JP6238419B2 - 光学フィルム、それを用いた偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
しかも、液晶表示装置は益々多様な用途で過酷な使用条件でも耐えることに対する要求が高まり、年々、従来よりも高いレベルの耐久性が求められるようになってきている。
また、近年、TV用途を中心に液晶表示装置の大型化・薄型化が進んでおり、これに伴って構成部材である光学フィルムも薄型化が必要とされている。従来より、光学フィルムは加工性の観点からも適切な硬度、良好な裁断性が重要視されてきたが、薄型化した光学フィルムにはさらにその向上が求められるようになった。
例えば、光学フィルムのレターデーションが環境湿度による変動を抑制するために、pKaが2〜7の脂肪族もしくは芳香族のモノカルボン酸や有機リン酸(特許文献1参照)を、また、溶液製膜による樹脂フィルム製造時の支持体からの得られたフィルムの剥離の改良と偏光子の耐久性改良のために、カルボキシ基を2個有するイミノジ酢酸型の有機カルボン酸化合物(pKa5.5以下)を光学フィルムに含有させることが提案(特許文献2参照)されている。
しかも、これらの特許文献に記載の化合物は、セルロースアシレートとの相溶性が必ずしも十分でなく、長期の過酷な環境条件では、セルロースアシレートフィルムから揮散して、実効濃度が低下し、またヘイズが発生したりした。
従って、本発明は、高温高湿下での長期で過酷な条件下においてもフィルム中からの化合物の揮散性を抑制し、かつ偏光子耐久性が改善可能であり、同時に、セルロースアシレートを含む光学フィルムにおけるヘイズの発生を抑制した光学フィルム、それを使用した偏光板および液晶表示装置を提供することを課題とする。
このようにフィルムから化合物が揮散する現象は、フィルム中でこれらの化合物と共存するセルロースアシレートとの相溶性が必ずしも十分でないこと、または、加えられた化合物とセルロースアシレートとの相互作用が弱いことに基づくものと考えられた。
このために、pKaを高くした有機酸の添加によって初期の偏光子耐久性を改善し、セルロースアシレートとの相溶性を向上させ、本発明に至った。
<1>セルロースアシレートおよび少なくとも1種の下記一般式(I)で表される化合物を含有する光学フィルム。
<2>一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である<1>に記載の光学フィルム。
<3>R2が、アリール基またはシクロアルキル基が置換してもよいアルキル基である<1>または<2>に記載の光学フィルム。
<4>R2が、下記一般式(1)または(2)で表される<1>〜<3>のいずれか1つに記載の光学フィルム。
<8>可塑剤の少なくとも1種を含有する<1>〜<7>のいずれか1つに記載の光学フィルム。
<9>光学フィルムが、少なくとも2層からなり、セルロースアシレートおよび少なくとも1種の一般式(I)で表される化合物を含む層に、さらにハードコート層を有する<1>〜<8>のいずれか1つに記載の光学フィルム。
<10>偏光子と、この偏光子の少なくとも一方の面に<1>〜<9>のいずれか1つに記載の光学フィルムを有する偏光板。
<11> <10>に記載の偏光板と液晶セルを少なくとも有する液晶表示装置。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
本発明の光学フィルムは、セルロースアシレートおよび少なくとも1種の一般式(I)で表される化合物を含有する少なくとも1層のセルロースアシレートフィルムからなる。また、光学フィルムは、複数の層で構成されていてもよいが、一般式(I)で表される化合物はいずれの層に含まれていてもよく、全ての層に含まれていてもよい。
ハードコート層以外には、例えば、防眩層、クリアハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防汚層等が挙げられる。これらの層は、ハードコート層上に設けるのが本発明においては好ましい態様である。
本発明において、セルロースアシレートフィルムは上記のように、樹脂構成成分に占めるセルロースアシレートの割合が50質量%以上のフィルムからなるもので、本発明における狭義の光学フィルムである。
セルロースアシレートフィルムは、単層であっても、2層以上の積層体であってもよい。ただし、ここでの層は上述したような機能層を含まず、樹脂成分全体に対してセルロースアシレートを50質量%以上含む層を意味する。セルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体である場合は、2層構造または3層構造であることがより好ましく、3層構造であることが好ましい。3層構造の場合は、1層のコア層(すなわち、最も厚い層であり、以下、基層とも言う)と、コア層を挟むスキン層Aおよびスキン層Bとを有することが好ましい。すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムはスキン層B/コア層/スキン層Aの3層構造であることが好ましい。このような積層体は後述する共流延など、各種公知の流延法によって製造することができる。スキン層Bは、セルロースアシレートフィルムが溶液製膜で製造される際に、後述する金属支持体と接する層であり、スキン層Aは金属支持体とは逆側の空気界面の層である。なお、スキン層Aとスキン層Bを総称してスキン層(または表層)とも言う。
R1におけるアルケニル基は、炭素数が2〜30が好ましく、2〜24がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。
R1におけるアリール基は、炭素数が6〜30が好ましく、6〜24がより好ましく、6〜20がさらに好ましい。
R1におけるヘテロ環基は、5または6員環が好ましく、この環はベンゼン環が縮環していてもよい。またヘテロ環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選択された原子が好ましく、芳香環であっても芳香環でない不飽和環であっても、飽和環であっても構わない。ヘテロ環の炭素数は、0〜30が好ましく、1〜24がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。
R1におけるアルコキシカルボニル基の炭素数は2〜30が好ましく、2〜24がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。
R1におけるカルバモイル基は、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基のいずれであってもよく、炭素数は1〜30が好ましく、2〜24がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。
