WO2016129554A1 - センサユニット付軸受キャップ及び転がり軸受ユニット - Google Patents

Abstract

　底板部の軸方向内側面のうち、上下方向に隣り合う２箇所位置のうちの上側の位置に、センサホルダを構成するホルダ本体部を内嵌する為のホルダ支持部を、同じく下側の位置に、センサホルダを結合するボルトを螺合させる為のナットを保持したナット保持部を、互いに離隔した状態で突設する。ホルダ支持部を、下端部に不連続部を有する欠円筒状に構成する。ナット保持部の上側面を、不連続部と対向する部分を最も上方に位置させた円筒面とする。

Description

センサユニット付軸受キャップ及び転がり軸受ユニット

　この発明は、センサユニット付軸受キャップ、及び、このセンサユニット付軸受キャップを備えた転がり軸受ユニットに関する。

　自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する為の車輪支持用の転がり軸受ユニットと、ＡＢＳ等の制御に必要な車輪の回転速度を検出する為の回転速度検出装置とを互いに組み合わせて成る、回転速度検出装置付の転がり軸受ユニットが、従来から広く使用されている。

　図１０は、回転速度検出装置付の転がり軸受ユニットの従来構造の１例として、特許文献１に記載されたものを示している。この回転速度検出装置付の転がり軸受ユニット１は、外輪２の内径側に、複数個の転動体４、４を介してハブ３を回転自在に支持している。外輪は、使用時において懸架装置に支持固定された状態で回転せず、ハブは３、使用時において図示しない車輪を支持した状態で車輪と共に回転する。外輪２の外周面には、懸架装置を構成する図示しないナックルに結合固定する為の固定側フランジ５が設けられている。ハブ３の外周面の軸方向外端寄り（軸方向に関して「外」とは、車両への組み付け状態で車体の幅方向外側を言い、図１、２、５、７、９、１０の左側。反対に、車体の幅方向中央側となる、図１、２、５、７、９、１０の右側を、軸方向に関して「内」と言う。本明細書及び特許請求の範囲の全体で同じ。）部分には、車輪を支持固定する為の回転側フランジ６が設けられている。

　外輪２の内周面とハブ３の外周面との間で各転動体４、４を設置した空間の軸方向外端開口は、シールリング７により塞いでいる。これに対し、外輪２の軸方向内端部には、有底円筒状の軸受キャップ８を装着して、この外輪２の軸方向内端開口を塞いでいる。この軸受キャップ８は、合成樹脂製で、全体を有底円筒状に構成されたキャップ本体９と、このキャップ本体９にモールド固定された金属板製の金属環１０から構成される。軸受キャップ８は、円筒状の嵌合筒部１１と、この嵌合筒部１１の軸方向内端部から径方向内方に向けて伸長した底板部１２とを備えている。そして、嵌合筒部１１の先半部（軸方向外半部）を構成する金属環１０が、外輪２の軸方向内端部外周面に締り嵌めで外嵌固定される事により、軸受キャップ８は、外輪２の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪２の軸方向内端部に装着されている。

　ハブ３の軸方向内端部には、回転速度検出装置を構成する、円環状のエンコーダ１３を、このハブ３と同心に支持固定している。このエンコーダ１３の被検出面（軸方向内側面）には、Ｓ極とＮ極とが円周方向に関して交互に且つ等ピッチで配置されている。軸受キャップ８を構成する底板部１２には、回転速度検出装置を構成する合成樹脂製のセンサホルダ１４を支持固定している。この為に、底板部１２のうちで、軸方向に関してエンコーダ１３の被検出面の一部と対向する部分に、軸方向に貫通するホルダ挿入孔１５を形成すると共に、このホルダ挿入孔１５に隣接した部分に、ボルト挿通孔１６を形成している。底板部１２の軸方向外側面のうちで、このボルト挿通孔１６の開口周縁部に、ナット１７を熱かしめ固定している。そして、センサホルダ１４を構成する、その先端部にホール素子等の磁気検出素子及び波形成形回路を組み込んだＩＣから成るセンサを包埋した、棒状（円柱状又は四角柱状等）のホルダ本体部１８を、ホルダ挿入孔１５内に挿入している。更に、このホルダ本体部１８の基端部に設けられた取付フランジ部１９及びボルト挿通孔１６を挿通したボルト２０を、ナット１７に螺合している。これにより、センサホルダ１４を軸受キャップ８に支持固定している。

　以上の様な回転速度検出装置付の転がり軸受ユニット１の使用時には、外輪２の外周面に固設した固定側フランジ５を懸架装置に対して、図示しないボルトにより結合固定すると共に、ハブ３の外周面に固設した回転側フランジ６に車輪を、この回転側フランジ６に設けたスタッドボルトにより固定する。これにより、懸架装置に対して車輪が回転自在に支持される。この状態で車輪が回転すると、ホルダ本体部１８の先端部に保持されたセンサの近傍を、エンコーダ１３の被検出面に配置されたＳ極とＮ極とが交互に通過する。この結果、センサの検出部内を流れる磁束の密度が変化し、その出力信号を変化させる。この様にしてセンサの出力信号が変化する周波数は、車輪の回転数に比例する。従って、この出力信号を図示しない制御器に送れば、ＡＢＳ（Antilock Brake System）やＴＣＳ（Traction Control System）を適切に制御できる。

　但し、上述した様な従来構造の第１例の場合には、次の様な問題を生じる可能性がある。即ち、軸受キャップ８を構成する底板部１２を軸方向に貫通したホルダ挿入孔１５に、ホルダ本体部１８を挿入する構成を採用している為、このホルダ挿入孔１５を通じて、軸受キャップ８の内部（底板部１２の軸方向外側）の空間に、泥水等の異物が侵入する可能性がある。又、ホルダ挿入孔１５だけでなく、ボルト挿通孔１６に就いても、底板部１２を軸方向に貫通している為、センサホルダ１４を軸受キャップ８に支持固定する以前の状態で、両孔１５、１６を通じて、この軸受キャップ８の内部の空間に異物が侵入する可能性がある。

