WO2013005784A1

WO2013005784A1 - カナル型受話器

Info

Publication number: WO2013005784A1
Application number: PCT/JP2012/067132
Authority: WO
Inventors: 勇小泉
Original assignee: Koizumi Isamu
Priority date: 2011-07-05
Filing date: 2012-07-04
Publication date: 2013-01-10
Also published as: US8942406B2; JP4913256B1; US20140193022A1; JP2013017150A

Abstract

　本発明は、前後及び／又は上下に亘る音場を再生可能とするカナル型受話器を提供することを目的とし、このため、カナル型受話器のイヤーピースを、略円筒状であって、その内部に受話器内の発音体ユニットから放射される音波を外耳道内に放出する音導管を含む筒状部を有するとともに、音導管を、イヤーピースの筒状部が外耳道内の所定の位置に装着された状態において、音波の方向音波放射軸が外耳道の壁の所定の位置に向くように構成することにより、音導管から放射された音波を、外耳道壁の一部に反射させて鼓膜へ到達させることを特徴とする。

Description

カナル型受話器

　本発明は、カナル型受話器に関し、例えばイヤホン、ヘッドホン、サラウンドヘッドホン、ノイズキャンセリングヘッドホン、ゲーム機用受話器、テレビ用受話器、移動通信機器用受話器、補聴器、電子聴診器を含む聴診器、航空機内で使用する音響機器、携帯型音響機器などに好適なものである。

　受話器は音を聴くための多くの聴音機器に使用されている。耳に被すようにつくられた覆いの中に受話器を組み込んだものがヘッドホンであり、受話器を耳甲介に挿入して使用するイントラコンカ型（インナーイヤー型ともいう。）や、受話器のイヤーピースを外耳道に直接差し込んで使用するカナル型と呼ばれるものも知られている。イントラコンカ型やカナル型のように、耳に差し込んで使用するタイプの受話器を総称してインナー型受話器という。これらは、携帯電話などの電話機器、マイクから集音した音を電気的に増幅した後に受話器によって鼓膜に伝える補聴器などにも使用されている。受話器は、スピーカーなどの発音体をハウジングに収め、発音体からの音波を、耳介や外耳道口や外耳道内へ放射して使用する。カナル型受話器の使用においては、イヤーピースが必要となる。また、ヘッドホンにおいては、耳介の機能を利用したものに関する文献が散見されている。

　従来のカナル型受話器での片耳聴音（片方の耳だけで聞く聴音を言い、単耳聴音とも言う。）は不明瞭かつ不自然であるという問題があった。
　また、両耳聴音においても、音が頭の中で鳴ってしまうという「頭内定位」の問題がいまだ解決されたとは言えない。また上方向からの音と下方向からの音の識別可能な受話器も提供されていない。
　「頭内定位」の問題の解決のための提案が特許文献１と特許文献２に開示されている。

特開２００６－２２２９６２特開２００５－１１７５９４

　本願の目的は、片耳聴音のみでも前後に亘る音場を再生可能とするカナル型受話器を使用することで前後音の識別を可能とし、かつ明瞭で自然な聴音ができ、また、両耳聴音においては、頭内定位問題を解決したカナル型受話器、片耳聴音のみでも前後音の識別、上下前後にわたる音場が再生可能なカナル受話器を提供することにある。

　本発明は、外耳道に挿入して使用されるイヤーピースを備えたカナル型受話器に関し、本発明の上記目的は、
　前記イヤーピースは、略円筒状であって、その内部に前記受話器内の発音体ユニットから放射される音波を前記外耳道内に放出する音導管を含む筒状部を有するとともに、
　該音導管を、前記イヤーピースの前記筒状部が前記外耳道内の所定の位置に装着された状態において、前記音波の方向音波放射軸が前記外耳道の壁（以下「外耳道壁」という。）の所定の位置に向くように構成することにより、前記音導管から放射された音波を、前記外耳道壁の一部に反射させて鼓膜へ到達させることを特徴とするカナル型受話器によって達成される。

　また、本発明の上記目的は、前記発音体ユニットのハウジングの前面に突設した先端から音を放出する略筒状のハウジング音導管を前記イヤーピース内の音導管としたことを特徴とする前記のカナル型受話器によって達成される。

　さらに、本発明の上記目的は、前記音導管の方向音波放射軸が、前記外耳道内の前頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする前記のカナル型受話器によって効果的に達成される。

　またさらに、本発明の上記目的は、前記イヤーピース内に備えた第２の音導管と、該第２の音導管に音波を放射する第２の発音体ユニットとを備え、該第２の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の後頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする前記のカナル型受話器によってさらに効果的に達成される。

　さらにまた、本発明の上記目的は、前記音導管を複数本有するイヤーピースと、前記各音導管にそれぞれ接続された複数の発音体ユニットを備えたカナル型受話器であって、
　前記各音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内においてそれぞれ異なる向きなるように構成されていることを特徴とする前記のカナル型受話器によっても達成される。

　本発明の上記目的は、前記音導管のうちの最短の音導管と、該音導管に接続された発音体ユニットとから成る音導管発音体を直接音用とし、前記最短の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の前頭部側の側壁に向くように構成するとともに、前記直接音用の音導管発音体以外の音導管発音体をすべて間接音用とし、該間接音用の音導管発音体の方向音波放射軸を前頭部側の側壁以外のそれぞれ異なる外耳道壁部位へ向けたことを特徴とする前記のカナル型受話器によって達成される。

　また、本発明は、カナル型受話器に使用されるイヤーピースに関し、本発明の上記目的は、前記イヤーピースは略円筒状であって、その内部に音導管を備えるとともに、前記音導管は、前記イヤーピースが前記外耳道内の所定の位置に装着された状態において、前記音波の方向音波放射軸が前記外耳道壁の所定の位置に向くように構成されていることを特徴とするイヤーピースによって達成される。

　また、本発明の上記目的は、前記音導管の方向音波放射軸が、前記外耳道内の前頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする前記のイヤーピースによって達成される。

