WO2014030484A1

WO2014030484A1 - サポート軸受付きローラクラッチ

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Publication number: WO2014030484A1
Application number: PCT/JP2013/070113
Authority: WO
Inventors: 博史森; 小林　一登
Original assignee: 日本精工株式会社
Priority date: 2012-08-20
Filing date: 2013-07-24
Publication date: 2014-02-27
Also published as: JP2014037875A; EP2886900A1; US20150204395A1; CN104583628A; EP2886900A4

Abstract

　構成部材の干渉防止を確実に図ることができて、優れた伝達性能および耐久性を有するサポート軸受付ローラクラッチを、低コストで提供する。ローラクラッチ１０ｂと第１サポート軸受２９と第２サポート軸受３０との構成部材のうち、外輪部材２７を共通にする。第１サポート軸受２９の内輪となる第１軌道輪部材３３とクラッチ用内輪部材２８とを一体にする。クラッチ用内輪部材２８と、第２サポート軸受３０を構成する第２軌道輪部材３４とは別体にする。クラッチ用保持器１５ｂを、カム面１８ｂを構成する凹部１９の奥端部と第二軌道輪部材３４の端縁との間で挟持し、クラッチ用保持器１５ｂの軸方向変位を抑える。これにより、クラッチ用保持器１５ｂが、第１サポート軸受２９および第２サポート軸受３０の回転を阻害してしまうことが防止される。

Description

サポート軸受付きローラクラッチ

　本発明は、アイドリングストップ車のスタータ装置、オルタネータなどの各種自動車用補機、トランスミッション用オイルポンプなど、各種機械装置の動力伝達部に組み込まれて、動力を一方向にのみ伝達する、サポート軸受付きローラクラッチに関する。

　図１０は、特開２００４－１４４１７０号公報に記載されている、アイドリングストップ車のスタータ装置の１例を示している。このスタータ装置では、エンジン１のクランクシャフト２の端部に固定された従動プーリ３と、スタータモータ４の回転駆動軸５の端部に固定された駆動プーリ装置６との間に、無端ベルト７が掛け渡されている。このスタータ装置は、駆動プーリ装置６に一方向クラッチが内蔵されており、回転駆動軸５から無端ベルト７に動力が伝達されるが、無端ベルト７から回転駆動軸５へは動力が伝達されないようになっている。

　このようなスタータ装置では、エンジン始動時に、スタータモータ４へ通電すると、駆動プーリ装置６が回転駆動して、無端ベルト７、従動プーリ３を介して、クランクシャフト２を回転駆動させる。この際、駆動プーリ装置６に内蔵された一方向クラッチがつながって、ロック状態となり、回転駆動軸５から無端ベルト７に動力が伝達される。一方、エンジンが始動した後には、駆動プーリ装置６に内蔵された一方向クラッチの接続が断たれ、オーバラン状態となり、クランクシャフト２の回転に伴う無端ベルト７の走行にかかわらず、スタータモータ４の回転駆動軸５が回転することはない。したがって、スタータモータ４がエンジン１の運転に対する抵抗になったり、スタータモータ４の耐久性が損なわれたりすることはない。

　図１１および図１２は、特開２００４－１４４１７０号公報に記載されている、一方向クラッチが内蔵されたプーリ装置の１例を示している。このプーリ装置は、互いに同心に配置されたスリーブ８とプーリ９とを備える。そして、スリーブ８の外周面とプーリ９の内周面との間に、ローラクラッチ１０と、１対のサポート軸受１１とが設けられる。

　スリーブ８は、その全体が略円筒状であって、回転駆動軸５に外嵌固定され、回転駆動軸５とともに回転可能となっている。一方、プーリ９には、無端ベルト７が掛け渡される。そして、プーリ９の内周面とスリーブ８の外周面との間に存在する円筒状空間の軸方向中間部に、ローラクラッチ１０が配置され、この円筒状空間の軸方向両端部で、ローラクラッチ１０を軸方向両側から挟む位置に、１対のサポート軸受１１が配置される。１対のサポート軸受１１は、プーリ９に加わるラジアル荷重を支承しつつ、プーリ９とスリーブ８との相対回転を可能とする。

　ローラクラッチ１０は、プーリ９とスリーブ８とが所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、プーリ９とスリーブ８との間で回転力の伝達を可能とする。ローラクラッチ１０は、それぞれが鋼板製であるクラッチ用内輪１２およびクラッチ用外輪１３と、複数の鋼製のローラ１４と、合成樹脂製のクラッチ用保持器１５と、弾性材であるばね（図示省略）とにより構成される。クラッチ用内輪１２は、スリーブ８の中間部外周面に締まり嵌めで嵌合固定され、クラッチ用外輪１３は、プーリ９の中間部内周面に締まり嵌めで嵌合固定されている。クラッチ用外輪１３の内周面は円筒面１７であるが、クラッチ用内輪１２の外周面はカム面１８となっている。すなわち、クラッチ用内輪１２の外周面には、ランプ部と呼ばれる、それぞれがクラッチ用内輪１２の軸方向に長い複数の凹部１９が、円周方向に関して等間隔に形成される。

