WO2015005399A1 - 光学フィルム、それを用いた偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

光学フィルム、それを用いた偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

 セルロースアシレートおよび下記一般式(A)で表される構造を有する化合物を含有する光学フィルム、ならびにこの光学フィルムを用いた偏光板および液晶表示装置。 Lはn価の連結基、nは2以上の整数、Aは一般式(I)で表されるヘテロ環基を表す。R、RおよびRは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。ただし、R、RおよびRのいずれかで、Lと結合する。

Description

光学フィルム、それを用いた偏光板および液晶表示装置
 本発明は、光学フィルム、それを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
 セルロースアシレートフィルム等の光学フィルムは、液晶表示装置の光学部材、例えば、光学補償フィルムの支持体、偏光板の保護フィルム等として、種々の液晶表示装置に利用されている。
 液晶表示装置は、TV用途等のように室内で使用する以外に、例えば、携帯デバイス等を中心に室外で使用される機会が増加している。このため、従来よりも高温高湿下での使用に耐えうる液晶表示装置の開発が求められている。
 しかも、液晶表示装置は益々多様な用途で過酷な使用条件でも耐えることに対する要求が高まり、年々、従来よりも高いレベルの耐久性が求められるようになってきている。
 また、近年、TV用途を中心に液晶表示装置の大型化・薄型化が進んでおり、これに伴って構成部材である光学フィルムも薄型化が必要とされている。従来より、光学フィルムは加工性の観点からも適切な硬度、良好な裁断性が重要視されており、薄型化した光学フィルムにはさらにその向上が求められるようになった。
 セルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルムでは、更なる性能の向上や光学フィルムとしての特性や製造における様々な問題点の解決のために、特定の化合物を光学フィルム中に含有させることが知られている。
 例えば、光学フィルムにおけるレターデーションの環境湿度による変動を抑制するために、5位の一方が水素原子で、他方が特定のハメットのσmもしくはσp値を有する基のバルビツール酸化合物(特許文献1参照)が提案されている。また、偏光子の耐久性の改善のために、5位の一方が水素原子で他方がアリール基のバルビツール酸化合物(特許文献2参照)が提案されている。これらは、いずれも5位に水素原子を有することから、物理化学的には酸として機能する化合物である。これをさらに発展させ、溶液製膜における支持体からの剥離性の改良と偏光子の耐久性改良のために、特定の有機酸を光学フィルムに含有させることも提案(特許文献3参照)されている。
特開2011-118135号公報 特開2011-126968号公報 特開2012-72348号公報
 本発明者らの検討により、偏光子の高温高湿下での耐久性をさらに改善するに当たり、各種添加剤を加えることにより生ずる新たな課題の解決も、必要であることがわかった。新たな課題とは、例えば、光によるフィルムの着色の改善である。しかも、光学フィルムの硬度のさらなる向上と耐久性の両立が必要であることがわかった。
 本発明は、光学特性や耐久性、特に光によるフィルムの着色抑制、偏光板に貼り合わせて高温高湿下で経時させた場合の偏光子の劣化抑制を改善し、低ヘイズであって、かつ高硬度な光学フィルムを提供することを課題とする。さらには、液晶表示装置の性能をより高めることができる光学フィルム、それを使用した偏光板および液晶表示装置を提供することを課題とする。
 本発明者等は、上記課題を解決するために種々の添加剤と諸性能の関係を検討した。その結果、セルロースアシレートフィルムに特定の構造を有するバルビツール酸誘導体を添加すると、フィルムの硬度が向上することがわかり、バルビツール酸誘導体の構造によっては、光照射による着色が抑えられることを見出した。このため、さらに検討を行った結果、バルビツール酸骨格が密に配置される分子構造の化合物は、バルビツール酸骨格がセルロースアシレート分子と相互作用することにより、フィルム中の自由体積を効果的に減少させることが可能となり、フィルム硬度が向上しているものと考えられた。この考察に従って、さらなる分子設計を行い、光照射によるフィルム着色の抑制作用との関係を検討することで本発明に至った。
 すなわち、上記課題は、以下の手段により達成された。
<1>セルロースアシレートおよび少なくとも1種の下記一般式(A)で表される化合物を含有する光学フィルム。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
 一般式(A)中、Lはn価の連結基を表し、nは2以上の整数を表し、Aは上記一般式(I)で表されるヘテロ環基を表す。
 一般式(I)中、R、RおよびRは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。ただし、R、RおよびRのいずれかで、Lと結合する。
<2>Lが、単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-S-、-NR-(Rは単結合、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアシル基を表す)、-C(=O)-、-SO-、-SO-、アレーントリイル基、ヘテロアレーントリイル基またはこれらの基を組み合わせてなる連結基である<1>に記載の光学フィルム。
<3>L、R、RおよびRにおける環構造数の総和が1~6である<1>または<2>に記載の光学フィルム。
<4>nが2である<1>~<3>のいずれかに記載の光学フィルム。
<5>一般式(A)で表される化合物が、下記一般式(A-1)または(A-2)で表される<1>~<4>のいずれかに記載の光学フィルム。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
 一般式(A-1)、(A-2)中、R11、R12、R31、R32、R51およびR52は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。Xは、単結合または2価の連結基を表す。
<6>Xがメチレン基を有し、このメチレン基中の炭素原子が、バルビツール酸骨格と結合している<5>に記載の光学フィルム。
<7>一般式(A)で表される化合物が、分子内中に有する>NH部分構造が3個以内である<1>~<6>のいずれかに記載の光学フィルム。
<8>セルロースアシレートの総アシル置換度Aが下記式を満足する<1>~<7>のいずれかに記載の光学フィルム。
     1.5≦A≦3.0
<9>セルロースアシレートのアシル基がアセチル基であり、総アセチル置換度Bが下記式を満足する<1>~<8>のいずれかに記載の光学フィルム。
     2.0≦B≦3.0
<10>総アセチル置換度Bが、2.5以上2.97未満である<9>に記載の光学フィルム。
<11>少なくとも1種の可塑剤を含有する<1>~<10>のいずれかに記載の光学フィルム。
<12>光学フィルムが、少なくとも2層からなり、セルロースアシレートおよび少なくとも1種の一般式(A)で表される化合物を含む層に、さらにハードコート層を有する<1>~<11>のいずれかに記載の光学フィルム。
<13>偏光子と、この偏光子の少なくとも一方の面に<1>~<12>のいずれかに記載の光学フィルムを有する偏光板。
<14> <13>に記載の偏光板と液晶セルを少なくとも有する液晶表示装置。
 本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
 また、本明細書において、各基として説明する「基」は、特段の断りがない限り、無置換の形態および置換基を有する形態のいずれも包含する意味に用いる。例えば、「アルキル基」は置換基を有してもよいアルキル基を意味する。また、本明細書において「脂肪族基」は、直鎖、分岐もしくは環状のいずれの脂肪族基でもよく、飽和であっても不飽和(芳香環となることはない)であってもよい。
 本明細書において、複数の置換基や連結基(以下、置換基等という。)を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。
 本発明により、光学特性や耐久性、特に光によるフィルムの着色抑制、偏光板に貼り合わせて高温高湿下で経時させた場合の偏光子の劣化抑制を改善し、低ヘイズであって、かつ高硬度な光学フィルムを提供することができる。さらには、液晶表示装置の性能をより高めることができる光学フィルム、それを使用した偏光板および液晶表示装置の提供が可能となった。
 本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
図1は、本発明の液晶表示装置の内部構造を模式的に示した一例である。 図2は、本発明の別の液晶表示装置の内部構造を模式的に示した一例である。
 以下、本発明について、実施の形態を挙げて詳細に説明する。
[光学フィルム]
 本発明の光学フィルムは、セルロースアシレートおよび少なくとも1種の一般式(A)で表される化合物を含有する少なくとも1層のセルロースアシレートフィルムからなる。また、光学フィルムは、複数の層で構成されていてもよいが、一般式(A)で表される化合物はいずれの層に含まれていてもよく、全ての層に含まれていてもよい。
 ここで、セルロースアシレートフィルムもしくは層とは、フィルムもしくは層を構成する樹脂成分において、セルロースアシレートが50質量%以上含有されているものを意味する。ここで、樹脂成分中のセルロースアシレートの含有量は60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、85質量%以上が特に好ましい。なお、セルロースアシレートの含有量の上限は特に制限されない。
 一方、本発明の光学フィルムは、上記のようなセルロースアシレートフィルム以外に、樹脂成分としてセルロースアシレートを含まないか、セルロースアシレート以外の樹脂を含んだとしても樹脂成分全体の50質量%未満である別の層とともに複層構成を形成していてもよい。このような層としては、特定の機能に特化した層が挙げられ、例えばハードコート層などが挙げられる。
 ハードコート層以外には、例えば、防眩層、クリアハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防汚層等が挙げられる。これらの層は、ハードコート層上に設けるのが本発明においては好ましい態様である。
 本発明の光学フィルムは、偏光板保護フィルム、画像表示面に配置される表面保護フィルム等種々の用途に有用である。
<<セルロースアシレートフィルム>>
 本発明において、セルロースアシレートフィルムは上記のように、樹脂構成成分に占めるセルロースアシレートの割合が50質量%以上のフィルムからなるもので、本発明における狭義の光学フィルムである。
 セルロースアシレートフィルムは、前述のように、単層であっても、2層以上の積層体であってもよい。セルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体である場合は、2層構造または3層構造であることがより好ましく、3層構造であることが好ましい。3層構造の場合は、1層のコア層(すなわち、最も厚い層であり、以下、基層とも言う)と、コア層を挟むスキン層Aおよびスキン層Bとを有することが好ましい。すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムはスキン層B/コア層/スキン層Aの3層構造であることが好ましい。スキン層Bは、セルロースアシレートフィルムが溶液製膜で製造される際に、後述する金属支持体と接する層であり、スキン層Aは金属支持体とは逆側の空気界面の層である。なお、スキン層Aとスキン層Bを総称してスキン層(または表層)とも言う。
 本発明において、セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートと少なくとの1種の下記一般式(A)で表される化合物を含有する。
<一般式(A)で表される化合物>
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 一般式(A)において、Lはn価の連結基を表し、nは2以上の整数を表し、Aは上記一般式(I)で表されるヘテロ環基を表す。
 一般式(I)において、R、RおよびRは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。ただし、R、RおよびRのいずれかで、Lと結合する。
 ここで、R、RおよびRのいずれかで、Lと結合するとは、R、RおよびRにおける水素原子や規定されている置換基は、水素原子やこの置換基中の1つの水素原子との結合を結合手に置き換えたものを意味する。例えば、R、RおよびRが水素原子である場合、単結合となり、Lと直接結合するものであり、R、RおよびRがアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基である場合は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基となって、Lと結合するものである。
 Lと結合する基はR、RおよびRのうち、いずれも好ましく用いられる。
 R、RおよびRの各基は、各々置換基を有してもよい。
 置換基としては、特に制限はなく、アルキル基(好ましくは炭素数1~10で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ペンチル、ヘプチル、1-エチルペンチル、ベンジル、2-エトキシエチル、1-カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~20で、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~20で、例えば、エチニル、2-ブチニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6~26で、例えば、フェニル、1-ナフチル、4-メトキシフェニル、2-クロロフェニル、3-メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数0~20のヘテロ環基で、環構成ヘテロ原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、5または6員環でベンゼン環やヘテロ環で縮環していてもよく、環が飽和環、不飽和環、芳香環であってもよく、例えば、2-ピリジル、4-ピリジル、2-イミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、2-チアゾリル、2-オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~26で、例えば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、3-メチルフェノキシ、4-メトキシフェノキシ等)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~26で、例えば、フェニルチオ、1-ナフチルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ等)、スルホニル基(好ましくはアルキルもしくはアリールのスルホニル基で、炭素数は1~20が好ましく、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、炭素数は20以下が好ましく、例えば、アセチル、ピバロイル、アクリロイル、メタクロロイル、ベンゾイル、ニコチノイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20で、例えば、エトキシカルボニル、2-エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7~20で、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0~20で、例えば、アミノ、N,N-ジメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、N-エチルアミノ、アニリノ、1-ピロリジニル、ピペリジノ、モルホニル等)、スルホンアミド基(好ましくはアルキルもしくはアリールのスルホンアミド基で、炭素数は0~20が好ましく、例えば、N,N-ジメチルスルホンアミド、N-フェニルスルホンアミド等)、スルファモイル基(好ましくはアルキルもしくはアリールのスルファモイル基で、炭素数は0~20が好ましく、例えば、N,N-ジメチルスルファモイル、N-フェニルスルファモイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1~20で、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくはアルキルもしくはアリールのカルバモイル基で、炭素数は1~20が好ましく、例えば、N,N-ジメチルカルバモイル、N-フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1~20で、例えば、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチンアミド等)、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基またはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
