JP5693689B2 - セルロースアシレートフィルム、それを用いた偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロースアシレートフィルム、それを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
セルロースアシレートフィルムは、液晶表示装置の光学部材、例えば、光学補償フィルムの支持体、偏光板の保護フィルム等として、種々の液晶表示装置に利用されている。
液晶表示装置は、TV用途等のように室内で使用する以外に、例えば、携帯デバイス等を中心に室外で使用される機会が増加している。このため、従来よりも高温高湿下での使用に耐えうる液晶表示装置の開発が求められている。
しかも、液晶表示装置は益々多様な用途で過酷な使用条件でも耐えることに対する要求が高まり、年々、従来よりも高いレベルの耐久性が求められるようになってきている。
一方、溶融製膜でセルロースアシレートフィルムを製造する際に生じる黄変(イエローネスインデックスの増大)を抑制するために、セルロースアシレートフィルムに酸化防止剤、劣化防止剤として特定のフェノール誘導体を組み込むことが提案(特許文献1参照)されている。
特開2006−241428号公報
本発明は、上記状況を鑑み、高温高湿など過酷な使用条件でも耐える液晶表示装置、それに使用されるセルロースアシレートフィルムを開発すべくなされたものである。
液晶表示装置を高温高湿下で使用すると、偏光子が収縮することによるムラが発生したり、偏光板の偏光性能が変化したりすることで、表示性能が低下してしまうという問題が発生した。しかも、溶融製膜で製造したセルロースアシレートフィルムの黄変防止と液晶表示装置を高温高湿下で使用する際の耐久性の向上とは作用因子も含め、異なった現象であるため、溶融製膜時で得られている知見を高温高湿下での液晶表示装置の表示性能の向上を目的としてそのまま適用することはできない。液晶表示装置に組み込まれて使用されている段階(特に高温高湿時や光照射時)での偏光子の耐久性の向上を実現できる従来の知見はなく、新たな解決手段の開発が必要であった。
本発明者等の検討によれば、従来の知見では、耐久性の向上と黄変等のセルロースアシレートフィルムの着色低減の両立には、技術的に高い壁があった。
従って、本発明は、このような状況下で、技術的に高い壁のある上記問題を解決するためになされたものであり、偏光子の耐久性を向上させ、経時での光による着色を大幅に低減することができ、液晶表示装置の表示性能の耐久性をより高めることができるセルロースアシレートフィルム、それを使用した偏光板および液晶表示装置を提供することを課題とする。
さらには該セルロースアシレートフィルムを使用した偏光板および液晶表示装置を提供することを課題とする。
本発明者等は、種々のフェノール系の化合物のラジカル安定性、反応性を含め、各種観点で検討したところ、セルロースアシレートフィルムに一般に酸化防止剤としてよく知られているフェノール性水酸基のオルト位に第三級アルキル基などの嵩高い置換基を有するヒンダードフェノール類では上記課題の解決には不十分であることがわかった。
この原因を検討したところ、フェノール性水酸基がラジカルになった場合のラジカル安定性よりもむしろフェノール性水酸基の反応性を残し、ラジカル安定性と反応性の調整が重要であることを見出した。
一方で、反応しやすいフェノール性水酸基を有する化合物は熱や光などのエネルギーを与えると酸化反応などにより分解するため、セルロースアシレートフィルムに組み込んだ際に着色などの原因となることがあり、実用的には大きな問題となる。
特に、偏光子の耐久性の改善と、耐光性の向上(経時での光照射時の着色の抑制)との両立を図るため、さらに検討を行った結果、本発明に至った。
すなわち、上記課題は、以下の手段により達成された。
(1)下記一般式(II)で表される化合物の少なくとも1種とセルロースアシレートを含有するセルロースアシレートフィルムと、偏光子とを少なくとも有する偏光板であって、前記セルロースアシレートフィルム中、前記の一般式(II)で表される化合物の含有量が、セルロースアシレート100質量部に対して0.1〜20質量部である、偏光板
Figure 0005693689
[一般式(II)中、R、R、RおよびRは各々独立に置換もしくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基であるか、または該R とR 、および/または、R とR が、互いに結合して炭素数5〜12のシクロアルキル基を形成する基である。R置換もしくは無置換の炭素数1〜25の脂肪族基または炭素数1〜20のアルコキシ基である]
(2)前記R が、下記一般式(1)で表される基である(1)に記載の偏光板。
Figure 0005693689
[一般式(1)中、R 5a 、R 5b およびR 5c は各々独立に水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族基または芳香族基を表す。]
(3)前記セルロースアシレートのアシル置換度(A)が、下記式を満足する(1)または(2)に記載の偏光板
1.5≦A≦3.0
)前記セルロースアシレートのアシル基がアセチル基であり、アセチル置換度(B)が、下記式を満足する(1)〜()のいずれかに記載の偏光板
2.0≦B≦3.0
)さらに、可塑剤として、重縮合エステル化合物の少なくとも1種を含有する(1)〜()のいずれかに記載の偏光板
)前記重縮合エステル化合物が、下記一般式(a)で表される少なくとも1種のジカルボン酸および下記一般式(b)で表される少なくとも1種のジオールを重縮合して得られる()に記載の偏光板
一般式(a)
HOC(=O)−X−CO
一般式(b)
HO−Z−OH
[一般式(a)、(b)中、Xは2価の炭素数2〜18の脂肪族基または2価の炭素数6〜18の芳香族基を表し、Zは2価の炭素数2〜8の脂肪族基を表す。]
)前記重縮合エステル化合物の数平均分子量が、500〜2000である()または()に記載の偏光板
)前記重縮合エステル化合物の末端が封止されている()〜()のいずれかに記載の偏光板
)さらに、可塑剤として、単糖または2〜10個の単糖単位からなる炭水化物化合物の少なくとも1種を含有する(1)〜()のいずれかに記載の偏光板
10
前記炭水化物化合物が、アルキル基、アリール基またはアシル基で置換されている()に記載の偏光板
11)前記炭水化物化合物が、アシル基によって置換されている(10)に記載の偏光板。
(12)前記(1)〜(11)のいずれかに記載の偏光板と液晶セルを少なくとも有する液晶表示装置。
本発明により、偏光子の耐久性を向上させ、経時での光による着色を大幅に低減することができ、液晶表示装置の性能をより高めることができるセルロースアシレートフィルム、該セルロースアシレートフィルムを使用した偏光板および液晶表示装置を提供することができる。
液晶表示装置の内部構造を模式的に示した分解斜視図の一例である。 共流延用ダイを用いて同時共流延により3層構造のセルロースアシレートフィルムを流涎するときの一例を示す概略図である。
以下、本発明について、実施の形態を挙げて詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各基として説明する基は置換もしくは無置換の基、例えば、アルキル基は置換基を有してもよいアルキル基、を意味し、脂肪族基は、直鎖、分岐もしくは環状の脂肪族基で、飽和であっても不飽和(芳香環となることはない)であっても、置換基を有していてもよい。
<<セルロースアシレートフィルム>>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、下記一般式(I)で表される化合物とセルロースアシレートを含有する。
該セルロースアシレートフィルムは、偏光子の劣化を抑制する効果を発現でき、保護フィルムとしての使用に適する。
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムに含有するもしくは利用可能な材料について詳細に説明する。
<1 一般式(I)で表される化合物>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、下記一般式(I)で表される化合物を含有する。
Figure 0005693689
一般式(I)中、R、R、RおよびRは各々独立に置換もしくは無置換の脂肪族基を表す。ここで、RとR、および/または、RとRが、互いに結合して環を形成してもよい。Rは置換基を表し、nは0〜3の整数を表す。
、R、RおよびRは置換もしくは無置換の脂肪族基を表すが、該脂肪族基としては、直鎖、分岐もしくは環状の脂肪族基で、飽和であっても不飽和(芳香環となることはない)であっても、置換基を有していてもよい。
脂肪族基は、置換基を有してもよく、このような置換基は後述の置換基として示した置換基が挙げられ、このうち、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、アルキル基の中でも、n−アルキル基がさらに好ましい。
脂肪族基の炭素数は1〜18が好ましく、1〜16がより好ましく、1〜12がさらに好ましい。RとRの一方、RとRの一方は、炭素数が2〜18が好ましく、3〜16がより好ましく、RとRの残りの一方、RとRの残りの一方はメチル基が好ましい。
とR、RとRは互いに結合して環を形成してもよく、本発明の好ましい態様の一つである。形成される環は、脂環が好ましい。このような脂環は3〜12員環が好ましく、3〜10員環がより好ましく、5〜12員環がさらに好ましく、5または6員環が中でも好ましく、6員環が最も好ましい。
脂環は飽和環であっても不飽和環であってもよいが、飽和環が好ましい。
また、形成された環は、置換基を有してもよいが、無置換が好ましい。
ここで、置換基としては、特に制限はなく、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数0〜20のヘテロ環基で、環構成ヘテロ原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、5または6員環でベンゼン環やヘテロ環で縮環していてもよく、該環が飽和環、不飽和環、芳香環であってもよく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、炭素数は20以下が好ましく、例えば、アセチル、ピバロイル、アクリロイル、メタクリロイル、ベンゾイル、ニコチノイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20で、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜20で、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ、1−ピロリジニル、ピペリジノ、モルホニル等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数0〜20で、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20で、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチンアミド等)、シアノ基、水酸基、メルカプト基またはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
nは1または2が好ましく、1が特に好ましい。また、nが1の場合、フェノール性水酸基のパラ位にRを有するものが好ましい。
は置換基を表すが、該置換基は前記の置換基が挙げられる。Rの置換基は、分岐構造や環構造、および不飽和結合を有していてもよい。置換基の炭素数は2〜25であることが好ましく、4〜20であることがより好ましく、6〜15であることがさらに好ましい。
の置換基は、置換基中に不飽和結合を含まないことが好ましい。
の置換基は、前記の置換基のうち、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