　さらに、本発明の上記目的は、第２の音導管を備え、該第２の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の後頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする前記のイヤーピースによって効果的に達成される。

　またさらに、本発明の上記目的は、第２及び第３の音導管を備え、該第２の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の上方の側壁に向き、前記第３の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の下方の側壁に向くように構成されていることを特徴とする前記のイヤーピースによって効果的に達成される。

　さらにまた、本発明の上記目的は、第３及び第４の音導管を備え、該第３の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の上方の側壁に向き、前記第４の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の下方の側壁に向くように構成されていることを特徴とする前記のイヤーピースによって効果的に達成される。

　本発明に係るカナル型受話器の好ましい実施の形態によれば、片耳聴音のみでも前後あるいは上下に亘る音場が再生可能となることで前後又は上下音の識別を可能とし、かつ明瞭で自然な聴音ができる。また、両耳聴音においては、頭外定位が可能となる。

音波放射軸の概念を説明するための図である。ハウジング音導管、音導管、音波放射断面を説明するための図である。本願発明に係るカナル型受話器の概略横断面図の一例を示す図である。外耳道面での頭部横断面図（ａ）と、外耳道に従来のカナル型受話器が挿入された状態を示す図（ｂ）である。外耳道に本発明に係るカナル型受話器が挿入された状態を示す頭部横断面図であり、（ａ）は前方定位用受話器、（ｂ）は後方定位用受話器が挿入された例を示す図である。外耳道に本発明に係るカナル型受話器が挿入された状態を示す頭部縦断面図であり、（ａ）は上方定位用受話器、（ｂ）は下方定位用受話器が挿入された例を示す図である。右耳用前後音場受話器の鼓膜側から見た正面図を示す図である。右耳用前後音場受話器の横断面を示す図である。右耳用の前後音場受話器を装着した場合の外耳道の横断面図を示す図である。ホーン形をした音導管内腔形状の概略図を示す図である。図７Ｄのホーン形状の音導管音波放射口を鼓膜側から見た正面図である。右耳用上下前後音場受話器の、概略斜視図（ａ）、上下音導管の縦断面の概略図（ｂ）、鼓膜側から見た正面図（ｃ）を示す。上下前音イヤーピースの実施例を示す図である。右耳用多チャンネル受話器の一例を示す断面図である。主音導管と分枝音導管の関係を示す図である。右耳用多音波放射軸発音体の、３分枝音導管の一例の概略横断面図（ａ）と正面図（ｂ）を示す図である。（ａ）遅延分枝音導管付きイヤーピースと、（ｂ）Ｄ１音導管付きイヤーピースの実施例を示す図である。（ａ）矢状面軸入射角、（ｂ）横断面軸入射角を説明するための図である。音波拡散器又は音波反射器の実施例を示す図である。右耳用チューブ式ヘッドホンの実施例を示す図である。右耳用チューブ式サラウンドヘッドホンの実施例を示す図である。

　本発明のカナル型受話器に使用する発音体とは、スピーカーまたはその他の電気音響変換素子を含むものである。

　本出願においては、発音体を収めたハウジングに設けられた音波放射用の略筒状の音導管をハウジング音導管と称し、ハウジング音導管を有するハウジングに収めた発音体を発音体ユニットと称することとする。以下で述べるイヤーピースとは、このハウジング音導管に嵌合する管若しくは音導管を埋設した筒状部を有するイヤーピースのことを指し、筒状部の一端側に連結し、筒状部の外側にそれを覆うように傘状に延在する傘状部を有していても良い。特に断りのない場合は、本願発明に係る受話器のイヤーピースや受話器の横断面図は、全て上から見た横断面図をいい、正面図とは鼓膜側から見た正面図をいう。

　図１は音波放射軸の概念を説明するための図である。音波放射軸について、発音体としてスピーカーを用いた例で示すと、音電気信号を音波に変換する発音体１０の中心と、発生音波の進行方向での音波の中心とを結ぶ軸を音波放射軸１１と称し、矢印は音波の進む方向を示す。

　図２は、ハウジング音導管、音導管、音波放射断面を説明するための図である。図２において、発音体ユニット１２にハウジング音導管１３が接続され、さらに音導管１４が接続されている状態を示し、音導管１４の音波を放射する側の断面を音波放射断面１５と称する。なお、１つの音導管を１つの発音体ユニットに接続した複合体を、以後、音導管発音体と称する。この図では、音導管１４は曲げられた状態になっているが、１６は音導管１４を曲げた場合の音導管発音体の音波放射軸を示し、音波放射断面１５の中心から音波放射断面１５に対して垂直な軸となる。ここでは解りやすくするため、ハウジング音導管１３と接続した音導管１４のイヤーピースの傘状部は省略している。

　図３は、本願発明の一部であるカナル型受話器の一例の概略横断面図である。カナル型受話器において、ハウジング音導管１３と嵌合接続する（以後、単に接続という。）イヤーピース筒状部内の音導管１７を備えるカナル型受話器においては、ハウジング音導管１３とイヤーピース筒状部内の音導管１７、あるいはハウジング音導管１３に接続された音導管１４は機能として同じであるため、以後これらを共に管内音導管と総称することとする。管内音導管の音波放射断面１２の中心から発生音波の進行方向での音波の中心とを結ぶ軸を音導管音波放射軸１８と称する。
　矢印は音波の進む方向を示す。以後音波放射軸と音導管音波放射軸との両方は共に音波放射方向を示すため、この両方を方向音波放射軸と総称することとする。

　図４は、外耳道面での頭部横断面図（図４（ａ））と、外耳道に従来のカナル型受話器が挿入された状態を示す図（図４（ｂ））である。図４（ａ）において、２１は外耳道、２２は耳珠、２３は耳介を示し、２４は外耳道２１の中心軸である。図４（ｂ）は、外耳道２１に従来のカナル型受話器２５のイヤーピースの先端が挿入された状態を示す図であり、外耳道の中心軸２４とイヤーピースの中心軸２６（すなわち、従来のカナル型受話器２５の発音体ユニットの方向音波放射軸に等しい。）とが平行であった。

