WO2018043393A1 - 空気袋及び車両用シート装置 - Google Patents

Abstract

ショルダーサポート用の空気袋は、回動可能に連結されたパドル部材とベース部材との間に介在される袋部を備えている。袋部は、二枚のシート材を貼り合わせることにより形成されている。袋部は、パドル部材の回動軸に沿った袋幅を有する。袋部には、袋部が収縮した状態において、ベース部材に連結されたパドル部材の基端に配置される第１端部からパドル部材の先端に配置される第２端部に向かって徐々に広くなるような拡幅部が設けられている。

Description

空気袋及び車両用シート装置

　本発明は、空気袋及び車両用シート装置に関する。

　従来より、シートの内側に設けられた空気袋（ブラダ）を拡縮させることによりシートサポート形状を変更可能な車両用シート装置がある。特許文献１は、シートバックのサポート形状（ショルダーサポート）を変更可能な車両用シート装置を開示している。

　従来技術のシート装置は、シートの内側に固定されるベース部材（固定プレート）と、ベース部材に対して回動可能に連結されるパドル部材（回動プレート）と、ベース部材とパドル部材との間に介在される空気袋とを備えている。このシート装置では、ベース部材とパドル部材との間で拡縮する空気袋の押圧力に基づいてパドル部材が回動する。そして、パドル部材がシートバックの内側からシートバックを押圧することにより、シートサポート形状が変化する。

　このシート装置には、二枚のシート材（布）を貼り合わせることによって形成された袋部が空気袋として用いられている。このような簡素な袋部構造を採用することで、製造コストの削減が図られている。

　このような空気袋では、袋部の中央部分が大きく拡張し易い。このため、従来技術のシート装置のように、ベース部材に対してパドル部材が回動する構成においては、拡張した空気袋がパドル部材の広い範囲を押圧することは難しい。特許文献１には、ベース部材とパドル部材との間に介在される空気袋の拡張時の形状が横断面視で略二等辺三角形状、即ち、略楔形であることが望ましい旨が記載されている。しかしながら、特許文献１には、袋部を略楔形に拡張させる具体的な構造については何ら開示されていない。

特開２０１５－９６４０３号公報

　本発明の目的は、より好適に、ベース部材に対して回動可能に連結されたパドル部材を押圧することのできる空気袋及び車両用シート装置を提供することにある。

　上記課題を解決するため、本発明の第一の態様によれば、シートの内側に固定されるベース部材と、ベース部材に対して回動して連結されたパドル部材と、ベース部材とパドル部材との間に介在され、二枚のシート材を貼り合わせてなる袋部とを備えた空気袋が提供される。袋部は、パドル部材の回動軸に沿った袋幅を有している。袋部には、袋部が収縮した状態において、ベース部材に連結されたパドル部材の基端からパドル部材の先端に向かって袋幅が徐々に広くなる拡幅部が設けられている。

　上記課題を解決するため、本発明の第二の態様によれば、上記の空気袋を備えた車両用シート装置が提供される。

車両シートの内側に空気袋が設けられた車両シートの斜視図。 シート装置の概略構成図。 シート装置を構成するシートサポート装置の斜視図。 ベース部材を共有するショルダーサポート装置、ランバーサポート装置及びバックペルビスサポート装置の正面図。 ショルダーサポート装置の正面図。 ショルダーサポート装置の分解斜視図。 （ａ）は、図５のVII-VII線に沿ったショルダーサポート装置の空気袋収縮時の断面図、（ｂ）は、図５のVII-VII線に沿ったショルダーサポート装置の空気袋拡張時の断面図。 （ａ）は、ベース部材に設けられた孔部近傍の拡大図、（ｂ）は、パドル部材に設けられた係合突部近傍の拡大図。 ショルダーサポート用の空気袋の平面図。 （ａ）は、収縮状態における空気袋の側面図、（ｂ）は、空気袋の拡大図。 拡張状態における空気袋の側面図。

　以下、空気圧式のシートサポート機能を有するシート装置の一実施形態を図面に従って説明する。
　図１に示すように、車両用のシート１は、シートクッション２と、シートクッション２の後端部に設けられたシートバック３とを備えている。シートバック３の上端には、ヘッドレスト４が設けられている。