本発明において、Rにおけるアルキル基を含む脂肪族基は、一般式(I)中のベンゼン環に結合する炭素原子が、sp炭素原子(不飽和結合手を有さない炭素原子)であることが好ましい。このような構造とすることで、該炭素原子上におけるラジカルの発生が抑制される。すなわち、p−ベンゾキノンの生成が抑制される観点から、Rにおけるアルキル基を含む脂肪族基は、一般式(I)中のベンゼン環に結合する炭素原子が、第三級炭素または第四級炭素原子(水素原子を1個または有さない炭素原子)が好ましく、中でも第四級炭素原子(水素原子を有さない炭素原子)が好ましい。
におけるアルキル基を含む脂肪族基は、不飽和結合を持たないことが好ましく、p−ベンゾキノンの生成が抑制される観点から、第三級炭素または第四級炭素であることがより好ましく、第四級炭素であることがさらに好ましい。
の置換基は、下記一般式(1)で表される基が好ましい。
Figure 0005693689
一般式(1)中、R5a、R5bおよびR5cは各々独立に水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族基または芳香族基を表す。
5a、R5bおよびR5cにおける置換もしくは無置換の脂肪族基は、R、R、R、Rにおける置換もしくは無置換の脂肪族基が挙げられる。
5a、R5bおよびR5cにおける芳香族基は、炭素数6〜12が好ましく、フェニル基がより好ましい。
5a、R5bおよびR5cは、置換もしくは無置換の脂肪族基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
5a、R5bおよびR5cのうち、いずれか1つが水素原子であるか、いずれもアルキル基である場合が、好ましく、いずれもがメチル基であるものが特に好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)または(III)で表される化合物がより好ましい。これらの一般式で表される化合物のうち、一般式(II)で表される化合物がさらに好ましく、この一般式(II)で表される化合物は、下記一般式(IIa)で表される化合物が特に好ましい。
Figure 0005693689
Figure 0005693689
Figure 0005693689
一般式(II)、(III)、(IIa)において、R〜Rは前記一般式(I)のR〜Rと同義であり好ましい範囲も同じである。R5a、R5bおよびR5cは、前記一般式(1)のR5a、R5bおよびR5cと同義であり好ましい範囲も同じである。
およびRは各々独立に置換基を表す。置換基としては、前述の置換基が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物の分子量は200〜1200であることが好ましく、250〜800であることがより好ましく、300〜600であることが特に好ましい。
分子量が200以上であると、フィルムからの揮散が抑制されるという観点で好ましい。分子量が1200以下であると、ヘイズ抑制の観点で好ましい。
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005693689
Figure 0005693689
Figure 0005693689
Figure 0005693689
Figure 0005693689
Figure 0005693689
Figure 0005693689
ここで、上記化合物の具体例中のMeはメチル基を表す。
一般式(I)で表される化合物は、例えばJ.Chem.Soc.,Perkin Trans.,1,257(1997)に記載の酸触媒の存在下でフェノール誘導体と二重結合を含有する化合物あるいはアルコール性水酸基を含有する化合物とを反応させることにより得ることができる。酸触媒としては、CFSOH、AlCl、FeCl、Amberlyst(R) 15Hなどが好ましく用いることができる。反応中にもともと含まれる不飽和結合、あるいは水酸基と酸触媒が作用することによりカチオン種が生じ、転移したり、複数の構造の混合物が得られることがあるが、そのような生成物をそのまま用いることも好ましい。
一般式(I)で表される化合物のセルロースアシレートフィルム中の含有量は特に限定されないが、セルロースアシレート100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜15質量部であることがより好ましく、0.3〜10質量部であることが特に好ましい。
含有量が0.1質量部以上であると、透湿度を効果的に下げられるため好ましい。20質量部以下であれば、ヘイズ抑制の観点で好ましい。
<2 セルロースアシレート>
本発明では、セルロースアシレートをフィルムの主成分として用いる。ここで本明細書では、「主成分」とは、原料となる成分が1種である態様ではその成分を、2種以上である態様では、最も質量分率の高い成分をいうものとする。セルロースアシレートの1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。セルロースアシレートのアシル置換基は、例えばアセチル基単独からなるセルロースアシレートであっても、複数の異なったアシル置換基を有するセルロースアシレートを用いてもよく、異なったセルロースアシレートの混合物であってもよい。
本発明で使用されるセルロースアシレートの原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著,「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」,日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
本発明では、セルロースアシレートのアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。本発明で使用されるセルロースアシレートは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましく、炭素数2〜4のアシル基としてはプロピオニルまたはブチリルが好ましい。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、ろ過性のよい溶液の作製が可能となる。
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。
アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基のアシル化の度合いを示すものであり、全てのグルコース単位の2位、3位および6位の水酸基がいずれもアシル化された場合、総アシル置換度は3であり、例えば、全てのグルコース単位で、6位のみが全てアシル化された場合、総アシル置換度は1である。同様に、全グルコースの全水酸基において、各々のグルコース単位で、6位か、2位のいずれか一方の全てがアシル化された場合も、総アシル置換度は1である。
すなわち、グルコース分子中の全水酸基が全てアシル化された場合を3として、アシル化の度合いを示すものである。
本発明で使用するセルロースアシレートの総アシル置換度(A)は、1.5以上3以下(1.5≦A≦3.0)であることが好ましく、2.0〜2.97であることがより好ましく、2.5以上2.97未満であることがさらに好ましく、2.70〜2.95であることが特に好ましい。
本発明で使用するセルロースアシレートの総アセチル置換度(B)は、2.0以上3以下(2.0≦B≦3.0)であることが好ましく、2.0〜2.97であることがより好ましく、2.5以上2.97未満であることがさらに好ましく、2.70〜2.95であることが特に好ましい。
また、セルロースアシレートのアシル基としてアセチル基のみを用いたセルロースアセテートにおける、総アセチル置換度(B)も上記と同様であり、好ましい範囲も同じである。
本発明で使用するセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族のアシル基でも芳香族のアシル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブタノイル、ピバロイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが挙げられる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、ピバロイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはアセチル、プロピオニル、ブタノイル(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)であり、より特に好ましくはアセチル(セルロースアシレートが、セルロースアセテートである場合)である。
セルロースのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CHCHCOCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
最も一般的なセルロースの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
セルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
本発明のフィルムは、全固形分中、セルロースアシレートを5〜99質量%含むことが透湿度の観点から好ましく、20〜99質量%含むことがより好ましく、50〜95質量%含むことが特に好ましい。
<3 その他の添加剤>
本発明のセルロースアシレートフィルム中には、レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤)や、可塑剤として、重縮合エステル化合物(ポリマー)、多価アルコールの多価エステル、フタル酸エステル、リン酸エステルなど、さらには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤を加えることもできる。
なお、本願明細書では、化合物群を標記するのに、例えば、リン酸エステル系化合物のように、「系」を組み込んで記載することがあるが、これは、上記の場合、リン酸エステル化合物と同じ意味である。
(レターデーション低減剤)
本発明ではレターデーション低減剤として、リン酸エステル系化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の非リン酸エステル系の化合物以外の化合物を広く採用することができる。
高分子レターデーション低減剤としては、リン酸ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれら等の共重合体から選択され、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
非リン酸エステル系の化合物以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の含有量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
非リン酸エステル系の化合物以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の段落[0066]〜[0085]に記載されている。
特開2007−272177号公報の段落[0066]〜[0085]に記載の一般式(1)で表される化合物は、該公報に記載のように、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
特開2007−272177号公報に記載の一般式(2)で表される化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
