WO2012148004A1

WO2012148004A1 - 殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物

Info

Publication number: WO2012148004A1
Application number: PCT/JP2012/061797
Authority: WO
Inventors: 絢子齊藤; 綾子鶴崎; 宏紀伊堂寺; 茂之杉中
Original assignee: 上野製薬株式会社; アーチ・ケミカルズ・ジャパン株式会社
Priority date: 2011-04-28
Filing date: 2012-04-27
Publication date: 2012-11-01
Also published as: CN103491780A; TW201249341A; CN103491780B

Abstract

　本発明は、式（Ｉ）の化合物およびトリエタノールアミンを含有する殺菌剤組成物を提供する：［式中、Ｒ_１は炭素数１～３の飽和直鎖アルキル基、Ｒ_２は炭素数８～１２の飽和直鎖アルキル基、Ｘ^－はハロゲンイオン、Ｙは炭素数８～１２の飽和直鎖アルキレン基を表す］。また、本発明は、該式（Ｉ）の化合物、非イオン界面活性剤および卜リエタノールアミンを含有する殺菌洗浄剤組成物を提供する。

Description

殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物

　本発明は、主に食品工場等の床、壁、器具、設備等の殺菌または殺菌洗浄に用いる殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物ならびにこれらを用いた殺菌方法および殺菌洗浄方法に関する。

　食品工場、飲食店等の厨房、スーパー内の加工作業場などの食品を取り扱う現場では、衛生上の観点から床、壁、器具、設備等の殺菌を行う必要がある。かかる殺菌を目的として、従来からアルコール、塩素系化合物、過酸化物、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ビグアナイド化合物等、様々な殺菌剤が用いられている。その中でもカチオン界面活性剤の第四級アンモニウム塩であるジデシルジメチルアンモニウムクロライドやビグアナイド化合物であるポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩は、殺菌効果および安全性の点から頻繁に利用されている殺菌剤である。加えて、食品を取り扱う現場においては、微生物が増殖する原因となる汚れを作業中や作業後に洗浄する必要がある。そこで、殺菌効果に加え洗浄効果を有し、洗浄と殺菌が一工程で実施できる殺菌洗浄剤が広く用いられている。これまでにも、例えば第四級アンモニウム塩に非イオン界面活性剤や両性界面活性剤を配合した殺菌洗浄剤組成物や、ビグアナイド系殺菌剤に非イオン界面活性剤を配合した殺菌洗浄剤組成物が提案されている。特許文献１には、特定の第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤及び水を特定の量比で含有する殺菌洗浄剤組成物が、高い殺菌効果、洗浄効果及び安定性を有することが開示されている。

　しかしながら、近年、第四級アンモニウム塩やビグアナイド系殺菌剤の使用を重ねるうちに、これら殺菌剤に対し抵抗性を有する微生物（以下、薬剤抵抗性菌とも称する）が発生し、殺菌が不十分となる問題が生じている。ジデシルジメチルアンモニウムクロライドやポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩に対する薬剤抵抗性菌としては、例えば、非特許文献１に記載されるように、Ｐｓｅｕｄｏｍｏｎａｓ属やＳｅｒｒａｔｉａ属の菌が知られている。これら薬剤抵抗性菌に対しては、その発生を予防する手段として使用薬剤の定期的な変更等の対策が採られている。しかし、かかる手段は作業性およびコストの点で負担が大きいため、敬遠される傾向にある。また、薬剤抵抗性菌の存在が確認された場合には、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤による処理が行われている。しかし、塩素系殺菌剤は金属腐食性が強く、設備や装置に与える影響が大きい上、臭いの残留等の問題を有しており、やはり敬遠される傾向にある。さらに、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドは使用後にぬめりが残り易い傾向があり、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩は使用後にべたつきが残り易い傾向がある。

　上記のような背景から、カビなどの真菌類や一般細菌に加え、薬剤抵抗性菌に対しても殺菌効果を有し、継続的に使用しても薬剤抵抗性菌が発生し難く、使用後のぬめりやべたつきが低減された殺菌剤組成物が望まれている。また、これらの特性を備え、かつ、高い洗浄力を有する殺菌洗浄剤組成物が望まれている。

特許第４４６８０１０号公報

微生物殺菌実用データ集（２００５年８月１１日発行，株式会社サイエンスフォーラム）

　本発明の一つの目的は、真菌類、一般細菌に対して殺菌効果を有すると共に、第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤に対し抵抗性を有する微生物に対しても殺菌効果を有し、かつ、それ自体に対する薬剤抵抗性菌が発生し難い殺菌剤組成物を提供することにある。さらに、本発明は、かかる殺菌剤組成物と同様の特性を有し、かつ、高い洗浄力を有する殺菌洗浄剤組成物を提供することをも目的とする。

　本発明者らは、下記式（Ｉ）の化合物およびトリエタノールアミンを含有する組成物、ならびに下記式（Ｉ）の化合物、非イオン界面活性剤およびトリエタノールアミンを含有する組成物が上記課題を解決することを見出した。

　すなわち、本発明は、式（Ｉ）の化合物およびトリエタノールアミンを含有する殺菌剤組成物（以下、「本発明の殺菌剤組成物」とも称する）を提供する：

［式中、Ｒ_１は炭素数１~３の飽和直鎖アルキル基、Ｒ_２は炭素数８~１２の飽和直鎖アルキル基、Ｘ⁻はハロゲンイオン、Ｙは炭素数８~１２の飽和直鎖アルキレン基を表す］。

　また、本発明は、上記殺菌剤組成物を殺菌対象物と接触させることを含む殺菌方法も提供する。

　さらに、本発明は、式（Ｉ）の化合物、非イオン界面活性剤およびトリエタノールアミンを含有する殺菌洗浄剤組成物（以下、「本発明の殺菌洗浄剤組成物」とも称する）を提供する：

　また、本発明は、上記殺菌洗浄剤組成物を殺菌洗浄対象物と接触させることを含む殺菌洗浄方法も提供する。

　本発明の殺菌剤組成物は、カビなどの真菌類や一般細菌に対する殺菌効果を有し、かつ、第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤に抵抗性を有する薬剤抵抗性菌に対しても優れた殺菌効果を有するものである。さらに、本発明の殺菌剤組成物は、長期間継続的に使用した場合でも該組成物自体に対する薬剤抵抗性菌が発生し難く、かつ、使用後のぬめりやべたつきが低減されたものである。ここで、第四級アンモニウム塩の例としては、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド等が挙げられる。また、ビグアナイド系殺菌剤の例としては、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。