　シートバック３は、前方に膨出した両サイド部３ａ，３ｂを有している。シートクッション２も、上方に膨出したサイド部２ａ，２ｂを有している。これにより、シート１は、乗員の良好な着座姿勢を確保し、乗員の着座姿勢を維持することが可能になっている。

　シート１には、シートクッション２及びシートバック３の内側に複数の空気袋１０（１１～１６）が設けられている。具体的には、シートバック３の内側には、背もたれ面３ｓの肩部（ショルダー）、腰部（ランバー）及び下端部（バックペルビス）、並びに両サイド部３ａ，３ｂに対応する位置に、それぞれ独立した空気袋１１（１１ａ，１１ｂ），１２（１２ａ～１２ｃ），１３，１４（１４ａ，１４ｂ）が設けられている。更に、シートクッション２においても、着座面２ｓにおける後端部（クッションペルビス）の内側、及び両サイド部２ａ，２ｂの内側に、それぞれ独立した空気袋１５，１６（１６ａ，１６ｂ）が設けられている。これにより、各空気袋１０の拡縮に基づいてシートサポート形状を変更可能なシート装置２０が形成されている。

　図２に示すように、シート装置２０は、各空気袋１０に空気を圧送するエアポンプ装置２１と、各空気袋１０とエアポンプ装置２１との間に介在された吸排気バルブ装置２２とを備えている。エアポンプ装置２１には、モータ２３を駆動源としてポンプ機構２４を駆動する電動ポンプが用いられている。更に、吸排気バルブ装置２２は、可撓性を有する樹脂製のエアチューブ２５を介して各空気袋１０及びエアポンプ装置２１に接続されている。即ち、シート装置２０では、エアチューブ２５及び吸排気バルブ装置２２の内部通路が、各空気袋１０及びエアポンプ装置２１に連通する空気の流路Ｌを形成している。これにより、吸排気バルブ装置２２は、吸気バルブ２６及び排気バルブ２７を流路Ｌの途中に配置した構成を有している。

　シート装置２０において、制御装置２８は、各吸気バルブ２６及び排気バルブ２７、並びにエアポンプ装置２１の作動を制御している。制御装置２８には、各空気袋１０の内圧Ｐや、図示しない操作スイッチに対する操作入力信号Ｓｃｒ、イグニッション信号Ｓｉｇ、及びドアロック信号Ｓｄｌ等が入力される。制御装置２８は、これらの制御信号に基づいて、各空気袋１０を拡縮させるべく、各吸気バルブ２６及び排気バルブ２７、並びにエアポンプ装置２１の作動を制御する。

　図３に示すように、各空気袋１０は、シート１のクッションパッド（図示略）を内側から押圧するシートサポート装置４０（４１～４６）をそれぞれ形成する。具体的には、ショルダーサポート装置４１、バックサイドサポート装置４４、クッションペルビスサポート装置４５、及びクッションサイドサポート装置４６は、各空気袋１０（１１，１４～１６）が押圧部材となるパドル部材３０（３１，３４～３６）と一体化された構造をそれぞれ有している。また、ランバーサポート装置４２及びバックペルビスサポート装置４３は、各空気袋１０（１２，１３）が直接的にシート１のクッションパッドを押圧する構造をそれぞれ有している。シート装置２０は、各シートサポート装置４０がそれらの設置位置においてシートサポート形状を変化させる。

　次に、シート装置２０を構成するショルダーサポート装置４１の構成について説明する。
　図４に示すように、シートバック３の肩部に対応するショルダーサポート装置４１は、シートバック３の腰部に対応するランバーサポート装置４２及び下端部に対応するバックペルビスサポート装置４３と一体に設けられている。ショルダーサポート装置４１は、ランバーサポート装置４２及びバックペルビスサポート装置４３と、シート１の内側に固定されるベース部材５０を共有している。

　図３及び図４に示すように、ベース部材５０は、略板状の外形を有し、シートバック３の両サイドフレーム３ｆ間に固定されている。ランバーサポート用の各空気袋１２（１２ａ～１２ｃ）及びバックペルビスサポート用の空気袋１３は、上下方向に並ぶ態様で、ベース部材５０にそれぞれ連結されている。ショルダーサポート用のパドル部材３１は、ベース部材５０における空気袋１２，１３よりも上側の位置に連結されている。

