[第1の実施の形態] 以下、本発明の第1の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1に示されるようにコードレス電動工具10(以下単に電動工具10とする)と、充電可能な電池パック50とが接続されている。ここで、電動工具10は、例えば、丸のこやカンナなどである。電池パック50は二次電池53と、電池保護IC51と、電流検出回路55と、サーミスタ57と、サーマルプロテクタ59とを備えている。また、電池パック50はCプラス端子61と、プラス端子62と、マイナス端子63と、LS端子64と、LD端子65とを備えている。Cプラス端子61は、サーマルプロテクタ59と接続されている。プラス端子62、及び、マイナス端子63を介して二次電池の電力が電動工具10へ供給される。LS端子64はサーミスタ57と接続されている。LD端子65は保護IC51に接続されている。
二次電池53は、複数の電池セル53aからなり、図1の例では、5つの電池セル53aが全て直列に接続されている。尚、電池セル種別は、特に限定されるものではなく、任意の二次電池を対象としているが、本実施の形態では、電池セル53aにリチウムイオン電池を用いた例を説明する。尚、電池セル53aの個数や接続の仕方は一例にすぎず、例えば、電池セル53aが並列に接続されていてもよい。本実施の形態では、各電池セル53aは定格電圧が3.6Vである。従って、二次電池53全体としての定格電圧は18Vである。
電流検出回路55は、二次電池53のマイナス側とマイナス端子63との間に設けられ、二次電池53から出力される電流を検出している。詳細には、電流検出回路55はシャント抵抗からなり、シャント抵抗の電圧降下を電池保護IC51に出力する。
電池保護IC51は、電流検出回路55の検出結果に基づいて出力電流が所定値以上であるときは、過電流であると判断し、モータ停止信号(以下、停止信号)をLD端子65に出力する。また、電池保護IC51は、各電池セル53aの電圧を検出し、その中の1つでも過充電や過放電なったときにも、停止信号をLD端子65へ出力する。
図2は、本実施の形態における電池保護IC51が停止信号を出力する条件を示した表である。電池保護IC51は、電流検出回路55により電流が75A以上である期間が0.5秒間継続された場合に過電流であると判断し、停止信号を出力する。また、複数の電池セル53aのうち何れか1つの電池セル53aが2.0V以下の時に、過放電であると判断し停止信号を出力する。
サーミスタ57は、LS端子64と、二次電池53のマイナス側との間に接続されている。また、サーミスタ57は、二次電池53の近傍に配置されており、二次電池53の温度を検出している。
サーマルプロテクタ59は、二次電池53のプラス側と、Cプラス端子61との間に接続されている。サーマルプロテクタ59も二次電池53の近傍に配置されている。サーマルプロテクタ59の温度が所定の温度(例えば85℃)以上になるとサーマルプロテクタ59は開放され、二次電池53と、Cプラス端子61との間の電流路を遮断する。
電動工具10は、制御回路11と、モータ12と、遮断回路15と、電流検出回路17と、トリガスイッチ19と、を備えている。また、電動工具10は、Cプラス端子21と、プラス端子22と、マイナス端子23と、LS端子24と、LD端子25とを備え、それぞれ、電池パック50のCプラス端子61と、プラス端子62と、マイナス端子63と、LS端子64と、LD端子65とに接続される。これら端子が本発明の接続手段に相当する。制御回路11、遮断回路15がそれぞれ、制御手段、遮断手段に対応し、端子21~25が接続手段に対応する。
電池パック50の電力はプラス端子22、マイナス端子23を介してモータ12に供給される。モータ12は電池パック50から供給される電力によって回転する。トリガスイッチ19は、プラス端子62とモータ12との間に設けられ、モータ12の起動と停止とを切替える。
プラス端子22は、トリガスイッチ19を介して制御回路11とも接続されている。これにより電動工具10が電池パック50と接続されており、トリガスイッチ19がオンになっていると、制御回路11は、二次電池53の電圧を測定することが可能になる。
また、遮断回路15はFETからなり、モータ12とマイナス端子23との間に設けられている。FETをオフすることにより、遮断回路15はモータ12への電力を遮断する。これによりモータ12の起動と停止とが切替わる。
トリガスイッチ19は、作業者によって操作される。トリガスイッチ19がオンのときにはプラス端子22とモータ12とが導通し、オフの時にはプラス端子22とモータ12とが遮断される。これにより、モータ12の回転と停止とを切替える。
電流検出回路17は、シャント抵抗からなる。制御回路11は、電流検出回路17(シャント抵抗)に流れる電流値を検出する。
制御回路11はマイコンである。制御回路11はCプラス端子21、LS端子24、LD端子25と接続されている。制御回路11は、LS端子24を介してサーミスタ57の電圧を検出し、サーミスタの温度(二次電池53の温度)を測定する。
制御回路11は、LS端子25を介して停止信号を受信すると、FET15をオフさせることができる。
制御回路11はCプラス端子21に印加されている電圧値を測定する。この電圧値が所定の電圧値以上であれば、制御回路11はサーマルプロテクタ59がオンされていると判断する。また、電圧値が所定の電圧値未満であれば、制御回路11は、サーマルプロテクタがオフ(解放)されていると判断する。
また、制御回路11は、不図示のメモリを有しており、様々な処理における一時的なデータなどを保存する。また制御回路11は、過電流判定テーブル(図6)を保存している。詳述するが、過電流判定テーブルは、補正温度Tc(二次電池53の推定温度)と、電流値と、継続時間との関係を複数の補正温度Tcの範囲ごとに保存している。また、制御回路11は、モータ停止処理を実行するためのプログラムを保存している。
次に図3を参照して、本実施の形態のモータ停止処理について説明する。尚、制御回路11がモータ停止処理を行うが、この処理が行われている間、制御回路11は、常にLD端子25から停止信号を受信可能な状態にある。従って、電池保護IC51から停止信号が出力されると、制御回路11は、モータ停止処理の実行中であっても停止信号を受信し、当該停止信号を自身のメモリに保存する。本実施の形態では、停止信号を受信した場合に、制御回路11は、必ずしも即座にモータ12を停止するわけではなく、後述するモータ停止処理のS27、S29において停止信号を参照し、モータ12を停止するかどうかを判断している。
また、制御回路11は、モータ停止処理が行われている間、電流検出回路17が検出した電流と、時間との関係を記憶している。例えば、制御回路11は、所定時間毎(例えば0.1秒毎)に電流検出回路17が検出した電流を記憶している。