R1におけるアルキルスルホニル基は、炭素数が1〜30が好ましく、1〜24がより好ましく、1〜20がさらに好ましい。
R1におけるアリールスルホニル基は、炭素数が6〜30が好ましく、6〜24がより好ましく、6〜20がさらに好ましい。
このような置換基としては、特に制限はなく、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数0〜20のヘテロ環基で、環構成ヘテロ原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、5または6員環でベンゼン環やヘテロ環で縮環していてもよく、この環が飽和環、不飽和環、芳香環であってもよく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、
なお、これらの置換基は、R1、R3、R5、Ra各基が有してもよい置換基のみでなく、Lを含め、本明細書に記載の他の化合物における置換基にも適用される。
R2、Raにおけるアルキル基は、R1におけるアルキル基と好ましい範囲は同じであり、R2におけるアリール基は、R1におけるアリール基と好ましい範囲は同じである。
4価の基としては、アルカンテトライル基、アレーンテトライル基が挙げられる。
Lにおける2価以上の連結基は、置換基を有していてもよい。
ここで、アルキレン基は、炭素数1〜6が好ましく、1〜4が好ましく、1または2がさらに好ましく、1が中でも好ましい。具体的にはエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。
Lがアルキレン基の場合、R1はアシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基がより好ましい。
Lが単結合の場合、R1はアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が好ましく、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基がより好ましい。
Cy、Cy1およびCy2はフェニル基またはシクロヘキシル基が好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
uは1、2または3を表し、好ましい範囲はsおよびtと同じである。
R3はR2と同義であり、好ましい範囲も同じである。YはXと同義であり、好ましい範囲も同じである。
また、一般式(I)で表される化合物の25℃における、THF/H20=6/4の体積比の混合溶媒中でのpKaが、5.5を超えるものが好ましく、5.5を超え7.0未満、好ましくは6.5未満が好ましい。
カルボキシ基とアミノ基の1分子中における存在比率を調整することでこのような値とすることが可能となる。pKaを調製した一般式(I)で表される化合物を光学フィルムに組み込むことで、偏光子耐久性改良効果、ヘイズ抑制効果がより優れたものとなる。さらに、セルロースアシレートフィルムの光照射下での着色抑制や、ハードコート層などを設けた場合の密着性の改善効果も得ることができる。詳細な機構は定かではないが、本発明者らは、経時で、カルボキシ基が生じるカルボキシ基のプレカーサーを組み込むことが起因していると考えている。
このような含有量とすることで、本発明の効果である偏光子耐久性およびヘイズ上昇の抑制効果が十分に発現することとなる。
また、光学フィルム中に一般式(I)で表される化合物を2種類以上含有させる場合も、その合計量が、上記の範囲内であることが好ましい。
本発明において、セルロースアシレートフィルムの主成分となるセルロースアシレートは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。例えば、セルロースアシレートは、アシル置換基としてアセチル基のみからなるセルロースアセテートであっても、複数の異なったアシル置換基を有するセルロースアシレートを用いてもよく、異なったセルロースアシレートの混合物であってもよい。
本発明では、特に、セルロースアシレートのアシル基はアセチル基1種であるものが、一般式(I)で表される化合物による偏光子耐久性の改善効果に優れる点で、好ましい。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離のヒドロキシ基を有している。セルロースアシレートは、これらのヒドロキシ基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。
アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースのヒドロキシ基のアシル化の度合いを示すものであり、全てのグルコース単位の2位、3位および6位のヒドロキシ基がいずれもアシル化された場合、総アシル置換度は3である。例えば、全てのグルコース単位で、6位のみが全てアシル化された場合、総アシル置換度は1である。同様に、全グルコースの全ヒドロキシ基において、各々のグルコース単位で、6位か、2位のいずれか一方の全てがアシル化された場合も、総アシル置換度は1である。
すなわち、グルコース分子中の全ヒドロキシ基が全てアシル化された場合を3として、アシル化の度合いを示すものである。
アシル置換度の測定方法の詳細については、手塚他,Carbohydrate.Res.,273,83−91(1995)に記載の方法やASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
なお、本発明の一般式(I)で表される化合物は、総アセチル置換度Bが2.50を超えたセルロースアシレートに対して、特に効果が発現される。
本発明の光学フィルム中、特にセルロースアシレートフィルム中には、レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤)や、可塑剤として、重縮合エステル化合物(ポリマー)、多価アルコールの多価エステル、フタル酸エステル、リン酸エステルなど、さらには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤を加えることもできる。
なお、本明細書では、化合物群を標記するのに、例えば、リン酸エステル系化合物のように、「系」を組み込んで記載することがあるが、これは、上記の場合、リン酸エステル化合物と同じ意味である。
本発明ではレターデーション低減剤として、リン酸エステル系化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の非リン酸エステル系の化合物以外の化合物を広く採用することができる。