　上述の様な事情に鑑みて、例えば特許文献２には、図１１～１２に示す様な、軸受キャップ８ａの構造が開示されている。この従来構造の第２例の軸受キャップ８ａは、合成樹脂製で、全体を有底円筒状に構成されたキャップ本体９ａと、このキャップ本体９ａにモールド固定された金属板製の金属環１０ａ及びナット１７ａとから構成され、円筒状の嵌合筒部１１ａと、この嵌合筒部１１ａの軸方向内端部から径方向内方に向けて伸長した底板部１２ａとを備える。そして、このうちの底板部１２ａに、センサホルダ１４ａを構成するホルダ本体部１８ａの先端部を挿入する為の、軸方向内側面側のみが開口した有底のホルダ挿入孔１５ａを設けている。このホルダ挿入孔１５ａの周囲に、底板部１２ａの軸方向内側面から軸方向内方に向けて突出する状態で、ホルダ本体部１８ａの中間部外周面をがたつきなく支持する為の、筒状のホルダ支持部２１を設けている。そして、このホルダ支持部２１及びホルダ挿入孔１５ａにより、ホルダ本体部１８ａを介して（このホルダ本体部１８ａの先端部に包埋した）センサの位置決めを図っている。底板部１２ａのうちで、ホルダ挿入孔１５ａに隣接する部分に、ナット１７ａをインサート成形により保持している。

　以上の様な構成を有する従来構造の第２例の場合には、ホルダ挿入孔１５ａを、底板部１２ａを軸方向に貫通しない有底孔としている。その為、このホルダ挿入孔１５ａを通じて、泥水等の異物が軸受キャップ８ａの内部に侵入する事を防止できる。更に、ナット１７ａを設けた部分に関しても、底板部１２ａを軸方向に貫通しない構造としている為、異物の進入を防止できる。

　ところが、上述した従来構造の第２例の場合には、ホルダ挿入孔１５ａ又はホルダ支持部２１内に侵入した異物を、効率良く排出する事が困難である。
　即ち、従来構造の第２例の場合には、ホルダ支持部２１の内周面の断面形状（輪郭形状）を、ホルダ本体部１８ａの外周面形状に合致した円形状ではなく、ホルダ支持部２１の内側にこのホルダ本体部１８ａを挿入した際に、このホルダ本体部１８ａの周囲の円周方向４箇所に断面略半円形状の隙間２２、２２が形成される形状（花弁形状）としている。これにより、これら各隙間２２、２２を利用して、ホルダ挿入孔１５ａ又はホルダ支持部２１の内側に侵入した異物を外部に排出する様にしている。但し、各隙間２２、２２は何れも、軸方向内方のみが開口した軸方向に長い形状を有している為、これら各隙間２２、２２を通じて異物を完全に排出する事は困難であり、水分だけが排出されて内部に泥が堆積する可能性がある。内部に堆積した泥や内部に残留した水分の氷結によって、ホルダ本体部１８ａの先端部を損傷したり、ホルダ挿入孔１５ａの底部を損傷したりする可能性もある。

日本国特開平１１－１４２４２４号公報 国際公開第２０１４／０４４２６１号

　本発明は、上述の様な事情に鑑みて、ホルダ支持部内に侵入した異物を効果的に排出する事ができる、センサユニット付軸受キャップの構造を実現すべく発明したものである。

　本発明のセンサユニット付軸受キャップ及び転がり軸受ユニットのうち、センサユニット付軸受キャップは、軸受キャップと、センサユニットとを備える。
　このうちの軸受キャップは、軸方向内端部にエンコーダを支持したハブを、複数個の転動体を介して内径側に回転自在に支持した外輪の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪の軸方向内端部に装着される。
　又、前記センサユニットは、センサと、このセンサを保持した状態で前記軸受キャップに支持固定されたセンサホルダとを備える。
　又、前記軸受キャップは、全体を有底円筒状に構成されており、前記外輪の軸方向内端部に嵌合固定される嵌合筒部と、この嵌合筒部の軸方向一部（例えば軸方向内端部）から径方向内方に伸長する状態で設けられた底板部とを備え、少なくともこの底板部が合成樹脂を射出成形する事により造られている。
　又、前記底板部には、使用状態で上下方向に隣り合う２箇所位置のうち上側の位置である、軸方向に関して前記エンコーダの一部と対向する位置にホルダ支持部が設けられ、前記２箇所位置のうち下側の位置にナット保持部が設けられる。これらホルダ支持部とナット保持部は、それぞれ前記底板部の軸方向内側面から軸方向内方に突出する状態で、且つ、互いに離隔した状態にされている。
　又、前記ホルダ支持部は、円周方向１箇所に不連続部を有する欠筒状（例えば、欠円筒状）に造られていると共に、この不連続部が、使用状態で下方｛例えば、下端部の幅方向（車両への組み付け状態での前後方向に相当）中央部｝に位置する部分に配置されている。
　又、前記ナット保持部は、内径側にナットを保持していると共に、外周面のうち、使用状態で前記ホルダ支持部の下側面と対向する上側面が、前記不連続部と対向する部分を最も上方に位置させた凸曲面（例えば、円筒面）となっている。
　又、前記センサホルダは、前記ホルダ支持部に挿入された、その軸方向外端部に前記センサを保持したホルダ本体部と、このホルダ本体部のうち前記ホルダ支持部内から軸方向内側に突出した部分に設けられて、その軸方向外側面を、前記ホルダ支持部の軸方向内端面と前記ナット保持部の軸方向内端面との少なくともこのナット保持部の軸方向内端面に当接させた取付フランジ部とを備える。
　又、前記センサホルダは、前記取付フランジ部を軸方向に挿通（貫通）したボルトの雄ねじ部を前記ナットに螺合させる事に基づいて、前記軸受キャップに支持固定されている。