　カム面１８と円筒面１７との間の円筒状空間には、複数のローラ１４と、これらのローラ１４を転動ならびに円周方向に関する若干の変位可能に保持する、クラッチ用保持器１５とが配置される。ローラ１４は、凹部１９と整合する位置に配置される。また、クラッチ用保持器１５は、その内周縁部をカム面１８の一部に係合させることで、クラッチ用内輪１２に対する相対回転が阻止され、かつ、クラッチ用内輪１２と同期して回転するようになっている。さらに、クラッチ用保持器１５とそれぞれのローラ１４との間に、ばね１６が配置され、ローラ１４は、凹部１９の底面が浅い側に向けて、円周方向に関して同じ方向（図１２の右方向）に押圧される。

　このようなローラクラッチ１０では、クラッチ用内輪１２が、クラッチ用外輪１３に対して、図１２の左方向に回転する傾向となる場合には、図１２に示すように、ローラ１４が、円筒面１７とカム面１８を構成する凹部１９の底面との間に食い込む。この結果、クラッチ用外輪１３とクラッチ用内輪１２との間で回転力の伝達が行なわれ、クラッチ用外輪１３とクラッチ用内輪１２とがともに回転する。この状態を、ロック状態という。反対に、クラッチ用内輪１２が、クラッチ用外輪１３に対して、図１２の右方向に回転する傾向となる場合には、ローラ１４がばね１６の弾力に抗して、凹部１９の底面が深い部分に移動し、ローラ１４の転動面と円筒面１７との当接部の面圧が低下する。この結果、クラッチ用外輪１３とクラッチ用内輪１２との間で回転力の伝達が行なわれなくなり、クラッチ用外輪１３とクラッチ用内輪１２とが相対回転する。この状態を、オーバラン状態という。

　このようなローラクラッチ内蔵型プーリ装置を、図１０に示したアイドリングストップ車用のスタータ装置の駆動プーリ装置６として使用すれば、エンジンの始動時には、スタータモータ４への通電によって、クランクシャフト２を回転駆動させることを可能とするが、エンジン１が始動した後には、クランクシャフト２の回転に伴う無端ベルト７の走行にかかわらず、スタータモータ４がエンジン１の運転に対する抵抗となることがない。

　特開２００４－１４４１７０号公報に記載された構造では、ローラクラッチ１０と１対のサポート軸受１１とが別体であり、ローラクラッチ内蔵型プーリ装置を組み立てる際には、スリーブ８の外周面とプーリ９の内周面との間に、３つのユニットを組み込む必要がある。このため、ローラクラッチ内蔵型プーリ装置の製造に関する部品管理作業および組立作業が面倒となる。このような事情は、サポート軸受付きローラクラッチを、オルタネータなどの各種自動車用補機、トランスミッション用オイルポンプなどの各種機械装置の動力伝達部に組み込む場合でも、同様である。

　これに対して、特許第３６５７３３０号公報には、図１３～図１５に示すように、ローラクラッチ１０ａと１対のサポート軸受１１ａ、１１ｂについて、共通の外輪２０と内輪２１を使用する構造が記載されている。内輪２１の外周面の両端部は、サポート軸受１１ａ、１１ｂ用の軸受用内輪軌道となっており、内輪１２の外周面の中間部は、複数の凹部１９が設けられたカム面１８ａとなっている。また、円周方向に隣り合う凹部１９同士の間には、係止溝２２が設けられ、これらの係止溝２２に、クラッチ用保持器１５ａの柱部２３の内径側端部を係合させている。この構造では、ローラクラッチ１０ａと１対のサポート軸受１１ａ、１１ｂとを、非分離な１組のユニットとして取り扱うことができるので、その部品管理および組立作業の容易化を図ることができる。

　ただし、この構造では、内輪２１を一体としたことにより、次のような改良すべき点が新たに生じている。まず、（１）クラッチ用保持器１５ａが軸方向に変位することを十分に防止できない。すなわち、クラッチ用保持器１５ａが図１３で右方に変位することは、柱部２３と係止溝２２の奥端部（図１４の右端部）との係合により阻止されるが、クラッチ用保持器１５ａが図１３で左方に変位することは阻止されない。そして、クラッチ用保持器１５ａがこの方向に変位すると、サポート軸受１１ｂを構成する軸受用保持器２４が、クラッチ用保持器１５ａと、外輪２０の端部に形成した内向鍔部２５との間に挟まれた状態となる。この状態では、サポート軸受１１ｂの回転抵抗、ひいては、オーバラン状態でのサポート軸受付きローラクラッチの回転抵抗が大きくなるだけでなく、発熱によりその耐久性が低下する可能性がある。

