WO2018042871A1 - ジアザジエニル化合物、薄膜形成用原料及び薄膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
下記一般式(I)で表されるジアザジエニル化合物。上記一般式(I)において、R1は炭素数1~6の直鎖又は分岐状のアルキル基を表し、Mはニッケル原子又はマンガン原子を表す。特に、上記一般式(I)において、R1がメチル基である化合物は、蒸気圧が高く、熱分解開始温度が高いため、CVD法又はALD法による薄膜形成用原料に好適である。
Description
本発明は、新規なジアザジエニル化合物、該化合物を含有してなる薄膜形成用原料及び該薄膜形成用原料を用いた薄膜の製造方法に関する。
金属元素を含む薄膜材料は、電気特性及び光学特性等を示すことから、種々の用途に応用されている。例えば、ニッケル及びニッケル含有薄膜は、主に抵抗膜、バリア膜等の電子部品の部材や、磁性膜等の記録メディア用の部材や、電極等の薄膜太陽電池用部材等に用いられている。
上記の薄膜の製造法としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法、CVD法、原子層堆積法(以下、ALD法と記載することもある)が挙げられ、得られる薄膜の品質が良好なことからCVD法やALD法が主に用いられる。
化学気相成長法に用いられる金属供給源として、様々な原料が多数報告されているが、例えば、特許文献1には、ALD法による薄膜形成用原料として用いることができるジアザジエニル錯体が開示されている。また、特許文献2には、化学蒸着法又は原子層蒸着法に使用することができるジアザジエン系金属化合物が開示されている。特許文献1及び特許文献2には、本発明のジアザジエニル化合物について具体的な記載がない。
化学気相成長用原料等を気化させて基材表面に金属を含有する薄膜を形成する場合、蒸気圧が高く、自然発火性が無く、高品質な薄膜を形成することができる化学気相成長用原料が好適である。より高品質な薄膜を形成するためには、ALD法を用いて200℃以上の加熱を行うことが必要であることから、ALD法に適用可能であり、蒸気圧が高く、自然発火性が無く、200℃以上の熱分解開始温度を有する化学気相成長用原料が求められていた。上記高品質な薄膜とは、膜中の残留炭素含有量が少ないことを意味する。
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定のジアザジエニル化合物が上記課題を解決し得ることを知見し、本発明に到達した。
本発明は、下記一般式(I)で表されるジアザジエニル化合物を提供するものである。
(式中、R1は炭素数1~6の直鎖又は分岐状のアルキル基を表し、Mはニッケル原子又はマンガン原子を表す。)
また、本発明は、上記一般式(I)で表されるジアザジエニル化合物を含有してなる薄膜形成用原料を提供するものである。
更に、本発明は、上記薄膜形成用原料を気化させて得られるジアザジエニル化合物を含有する蒸気を、基体が設置された成膜チャンバー内に導入し、該ジアザジエニル化合物を分解及び/又は化学反応させて該基体の表面にニッケル原子及びマンガン原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する薄膜を形成する薄膜の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、蒸気圧が高く、自然発火性が無く、熱分解開始温度が非常に高いジアザジエニル化合物を得ることができる。該ジアザジエニル化合物は、CVD法やALD法による薄膜形成用原料として特に適している。該ジアザジエニル化合物を含有してなる薄膜形成用原料は、CVD法やALD法によって、膜中の残留炭素含有量が少ない高品質な薄膜を形成することができる。なかでも、本発明のジアザジエニル化合物は水素との反応性が特異的に良好であるため、該ジアザジエニル化合物を含有してなる薄膜形成用原料は、ALD法によって非常に高品質な金属ニッケル薄膜を形成することができる。
本発明のジアザジエニル化合物は、上記一般式(I)で表されるものであり、CVD法等の気化工程を有する薄膜製造方法のプレカーサとして好適なものであり、ALD法を用いて薄膜を形成することもできる。
本発明の上記一般式(I)において、R1は炭素数1~6の直鎖又は分岐状のアルキル基を表し、Mはニッケル原子又はマンガン原子を表す。
上記R1で表される炭素数1~6の直鎖又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基及びヘキシル基等が挙げられる。
上記一般式(I)において、R1がメチル基である化合物は、蒸気圧が高く、熱分解開始温度が高く、CVD法又はALD法による薄膜形成用原料として用いた場合に、高品質な薄膜を得ることができることから特に好ましい。気化工程を伴わないMOD法による薄膜の製造方法の場合は、R1は、使用される溶媒に対する溶解性、薄膜形成反応等によって適宜選択することができる。
一般式(I)で表されるジアザジエニル化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記化合物No.1~No.12で表される化合物が挙げられる。なお、下記化合物No.1~No.12において「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「Pr」はプロピル基を表し、「iPr」はイソプロピル基を表し、「sBu」は第二ブチル基を表し、「tBu」は第三ブチル基を表す。
本発明のジアザジエニル化合物は、その製造方法により特に制限されることはなく、周知の反応を応用して製造される。例えばニッケルのジアザジエニル化合物を製造する場合には、例えば、ニッケルのハロゲン化物、硝酸塩等の無機塩又はその水和物と、該当するジアザジエン化合物とを、ナトリウム、リチウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、アンモニア、アミン等の塩基の存在下で反応させる方法、ニッケルのハロゲン化物、硝酸塩等の無機塩又はその水和物と、該当するジアザジエン化合物のナトリウム錯体、リチウム錯体、カリウム錯体等とを反応させる方法などが挙げられる。
