WO2011122587A1

WO2011122587A1 - 耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板

Info

Publication number: WO2011122587A1
Application number: PCT/JP2011/057712
Authority: WO
Inventors: 松山　宏之; 春樹有吉; 洋一郎安田
Original assignee: 新日鐵住金ステンレス株式会社
Priority date: 2010-03-30
Filing date: 2011-03-28
Publication date: 2011-10-06
Also published as: AU2011235775B2; US20130011615A1; JP5732273B2; TWI540040B; CN102821948B; EP2554369A4; EP2554369B1; NZ602306A; EP2554369A1; US8623502B2; AU2011235775A1; CN102821948A; TW201202024A; JP2011224975A; KR20120138238A

Abstract

　このクリヤ塗装ステンレス鋼板は、ステンレス鋼板と、前記ステンレス鋼板の片面または両面に塗布されたクリヤ塗装膜を具備し、前記クリヤ塗装膜は、熱硬化性樹脂組成物（Ａ）と、前記熱硬化性樹脂組成物（Ａ）の固形分１００質量部あたり０．５～４．０質量部の樹脂ビーズ（Ｂ）を含有し、前記熱硬化性樹脂組成物（Ａ）は、アクリル樹脂（Ａ１）と、前記アクリル樹脂（Ａ１）を架橋硬化させるブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂よりなる架橋硬化樹脂（Ａ２）を含み、前記アクリル樹脂（Ａ１）は、水酸基、カルボキシル基、及びアルコキシシラン基から選択される１種以上の架橋性官能基を含み、ガラス転移点が３０～９０℃であり、数平均分子量が３０００～５００００である。

Description

耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板

　本発明は、耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板に関する。
　本願は、２０１０年３月３０日に、日本に出願された特願２０１０－０７７３６７号及び２０１１年２月１４日に、日本に出願された特願２０１１－０２９０１６号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

　クリヤ塗装ステンレス鋼板は、ステンレス特有の美麗な金属光沢を活かした高級感のある外観が得られることから、家電製品の筐体や内装材、表装材に使われるケースが多くなってきた。しかし、クリヤ塗装ステンレス鋼板は、表面光沢が非常に高いのが特長であるため、鋼板の巻取り時の圧力により発生するプレッシャーマークや、塗装表面の擦り疵が目立ちやすいという問題がある。

　耐疵付き性及び加工性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板として、２コート２ベイク（２回塗布、２回乾燥）方式で低弾性率塗膜を高膜厚で形成する下塗の工程と、高弾性率塗膜を低膜厚で形成する上塗の工程を有することを特徴とする加工性と耐疵付き性を高めたクリヤ塗装ステンレス鋼板の製造方法が報告されている（例えば、特許文献１）。しかし、２コート２ベイクという塗装工程でなければならないことや、下塗と上塗の塗料を区別するとともに、膜厚もそれぞれコントロールしなければならない必要性がある。このため、非常に煩雑な塗装管理が要求され、作業性面を考慮すると現実的でない。

　また、母材の表裏両面塗装方式において、裏面塗装部に樹脂粒子を添加することによって耐プレッシャーマークが改善されることが報告されている（特許文献２）。通常、普通鋼が用いられた塗装鋼板の場合、さびを抑制するために裏面塗装することが多い。しかし製造された塗装鋼板を使用した製品によっては、裏面への塗装自体が制限される場合がある。また、裏面用に特殊な塗装を行う必要があることから余分なコストアップに繋がる。

　さらには、２コート２ベイクでプレコート鋼板を製造する際に、上塗り塗膜に粒径を規定した樹脂ビーズを添加することによって、耐プレッシャーマークを改善する方法が報告されている（特許文献３）。しかし、プレコート鋼板は、塗膜の膜厚が厚く、またビーズ粒径が大きいため、ステンレスクリヤ塗装へ適用することは意匠性の観点から困難である。

　なお、樹脂ビーズ量を規定した先行技術として、１コート１ベイクの工程により、ステンレスクリヤ塗装の意匠性を改善した技術がある（特許文献４）。しかし、製造時の耐プレッシャーマーク性については述べられていない。

　かかる耐プレッシャーマーク性や耐擦り疵性と加工性のバランスがとれ、かつ短時間での焼付けが可能という作業性に優れた１コート１ベイク方式で製造できるクリヤ塗装ステンレス鋼板は未だ開発されていないのが現状である。

特開２００３－１５４３０９号公報特開２００５－２８８５１号公報特開平１０－１９３５０８号公報特開２００５－３１３６３０号公報

　そこで、プレッシャーマーク及び擦り疵が目立ちにくく、かつ１コート１ベイク方式で製造でき、生産性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板を検討した。その結果、熱硬化性アクリル樹脂組成物の特性と所定の量のアクリル樹脂ビーズを添加することが有効であることを見出した。しかしながら、ステンレス鋼板のクリヤ塗装の意匠性を劣化させるプレッシャーマーク及び擦り疵は、ステンレス鋼板の巻取り時の圧力により発生する。このため製造コストの観点から量産製造時のコイル単重を大きくすると、プレッシャーマークを必ずしも回避できないことも見出した。