　図５は、外耳道に本発明に係るカナル型受話器２７が挿入された状態を示す頭部横断面図である。
　すなわち、本発明のカナル型受話器２７が外耳道に挿入されている場合は、外耳道の中心軸２４と、このカナル型受話器２７の発音体ユニットの方向音波放射軸２６とが平行とならないように、発音体ユニットの方向音波放射軸２６を外耳道の側壁の一部に向けて音波を放射する構造とする。２８は管内音導管である。

　発音体ユニットの方向音波放射軸を外耳道壁の一部に向けて音波を放射すると、放射された外耳道壁の部位の違いによって鼓膜への音波の伝達の仕方に違いが生じ、この違いが音情報の１つである音の到来方向の情報となることが判明した。即ち、外耳道壁の異なる部位ヘ方向音波放射軸を向けて音波を放射すると、異なる方向からの到来音波として知覚することができ、その結果として、音質の向上も達成されていることが判明した。これは新たな外耳道機能の発見である。音波を一旦外耳道壁に反射させると音波が効率よく鼓膜へ到達され音質の向上が生じたと思われる。

　図５において、（ａ）に示す様に、カナル型受話器においてイヤーピースの先端が外耳道に挿入されている状態で発音体ユニットの方向音波放射軸２６を外耳道の前頭部側の側壁２９に向けて音波を放射すると、前方音として知覚でき、（ｂ）に示す様に発音体ユニットの方向音波放射軸２６を外耳道の後頭部側の側壁３０に向けて音波を放射すると、後方音として知覚できる。ここで言う外耳道の前頭部側の側壁２９とは外耳道の鼻側の側壁のことであり、外耳道の後頭部側の側壁３０とは外耳道の後頭部側の側壁のことである。後述のように、（ａ）の受話器を前方定位受話器、（ｂ）の受話器を後方定位受話器と呼ぶ。

　図６は頭部の外耳道部での縦断面図であり、（ａ）の様に方向音波放射軸２６を外耳道の上面壁３１に向けて音波を放射すると上方向からの音として、（ｂ）の様に方向音波放射軸２６を外耳道の下面壁３２に向けて音波を放射すると下方向からの音として、それぞれ知覚されることが判明した。２８は管内音導管、２３は耳介を示す。
　図６の外耳道での縦断面で示す様に、（ａ）の発音体の方向音波放射軸２６をイヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の上壁３１に向けて音波を放射する発音体ユニットを使用した方式の受話器を、以後は上方定位受話器と称し、（ｂ）の様に発音体の方向音波放射軸２６をイヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の下壁３２に向けて音波を放射する発音体ユニットを使用した方式の受話器を以後は下方定位受話器と称することとする。

　従って、発音体ユニットの方向音波放射軸を所定の外耳道壁部位へ向けて音波を放射させるように管内音導管を配設したイヤーピースを使用したカナル型受話器の構造であれば、所望の方向から到来した音として聴取できるカナル型受話器が提供可能となる。従って、外耳道に音導管を挿入して音波を鼓膜へ伝達する聴音装置において、管内音導管の方向音波放射軸を所定の外耳道壁に向けて音波を放射すれば、所望の方向から到来した音として聴取できる聴音装置や受話器を提供できる。

　このように、発音体ユニットの方向音波放射軸を外耳道壁の一部に放射することにより到来音の方向が認知され、かつ頭外定位し、しかも立ち上がりの良い高音質な聴音が可能となる効果が得られ、更に、頭内定位よりも前方定位させる方が広い空間の音場で聴けるため、定位分解能が高まる効果も得られる。

　イヤーピース内の音導管の方向音波放射軸が、イヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の前頭部側の側壁に向けて音波を放射するよう、イヤーピース内に音導管を配設したイヤーピースを、以下、前方音イヤーピースと称することとする。

　前方音イヤーピースに発音体ユニットを接続した受話器を、以後、前方定位受話器と称し、これを左右一対で使用すれば、前方定位したステレオ用カナル型受話器となる。イヤーピース内の音導管ではなくてハウジング音導管を延長して前方音イヤーピース内の音導管の代用としても同様な効果が得られる。また、イヤーピース内の音導管の方向音波放射軸を、イヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の後頭部側壁に向けて音波を放射するよう、イヤーピース内の音導管を配設したイヤーピースを後方音イヤーピースと称し、後方音イヤーピースに発音体ユニットを接続した受話器を、以後は、後方定位受話器と称する。前方定位受話器と後方定位受話器とを備えた受話器とすれば前後の音場が再生可能となる。

　イヤーピースを使用する受話器において、イヤーピース内に第１音導管と第２音導管の２本の音導管を備え、第１音導管の方向音波放射軸を、イヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の前頭部側の側壁に向けて音波を放射するようイヤーピース内に配設し、第２音導管の方向音波放射軸を、イヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の後頭部側の側壁に向けて音波を放射するようイヤーピース内に配設したイヤーピースを前後音イヤーピースと称し、第１発音体を収めた発音体ユニットを第１発音体ユニットとし、第１発音体ユニットのハウジング音導管と第１音導管を接続し、第２発音体を収めた発音体ユニットを第２発音体ユニットとし、第２発音体ユニットのハウジング音導管と第２音導管を接続し、これらを組み合わせた受話器とすれば、前後音の識別が可能な前後の音場再生受話器となる。これを以後、前後音場受話器と称する。この場合、第１発音体ユニットは前方音担当発音体ユニットであり、第２発音体ユニットは後方音担当発音体ユニットとなる。以後、前方音担当発音体ユニットを前方発音体ユニットと称し、後方音担当発音体ユニットを後方発音体ユニットと称することとする。この前後音場受話器を使用すれば、片側の耳のみに受話器を使用して音を聞く片耳聴音においても、前後の音場が再生可能な受話器となる。