　図５及び図６に示すように、シートサポート用のパドル部材３１は、略平板状の外形を有している。ベース部材５０は、その上端部分に、シート幅方向（図５中、左右方向）に離間して設けられた左右一対の支持部５１を備えている。ショルダーサポート用に設けられた左右一対の空気袋１１（１１ａ，１１ｂ）は、各支持部５１に固定されている。ショルダーサポート装置４１は、両支持部５１に跨る態様でパドル部材３１がベース部材５０に連結された構成を有している。

　図５～図７、及び図８（ａ）（ｂ）に示すように、ベース部材５０は、各支持部５１の基端に、ベース部材５０を厚み方向に貫通する一対の孔部５２を有している。パドル部材３１の下端部３１ａには、ベース部材５０に対向する裏面Ｓｄから突出すると共にベース部材５０の各孔部５２に挿入される一対の係合突部５４が設けられている。各係合突部５４は、ベース部材５０の各孔部５２内に挿入されることにより、各孔部５２に係合する。パドル部材３１は、各係合突部５４と各孔部５２との係合位置（係合位置Ｐｘ）を支点として回動可能に連結されている。

　図７（ａ）（ｂ）に示すように、ショルダーサポート装置４１では、ベース部材５０の各支持部５１とパドル部材３１との間に介在された空気袋１１が拡張すると、パドル部材３１が空気袋１１により押圧されて、各係合突部５４及び各孔部５２の係合位置Ｐｘを支点（回動支点Ｘ）に回動する。また、パドル部材３１の回動により、パドル部材３１の上端部３１ｂ（図７中、上側）がベース部材５０から離間する。これにより、パドル部材３１が、シートバック３のクッションパッド（図示略）を内側から押圧する。こうして、シートバック３の肩部の背もたれ面３ｓ（図１参照）がシート１の前方（図７中、左側）に膨出する。ショルダーサポート装置４１は、シート１に着座した乗員の肩部が当接する部位、つまりは、シートバック３の肩部におけるシートサポート形状を変化させる。

　図６及び図７に示すように、ショルダーサポート装置４１は、パドル部材３１をベース部材５０に接続する一対のケーブル部材５７を備えている。ケーブル部材５７は、パドル部材３１の上端部３１ｂと対応する位置に、接続部５６を有している。各係合突部５４が設けられたパドル部材３１の下端部３１ａが第１位置を構成し、ケーブル部材５７の接続部５６と対応するパドル部材３１の上端部３１ｂが第２位置を構成する。これらが、パドル部材３１の回動範囲を制限するストッパ機構６０を形成している。

　ショルダーサポート装置４１において、各ケーブル部材５７の一端には、略円柱状の係合部５７ａが設けられている。パドル部材３１の上端部３１ｂには、各ケーブル部材５７の係合部５７ａを係止する凹部６１が設けられている。これらにより、パドル部材３１に対する各ケーブル部材５７の接続部５６が形成されている。各ケーブル部材５７の他端には、略円板状の係止部５７ｂが設けられている。こうして、ストッパ機構６０は、各ケーブル部材５７の係止部５７ｂがベース部材５０の各支持部５１に係止されることによりパドル部材３１の回動範囲を制限する。

　詳述すると、図７に示すように、各ケーブル部材５７の係止部５７ｂ近傍の端部が、パドル部材３１に対向するベース部材５０の表面Ｓａから、ベース部材５０の裏面Ｓｂに引き回されている。更に、コイルバネ６２が、各ケーブル部材５７に嵌挿されている。各ケーブル部材５７は、可撓性を有する樹脂素材を用いて形成されている。各ケーブル部材５７の係止部５７ｂは、コイルバネ６２よりも大きな直径を有している。ベース部材５０の裏面Ｓｂには、各コイルバネ６２と一体に各ケーブル部材５７の係止部５７ｂを収容する一対のガイド凹部６３が設けられている（図６参照）。

　各ガイド凹部６３は、各支持部５１に設けられている。各ガイド凹部６３は、ベース部材５０の上下方向に延びている。各ガイド凹部６３の開口部には、蓋部材６４が取着されている。各ガイド凹部６３の内側に各コイルバネ６２を保持したまま、各ケーブル部材５７の係止部５７ｂがガイド凹部６３内を上下方向に移動する。