　本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、コイル単重が大きい量産製造条件で製造できて経済的に優れ、かつ耐プレッシャーマーク性と耐疵付き性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板の提供を目的とする。

　そこで更なる検討を行った結果、樹脂ビーズの選定とクリヤ塗膜の厚さと樹脂ビーズ平均粒径の関係が重要であるとの知見を得て、本発明に至った。

（１）本発明の一態様に係る耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板は、ステンレス鋼板と、前記ステンレス鋼板の２つの主面のいずれか一方又は両方に塗布されたクリヤ塗装膜と、を具備する。
　前記クリヤ塗装膜は、熱硬化性樹脂組成物（Ａ）と、前記熱硬化性樹脂組成物（Ａ）の固形分１００質量部あたり０．５～４．０質量部の樹脂ビーズ（Ｂ）と、を含有する。
　前記熱硬化性樹脂組成物（Ａ）は、アクリル樹脂（Ａ１）と、前記アクリル樹脂（Ａ１）を架橋硬化させるブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂よりなる架橋硬化樹脂（Ａ２）と、を含む。
　前記アクリル樹脂（Ａ１）は、水酸基、カルボキシル基、及びアルコキシシラン基から選択される１種以上の架橋性官能基を含み、ガラス転移点が３０～９０℃であり、数平均分子量が３０００～５００００である。
（２）前記（１）に記載の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板では、前記樹脂ビーズ（Ｂ）の平均粒径が、前記クリヤ塗装膜の膜厚の０．２０～３．０倍であってもよい。
（３）前記（１）又は（２）に記載の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板では、前記樹脂ビーズ（Ｂ）が、架橋型アクリル樹脂ビーズ、架橋型ウレタン樹脂ビーズ、及びフッ素樹脂ビーズから選択される１種または２種以上であってもよい。

　本発明の一態様に係るクリヤ塗装ステンレス鋼板によれば、クリヤ塗装膜が、熱硬化性樹脂組成物と、所定量の樹脂ビーズを含有し、前記熱硬化性樹脂組成物は、アクリル樹脂と、架橋硬化させるための樹脂としてブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂を含む。このため、クリヤ塗装ステンレス鋼板の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性を高めることができる。また、耐プレッシャーマーク性に優れるため、コイル単重が大きい量産製造条件で製造でき、経済的にも優れる。
　更に、本発明の一態様に係るクリヤ塗装ステンレス鋼板によれば、樹脂ビーズの平均粒径をクリヤ塗装膜の膜厚に対する相対的な大きさで規定することによって、クリヤ塗装ステンレス鋼板の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性をより高めることができる。

　本実施形態のクリヤ塗装ステンレス鋼板では、ステンレス鋼板の片面または両面に、クリヤ塗装用樹脂組成物からなるクリヤ塗装膜が塗布、形成されている。クリヤ塗装用樹脂組成物は、アクリル樹脂（Ａ１）及び架橋硬化樹脂（Ａ２）を含む熱硬化性樹脂組成物（Ａ）と、熱硬化性樹脂組成物（Ａ）の固形分１００質量部あたり０．５～４．０質量部の樹脂ビーズ（Ｂ）と、を含有する。

　まず、クリヤ塗装用樹脂組成物のベース樹脂である熱硬化性樹脂組成物（Ａ）について説明する。

「熱硬化性樹脂組成物（Ａ）」
　熱硬化性樹脂組成物（Ａ）は、水酸基、カルボキシル基、及びアルコキシシラン基から選択される１種以上の架橋性官能基を含み、ガラス転移点が３０～９０℃であり、数平均分子量が３０００～５００００であるアクリル樹脂（Ａ１）と、前記アクリル樹脂を架橋硬化させるブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂よりなる架橋硬化樹脂（Ａ２）と、を少なくとも含有する。

「アクリル樹脂（Ａ１）」
　本実施形態における水酸基、カルボキシル基、、及びアルコキシシラン基から選択される１種以上の架橋性官能基を有するアクリル樹脂（Ａ１）は、塗料用樹脂として既知の方法により得られるものである。

　アクリル樹脂（Ａ１）は、非官能性単量体を、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシラン基等の架橋性官能基を持った重合性単量体の１種または２種以上と反応させることにより得ることができる。
　非官能性単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ｎ－ブチル、アクリル酸２－エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸ｎ－ブチル、メタアクリル酸ｎ－ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ラウリル等の脂肪族又は環式アクリート；メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ｎ－プロピルビニルエーテル、ｎ－ブチルビニルエーテル等のエーテル類；スチレン、ａ－メチルスチレン等のスチレン類；アクリルアミド、Ｎ－メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体等から選ばれる１種または２種以上が挙げられる。

