WO2015012053A1

WO2015012053A1 - 一方向クラッチ内蔵型プーリ装置

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Publication number: WO2015012053A1
Application number: PCT/JP2014/066794
Authority: WO
Inventors: 博史森
Original assignee: 日本精工株式会社
Priority date: 2013-07-25
Filing date: 2014-06-25
Publication date: 2015-01-29
Also published as: EP3026298A1; JP2015025483A; EP3026298A4; CN105074282A; US20160169302A1

Abstract

　エンジンの回転変動に基づく、自動車用補機の回転軸への影響を十分に小さくできる、一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の構造を実現する。スリーブ１ｂは、内径側スリーブ２４と、外径側スリーブ２５とにより構成され、一方向クラッチ３は、外径側スリーブ２５とプーリ２との間に設けられ、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２との間には、これらの間でトルクの伝達を可能とする捩じりコイルばね１８ａが設けられる。プーリ２の回転速度が外径側スリーブ２５の回転速度に対して遅くなる状態となった場合に、捩じりコイルばね１８ａの弾性力が解放し切るまで、捩じりコイルばね１８ａの弾性力に基づいて、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５とが相対回転し、その後、一方向クラッチ３が、プーリ２と外径側スリーブ２５との間で、トルクの伝達を不能な状態となる。

Description

一方向クラッチ内蔵型プーリ装置

　本発明は、オルタネータなどの自動車用補機の駆動装置として使用される、一方向クラッチ内蔵型プーリ装置に関する。

　自動車のオルタネータなどの自動車用補機を駆動するためのプーリ装置として、一方向クラッチ内蔵型プーリ装置が使用されている。図４および図５は、従来の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の第１例を示している。この従来構造は、スリーブ1と、スリーブ1と同心に配置されたプーリ２と、スリーブ１の外周面とプーリ２の内周面との間に配置された、一方向クラッチ３と、１対のサポート軸受４とを備える。

　スリーブ１は、鋼材製で、鍛造加工などにより略円筒状に形成されており、オルタネータなどの自動車用補機の回転軸の端部に外嵌固定され、この回転軸と共に回転可能である。プーリ２は、鋼材製で、鍛造加工などにより略円筒状に形成されており、その外周面の一部は、幅方向に関して波形の断面形状を有し、ポリＶベルトと呼ばれる無端ベルトの一部を掛け渡し可能となっている。スリーブ１の外周面とプーリ２の内周面との間に存在する円筒状空間の軸方向中間部に、一方向クラッチ３が配置され、その軸方向両端部で一方向クラッチ３を軸方向両側から挟む位置に１対のサポート軸受４が配置されている。

　一方向クラッチ３は、クラッチ用内輪５と、クラッチ用外輪６と、複数のローラ７と、クラッチ用保持器８と、ローラ７と同数のばね９とを備え、プーリ２がスリーブ１に対して所定方向に回転する場合にのみ、プーリ２とスリーブ１との間での回転力の伝達を自在とする。

　クラッチ用内輪５は、軸受鋼などの硬質金属製またはＳＣＭ４１５などの浸炭鋼製の板材から略円筒状に形成されており、スリーブ１の外周面の軸方向中間部に締り嵌めで外嵌固定されている。クラッチ用外輪６は、軸受鋼などの硬質金属製またはＳＣＭ４１５などの浸炭鋼製の板材から略円筒状に形成され、軸方向両端部に内向鍔部を有しており、プーリ２の軸方向中間部に締り嵌めで内嵌固定されている。

　クラッチ用外輪６の軸方向中間部内周面は、外径側係合面である円筒面１０となっており、クラッチ用内輪５の外周面は、内径側係合面であるカム面１１となっている。すなわち、クラッチ用内輪５の外周面には、ランプ部と呼ばれる複数の凹部１２が、円周方向に関して等間隔に形成されている。この構成により、高速回転時にローラ７が遠心力によりクラッチ用内輪５から浮き上がってしまうことが防止される。