　上記イヤーピース内の第１音導管と第２音導管の代わりに、発音体ユニットのハウジング音導管を延長してイヤーピース内の第１音導管あるいは第２音導管の代用としても同様な効果が得られる。イヤーピース内の第２音導管を第１音導管より長くし、第２音導管に接続した発音体ユニットからの音波を遅延させて鼓膜へ到達させれば、第２音導管から放射される音波で間接音効果が得られ、前方定位がより明確となり分解能が向上する。
　例えば第２音導管の一部をコイル状として管路を長くするのも遅延時間を確保するのに有効である。

　以下、図を参照して本発明を実施するための形態のひとつとして、カナル型の前後音場受話器を説明する。図７Ａは、右耳用で外耳道へ挿入するイヤーピースを鼓膜側から見た正面図であり、４１は前方音用音波放射口、４２は後方音用音波放射口、４３はイヤーピースの傘状部を示す。
　図７Ｂは右耳用カナル型前後音場受話器の概略横断面図を示し、１つのイヤーピース筒状部５１内に第１音導管５２と第２音導管５３の２本の音導管を配し、第１音導管５２を前方音用音導管として前方発音体ユニット５４のハウジング音導管５５に接続し、該前方音用音導管の音波放射端面における方向音波放射軸５６をイヤーピースが外耳道に挿入されている状態で外耳道の前頭部側の外耳道壁に向けてイヤーピース内に配設し、第２音導管５３を後方音用音導管として後方発音体ユニット５７のハウジング音導管５８に接続し、該後方音用音導管の音波放射端面における方向音波放射軸５９をイヤーピースが外耳道に挿入されている状態で外耳道の後頭部側の外耳道壁に向けてイヤーピース筒状部内に配設する。それぞれのハウジング音導管を延長して第１音導管と第２音導管の代用としても良い。
　図７Ｃは前後音場受話器の外耳道における装着横断面図である。２４は外耳道中心軸、２２は耳珠、６０は対輪、５２は前方音用管内音導管、５３は後方音用管内音導管である。

　管内音導管の内腔の形状が音波放射端面において開くホーン型形状としても良い。図７Ｄにホーン型形状の管内音導管の内腔の一例の斜視図を示す。６１は音波放射端面、６２は発音体ユニットとの接続端腔を示す。図７Ｅは右耳用で管内音導管の内腔形状をホーン型とした場合の鼓膜側から見たイヤーピースの正面図で、６１Ｆは前方音用音波放射端面、６１Ｒは後方音用音波放射端面、４３はイヤーピースの傘状部を示す。
　この前後音場受話器を左右一対で使用すれば、カナル型受話器によるサラウンド再生用ヘッドホンとなる。

　　また、前後音場受話器に、この上方定位受話器と下方定位受話器を構成する２種類の発音体ユニットを加えれば、上下前後音場を聞き分けることが可能となる。図８（ａ）に右耳用の上下前後音場受話器の概略斜視図を示し、図８（ｂ）には解りやすくするため前音導管と後音導管は省略した上下音導管のみの縦断面の概略図を示す。前方発音体である第２発音体ユニット８１と後方発音体である第４発音体ユニット８２と上方音用発音体である第１発音体ユニット８４と下方音用発音体である第３発音体ユニット８３の４個の発音体ユニットで構成し、図７Ｂで示した前後音場受話器に更に上下に垂直に並べられた上位音導管８５と下位音導管８６の２本の音導管をイヤーピース内に追加し、上位音導管８５を上方音用音導管として上方音用発音体ユニット８４を接続し、上方音用発音体の方向音波放射軸８０６はイヤーピースが外耳道に挿入される外耳道の上部壁に向け、追加したもう１本の下位音導管８７を下方音用音導管として下方音用発音体ユニット８３を接続し、下方音用発音体の方向音波放射軸８０７はイヤーピースが外耳道に挿入される外耳道の下部壁に向けイヤーピース筒状部内に配置する。図８（ｃ）は鼓膜側から見た右の上下前後音場受話器正面図を示す。８０１は前方音放射口、８０２は後方音放射口、８０３は下方音放射口、８０４は上方音放射口、４３はイヤーピースの傘状部である。

　図８（ａ）に示すイヤーピースは、イヤーピース筒状部８０８内に第１音導管８５と第２音導管８６と第３音導管８７と第４音導管８８の４本の音導管を配置した右耳用イヤーピースと、該４本の音導管に４個の発音体ユニット（８１～８４）を接続した概略図であって、第１音導管の音導管音波放射軸を外耳道の上壁へ向け、第２音導管の音導管音波放射軸を外耳道の前頭部側の側壁へ向け、第３音導管の音導管音波放射軸を外耳道の下壁へ向け、第４音導管の音導管音波放射軸を外耳道の後頭部側の側壁へ向けて該４本の音導管を配置した筒状部の構成を有するイヤーピースを示し、このイヤーピースを以後上下前後音イヤーピースと称することとし、第１音導管を上方音用発音体を収めた第１発音体ユニット８４に接続し、第２音導管を前方発音体を収めた第２発音体ユニット８１に接続し、第３音導管を下方音用発音体を収めた第３発音体ユニット８３に接続し、第４音導管を後方発音体を収めた第４発音体ユニット８２に接続した受話器とすれば、上下前後方向からの到来音の方向を識別可能な受話器となる。

　またイヤーピース筒状部内の管内音導管の代わりに発音体ユニットのハウジング音導管を延長して第１音導管あるいは第２音導管あるいは第３音導管あるいは第４音導管の代用としても同様な効果が得られる。

