WO2015060328A1 - 定電位電解式ガスセンサ - Google Patents
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Abstract
Description
このような定電位電解式ガスセンサにおいて、参照極としては、電解液に対して不溶性の金属(具体的には、白金(Pt)や金(Au))の微粒子、またはこれらの金属の微粒子の混合物や合金の微粒子などがバインダと共に焼成されてなるものが用いられている。
また、このような定電位電解式ガスセンサにおいては、通常、作用極、対極および参照極の各々に、一端部がケーシングの外部に導出されたリード部材の他端部が電気的に接続されている。これらのリード部材としては、白金(Pt)よりなる線材が用いられている。
以下、そのような問題が生じる理由について説明する。
具体的には、例えば作用極に電気的に接続された作用極用リード部材においては、ケーシング内に位置するケーシング内部分が雑ガスに接触することにより、そのケーシング内部分において反応が生じる。そのため、定電位電解式ガスセンサに指示誤差が生じる。
また、参照極に電気的に接続された参照極用リード部材においては、ケーシング内に位置するケーシング内部分が雑ガスに接触することにより、そのケーシング内部分において、当該参照極用リード部材と電解液との界面の状態が変化する。そのため、基準となる参照極の電極電位が変動することから、作用極に対して適正な電圧を印加することができなくなる。
更に、このような定電位電解式ガスセンサにおいては、検知対象ガスの種類によっては、対極において生じる酸化還元反応によって生成ガスが発生する場合や、対極用リード部材において酸化還元反応が生じて生成ガスが発生する場合がある。そして、作用極用リード部材におけるケーシング内部分に、対極および対極用リード部材の両方または一方において発生する生成ガスが接触することにより、そのケーシング内部分において反応が生じ、それに起因して検知対象ガスが存在しなくても作用極と対極との間に電解電流が流れることとなる。その場合には、指示誤差が生じ、それに起因して高い指示精度を得ることができない。
具体的には、検知対象ガスが酸素ガスである場合、すなわち定電位電解式ガスセンサが定電位電解式酸素ガスセンサである場合には、検査対象ガス中の酸素ガス(検知対象ガス)が作用極において還元され、それに伴って対極で水の電気分解が生じる。そして、対極においては、水の電気分解が生じることにより、検知対象ガスと同種のガス、すなわち酸素ガスが生成ガスとして発生する。そのため、作用極用リード部材の材料として白金が用いられていることにより、当該作用極用リード部材のケーシング内部分に、対極において発生した生成ガスが接触して反応(酸化反応)が生じ、それに起因して検知対象ガスが存在しなくても作用極と対極との間に電解電流が流れることとなる。
前記作用極用リード部材および前記対極用リード部材の少なくとも一方が、金、タングステン、ニオブおよびタンタルから選ばれる金属よりなることを特徴とする。
前記参照極用リード部材が、金、タングステン、ニオブおよびタンタルから選ばれる金属よりなることを特徴とする。
前記作用極が、白金黒および金黒から選ばれる金属黒により形成されたものであることが好ましい。
この本発明の第1の定電位電解式ガスセンサにおいて、前記ケーシング内においては、前記作用極との間および前記対極との間に電解液を介在した状態で参照極が設けられており、当該参照極には、一端部が当該ケーシングの外部に導出された参照極用リード部材の他端部が電気的に接続されており、
前記参照極が、イリジウム、酸化イリジウム、ルテニウム、酸化ルテニウムおよび酸化白金から選ばれる物質により形成されたものであることが好ましい。
また、前記参照極用リード部材が、タンタル、金、タングステンおよびニオブから選ばれる金属よりなることが好ましい。
更に、前記対極が酸化イリジウムにより形成されたものであることが好ましい。
前記参照極が、イリジウム、酸化イリジウム、ルテニウム、酸化ルテニウムおよび酸化白金から選ばれる物質により形成されたものであることを特徴とする。
そのため、第1の定電位電解式ガスセンサにおいては、特定の金属よりなるリード部材がケーシング内において検査対象ガス中に含まれる雑ガス、および/または対極などで発生する生成ガスに接触した場合であっても、リード部材が雑ガスや生成ガスの影響を受けることに起因する、例えば指示誤差の発生などの弊害が生じることが防止あるいは抑制される。また、特定の金属よりなる対極用リード部材においては、酸化還元反応が生じて生成ガスが発生することが殆どないため、対極用リード部材において酸化還元反応が生じることに起因して指示誤差が生じることが抑制される。その結果、正確なガス感度、すなわち高い指示精度が得られる。
従って、本発明の第1の定電位電解式ガスセンサによれば、検査対象ガスの組成によらずに高い信頼性でガス検知を行うことができる。
従って、本発明の第2の定電位電解式ガスセンサによれば、検査対象ガスの組成によらずに高い信頼性でガス検知を行うことができる。
また、本発明の定電位電解式ガスセンサにおいては、参照極が白金以外の特定の物質で形成されたものである場合には、当該参照極と共に、参照極用リード部材が白金以外の特定の物質で形成されていることが好ましい。
更に、本発明の定電位電解式ガスセンサにおいては、検知対象ガスが酸素ガスである場合には、作用極用リード部材が白金以外の特定の物質で形成されていると共に、作用極が白金黒または金黒により形成されていることが好ましい。
本発明の第1の定電位電解式ガスセンサは、作用極用リード部材、対極用リード部材および必要に応じて設けられる参照極用リード部材のうちの少なくとも1つが、白金以外の特定の物質で形成されたものであることを特徴とするものである。
図1は、本発明の第1の定電位電解式ガスセンサの構成の一例を示す説明図である。
この第1の定電位電解式ガスセンサは、一端(図1における左端)に、検知対象ガスを含む検査対象ガスを導入するためのガス導入用貫通孔12を有すると共に、他端(図1における右端)に、ガス排出用貫通孔13を有する筒状のケーシング11を備えている。このケーシング11には、一端側内面に、ガス導入用貫通孔12を内面側から塞ぐように一端側ガス透過性疎水隔膜15が張設されており、また他端側内面には、ガス排出用貫通孔13を内面側から塞ぐように他端側ガス透過性疎水隔膜16が張設されており、これにより、ケーシング11内に、例えば硫酸よりなる電解液Lが収容される電解液室が液密に形成されている。