　また、（２）内輪２１の先端部（図１３の左端部）で、サポート軸受１１ｂの内輪として機能する部分の肉厚が小さくなり、この内輪として機能する部分の強度確保が難しくなるだけでなく、その形状精度を確保することも難しくなる。この結果、サポート軸受１１ｂの信頼性や耐久性の確保が難しくなる。

　さらに、（３）サポート軸受１１ａ、１１ｂ同士の間で、ころ２６ａ、２６ｂの直径を異ならせる必要がある。すなわち、内輪２１の先端部の肉厚が、内輪２１の基端部（図１３の右端部）の肉厚よりも小さい分だけ、先端側のサポート軸受１１ｂを構成するころ２６ｂの直径を、基端側のサポート軸受１１ａを構成するころ２６ａの直径よりも大きくする必要がある。このように、ローラクラッチ１０ａの軸方向両側に設けた１対のサポート軸受１１ａ、１１ｂの仕様が異なると、サポート軸受付きローラクラッチの回転バランスが悪くなり、運転時に振動や騒音が発生しやすくなったり、その耐久性が損なわれたりする可能性がある。

特開２００４－１４４１７０号公報特許第３６５７３３０号公報

　本発明は、上述のような事情に鑑みて、構成部材相互の干渉防止を確実に図ることができて、優れた伝達性能および耐久性を有するサポート軸受付きローラクラッチを、低コストで提供することを目的としている。

　本発明のサポート軸受付きローラクラッチは、外径側円筒状部材と、内径側円筒状部材と、カム面と、円筒面と、複数のローラと、クラッチ用保持器と、複数のばねと、第１サポート軸受と、第２サポート軸受とを備える。

　前記外径側円筒状部材は、プーリ、歯車などの外径側動力伝達部材、あるいは、ハウジングなどの外径側保持部材に設けられた保持孔に、締まり嵌めにより内嵌固定される。前記内径側円筒状部材は、前記外径側円筒状部材の内径側に、該外径側円筒状部材と同心に配置され、回転軸などの内径側動力伝達部材、あるいは、支持軸などの内径側保持部材に、締まり嵌めにより外嵌固定される。前記カム面は、前記外径側円筒状部材の内周面と前記内径側円筒状部材の外周面とのうちの一方の周面に形成され、軸方向に長い複数の凹部が円周方向に関して間欠的に設けられている。前記円筒面は、前記外径側円筒状部材の内周面と前記内径側円筒状部材の外周面とのうちの他方の周面に形成される。

　前記複数のローラは、前記カム面と前記円筒面との間の円筒状空間内に配置される。前記クラッチ用保持器は、前記円筒状空間内に配置され、前記複数のローラを、転動ならびに円周方向に関する変位を可能に保持する。前記複数のばねは、それぞれ前記クラッチ用保持器と前記ローラとの間に配置され、前記ローラを前記円筒状空間の径方向の幅が狭い部分に向け、円周方向に関して同じ方向に押圧する。

　第１サポート軸受および第２サポート軸受は、前記クラッチ用保持器を軸方向両側から挟む位置に設けられ、それぞれが外輪と、該外輪の内周面に形成された軸受用外輪軌道と、内輪と、該内輪の外周面に形成された軸受用内輪軌道と、該軸受用外輪軌道と該軸受用内輪軌道の間に配置された複数の転動体とを備える。

　前記クラッチ用保持器の軸方向両端部のうちで、前記凹部のうちの少なくとも一部の凹部と整合する部分には突部が形成され、該突部と前記少なくとも一部の凹部とを係合させることにより、前記カム面が形成された外径側円筒状部材あるいは内径側円筒状部材に対する前記クラッチ用保持器の相対回転が阻止される。

　特に、本発明のサポート軸受付きローラクラッチにおいては、第１サポート軸受を構成する前記外輪と前記内輪とのうちの一方である、径方向に関して前記カム面が設けられた外径側円筒状部材あるいは内径側円筒状部材と同じ側に設けられた第１軌道輪部材は、該カム面が設けられた外径側円筒状部材あるいは内径側円筒状部材と一体となっている。第１軌道輪部材の前記カム面と同じ側にある外周面あるいは内周面は、全周にわたって第１軌道面となっている。

　第２サポート軸受を構成する外輪と内輪とのうちの一方である、径方向に関して前記カム面が設けられた外径側円筒状部材あるいは内径側円筒状部材と同じ側に設けられた第２軌道輪部材は、該カム面が設けられた外径側円筒状部材あるいは内径側円筒状部材とは別体となっている。そして、第２軌道輪部材の外周面および内周面のうち、第１軌道面および前記カム面と同じ側にある外周面あるいは内周面は、全周にわたって第２軌道面となっている。

　前記カム面を構成する前記凹部は、第１軌道面および第２軌道面よりも径方向に凹む状態で設けられている。

　そして、前記クラッチ用保持器の軸方向両端部に形成された前記突部が、第１軌道輪部材側の前記凹部の奥端部と、第２軌道輪部材の端縁とに係合することにより、前記クラッチ用保持器の軸方向変位が規制されている。