S1において、作業者がトリガスイッチ19をオンすることによりモータ12が起動し回転する。S3において、制御回路11は、サーマルプロテクタ59が解放されているか否かを判断する。即ち制御回路11はCプラス端子21に印加されている電圧を測定する。この電圧値が所定の電圧値以上であれば、制御回路11はサーマルプロテクタ59がオン(閉状態)されていると判断する。また、電圧値が所定の電圧値未満であれば、制御回路11は、サーマルプロテクタがオフ(開放)されていると判断する。
S3においてサーマルプロテクタ59が開放されている場合には(S3:YES)、S29において、制御回路11は、LD端子25を介して、電池保護IC51より、停止信号を受信したかを判断し、停止信号を受信した場合には(S29:YES)、S31において、FET15のゲートへオフ信号を出力し(FET15をオフし)、モータ12と、マイナス端子23との間の電流路を遮断する。これによって、モータ12が停止する。サーマルプロテクタ59が開放されている場合には、二次電池53の温度が所定の温度(例えば85℃)より高くなっている。この場合には、制御回路11は停止信号に則ってモータ12を停止している。
S3においてサーマルプロテクタ59が開放されていない場合(二次電池53の温度が所定温度より低い場合)には(S3:NO)、S5において、制御回路11は、LS端子24を介してサーミスタ(電池温度検出回路)57が検出した現在の温度を特定し、その温度を第1温度として記憶する。
S7において、制御回路11は、第1温度が80℃より高いか否かを判断する。第1温度が80℃より高い場合(S7:YES)には、処理は上述のS29に移行する。すなわち、第1温度が80℃より大きく、且つ電池保護IC51から停止信号を受信した場合にはFET15をオフ(遮断)してモータ12を停止させる。
第1温度が80℃以下の場合(S7:NO)には、S9において、制御回路11は第1温度を検出してから所定の時間(例えば5秒)経過したかを判断する。所定の時間が経過していない場合には(S9:NO)、待機する。所定の時間が経過している場合には(S9:YES)、S11において、制御回路11は、LS端子24を介してサーミスタ57が検出した現在の温度を特定し、その温度を第2温度として記憶する。
S13において、制御回路11は、第1温度と第2温度とから温度勾配Bを以下の式(1)より算出する。
B=DT/Dt (1)
ここで、DT=第2温度-第1温度、DtはS9の所定時間(5秒)である。
S15において、制御回路11は、第2温度と温度勾配Bとを用いて実際の二次電池53(電池セル53a)の温度を推定する。この推定した温度を補正温度Tcとする。補正温度Tcは、以下の式(2)により算出される。
Tc=第2温度+B×a (2)
ここで、aは定数であり、二次電池53の温度の実際の温度を計測することにより最適な値が設定される。
サーミスタ57の示す温度は、実際の二次電池53の温度と異なる。この原因として、例えば、サーミスタ57のケースなどによって、二次電池53の熱の伝導が遅れることが挙げられる。
図4は、サーミスタ57の示す温度と、二次電池53の温度との違いを示したグラフである。実線が二次電池53の実際の温度(電池セル温度)を示し、点線がサーミスタ57の示す温度(サーミスタ測定温度)を示している。サーミスタ測定温度は、電池セル温度を時間方向に右方向に移動したような曲線となっている。すなわち、サーミスタ測定温度は、電池セル温度に対して遅延している。言い換えれば、電池セル温度が上昇しているときにはサーミスタ測定温度は、電池セル温度より低い値を示している。本実施の形態では、式(2)よりサーミスタ温度を補正して、補正温度Tcを算出している。このため、サーミスタ温度より正確に電池セル温度に近い補正温度Tcを得ることができる。
図5は、図4と同じ電池セル温度とサーミスタ測定温度とのグラフである。図5に示すように時刻t1、t2において、それぞれ、第1温度T0と、第2温度T1とを計測しその差から補正温度Tcが算出される。t2はt1から所定時間(本実施の形態では5秒)経過した時刻である。
S17において、制御回路11は、算出した補正温度Tcに対応した電流値および継続時間を過電流判定テーブルより選択する。
図6に示すように、過電流判定テーブルは、補正温度と、電流値と、継続時間との関係を示している。各補正温度は、55℃以下と、55℃から88℃までの範囲を5℃ごとに分割した範囲を示している。
具体的には、補正温度が55℃以下であれば、電流値は100A、継続時間は10秒である。補正温度が55℃より大きく60℃以下であれば、電流値は100A、継続時間は7秒である。補正温度が60℃より大きく65℃以下であれば、電流値は95A、継続時間は5秒である。補正温度が65℃より大きく70℃以下であれば、電流値は90A、継続時間は3秒である。補正温度が70℃より大きく75℃以下であれば、電流値は85A、継続時間は2秒である。補正温度が75℃より大きく80℃以下であれば、電流値は80A、継続時間は1秒である。
制御回路11は、算出した補正温度Tcに対応する温度範囲を過電流判定テーブルから特定し、その温度範囲に対応する、電流値および継続時間を選択する。以下、選択された電流値および継続時間をそれぞれ選択電流値、選択継続時間と呼ぶ。
S19において、制御回路11は、電流検出回路17(シャント抵抗)を用いて現在の電流値を測定する。上述のように制御回路11は、モータ停止処理が行われている間、電流検出回路17が検出した電流と、時間との関係を記憶している。S19において、制御回路11は、電流検出回路17を用いて現在の電流値を特定すると共に過電流判定テーブルを参照する。
S21において、制御回路11は、電流検出回路17の検出結果に基づいて、検出電流が選択電流値以上である状態が選択継続時間より長い期間継続しているかを判定する。ここで、検出電流が選択電流値以上である状態が継続しているとは、検出電流が選択電流値以上になってから、選択電流値未満に一度もならない状態が継続していることを示している。しかし、例えば、短い期間(例えば0.2秒間)、検出電流が選択電流値未満になっても、検出電流が選択電流値以上である状態が継続しているものとしてもよい。S21の判定は、二次電池53の負荷が大きく、これ以上は電力を出力すべきでないか否かを判定するものである。そのため、仮にごく短い期間電流値が下がったとしても、その電流低下は、二次電池53への負荷の軽減にはならないからである。
S21において過電流判定条件を満たすと判断した場合(S21:YES)、処理はS31へ移行し、モータ12は停止される。S21において過電流判定条件を満たす場合には、S29における電池保護IC51からの停止信号の判定を行わずにモータ12を停止している。これは、補正温度Tcを算出することにより、二次電池53の温度を高い精度で求めることができるため、二次電池53の出力電力を適切に制御できるためである。
