JP2012040486A - 複層塗膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】作業が簡便で、かつ、充分に高い光沢性を得ることができる複層塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】水性ベース塗料を塗装する工程(1)、前記工程(1)によって得られた未硬化のベース塗膜上にクリヤー塗装を行う工程(2)及びこれらの2層の塗膜を同時に硬化させる工程(3)を有する複層塗膜形成方法であって、上記工程(2)において使用されるクリヤー塗料は、溶剤型アクリル−イソシアネート系2液型塗料であり、上記クリヤー塗料は、塗装後の硬化時の対数減衰率のピークが0.3〜0.5であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、複層塗膜形成方法に関する。
自動車用バンパーの塗膜は、通常、プライマー−ベース−クリヤーの3層からなり、最後に塗装されるクリヤー塗料には、光沢のある塗装外観が求められる。近年、塗膜を更に高外観化することが求められており、このためにクリヤー塗料に対してはより高い光沢性が要求されている。一方では塗膜の物性を維持する必要があることから、外観と塗膜物性の両立が求められている。
従来は、膜厚を厚くすることによってクリヤー肌をのばし、レオロジーコントロール剤による粘性制御によって仕上がりを向上させていた。しかし、近年、光沢性に対する要求が厳しくなっているため、このような方法によっては近年の要望に応えられるような高い光沢性を得ることは困難である。
特許文献1には、少なくとも1層の下層と最上層とを備える積層塗膜を形成する方法であって、下層を形成するための下層用塗料として、最上層用塗料のゲル化開始時における相対損失弾性率が1s−1以下である塗料を使用することが記載されている。しかし、クリヤー塗料の性質をコントロールすることによって、外観を改善する方法は記載されていない。
特許文献2には、水性プライマー塗料、水性メタリックベース塗料、ハイソリッドクリヤー塗料によって3コート1ベークの方法で形成するプラスチック素材の塗装方法が記載されている。しかし、特許文献2の塗装方法は、ベース塗膜の硬化促進を目的とするものであった。あまりに硬化速度が速くなると、塗膜表面の滑らかさが不充分となり、良好な光沢を得ることが困難になる。
特許文献3には、ベース塗膜、第1クリヤー塗膜、第2クリヤー塗膜を順次形成する複層塗膜形成方法が記載されている。しかし、クリヤー塗装を2回行うことによって高外観塗膜を形成するものであるから、工程が増加することによるコストアップを生じてしまう。
特許文献4には、中塗塗料、ベース塗料、クリヤー塗料を3コート1ベークで塗装する方法において、不揮発分90%における粘度が中塗り塗料≧ベース塗料≧クリヤー塗料であり、硬化開始温度が中塗り塗料≦ベース塗料≦クリヤー塗料の関係を満たす塗膜形成方法が開示されている。しかし、当該方法においては、中塗り塗料、ベース塗料、クリヤー塗料のすべての物性のバランスを取ることが必要となる方法である。
特許文献5には、特定の成分からなる水性2液型クリヤー塗料組成物が記載されている。しかし、水性塗料からなるクリヤー塗料組成物及びこれを使用した複層塗膜形成方法が記載されているのみであり、溶剤系のクリヤー塗膜によって外観に優れた塗膜を形成することは記載されていない。
特開2009−208017号公報 特開2008−200587号公報 特開2003−277678号公報 特開2002−35679号公報 特開2007−84801号公報
本発明は、上述したような観点から、作業が簡便で塗膜品質を保持し、かつ、充分に高い光沢性を得ることができる複層塗膜形成方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、水性ベース塗料を塗装する工程(1)、上記工程(1)によって得られた未硬化のベース塗膜上にクリヤー塗装を行う工程(2)及びこれらの2層の塗膜を同時に硬化させる工程(3)を有する複層塗膜形成方法であって、上記工程(2)において使用されるクリヤー塗料は、溶剤型アクリル−イソシアネート系2液型塗料であり、上記クリヤー塗料は、硬化時の対数減衰率のピークが0.3〜0.5であることを特徴とする複層塗膜形成方法である。
上記クリヤー塗料は、使用するアクリル樹脂において、1級及び2級の水酸基の比が水酸基価基準で1級水酸基/2級水酸基=20/80〜50/50であることが好ましい。
本発明によって、優れた光沢を有し外観に優れており、塗膜物性においても優れている複層塗膜を形成する方法を提供することができる。
対数減衰率の測定に際しての時間と振幅の関係を示すグラフである。
本発明は、水性ベース塗料を塗装する工程(1)、上記工程(1)によって得られた未硬化のベース塗膜上にクリヤー塗装を行う工程(2)及びこれらの2層の塗膜を同時に硬化させる工程(3)を有する複層塗膜形成方法である。
このような塗装方法は、広く知られた一般的な塗装方法であるが、更に光沢・外観を更に向上させることが求められていた。本発明は、このような複層塗膜形成方法において、硬化時の対数減衰率のピークが0.3〜0.5の範囲内となるクリヤー塗料を使用することで、光沢が良好で塗膜外観及び塗膜物性に優れたバランスのよい物性を有する複層塗膜を形成するものである。