　また、本発明の殺菌洗浄剤組成物は、カビなどの真菌類や一般細菌に対する殺菌効果を有し、第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤に抵抗性を有する薬剤抵抗性菌に対しても優れた殺菌効果を有し、かつ、高い洗浄力を有するものである。さらに、本発明の殺菌洗浄剤組成物は、長期間継続的に使用した場合でも該組成物自体に対する薬剤抵抗性菌が発生し難く、かつ、使用後のぬめりやべたつきが低減されたものである。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物の構成成分である式（Ｉ）の化合物において、Ｒ_１はメチル基、エチル基またはプロピル基のいずれかであり、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Ｒ_２は炭素数８~１０の飽和直鎖アルキル基が好ましく、デシル基がより好ましい。Ｘ⁻はハロゲンイオンであり、塩素イオンまたは臭素イオンが好ましく、塩素イオンがより好ましい。Ｙは炭素数１０~１２の飽和直鎖アルキレン基が好ましく、デシレン基がより好ましい。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物の構成成分である式（Ｉ）の化合物の具体例としては、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジブロミド、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライド、１，１２−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジブロミド、１，１２−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジクロライド、１，１０−ジ（３−オクチル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジブロミド、１，１０−ジ（３−オクチル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライド、１，１２−ジ（３−オクチル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジブロミド、１，１２−ジ（３−オクチル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジクロライド等が例示される。これらの中で、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジブロミド、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライド、１，１２−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジブロミド、１，１２−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジクロライド、１，１２−ジ（３−オクチル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジブロミドおよび１，１２−ジ（３−オクチル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジクロライドが一般細菌に対する殺菌効果の点で好ましく、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジブロミド、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライド、１，１２−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジクロライドおよび１，１２−ジ（３−オクチル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジクロライドが他の殺菌成分との混合性の点でより好ましく、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライドが薬剤抵抗性菌に対する殺菌効果および水への溶解性の点でさらに好ましい。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物における式（Ｉ）の化合物の割合は、特に限定されない。本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物が水溶液の形態である場合、該組成物における式（Ｉ）の化合物の割合は、０．００１~５０重量％が好ましく、０．００５~３０重量％がより好ましく、０．０１５~１０重量％がさらに好ましく、３~１０重量％が特に好ましい。式（Ｉ）の化合物の割合が０．００１重量％未満の場合、第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤に対し抵抗性を有する薬剤抵抗性菌に対する発育阻止効果が低下する傾向があり、５０重量％を超える場合、組成物の粘度が上昇し、取り扱い難くなる傾向がある。

　本発明の殺菌洗浄剤組成物の構成成分である非イオン界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。また、本発明の殺菌洗浄剤組成物における非イオン界面活性剤は、ＨＬＢ値が４~１５であるものが好ましく、９~１４であるものがより好ましい。これらの非イオン界面活性剤は、２種以上を併用しても良い。

　本発明の殺菌洗浄剤組成物における非イオン界面活性剤の割合は、式（Ｉ）の化合物１重量部に対し０．１~２０重量部が好ましく、１~１０重量部がより好ましく、２~５重量部がさらに好ましい。非イオン界面活性剤の割合が０．１重量部未満の場合、洗浄力が低下する傾向があり、２０重量部を超える場合、水溶液の形態において分離や白濁が生じ、泡切れが悪くなる傾向がある。

　本発明の殺菌洗浄剤組成物における非イオン界面活性剤としては、洗浄力と貯蔵安定性の点からヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルを併用することが好ましい。これらを併用する場合の配合割合はヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド１重量部に対しポリオキシアルキレンアルキルエーテル０．０５~１．０重量部が好ましく、０．１~０．３重量部がより好ましい。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物におけるトリエタノールアミンの割合は特に限定されないが、式（Ｉ）の化合物１重量部に対し、０．００２５~２４．５重量部が好ましく、０．００５~５重量部がより好ましく、０．０１~１．５重量部がさらに好ましい。トリエタノールアミンの割合が０．００２５重量部未満の場合、以下の（ｉ）~（ｉｖ）の問題が生じるおそれがある：（ｉ）殺菌効果が不十分となる、（ｉｉ）殺菌剤組成物または殺菌洗浄剤組成物を水溶液の形態とした場合の低温条件における安定性が低下する、（ｉｉｉ）後述する他の殺菌成分や他の添加剤を配合した際に水溶液の白濁等を生じる、および（ｉｖ）金属腐蝕抑制効果が十分に得られない。一方、トリエタノールアミンの割合が２４．５重量部を超える場合、殺菌剤組成物または殺菌洗浄剤組成物を水溶液の形態とした場合の該組成物のｐＨが過度に上昇し、金属腐食性が高くなる傾向がある。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物が水溶液の形態である場合、該組成物のｐＨは、特に限定されないが、７~１２が好ましく、７．５~１１がより好ましく、７．７~９．５がさらに好ましく、８~９．４が特に好ましい。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物におけるトリエタノールアミンの割合が式（Ｉ）の化合物１重量部に対し０．００２５~２４．５重量部の範囲であれば、水溶液の形態の該組成物のｐＨは７~１２の範囲となる。また、所望により、アルカリ剤を用いて該組成物のｐＨを調整してもよい。本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物に含有させ得るアルカリ剤は、該組成物において析出や白濁等の変化を引き起こさないものであればよい。かかるアルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、セスキケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、オルソリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が例示される。これらアルカリ剤の中で、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが、組成物を水溶液の形態で保管する際の該組成物の安定性の点で好ましい。また、これらアルカリ剤は２種以上を併用してもよい。

　本発明の殺菌洗浄剤組成物は、式（Ｉ）の化合物、非イオン界面活性剤およびトリエタノールアミンを併用することにより、殺菌力、特に薬剤抵抗性菌に対する殺菌力が式（Ｉ）の化合物を単独で用いた場合と比較して向上すると共に、非イオン界面活性剤を単独で用いた場合と比較して優れた洗浄力が発揮されるものである。即ち、本発明の殺菌洗浄剤組成物は、殺菌力および洗浄力の双方に関して、式（Ｉ）の化合物、非イオン界面活性剤およびトリエタノールアミンの三成分による相乗効果が発揮されるものである。