図4、5に示すようにサーミスタ測定温度を補正しないで制御する場合を考えると、サーミスタ57が示す温度は実際の温度より遅れた値(言い換えれば、実際の温度より低い値)である可能性が高い。そのため、電流値や、その継続時間に安全マージンを設けて制御を行う必要がある。本実施の形態では補正温度Tcを算出することにより、このような安全マージンを設ける必要がない。これにより、二次電池53が出力できる電力を正確に制御することができる。具体的には、過電流判定テーブルを参照しながら、補正温度Tcに応じて出力電流を大きくし、その継続時間を長くすることができる。尚、図2に示すように、電池保護IC51は、出力電流が75A以上である状態が0.5秒以上継続した場合に、停止信号を出力する。一方、図6の過電流判定テーブルでは、温度範囲が75℃より大きく80℃以下であっても、電流値80Aが、1秒間継続する。従って、S21で過電流判定条件の判断がされる前に、制御回路11は、電池保護IC51より停止信号を受信する。しかしながら、本実施の形態では、制御回路11が電池保護IC51より停止信号を受信していても、S21で過電流判定条件を満たすと判断されるまでモータ12を停止しない。これにより、二次電池53から限界近くまで電力を引き出すことができる。なお、電池保護IC51からの停止信号によりモータ12を停止する場合が第1モードに相当し、電池保護IC51より停止信号を受信していてもモータ12を停止しない(回転を継続する)場合が第2モードに相当する。
S21で否定判定された場合には(S21:NO)、S23において、制御回路11は、プラス端子22に印加されている電圧を検出する。S25において、制御回路11は、検出した電圧が所定の電圧値(例えば12V)未満であるかどうかを判定する。言い換えれば、制御回路11は、二次電池53が過放電状態である可能性があるかを判定している。検出した電圧が所定の電圧値以上であれば、二次電池53が過放電状態である可能性はないと判断し、処理はS3に戻る。
検出した電圧が所定の電圧値未満であれば、S27において、制御回路11は、電池保護IC51から停止信号を受信したかを判断する。停止信号が受信されている場合には(S27:YES)、S31においてモータ12が停止される。
一方、停止信号が受信されていない場合には(S27:NO)、処理はS3に戻る。電池保護IC51は、各セル毎に電圧を検出し、各セルが過放電であるかを判断している。一方、制御回路はS25において二次電池53全体の電圧値を判定している。そのため、過放電に関しては電池保護IC51の判定の方が精度が高い。そのため、S25で肯定判定されたとしても、停止信号を受信していなければ、各電池セル53aは過放電状態にないと判断してモータを停止させない。
上記の処理においてS9-S21の処理が第2のモードに対応し、S27、S29を実行する処理が第1のモードに対応する。またS7、S9の処理が状態検知手段に対応する。
上記の実施の形態における電動工具10の構成によれば、制御回路11が電池保護IC51から停止信号を受信してもS21の判定が肯定判定でなければ、制御回路11は、モータ12への電力の供給を維持し続ける。図7は、従来の停止信号に基づいたモータ12を停止する制御を行った場合の時間と電流との関係を示すグラフである。図2に示すように、電池保護IC51は、75A以上の電流が0.5秒間継続して出力された場合に、停止信号を出力する。従って、従来の制御では、75A以上の電力を出力してから0.5秒後には制御回路11はモータ12を停止することになる。尚、電池保護IC51が停止信号を出力するときに二次電池53の温度は考慮されていない。つまり、二次電池53の温度に関わらず、75A以上の電流が0.5秒間継続された場合には一律にモータ12が停止することになる。
一方、図8は、本実施の形態におけるモータ停止処理が行われた場合の時間と電流との関係を示すグラフである。尚、図8の処理が行われたときの、補正温度は55℃以下とする。従来の処理と同様に75Aの電流が0.5秒間継続して出力されたときに、電池保護IC51は停止信号を出力する。しかしながら、本実施の形態において、S7は否定判定されるためS29の判定は行われない。また、この段階ではS21の判定も否定判定されるため、二次電池53の電力の出力が維持される。その後、電流が100Aまで上昇すると、図6の過電流判定テーブルにおける補正温度55℃以下に対応した電流値100A以上の状態となる。従って、100A以上の状態が10秒以上継続した時点でモータ12を停止する。
図7、8を比較すると、本実施の形態では、従来よりはるかに長い期間電力を出力し続けることができる。従来の処理では、二次電池53の温度が考慮されていないため、電力を出力するための安全マージンが非常に大きくとられていたためである。これに対して、本実施の形態では二次電池53の温度を推定した補正温度Tcを考慮し、その補正温度Tcに対応した電流値と継続時間とを選択しているため、二次電池53に大きな負荷かからないように電力を出力できる範囲で電力を出力し続けることができる。これにより電動工具10の使用時間を長くすることができるとともに、その最大出力を上昇させることができる。
また、電池温度が80℃以上の時であり(S7:YES)、かつ、制御回路11が停止信号を受信している場合にはモータ12を停止している。これにより温度が大きくなったときには、停止信号を用いた制御に切替えることができるため、二次電池53に必要以上の負荷をかけることを抑制できる。
また、S25における判定で電池電圧が所定の電圧値未満であり(S25:YES)、かつ、S27において制御回路11が停止信号を受信している(S27:YES)場合にもモータ12が停止する。S27が肯定判定される場合には、停止信号は、二次電池53の電池セル53aの何れかが過放電状態であることにより出力されたと判断できる。この場合にも、制御回路11は、停止信号に則ってモータ12を停止する。これにより電池セル53aが過放電状態になったときに確実にモータ12を停止することができる。
一方、S25で否定判定された場合には、例え保護回路51が停止信号を出力していても、その停止信号は、保護回路51が過電流状態と判定したことにより出力されたものと推定される。この場合にはS27の判定を行わず、モータ12の回転を維持する。言い換えれば、S25で否定判定されたときには、制御回路11は停止信号を無視している。本実施の形態では過電流の判定をS21が代替しているからである。上記のように過電流の判定をS21が行うことによってモータ12の駆動時間を長くすることができる。
本発明による電動工具は上述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