　カム面１１と円筒面１０との間に、複数のローラ７と、ローラ７を転動並びに円周方向に関する若干の変位自在に支持する、クラッチ用保持器８が配置されている。ローラ７は、軸受鋼などの硬質金属製である。クラッチ用保持器８は、合成樹脂製で、略円環状に形成されており、その内周縁部に設けた複数の凸部１３をカム面１１の凹部１２に係合させることにより、クラッチ用内輪５に対するその回転が阻止されている。クラッチ用保持器８とローラ７との間には、ローラ７を円周方向に関して同じ方向（凹部１２が浅くなる方向）に押圧する、複数のばね９が配置されている。

　１対のサポート軸受４は、プーリ２に加わるラジアル荷重を支承しつつ、プーリ２とスリーブ１との相対回転を自在とする。図示の例では、サポート軸受４として、深溝型の玉軸受が使用されている。すなわち、それぞれのサポート軸受４は、内周面に深溝型の外輪軌道を有し、プーリ２の軸方向両端部に内嵌固定された外輪１４と、外周面に深溝型の内輪軌道を有し、スリーブ１の軸方向両端部に外嵌固定された内輪１５と、外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に配置された複数の玉１６とを備える。

　使用時には、スリーブ１が、オルタネータなどの回転軸の端部に外嵌固定され、プーリ２の外周面に無端ベルトが掛け渡される。無端ベルトは、エンジンのクランクシャフトの端部に固定された駆動側プーリに掛け渡され、この駆動側プーリの回転により駆動される。この状態で、無端ベルトの走行速度（エンジンの回転数）が一定あるいは増速状態にある場合には、一方向クラッチ３はロック状態となる。すなわち、ローラ７が、円筒面１０とカム面１１との間の径方向の幅の狭い部分に食い込んで、円筒面１０とカム面１１とに強く摩擦係合した状態（一方向クラッチが係合した状態）となる。この結果、プーリ２からスリーブ１への回転力の伝達が可能となる。

　一方、無端ベルトの走行速度が減速状態にある場合、一方向クラッチ３は、クラッチ用内輪５の回転速度がクラッチ用外輪６の回転速度よりも速くなる、いわゆるオーバーラン状態となる。すなわち、ローラ７が円筒面１０とカム面１１との間の径方向の幅の広い部分に退避した状態（一方向クラッチの係合が解除された状態）となる。この結果、プーリ２とスリーブ１との相対回転が可能となる。このような一方向クラッチ内蔵型プーリ装置によれば、クランクシャフトの回転数（回転角速度）が一定あるいは増速状態から減速状態に変動した場合でも、無端ベルトとプーリ２とが擦れ合うことが抑制され、鳴きと呼ばれる異音の発生や摩耗による無端ベルトの寿命低下や、オルタネータの発電効率の低下を抑制することができる。

　一方、無端ベルトの走行速度が減速状態から増速状態に変動すると、一方向クラッチ３がオーバーラン状態からロック状態に切り換わる。この切り換わりの瞬間に、一方向クラッチ３を構成する回転力伝達部材（クラッチ用内輪５、クラッチ用外輪６、ローラ７）およびプーリ２の外周面に掛け渡された無端ベルトに強い衝撃荷重が加わる。これは、一方向クラッチ３および無端ベルトの耐久性を低下させる原因となる。

　図６は、特開２００９－０６３０４０号公報に記載され、上述のような不都合の発生を抑制できる機能を備えた、従来の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の第２例を示している。この従来構造では、スリーブ１ａの外周面と、一方向クラッチ３ａを構成するクラッチ用内輪５ａの内周面との間に形成される環状の弾性体配置空間１７に、緩衝体である捩りコイルばね１８が設置され、捩りコイルばね１８を介して、スリーブ１ａとクラッチ用内輪５ａとの間でトルクの伝達が可能となるように構成されている。

　この従来構造では、一方向クラッチ３ａがオーバーラン状態からロック状態に切り換わる瞬間に、一方向クラッチ３ａを構成する回転力伝達部材（クラッチ用内輪５ａ、クラッチ用外輪６ａ、ローラ７）および無端ベルトに加わる衝撃荷重を、捩りコイルばね１８が弾性変形（捩り変形）することにより吸収（緩和）することができる。このため、一方向クラッチ３ａおよび無端ベルトの耐久性の低下を抑制することができる。