　本発明のセンサユニット付軸受キャップを実施する場合には、追加的に、前記ナット保持部の軸方向内端面を、前記ホルダ支持部の軸方向内端面よりも軸方向内側に配置すると共に、これらホルダ支持部の軸方向内端面とナット保持部の軸方向内端面とのうちの、このナット保持部の軸方向内端面にのみ、前記取付フランジ部の軸方向外側面を当接させる事ができる。
　又、本発明のセンサユニット付軸受キャップを実施する場合には、追加的に、前記取付フランジ部の軸方向外側面と前記ホルダ支持部の軸方向内端面との間に存在する隙間の厚さ寸法を、前記ホルダ支持部の内周面と前記ホルダ本体部の外周面との間に存在する隙間の厚さ寸法よりも小さくする事ができる。
　又、本発明のセンサユニット付軸受キャップを実施する場合には、追加的に、前記底板部のうち、軸方向に関して前記ホルダ支持部の内径側部分と整合する部分に、この底板部の軸方向内側面側にのみ開口して、前記ホルダ支持部の内径側部分と連通する、有底のセンサ挿入孔を設け、このセンサ挿入孔に前記ホルダ本体部の軸方向外端部を挿入する事ができる。

　又、本発明のセンサユニット付軸受キャップを実施する場合には、追加的に、使用状態で、前記不連続部を前記ホルダ支持部の下端部の幅方向中央部に配置すると共に、前記ナット保持部の上側面を円筒面とする。且つ、軸方向に対して直交する仮想平面内に於いて、幅方向に関して片側（又は他側）に存在する前記不連続部の端部及び前記ナット保持部の上側面の共通接線の水平線に対する傾斜角度をαとし、幅方向に関して互いに反対側に存在する前記不連続部の端部及び前記ナット保持部の上側面の共通接線の水平線に対する傾斜角度をβとした場合に、これらα、βを、「５０゜≦α≦６０゜、且つ、０゜＜β≦１０゜」の範囲（好ましくは、「５３゜≦α≦５７゜、且つ、３゜＜β≦７゜」の範囲）に規制する事ができる。

　一方、本発明の転がり軸受ユニットは、例えば自動車の車輪（従動輪）を回転自在に支持する為のもので、外輪と、ハブと、複数個の転動体と、エンコーダと、軸受キャップと、センサユニットとを備える。
　このうちの外輪は、内周面に単列又は複列の外輪軌道を有する。
　又、前記ハブは、外周面に単列又は複列の内輪軌道を有し、使用時に回転する。
　又、前記各転動体は、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に、転動自在に設けられている。これら各転動体としては、玉、円すいころ、円筒ころ、球面ころ、ニードル等を使用する事ができる。
　又、前記エンコーダは、前記ハブの軸方向内端部に、このハブと同心に支持固定され、その特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させたものである。
　又、前記軸受キャップは、前記外輪の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪の軸方向内端部に装着されている。
　又、前記センサユニットは、前記軸受キャップに支持固定されている。
　特に、本発明の転がり軸受ユニットの場合には、前記軸受キャップに前記センサユニットを支持固定して成るセンサユニット付軸受キャップとして、上記のセンサユニット付軸受キャップを使用している。

　上述の様に構成する本発明のセンサユニット付軸受キャップ及び転がり軸受ユニットによれば、軸受キャップを構成する底板部に設けられたホルダ支持部内に侵入した異物を効果的に排出する事ができる。
　即ち、本発明の場合には、ホルダ支持部の円周方向１箇所に不連続部が存在し、この不連続部が、下方に位置する部分に配置されている。この為、このホルダ支持部の軸方向内端面とセンサホルダを構成する取付フランジ部の軸方向外側面との間部分を通じて、外部からホルダ支持部内に泥水等の異物が侵入した場合でも、この異物を重力の作用を利用して、不連続部を通じて効果的に排出する事ができる。
　更に、本発明の場合には、ホルダ支持部の下側面にナット保持部の上側面が対向していると共に、このナット保持部の上側面が、不連続部と対向する部分を最も上方に位置させた凸曲面となっている。これにより、ホルダ支持部の下側面（及び不連続部を介して露出した、センサホルダを構成するホルダ本体部の下側面）とナット保持部の上側面との間部分は、上下方向に関する幅寸法が、幅方向に関して、中央部分（不連続部に対応する部分）で小さくなった形状になっている。この為、使用時に（例えば、自動車の走行により）、その間部分で幅方向（前後方向）の気流が発生した場合には、この気流は、ナット保持部の上側面に沿った、上に凸の円弧状の流れとなり、増速しながら、その間部分の幅方向中央部分に流入する。そして、この様に増速した気流の流入に伴って、この幅方向中央部分が陰圧となる。この結果、上に凸の円弧状の流れの効果（不連続部の内側を気流が通過する効果）、及び、ベンチュリー効果（陰圧に基づく流体の引き込み効果）により、その間部分の幅方向中央部分で、不連続部を通じての異物の排出効果が高められる。

　又、本発明の場合には、ホルダ支持部の不連続部に、ナット保持部の上側面が対向している。この為、このナット保持部により、不連続部を、路面から跳ね上がった泥水から保護する事ができる。従って、この泥水が、不連続部を通じて、ホルダ支持部内に侵入する事を、有効に防止できる。

　又、本発明の場合には、ナット保持部の上側面が、ホルダ支持部の不連続部と対向する部分を最も上方に位置させた凸曲面となっている。この為、ベンチュリー効果を生じさせるべく、ナット保持部の上側面を、ホルダ本体部の外周面のうち不連続部を通じて外部に露出した部分に近づける場合でも、（ナット保持部の上側面が幅方向に対して平行な平坦面となっている場合に比べて、）ナット保持部の上側面とホルダ支持部の円周方向両端部との対向間隔を確保し易い。従って、軸受キャップの底板部を射出成形する際に使用する射出成形用金型のうち、ナット保持部の上側面とホルダ支持部の円周方向両端部との間に位置する部分の肉厚を確保し易い。この結果、この肉厚が小さい場合に生じる不都合を回避できる。

本発明の実施の形態の第１例を示す、回転速度検出装置付の転がり軸受ユニットの断面図。 同じくセンサユニット付軸受キャップを取り出して示す断面図。 同じく軸受キャップを取り出して図２の右方から見た端面図。 図３の一部を拡大して示す要部拡大図。 本発明に関する参考例の第１例を示す図２と同様の断面図。 同じく図３に相当する端面図。 本発明に関する参考例の第２例を示す図２と同様の断面図。 同じく図３に相当する端面図。 本発明の実施の形態の第２例を示す、図２に相当する断面図。 従来構造の第１例の回転速度検出装置付の転がり軸受ユニットを示す断面図。 従来構造の第２例に関する軸受キャップを取り出して示す端面図。 同じく図１１のXII-XII断面図。