　即ち、空気袋１１の拡張に伴い、パドル部材３１が回動することにより、パドル部材３１が各ケーブル部材５７を引っ張る。パドル部材３１が各ケーブル部材５７を引っ張ることにより、各ガイド凹部６３内に収容された係止部５７ｂが、各コイルバネ６２を圧縮しつつ上方に移動する。各コイルバネ６２が圧縮限界に到達すると、各ガイド凹部６３内における係止部５７ｂの上方への移動が規制される。こうして、ショルダーサポート装置４１は、パドル部材３１の回動範囲が制限されるように構成されている。

　空気袋１１が収縮した場合、圧縮された各コイルバネ６２の弾性力（弾性復元力）に基づいて、各ケーブル部材５７がパドル部材３１を引っ張る。ショルダーサポート装置４１は、パドル部材３１の上端部３１ｂをベース部材５０に近接させる方向にパドル部材３１が回動するようにも構成されている。

　さらに詳述すると、図７及び図８（ｂ）に示すように、パドル部材３１の各係合突部５４は、ベース部材５０の各孔部５２に係合することにより、パドル部材３１の回動支点Ｘを形成している。各係合突部５４は、挿入方向及び抜脱方向（引出方向）に摺動可能な状態で、ベース部材５０の各孔部５２に挿入されている。更に、係合突部５４は、パドル部材３１とのベース部材５０との間に介在された空気袋１１の拡縮状態に基づいて、ベース部材５０の各孔部５２から引き出される方向、及び各孔部５２内に挿入される方向に摺動する。パドル部材３１は、各係合突部５４とベース部材５０の各孔部５２との係合位置Ｐｘ、つまり、パドル部材３１の回動支点Ｘが移動するように構成されている。

　具体的には、各係合突部５４は、各孔部５２に係合する下側面５４ｓを内側に向けて湾曲するように、略四角軸形状をなしている。このため、ショルダーサポート装置４１は、各係合突部５４の摺動に応じてベース部材５０の各孔部５２に対する係合位置Ｐｘを円滑に移動させつつ、係合位置Ｐｘを支点としてパドル部材３１が回動するように構成されている。

　また、各係合突部５４の先端５４ａには、抜け止め用の爪部６５が設けられている。爪部６５は、ベース部材５０の裏面Ｓｂから孔部５２に係合することにより、係合突部５４の孔部５２から引き出される方向への摺動を制限する。こうして、ショルダーサポート装置４１は、パドル部材３１がベース部材５０から脱離しないように構成されている。

　拡張する空気袋１１に押圧されてパドル部材３１が回動する際、各係合突部５４が、パドル部材３１と一体に、ベース部材５０の各孔部５２から引き出される方向に摺動する。このような係合突部５４の摺動によって、各係合突部５４とベース部材５０の各孔部５２との係合位置、つまり、パドル部材３１の回動支点Ｘとなる位置が、各係合突部５４の先端５４ａに向けて移動する。こうして、ショルダーサポート装置４１は、パドル部材３１全体がベース部材５０から離間する方向（図７中、左側）に変位しつつ、パドル部材３１の上端部３１ｂが傾倒する態様で回動するように構成されている。

　パドル部材３１は、上記のように回動することで、ベース部材５０から離間する方向に変位する。パドル部材３１の見かけ上の回動中心Ｑは、パドル部材３１の回動支点Ｘとなる係合突部５４及びベース部材５０の各孔部５２から離間している。具体的には、パドル部材３１の見かけ上の回動中心Ｑは、略平板状をなすパドル本体６６の延長線Ｎとベース部材５０との交点Ｐ０に形成されている。こうして、ショルダーサポート装置４１は、シートバック３の肩部におけるシートサポート形状を、より広範囲に変化させることが可能になっている。

　つまり、シートバック３の肩部におけるシートサポート形状は、シートバック３の内側で回動するパドル部材３１がクッションパッド（図示略）を押圧することにより変化する。このようなシートサポート形状の変化により、シートバック３の背もたれ面３ｓが肩部の下側で折れ曲がる。更に、背もたれ面３ｓの折れ位置は、パドル部材３１の見かけ上の回動中心Ｑの位置により決定される。シートバック３の背もたれ面３ｓが肩部より下側で折れ曲がるように膨出することで、最適なシートサポート形状が設定される。