　本発明のサポート軸受付きローラクラッチを実施する場合、より具体的には、第１サポート軸受および第２サポート軸受は、円筒ころ軸受により構成される。また、前記外径側円筒状部材は外輪部材とする。該外輪部材の軸方向両端部には、径方向内方に折れ曲がった第１内向鍔部および第２内向鍔部が形成されている。そして、第１内向鍔部と第２内向鍔部との間に存在する単一円筒状の内周面の両端部は、第１軸受用外輪軌道および第２軸受用外輪軌道となっており、該内周面の中間部は、クラッチ用外輪軌道となっている。

　前記内径側円筒状部材を、外周面をカム面としたクラッチ用内輪部材とする。該クラッチ用内輪部材と、第１軌道輪部材とは一体となっている。前記カム面を構成する前記凹部は、該クラッチ用内輪部材のうちで、第１軌道輪部材と反対側端縁に開口する。第１軌道輪部材のうちで前記クラッチ用内輪部材と反対側端部には、径方向外方に折れ曲がった第１外向鍔部が形成されている。

　第２軌道輪部材は、前記クラッチ用内輪部材のうちで前記凹部に対応する部分の厚さよりも大きな厚さを有する。そして、第２軌道輪部材の外周面を、第２軌道面である円筒状の第２軸受用内輪軌道とし、かつ、前記クラッチ用内輪部材と反対側端部には、径方向外方に折れ曲がった第２外向鍔部が形成されている。

　前記クラッチ用保持器は、軸方向に離隔して互いに同心に配置され、それぞれが円環状である１対のリム部と、該１対のリム部同士の間に円周方向に関して等間隔に設けられた複数の柱部とを備える。該クラッチ用保持器の軸方向両端部に設けられた前記１対のリム部の内周面のうちで、前記凹部に整合する部分に前記突部が形成されており、該突部が前記凹部に係合することにより、前記クラッチ用内輪部材に対する前記クラッチ用保持器の回転が阻止される。

　さらに、第１外向鍔部および第２外向鍔部は、第１内向鍔部と第２内向鍔部との間に配置され、第２軌道輪部材と前記クラッチ用内輪部材との分離防止が図られている。そして、この状態で、前記１対のリム部の内周面に設けられた前記突部が、前記凹部の奥端部と第２軌道輪部材の端縁との間で軸方向両側から挟持されることにより、前記クラッチ用内輪部材に対する前記クラッチ用保持器の軸方向変位が規制される。

　本発明のサポート軸受付きローラクラッチは、非分離な１組のユニットとして取り扱うことができるため、その部品管理および組立作業の容易化を図ることができる。また、それぞれの構成部材の干渉防止を確実に図ることができるため、その優れた伝達性能および耐久性が確保される。

図１は、本発明の実施の形態の１例について、一部の部品を省略した状態で示す半部断面図である。図２は、本発明の実施の形態の１例について、外輪を省略して組み立てた状態で、別体の内輪を設置した側から見た斜視図である。図３は、本発明の実施の形態の１例について、図２と逆側から見た斜視図である。図４は、本発明の実施の形態の１例について、径方向外方から見た正投影図である。図５は、本発明の実施の形態の１例について、別体の内輪を分離した状態で、図２と同じ方向から見た斜視図である。図６が、本発明の実施の形態の１例について、組立途中の状態で示す分解斜視図である。図７は、本発明の実施の形態の１例について、クラッチ用保持器と、ローラと、ばねとを組み付ける以前の状態で示す分解斜視図である。図８は、本発明の実施の形態の１例における、一体化された、クラッチ用内輪部材と第１軌道輪部材との斜視図である。図９は、本発明の実施の形態の１例における、クラッチ用保持器の斜視図である。図１０は、アイドリングストップ車のスタータ装置の概略正面図である。図１１は、サポート軸受付きローラクラッチが内蔵されたプーリ装置の半部断面図である。図１２は、一部を省略して示す、図１１のＡ－Ａ断面図である。図１３は、従来構造のサポート軸受付きローラクラッチの別例を示す断面図である。図１４は、図１３に示した構造から内輪を取り出して示す部分断面図である。図１５は、図１３のＢ－Ｂ断面図である。

　図１～図９は、本発明の実施の形態の１例を示している。本例のサポート軸受付きローラクラッチは、ローラクラッチ１０ｂの両側に第１サポート軸受２９および第２サポート軸受３０を設けることにより構成される。このため、本例のサポート軸受付きローラクラッチは、外径側円筒状部材である外輪部材２７と、内径側円筒状部材であるクラッチ用内輪部材２８、第１軌道輪部材３３、および、第２軌道輪部材３４と、カム面１８ｂと、円筒面１７ａと、複数のローラ１４と、クラッチ用保持器１５ｂとを備える。