　上下前後音イヤーピースの第４音導管とこれに接続する後音用発音体ユニットを省略して簡素化したイヤーピースを上下前音イヤーピースと称し、図９（ａ）に右耳用の上下前音イヤーピースの概略斜視図を示す。イヤーピース筒状部内に第１音導管９０１と第２音導管９０２と第３音導管９０３の３本の音導管を配置し、第１音導管の音導管音波放射軸を外耳道の上面壁へ、第２音導管の音導管音波放射軸を外耳道の前頭部側の側壁へ、第３音導管の音導管音波放射軸を外耳道の下面壁へ向けて３本の音導管をイヤーピース筒状部に配置したイヤーピースとし、第１音導管を上方音用発音体を収めた発音体ユニット９０４に接続し、第２音導管を前方発音体を収めた発音体ユニット９０５に接続し、第３音導管を下方音用発音体を収めた発音体ユニット９０６に接続した受話器とすれば、上下前方向からの到来音の方向を識別可能な右耳用上下前音受話器となる。図９（ｂ）は左耳用上下前音受話器を示す。これらの受話器を以後、上下前音場受話器と称する。またイヤーピース筒状部内の音導管の代わりにそれぞれの発音体ユニットのハウジング音導管を延長してイヤーピースの第１音導管あるいは第２音導管あるいは第３音導管の代用としても同様な効果が得られる。上述のとおり、前方発音体を収めた発音体ユニットは前方発音体ユニットであり、後方発音体を収めた発音体ユニットは後方発音体ユニットである。

　以下で述べる直接音とは、聞きたい音の音波発生源から最短時間で耳に入力される音のことであり、間接音とは、音波発生源からの音波が周囲の環境物体で一旦反射した後に直接音より遅れて耳に入力される音のことである。

　カナル型受話器において、１つのイヤーピースの筒状部内にＮ本（Ｎは２以上の整数）の音導管を備え、このイヤーピース内のＮ本の音導管の有する方向音波放射軸の外耳道側壁に対する入射角度をそれぞれ変えて、それぞれの音導管に対応したＮ個の発音体ユニットを接続することにより、イヤーピース筒状部内の音導管数と同数の異なる方向からの音源方向情報を鼓膜に入力させることが可能となる。即ちＮ方向の識別可能なＮチャンネル受話器となる。図１０にＮ＝３の場合の右耳用前方３チャンネル受話器の一例の概略横断面を示す。６０１は第１チャンネル用発音体ユニットを示し、６０２は第２チャンネル用発音体ユニット、６０３は第３チャンネル用発音体ユニットであり、６０４と６０５と６０６は方向音波放射軸を示し、４３はイヤーピース傘状部、６１１は第１チャンネルの音導管、６１２は第２チャンネルの音導管、６１３は第３チャンネルの音導管を示す。

　このＮ本の音導管のうちの最短の音導管に接続した発音体ユニットを直接音用とし、他の発音体ユニットを間接音用とすれば、前方定位した高音質な臨場感に富む音が受聴できる。直接音用の発音体ユニットの音導管音波放射軸は、イヤーピースが外耳道の前頭部側の側壁に向けて音波を放射するようにイヤーピース内に配設する。自然な聴音においては、聞きたい直接音とその他の無数の間接音が上下左右前後の多数の方向から到来してその音が鼓膜に入力されているので、Ｎの数を増加させればより自然な聴音に近づけることが可能となる。

　この複数の発音体ユニットのうち、イヤーピース内の最短の音導管と接続した発音体ユニットを直接音用の発音体ユニットとし、最短の音導管以外の音導管と接続した発音体ユニットを間接音担当の発音体ユニットとする。間接音用発音体ユニットを直接音用発音体ユニットを駆動する音声信号を所定の時間遅延させた音声信号で駆動すれば、より高音質な受話器となる。音声信号を遅延させるには、間接音用発音体ユニットと接続する音導管の長さを種々の長さとするか、または遅延時間生成装置付きアンプで所定の遅延時間を生成して間接音用発音体ユニットを駆動すれば良い。以下で述べる遅延処理装置とは電気信号の信号レベルを調節した後に所定時間遅延させる装置のことである。また受話装置とは、受話器とこれを駆動するアンプを含めた装置のこととする。

　上述のとおり、前方発音体とは聴音時に前方から到来する音源の聴音用音波放射を担当する発音体であり、後方発音体とは聴音時に後方から到来する音源の聴音用音波放射を担当する発音体のことである。
　同様に、上方発音体とは聴音時に上方向から到来する音源の聴音用音波放射を担当する発音体のことであり、下方発音体とは聴音時に下方向から到来する音源の聴音用音波放射を担当する発音体のことである。

　１つの発音体ユニットに複数の音導管を接続して複数の音導管の音波放射軸を形成するか、又は図１１に示す様に１つの発音体ユニットに１本の音導管を接続し、これを主音導管１０１と称し、この主音導管を更に複数に分岐し、この分岐した音導管を分枝音導管１０２と称すると、分枝音導管も音導管であるため、それぞれの分枝音導管の音波放射軸はそれぞれ独立した１つの音波放射軸としての機能を有することが判明した。１０４は発音体ユニット、１０５はハウジング音導管を示す。図１１で示す様に複数の分枝音導管１０２の方向音波放射軸１０３は交差させた後に標的とする外耳道壁へ音波を放射させるように配設しても良い。

　以後、この分枝音導管の音波放射軸１０３を分枝音導管音波放射軸と称し、主音導管と分枝音導管とを含めて多分岐音導管と称することとし、この多分岐音導管をイヤーピース筒状部内に備えたイヤーピースを分枝音導管イヤーピースと称することとする。イヤーピース筒状部内の管内音導管の代わりに、ハウジング音導管１０５を延長して多分岐音導管の代用としても同様な効果が得られる。

　図１２（ａ）は、右耳用のイヤーピース筒状部内に３本の分枝音導管を配置した多音波放射軸発音体ユニットを使用した受話器の概略横断面図を示す。以後複数の分枝音導管を持つ主音導管に接続した発音体ユニットを多音波放射軸発音体ユニットと称する。主音導管７１から分岐した３本の分枝音導管の音波放射軸はそれぞれ矢状面に対して異なる入射角をなすよう配置する。最短の音導管７２は前方定位に寄与する直接音用であり、その方向音波放射軸はイヤーピースの先端が外耳道に挿入されている状態で外耳道の前頭部側の外耳道壁に向けてイヤーピース筒状部内に配設し、その他の音導管は間接音用の音導管としてその音波放射軸を最短の分枝音導管と同側７３と反対側７４の外耳道壁へ向けて配置した例を示す。７０は発音体ユニットである。図１２（ｂ）は図１２（ａ）で示したイヤーピースの鼓膜側から見た正面図で、３本の分枝音導管の音波放射口を示す。直接音の音波放射口７５、直接音と同側の間接音音波放射口７６、直接音と反対側の後頭部側の間接音音波放射口７７を示す。従って、１つの多音波放射軸発音体ユニットを受話器として使用することで、あたかも分枝音導管と同数の発音体ユニットで構成された音波放射軸を有する受話器と同様に、多方向から到来する多数の音波情報を鼓膜へ入力伝達することが可能となる。