 上記の置換基は、さらに上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、トリフルオロメチルのようなパーフルオロアルキル基、アラルキル基、アシル基が置換したアルキル基などが挙げられる。
 なお、これらの置換基は、R、RおよびRの各基が有してもよい置換基のみでなく、Lを含め、本明細書に記載の他の化合物における置換基にも適用される。
 ここで、R、RおよびRの各基が置換基を有する場合、置換基中の1つの水素原子との結合を結合手に置き換えて、Lと結合してもよい。
 R、RおよびRにおけるアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましく、特に好ましくはメチルまたはエチルである。ただし、アリール基が置換したアルキル基、すなわちアラルキル基の場合、アラルキル基の炭素数は、7~20が好ましく、7~12がより好ましく、7~10がさらに好ましく、なかでもベンジル、フェネチルが好ましく、ベンジルが特に好ましい。
 R、RおよびRにおけるシクロアルキル基の炭素数は、3~10が好ましく、4~8がより好ましく、5または6がさらに好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシルが挙げられ、シクロヘキシルが特に好ましい。
 R、RおよびRにおけるアルケニル基の炭素数は、2~10が好ましく、2~5がより好ましい。例えば、ビニル、アリルが挙げられる。
 R、RおよびRにおけるアリール基の炭素数は、6~16が好ましく、6~12がさらに好ましく、なかでもフェニル、ナフチルが好ましく、フェニルが特に好ましい。
 R、RおよびRにおけるヘテロアリール基の炭素数は、0~16が好ましく、2~12がより好ましく、3~12がさらに好ましい。また、ヘテロアリール基におけるヘテロ環は5または6員環が好ましく、ベンゼン環やヘテロ環等の環で縮環していてもよい。ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。
 ヘテロアリール基のヘテロ環としては、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアジン環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環が挙げられ、なかでもピリジン環が好ましい。
 R、RおよびRの各基が有してもよい上記の置換基のうち、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子が好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基がより好ましく、アルキル基、アリール基がさらに好ましい。
 R、RおよびRは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール環が好ましく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基がより好ましい。
 このうち、RおよびRは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基が好ましい。一方、Rは、アルキル基、シクロアルキル基が好ましく、アラルキル基、シクロアルキル基がより好ましい。
 nは2~5の整数が好ましく、2~4の整数がより好ましく、2または3がさらに好ましく、2が特に好ましい。
 Lはn価の連結基を表すが、Lは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-S-、-NR-(Rは単結合、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアシル基を表す)、-C(=O)-、-SO-、-SO-、アレーントリイル基、ヘテロアレーントリイル基またはこれらの基を組み合わせてなる連結基が好ましく、単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-S-、-NR-(Rは単結合、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアシル基を表す)、アレーントリイル基、ヘテロアレーントリイル基またはこれらの基を組み合わせてなる連結基がより好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはこれらの基を組み合わせてなる連結基がさらに好ましい。
 Lが単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-S-、-NR-(Rは単結合、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアシル基を表す)、-C(=O)-、-SO-、-SO-、アレーントリイル基またはヘテロアレーントリイル基を組み合わせてなる連結基としては、例えば、アルキレン-アリーレン、アルキレン-フェニレン-アルキレン、アルキレン-ヘテロアリーレン-アルキレン、アルキレン-シクロアルキレン-アルキレン、フェニレン-アルキレン-フェニレン、アルキレン-O-アルキレン、アルキレン-NR-アルキレン、アルキレン-N(アルキレン)、シクロアルキレン-アルキレン、シクロアルキレン-アルキレン-シクロアルキレン、アリーレン-アルキレン-アリーレン-アルキレン-アリーレン、アルキレン-アリーレン-アリーレン-アルキレン等が挙げられる。
 Lにおいて、少なくとも2つの一般式(I)で表わされる化合物を結合する原子の個数、すなわち最短結合原子数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~9がさらに好ましく、2~9が特に好ましい。
 ここで、最短結合原子数とは、一般式(I)で表わされる化合物中のR、RまたはR間を連結する最短の原子数を意味し、例えば、下記の化合物では5と数える。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 この最短結合部分に環構造を含むものも好ましく、環としてはシクロアルキレン基、芳香環であるアレーン環やヘテロアレーン環が好ましい。
 ここで、シクロアルキレン基は、5または6員環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環)が好ましく、6員環がより好ましい。なかでも、シクロヘキサン-1,3-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイル、1,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1,3-ジイルが好ましい。
 アリーレン基はフェニレン、ナフチレンが好ましく、フェニレンがより好ましい。フェニレンのうち、1,3-フェニレン、1,4-フェニレンが好ましい。なお、ナフチレンは、1,5-ナフチレンが好ましい。
 ヘテロアリーレン基におけるヘテロアリール環は、5または6員環が好ましく、環構成ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。
 ヘテロアリール環としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環およびこれらのベンゼン環が縮環した環(例えば、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環など)が挙げられる。例えば、2,6-ピリジニルが挙げられる。
 アレーントリイル基としては、1,3,5-ベンゼントリイル、ヘテロアレーントリイル基としては、ピリジン-2,4,6-トリイルが挙げられる。
 Lの具体例としては、下記の連結基が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 ここで、*部は、一般式(I)におけるR、R、Rのいずれかに結合する部分を示す。
 本発明における一般式(A)で表される化合物は、分子内中に有する>NH部分構造は3個以内が好ましく、2個以内がより好ましく、1個以内がさらに好ましく、0個が最も好ましい。なお、>NH部分構造とは、一般式(I)で表わされる分子の環構造を構成する窒素原子が水素原子で置換された部分構造、すなわち、RまたはRの置換基が水素原子である構造を意味する。
 本発明における一般式(A)で表される化合物は、L、R、RおよびRが有する環構造数の総和は1~6が好ましく、2~6がより好ましく、3~6がさらに好ましい。
 本発明における一般式(A)で表される化合物の分子量は、250~2000が好ましく、300~1200がより好ましく、350~1000がさらに好ましい。
 本発明における一般式(A)で表される化合物のClogPは、-4.0~10.0が好ましく、-2.0~8.0がより好ましい。このようなClogP値をとることで、セルロースアシレートポリマー分子との相溶性が良好になる。
 ここで、ClogPについて説明する。
 logPは、分配係数P(Partition Coefficient)の常用対数を意味し、ある化学物質が油(一般的に1-オクタノール)と水の2相系の平衡でどのように分配されるかを定量的な数値として表す物性値であり、次式で表される。
      logP = log(Coil/Cwater
 上記式において、Coilはある化学物質の油相中のモル濃度を表し、Cwaterはある化学物質の水相中のモル濃度を表す。logPの値が0をはさんでプラスに大きくなると油溶性が増し、マイナスで絶対値が大きくなると水溶性が増す。logPは化学物質の水溶性と負の相関があり、親疎水性を見積るパラメータとして広く利用されている。その定義から考えて分配実験で実測するのが原則である。しかし、実験自体がかなり面倒なため、構造式からの推算が有効な手段である。
 このため、logPの推算値としてClogPが使用されている。本明細書におけるClogPは、米国Pomona大学のC.Hansch,A.LeoらのMedchemプロジェクトによって開発されたlogP値推算プログラム:ClogP(厳密には、Daylight Chemical Information Systems社のシステム:PCModelsに組み込まれたClogPプログラム)を使用している。このプログラムは、Hansch-Leoのフラグメント法に基づいており、化学構造をフラグメントに分割し、そのフラグメントに対して割り当てられたlogP寄与分を合計することによりClogPを推算している。
 ClogPに関する理論は、例えばC.Hansch&A.Leo,Substituent Constants For Correlation Analysis in Chemistry and Biology(John Wiley&Sons)や、A.J.Leo.,Calculating logPoct from structure.,Chem.Rev.,93,1281-1306(1993年)などに詳しく記載されている。
 本発明における一般式(A)で表される化合物は、下記一般式(A-1)または(A-2)で表される化合物が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 一般式(A-1)、(A-2)において、R11、R12、R31、R32、R51およびR52は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。Xは、単結合または2価の連結基を表す。
 R11およびR12は、一般式(I)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。R31およびR32は、一般式(I)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。R51およびR52は、一般式(I)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
 Xにおける2価の連結基は、一般式(A)におけるLが2価の連結基の場合と同義であり、好ましい範囲も同じである。
 一般式(A-1)、(A-2)において、R11とR12、R31とR32、R51とR52は、同一であっても異なっていてもよい。
 本発明においては、Xが下記一般式(1)で表されることが好ましい。
   一般式(1):*-CHR’-X’-CHR’-*
 ここで、*は一般式(A-1)または(A-2)におけるヘテロ環と連結する部分を表す。R’は水素原子または置換基を表す。
 置換基としては、アルキル基、アリール基が好ましい。
 X’は、一般式(A)においてLが2価の連結基の場合と同義であり、好ましい範囲も同じである。なお、環構造であることが特に好ましい。
 以下に、本発明における一般式(A)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
 本発明における一般式(A)で表される化合物は、例えば、下記の反応スキームで合成できる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
 ここで、R、R、Rは一般式(I)におけるR、R、Rであり、Xは一般式(A-1)、(A-2)におけるXであり、Xは、Xを-CH-X-CH-で表した場合の連結基Xである。
 5位での連結の方法としては、バルビツール酸骨格の化合物を合成した後に、5位で連結する方法、もしくは、複数個のマロン酸誘導体部位をもつ化合物と、尿素誘導体を縮合させることでバルビツール酸骨格を複数個同時に形成させる方法がある。
 バルビツール酸骨格の化合物は、尿素誘導体とマロン酸誘導体とを縮合させる任意の合成法で合成できることが知られている。窒素原子上に置換基を2つ有するバルビツール酸は、N,N’-二置換型尿素とマロン酸クロリドを加熱するか、N,N’-二置換型尿素と、マロン酸と無水酢酸などの活性化剤とを混合して加熱することにより得られる。例えば、Journal of the American Chemical Society,第61巻,1015頁(1939年)、Journal of Medicinal Chemistry,第54巻,2409頁(2011年)、Tetrahedron Letters,第40巻,8029頁(1999年)、国際公開第2007/150011号パンフレットなどに記載の方法を好ましく用いることができる。
 また、縮合に用いるマロン酸は、無置換のものでも置換基を有するものでもよい。
 5位での連結の方法としては、ハロゲン化アルキルなどとの求核置換反応(ルート2)やマイケル付加反応のような付加反応を用いることができる。5位無置換のバルビツール酸骨格の中間体とホルムアルデヒドの縮合により、メチレン連結の化合物を合成することができる(ルート1)。
 また、5位無置換のバルビツール酸骨格の中間体をアルデヒドやケトンと脱水縮合させてアルキリデンまたはアリーリデン化合物を生成させ、その後二重結合を還元する方法も好ましく用いることができる(ルート3)。
 例えば亜鉛による還元方法が、Tetrahedron Letters,第44巻,2203頁(2003年)に、接触還元による還元方法がTetrahedron Letters,第42巻,4103頁(2001年)やJournal of the American Chemical Society,第119巻,12849頁(1997年)に、NaBHによる還元方法が、Tetrahedron Letters,第28巻,4173頁(1987年)などにそれぞれ記載されている。これらは何れも、5位にアラルキル基を有する場合やシクロアルキル基を有する場合に好ましく用いることができる合成方法である。