これらを添加する時期は、セルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程のどの工程でもよい。また、ドープ調製工程の最後の調製工程に、添加剤を添加して調製する工程を新たに加えてもよい。
各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
本発明の光学フィルムは、レターデーション値を発現するために、少なくとも1種のレターデーション発現剤を含有してもよい。
レターデーション発現剤としては、特に制限はないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、上記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。棒状または円盤状化合物では、少なくとも二つの芳香環を有する化合物がレターデーション発現剤として好ましい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
レターデーション発現剤の詳細は公開技報2001−1745の49頁に記載されている。
円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がさらに好ましい。
光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムでは、可塑剤をセルロースアシレートに含有させると、セルロースアシレートフィルムの含水率や透湿度が低下し、セルロースアシレートフィルム中の水分によるセルロースアシレートの加水分解反応が抑制される。さらに、可塑剤は、高温高湿条件下におけるセルロースアシレートフィルム中から偏光子層への添加剤の拡散を抑制し、偏光子性能の劣化を改良することができる。
以下に本発明に用いられる可塑剤について説明する。
重縮合エステル系可塑剤は、2価のカルボン酸化合物とジオール化合物を重縮合して得られる。
重縮合エステル系可塑剤は、下記一般式(a)で表される少なくとも1種のジカルボン酸および下記一般式(b)で表される少なくとも1種のジオールを重縮合して得られるものが好ましい。
一方、ジオール化合物も、上記一般式(b)で表される脂肪族化合物以外にも、芳香族もしくはヘテロ環の化合物が挙げられる。
また、数平均分子量が2000以下であればセルロースアシレートとの相溶性が高くなり、製膜時および加熱延伸時のブリードアウトの抑制に優れる。
炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れた偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10以下であればセルロースアシレートへの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜過程でブリードアウトの抑制に優れる。
ジオール化合物と、脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルには、脂肪族ジカルボン酸残基が含まれる。
重縮合エステル系可塑剤を合成する脂肪族ジカルボン酸は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合エステル系可塑剤を合成するジオールとしては、芳香族ジオールおよび脂肪族ジオールが挙げられ、本発明においては、少なくとも脂肪族ジオールを用いて合成されることが好ましい。
脂肪族ジオール残基の平均炭素数が7.0より小さいとセルロースアシレートとの相溶性が改善され、ブリードアウト、化合物の加熱減量の増大、およびセルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生の抑制に優れる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.5以上であれば合成が容易である。
重縮合エステル系可塑剤は、特開2012−234159号公報の段落番号0062〜0064に記載されているJ−1〜J−38が好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールエステル系可塑剤は、アルコール部が2個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールから導かれるエステルであり、アルコール部のアルコールとしては、ヒドロキシ基以外の部分が、エーテル結合を介して分断されてもよい飽和炭化水素にヒドロキシ基が2個以上置換したアルコールが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤の原料の多価アルコールは下記一般式(c)で表される。
Rα−(OH)m
このような多価アルコールとしては、糖アルコールやグリコール類が挙げられる。
具体的には、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
炭水化物誘導体系可塑剤としては、単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体、中でもアシル化されたものが好ましい。
炭水化物誘導体系可塑剤はピラノース構造あるいはフラノース構造を有することが好ましい。
なお、本発明では、可塑剤は、特開2012−234159号公報の段落番号0026〜0068に記載の内容が好ましく適用され、これらの段落番号に記載の内容は、本明細書の一部に、好ましく取り込まれる。
本発明の光学フィルムは、酸化防止剤を含むことが好ましい。この酸化防止剤はセルロースアシレート溶液に添加されることができる。本発明において、公知の酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤を用いることが好ましい。
酸化防止剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.05〜5.0質量部が好ましい。
本発明の光学フィルムは、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。この紫外線吸収剤はセルロースアシレート溶液に添加されることができる。本発明において、紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤は、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートフィルムの全固形分中に質量割合で1〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
