同一であっても、または相異なっていてもよい。 
 塩基処理に使用される塩基としては、上述した第2塩基を用いればよい。第2塩基は、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。 
 塩基処理では、上述した第2塩基を用いて、酸無水物基と第2塩基とを反応させ、アミド基およびカルボキシル基とすることができる。すなわち、この場合、塩基処理では、変性ブロック共重合体(C’)のアミンによる変性を行うことができる。 
 第2塩基の使用量は、塩基処理の種類に応じて適宜選択される。たとえば、アミンによる変性を行う場合、第2塩基の使用量は、変性ブロック共重合体(C’)に導入された酸無水物基に対して、等モル以下でよく、具体的には0.01~1倍モル程度とすることができる。 
 塩基処理は、無溶媒で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。塩基処理を溶媒中で行う場合、溶媒としては、たとえば、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン等の炭素数1~2の脂肪族ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族環状炭化水素、ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ピロリドン、水等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。 
 また、加水分解処理では、酸無水物基を加水分解し、カルボキシル基とすることができる。 
 加水分解処理では、塩基性条件で加水分解を行ってもよい。塩基性条件とする場合、使用される塩基としては、たとえば、アルカリ金属含有化合物、アルカリ土類金属含有化合物及び第3級アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。アルカリ金属含有化合物としては、たとえば、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。アルカリ土類金属含有化合物としては、たとえば、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。 
 上記塩基の使用量は、特に限定されないが、たとえば、変性ブロック共重合体(C’)に導入された酸無水物基に対して、等モル以下とすることができる。 
 塩基処理および加水分解処理の反応温度は、変性ブロック共重合体(C’)に導入された酸無水物基の種類および第2塩基の種類に応じて異なるが、たとえば、0~200℃とすることができ、好ましくは10~150℃である。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなり、また高すぎると変性ブロック共重合体(C’)が熱分解するおそれがある。また、反応時間は、反応温度によって異なるが、たとえば、1分間~40時間とすることができ、好ましくは3分間~2時間である。反応時間が短すぎると反応が充分に進行せず、また長すぎると反応効率に劣るおそれがある。 
 塩基処理および加水分解処理後は、残留している第2塩基および上記塩基を除去することが好ましい。除去方法は、塩基処理や第2塩基および上記塩基の種類に応じて適宜選択され、たとえば、洗浄、中和、ろ過、乾燥等を挙げることができる。 
 第5工程では、上記変性ブロック共重合体(C’’)を塩基処理し、イオン性基が導入されたブロック共重合体(B)を得る。なお、第5工程については、上記した第2工程と同様とすることができる。 
<耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物>
 本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物は、上述したブロック共重合体組成物を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、耐衝撃材料用途として用いられるものである。
 本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物は、上述したブロック共重合体組成物のみを含有するものであってもよいが、耐衝撃性をより向上させることができるという点より、ブロック共重合体組成物を構成する重合体以外の他の重合体を含有するものであることが好ましい。
 このような他の重合体としては、特に限定されないが、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリスチレン系樹脂、スチレン-マレイミド系共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド-メタクリル酸メチル共重合体、ゴム強化耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ABS系共重合体樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐衝撃性の向上効果が高いという観点より、アクリル重合体、ポリカーボネート樹脂、およびポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)から選択される少なくとも1種が好ましい。他の重合体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
 本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物中における、他の重合体の含有量は、特に限定されないが、ブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体(A)とブロック共重合体(B)との合計の含有量に対し、「ブロック共重合体(A)とブロック共重合体(B)との合計:他の重合体」の質量比率で、好ましくは80:20~100:0、より好ましくは90:10~100:0、さらに好ましくは95:5~100:0、さらにより好ましくは95:5~99:1である。他の重合体の含有量を上記範囲とすることにより、耐衝撃性の向上効果をより高めることができる。
 また、本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じポリエチレンワックスを含有していてもよい。ポリエチレンワックスは、エチレン単量体単位を主たる構成単位とするワックスである。本発明で用いられるポリエチレンワックスは、特に限定されるものではないが、140℃における粘度が20~6,000mPa・sであるものが好ましく用いられる。 
 ポリエチレンワックスは、一般的に、エチレンの重合またはポリエチレンの分解により製造されるが、本発明では、どちらのポリエチレンワックスを用いてもよい。また、ポリエチレンワックスは市販品を入手可能であり、その具体例としては、「A-C ポリエチレン」(Honeywell社製)、「三井ハイワックス」(三井化学社製)、「サンワックス」(三洋化成工業社製)、「エポレン」(Eastman Chemical社製)を挙げることができる。なお、これらのワックスは変性されたもの(官能基化されたもの)であってもよい。 
 本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じ酸化防止剤を含有することができる。その種類は特に限定されず、たとえば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等のヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオプロピオネート等のチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト等の亜燐酸塩類;を使用することができる。酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 
 酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物中の重合体成分100質量部当り、通常10質量部以下であり、好ましくは0.01~5質量部である。 
 また、本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物には、さらに、必要に応じて、粘着付与樹脂、軟化剤、抗菌剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、脂肪酸モノアミドおよびポリエチレンワックス以外の滑剤等を添加することができる。 
 本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物を得るにあたり、ブロック共重合体組成物と、上述した他の重合体などのその他の成分とを混合する方法は特に限定されない。たとえば、それぞれの成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱等により除去する方法、各成分をスクリュー押出機やニーダー等で溶融混合する方法を挙げることができる。これらの中でも、混合をより効率的に行う観点からは、溶融混合が好適である。なお、溶融混合を行う際の温度は、特に限定されるものではないが、通常100~200℃の範囲内である。 
 本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物は、引張強度、低伸長速度での引張強度、および耐疲労性に優れ、しかも、耐衝撃性にも優れるものである。たとえば、本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物は、実施例に記載の条件により、2.4Jの衝撃エネルギーを与えた場合でも、破壊されないものであることが好ましく、3.6Jの衝撃エネルギーを与えた場合でも、破壊されないものであることがより好ましく、4.2Jの衝撃エネルギーを与えた場合でも、破壊されないものであることがさらに好ましく、10Jの衝撃エネルギーを与えた場合でも、破壊されないものであることが特に好ましい。そのため、本発明の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物は、耐衝撃性が要求される耐衝撃材料として好適に用いられる。このような耐衝撃材料としては、たとえば、自動車用材料(バンパー、インパネ、ボデーパネル等)、家電用品、事務機器用材料、包装材料、住宅関連材料、工具、医療用品、雑貨、日用品等を始めとする種々の耐衝撃性が要求される用途に好適に用いることができる。
 以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
[実施例1]
 実施例1では、ベースポリマーとなるブロック共重合体組成物として、Quintac(登録商標)3440(日本ゼオン社製、ポリスチレン-ポリイソプレンブロック共重合体組成物)を使用し、下記に示す反応式にしたがって、無水マレイン酸との付加反応を行って、無水コハク酸ユニットを導入し(導入率7.8モル%)、その後、アミンによる変性処理を行うことで、非共有結合性の結合可能な官能基(非共有結合性の結合可能な官能基としては、カルボキシ基およびアミド基)が導入されたブロック共重合体組成物を合成し、力学特性を評価した。なお、Quintac3440は、主成分がポリスチレン-b-ポリイソプレン-b-ポリスチレントリブロック共重合体である、ポリスチレン-ポリイソプレンブロック共重合体組成物である。以下に具体的な手順を示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
[1-1]第1工程(無水コハク酸ユニットの導入)
 ベースポリマーとしてのブロック共重合体組成物(Quintac 3440)と、無水マレイン酸と、老化防止剤としてのN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン(以下、「6PPD」と称することとする。)を、それぞれ300g、112.5g、0.5gずつ秤り取り、予めマントルヒーターで加熱した圧力容器(内部温度72℃)に入れ、メカニカルスターラー付きのふたで容器を閉じた。溶媒のシクロヘキサン900gを窒素ガスでの圧送によって圧力容器内に移した。50rpmで撹拌しながら圧力容器内部の温度が約180℃となるようにマントルヒーターの温度を設定した。1.75時間後、内部温度が175℃、内圧が1MPaになってから1.5時間反応を行い、その後、圧力容器を氷浴で冷却することで反応を停止した。圧力容器の内部温度が約50℃まで低下したところで容器内の窒素をパージし、少量の反応溶液を分析用に取り出した。
 分析用に取り出した少量の溶液にトルエンを添加し、その溶液をアセトニトリル中に滴下することで、再沈殿により無水コハク酸変性ブロック共重合体組成物(無水コハク酸ユニットが導入されたブロック共重合体組成物)を析出させた。得られた無水コハク酸変性ブロック共重合体組成物をデカンテーションによって分離し、真空乾燥によって十分に乾燥させ、再びトルエン中に溶解させ、アセトニトリル中に滴下して、無水コハク酸変性ブロック共重合体組成物を析出させた。同様に、得られた無水コハク酸変性ブロック共重合体組成物をデカンテーションによって分離し、真空乾燥によって十分に乾燥させた。この工程によって未反応の無水マレイン酸および溶媒のシクロヘキサンを除去した。プロトン核磁気共鳴分光(H-NMR)法により、得られた無水コハク酸変性ブロック共重合体組成物中のポリイソプレンブロックへの無水コハク酸ユニットの導入率(反応率)を測定したところ、無水コハク酸ユニットの導入率は、7.8モル%であった。また、無水コハク酸による変性前後のブロック共重合体組成物をテトラヒドロフラン(以下、「THF」と称することとする。)に溶解して約0.1%の溶液を調製し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により高分子の分解等が生じているかを確認したところ、無水コハク酸変性前のブロック共重合体組成物(Quintac3440)では、トリブロック共重合体に由来するピークのみが見られ、無水コハク酸変性後では変性前のトリブロック共重合体に由来するピーク位置からやや低溶出時間にシフトしたピークが見られ、反応中にトリブロック共重合体の分解はほとんど生じていなかった。ピークシフトは無水コハク酸変性による無水コハク酸ユニットの導入によって見かけの分子量が大きくなったためと考えられる。
[1-2]第2工程(アミン添加)