　また、本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、さらに他の殺菌成分を含有するものであってもよい。本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物が含有し得る他の殺菌成分としては、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジン等のビグアナイド系殺菌剤、ヨウ素グリシン複合体等の有機ヨード系殺菌剤等が例示される。これら他の殺菌成分の中でも、ビグアナイド系殺菌剤が芽胞菌に対する殺菌効果の点で好ましく、ビグアナイド系殺菌剤の中でもポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩が特に好ましい。これら他の殺菌成分は１種を単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物に他の殺菌成分を含有させる場合、該組成物中における他の殺菌成分の割合は、式（Ｉ）の化合物１重量部に対し、０．５~４０重量部が好ましく、０．７~１０重量部がより好ましく、１~５重量部がさらに好ましい。他の殺菌成分の割合が０．５重量部未満の場合、当該他の殺菌成分による殺菌効果が十分に発揮されない傾向があり、４０重量部を超える場合、組成物を水溶液の形態で保管する間に白濁等を生じる傾向がある。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物には、必要により、さらに他の添加剤を含有させることができる。該組成物に含有させ得る他の添加剤としては、例えば、エタノール、着色料、香料、洗浄助剤等が挙げられる。本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物におけるこれら他の添加剤の割合は、通常、水溶液の形態の該組成物の５重量％以下である。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、錠剤や粉末等の固形の形態、またはペーストやゼリー状等の半固形の形態で提供されてもよく、水溶液の形態で提供されてもよい。本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物が固形または半固形の形態で提供される場合には、通常、該組成物を水に溶解させ、水溶液の形態として殺菌対象物または殺菌洗浄対象物に適用することができる。本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物が水溶液の形態で提供される場合には、該水溶液をそのまま、またはさらに希釈した水溶液を殺菌対象物または殺菌洗浄対象物に適用することができる。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、固形の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、必要な成分を、所望により賦形剤等と共に、単に混合することによって得ることができる。また、必要な成分の混合物をさらに造粒や打錠等の一般的な製剤工程に供して組成物を得ることもできる。半固形の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、例えば、必要な成分および水を結合剤やゲル化剤等と混合することによって得ることができる。水溶液の形態の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、例えば、必要な成分を水に均一に溶解させることによって、あるいは調製された上記固形または半固形の組成物を水に溶解させることによって得ることができる。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物のｐＨを調整する場合、該ｐＨ調整を行う段階は特に限定されない。通常は、調製された水溶液の形態の殺菌剤組成物または殺菌洗浄剤組成物にアルカリ剤を添加すればよい。あるいは、水溶液の形態の殺菌剤組成物または殺菌洗浄剤組成物を所望のｐＨ範囲に調整し得るアルカリ剤の量を事前に決定しておき、当該量のアルカリ剤を殺菌剤組成物または殺菌洗浄剤組成物の成分と共に水に均一に溶解させてもよい。また、組成物のｐＨを所望の範囲に調整し得る、事前に決定された量のアルカリ剤を固形もしくは半固形の殺菌剤組成物または殺菌洗浄剤組成物に含有させてもよい。

　固形または半固形の形態で提供される本発明の殺菌剤組成物の例としては、
（ａ）式（Ｉ）の化合物を１~９９重量％およびトリエタノールアミンを０．０００１~５重量％含有する組成物；
（ｂ）式（Ｉ）の化合物を３~５０重量％およびトリエタノールアミンを０．００５~３重量％含有する組成物；
（ｃ）式（Ｉ）の化合物を５~１５重量％およびトリエタノールアミンを０．００１~１重量％含有する組成物等が挙げられる。

　さらに他の殺菌成分を含む本発明の殺菌剤組成物の例としては、
（ｄ）式（Ｉ）の化合物を１~９８重量％、トリエタノールアミンを０．０００１~５重量％およびビグアナイド系殺菌剤を１~９８重量％含有する組成物；
（ｅ）式（Ｉ）の化合物を３~５０重量％、トリエタノールアミンを０．００５~３重量％およびビグアナイド系殺菌剤を３~５０重量％含有する組成物；
（ｆ）式（Ｉ）の化合物を５~１５重量％、トリエタノールアミンを０．００１~１重量％およびビグアナイド系殺菌剤を５~１５重量％含有する組成物等が挙げられる。

　水溶液の形態で提供される本発明の殺菌剤組成物の例としては、
（ｇ）式（Ｉ）の化合物を０．００１~５０重量％およびトリエタノールアミンを０．０７５~５０重量％含有する水溶液である組成物；
（ｈ）式（Ｉ）の化合物を１~２０重量％およびトリエタノールアミンを０．０９~１０重量％含有する水溶液である組成物；
（ｉ）式（Ｉ）の化合物を３~１０重量％およびトリエタノールアミンを０．１~６重量％含有する水溶液である組成物等が挙げられる。
　これらの中でも、（ｈ）の組成物が好ましく、（ｉ）の組成物が特に好ましい。

　さらに他の殺菌成分を含む水溶液形態の本発明の殺菌剤組成物の例としては、
（ｊ）式（Ｉ）の化合物を０．００１~５０重量％、トリエタノールアミンを０．０７５~９９重量％およびビグアナイド系殺菌剤を０．０００５~３０重量％含有する水溶液である組成物；
（ｋ）式（Ｉ）の化合物を１~２０重量％、トリエタノールアミンを０．０９~９８重量％およびビグアナイド系殺菌剤を１~２０重量％含有する水溶液である組成物；
（ｌ）式（Ｉ）の化合物を３~１０重量％、トリエタノールアミンを１~９３重量％およびビグアナイド系殺菌剤を３~１６重量％含有する水溶液である組成物等が挙げられる。
　これらの中でも、（ｋ）の組成物が好ましく、（ｌ）の組成物がより好ましく、（ｍ）式（Ｉ）の化合物を３~１０重量％、トリエタノールアミンを１~９３重量％およびポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩を３~１６重量％含有する水溶液である組成物が特に好ましい。

　また、水溶液の形態の本発明の殺菌剤組成物は、使用者の目的に応じて、さらに水を加えて希釈液として用いることもできる。希釈液として用いる場合でも式（Ｉ）の化合物の割合が０．００１~５０重量％となるように希釈するのが好ましい。
　例えば、本発明の殺菌剤組成物は、
（ｎ）式（Ｉ）の化合物を０．００１~０．２５重量％およびトリエタノールアミンを０．０００４~０．２５重量％含有する水溶液；
（ｏ）式（Ｉ）の化合物を０．００５~０．１重量％およびトリエタノールアミンを０．０００５~０．００１５重量％含有する水溶液；
（ｐ）式（Ｉ）の化合物を０．０１５~０．０４５重量％およびトリエタノールアミンを０．０００６~０．００１重量％含有する水溶液等の形態で用いることができる。
　これらの中でも、（ｏ）の水溶液の形態で用いることが好ましく、（ｐ）の水溶液の形態で用いることが特に好ましい。