例えば、S15において、補正温度Tcを算出した後に、S7と同様に補正温度Tcが80℃より大きいかを判断してもよい。補正温度Tcが80℃より大きいときにはS29の判定に移行するようにする。これにより、より安全な範囲で二次電池53の出力を停止させることができる。
補正温度Tcの補正温度は式(1)以外によって求めてもよい。例えば、定数aをモータ12の起動時間に応じて変化させてもよい。
あるいは、電流検出回路17が検出した電流値、及び、プラス端子22に印加されている電圧値を所定時間毎に検出し、その検出結果と、モータ12が回転する前の温度に基づいて、二次電池53の温度を推定してもよい。このように推定した温度を補正温度Tcとして扱っても良い。
上記の実施の形態では、S3においてサーマルプロテクタが開放されている場合、または、S7において、電池温度が80℃より大きい場合に、S29の停止信号に基づいた制御を行っていた。また、S25において電池電圧が12V未満になったときにもS27において停止信号に基づいた制御を行っていた。これ以外にも、例えば、モータ12の回転数を監視し、当該回転数が所定値未満になったときにも停止信号に基づいた制御を行ってもよい。回転数が所定値未満になれば、すなわちモータ12がロック状態になっていると考えられ、モータ12に流れる電流が大きくなっていると判断できる。そのため、回転数が所定値未満の時に停止信号に基づいた制御を行うことで、確実にモータ12を停止することができる。
[第2の実施の形態] 以下、本発明の第2の実施の形態による電池パック100及び電動工具200について図9乃至図20を参照しながら説明する。図9は、電池パック100及び電動工具200の構成を示すブロック図を含む回路図であり、電池パック100と電動工具200とが接続された状態を示している。電池パック100は、電池パック100と電動工具200とが接続された状態で電動工具200の駆動電源として用いられる。また、電動工具200は、当該状態において電池パック100を駆動電源として用いて駆動可能に構成されている。
図9に示されるように電池パック100は、放電プラス端子100Aと、放電マイナス端子100Bと、信号出力端子100Cと、電池組110と、電池保護IC120と、電源回路130と、温度計測回路140と、シャント抵抗150と、電流計測回路160と、マイコン170と、を備えている。
放電プラス端子100A、放電マイナス端子100B及び信号出力端子100Cは、電池パック100と電動工具200とを接続した状態において、電動工具200の所定の端子とそれぞれ接続されるように構成された端子である。放電プラス端子100A及び放電マイナス端子100Bは、電池組110の電力を電動工具200に供給するための端子である。信号出力端子100Cは、マイコン170に接続されており、マイコン170から出力される各種信号を電動工具200に出力するための端子である。放電プラス端子100Aと放電マイナス端子100Bとを接続する電路は、供給電路として機能する。
電池組110は、電池セル110Aを直列に5セル接続した組であり、電池パック100の図示せぬケーシングに収容されている。本実施の形態において電池セル110Aは、例えば、充電可能なリチウムイオン電池である。電池組110の中で最も電位の高い電池セル110Aのプラス端子は、放電プラス端子100Aと接続されている。また、電池組110の中で最も電位の低い電池セル110Aのマイナス端子は、シャント抵抗150を介して放電マイナス端子100Bと接続されている。電池セル110Aは、二次電池セルの一例である。
電池保護IC120は、電池組110を構成する電池セル110Aのそれぞれの電圧を個別に監視するICである。電池保護IC120は、電池セル110Aの電圧(1セル分の電圧)が過充電閾値を超えた場合に過充電状態であると判断し、過放電閾値を以下となった場合に過放電状態であると判断する。電池保護IC120は、電池セル110Aのうち一つのセルでも過充電状態又は過放電状態であると判断した場合、過充電状態又は過放電状態を示す信号をマイコン170に出力する。
電源回路130は、レギュレータ等からなる定電圧電源回路であり、電池組110の電圧を変換且つ安定化してマイコン170に出力している。
温度計測回路140は、電池セル110Aの電池温度を計測し、当該計測の結果である電池温度をマイコン170に出力する回路であり、サーミスタ及び電圧換算回路により主に構成されている。サーミスタは、電池セル110Aに近接して設けられており、電池セル110Aの電池温度を計測可能に構成されている。電圧換算回路は、サーミスタの抵抗値を電圧に換算し、当該電圧を電池セル110Aの電池温度を示す信号としてマイコン170に出力する。温度計測回路140は、計測手段として機能する。
シャント抵抗150は、放電電流の計測に用いられる抵抗であり、電池組110と放電マイナス端子100Bとの間に設けられている。
電流計測回路160は、放電電流を計測し、当該計測の結果である放電電流の値をマイコン170に出力する回路である。電流計測回路160は、シャント抵抗150に放電電流が流れることで生じる電圧降下の値を計測し、当該電圧降下の値を電圧に換算して、当該電圧を放電電流の値を示す信号としてマイコン170に出力する。電流計測回路160は、計測手段及び電流計測手段として機能する。
マイコン170は、ROMと、演算部と、RAMと、計時機能と、A/D入力ポートと、出力ポートと、を主に備えており、電池パック100から電動工具200への電力供給の制御すなわち放電制御を行う。ROMは、不揮発性の記憶領域であり、放電制御に用いられる処理プログラム、各種閾値、テーブル等が記憶されている。演算部は、A/D入力ポートに入力される各種信号を放電処理プログラムに従って演算処理し、当該処理の結果を出力ポートから出力する。RAMは、揮発性の記憶領域であり、CPUが演算処理を行う場合等にデータを一時的に記憶する。計時機能は、時間を計測する機能であり、電池組110が放電している時間(放電期間)、他の放電制御に必要な時間等を計測する。マイコン170は、計測手段、期間計測手段及び放電停止手段として機能する。
A/D入力ポートは、複数のポートを備え、電池保護IC120と、温度計測回路140と、電流計測回路160と接続されている。電池保護IC120と接続されたポートには、電池保護IC120から出力される過充電状態又は過放電状態を示す信号が入力される。温度計測回路140と接続されたポートには、温度計測回路140から出力される電池温度を示す信号が入力される。電流計測回路160と接続されたポートには、電流計測回路160から出力される放電電流の値を示す信号が入力される。出力ポートは、信号出力端子100Cと接続されており、演算部が処理プログラムに従って演算処理した結果に基づいてFET230をオン状態とするためのFETオン信号、FET230をオフ状態とするためのFETオフ信号等の所定の信号を電動工具200に出力する。なお、マイコン170による放電制御ついては後述する。FETオフ信号は、停止信号の一例である。