また、ケーシング11内には、電解液Lが収容されていると共に、作用極21、対極22および参照極23が、電解液Lに浸漬されて電解液Lと接触した状態とされており、それぞれの電極間に電解液Lが介在した状態で配設されている。具体的には、作用極21は、一端側ガス透過性疎水隔膜15の接液側の内面に設けられており、対極22は、他端側ガス透過性疎水隔膜16の接液側の内面に設けられている。また、参照極23は、作用極21および対極22の各々と離間した位置において、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂よりなるガス透過性多孔質膜17の一面に設けられている。
この図の例において、参照極23は、対極22とは電解液Lを介して対向し、また作用21とは、電解液Lおよびガス透過性多孔質膜17を介して対向している。
この制御手段30は、作用極21と参照極23との間に一定の電位差が生じると共に作用極21の電位が酸化還元反応が起こる電位となるよう、作用極21に所定の大きさの電圧を印加するものである。
一端側ガス透過性疎水隔膜15および他端側ガス透過性疎水隔膜16としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂よりなる多孔質膜を用いることができる。
具体的に、一端側ガス透過性疎水隔膜15および他端側ガス透過性疎水隔膜16を構成する多孔質膜としては、空隙率が10~70%であって厚みが0.01~1mmであるものが好ましい。
この作用極21を構成する電極触媒層は、電解液Lに対して不溶性の金属の微粒子、その金属の酸化物の微粒子、その金属の合金の微粒子、またはこれらの微粒子の混合物などを、バインダと共に焼成する工程を経ることによって形成される。
この対極22を構成する電極触媒層は、作用極21と同様に、電解液Lに対して不溶性の金属の微粒子、その金属の酸化物の微粒子、その金属の合金の微粒子、またはこれらの微粒子の混合物などを、バインダと共に焼成する工程を経ることによって形成される。
この参照極23を構成する電極触媒体としては、電解液Lに対して不溶性の金属の微粒子、その酸化物の微粒子、その合金の微粒子、またはこれらの微粒子の混合物などを、バインダと共に焼成する工程を経ることによって形成されたものが用いられる。
そして、作用極用リード部材31a、対極用リード部材31bおよび参照極用リード部材31cは、これらの3つのリード部材のいずれかが金(Au)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)から選ばれる金属(以下、「特定金属」ともいう。)により形成されたものとされる。好ましくは、少なくとも作用極用リード部材31aおよび参照極用リード部材31cの一方が特定金属により形成されたものとされ、更に好ましくは、作用極用リード部材31a、対極用リード部材31bおよび参照極用リード部材31cのいずれもが特定金属により形成されたものとされる。
ここに、作用極用リード部材31a、対極用リード部材31bおよび参照極用リード部材31cは、各々、特定金属により形成されたものである場合において、金、タングステン、ニオブおよびタンタルのうちの1種の金属により形成されたものであってもよく、2種以上の金属により形成されたものであってもよい。
対極用リード部材31bを構成する特定金属としては、金、タングステン、ニオブおよびタンタルが好ましい。
参照極用リード部材31cを構成する特定金属としては、タングステン、ニオブおよびタンタルが好ましい。
従って、第1の定電位電解式ガスセンサによれば、検査対象ガスの組成によらずに高い信頼性でガス検知を行うことができる。
また、対極用リード部材31bを特定金属により形成することによれば、この対極用リード部材31bにおいて酸化還元反応によって生成ガスが発生することが殆どないため、対極用リード部材31bと作用極21との離間距離を小さくすることができる。そのため、第1の定電位電解式ガスセンサにおいては、より大きな設計の自由度が得られ、よって小型化を図ることができる。
具体的には、作用極21において還元反応を生じさせ、対極22において酸化反応を生じさせることのできるガスとしては、例えば酸素ガス、二酸化窒素ガス、三フッ化窒素ガス、塩素ガス、フッ素ガス、ヨウ素ガス、三フッ化塩素ガス、オゾンガス、過酸化水素ガス、フッ化水素ガス、塩化水素ガス(塩酸ガス)、酢酸ガスおよび硝酸ガスなどが挙げられる。これらのガスを検知対象ガスとした場合には、対極22において酸化反応が生じることによって酸素ガスが生成される。
また、作用極21において酸化反応を生じさせ、対極22において還元反応を生じさせることのできるガスとしては、例えば一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化硫黄ガス、シランガス、ジシランガス、ホスフィンガス、ゲルマンガスなどが挙げられる。
また、第1の定電位電解式ガスセンサは、図1に示されているように作用極、対極および参照極の3つの電極を有するものに限定されず、電極として参照極を有さずに作用極と対極のみを備え、リード部材としては、作用極用リード部材と対極用リード部材とを備えたものであってもよい。このような構成の第1の定電位電解式ガスセンサにおいては、作用極用リード部材および対極用リード部材のいずれか一方が特定金属よりなるものであればよいが、少なくとも作用極用リード部材が特定金属よりなるものであることが好ましい。
作用極用リード部材が特定金属よりなるものであることによれば、検査対象ガス中に雑ガスが含まれている場合であっても、また対極や対極用リード部材などにおいて生成ガスが発生した場合であっても、当該作用極用リード部材が雑ガスや生成ガスの影響を受けることによって指示誤差が発生することを防止あるいは抑制できる。そのため、対極用リード部材が特定金属よりなるものである場合に比してより大きな指示誤差発生抑制効果を得ることができる。
本発明の第2の定電位電解式ガスセンサは、参照極が白金以外の特定の物質で形成されたものであることを特徴とするものである。
以下、図1を用いて第2の定電位電解式ガスセンサについて説明する。
