JP2013086175A - 高張力鋼板の接合ツールおよび接合方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、高張力鋼板の継手強度を向上させることのできる接合ツールおよび継手強度の高い摩擦撹拌点接合方法を提供することを目的とする。
【解決手段】鋼板の摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツールであって、前記接合ツールは回転方向に水平で円形状をしているショルダと円錐台状の形状のプローブとを備え、前記プローブがショルダ方向に広がる形状を有し、前記プローブの側面が回転軸となす角度A(°)、前記プローブの高さL(mm)、前記プローブが貫通する鋼板の厚さ(mm)が一定の関係式を満たすことを特徴とする鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
【選択図】図1
【解決手段】鋼板の摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツールであって、前記接合ツールは回転方向に水平で円形状をしているショルダと円錐台状の形状のプローブとを備え、前記プローブがショルダ方向に広がる形状を有し、前記プローブの側面が回転軸となす角度A(°)、前記プローブの高さL(mm)、前記プローブが貫通する鋼板の厚さ(mm)が一定の関係式を満たすことを特徴とする鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
【選択図】図1
Description
本発明は、接合ツールを加圧によって挿入し、回転により発生する摩擦熱で軟化させ、撹拌することで継手を形成する摩擦撹拌点接合において、2枚以上の高張力鋼板を接合するに際し、高い継手強度を得ることが出来る接合ツールおよび接合方法に関する。
従来より、二枚以上の薄板の接合における接合法としては、抵抗スポット溶接が用いられており、自動車組立工程において広く普及している。しかし、自動車用材料として用いられるアルミニウム合金は鋼板に比べて電気伝導度が高く、発熱に大電流を要する上、スパッタの発生など抵抗スポット溶接性の観点からは課題があった。また、絶縁体を表面に塗布した表面処理鋼板などでは、抵抗スポット溶接は困難である。そこで、抵抗スポット溶接に代わる溶接方法の検討がされてきた。
そこで、摩擦熱と撹拌を利用して金属部材を接合する摩擦撹拌接合法が提案された。この接合法は二枚以上の部材を重ね合せあるいは突き合せ、接合ツールを回転させながら挿入、移動させ、部材を軟化せしめて塑性流動することにより接合する方法であり、他の溶融接合法に比べて低い温度で接合出来る方法である。また、抵抗スポットと異なり非溶融の溶接プロセスであるため、スパッタやヒュームの発生もない。そこで、摩擦撹拌接合を抵抗スポットの代替技術として適用するための検討がなされ、一部は実用化されている。抵抗スポットの代替技術としての摩擦撹拌接合は、点接合であることから、線接合である摩擦撹拌接合と区別して、摩擦撹拌点接合と呼ばれている。
しかし、摩擦撹拌点接合の実用化はアルミニウム合金に限られているのが現状である。これは、アルミニウム合金は軟化温度が低く容易に撹拌が出来ることに加え、接合に用いる接合ツールが工具鋼であり、そのため総合的に安価であることがメリットとして挙げられる。
一方で、鋼板、特に高張力鋼板の接合技術として、摩擦撹拌点接合への期待も高まっている。高張力鋼板は一般に、鋼に比べ焼入れしやすいために、既存の溶融を伴う溶接方法では熱影響部の硬化が著しく、溶接継手強度を劣化させる要因となっている。接合中の温度が抵抗スポット溶接などに比べ低く非通電である摩擦撹拌点接合は、これら熱影響部の硬化の問題を解決できる可能性があるといえる。
しかし、鋼板への摩擦撹拌点接合法を実施化するには、いくつかの課題が有る。まず、アルミニウム合金と比較して鋼板は熱軟化温度が高く、高温強度が高いため、接合ツールには高い高温耐久性が求められる。この点に関しては、様々な新素材が提案されているところである。
また、他の課題として溶接継手強度に関する問題が挙げられる。一般に、車体剛性の確保のためには高い溶接継手強度が求められるが、現状、抵抗スポット溶接と比較して高強度化を企図するには容易であるとは言えない。その理由については、高張力鋼板は、アルミニウム合金と比較して高温においても硬く、塑性流動が困難であるがために撹拌領域が確保出来ないことや、重ねあわせた界面に存在する未接合領域の存在などが挙げられる。