　１分子中に水酸基１つ以上含有する重合性単量体としては、アクリル酸２－ヒドロキシエチル、メタクリル酸２－ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキルエステル；プラクセルＦＭ１～５、ＦＡ－１～５（ダイセル化学工業製）ラクトン変性水酸基含有ビニル重合モノマーが挙げられる。ここに例示した化合物は、何れも、水酸基とともに重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体でもある。

　カルボキシル基を有する重合体単量体は、１分子中にカルボキシル基及び重合性不飽和二重結合をそれぞれ１つ以上含有する化合物であり、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。

　アルコキシシラン基を有する重合体単量体としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。ここに例示した化合物は、１分子中にアルコキシシラン基及び重合性不飽和二重結合をそれぞれ１つ以上含有する化合物でもある。

　以上の原料により得られたアクリル樹脂（Ａ１）は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシラン基等の架橋性官能基を1分子あたり、２個以上有することができる。

　アクリル樹脂（Ａ１）の数平均分子量は、３０００～５００００の範囲が好ましく、特に４０００～２００００の範囲がより好ましい。数平均分子量が３０００未満の場合、架橋剤との反応性が乏しすぎて塗膜を形成できない場合があるため好ましくない。数平均分子量が５００００超の場合、溶剤に対する溶解性が不足して樹脂液にならない場合があるため好ましくない。

　アクリル樹脂（Ａ１）のガラス転移点は３０～９０℃が好ましく、さらには５０～９０℃の範囲内がより好ましい。アクリル樹脂（Ａ１）のガラス転移点が３０℃未満の場合は、連続プレス時の摩擦、加工発熱により鋼板表面の温度が８０～１００℃に上昇すると、塗膜の軟化を生じ、金型に塗膜樹脂が付着する場合があるため好ましくない。また、ガラス転移点が９０℃超の場合には、ピンホール、レベリング不足等の塗装時の作業性が悪くなるため好ましくない。

「架橋硬化樹脂（Ａ２）」
　次に、熱硬化性樹脂組成物（Ａ）のもう一つの構成成分である架橋硬化樹脂（Ａ２）は、ブロックイソシアネート樹脂とアミノ樹脂の混合物である。

　ブロックイソシアネート樹脂は、１分子中に２個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、ポリイソシアネートを、フェノール類、オキシム類、活性メチレン類、ε－カプロラクタム類、トリアゾール類、ピラゾール類等のブロック剤で封鎖したものである。ジブチルチンジラウリレート等の有機錫触媒がブロック剤の解離促進剤として使用される。
　ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート；ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート；イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート；前記ポリイソシアネートのビューレットタイプの付加物、イソシアヌル環タイプ付加物等が挙げられる。

　ブロックイソシアネート樹脂の市販品としては、デスモジュールBL1100、BL1265MPA/X、VPLS2253/1、BL3475BS/SN、BL3272MPA、BL3370MPA、BL4265SN、デスモーサム2170、スミジュール3175などの住化バイエルウレタン（株）製の市販品；デュラネート17B-60PX、TPA-B80X、MF-B60X、MF-K60X、E-402-B80Tなどの旭化成ケミカルズ（株）製の市販品；バーノックDB-980K、D-550、B3-867、B4-887-60などのDIC（株）製の市販品；コロネート2515、2507、2513などの日本ポリウレタン工業（株）製の市販品などが挙げられ、これらを単独もしくは併用して使用してよい。

　アミノ樹脂は、アミノ化合物（メラミン、グアナミン、尿素）とホルムアルデヒド（ホルマリン）を付加反応させ、アルコールで変性した樹脂を総称している。塗料用のアミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化尿素メラミン樹脂、グリコールウリル樹脂、アセトグアナミン樹脂、シクロヘキシルグアナミン樹脂が挙げられる。この中でも熱硬化性に起因する耐疵付き性、耐薬品性という点から、メラミン樹脂が好ましい。変性するアルコールの種類によって、メチル化メラミン樹脂、ｎ－ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、混合アルキル化メラミン樹脂等に分かれる。