本発明における対数減衰率は、剛体振子自由振動法によって測定される値である。対数減衰率のピークは、対数減衰率を塗膜の硬化工程を模した加熱条件下で経時的に測定したときの最大値である。本発明の複層塗膜形成方法において使用されるクリヤー塗料組成物は、対数減衰率のピークが0.3〜0.5である。対数減衰率のピークは、塗膜硬化時における塗膜の粘度を反映した値であり、本発明の複層塗膜形成方法においてはその最大値が0.3〜0.5と比較的低い値である。このように対数減衰率が小さいということは、塗膜形成時における硬化時の粘度変化が小さいことを意味する。これによって、硬化ひずみが小さくなり、塗膜外観が高外観化すると推測される。対数減衰率のピークが0.3未満であると、塗膜品質が低下する。また、0.5を超えると、塗膜外観が悪化する。
このように、本発明においては塗膜硬化時の粘度変化が特定範囲にあるクリヤー塗料を使用することによって、塗膜外観を良好なものとしていることから、ベース塗料の塗膜物性や硬化時の粘性変化の状態に関わらず、外観や塗膜物性を維持することができるという利点を有する。
本発明の対数減衰率は、更に詳しくは、剛体振り子型物性試験機RPT−3000W(エー・アンド・ディ社製)にて測定したものである。このような剛体振り子型物性試験機は、試料を塗布した試験片に、ナイフエッジを装着した剛体振り子を振動の視点となるエッジが試料塗布板に垂直に接するようにセットした後振動させ、この振動周期と対数減衰率の経時変化を測定することにより、試料の硬化特性を求めるものである。
本発明においては、通常の塗装条件を模した加熱硬化条件として、ブリキ板上にクリヤー塗料を乾燥膜厚25μmとなるように塗装し、25℃で10分間キープした後、6.3℃/min.で120℃まで昇温し、その後20分間120℃でキープするという条件で測定した対数減衰率を使用する。対数減衰率Δは、図1に示したような振子の振動パターンから、(Tpx,Tpy)、(Tpx,Tpy)、(Tpx,Tpy)を測定し、
Tpyav=(Tpy+2×TPY+Tpy)/4
Yr=(Tpy−Tpyav)/(Tpy−Tpyav
Δ=−ln(Yr)
によって算出される。
このようにして測定される対数減衰率を上述した加熱時間の全範囲において測定し、上記測定時間内での最大値を「硬化時の対数減衰率のピーク」とする。
このような特定範囲の対数減衰率のピークを有するクリヤー塗料組成物は、クリヤー塗料における樹脂と硬化剤との反応速度をコントロールすることによって得ることができる。具体的には例えば、アクリル樹脂における1級水酸基と2級水酸基の比率を特定の範囲内とする方法を挙げることができる。
1級水酸基と2級水酸基とを比べると、2級水酸基のほうがイソシアネート化合物等の硬化剤との反応速度が遅い。このため、2級水酸基を有するアクリル樹脂を使用し、更に、1級水酸基との割合を調整することによって、クリヤー塗料におけるアクリル樹脂と硬化剤との反応をコントロールすることができ、上述したような硬化時の対数減衰率のピークを満たすクリヤー塗料とすることができる。
例えば、クリヤー塗料として使用する溶剤型アクリル−イソシアネート系2液型塗料のアクリル樹脂において、1級及び2級の水酸基の比を水酸基価基準で1級水酸基/2級水酸基=20/80〜50/50とすると、クリヤー塗料の硬化時の対数減衰率を上記範囲内に調節することが容易となる点で好ましい。
したがって、1級水酸基の含有比率が20/80未満では、対数減衰率のピークが0.3未満となり、塗膜品質が低下するおそれがある。逆に、1級水酸基の含有比率が50/50を超えると、対数減衰率のピークが0.5を超え、塗膜外観が悪化するおそれがある。
上記アクリル樹脂は、アクリル系不飽和重合性単量体を重合して得られる樹脂である。上記アクリル系不飽和重合性単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチル等のエチレン系不飽和ジカルボン酸のモノエステル単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの反応物等の1級水酸基含有単量体である水酸基含有エチレン系不飽和カルボン酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の2級水酸基含有単量体である水酸基含有エチレン系不飽和カルボン酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ブチルアミノエチル等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル単量体;アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メトキシブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のその他のアミド基含有エチレン系不飽和カルボン酸単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の不飽和脂肪酸グリシジルエステル単量体;(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等を挙げることができる。上記単量体混合物は、上記単量体を単独で使用するものであっても、2以上の成分を併用して使用するものであってもよい。