なお、ここで用いるジアザジエン化合物は、その製造方法により特に限定されることはなく、周知の反応を応用することで製造することができる。例えば、アルキルアミンとアルキルグリオキサールとをトリクロロメタン等の溶媒中で反応させたものを適切な溶媒で抽出し、脱水処理することで得る方法が挙げられる。
なお、ここで用いるジアザジエン化合物は、その製造方法により特に限定されることはなく、周知の反応を応用することで製造することができる。例えば、アルキルアミンとアルキルグリオキサールとをトリクロロメタン等の溶媒中で反応させたものを適切な溶媒で抽出し、脱水処理することで得る方法が挙げられる。
本発明の薄膜形成用原料とは、上記で説明した本発明のジアザジエニル化合物を薄膜のプレカーサとしたものであり、その形態は、該薄膜形成用原料が適用される製造プロセスによって異なる。例えば、ニッケル及びマンガンから選ばれる少なくとも1種の金属のみを含む薄膜を製造する場合、本発明の薄膜形成用原料は、上記ジアザジエニル化合物以外の金属化合物及び半金属化合物を非含有である。一方、2種類以上の金属及び/又は半金属を含む薄膜を製造する場合、本発明の薄膜形成用原料は、上記ジアザジエニル化合物に加えて、所望の金属を含む化合物及び/又は半金属を含む化合物(以下、他のプレカーサともいう)を含有する。本発明の薄膜形成用原料は、後述するように、更に、有機溶剤及び/又は求核性試薬を含有してもよい。本発明の薄膜形成用原料は、上記説明のとおり、プレカーサであるジアザジエニル化合物の物性がCVD法、ALD法に好適であるので、特に化学気相成長用原料(以下、CVD用原料ということもある)として有用である。
本発明の薄膜形成用原料が化学気相成長用原料である場合、その形態は使用されるCVD法の輸送供給方法等の手法により適宜選択されるものである。
上記の輸送供給方法としては、CVD用原料を該原料が貯蔵される容器(以下、単に原料容器と記載することもある)中で加熱及び/又は減圧することにより気化させて蒸気とし、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に、該蒸気を基体が設置された成膜チャンバー内(以下、堆積反応部と記載することもある)へと導入する気体輸送法、CVD用原料を液体又は溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて蒸気とし、該蒸気を成膜チャンバー内へと導入する液体輸送法がある。気体輸送法の場合は、上記一般式(I)で表されるジアザジエニル化合物そのものをCVD用原料とすることができる。液体輸送法の場合は、上記一般式(I)で表されるジアザジエニル化合物そのもの又は該化合物を有機溶剤に溶かした溶液をCVD用原料とすることができる。これらのCVD用原料は更に他のプレカーサや求核性試薬等を含んでいてもよい。
また、多成分系のCVD法においては、CVD用原料を各成分独立で気化、供給する方法(以下、シングルソース法と記載することもある)と、多成分原料を予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、カクテルソース法と記載することもある)がある。カクテルソース法の場合、本発明のジアザジエニル化合物と他のプレカーサとの混合物若しくは該混合物を有機溶剤に溶かした混合溶液をCVD用原料とすることができる。この混合物や混合溶液は更に求核性試薬等を含んでいてもよい。
上記の有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく周知一般の有機溶剤を用いることができる。該有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;1-シアノプロパン、1-シアノブタン、1-シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3-ジシアノプロパン、1,4-ジシアノブタン、1,6-ジシアノヘキサン、1,4-ジシアノシクロヘキサン、1,4-ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ピリジン、ルチジン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、溶質の溶解性、使用温度と沸点、引火点の関係等により、単独で用いてもよいし、又は二種類以上を混合して用いてもよい。これらの有機溶剤を使用する場合、プレカーサを有機溶剤に溶かした溶液であるCVD用原料中におけるプレカーサ全体の量が0.01~2.0モル/リットル、特に0.05~1.0モル/リットルとなるようにするのが好ましい。プレカーサ全体の量とは、本発明の薄膜形成用原料が、本発明のジアザジエニル化合物以外の金属化合物及び半金属化合物を非含有である場合、本発明のジアザジエニル化合物の量であり、本発明の薄膜形成用原料が、該ジアザジエニル化合物に加えて他の金属を含む化合物及び/又は半金属を含む化合物(他のプレカーサ)を含有する場合、本発明のジアザジエニル化合物及び他のプレカーサの合計量である。
また、多成分系のCVD法の場合において、本発明のジアザジエニル化合物と共に用いられる他のプレカーサとしては、特に制限を受けず、CVD用原料に用いられている周知一般のプレカーサを用いることができる。