そこで、継手強度を向上させる手法のひとつとして、接合ツールの形状の適正化が重要であると考えられ検討されている。例えば、特許文献1では、接合ツールのプローブ(文献中の記載では「ピン」と称している。)を三角断面形状とすることで、非対称の撹拌をすることが出来ることから、未接合領域(文献中の記載では「フックライン」と称している。)の形成を抑制することが出来るとしている。
特許文献2では、プローブに四角形または三角形の平面部を与えることで、バリの抑制と耐摩耗性の向上を解決出来るとしている。また、特許文献3では、接合ツールそのものを二重構造とし、ショルダとプローブを別駆動とすることで、広い撹拌領域を確保することができ、高い継手強度を得られることが開示されている。
前述の通り、摩擦撹拌点接合の検討の多くはアルミニウムのように軟質材料であったため、接合ツールの摩耗などが少なかった。しかし、高張力鋼板に適用するに際しては、耐摩耗性の確保は大きな課題である。その観点で考えた場合、特許文献1のような角を有する形状は、接合ツールにかかる負荷を増大させ、耐摩耗性を大きく劣化させると考えられる。
一方で、特許文献2のような形状も同様に角を有しており、高張力鋼板の接合においては耐摩耗性悪化要因となると考えられる。
さらに、特許文献3は回転軸が2つとなるため、設備上の複雑度が上がり設備コストがかかる。また、可動部位それぞれでの条件決定が必要であり、課題も多いといえる。
そこで、本発明は、前記課題を解決し、高張力鋼板の継手強度を向上させることのできる接合ツールおよび継手強度の高い摩擦撹拌点接合方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋼板を用いて摩擦撹拌点接合方法により溶接継手を作成し、その継手の引張試験を行ない、破断形態と強度の関係を評価した。この結果、鋼板の摩擦撹拌点接合は次の三つの要因によって強度が決定されることが分かった。すなわち、(1)接合ツールの回転による撹拌によって形成される撹拌領域(「撹拌部」とも称する場合もある。)の大きさ(2)フッキングによる未接合領域の拡大(3)高温加圧下における鋼板同士の圧接状態の発生である。
図1に上記(1)の撹拌領域1を示す。この撹拌領域1では、鋼板である上板と下板が混合され、断面で見れば一般的には図に示すように耳たぶ状の形状をしている。JIS Z3137に定義される十字引張試験においては、引張方向に直角の広さ(図面横方向の長さ)が溶接継手の強度に影響していると考えられる。
また、図1に上記(2)の未接合領域2を示している。一般的に、撹拌領域1は、上下板の混合物が接合ツール先端から接合ツールの根元の方向へ押し上げられる形で形成される。すなわち、撹拌領域1の外周においては、下板から上板への押し上げ力が常に作用している状態となる。一方で、撹拌は接合ツール近傍でしか起こらないために、接合ツールから離れた上下板界面3は、前述の押し上げ力によって変形し、撹拌領域1の外側を取り囲むように伸びることとなる。これがフッキングと言われる現象であり、このようにして形成された未接合領域2は、接合力が弱いか、あるいは未接合の状態となっている。
さらに上記(3)の圧接は、摩擦撹拌点接合が加熱と加圧を有するプロセスであるため、鋼板同士が十分に加熱、加圧された場合には、異なる鋼板の鉄原子同士が金属結合を起こすことに起因して生じる。この現象は、接合ツール近傍のほうが温度が高く、また、加圧力が高いため、接合ツール近傍において最も圧接が起こりやすいと考えられ、図1における未接合領域2あるいは上下板界面3で起こりうるといえる。
本発明者らは、鋼板の接合において(2)のフッキングによる未接合部2の拡大を抑制する接合ツール形状について検討した。
まず、撹拌領域1の形状は接合ツールの形状、特にプローブ5が回転角となす角度によって大きく影響を受ける。具体的には、プローブ5の角度が大きくなると、撹拌領域1も回転軸に対して角度が付いてくるということが言える。
次に、高張力鋼板を十分撹拌するためには十分に軟化させるための加熱が必要である。そのエネルギーはショルダ部4およびプローブ5と鋼板の摩擦によって供給される。継手周辺や雰囲気へと熱が伝わることにより、断続的に冷却される。接合ツールのプローブ5の形状およびショルダ部4の、お互いの配置は、温度場を大きく変化させるといえる。
また、撹拌部を形成する場所が板組全体のどの位置にあるかということも重要である。例えば、撹拌部下端に鋼板界面がある場合は接合の影響をほとんど受けられない。