 第1工程で得られた反応溶液中には、無水コハク酸変性ブロック共重合体組成物と、未反応の無水マレイン酸とが含まれ、これらの酸無水物は反応性が高く、モノアミン化合物と反応してカルボキシ基とアミド基になると考えられる。第1工程で得られた反応溶液に、使用した無水マレイン酸とほぼ等モル量のn-ブチルアミン(84g)を添加し、50℃、300rpmで一晩撹拌することで反応を行った。窒素ガスでの圧送によって反応溶液を取り出し、風乾によって溶媒のシクロヘキサンを蒸発させた。得られた粗生成物を、-85℃の冷凍庫中に保管した。次いで、粗生成物のうち、30gをTHF450mLに溶解し、2200mLのメタノールに滴下することで、再沈殿により非共有結合性の結合可能な官能基(カルボキシ基およびアミド基)が導入されたブロック共重合体組成物(アミン変性ブロック共重合体組成物)を析出させた。得られたアミン変性ブロック共重合体組成物をデカンテーションによって分離し、真空乾燥によって十分に乾燥させた。再び同じ操作を行い、未反応の無水マレイン酸とn-ブチルアミンの反応によって生じた不純物や溶媒のシクロヘキサンを除去した。精製後の試料8.00gをTHF80.0gに溶かして溶液を調製し、さらに老化防止剤としてIrgafos(登録商標)168(BASF社製)とIrganox(登録商標)565(BASF社製)とを、得られたアミン変性ブロック共重合体組成物に対して、それぞれ、0.1%、0.07%ずつ添加し、溶解させた。その後、ポリパーフルオロアルコキシアルカン(以下、「PFA」と称することとする。)製の容器(内寸法128×94×23mm)に、得られた溶液を移し、45℃のホットプレート上で1.5日間静置させることでTHF溶媒を揮発させた。その後、真空乾燥器を用いて約1日間乾燥させることで溶媒を完全に除去し、アミン変性ブロック共重合体組成物の膜を得た。
 得られたアミン変性ブロック共重合体組成物の膜を、重クロロホルムに溶解して約2%の溶液を調製し、H-NMR測定を行ったところ、3.0~3.3ppmにアミド基の窒素原子に隣接するメチレン基のプロトンに由来するピーク強度が見られたことからアミン変性が行われたことを確認した。
[2-1]引張試験
 単純な引張特性とその初期歪み速度依存性を評価するために、一軸引張試験を行った。具体的には、得られた膜状のアミン変性ブロック共重合体組成物試料を日本工業規格JIS K6251:2017に記載されているダンベル状7号形(国際標準化機構ISO37:2017におけるType 4に相当)に対応する打抜き刃型で打ち抜き、試験片を調製した。試験片の厚さは約0.5mmであった。測定装置は島津製作所製のAGS-X、50Nロードセル、空気式平面形つかみ具を用い、つかみ具の空気圧0.45MPa、室温、つかみ具間距離10.1mm、初期歪み速度1.0/s(引張速度10mm/s)にて引張試験を行った。引張試験の結果である応力-歪み曲線を図1に実線で示す。ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値(材料の丈夫さの指標)はそれぞれ、1.3MPa、17.0MPa、3170%、174MJ/mであった。なお、ヤング率は応力-ひずみ曲線の初期勾配(ひずみ10%以内)、最大応力は応力の最大値、破断伸びは破断が生じたときの伸びより求めた。同様にして、初期歪み速度0.10/s(引張速度1.0mm/s)にて引張試験を行ったところ、図1の破線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、1.3MPa、12.2MPa、3130%、134MJ/mであった。また、初期歪み速度0.010/s(引張速度0.10mm/s)にて引張試験を行ったところ、図1の点線で示す結果が得られ、ヤング率、最大応力、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、1.3MPa、8.2MPa、3210%、110MJ/mであった。以上のように引張速度が遅くなると、引張速度に依存して引張強度に若干の減少が見られたが、破断伸びにはほとんど変化が見られなかった。なお、実施例1および後述する実施例2の引張試験の結果より、後述する実施例3~11も、同様に、破断伸びなどの引張特性に優れるものといえる。
[2-2]応力緩和試験
 一定の歪みを長時間加えたときの力学特性を評価するために応力緩和試験を行った。上記[2-1]引張試験と同様に、膜状のアミン変性ブロック共重合体組成物試料を打抜き刃型で打ち抜き、試験片を調製した。試験片の厚さは約0.57mmであった。測定装置は引張試験と同じものを用い、つかみ具の空気圧0.45MPa、室温、つかみ具間距離10.0mm、初期歪み速度1.5/s(引張速度15mm/s)、歪み1000%にて50時間、応力緩和試験を行った。その試験結果を図2に示す。歪みが1000%に達した直後の応力は2.8MPaであり、その後1分で応力は2.0MPa程度まで急激に低下した。応力は徐々に低下し、24時間経過後、50時間経過後の応力はそれぞれ1.3MPa、1.0MPaであり、50時間以内では破断は生じなかった。
[2-3]サイクル引張試験(3サイクル)
 繰り返し歪みをかけるときの非共有結合性の結合の解離・再結合の効果を評価するためにサイクル引張試験を行った。上記[2-1]引張試験と同様に試験片を調製し、同じ測定装置を使用した。測定条件は、つかみ具の空気圧0.45MPa、室温、つかみ具間距離10.0mmとし、初期歪み速度1.5/s(引張速度15mm/s)で1000%の歪みをかけ、その後、同じ速度でもとのつかみ具間距離(0%の歪み)まで戻し、3サイクル繰り返した。図3に、サイクル引張試験における、時間に対する歪みの大きさを示すグラフを、図4に、サイクル引張試験により得られた応力-歪み曲線を示す。図4中、1サイクル目の結果を点線で、2サイクル目の結果を破線で、3サイクル目の結果を実線で、それぞれ示す。1サイクル目、2サイクル目、3サイクル目のヒステリシス面積(応力-歪み曲線で囲まれた面積)値はそれぞれ6.1MJ/m、1.6MJ/m、1.3MJ/mであった。1サイクル目のヒステリシス面積が大きかったのは水素結合の解離と、ポリスチレンドメインの再配列の影響であると思われる。2サイクル目と3サイクル目のヒステリシス面積がほとんど同じ値であったのは、サイクル中の水素結合の解離・再結合の程度がほとんど同じであるためと考えられる。
[2-4]サイクル引張試験(試験片が破断するまで)
 [2-3]サイクル試験を試験片が破断するまで繰り返すことで疲労試験を行ったところ、6140サイクル目で試験片が破断した。
[2-5]落錘衝撃試験(衝撃吸収性と耐衝撃性)
 衝撃吸収性および耐衝撃性を評価するために、落錘衝撃試験を行った。膜状のアミン変性ブロック共重合体組成物試料を適当な大きさに切り、それを重ね、窒素ガスを流しながら約2分間、120℃でホットプレスする工程を3回繰り返し、厚さ3.7mmの均一な試料を調製した。得られた試料を25mmφのポンチで打ち抜くことで落錘衝撃試験用の試験片を調製した。測定装置にはIMATEK製のIM1C-15を用い、長さ150mm、幅100mm、高さ10mmの鉄板を装置内にセットし、その上に試験片を置いて、マスキングテープで試験片を固定した。試料と接触するストライカーには直径16mmφのものを使用し、落とす錘の質量はストライカーを含めてm=2.709kgとした。試験は温度23℃、湿度50%RHで行った。錘を落とす高さhを変えることで、様々な大きさの衝撃エネルギーEを試験片に加えた。エネルギー保存則より位置エネルギーと運動エネルギーを踏まえると、加えられる衝撃エネルギーEは次の式(1)から概算できる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000002
 ここでg,Δ、vはそれぞれ重力加速度(9.81m/s)、装置中の摩擦や空気抵抗等による損失エネルギー、ストライカーと試料が衝突する直前の落下速度である。また、hは、落下させる錘の高さ(落下させる錘と試験片との間の距離)である。E=2.46J(h=10.0cm)のとき、試料に加えられたエネルギー量をストライカーが試料に衝突してからの時間に対してプロットしたグラフ(以下、エネルギー-時間曲線と表記する)を図5に示す。このグラフにおいて、最大値は衝撃エネルギーEに対応し、それより長い時間でのおおよそ平坦となる領域のエネルギー値は試料が吸収したエネルギー(以下、Eと表記する)に対応する。これらの比を衝撃吸収率(以下、rと表記する)とすると、r=E/Eである。E=2.46J(h=10.0cm)のとき、E=1.98Jでr=0.805(図6)であった。試験片の破壊が見られない範囲で異なるEを加えたとき、つまり、異なるhとしたときのエネルギー-時間曲線も図7に示す。なお、図7中、高さ10.0cmとしたときの結果を実線で、高さ15.0cmとしたときの結果を破線で、高さ17.5cmとしたときの結果を点線で、それぞれ示した。また、異なるEを加えたとき(すなわち、異なるhとしたとき)のE、およびrを表1にまとめて示した。