上記の他のプレカーサとしては、水素化物、水酸化物、ハロゲン化物、アジ化物、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキニル、アミノ、ジアルキルアミノアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアミン、ジ(シリル-アルキル)アミノ、ジ(アルキル-シリル)アミノ、ジシリルアミノ、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドラジド、ホスフィド、ニトリル、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトナート、シクロペンタジエニル、シリル、ピラゾレート、グアニジネート、ホスホグアニジネート、アミジナート、ケトイミナート、ジケチミナート、カルボニル及びホスホアミジナートを配位子として有する化合物からなる群から選択される一種類又は二種類以上のケイ素や金属の化合物が挙げられる。
プレカーサの金属種としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムが挙げられる。
上記の他のプレカーサは、当該技術分野において公知のものであり、その製造方法も公知である。製造方法の一例を挙げれば、例えば、有機配位子としてアルコール化合物を用いた場合には、先に述べた金属の無機塩又はその水和物と、該アルコール化合物のアルカリ金属アルコキシドとを反応させることによって、プレカーサを製造することができる。ここで、金属の無機塩又はその水和物としては、金属のハロゲン化物、硝酸塩等を挙げることができ、アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等を挙げることができる。
上記の他のプレカーサは、シングルソース法の場合は、本発明のジアザジエニル化合物と、熱及び/又は酸化分解の挙動が類似している化合物が好ましく、カクテルソース法の場合は、熱及び/又は酸化分解の挙動が類似していることに加え、混合時に化学反応等による変質を起こさないものが好ましい。
上記の他のプレカーサのうち、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを含むプレカーサとしては、下記式(II-1)~(II-5)で表される化合物が挙げられる。
(式中、M1は、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを表し、Ra及びRbは各々独立に、ハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表し、Rcは炭素数1~8のアルキル基を表し、Rdは炭素数2~18の分岐してもよいアルキレン基を表し、Re及びRfは各々独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、Rg、Rh、Rk及びRjは各々独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、pは0~4の整数を表し、qは0又は2を表し、rは0~3の整数を表し、sは0~4の整数を表し、tは1~4の整数を表す。)
上記式(II-1)~(II-5)において、Ra及びRbで表される、ハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、第三ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、1-メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、第三ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、第三オクチル基、2-エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロヘキシル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-ブトキシエチル基、2-(2-メトキシエトキシ)エチル基、1-メトキシ-1,1-ジメチルメチル基、2-メトキシ-1,1-ジメチルエチル基、2-エトキシ-1,1-ジメチルエチル基、2-イソプロポキシ-1,1-ジメチルエチル基、2-ブトキシ-1,1-ジメチルエチル基、2-(2-メトキシエトキシ)-1,1-ジメチルエチル基等が挙げられる。また、Rcで表される炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、第三ペンチル基、ヘキシル基、1-エチルペンチル基、シクロヘキシル基、1-メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、第三ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、第三オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。また、Rdで表される炭素数2~18の分岐してもよいアルキレン基とは、グリコールにより与えられる基であり、該グリコールとしては、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1-メチル-2,4-ペンタンジオール等が挙げられる。また、Re及びRfで表される炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基等が挙げられる。Rg、Rh、Rj及びRkで表される炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