前記レターデーション低減剤は、Rth低減剤であることが好適なNzファクターを実現する観点からより好ましい。レターデーション低減剤のうち、Rth低減剤としては、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマー、特開2007−272177号公報に記載の一般式(3)〜(7)で表される低分子化合物などを挙げることができ、その中でもアクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
レターデーション低減剤は、セルロース系樹脂に対し、0.01〜30質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜20質量%の割合で添加することがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で添加することが特に好ましい。含有量を30質量%以下とすることにより、セルロース系樹脂との相溶性を向上させることができ、白化を抑制させることができる。2種類以上のレターデーション低減剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
(レターデーション発現剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、レターデーション値を発現するために、少なくとも1種のレターデーション発現剤を含有することが好ましい。
レターデーション発現剤としては、特に制限はないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、前記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の含有量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましい。レターデーション発現剤中に含まれる円盤状化合物が、セルロースアシレート100質量部に対して3質量部未満であることが好ましく、2質量部未満であることがより好ましく、1質量部未満であることが特に好ましい。
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
レターデーション発現剤の詳細は公開技報2001−1745の49頁に記載されている。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、可塑剤(疎水化剤)として、多価アルコールの多価エステル化合物(以後、多価アルコールエステル系可塑剤と称す。)、重縮合エステル化合物(以後、重縮合エステル系可塑剤と称す。)および炭水化物化合物(以後、炭水化物誘導体系可塑剤と称す。)の中から選ばれる少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
可塑剤としては、セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(Tg)をできるだけ下げずに含水率を低減できるものが好ましい。このような可塑剤を使用することにより高温高湿下においてセルロースアシレートフィルム中の添加剤が偏光子層へ拡散するのを抑制し、偏光子性能の劣化を改良することができる。
以下に本発明に用いられる可塑剤について詳しく説明する。
(多価アルコールエステル系可塑剤)
本発明に用いられる多価アルコールエステル系可塑剤の合成原料の多価アルコールは下記一般式(c)で表される。
一般式(c)
Rα−(OH)m
一般式(c)中、Rαはm価の有機基を表し、mは2以上の正の整数を表す。
上記一般式(c)に含まれる好ましい多価アルコールとしては、例えば以下の化合物が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げられる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤の中でも、炭素数5以上の多価アルコールを用いた多価アルコールエステルが好ましい。特に好ましくは炭素数5〜20である。
多価アルコールエステルの合成に用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
モノカルボン酸は以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸が好ましい。炭素数は1〜20がより好ましく、1〜10が特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい前記脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げられる。
好ましい前記脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げられる。
好ましい前記芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来るが、特に安息香酸が好ましい。
前記多価アルコールエステル系可塑剤の分子量は特に制限はないが、300〜3000であることが好ましく、350〜1500であることが更に好ましい。分子量が300以上であれば、フィルムからの揮発が抑制される点で好ましく、分子量が3000以下であれば、透湿性、セルロース誘導体との相溶性の点で好ましい。
多価アルコールエステルの合成に用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のヒドロキシル基は、全てエステル化してもよいし、一部をヒドロキシル基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を示す。
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(重縮合エステル系可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、さらに重縮合エステル系可塑剤を含むことが好ましい。重縮合エステル系可塑剤を含有させることで、湿度安定性、偏光子耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができるという効果が得られる。
重縮合エステル系可塑剤は、下記一般式(a)で表される少なくとも1種のジカルボン酸および下記一般式(b)で表される少なくとも1種のジオールを重縮合して得られることが好ましい。
一般式(a)
HOC(=O)−X−CO
一般式(b)
HO−Z−OH
一般式(a)、(b)中、Xは2価の炭素数2〜18の脂肪族基または2価の炭素数6〜18の芳香族基を表し、Zは2価の炭素数2〜8の脂肪族基を表す。ここで、2価の炭素数2〜8の脂肪族基は直鎖でも分岐であってもよい。
ここで、Xにおける2価の炭素数2〜18の脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、2価の鎖状もしくは環状の脂肪族基(例えばシクロアルキレン基など)のいずれであってもよい。また、2価の鎖状の脂肪族基である場合は、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。2価の脂肪族基の炭素数は2〜12がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。その中でも、2価の炭素数2〜18の脂肪族基は、2価の鎖状の飽和脂肪族基であることが好ましく、鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、直鎖状のアルキレン基であることがさらに好ましい。炭素数2〜18の鎖状の脂肪族基としては、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカチレン、プロピレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレンなどが挙げられる。
Xにおける2価の炭素数6〜18の芳香族基は、2価の芳香族炭化水素基でも2価の芳香族ヘテロ環基でもよい。2価の芳香族基としては、炭素数は、6〜15が好ましく、6〜12がさらに好ましい。2価の芳香族炭化水素基における芳香環は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、ターフェニル環などが挙げられる。2価の芳香族ヘテロ環基における芳香族ヘテロ環は、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを環構成原子として含むものが好ましい。芳香族ヘテロ環は、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどのヘテロ環が挙げられる。これらの中でも、2価の芳香族炭化水素基における芳香環は、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環が好ましく、2価の芳香族ヘテロ環基における芳香族ヘテロ環は、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環が好ましい。
Zは、2価の炭素数2〜8の脂肪族基を表す。2価の炭素数2〜8の脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、2価の鎖状もしくは環状の脂肪族基(例えばシクロアルキレン基など)のいずれであってもよい。また、2価の鎖状の脂肪族基である場合は、2価の直鎖状であっても、分枝状であってもよい。2価の脂肪族基の炭素数は2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。その中でも、2価の炭素数2〜8の脂肪族基は、2価の鎖状の飽和脂肪族基が好ましく、鎖状のアルキレン基がより好ましく、直鎖状のアルキレン基がさらに好ましい。炭素数2〜8の鎖状のアルキレン基は、例えば、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、プロピレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレンなどが挙げられる。
なお、2価のシクロアルキレン基としてはシクロペンチレン、シクロヘキシレンが挙げられる。
重縮合エステル系可塑剤は、少なくとも一種の芳香環を有するジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸とも呼ぶ)と少なくとも一種の平均炭素数が2.5〜8.0の脂肪族ジオールとから得られることが好ましい。また、芳香族ジカルボン酸と少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸との混合物、と少なくとも一種の平均炭素数が2.5〜8.0の脂肪族ジオールとから得られることも好ましい。
前記ジカルボン酸残基の平均炭素数の計算は、ジカルボン酸残基とジオール残基で個別に行う。
前記ジカルボン酸残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値を平均炭素数とする。例えば、アジピン酸残基とフタル酸残基が50モル%ずつから構成される場合は、平均炭素数7.0となる。
また、前記ジオール残基の場合も同様で、ジオール残基の平均炭素数は、ジオール残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値とする。例えばエチレングリコール残基50モル%と1,2−プロパンジオール残基50モル%から構成される場合は平均炭素数2.5となる。
重縮合エステル系可塑剤の数平均分子量は500〜2000であることが好ましく、600〜1500がより好ましく、700〜1200がさらに好ましい。重縮合エステルの数平均分子量は500以上であれば揮発性が低くなり、セルロースエステルフィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染が抑制される。
また、2000以下であればセルロースエステルとの相溶性が高くなり、製膜時および加熱延伸時のブリードアウトが抑制される。