　［実施の形態の第１例］
　本発明の実施の形態の第１例に就いて、図１～４により説明する。本例の特徴は、外輪２の軸方向内端開口を塞ぐ為の軸受キャップ３３と、センサホルダ４６にセンサ４７を保持して成るセンサユニット４５とを組み合わせて成る、センサユニット付軸受キャップの構造を工夫した点にある。その他の部分の構成及び作用効果に就いては、前述した従来構造の場合と基本的には同じであるので、以下、本例の特徴部分及び先に説明しなかった部分を中心に説明する。

　本例の回転速度検出装置付の転がり軸受ユニット１ａは、従動輪である車輪をナックル等の懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する。この転がり軸受ユニット１ａは、静止輪である外輪２の内径側に、回転輪であるハブ３を、複数個の転動体４、４を介して、回転自在に支持している。

　外輪２は、外周面に懸架装置を構成する図示しないナックルに結合固定する為の固定側フランジ５を有し、内周面に複列の外輪軌道２３ａ、２３ｂを有している。ハブ３は、ハブ本体２４と内輪２５とを、かしめ部２６により結合固定して成り、外周面に複列の内輪軌道２７ａ、２７ｂを有し、外輪２の内径側に、この外輪２と同心に支持される。ハブ本体２４の軸方向外端部で、外輪２の軸方向外端開口よりも軸方向外方に突出した部分には、車輪を支持する為の回転側フランジ６を設けている。そして、各外輪軌道２３ａ、２３ｂと、各内輪軌道２７ａ、２７ｂとの間に、それぞれ複数個ずつ各転動体４、４を設けている。尚、図示の例では、これら各転動体４、４として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車用の転がり軸受ユニットの場合には、円すいころを使用する場合もある。

　外輪２及びハブ３を構成するハブ本体２４は、Ｓ５３Ｃ（JIS G 4051:2005）等の中炭素鋼製であり、少なくとも各軌道２３ａ、２３ｂ、２７ａの表面に、高周波焼き入れ等の硬化処理が施されている。一方、ハブ３を構成する内輪２５及び各転動体４、４は、ＳＵＪ２（JIS G 4051:2005）等の高炭素クロム軸受鋼製であり、例えば、ずぶ焼き入れによる硬化処理が施されている。

　ハブ３を構成する内輪２５の軸方向内端部には、回転速度検出装置を構成する、円環状のエンコーダ１３ａが、ハブ３と同心に支持固定されている。このエンコーダ１３ａは、支持環２８と、エンコーダ本体２９とから構成されている。支持環２８は、ＳＵＳ４３０（JIS G 4305:2010）等のフェライト系ステンレス鋼板やＳＰＣＣ(JIS　G　3141:2009)等の圧延鋼板に、プレス加工を施す事により、断面Ｌ字形で全体を円環状に形成される。この支持環２８は、支持円筒部３０と、この支持円筒部３０の軸方向内端部から径方向外方に折れ曲がる状態で設けられた支持円輪部３１とを備える。そして、支持円筒部３０の軸方向外端部が、内輪２５の軸方向内端部に締り嵌めで外嵌固定されている。

　エンコーダ本体２９は、フェライト粉末等の磁性体を混入したゴム磁石又はプラスチック磁石等の永久磁石により全体を円輪状に造られたもので、支持円輪部３１の軸方向内側面に添着固定されている。このエンコーダ本体２９の軸方向内側面である被検出面３２には、Ｓ極とＮ極とが円周方向に関して交互に且つ等ピッチで配置されている。この様な被検出面３２は、ハブ３と同心に、且つ、ハブ本体２４の軸方向内端部に形成されたかしめ部２６の軸方向内端面よりも軸方向内方に配置されている。

　外輪２の内周面とハブ３の外周面との間で各転動体４、４を設置した空間の軸方向外端開口は、シールリング７により塞いでいる。これに対し、外輪２の軸方向内端部には、有底円筒状の軸受キャップ３３を装着して、この外輪２の軸方向内端開口を塞いでいる。この軸受キャップ３３には、使用状態で、回転速度検出装置を構成する、センサユニット４５が支持固定されている。

　このセンサユニット４５は、合成樹脂製のセンサホルダ４６と、センサ４７とを含んで構成される。センサホルダ４６は、円柱状（棒状）のホルダ本体部４８と、このホルダ本体部４８の基端（軸方向内端、図１～２の右端）寄り部分に設けられた取付フランジ部４９とを備えている。センサ４７は、ホールＩＣ、ホール素子、ＭＲ素子（Magneto Resistive Device）、ＧＭＲ素子（Giant Magneto Resistive Device）等の磁気検知素子及び波形成形回路を組み込んだＩＣから成り、ホルダ本体部４８の先端部（軸方向外端部）にモールド固定（包埋）されている。

　軸受キャップ３３は、合成樹脂製で有底円筒状に構成されたキャップ本体３４と、このキャップ本体３４にそれぞれモールド固定された金属環３５及びナット３７と、Ｏリング３６とから構成される。この軸受キャップ３３は、略円筒状の嵌合筒部３８と、この嵌合筒部３８の軸方向一部の軸方向内端部から径方向内方に向けて伸長した（この嵌合筒部３８の軸方向内端開口を塞ぐ状態で設けられた）略円板状の底板部３９とを備えている。

　キャップ本体３４は、例えばポリアミド６６樹脂に、グラスファイバーを適宜加えた繊維強化ポリアミド樹脂材料を、射出成形する事により造られている。必要に応じて、ポリアミド樹脂に、非晶性芳香族ポリアミド樹脂（変性ポリアミド６Ｔ／６Ｉ）、低吸水脂肪族ポリアミド樹脂（ポリアミド１１樹脂、ポリアミド１２樹脂、ポリアミド６１０樹脂、ポリアミド６１２樹脂）を適宜加える事で、より耐水性を向上させても良い。本例の場合、金属環３５及びナット３７は、キャップ本体３４の射出成形時にモールド固定する事により、このキャップ本体３４に固定されている。