　本発明の殺菌剤組成物がさらに他の殺菌成分を含む場合には、例えば、該組成物は、
（ｑ）式（Ｉ）の化合物を０．００１~０．２５重量％、トリエタノールアミンを０．０００４~０．５重量％およびビグアナイド系殺菌剤を０．０００５~０．１５重量％含有する水溶液；
（ｒ）式（Ｉ）の化合物を０．００５~０．１重量％、トリエタノールアミンを０．０００５~０．４５重量％およびビグアナイド系殺菌剤を０．００５~０．１重量％含有する水溶液；
（ｓ）式（Ｉ）の化合物を０．０１５~０．０４５重量％、トリエタノールアミンを０．００５~０．４重量％およびビグアナイド系殺菌剤を０．０２~０．０８重量％含有する水溶液等の形態で用いることができる。
　これらの中でも、（ｒ）の水溶液の形態で用いることが好ましく、（ｓ）の水溶液の形態で用いることがより好ましく、（ｔ）式（Ｉ）の化合物を０．０１５~０．０４５重量％、トリエタノールアミンを０．００５~０．４重量％およびポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩を０．０２~０．０８重量％含有する水溶液の形態で用いることが特に好ましい。

　固形または半固形の形態で提供される本発明の殺菌洗浄剤組成物の例としては、
（Ａ）式（Ｉ）の化合物を１~９８重量％、非イオン界面活性剤を１~９８重量％およびトリエタノールアミンを０．０００１~５重量％含有する組成物；
（Ｂ）式（Ｉ）の化合物を３~５０重量％、非イオン界面活性剤を１０~９０重量％およびトリエタノールアミンを０．０００５~３重量％含有する組成物；
（Ｃ）式（Ｉ）の化合物を５~１５重量％、非イオン界面活性剤を２０~８０重量％およびトリエタノールアミンを０．００１~１重量％含有する組成物等が挙げられる。

　さらに他の殺菌成分を含む本発明の殺菌洗浄剤組成物の例としては、
（Ｄ）式（Ｉ）の化合物を１~９７重量％、非イオン界面活性剤を１~９７重量％、トリエタノールアミンを０．０００１~５重量％およびビグアナイド系殺菌剤を１~９７重量％含有する組成物；
（Ｅ）式（Ｉ）の化合物を３~５０重量％、非イオン界面活性剤を１０~９０重量％、トリエタノールアミンを０．０００５~３重量％およびビグアナイド系殺菌剤を３~５０重量％含有する組成物；
（Ｆ）式（Ｉ）の化合物を５~１５重量％、非イオン界面活性剤を２０~８０重量％、トリエタノールアミンを０．００１~１重量％およびビグアナイド系殺菌剤を５~１５重量％含有する組成物等が挙げられる。

　水溶液の形態で提供される本発明の殺菌洗浄剤組成物の例としては、
（Ｇ）式（Ｉ）の化合物を０．００１~５０重量％、非イオン界面活性剤を０．０００１~６０重量％およびトリエタノールアミンを０．０７５~５０重量％含有する水溶液である組成物；
（Ｈ）式（Ｉ）の化合物を１~２０重量％、非イオン界面活性剤を１~４５重量％およびトリエタノールアミンを０．０９~１０重量％含有する水溶液である組成物；
（Ｊ）式（Ｉ）の化合物を３~１０重量％、非イオン界面活性剤を６~２５重量％およびトリエタノールアミンを０．１~６重量％含有する水溶液である組成物；
（Ｋ）式（Ｉ）の化合物を１~２０重量％、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを０．９５２~２２．５重量％、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０．０４８~２２．５重量％およびトリエタノールアミンを０．０９~１０重量％含有する水溶液である組成物；
（Ｌ）式（Ｉ）の化合物を３~１０重量％、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを５．４５~１９．２３重量％、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０．５５~５．７７重量％およびトリエタノールアミンを０．１~６重量％含有する水溶液である組成物等が挙げられる。
　これらの中でも、（Ｋ）の組成物が好ましく、（Ｌ）の組成物が特に好ましい。

　さらに他の殺菌成分を含む水溶液形態の本発明の殺菌洗浄剤組成物の例としては、
（Ｍ）式（Ｉ）の化合物を０．００１~５０重量％、非イオン界面活性剤を０．０００１~６０重量％、トリエタノールアミンを０．０７５~９９重量％およびビグアナイド系殺菌剤を０．０００５~３０重量％含有する水溶液である組成物；
（Ｎ）式（Ｉ）の化合物を１~２０重量％、非イオン界面活性剤を１~４５重量％、トリエタノールアミンを０．０９~９７重量％およびビグアナイド系殺菌剤を１~１５重量％含有する水溶液である組成物；
（Ｏ）式（Ｉ）の化合物を３~１０重量％、非イオン界面活性剤を６~２５重量％、トリエタノールアミンを１~８９重量％およびビグアナイド系殺菌剤を２~５重量％含有する水溶液である組成物；
（Ｐ）式（Ｉ）の化合物を０．００１~５０重量％、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを０．０００１~３０重量％、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０~３０重量％、トリエタノールアミンを０．０７５~９９重量％およびポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩を０．０００５~３０重量％含有する水溶液である組成物；
（Ｑ）式（Ｉ）の化合物を１~２０重量％、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを０．９５２~２２．５重量％、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０．０４８~２２．５重量％、トリエタノールアミンを０．０９~９７重量％およびポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩を１~１５重量％含有する水溶液である組成物；
（Ｒ）式（Ｉ）の化合物を３~１０重量％、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを５．４５~１９．２３重量％、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０．５５~５．７７重量％、トリエタノールアミンを１~８９重量％およびポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩を２~５重量％含有する水溶液である組成物等が挙げられる。
　これらの中でも、（Ｐ）の組成物が好ましく、（Ｑ）の組成物がより好ましく、（Ｒ）の組成物が特に好ましい。

　また、水溶液の形態の本発明の殺菌洗浄剤組成物は、使用者の目的に応じて、さらに水を加えて希釈液として用いることもできる。希釈液として用いる場合でも式（Ｉ）の化合物の割合が０．００１~５０重量％となるように希釈するのが好ましい。
　例えば、本発明の殺菌洗浄剤組成物は、
（Ｓ）式（Ｉ）の化合物を０．００１~０．２５重量％、非イオン界面活性剤を０．００００００５~０．３重量％およびトリエタノールアミンを０．０００４~０．２５重量％含有する水溶液；
（Ｔ）式（Ｉ）の化合物を０．００５~０．１重量％、非イオン界面活性剤を０．００５~０．２２５重量％およびトリエタノールアミンを０．０００５~０．００１５重量％含有する水溶液；
（Ｕ）式（Ｉ）の化合物を０．０１５~０．０４５重量％、非イオン界面活性剤を０．０３~０．１２５重量％およびトリエタノールアミンを０．０００６~０．００１重量％含有する水溶液；
（Ｖ）式（Ｉ）の化合物を０．００５~０．１重量％、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを０．００４７６~０．１１２５重量％、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０．０００２４~０．１１２５重量％およびトリエタノールアミンを０．０００５~０．００１５重量％含有する水溶液；
（Ｗ）式（Ｉ）の化合物を０．０１５~０．０４５重量％、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを０．０２７２５~０．０９６１５重量％、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０．００２７５~０．０２８８５重量％およびトリエタノールアミンを０．０００６~０．００１重量％含有する水溶液等の形態で用いることができる。
　これらの中でも、（Ｖ）の水溶液の形態で用いることが好ましく、（Ｗ）の水溶液の形態で用いることが特に好ましい。