　次に、シート装置２０におけるショルダーサポート用の空気袋１１の構成を説明する。
　図９～図１１に示すように、ショルダーサポート用の各空気袋１１は、二枚のシート材７０ａ，７０ｂを貼り合わせてなる袋部７１をシート材７０ａ，７０ｂの厚み方向に２つ重ねた構造を有している。

　具体的には、図９及び図１０（ａ）（ｂ）に示すように、各袋部７１は、厚み方向に重なる二枚のシート材７０ａ，７０ｂの周縁部を互いに溶着することにより形成されている。また、空気袋１１は、２つの袋部７１ａ，７１ｂがシート材７０ａ，７０ｂの厚み方向に重なる状態で袋部７１ａ，７１ｂの中央部分を互いに溶着することにより構成されている。

　各シート材７０ａ，７０ｂには、可撓性を有した樹脂素材が用いられている。各シート材７０ａ，７０ｂの溶着には、例えば、高周波溶着が用いられる。図９中には、ハッチングによって、各溶着部α，βが示されている。

　図６、図７及び図９に示すように、空気袋１１の各袋部７１が、ベース部材５０とパドル部材３１との間に介在されている。また、ベース部材５０に連結されたパドル部材３１の基端となる下端部３１ａに配置される空気袋１１の第１端部Ｚ１（図９参照、同図中、右側の端部）には、エアチューブ２５が接続されている。更に、第１端部Ｚ１には、貫通孔７２ａを有した一対の鍔部７２が設けられている。空気袋１１は、鍔部７２を固定部として備え、例えば、クリップ等を用いてベース部材５０の支持部５１に固定されている。

　図９は、各袋部７１が収縮した状態を示す。図９に示すように、袋部７１の袋幅Ｄは、第１端部Ｚ１から第２端部Ｚ２（図９中、右側から左側）に向かって徐々に広くなる。袋部７１の拡幅部７５では、空気袋１１がベース部材５０とパドル部材３１との間に介在された状態において、パドル部材３１の回動軸Ｍ（図５参照）に沿った各袋部７１の袋幅Ｄが、パドル部材３１の下端部３１ａ（基端）から上端部３１ｂ（先端）に向かって徐々に広くなる。パドル部材３１の回動軸Ｍは、パドル部材３１の回動支点Ｘとなる各係合突部５４がベース部材５０の各孔部５２に係合する位置において、シート幅方向（図５参照、同図中、左右方向）に延びている。更に、各袋部７１の拡幅部７５には、袋幅Ｄが第１端部Ｚ１から第２端部Ｚ２に向かって一定の比率で広くなる定率拡幅部７５ａが設定されている。

　図１１に示すように、拡幅部７５を各袋部７１に設けることで、各袋部７１は、パドル部材３１の基端（図１１中、右側）に位置する第１端部Ｚ１の膨らみ量ｄ１よりもパドル部材３１の先端（図１１中、左側）に位置する第２端部Ｚ２の膨らみ量ｄ２が大きくなるように、略楔形に拡張する。特に、拡幅部７５に定率拡幅部７５ａを設定することにより、各袋部７１が拡張した状態において、空気袋１１がパドル部材３１の裏面Ｓｄ（及びベース部材５０の表面Ｓａ）を押圧する面を、平坦化（フラット化）することができる（図７参照）。これにより、各袋部７１が拡張した状態の空気袋１１が、パドル部材３１の下端部３１ａから上端部３１ｂに亘る広い範囲を均等な力で押圧する。

　図６、図７及び図９に示すように、パドル部材３１の上端部３１ｂに配置される空気袋１１の第２端部Ｚ２には、袋部７１とベース部材５０（の支持部５１）との間を接続する二本のストラップ７７が設けられている。ストラップ７７は、各シート材７０ａ，７０ｂと同様の樹脂素材を用いて、帯状に形成されている。ストラップ７７は、シート材７０ａ，７０ｂの厚み方向に重なる２つの袋部７１ａ，７１ｂのうちベース部材５０近傍に配置される袋部７１ａから延びている。ベース部材５０の支持部５１の上端部には、各ストラップ７７の先端に設けられた抜止部７８を係止する係止部７９が設けられている。