この第2の定電位電解式ガスセンサにおいて、ケーシング11、一端側ガス透過性疎水隔膜15、他端側ガス透過性疎水隔膜16、ガス透過性多孔質膜17、作用極21、対極22および制御手段30は、各々、図1に係る第1の定電位電解式ガスセンサの構成部材と同様の構成を有している。
この参照極23は、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrO2 )、ルテニウム(Ru)、酸化ルテニウム(RuO2 )、酸化白金(IV)(PtO2 )および酸化白金(II)(PtO)のうちの1種類の物質によって形成されたものであってもよく、また2種類以上の物質が組み合わされて形成されたものであってもよい。
参照極用導電性非金属の具体例としては、例えばチャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。
参照極用導電性非金属として用いられるカーボンブラックの粒径は、100μm以下であることが好ましい。
また、参照極用導電性非金属としては、カーボンブラックの他、例えばグラファイト(黒鉛)、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンなどを用いることもできる。
この参照極23を構成する電極触媒体は、特定物質の微粒子、または特定物質の微粒子と参照極用導電性非金属の微粒子との混合物を、バインダと共に焼成する工程を経ることによって形成される。
この参照極23を構成する電極触媒体の製造過程において用いられる特定物質の微粒子においては、粒径が75μm(200メッシュ)以下であることが好ましく、比表面積が2~200m2 /gであることが好ましい。
参照極23を構成する電極触媒体が、ガス透過性多孔質膜17の一面上に形成された電極触媒層を構成するものである場合において、その電極触媒層の厚みは、例えば10~500μmとされる。また、ガス透過性多孔質膜17の一面における、電極触媒層の形成面積は、例えば3~500mm2 とされる。
ここに、参照極用リード部材31cが特定金属により形成されたものである場合において、当該参照極用リード部材31cは、タンタル、金、タングステンおよびニオブのうちの1種の金属により形成されたものであってもよく、2種以上の金属により形成されたものであってもよい。
なお、第2の定電位電解式ガスセンサにおいて、参照極用リード部材31cが特定金属よりなるものである場合は、その第2の定電位電解式ガスセンサは、第1の定電位電解式ガスセンサにも該当するものとなる。
具体的に説明すると、特定金属よりなる参照極用リード部材31cは、後述の実験例からも明らかなように、検査対象ガス中に雑ガスとして含まれるような種々のガスに対して不活性あるいは活性が小さいものである。そのため、参照極用リード部材31cにおけるケーシング11内に位置するケーシング内部分に、検査対象ガス中の雑ガスが接触した場合において、そのケーシング内部分において当該参照極用リード部材31cと電解液Lとの界面の状態に変化が生じることが防止あるいは抑制される。従って、第2の定電位電解式ガスセンサにおいて、参照極用リード部材31cと電解液Lとの界面の状態が変化することに起因して参照極23の電極電位が変動することが防止あるいは抑制され、よって作用極21に印加することが必要とされる電圧が、検査対象ガスの組成によらず略一定となる。その結果、第2の定電位電解式ガスセンサに指示誤差が生じることがより一層抑制されるため、ガス検知により高い信頼性が得られる。
すなわち、第2の定電位電解式ガスセンサは、参照極23の電位状態を基準として、作用極21に所定の電圧が印加されて作用極21と参照極23との間に一定の電位差が生じた状態とされることによりガス検知状態とされる。そして、ガス検知状態において、検知対象空間における環境雰囲気の空気などの検査対象ガスが、ガス導入用貫通孔12を介して導入され、一端側ガス透過性疎水隔膜15を透過して作用極21に供給されることにより、その検査対象ガス中の検知対象ガスが作用極21において還元または酸化される。そして、作用極21において還元反応または酸化反応が生じることに伴って、作用極21と対極22との間に電解電流が流れ、対極22においては酸化反応または還元反応が生じる。このようにして、作用極21および対極22の各々において酸化還元反応が起こることに起因して作用極21および対極22の両電極間に生じる電解電流の値が測定され、その測定された電解電流値に基づいて検査対象ガス中の検知対象ガスの濃度が検出される。
従って、第2の定電位電解式ガスセンサによれば、検査対象ガスの組成によらずに高い信頼性でガス検知を行うことができる。
具体的には、作用極21において還元反応を生じさせ、対極22において酸化反応を生じさせることのできるガスとしては、例えば酸素ガス、二酸化窒素ガス、三フッ化窒素ガス、塩素ガス、フッ素ガス、ヨウ素ガス、三フッ化塩素ガス、オゾンガス、過酸化水素ガス、フッ化水素ガス、塩化水素ガス(塩酸ガス)、酢酸ガスおよび硝酸ガスなどが挙げられる。これらのガスを検知対象ガスとした場合には、対極22において酸化反応が生じることによって酸素ガスが生成される。
また、作用極21において酸化反応を生じさせ、対極22において還元反応を生じさせることのできるガスとしては、例えば一酸化炭素ガス、水素ガス、二酸化硫黄ガス、シランガス、ジシランガス、ホスフィンガス、ゲルマンガスなどが挙げられる。
対極22を酸化イリジウムにより形成されたものとすることにより、対極22における酸素発生の過電圧を低くすることができ、しかも長期間にわたって略一定とすることができる。従って、所期のガス検知を低い電圧で長期間にわたって安定に行うことができる。しかも、対極22を構成する電極触媒層の、他端側ガス透過性疎水隔膜16の一面における形成面積を小さくすることができることから、第2の定電位電解式ガスセンサの小型化を図ることができる。
また、第2の定電位電解式ガスセンサにおいては、対極22において還元反応を生じさせるガスを検知対象ガスとする場合には、対極22が白金黒(黒色白金微粒子)により形成されたものであることが好ましい。
対極22を白金黒により形成されたものとすることにより、白金黒が対極22において生じる酸素還元に対して活性の大きいものであるため、水素発生を抑制できる。
例えば、第2の定電位電解式ガスセンサは、図1に係る第2の定電位電解式ガスセンサにおいて、参照極が、他端側ガス透過性疎水隔膜の接液側の内面における対極と離間して並んだ位置に設けられた構成のものであってもよい。