 1位および3位での連結の方法としては、バルビツール酸骨格を形成した後に、置換反応などで連結する方法、および、複数個の尿素誘導体部位をもつ化合物と、マロン酸誘導体と縮合させることでバルビツール酸骨格を複数個同時に形成させる方法がある。
 ルート4は、イソシアネートとアミンの反応によりビス型の尿素誘導体を合成した後に、バルビツール酸骨格を形成する方法である。
 なお、本発明に用いる一般式(A)で表される化合物の合成法は上記に限定されるものではない。
 一般式(A)で表される化合物の、光学フィルム中の含有量は特に限定されない。ただし、セルロースアシレート100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、0.2~30質量部がより好ましく、0.3~20質量部がさらに好ましく、0.3~15質量部が特に好ましい。このような含有量とすることで、本発明の効果である硬度および光学フィルムの着色抑制が十分に発現され、さらに、フィルムの透明性も維持される。
 また、光学フィルム中に一般式(A)で表される化合物を2種類以上含有させてもよい。この場合、その合計量が、上記の範囲内であることが好ましい。
<セルロースアシレート>
 本発明において、セルロースアシレートフィルムの主成分となるセルロースアシレートは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。例えば、セルロースアシレートは、アシル置換基としてアセチル基のみからなるセルロースアセテートであっても、複数の異なったアシル置換基を有するセルロースアシレートを用いてもよく、異なったセルロースアシレートの混合物であってもよい。
 本発明で使用されるセルロースアシレートの原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。原料セルロースは、例えば、丸澤、宇田著,「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」,日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001-1745号(7頁~8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
 本発明では、セルロースアシレートのアシル基は、1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。本発明で使用されるセルロースアシレートは、炭素数2以上のアシル基を置換基として有することが好ましい。炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族のアシル基でも芳香族のアシル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基あるいは芳香族カルボニル基、芳香族アルキルカルボニル基などであり、それぞれさらに置換基を有していてもよい。アシル基の好ましい例としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブタノイル、t-ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが挙げられる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル基、ドデカノイル、オクタデカノイル、t-ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、さらに好ましくはアセチル、プロピオニル、ブタノイルである。
 本発明で使用されるセルロースアシレートは、炭素数2~4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのうち1種類がアセチル基であることが好ましく、その他に用いる炭素数2~4のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。これらのセルロースアシレートを用いることにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒(例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類)において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性のよい溶液の作製が可能となる。
 本発明では、特に、セルロースアシレートのアシル基はアセチル基1種であるものが、一般式(A)で表される化合物による硬度改善効果に優れる点で、好ましい。
 本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。
 セルロースを構成するβ-1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離のヒドロキシ基を有している。セルロースアシレートは、これらのヒドロキシ基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。
 アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースのヒドロキシ基のアシル化の度合いを示すものであり、全てのグルコース単位の2位、3位および6位のヒドロキシ基がいずれもアシル化された場合、総アシル置換度は3であり、例えば、全てのグルコース単位で、6位のみが全てアシル化された場合、総アシル置換度は1である。同様に、全グルコースの全ヒドロキシ基において、各々のグルコース単位で、6位か、2位のいずれか一方の全てがアシル化された場合も、総アシル置換度は1である。
 すなわち、グルコース分子中の全ヒドロキシ基が全てアシル化された場合を3として、アシル化の度合いを示すものである。
 アシル置換度の測定方法の詳細については、手塚他,Carbohydrate.Res.,273,83-91(1995)に記載の方法やASTM-D817-96に規定の方法に準じて測定することができる。
 本発明で使用するセルロースアシレートの総アシル置換度Aは、1.5以上3.0以下(1.5≦A≦3.0)が好ましく、2.00~2.97がより好ましく、2.50以上2.97未満がさらに好ましく、2.70~2.95が特に好ましい。
 また、セルロースアシレートのアシル基としてアセチル基のみを用いたセルロースアセテートにおいては、総アセチル置換度Bは、2.0以上3以下(2.0≦B≦3.0)が好ましく、2.0~2.97がより好ましく、2.5以上2.97未満がさらに好ましく、2.55以上2.97未満がなかでも好ましく、2.60~2.96が特に好ましく、2.70~2.95が最も好ましい。
 なお、本発明における一般式(A)で表される化合物は、総アセチル置換度Bが2.50を超えたセルロースアシレートに対して、特に効果が発現される。
 本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルムが積層体(複層構成)である場合、セルロースアシレートフィルムは、各層中におけるセルロースアシレートの総アシル置換度Aは同じであっても異なっていてもよく、また、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよい。
 セルロースのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、メチレンクロライドや有機酸、例えば、酢酸等が使用される。
 触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CHCHCOCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
 最も一般的なセルロースの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
 セルロースアシレートは、例えば、特開平10-45804号公報に記載されている方法により合成できる。
 本発明のフィルム、特に本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムは、全固形分中、セルロースアシレートを5~99質量%含むことが透湿度の観点から好ましく、20~99質量%含むことがより好ましく、50~95質量%含むことが特に好ましい。
<その他の添加剤>
 本発明の光学フィルム中、特にセルロースアシレートフィルム中には、レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤)や、可塑剤として、重縮合エステル化合物(ポリマー)、多価アルコールの多価エステル、フタル酸エステル、リン酸エステルなど、さらには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤を加えることもできる。
 なお、本明細書では、化合物群を標記するのに、例えば、リン酸エステル系化合物のように、「系」を組み込んで記載することがある。これは、上記の場合、リン酸エステル化合物と同じ意味である。
(レターデーション低減剤)
 本発明ではレターデーション低減剤として、リン酸エステル系化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として任意の非リン酸エステル系の化合物以外の化合物を広く採用することができる。
 高分子レターデーション低減剤としては、リン酸ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマー等およびこれらの共重合体から選択され、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含むことが好ましい。
 非リン酸エステル系の化合物以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば、融点20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては、例えば特開2001-194522号公報に記載されているものを挙げることができる。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加してもよく、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
 非リン酸エステル系の化合物以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、特に限定されない。なお、詳細は特開2007-272177号公報の段落番号0066~0085に記載されている。
 特開2007-272177号公報の段落番号0066~0085に記載の一般式(1)で表される化合物は、公報に記載されているように、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
 特開2007-272177号公報に記載の一般式(2)で表される化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
 レターデーション低減剤は、Rth低減剤であることが好適なNzファクターを実現する観点からより好ましい。ここで、Rthとは、セルロースアシレートフィルムの深さ方向のレターデーションを意味する。レターデーション低減剤のうち、Rth低減剤としては、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマー、特開2007-272177号公報に記載の一般式(3)~(7)で表される低分子化合物などを挙げることができ、その中でもアクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
 レターデーション低減剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~20質量部がより好ましく、0.1~10質量部が特に好ましい。添加量を30質量部以下とすることにより、セルロース系樹脂との相溶性を向上させることができ、透明性に優れたフィルムを作製することができる。2種類以上のレターデーション低減剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
(レターデーション発現剤)
 本発明の光学フィルムは、レターデーション値を発現するために、少なくとも1種のレターデーション発現剤を含有してもよい。
 レターデーション発現剤としては、特に制限はなく、棒状または円盤状化合物からなるものや、上記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
 棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して0.1~30質量部が好ましく、0.5~20質量部がさらに好ましい。
 円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
 レターデーション発現剤は、250~400nmの波長領域に最大吸収波長を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
 レターデーション発現剤の詳細は公開技報2001-1745の49頁に記載されている。
 円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して0.1~30質量部が好ましく、0.5~20質量部がさらに好ましい。
 レターデーション発現剤中に含まれる円盤状化合物の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して3質量部未満が好ましく、2質量部未満がより好ましく、1質量部未満が特に好ましい。
〔可塑剤(疎水化剤)〕
 光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムでは、可塑剤をセルロースアシレートフィルムに含有させると、セルロースアシレートフィルムの含水率や透湿度が低下し、セルロースアシレートフィルム中の水分によるセルロースアシレートの加水分解反応が抑制される。さらに、可塑剤は、高温高湿条件下におけるセルロースアシレートフィルム中から偏光子層への添加剤の拡散を抑制し、偏光子性能の劣化を改良することができる。
 本発明における一般式(A)で表される化合物は、光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムに含有させることにより、可塑剤としても用いることができる。すなわち、前述したようなガラス転移温度の制御、含水率および透湿度の低減を含めた耐久性の改善効果が得られる他、同時にセルロースアシレートフィルムの硬度をも高めることができる。さらに、本発明における一般式(A)で表される化合物は、他の汎用されている可塑剤と併用した場合であっても硬度向上効果を奏することができるため、複数の可塑剤を併用して光学フィルム、セルロースアシレートフィルム中に含有させてもよい。
 なお、本発明の光学フィルムは、少なくとも1種の可塑剤を含有することが好ましい。
 本発明においては、併用する可塑剤の中でも、分子内で位置的にエステル基が接近して詰まっている多エステル系の可塑剤が好ましい。多エステル系の可塑剤として、具体的には、重縮合エステル化合物(以後、重縮合エステル系可塑剤と称す。)、多価アルコールの多価エステル化合物(以後、多価アルコールエステル系可塑剤と称す。)および炭水化物化合物(以後、炭水化物誘導体系可塑剤と称す。)が挙げられる。本発明において、これらの化合物は前述のような可塑剤効果の発現に優れている。
 以下に本発明に用いられる可塑剤について説明する。
(重縮合エステル系可塑剤)
 重縮合エステル系可塑剤は、2価のカルボン酸化合物とジオール化合物を重縮合して得られる。
 重縮合エステル系可塑剤は、下記一般式(a)で表される少なくとも1種のジカルボン酸および下記一般式(b)で表される少なくとも1種のジオールを重縮合して得ることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
 一般式(a)、(b)中、Yは2価の炭素数2~18の脂肪族基、2価の炭素数6~18の芳香族基または炭素数2~18の2価のヘテロ環を表し、Zは2価の炭素数2~8の脂肪族基を表す。ここで、2価の炭素数2~8の脂肪族基は直鎖でも分岐であってもよい。
 一般式(a)で表される2価のカルボン酸化合物は、上記のように脂肪族のカルボン酸、芳香族またはヘテロ環のカルボン酸が挙げられ、好ましくは、脂肪族のカルボン酸または芳香族のカルボン酸である。
 一方、ジオール化合物も、上記一般式(b)で表される脂肪族化合物以外にも、芳香族もしくはヘテロ環の化合物が挙げられる。