 大きなEを加えることで試験片に破壊(亀裂)が生じるため、試料がどの程度までの衝撃エネルギーに耐えられるか(耐衝撃性)も評価した。加えた衝撃エネルギーEと試験片に破壊が生じたか否かの関係を図8に示す。図8では破壊が見られなかった範囲の衝撃エネルギーを棒グラフで表し、実際に行った試験を中抜きの丸で表してある。図8中の×は破壊が見られたときの衝撃エネルギーを表す。E≦4.38J(h≦17.5cm)では、試験片の破壊は見られなかったが、E=5.10J(h=20.0cm)では、試験片に放射状の傷が入っており、試験片の破壊が見られた。
 繰り返し衝撃を加えたときに、試験片の下の台座に傷が生じるか(ここでは繰り返し衝撃耐性と呼称する)を確認するために、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の板(長さ50mm、幅100mm、厚さ4.2mm、菱電化成、製品番号PGE-6635、樹脂成分:エポキシ樹脂硬化物、ガラス成分:アルミナ硼珪酸ガラス)をセットし、その上に上記の試験片を乗せ、その試験片にE~4.8J(h=20.0cm)の衝撃を1.5分毎に複数回加えたところ、3回目まででは試験片の下のGFRP板に傷は生じず、4回目で傷が生じた。
[比較例1]
 比較例1では、ベースポリマーのブロック共重合体組成物(Quintac 3440)そのものに対して力学特性を評価した。測定用の膜状のブロック共重合体組成物試料の調製は、実施例1と同様に行った。
[1-1]引張試験
 単純な引張特性とその初期歪み速度依存性を評価するために、実施例1と同様にして一軸引張試験を行った。初期歪み速度1.0/s(引張速度10mm/s)にて引張試験を行ったところ、図9の実線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、2.5MPa、19.3MPa、3150%、192MJ/mであった。同様にして、初期歪み速度0.10/s(引張速度1.0mm/s)にて引張試験を行ったところ、図9の破線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、2.7MPa、8.9MPa、2930%、111MJ/mであった。また、初期歪み速度0.010/s(引張速度0.10mm/s)にて引張試験を行ったところ、図9の点線で示す結果が得られ、ヤング率、最大応力、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、2.1MPa、5.1MPa、2260%、62MJ/mであった。以上のように引張速度が遅くなると引張強度、破断伸びの減少が見られた。また、初期歪み速度0.10/s、および0.010/sでは実施例1よりも破断伸びが小さく、そのために内面積値も小さかった。
[1-2]応力緩和試験
 実施例1と同様にして応力緩和試験を行ったところ、図2に示すように、比較例1においては、歪みが1000%に達した直後の応力は2.9MPaであり、その後1分で応力は2.4MPa程度まで低下した。応力がかかり続けることで、ポリスチレン鎖がドメインから引き抜かれていき、それにより応力は徐々に低下し、最終的に破断に至ったと考えられる。一方、水素結合性官能基を有する実施例1の試料では、時間の経過に伴う水素結合の解離・再結合の繰り返しによって応力が分散され、ドメインからのポリスチレン鎖の引き抜きが抑制されたために50時間経過しても試料破断が見られなかった。
[1-3]サイクル引張試験(3サイクル)
 実施例1と同様にしてサイクル引張試験(3サイクル)を行った。図10に、比較例1のサイクル引張試験の結果を示す。1サイクル目の大きなヒステリシス面積(5.8MJ/m)は実施例1と同様にポリスチレンドメインの再配列の影響と思われる。2サイクル目、3サイクル目のヒステリシス面積値はそれぞれ0.42MJ/m、0.31MJ/mであり、水素結合性官能基を有する実施例1の試料の方がその値は大きかった。実施例1の試料では伸長時の水素結合の解離によってより大きな応力が分散されることが示唆された。
[1-4]サイクル引張試験(試験片が破断するまで)
 実施例1と同様にして試験片が破断するまでサイクル引張試験を繰り返したところ、931サイクル目で試験片が破断し、水素結合性官能基が導入された実施例1の試料の方が破断までのサイクル数が大幅に大きかった。水素結合性官能基の導入によって疲労特性が向上することがわかった。これは比較例1の試料では、繰り返しの伸長によってポリスチレン鎖がドメインから引き抜かれていき、最終的に破断に至るのに対し、水素結合が生じる実施例1の試料では水素結合の解離・再結合によって応力が分散され、ポリスチレン鎖の引き抜きが抑制されたためと考えられる。
[1-5]落錘衝撃試験(衝撃吸収性と耐衝撃性)
 実施例1と同様にして厚さ4.0mmの試験片を調製し、落錘衝撃試験を行った。E=1.23J(h=5.0cm)のときのエネルギー-時間曲線を図5に示す。このとき、図6、表1に示すように、E=0.65Jでr=0.53であり、水素結合性官能基が導入された実施例1の試料の方が高い衝撃吸収率を示した。これは試験片に衝撃が加えられたときに水素結合が解離することで、衝撃エネルギーが分散されるためと考えられる。
 実施例1と同様に耐衝撃性も評価した。測定結果を図8に示す。E=1.23J(h=5.0cm)では試験片の破壊は見られなかったが、E=1.89J(h=7.5cm)では試験片に放射状の傷が入り、試験片の破壊が見られ、水素結合性官能基が導入された実施例1の試料の方が高い耐衝撃性を示した。これは試験片に衝撃が加えられたときに水素結合が解離することで、衝撃エネルギーが分散されるためと考えられる。以上のように、水素結合性官能基を導入した実施例1の試料では、水素結合性官能基導入前の比較例1の試料と比べて応力緩和特性、耐疲労性、衝撃吸収性、および耐衝撃性が向上することがわかった。
 繰り返し衝撃耐性を確かめるために、実施例1と同様にGFRP板の上に上記の試験片を乗せ、その試験片にE~2.4J(h=10.0cm)の衝撃を1.5分毎に複数回加えたところ、4回目まででは試験片の下のGFRP板に傷は生じず、5回目で傷が生じた。
[実施例2]
 実施例2では、実施例1で合成した非共有結合性の結合可能な官能基としてのカルボキシ基およびアミド基が導入されたブロック共重合体組成物(無水コハク酸ユニット導入率7.8モル%)を用い、下記の反応式に示すように、非共有結合性の結合可能な官能基のうちカルボキシ基をナトリウムメトキシドにより中和することで、カルボキシレートアニオンとナトリウムカチオンの塩を形成させ、イオン結合を生じるブロック共重合体組成物を調製し、力学特性を評価した。以下に具体的な手順を示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
[1]塩基によるカルボキシ基の中和(イオン性官能基の導入)
 実施例1で合成した非共有結合性の結合可能な官能基としてのカルボキシ基およびアミド基が導入されたブロック共重合体組成物5.01gをTHF40gに溶解させ、老化防止剤としてIrgafos168とIrganox565をそれぞれポリマーに対して0.1%、0.07%ずつ溶解させた。さらにナトリウムメトキシドのメタノール溶液(濃度5mol/L)0.84mLを加え、カルボキシ基と反応させた。このとき、ナトリウムメトキシドの量はカルボキシ基とほぼ等モル量であった。得られた溶液をPFA製の容器(内寸法98×70×24mm)に移し、50℃のホットプレート上で1.5日間静置させることでTHF溶媒を揮発させた。その後、真空乾燥器を用いて約1日間乾燥させることで溶媒を完全に除去した。得られたイオン性基含有ブロック共重合体組成物試料は膜状であり、イオン性基の導入率=(無水コハク酸ユニット導入率)×(カルボキシ基に対して使用したナトリウムメトキシドのモル百分率)は7.8モル%である。