重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。また、末端が封止のないポリエステルポリオールの場合、質量あたりのヒドロキシル基の量(以下、水酸基価とも言う)により算出することもできる。本発明において、水酸基価は、ポリエステルポリオールをアセチル化した後、過剰の酢酸の中和に必要な水酸化カリウムの量(mg)を測定する。
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物をジカルボン酸成分として用いる場合は、ジカルボン酸成分の炭素数の平均が5.5〜10.0のジカルボン酸であることが好ましく、より好ましくは5.6〜8である。
炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れた偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10以下であればセルロースエステルへの相溶性が優れ、セルローエステルフィルムの製膜過程でブリードアウトの発生を抑制することができる。
一般式(b)で表されるジオール化合物と、芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルには、芳香族ジカルボン酸残基が含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOC(=O)−X−COH形成されるジカルボン酸残基は−C(=O)−X−C(=O)−である。本発明に用いる重縮合エステルの芳香族ジカルボン酸残基比率は40mol%以上であることが好ましく、40mol%〜95mol%であることがより好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られ、耐久性に優れた偏光板を得ることができる。また、95mol%以下であればセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時および加熱延伸時においてもブリードアウトを抑制することができる。
重縮合エステル系可塑剤の合成に用いることができる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。その中でもフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、フタル酸、テレフタル酸がより好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。
重縮合エステルには、混合に用いた芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
すなわち、この芳香族ジカルボン酸残基は、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸残基、テレフタル酸残基の少なくとも1種を含み、さらに好ましくはテレフタル酸残基を含む。
重縮合エステルの合成に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時および加熱延伸時においてもブリードアウトの発生が抑制されたセルロースエステルフィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
フタル酸とテレフタル酸の2種の芳香族ジカルボン酸を併用することにより、常温での重縮合エステルを軟化することができ、ハンドリングが容易になる点で好ましい。
重縮合エステルのジカルボン酸残基中における、テレフタル酸残基の含有量は40mol%〜100mol%であることが好ましい。
テレフタル酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られる。
一般式(b)で表されるジオール化合物と、脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルには、脂肪族ジカルボン酸残基が含まれる。
重縮合エステル系可塑剤を合成する脂肪族ジカルボン酸は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合エステルは、合成に用いた脂肪族ジカルボン酸に由来する脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
脂肪族ジカルボン酸残基は、平均炭素数が5.5〜10.0であることが好ましく、5.5〜8.0であることがより好ましく、5.5〜7.0であることがさらに好ましい。脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数が10.0以下であれば化合物の加熱減量が低減でき、セルロースアシレートウェブ乾燥時のブリードアウトによる工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生を防ぐことができる。また、脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数が5.5以上であれば相溶性に優れ、重縮合エステルの析出が起き難く好ましい。
この脂肪族ジカルボン酸残基は、具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、重縮合エステルの合成に、脂肪族ジカルボン酸を1種用いても、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。重縮合エステルの合成に、脂肪族ジカルボン酸を1種用いる場合は、コハク酸を用いることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数を所望の値に調整することができ、セルロースエステルとの相溶性の点で好ましい。
本発明において、重縮合エステルの形成における混合には、ジカルボン酸を2種または3種を用いることが好ましい。2種を用いる場合は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを1種ずつ用いることが好ましく、3種を用いる場合は脂肪族ジカルボン酸を1種と芳香族ジカルボン酸を2種または脂肪族ジカルボン酸を2種と芳香族ジカルボン酸を1種用いることができる。ジカルボン酸残基の平均炭素数の値を調整しやすく、かつ芳香族ジカルボン酸残基の含有量を好ましい範囲とすることができ、偏光子の耐久性を向上し得るためである。
一般式(b)で表されるジオール化合物とジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルには、ジオール残基が含まれる。
本明細書中では、一般式(b)で表されるジオール化合物(HO−Z−OH)により形成されるジオール残基は−O−Z−O−である。
重縮合エステルを合成するジオールとしては、芳香族ジオールおよび脂肪族ジオールが挙げられ、本発明においては、少なくとも脂肪族ジオールを用いて合成されることが好ましい。
重縮合エステルは、平均炭素数が2.5〜7.0の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましく、より好ましくは平均炭素数が2.5〜4.0の脂肪族ジオール残基を含む。
脂肪族ジオール残基の平均炭素数が7.0より小さいとセルロースエステルとの相溶性が改善され、ブリードアウトが生じにくくなり、また、化合物の加熱減量が増大しにくくなり、セルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生し難くなる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.5以上であれば合成が容易である。
重縮合エステル系可塑剤を合成するために用いる脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールまたは脂環式ジオール類が好ましく、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が好ましい。これらはエチレングリコールとともに1種または2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
脂肪族ジオールは、より好ましくはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、および1,3−プロパンジオールのうちの少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコールおよび1,2−プロパンジオールのうちの少なくとも1種である。脂肪族ジオールを2種用いて重縮合エステルを合成する場合は、エチレングリコールおよび1,2−プロパンジオールを用いることが好ましい。1,2−プロパンジオールまたは1,3−プロパンジオールを用いることにより重縮合エステルの結晶化を防止することができる。
前記重縮合エステルには、混合に用いたジオール化合物によりポリエステル中にジオール成分であるジオール残基が組み込まれる。
すなわち、重縮合エステルは、ジオール残基としてエチレングリコール残基、1,2−プロパンジオール残基および1,3−プロパンジオール残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレングリコール残基または1,2−プロパンジオール残基であることがより好ましい。
前記重縮合エステルに含まれる脂肪族ジオール残基には、エチレングリコール残基が10mol%〜100mol%含まれることが好ましく、20mol%〜100mol%含まれることがより好ましい。
重縮合エステルの末端は、封止せずにジオールもしくはカルボン酸のまま(すなわち、ポリマー鎖長末端が−OHまたはCOH)としてもよく、さらにモノカルボン酸類またはモノアルコール類を反応させていわゆる末端の封止を実施してもよい。なお、重縮合エステルの末端を封止することで、常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができるという効果が得られる。
封止に用いるモノカルボン酸類としては酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸等が好ましい。封止に用いるモノアルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が好ましく、メタノールが最も好ましい。重縮合エステルの末端に使用するモノカルボン酸類の炭素数が7以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障が発生しない。
重縮合エステルの末端は、封止せずにジオール残基のままであることか、酢酸またはプロピオン酸または安息香酸によって封止されていることがさらに好ましい。重縮合エステルの両末端は、それぞれ、封止の実施の有無が同一であることを問わない。
縮合体の両末端が未封止の場合、重縮合エステルはポリエステルポリオールであることが好ましい。
重縮合エステルの態様の一つとして、脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5〜8.0であり、重縮合エステルの両末端は未封止である重縮合エステルを挙げることができる。重縮合エステルの両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合エステルの両末端はモノカルボン酸残基となっている。
本明細書中では、モノカルボン酸Rβ−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はRβ−CO−である。重縮合エステルの両末端がモノカルボン酸で封止されている場合、前記モノカルボン酸は脂肪族モノカルボン酸残基であることが好ましく、モノカルボン酸残基が炭素数22以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがさらに好ましい。また、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