 この中でも、少なくとも一種の芳香環を有するジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸とも呼ぶ)と少なくとも一種の平均炭素数が2.5~8.0の脂肪族ジオールとから得られる重縮合エステル系可塑剤が好ましい。また、芳香族ジカルボン酸と少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸との混合物と、少なくとも一種の平均炭素数が2.5~8.0の脂肪族ジオールとから得られる重縮合エステル系可塑剤も好ましい。
 重縮合エステル系可塑剤の数平均分子量は500~2000が好ましく、600~1500がより好ましく、700~1200がさらに好ましい。重縮合エステル系可塑剤の数平均分子量は500以上、好ましくは600以上であれば揮発性が低くなり、セルロースアシレートフィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染の抑制に優れる。
 また、重縮合エステル系可塑剤の数平均分子量が、2000以下であればセルロースアシレートとの相溶性が高くなり、製膜時および加熱延伸時のブリードアウトの抑制に優れる。
 芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物をジカルボン酸成分として用いる場合は、ジカルボン酸成分の炭素数の平均は、5.5~10.0が好ましく、より好ましくは5.6~8.0である。
 炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れた偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10.0以下であればセルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜過程でブリードアウトの抑制に優れる。
 重縮合エステル系可塑剤の合成に用いることができる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,8-ナフタレンジカルボン酸または2,6-ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。その中でもフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましく、フタル酸、テレフタル酸がより好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。
 ジオール化合物と、脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステル系可塑剤には、脂肪族ジカルボン酸残基が含まれる。
 重縮合エステル系可塑剤を合成する脂肪族ジカルボン酸は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
 重縮合エステル系可塑剤を合成するジオールとしては、芳香族ジオールおよび脂肪族ジオールが挙げられ、本発明においては、少なくとも脂肪族ジオールを用いて合成されることが好ましい。
 重縮合エステル系可塑剤は、平均炭素数が2.5~7.0の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましく、より好ましくは平均炭素数が2.5~4.0の脂肪族ジオール残基を含む。
 脂肪族ジオール残基の平均炭素数が7.0より小さいとセルロースアシレートとの相溶性が改善され、ブリードアウト、化合物の加熱減量の増大、およびセルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生の抑制に優れる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.5以上であれば合成が容易である。
 重縮合エステル系可塑剤を合成するために用いる脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールまたは脂環式ジオール類が好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、および1,3-プロパンジオールが好ましく、エチレングリコールおよび1,2-プロパンジオールがより好ましい。
 重縮合エステル系可塑剤の末端は、封止せずにジオールもしくはカルボン酸のまま(すなわち、ポリマー鎖長末端が-OHまたはCOH)としてもよく、さらにモノカルボン酸類またはモノアルコール類を反応させていわゆる末端の封止を実施してもよい。なお、重縮合エステル系可塑剤の末端を封止することで、常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
 重縮合エステル系可塑剤は、特開2012-234159号公報の段落番号0062~0064に記載されているJ-1~J-38が好ましい。
(多価アルコールエステル系可塑剤)
 本発明に用いられる多価アルコールエステル系可塑剤は、アルコール部が2個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールから導かれるエステルである。アルコール部のアルコールとしては、ヒドロキシ基以外、エーテル結合を介して分断されてもよい飽和炭化水素にヒドロキシ基が2個以上置換したアルコールが好ましい。
 多価アルコールエステル系可塑剤の原料である多価アルコールは下記一般式(c)で表される。
   一般式(c)
         Rα-(OH)m
 一般式(c)中、Rαはm価の有機基を表し、mは2以上の正の整数を表す。
 多価アルコールの炭素数は、5以上が好ましく、5~20がより好ましい。
 このような多価アルコールとしては、糖アルコールやグリコール類が挙げられる。
 具体的には、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
 多価アルコールエステルの酸部(エステルのアシル部)は、モノカルボン酸から誘導される酸部が好ましい。このような酸としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸が挙げられ、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
 脂肪族モノカルボン酸は、炭素数が、1~32が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
 好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2-エチル-ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げられる。
 好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げられる。
 好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体が挙げられ、特に安息香酸が好ましい。
 多価アルコールエステル系可塑剤の分子量は特に制限はなく、300~3000が好ましく、350~1500が更に好ましい。分子量が大きい方が光学フィルムからの揮散抑制に優れるため好ましく、透湿性、セルロース誘導体との相溶性の点では小さい方が好ましい。
 多価アルコールエステル系可塑剤は、例えば、特開2012-234159号公報の段落番号0045~0049に記載の化合物が好ましく、本明細書の一部として好ましく取り込まれる。
(炭水化物誘導体系可塑剤)
 炭水化物誘導体系可塑剤としては、単糖あるいは2~10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体、中でもアシル化されたものが好ましい。
 単糖または2~10個の単糖単位を含む炭水化物の例としては、例えば、好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、δ-シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
 炭水化物誘導体系可塑剤の好ましい例としては、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートが挙げられる。
 炭水化物誘導体系可塑剤はピラノース構造あるいはフラノース構造を有することが好ましい。
 炭水化物誘導体系可塑剤としては、特開2012-234159号公報の段落番号0030~0039に記載されている化合物が好ましい。
 なお、本発明では、可塑剤は、特開2012-234159号公報の段落番号0026~0068に記載の内容が好ましく適用され、これらの段落番号に記載の内容は、本明細書の一部に、好ましく取り込まれる。
 これらの可塑剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して0.1~50質量%が好ましい。好ましい添加量は1~20質量%であり、1質量%以上であれば、偏光子耐久性改良効果が得られやすく、また20質量%以下であれば、ブリードアウトも発生しにくい。さらに好ましい添加量は2~15質量%であり、特に好ましくは4~15質量%である。なお、これらの可塑剤は2種類以上添加しても良い。2種類以上添加する場合も、添加量の具体例および好ましい範囲は上記と同一である。
 これらの可塑剤をセルロースアシレートフィルムに添加するタイミングは、製膜される時点で添加されていれば特に限定されない。例えば、セルロースアシレートの合成時点で添加してもよいし、ドープ調製時にセルロースアシレートと混合してもよい。
(酸化防止剤)
 本発明の光学フィルムは、酸化防止剤を含むことが好ましい。この酸化防止剤はセルロースアシレート溶液に添加されることができる。本発明において、任意の酸化防止剤、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-チオビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4-メトキシ-3,5-ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤を用いることが好ましい。
 酸化防止剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.05~5.0質量部が好ましい。
(紫外線吸収剤)
 本発明の光学フィルムは、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。この紫外線吸収剤はセルロースアシレート溶液に添加されることができる。本発明において、紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤は、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
 ヒンダードフェノール系化合物は、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレートなどが挙げられる。
 ベンゾトリアゾール系化合物は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、(2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)-5-クロルベンゾトリアゾール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。
 これらの紫外線防止剤の添加量は、セルロースアシレートフィルムの全固形分中に質量割合で1~1.0%が好ましく、10~1000ppmがさらに好ましい。
(マット剤)
 本発明の光学フィルムは、フィルムすべり性、および安定製造の観点からマット剤を加えてもよい。マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
 無機化合物のマット剤は、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリンおよびリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましい。
 二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)社製)等の商品名を有する市販品を使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)社製)等の商品名で市販されているものを使用できる。
 有機化合物のマット剤は、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂およびアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120およびトスパール240(以上東芝シリコーン(株)社製)等の商品名で市販されているものを使用できる。
 これらのマット剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されず、いずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。
 更にはドープを流延する直前に添加混合する、いわゆる直前添加方法でもよく、その混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましい。また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi-Mixer)(東レエンジニアリング社製)のようなものが好ましい。
 なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003-053752号公報には、セルロースアシレートフィルムの製造方法において、主原料ドープに異なる組成の添加液を混合する添加ノズル先端とインラインミキサーの始端部の距離Lを、主原料配管内径dの5倍以下とすることで、濃度ムラ、マット粒子等の凝集をなくす方法が記載されている。さらに好ましい態様として、主原料ドープと異なる組成の添加液供給ノズルの先端開口部とインラインミキサーの始端部との間の距離(L)を、供給ノズル先端開口部の内径(d)の10倍以下とし、インラインミキサーが、静的無攪拌型管内混合器または動的攪拌型管内混合器であることが記載されている。さらに具体的には、セルロースアシレートフィルム主原料ドープ/インライン添加液の流量比は、10/1~500/1、好ましくは50/1~200/1であることが開示されている。
 さらに、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムを目的とした特開2003-014933号公報にも、添加剤を添加する方法が記載されている。具体的には、溶解釜中に添加剤を添加してもよいし、溶解釜~共流延ダイまでの間で添加剤や添加剤を溶解または分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよく、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
 マット剤は、0.05~1.0質量%の割合でセルロースアシレートフィルム中に含有させることが特に好ましい。このような値とすることで、セルロースアシレートフィルムのヘイズが大きくならず、実際にLCDに使用した場合、コントラストの低下および輝点の発生等の不都合の抑制に寄与する。また、キシミ、耐擦傷性を実現することができる。これらの観点から0.05~1.0質量%の割合で含めることが特に好ましい。
<セルロースアシレートフィルムの物性>
(硬度)
 表面硬度として、ヌープ圧子を使用するヌープ法によるヌープ硬度が高いことが好ましく、また、鉛筆硬度が高いことも好ましい。ヌープ硬度は、圧子にヌープ圧子を有する硬度計、例えば、フィッシャーインスツルメンツ(株)社製“フッシャースコープH100Vp型硬度計”で測定できる。
 鉛筆硬度は、例えば、JIS-S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS-K5400が規定する鉛筆硬度評価法により、評価できる。
 本発明における一般式(A)で表される化合物は、セルロースアシレートフィルムのヌープ硬度等の硬度を高めることがでる。なお、セルロースアシレートフィルムの硬度は、一般式(A)で表される化合物の種類または含有量によって調整できる。
〔弾性率(引張り弾性率)〕
 セルロースアシレートフィルムは実用上十分な弾性率(引張り弾性率)を示すことが好ましい。弾性率の範囲は特に限定されない。ただし、製造適性およびハンドリング性という観点から1.0~7.0GPaが好ましく、2.0~6.5GPaがより好ましい。本発明における一般式(A)で表される化合物は、セルロースアシレートフィルム中に添加されることにより、セルロースアシレートフィルムを疎水化することで弾性率を向上させる作用があり、その点も本発明における利点である。