　また、この従来構造では、無端ベルトの走行速度が一定あるいは増速状態から減速状態に変動した際に、捩りコイルばね１８の弾性力の解放に基づいて、スリーブ１ａとクラッチ用内輪５ａとが相対回転を始めるよりも先に、一方向クラッチ３ａの係合状態を解除するようにしている。具体的には、スリーブ１ａの外周面のうちの軸方向他端（図６の右端）寄り部分であるスリーブ側受面１９と、クラッチ用内輪５ａの内周面のうちの軸方向他端寄り部分である内輪側受面２０とを摺接させ、かつ、内輪側受面２０の軸方向中間部に全周にわたって形成した凹溝２１に設けたＯリング２２の内周面を、スリーブ側受面１９に摺接させている。このような構成により、スリーブ１ａとクラッチ用内輪５ａとが相対回転を始めるために必要な回転トルク（スリーブ側受面１９と、Ｏリング２２との間の摩擦力）を、一方向クラッチ３ａの係合を解除するために必要な係合解除トルクよりも大きくしている。

　ところで、エンジンの燃焼サイクルに基づいて、エンジンのクランクシャフトの回転数（角速度）は細かく脈動（回転変動）している。このようなエンジンの回転変動が、オルタネータなどの回転軸にそのまま伝わると、この回転変動に基づいて、オルタネータの回転軸に組み付けたプーリ装置と無端ベルトとの間でスリップが生じたり、無端ベルトへの繰り返しの負荷を招いたりする。このため、異音の発生や無端ベルトの寿命低下が引き起こされ、また、オルタネータなどの回転軸を回転させるために必要な回転トルクが大きくなって、燃費性能を悪化させる可能性がある。

　このようなエンジンの回転変動に起因する問題に対して、図６に示した一方向クラッチ内蔵型プーリ装置では、捩りコイルばね１８の弾性変形に基づく緩衝作用により、オルタネータの回転軸に対するエンジンの回転変動の影響を、ある程度抑えることができている。しかしながら、この従来構造では、エンジンの回転変動により無端ベルトの走行速度が一定あるいは増速状態から減速状態に変わった際に、捩りコイルばね１８の弾性力の解放に基づいてスリーブ１ａとクラッチ用内輪５ａとが相対回転を始めるよりも先に、一方向クラッチ３ａが、プーリ２とスリーブ１ａとの間で、トルクの伝達を不能な状態（一方向クラッチ３ａの係合を解除した状態）となる。このため、エンジンの回転変動のように、減速状態と増速状態とが短い周期で切り換わる場合に、捩りコイルばね１８の弾性力が解放し切る以前に、無端ベルトの走行速度が減速状態から増速状態に切り換わってしまい、捩りコイルばね１８による緩衝作用を十分に得られない可能性がある。

特開２００９－６３０４０号公報

　本発明の目的は、上述のような事情に鑑みて、エンジンの回転変動のように、減速状態と増速状態とが短い周期で切り換わる変動が、自動車用補機の回転軸に及ぼす影響を十分に小さくすることができる、一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の構造を実現することにある。

　本発明の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、スリーブと、プーリと、一方向クラッチと、１対のサポート軸受とを備える。前記スリーブは、筒状で回転軸に固定可能である。前記プーリは、前記スリーブの周囲に該スリーブと同心に配置される。前記一方向クラッチは、前記スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間に設けられ、前記プーリが前記スリーブに対して所定方向に相対回転する場合にのみ、前記プーリと前記スリーブとの間でトルクの伝達を可能とする。前記１対のサポート軸受は、前記スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間に設けられ、前記スリーブと前記プーリとの相対回転を可能とする。