　分枝音導管の長さをそれぞれ異なる長さとした場合、分枝音導管のうち最短の分枝音導管を直接音用として分枝音導管音波放射軸をイヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の前頭部側の側壁に向けて配置させ、その他の分枝音導管音波放射軸を間接音用としてそれぞれ異なる外耳道壁に向けるよう配置し、該分枝音導管とこれに接続した主音導管を含めて前方音用分枝音導管イヤーピースと称し、その逆に、直接音用として分枝音導管音波放射軸をイヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の後頭部側の側壁に向けて配置させたものを後方音用分枝音導管イヤーピースと称することとする。
　分枝音導管イヤーピースを使用することで、１つの発音体ユニットからでも分枝音導管の長さを変えることで１つの直接音と多数方向からの間接音を鼓膜へ入力させることが可能となる。

　また、この分枝音導管のそれぞれの長さを変えることにより分枝音導管を有しない発音体ユニットと比べて多方向から、かつ多数の遅延時間を経て放音する音波放射軸が生成されるため、この多音波放射軸発音体ユニットを使用した受話器とすれば多数の間接音をも含めて聴音できる結果として、立体的で立ち上がりの良い高音質な音を受聴出来る効果が生じる。

　以後、長さの異なる分枝音導管を持つイヤーピースを遅延分枝音導管付きイヤーピースと称し、図１３（ａ）に右耳用で分枝音導管の一部をコイル状としたより長い遅延時間を生成する遅延分枝音導管付きイヤーピースの概略図を示す。１３０１は発音体ユニットとの接続口を示し、１３０３は直接音音波放射口、１３０４は間接音音波放射口を示す。

　イヤーピース内の最短の音導管を第１音導管とし、該第１音導管より長いＮ本（Ｎは自然数）の長さの異なる遅延時間生成用の音導管を有するイヤーピースをＤＮ音導管付きイヤーピース（ＤＮのＤは遅延用を意味しＮは音導管数を示す）と称し、最短の音導管を直接音用音導管とする。その他の遅延用音導管をＤ管と総称し、１本以上のＤ管を有する場合Ｄ管を識別するために個々の遅延用音導管をＤＮ音導管（Ｎは自然数）とし、例えばＤ１音導管とは１本目の遅延用音導管を示し、Ｄ２音導管とは２本目の遅延用音導管を示している。

　図１３（ｂ）は１本の遅延時間生成用の音導管の一部をコイル状としたＤ１音導管付きイヤーピースを示し、１３０２は第１音導管、１３０５はＤ１音導管で間接音用発音体ユニットとの接続口を示し、１３０３は直接音音波放射口、１３０４はＤ１音導管の音波放射口を示す。図１３（ａ）、図１３（ｂ）ともに解りやすくするためイヤーピース内の音導管の形状のみを示す。４３の破線はイヤーピース傘状部を示す。

　なお、本明細書で述べる冠状面（coronal plane）とは、生物の体を腹側と背側に（ヒトの場合は前側と後側）分割する任意の平面のことであり、矢状面（sagittal plane）とは、左右相称な動物の体の正中に対し平行に、体を左右に分ける面のことである。正中に沿って体を左右に等分する面が最も有用だが、左か右にずれた平行な面もまた矢状面である。
矢状面は横断面（transverse plane）と直交するため、縦断面（vertical plane）の１種である。また冠状面とも直交する。

　図１４（ａ）は外耳道の一部１３４の模式概略図である。発音体ユニットの方向音波放射軸が外耳道壁と交わる点を通る矢状面１３５に対する方向音波放射軸１３７の矢状面に対する入射角１３１を矢状面軸入射角とし、図１４（ｂ）も同様に外耳道１３４の一部の模式概略図であり、方向音波放射軸が外耳道壁と交わる点を通る横断面１３６に対する方向音波放射軸１３７の入射角１３２を横断面軸入射角とすると、１つのハウジング内に複数の発音体ユニットを収め、複数の発音体ユニットと接続する複数の音導管を有するイヤーピースの先端が外耳道に挿入されている状態で複数の発音体ユニットの方向音波放射軸あるいは多音波放射軸発音体ユニットの分枝音導管音波放射軸をそれぞれ異なる外耳道壁部位ヘ向けるか、あるいは同じ外耳道壁部位であっても矢状面軸入射角あるいは横断面軸入射角が異なる角度となるようにイヤーピース内に配設することによって、多数の方向からの到来音波情報を鼓膜へ伝達させることができる。多音波放射軸発音体あるいは矢状面軸入射角あるいは横断面軸入射角あるいはその両方の異なる複数の発音体ユニットで受話器を構成すればより多方向からの音情報を鼓膜へ入力できる。

　１つのイヤーピース内に第１多分岐音導管と第２多分岐音導管を配設し、第１多分岐音導管の最短の分枝音導管の分枝音導管音波放射軸をイヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の前頭部側の側壁に向けて配置させ、第２多分岐音導管の最短の分枝音導管の分枝音導管音波放射軸を、イヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の後頭部側の側壁に向けて配置させ、第１多分岐音導管の主音導管を第１主音導管、第２多分岐音導管の主音導管を第２主音導管と称し、該イヤーピースを前後多分岐音導管イヤーピースと称することとする。前後多分岐音導管イヤーピースの第１主音導管に直接音用発音体ユニットを接続し、第２主音導管に間接音用発音体ユニットを接続したカナル型受話器とすればより自然な聴音が可能となる。