上記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−20℃〜50℃であることが好ましい。上記ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量計(DSC)(熱分析装置SSC5200(セイコー電子製))にて以下の工程により測定することができる。昇温速度10℃/minにて20℃から150℃に昇温する工程(工程1)、降温速度10℃/minにて150℃から−50℃に降温する工程(工程2)、昇温速度10℃/minにて−50℃から150℃に昇温する工程(工程3)において、工程3の昇温時のチャートから得られる値である。
また、質量平均分子量は、2000〜20000であることが好ましい。2000未満では、耐溶剤性、外観といったクリヤー層に要求される膜性能を発揮できないおそれがあり、20000を超えると、塗料粘度が高くなり、このような高粘度の状態では塗装作業が困難となり、塗膜の外観が悪くなってしまう場合がある。揮発性有機溶剤を用いて塗料中の不揮発分の割合を少なくすることで、粘度を低くすることも可能であるが、その場合、有機溶剤による環境汚染という問題が生じる。なお、本明細書において質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定したポリスチレン換算の質量平均分子量である。
上記アクリル樹脂の水酸基価は80〜230KOHmg/gであることが好ましく、120〜200KOHmg/gであることがより好ましい。80KOHmg/g未満ではクリヤー塗膜の架橋密度が不充分となり、複層塗膜の耐溶剤性や耐候性が低下する場合がある。230KOHmg/gを超えると三次元架橋する速度が低下し、焼付後にタックが残ったり初期の硬度が不足したりする場合がある。
上記アクリル樹脂を得るための重合方法は特に限定されるものではなく、溶液重合、高圧重合、連続重合等の公知の方法を使用することができる。
上記クリヤー塗料は、上記の成分の他に、添加剤を含むものであってもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、表面調整剤、粘性制御剤、ワキ防止剤、有機溶剤等を挙げることができる。
上記粘性制御剤としては、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドのリン酸塩等のポリアマイド系のもの;酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系のもの;有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系のもの;ケイ酸アルミ、硫酸バリウム等の無機顔料;顔料の形状により粘性が発現する偏平顔料等を挙げることができる。本発明の塗料組成物の色相は、淡彩色、濃彩色を問わない。
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環式炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミルなどのエステル類;n−ブチルエーテル、イソブチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−プロピレングリコール、イソプロピレングリコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのセロソルブ類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのカービトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアセトンアルコールなどのその他の溶剤類などを挙げることができる。
また、クリヤー塗料には、必要に応じて、透明性を阻害しない範囲において、ベースカラー顔料やメタリック顔料を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤などを適宜含有させることができる。
上記体質顔料としては特に限定されず、タルク、炭酸カルシウム、クレイ、カオリン、シリカ等を挙げることができる。上記体質顔料は、平均粒径が下限1μm、上限15μmの範囲内であることが好ましく、塗料主剤の固形分100質量部中、5質量部以下で添加することができる。
また、クリヤー塗料は、その固形分濃度が、例えば、30〜70質量%、好ましくは、40〜60質量%となるように調製される。
上記クリヤー塗料は、上記アクリル樹脂、及び、その他の成分を、サンドグラインダーミル、ディスパー等を用いて混練、分散する等の当業者に周知の方法によって得ることができる。
上記溶剤型アクリル−イソシアネート系2液型塗料は、ポリイソシアネートを硬化成分として含有するものである。上記ポリイソシアネートは、イソシアネート基を二以上有する化合物である。上記ポリイソシアネートとしては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;これらの三量体、アダクト体やビュウレット体、これらの重合体で2個以上のイソシアネート基を有するもの、更に各種アルコールで一部のイソシアネート基を反応させて変性したもの等を挙げることができる。