重縮合エステルの態様の一つとして、脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5より大きく7.0以下であり、重縮合エステルの両末端がモノカルボン酸残基で封止されている重縮合エステルを挙げることができる。
重縮合エステルの両末端を封止しているモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、重縮合エステルの加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することが可能である。
すなわち、封止に用いるモノカルボン酸類としては脂肪族モノカルボン酸が好ましく、モノカルボン酸が炭素数2から22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることがさらに好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸およびその誘導体等が好ましく、酢酸またはプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。
封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
重縮合エステルの両末端は酢酸またはプロピオン酸による封止が好ましく、酢酸封止により両末端がアセチルエステル残基(アセチル残基と称する場合がある)となることが最も好ましい。
下記表1に重縮合エステルの具体例J−1〜J−41を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005693689
ここで、上記表1中の略称において、PAはフタル酸、TPAはテレフタル酸、AAはアジピン酸、SAはコハク酸、2,6−NPAは2,6−ナフタレンジカルボン酸をそれぞれ表す。
重縮合エステルの合成は、常法によりジオールとジカルボン酸とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法、もしくは、これら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によって容易に合成できる。なお、重縮合エステルは、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房,昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載があり、記載されている化合物を使用することもできる。
本発明では、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号の各公報などに記載されている化合物を利用することもできる。
(炭水化物誘導体系可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、さらに炭水化物誘導体系可塑剤を含むことが好ましい。炭水化物誘導体系可塑剤を含有させることで、湿度安定性、偏光子耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができるという効果が得られる。
炭水化物誘導体系可塑剤としては、単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体が好ましい。
炭水化物誘導体系可塑剤を好ましく構成する単糖または多糖は、分子中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基など)が置換されていることを特徴とする。置換されて形成される構造の例としては、アルキル基、アリール基、アシル基などを挙げることができる。また、水酸基をアルキル基やアリール基によって置換されて形成されるエーテル構造、水酸基をアシル基によって置換されて形成されるエステル構造、アミノ基によって置換されて形成されるアミド構造やイミド構造などを挙げることができる。
前記単糖または2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
また、炭水化物誘導体系可塑剤の置換基の例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−シアノエチル基、ベンジル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル基、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ベンゾイル、トルイル、フタリル、ナフトルなど)を挙げることができる。また、アミノ基によって置換されて形成される好ましい構造として、アミド構造(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアミド、例えばホルムアミド、アセトアミドなど)、イミド構造(好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8のイミド、例えば、スクシンイミド、フタルイミドなど)を挙げることができる。
これらの中で、さらに好ましいものはアルキル基、アリール基またはアシル基であり、特に好ましくはアシル基である。
炭水化物誘導体系可塑剤の好ましい例としては、以下のものを挙げることができる。ただし、本発明で用いることができる炭水化物誘導体系可塑剤は、これらに限定されるものではない。
キシローステトラアセテート、グルコースペンタアセテート、フルクトースペンタアセテート、マンノースペンタアセテート、ガラクトースペンタアセテート、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシリトールペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシリトールペンタプロピオネート、ソルビトールヘキサプロピオネート、キシローステトラブチレート、グルコースペンタブチレート、フルクトースペンタブチレート、マンノースペンタブチレート、ガラクトースペンタブチレート、マルトースオクタブチレート、セロビオースオクタブチレート、スクロースオクタブチレート、キシリトールペンタブチレート、ソルビトールヘキサブチレート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートなどが好ましい。キシローステトラアセテート、グルコースペンタアセテート、フルクトースペンタアセテート、マンノースペンタアセテート、ガラクトースペンタアセテート、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシリトールペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、
スクロースオクタプロピオネート、キシリトールペンタプロピオネート、ソルビトールヘキサプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートなどがさらに好ましい。マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートなどが特に好ましい。
炭水化物誘導体系可塑剤はピラノース構造あるいはフラノース構造を有することが好ましい。
本発明に用いられる炭水化物誘導体としては以下に示す化合物が特に好ましい。ただし、本発明で用いることができる炭水化物誘導体は、これらに限定されるものではない。
なお、以下の構造式中、Rはそれぞれ独立に任意の置換基を表し、複数のRは同一でも、異なっていてもよい。
下記表2〜5において、例えば表2では、8個の水酸基(Rがいずれも水素原子)であるものを、2種類のアシル化剤でアシル化したものであり、この2種類のアシル化剤で導入されたRの一方を「置換基1」、他方のRを「置換基2」として示し、置換度は、全水酸基8個中の個数を表す。
全Rの数は、表3では5個、表4および5では8個である。ここで、「フェニルアセチル」は、−C(=O)−CH−Cを示す。
Figure 0005693689
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炭水化物誘導体は、市販品として(株)東京化成製、アルドリッチ製等から入手可能であり、また市販の炭水化物を既知のエステル化反応(例えば、特開平8−245678号公報に記載の方法)により容易に合成できる。
これらの可塑剤の含有量は、セルロースアシレートに対して1〜20質量%が好ましい。1質量%以上であれば、偏光子耐久性改良効果が得られやすく、また20質量%以下であれば、ブリードアウトの発生が抑制される。さらに好ましい含有量は2〜15質量%であり、特に好ましくは5〜15質量%である。
これらの可塑剤をセルロースアシレートフィルムに添加するタイミングは、製膜される時点で添加されていれば特に限定されない。例えば、セルロースアシレートの合成時点で添加してもよいし、ドープ調製時にセルロースアシレートと混合してもよい。
(その他の添加剤)
その他の添加剤として公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、マット剤などを添加しても良い。
以下にこれらを説明する。
(酸化防止剤)
本発明においてはセルロースアシレート溶液に公知の酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤の含有量は、セルロース系樹脂100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加することが好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明においてはセルロースアシレート溶液に、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤を加えてもよい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤は、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
ヒンダードフェノール系化合物は、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレートなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。
これらの紫外線防止剤の含有量は、光学フィルム全体中に質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
(マット剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムすべり性、および安定製造の観点からマット剤を加えてもよい。マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
無機化合物のマット剤は、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリンおよびリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
有機化合物のマット剤は、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂およびアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120およびトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
これらのマット剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されずいずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。