このような構成の第2の定電位電解式ガスセンサにおいては、参照極が検査対象ガスに直接接触する位置に配設されている。しかしながら、この参照極が特定物質により形成されており優れた電位安定性を有するものであることから、検査対象ガスに含まれる雑ガスが参照極に直接接触した場合であっても、作用極に印加することが必要とされる電圧が、検査対象ガスの組成によらずに略一定となる。そのため、正確なガス感度、すなわち高い指示精度が得られる。
また、対極と参照極とを他端側ガス透過性疎水隔膜に形成すればよく、よって対極および参照極を形成するために個別の多孔質膜が必要とされないことから、構成部材の品数が低減され、製造コストが安価になると共にセンサの製造が容易となる。また、ケーシング内において一端側ガス透過性疎水隔膜と他端側ガス透過性疎水隔膜との間に参照極の配置位置を確保する必要がないことから、より一層の小型化を図ることができる。特に対極および参照極の電極材料として酸化イリジウムを用いる場合には、対極および参照極を形成するために個別の電極触媒が必要とされることがなく、しかも対極と参照極とを同時に形成することができるため、更に製造コストが安価になると共にセンサの製造が容易となる。しかも、対極の電極サイズを小さくすることができるため、更により一層の小型化を図ることができる。
本発明の第3の定電位電解式ガスセンサは、検知対象ガスが酸素ガスであるもの、すなわち定電位電解式酸素ガスセンサであり、作用極が白金黒および金黒から選ばれる金属黒により形成されたものであると共に、作用極用リード部材が特定金属により形成されたものであることを特徴とするものである。
この第3の定電位電解式ガスセンサは、第1の定電位電解式ガスセンサに包含されるものである。
以下、図1を用いて第3の定電位電解式ガスセンサについて説明する。
この第3の定電位電解式ガスセンサにおいて、一端側ガス透過性疎水隔膜15、他端側ガス透過性疎水隔膜16、ガス透過性多孔質膜17、対極22、参照極23、対極用リード部材31b、参照極用リード部材31cおよび制御手段30は、各々、図1に係る第1の定電位電解式ガスセンサの構成部材と同様の構成を有している。
このガス供給用貫通孔12が形成されたケーシング11は、図1に係る第1の定電位電解式ガスセンサと同様に、例えばポリカーボネート、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂などよりなるものである。
この作用極21は、白金黒または金黒によって形成されたものであってもよく、また白金黒と金黒とが組み合わされて形成されたものであってもよい。
この作用極21は、具体的には一端側ガス透過性疎水隔膜15の一面上に、特定金属黒が、バインダと共に焼成されてなる電極触媒層よりなるものである。この電極触媒層の厚みは、例えば5~300μmである。
また、作用極21が金黒により形成されたものであることによれば、当該作用極21が検査対象ガス中において雑ガスなどとして含まれるようなガスに対して活性が小さいものとなる。そのため、第3の定電位電解式ガスセンサにおいては、作用極21が雑ガスの影響を受けることによって指示誤差が生じることが抑制される。
その理由は、酸化イリジウムが、電解液Lに対する不溶性を有すると共に、後述の実験例からも明らかなように、対極22の電極材料として用いた場合に白金と同等の高い導電性を発現させることができ、しかも対極22の導電性を長期間にわたって一定に維持することができるものだからである。
対極用導電性非金属の具体例としては、例えばチャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。
対極用導電性非金属として用いられるカーボンブラックの粒径は、100μm以下であることが好ましい。
また、対極用導電性非金属としては、カーボンブラックの他、例えばグラファイト(黒鉛)、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンなどを用いることもできる。
酸化イリジウム対極22を構成する電極触媒層の製造過程において用いられる酸化イリジウムの微粒子においては、粒径が75μm(200メッシュ)以下であることが好ましく、また比表面積が2~200m2 /gであることが好ましい。
また、酸化イリジウム対極22を構成する電極触媒層は、他端側ガス透過性疎水隔膜16の一面における形成面積を小さくすることができるものである。
具体的に説明すると、酸化イリジウムは、電極材料として用いた場合に高い導電性が発現され、その導電性を長期間にわたって一定に維持することのできるものである。そのため、作用極21に印加すべき電圧が過度に高くなるという弊害を伴うことなく、他端側ガス透過性疎水隔膜16の一面における酸化イリジウム対極22の形成面積を小さくすることができる。例えば、酸化イリジウム対極22の形成面が円形状である場合には、その直径が2~15mmである。
この特定物質により形成された参照極23は、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrO2 )、ルテニウム(Ru)、酸化ルテニウム(RuO2 )、酸化白金(IV)(PtO2 )および酸化白金(II)(PtO)のうちの1種類の物質によって形成されたものであってもよく、また2種類以上の物質が組み合わされて形成されたものであってもよい。
なお、第3の定電位電解式ガスセンサは、参照極23が特定物質により形成されたものである場合には、第2の定電位電解式ガスセンサにも包含されるものとなる。
ここに、作用極用リード部材31aは、金、タングステン、ニオブおよびタンタルのうちの1種の金属により形成されたものであってもよく、2種以上の金属により形成されたものであってもよい。
ここに、参照極用リード部材31cが特定金属により形成されたものである場合において、当該参照極用リード部材31cは、金、タングステン、ニオブおよびタンタルのうちの1種の金属により形成されたものであってもよく、2種以上の金属により形成されたものであってもよい。
また、この第3の定電位電解式ガスセンサにおいては、対極22において酸化反応によって発生する生成ガスは、他端側ガス透過性疎水隔膜16を透過し、更にガス排出用貫通孔13を流通することによって外部に排出される。
従って、第3の定電位電解式ガスセンサによれば、所期のガス検知を高い信頼性で行うことができる。