　メチル化メラミン樹脂としては、サイメル300、301,303、350、370、771、325、327、703、712、715、701、267、285、232、235、236、238、211、254、204、212、202、207などの三井サイテック（株）製の市販品；LUWIPAL063、066、068、069、072、073などのBASF（株）製の市販品；スーパーベッカミンL-105などのDIC（株）製の市販品；メラン522、523、620、622、623などの日立化成工業（株）製の市販品を例示できる。
　n-ブチル化メラミン樹脂としては、マイコート506、508などの三井サイテック（株）製の市販品；ユーバン20SB、20SE、21R、22R、122、125、128、220、225、228、28-60、20HS、2020、2021、2028、120などの三井化学（株）製の市販品；PLASTOPAL EBS 100A、100B、400B、600B、CBなどのＢＡＳＦ（株）製の市販品；スーパーベッカミンJ-820、L-109、L-117、L-127、L-164などのDIC（株）製の市販品；メラン21A、22、220、1303、2000、2030、8000などの日立化成工業（株）製の市販品；テスアジン3020、3021、3036などの日立化成ポリマー（株）製の市販品を例示できる。
　イソブチル化メラミン樹脂としては、ユーバン60R、62、62E、360、361、165、166-60、169、2061などの三井化学（株）製の市販品；スーパーベッカミンG-821、L-145、L-110、L-125などのDIC（株）製の市販品；PLASTOPAL EBS 4001、FIB、H731B、LR8824などのBASF（株）製の市販品；メラン27、28、28D、245、265、269、289などの日立化成工業（株）製の市販品を例示できる。
　混合アルキル化メラミン樹脂としては、サイメル267、285、232、235、236、238、211、254、204、212、202、207などの三井サイテック（株）製の市販品などを例示できる。
　これらは、単独もしくは併用で使用しても良い。

　熱硬化性樹脂組成物（Ａ）におけるアクリル樹脂（Ａ１）と架橋硬化樹脂（Ａ２）の両成分の構成比率（含有比率）は、目的に応じて広い範囲内で変えることができる。アクリル樹脂（Ａ１）中の（OH+COOH）基１モルに対して、ブロックイソシアネート樹脂中のイソシアネート基の量は、０．１～１．０モル、好ましくは０．２～０．８モルが良い。またアクリル樹脂（Ａ１）固形分１００質量部に対して、アミノ樹脂の量は、５～２５質量部、好ましくは８～１５質量部が良い。架橋硬化樹脂（Ａ２）の添加量が少ないと、耐擦り性に劣る。架橋硬化樹脂（Ａ２）の添加量が多くなると、曲げ加工性が劣るため、加工時に塗膜に微細クラックが入り耐食性の低下につながる。

　一般にアミノ樹脂の硬化触媒としては、スルホン酸系やアミン系の触媒が使用される。本実施形態の特長である短時間焼付けを可能とするためには、スルホン酸系触媒であるＰ－トルエンスルホン酸やドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。熱硬化性樹脂組成物（Ａ）の固形分１００質量部あたり、Ｐ－トルエンスルホン酸やドデシルベンゼンスルホン酸を固形分量で０．１～３．０質量部、好ましくは０．３～１．０質量部含有することが望ましい。アミノ樹脂の硬化触媒の量が０．１質量部以下では、その効果が得られない。アミノ樹脂の硬化触媒の量が３質量部以上では、硬化が飽和するだけでなく、加工性も劣化する。

　ブロックイソシアネート樹脂の硬化触媒としては、ジ-ｎ-ブチルチンオキサイド、ｎ-ジブチルチンクロライド、ジ-ｎ-ブチルチンジラウリレート、ジ-ｎ-ブチルチンジアセテート、ジ-ｎ-オクチルチンオキサイド、ジ-ｎ-オクチルチンジラウリレート、テトラ-ｎ-ブチルチン等が挙げられる。それぞれ必要に応じて添加すればよく、単独もしくは、混合して使用しても良い。

　クリヤ塗装用樹脂組成物には、更に添加剤としてレベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、シランカップリング剤等を混合させ、塗料化しても良い。また、顔料又は染料を分散させ、カラークリヤ塗装膜とすることや、アルミペーストやパール顔料などの光輝材を混合して意匠性を出してもよい。また、必要に応じてエポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂等を含んで良い。

　このような組成のアクリル樹脂（Ａ１）と架橋硬化樹脂（Ａ２）を含むことによって、１コート１ベイク（１回塗布、１回乾燥）でステンレス特有の美麗な外観を活かしたクリヤ塗装ステンレス鋼板の製造が可能となる。

「樹脂ビーズ（Ｂ）」
　続いて、クリヤ塗装ステンレス鋼板の品質を確保するために重要な耐プレッシャーマーク性と耐疵付き性を発現させる樹脂ビーズ（Ｂ）について述べる。

　本実施形態のクリヤ塗装用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物（Ａ）の１００質量部あたり、樹脂ビーズ（Ｂ）を０．５～４．０質量部含有する。
　樹脂ビーズの含有量が０．５質量部未満では、耐疵付き性の効果が得られない。樹脂ビーズの含有量が４．０質量部超では、クリヤ塗装膜の透明性が劣化すると共に、塗装作業性も低下する。この樹脂ビーズの含有量は、特には１．０～３．０質量部が好ましく、さらには１．０～２．０質量部が好ましい。