更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。
なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003−053752号公報には、セルロースアシレートフィルムの製造方法において、主原料ドープに異なる組成の添加液を混合する添加ノズル先端とインラインミキサーの始端部の距離Lが、主原料配管内径dの5倍以下とすることで、濃度ムラ、マット粒子等の凝集をなくす方法が記載されている。さらに好ましい態様として、主原料ドープと異なる組成の添加液供給ノズルの先端開口部とインラインミキサーの始端部との間の距離(L)が、供給ノズル先端開口部の内径(d)の10倍以下とし、インラインミキサーが、静的無攪拌型管内混合器または動的攪拌型管内混合器であることが記載されている。さらに具体的には、セルロースアシレートフィルム主原料ドープ/インライン添加液の流量比は、10/1〜500/1、好ましくは50/1〜200/1であることが開示されている。さらに、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムを目的とした特開2003−014933号公報にも、添加剤を添加する方法として、溶解釜中に添加してもよいし、溶解釜〜共流延ダイまでの間で添加剤や添加剤を溶解または分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよいが、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
マット剤は、多量に添加しなければフィルムのヘイズが大きくならず、実際にLCD(液晶ディスプレイ)に使用した場合、コントラストの低下、輝点の発生等の不都合が生じにくい。また、少なすぎなければ上記のキシミ、耐擦傷性を実現することができる。これらの観点から、セルロースアシレートに対し、0.05〜1.0質量%の割合で含めることが特に好ましい。
全固形分中、セルロースアシレート、一般式(I)で表される化合物、可塑剤およびその他の添加剤の構成割合の総和は100質量%である。
<4 セルロースアシレートフィルムの構成と物性>
(フィルムの層構造)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、単層であっても、2層以上の積層体であってもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体である場合は、2層構造または3層構造であることがより好ましく、3層構造であることが好ましい。3層構造の場合は、本発明のフィルムが溶液製膜で製造する際に前記金属支持体と接する層(以下、支持体面や、スキンB層とも言う)と、前記金属支持体とは逆側の空気界面の層(以下、空気面や、スキンA層とも言う)と、その間に挟まれた1層のコア層(以下、基層とも言う)を有することが好ましい。すなわち、本発明のフィルムはスキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であることが好ましい。
なお、スキンA層とスキンB層を総称して、スキン層(または表層)とも言う。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は均一であっても、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよいが、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は全て一定であることが光学特性の調整の観点から好ましい。また、本発明のセルロースアシレートフィルムが3層構造であるとき、両面の表面層に含まれるセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いることが、製造コストの観点から好ましい。
(弾性率)
本発明のフィルムは実用上十分な弾性率を示す。弾性率の範囲は特に限定されないが、製造適性およびハンドリング性という観点から1.0GPa〜5.0GPaであることが好ましく、2.0GPa〜4.5GPaであることがより好ましい。本発明の一般式(I)で表される化合物は、セルロースアシレート中に添加されることにより、フィルムを疎水化することで弾性率を向上させる作用があり、その点も本発明における利点である。
(光弾性係数)
本発明のフィルムの光弾性係数の絶対値は、好ましくは8.0×10−12/N以下、より好ましくは6×10−12/N以下、さらに好ましくは5×10−12/N以下である。樹脂フィルムの光弾性係数を小さくすることにより、該樹脂フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下におけるムラ発生を抑制できる。光弾性係数は、特に断らない限り、以下の方法により測定し算出するものとする。
光弾性率の下限値は特に限定されないが、0.1×10−12/N以上であることが実用上好ましい。
フィルムを3.5cm×12cmに切り出し、荷重無し、250g、500g、1000g、1500gのそれぞれの荷重におけるReをエリプソメーター(M150[商品名]、日本分光(株))で測定し、応力に対するRe変化の直線の傾きから算出することにより光弾性係数を測定する。
(含水率)
樹脂フィルムの含水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は前記温湿度に24時間放置した後に、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
本発明のフィルムの25℃相対湿度80%における含水率は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下がさらに好ましく、3質量%未満がさらに好ましい。フィルムの含水率を小さくすることにより、樹脂フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下における液晶表示装置の表示ムラの発生を抑制することができる。含水率の下限値は特に限定されないが、0.1質量%以上であることが実際的である。
(透湿度)
樹脂フィルムの透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じ、温度40℃、相対湿度90%RHの雰囲気中、試料を24時間に通過する水蒸気の質量を測定し、試料面積1mとしたときの値に換算することにより評価することができる。
本発明の樹脂フィルムの透湿度は、500〜2000g/m・dayであることが好ましく、900〜1300g/m・dayであることがより好ましく、1000〜1200g/m・dayであることが特に好ましい。
(ヘイズ)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ヘイズが1%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。ヘイズを上記上限値以下とすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、光学フィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。ヘイズは、特に断らない限り、後記実施例で採用した方法により測定し算出するものとする。ヘイズの下限値は特に限定されないが、0.001%以上であることが実際的である。
(膜厚)
本発明のセルロースアシレートフィルムの平均膜厚は、10〜100μmが好ましく、15〜80μmがより好ましく、20〜70μmがさらに好ましい。10μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し好ましい。また、100μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、本発明の改良効果がより効果的に発揮される。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムが3層以上の積層構造を有する場合、前記コア層の膜厚は3〜70μmが好ましく、5〜60μmがより好ましい。本発明のフィルムが3層以上の積層構造を有する場合、フィルム両面の表層(スキンA層およびスキンB層)の膜厚は、ともに0.5〜20μmがより好ましく、0.5〜10μmが特に好ましく、0.5〜3μmが最も好ましい。
(フィルム幅)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルム幅が700〜3000mmであることが好ましく、1000〜2800mmであることがより好ましく、1300〜2500mmであることが特に好ましい。
<5 セルロースアシレートフィルムの製造方法>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造されることが好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,492,078号、同第2,492,977号、同第2,492,978号、同第2,607,704号、同第2,739,069号および同第2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号および同第736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号および同62−115035号等の各公報を参考にすることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法および条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
(流延方法)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
・共流延
本発明のセルロースアシレートフィルムの形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、特に同時共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でも良い)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。図2に、共流延ギーサ3を用い、流延用支持体4の上に表層用ドープ1とコア層用ドープ2を3層同時に押出して流延する状態を断面図で示した。
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
セルロースアシレートフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基または2基以上の設置でもよい。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるドープ(樹脂溶液)の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、または工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
また、前記金属支持体の材質については特に制限はないが、SUS製(例えば、SUS316)であることがより好ましい。
(剥離)
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、前記ドープ膜を前記金属支持体から剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの製造方法における剥離の方法については特に制限はなく、公知の方法を用いた場合に剥離性を改善することができる。
(延伸処理)
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法では、製膜された延伸する工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの延伸方向はフィルム搬送方向と搬送方向に直交する方向(横方向)のいずれでも好ましいが、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)であることが、後に続く該フィルムを用いた偏光板加工プロセスの観点から特に好ましい。