　特に、本発明の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、前記スリーブが、前記回転軸に固定される内径側スリーブと、該内径側スリーブの周囲に、該内径側スリーブと同心、かつ、相対回転可能に配置される外径側スリーブとによって構成されることにより、前記プーリが前記外径側スリーブに対して前記所定方向と反対方向に相対回転する状態となった場合に、前記内径側スリーブと前記外径側スリーブとが相対回転するために必要とされる回転トルクを、前記一方向クラッチの係合が解除されるために必要とされる係合解除トルクよりも小さくなるように構成されている点に特徴がある。

　具体的には、本発明の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置では、前記一方向クラッチは、前記外径側スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間に配置され、前記１対のサポート軸受は、前記内径側スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間、および、前記外径側スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間に、それぞれ配置される。

　本発明の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、前記内径側スリーブと前記外径側スリーブとの間に、これらの部材同士の相対回転に基づいて弾性変形した状態で、これらの部材同士の間でトルクの伝達を可能とする、弾性部材をさらに備える。そして、本発明の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、前記プーリが前記外径側スリーブに対して前記所定方向と反対方向に相対回転する状態となった場合に、前記弾性部材の弾性力に基づいて、前記内径側スリーブと前記外径側スリーブとが前記弾性部材の弾性力が解放されるまで相対回転し、その後、前記一方向クラッチの係合が解除されるように構成されている。

　より具体的には、前記外径側スリーブの内周面と、前記内径側スリーブの外周面との間に、軸受（転がり軸受または滑り軸受）が設けられる。

　前記弾性部材を、捩りコイルばねにより構成することができる。この場合、前記外径側スリーブに、該捩りコイルばねの一端と円周方向に関して相対変位不能に係合可能な外径側係合部が設けられ、かつ、前記内径側スリーブに、前記捩りコイルばねの他端と円周方向に関して相対変位不能に係合可能な内径側係合部が設けられる。

　なお、本発明は、前記一方向クラッチが、前記プーリの内周面に直接もしくは該プーリに締り嵌めにより内嵌されたクラッチ用外輪の内周面に設けられた円筒面と、前記外径側スリーブの外周面に直接もしくは該外径側スリーブの外周面に締り嵌めにより外嵌されたクラッチ用内輪の外周面に形成されたカム面と、該カム面と前記円筒面との間に設けられた複数のロック部材（ローラまたはスプラグ）とを備えた構成の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置に好適に適用される。

　本発明の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置によれば、エンジンの回転変動のように、減速状態と増速状態とが短い周期で切り換わる変動（脈動）が、自動車用補機の回転軸に及ぼす影響を十分に小さくすることができる。すなわち、内径側スリーブと外径側スリーブとの間に、これらの部材同士の相対回転に基づいて弾性変形した状態で、これらの部材同士の間でトルクの伝達を可能とする弾性部材が設けられている。このため、前記エンジンの回転変動に基づいて、プーリに掛け渡された無端ベルトの走行速度が減速状態から増速状態に変動した際に、前記弾性部材の緩衝作用により、エンジンの回転変動が、自動車用補機の回転軸に及ぼす影響を小さく抑えることができる。

　さらに、エンジンの回転変動に基づいて無端ベルトの走行速度が一定あるいは増速状態から減速状態に変動し、プーリが外径側スリーブに対して所定方向と反対方向に相対回転する状態に変わった際には、まず、前記弾性部材の弾性力が解放し切るまで、該弾性部材の弾性力に基づいて前記内径側スリーブと前記外径側スリーブとが相対回転する。その後、一方向クラッチが、前記プーリと前記外径側スリーブとの間で、トルクの伝達を不能な状態になる。このため、前記一方向クラッチがオーバーラン状態からロック状態に切り換わる際に、前記弾性部材が弾性力を保持した状態であることがない。したがって、弾性部材の緩衝作用を十分に得ることができ、エンジンの回転変動が、自動車用補機の回転軸に及ぼす影響を十分に小さく抑えることができる。この結果、自動車用補機の回転軸の回転数（角速度）の変動の変化率（角加速度）を小さく抑え、該角加速度と、前記自動車用補機が有するイナーシャとの積で表される回転トルクを小さく抑えることにより、自動車の燃費の向上を図ることが可能となる。