　樹脂ビーズ（Ｂ）は、クリヤ塗装膜の塗装必要膜厚の０．２０～３．０倍の平均粒径を用いることが好ましい。クリヤ塗装膜の塗装必要膜厚の０．２０～３．０倍の平均粒径の樹脂ビーズを用いることにより、クリヤ塗装膜の表面光沢を著しく落とすことなく本実施形態の特徴である良好な耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性が得られる。樹脂ビーズ（Ｂ）の平均粒径が塗装必要膜厚の０．２０倍未満では、樹脂ビーズの粒径が小さすぎる為に、骨材としての機能が低下し、耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に効果がない。樹脂ビーズ（Ｂ）の平均粒径が塗装必要膜厚の３．０倍超になると、塗膜表層の樹脂ビーズの頭出しが多くなり、表面にざらつきが出て、且つ表面光沢が落ちる。
　樹脂ビーズ（Ｂ）の平均粒径は、クリヤ塗装膜の塗装必要膜厚の０．３～２．０倍が好ましく、０．５～１．３倍が更に好ましく、０．８～１．０倍が最も好ましい。樹脂ビーズ（Ｂ）の平均粒径は、一般にレーザー回折法により測定された粒度分布から求められる。

　樹脂ビーズ（Ｂ）の材質としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾクアナミン樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。本実施形態の目的である耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性を得るには、樹脂本来の硬さが必要である。このため、樹脂ビーズ（Ｂ）の材質は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好ましい。また、塗料が溶剤系であるため、耐溶剤性が要求されることから、架橋型の樹脂ビーズが好ましい。

　架橋型アクリル樹脂ビーズとしては、アートパールA-400、G-200、G-400、G-600、G-800、GR-200、GR-300、GR-400、GR-600、GR-800、J-4P、J-5P、J-7P、S-5Pなどの根上工業（株）製の市販品；テクポリマーMBX-8、MBX-12、MBX-15、MBX-30、MBX-40、MBX-50、MB20X-5、MB20X-30、MB30X-5、MB30X-8、MB30X-20、BM30X-5、BM30X-8、BM30X-12、ARX-15、ARX-30、MBP-8、ACP-8などの積水化成品工業（株）製の市販品；ケミスノーMX-150、MX-180TA、MX-300、MX-500、MX-500H、MX-1000、MX-1500H、MX-2000、MX-3000、MR-2HG、MR-7HG、MR-10HG、MR-3GSN、MR-2G、MR-7G、MR-10G、MR-20G、MR-30G、MR-60G、MR-90Gなどの綜研化学（株）製の市販品；スタフィロイドAC-3355、AC-3816、AC-3832、AC-4030、AC-3364、GM-0401S、GM-0801、GM-1001、GM-2001、GM-2801、GM-4003、GM-5003、GM-9005、GM-6292などのガンツ化成株式会社製の市販品等が例示される。
　架橋型ウレタン樹脂ビーズとしては、アートパールC-100、C-200、C-300、C-400、C-800、CZ-400、P-400T、P-800T、HT-400BK、U-600T、CF-600T、MT-400BR、MT-400YOなどの根上工業（株）製の市販品等が例示される。
　フッ素樹脂ビーズには、DYNEON PTFE マイクロパウダー　TF-9201、TF-9205、TF-9207などの住友３M（株）製の市販品；Fluon PTFE ルブリカント L-150J、L-169J、L-170J、L-172J、L-173Jなどの旭硝子（株）製の市販品等が例示される。
　これらはそれぞれ必要に応じて添加すればよく、単独もしくは、混合して使用しても良い。

　また、クリヤ塗装用樹脂組成物の他の添加成分として、ポリエチレンワックスやラノリンワックス等のワックスを配合すれば、スリック性が向上し、耐擦り疵性をさらに向上させる。

　クリヤ塗装用樹脂組成物を着色するために、各種透明性のある有機顔料および無機顔料を添加しても良い。また、クリヤ塗装用樹脂組成物の意匠性を向上するために各種のパール顔料、アルミペースト等の光輝材を含有してもよい。その場合、意匠性に対する要求がより厳しくなり、従来の透明クリヤであればほとんど問題にないならない程度の微小なプレッシャーマークや擦り疵であっても問題となる場合がある。このため、より好ましい範囲での塗膜厚さの管理や樹脂ビーズ粒径の管理が必要となる。そのためには、分散工程を経ることによって、樹脂ビーズの粒径分布をより狭くして、樹脂組成物に添加するなどの手法が望ましい。