筆者らは、これら三点の着眼点に基づき、位置関係を規定することで、高張力鋼板の継手強度を得る事ができることを発見し、接合ツール設計において、プローブ5の高さ、回転軸に対する角度、貫通する上板厚さ(「上板の貫通板厚」とも云う場合がある)で規定した。
具体的には、プローブ形状から与えられる撹拌領域の簡略なモデル化を試みた。簡略化手法として、
(1)撹拌部が最も広がる点は接合ツール長さの中央であると近似し、
(2)接合ツール長さ中央からショルダに向かうにつれて流動可能部が狭まるために、撹拌部は狭まる。その変化として、プローブの側面長さを直径とする円の形状をとると近似し、
(3)接合ツール長さ中央からプローブ先端に向かうにつれて温度が低く、撹拌されづらいとして(2)に比べて急激な線形形状で撹拌部は狭まるとの近似
を行った結果、図3に示す関係を得た。この時、撹拌部の実行幅Wを、少なくとも板厚の1/2以上でなければならないとして、条件式を導き出し、さらに、それぞれのパラメータの条件範囲を規定した。
(1)撹拌部が最も広がる点は接合ツール長さの中央であると近似し、
(2)接合ツール長さ中央からショルダに向かうにつれて流動可能部が狭まるために、撹拌部は狭まる。その変化として、プローブの側面長さを直径とする円の形状をとると近似し、
(3)接合ツール長さ中央からプローブ先端に向かうにつれて温度が低く、撹拌されづらいとして(2)に比べて急激な線形形状で撹拌部は狭まるとの近似
を行った結果、図3に示す関係を得た。この時、撹拌部の実行幅Wを、少なくとも板厚の1/2以上でなければならないとして、条件式を導き出し、さらに、それぞれのパラメータの条件範囲を規定した。
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
[1] 鋼板の摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツールであって、
前記接合ツールは回転方向に水平で円形状をしているショルダと、
円錐台状の形状のプローブとを備え、
前記プローブがショルダ方向に広がる形状を有し、前記プローブの側面が回転軸となす角度A(°)、前記プローブの高さL(mm)、前記プローブが貫通する上板厚さt(mm)が(1)および(2)式を満たすことを特徴とする鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
前記接合ツールは回転方向に水平で円形状をしているショルダと、
円錐台状の形状のプローブとを備え、
前記プローブがショルダ方向に広がる形状を有し、前記プローブの側面が回転軸となす角度A(°)、前記プローブの高さL(mm)、前記プローブが貫通する上板厚さt(mm)が(1)および(2)式を満たすことを特徴とする鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
[2] 前記鋼板は、板厚2.3mm以下で引張強度が340MPa以上1470MPa以下である鋼板であることを特徴とする[1]に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
[3] 前記角度A(°)は、5°≦A≦45°の範囲であることを特徴とする[1]または[2]に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
[4] 前記プローブの高さLと、前記プローブが貫通する上板厚さt(mm)とが(3)式を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
[3] 前記角度A(°)は、5°≦A≦45°の範囲であることを特徴とする[1]または[2]に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
[4] 前記プローブの高さLと、前記プローブが貫通する上板厚さt(mm)とが(3)式を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
1.2×t≦L≦3×t・・・(3)
[5] 前記プローブの最も広い半径r(mm)が、ショルダ部の半径R(mm)に対して(4)式を満たすことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
[5] 前記プローブの最も広い半径r(mm)が、ショルダ部の半径R(mm)に対して(4)式を満たすことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
R×0.3≦r≦R×0.8・・・(4)