上記脂肪族又は脂環族系のポリイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、イソシアヌレート基、ウレトジオン基、ウレタン基、アロファネート基、ビウレット基及び/又はオキサジアジン基を含むヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
上記2液の形態としては、例えば、アクリル樹脂及びその他の添加剤を加えた塗料主剤に、上記ポリイソシアネートからなる硬化剤を添加し、攪拌分散させることにより塗料組成物とするもの等を挙げることができる。上記混合の際、上記塗料主剤と上記ポリイソシアネートは、(ポリイソシアネートのNCO当量:塗料主剤中のアクリル樹脂のOH当量)=0.8:1〜1.2:1程度の比率で混合することが好ましい。上記比率が大きすぎると、経済的でない。上記比率が小さすぎると、架橋度が不足し、耐傷付き性、耐色落ち性などの他所望の塗膜性能が得られないことがある。上記硬化剤としては、酢酸ブチル等の溶剤と上記ポリイソシアネートとの混合物を使用することもできる。
本発明は、水性ベース塗料を塗装する工程(1)、上記工程(1)によって得られた未硬化のベース塗膜上にクリヤー塗装を行う工程(2)及びこれらの2層の塗膜を同時に硬化させる工程(3)を有する複層塗膜形成方法である。
上記工程(1)は、水性ベース塗料を塗装する工程である。上記工程(1)において使用する水性ベース塗料は、特に限定されず、通常使用される任意の水性ベース塗料を使用することができる。例えば、塗膜形成性樹脂、硬化剤、有機系,無機系又は光輝材等の着色顔料や体質顔料を含有する塗料組成物等を挙げることができる。なかでも、塗膜形成樹脂としてアクリルポリオールを、硬化剤としてメラミン化合物を含有するものであることが好ましい。
水性ベース塗料を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、エアースプレー塗布、エアーレススプレー塗布等を挙げることができる。より具体的には、マイクロマイクロベル、マイクロベルと呼ばれる回転霧化式の静電塗装機による塗装方法を挙げることができる。上記工程(1)における上記ベースコート塗料の塗装膜厚は、乾燥膜厚で下限10μm、上限30μmの範囲内であることが好ましい。
上記工程(2)は、上記工程(1)によって得られた未硬化のベース塗膜上にクリヤー塗装を行う工程である。
上記工程(2)において、クリヤー塗料を塗布する方法としては特に限定されず、上記工程(1)における水性ベース塗料の塗装において使用できる方法を同様に適用することができる。上記工程(2)における上記クリヤー塗料の塗装膜厚は、乾燥膜厚は、20〜50μmであることが好ましく、25〜40μmの範囲内にあるのがより好ましい。
上記工程(3)は、これらの2層の塗膜を加熱することによって同時に硬化させる工程である。上記工程(3)の硬化条件は、110〜130℃であることが好ましい。より好ましくは120〜130℃である。焼付け時間は10〜60分間であることが好ましく、より好ましくは15〜50分間、更に好ましくは20〜40分間である。
上記工程(3)は、工程(2)の直後に行うものであっても、工程(2)を行った後でプレヒート工程を行い、その後に行うものであってもよい。
本発明の複層塗膜形成方法は、上記工程(1)の前に、被塗装物にプライマーを塗装する工程を有するものであってもよい。上記プライマーとしては特に限定されない。
本発明の複層塗膜形成方法において使用する被塗装物としては、種々の基材、例えば金属成型品、プラスチック成型品、発泡体等に用いることができるが、更に詳しくは、鉄、アルミニウム及びこれらの合金、アルマイト、真鍮、青銅、亜鉛メッキ鋼板、スズメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、クロムメッキ鋼板等の金属成型品やプラスチック成型品等を挙げることができる。本発明の複層塗膜形成方法は、光沢に優れた外観を得ることができるものであることから、自動車用バンパー等のプラスチック成型品の塗装に特に優れた効果を発揮する。上記被塗装物は、必要に応じて、洗浄、脱脂したものであってもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
製造例1 アクリル樹脂AC−1の製造
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入口及び冷却管を備えた反応装置に、溶剤として酢酸ブチル130部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌下125℃まで昇温した。次にモノマーとして、2−ヒドロキシエチルメタクリレート63部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート126部、メタクリル酸3.5部、スチレン45部、2−エチルヘキシルメタクリレート212.7部の混合物、及び、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ―2−エチルヘキサナート67.5部を酢酸ブチル90部に溶解した溶液を反応装置中に3時間かけて滴下した。