　外輪部材２７は、軸受鋼、肌焼鋼などの硬質金属板を曲げ加工により形成され、プーリ、歯車などの外径側動力伝達部材、あるいは、ハウジングなどの外径側保持部材に設けられた保持孔に、締まり嵌めにより内嵌固定される。外輪部材２７の軸方向両端部には、径方向内方に折れ曲がった第１内向鍔部３１および第２内向鍔部３２が形成されている。第１内向鍔部３１は、サポート軸受付きローラクラッチの組み立て以前に形成され、外輪部材２７の円筒状の外径側本体部分３８と、ほぼ同等の厚さを有する。これに対して、第２内向鍔部３２は、外輪部材の２７の内径側にサポート軸受付きローラクラッチの構成部材が組み込まれた後に形成され、外径側本体部分３８よりも薄肉である。円筒面１７ａは、第１内向鍔部３１と第２内向鍔部との間に存在する単一円筒状の内周面で、円筒面１７ａの両端部には、第１軸受用外輪軌道３５および第２軸受用外輪軌道３６が形成され、内周面１７ａの中間部には、クラッチ用外輪軌道３７が形成される。

　クラッチ用内輪部材２８と、第１軌道輪部材３３および第２軌道輪部材３４とは、外輪部材２７の内径側に、外輪部材２７と同心に配置され、回転軸などの内径側動力伝達部材、あるいは、支持軸などの内径側保持部材に、締まり嵌めにより外嵌固定される。クラッチ用内輪部材２８と第１軌道輪部材３３は、一体となっている。クラッチ用内輪部材２８と第１軌道輪部材３３は、単一の硬質金属板を曲げ加工することにより得られる、円筒状の内径側本体部分３９と、円筒状の内径側本体部分３９の基端部から径方向外方に折れ曲げられて形成された第１外向鍔部４０とにより構成される。そして、内径側本体部分３９の外周面の基端寄り部分には、第１軸受用内輪軌道４１が形成される。すなわち、内径側本体部分３９の外周面の基端寄り部分（第１軌道輪部材３３の外周面）が、第１軌道面となる。内径側本体部分３９の外周面の中間部から先端寄り部分にかけて、それぞれが軸方向に長い複数の凹部１９が、円周方向に関して等間隔に、かつ、間欠的に形成され、円周方向にわたる凹凸面である、カム面１８ｂが構成される。カム面１８ｂのうちで凹部１９同士の間部分は、第１軸受用内輪軌道４１と単一の円筒面上に存在しており、凹部１９は、第１軸受用内輪軌道４１が形成された内径側本体部分３９の外周面の基端寄り部分（第１軌道面）よりも径方向に凹む状態で設けられる。そして、凹部１９の端部は、内径側本体部分３９の先端面に開口している。

　第２軌道輪部材３４は、クラッチ用内輪部材２８および第１軌道輪部材３３とは、別体となっている。第２軌道輪部材３４は、クラッチ用内輪部材２８および第１軌道輪部材３３と同様に、軸受鋼、肌焼鋼などの硬質金属板を曲げ加工することにより形成される。第２軌道輪部材３４の円筒状の外周面には、第２軸受用内輪軌道４２が形成され、クラッチ用内輪部材２８とは反対側にある端部には、径方向外方に折れ曲がった第２外向鍔部４３が形成されている。すなわち、第２軌道輪部材３４の外周面が、第２軌道面となる。第２軌道輪部材３４のうちで、第２軸受用内輪軌道４２が形成されている部分の厚さは、第１軌道輪部材３３のうちで、第１軸受用内輪軌道４１が形成されている部分の厚さと同じとなっている。また、第１軸受用内輪軌道４１と第２軸受用内輪軌道４２の外径は、互いに同じとなっている。したがって、クラッチ用内輪部材２８および第１軌道輪部材３３と第２軌道輪部材３４とを組み立てて、クラッチ用内輪部材２８の先端縁と第２軌道輪部材３４の先端縁とが互いに突き合わされた状態では、第２軌道輪部材３４の先端縁が、第２軸受用内輪軌道４２が形成されている第２軌道輪部材３４の外周面（第２軌道面）から凹む状態で設けられた凹部１９の先端開口を塞ぐことになる。

　複数のローラ１４は、クラッチ用保持器１５ｂに保持された状態で、カム面１８ｂと、クラッチ用外輪軌道３７との間の円筒状空間内に配置される。クラッチ用保持器１５ｂは、合成樹脂を射出成形することにより形成され、ラジアルニードル軸受を構成するかご形保持器と同様に、略円筒状となっている。すなわち、軸方向に離隔して互いに同心に配置され、それぞれが円環状である１対のリム部４４ａ、４４ｂ同士の間に、複数の柱部４５が、円周方向に関して等間隔、かつ、互いにに平行に設けられている。そして、これらのリム部４４ａ、４４ｂと円周方向に隣り合う柱部４５とにより四周を囲まれた部分のそれぞれが、ポケット４６を構成し、それぞれのポケット４６内に、ローラ１４が、転動および周方向に関する若干の変位を可能に配置される。