　本発明の殺菌洗浄剤組成物がさらに他の殺菌成分を含む場合には、例えば、該組成物は、
（Ｘ）式（Ｉ）の化合物を０．００１~０．２５重量％、非イオン界面活性剤を０．００００００５~０．３重量％、トリエタノールアミンを０．０００４~０．４９重量％およびビグアナイド系殺菌剤を０．０００５~０．１５重量％含有する水溶液；
（Ｙ）式（Ｉ）の化合物を０．００５~０．１重量％、非イオン界面活性剤を０．００５~０．２２５重量％、トリエタノールアミンを０．０００５~０．４６５重量％およびビグアナイド系殺菌剤を０．００５~０．１重量％含有する水溶液；
（Ｚ）式（Ｉ）の化合物を０．０１５~０．０４５重量％、非イオン界面活性剤を０．０３~０．１２５重量％、トリエタノールアミンを０．００５~０．４４５重量％およびビグアナイド系殺菌剤を０．０１~０．０２５重量％含有する水溶液；
（ＡＡ）式（Ｉ）の化合物を０．００１~０．２５重量％、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを０．００００００５~０．３重量％、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０~０．３重量％、トリエタノールアミンを０．０００４~０．４９重量％およびポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩を０．０００５~０．１５重量％含有する水溶液；
（ＡＢ）式（Ｉ）の化合物を０．００５~０．１重量％、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを０．００４７６~０．１１２５重量％、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０．０００２４~０．１１２５重量％、トリエタノールアミンを０．０００５~０．４６５重量％およびポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩を０．００５~０．１重量％含有する水溶液；
（ＡＣ）式（Ｉ）の化合物を０．０１５~０．０４５重量％、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを０．０２７２５~０．０９６１５重量％、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０．００２７５~０．０２８８５重量％、トリエタノールアミンを０．００５~０．４４５重量％およびポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩を０．０１~０．０２５重量％含有する水溶液等の形態で用いることができる。
　これらの中でも、（ＡＡ）の水溶液の形態で用いることが好ましく、（ＡＢ）の水溶液の形態で用いることがより好ましく、（ＡＣ）の水溶液の形態で用いることが特に好ましい。

　本発明の殺菌剤組成物または殺菌洗浄剤組成物を用いて対象物を殺菌または殺菌洗浄するためには、通常、水溶液の形態の該組成物を該対象物と接触させればよい。接触方法は特に限定されず、本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、散布、噴霧、浸漬、拭き取り等の一般的な方法によって対象物と接触させることができる。さらに、該殺菌剤組成物または殺菌洗浄剤組成物と共にブラシやスポンジ等を用いて、殺菌対象物または殺菌洗浄対象物の汚れを取り除くことができる。

　本発明の殺菌剤組成物または殺菌洗浄剤組成物を殺菌対象物または殺菌洗浄対象物と接触させる際の接触時間は特に限定されず、有効成分の濃度により、適宜定めればよい。例えば、（ｎ）または（Ｓ）の水溶液の形態である殺菌剤組成物または殺菌洗浄剤組成物を対象物と常温で接触させる場合、通常、３０秒~１０分間、好ましくは１~５分間で十分な殺菌効果または殺菌洗浄効果が得られる。

　半固形または水溶液の形態の本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物の調製に用いる水は、イオン交換水、蒸留水等の精製水、水道水および地下水、伏流水等の天然水のいずれであってもよいが、塩素や金属イオンの含有量が少ない点で精製水が好ましい。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、食品工場、病院、畜舎、ホテル、レストラン、学校、店舗等の床や壁等を殺菌または殺菌洗浄する設備用ないし食品取扱設備用の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物として有用である。また、食品工場等で使用される食品製造・加工機器や器具等の食品用途の対象物の殺菌または殺菌洗浄にも有用である。食品製造・加工機器としては、各種の攪拌機、混合機、ホモジナイザー、自動カッター等が挙げられる。器具としては、まな板、包丁、食器、食品用容器、布巾等が挙げられる。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、カビなどの真菌類や一般細菌に対する殺菌効果を有し、かつ、第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤に対し抵抗性を有する微生物、例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド（ＤＤＡＣ）および／またはポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩（ＰＨＭＢ）に対し抵抗性を有する微生物に対しても殺菌力を発揮するものである。したがって、本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤に対し抵抗性を有する微生物が存在する対象に対して使用する殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物として特に有用である。

　また、本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤と比較して、長期間にわたって使用しても当該組成物に対し抵抗性を有する微生物が発生し難いものである。したがって、本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤の使用によって当該薬剤に対する抵抗性を有する微生物が発生し得る対象に対して使用する殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物としても有用である。

　第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤に対し抵抗性を有する微生物の例としては、Ｐｓｅｕｄｏｍｏｎａｓ属の微生物、およびＳｅｒｒａｔｉａ属の微生物、例えばＳｅｒｒａｔｉａ　ｍａｒｃｅｓｃｅｎｓ、Ｓｅｒｒａｔｉａ　ｌｉｑｕｅｆａｃｉｅｎｓ等が挙げられる。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、連続または継続して使用するための組成物として適するものである。具体的には、本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、長期間にわたり連続または継続して使用しても当該組成物に対して抵抗性を有する微生物が発生し難いものである。より具体的には、本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、これを同一の対象に対して繰り返し使用する場合に、該組成物に対し抵抗性を有する微生物の発生が、第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤を該対象に対し同様にして繰り返し使用した場合と比較して少ないことを特徴とする。ここで、「同一の対象に対して繰り返し使用」とは、同一の対象に対し、または、対象の微生物種が特定されている場合には同一の微生物種に対し、同一の組成物を複数回（例えば、２回、３回、４回、５回、６回、７回、８回もしくはそれ以上）使用することをいう。また、「連続して使用」とは、例えば（組成物Ａ、組成物Ａ、組成物Ａ・・・）のように、同じ組成物を２回以上続けて使用することをいう。「継続して使用」とは、同じ組成物を２回以上続けては使用しないが、間で別の組成物を使用して、同一の対象に対しての使用を継続することをいう。例えば、（組成物Ａ、組成物Ｂ、組成物Ｃ、組成物Ａ、組成物Ｄ、・・・）の順で使用される場合、組成物Ａは連続してではなく、継続して使用されているといえる。