具体的にはチタンを含むプレカーサとして、テトラキス(エトキシ)チタニウム、テトラキス(2-プロポキシ)チタニウム、テトラキス(ブトキシ)チタニウム、テトラキス(第二ブトキシ)チタニウム、テトラキス(イソブトキシ)チタニウム、テトラキス(第三ブトキシ)チタニウム、テトラキス(第三ペンチル)チタニウム、テトラキス(1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ)チタニウム等のテトラキスアルコキシチタニウム類;テトラキス(ペンタン-2,4-ジオナト)チタニウム、(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム等のテトラキスβ-ジケトナトチタニウム類;ビス(メトキシ)ビス(ペンタン-2,4-ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(ペンタン-2,4-ジオナト)チタニウム、ビス(第三ブトキシ)ビス(ペンタン-2,4-ジオナト)チタニウム、ビス(メトキシ)ビス(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、ビス(2-プロポキシ)ビス(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、ビス(第三ブトキシ)ビス(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、ビス(第三アミロキシ)ビス(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、ビス(メトキシ)ビス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、ビス(2-プロポキシ)ビス(2,6,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、ビス(第三ブトキシ)ビス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、ビス(第三アミロキシ)ビス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム等のビス(アルコキシ)ビス(βジケトナト)チタニウム類;(2-メチルペンタンジオキシ)ビス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム、(2-メチルペンタンジオキシ)ビス(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)チタニウム等のグリコキシビス(βジケトナト)チタニウム類;(メチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)チタニウム、(シクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)チタニウム、(メチルシクロペンタジエニル)トリス(エチルメチルアミノ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(エチルメチルアミノ)チタニウム、(シクロペンタジエニル)トリス(エチルメチルアミノ)チタニウム、(メチルシクロペンタジエニル)トリス(ジエチルアミノ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(ジエチルアミノ)チタニウム、(シクロペンタジエニル)トリス(ジエチルアミノ)チタニウム等の(シクロペンタジエニル)トリス(ジアルキルアミノ)チタニウム類;(シクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(メチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(プロピルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(イソプロピルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(ブチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(イソブチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、第三ブチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム等の(シクロペンタジエニル)トリス(アルコキシ)チタニウム類等が挙げられる。ジルコニウムを含むプレカーサ又はハフニウムを含むプレカーサとしては、上記チタンを含むプレカーサとして例示した化合物におけるチタンを、ジルコニウム又はハフニウムに置き換えた化合物が挙げられる。
希土類元素を含むプレカーサとしては、下記式(III-1)~(III~3)で表される化合物が挙げられる。
(式中、M2は、希土類原子を表し、Ra及びRbは各々独立に、ハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表し、Rcは炭素数1~8のアルキル基を表し、Re及びRfは各々独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、Rg及びRjは各々独立に、炭素数1~4のアルキル基を表し、p’は0~3の整数を表し、r’は0~2の整数を表す。)
上記の希土類元素を含むプレカーサにおいて、M2で表される希土類原子としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられる。Ra、Rb、Rc、Re、Rf、Rg及びRjで表される基としては、前記のチタンを含むプレカーサで例示した基が挙げられる。
また、本発明の薄膜形成用原料には、必要に応じて、本発明のジアザジエニル化合物及び他のプレカーサの安定性を付与するため、求核性試薬を含有してもよい。該求核性試薬としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、24-クラウン-8、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、ジベンゾ-24-クラウン-8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7-ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリエトキシトリエチレンアミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、オキサゾール、チアゾール、オキサチオラン等の複素環化合物類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸-2-メトキシエチル等のβ-ケトエステル類又はアセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、2,4-ヘプタンジオン、3,5-ヘプタンジオン、ジピバロイルメタン等のβ-ジケトン類が挙げられる。これら求核性試薬の使用量は、プレカーサ全体の量1モルに対して0.1モル~10モルの範囲が好ましく、より好ましくは1~4モルである。