(光弾性係数)
 セルロースアシレートフィルムの光弾性係数の絶対値は、好ましくは8.0×10-12/N以下、より好ましくは6×10-12/N以下、さらに好ましくは5×10-12/N以下である。セルロースアシレートフィルムの光弾性係数を小さくすることにより、セルロースアシレートフィルムを含む本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下におけるムラ発生を抑制できる。光弾性係数は、特に断らない限り、以下の方法により測定し算出するものとする。
 光弾性率の下限値は特に限定されない。なお、0.1×10-12/N以上が実際的である。
 セルロースアシレートフィルムを3.5cm×12cmに切り出し、荷重なし、250g、500g、1000g、1500gのそれぞれの荷重におけるレターデーション(Re)をエリプソメーター(M150[商品名]、日本分光(株))で測定し、応力に対するRe変化の直線の傾きから光弾性係数を算出する。
(含水率)
 セルロースアシレートフィルムの含水率は一定の温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は上記一定の温湿度に24時間放置した後に、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
 セルロースアシレートフィルムの25℃相対湿度80%における含水率は5質量%以下が好ましく、4質量%以下がさらに好ましく、3質量%未満がさらに好ましい。セルロースアシレートフィルムの含水率を小さくすることにより、セルロースアシレートフィルムを含む本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下における液晶表示装置の表示ムラの発生を抑制することができる。含水率の下限値は特に限定されない。なお、0.1質量%以上が実際的である。
(透湿度)
 セルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じ、温度40℃、相対湿度90%雰囲気中、試料を通過する24時間あたりの水蒸気の質量を測定し、試料面積1mあたりの24時間に通過する水蒸気の質量に換算することにより評価することができる。
 セルロースアシレートフィルムの透湿度は、500~2000g/m・dayが好ましく、900~1300g/m・dayがより好ましく、1000~1200g/m・dayが特に好ましい。
(ヘイズ)
 セルロースアシレートフィルムは、ヘイズが1%以下が好ましく、0.7%以下がより好ましく、0.5%以下が特に好ましい。ヘイズを上記上限値以下とすることにより、セルロースアシレートフィルムの透明性がより高くなり、光学フィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。ヘイズは、特に断らない限り、下記方法により測定し算出するものとする。ヘイズの下限値は特に限定されない。なお、0.001%以上が実際的である。
 セルロースアシレートフィルム40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%の環境下で、ヘイズメーター(HGM-2DP、スガ試験機)を用いて、JIS K7136に従って測定する。
(膜厚)
 セルロースアシレートフィルムの平均膜厚は、10~100μmが好ましく、15~80μmがより好ましく、15~70μmがさらに好ましい。15μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し好ましい。また、70μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすい。
 また、セルロースアシレートフィルムが3層以上の積層構造を有する場合、コア層の膜厚は3~70μmが好ましく、5~60μmがより好ましく、スキン層Aおよびスキン層Bの膜厚は、ともに0.5~20μmが好ましく、0.5~10μmがより好ましく、0.5~3μmが特に好ましい。
(幅)
 セルロースアシレートフィルムは、幅が700~3000mmが好ましく、1000~2800mmがより好ましく、1300~2500mmが特に好ましい。
<セルロースアシレートフィルムの製造方法>
 本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、特に限定されるものではない。なお、溶融製膜法又は溶液製膜法による製造が好ましく、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)による製造がより好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,492,078号、同第2,492,977号、同第2,492,978号、同第2,607,704号、同第2,739,069号および同第2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号および同第736892号の各明細書、並びに特公昭45-4554号、同49-5614号、特開昭60-176834号、同60-203430号および同62-115035号等の各公報を参考にすることができる。また、セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法および条件については、例えば、特開昭62-115035号、特開平4-152125号、同4-284211号、同4-298310号、同11-48271号等の各公報を参考にすることができる。
(流延方法)
 溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があり、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があり、いずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルロースアシレート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、従来法と同様に流延製膜することができる。
・共流延
 セルロースアシレートフィルムの形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、特に同時共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
 共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でも良い)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
 逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って乾燥し、セルロースアシレートフィルムを成形する流延法である。塗布法は、一般的には、コア層を溶液製膜法によりフィルム状に成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、コア層の片面ずつまたは両面同時に塗布液を塗布・乾燥して積層構造のセルロースアシレートフィルムを成形する方法である。
 セルロースアシレートフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基または2基以上の設置でもよい。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるドープ(樹脂溶液)の温度は-10~55℃が好ましく、より好ましくは25~50℃である。その場合、工程の全ての溶液温度が同一でもよく、または工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
 また、上記金属支持体の材質については特に制限はないが、SUS製(例えば、SUS316)であることがより好ましい。
(剥離)
 セルロースアシレートフィルムの製造方法は、上記ドープから形成された膜を金属支持体から剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの製造方法における剥離の方法については特に制限はなく、任意の方法を用いた場合に剥離性を改善することができる。
(延伸処理)
 セルロースアシレートフィルムの製造方法では、製膜された後に延伸する工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの延伸方向はセルロースアシレートフィルム搬送方向(MD方向)と搬送方向に直交する方向(TD方向)のいずれでも好ましい。なお、セルロースアシレートフィルム搬送方向に直交する方向(TD方向)であることが、後に続くセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板加工プロセスの観点から特に好ましい。
 TD方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62-115035号、特開平4-152125号、同4-284211号、同4-298310号、同11-48271号などの各公報に記載されている。MD方向の延伸の場合、例えば、セルロースアシレートフィルムの搬送ローラーの速度を調節して、セルロースアシレートフィルムの剥ぎ取り速度よりもセルロースアシレートフィルムの巻き取り速度の方を速くするとセルロースアシレートフィルムは延伸される。TD方向の延伸の場合、セルロースアシレートフィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもセルロースアシレートフィルムを延伸できる。セルロースアシレートフィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
 セルロースアシレートフィルムを偏光子の保護膜として使用する場合には、偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するため、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、上記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状のセルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、セルロースアシレートフィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従ってTD方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。
 TD方向の延伸は5~100%の延伸が好ましく、より好ましくは5~80%、特に好ましくは5~40%である。なお、未延伸とは延伸が0%であることを意味する。延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶媒量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が0.05~50%で好ましく延伸することができる。残留溶媒量が0.05~5%の状態で5~80%延伸を行うことが特に好ましい。
(乾燥)
 セルロースアシレートフィルムの製造方法では、セルロースアシレートフィルムを乾燥する工程と、乾燥後のセルロースアシレートフィルムをガラス転移温度(Tg)-10℃以上の温度で延伸する工程とを含むことが、レターデーション発現性の観点から好ましい。
 セルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラムまたはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラムまたはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラムまたはベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあり、なかでも裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内、最も沸点の低い溶媒の沸点より1~10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
 セルロースアシレートフィルムの厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
 以上のようにして得られた、セルロースアシレートフィルムの長さは、1ロール当たり100~10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500~7000mであり、さらに好ましくは1000~6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm~50mmが好ましく、より好ましくは5mm~30mm、高さは0.5~500μmが好ましく、より好ましくは1~200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
 本発明の光学フィルムを大画面液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合には、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の光学フィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様の光学フィルムも含まれる。後者の態様の光学フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムや偏光板保護フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
<<ハードコート層>>
 本発明の光学フィルムにおいて、セルロースアシレートフィルム上に所望により設けられるハードコート層は、本発明の光学フィルムに硬度や耐傷性を付与するための層である。
 例えば、ハードコート層を形成するための塗布組成物をセルロースアシレートフィルム上に塗布し、硬化させることによって、本発明における一般式(A)で表される化合物と相俟ってセルロースアシレートフィルムと密着性の高いハードコート層を形成することができる。ハードコート層にフィラーや添加剤を加えることで、機械的、電気的、光学的、物理的な性能や撥水・撥油性などの化学的な性能をハードコート層自体に付与することもできる。ハードコート層の厚みは0.1~6μmが好ましく、3~6μmがさらに好ましい。このような範囲の薄いハードコート層を有することで、脆性やカール抑制などの物性改善、軽量化および製造コスト低減がなされたハードコート層を含む光学フィルムになる。
 ハードコート層は、ハードコート層を形成するための硬化性組成物を硬化することで形成するのが好ましい。硬化性組成物は液状の塗布組成物として調製されるのが好ましい。このような塗布組成物の一例は、マトリックス形成バインダー用モノマーまたはオリゴマー、ポリマー類および有機溶媒を含有する。この塗布組成物を塗布後に硬化することでハードコート層を形成することができる。硬化には、架橋反応、または重合反応を利用することができる。
(マトリックス形成バインダー用モノマーまたはオリゴマー)
 利用可能なマトリックス形成バインダー用モノマーまたはオリゴマーの例には、電離放射線硬化性の多官能モノマーおよび多官能オリゴマーが含まれる。多官能モノマーや多官能オリゴマーは架橋反応、または、重合反応可能なモノマーが好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
 光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等や、エポキシ系化合物等の開環重合型の重合性官能基が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
 光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
 ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
 トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
 ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