酸化イリジウム対極22を有する第3の定電位電解式ガスセンサは、長期間にわたって低い電圧でガス検知を行うことができ、よって電力消費量が小さいものであることから、例えば電池駆動の可搬型検知器に係るガスセンサとして好適に用いることができる。この第3の定電位電解式ガスセンサを、電池駆動式の可搬型検知器において用いた場合には、白金により形成された対極22を有する第3の定電位電解式ガスセンサに比して、電池交換を頻繁に行う必要がない。
また、第3の定電位電解式ガスセンサにおいては、対極22が酸化イリジウムにより形成されたものであることにより、作用極21に印加すべき電圧が過度に高くなるという弊害を伴うことなく、対極22を構成する電極触媒層の他端側ガス透過性疎水隔膜16の一面における形成面積を小さくすることができる。そのため、第3の定電位電解式ガスセンサの小型化を図ることができる。
この第3の定電位電解式ガスセンサ(定電位電解式酸素ガスセンサ)40は、電解液が収容される電解液室Sを有する、全体が略箱型形状のケーシング41を備えている。
ケーシング41には、電解液室Sと並んだ位置において、電解液室Sの内部空間と連通孔43を介して連通する、上下方向に伸びる略円柱状の貫通孔よりなる感応部形成用空間45が形成されている。この感応部形成用空間45内には、厚み方向に貫通する複数の通孔50Aよりなる流体流通路が形成された上面側保護板50が配置されている。そして、上面側保護板50の上面側には、例えば濾紙よりなる電解液保持層(図示省略)、作用極55および検査対象ガスを導入するピンホール(ガス供給制御手段)61が貫通して形成された、例えば液晶ポリマーよりなる板状蓋部材60が順次に収容されて配置されている。一方、上面側保護板50の下面側においては、その中央位置に、参照極57が、例えば濾紙よりなる電解液保持層(図示省略)が介在された状態で設けられている。
また、感応部形成用空間45内における上面側保護板50の下方位置には、厚み方向に貫通する複数の通孔65Aよりなる流体流通路が形成された下面側保護板65が配置されている。この下面側保護板65の下面側には、例えば濾紙よりなる電解液保持層(図示省略)、対極56および検査対象ガスを排出するガス排出用貫通孔70Aが形成されたキャップ部材70が順次に収容されて配置されている。
また、第3の定電位電解式ガスセンサ40においては、作用極55、対極56および参照極57は、各々、作用極用リード部材(図示省略)、対極用リード部材(図示省略)および参照極用リード部材(図示省略)によって、例えばポテンショスタットよりなる制御手段(図示省略)に接続されている。そして、作用極用リード部材、対極用リード部材および参照極用リード部材は、各々、一端部がケーシング41における電解液室Sの液密状態を維持するようにして外部に導出されている。また、作用極用リード部材、対極用リード部材および参照極用リード部材の他端部は、各々、電極と電解液保持層を構成する濾紙とにより挟みこまれた状態で当該電極に電気的に接続されている。
この図の例において、42は、例えばフッ素系樹脂よりなるガス透過性疎水圧力調整膜である。
作用極55は、ガス透過性疎水隔膜(図示省略)の一面上の中央位置に形成された電極触媒層よりなるものである。この作用極55に係る電極触媒層は、図1に係る第3の定電位電解式ガスセンサにおける作用極21と同様の構成を有するものである。
また、対極56は、ガス透過性疎水隔膜(図示省略)の一面上の中央位置に形成された電極触媒層よりなるものである。この対極56に係る電極触媒層は、図1に係る第3の定電位電解式ガスセンサにおける対極22と同様の構成を有するものである。
また、作用極用リード部材、対極用リード部材および参照極用リード部材は、各々、図1に係る第3の定電位電解式ガスセンサにおける作用極用リード部材31a、対極用リード部材31bおよび参照極用リード部材31cと同様の構成を有するものである。
例えば、第3の定電位電解式ガスセンサは、参照極が特定物質により形成されたものである場合には、図1に係る第3の定電位電解式ガスセンサにおいて、参照極が、他端側ガス透過性疎水隔膜の接液側の内面における対極と離間して並んだ位置に設けられた構成のものであってもよい。
このような構成の第3の定電位電解式ガスセンサにおいては、参照極が検査対象ガスに直接接触する位置に配設されている。しかしながら、参照極が特定物質により形成されており優れた電位安定性を有するものであることから、検査対象ガスに含まれる雑ガスが参照極に直接接触した場合であっても、作用極に印加することが必要とされる電圧が、検査対象ガスの組成によらずに略一定となる。そのため、正確なガス感度、すなわち高い指示精度が得られる。また、参照極用リード部材を特定金属よりなるものとすることにより、より一層高い指示精度が得られる。
また、対極と参照極とを他端側ガス透過性疎水隔膜に形成すればよく、よって対極および参照極を形成するために個別の多孔質膜が必要とされないことから、構成部材の品数が低減され、製造コストが安価になると共にセンサの製造が容易となる。また、ケーシング内において一端側ガス透過性疎水隔膜と他端側ガス透過性疎水隔膜との間に参照極の配置位置を確保する必要がないことから、より一層の小型化を図ることができる。特に対極および参照極の電極材料として酸化イリジウムを用いる場合には、対極および参照極を形成するために個別の電極触媒が必要とされることがなく、しかも対極と参照極とを同時に形成することができるため、更に製造コストが安価になると共にセンサの製造が容易となる。しかも、対極の電極サイズを小さくすることができるため、更により一層の小型化を図ることができる。
図3に示すような構成の実験用装置(以下、「実験用装置(1)」ともいう。)を作製した。
この実験用装置(1)は、側面部82にガス導入用貫通孔およびガス排出用貫通孔が形成された、有底円筒状の容器81を備えてなるものである。この容器81には、開口を閉塞するように、円形状の多孔質PTFE膜(商品名:「FX-030」(住友電工ファインポリマー社製))84が両面テープで貼り付けられている。また、多孔質PTFE膜84の上面(図3における上面)には、一端部が容器81の開口の上方に位置するように5種類の金属線材91a~91eが配置され、また濃度18Nの硫酸を含浸した、円形状の濾紙85が配設されている。すなわち、5種類の金属線材91a~91eは、一端部が多孔質PTFE膜84と濾紙85とに挟まれた状態とされている。また、濾紙85の上面(図3における上面)上には、硫酸水銀電極87が設けられている。そして、5種類の金属線材91a~91eがエレクトロメーター(図示省略)に接続されており、これらの5種類の金属線材91a~91eにおける自然電位を同時測定することのできる構成とされている。