　軸受キャップ３３を構成する嵌合筒部３８は、先半部（軸方向外半部、図１～２の左半部）に設けられた小径筒部４０と、基半部（軸方向内半部、図１～２の右半部）に設けられた大径筒部４１とを、段差面４２により連続させた、段付き円筒状に構成されている。本例の場合、小径筒部４０の外径側部分を、金属環３５により構成している。この金属環３５は、ステンレス鋼板や圧延鋼板等から造られており、断面Ｌ字形で、円筒部４３と、この円筒部４３の軸方向内端部から径方向外方に折れ曲がった外向フランジ部４４とを備えている。円筒部４３は、軸方向内端部を除いた大部分が小径筒部４０の外周面に露出しているのに対し、外向フランジ部４４は、全体が大径筒部４１の内部に埋め込まれている。段差面４２の内径側部分を、Ｏリング３６用の係止溝とし、この係止溝にＯリング３６を係止している。

　底板部３９は、全体を略円板状に構成されている。この底板部３９には、使用状態で、上半部の幅方向（車両への組み付け状態での前後方向、図１～２の表裏方向、図３～４の左右方向）中央部に於ける、上下方向に隣り合う２箇所位置に、ホルダ支持部５０及びナット保持部５１が設けられている。より具体的には、この２箇所位置のうちの上側の位置である、軸方向に関してエンコーダ１３ａの被検出面３２の一部と対向する位置にホルダ支持部５０が設けられ、２箇所位置のうちの下側の位置にナット保持部５１が設けられる。これらホルダ支持部５０とナット保持部５１は、それぞれ底板部３９の軸方向内側面から軸方向内方に突出する状態で、且つ、互いに離隔した状態にされている。

　ホルダ支持部５０は、円周方向１箇所に不連続部５２を有する欠円筒状（断面略Ｃ字形状）に造られていると共に、この不連続部５２が、使用状態で下端（下部の幅方向中央部）に位置する部分に配置されている。この様なホルダ支持部５０の内径側部分は、軸方向に関しては内端部のみが開口すると共に、径方向に関しては不連続部５２に対応する部分のみが開口した、円柱状の有底孔となっている。この様なホルダ支持部５０は、センサホルダ４６を構成するホルダ本体部４８の先端部及び中間部をがたつきなく内嵌する為のもので、このホルダ本体部４８の先端部及び中間部の外径寸法よりも僅かに大きい内径寸法を有する。

　ナット保持部５１は、円筒状に造られたもので、内径側にナット３７が、インサート成形によりモールド固定されている。このナット３７は、軸方向外端部に底部を設けた有底円筒状の袋ナットであり、内周面に雌ねじ部５３が形成されていると共に、外周面の軸方向１乃至複数箇所（図示の例では１箇所）に係合凹溝５４が形成されている。そして、この係合凹溝５４内にナット保持部５１を構成する合成樹脂の一部を進入させている。このナット保持部５１の軸方向内端面とナット３７の軸方向内端面とは、ホルダ支持部５０の軸方向内端面と同一仮想平面上に位置している。本例の場合、底板部３９の軸方向内側面のうち、幅方向に関してナット保持部５１の片側（図３～４の左側）に隣接する部分には、略半長円形の凸部５９が設けられている。この凸部５９の軸方向内側面の略中央部に、キャップ本体３４を射出成形する際の合成樹脂の注入口（ゲート）である、円形状の凹部が形成されている。

　本例の場合、ナット３７を、軸方向に貫通しない構造（袋ナット）としている為、インサート成形時に、このナット３７を、雄ねじ部と螺合させずに済み、インサート成形の作業性を向上できる。一方、ナットを、軸方向に貫通した構造とした場合には、このナットの内側に合成樹脂が入り込まない様に、雄ねじ部と螺合した状態で、インサート成形を行う。ナット３７の固定方法は、インサート成形に限らず、例えば圧入等、従来から知られた各種方法を採用できる。

　本例の場合、ホルダ支持部５０の外周面（不連続部５２に対応する下端部を除く。）と、ナット保持部５１の外周面とは、それぞれが円筒面であると共に、それぞれの中心軸が、互いに同一の鉛直線上に位置している。この為、上下方向に関して互いに対向する、ホルダ支持部５０の外周面（不連続部５２に対応する下端部を除く。）のうちの下側面と、ナット保持部５１の外周面のうちの上側面とは、それぞれ上下方向に関して相手側に向けて凸となる円筒面になっている。特に、ナット保持部５１の上側面は、不連続部５２と対向する部分が最も上方に位置する、上に凸の円筒面となっている。本例の場合、ホルダ支持部５０の外周面と、ナット保持部５１の外周面とは、幅方向に重畳しておらず、これら両周面を幅方向から見た場合に、これら両周面同士の間に上下方向に関する微小な隙間が形成された状態となっている。

　本例の場合、軸方向に対して直交する仮想平面（図３の紙面）内に於いて、幅方向に関して片側（又は他側）に存在する不連続部５２の端部及びナット保持部５１の上側面の共通接線の水平線に対する傾斜角度をαとし、幅方向に関して互いに反対側に存在する不連続部５２の端部及びナット保持部５１の上側面の共通接線の水平線に対する傾斜角度をβとした場合に、α＝５５゜、β＝５゜となっている。

　本発明を実施する場合には、後述する様な不連続部５２を通じての異物の排出効果を高める観点より、α、βの値は、本例の値を中心とする所定の範囲、即ち、「５０゜≦α≦６０゜、且つ、０゜＜β≦１０゜」の範囲に規制する事が好ましい。更には、「５３゜≦α≦５７゜、且つ、３゜≦β≦７゜」の範囲に規制する事がより好ましい。これらα、βの範囲に関しては、更に後述する。