本発明の光学フィルムは、フィルムのすべり性、および安定製造の観点からマット剤を加えてもよい。マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
無機化合物のマット剤は、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリンおよびリン酸カルシウム等が好ましく、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムがより好ましい。このうち、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できることから、二酸化ケイ素が特に好ましい。
有機化合物のマット剤は、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂およびアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120およびトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
さらには、ドープを流延する直前に添加混合(いわゆる直前添加方法)してもよい。直前添加方法での混合は、スクリュー式混練をオンラインで設置して行われる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。
特開2003−014933号公報には、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で、透明性に優れた位相差フィルムを作製することを目的とし、添加剤の添加方法が記載されている。これによれば、添加剤を溶解釜中に添加してもよいし、溶解釜〜共流延ダイまでの間で、添加剤や添加剤を溶解または分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよいが、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
〔弾性率(引張り弾性率)〕
セルロースアシレートフィルムは実用上十分な弾性率(引張り弾性率)を示す。弾性率の範囲は特に限定されないが、製造適性およびハンドリング性という観点から1.0〜7.0GPaが好ましく、2.0〜6.5GPaがより好ましい。本発明の一般式(I)で表される化合物は、セルロースアシレートフィルム中に添加されることにより、セルロースアシレートフィルムを疎水化することで弾性率を向上させる作用があり、その点も本発明における利点である。
セルロースアシレートフィルムの光弾性係数の絶対値は、好ましくは8.0×10−12m2/N以下、より好ましくは6×10−12m2/N以下、さらに好ましくは5×10−12m2/N以下である。セルロースアシレートフィルムの光弾性係数を小さくすることにより、セルロースアシレートフィルムを含む本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下におけるムラ発生を抑制できる。光弾性係数は、特に断らない限り、以下の方法により測定し算出するものとする。
光弾性率の下限値は特に限定されないが、0.1×10−12m2/N以上が実際的である。
セルロースアシレートフィルムの含水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は上記の一定温湿度に24時間放置した後に、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
セルロースアシレートフィルムの25℃、相対湿度80%における含水率は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下がさらに好ましく、3質量%未満がさらに好ましい。セルロースアシレートフィルムの含水率を小さくすることにより、セルロースアシレートフィルムを含む本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下における液晶表示装置の表示ムラの発生を抑制することができる。含水率の下限値は特に限定されないが、0.1質量%以上であることが実際的である。
セルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じ、温度40℃、相対湿度90%RHの雰囲気中、試料を24時間に通過する水蒸気の質量を測定し、試料面積1m2あたりの24時間に通過する水蒸気の質量に換算することにより評価することができる。
セルロースアシレートフィルムの透湿度は、500〜2000g/m2・dayが好ましく、900〜1300g/m2・dayがより好ましく、1000〜1200g/m2・dayが特に好ましい。
セルロースアシレートフィルムは、ヘイズが1%以下が好ましく、0.7%以下がより好ましく、0.5%以下が特に好ましい。ヘイズを上記上限値以下とすることにより、セルロースアシレートフィルムの透明性がより高くなり、光学フィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。ヘイズは、特に断らない限り、下記方法により測定し算出するものとする。ヘイズの下限値は特に限定されないが、0.001%以上が実際的である。
セルロースアシレートフィルム40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%の環境下で、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いて、JIS K7136に従って測定する。
セルロースアシレートフィルムの平均膜厚は、10〜100μmが好ましく、15〜80μmがより好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。15μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し、好ましい。また、70μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすい。
セルロースアシレートフィルムが3層以上の積層構造を有する場合、コア層の膜厚は3〜70μmが好ましく、5〜60μmがより好ましく、スキン層Aおよびスキン層Bの膜厚は、ともに0.5〜20μmがより好ましく、0.5〜10μmが特に好ましく、0.5〜3μmが最も好ましい。