この実験用装置(1)において、5種類の金属線材91a~91eとしては、白金線材、金線材、タングステン線材、タンタル線材およびニオブ線材を用いた。これらの5種類の金属線材91a~91eは、各々、直径が0.1mmであって長さが5mm程度のものである。
また、容器81におけるガス導入用貫通孔にはガス流路部材が接続されており、このガス流路部材によって形成されるガス流路88に設けられたポンプ89によってガス供給源93から供給されるガス(具体的には空気または後述の試料ガス)が容器81内に供給される。
試料ガスとしては、窒素ガス(濃度99.9%)、低濃度水素ガス(窒素ガスで希釈した濃度2.06%のもの)、高濃度水素ガス(濃度99.9%)、一酸化窒素ガス(窒素ガスで希釈した濃度101ppmのもの)、硫化水素ガス(窒素ガスで希釈した濃度29.7ppmのもの)、一酸化炭素ガス(窒素ガスで希釈した濃度3010ppmのもの)およびエタノールガス(空気で希釈した濃度1%のもの)を用いた。結果を表1に示すと共に、白金線材において自然電位が比較的大きく変化した試料ガスにおける自然電位の測定結果を図4~図8に示す。ここに、図4は、白金線材の自然電位の測定結果を示し、図5は、金線材の自然電位の測定結果を示し、図6は、タングステン線材の自然電位の測定結果を示し、図7は、タンタル線材の自然電位の測定結果を示し、また図8は、ニオブ線材の自然電位の測定結果を示す。また、図4~図8において、(a)は、試料ガスとして高濃度水素ガスを用いた場合の測定結果を示し、(b)は、試料ガスとして低濃度水素ガスを用いた場合の測定結果を示し、(c)は、試料ガスとして硫化水素ガスを用いた場合の測定結果を示し、また(d)は、試料ガスとして一酸化炭素ガスを用いた場合の測定結果を示す。
また、タングステン線材およびタンタル線材は、高濃度水素ガスが供給された場合においては自然電位が変化するものの、その変化量は白金線材に比して小さく、また窒素ガス、低濃度水素ガス、一酸化窒素ガス、硫化水素ガス、一酸化炭素ガスおよびエタノールガスのいずれが供給された場合においても自然電位が変化しない、あるいは自然電位の変化が極めて小さいものであることが明らかとなった。従って、タングステン線材およびタンタル線材は、白金線材に比して高濃度水素ガスに対する活性が小さく、また低濃度水素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガスなどの窒素酸化物ガス、硫化水素ガスなどの硫黄化合物ガス、一酸化炭素ガスおよびエタノールガスなどのアルコールガスに対して不活性なものであることが確認された。
また、金線材は、低濃度水素ガス、高濃度窒素ガスおよび硫化水素ガスのいずれが供給された場合においては自然電位が変化するものの、低濃度水素ガスおよび高濃度水素ガスが供給された場合の変化量は白金線材に比して小さく、また、窒素ガス、一酸化窒素ガス、一酸化炭素ガスおよびエタノールガスのいずれが供給された場合においても自然電位が変化しない、あるいは自然電位の変化が極めて小さいものであることが明らかとなった。従って、金線材は、白金線材に比して水素ガスに対する活性が小さく、また窒素ガス、一酸化窒素ガスなどの窒素酸化物ガス、一酸化炭素ガスおよびエタノールガスなどのアルコールガスに対して不活性なものであることが確認された。
一方、白金線材は、窒素ガスおよびエタノールガスのいずれが供給された場合においても自然電位が変化しない、あるいは自然電位の変化が極めて小さいが、低濃度水素ガス、高濃度水素ガス、一酸化炭素ガスおよび硫化水素ガスのいずれが供給された場合においても、自然電位が大きく変化するものであることが明らかとなった。
図9に示すように、作用極103と対極104とを有する2極式の実験用装置(以下、「実験用装置(2)」ともいう。)を作製した。
この実験用装置(2)は、電解液Lを収容するケーシング100を備えており、このケーシング100に形成されたガス導入用貫通孔101よりなるガス供給制御手段を内面側から塞ぐようにガス透過性疎水隔膜102が張設され、このガス透過性疎水隔膜102における電解液L側には、5個の作用極103が設けられている。また、ケーシング100の内部には、5個の作用極103と共に、これらの5個の作用極103から離間した位置に、対極104として硫酸水銀電極が設けられている。この硫酸水銀電極の内部液としては、濃度0.35mol/Lの硫酸カリウム(K2 SO4 )溶液を用いた。
この実験用装置(2)において、ガス透過性疎水隔膜102としては、空隙率が30%、厚みが0.2mm、外径が4mmであってガーレー数が300秒である、PTFEよりなる円形状の多孔質膜を用いた。ガス透過性疎水隔膜102に設けられた5個の作用極103は、互いに離間した状態とされており、各々、直径が4mmの円板状の電極触媒層よりなるものである。これらの5個の作用極103は、白金黒により形成された白金黒電極、酸化イリジウム(IrO2 )により形成された酸化イリジウム電極2個および酸化ルテニウム(RuO2 )により形成された酸化ルテニウム電極2個である。具体的に、白金黒電極は、白金黒がFEPよりなるバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなる、厚み0.3mmのものである。2個の酸化イリジウム電極は、各々、粒径75μm以下、比表面積15.0±5.0m2 /gの酸化イリジウム微粒子がFEPよりなるバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなる、厚み0.3mmのものである。また、2個の酸化ルテニウム電極は、各々、比表面積125±25m2 /gの酸化イリジウム微粒子がFEPよりなるバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなる、厚み0.3mmのものである。
また、実験用装置(2)において、5個の作用極103および対極104は、各々、タンタル製のリード部材108によって実験用制御手段109に接続されている。また、電解液Lとしては濃度9mol/Lの硫酸を用いた。