　リム部４４ａ、４４ｂの内周面のうちで、凹部１９に整合する部分には、それぞれ突部４７ａ、４７ｂが形成されており、これらの突部４７ａ、４７ｂが、それぞれ凹部１９に係合することにより、クラッチ用内輪部材２８に対するクラッチ用保持器１５ｂの回転が阻止される。また、一方の突部４７ａは、凹部１９の第１軌道輪部材３３側にある奥端部（第１軌道部材３３の先端面）に係合して、クラッチ用保持器１５ｂの第１外向鍔部４０の側への変位が阻止される。また、他方の突部４７ｂは、第２軌道輪部材３４の先端縁（先端面）と係合して、クラッチ用保持器１５ｂが第２外向鍔部４３の側に変位することが阻止される。したがって、本例のサポート軸受付きローラクラッチの組み立て状態では、クラッチ用保持器１５ｂが、図１に示した状態から、軸方向に関していずれの方向にも、大きく、たとえば軸受用保持器２４ａ、２４ｂを挟み付けてしまう程度にまで、変位することはない。なお、本例では、突部４７ａ、４７ｂは、すべての凹部１９に整合する部分に設けられているが、これらの突部４７ａ、４７ｂを、一部の凹部１９と整合する部分、たとえば、周方向の２箇所から４箇所に、あるいは、交互に半数の凹部と整合する部分に設けることもできる。

　ローラ１４と柱部４５との間には、それぞれが弾性金属板を折り曲げることにより形成されたばね１６が配置され、ばね１６により、ローラ１４は、円周方向に関して同じ方向に押圧される。すなわち、ローラ１４は、クラッチ用保持器１５ｂとともに、カム面１８ｂとクラッチ用外輪軌道３７との間に存在する環状空間に組み付けられた状態で、この環状空間のうち、凹部１９から外れた、径方向に関する幅が狭い側に向けて、ローラ１４が弾性的に押圧される。

　さらに、第１サポート軸受２９および第２サポート軸受３０は、クラッチ用保持器１５ｂを軸方向両側から挟む位置に配置される。第１サポート軸受２９は、外輪として機能する、外輪部材の２７の円筒面１７ａの一方側の端部と、第１軸受用外輪軌道３５と、内輪として機能する、第１軌道輪部材３３と、第１軸受用内輪軌道４１と、これらの軌道３５、４１の間に、軸受用保持器２４ａに保持された状態で転動自在に配置された、複数のころ２６とにより構成される。また、第２サポート軸受３０は、外輪として機能する、外輪部材の２７の円筒面１７ａの他方側の端部と、第２軸受用外輪軌道３６と、内輪として機能する、第２軌道輪部材３４と、第２軸受用内輪軌道４２と、これらの軌道３６、４２の間に、軸受用保持器２４ｂに保持された状態で転動自在に配置された、複数のころ２６とにより構成される。なお、これらの軸受用保持器２４ａ、２４ｂを構成する柱部の外周面には、それぞれ凹溝４９が、柱部を軸方向に貫通する状態で設けられており、本例のサポート軸受付きローラクラッチを潤滑するための潤滑剤が流通しやすくなっている。本例では、第１サポート軸受２９および第２サポート軸受３０として、円筒ころ軸受が採用されているが、用途に応じて、転動体として玉を用いる玉軸受などが採用される場合もあり、この場合にも、本発明は適用される。

　クラッチ用内輪部材２８と第２軌道輪部材３４とは、他の構成部材とともに、図７に示した状態から、図６に示した状態、図５に示した状態を経て、図２～図４に示した状態となるように、外輪部材２７の内径側に組み付けられる。すなわち、クラッチ用内輪部材２８および第２軌道輪部材３４の周囲に、ローラクラッチ１０ｂ、第１サポート軸受２９および第２サポート軸受３０の構成部材を組み付けた状態で、クラッチ用内輪部材２８と第２軌道輪部材３４との先端縁同士を突き合わせることで、図２～図４に示されるサブアッセンブリユニット４８が構成される。そして、このサブアッセンブリユニット４８を、図１に示すように、外輪部材２７の内径側に組み付ける。この組み付け作業の途中の段階までは、薄肉の第２内向鍔部３２は形成されていない。そして、サブアッセンブリユニット４８が外輪部材２７の内径側に挿入された後、第２内向鍔部３２を曲げ加工により形成する。この状態で、第１外向鍔部４０および第２外向鍔部４３が、第１内向鍔部３１と第２内向鍔部３２の軸方向内側に配置された状態、好ましくは軸方向に内嵌された状態となり、第２軌道輪部材３４とクラッチ用内輪部材２８との分離防止が図られる。また、クラッチ用内輪部材２８に対するクラッチ用保持器１５ｂの軸方向変位も規制される。

　本例のサポート軸受付きローラクラッチによれば、ローラクラッチ１０ｂと、第１サポート軸受２９と、第２サポート軸受３０とを、非分離な１組のユニットとして取り扱うことができる。このため、エンジンのスタータ装置など、サポート軸受付きローラクラッチが動力伝達部に組み込まれる各種機械装置の部品管理および組立作業の容易化を図ることができる。