横方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。横方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光子の保護膜として使用する場合には、偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するため、偏光子の透過軸と本発明の樹脂フィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状のセルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。
横方向の延伸は5〜100%の延伸が好ましく、より好ましくは5〜80%、特に好ましくは5〜40%延伸を行う。また、延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が0.05〜50%で好ましく延伸することができる。残留溶剤量が0.05〜5%の状態で5〜80%延伸を行うことが特に好ましい。なお、延伸0%を未延伸とする。
(乾燥)
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法では、セルロースアシレートフィルムを乾燥する工程と、乾燥後の本発明の樹脂フィルムをガラス転移温度(Tg)−10℃以上の温度で延伸する工程とを含むことが、レターデーション発現性の観点から好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラムまたはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラムまたはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラムまたはベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
以上のようにして得られた、セルロースアシレートフィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
大画面用液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明の偏光板保護フィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様の偏光板保護フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
<<偏光板>>
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明のセルロースアシレートフィルムとを少なくとも有する。
本発明の偏光板は、偏光子と、該偏光子の片面または両面に本発明のフィルムを有することが好ましい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護膜処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸が実質的に直交となるように貼り合せることが好ましい。本発明の液晶表示装置において、偏光板の透過軸と本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸が、実質的に直交であることが好ましい。ここで、実質的に直交であるとは、本発明のセルロースアシレートフィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とが90°±10°の角度で交わっていることを意味し、90°±5°の角度で交わっていることが好ましく、90°±1°の角度で交わっていることがより好ましい。前記範囲とすることで、偏光板クロスニコル下での光抜けをより低減することができる。
本発明の偏光板は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。
<<液晶表示装置>>
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、本発明の偏光板とを有する。
本発明の液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であるIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。典型的な液晶表示装置の内部構成を図1に示した。本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できる。また、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本発明が限定して解釈されるものではない。
(合成例)
・例示化合物A−51
温度計、還流冷却管および撹拌機を付した200mLのガラス製三口フラスコに4−tert−ブチルフェノール15g(0.1モル)、酸触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸0.9mL、溶媒としてシクロヘキサン30mLを加えた。室温撹拌下にシクロヘキセン21mLを1時間かけて添加した。添加終了後、更に5時間攪拌を行なった。反応終了後、水100mLを加え反応を止め、酢酸エチル200mLで抽出した。有機相を濃縮し粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、反応生成物として例示化合物(A−51)を12g(収率32%)得た。
・例示化合物A−50、A−42、A−45、A−53
合成例1において、シクロヘキセンの代わりに、それぞれ1−ヘキセン、1−デセン、シクロオクテンを用いたこと以外は合成例1と同様にして、例示化合物A−42、A−45、A−53を合成した。
Figure 0005693689
また、上記以外のA−1、A−4、A−12、A−14、A−20、A−28、A−30、A−36、A−37も上記と同様にして合成した。
実施例1・比較例1
(1)セルロースアシレートフィルムの製膜
(セルロースアシレートの調製)
アセチル置換度2.87のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
(表層用ドープの調製)
・セルロースアシレート溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
第一工業化学社製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
9.0質量部
イーストマン・ケミカル社製SAIB−100(可塑剤) 3.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 353.9質量部
メタノール(第2溶媒) 89.6質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 4.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、第一工業化学社製モノペット(登録商標)SBはショ糖の安息酸エステルであり、イーストマン・ケミカル社製SAIB−100はショ糖の酢酸およびイソ酪酸エステルである。
・マット剤溶液の調製
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液の組成
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平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 69.3質量部
メタノール(第2溶媒) 17.5質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 0.9質量部
前記セルロースアシレート溶液 0.9質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
・紫外線吸収剤溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
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紫外線吸収剤溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記紫外線吸収剤(UV−1) 20.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 61.0質量部
メタノール(第2溶媒) 15.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 0.8質量部
前記セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
Figure 0005693689
上記マット剤溶液の1.3質量部と、紫外線吸収剤溶液の3.4質量部をそれぞれ濾過後にインラインミキサーを用いて混合し、さらにセルロースアシレート溶液を95.3質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合し、表層用溶液を調製した。
(基層用ドープの調製)
・セルロースアシレート溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、基層用ドープを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
第一工業化学社製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
9.0質量部
イーストマン・ケミカル社製SAIB−100(可塑剤) 3.0質量部
例示化合物(A−1) 4.0質量部
前記紫外線吸収剤(UV−1) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 297.7質量部
メタノール(第2溶媒) 75.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 3.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、比較化合物は、以下の化合物を使用した。
Figure 0005693689
(流延)
ドラム流延装置を用い、上記のように調製した基層用ドープと、その両側に表層用ドープとを3層同時にステンレス製の流延支持体(支持体温度−9℃)に流延口から均一に流延した。各層のドープ中の残留溶媒量が略70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、残留溶媒量が3〜5質量%の状態で、横方向に1.28倍延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、比較のセルロースアシレートフィルム101を得た。得られたセルロースアシレートフィルム101の厚みは60μm、幅は1480mmであった。
上記セルロースアシレートフィルム101において、例示化合物A−1の代わりに、化合物の種類および含有量を後述の表6に記載のように変更した以外はセルロースアシレート101と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム102〜113、117、118、122および比較のセルロースアシレートフィルムc11〜c15を製造した。