　図７（ａ）に示すように、各袋部７１が収縮した状態では、ストラップ７７の大部分が、ベース部材５０の裏面Ｓｂに配置されている。図７（ｂ）に示すように、各袋部７１が拡張すると、ストラップ７７がベース部材５０の裏面Ｓｂから表面Ｓａに引き出される。そして、各ストラップ７７の先端に設けられた抜止部７８が、ベース部材５０の裏面Ｓｂを通過してから、ベース部材５０の上端部の各係止部７９に係合される。これにより、各袋部７１ａ，７１ｂの拡張を妨げることなく、各袋部７１ａ，７１ｂをベース部材５０に接続することができる。

　以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
　（１）シート装置２０を構成するショルダーサポート装置４１は、シート１の内側に固定されるベース部材５０と、ベース部材５０に対して回動可能に連結されるパドル部材３１と、パドル部材３１とベース部材５０との間に介在される袋部７１を有する空気袋１１とを備える。袋部７１は、二枚のシート材７０ａ，７０ｂを貼り合わせることにより形成される。袋部７１は、パドル部材３１の回動軸Ｍに沿った袋幅Ｄを有する。袋部７１には、袋幅Ｄが徐々に広くなる拡幅部７５が設けられている。拡幅部７５では、袋部７１が収縮した状態において、袋幅Ｄが、ベース部材に連結されたパドル部材３１の基端（下端部３１ａ）に配置される袋部７１の第１端部Ｚ１から、パドル部材３１の先端（上端部３１ｂ）に配置される袋部７１の第２端部Ｚ２に向かって徐々に広くなる。

　上記構成によれば、袋部７１は、パドル部材３１の基端に位置する第１端部Ｚ１の膨らみ量ｄ１よりもパドル部材３１の先端に位置する第２端部Ｚ２の膨らみ量ｄ２が大きくなるように、略楔形に拡張する。これにより、袋部７１が拡張した状態の空気袋１１が、パドル部材３１の下端部３１ａから上端部３１ｂに亘るより広い範囲を押圧することができる。その結果、より好適に、ベース部材５０に対して回動可能に連結されたパドル部材３１を押圧することができる。

　（２）袋部７１の拡幅部７５には、袋幅Ｄがパドル部材３１の下端部３１ａから上端部３１ｂに向かって一定の比率で広くなる定率拡幅部７５ａが設定されている。上記構成によれば、袋部７１が拡張した状態において、空気袋１１がパドル部材３１（及びベース部材５０）を押圧する面を、平坦化（フラット化）することができる。これにより、袋部７１が拡張した状態の空気袋１１が、パドル部材３１の広い範囲を均等な力で押圧することができる。

　（３）空気袋１１は、シート材７０ａ，７０ｂの厚み方向に重なる複数（２つ）の袋部７１（７１ａ，７１ｂ）を備える。これにより、パドル部材３１が大きく回動する場合にも、パドル部材３１の広い範囲を押圧することができる。

　（４）空気袋１１は、パドル部材３１の先端となる上端部３１ｂに、袋部７１とベース部材５０とを接続するストラップ７７を備える。上記構成によれば、袋部７１の拡張を妨げることなく、袋部７１をベース部材５０に接続することができる。また、パドル部材３１の基端となる下端部３１ａで袋部７１をベース部材５０に固定する構造と組み合わせることにより、組み付け時等、袋部７１が収縮した状態で生じやすい空気袋１１の捩じれを抑制することができる。

　（５）パドル部材３１には、ベース部材５０の孔部５２に挿入されることにより孔部５２と係合する係合突部５４が設けられている。係合突部５４は、パドル部材３１の回動支点Ｘを形成している。また、係合突部５４は、パドル部材３１が空気袋１１に押圧されることにより、ベース部材５０の孔部５２から引き出される方向に摺動する。この場合、係合突部５４と孔部５２との係合位置Ｐｘが、係合突部５４の先端５４ａに向けて移動する。