[2-1]引張試験
 実施例1と同様にして一軸引張試験を行った。初期歪み速度1.0/s(引張速度10mm/s)にて引張試験を行ったところ、図11の実線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、9.0MPa、45.0MPa、2560%、532MJ/mであった。同様にして、初期歪み速度0.10/s(引張速度1.0mm/s)にて引張試験を行ったところ、図11の破線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、8.8MPa、42.3MPa、2700%、479MJ/mであり、初期歪み速度1.0/sのときと比べて引張強度は減少したが、破断伸びはやや増加した。また、初期歪み速度0.010/s(引張速度0.10mm/s)にて引張試験を行ったところ、図11の点線で示す結果が得られ、ヤング率、最大応力、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、5.7MPa、26.9MPa、2900%、326MJ/mであり、引張強度は減少したが、破断伸びはやや増加した。初期歪み速度が速くなると破断伸びが減少するのは、イオン結合が等方的で強固な結合であるために、伸長速度が速いとイオン結合が十分に解離されず、ポリスチレン鎖からなるドメインへの応力集中が十分抑制されなかったためと考えられる。実施例1や比較例1と比べるといずれの初期歪み速度でも、高いヤング率、大幅に高い引張強度を示し、その面積値は非常に大きかった。下記の文献で示されているように、Liらは異なる水素結合の強度を有する官能基としてウレタン結合、ウレア結合、および2-ウレイド-4[1H]-ピリジミノン(UPy)基を有するポリウレタンエラストマーを合成し、ダンベル型試験片(全長25mm、幅3mm)を調製して、治具間距離4mm、初期歪み速度0.42/s(引張速度1.7mm/s)にて引張試験を行って、面積値が386MJ/mと非常に大きな面積値を示すエラストマーを得ているが、本実施例で得られたエラストマーの値の方が大きかった。非常に高い応力を示したのは、比較的結合力の弱い水素結合に対し、イオン結合は等方的で強固な結合であるためと考えられる(たとえば、Y.Song,Y.Liu,T.Qi,G.L.Li,Angew,Chemie Int.Ed.,57,13838-13838(2018).)。
[2-2]サイクル引張試験(3サイクル)
 実施例1と同様にしてサイクル引張試験(3サイクル)を行った。図12に、実施例2のサイクル引張試験の結果を示す。1サイクル目の大きなヒステリシス面積(35.6MJ/m)は実施例1と同様に非共有結合性の結合の解離と、ポリスチレンドメインの再配列の影響と思われる。2サイクル目、3サイクル目のヒステリシス面積値はそれぞれ8.8MJ/m、6.9MJ/mであり、水素結合性官能基を有する実施例1や非共有結合性の結合可能な官能基を有さない比較例1の試料と比べて大きかった。伸長時のイオン結合の解離による応力分散の効果が、水素結合と比べて大きいことが示唆された。
[2-3]サイクル引張試験(試験片が破断するまで)
 実施例1と同様にして試験片が破断するまでサイクル引張試験を繰り返したところ、1600サイクル目で試験片が破断し、水素結合性官能基が導入された実施例1の試料よりも破断までのサイクル数は小さかったが、非共有結合性の結合可能な官能基を持たない比較例1の試料と比べると破断までのサイクル数は大きかった。これはイオン性結合でも解離・再結合が生じ、ポリスチレンドメインに繰り返しかかる応力をある程度は分散できるが、水素結合と比べて解離・再結合が遅く、ドメインにかかる応力を十分には分散できないためと考えられる。
[2-4]落錘衝撃試験(衝撃吸収性と耐衝撃性)
 実施例1と同様にして厚さ4.3mmの試験片を調製し、落錘衝撃試験を行った。E=2.48J(h=10.0cm)のときのエネルギー-時間曲線を図5に示す。このとき、図6、表1に示すように、E=1.73Jでr=0.698であり、水素結合性官能基が導入された実施例1の試料よりもrは小さかったが、非共有結合性の結合可能な官能基を持たない比較例1の試料と比べるとrは大きな値を示した。イオン結合でも衝撃時に結合の解離が生じ、エネルギーを分散するが、水素結合の方が短い時間で緩和するために実施例1の試料の方が高い衝撃吸収率を示したと考えられる。実施例2において、試験片の破壊が見られない範囲で異なるEを加えたときのエネルギー-時間曲線を図13に示す。また、異なるEを加えたときのE、およびrを表1に示す。
 実施例1と同様に耐衝撃性も評価した。測定結果を図8に示す。E≦12.8J(h≦50.0cm)では、試験片の破壊は見られなかったが、E=14.2J(h=55.0cm)では、試験片に放射状の傷が入り、試験片の破壊が見られた。膜厚がほぼ等しいにもかかわらずイオン結合性官能基導入前の比較例1と比べて高い耐衝撃性を示した。これは試験片に衝撃が加えられたときにイオン結合が解離することで、衝撃エネルギーが分散されるためと考えられる。また、水素結合性官能基が導入された実施例1と比べると衝撃吸収性がより低いにもかかわらず、より高い耐衝撃性を示したのは、イオン結合の解離に加えて、水素結合よりも結合力がずっと強いために試料がより硬く、丈夫なものとなっていたためと考えられる。以上のように、イオン結合性官能基(イオン結合可能な官能基)を導入した実施例2の試料では、水素結合性官能基を導入した実施例1の試料と比べると耐疲労性、衝撃吸収性の向上の程度は小さかったが、イオン結合性官能基導入前の比較例1と比べると耐疲労性、衝撃吸収性は向上しており、特に単純な引張特性や耐衝撃性が大きく向上することがわかった。
 繰り返し衝撃耐性を確かめるために、実施例1と同様にGFRP板の上に上記の試験片を乗せ、その試験片にE~4.8J(h=20.0cm)の衝撃を1.5分毎に10回加えたが、試験片の下のGFRP板に傷は生じなかった。比較例1では、より低いEにもかかわらず少ない衝撃回数でGFRP板に傷が見られ、また実施例1の水素結合性基含有ブロック共重合体組成物では、同じEで少ない衝撃回数でGFRP板に傷が見られたことから、実施例2のイオン性基含有ブロック共重合体組成物は、より高い繰り返し衝撃耐性を有すると考えられる。
 同様にしてE~11.4J(h=45.0cm)またはE~12.6J(h=50.0cm)の衝撃を1.5分毎に複数回加えたところ、6回目まででは試験片の下のGFRP板に傷が生じず、7回目で傷が生じた。
[比較例2]
 比較例2では、一般的なプラスチックとして市販のポリスチレン(Sigma-Aldrich、製品番号441147、Mw~35万、Mn~17万)に対して落錘衝撃試験を行った。ちなみにポリスチレンの絡み合い点間分子量は約1.3万(140℃)(L.J.Fetters,D.J.Lohse,D.Richter,T.A.Witten,A.Zirkel,Macromolecules,27,4639-4647(1994).)であり、十分な絡み合いを有すると考えられるポリスチレンである。
 実施例1と同様に落錘衝撃試験を行った結果を表1に示す。表1に示すように、E=0.60J(h=2.5cm)ではE=0.39Jでr=0.65であったが、比較的低い衝撃エネルギーE=1.20J(h=5.0cm)でも、試験片に大きな傷が入り、試験片の破壊が見られ、比較例1のブロック共重合体組成物よりも耐衝撃性は低かった。これはポリスチレンは室温で硬く、柔らかい成分を含んでおらず、衝撃が加えられたときに分子レベルでエネルギーが分散されないためと考えられる。