 2,2-ビス{4-(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{4-(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等が挙げられる。
 更には、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
 上記の中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーがより好ましい。
 具体的には、(ジ)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,2,3-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、等が挙げられる。
 本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレートまたはメタクリレート」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を表す。
 さらに、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマーまたはプレポリマー等も挙げられる。
 3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、特開2007-256844号公報の段落番号0096等を参考にすることができる。
 ウレタン(メタ)アクリレート類は、例えば、アルコール、ポリオール、および/またはヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有化合物類とイソシアネート類を反応させ、または必要によって、これらの反応によって得られたポリウレタン化合物を(メタ)アクリル酸でエステル化して得られるウレタン(メタ)アクリレート系化合物を挙げることができる。
 具体的な化合物の具体例としては特開2007-256844号公報の段落番号0017等の記載を参考にすることができる。
 イソシアヌル酸(メタ)アクリレート類を利用すると、カールをより低減できるので好ましい。このようなイソシアヌル酸(メタ)アクリレート類としては、イソシアヌル酸ジアクリレート類、イソシアヌル酸トリアクリレート類が挙げられ、具体的な化合物の事例としては特開2007-256844号公報の段落番号0018~0021等を参考にすることができる。
 ハードコート層には、さらに硬化による収縮低減のために、エポキシ系化合物を用いることができる。このようなエポキシ系化合物(エポキシ基を有するモノマー類)としては、1分子中にエポキシ基を2基以上有するモノマーが用いられ、これらの例としては特開2004-264563号、同2004-264564号、同2005-37737号、同2005-37738号、同2005-140862号、同2005-140862号、同2005-140863号、同2002-322430号等の各公報に記載されているエポキシ系モノマー類が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ系とアクリル系の両官能基を持つ化合物を用いることも好ましい。
(高分子化合物)
 ハードコート層は、高分子化合物を含有していてもよい。高分子化合物を添加することで、硬化収縮を小さくでき、また、樹脂粒子の分散安定性(凝集性)に関わる塗布液の粘度調整をより優位に行うことができ、さらには、乾燥過程での固化物の極性を制御して樹脂粒子の凝集挙動を変えたり、乾燥過程での乾燥ムラを減じたりすることもでき、好ましい。
 ここで、高分子化合物は、塗布液に添加する時点で既に重合体を形成している化合物である。このような高分子化合物としては、例えばセルロースエステル類(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースナイトレート等)、ウレタン類、ポリエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸メチル等)、ポリスチレン等の樹脂が好ましく用いられる。
(硬化性組成物)
 ハードコート層の形成に利用可能な硬化性組成物の一例は、(メタ)アクリレート系化合物を含む硬化性組成物である。硬化性組成物は、(メタ)アクリレート系化合物とともに、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤を含有することが好ましく、所望により、さらにフィラー、塗布助剤、その他の添加剤を含有していてもよい。硬化性組成物の硬化は、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により重合反応を進行させることで実行できる。また、電離放射線硬化と熱硬化の双方を実行することもできる。光または/および熱重合開始剤としては市販の化合物を利用することがでる。光または/および熱重合開始剤は、「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)や、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のカタログに記載されている。
 ハードコート層の形成に利用可能な硬化性組成物の他の例は、エポキシ系化合物を含む硬化性組成物である。硬化性組成物は、エポキシ系化合物とともに、光の作用によってカチオンを発生させる光酸発生剤を含有しているのが好ましく、所望により、さらにフィラー、塗布助剤、その他の添加剤を含有していてもよい。硬化性組成物の硬化は、光酸発生剤の存在下で、光照射により重合反応を進行させることで実行できる。光酸発生剤の例としては、トリアリールスルホニウム塩やジアリールヨードニウム塩などのイオン性の化合物やスルホン酸のニトロベンジルエステルなどの非イオン性の化合物等が挙げられる。また、有機エレクトロニクス材料研究会編,「イメージング用有機材料」,ぶんしん出版社刊(1997)などに記載されている化合物等種々の任意の光酸発生剤が使用できる。
 また、(メタ)アクリレート系化合物とエポキシ系化合物を併用してもよく、その場合は、開始剤は、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤を併用することが好ましい。
 ハードコート層の形成に特に好適な硬化性組成物は、後述する実施例にて用いられるように、(メタ)アクリレート系化合物を含有する組成物である。
 硬化性組成物は、塗布液として調製されるのが好ましい。塗布液は、上述の成分を有機溶媒に溶解および/または分散することで、調製することができる。
(ハードコート層の性質)
 本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルム上に形成されるハードコート層は、セルロースアシレートフィルムと高い密着性を有している。特に、本発明における一般式(A)で表される化合物を含有するセルロースアシレートフィルム上に上述の好適な硬化性組成物で形成されたハードコート層は、その硬化性組成物が一般式(A)で表される化合物と相俟って、セルロースアシレートフィルムとさらに高い密着性で形成される。このようなセルロースアシレートフィルムおよびハードコート層を有する本発明の光学フィルムは、光照射等によってもセルロースアシレートフィルムとハードコート層との密着性を維持し、光耐久性に優れる。
 ハードコート層は、耐擦傷性に優れることが好ましい。具体的には、耐擦傷性の指標となる鉛筆硬度試験(JIS-K5400)を実施した場合に、3H以上を達成することが好ましい。
[偏光板]
 本発明の偏光板は、偏光子とこの偏光子の少なくとも一方の面に本発明の光学フィルムとを有する。本発明の偏光板は、偏光子とこの偏光子の片面または両面に本発明の光学フィルムを有することが好ましい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明の光学フィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6-94915号公報、特開平6-118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。セルロースアシレートフィルムの処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
 本発明の光学フィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明の光学フィルムの遅相軸が実質的に直交、平行または45°となるように貼り合せることが好ましい。本発明の液晶表示装置において、偏光子の透過軸と本発明の光学フィルムの遅相軸が実質的に直交であることが好ましい。ここで、実質的に平行または直交であるとは、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含む。例えば、平行、直交に関する厳密な角度から±10°未満の範囲内であることを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下が好ましく、3°以下がより好ましい。
 偏光子の透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸が平行とは、偏光板保護フィルムの主屈折率nxの方向と偏光子の透過軸の方向とのなす角度が±10°の範囲内であることを意味する。この角度の範囲は、±5°が好ましく、±3°がより好ましく、±1°がさらに好ましく、±0.5°が特に好ましい。なお、この角度が0°のとき、偏光板保護フィルムの主屈折率nxの方向と偏光子の透過軸の方向とは交わらず、完全に平行である。
 また、偏光子の透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸が直交するとは、偏光板保護フィルムの主屈折率nxの方向と偏光子の透過軸の方向とが90°±10°の角度で交わっていることを意味する。この角度は、90°±5°が好ましく、90°±3°がより好ましく、90°±1°がさらに好ましく、90°±0.5°が特に好ましい。
 上記範囲とすることで、偏光板クロスニコル下での光抜けをより低減することができる。遅相軸の測定は、任意の種々の方法で測定することができ、例えば、複屈折計(KOBRA DH、王子計測機器(株)社製)を用いて行うことができる。
 本発明の偏光板は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく任意の構成を採用できる。例えば、特開2008-262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。
[液晶表示装置]
 本発明の液晶表示装置は、液晶セルと本発明の偏光板とを少なくとも有する。本発明の液晶表示装置においては、偏光板が本発明の偏光板である、IPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。また、第一偏光板および第二偏光板を有する場合には、少なくとも一方の偏光板が本発明の偏光板である、IPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
 本発明の液晶表示装置は、好ましくは、液晶セル(液晶層)と、液晶セルの両側に積層され、液晶セル側とは反対側の面に光学フィルムを具備する偏光板とを有している。すなわち、本発明の液晶表示装置は、第一偏光板、液晶セルおよび第二偏光板を有し、偏光板それぞれと液晶セルとで挟持される偏光板面と反対面に本発明の光学フィルムを具備していることが好ましい。このような構成を有する液晶表示装置は、表示ムラの抑制に優れ、高い表示性能を発揮する。
 また、本発明の液晶表示装置は、好ましくは、視認側に配置された偏光板が視認側の光学フィルム表面上にハードコート層を有する光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムを有している。このような構成を有する液晶表示装置は、表示ムラの抑制に優れた高い表示性能に加えて、優れた耐擦傷性と光耐久性を発揮する。
 本発明の液晶表示装置として、典型的な液晶表示装置の内部構成を図1および図2に示した。図1には、セルロースアシレートフィルムからなる本発明の光学フィルム31aおよび31bが偏光子32の両表面に配置された偏光板21Aおよび21Bを有する液晶表示装置が図示されている。また、図2には、視認側に配置された偏光板21Bが偏光子32の視認側表面にセルロースアシレートフィルム311aを介してハードコート層311bを有する光学フィルム31a’を具備する液晶表示装置が図示されている。
 なお、図1および図2は、本発明の液晶表示装置の一例についての構成を示したものであり、本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく任意の構成を採用できる。また、特開2008-262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
 以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本発明が限定して解釈されるものではない。
〔一般式(A)で表される化合物の合成〕
 本発明における一般式(A)で表される化合物を以下のようにして合成した。
 代表的な化合物の合成例を以下に示す。
 なお、得られた化合物の構造は、H-NMRスペクトル、マススペクトルで確認した。
合成例1
 以下の反応スキームで例示化合物(2-7)を合成した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
1)中間体(S-2)の合成
 温度計、還流冷却管および撹拌機を付した1000mLの三口フラスコにN,N’-ジメチルバルビツール酸(S-1)25g(0.16mol)とイソフタルアルデヒド10.7g(0.08mol)、酢酸400mLを加え、さらに硫酸2mLを加えて外温150℃で3時間加熱攪拌した。その後、減圧下で酢酸を300mL留去した。得られた反応溶液を室温まで冷却し、メタノール500mLを加えた後に、10℃以下で1時間攪拌し、析出した結晶を、吸引ろ過してろ取し、メタノールで洗浄することにより、中間体(S-2)を淡黄色固体として31g(収率94%)得た。
2)例示化合物(2-7)の合成
 温度計、還流冷却管および撹拌機を付した1000mLの三口フラスコに中間体(S-2)20.5g(0.050mol)、酢酸500mLを加え、120℃になるように加熱撹拌した。ここに、亜鉛粉末49g(0.75mol)を発熱発泡に注意しながら少量ずつゆっくりと添加した。そのまま3時間加熱還流を続けた後に、減圧下で酢酸を400mL留去した。得られた反応溶液を室温まで冷却後、酢酸エチル、食塩水で分液し、目的物を有機層に抽出した。さらに、得られた有機層を食塩水で洗浄した後に、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、例示化合物(2-7)を白色固体として得た(8g、収率39%)。
 得られた化合物の構造は、H-NMRスペクトルおよびマススペクトルで確認した。
H-NMR(300MHz、DMSO-d)、δ:7.20(t,1H)、6.89(d,2H)、6.74(s,1H)、4.00(s,2H)、3.20(d,4H)、3.01(s,12H)
マススペクトル:m/z 415(M+H)
合成例2
 以下の中間体(S-3)を経由して例示化合物(2-6)を合成した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
1)中間体(S-3)の合成
 N,N’-ジメチルバルビツール酸とテレフタルアルデヒドを用いて例示化合物(2-7)の中間体(S-2)の合成と同じようにして対応する中間体(S-3)を得た。
2)例示化合物(2-6)の合成
 温度計、還流冷却管および撹拌機を付した1000mLの三口フラスコに中間体(S-3)14.4g(0.035mol)、酢酸500mLを加え、120℃になるように加熱撹拌した。ここに、亜鉛粉末34.3g(0.53mol)を発熱発泡に注意しながら少量ずつゆっくりと添加した。そのまま3時間加熱還流を続けた後に、反応溶液を熱時ろ過した。得られたろ液を、減圧下で酢酸を400mL留去した。得られた残渣にメタノールを添加して再結晶することで、例示化合物(2-6)を白色固体として得た(10g、収率69%)。
 得られた化合物の構造はマススペクトルで確認した。
マススペクトル:m/z 415(M+H)
合成例3
 以下の反応スキームで例示化合物(1-6)を合成した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
1)中間体(S-4)の合成