　前後多分岐音導管イヤーピースはサラウンド再生も可能であり、第１主音導管に前音用発音体ユニットを接続し、第２主音導管に後音用発音体ユニットを接続すればより自然なサラウンド聴音が可能となる。

　カナル型受話器において、イヤーピース筒状部内の音導管の音波放射端面（図１の１２）から該音導管と接続する発音体ユニットのハウジング音導管までの間、あるいはハウジング音導管内に凸物を配置すれば、これを音波拡散器または音波反射器あるいはその両方の機能を持つ音波反射拡散器として機能させることが出来る。
　外耳道内に挿入する音導管（管状部）を有するカナル型受話器において、イヤーピース筒状部内の音導管の音波放射端面（図２の１５）から該音導管と接続する発音体ユニットのハウジング音導管までの間の内腔に音波拡散作用と音波反射作用を持つ表面が滑らかな音波反射拡散器を備えた右耳用の実施形態を図１５に示す。図１５（ａ）と図１５（ｂ）は横断図で、図１５（ｃ）は鼓膜側から見た正面図を示す。図１５（ａ）は音波反射拡散器１２３をハウジング音導管内に備えた例を示し、その形状は発音体から放射された音波１２２がこの音波反射拡散器に反射してイヤーピースの先端が外耳道に挿入されている状態で外耳道の前頭部側の外耳道壁に拡散して音波が放射される形状とする。図１５（ｂ）では音波反射拡散器はイヤーピースで構成する部材のイヤーピース筒状部内の音導管の内側面の一部分をなだらかな曲面を持つ凸状に盛り上げた構造１２４とした例を示す。図１５（ｃ）はイヤーピース内の音導管内側面に音波反射拡散器を有する（ｂ）の鼓膜側から見た図で、１２５は音波反射拡散器断端面、１２６は音波放射口、４３はイヤーピースの傘状部である。

　この音波拡散器または音波反射器あるいはその両方の機能を持つ音波反射拡散器の形状は、図１５（ａ）で示す様に発音体から放射された音波１２２がこの音波拡散器または音波反射器に反射して標的とする所定の外耳道壁ヘ一様に反射、拡散して放射される形状であれば良い。拡散された音波は無数の音波放射軸１２１と同等の機能を有し、より自然な聴音となる効果を奏する。

　この音波拡散器及び音波反射器の効果は、聴音した音が刺激的な音とならず、自然で柔らかい音が聴取可能となる。自然に到来する音は間接音も含めて多数の方向から外耳道壁へ伝達されているはずであり、音波拡散器及び音波反射器を配置すれば音波が標的とする外耳道壁へ拡散されて放射されるため、より自然な音へ近づけるのに有効である。特に高音において効果が著明である。この音波拡散器または音波反射器は、例えば、イヤーピース筒状部の音導管の内側面の一部分あるいはハウジング音導管内の一部に突物を設けることにより実現できる。材質や形状は音波を反射出来るものであればよい。音導管の音波放射端面から延出した支持片部を形成し、該支持片部に音波拡散器または音波反射器をイヤーピース音波放射端面から離して鼓膜寄りに配置してもよい。また、音波反射拡散器の代わりとして、図７Ｄのごとく音導管の内腔形状をホーン型形状として音波を標的とする外耳道壁へ拡散されて放射しても良い。６２はハウジング音導管と接続する内腔形状を示し、６１は音波放射口の内腔形状を示す。

　航空機の客席で使用されるチューブ式（音導管式）ステレオイヤーホンにおいても頭内定位した不自然な音でしか聴音できない欠点があった。航空機の客席で使用されるチューブ式ステレオイヤーホンにおいても、本発明の前方定位受話器の原理を活用して外耳道に挿入するイヤーピース内のチューブの音導管音波放射軸をイヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の前頭部側の側壁に向けて音波を放射するようにイヤーピース筒状部内に音導チューブを配設すれば、前方定位した聴音が可能となる。このように、イヤーピース筒状部内に配設された音導チューブを前方定位チューブと称し、これを使用した受話器を前方定位チューブ受話器と称することとする。これを左右１組で使用すれば前方定位するチューブ式のステレオイヤーホンとなる。

　本発明の後方定位受話器の原理を活用して外耳道に挿入するチューブの音導管音波放射軸をイヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の後頭部側の側壁に向けて音波を放射するようイヤーピース筒状部内に音導チューブを配設すれば、後方定位した聴音が可能となる。前方定位チューブと後方定位チューブの両チューブを１つのイヤーピース筒状部内に配したイヤーピースを前後音場チューブイヤーピースと称し、この前後音場チューブイヤーピースを使用した受話器を前後音場チューブ受話器と称する。前後音場チューブ受話器を使用すれば前後音を聞き分けることが出来る。左右一対で使用すればサラウンド再生が可能となる。
　また、サラウンド再生において前後音イヤーピースを用い前方発音体ユニットからの音を導音する前方音用チューブを前後音イヤーピースの第１音導管と接続し、後方発音体からの音を導音する後方音用チューブを前後音イヤーピースの第２音導管と接続しても良い。

　図１６（ａ）はチューブ式ヘッドホンの概略図であって、右耳挿入用イヤーピースとチューブの概略斜視図を示す。主に航空機の客席で使用されるチューブ式（音導管式）のステレオイヤーホンである。イヤーピース筒状部１４５内のチューブ音導管の音波放射端面でのチューブの音導管音波放射軸をイヤーピースの傘状部４３の先端が挿入される外耳道部位で外耳道の前頭部側側壁に向けて音波をイヤーピースの音波放射口からチューブ内に備えた反射拡散器を用いて前頭部側の外耳道壁に向けて放射させる。図１６（ｂ）は右耳挿入イヤーピースを外耳道口側から見た正面図であり、音波放射口１４３と反射拡散器断端面１４２を示す。図１６（ｃ）は反射拡散器１４２を使用した形態の一例である横断面を示す。４３は傘状部である。