[比較例3]
 比較例3では、一般的なプラスチックとして市販のポリメタクリル酸メチル(Sigma-Aldrich、製品番号19-3760-5)に対して落錘衝撃試験を行った。
 実施例1と同様にして厚さ4.2mmの試験片を調製し、落錘衝撃試験を行った。結果を表1に示す。実施例1と同様に落錘衝撃試験を行ったところ、E≦1.77J(h≦7.5cm)では試験片の破壊は見られなかったが、比較的低い衝撃エネルギーE=2.37J(h=10.0cm)でも試験片に非常に大きな傷が入り、試験片の破壊が見られた。これはポリメタクリル酸メチルは室温で硬く、柔らかい成分を含んでおらず、衝撃が加えられたときに分子レベルでエネルギーが分散されないためと考えられる。
[比較例4]
 比較例4では、一般的なプラスチックとして市販のポリ(ビスフェノールAカーボネート)(Sigma-Aldrich、製品番号435139、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量4.5万、分子量分布2.19)に対して、落錘衝撃試験を行った。
 比較例4においては、実施例1と同様にして厚さ4.0mmの試験片を調製し、落錘衝撃試験を行った。結果を表1に示す。E=2.36J(h=10.0cm)では、塑性変形は見られなかったが、衝撃エネルギーE=3.57J(h=15.0cm)では、試験片はへこみ(直径約7mm)、すなわち塑性変形が生じた。
[比較例5]
 比較例5では、カーボンブラックを含む市販のエチレン―プロピレン-ジエンゴム(EPDM)(タイガースポリマー、製品番号TEKL7007-HP)に対して一軸引張試験、および落錘衝撃試験を行った。
 実施例1と同様にして初期歪み速度0.10/s(引張速度1.0mm/s)にて引張試験を行ったところ、その破断伸びは720%であり、実施例1と比べると破断伸びは7割以上小さかった。それゆえ、実施例1のアミン変性ブロック共重合体組成物のほうが、伸長性に優れていた。
 厚さ4.0mmの板に実施例1と同様に落錘衝撃試験を行い、耐衝撃性を評価した。結果を表2に示す。E≦11.4J(h≦45.0cm)では試験片の破壊は見られなかったが、E=12.6J(h=50.0cm)では、試験片に傷が入り、試験片の破壊が見られ、実施例2のイオン性基含有ブロック共重合体組成物の方が高い耐衝撃性を示した。
 繰り返し衝撃耐性を確かめるために、GFRP板の上に上記の試験片を乗せ、その試験片にE~11.4J(h=45.0cm)の衝撃を1.5分毎に複数回加えたところ、2回目まででは試験片の下のGFRP板に傷は生じず、3回目で傷が生じ、イオン性基含有ブロック共重合体組成物の方がより高い繰り返し衝撃耐性を有すると考えられる。
[比較例6]
 比較例6では、カーボンブラックを含む市販の天然ゴム(NR)(タイガースポリマー、製品番号TAKL6503)に対して一軸引張試験、および落錘衝撃試験を行った。
 実施例1と同様にして初期歪み速度0.10/s(引張速度1.0mm/s)にて引張試験を行ったところ、その破断伸びは320%であり、実施例1と比べると破断伸びは9割程度小さかった。それゆえ、実施例1のアミン変性ブロック共重合体組成物のほうが、伸長性に優れていた。
 厚さ4.0mmの板に実施例1と同様に落錘衝撃試験を行い、耐衝撃性を評価した。結果を表2に示す。E≦7.29J(h≦30.0cm)では試験片の破壊は見られなかったが、E=9.99J(h=40.0cm)では、試験片に傷が入り、試験片の破壊が見られ、実施例2のイオン性基含有ブロック共重合体組成物の方が高い耐衝撃性を示した。
 [実施例3]
 実施例3では、無水コハク酸の使用量等を変更した以外は、実施例1と同様の反応を行い、無水コハク酸ユニットの導入率を3.7モル%とした無水コハク酸変性ブロック共重合体組成物を得て、さらに、実施例1と同様にして、n-ブチルアミンで処理することで、アミン変性ブロック共重合体組成物の膜を得た。
 実施例1と同様にして厚さ4.2mmの試験片を調製し、落錘衝撃試験を行った。結果を表2に示す。E=2.49J(h=10.0cm)のときのエネルギー-時間曲線を図14に示す。このとき、図6、表1に示すように、E=1.82Jでr=0.731であり、水素結合性官能基の導入率が高い実施例1の試料よりもrは小さかったが、非共有結合性の結合可能な官能基を持たない比較例1の試料と比べるとrは大きかった。水素結合性官能基の多い方が、水素結合が切れる点数が多く、より多くのエネルギーを緩和できるためと考えられる。試験片の破壊が見られない範囲で異なるEを加えたとき(h=15.0cm)のエネルギー-時間曲線も図14に示す。また、異なるEを加えたときのE、およびrを表1に示す。
 実施例1と同様に耐衝撃性も評価したところ、実施例3においては、E≦3.77J(h≦15.0cm)では、試験片の破壊は見られなかったが、E=4.43J(h=17.5cm)では、試験片に放射状の傷が入り、試験片の破壊が見られ、非共有結合性の結合可能な官能基導入前の比較例1と比べて高い耐衝撃性を示した。これは試験片に衝撃が加えられたときに水素結合が解離することで、衝撃エネルギーが分散されるためと考えられる。なお、実施例3においても、ブロック共重合体組成物に、水素結合性官能基に導入してなるものであることから、耐衝撃性以外の力学特性についても、実施例1と同様の特性であることが期待される。
[実施例4]
 実施例4では、ナトリウムメトキシドを反応させる前のアミン変性ブロック共重合体組成物として、実施例3で得られたアミン変性ブロック共重合体組成物を使用し、かつ、実施例3のアミン変性ブロック共重合体組成物、Irganox565、Irgafos168、THF、およびナトリウムメトキシドのメタノール溶液(濃度5mol/L)の量を、それぞれ3.73g、26mg、37mg、40g、0.320mLとした以外は、実施例2と同様にして、イオン結合を生じたブロック共重合体膜試料を調製し、落錘衝撃試験を行った。このとき、カルボキシ基とナトリウムメトキシドはほぼ等モル量であり、イオン性官能基率は3.7モル%である。
 実施例1と同様にして厚さ4.3mmの試験片を調製し、落錘衝撃試験を行った。結果を表2に示す。E=2.49J(h=10.0cm)のときのエネルギー-時間曲線を図15に示す。このとき、図6、表2に示すように、E=1.49Jでr=0.596であり、イオン性官能基導入率の高い実施例2の試料や水素結合性官能基を有する実施例3の試料よりもrは小さかったが、非共有結合性の結合可能な官能基を持たない比較例1の試料と比べるとrは大きかった。試験片の破壊が見られない範囲で異なるEを加えたときのエネルギー-時間曲線も図15に示す。また、異なるEを加えたときのE、およびrを表2に示す。
 実施例1と同様に耐衝撃性も評価したところ、実施例4においては、E≦7.62J(h≦30.0cm)では、試験片の破壊は見られなかったが、E=8.26J(h=32.5cm)では、試験片に放射状の傷が入り、試験片の破壊が見られた。実施例4は、非共有結合性の結合可能な官能基導入前の比較例1、および水素結合性官能基を有する実施例1や実施例3の試料と比べて高い耐衝撃性を示した。なお、実施例4においても、ブロック共重合体組成物に、イオン結合性官能基に導入してなるものであることから、耐衝撃性以外の力学特性についても、実施例2と同様の特性であることが期待される。
[実施例5]