次に、電動工具200について説明する。図9に示されるように電動工具200は、入力プラス端子200Aと、入力マイナス端子200Bと、信号入力端子200Cと、モータ210と、トリガスイッチ220と、FET230と、FET制御部240と、保持回路250と、を主に備えている。なお、電動工具200は、上記した構成の他に図示せぬハウジング、ギヤ機構、出力部等の従来の電動工具が備える一般的な構成を備えており、電池パック100を駆動電源としてモータ210が回転駆動することにより、被加工材を加工可能、すなわち、ねじ締め、切断、研磨、研削等の所望の作業ができるように構成されている。例えば、電動工具200は丸鋸、グラインダ、ドライバドリル等である。
電動工具200と電池パック100とが接続された状態で、入力プラス端子200A、入力マイナス端子200B及び信号入力端子200Cは、それぞれ放電プラス端子100A、放電マイナス端子100B及び信号出力端子100Cに接続される。
モータ210の一方の端子は、トリガスイッチ220を介して入力プラス端子200Aに接続され、他方の端子は、FET230を介して入力マイナス端子200Bに接続されている。モータ210は、電動工具200と電池パック100とが接続され、且つトリガスイッチ220及びFET230がともにオン状態である場合に電池パック100から駆動電源が供給され回転駆動を開始する。モータ210が駆動を開始すると図示せぬ出力部が駆動を開始し、電動工具200が被加工材を加工可能な状態となる。
トリガスイッチ220は、ユーザが操作を行うスイッチであり、オン状態でモータ210と入力プラス端子200Aとが導通状態となり、オフ状態でモータ210と入力プラス端子200Aとが非導通状態となる。
FET230は、モータ210に流れる電流を遮断するためのスイッチング素子であり、そのゲートに所定の電圧が印加されることでオン状態となり、そのゲートがグランドに接続されることでオフ状態となる。FET230は、オン状態でモータ210と入力マイナス端子200Bとを導通状態とし、オフ状態でモータ210と入力マイナス端子200Bとを非導通状態とする。
FET制御部240は、FET230の制御を行う回路であり、信号入力端子200Cと接続されている。FET制御部240は、マイコン170から信号入力端子200Cを介して出力される信号に基づいてFET230の制御を行う。FET230及びFET制御部240は、駆動停止手段として機能する。
保持回路250は、電動工具200の駆動中(トリガスイッチ220がオン状態)に、FET230がオフ状態となった場合に、FET制御部240の動作とは無関係にFET230のオフ状態を保持する回路である。例えば、電動工具200の駆動中に電池パック100からの信号等によりFET230がオフ状態となり電動工具200の駆動は停止したが、当該停止後もユーザが継続してトリガスイッチ220をオン状態としている場合である。このような場合に保持回路250は、電動工具200の停止状態を保持することで、電動工具200が停止状態から突然駆動状態に復帰することを防止する。
保持回路250は、複数のFET、トランジスタ等により構成されており、モータ210とFET230との接続点200aに接続されている。保持回路250は、トリガスイッチ220がオン状態であり且つFET230がオフ状態となった場合に、接続点200aの電位を利用してFET230のゲートをグランドに接続することでFET230のオフ状態を保持する。なお、接続点200aの電位は、トリガスイッチ220がオン状態且つFET230がオン状態である場合は略0Vであり、トリガスイッチ220がオン状態且つFET230がオフ状態である場合は電池組110の電圧となる。
次に、本実施の形態による電池パック100のマイコン170による放電制御について図10乃至図20を参照しながら説明する。
本実施の形態による電池パック100は、過電流による電池パックの故障を抑制しつつ且つ電動工具の性能を最大限に利用可能とすることを目的とした放電制御を行う。過電流に起因する電池パックの故障のリスクは、電池温度の上昇に伴い高くなる傾向がある。そのため、本実施の形態では放電期間を所定条件のもと計測し、放電期間に対する最大許容期間及び放電電流に対する過電流閾値を電池温度に応じて定め、放電期間が最大許容期間を超えた場合又は放電電流が過電流閾値を超えた場合に放電を停止させている。最大許容期間は、許容期間の一例である。
より詳細には、放電期間が短い場合は過電流閾値を大きくし、放電期間が長くなるに従って過電流閾値を小さくし、電池温度が高くなるに従って当該過電流閾値をより小さくするように構成している。言い換えれば、放電電流が小さい場合は最大許容期間を長くし、放電電流が大きくなるに従って最大許容期間を短くし、電池温度が高くなるに従って当該最大許容期間をより短くするように構成している。
また、比較的小さい放電電流(以下、連続的な使用が可能な放電電流とする)が長期間連続して流れても電池パック100は特に故障することなく使用することができる。この場合は、放電期間を計測せず、放電期間に制限を設けないように構成している。さらに、連続的な使用が可能な放電電流の上限を規定する閾値(後述のI0)を決定し、当該閾値を超えた場合に放電期間の計測を開始する。
図10乃至図13を参照しながら、最大許容期間及び過電流閾値について説明する。図10乃至図13は、電池温度に応じた最大許容期間及び過電流閾値を示す図である。図10は電池温度が0℃未満(第1温度範囲)である場合、図11は電池温度が0℃以上40℃未満(第2温度範囲)である場合、図12は電池温度が40℃以上60℃未満(第3温度範囲)である場合、図13は電池温度が60℃以上(第4温度範囲)である場合である。図中の実線は、計測された放電期間に応じて変更される過電流閾値を示し、別の観点から見れば放電電流に応じて変更される最大許容期間を示している。また、図中のI0は、連続的な使用が可能な放電電流の上限を規定する閾値である。I0は、所定電流値の一例である。
図10乃至図13に示されるように最大許容期間は、電池温度が一定のとき放電電流が大きくなるに従って、より短い期間になるように決定される。
また、最大許容期間は、放電電流を一定とした場合、電池温度が高くなるに従ってより短い期間となるように決定される。詳細には、Taは第1温度範囲に属する電池温度、Tbは第2温度範囲に属する電池温度、Tcは第3温度範囲に属する電池温度、Tdは第4温度範囲に属する電池温度とする。放電電流がIrで同一であるとして比較すると、最大許容期間は、電池温度がTaの場合にはPa、Tbの場合にはPb、Tcの場合にはPc、Tdの場合にはPdに決定され、Pa>Pb>Pc>Pdの関係を満たしている。なお、図中のt1、t2、t3、t4は、t1>t2>t3>t4の関係を満たしている。