[6] 前記プローブに、螺旋状の溝が入っていることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の接合ツールを用いて、加圧力を5800N以上、回転数を2100〜3100rpmとし、接合時間を1〜3msとすることを特徴とする鋼板の摩擦撹拌点接合方法。
[6] 前記プローブに、螺旋状の溝が入っていることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の接合ツールを用いて、加圧力を5800N以上、回転数を2100〜3100rpmとし、接合時間を1〜3msとすることを特徴とする鋼板の摩擦撹拌点接合方法。
本発明は、プローブの長さ、回転軸に対する角度、貫通する板厚さで規定することで、接合において発生する熱と撹拌部形状から適正な接合状態を規定することにより、高強度の摩擦撹拌点接合継手を作成することが出来るようになった。
本発明の実施の形態を以下に述べる。
まず、本発明にかかる接合ツールは、鋼板の摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツールであって、前記接合ツールは回転方向に水平で円形状をしているショルダと円錐台状の形状のプローブとを備えている。プローブが円錐台状の形状を有しているのは、摩擦撹拌を効率的におこなうためであり、その形状の例を図2に示す。このプローブはショルダ方向に広がる形状をし、その側面が回転軸となす角度A(°)および前記プローブの高さL(mm)と、前記プローブが貫通する上板厚さt(mm)が下記式(1)および(2)式を満たすことが必要である。
ここで、(1)式は上板の貫通厚さtに対して相対的にプローブが短いツールを用いた場合において最低限の攪拌部実行幅を確保する技術的意義がある。
また、(2)式は上板の貫通厚さtに対して相対的にプローブが長いツールを用いた場合において最低限の攪拌部実行幅を確保する技術的意義がある。
また、(2)式は上板の貫通厚さtに対して相対的にプローブが長いツールを用いた場合において最低限の攪拌部実行幅を確保する技術的意義がある。
また、プローブの側面が回転軸となす角度A(°)、前記プローブの高さL(mm)、前記プローブが貫通する鋼板の厚さt(mm)については、図3に簡略的に示した。
本発明の対象となる鋼板は、板厚2.3mm以下で引張強度が340MPa以上1470MPa以下である鋼板であることが好ましい。この板厚および引張強度の範囲の鋼板が攪拌幅確保の効果が大きいとともに、最も本発明の方法によって効果を得ることができるからである。
さらに、角度Aは、5°≦A≦45°の範囲であることが望ましい。5°未満だと攪拌部に傾斜がつかず、実効幅Wが制限されてしまう。また、45°を超えた場合は攪拌部も広がるが、プローブの表面積が増えることによって抵抗も増し、効率的とは言えない。
このとき、接合に用いる機械は、接合ツールを加圧し、回転させることの出来る構造を有していれば、その構造によらず攪拌部を確保する効果を得ることが出来る。
また、プローブの高さL、プローブが貫通する上鋼板厚さt(mm)は、
1.2×t≦L≦3×t・・・(3)
の範囲であることが好ましく、より好適には1.3×t≦L≦2.5×tであることが望ましい。これは、Lがtの1.3倍以上(Lの0.3倍が下板に圧入される)であれば、板界面とプローブ先端が十分に遠いといえ、影響が小さいことと、2.5倍を超えた場合はショルダからの加熱の影響を受けてしまい、硬化してしまうからである。
1.2×t≦L≦3×t・・・(3)
の範囲であることが好ましく、より好適には1.3×t≦L≦2.5×tであることが望ましい。これは、Lがtの1.3倍以上(Lの0.3倍が下板に圧入される)であれば、板界面とプローブ先端が十分に遠いといえ、影響が小さいことと、2.5倍を超えた場合はショルダからの加熱の影響を受けてしまい、硬化してしまうからである。
接合ツールのプローブの最も広い半径rは、ショルダの半径Rに対して
R×0.3≦r≦R×0.8・・・(4)
であることが好ましい。理由は、ショルダとプローブからの加熱や攪拌部の形成を考えた際に、0.3未満では攪拌部に対して加熱される幅が大きすぎ、0.8を超えるとショルダによって抑えつける力が限定され、攪拌部が良好に形成されないからである。ショルダでの入熱量とを考慮すると、R×0.35≦r≦R×0.7の範囲がさらに望ましい。
R×0.3≦r≦R×0.8・・・(4)