滴下終了後、1時間熟成させ、さらに重合開始剤t−ブチルパーオキシ―2−エチルヘキサナート0.9部を酢酸ブチル10部に溶解して1時間かけて反応装置中に滴下した。その後125℃を保持したまま2時間熟成させて冷却し、反応を終了した。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は、4000でOHVは170、AVは5であり、不揮発分は70%であった。
製造例2〜10 アクリル樹脂AC−2〜10の製造
各配合成分の配合量を表1の記載のように変更したこと以外は、上記製造例1のアクリル樹脂AC−1の製造と同様の方法により、AC−2〜10を製造した。
製造例11 クリヤー塗料CL−1の製造例
容器に酢酸ブチル30部、及び、製造例1で製造したアクリル樹脂AC−1 76.05部を仕込み、よく攪拌しながらBYK−310(ビッグケミー・ジャパン株式会社)0.54部、チヌビン292(チバ・ジャパン社製)0.25部、チヌビン384−2(チバ・ジャパン社製)0.55部を順次仕込み均一になるまで攪拌して、クリヤー塗料の主剤とした。
硬化剤は、容器に酢酸ブチル20部とスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)30.4部を混合して作製した。
上記で作製した主剤107.39部と硬化剤50.4部を混合し、クリヤー塗料CL−1を得た。この時、クリヤー塗料の不揮発分は53.4%であった。
製造例12〜20 クリヤー塗料CL−2〜10の製造
各配合成分の配合量を表2記載のように変更したこと以外は、上記製造例11のクリヤー塗料CL−1の製造と同様の方法により、CL−2〜10を製造した。
実施例1〜7、比較例1〜9
イソプロピルアルコールでワイピングしたポリプロピレン素材(70mm×150mm×3mm)の表面に25℃/70%RHの環境下で、「ワイダ―71」(アネスト岩田社製)により導電プライマー「WB−1200CD−4」(日本ビー・ケミカル社製)をスプレー塗装(乾燥膜厚10μm)し、80℃で5分間乾燥した。その後、水性ベース「AR−2000」(日本ペイント社製)、及び、「WBC−713T」(関西ペイント社製)のそれぞれ塗色#1F7(シルバー)と#8S6(ブルー)について同じ環境下で、新カートリッジベル(ABB社製)を使用して静電塗装(条件、ガン距離:200mm、ガン速度:900mm/s、印加電圧:−60kV,回転数:35000rpm、シェービングエアー圧:0.15MPa、乾燥膜厚15μm)を行い、80℃で5分間乾燥した。その上に、表3及び4記載のクリヤー塗料(CL−1〜10)をロボベル951(ABB社製)を使用して、静電塗装(条件、ガン距離:200mm、ガン速度:700mm/s、印加電圧:−60kV,回転数:25000rpm、シェービングエアー圧:0.07MPa)条件下で霧化塗装(乾燥膜厚25μm)を行った。その後、10分間セッティングした後、120℃で35分間乾燥し、複層塗膜を形成して最終塗板を得た。
得られた塗板について、以下の試験を行った。結果を表3及び4に示す。
・対数減衰率
剛体振り子型物性試験機RPT−3000W(エーアンドディー社製)を用い、振り子はFRB−100、ナイフエッジはRBE−160を使用して評価した。ブリキ板上にクリヤー塗料を乾燥膜厚25μmとなるように塗装し、25℃で10分間キープした後、6.3℃/min.で120℃まで昇温し、その後20分間120℃でキープして対数減衰率を測定した。その際に現れる対数減衰率のピークトップの値をとった。
・外観
Wave−scan T(BYK社製)を用いて測定し、W3(光沢感)が20以下となる場合を○、20より大きくなる場合を×とした。
・耐キシレンラビング性
最終塗板に対しキシレンを含んだガーゼで500gの荷重を加え、8往復ラビング試験を行い、粘着性、しわ、フクレ、ハガレ等の異常の有無を評価した。異常が認められない場合は○、少しでも異常が認められた場合は×とした。
表3及び4より、本発明により得られた複層塗膜は、光沢、外観等の塗膜品質に優れることが示された。
本発明の複層塗膜形成方法は、特にプラスチック成型品の塗装において好適に使用することができる。

Claims (2)

  1. 水性ベース塗料を塗装する工程(1)、前記工程(1)によって得られた未硬化のベース塗膜上にクリヤー塗装を行う工程(2)及びこれらの2層の塗膜を同時に硬化させる工程(3)を有する複層塗膜形成方法であって、
    前記工程(2)において使用されるクリヤー塗料は、溶剤型アクリル−イソシアネート系2液型塗料であり、
    前記クリヤー塗料は、塗装後の硬化時の対数減衰率のピークが0.3〜0.5である
    ことを特徴とする複層塗膜形成方法。
  2. クリヤー塗料は、使用するアクリル樹脂において、1級及び2級の水酸基の比が水酸基価基準で1級水酸基/2級水酸基=20/80〜50/50である請求項1記載の複層塗膜形成方法。

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