本発明の薄膜形成用原料には、これを構成する成分以外の不純物金属元素分、不純物塩素などの不純物ハロゲン分、及び不純物有機分が極力含まれないようにする。不純物金属元素分は、元素毎では100ppb以下が好ましく、10ppb以下がより好ましく、総量では、1ppm以下が好ましく、100ppb以下がより好ましい。特に、LSIのゲート絶縁膜、ゲート膜、バリア層として用いる場合は、得られる薄膜の電気的特性に影響のあるアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有量を少なくすることが必要である。不純物ハロゲン分は、100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下が最も好ましい。不純物有機分は、総量で500ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、10ppm以下が最も好ましい。また、水分は、化学気相成長用原料中でのパーティクル発生や、薄膜形成中におけるパーティクル発生の原因となるので、プレカーサ、有機溶剤及び求核性試薬については、それぞれの水分の低減のために、使用の際にあらかじめできる限り水分を取り除いた方がよい。プレカーサ、有機溶剤及び求核性試薬それぞれの水分量は、10ppm以下が好ましく、1ppm以下がより好ましい。
また、本発明の薄膜形成用原料は、形成される薄膜のパーティクル汚染を低減又は防止するために、パーティクルが極力含まれないようにするのが好ましい。具体的には、液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定において、0.3μmより大きい粒子の数が液相1ml中に100個以下であることが好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に1000個以下であることがより好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に100個以下であることが最も好ましい。
本発明の薄膜形成用原料を用いて薄膜を製造する本発明の薄膜の製造方法としては、本発明の薄膜形成用原料を気化させた蒸気、及び必要に応じて用いられる反応性ガスを、基体が設置された成膜チャンバー内に導入し、次いで、プレカーサを基体上で分解及び/又は化学反応させて金属を含有する薄膜を基体表面に成長、堆積させるCVD法によるものである。原料の輸送供給方法、堆積方法、製造条件、製造装置等については、特に制限を受けるものではなく、周知一般の条件及び方法を用いることができる。
上記の必要に応じて用いられる反応性ガスとしては、例えば、酸化性のものとしては酸素、オゾン、二酸化窒素、一酸化窒素、水蒸気、過酸化水素、ギ酸、酢酸、無水酢酸等が挙げられ、還元性のものとしては水素が挙げられ、また、窒化物を製造するものとしては、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキレンジアミン等の有機アミン化合物、ヒドラジン、アンモニア等が挙げられ、これらは1種類又は2種類以上使用することができる。中でも、本発明のジアザジエニル化合物は水素との反応性が特異的に良好であるため、反応性ガスとして水素を用いるとALD法によって非常に高品質な金属ニッケル薄膜を形成できる。
また、上記の輸送供給方法としては、前述した気体輸送法、液体輸送法、シングルソース法、カクテルソース法等が挙げられる。
また、上記の堆積方法としては、原料ガス又は原料ガスと反応性ガスを熱のみにより反応させ薄膜を堆積させる熱CVD、熱とプラズマを使用するプラズマCVD、熱と光を使用する光CVD、熱、光及びプラズマを使用する光プラズマCVD、CVDの堆積反応を素過程に分け、分子レベルで段階的に堆積を行うALDが挙げられる。
上記基体の材質としては、例えばシリコン;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、酸化チタン、窒化チタン、酸化ルテニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン等のセラミックス;ガラス;金属ルテニウム等の金属が挙げられる。基体の形状としては、板状、球状、繊維状、鱗片状が挙げられる。基体表面は、平面であってもよく、トレンチ構造等の三次元構造となっていてもよい。
また、上記の製造条件としては、反応温度(基体温度)、反応圧力、堆積速度等が挙げられる。反応温度については、本発明のジアザジエニル化合物が充分に反応する温度である150℃以上が好ましく、150℃~400℃がより好ましく、200℃~350℃が特に好ましい。また、反応圧力は、熱CVD又は光CVDの場合、大気圧~10Paが好ましく、プラズマを使用する場合、2000Pa~10Paが好ましい。
また、堆積速度は、原料の供給条件(気化温度、気化圧力)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることができる。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、0.01~100nm/分が好ましく、1~50nm/分がより好ましい。また、ALD法の場合は、所望の膜厚が得られるようにサイクルの回数でコントロールされる。