 500mLの三口フラスコにアニリン18.6g、THF200mLを加え、氷冷下撹拌しているところへキシリレンジイソシアネート18.8gをゆっくりと加えた。滴下後、室温に戻した反応溶液を2時間攪拌した後に、ヘキサン200mLを加え、結晶(S-4)をろ別した。この中間体(S-4)はこれ以上の精製は行わず、次工程に用いた。
2)例示化合物(1-6)の合成
 中間体(S-4)とマロン酸ジエチルを用いて例示化合物(1-6)を合成した。
 温度計、還流冷却管および撹拌機を付した300mlの三口フラスコに中間体(S-4)18.7g、マロン酸ジエチル17.6g、20%ナトリウムエトキシド/エタノール溶液102.1g(0.30mol)を仕込み、加熱還流下で4時間攪拌した。その後、エタノールを一部留去した後、室温まで冷却し、酢酸エチル100mLを加えた。析出した固体を吸引濾過して濾取し、酢酸エチルで洗浄した。この固体(ナトリウム塩)を水100mLに溶解し、pH1となるように塩酸を滴下することで、析出させた。析出した固体を吸引ろ過して濾取し、水で洗浄した。さらにこの粗体を再結晶により精製することで、例示化合物(1-6)を白色固体として12.8g得た。
 得られた化合物の構造はマススペクトルで確認した。
マススペクトル:m/z 511(M+H)
合成例4
 中間体(S-4)を経由して例示化合物(1-7)を合成した。
 中間体(S-4)とベンジルマロン酸ジエチルを用いて、例示化合物(1-6)の合成におけるマロン酸ジエチルをベンジルマロン酸ジエチルに変更したほかは同様にして、例示化合物(1-7)を合成した。
 得られた化合物の構造は、マススペクトルで確認した。
マススペクトル:m/z 692(M+H)
合成例5
 合成例1におけるN,N’-ジメチルバルビツール酸(S-1)に変えて、N,N’-ジメチルバルビツール酸、N-ベンジル-N’-フェニルバルビツール酸を等量混合して用い、その他は同様にすることで、例示化合物(2-7)、(3-1)および(3-14)の混合物を合成した。この混合物は、各例示化合物を単離することなく、混合物のまま使用した。
 実施例で用いた上記以外の化合物は、上記と類似の方法または前述の文献に記載の方法もしくはこれに準じた方法により合成した。
実施例1
 以下のようにして、セルロースアシレートフィルム(光学フィルム)を作製し、フィルム硬度、ヘイズおよび光によるフィルム着色の耐久性(経時着色)を評価した。
<光学フィルム:単層のセルロースアシレートフィルムの製膜>
(セルロースアシレート溶液の調製)
 下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアシレート
                         100.0質量部
 下記表1に記載の添加剤              10.0質量部
 メチレンクロライド(第1溶媒)         353.9質量部
 メタノール(第2溶媒)              89.6質量部
 n-ブタノール(第3溶媒)             4.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ドラム流延装置を用い、上記のように調製した各セルロースアシレート溶液をそれぞれ流延した。ドープ中の残留溶媒量が略70質量%の状態で剥ぎ取り、残留溶媒量が3~5質量%の状態で乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、膜厚60μmの光学フィルムNo.101~105を得た。
 ここで、これらの光学フィルムは、以後において偏光板保護フィルムとも称す。
 また、一般式(A)で表される化合物を、以後において添加剤とも称す。
〔光学フィルムのフィルム硬度の評価〕
 フィッシャーインスツルメンツ(株)社製“フッシャースコープH100Vp型硬度計”を用い、圧子の短軸の向きを光学フィルム製膜時の搬送方向(長手方向;鉛筆硬度試験での試験方向)に対して平行に配置したヌープ圧子により、JIS Z 2251の方法に準じてフィルム硬度を評価した。具体的には、ガラス基板に固定したサンプル表面を負荷時間10秒、クリープ時間5秒、除荷時間10秒、最大荷重50mNの条件で測定し、押し込み深さから求められる圧子とサンプルとの接触面積と最大荷重の関係から硬度を算出し、5点の平均値をヌープ硬度の表面硬度とした。なお、JIS Z 2251はISO4545を基に作成した日本工業規格である。
 なお、同じ押し込み位置においてヌープ圧子を10°ずつ回転させて合計18方位(全方位)のヌープ硬度の測定を行ない、最小値を求めた。この最小値は、上記のヌープ圧子の短軸の向きを光学フィルム製膜時の搬送方向(長手方向;鉛筆硬度試験での試験方向)に対して平行に配置して測定した表面硬度と一致した。
 得られた表面硬度をフィルム硬度として、下記の基準に沿って評価した。
 この結果を下記表1に示した。
 A+:ヌープ硬度225N/mm以上
 A :ヌープ硬度215N/mm以上225N/mm未満
 B :ヌープ硬度205N/mm以上215N/mm未満
 C :ヌープ硬度190N/mm以上205N/mm未満
 D :ヌープ硬度190N/mm未満
〔ヘイズ評価〕
 上記で得られた各光学フィルム中のヘイズを測定し、下記A~Cの基準で評価し、下記表1に結果を示した。
 ヘイズの測定は、各光学フィルムをヘイズメーター“HGM-2DP”(商品名、スガ試験機(株)社製)を用い、JIS K-7136に従って測定した。
 A :ヘイズが0.3%未満
 B :ヘイズが0.3%以上0.7%未満
 C :ヘイズが0.7%以上
〔光によるフィルム着色の耐久性(経時着色)の評価〕
 上記のようにして作製した各光学フィルムに対して、スーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)社製、商品名:SX75)を用い、放射照度150W/m、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件で、120時間光照射を行った。その後、島津製作所の分光光度計UV3150を用いて色相bを測定した。色相bの値がマイナス側に大きくなると透過光は青味が増し、プラス側に大きくなると黄色味が増す。
 また、上記光照射前後での各光学フィルムのbの変化の絶対値をΔbとして光による着色の指標とし、下記基準に従って、A~Dで評価した。
 A :Δbが0.05以下
 B :Δbが0.05を超えて0.10以下
 C :Δbが0.10を超えて0.15以下
 D :Δbが0.15を超える
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000021
 ここで、比較化合物1は特開2011-118135号公報に記載の化合物である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
 上記表1から明らかなように、一般式(A)で表される化合物を有する本発明の光学フィルムは、高いフィルム硬度を有する。これは、本発明における一般式(A)で表される化合物はセルロースアシレートの分子鎖内の隙間に入り込みやすく、また一般式(I)中のヘテロ環構造部分が効果的にセルロースアシレートのアセチル基、ヒドロキシ基に作用して水素結合を形成し、セルロースアシレートの分子鎖の動きを抑制するためと考えられる。さらに本発明における一般式(A)で表される化合物は極性が高く、セルロースアシレートとの相溶性が良好であり、効率的にセルロースアシレートに作用するためと思われる。
 光学フィルムNo.101と103を比較すると、等モル数の添加剤を添加しても、本発明における一般式(A)で表される化合物は、高いフィルム硬度を発現していることがわかる。これは、硬度を向上させる機能をもつ一般式(I)中のヘテロ環構造を、一分子中に2ユニットもっているためであると考えられる。
 さらに光学フィルムNo.101と104を比較すると、一般式(I)で表わされる部分構造のユニット量が同じでも、本発明における一般式(A)で表される化合物は、比較化合物1を2倍使用したときよりも、さらに高いフィルム硬度を発現していることがわかる。
 これは、本発明における一般式(A)で表される化合物では、分子中に一般式(I)で表される部分構造のユニットが密に配置されており、一般式(I)中のヘテロ環構造が、セルロースアシレートのβ-グルコースと相互作用しやすいためと考えられる。これにより、同一の分子中の一般式(I)で表されるヘテロ環構造が、異なるセルロースアシレートポリマー鎖を架橋させるように光学フィルム中で相互作用できる、などの効果によると考えられる。しかも、本発明における一般式(A)で表される化合物は、比較化合物1と比較して、光による着色も抑制していることがわかる。
実施例2
 各添加剤の種類を下記表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムNo.201~209を作製した。また、各特性、物性の評価は実施例1と同様にして行った。
 なお、鉛筆硬度は、上記の各フィルムNo.201~209のセルロースアシレートフィルム(光学フィルム)に、さらに、下記のようにしてハードコート層を塗布することで作製したハードコート層付き光学フィルムを評価した。
<ハードコート層付き光学フィルムの作製>
 上記で作製した各セルロースアシレートからなる単層の光学フィルムの表面に下記の硬化性組成物のハードコート層溶液を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、厚み6μmのハードコート層を形成したハードコート層付き光学フィルムをそれぞれ作製した。
 なお、下記表2および以後の実施例では、単層の光学フィルムNo.と、これに対応するハードコート層付き光学フィルムNo.に共通のフィルムNo.を付けて表している。
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ハードコート層溶液の組成
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 モノマー ペンタエリスリトールトリアクリレート/
   ペンタエリスリトールテトラアクリレート(混合質量比3/2)
                          53.5質量部
 UV重合開始剤 IrgacureTM907
   (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製) 1.5質量部
 酢酸エチル                      45質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
〔鉛筆硬度評価〕
 各ハードコート層付き光学フィルムを、25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS-S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS-K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い測定した。具体的には、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆でハードコート層表面を5回繰り返し引っ掻き、傷が1本できるまでの硬度を測定した。
 ここで、JIS-K5400で定義される傷は塗膜の破れ、塗膜のすり傷であり、塗膜のへこみは対象としないと記載されている。ただし、本評価では、塗膜のへこみも含めて傷と判断した。
 偏光板耐久性の評価は、ハードコート層付き光学フィルム作製前光学フィルムNo.201~209を偏光板保護フィルムとして使用し、これらを鹸化処理し、以下のようにして、偏光板を作製して評価した。
<偏光板の作製>
(偏光板保護フィルムの鹸化処理)
 ハードコート層付き光学フィルム作製前の光学フィルムNo.201~209を偏光板保護フィルムとして使用した。これらの各偏光板保護フィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。その後、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、各偏光板保護フィルムに対して表面の鹸化処理を行った。
(偏光板の作製)
 延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
 上記の鹸化処理した各偏光板保護フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)社製)も同様の鹸化処理を行った。ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理した上記の偏光板保護フィルムが貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に、鹸化処理済みの上記市販のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
 この際、偏光子の透過軸と、上記の鹸化処理済みの偏光板保護フィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。また、偏光子の透過軸と鹸化処理済みの市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸についても、直交するように配置した。
 このようにして光学フィルムNo.201~209に対応する各偏光板を作製した。
〔偏光板耐久性の評価〕
 偏光板耐久性試験は、偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けた状態で、次のように行った。
 ガラス上に、本発明の光学フィルムが空気界面側になるように偏光板を貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作製した。単板直交透過率測定では、このサンプルにおける本発明の光学フィルムの側を光源に向けてセットして測定した。2つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を本発明の偏光板の直交透過率とした。偏光板の直交透過率は、日本分光(株)社製、自動偏光フィルム測定装置VAP-7070を用いて380nm~780nmの範囲で測定し、410nmにおける測定値を採用した。その後、80℃、相対湿度90%の環境下で120時間経時保存した後に、同様の方法で直交透過率を測定した。経時前後の直交透過率の変化を求め、[(経時前後の直交透過率の変化量)/経時前の直交透過率]×100から変化率を算出した。この変化率を偏光板耐久性として下記基準で評価した。
 なお、調湿なしの環境下での相対湿度は、0~20%の範囲であった。
-評価基準-
 A :経時前後の直交透過率の変化率が0.7%未満
 B :経時前後の直交透過率の変化率が0.7%以上0.8%未満
 C :経時前後の直交透過率の変化率が0.8%以上1.0%未満
 D :経時前後の直交透過率の変化率が1.0%以上
 これらの結果をまとめて、下記表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000023
 ここで、添加剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対する質量部である。
 また、比較化合物2は特開2002-322294号公報に記載の化合物である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
 上記表2から、一般式(A)で表される化合物を使用した本発明の光学フィルムは、表面硬度の指標となるヌープ硬度(フィルム硬度)が高く、光による光学フィルムの経時着色が少なく、ヘイズ値も低いことがわかった。また、ハードコート層付きの光学フィルムでは、鉛筆硬度も高く、高温高湿条件下での偏光板耐久性にも優れていた。
 これに対し、比較化合物1では、光による光学フィルムの経時着色が大きく、光学フィルムNo.209との比較から、比較化合物1を加えることにより悪化していることがわかる。一方、比較化合物2では、フィルム硬度、鉛筆硬度がともに低く、添加剤を加えずに作製した光学フィルムNo.209と同程度の硬度であった。さらに、偏光板耐久性も劣った。
実施例3
 実施例1と同様にして、セルロースアシレートのアセチル置換度、各添加剤の種類、膜厚とを下記表3のように変更した以外は、実施例1と同様にして、光学フィルムを作製した。
 各特性、物性の評価は、フィルム硬度の評価以外は実施例1および2と同様にして行った。
〔光学フィルムのフィルム硬度の評価〕
 それぞれの光学フィルムのヌープ硬度(表面硬度)の値について、添加剤を加えずに作製した光学フィルムのヌープ硬度の値と比較して、下記の基準で評価した。
 表面硬度の評価に際しては、膜厚40μm以下の光学フィルムについては、押し込み荷重を50mNから20mNに変更して測定した。