　本実施形態のクリヤ塗装ステンレス鋼板において、クリヤ塗装膜の膜厚は、１～１０μｍが好ましく、２～６μｍがより好ましく、３～５μｍが最も好ましい。クリヤ塗装膜の膜厚が１０μｍを超えると、１コート１ベイクでの塗装作業性が劣化する。またクリヤ塗膜の曲げ加工性が低下して、曲げ加工時に微小クラックが入り、耐食性の低下につながる。さらに、膜厚が厚くなると、耐プレッシャーマーク性を確保するために添加する樹脂ビーズの平均粒径を大きくする必要があるが、樹脂ビーズの平均粒径が大きくなると、クリヤ塗装ステンレス鋼板としての意匠性が低下する。また、クリヤ塗装膜の膜厚が１μｍ未満では、膜厚コントロールが困難になり、意匠性が低下する。

　クリヤ塗装膜を塗装する前に、ステンレス鋼板に化成処理を施しておくことが好ましい。化成処理液としては、環境問題を考慮すると、ノンクロメートが好ましい。一般にはアミノシラン系、エポキシシラン系カップリング剤が好ましい。化成処理液の付着量が２～５０ｍｇ／ｍ^２（蛍光Ｘ線にてＳｉＯ_２量を測定）になるようにステンレス鋼板に化成処理を施し、次いでステンレス鋼板素材の表面到達温度（ＰＭＴ）が６０～１４０℃程度となる条件で焼付けし、乾燥される。

　アミノシラン系カップリング剤としては、N-2（アミノエチル）３-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2（アミノエチル）３-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
　エポキシ系シランカップリング剤としては、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
　これらは、単独もしくは混合して使用しても良い。

　化成処理液の塗布は、スプレー、ロールコート、カーテンフローコート、静電塗布等の方法を用いて行うことができる。

　乾燥は、水分を蒸発させれば良く、その温度は、ステンレス鋼板素材の表面到達温度（ＰＭＴ）にして６０～１４０℃が適当である。この化成処理に際し、必要に応じて、アルカリ脱脂や酸、アルカリによるエッチング等の公知の前処理を施しても構わない。

　クリヤ塗装膜は、ステンレス鋼板の表面側だけではなく、裏面にも施してもいい。また、ステンレス鋼板の裏面はクリヤ塗装でなくても構わない。ステンレス鋼板の裏面の塗装膜厚は１～６μｍ程度であればよい。樹脂の種類は、特に限定されないが、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系などの樹脂が用いられる。裏面にも塗装膜があれば、耐プレッシャーマーク性は良好となる。

　本実施形態によれば、アクリル樹脂を架橋硬化させるための架橋性硬化樹脂としてブロックイソシアネート樹脂およびアミノ樹脂を含有し、更に一定の粒径の架橋系樹脂ビーズを含有するクリヤ塗装膜を具備することによって、良好な耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性が達成できる。

　以下に、本実施形態の実施例および比較例について説明する。
　温度計、還流冷却器、攪拌器、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた４つ口フラスコに、表１に示された量（質量部）のトルエン、酢酸ブチルを入れ、１１０℃まで昇温し、次いで、窒素ガスを吹き込みながら攪拌した。この状態で溶液を攪拌しながら、メタアクリル酸メチル、スチレン、メタアクリル酸ｎ－ブチル、メタアクリル酸２－ヒドロキシエチル、アクリル酸２－ヒドロキシエチル、アクリル酸メチル、アゾビスイソブチロニトリル（ＡＩＢＮ）から選ばれる原料の混合物を３時間かけて滴下した。滴下終了後、さらにＡＩＢＮを添加して、同温度（１１０℃）でさらに３時間反応させた。以上により、不揮発分５０質量％のアクリル系共重合体（アクリル樹脂）を得た。
　得られたアクリル樹脂の数平均分子量及びガラス転移点を表１に示す。

　得られたアクリル樹脂に、表１に示す架橋性硬化樹脂を混合することにより、熱硬化性樹脂組成物Ａ－１～Ｂ－２を得た。なお、架橋性硬化樹脂のブロックイシシアネートとしては、ＮＣＯ基含有率が１０.５％のデスモジュールＶＰＬＳ２２５３（住化バイエルウレタン（株）製）を用いた。また、メラミン樹脂としては、サイメル３２７（三井サイテック（株）製）を用いた。アクリル樹脂と架橋性硬化樹脂との混合比は、表１に記載の通りである。
　なお、表１の配合比は質量部である。

　得られた熱硬化性樹脂組成物Ａ－１～Ｂ－２に、表２～４に示す添加成分及び樹脂ビーズを混合することにより、実施例１～１４及び比較例１～５のクリヤ塗装用樹脂組成物を得た。
　なお、表２～表４の配合量の単位は、全て質量部である。ただし、混合時に添加したシンナーは乾燥時に揮発するため、熱硬化性樹脂組成物の固形分１００質量部あたりの樹脂ビーズ質量部を、「樹脂ビーズ／熱硬化性樹脂組成物固形分」として記載した。