　上述の様な構成を有する本例の軸受キャップ３３は、嵌合筒部３８のうちの小径筒部４０（円筒部４３）を外輪２の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌固定する事により、この外輪２の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、この外輪２の軸方向内端部に装着される。この状態で、段差面４２を、この外輪２の軸方向内端面に突き当てる事により、この外輪２に対する軸受キャップ３３の軸方向に関する位置決めが図られる。これと共に、Ｏリング３６を、この外輪２の軸方向内端面と、このＯリング３６を係止した係止溝の底面との間で弾性的に圧縮する事により、これら両面同士の間部分がシールされる。そして、底板部３９のうちで、ホルダ支持部５０を設けた部分の軸方向外側面が、エンコーダ１３ａの被検出面３２に対し近接対向する。

　本例の場合には、軸受キャップ３３に対し、センサホルダ４６を、次の様にして支持固定する。即ち、このセンサホルダ４６を構成する棒状のホルダ本体部４８を、ホルダ支持部５０の内側にがたつきなく挿入（内嵌）する。これと共に、ホルダ本体部４８の基端寄り部分に設けられた取付フランジ部４９の軸方向外側面を、ホルダ支持部５０の軸方向内端面と、ナット保持部５１及びナット３７の軸方向内端面とに、それぞれ当接させる。そして、この状態で、取付フランジ部４９に設けた通孔５５を挿通したボルト５６の先端部に設けた雄ねじ部を、ナット３７の雌ねじ部５３に螺合させ、更に締め付ける。これにより、エンコーダ１３ａの被検出面３２に対し、ホルダ本体部４８の先端部に保持されたセンサ４７を、底板部３９を介して軸方向に近接対向させる。

　本例の場合には、この底板部３９の軸方向外側面のうち、軸方向に関してエンコーダ１３ａの被検出面３２と対向する部分に、全周に亙る環状凹部５７を形成している。そして、この被検出面３２を、この環状凹部５７の内側に挿入すると共に、この環状凹部５７の底部に近接対向させている。そして、この様な構成を採用する事により、この環状凹部５７の軸方向深さの分、軸方向に関するエンコーダ１３ａの被検出面３２とセンサ４７との対向距離を短くする事で、このセンサ４７の出力強度を高められる様にしている。

　上述の様な構成を有する本例の回転速度検出装置付きの転がり軸受ユニット１ａの場合にも、前述した従来構造の場合と同様に、従動輪である車輪を懸架装置に対して回転自在に支持できると共に、この車輪の回転速度を検出する事ができる。この為、ＡＢＳやＴＣＳを適切に制御できる。

　特に、本例の場合には、軸受キャップ３３を構成する底板部３９に設けられたホルダ支持部５０内に侵入した泥水等の異物を効果的に排出する事ができる。

　即ち、本例の場合には、ホルダ支持部５０の円周方向１箇所に不連続部５２が存在し、この不連続部５２が、このホルダ支持部５０の下端部に配置されている。この為、このホルダ支持部５０の軸方向内端面とセンサホルダ４６を構成する取付フランジ部４９の軸方向外側面との間部分を通じて、外部からホルダ支持部５０内に泥水等の異物が侵入した場合でも、この異物を重力の作用を利用して、不連続部５２を通じて外部に効果的に排出する事ができる。

　本例の場合には、ホルダ支持部５０の下側面にナット保持部５１の上側面が対向していると共に、このナット保持部５１の上側面が、不連続部５２と対向する部分を最も上方に位置させた円筒面となっている。この為、この不連続部５２を通じて排出された泥水等の異物が、ナット保持部５１の上側面に落下した場合には、この異物は、重力の作用により、この上側面に沿って円周方向に移動し易くなっており、別な言い方をすれば、落下した位置に留まりにくくなっている。

　本例の場合には、上述の様に、ホルダ支持部５０の下側面にナット保持部５１の上側面が対向していると共に、このナット保持部５１の上側面が、不連続部５２と対向する部分を最も上方に位置させた円筒面となっている。これにより、ホルダ支持部５０の下側面（及びセンサホルダ４６を構成するホルダ本体部４８の外周面のうちで不連続部５２を通じて外部に露出した部分）とナット保持部５１の上側面との間部分は、上下方向に関する幅寸法が、幅方向に関して、中央部分（不連続部５２に対応する部分）で小さくなった形状になっている。この為、使用時に（例えば、自動車の走行により）、上記の間部分で幅方向（前後方向）の気流が発生した場合には、この気流は、ナット保持部５１の上側面に沿った、上に凸の円弧状の流れとなり、増速しながら、上記の間部分の幅方向中央部分に流入する。そして、この様に増速した気流の流入に伴って、この幅方向中央部分が陰圧となる。この結果、上に凸の円弧状の流れの効果（不連続部５２の内側を気流が通過する効果）、及び、ベンチュリー効果（陰圧に基づく流体の引き込み効果）により、上記の間部分の幅方向中央部分で、不連続部５２を通じての異物の排出効果が高められる。

　本例の場合には、不連続部５２部分でベンチュリー効果を発生させる為に、この不連続部５２部分（特に、幅方向に関する、この不連続部５２の中央部分）の気流速度を高める必要がある。従って、ホルダ支持部５０とナット保持部５１との間には、幅方向から見た場合に、上下方向に関する小さな隙間が形成された状態となっている必要がある。この為、傾斜角度β（図３）は０゜（幅方向から見た場合に、ホルダ支持部５０とナット保持部５１とが接している様に見える角度）よりも大きくする必要がある。一方、傾斜角度βが１０゜を超えると、ホルダ本体部４８の外周面のうちで不連続部５２を通じて外部に露出した部分が上記の隙間に近づいてきて、ベンチュリー効果の発生に障害となってくるので、０゜＜β≦１０゜とする必要がある。

　更に、幅方向から見た場合に、ホルダ支持部５０とナット保持部５１との間に、上下方向に関する小さな隙間が形成された状態となり、且つ、ホルダ本体部４８の外周面のうちで不連続部５２を通じて外部に露出した部分と上記の隙間との距離を確保してベンチュリー効果を効率良く発生させる為には、３゜≦β≦７゜である事が好ましい。