図10乃至図13に示されるように過電流閾値は、電池温度が一定のとき放電期間が長くなるに従って、より小さい値になるように決定される。
また、過電流閾値は、放電期間を一定とした場合、電池温度が高くなるに従ってより小さい値となるように決定される。放電期間がPrで同一であるとして比較すると、過電流閾値は、電池温度がTaの場合にはIa、Tbの場合にはIb、Tcの場合にはIc、Tdの場合にはIdに決定され、Ia>Ib>Ic>Idの関係を満たしている。なお、図中のI1、I2、I3、I4は、各温度範囲における最大の過電流閾値であり、I1>I2>I3>I4の関係を満たしている。
上記のように最大許容期間又は過電流閾値を定めることで、図10乃至図13におけるハッチングを施した部分は、電動工具200が駆動可能である動作領域として規定され、ハッチングが施されていない領域は、電動工具200が駆動停止となる停止領域として規定される。
なお、このような温度範囲毎の放電電流と最大許容期間との関係及び放電期間と過電流閾値との関係は、マイコン170のROMに記憶されている。当該関係は、放電電流と最大許容期間との関係式、放電期間と過電流閾値との関係式でもよく、放電電流と最大許容期間との対応を示したテーブル、放電期間と過電流閾値との対応を示すテーブルであってもよい。当該関係がテーブルである場合は、テーブルにない数値はマイコン170が演算を行うことによって補完するようにしてもよい。
図14乃至図16は、電池パック100による放電制御の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップ101において過放電信号が検出されているか否かを判断する。過放電信号が検出されているか否かの判断は、電池保護IC120から過放電状態を示す信号がマイコン170に出力されているか否かで判断する。
過放電信号が検出されている場合(ステップ101:Yes)、ステップ101を繰り返し、過放電信号が検出されなくなるまで繰り返す、換言すれば過放電信号が検出されている間は、電動工具200を駆動させない。一方、過放電信号が検出されていないと判断した場合(ステップ101:No)、ステップ102において電動工具200のFET230をオン状態とするためのFETオン信号を出力する。
FETオン信号は、マイコン170の出力ポートから信号出力端子100C及び信号入力端子200Cを介してFET制御部240に出力される。FET制御部240は、マイコン170からFETオン信号が入力されると、FET230のゲートに電圧信号を出力してFET230をオン状態とする。
FET230がオン状態となった後に、ステップ103においてトリガスイッチ220がオン状態であるか否か、すなわちユーザが電動工具200のトリガスイッチ220を操作して駆動を開始したか否かを判断する。トリガスイッチ220がオン状態であるか否かの判断は、電流計測回路160がシャント抵抗150に放電電流が流れているか否かを検出することで行われる。すなわち電流計測回路160からマイコン170のA/D入力ポートに放電電流の値を示す信号が入力された場合に放電電流が流れていると判断する。
トリガスイッチ220がオン状態でないと判断した場合(ステップ103:No)、ステップ103を繰り返し、トリガスイッチ220がオン状態となるまで待機する。一方、トリガスイッチ220がオン状態である場合すなわち電動工具200が駆動を開始し電池組110が放電を開始した場合(ステップ103:Yes)、ステップ104において、電池セル110Aの電池温度の計測を開始する。電池温度の計測は、温度計測回路140が電池温度を示す信号をマイコン170に出力することで行われる。
ステップ105において起動電流を測定対象から除外するものとする。上述したように本実施の形態による電池パック100においては、放電電流を計測して放電を制御すなわち電動工具200の駆動を制御するものであるが、電動工具200の起動時の起動電流は瞬間的なものであるため測定対象から除外している。起動電流の測定対象からの除外は、ステップ103においてトリガスイッチ220がオン状態であると判断した時点から所定時間が経過するまでの間、電流計測回路160からの信号を無効な値としてみなす等の処理で行われる。なお、ステップ103乃至105の処理は、略同時に行われる。
ステップ105における所定時間が経過した後に、ステップ106において放電電流がI0以上であるか否かを判断する。放電電流がI0以上であるか否かの判断は、電流計測回路160が計測した放電電流の値とI0とを比較することで行われる。なお、放電電流の値は所定時間の平均電流を用いている。
放電電流がI0以上でないと判断した場合(ステップ106:No)、ステップ107においてトリガスイッチ220がオン状態であるか否かを判断する。トリガスイッチ220がオン状態であるか否かの判断はステップ103と同様の方法で判断する。
トリガスイッチ220がオン状態でないと判断した場合すなわちユーザが電動工具200の駆動を停止させた場合(ステップ107:No)、ステップ101に戻る、すなわち電動工具200は駆動を停止して初期状態に戻る。なお、初期状態に戻ると放電期間の計測が開始されているか否かに関係なく放電期間はリセットされる。一方、トリガスイッチ220がオン状態である場合(ステップ107:Yes)、ステップ108において過放電信号が検出されているか否かを判断する。過放電信号が検出されているか否かの判断は、ステップ101と同様の方法で判断する。
過放電信号が検出されていると判断した場合(ステップ108:Yes)、ステップ115において、FET制御部240にFETオフ信号を出力してFET230をオフ状態として放電電流を遮断する。FET230がオフ状態となると、電池パック100の電池組110の放電は停止し、同時に電動工具200の駆動も停止する。また、FET230がオフ状態となった際にユーザがトリガスイッチ220をオン状態としている間は、ステップ116において電動工具200が停止状態から突然駆動状態にならないように、保持回路250が当該停止状態を保持する。その後、トリガスイッチ220がオフ状態となった後にステップ101に戻る。
一方、ステップ108において過放電信号が検出されていないと判断した場合(ステップ108:No)、ステップ106に戻り、放電電流がI0以上であるか否かを判断する。すなわち、放電電流がI0未満であり、且つトリガスイッチ220がオン状態であり、且つ過放電信号が検出されていない限りにおいてステップ106乃至108を繰り返し、電動工具200の駆動は継続する。
ステップ106で、放電電流がI0以上であると判断した場合(ステップ106:Yes)、ステップ109において、放電期間の計測を開始する。放電期間の計測はマイコン170の計時機能を用いて行う。次に、ステップ110において、放電期間の計測中に放電電流がI0未満になったか否かを判断する。