図１は、本発明の実施の形態の１例を示す、一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の半部断面図である。図２は、図１の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の分解斜視図である。図３（ａ）は、図１の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置から、内径側スリーブを取り出して軸方向一方から見た状態を示す斜視図であり、図３（ｂ）は、外径側スリーブを取り出して軸方向他方から見た状態を示す斜視図である。図４は、従来構造の第１例の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の半部断面図である。図５は、一方向クラッチのみを取り出して示す、図４の拡大Ａ－Ａ断面図である。図６は、従来構造の第２例の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の断面図である。

　［実施の形態の１例］
　図１～図３は、本発明の実施の形態の１例を示している。なお、本例の特徴は、一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を構成するスリーブ１ｂの構造、および、スリーブ１ｂの組み付け構造を工夫した点にある。この特徴部分以外の構造は、従来の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の構造とほぼ同様である。したがって、従来構造と同等部分には同一符号を付し、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。

　本例の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、スリーブ１ｂと、プーリ２と、一方向クラッチ３と、弾性部材に相当する捩りコイルばね１８ａと、１対のサポート軸受４と、玉軸受２３とを備える。スリーブ１ｂは、内径側スリーブ２４と、外径側スリーブ２５とにより構成される筒状の部材である。

　内径側スリーブ２４は、オルタネータなどの自動車用補機の回転軸に外嵌固定可能であり、軸方向一端側（図１および図２の左側、図３の表側）から順番に、小径円筒部２６と、中径円筒部２７と、大径円筒部２８とを備える段付円筒状部材である。中径円筒部２７の外周面と大径円筒部２８の外周面とは、内径側段部２９を介して連続しており、内径側段部２９の円周方向に関して約３／４の範囲には、図３の時計方向に進むほど、軸方向の深さ寸法が大きくなる、内径側らせん溝３０が形成されている。そして、内径側らせん溝３０のうち、軸方向の深さ寸法が最も大きくなった側の円周方向端面を、捩りコイルばね１８ａの他端面４３を当接させる内径側係合部３１としている。

　内径側スリーブ２４の内周面のうち、軸方向中間部には、自動車用補機の回転軸の先端部に設けた雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部３２が設けられている。また、内径側スリーブ２４の内周面のうち、軸方向一端寄り部分には、一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を自動車用補機の回転軸に取り付ける際に、工具を差し込むための六角孔などの、断面形状が非円形の凹孔３３が形成されている。

　外径側スリーブ２５は、内径側スリーブ２４の周囲に、内径側スリーブ２４に対して同心、かつ、相対回転を可能な状態で配置され、軸方向一端寄り部分にある第一円筒部３４と、軸方向中間部にある第二円筒部３５と、軸方向他端寄り部分にある第三円筒部３６とにより構成された円筒状の部材である。第二円筒部３５は、その内径寸法ｄ_３５が、第一円筒部３４および第三円筒部３６の内径寸法ｄ_３４、ｄ_３６よりも小さい（ｄ_３５＜ｄ_３４、ｄ_３５＜ｄ_３６）。

　第二円筒部３５の内周面と、第三円筒部３６の内周面とは、軸方向に関して内径側段部２９と対向する状態で設けられた、外径側段部３７を介して連続しており、外径側段部３７の円周方向に関して約３／４の範囲に、図３の時計方向に進むほど、軸方向の深さ寸法が大きくなる、外径側らせん溝３８が形成されている。そして、外径側らせん溝３８のうち、軸方向の深さ寸法が最も大きくなった側の円周方向端面を、捩りコイルばね１８ａの一端面４２を当接させる外径側係合部３９としている。