　一方、傾斜角度α（図３）は、ホルダ本体部４８とホルダ支持部５０とでそれぞれ気流をどの程度絞るかの比率に関係し、この傾斜角度αが大きい程、ホルダ支持部５０側から不連続部５２に流入する気流が強くなる。この不連続部５２では、若干上に凸形状となった気流が、ホルダ本体部４８の外周面のうちで不連続部５２を通じて外部に露出した部分に当たる事なく流れる事が好ましい。これに対し、傾斜角度αが６０゜を超えると、気流が、ホルダ本体部４８の外周面のうちで不連続部５２を通じて外部に露出した部分に当たり始める。又、傾斜角度αが５０゜未満だと、不連続部５２の気流が上に凸形状に流れなくなるので、５０゜≦α≦６０゜とする必要がある。更に、５３゜≦α≦５７゜の範囲にすると、上に凸形状の気流が安定して得られる為、好ましい。

　図５～６に示す本発明に関する参考例の第１例や、図７～８に示す本発明に関する参考例の第２例の様に、ナット保持部５１ｘ（５１ｙ）の上側面が幅方向に対して平行な平坦面５８となっている構造の場合には、（本例の様に、ナット保持部５１の上側面が、不連続部５２と対向する部分を最も上方に位置させた円筒面となっている構造と異なり、）ホルダ本体部４８の外周面のうち、ホルダ支持部５０の不連続部５２を通じて外部に露出した部分に対し、ナット保持部５１ｘ（５１ｙ）の上側面を十分に近づける事が難しい。

　この為、これら参考例の第１～２例の場合には、ホルダ本体部４８の外周面のうちで不連続部５２を通じて外部に露出した部分とナット保持部５１ｘ（５１ｙ）の上側面との間部分の上下方向に関する幅寸法が大きくなり、幅方向の気流が発生した場合に、この間部分で気流の速度が低下し易い。従って、幅方向の気流に乗って、この間部分に水が侵入した場合に、この水がこの間部分に溜まると言った不都合が生じ易い。これに対して、本例の場合には、ホルダ本体部４８の外周面のうち、ホルダ支持部５０の不連続部５２を通じて外部に露出した部分に対し、ナット保持部５１の上側面を十分に近づける事ができる為、この様な不都合が生じる事を回避できる。

　本例の場合には、ホルダ支持部５０の不連続部５２に、ナット保持部５１の上側面が対向している。この為、このナット保持部５１により、不連続部５２を、路面から跳ね上がった泥水から保護する事ができる。従って、この泥水が、不連続部５２を通じて、ホルダ支持部５０内に侵入する事を、有効に防止できる。

　本例の場合には、ナット保持部５１の上側面が、ホルダ支持部５０の不連続部５２と対向する部分を最も上方に位置させた円筒面となっている。この為、ベンチュリー効果を生じさせるべく、ナット保持部５１の上側面を、不連続部５２を通じて外部に露出したホルダ本体部４８の下側面に近づける場合でも、（図５～６に示した本発明に関する参考例の第１例や、図７～８に示した本発明に関する参考例の第２例の様に、ナット保持部５１ｘ、５１ｙの上側面が幅方向に対して平行な平坦面５８となっている場合に比べて、）ナット保持部５１の上側面とホルダ支持部５０の円周方向両端部との対向間隔を確保し易い。従って、軸受キャップ３３の底板部３９を射出成形する際に使用する射出成形用金型のうち、ナット保持部５１の上側面とホルダ支持部５０の円周方向両端部との間に位置する部分の肉厚を確保し易い。

　この結果、この肉厚を小さくした場合に生じる不都合を回避できる。この様な不都合としては、例えば、射出成形用金型の製造や管理が難しくなる事や、その肉厚が小さくなった部分が射出成形時の圧力で変形する事に基づいて、或いは、その肉厚が小さくなった部分の熱容量が小さい為に、その周辺部分で樹脂の凝固が遅くなる事に基づいて、完成後の底板部３９にひけや変形が生じたり、射出成形サイクルが長くなったりする事が挙げられる。

　［実施の形態の第２例］
　本発明の実施の形態の第２例に就いて、図９により説明する。軸受キャップ３３ａを構成するキャップ本体３４ａを射出成形により造る上で、このキャップ本体３４ａを構成する、ホルダ支持部５０ａの軸方向内端面と、ナット保持部５１ａの軸方向内端面とを、同一仮想平面上に位置させる事は、困難である。本例の場合には、上記に鑑み、このナット保持部５１ａ及びナット３７の軸方向内端面を、ホルダ支持部５０ａの軸方向内端面よりも、寸法δだけ、軸方向内側に配置する構成を採用している。

　そして、軸受キャップ３３ａにセンサホルダ４６を支持固定した状態で、このセンサホルダ４６を構成する取付フランジ部４９の軸方向外側面を、ナット保持部５１ａ及びナット３７の軸方向内端面にのみ当接させると共に、取付フランジ部４９の軸方向外側面と、ホルダ支持部５０ａの軸方向内端面との間に、寸法δに見合った厚さ寸法を有する隙間を介在させている。

　更に、本例の場合には、この隙間の厚さ寸法を、ホルダ支持部５０ａの内周面とセンサホルダ４６を構成するホルダ本体部４８の外周面との間に存在する隙間の径方向厚さ寸法よりも小さくしている。

　これにより、本例の場合には、取付フランジ部４９の軸方向外側面とホルダ支持部５０ａの軸方向内端面との間の隙間内に泥水が侵入した場合にも、この泥水を重力の作用と毛細管現象とにより、ホルダ支持部５０ａ内に向かわせる事なく、この隙間内で下方に移動させ、最終的には、上述した実施の形態の第１例の場合と同様の効果（上に凸の円弧状の流れの効果、及び、ベンチュリー効果）により、外部に排出する様にしている。

　本例の場合には、軸受キャップ３３ａを構成する底板部３９ａのうち、軸方向に関してホルダ支持部５０ａの内径側部分と整合する部分に、この底板部３９ａの軸方向内側面側にのみ開口して、ホルダ支持部５０ａの内径側部分と連通する、有底のセンサ挿入孔６０を設けている。そして、このセンサ挿入孔６０にホルダ本体部４８の先端部をがたつきなく挿入（内嵌）する事により、上述の様に取付フランジ部４９の軸方向外側面とホルダ支持部５０ａの軸方向内端面との間に隙間が介在していても、ホルダ本体部４８（センサ４７）を確実に支持できる様にしている。

