WO2015125659A1 - 摩擦撹拌接合方法および摩擦撹拌接合体 - Google Patents
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Abstract
Description
また、上記摩擦撹拌接合により鉄とアルミニウムによって形成された異種金属部材同士を接合する場合には、溶融溶接では入熱量が大きいため、金属部材間の界面に脆弱な金属間化合物(Fe2Al5、FeAl3など)が生成されてしまい、接合強度が低下するという不具合があった。
特許文献1には、摩擦撹拌接合の終端部の貫通したツール穴を埋めるために、一度接合を完了させた後、ツール穴に充填材を設置して、該ツール穴を再度摩擦撹拌接合することで、上記終端部の接合部における気密性及び水密性を向上させることが開示されている。
また、特許文献2には、異なる金属材料によって形成された金属部材同士を摩擦撹拌接合するものであって、その終端部に凸部などの余肉部を設けることで、該終端部にツール穴が形成しても該ツール穴が貫通しないため、金属部材同士間の界面が露出されず、電食が防止されることが開示されている。
すなわち、特許文献1の方法では、一度摩擦撹拌接合した後に、その終端部のツール穴を埋めるために該ツール穴に充填材を設置する工程、および再度接合を実施する工程が必要になる。そのため、工程数が増加してしまう欠点がある。
また、特許文献2に記載の摩擦撹拌接合方法では、下記のような課題がある。
(1) 摩擦撹拌接合の終端部に余肉部を設けるようにしているので、摩擦撹拌接合後の製品の重量が増加してしまう欠点がある。
(2) 展伸材(押出材)などの板厚が均一な金属材料の場合には、特許文献2の方法を使用することができない。そのため、材料選定の自由度が低下してしまう欠点がある。
(3) ツール穴が形成される余肉部のところでは、該余肉部の部位に比べて、ツールの先端と界面の距離が離れている。一方、従来より、ツールの先端と界面の距離を小さく設すると接合強度が向上し、距離が大きく設定すると接合強度が低下することが知られている。そのため、特許文献2の方法では、余肉部以外の部位の界面における接合強度に対して、余肉部のところの界面における接合強度が相対的に低下してしまう。それ故、同方法により接合された部品に応力がかかると、相対的に接合強度の低い余肉部側から優先的に破損し、この破損した部位からき裂が次第に進展したり、該破損した部位に水分などが入り込んで電食が発生してしまうおそれがある。
本発明では、上記ツールの水平方向への動きは、該ツールの中心軸が略直線を描くようにしている。
本発明では、上記ツールの水平方向への動きは、該ツールの中心軸が略直線を描きその方向はツール進行方向と異なる方向であることとしている。
本発明では、上記ツールの水平方向への動きは、該ツールの中心軸が多角形を描くようにしている。
本発明では、上記ツールの水平方向への動きは、該ツールの中心軸が略円形を描くようにしている。
本発明では、上記ツールが描く略円形の軌道円の直径は、上記ツールが水平方向に動かない状態で上記一方の金属部材に形成される場合のツール穴の直径の1%以上としている。
本発明では、上記摩擦撹拌接合の終端部において、上記ツールの先端が、上記他方の金属部材まで略達している状態で、若しくは上記他方の金属部材に貫入している状態で、摩擦撹拌接合するようにしている。
本発明では、上記2つの金属部材は、異なる金属材料によって形成されたものとしている。
本発明では、少なくとも2つの金属部材を重ね合わせ、一方の金属部材側からツールを押し付けて、これらの金属部材同士を摩擦撹拌接合し、上記ツールが摩擦撹拌接合の終端部に位置したところで、上記ツールを、水平方向に動かしながら上記一方の金属部材から引き抜くことによって摩擦撹拌接合接合体を形成するようにしている。
・両金属部材同士の界面の露出を防止するために、摩擦撹拌接合した後に充填材などを設置する必要が無い。すなわち、摩擦撹拌接合の工程のみで良く、工程数は増加しない。
・界面の露出を防止するために、終端部に余肉部を設ける必要がない。そのため、重量が増加しない。
・展伸材などの板厚が均一な材料においても、両金属部材同士の界面の露出を防止できる。そのため、材料選定の自由度が向上する。
・摩擦撹拌接合の終端部におけるツールの先端と界面の距離を可及的に小さくすることができるため、終端部の部位と終端部以外の部位とのいずれにおいても、ツールの先端と界面の距離を略同じにすることができる。そのため、終端部の部位と終端部以外の部位のいずれにおいても、略同等の高い接合強度が得られる。したがって、同方法により接合された接合体に応力がかかっても、同接合体が全体に渡って略均一な高い接合強度を有するために破損し難くなり、仮に破損することがあったとしても、上記終端部が優先的に破損するおそれはない。結果として、同方法により接合された接合体が破損することはないため、両金属部材同士の界面のところに水が入り込むことはなく、摩擦撹拌接合の終端部が外周部に接している場合でも水が入り込む隙間が生じず、電食の発生を防止することができる。