セルロースアシレートフィルムの幅は、700〜3000mmが好ましく、1000〜2800mmがより好ましく、1300〜2500mmが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、溶融製膜法または溶液製膜法により製造することが好ましい。溶液製膜法(ソルベントキャスト法)による製造がより好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,492,078号、同第2,492,977号、同第2,492,978号、同第2,607,704号、同第2,739,069号および同第2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号および同第736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号および同62−115035号等の各公報を参考にすることができる。また、セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法および条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があり、本発明では、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があり、いずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルロースアシレート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
セルロースアシレートフィルムの形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、同時共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
また、上記金属支持体の材質については特に制限はないが、SUS製(例えば、SUS316)が好ましい。
セルロースアシレートフィルムの製造方法は、上記ドープ膜を金属支持体から剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの製造方法における剥離の方法については特に制限はなく、公知の方法でも剥離性を改善することができる。
セルロースアシレートフィルムの製造方法では、製膜された延伸する工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの延伸方向はセルロースアシレートフィルム搬送方向(MD方向)と搬送方向に直交する方向(TD方向)のいずれでも好ましいが、セルロースアシレートフィルム搬送方向に直交する方向(TD方向)であることが、後に続く、セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板加工プロセスの観点から特に好ましい。
セルロースアシレートフィルムの製造方法では、セルロースアシレートフィルムを乾燥する工程と、乾燥後のセルロースアシレートフィルムをガラス転移温度(Tg)−10℃以上の温度で延伸する工程とを含むことが、レターデーション発現性の観点から好ましい。
本発明の光学フィルムにおいて、セルロースアシレートフィルム上に所望により設けられるハードコート層は、本発明の光学フィルムに硬度や耐傷性を付与するための層である。例えば、塗布組成物をセルロースアシレートフィルム上に塗布し、硬化させることによって、本発明の一般式(I)で表される化合物と相俟ってセルロースアシレートフィルムと密着性の高いハードコート層を形成することができる。ハードコート層にフィラーや添加剤を加えることで、機械的、電気的、光学的な物理的な性能や撥水・撥油性などの化学的な性能をハードコート層自体に付与することもできる。ハードコート層の厚みは0.1〜6μmが好ましく、3〜6μmがさらに好ましい。このような範囲の薄いハードコート層を有することで、脆性やカール抑制などの物性改善、軽量化および製造コスト低減がなされたハードコート層を含む光学フィルムになる。
利用可能なマトリックス形成バインダー用モノマーまたはオリゴマーの例には、電離放射線硬化性の多官能モノマーおよび多官能オリゴマーが含まれる。多官能モノマーや多官能オリゴマーは架橋反応、または、重合反応可能なモノマーであるのが好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線で重合するものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等が挙げられる。
具体的には、(ジ)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、等が挙げられる。
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、特開2007−256844号公報の段落番号0096等を参考にすることができる。
具体的な化合物の具体例としては特開2007−256844号公報の段落番号0017等の記載を参考にすることができる。
ハードコート層は、高分子化合物を含有していてもよい。高分子化合物を添加することで、硬化収縮を小さくでき、また、樹脂粒子の分散安定性(凝集性)に関わる塗布液の粘度調整をより優位に行うことができる。これに加えて、乾燥過程での固化物の極性を制御して樹脂粒子の凝集挙動を変えたり、乾燥過程での乾燥ムラを減じたりすることもでき、好ましい。
ハードコート層の形成に利用可能な硬化性組成物の一例は、(メタ)アクリレート系化合物を含む硬化性組成物である。硬化性組成物は、(メタ)アクリレート系化合物とともに、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤を含有するのが好ましく、所望により、さらにフィラー、塗布助剤、その他の添加剤を含有していてもよい。硬化性組成物の硬化は、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により重合反応を進行させることで実行できる。電離放射線硬化と熱硬化の双方を実行することもできる。光および熱重合開始剤としては市販の化合物を利用することができ、それらは、「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)や、BASF(株)のカタログに記載されている。