　ステンレス鋼板としては、ＳＵＳ４３０／Ｎｏ．４研磨仕上げ材を用いた。
　これらのステンレス鋼板上にノンクロメートの化成処理液をロールコーターにて塗装した。この化成処理液の塗装は、ＳｉＯ_２付着量が２～１０ｍｇ／ｍ^２になる条件で行った。なお、ＳｉＯ_２付着量は、蛍光Ｘ線にて測定した。次いで、表面到達温度（ＰＭＴ）が１００℃になる条件でステンレス鋼板を乾燥させた。

　次いで、得られたクリヤ塗装用樹脂組成物を、塗付量が３．０～４．０ｇ／ｍ^２となるようにバーコーターにてステンレス鋼板に塗装した。そして、表面到達温度（ＰＭＴ）が２３２℃になる条件で焼付けて、表２～表３に示す実施例１～７及び比較例１～５のクリヤ塗装ステンレス鋼板を得た。
　また、表４に示すように、塗膜厚さと樹脂ビーズの平均粒径の影響を確認するために、塗膜厚さを３、１０、１８μｍとなるように実施例８～１１のクリヤ塗装ステンレス鋼板を得た。
　更に、表４に示すように、樹脂ビーズの種類の影響を確認するために、実施例１２～１４のクリヤ塗装ステンレス鋼板を得た。

　なお、表２～４中、熱硬化性樹脂組成物の添加量は、固形分の質量部を示している。酸触媒（Ｐ－トルエンスルホン酸）及びスズ触媒（ジ－ｎ－ブチルチンジラウリレート）、レベリング剤や消泡剤（ともにアクリル系樹脂）の添加量は、その有効成分（溶剤などを除いた主成分）の質量部を示している。
　樹脂ビーズＡ～Ｃは、ガンツ化成製の架橋型アクリル樹脂ビーズであり、平均粒径は、樹脂ビーズＡが３μｍ、Ｂが７μｍ、Ｃが１０μｍである。樹脂ビーズＤは、根上工業製の架橋型ウレタン樹脂ビーズであり、平均粒径は３μｍである。樹脂ビーズＥは、旭硝子製のフッ素系樹脂ビーズであり、平均粒径は３μｍである。実施例１４にて用いた樹脂ビーズＦは、ＢＹＫ－Ｃｈｅｍｉｅ製のＰＥ樹脂ビーズであり、平均粒径は３．５μｍである。
　ポリエチレンワックスとしては、ＣＥＲＡＦＬＯＵＲ　９６１（ＢＹＫ－Ｃｈｅｍｉｅ（ビックケミー）社製）の平均粒径３．５μｍのものを用いた。

　実施例１～１４及び比較例１～５のクリヤ塗装ステンレス鋼板について、耐プレッシャーマーク性、耐擦り疵性、クリヤ塗装膜の加工性、硬さ、光沢度及び耐薬品性を調べた。
　評価方法は以下の通りである。結果を表２～４に示す。

（１）耐プレッシャーマーク性
　供試材を２枚重ね、４０℃の雰囲気で１０ｋｇ/ｃｍ^２の圧力でプレスした。このプレスした状態のまま２４時間保持した。２４時間後に、その耐プレッシャーマーク性を評価した。評価は、以下のランク１～５の５段階で行った。
　ランク５：プレッシャーマークがない（合格）
　ランク４：ほとんどプレッシャーマークが目立たない（合格）
　ランク３：見る角度によっては、はっきりとプレッシャーマークが確認できる（不合格）
　ランク２：プレッシャーマークによって色調・光沢の劣化が見られる。（不合格）
　ランク１：著しく光沢が低下し、どの方向からもプレッシャーマークが確認できる（不合格）

（２）耐擦り疵性
　摩擦子としてクレンザーを染み込ませたガーゼを、荷重２００ｇで供試材の表面に当接させた。この状態でガーゼを５０往復させて、供試材の表面を研磨した。そして、耐擦り疵性を評価した。評価は、以下のランク１～５の５段階で行った。
　ランク５：擦り疵がない（合格）
　ランク４：ほとんど擦り疵が目立たない（合格）
　ランク３：はっきりと擦り疵が確認できる（不合格）
　ランク２：擦り疵で塗膜の光沢がなくなっている（不合格）
　ランク１：塗膜が削れ、素地に達している（不合格）

（３）塗膜の加工性
　ＪＩＳ　Ｋ５６００　５－２（耐カッピング性）に従って評価した。評価は、クラックが生じた深さによって、以下のランク１～５の５段階で行った。
　ランク５：７ｍｍ以上（合格）
　ランク４：５～７ｍｍ（合格）
　ランク３：３～５ｍｍ（不合格）
　ランク２：１～３ｍｍ（不合格）
　ランク１：１ｍｍ以下（不合格）