　また、本例のサポート軸受付きローラクラッチでは、クラッチ用保持器１５ｂが軸方向に変位してしまうことが防止される。このため、クラッチ用保持器１５ｂの両端部に設けたリム部４４ａ、４４ｂと、外輪部材２７の両端部に設けた第１内向鍔部３１および第２内向鍔部３２との間隔が、いずれも軸受用保持器２４ａ、２４ｂの軸方向幅よりも小さくなることはない。このため、第１サポート軸受２９と第２サポート軸受３０のいずれに関しても、軸受用保持器２４ａ、２４ｂが、１対の面同士の間、すなわち、リム部４４ａの外側面と第１外向鍔部４０の内側面との間でも、リム部４４ｂの外側面と第２外向鍔部４３の内側面との間でも、いずれも挟持されることはない。この結果、オーバラン状態でのサポート軸受付きローラクラッチの回転抵抗が低く抑えられ、かつ、発熱が抑えられて、その耐久性が確保される。

　さらに、第１サポート軸受および第２サポート軸受３０に関しても、内輪軌道輪および外輪軌道輪の厚さが十分に確保され、しかもその加工が容易である。すなわち、共通の外輪部材２７に関しては、第２内向鍔部３２が形成される部分を除き、外輪として十分な厚さが確保される。また、第１軌道輪部材３３および第２軌道輪部材３４はいずれも、カム面１８ｂを形成するための凹部１９の存在に関係なく、十分な厚さ寸法を有する。この結果、内輪軌道輪および外輪軌道輪の強度ならびに形状精度が確保され、第１サポート軸受２９および第２サポート軸受３０の信頼性および耐久性が十分に確保される。

　加えて、第１サポート軸受２９および第２サポート軸受３０の仕様を同じにすることができる。すなわち、第１サポート軸受２９と第２サポート軸受３０との間で、共通の外輪部材２７が使用されるので、その内径を軸方向にわたって一定とすることができ、かつ、第１軌道輪部材３３と第２軌道輪部材３４の外径を互いに同じとすることができる。また、第１軌道輪部材３３と第２軌道輪部材３４の軸方向寸法に関しても、特に制約を受けることなく、一致させることができる。したがって、第１サポート軸受２９および第２サポート軸受３０を構成する、ころ２６の直径、軸方向長さ、数を、第１サポート軸受２９と第２サポート軸受３０との間で、同じにすることができる。この結果、サポート軸受付きローラクラッチの回転バランスを良好にでき、運転時に振動や騒音が発生しにくくでき、かつ、その耐久性の確保も容易になる。

　なお、本例では、クラッチ用内輪１２の外周面をカム面１８ｂとし、クラッチ用外輪１３の内周面を円筒面とした構造を有する。ただし、クラッチ用内輪１２の外周面を円筒面とし、クラッチ用外輪１３の内周面をカム面とした構造のローラクラッチも、本発明のサポート軸受付きローラクラッチに適用することが可能である。

　本発明は、アイドリングストップ車用のスタータ装置の動力伝達部に限らず、各種自動車用補機、トランスミッション用オイルポンプなどを含む、各種機械装置の動力伝達部に適用することができる。

　　１　　エンジン
　　２　　クランクシャフト
　　３　　従動プーリ
　　４　　スタータモータ
　　５　　回転駆動軸
　　６　　駆動プーリ装置
　　７　　無端ベルト
　　８　　スリーブ
　　９　　プーリ
　１０、１０ａ、１０ｂ　ローラクラッチ
　１１、１１ａ、１１ｂ　サポート軸受
　１２　　クラッチ用内輪
　１３　　クラッチ用外輪
　１４　　ローラ
　１５、１５ａ、１５ｂ　クラッチ用保持器
　１６　　ばね
　１７、１７ａ　円筒面
　１８、１８ａ、１８ｂ　カム面
　１９　　凹部
　２０　　外輪
　２１　　内輪
　２２　　係止溝
　２３　　柱部
　２４、２４ａ、２４ｂ　軸受用保持器
　２５　　内向鍔部
　２６、２６ａ、２６ｂ　ころ
　２７　　外輪部材
　２８　　クラッチ用内輪部材
　２９　　第１サポート軸受
　３０　　第２サポート軸受
　３１　　第１内向鍔部
　３２　　第２内向鍔部
　３３　　第１軌道輪部材
　３４　　第２軌道輪部材
　３５　　第１軸受用外輪軌道
　３６　　第２軸受用外輪軌道
　３７　　クラッチ用外輪軌道
　３８　　外径側本体部分
　３９　　内径側本体部分
　４０　　第１外向鍔部
　４１　　第１軸受用内輪軌道
　４２　　第２軸受用内輪軌道
　４３　　第２外向鍔部
　４４ａ、４４ｂ　リム部
　４５　　柱部
　４６　　ポケット
　４７ａ、４７ｂ　突部
　４８　　サブアッセンブリユニット
　４９　　凹溝