 実施例5では、実施例2のイオン性基含有ブロック共重合体組成物の調製において、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液の代わりにリチウムメトキシドのメタノール溶液(濃度10wt%)を使用した以外は、実施例2と同様にして、膜状のイオン性基含有ブロック共重合体組成物試料を調製し、落錘衝撃試験を行った。このとき、カルボキシ基とリチウムメトキシドはほぼ等モル量であり、イオン性官能基率は7.8モル%となるようにした。
 実施例1と同様にして厚さ4.3mmの試験片を調製し、落錘衝撃試験を行った。結果を表3に示す。E=2.48J(h=10.0cm)のとき、E=1.48Jでr=0.597であり、非共有結合性の結合可能な官能基を持たない比較例1の試料と比べるとrは大きかった。異なるEを加えたときのE、およびrを表2に示す。
 実施例1と同様に耐衝撃性も評価したところ、実施例5においては、E≦20.5J(h≦80.0cm)では、試験片の破壊は見られなかったが、E=21.8J(h=85.0cm)では、試験片に放射状の傷が入り、試験片の破壊が見られた。実施例5によれば、非共有結合性の結合可能な官能基導入前の比較例1と比べて高い耐衝撃性を示した。なお、実施例5においても、ブロック共重合体組成物に、イオン結合性官能基に導入してなるものであることから、耐衝撃性以外の力学特性についても、実施例2と同様の特性であることが期待される。
 [実施例6]
 実施例6では、実施例2のイオン性基含有ブロック共重合体組成物の調製において、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液の代わりにバリウムエトキシドのエタノール溶液(濃度10%w/v)を使用した以外は、実施例2と同様にして、膜状のイオン性基含有ブロック共重合体組成物試料を調製し、落錘衝撃試験を行った。このとき、バリウムは2価のイオンであるので、バリウムエトキシドはカルボキシ基のほぼ1/2モル量を加え、イオン性官能基率は7.8モル%となるようにした。
 実施例1と同様にして厚さ4.1mmの試験片を調製し、落錘衝撃試験を行った。結果を表3に示す。E=2.49J(h=10.0cm)のとき、E=1.25Jでr=0.502であり、非共有結合性の結合可能な官能基を持たない比較例1の試料と比べるとrは大きかった。異なるEを加えたときのE、およびrを表2に示す。
 実施例1と同様に耐衝撃性も評価したところ、実施例6においては、E≦20.3J(h≦80.0cm)では、試験片の破壊は見られなかったが、E=21.9J(h=85.0cm)では、試験片に傷が入り、試験片の破壊が見られた。非共有結合性の結合可能な官能基導入前の比較例1と比べて高い耐衝撃性を示した。なお、実施例6においても、ブロック共重合体組成物に、イオン結合性官能基に導入してなるものであることから、耐衝撃性以外の力学特性についても、実施例2と同様の特性であることが期待される。
 繰り返し衝撃耐性を確かめるために、実施例1と同様にGFRP板の上に上記の試験片を乗せ、その試験片にE~15.3J(h=60.0cm)の衝撃を1.5分毎に複数回加えたところ、5回目まででは試験片の下のGFRP板に傷は生じず、6回目で傷が生じた。
[比較例7]
 比較例7では、市販のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の板(長さ150mm、幅100mm、厚さ4.2mm、菱電化成、製品番号PGE-6635、樹脂成分:エポキシ樹脂硬化物、ガラス成分:アルミナ硼珪酸ガラス)に対して落錘衝撃試験を行った。
 2枚重ねたGFRP板を装置内にセットした以外は、実施例1と同様に落錘衝撃試験を行った。結果を表4に示す。落錘衝撃試験を行ったところ、比較的低い衝撃エネルギーE=1.19J(h=5.0cm)でも、上側のGFRP板の試験片に傷が入り、試験片の破壊が見られ、比較例1のブロック共重合体組成物よりも耐衝撃性は低かった。これは、GFRPは柔らかい成分を含んでおらず、衝撃が加えられたときに分子レベルでエネルギーが分散されないためと考えられる。なお、E=17.8J(h=70.0cm)では、上側のGFRP板の試験片は裏面まで破壊が見られた。また、E=18.8J(h=75.0cm)では上側のGFRP板の試験片は裏面まで破壊が見られただけでなく、下側のGFRP板の表面にも傷が見られた。
 繰り返し衝撃耐性を確かめるために、2枚重ねたGFRP板にE~15.2J(h=60.0cm)の衝撃を1.5分毎に複数回加えたところ、3回目まででは試験片の下のGFRP板に傷は生じず、4回目で傷が生じ、実施例6のイオン性基含有ブロック共重合体組成物の方が繰り返し衝撃耐性がより高かった。
[実施例7]
 実施例7では、実施例2で得られたイオン性基含有ブロック共重合体組成物と、比較例3で使用したポリメタクリル酸メチルとを、重量比で、イオン性基含有ブロック共重合体組成物:ポリメタクリル酸メチル=97.5:2.5で混合した試料を調製し、落錘衝撃試験を行った。
 具体的には、実施例2と同様にしてイオン性基含有ブロック共重合体組成物(無水コハク酸ユニット導入率7.8モル%)5.12gを調製し、これと比較例3で用いたポリメタクリル酸メチル0.131gをTHFとメタノールの混合溶媒(体積比9:1)100gに溶解させ、得られた溶液をPFA製の容器に移し、50℃のホットプレート上で1.5日間静置させることで溶媒を揮発させた。その後、真空乾燥器を用いて約1日間乾燥させることで溶媒を完全に除去した。得られた膜は均一であった。実施例1と同様にしてホットプレスにより厚さ4.3mmの試験片を調製し、落錘衝撃試験を行った。結果を表4に示す。E=2.38J(h=10.0cm)のとき、E=1.42Jでr=0.597であり、ブレンド前のイオン性基含有ブロック共重合体組成物よりもrは小さかった。異なるEを加えたときのE、およびrを表3に示す。
 実施例1と同様に耐衝撃性も評価したところ、実施例7においては、E≦17.8J(h≦70.0cm)では、試験片の破壊は見られなかったが、E=20.4J(h=80.0cm)では、試験片に傷が入り、試験片の破壊が見られた。ブレンド前のイオン性基含有ブロック共重合体組成物(実施例2)と比べて高い耐衝撃性を示した。衝撃吸収性がより低いにもかかわらず、より高い耐衝撃性を示したのは、イオン結合の解離に加えて、水素結合よりも結合力がずっと強く、また硬い分子であるポリメタクリル酸メチルがイオンとある程度相互作用することで、硬く、丈夫なものとなっていたためと考えられる。
 繰り返し衝撃耐性を確かめるために、実施例1と同様にGFRP板をセットし、その上に上記の試験片を乗せ、その試験片にE~12.6J(h=50.0cm)の衝撃を1.5分毎に10回加えたが、試験片の下のGFRP板に傷は生じず、耐衝撃性に優れる実施例2のイオン性基含有ブロック共重合体組成物よりも高い繰り返し衝撃耐性を有していた。
[実施例8]
 実施例8では、実施例2で得られたイオン性基含有ブロック共重合体組成物(無水コハク酸ユニット導入率7.8モル%)と比較例3のポリメタクリル酸メチルとを重量比で95:5にて混合した試料を、実施例7と同様にして調製した。得られた試料は、図16の光学顕微鏡写真に示すように、実施例7と同様に、イオン性基含有ブロック共重合体組成物とポリメタクリル酸メチルとが均一に混合したものであったことから、実施例7と同様に高い耐衝撃性および優れた力学特性が期待される。均一に混合したのは、ブロック共重合体組成物中のイオン性官能基とポリメタクリル酸メチル中のエステル結合との間で相互作用が生じるためと考えられる。
 実施例1と同様にしてホットプレスにより厚さ3.9mmの試験片を調製し、落錘衝撃試験を行い、耐衝撃性を評価した(表5)ところ、E≦15.2J(h≦60.0cm)では、試験片の破壊は見られなかったが、E=16.6J(h=65.0cm)では、試験片に傷が入り、試験片の破壊が見られ、ブレンド前のイオン性基含有ブロック共重合体組成物(実施例2)と比べて高い耐衝撃性を示した。
[実施例9]