また、堆積速度は、原料の供給条件(気化温度、気化圧力)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることができる。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、0.01~100nm/分が好ましく、1~50nm/分がより好ましい。また、ALD法の場合は、所望の膜厚が得られるようにサイクルの回数でコントロールされる。
上記の製造条件として更に、薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする際の温度や圧力が挙げられる。薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする工程は、原料容器内で行ってもよく、気化室内で行ってもよい。いずれの場合においても、本発明の薄膜形成用原料は0~150℃で蒸発させることが好ましい。また、原料容器内又は気化室内で薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする場合に原料容器内の圧力及び気化室内の圧力はいずれも1~10000Paであることが好ましい。
本発明の薄膜の製造方法は、ALD法を採用して、上記の輸送供給方法により、薄膜形成用原料を気化させて蒸気とし、該蒸気を成膜チャンバー内へ導入する原料導入工程のほか、該蒸気中の上記ジアザジエニル化合物により上記基体の表面に前駆体薄膜を形成する前駆体薄膜成膜工程、未反応のジアザジエニル化合物ガスを排気する排気工程、及び、該前駆体薄膜を反応性ガスと化学反応させて、該基体の表面に上記金属を含有する薄膜を形成する金属含有薄膜形成工程を有していてもよい。
以下では、上記の各工程について詳しく説明する。ニッケル原子及びマンガン原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する金属薄膜をALD法により形成する場合は、まず、前記で説明した原料導入工程を行う。薄膜形成用原料を蒸気とする際の好ましい温度や圧力は上記で説明したものと同様である。次に、堆積反応部に導入したジアザジエニル化合物により、基体表面に前駆体薄膜を成膜させる(前駆体薄膜成膜工程)。このときに、基体を加熱するか、堆積反応部を加熱して、熱を加えてもよい。この工程で成膜される前駆体薄膜は、ジアザジエニル化合物の一部が分解及び/又は反応して生成した薄膜であり、目的の金属薄膜とは異なる組成を有する。本工程が行われる際の基体温度は、室温~500℃が好ましく、150~350℃がより好ましい。本工程が行われる際の系(成膜チャンバー内)の圧力は1~10000Paが好ましく、10~1000Paがより好ましい。
次に、未反応のジアザジエニル化合物ガスや副生したガスを堆積反応部から排気する(排気工程)。未反応のジアザジエニル化合物ガスや副生したガスは、堆積反応部から完全に排気されるのが理想的であるが、必ずしも完全に排気される必要はない。排気方法としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより系内をパージする方法、系内を減圧することで排気する方法、これらを組み合わせた方法などが挙げられる。減圧する場合の減圧度は、0.01~300Paが好ましく、0.01~100Paがより好ましい。
次に、堆積反応部に反応性ガスを導入し、該反応性ガスの作用又は反応性ガス及び熱の作用により、先の前駆体薄膜成膜工程で得た前駆体薄膜から目的の金属薄膜を形成する(金属薄膜形成工程)。本工程において熱を作用させる場合の温度は、室温~500℃が好ましく、150~350℃がより好ましい。本工程が行われる際の系(成膜チャンバー内)の圧力は1~10000Paが好ましく、10~1000Paがより好ましい。本発明のジアザジエニル化合物は、反応性ガスとの反応性が良好であるため、残留炭素含有量が少ない高品質な金属薄膜を得ることができる。
本発明の薄膜の製造方法において、上記のようにALD法を採用した場合、上記の原料導入工程、前駆体薄膜成膜工程、排気工程及び金属薄膜形成工程からなる一連の操作による薄膜堆積を1サイクルとし、このサイクルを必要な膜厚の薄膜が得られるまで複数回繰り返してもよい。この場合、1サイクル行った後、上記排気工程と同様にして、堆積反応部から未反応のジアザジエニル化合物ガス及び反応性ガス、更に副成したガスを排気した後、次の1サイクルを行うことが好ましい。
また、薄膜のALD法による形成においては、プラズマ、光、電圧などのエネルギーを印加してもよく、触媒を用いてもよい。該エネルギーを印加する時期及び触媒を用いる時期は、特には限定されず、例えば、原料導入工程におけるジアザジエニル化合物ガス導入時、前駆体薄膜成膜工程又は薄膜形成工程における加温時、排気工程における系内の排気時、薄膜形成工程における反応性ガス導入時でもよく、上記の各工程の間でもよい。
また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜堆積の後に、より良好な電気特性を得るために不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下又は還元性雰囲気下でアニール処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。この場合の温度は、200~1000℃であり、250~500℃が好ましい。
本発明の薄膜形成用原料を用いて薄膜を製造する装置は、周知の化学気相成長法用装置を用いることができる。具体的な装置の例としては図1のようなプレカーサをバブリング供給することのできる装置や、図2のように気化室を有する装置が挙げられる。また、図3及び図4のように反応性ガスに対してプラズマ処理を行うことのできる装置が挙げられる。図1~図4のような枚葉式装置に限らず、バッチ炉を用いた多数枚同時処理可能な装置を用いることもできる。