　即ち、ホルダ支持部５０ａは、下端部に不連続部５２を有している為、その分だけ（このホルダ支持部５０ａの内周面とホルダ本体部４８の外周面との径差が大きい場合と同じ様に）、このホルダ本体部４８は、ホルダ支持部５０ａの内側で動き易い状態となっている。この為、軸受キャップ３３ａに対してセンサホルダ４６をボルト５６により支持固定した状態で、車両の振動が発生すると、ホルダ本体部４８は、片持ち梁の先端部の様に、ホルダ支持部５０ａの内側で、ボルト５６の中心軸を中心として回転揺動運動を起こし易くなる。特に、本例の様に、取付フランジ部４９の軸方向内側面がホルダ支持部５０ａの軸方向内端面から浮き上がっている構造の場合には、ホルダ本体部４８が上記の回転揺動運動を更に起こし易くなる。そこで、本例の場合には、不連続部５２を有しないセンサ挿入孔６０を設け、このセンサ挿入孔６０にホルダ本体部４８の先端部をがたつきなく挿入する事により、上述の様なホルダ本体部４８の回転揺動運動を起こしにくくしている。

　本例の場合には、底板部３９ａの軸方向外側面に環状凹部５７（図１～２参照）を設けていない。その代わりに、上述の様にセンサ挿入孔６０にホルダ本体部４８の先端部を挿入する事により、このホルダ本体部４８の先端部に保持したセンサ４７と、エンコーダ１３ａの被検出面３２（図１～２参照）との対向距離を短くしている。
　その他の構成及び作用効果に就いては、上述した実施の形態の第１例の場合と同様である。

　上述した実施の形態の各例では、軸受キャップを、合成樹脂製のキャップ本体と、金属製の金属環等、合成樹脂以外の材料から造られた部材を組み合わせた構造を例に挙げて説明したが、本発明を実施する場合、軸受キャップは、その全体が合成樹脂から造られていても良い。上述した実施の形態の各例では、本発明の転がり軸受ユニットを、車輪支持用の転がり軸受ユニットに適用した場合に就いて説明したが、本発明の転がり軸受ユニットは、この様な用途に限定されず、例えば工作機械等、種々の用途に適用する事ができる。

　本発明は、２０１５年２月１３日出願の日本国特許出願２０１５－２６３７７号に基づき、その内容は参照としてここに取り込まれる。

　　１、１ａ　　転がり軸受ユニット
　　２　　外輪
　　３　　ハブ
　　４　　転動体
　１３、１３ａ　　エンコーダ
　２３ａ、２３ｂ　外輪軌道
　２７ａ、２７ｂ　内輪軌道
　３３、３３ａ　軸受キャップ
　３８　　嵌合筒部
　３９　　底板部
　４５　　センサユニット
　４６　　センサホルダ
　４７　　センサ
　４８　　ホルダ本体部
　４９　　取付フランジ部
　５０、５０ａ　　ホルダ支持部
　５１、５１ａ、５１ｘ、５１ｙ　　ナット保持部

Claims (2)

1. 　軸方向内端部にエンコーダを支持したハブを、複数個の転動体を介して内径側に回転自在に支持した外輪の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、前記外輪の軸方向内端部に装着される軸受キャップと、
   　センサと、該センサを保持した状態で前記軸受キャップに支持固定されたセンサホルダとを備えたセンサユニットと、
   を備え、
   　前記軸受キャップは、前記外輪の軸方向内端部に嵌合固定される嵌合筒部と、該嵌合筒部の軸方向一部から径方向内方に伸長する状態で設けられた底板部とを備え、少なくとも前記底板部が合成樹脂を射出成形する事により造られたものであり、
   　前記底板部には、使用状態で上下方向に隣り合う２箇所位置のうち上側の位置である、軸方向に関して前記エンコーダの一部と対向する位置にホルダ支持部が設けられ、前記２箇所位置のうち下側の位置にナット保持部が設けられ、
   　前記ホルダ支持部と前記ナット保持部は、それぞれ前記底板部の軸方向内側面から軸方向内方に突出する状態で、且つ、互いに離隔した状態にされ、
   　前記ホルダ支持部は、円周方向１箇所に不連続部を有する欠筒状に造られている共に、前記不連続部が、使用状態で下方に位置する部分に配置され、
   　前記ナット保持部は、内径側にナットを保持すると共に、外周面は、使用状態で前記ホルダ支持部の下側面と対向する上側面が、前記不連続部と対向する部分を最も上方に位置させた凸曲面となっており、
   　前記センサホルダは、前記ホルダ支持部に挿入された、その軸方向外端部に前記センサを保持したホルダ本体部と、該ホルダ本体部の前記ホルダ支持部内から軸方向内側に突出した部分に設けられ、軸方向外側面を、前記ホルダ支持部の軸方向内端面と前記ナット保持部の軸方向内端面との少なくとも前記ナット保持部の軸方向内端面に当接させた取付フランジ部とを備えており、
   　前記センサホルダは、前記取付フランジ部を軸方向に挿通したボルトの雄ねじ部を前記ナットに螺合させる事に基づいて、前記軸受キャップに支持固定されている、
   センサユニット付軸受キャップ。
2. 　内周面に外輪軌道を有し、使用時にも回転しない外輪と、
   　外周面に内輪軌道を有し、使用時に回転するハブと、
   　前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、
   　前記ハブの軸方向内端部に前記ハブと同心に支持固定され、その特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させたエンコーダと、
   　前記外輪の軸方向内端開口を塞ぐ状態で、前記外輪の軸方向内端部に装着された軸受キャップと、
   　前記軸受キャップに支持固定されたセンサユニットと、
   を備えた転がり軸受ユニットであって、
   　前記軸受キャップは、前記センサユニットが支持固定されて成る請求項１に記載のセンサユニット付軸受キャップである転がり軸受ユニット。

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