放電電流がI0未満であると判断した場合(ステップ110:Yes)、ステップ111において計測された放電期間をリセットしてステップ106に戻る。放電期間をリセットする意義は、放電電流がI0未満になった場合は連続的に放電電流が流れても電池パックが特に故障するといった状態にないと判断できるためである。なお、ステップ110の判断は、放電電流がI0未満である状態が所定時間の間継続したか否かで判断してもよい。このように判断することで、瞬間的に放電電流がI0未満になった場合を除外でき、より正確に電池パックが故障するような状態ではないと判断できる。
放電電流がI0未満でないと判断した場合(ステップ110:No)、ステップ112において計測結果に基づいて動作可能状態か否かを判断する。動作可能状態か否かは、まず、図10乃至図13に示される放電電流と最大許容期間との関係の中から現在の電池温度に基づいて参照すべき関係を抽出し、当該抽出された関係を参照して現在の放電電流に応じた最大許容期間を特定する。その後、現在の放電期間が特定した最大許容期間を超えたか否かで判断する。または、図10乃至図13に示される放電期間と過電流閾値との関係の中から現在の電池温度に基づいて参照すべき関係を抽出し、当該抽出された関係を参照して現在の放電期間に応じた過電流閾値を特定し、現在の放電電流が特定した過電流閾値を超えているか否かで判断してもよい。
動作可能状態であると判断した場合(ステップ112:Yes)、ステップ113においてトリガスイッチ220がオン状態であるか否かを判断する。トリガスイッチ220がオン状態であるか否かの判断はステップ103と同様の方法で判断する。
トリガスイッチ220がオン状態でないと判断した場合すなわちユーザが電動工具200の駆動を停止させた場合(ステップ113:No)、ステップ101に戻る、すなわち電動工具200は駆動を停止して初期状態に戻る。一方、トリガスイッチ220がオン状態である場合(ステップ113:Yes)、ステップ114において過放電信号が検出されている否かを判断する。過放電信号が検出されている否かの判断は、ステップ101と同様の方法で判断する。
過放電信号が検出されていると判断した場合(ステップ114:Yes)、上述したステップ115及び116の処理を行い、電動工具200は停止して初期状態に戻る。
一方、ステップ114において過放電信号が検出されていないと判断した場合(ステップ114:No)、ステップ110に戻り、放電電流がI0未満であるか否かを判断する。すなわち、放電電流がI0以上であり、且つ動作可能状態であり、且つトリガスイッチ220がオン状態であり、且つ過放電信号が検出されていない限りにおいてステップ110乃至114を繰り返し、電動工具200の駆動は継続する。
ステップ112において動作可能状態でないと判断した場合(ステップ112:No)、上述したステップ115及び116の処理を行い、電動工具200は停止して初期状態に戻る。
次に、図17乃至図20を参照しながら、電池パック100による放電制御を用いて電動工具200を駆動した場合の放電電流及び放電期間について説明する。図17乃至図20は、電池パック100による放電制御をした場合の放電電流の時間変化を表わす概念図である。
図17及び図18は、電池温度が同一の温度範囲にあり、且つ放電電流が異なる場合の放電電流の時間変化を示している。なお、図17におけるI5及び図18におけるI6は放電電流の平均電流を示しており、I5>I6の関係を満たしている。
図17及び図18に示されるように放電電流がI5である場合及びI6である場合のどちらの場合も、時刻t0から駆動が開始され(ステップ103に対応)、時刻t5に放電期間の計測が開始されている(ステップ109に対応)。その後、放電電流がI5である場合は、時刻t6で動作可能状態でないと判断され(ステップ112に対応)、電動工具200の駆動が停止している(放電が停止している)。一方、放電電流がI6である場合は、時刻t7(時刻t6よりも遅い時刻)で動作可能状態でないと判断され(ステップ112に対応)、電動工具200の駆動が停止している。
このように、放電電流がI5よりも小さいI6の場合は、I5の場合と比較して長い期間電動工具200を連続して駆動可能である。別の観点からみると、放電期間がI5よりも長いI6の場合は、I5の場合と比較して過電流閾値が小さくなるように制御される。このように図10乃至図13に示した最大許容期間は、放電電流が比較的小さい場合には電動工具200を長く駆動することができ、放電電流が比較的大きい場合には電池パックの故障を防ぐために使用を制限するような制御を行えるように決定されている。
図19及び図20は、電池温度が異なる温度範囲にあり、且つ放電電流が同一である場合の放電電流の時間変化を示している。なお、図19及び図20におけるI7は、放電電流の平均電流を示しており、図19の場合の温度範囲は、図20の場合の温度範囲よりも低い温度範囲である。
図19及び図20に示されるように温度範囲が異なるどちらの場合も、時刻t0から駆動が開始され(ステップ103に対応)、時刻t8に放電期間の計測が開始されている(ステップ109に対応)。その後、図19の場合は、時刻t9で動作可能状態でないと判断され(ステップ112に対応)、電動工具200の駆動が停止している(放電が停止している)。一方、図20の場合は、時刻t10(時刻t9よりも早い時刻)で動作可能状態でないと判断され(ステップ112に対応)、電動工具200の駆動が停止している。
このように、温度範囲が図11よりも高い図20の場合は、図19の場合と比較して電動工具200の駆動時間が短い(放電期間が短い)。このように図10乃至図13に示した過電流閾値及び最大許容期間は、電池温度が高い場合は、電池パックの故障のリスクが増すことを鑑みて、使用を制限するような制御を行えるように設定されている。また、別の観点からみると電池パックの故障が起こらない範囲内で重負荷での作業を行うことができるように、図10乃至図13に示した過電流閾値及び最大許容期間は決定されている。
なお、図17乃至図20のいずれの場合においても、電動工具200の駆動が停止した後に僅かながら放電電流が流れているが、当該放電電流はマイコン170の駆動等のためのものであり、当該放電電流が微小に流れている状態は、本明細書中でいう放電の停止した状態に変わりはない。本明細書中において、放電の停止とは、電動工具200を駆動させるための放電電流が流れていない状態をいう。
上述したように、本実施の形態による電池パック100は、放電電流が大きくなった場合に所望の作業を継続可能な時間を制限するように構成しているため、電動工具200の負荷が重く放電電流が大きい場合、作業継続可能時間を制限し、所望の作業を一定時間継続することができる。これにより、従来の放電電流が過電流閾値を超えた場合に放電を停止する電池パックと比較して、作業継続可能時間を延ばすことができ、電池パックの故障を抑制しつつ、且つ電動工具の性能を最大限に利用することができる。