本発明の薄膜形成用原料を用いて製造される薄膜は、他のプレカーサ、反応性ガス及び製造条件を適宜選択することにより、メタル、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、ガラス等の所望の種類の薄膜とすることができる。該薄膜は種々の電気特性及び光学特性等を示すことが知られており、種々の用途に応用されている。例えば、銅及び銅含有薄膜は、高い導電性、高エレクトロマイグレーション耐性、高融点という特性から、LSIの配線材料として応用されている。また、ニッケル及びニッケル含有薄膜は、主に抵抗膜、バリア膜等の電子部品の部材や、磁性膜等の記録メディア用の部材や、電極等の薄膜太陽電池用部材等に用いられている。
以下、実施例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
[製造例1]N,N’-ジイソプロピル-プロパン-1,2-ジイミンの製造
1L四つ口フラスコに、イソプロピルアミン197g(3.33mol)と脱水トリクロロメタン496g(4.16mol)を仕込み、10℃付近まで冷却した。この溶液にピルブアルデヒド40%水溶液150g(0.833mol)を液温10~14℃となるように1時間かけて滴下した。滴下終了後、液温10℃で2時間撹拌した。その後、反応液を静置し有機層を分液した。更に、水層はトリクロロメタン(100g)で2回抽出を行い有機層を回収した。全ての有機層をまとめて硫酸ナトリウムで脱水、ろ過後に、微減圧下オイルバス温度60~70℃にて脱溶媒を行った。その後、減圧下オイルバス温度64℃にて蒸留を行った。得られた留分は淡黄色透明の液体であり、収量95.5g及び収率74.0%であった。
1L四つ口フラスコに、イソプロピルアミン197g(3.33mol)と脱水トリクロロメタン496g(4.16mol)を仕込み、10℃付近まで冷却した。この溶液にピルブアルデヒド40%水溶液150g(0.833mol)を液温10~14℃となるように1時間かけて滴下した。滴下終了後、液温10℃で2時間撹拌した。その後、反応液を静置し有機層を分液した。更に、水層はトリクロロメタン(100g)で2回抽出を行い有機層を回収した。全ての有機層をまとめて硫酸ナトリウムで脱水、ろ過後に、微減圧下オイルバス温度60~70℃にて脱溶媒を行った。その後、減圧下オイルバス温度64℃にて蒸留を行った。得られた留分は淡黄色透明の液体であり、収量95.5g及び収率74.0%であった。
(分析値)
(1)質量分析 m/z:154(M+)
(2)元素分析 C:72.2質量%、H:12.0質量%、N:17.9質量%(理論値;C:70.0質量%、H:11.8質量%、N:18.2質量%)
(1)質量分析 m/z:154(M+)
(2)元素分析 C:72.2質量%、H:12.0質量%、N:17.9質量%(理論値;C:70.0質量%、H:11.8質量%、N:18.2質量%)
[実施例1]化合物No.1の製造
1L四つ口フラスコに、上記で得られたN,N’-ジイソプロピル-プロパン-1,2-ジイミン21.4g(138.9mmol)と脱水テトラヒドロフラン(412g)を仕込み、ドライアイス/IPAバスで-30℃まで冷却した。その中に、金属リチウム片0.988g(142.4mmol)を少しずつ加え-10℃で反応させた。この溶液を、塩化ニッケル9.0g(69.45mmol)と脱水テトラヒドロフラン(412g)の懸濁液に、-10℃前後で滴下した後、室温に昇温し15時間反応させた。その後、オイルバス温度65℃、微減圧下で脱溶媒を行った。放冷後、脱水ヘキサンで再溶解させメンブランフィルタでろ別した。得られたろ液をオイルバス温度65℃、微減圧下で脱溶媒し、乾燥させた。得られた残渣をオイルバス温度115℃、20Paで蒸留し、赤黒色粘性液体である目的物を得た。収量は5.8gであり、収率20.5%であった。得られた目的物を大気中で放置することで自然発火性の有無を確認したところ、自然発火性は無かった。
1L四つ口フラスコに、上記で得られたN,N’-ジイソプロピル-プロパン-1,2-ジイミン21.4g(138.9mmol)と脱水テトラヒドロフラン(412g)を仕込み、ドライアイス/IPAバスで-30℃まで冷却した。その中に、金属リチウム片0.988g(142.4mmol)を少しずつ加え-10℃で反応させた。この溶液を、塩化ニッケル9.0g(69.45mmol)と脱水テトラヒドロフラン(412g)の懸濁液に、-10℃前後で滴下した後、室温に昇温し15時間反応させた。その後、オイルバス温度65℃、微減圧下で脱溶媒を行った。放冷後、脱水ヘキサンで再溶解させメンブランフィルタでろ別した。得られたろ液をオイルバス温度65℃、微減圧下で脱溶媒し、乾燥させた。得られた残渣をオイルバス温度115℃、20Paで蒸留し、赤黒色粘性液体である目的物を得た。収量は5.8gであり、収率20.5%であった。得られた目的物を大気中で放置することで自然発火性の有無を確認したところ、自然発火性は無かった。
(分析値)
(1)1NMR(溶媒:重ベンゼン)(ケミカルシフト:多重度:H数)
(8.976:s:1)(3.151~3.087:m:1)(2.651~2.587:m:1)(1.937~1.870:m:12)(-1.408:s:3)
(2)元素分析(金属分析:ICP-AES、塩素分析:TOX)
Ni:15.9質量%、C:58.6質量%、H:10.0質量%、N:15.5質量%(理論値;Ni:16.0質量%、C:58.8質量%、H:9.88質量%、N:15.3質量%)、塩素(TOX):10ppm未満
(1)1NMR(溶媒:重ベンゼン)(ケミカルシフト:多重度:H数)
(8.976:s:1)(3.151~3.087:m:1)(2.651~2.587:m:1)(1.937~1.870:m:12)(-1.408:s:3)
(2)元素分析(金属分析:ICP-AES、塩素分析:TOX)
Ni:15.9質量%、C:58.6質量%、H:10.0質量%、N:15.5質量%(理論値;Ni:16.0質量%、C:58.8質量%、H:9.88質量%、N:15.3質量%)、塩素(TOX):10ppm未満
[評価例1]化合物の物性評価