　このチューブ音導管を左右一対使用すれば前方定位したチューブ式ステレオイヤーホーンとなる。サラウンド装置として前後音イヤーピースを使用し、図１７に示す様に図１６で示した右耳挿入用イヤーピース筒状部内に前方用チューブ音導管１５１と後方音用チューブ音導管１５２を配設する。後方音用チューブ音導管の音波放射先端部位での音導管音波放射軸をイヤーピースの先端が挿入される外耳道部位で外耳道の後頭部側壁に向けてサラウンドの後方音音波をイヤーピースの音波放射口からチューブ内に備えた反射拡散器を用いて放射させるよう備えたサラウンド装置の形態を示す。

　図１７は前方音用反射拡散器１５６と後方音用反射拡散器１５７を使用した右耳用のチューブ式前後イヤーホーンの形態を示す。図１７（ａ）に前後音場再生可能なチューブ式ヘッドホンの右耳挿入イヤーピースとチューブの概略斜視図を示す。前方音用チューブ音導管と後方音用チューブ音導管を１つのイヤーピース筒状部内に配置する。これを左右一対備えればサラウンド再生可能なチューブ式のサラウンド受話器となる。図１７（ｂ）は右耳挿入イヤーピースの外耳道口側から見たイヤーピースの正面図であり、前方音用音波放射口１５３と後方音用音波放射口１５４であり、１５５は前後の反射拡散器の断端面を示す。図１７（ｃ）はイヤーピースの横断面図における前方用反射拡散器１５６、後方用反射拡散器１５７の形状の一例を示す。１５１は前方音用チューブ音導管、１５２は後方音用チューブ音導管である。

Claims

　外耳道に挿入して使用されるイヤーピースを備えたカナル型受話器において、
　前記イヤーピースは、
　略円筒状であって、その内部に前記受話器内の発音体ユニットから放射される音波を前記外耳道内に放出する音導管を含む筒状部を有するとともに、
　該音導管を、前記イヤーピースの前記筒状部が前記外耳道内の所定の位置に装着された状態において、前記音波の方向音波放射軸が前記外耳道の壁（以下「外耳道壁」という。）の所定の位置に向くように構成することにより、
　前記音導管から放射された音波を、前記外耳道壁の一部に反射させて鼓膜へ到達させることを特徴とするカナル型受話器。
　前記発音体ユニットのハウジングの前面に突設した先端から音を放出する略筒状のハウジング音導管を前記イヤーピース内の音導管としたことを特徴とする請求項１に記載のカナル型受話器。
　前記音導管の方向音波放射軸が、前記外耳道内の前頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする請求項１又は２に記載のカナル型受話器。
　さらに、前記イヤーピース内に備えた第２の音導管と、該第２の音導管に音波を放射する第２の発音体ユニットとを備え、該第２の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の後頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする請求項３に記載のカナル型受話器。
　請求項１に記載の音導管を複数本有するイヤーピースと、前記各音導管にそれぞれ接続された複数の発音体ユニットを備えたカナル型受話器であって、
　前記各音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内においてそれぞれ異なる向きなるように構成されていることを特徴とするカナル型受話器。
　前記音導管のうちの最短の音導管と、該音導管に接続された発音体ユニットとから成る音導管発音体を直接音用とし、前記最短の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の前頭部側の側壁に向くように構成するとともに、前記直接音用の音導管発音体以外の音導管発音体をすべて間接音用とし、該間接音用の音導管発音体の方向音波放射軸を前頭部側の側壁以外のそれぞれ異なる外耳道壁部位へ向けたことを特徴とする請求項５に記載のカナル型受話器。
　請求項１に記載のカナル型受話器に使用されるイヤーピースであって、
　前記イヤーピースは略円筒状であって、その内部に音導管を備えるとともに、
　前記音導管は、前記イヤーピースが前記外耳道内の所定の位置に装着された状態において、前記音波の方向音波放射軸が前記外耳道壁の所定の位置に向くように構成されていることを特徴とするイヤーピース。
　前記音導管の方向音波放射軸が、前記外耳道内の前頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする請求項７に記載のイヤーピース。
　さらに第２の音導管を備え、該第２の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の後頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする請求項８に記載のイヤーピース。
　さらに第２及び第３の音導管を備え、該第２の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の上方の側壁に向き、前記第３の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の下方の側壁に向くように構成されていることを特徴とする請求項８に記載のイヤーピース。
　さらに第３及び第４の音導管を備え、該第３の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の上方の側壁に向き、前記第４の音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の下方の側壁に向くように構成されていることを特徴とする請求項９に記載のイヤーピース。
　前記音導管をＮ本（Ｎは２以上の自然数）備え、前記音導管のうち最短の長さの音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の前頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする請求項７に記載のイヤーピース。
　前記音導管のうち前記発音体ユニットのハウジング音導管に接続される部分を主音導管とし、前記主音導管を除いた部分を複数の分枝音導管に分岐した多分岐音導管とし、前記多分岐音導管の全ての分枝音導管の方向音波放射軸が前記外耳道壁の所定の位置に向くように構成されていることを特徴とする請求項７に記載のイヤーピース。
　前記多分岐音導管に含まれる分枝音導管のうち最短の分枝音導管の方向音波放射軸が前記外耳道内の前頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする請求項１３に記載のイヤーピース。
　前記多分岐音導管に含まれる分枝音導管のうち最短の分枝音導管を除く音導管の一部又は全部の方向音波放射軸が前記外耳道内の後頭部側の側壁に向くように構成されていることを特徴とする請求項１４に記載のイヤーピース。
　前記音導管の音波放射口近傍の内側面の一部に、前記音波を拡散又は反射させる機能を持つ音波反射拡散器を備えたことを特徴とする請求項７に記載のイヤーピース。
　前記音導管を、イヤーピース先端の音波放射口に向かって次第に径が広がるホーン形状としたことを特徴とする請求項７に記載のイヤーピース。
　前記音導管の音波放射口の管状部の一部を延出させて支片部を形成し、該支片部を前記音波を拡散又は反射させる機能を持つ音波反射拡散器としたことを特徴とする請求項７に記載のイヤーピース。