本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルム上に形成されるハードコート層は、セルロースアシレートフィルムと高い密着性を有している。特に、本発明の一般式(I)で表される化合物を含有するセルロースアシレートフィルム上に上述の好適な硬化性組成物で形成されたハードコート層は、その硬化性組成物が、本発明の一般式(I)で表される化合物と相俟って、セルロースアシレートフィルムとさらに高い密着性で形成される。従って、このようなセルロースアシレートフィルムおよびハードコート層を有する本発明の光学フィルムは、光照射等によってもセルロースアシレートフィルムとハードコート層との密着性を維持し、光耐久性に優れる。
本発明の偏光板は、偏光子と本発明の光学フィルムとを少なくとも有する。本発明の光学フィルムは光によるフィルムの着色抑制効果に優れるため、偏光板保護膜として用いることが好ましい。本発明の偏光板は、偏光子と、この偏光子の片面または両面に本発明の光学フィルムを有することが好ましい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明の光学フィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。セルロースアシレートフィルムの処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光子層の透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸についての平行とは、偏光板保護フィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とが±10°の角度で交わっていることを意味する。この角度は、5°以内が好ましく、より好ましくは3°以内、さらに好ましくは1°以内、最も好ましくは0.5°以内である。
また、偏光子層の透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸についての直交とは、偏光板保護フィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とが90°±10°の角度で交わっていることを意味する。この角度は、90°±5°が好ましく、より好ましくは90°±3°、さらに好ましくは90°±1°、最も好ましくは90°±0.5°である。上記範囲とすることで、偏光板クロスニコル下での光抜けをより低減することができる。遅相軸の測定は、公知の種々の方法で測定することができ、例えば、複屈折計(KOBRADH、王子計測機器(株)製)を用いて行うことができる。
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと本発明の偏光板とを少なくとも有する。本発明の液晶表示装置において、偏光板、第一偏光板および第二偏光板を有する場合には、少なくとも一方が、本発明の偏光板であるIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、好ましくは、液晶セル(液晶層)と、液晶セルの両側に積層され、液晶セル側とは反対側の面に光学フィルムを具備する偏光板とを有している。すなわち、本発明の液晶表示装置は、第一偏光板、液晶セルおよび第二偏光板を有し、偏光板それぞれと液晶セルとで挟持される偏光板面と反対面に本発明の光学フィルムを具備しているのが好ましい。このような構成を有する液晶表示装置は、表示ムラの抑制に優れ、高い表示性能を発揮する。
また、本発明の液晶表示装置は、好ましくは、視認側に配置された偏光板が視認側の光学フィルム表面上にハードコート層を有する光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムを有している。このような構成を有する液晶表示装置は、表示ムラの抑制に優れた高い表示性能に加えて、優れた耐擦傷性と光耐久性を発揮する。
なお、図1および図2に、本発明の液晶表示装置の一例についての構成を示したが、本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できる。また、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
本発明の一般式(I)で表される化合物を以下のようにして合成した。
代表的な化合物の合成例を以下に示す。
なお、得られた化合物の構造は、1H−NMRスペクトル(300MHz)、マススペクトル(MALDI−TOF−MS)で確認した。
以下の反応スキームで例示化合物(1−1)を合成した。
MS(MALDI) Exact mass calculated for[C20H21NO6+H+]371.1 Found 371.2
得られた例示化合物のpKaの測定は、25℃で、THF(テトラヒドロフラン)/H20(水)=6/4の体積比の混合溶媒中でアルカリ滴定法により、電位差自動滴定測定〔AT−610:京都電子工業(株)製〕を用いて行った。
以下に、代表的な化合物のpKa値を示す。
例示化合物(1−1) 6.0
例示化合物(1−7) 6.4
例示化合物(4−1) 6.5, 8.1
(セルロースアシレートの調製)
総アセチル置換度Bが2.87のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し、40℃でアシル化反応を行った。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
・セルロースアシレート溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液101を調製した。
セルロースアシレート溶液101の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
下記表1に示す比較化合物(0−1) 4.0質量部
第一工業化学社製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
9.0質量部
イーストマン・ケミカル社製SAIB−100(可塑剤) 3.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 353.9質量部
メタノール(第2溶媒) 89.6質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 4.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液102を調製した。
マット剤溶液102の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 69.3質量部
メタノール(第2溶媒) 17.5質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 0.9質量部