 A :添加剤を加えなかった場合のヌープ硬度の値の1.15倍以上
 B :添加剤を加えなかった場合のヌープ硬度の値の1.05倍以上1.15倍未満
 C :添加剤を加えなかった場合のヌープ硬度の値の1.00倍以上1.05倍未満
 D :添加剤を加えなかった場合のヌープ硬度の値の1.00倍未満
 得られた結果を、下記表3にまとめて示す。
 なお、上記のヌープ硬度の評価は、下記表3では、フィルム硬度として示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000025
 ここで、添加剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対する質量部である。
 上記表3から明らかなように、本発明における一般式(A)で表される化合物はいずれも、セルロースアシレートの置換度にも、また、薄膜化にも依存することなく、好ましいフィルム硬度を発現できることがわかった。また、偏光板耐久性も良好であった。
 また、一般式(A)で表される化合物を含む本発明の光学フィルムは、偏光板耐久性も良好で、ヘイズ抑制にも優れ、光による光学フィルムの経時着色も少なかった。
実施例4
 以下のようにして、偏光板耐久性の評価を行った。
(セルロースアシレートの調製)
 総アセチル置換度(B)2.87のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
(表層用ドープの調製)
・セルロースアシレート溶液の調製
 下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
                         100.0質量部
 第一工業化学社製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
                           9.0質量部
 イーストマン・ケミカル社製SAIB-100(可塑剤)
                           3.0質量部
 メチレンクロライド(第1溶媒)         353.9質量部
 メタノール(第2溶媒)              89.6質量部
 n-ブタノール(第3溶媒)             4.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 なお、第一工業化学社製モノペット(登録商標)SBはショ糖の安息酸エステルであり、イーストマン・ケミカル社製SAIB-100はショ糖の酢酸およびイソ酪酸エステルである。
・マット剤溶液の調製
 下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
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マット剤溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
 日本アエロジル(株)社製)             2.0質量部
 メチレンクロライド(第1溶媒)          69.3質量部
 メタノール(第2溶媒)              17.5質量部
 n-ブタノール(第3溶媒)             0.9質量部
 上記セルロースアシレート溶液            0.9質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・紫外線吸収剤溶液の調製
 下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
紫外線吸収剤溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 下記紫外線吸収剤(UV-1)           20.0質量部
 メチレンクロライド(第1溶媒)          61.0質量部
 メタノール(第2溶媒)              15.4質量部
 n-ブタノール(第3溶媒)             0.8質量部
 上記セルロースアシレート溶液           12.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000026
 上記マット剤溶液1.3質量部と、紫外線吸収剤溶液3.4質量部を、それぞれ濾過後にインラインミキサーを用いて混合し、さらにセルロースアシレート溶液を95.3質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合し、表層用溶液を調製した。
(基層用ドープの調製)
・セルロースアシレート溶液の調製
 下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、基層用ドープを調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
 総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
                         100.0質量部
 第一工業化学社製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
                           9.0質量部
 イーストマン・ケミカル社製SAIB-100(可塑剤)
                           3.0質量部
 例示化合物(1-2)                4.0質量部
 紫外線吸収剤(UV-1)              2.0質量部
 メチレンクロライド(第1溶媒)         297.7質量部
 メタノール(第2溶媒)              75.4質量部
 n-ブタノール(第3溶媒)             3.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
(流延)
 ドラム流延装置を用い、上記のように調製した基層用ドープと、その両側に表層用ドープとを3層同時にステンレス製の流延支持体(支持体温度-9℃)に流延口から均一に流延した。各層のドープ中の残留溶媒量が略70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、残留溶媒量が3~5質量%の状態で、幅方向に1.28倍(28%)延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、本発明の光学フィルムNo.401を作製した。得られた光学フィルムNo.401の厚みは60μm、幅は1480mmであった。
 上記光学フィルムNo.401において、例示化合物(1-2)の代わりに、添加剤の種類および添加量を後述の表4に記載のように変更した以外は光学フィルムNo.401と同様にして、本発明の光学フィルムNo.402~420および比較の光学フィルムNo.421~423をそれぞれ作製した。
 さらに、上記光学フィルムNo.401において、モノペット(登録商標)SBおよびSAIB-100の代わりに、重縮合エステル系可塑剤である下記重縮合ポリマー(A)を12質量部添加した以外は光学フィルムNo.401と同様にして、本発明の光学フィルムNo.501を作製した。この光学フィルムNo.501において、例示化合物(1-2)の代わりに、添加剤の種類を後述の表4に記載のように変更した以外は光学フィルムNo.501と同様にして、光学フィルムNo.502~504をそれぞれ作製した。
 重縮合ポリマー(A):アジピン酸とエタンジオールからなるポリエステル(末端はヒドロキシ基)(数平均分子量=1000)
 同様に上記光学フィルムNo.401において、得られる光学フィルムの膜厚が25μm、幅は1480mmになるように流延、乾燥し、本発明の光学フィルムNo.601を作製した。この光学フィルムNo.601において例示化合物(1-2)の代わりに、添加剤の種類を後述の表4に記載のように変更した以外は光学フィルムNo.601と同様にして、光学フィルムNo.602~604をそれぞれ作製した。
 上記光学フィルムNo.501において、例示化合物(1-2)の代わりに、添加剤の種類および添加量を後述の表4に記載のように変更した以外は光学フィルムNo.501と同様にして、本発明の光学フィルムNo.701~707をそれぞれ作製した。
〔ヘイズ評価、光によるフィルム着色の耐久性(経時着色)の評価〕
 実施例1と同様の評価方法と評価基準で評価した。
〔揮散性の評価法〕
 TG/DTA測定装置(TG/DTA7200 エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用い、本発明における一般式(A)で表される化合物を室温から140℃に昇温し、140℃で1時間保持した時の添加剤の質量の変化率(昇温前の質量に対する変化率)を測定し、下記の基準で評価した。
 なお、下記表4においては、評価AおよびBを「なし」、評価Cを「あり」として表記した。
 A :質量の変化率が0.1%未満
 B :質量の変化率が0.1%以上0.2%未満
 C :質量の変化率が0.2%以上
 上記で作製した各光学フィルムを使用して、フィルムNo.401~423、501~504、601~604、701~707に対応する偏光板を作製し、偏光板の耐久性を評価した。
<偏光板の作製>
(偏光板保護フィルムの鹸化処理)
 上記で作製したフィルムNo.401~423、501~504、601~604、701~707の光学フィルムからなる各偏光板保護フィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥し、鹸化処理した各偏光板保護フィルムを作製した。
(偏光板の作製)
 鹸化処理した上記の各偏光板保護フィルムを使用した以外は、実施例2と同様にして、光学フィルムNo.401~423、501~504、601~604、701~707に対応する偏光板を作製した。
〔偏光板耐久性の評価〕
 上記で作製した各偏光板を実施例2と同様にして耐久性試験を行った。
 ここで、フィルムNo.401~423、501~504、701~707に対応する偏光板は、実施例2と同じ経時条件と評価基準で評価した。
 フィルムNo.601~604に対応する偏光板は、下記の経時条件と評価基準で評価した。
-経時条件-
 60℃、相対湿度95%の環境下で1000時間
 A :経時前後の直交透過率の変化率が0.4%未満
 B :経時前後の直交透過率の変化率が0.4%以上0.6%未満
 C :経時前後の直交透過率の変化率が0.6%以上0.8%未満
 D :経時前後の直交透過率の変化率が0.8%以上
 得られた結果を、まとめて下記表4に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000027
 ここで、添加剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対する質量部である。
 上記表4の結果から、本発明における一般式(A)で表される化合物を含有する本発明の光学フィルムである偏光板保護フィルムは、添加剤を加えずに作製したフィルムNo.423、504、604と比べて、いずれも経時での偏光板耐久性に優れ、偏光子の劣化を効果的に抑制しうるものであることがわかった。さらに、光による経時着色が少なかった。
 これに対し、上記の比較化合物1や2を含む光学フィルムである偏光板保護フィルムでは、偏光板耐久性または光による経時着色抑制の改良効果が得られなかった。
 さらに、比較化合物1、2では揮散性が高く、製造時の工程汚染の観点で問題があると想定される。なかでも比較化合物2ではセルロースアシレートとの相溶性も低く、フィルムのヘイズ値が大きくなってしまっていた。これと比較して、本発明における一般式(A)で表される化合物はいずれもセルロースアシレートとの相溶性も高いために、揮散性が低く、光学フィルムのヘイズ値も小さく、良好であった。
 本発明における一般式(A)で表される化合物も比較の化合物も含まない比較の光学フィルムである偏光板保護フィルムでは、いずれも、本発明の光学フィルムである偏光板保護フィルムと比較して、偏光板耐久性において劣った。
 この結果、本発明の偏光板を使用することで、以上に示したような優れた性能の液晶表示装置を作製できる。
 本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
 本願は、2013年7月10日に日本国で特許出願された特願2013-144547に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
21A、21B 偏光板
22 カラーフィルタ基板
23 液晶層(液晶セル)
24 アレイ基板
25 導光板
26 光源
31a、31a’、31b 光学フィルム(偏光板保護フィルム)
311a セルロースアシレートフィルム
311b ハードコート層
32 偏光子
 R 偏光方向

Claims (14)

  1.  セルロースアシレートおよび少なくとも1種の下記一般式(A)で表される化合物を含有する光学フィルム。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
     一般式(A)中、Lはn価の連結基を表し、nは2以上の整数を表し、Aは上記一般式(I)で表されるヘテロ環基を表す。
     一般式(I)中、R、RおよびRは各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。ただし、R、RおよびRのいずれかで、前記Lと結合する。
  2.  前記Lが、単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-S-、-NR-(Rは単結合、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアシル基を表す)、-C(=O)-、-SO-、-SO-、アレーントリイル基、ヘテロアレーントリイル基またはこれらの基を組み合わせてなる連結基である請求項1に記載の光学フィルム。
  3.  前記L、R、RおよびRにおける環構造数の総和が1~6である請求項1または2に記載の光学フィルム。
  4.  前記nが2である請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  5.  前記一般式(A)で表される化合物が、下記一般式(A-1)または(A-2)で表される請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
     一般式(A-1)、(A-2)中、R11、R12、R31、R32、R51およびR52は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。Xは、単結合または2価の連結基を表す。
  6.  前記Xがメチレン基を有し、該メチレン基中の炭素原子が、前記バルビツール酸骨格と結合している請求項5に記載の光学フィルム。
  7.  前記一般式(A)で表される化合物が、分子内中に有する>NH部分構造が3個以内である請求項1~6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  8.  前記セルロースアシレートの総アシル置換度Aが下記式を満足する請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
         1.5≦A≦3.0
  9.  前記セルロースアシレートのアシル基がアセチル基であり、総アセチル置換度Bが下記式を満足する請求項1~8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
         2.0≦B≦3.0
  10.  前記総アセチル置換度Bが、2.5以上2.97未満である請求項9に記載の光学フィルム。
  11.  少なくとも1種の可塑剤を含有する請求項1~10のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  12.  前記光学フィルムが、少なくとも2層からなり、前記セルロースアシレートおよび少なくとも1種の前記一般式(A)で表される化合物を含む層に、さらにハードコート層を有する請求項1~11のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  13.  偏光子と、該偏光子の少なくとも一方の面に請求項1~12のいずれか1項に記載の光学フィルムを有する偏光板。
  14.  請求項13に記載の偏光板と液晶セルを少なくとも有する液晶表示装置。
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