Claims

　外径側円筒状部材と、該外径側円筒状部材の内径側に、該外径側円筒状部材と同心に配置された内径側円筒状部材と、前記外径側円筒状部材の内周面と前記内径側円筒状部材の外周面とのうちの一方の周面に形成され、軸方向に長い複数の凹部が円周方向に関して間欠的に設けられているカム面と、前記外径側円筒状部材の内周面と前記内径側円筒状部材の外周面とのうちの他方の周面に形成された円筒面と、前記カム面と前記円筒面との間の円筒状空間内に配置された複数のローラと、前記円筒状空間内に配置され、前記ローラを転動ならびに円周方向に関する変位を可能に保持するクラッチ用保持器と、前記クラッチ用保持器と前記ローラとの間に設けられ、前記ローラを前記円筒状空間の径方向の幅が狭い部分に向け、円周方向に関して同じ方向に押圧する複数のばねと、前記クラッチ用保持器を軸方向両側から挟む位置に設けられた、第１サポート軸受および第２サポート軸受と、を備え、
　第１サポート軸受および第２サポート軸受はそれぞれ、外輪と、該外輪の内周面に形成された軸受用外輪軌道と、内輪と、該内輪の外周面に形成された軸受用内輪軌道と、該軸受用外輪軌道と該軸受用内輪軌道の間に配置された複数の転動体とを備え、
　前記クラッチ用保持器の軸方向両端部のうちで、前記凹部のうちの少なくとも一部の凹部と整合する部分には突部が形成されており、該突部と前記一部の凹部とを係合させることにより、前記カム面が形成された外径側円筒状部材あるいは内径側円筒状部材に対する前記クラッチ用保持器の相対回転が阻止されており、
　第１サポート軸受を構成する前記外輪と前記内輪とのうちの一方である、径方向に関して前記カム面が設けられた外径側円筒状部材あるいは内径側円筒状部材と同じ側に設けられた第１軌道輪部材は、該カム面が設けられた外径側円筒状部材あるいは内径側円筒状部材と一体であって、第１軌道輪部材の前記カム面と同じ側にある外周面あるいは内周面は、全周にわたって第１軌道面となっており、
　第２サポート軸受を構成する前記外輪と前記内輪とのうちの一方である、径方向に関して前記カム面が設けられた外径側円筒状部材あるいは内径側円筒状部材と同じ側に設けられた第２軌道輪部材は、前記円筒状部材と別体であって、第１軌道面と同じ側にある外周面あるいは内周面は、全周にわたって第２軌道面となっており、および、
　前記カム面を構成する前記凹部は、第１軌道面および第２軌道面よりも径方向に凹む状態で設けられており、前記クラッチ用保持器の軸方向両端部に形成された前記突部が、第１軌道輪部材側の前記凹部の奥端部と、第２軌道輪部材の端縁とに係合している、
サポート軸受付きローラクラッチ。
　前記外径側円筒状部材は、軸方向両端部に、径方向内方に折れ曲がった第１内向鍔部および第２内向鍔部が形成され、第１内向鍔部および第２内向鍔部との間に存在する単一円筒状の内周面の両端部は、第１軸受用外輪軌道および第２軸受用外輪軌道となっていて、該内周面の中間部は、クラッチ用外輪軌道となっている、外輪部材からなり、
　前記内径側円筒状部材が、外周面をカム面としたクラッチ用内輪部材であって、該クラッチ用内輪部材と第１軌道輪部材とは一体であり、前記カム面を構成する前記凹部は、該クラッチ用内輪部材のうちで、第１軌道輪部材と反対側端縁に開口しており、第１軌道輪部材のうちで前記クラッチ用内輪部材と反対側の端部に、径方向外方に折れ曲がった第１外向鍔部が形成されており、
　第２軌道輪部材は、前記クラッチ用内輪部材のうちで前記凹部に対応する部分の厚さよりも大きな厚さを有し、第２軌道輪部材の外周面は、第２軌道面である円筒状の第２軸受用内輪軌道となっており、かつ、前記クラッチ用内輪部材と反対側端部には、径方向外方に折れ曲がった第２外向鍔部が形成されており、
　前記クラッチ用保持器は、軸方向に離隔して互いに同心に配置され、それぞれが円環状である１対のリム部と、該１対のリム部同士の間に円周方向に関して等間隔に設けられた複数の柱部とを備え、前記１対のリム部の内周面のうちで、前記凹部に整合する部分に前記突部が形成されており、かつ、
　第１外向鍔部および第２外向鍔部は、第１内向鍔部と第２内向鍔部との間に配置された状態で、前記１対のリム部の内周面に設けられた前記突部が、前記凹部の奥端部と第２軌道輪部材の端縁との間で軸方向両側から挟持されている、
請求項１に記載したサポート軸受付きローラクラッチ。
　第１サポート軸受および第２サポート軸受は、円筒ころ軸受である、請求項２に記載したサポート軸受付きローラクラッチ。