セルロースアシレート溶液101 0.9質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液103を調製した。
紫外線吸収剤溶液103の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記紫外線吸収剤(UV−1) 20.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 61.0質量部
メタノール(第2溶媒) 15.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 0.8質量部
セルロースアシレート溶液101 12.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・セルロースアシレート溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、基層用ドープを調製した。
セルロースアシレート溶液201の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
第一工業化学社製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
9.0質量部
イーストマン・ケミカル社製SAIB−100(可塑剤) 3.0質量部
下記表1に示す比較化合物(0−1) 4.0質量部
紫外線吸収剤(UV−1) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 297.7質量部
メタノール(第2溶媒) 75.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 3.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドラム流延装置を用い、上記のように調製した基層用ドープと、その両側に表層用ドープとを3層同時にステンレス製の流延支持体(支持体温度−9℃)に流延口から均一に流延した。各層のドープ中の残留溶媒量が略70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、残留溶媒量が3〜5質量%の状態で、TD方向に1.28倍(28%)延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、比較の光学フィルムNo.101を得た。得られた光学フィルムNo.101の厚みは60μm、幅は1480mmであった。
ここで、これらの光学フィルムは、以後において偏光板保護フィルムとも称す。
このようにして得られた各光学フィルム中のヘイズを測定し、下記A+〜Cの基準で評価した。
ヘイズの測定は、各光学フィルムをヘイズメーター“HGM−2DP”(商品名、スガ試験機(株)製)を用い、JIS K−7136に従って測定した。
A+:ヘイズが0.1%未満
A :ヘイズが0.1%以上0.3%未満
B :ヘイズが0.3%以上0.7%未満
C :ヘイズが0.7%以上
光学フィルムNo.101〜106を偏光板保護フィルムとして使用し、これらの各偏光板保護フィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、各偏光板保護フィルムに対して表面の鹸化処理を行った。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
鹸化処理した各偏光板保護フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)も同様の鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理した偏光板保護フィルムが貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に、鹸化処理した市販のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
この際、偏光子の透過軸と、鹸化処理済みの偏光板保護フィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。また、偏光子の透過軸と鹸化処理済みの市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸についても、直交するように配置した。
このようにして光学フィルムNo.101〜106に対応する各偏光板を作製した。
偏光子耐久性試験は偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けた形態で次のように行った。
ガラスの上に偏光板を本発明のセルロースアシレートフィルムが空気界面側になるように貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作製した。
単板直交透過率の測定ではこのサンプルのフィルムの本発明のセルロースアシレートフィルムの側を光源に向けてセットして測定した。
2つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を本発明における偏光板の直交透過率とした。
偏光板の直交透過率は、日本分光(株)製、自動偏光フィルム測定装置VAP−7070を用いて380nm〜780nmの範囲で測定し、410nmにおける測定値を採用した。
その後、下記の条件で各偏光板を経時保存した後に同様の方法で直交透過率を測定した。
経時前後の直交透過率の変化率を、[(経時前の直交透過率と経時後の直交透過率の差分)/(経時前の直交透過率)]×100で、求め、これを偏光子耐久性として、下記基準で評価した。
なお、調湿なしの環境下での相対湿度は、0〜20%の範囲であった。
−経時条件−
80℃、相対湿度90%の環境下で250時間保存した。
A :経時前後の直交透過率の変化率が0.7%未満
B :経時前後の直交透過率の変化率が0.7%以上0.8%未満
C :経時前後の直交透過率の変化率が0.8%以上1.0%未満
D :経時前後の直交透過率の変化率が1.0%以上
TG/DTA測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TG/DTA7200)を用い、本発明の一般式(I)で表される化合物を室温から140℃に昇温し、140℃で1時間保持した時の各化合物の質量の変化率(昇温前の質量に対する変化率)を測定し、下記の基準で評価した。
A :質量の変化率が0.2%以下
B :質量の変化率が0.2%以上0.5%未満
C :質量の変化率が0.5%以上