　一方向クラッチ３は、プーリ２の内周面の軸方向中間部に締り嵌めで内嵌固定されているクラッチ用外輪６ｂと、外径側スリーブ２５の第二円筒部３５の外周面から第三円筒部３６の外周面にかけての部分に締り嵌めで外嵌固定されているクラッチ用内輪５ｂと、複数のローラ７と、クラッチ用保持器８と、ローラ７と同数のばね９とを備える。クラッチ用外輪６の軸方向中間部内周面は、外径側係合面である円筒面１０となっており、クラッチ用内輪５の外周面は、内径側係合面であるカム面１１となっている（図５参照）。カム面１１と円筒面１０との間に、複数のローラ７と、ローラ７を転動並びに円周方向に関する若干の変位自在に支持する、クラッチ用保持器８が配置されている。このような構成により、一方向クラッチ３は、外径側スリーブ２４と内径側スリーブ２５と同心に配置され、プーリ２が外径側スリーブ２５に対し所定方向に相対回転する場合にのみ、プーリ２と外径側スリーブ２５との間でトルクの伝達を可能としている。

　弾性部材である捩りコイルばね１８ａは、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５との間に配置される。具体的には、捩りコイルばね１８ａは、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５とを組み付けた状態において、内径側スリーブ２４の中径円筒部２７の外周面および内径側段部２９と、外径側スリーブ２５の第三円筒部３６の内周面および外径側段部３７とにより形成される、環状の弾性部材配置空間１７ａに配置される。このような組み付け状態において、捩じりコイルばね１８ａは、その一端面４２を、外径側らせん溝３８の外径側係合部３９に当接させ、その他端面４３を、内径側らせん溝３０の内径側係合部３１に当接させている。すなわち、捩りコイルばね１８ａの一端と外径側係合部は円周方向に関して相対変位不能に係合し、かつ、捩りコイルばね１８ａの他端と内径側係合部は円周方向に関して相対変位不能に係合する。したがって、捩りコイルばね１８ａが捩れる方向に、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５とが所定方向に相対回転すると、捩りコイルばね１８ａがこれらの部材２４、２５同士の間でトルクを伝達することが可能となる。

　なお、内径側スリーブ２４および前記外径側スリーブ２５と、捩りコイルばね１８ａとの係合構造は、本例の構造に限定されるものではない。すなわち、内径側スリーブ２４あるいは外径側スリーブ２５から、捩りコイルばね１８ａに対して捩じり方向のトルクを伝達可能な各種係合構造を採用することもできる。

　１対のサポート軸受４のうち、一方のサポート軸受４は、外径側スリーブ２５の第一円筒部３４の外周面と、プーリ２の内周面の軸方向一端寄り部分との間に配置され、プーリ２と外径側スリーブ２５との相対回転を自在としている。他方のサポート軸受４は、内径側スリーブ２４の大径円筒部２８の外周面と、プーリ２の内周面の軸方向他端寄り部分との間に設けられ、プーリ２と内径側スリーブ２４との相対回転を自在としている。

　本例では、玉軸受２３が、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５との間に設けられている。図示の例では、玉軸受２３として、深溝型の玉軸受が使用されている。すなわち、玉軸受２３は、内周面に深溝型の外輪軌道を有し、外径側スリーブ２５の第一円筒部３４の内周面に内嵌固定された外輪４４と、外周面に深溝型の内輪軌道を有し、内径側スリーブ２４の小径円筒部２６の外周面の軸方向一端寄り部分に外嵌固定された内輪４５と、外輪４４の外輪軌道と内輪４５の内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の玉４６とにより構成される。このような玉軸受２３を、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５との間に設けることにより、これらの部材２４、２５同士の相対回転を可能としている。

　なお、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５との間に、玉軸受２３を組み付けた状態で、内径側スリーブ２４の小径円筒部２６の外周面の軸方向他半部と、外径側スリーブ２５の第二円筒部３５の内周面とは、全周にわたってわずかな隙間を介して対向している。

　内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５との間に玉軸受２３を設けることにより、これらの部材２４、２５同士が相対回転するために必要な回転トルクを、一方向クラッチ３の係合が解除されるために必要な回転トルク（係合解除トルク）よりも小さくしている。したがって、無端ベルトの走行速度が、一定あるいは増速状態から減速状態に変動する際に、プーリ２が外径側スリーブ２５に対して前記所定方向と反対方向に相対回転するようになった場合に、最初に、捩じりコイルばね１８ａの弾性力が解放し切るまで、捩じりコイルばね１８ａの弾性力に基づいて、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５とが相対回転する。その後、一方向クラッチ３が、プーリ２と外径側スリーブ２５との間で、トルクの伝達を不能な状態（一方向クラッチ３の係合が解除された状態）となる。なお、玉軸受２３に代替して、円筒ころ軸受などの各種転がり軸受、滑り軸受、その他の内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５との相対回転を許容する部材を使用することも可能である。