　上記構成によれば、パドル部材３１とベース部材５０との間に介在された空気袋１１の拡張によって、パドル部材３１全体がベース部材５０から離間する方向に変位しながら回動する。このようなベース部材５０のスライド動作によって、パドル部材３１の見かけ上の回動中心Ｑは、パドル部材３１の回動支点Ｘとなる係合突部５４及びベース部材５０の孔部５２から離間した位置に形成される。これにより、パドル部材３１の回動に基づいて、より広範囲に亘って、シートサポート形状を変化させることができる。その結果、より簡素な構成にて、最適なシートサポート形状を設定することができる。

　（６）特に、ショルダーサポート装置４１の場合、シートバック３の内側で、パドル部材３１の上端部３１ｂが傾倒するようにパドル部材３１が回動する。これにより、パドル部材３１の押圧力に基づいて、シートバック３の背もたれ面３ｓが肩部の下側で折れ曲がり、肩部におけるシートサポート形状が変化する。このときの折れ位置は、パドル部材３１の見かけ上の回動中心Ｑの位置により決定される。従って、シートバック３の背もたれ面３ｓを、より下側の位置で折れ曲がるように膨出させることができる。これにより、シートバック３の肩部において、最適なシートサポート形状を設定することができる。

　（７）係合突部５４は、ベース部材５０の孔部５２との係合位置Ｐｘを内側に向けて湾曲した軸形状に形成されている。これにより、係合突部５４の摺動に応じてベース部材５０の孔部５２に対する係合位置Ｐｘを円滑に移動させつつ、係合位置Ｐｘを支点としてパドル部材３１を回動させることができる。

　（８）係合突部５４の先端５４ａには、抜止部としての爪部６５が設けられている。爪部６５は、ベース部材５０の裏面Ｓｂから孔部５２に係合することにより、係合突部５４の孔部５２から引き出される方向への摺動を制限する。この構成により、パドル部材３１がベース部材５０から脱離しなくなる。よって、高い信頼性及び質感を確保することができる。

　（９）ショルダーサポート装置４１は、パドル部材３１とベース部材５０とを連結するケーブル部材５７を備える。ケーブル部材５７は、パドル部材３１の上端部３１ｂと対応する位置に、接続部５６を有している。ケーブル部材５７が、パドル部材３１の回動範囲を制限するストッパ機構６０として機能する。上記構成によれば、シートバック３の背もたれ面３ｓを前方に引っ張る等の人為的な操作によって、パドル部材３１が回動することがある。このような場合であっても、パドル部材３１の過度な回動を規制することができる。よって、高い信頼性及び質感を確保することができる。

　上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
　・上記実施形態では、ベース部材の孔部５２及びパドル部材３１の係合突部５４をそれぞれ、シート幅方向に離間した二箇所に設けたが、孔部５２や係合突部５４数や配置等は、任意に変更してもよい。

　・上記実施形態では、係合突部５４を、ベース部材５０の孔部５２に対する係合位置Ｐｘを内側に向けて湾曲した四角軸形状に形成した。しかし、これに限らず、挿入方向及び抜脱方向に摺動可能にベース部材５０の孔部５２に挿入された状態で係合突部５４と孔部５２との係合位置Ｐｘ、即ち、パドル部材３１の回動支点Ｘが移動するのであれば、係合突部５４の形状を、例えば、直線的な軸形状、爪形状や鈎形状等、任意に変更してもよい。また、係合突部５４の先端５４ａに、抜け止め用の爪部６５を備えなくてもよい。また、ベース部材５０の孔部５２に形状も、係合突部５４の形状に合わせて、任意に変更してもよい。

　・上記実施形態では、ストッパ機構６０を構成するケーブル部材５７は、パドル部材３１の上端部３１ｂと対応する位置に接続部５６を有し、かつパドル部材３１をベース部材５０に接続していた。しかし、これに限らず、係合突部５４の位置をパドル部材３１の第１位置とし、第１位置から離間した第２位置に接続部５６を設けることでパドル部材３１の回動範囲を制限可能であれば、接続部５６を設けた第２位置は、任意に変更してもよい。また、ケーブル部材５７の数や形状、或いは素材や配置、ケーブル部材５７のパドル部材３１及びベース部材５０に対する接続構造等は、任意に変更してもよい。また、ケーブル部材５７以外の形態を含め、このようなストッパ機構６０を備えなくてもよい。