一般式(I)で表される化合物の合成で測定した方法と同じ方法であり、以下のようにして測定した。
本発明の化合物および比較化合物に対して、25℃で、THF(テトラヒドロフラン)/H20(水)=6/4の体積比の混合溶媒中でのpKaを、アルカリ滴定法により、電位差自動滴定測定(AT−610:京都電子工業株式会社)を用いて行った。
一方、比較化合物(0−1)を含有する偏光板保護フィルムは、セルロースアシレートとの相溶性は示したが、揮散性抑制効果が不十分であった。
本発明の一般式(I)で表される化合物も比較の化合物も含まない比較の偏光板保護フィルム(フィルムNo.106)では、本発明の光学フィルムである偏光板保護フィルムと比較して、偏光子耐久性において劣っていた。この結果からも、本発明の一般式(I)で表される化合物がヘイズを上昇させることなく、偏光子耐久性を改善できることがわかった。
(ハードコート層付き光学フィルムの作製)
実施例1で作製した偏光板作製前の各光学フィルムの表面に下記の硬化組成物のハードコート層溶液を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、厚み6μmのハードコート層を形成したハードコート層付き光学フィルムを作製した。
なお、下記表2では、単層の光学フィルムNo.と、これに対応するハードコート層付き光学フィルムNo.に共通のフィルムNo.を付けて表している。
ハードコート層溶液の硬化組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
モノマー ペンタエリスリトールトリアクリレート/
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(混合質量比3/2)
53.5質量部
UV重合開始剤 IrgacureTM907
(BASF(株)製) 1.5質量部
酢酸エチル 45質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記で作製した各ハードコート層付き光学フィルムNo.101〜106について、JIS K 5600に準処した碁盤目試験を行った。具体的には、硬化済みハードコート層付き光学フィルムをXeで48時間照射した。Xeの照射後のハードコート層に1mm間隔で縦横に11本の切れ込みを入れて1mm角の碁盤目を100個作った。この上にセロハンテープおよびマイラーテープを貼り付け、素早く剥がし剥がれた箇所を目視観察により密着評価した。なお、Xeの照射はスガ試験機株式会社製のスーパーキセノンウェザーメーターSX75を用いた。
密着性は下記基準で評価した。評価が「B」以上であると、セルロースアセテートフィルムとハードコート層との密着性が高く、優れた光耐久性を発揮する。
A :剥がれ箇所0〜30マス
B :剥がれ箇所31〜50マス
C :剥がれ箇所51〜80マス
D :剥がれ箇所81マス以上
(光学フィルム:セルロースアシレートフィルムの作製および評価)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
例示化合物(1−7) 4.0質量部
下記紫外線吸収剤(UV−2) 2.0質量部
第一工業化学(株)製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
9.0質量部
イーストマン・ケミカル社製SAIB−100(可塑剤) 3.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 78.3質量部
メタノール(第2溶媒) 11.7質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
本発明のセルロースアシレートフィルムNo.202〜211および比較のセルロースアシレートフィルムNo.201を使用して、実施例1と同様にして、偏光板を作製し、偏光子の耐久性を評価した。
なお、偏光子の耐久性の評価は、下記の経時条件で行い、得られた結果を下記の評価基準により評価した。
60℃、相対湿度95%の環境下で650時間
A :経時前後の直交透過率の変化率が0.3%未満
B :経時前後の直交透過率の変化率が0.3%以上0.5%未満
C :経時前後の直交透過率の変化率が0.5%以上0.7%未満
D :経時前後の直交透過率の変化率が0.7%以上
実施例3におけるセルロースアシレートフィルムNo.202、204、211における可塑剤のモノペットSBおよびSAIB−100に変えて、下記可塑剤Pを、下記配合量用いて以外は実施例3と同様にして、対応するセルロースアシレートフィルムNo.302、304、311を作製し、実施例1と同様にして各偏光板を作製し、評価した。
フタル酸/エタンジオールの重縮合物
末端は酢酸エステル基で数平均分子量は800 10.0質量部
22 カラーフィルタ基板
23 液晶層(液晶セル)
24 アレイ基板
25 導光板
26 光源
31a、31a’、31b 光学フィルム(偏光板保護フィルム)
311a セルロースアシレートフィルム
311b ハードコート層
32 偏光子
R 偏光方向
Claims (11)
- 前記R2が、アリール基またはシクロアルキル基が置換してもよいアルキル基である請求項1または2に記載の光学フィルム。
- 前記セルロースアシレートの総アシル置換度Aが下記式を満足する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
1.5≦A≦3.0 - 前記セルロースアシレートのアシル基がアセチル基であり、総アセチル置換度Bが下記式を満足する請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
2.0≦B≦3.0 - 前記総アセチル置換度Bが、2.5以上2.97未満である請求項6に記載の光学フィルム。
- 可塑剤の少なくとも1種を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 前記光学フィルムが、少なくとも2層からなり、前記セルロースアシレートおよび少なくとも1種の前記一般式(I)で表される化合物を含む層に、さらにハードコート層を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 偏光子と、該偏光子の少なくとも一方の面に請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学フィルムを有する偏光板。
- 請求項10に記載の偏光板と液晶セルを少なくとも有する液晶表示装置。
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