この図10においては、5個の作用極103のうちの1個の作用極103のみが示されている。
そして、5個の作用極103に対して一斉に流量0.5L/minの条件で押し込み方式によって30秒間にわたって空気を供給した後、60秒間にわたって試料ガスを供給し、その後、更に30秒間にわたって再び空気を供給し、このように空気、試料ガスおよび空気を供給する間の対極104に対する各作用極103の電位を測定した。試料ガスとしては、水素ガス(窒素ガスで希釈した濃度2.01%のもの)、エタノールガス(空気で希釈した濃度2%のもの)、一酸化炭素ガス(窒素ガスで希釈した濃度3060ppmのもの)、硫化水素ガス(窒素ガスで希釈した濃度28.8ppmのもの)を用いた。結果を図10~図12および表2に示す。
ここに、図10は、白金黒電極の電位の測定結果を示し、図11は、2つの酸化イリジウム電極のうちの一方の電位の測定結果を示し、また図12は、2つの酸化ルテニウム電極のうちの一方の電位の測定結果を示す。また、図10~図12において、(a)は、試料ガスとして水素ガスを用いた場合の測定結果を示し、(b)は、試料ガスとしてエタノールガスを用いた場合の測定結果を示し、(c)は、試料ガスとして一酸化炭素ガスを用いた場合の測定結果を示し、また(d)は、試料ガスとして硫化水素ガスを用いた場合の測定結果を示す。
実験例2に係る実験用装置(2)において、下記の4個の作用極が設けられていること以外は当該実験用装置(2)と同様の構成を有する実験用装置(以下、「実験用装置(3)」ともいう。)を作製した。
この実験用装置(3)を構成する4個の作用極は、各々、ガス透過性疎水隔膜に設けられた、直径が4mmの円板状の電極触媒層よりなるものであって、白金黒により形成された白金黒電極、酸化白金(II)(PtO)により形成された一酸化白金電極、ルテニウム(Ru)により形成されたルテニウム電極およびイリジウム(Ir)により形成されたイリジウム電極である。具体的に、白金黒電極は、実験例2と同様に白金黒がバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなるものである。一酸化白金電極は、酸化白金(II)がバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなるものである。ルテニウム電極は、ルテニウムがバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなるものである。イリジウム電極は、イリジウムがバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなるものである。
ここに、図13は、白金黒電極の電位の測定結果を示し、図14は、一酸化白金電極の電位の測定結果を示し、図15は、ルテニウム電極の電位の測定結果を示し、また図16は、イリジウム電極の電位の測定結果を示す。また、図13~図16において、(a)は、試料ガスとして水素ガスを用いた場合の測定結果を示し、(b)は、試料ガスとしてエタノールガスを用いた場合の測定結果を示し、(c)は、試料ガスとして一酸化炭素ガスを用いた場合の測定結果を示し、また(d)は、試料ガスとして硫化水素ガスを用いた場合の測定結果を示す。
白金黒電極は、水素ガス、エタノールガス、一酸化炭素ガスおよび硫化水素ガスのいずれが供給された場合においても、硫酸水銀電極に対する電位が大きく変化することが確認された。
(実験用ガスセンサの作製)
図1に係る第3の定電位電解式ガスセンサにおいて、制御手段30に代えてガルバニスタット装置を用いたこと、ガス供給制御手段を構成するガス導入用貫通孔12よりも大径の内径を有する孔を設けたこと、および作用極用リード部材として特定金属以外の金属よりなるものを用いたこと以外は当該第3の定電位電解式ガスセンサと同様の構成を有する実験用の酸素ガスセンサ(以下、「実験用酸素ガスセンサ(1)」ともいう。)を2つ作製した。
この実験用酸素ガスセンサ(1)において、参照極(23)は、ガス透過性多孔質膜(17)の一面上の全面に形成された電極触媒層よりなるものである。
ここに、実験用酸素ガスセンサ(1)においては、作用極(21)対して検査対象ガスを供給するための孔として、ガス供給制御手段を構成するガス導入用貫通孔(12)よりも大径の内径を有する孔(以下、「大径孔」ともいう。)を設けたことにより、作用極(21)と対極(22)との間に流す電流値が1mAであっても、作用極(21)で酸素還元反応を進行させることが可能な構成となった。なお、実験用酸素ガスセンサ(1)において、作用極(21)に対して検査対象ガスを供給するための孔の内径が小径である場合には、作用極(21)と対極(22)との間に流れる1mAの電流に対して作用極(21)に対する酸素ガスの供給が追い付かないために、作用極(21)においては水の電気分解による水素発生反応が生じてしまう。すなわち、作用極(21)において酸素還元反応を進行させることができなくなる。
また、電解液(L)としては、濃度50%の硫酸を用いた。
また、一端側ガス透過性疎水隔膜(15)および他端側ガス透過性疎水隔膜(16)としては、空隙率が30%、厚みが0.2mm、外径が6mmであってガーレー数が300秒である、PTFEよりなる円板状の多孔質膜を用いた。またガス透過性多孔質膜(17)としては、空隙率が30%、厚みが0.2mm、外径が6mmであってガーレー数が300秒である、PTFEよりなる円板状の多孔質膜を用いた。
そして、作用極(21)としては、白金黒がFEPよりなるバインダと共に、焼成温度320℃の条件で焼成されてなる、厚み0.2mm、外径6mmの円板状の電極触媒層を用いた。
また、対極(22)としては、粒径75μm以下、比表面積15.0±5.0m2 /gの酸化イリジウム微粒子100質量部がFEPよりなるバインダと共に焼成温度320℃の条件で焼成されてなる、厚み0.2mm、外径6mmの円板状の電極触媒層を用いた。
また、参照極(23)としては、白金黒がFEPよりなるバインダと共に、焼成温度2300℃の条件で焼成されてなる、厚み0.2mm、外径6mmの円板状の電極触媒層を用いた。
作用極(21)、対極(22)および参照極(23)を構成する電極触媒層は、一端側ガス透過性疎水隔膜(15)、他端側ガス透過性疎水隔膜(16)およびガス透過性多孔質膜(17)の一面の全面に形成されており、当該一面における電極触媒層の担持率は100%である。