 実施例9では、実施例2のイオン性基含有ブロック共重合体組成物(無水コハク酸ユニット導入率7.8モル%)と、比較例4で用いたポリ(ビスフェノールAカーボネート)とを、重量比で95:5にて混合した試料を、実施例7と同様にして調製した。得られた試料は、図18の光学顕微鏡写真に示すように、実施例7と同様に、イオン性基含有ブロック共重合体組成物とポリ(ビスフェノールAカーボネート)とが均一に混合したものであったことから、実施例7と同様に高い耐衝撃性および優れた力学特性が期待される。均一に混合したのは、ブロック共重合体組成物中のイオン性官能基とポリ(ビスフェノールAカーボネート)中のカーボネート基との間で相互作用が生じるためと考えられる。
[実施例10]
 実施例10では、実施例2のイオン性基含有ブロック共重合体組成物(無水コハク酸ユニット導入率7.8モル%)と、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)(Sigma-Aldrich、製品番号243051、Mw~7万)とを、重量比で95:5にて混合した試料を、実施例7と同様にして調製した。得られた試料は、図20の光学顕微鏡写真に示すように、実施例7と同様に、イオン性基含有ブロック共重合体組成物とポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)とが均一に混合したものであったことから、実施例7と同様に高い耐衝撃性および優れた力学特性が期待される。均一に混合したのは、ブロック共重合体組成物中のイオン性官能基とポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)中のイオンとの間で相互作用が生じるためと考えられる。
[実施例11]
 実施例11では、実施例6で得られたイオン性基含有ブロック共重合体組成物と、比較例3で使用したポリメタクリル酸メチルとを、重量比で、イオン性基含有ブロック共重合体組成物:ポリメタクリル酸メチル=97.5:2.5で混合した試料を実施例7と同様にして調製(厚さ4.3mm)し、落錘衝撃試験を行った(表5)。得られた膜は均一であった。実施例1と同様に耐衝撃性も評価したところ、E=20.3J(h=80.0cm)では、試験片に傷が入り、試験片の破壊が見られたものの、E≦19.2J(h≦75.0cm)では、試験片の破壊は見られず、高い耐衝撃性を示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
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Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
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Claims (14)

  1.  少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体(A)に、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるブロック共重合体(B)を含むブロック共重合体組成物を含有する耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  2.  前記非共有結合性の結合可能な官能基が、水素結合可能な官能基、配位結合可能な官能基、およびイオン結合可能な官能基から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  3.  前記非共有結合性の結合可能な官能基が、カルボキシル基もしくは酸無水物基と塩基とを反応させてなる基、および、酸無水物基を塩基により加水分解してなる基から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  4.  前記酸無水物基が、不飽和ジカルボン酸無水物に由来する基である請求項3に記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。 
  5.  前記塩基が、アルカリ金属含有化合物、アルカリ土類金属含有化合物、アンモニアおよびアミン化合物から選択される少なくとも1種である請求項3または請求項4に記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。 
  6.  前記非共有結合性の結合可能な官能基が、アレニウス酸およびアレニウス塩基を混合し、中和することにより生成するイオン性基、および、ブレンステッド酸およびブレンステッド塩基を混合し、中和することにより生成するイオン性基から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  7.  前記非共有結合性の結合可能な官能基が、カルボン酸の塩を含む基である請求項1または2に記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  8.  前記芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量が3,000~50,000の範囲内であり、 
     前記共役ジエン重合体ブロックのビニル結合含有量が0.1モル%~50モル%の範囲内であり、かつ前記共役ジエン重合体ブロックの重量平均分子量が10,000~500,000の範囲内である請求項1~7のいずれかに記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  9.  前記芳香族ビニル重合体ブロックがポリスチレンブロックである請求項1~8のいずれかに記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  10.  前記共役ジエン重合体ブロックが、ポリブタジエンブロック、ポリイソプレンブロック、またはポリブタジエン-ポリイソプレン共重合ブロックである請求項1~9のいずれかに記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  11.  さらに、前記ブロック共重合体組成物以外の他の重合体を含む請求項1~10のいずれかに記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  12.  前記ブロック共重合体組成物以外の他の重合体が、アクリル重合体、ポリカーボネート樹脂、およびポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリスチレン系樹脂、スチレン-マレイミド系共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド-メタクリル酸メチル共重合体、ゴム強化耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ABS系共重合体樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂から選択される少なくとも1種である請求項11に記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  13.  耐疲労性および耐衝撃性を有する材料用に用いられる請求項1~12のいずれかに記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物。
  14.  請求項1~13のいずれかに記載の耐衝撃材料用の熱可塑性エラストマー組成物を含有する耐衝撃材料。
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