　本例の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置では、捩りコイルばね１８ａが設けられていることにより、減速状態と増速状態とが短い周期で切り替わるエンジンの回転変動に基づいて、無端ベルトの走行速度が減速状態から増速傾向に変動した際に、捩じりコイルばね１８ａの弾性変形に基づく緩衝作用により、エンジンの回転変動が、自動車用補機の回転軸に及ぼす影響を小さく抑えることができる。

　さらに、本例の場合、無端ベルトの走行速度が一定あるいは増速状態から減速状態に変動し、プーリ２が外径側スリーブ２５に対して前記所定方向と反対方向に相対回転するようになった場合には、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５とが、捩じりコイルばね１８ａの弾性力が解放されるまで相対回転した後に、一方向クラッチが、プーリ２と外径側スリーブ２５との間で、トルクの伝達を不能な状態（一方向クラッチ３の係合が解除された状態）となる。このため、さらに一方向クラッチ３がオーバーラン状態からロック状態に切り換わる際に、捩じりコイルばね１８ａが弾性力を保持した状態（弾性変形した状態）であることがない。したがって、本例では、捩りコイルばね１８ａの緩衝作用を十分に得ることができ、エンジンの回転変動が、自動車用補機の回転軸に及ぼす影響を十分に小さく抑えることができる。この結果、自動車用補機の回転軸の回転数（角速度）の変動の変化率（角加速度）を小さく抑え、この角加速度と、自動車用補機が有するイナーシャとの積で表される回転トルクを小さく抑えることができる。

　本例の場合、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５との間に、玉軸受２３が設けられている。これにより、内径側スリーブ２４と外径側スリーブ２５との同心性、および、内径側スリーブ２４とプーリ２との同心性を十分に確保することができる。この結果、運転時に、一方向クラッチ３のローラ７がスキューすることが防止され、一方向クラッチ３が係合する際、内径側スリーブ２４の外周面あるいはプーリ２の内周面と、ローラ７の転動面との当接部に、局部的な面圧上昇が発生することが防止される。

　エンジンのダウンサイジングの要求により、気筒数が少ないエンジン（４気筒以下のエンジンなど）が使用される傾向にある。エンジンの気筒数が少なくなるほど、エンジンの燃焼サイクルに基づく回転変動の幅（振幅）が大きくなる。本発明は、さまざまな気筒数のエンジンに適用することができるが、このように気筒数が少ないエンジンに適用すれば、本発明の作用効果が好適に発揮される。また、本発明は、圧縮比の高い、ディーゼルエンジンにも好ましく適用することが可能である。このように、本発明の一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、様々な種類の自動車用補機の駆動装置として広く適用可能である。

　１、１ａ、１ｂ　スリーブ
　２　プーリ
　３、３ａ　一方向クラッチ
　４　転がり軸受
　５、５ａ、５ｂ　クラッチ用内輪
　６、６ａ、６ｂ　クラッチ用外輪
　７　ローラ
　８　クラッチ用保持器
　９　ばね
　１０　円筒面
　１１　カム面
　１２　凹部
　１３　凸部
　１４　外輪
　１５　内輪
　１６　玉
　１７、１７ａ　弾性部材配置空間
　１８、１８ａ　捩りコイルばね
　１９　スリーブ側受面
　２０　内輪側受面
　２１　凹溝
　２２　Ｏリング
　２３　玉軸受
　２４　内径側スリーブ
　２５　外径側スリーブ
　２６　小径円筒部
　２７　中径円筒部
　２８　大径円筒部
　２９　内径側段部
　３０　内径側らせん溝
　３１　内径側係合部
　３２　雌ねじ部
　３３　凹孔
　３４　第一円筒部
　３５　第二円筒部
　３６　第三円筒部
　３７　外径側段部
　３８　外径側らせん溝
　３９　外径側係合部
　４０　円筒面
　４１　カム面
　４２　円周方向一端面
　４３　円周方向他端面
　４４　外輪
　４５　内輪
　４６　玉