　・ショルダーサポート用の空気袋１１は、シート材７０ａ，７０ｂの厚み方向に２つの袋部７１ａ，７１ｂを重ねた構造を有していたが、袋部７１の数は、一つでも３つ以上であってもよい。また、複数の袋部７１を備える場合、各袋部７１がシート材７０ａ，７０ｂの厚み方向に重なる構造でなくてもよい。

　・袋部７１を構成する各シート材７０ａ，７０ｂの材質や形状、貼り合わせ方法は、任意に変更してもよい。また、拡幅部７５を有していれば、定率拡幅部７５ａは、備えていなくてもよい。更に、ストラップ７７の形状も、紐状等、帯状に限らず、任意に変更してもよい。また、ストラップ７７を備えなくてもよい。

　・ベース部材５０に対するパドル部材３１の回動連結構造、及び、ベース部材５０とパドル部材３１との間に介在される空気袋１１の構造は、ショルダーサポート装置４１以外のシートサポート装置４０に適用してもよい。例えば、バックサイドサポート装置４４やクッションサイドサポート装置４６等、シート１の内側でパドル部材３０がベース部材５０に対し回動してシート表面１ｓを膨出させることでシートサポート形状を変更するのであれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、シートサポート装置４０（シート装置２０）において、ヒンジ構造を用いる等、上記実施形態とは異なるパドル部材３１の回動連結構造を適用してもよい。

Claims (10)

1. 　シートの内側に固定されるベース部材と、
   　前記ベース部材に対して回動して連結されたパドル部材と、
   　前記ベース部材と前記パドル部材の間に介在され、二枚のシート材を貼り合わせてなる袋部とを備え、
   　前記袋部は、前記パドル部材の回動軸に沿った袋幅を有し、
   　前記袋部には、前記袋部が収縮した状態において、前記ベース部材に連結された前記パドル部材の基端から前記パドル部材の先端に向かって前記袋幅が徐々に広くなる拡幅部が設けられている、空気袋。
2. 　請求項１に記載の空気袋において、
   　前記拡幅部には、前記パドル部材の基端から先端に向かって前記袋幅が一定の比率で広くなる定率拡幅部が設定されている、空気袋。
3. 　請求項１又は２に記載の空気袋において、
   　前記袋部は、複数の袋部のうちの一つであり、
   　前記複数の袋部は、前記各シート材の厚み方向に重ねられている、空気袋。
4. 　請求項１～３の何れか一項に記載の空気袋は、更に、
   　前記パドル部材の先端に設けられ、前記袋部と前記ベース部材とを接続するストラップを備える、空気袋。
5. 　請求項１～４の何れか一項に記載の空気袋を備えた車両用シート装置。
6. 　請求項５に記載の車両用シート装置において、
   　前記パドル部材は、前記空気袋の拡縮に基づき回動することによりシートサポート形状を変化させ、
   　前記パドル部材には、前記ベース部材に設けられた孔部に挿入されることにより前記孔部に係合して前記パドル部材の回動支点を形成する係合突部が設けられ、
   　前記係合突部は、前記パドル部材が前記空気袋に押圧されることにより、前記ベース部材の孔部から引き出される方向に摺動し、
   　前記係合突部の摺動により、前記係合突部と前記孔部との係合位置が、前記係合突部の先端に向けて移動する、車両用シート装置。
7. 　請求項６に記載の車両用シート装置において、
   　前記係合突部は、前記ベース部材の孔部との前記係合位置を内側に向けて湾曲した軸形状をなしている、車両用シート装置
8. 　請求項６又は７に記載の車両用シート装置において、
   　前記係合突部には、前記ベース部材の孔部に係合することにより前記孔部から前記係合突部が引き出される方向の摺動を制限する抜止部が設けられている、車両用シート装置。
9. 　請求項６～８のうちいずれか一項に記載の車両用シート装置は、更に、
   　前記パドル部材と前記ベース部材とを連結することにより前記パドル部材の回動範囲を制限するストッパ機構を備え、
   　前記ストッパ機構は、前記パドル部材において前記係合突部が設けられた第１位置から離間した第２位置に、前記パドル部材に対する接続部を有している、車両用シート装置。
10. 　請求項５～９のうちいずれか一項に記載の車両用シート装置において、
    　前記パドル部材は、シートバックの肩部において前記シートサポート形状を変化させる、車両用シート装置。

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