また、上記セルロースアシレートフィルム110において、得られるセルロースアシレートフィルムの膜厚が40μm、幅1480mmになるように流延、乾燥し、本発明のセルロースアシレートフィルム114を得た。このセルロースアシレートフィルム114において例示化合物A−42の代わりに、化合物の種類を後述の表6に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルム114と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム119と123、および比較のセルロースアシレートフィルムc16をそれぞれ製造した。
同様に、上記セルロースアシレートフィルム110において、得られるセルロースアシレートフィルムの膜厚が25μm、幅1480mmになるように流延、乾燥し、本発明のセルロースアシレートフィルム115を得た。このセルロースアシレートフィルム115において例示化合物A−42の代わりに、化合物の種類を後述の表6に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルム115と同様にして、本発明のセルロースアシレートフィルム120と124、および比較のセルロースアシレートフィルムc17をそれぞれ製造した。
さらに、上記セルロースアシレートフィルム101において、モノペット(登録商標)SBおよびSAIB−100の代わりに、重縮合エステル系可塑剤である下記重縮合ポリマー(A)を12質量部添加し、さらに例示化合物A−1の代わりに、化合物の種類および含有量を後述の表6に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルム101と同様にして、本発明のセルロースアシレート116、121、125および比較のセルロースアシレートフィルムc18〜c20をそれぞれ製造した。
重縮合ポリマー(A):アジピン酸とエタンジオールからなるポリエステル(末端はヒドロキシル基)(数平均分子量=1000)
各セルロースアシレートフィルムに対して、フィルムの黄着色の評価を行った。
また、参考データとして、透湿度の測定を行なった。
得られた結果をまとめて後述の表6に示す。
なお、これらのセルロースアシレートフィルムは、以下において偏光板保護フィルムとも称す。
[評価]
(フィルム透湿度の評価)
JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて、温度40℃、相対湿度90%RHの雰囲気中、切り出したセルロースアシレートフィルムを24時間に通過する水蒸気の質量を測定し、試料面積1mの値に換算して下記基準で評価した。
A :透湿度が1200g/m・day未満
B :透湿度が1200〜1300g/m・day
C :透湿度が1300g/m・dayを超える
(フィルムの経時着色(光)の評価)
上記で作製した各偏光板保護フィルムに対して、スーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)製SX75)を用い、放射照度150W/m、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%RHの条件で、72時間光照射を行った。その後島津製作所の分光光度計UV3150を用いて色相bを測定した。色相bの値がマイナス側に大きくなると透過光は青味が増し、プラス側に大きくなると黄色味が増す。
評価は下記基準で行った。
AA:1枚あたりのbの値が0以上0.5未満
A :1枚当たりのbの値が0.5以上0.8未満
B :1枚当たりのbの値が0.8以上1.0未満
C :1枚当たりのbの値が1.0以上
実施例2・比較例2
(2)偏光板の作製
〔偏光板保護フィルムの鹸化処理〕
実施例1で作製した各セルロースアシレートフィルムである偏光板保護フィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、各偏光板保護フィルムに対して表面の鹸化処理を行った。なお、偏光子は前記<<偏光板>>の項で説明したような常用されているものを用いた。
〔偏光板の作製〕
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
実施例1で製造し、上記の鹸化処理した偏光板保護フィルム101を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)も同様の鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理した偏光板保護フィルム101が貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に、鹸化処理済みの上記市販のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
この際、偏光子の透過軸と、実施例1で作製して鹸化処理済みの偏光板保護フィルムの遅相軸とが直交するように配置した。また、偏光子の透過軸と鹸化処理済みの市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸についても、直交するように配置した。
このようにして本発明の偏光板101を作製した。
本発明の偏光板保護フィルム102〜125および比較の偏光板保護フィルムc11〜c20についても、それぞれ上記と同様にして鹸化処理と偏光板の作製を行い、本発明の偏光板102〜125、比較の偏光板c11〜c20を作製した。
このようにして作製した各偏光板の耐久性の評価を行なった。
[評価]
(偏光板の偏光子耐久性の評価)
偏光子耐久性試験は偏光板を本発明のセルロースアシレートフィルムが空気界面側になるようにガラスに粘着剤を介して貼り付けた形態で次のように行った。ガラスの上に偏光板を貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作製する。単板直交透過率測定ではこのサンプルの本発明のセルロースアシレートフィルムの側を光源に向けてセットして測定する。2つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を本発明の偏光板の直交透過率とした。偏光板の直交透過率は、日本分光(株)製、自動偏光フィルム測定装置VAP−7070を用いて380nm〜780nmの範囲で測定し、410nmにおける測定値を採用した。その後、フィルムの膜厚に応じた条件下で経時保存した後に同様の方法で直交透過率を測定した。下記経時条件で経時前後の直交透過率の変化を求め、これを偏光板耐久性として下記基準で評価した。
なお、調湿なしの環境下での相対湿度は、0〜20%RHの範囲であった。
得られた結果を後述の表6に示した。
(経時条件)
サンプル101〜113、116〜118、121、122、125、c11〜15およびc18〜20:
80℃、相対温度90%RHの環境下で168時間および336時間
サンプル114、119、123およびc16:
80℃、相対温度90%RHの環境下で120時間および240時間
サンプル115、120、124およびc17:
60℃、相対温度95%RHの環境下で500時間および1000時間
A :経時前後の直交透過率の変化が0.6%未満
B :経時前後の直交透過率の変化が0.6〜1.0%
C :経時前後の直交透過率の変化が1.0%を超える
この結果を下記表6にまとめて記載した。
Figure 0005693689
上記表6の結果から、本発明の一般式(I)で表される化合物を含有する本発明のセルロースアシレートフィルムである偏光板保護フィルムは、いずれも経時での偏光子の劣化を効果的に抑制しうるものであり、経時着色が少なかった。なお、偏光板保護フィルム101〜113、117、118および122はいずれも透湿度が低かった。
これに対し、上記の比較のフェノール誘導体を含有する比較のセルロースアシレートフィルムである偏光板保護フィルムc11〜c14、c18およびc19は、いずれも本発明の偏光板保護フィルムと比較して、偏光板の劣化抑制と経時着色抑制との両立ができなかった。また、本発明の一般式(I)で表される化合物も比較のフェノール誘導体も含まない比較のセルロースアシレートフィルムである偏光板保護フィルムc15〜17、およびc20も、本発明のセルロースアシレートフィルムである偏光板保護フィルムと比較して、偏光子耐久性において劣るものであった。
この結果、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を使用することで、以上に示したような優れた性能の液晶表示装置が作製できる。
1 表層用ドープ
2 コア層用ドープ
3 共流延ギーサ
4 流延用支持体
21A、21B 偏光板
22 カラーフィルタ基板
23 液晶層(液晶セル)
24 アレイ基板
25 導光板
26 光源
31a、31b セルロースアシレートフィルム(偏光板保護フィルム)
32 偏光子

Claims (12)

  1. 下記一般式(II)で表される化合物の少なくとも1種とセルロースアシレートを含有するセルロースアシレートフィルムと、偏光子とを少なくとも有する偏光板であって、前記セルロースアシレートフィルム中、前記の一般式(II)で表される化合物の含有量が、セルロースアシレート100質量部に対して0.1〜20質量部である、偏光板
    Figure 0005693689

    [一般式(II)中、R、R、RおよびRは各々独立に置換もしくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基であるか、または該R とR 、および/または、R とR が、互いに結合して炭素数5〜12のシクロアルキル基を形成する基である。R置換もしくは無置換の炭素数1〜25の脂肪族基または炭素数1〜20のアルコキシ基である。]
  2. 前記Rが、下記一般式(1)で表される基である請求項1に記載の偏光板
    Figure 0005693689
    [一般式(1)中、R5a、R5bおよびR5cは各々独立に水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族基または芳香族基を表す。]
  3. 前記セルロースアシレートのアシル置換度(A)が、下記式を満足する請求項1または2に記載の偏光板
    1.5≦A≦3.0
  4. 前記セルロースアシレートのアシル基がアセチル基であり、アセチル置換度(B)が、下記式を満足する請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光板
    2.0≦B≦3.0
  5. さらに、可塑剤として、重縮合エステル化合物の少なくとも1種を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光板
  6. 前記重縮合エステル化合物が、下記一般式(a)で表される少なくとも1種のジカルボン酸および下記一般式(b)で表される少なくとも1種のジオールを重縮合して得られる請求項に記載の偏光板
    一般式(a)
    HOC(=O)−X−CO
    一般式(b)
    HO−Z−OH
    [一般式(a)、(b)中、Xは2価の炭素数2〜18の脂肪族基または2価の炭素数6〜18の芳香族基を表し、Zは2価の炭素数2〜8の脂肪族基を表す。]
  7. 前記重縮合エステル化合物の数平均分子量が、500〜2000である請求項またはに記載の偏光板
  8. 前記重縮合エステル化合物の末端が封止されている請求項のいずれか1項に記載の偏光板
  9. さらに、可塑剤として、単糖または2〜10個の単糖単位からなる炭水化物化合物の少なくとも1種を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光板
  10. 前記炭水化物化合物が、アルキル基、アリール基またはアシル基で置換されている請求項に記載の偏光板
  11. 前記炭水化物化合物が、アシル基によって置換されている請求項10に記載の偏光板
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の偏光板と液晶セルを少なくとも有する液晶表示装置。
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