Claims

　回転軸に固定可能なスリーブと、
　前記スリーブの周囲に該スリーブと同心に配置されたプーリと、
　前記スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間に設けられ、前記プーリが前記スリーブに対して所定方向に相対回転する場合にのみ、前記プーリと前記スリーブとの間でトルクの伝達を可能とする、一方向クラッチと、
　前記スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間に設けられ、前記スリーブと前記プーリとの相対回転を可能とする、１対のサポート軸受とを備え、
　前記スリーブが、前記回転軸に固定される内径側スリーブと、該内径側スリーブの周囲に、該内径側スリーブに対して同心、かつ、相対回転可能に配置される外径側スリーブとにより構成されており、
　前記プーリが前記外径側スリーブに対して前記所定方向と反対方向に相対回転する状態となった場合に、前記内径側スリーブと前記外径側スリーブとが相対回転するために必要とされる回転トルクを、前記一方向クラッチの係合が解除されるために必要とされる係合解除トルクよりも小さくなるように構成されている、
一方向クラッチ内蔵型プーリ装置。
　回転軸に固定可能なスリーブと、
　前記スリーブの周囲に該スリーブと同心に配置されたプーリと、
　前記スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間に設けられ、前記プーリが前記スリーブに対して所定方向に相対回転する場合にのみ、前記プーリと前記スリーブとの間でトルクの伝達を可能とする、一方向クラッチと、
　前記スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間に設けられ、前記スリーブと前記プーリとの相対回転を可能とする、１対のサポート軸受とを備え、
　前記スリーブが、前記回転軸に固定される内径側スリーブと、該内径側スリーブの周囲に、該内径側スリーブに対して同心、かつ、相対回転可能に配置される外径側スリーブとにより構成されており、
　前記一方向クラッチは、前記外径側スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間に配置されており、
　前記１対のサポート軸受は、前記内径側スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間、および、前記外径側スリーブの外周面と前記プーリの内周面との間に、それぞれ配置されており、
　前記内径側スリーブと前記外径側スリーブとの間に、これらの部材同士の相対回転に基づいて弾性変形した状態で、これらの部材同士の間でトルクの伝達を可能とする、弾性部材がさらに設けられており、
　前記プーリが前記外径側スリーブに対して前記所定方向と反対方向に相対回転する状態となった場合に、該弾性部材の弾性力に基づいて前記内径側スリーブと前記外径側スリーブとが前記弾性部材の弾性力が解放されるまで相対回転し、その後、前記一方向クラッチの係合が解除されるように構成されている、
一方向クラッチ内蔵型プーリ装置。
　前記外径側スリーブの内周面と、前記内径側スリーブの外周面との間に、軸受が設けられている、請求項２に記載した一方向クラッチ内蔵型プーリ装置。
　前記弾性部材は、捩りコイルばねにより構成され、
　前記外径側スリーブに、該捩りコイルばねの一端と係合可能な外径側係合部が設けられ、かつ、前記内径側スリーブに、前記捩りコイルばねの他端と係合可能な内径側係合部が設けられている、請求項２または３に記載した一方向クラッチ内蔵型プーリ装置。
　前記一方向クラッチは、前記プーリの内周面もしくは該プーリに締り嵌めにより内嵌されたクラッチ用外輪の内周面に設けられた円筒面と、前記外径側スリーブの外周面もしくは該外径側スリーブの外周面に締り嵌めにより外嵌されたクラッチ用内輪の外周面に形成されたカム面と、該カム面と前記円筒面との間に設けた複数のロック部材とを備える、請求項１～４のうちの何れか１項に記載した一方向クラッチ内蔵型プーリ装置。