　以下、実施例により本発明をさらに説明する。尚、以下の各試験において、表中の「＋」は菌の増殖が確認されたことを示し、「−」は菌の増殖が確認されなかったことを表す。

試験例１
　下記に示す供試菌ｉ~ｖｉｉｉを１０^６ｃｆｕ／ｍｌとなるように生理食塩水で希釈した菌液０．０３ｍｌ（供試菌ｉｉｉおよびｖｉｉｉは０．１ｍｌ）と、薬剤濃度が１．２５~３２０ｐｐｍのＰＨＭＢ水溶液３ｍｌ（供試菌ｉｉｉおよびｖｉｉｉは１０ｍｌ）とを混合した後、２５℃で５分間保持した。感作時間経過後、再度攪拌した後、各混合物から１白金耳を取り、ＢＨＩブイヨン培地１０ｍｌ（供試菌ｖｉｉｉのみＳＣＤＬＰ培地１０ｍｌ）に接種し、３０℃で４８時間培養した（供試菌ｉｉのみ１２０時間培養）。菌未接種のＢＨＩブイヨン培地（供試菌ｖｉｉｉのみ菌未接種のＳＣＤＬＰ培地）を基準とし、目視で培地の濁りを比較して、ＰＨＭＢの各供試菌に対する殺菌効果を確認した。結果を表１に示す。
ＰＨＭＢ：ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩
ＢＨＩ：ブレインハートインフュージョン
ＳＣＤＬＰ：Ｓｏｙｂｅａｎ−Ｃａｓｅｉｎ　Ｄｉｇｅｓｔ　Ｂｒｏｔｈ　ｗｉｔｈ　Ｌｅｃｉｔｈｉｎ　＆　Ｐｏｌｙｓｏｒｂａｔｅ　８０
供試菌ｉ　　　：Ｐｓｅｕｄｏｍｏｎａｓ　ａｅｒｕｇｉｎｏｓａ　ＮＢＲＣ１３７３６
供試菌ｉｉ　　：Ａｓｐｅｒｇｉｌｌｕｓ　ｎｉｇｅｒ　ＡＴＣＣ１６４０４
供試菌ｉｉｉ　：Ｂａｃｉｌｌｕｓ　ｃｅｒｅｕｓ　ＮＢＲＣ１５３０５
供試菌ｉｖ　　：Ｓｅｒｒａｔｉａ　ｍａｒｃｅｓｃｅｎｓ（食品工場分離菌１）
供試菌ｖ　　　：Ｓｅｒｒａｔｉａ　ｌｉｑｕｅｆａｃｉｅｎｓ（食品工場分離菌２）
供試菌ｖｉ　　：Ｓｅｒｒａｔｉａ　ｍａｒｃｅｓｃｅｎｓ（食品工場分離菌３）
供試菌ｖｉｉ　：Ｓｅｒｒａｔｉａ　ｍａｒｃｅｓｃｅｎｓ（食品工場分離菌４）
供試菌ｖｉｉｉ：Ｂａｃｉｌｌｕｓ　ｓｕｂｔｉｌｉｓ　ＩＦＯ１３７１９

試験例２
　試験例１で用いた供試菌ｉ~ｖｉｉを用い、薬剤をＤＤＡＣに変更し、試験例１と同様の方法でＤＤＡＣの各供試菌に対する殺菌効果を確認した。結果を表２に示す。
ＤＤＡＣ：ジデシルジメチルアンモニウムクロライド

試験例３
　式（Ｉ）の化合物〔１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライド〕およびＰＨＭＢを下記配合比で含有する水溶液を調製し、３時間後の外観変化を確認した。結果を表３に示す。

実施例１~６及び比較例１~１３
殺菌力試験１（カビ）
　下記に示す供試菌の胞子懸濁液を１０^６ｃｆｕ／ｍｌとなるように生理食塩水で希釈した菌液０．０３ｍｌと、表４に示す殺菌剤組成物を該組成物濃度が０．１~０．３重量％となるように希釈した水溶液３ｍｌとを混合した後、２５℃で５分間保持した。感作時間経過後、再度攪拌した後、各混合物から１白金耳を取り、ＢＨＩブイヨン培地１０ｍｌに接種し、３０℃で１２０時間培養した。菌未接種のＢＨＩブイヨン培地を基準とし、目視で培地の濁りを比較して、殺菌剤組成物の殺菌効果を判定した。
供試菌ｉｉ：Ａｓｐｅｒｇｉｌｌｕｓ　ｎｉｇｅｒ　ＡＴＣＣ１６４０４

　結果を表５に示す。本発明の殺菌剤組成物は、比較例の組成物に比べてカビに対する殺菌力が優れていた。

殺菌力試験２（芽胞菌）
　下記に示す供試菌の芽胞懸濁液を１０^６ｃｆｕ／ｍｌとなるように生理食塩水で希釈した菌液０．１ｍｌと、表４に示す殺菌剤組成物を該組成物濃度が０．１~０．３重量％となるように希釈した水溶液１０ｍｌとを混合した後、２５℃で５分間保持した。感作時間経過後再度攪拌した後、各混合物から１白金耳を取り、ＢＨＩブイヨン培地１０ｍｌに接種し、３０℃で４８時間培養した。菌未接種のＢＨＩブイヨン培地を基準とし、目視で培地の濁りを比較して、各菌体に対する殺菌剤組成物の殺菌効果を判定した。
供試菌ｉｉｉ：Ｂａｃｉｌｌｕｓ　ｃｅｒｅｕｓ　ＮＢＲＣ１５３０５

　結果を表６に示す。本発明の殺菌剤組成物は、比較例の組成物に比べ芽胞菌に対する殺菌力が優れていた。

殺菌力試験３（薬剤抵抗性菌）
　食品工場から分離された下記供試菌をＢＨＩブイヨン培地で３０℃にて、２４時間培養し、１０^６ｃｆｕ／ｍｌとなるように生理食塩水で希釈した菌液０．０３ｍｌと、実施例１~６の殺菌剤組成物および表７に示す殺菌剤組成物を該組成物濃度が０．０２５~０．１重量％となるように希釈した水溶液３ｍｌとを混合した後、２５℃で５分間保持した。感作時間経過後再度攪拌した後、各混合物から１白金耳を取り、ＢＨＩブイヨン培地１０ｍｌに接種し、３０℃で４８時間培養した。菌未接種のＢＨＩブイヨン培地を基準とし、目視で培地の濁りを比較して、各菌体に対する殺菌剤組成物の殺菌効果を判定した。
供試菌ｉｖ：Ｓｅｒｒａｔｉａ　ｍａｒｃｅｓｃｅｎｓ（食品工場分離菌１）