（４）塗膜表面硬さ
　ＪＩＳ　Ｋ５６００　５－４（引っかき硬度（鉛筆法））に従って評価した。評価は、下記のランク１～５の５段階で行った。
　ランク５：４Ｈ以上（合格）
　ランク４：３Ｈ（合格）
　ランク３：２Ｈ（不合格）
　ランク２：Ｈ（不合格）
　ランク１：Ｈ未満（不合格）

（５）光沢度
　ＪＩＳ　Ｋ５６００　４－７　鏡面光沢度に従って評価した。評価は、下記のランク１～５の５段階で行った。
　ランク５：１００以上（合格）
　ランク４：８０～１００（合格）
　ランク３：６０～８０（不合格）
　ランク２：４０～６０（不合格）
　ランク１：４０未満（不合格）

（６）耐薬品性
　５％硫酸と５％水酸化ナトリウムを、それぞれ供試材に２ｍＬ滴下し、蓋をした。この状態で１６時間放置した。その後の塗膜の状態を観察し、評価した。評価は、下記のランク１～５の５段階で行った。
　ランク５：跡が全く無い（合格）
　ランク４：跡が僅かに認められる（合格）
　ランク３：跡がやや目立つ（不合格）
　ランク２：跡が濃く残る（不合格）
　ランク１：剥離する（不合格）

　実施例１～１４の評価結果より、アクリル樹脂を架橋硬化させる樹脂としてブロックイソシアネート樹脂とアミノ樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物と、所定の量および平均粒径の樹脂ビーズを含有するクリヤ塗装膜を具備することによって、耐プレッシャーマーク性及び耐すり疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板が得られることが分かる。
　詳細には、実施例１～９，１２，１３は、Ａ－１～Ａ－４の熱硬化性樹脂組成物と、所定の量の樹脂ビーズとを含み、樹脂ビーズ平均粒径／塗装厚が０．２０～３．０倍である。このため、耐プレッシャーマーク性と耐すり疵性のいずれか一方または両方の評価が５と大変良好であった。
　実施例１０，１１は、樹脂ビーズの平均粒径に対して塗膜厚が薄い場合と厚い場合の例である。いずれも、所定の量の樹脂ビーズを含有しているため、耐プレッシャーマーク性及び耐すり疵性は合格レベルであった。
　実施例１４は、樹脂ビーズの種類がＰＥの例である。所定の量の樹脂ビーズを含有しているため、耐プレッシャーマーク性及び耐すり疵性は合格レベルであった。

　一方、比較例について、Ｂ－１の熱硬化性樹脂組成物を用いた例（比較例１）は、耐プレッシャーマーク性や耐擦り疵性だけではなく、クリヤ塗装膜の一般的な特性として重要な加工性、硬さ及び耐薬品性に劣っていた。
　Ｂ－２の熱硬化性樹脂組成物を用いた例（比較例２）は、全ての評価項目において劣っていた。
　樹脂ビーズ含有量が少ない例（比較例３）は、耐プレッシャーマーク性及び塗膜の加工性に劣っていた。
　樹脂ビーズ含有量が多い例（比較例４，５）は、耐プレッシャマーク性や耐擦り疵性には優れるが、塗膜の加工性およびクリヤ塗装ステンレス鋼板の意匠性として重要な光沢度で劣っていた。

　本発明によると、ステンレス鋼板の意匠性を維持し、かつ耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板を提供できる。このクリヤ塗装ステンレス鋼板は、ステンレス特有の美麗な金属光沢を活かした家電製品の筐体や内装材、外装材として好適に適用できる。

Claims

　ステンレス鋼板と、前記ステンレス鋼板の２つの主面のいずれか一方又は両方に塗布されたクリヤ塗装膜と、を具備し、
　前記クリヤ塗装膜は、熱硬化性樹脂組成物（Ａ）と、前記熱硬化性樹脂組成物（Ａ）の固形分１００質量部あたり０．５～４．０質量部の樹脂ビーズ（Ｂ）と、を含有し、
　前記熱硬化性樹脂組成物（Ａ）は、アクリル樹脂（Ａ１）と、前記アクリル樹脂（Ａ１）を架橋硬化させるブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂よりなる架橋硬化樹脂（Ａ２）と、を含み、
　前記アクリル樹脂（Ａ１）は、水酸基、カルボキシル基、及びアルコキシシラン基から選択される１種以上の架橋性官能基を含み、ガラス転移点が３０～９０℃であり、数平均分子量が３０００～５００００であることを特徴とする耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板。
　前記樹脂ビーズ（Ｂ）の平均粒径が、前記クリヤ塗装膜の膜厚の０．２０～３．０倍であることを特徴とする請求項１に記載の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板。
　前記樹脂ビーズ（Ｂ）が、架橋型アクリル樹脂ビーズ、架橋型ウレタン樹脂ビーズ、及びフッ素樹脂ビーズから選択される１種または２種以上であることを特徴とする請求項１又は２に記載の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板。