化合物No.1及び下記比較化合物1について、目視によって常圧30℃における各化合物の状態を観察した。また、化合物No.1及び下記比較化合物1について、DSCを用いて熱分解が開始する温度を測定した。また、化合物No.1及び下記比較化合物1について、TG-DTAを用いて減圧下で重量が50%減少した際の温度を測定した。結果を表1に示す。
(減圧TG-DTA測定条件)
10Torr、Ar流量:50ml/分、昇温速度:10℃/分、サンプル量:約10mg
化合物No.1及び下記比較化合物1について、目視によって常圧30℃における各化合物の状態を観察した。また、化合物No.1及び下記比較化合物1について、DSCを用いて熱分解が開始する温度を測定した。また、化合物No.1及び下記比較化合物1について、TG-DTAを用いて減圧下で重量が50%減少した際の温度を測定した。結果を表1に示す。
(減圧TG-DTA測定条件)
10Torr、Ar流量:50ml/分、昇温速度:10℃/分、サンプル量:約10mg
上記表1より、化合物No.1及び比較化合物1は常圧30℃の条件下で液体状態の化合物であり、どちらも熱分解開始温度が200℃以上であることがわかった。化合物No.1は比較化合物1よりも熱分解開始温度が15℃程度高いことがわかった。また、減圧TG-DTAの結果から、化合物No.1は、比較化合物1よりも50質量%減少時の温度が若干高いものの、化学気相成長用原料として十分な蒸気圧を示すことがわかった。
[実施例2]ALD法による金属ニッケル薄膜の製造
化合物No.1を化学気相成長用原料とし、図1に示す化学気相成長用装置を用いて以下の条件のALD法により、Cu基板上に金属ニッケル薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は7~8nmであり、膜組成は金属ニッケル(XPS分析によるNi2pピークで確認)であり、薄膜中の残留炭素含有量は検出下限である0.1atom%よりも少なかった。1サイクル当たりに得られる膜厚は、約0.05nmであった。
化合物No.1を化学気相成長用原料とし、図1に示す化学気相成長用装置を用いて以下の条件のALD法により、Cu基板上に金属ニッケル薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は7~8nmであり、膜組成は金属ニッケル(XPS分析によるNi2pピークで確認)であり、薄膜中の残留炭素含有量は検出下限である0.1atom%よりも少なかった。1サイクル当たりに得られる膜厚は、約0.05nmであった。
(条件)
反応温度(基板温度):250℃、反応性ガス:水素ガス
(工程)
下記(1)~(4)からなる一連の工程を1サイクルとして、150サイクル繰り返した。
(1)原料容器加熱温度:100℃、原料容器内圧力:100Paの条件で気化させた化学気相成長用原料を成膜チャンバーに導入し、系圧力:100Paで30秒間堆積させる。
(2)5秒間のアルゴンパージにより、未反応原料及び副生ガスを除去する。
(3)反応性ガスを成膜チャンバーに導入し、系圧力:100Paで30秒間反応させる。
(4)5秒間のアルゴンパージにより、未反応原料及び副生ガスを除去する。
反応温度(基板温度):250℃、反応性ガス:水素ガス
(工程)
下記(1)~(4)からなる一連の工程を1サイクルとして、150サイクル繰り返した。
(1)原料容器加熱温度:100℃、原料容器内圧力:100Paの条件で気化させた化学気相成長用原料を成膜チャンバーに導入し、系圧力:100Paで30秒間堆積させる。
(2)5秒間のアルゴンパージにより、未反応原料及び副生ガスを除去する。
(3)反応性ガスを成膜チャンバーに導入し、系圧力:100Paで30秒間反応させる。
(4)5秒間のアルゴンパージにより、未反応原料及び副生ガスを除去する。
[比較例1]
化学気相成長用原料として上記比較化合物1を用いた以外は実施例2と同様の方法で金属ニッケル薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は6nmであり、膜組成は金属ニッケル(XPS分析によるNi2pピークで確認)であり、薄膜中の残留炭素含有量は24atom%であった。1サイクル当たりに得られる膜厚は、0.04nmであった。
化学気相成長用原料として上記比較化合物1を用いた以外は実施例2と同様の方法で金属ニッケル薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は6nmであり、膜組成は金属ニッケル(XPS分析によるNi2pピークで確認)であり、薄膜中の残留炭素含有量は24atom%であった。1サイクル当たりに得られる膜厚は、0.04nmであった。
以上の結果より、実施例2では、薄膜中の残留炭素含有量が少なく非常に品質の高い金属ニッケル薄膜をALD法によって製造することができることがわかった。一方、比較例1では、得られた金属ニッケル薄膜中に大量の残留炭素の存在が確認され、品質の良い金属ニッケル薄膜を製造することができないことがわかった。
なお、本国際出願は、2016年8月29日に出願した日本国特許出願第2016-166588号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本国際出願に援用する。
Claims (4)
- 上記一般式(I)において、R1がメチル基である請求項1に記載のジアザジエニル化合物。
- 請求項1又は2に記載のジアザジエニル化合物を含有してなる薄膜形成用原料。
- 請求項3に記載の薄膜形成用原料を気化させて得られるジアザジエニル化合物を含有する蒸気を、基体が設置された成膜チャンバー内に導入し、該ジアザジエニル化合物を分解及び/又は化学反応させて該基体の表面にニッケル原子及びマンガン原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する薄膜を形成する薄膜の製造方法。
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