　結果を表８に示す。本発明の殺菌剤組成物は、比較例の組成物に比べ薬剤抵抗性菌に対する殺菌力が優れていた。

殺菌力試験４（薬剤抵抗性菌）
　食品工場から分離された下記供試菌をＢＨＩブイヨン培地で３０℃にて、２４時間前培養し、１０^６ｃｆｕ／ｍｌとなるように生理食塩水で希釈した菌液０．０３ｍｌと、実施例１~６の殺菌剤組成物および表７に示す殺菌剤組成物を該組成物濃度が０．０８~１．３３重量％となるように希釈した水溶液３ｍｌとを混合した後、２５℃で１分間保持した。感作時間経過後再度攪拌した後、各混合物から１白金耳を取り、ＢＨＩブイヨン培地１０ｍｌに接種し、３０℃で１２０時間本培養した。菌未接種のＢＨＩブイヨン培地を基準とし、目視で培地の濁りを比較して、各菌体に対する殺菌剤組成物の殺菌効果を判定した。
供試菌ｖ：Ｓｅｒｒａｔｉａ　ｌｉｑｕｅｆａｃｉｅｎｓ（食品工場分離菌２）

　結果を表９に示す。本発明の殺菌剤組成物は、比較例の組成物に比べ薬剤抵抗性菌に対する殺菌力が優れていた。

薬剤耐性化抑制試験
　日本化学療法学会標準法（微量液体希釈法）に準じ、最小発育阻止濃度（ＭＩＣ）の測定を連続的に実施した。実施例１および比較例１３の組成物を滅菌水で希釈し、組成物濃度０．００７~１．７９２重量％の薬液を調製し、指定濃度の２倍濃度に調整したニュートリエントブロス培地（栄研化学株式会社製、普通ブイヨン培地‘栄研’Ｅ−ＭＣ３５）を薬液と同量添加し、撹拌後、マイクロタイタープレート（９６ウェル）に１５０μｌ／ウェルずつ分注した。次に食品工場から分離された下記供試菌をＮＢ培地にて３０℃で２０時間培養した菌液を１０^７ｃｆｕ／ｍｌとなるように生理食塩水で希釈した後、上記で作製した培地注入済みのマイクロタイタープレートに７．５μｌ／ウェルずつ接種した。これを３０℃の恒温器内で４８時間培養し、目視にて菌の生育の有無を確認し、ＭＩＣを測定した。さらに生育が確認されたウェルの中で薬剤濃度が最大であったウェルから菌液を採取し、１０^７ｃｆｕ／ｍｌとなるように生理食塩水で希釈した菌液を用いて、上記と同様にして再度ＭＩＣを測定した。この操作を繰り返し、ＭＩＣの測定を合計８回行い、ＭＩＣの変化を確認した。
供試菌ｖｉ：Ｓｅｒｒａｔｉａ　ｍａｒｃｅｓｃｅｎｓ（食品工場分離菌３）
供試菌ｖｉｉ：Ｓｅｒｒａｔｉａ　ｍａｒｃｅｓｃｅｎｓ（食品工場分離菌４）

　結果を表１０および１１に示す。実施例１の組成物は、８回目の試験でもＭＩＣが０．０５６重量％（供試菌ｖｉ）および０．０２８重量％（供試菌ｖｉｉ）と低かった。かかる結果から、式（Ｉ）の化合物〔１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライド〕はＤＤＡＣと比較して薬剤抵抗性菌が発生し難いことが確認された。

金属腐食性試験
　実施例１および５ならびに比較例１２および１３に示す各組成物の０．３％水溶液６０ｍｌを７０ｍｌ容の蓋付ガラス瓶に入れ、その中に銅製ピース（縦５０ｍｍ×横３０ｍｍ×厚さ１ｍｍ）を浸漬し、２５℃の恒温器内で１ヶ月間保存した。保存後の銅製ピースを目視により外観観察し、下記基準で腐食性を判定した。尚、組成物水溶液の代わりに水道水を用いて、同様に保存した銅製ピースを対照とした。
○：対照より腐食が少ない　△：対照と同等　×：対照に比べ腐食が多い

　結果を表１２に示す。実施例１の組成物で処理したピースは、処理前のピースと同等の外観が保持されており、対照に比べ明らかに腐食が抑制されていた。実施例５の組成物で処理したピースは、わずかに退色が見られるものの、錆や変色の発生は確認されなかった。比較例１２の組成物で処理したピースは、ピース全体が変色しており、対照よりも腐食が進行していた。比較例１３の組成物で処理したピースは、明らかに退色しており、対照と同程度の外観であった。

実施例７~１４および比較例１４~２２
殺菌力試験５（芽胞菌）
　下記に示す供試菌の芽胞懸濁液を１０^６ｃｆｕ／ｍｌとなるように生理食塩水で希釈した菌液０．１ｍｌと、表１３に示す殺菌洗浄剤組成物を該組成物濃度が０．１~０．３重量％となるように希釈した水溶液１０ｍｌとを混合した後、２５℃で５分間保持した。感作時間経過後再度攪拌した後、各混合物から１白金耳を取り、ＳＣＤＬＰ（ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト）培地１０ｍｌに接種し、３０℃で４８時間培養した。菌未接種のＳＣＤＬＰ培地を基準とし、目視で培地の濁りを比較して、各菌体に対する殺菌洗浄剤組成物の殺菌効果を判定した。
供試菌ｖｉｉｉ：Ｂａｃｉｌｌｕｓ　ｓｕｂｔｉｌｉｓ　ＩＦＯ１３７１９