また、作用極(21)、対極(22)および参照極(23)は、各々、白金製のリード部材(31a,31b,31c)によってガルバニスタット装置に電気的に接続されている。ここに、実験用酸素ガスセンサ(1)においては、作用極(21)にガルバニスタット装置の対極用のリード線を接続し、対極(22)にガルバニスタット装置の作用極用のリード線を接続し、また参照極(23)にガルバニスタット装置の参照極用のリード線を接続した。このようにして、実験用酸素ガスセンサ(1)を、参照極用のリード線に接続された参照極(23)を基準とし、作用極用のリード線に接続された対極(22)の電圧を測定することができるような構成とした。
実験用酸素ガスセンサ(1)において、対極(22)として、白金黒がFEPよりなるバインダと共に、焼成温度320℃の条件で焼成されてなる、厚み0.2mm、外径6mmの円板状の電極触媒層を用いたこと以外は当該実験用酸素ガスセンサ(1)と同様の構成を有する比較実験用の酸素ガスセンサ(以下、「比較用酸素ガスセンサ(1)」ともいう。)を2つ作製した。
これらの実験用酸素ガスセンサ(1)および比較用酸素ガスセンサ(1)においては、45日間にわたる測定中、作用極(21)には大径孔および一端側ガス透過性疎水隔膜(15)を介して空気が供給されており、供給された空気中の酸素ガスが反応式(1)で示される還元反応によって還元された。また、対極(22)においては、反応式(2)で示される酸化反応によって酸素ガスが発生し、その酸素ガスは他端側ガス透過性疎水隔膜(16)およびガス排出用貫通孔(13)を介して外部に排出された。
反応式(2)2H2 O→O2 +4H+ +4e-
また、実験用酸素ガスセンサ(1)においては、図17の白三角プロットに係る曲線(a)および黒三角プロットに係る曲線(b)で示されているように、過電圧が長期間にわたってほぼ一定となり、よって酸化イリジウム対極の導電性が長期間にわたって一定に維持される結果、ガス検知を長期間にわたって略同一の電圧で安定的に行えることが確認された。
一方、比較用酸素ガスセンサ(1)においては、図17の白丸プロットに係る曲線(c)および黒丸プロットに係る曲線(d)で示されているように、過電圧が、初期期間(具体的には、測定開始から10日の間)において経時的に大きくなり、ガス検知を行うために大きな電圧の印加が必要とされることが確認された。
12 ガス導入用貫通孔
13 ガス排出用貫通孔
15 一端側ガス透過性疎水隔膜
16 他端側ガス透過性疎水隔膜
17 ガス透過性多孔質膜
21 作用極
22 対極
23 参照極
30 制御手段
31a 作用極用リード部材
31b 対極用リード部材
31c 参照極用リード部材
40 定電位電解式ガスセンサ
41 ケーシング
42 ガス透過性疎水圧力調製膜
43 連通孔
45 感応部形成用空間
50 上面側保護板
50A 通孔
55 作用極
56 対極
57 参照極
60 板状蓋部材
61 ピンホール
65 下面側保護板
65A 通孔
70 キャップ部材
70A ガス排出用通孔
81 容器
82 側面部
84 多孔質PTFE膜
85 濾紙
87 硫酸水銀電極
88 ガス流路
89 ポンプ
91a,91b,91c,91d,91e 金属線材
93 ガス供給源
100 ケーシング
101 ガス導入用貫通孔
102 ガス透過性疎水隔膜
103 作用極
104 対極
108 リード部材
109 実験用制御手段
L 電解液
S 電解液室
Claims (9)
- ケーシング内において、作用極と対極とが電解液を介して設けられ、当該作用極には、一端部が当該ケーシングの外部に導出された作用極用リード部材の他端部が電気的に接続され、当該対極には、一端部が当該ケーシングの外部に導出された対極用リード部材の他端部が電気的に接続されてなる定電位電解式ガスセンサにおいて、
前記作用極用リード部材および前記対極用リード部材の少なくとも一方が、金、タングステン、ニオブおよびタンタルから選ばれる金属よりなることを特徴とする定電位電解式ガスセンサ。 - 前記作用極用リード部材が、金、タングステン、ニオブおよびタンタルから選ばれる金属よりなることを特徴とする請求項1に記載の定電位電解式ガスセンサ。
- ケーシング内において、作用極と対極と参照極とがそれぞれの電極間に電解液を介在した状態で設けられており、当該参照極には、一端部が当該ケーシングの外部に導出された参照極用リード部材の他端部が電気的に接続されており、
前記参照極用リード部材が、金、タングステン、ニオブおよびタンタルから選ばれる金属よりなることを特徴とする定電位電解式ガスセンサ。 - 検知対象ガスが酸素ガスであり、
前記作用極が、白金黒および金黒から選ばれる金属黒により形成されたものであることを特徴とする請求項2に記載の定電位電解式ガスセンサ。 - 前記ケーシング内においては、前記作用極との間および前記対極との間に電解液を介在した状態で参照極が設けられており、当該参照極には、一端部が当該ケーシングの外部に導出された参照極用リード部材の他端部が電気的に接続されており、
前記参照極が、イリジウム、酸化イリジウム、ルテニウム、酸化ルテニウムおよび酸化白金から選ばれる物質により形成されたものであることを特徴とする請求項4に記載の定電位電解式ガスセンサ。 - 前記参照極用リード部材が、タンタル、金、タングステンおよびニオブから選ばれる金属よりなることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の定電位電解式ガスセンサ。
- 前記対極が酸化イリジウムにより形成されたものであることを特徴とする請求項4~請求項6のいずれかに記載の定電位電解式ガスセンサ。
- ケーシング内において、作用極と対極と参照極とがそれぞれの電極間に電解液が介在した状態で設けられてなる定電位電解式ガスセンサにおいて、
前記参照極が、イリジウム、酸化イリジウム、ルテニウム、酸化ルテニウムおよび酸化白金から選ばれる物質により形成されたものであることを特徴とする定電位電解式ガスセンサ。 - 前記参照極には、一端部が前記ケーシングの外部に導出された参照極用リード部材の他端部が電気的に接続されており、当該参照極用リードが、タンタル、金、タングステンおよびニオブから選ばれる金属よりなることを特徴とする請求項8に記載の定電位電解式ガスセンサ。
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