であることが好ましい。理由は、ショルダとプローブからの加熱や攪拌部の形成を考えた際に、0.3未満では攪拌部に対して加熱される幅が大きすぎ、0.8を超えるとショルダによって抑えつける力が限定され、攪拌部が良好に形成されないからである。ショルダでの入熱量とを考慮すると、R×0.35≦r≦R×0.7の範囲がさらに望ましい。
突起部の形状に加工は必須ではなく、全ての形状が適用できるが、接合ツールの突起部に、螺旋状の溝が入っていることにより格段の撹拌効果を発揮する。なお、プローブの材質に関しては、各種セラミックス、金属の如何によらず効果を得ることが出来、また、表面状態に関しても、セラミックスコートなどの有無によらず効果を得ることが出来る。
また、本件の接合ツールを用いて行う摩擦撹拌点接合において、加圧力を5800N以上、回転数を2100〜3000rpmとし、接合時間を1〜3s以下とすることにより、高強度の継手を形成することが出来る。本発明において、接合後の高強度の継手とは十字引張強さ(kN)が比較例に対して0.5kN以上向上したものをいう。
試験片として、JIS Z 3137に規定した十字引張試験に適合する、幅:50mm、長さ:150mmの形状の、厚みが1.0mmから2.0mmの鋼板を用いた。また、かかる鋼板としては、引張強度440MPa級鋼、780MPa級鋼および980MPaの3種類の鋼板を用い、上下板が同種の鋼板である重ね継手とした。
摩擦撹拌点接合装置として、川崎重工製のFSJ装置を用いた。接合雰囲気は大気中とした。
接合ツールは、Si3N4のセラミックからなる平坦なショルダー4と、ショルダー4と同心のプローブ5(図2参照)を備え、逆ネジが切られているものを用いた。本発明の効果を確認するため、従来の接合ツール形状(Aが0°であるもの)およびその他の角度のものとを比較した。
ツールと鋼板を挟んで対面に位置し、荷重を支える受け具としては、同様にSi3N4のセラミックを用い、回転工具の軸に対して面が水平になるように配置した。
その他、回転数および加圧力、接合時間の接合条件と、得られた結果を表1に示す。表において「式の適用」とはプローブの傾きから式1および式2のどちらの適用を受けるかを意味し、「−」はプローブに傾斜角が無い従来のツールであり、「成立」とは本発明の式に合致する場合には○を、合致しない場合は×を記載している。加算数値とはプローブの高さL(mm)と、前記プローブが貫通する上板厚さt(mm)を意味している。
表1に示したように、角度Aが0でなかった場合も、本式に従わない場合は十字引張強さの向上は小さかった。一方、本発明に従う方法では、鋼種の組み合わせの如何にかかわらず、従来よりも高い十字引張強度を得ることができた。
1 撹拌領域
2 未接合領域
3 上下板界面
4 ショルダー部
5 プローブ
L プローブの高さ
A プローブの側面が回転軸となす角度
t プローブが貫通する上板厚さ
2 未接合領域
3 上下板界面
4 ショルダー部
5 プローブ
L プローブの高さ
A プローブの側面が回転軸となす角度
t プローブが貫通する上板厚さ
Claims (7)
- 前記鋼板は、板厚2.3mm以下で引張強度が340MPa以上1470MPa以下である鋼板であることを特徴とする請求項1に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
- 前記角度A(°)は、5°≦A≦45°の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
- 前記プローブの高さLと、前記プローブが貫通する上鋼厚さt(mm)とが(3)式を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
1.2×t≦L≦3×t・・・(3) - 前記プローブの最も広い半径r(mm)が、ショルダ部の半径R(mm)に対して(4)式を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
R×0.3≦r≦R×0.8・・・(4) - 前記プローブに、螺旋状の溝が入っていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の鋼板用摩擦撹拌点接合に用いられる接合ツール。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の接合ツールを用いて、加圧力を5800N以上、回転数を2100〜3100rpmとし、接合時間を1〜3sとすることを特徴とする鋼板の摩擦撹拌点接合方法。
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