　結果を表１４に示す。本発明の殺菌洗浄剤組成物は、芽胞菌に対する殺菌力が比較例の組成物に比べ優れていた。

殺菌力試験６（薬剤抵抗性菌）
　食品工場から分離された下記供試菌をＢＨＩ（ブレインハートインフュージョン）培地で３０℃にて、２４時間培養し、１０^６ｃｆｕ／ｍｌとなるように生理食塩水で希釈した菌液０．０３ｍｌと、表１３に示す殺菌洗浄剤組成物を該組成物濃度が０．０１２５~０．１重量％となるように希釈した水溶液３ｍｌとを混合した後、２５℃で１分間保持した。感作時間経過後再度攪拌した後、各混合物から１白金耳を取り、ＢＨＩ培地１０ｍｌに接種し、３０℃で４８時間培養した。菌未接種のＢＨＩ培地を基準とし、目視で培地の濁りを比較して、各菌体に対する殺菌洗浄剤組成物の殺菌効果を判定した。
供試菌ｉｖ：Ｓｅｒｒａｔｉａ　ｍａｒｃｅｓｃｅｎｓ（食品工場分離菌１）

　結果を表１５に示す。本発明の殺菌洗浄剤組成物は、薬剤抵抗性菌に対する殺菌力が比較例の組成物に比べ優れていた。

洗浄力試験
　実施例７、８、１１および１２ならびに表１６に示す殺菌洗浄剤組成物を用い、温度３０℃、洗浄時間３分間、すすぎ時間１分間の試験条件でリーナッツ法（ＪＩＳ−Ｋ３３６２）により洗浄力試験を行った。汚れ落ちの程度は、洗浄前後のガラス片の重量から以下の式により洗浄力を算出して評価した。

　結果を表１７に示す。本発明の殺菌洗浄剤組成物は、比較例の組成物に比べ高い洗浄力を有していた。

　本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、食品工場、病院、畜舎、ホテル、レストラン、学校、店舗等の床や壁等を殺菌または殺菌洗浄する設備用ないし食品取扱設備用の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物として有用である。また、食品工場等で使用される食品製造・加工機器や器具等の食品用途の対象物の殺菌または殺菌洗浄にも有用である。

　さらに、本発明の殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物は、第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤に対し抵抗性を有する微生物が存在するか又は発生し得る対象に対して使用する殺菌剤組成物および殺菌洗浄剤組成物として特に有用である。

Claims

　式（Ｉ）の化合物およびトリエタノールアミンを含有する殺菌剤組成物：

［式中、Ｒ_１は炭素数１~３の飽和直鎖アルキル基、Ｒ_２は炭素数８~１２の飽和直鎖アルキル基、Ｘ⁻はハロゲンイオン、Ｙは炭素数８~１２の飽和直鎖アルキレン基を表す］。
　式（Ｉ）の化合物が、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライド、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジブロミド、１，１２−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジクロライドおよび１，１２−ジ（３−オクチル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジクロライドからなる群より選ばれる１種以上である請求項１記載の殺菌剤組成物。
　式（Ｉ）の化合物が、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライドである請求項１または２に記載の殺菌剤組成物。
　式（Ｉ）の化合物を０．００１~５０重量％含有する請求項１~３のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
　式（Ｉ）の化合物１重量部に対し、トリエタノールアミンを０．００２５~２４．５重量部含有する請求項１~４のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
　さらにビグアナイド系殺菌剤を含有する請求項１~５のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
　式（Ｉ）の化合物１重量部に対し、ビグアナイド系殺菌剤を０．５~４０重量部含有する請求項６記載の殺菌剤組成物。
　ビグアナイド系殺菌剤が、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩である請求項６または７記載の殺菌剤組成物。
　水溶液の形態である、請求項１~８のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
　組成物のｐＨが７~１２である、請求項９に記載の殺菌剤組成物。
　組成物のｐＨが、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群より選ばれる１種以上のアルカリ剤を用いて調整されている請求項９または１０に記載の殺菌剤組成物。
　第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤に対し抵抗性を有する微生物が存在しているか又は発生し得る対象に対して使用するための、請求項１~１１のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
　請求項１~１２いずれかに記載の殺菌剤組成物を殺菌対象物と接触させることを含む殺菌方法。
　式（Ｉ）の化合物、非イオン界面活性剤およびトリエタノールアミンを含有する殺菌洗浄剤組成物：

［式中、Ｒ_１は炭素数１~３の飽和直鎖アルキル基、Ｒ_２は炭素数８~１２の飽和直鎖アルキル基、Ｘ⁻はハロゲンイオン、Ｙは炭素数８~１２の飽和直鎖アルキレン基を表す］。
　式（Ｉ）の化合物が、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライド、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジブロミド、１，１２−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジクロライドおよび１，１２−ジ（３−オクチル−２−メチルイミダゾリウム）ドデカンジクロライドからなる群より選ばれる１種以上である請求項１４記載の殺菌洗浄剤組成物。
　式（Ｉ）の化合物が、１，１０−ジ（３−デシル−２−メチルイミダゾリウム）デカンジクロライドである請求項１４または１５に記載の殺菌洗浄剤組成物。
　式（Ｉ）の化合物を０．００１~５０重量％含有する請求項１４~１６のいずれかに記載の殺菌洗浄剤組成物。
　式（Ｉ）の化合物１重量部に対し、非イオン界面活性剤を０．１~２０重量部含有する請求項１４~１７のいずれかに記載の殺菌洗浄剤組成物。
　非イオン界面活性剤が、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる１種以上である請求項１４~１８のいずれかに記載の殺菌洗浄剤組成物。
　ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド１重量部に対してポリオキシアルキレンアルキルエーテルを０．０５~１．０重量部含有する請求項１９記載の殺菌洗浄剤組成物。
　式（Ｉ）の化合物１重量部に対し、トリエタノールアミンを０．００２５~２４．５重量部含有する請求項１４~２０のいずれかに記載の殺菌洗浄剤組成物。
　さらにビグアナイド系殺菌剤を含有する請求項１４~２１のいずれかに記載の殺菌洗浄剤組成物。
　式（Ｉ）の化合物１重量部に対し、ビグアナイド系殺菌剤を０．５~４０重量部含有する請求項２２記載の殺菌洗浄剤組成物。
　ビグアナイド系殺菌剤が、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩である請求項２２又は２３記載の殺菌洗浄剤組成物。
　水溶液の形態である、請求項１４~２４のいずれかに記載の殺菌洗浄剤組成物。
　組成物のｐＨが７~１２である、請求項２５に記載の殺菌洗浄剤組成物。
　組成物のｐＨが、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群より選ばれる１種以上のアルカリ剤を用いて調整されている請求項２５または２６に記載の殺菌洗浄剤組成物。
　第四級アンモニウム塩および／またはビグアナイド系殺菌剤に対し抵抗性を有する微生物が存在しているか又は発生し得る対象に対して使用するための、請求項１４~２７のいずれかに記載の殺菌洗浄剤組成物。
　請求項１４~２８いずれかに記載の殺菌洗浄剤組成物を殺菌洗浄対象物と接触させることを含む殺菌洗浄方法。