本実施形態に係る摩擦撹拌接合方法は、図1~図3に示すように、異種の金属材料から形成された2つの金属部材1,2を重ね合わせて配置し、摩擦撹拌接合用のツール10を回転させながら一方の金属部材1の表面に押し付けて加圧し、接触させて発熱させることにより金属部材1,2同士の接合を行うようにしたものであって、金属部材1,2の接合が終わる終端部3にツール10が達したところで、該ツール10全体を該終端部近傍の金属部材1,2に対して水平方向に動かしながら引き抜くようにして摩擦撹拌接合体20を形成するようにしている。ここで、図1および図2(a)に示した矢印は摩擦撹拌接合に際してツール10の移動方向を示し、同図は金属部材1,2同士が帯状に摩擦撹拌接合される様子を示している。なお、上記した接合用ツール10としては、例えば、図4(a)に示すように、ショルダー11とプローブ(突起)12を合わせたものである。金属部材1,2を成す異種の金属材料としては、例えば、鉄、アルミニウム、マグネシウム等であり、これらのうちから選択された2種である。また、摩擦撹拌接合の終端部3とは、摩擦撹拌接合が完了した部位であって、一端から他端まで摩擦撹拌接合した場合においてはその他端の部位(図5(a)参照)、一端まで摩擦撹拌接合し、折り返して接合しながら中間まで戻ってツール10を引き抜いた場合においては、接合が完了したその中間の部位(図5(b))をいう。図2、図3および図5において、13は摩擦撹拌接合の終端部3において、ツール10を引き抜く際に形成されるツール穴であり、14はツール10のショルダー11の押圧によって一方の金属部材1の上面に形成されたショルダー穴であり、15は金属部材1,2が合わさって形成される界面である。以下、実施例について具体的に説明する。
図6は、本実施例の場合における摩擦撹拌接合の終端部3の様子を示すもので、ツール10を引き抜きの際に、移動速度10[mm/min]で水平方向に動かしながら該ツールを引き抜いた結果、上記終端部3付近の材料に塑性流動を生じさせ、その材料でもって上記終端部3に生じたツール穴13が充填され、上記終端部3に他方の金属部材2の鉄の露出は認められず、異種金属接触部位の露出が防止されていることが確認できる。これに対して、図7から明らかなように、従来方法では、摩擦撹拌接合の終端部3においてツール10をそのまま上方へ引抜いた結果、ツール穴13が貫通して他方の金属部材2の鉄が露出しているのが確認できる。
なお、ツール10の先端を他方の金属部材2に貫入させない場合においても、摩擦撹拌接合の終端部3において、一方の金属部材1から押し付けられたツール10の先端が、他方の金属部材2まで略達していれば、すなわち、ツール10の先端と界面15の距離が0mmを超え0.2mm以下であれば、ツール10を水平方向に動かしながら引き上げることにより、高い接合強度が得られ、たとえツール穴13の底をなす薄肉部が破損した場合においても、界面15の露出を防止できる。その結果、摩擦撹拌接合の終端部3における異種金属接触部位の露出を抑制し、接合終端部の電食を防止することができる。
また、上記実施例では、プローブ12を有するツール10について説明したが、本発明はこれに限らず、プローブ12を有さないツール10(例えば、特開2012-50996に開示のツール、あるいは図4(b)参照)を用いても良い。このようなプローブ12を有さないツール10を用いて摩擦撹拌接合する際には、該ツールそのものを回転させつつ、水平方向に移動させながら引き抜くようにすればよく、同様の効果を得ることができる。これにより、ツール10の側面部分の金属材料を塑性流動させて、摩擦撹拌接合の終端部3における異種金属接触部位の露出を防止できるとともに、接合終端部において電食が発生するのを防止することができる。
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
3 終端部
4 軌道円
10 ツール
11 ショルダー
12 プローブ
13 ツール穴
14 ショルダー穴
15 界面
20 摩擦撹拌接合体
101、102 異種金属部材
103 ツール
104 ツール穴
105 界面
Claims (9)
- 少なくとも2つの金属部材を重ね合わせ、一方の金属部材側からツールを押し付けて、これらの金属部材同士を摩擦撹拌接合するようにした摩擦撹拌接合方法において、上記ツールが摩擦撹拌接合の終端部に位置したところで、上記ツールを、水平方向に動かしながら上記一方の金属部材から引き抜くことを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
- 上記ツールの水平方向への動きは、該ツールの中心軸が略直線を描くことを特徴とする請求項1に記載の摩擦撹拌接合方法。
- 上記ツールの水平方向への動きは、該ツールの中心軸が略直線を描きその方向はツール進行方向と異なる方向であることを特徴とする請求項2に記載の摩擦撹拌接合方法。
- 上記ツールの水平方向への動きは、該ツールの中心軸が多角形を描くことを特徴とする請求項1に記載の摩擦撹拌接合方法。
- 上記ツールの水平方向への動きは、該ツールの中心軸が略円形を描くことを特徴とする請求項1に記載の摩擦撹拌接合方法。
- 上記ツールが描く略円形の軌道円の直径は、上記ツールが水平方向に動かない状態で上記一方の金属部材に形成される場合のツール穴の直径の1%以上であることを特徴とする請求項5に記載の摩擦撹拌接合方法。
- 上記摩擦撹拌接合の終端部において、上記ツールの先端が、上記他方の金属部材まで略達している状態で、若しくは上記他方の金属部材に貫入している状態で、摩擦撹拌接合することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合方法。
- 上記2つの金属部材は、異なる金属材料によって形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合方法。
- 少なくとも2つの金属部材を重ね合わせ、一方の金属部材側からツールを押し付けて、これらの金属部材同士を摩擦撹拌接合し、上記ツールが摩擦撹拌接合の終端部に位置したところで、上記ツールを、水平方向に動かしながら上記一方の金属部材から引き抜くことによって形成されたことを特徴とする摩擦撹拌接合体。
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