また、放電電流が大きくなった場合に所望の作業を継続可能な時間を、電池セル110Aの電池温度が低い場合より高い場合の方が短くなるように構成しているため、放電電流が大きい場合でも作業を継続することができる。従来の電動工具又は電池パックにおいては、放電電流が過電流閾値を超えて極短い時間流れた後に停止させる構成であり、当該極短い時間は、作業を行うことができる時間ではなかった。すなわち、従来の電池パック又は電動工具は、作業継続可能時間を延ばすという本発明の思想とは異なり、過電流時には直ぐに作業を停止させるものであったため、作業を継続することができなかった。これに対し、本実施の形態による電池パック100は、電池温度が高温時には電池セル110Aの劣化を抑制するために低温時と比べて放電時間(放電期間)は短いが、作業を継続することができる。これにより、電池パックの故障を抑制しつつ、且つ電動工具の性能を最大限に利用することができる。
また、上述したように、本実施の形態による電池パック100は、放電期間が最大許容期間を超えた場合に放電を停止させるマイコン170を備えており、最大許容期間は計測結果に応じて変更される。従って、電動工具の負荷に応じて最大許容期間を適切な期間に設定することが可能になる。例えば、従来の電池パックの制御では、電動工具の負荷が重くなり、電池パックに流れる放電電流が比較的大きくなる状態では、放電を即座に停止していた。しかしながら、電池パック100によれば、電動工具の負荷が重いときであっても、その負荷に応じた最大許容期間を設定することができる。これにより、負荷が重いときであっても、電動工具を即座に停止せずに、ある程度の期間使用することができる。一方、電動工具の負荷が軽いときには、最大許容期間を十分に長い期間に設定することができる。このため、電池パック100が故障しない範囲で、電動工具200の性能を最大限に利用することができる。
また、最大許容期間は、放電電流が一定である場合に電池温度が高くなるに従ってより短い期間になる。このため、電池温度が比較的高く電池パック100の故障のリスクが増す状態においては放電期間を短くして電池パックの故障を抑制し、電池温度が比較的低く電池パック100の故障のリスクが低い状態においては放電期間を長くして電動工具の性能を最大限に利用することができる。
また、最大許容期間は、電池温度が一定である場合に、放電電流が大きくなるに従ってより短い期間になる。このため、放電電流が比較的大きく電池パック100の故障のリスクが増す状態においては放電期間を短くして電池パックの故障を抑制し、放電電流が比較的小さく電池パック100の故障のリスクが低い状態においては放電期間を長くして電動工具200の性能を最大限に利用することができる。
また、放電電流が所定電流値を超えた時点から放電期間の計測を開始するため、電池パック100が特に故障しない程度の電流値に所定電流値を設定することで、所定電流値を超えない範囲において制限を設けることなく電動工具を使用することができ、作業性を向上させることができる。
また、本実施の形態による電池パック100は、放電電流が過電流閾値を超えた場合に放電を停止させるマイコン170を備えており、過電流閾値は計測結果に応じて変更される。従って、電動工具の負荷に応じて過電流閾値を適切な値に設定することが可能になる。例えば、従来の電池パックの制御では、電動工具の負荷が重くなり、電池パックに流れる放電電流が比較的大きくなる状態では、放電を即座に停止していた。しかしながら、電池パック100によれば、電動工具の負荷が重いときであっても、その負荷に応じた過電流閾値を設定することができる。これにより、負荷が重いときであっても、電動工具を即座に停止せずに、比較的大きな放電電流が流れるまで使用することができる。このため、電池パック100が故障しない範囲で、電動工具200の性能を最大限に利用することができる。
また、過電流閾値は、放電期間が一定である場合に電池温度が高くなるに従ってより小さい値になる。このため、電池温度が比較的高く電池パック100の故障のリスクが増す状態においては過電流閾値を小さくして電池パックの故障を抑制し、電池温度が比較的低く電池パック100の故障のリスクが低い状態においては過電流閾値を大きくして電動工具200の性能を最大限に利用することができる。
また、過電流閾値は、電池温度が一定である場合に、放電期間が長くなるに従ってより小さい値になる。このため、放電期間が比較的長く電池パック100の故障のリスクが増す状態においては過電流閾値を小さくして電池パックの故障を抑制し、放電期間が比較的長く電池パック100の故障のリスクが低い状態においては過電流閾値を大きくして電動工具200の性能を最大限に利用することができる。
また、電池パック100が装着される電動工具200が停止信号によって放電を停止することがきるため、電池パック100はFETオフ信号を出力するのみで放電を停止させることができ、電池パック100の構成が簡易になり、組立性を向上させることができる。
また、本実施の形態による電動工具200は、電池パック100を装着可能であり、電池パック100からFETオフ信号が出力された場合にモータ210の駆動を停止させるFET230を備えているため、電池パック100を駆動電源として用いる場合に電池パック100の故障を抑制しつつ、電動工具200の性能を最大限に利用することができる。
また、電動工具200は、電池パック100からFETオフ信号が出力された場合にモータ210に流れる放電電流を遮断する。このように、モータ210に流れる電流を遮断するため、簡易な構成で電動工具200の駆動を停止させることができる。
なお、本実施の形態においては、電池パック100側にマイコン170、シャント抵抗150や電流計測回路160、温度計測回路140を配置していたが、マイコン170、シャント抵抗150や電流計測回路160、温度計測回路140(サーミスタ以外の部分)を電動工具200側に配置しても本実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。この場合、電動工具200においてインバータ回路で駆動するブラシレスモータの制御にマイコン170を利用することができる。
本実施の形態による電池パック及び電動工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施の形態においては、電池パック100のマイコン170が放電制御を行う構成であったが、電動工具200のFET制御部240をマイコンに置換し、当該マイコンが放電制御を行う構成としてもよい。この場合、測定値である電池温度、放電期間及び放電電流の情報は、電池パック100のマイコン170から電動工具200のマイコンに伝達される構成とすることが好ましい。