WO2011102431A1 - 電極基体およびそれを用いた水溶液電気分解用陰極、およびそれらの製造方法 - Google Patents

電極基体およびそれを用いた水溶液電気分解用陰極、およびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

 本発明の水溶液電気分解用陰極は、ニッケル表面を有する導電性基材、前記導電性基材表面に形成された金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層、前記混在層表面に形成された電極触媒層を有し、前記電極触媒層は、白金族の金属または白金族の金属化合物を含有する層で構成されている。本発明の水溶液電気分解用陰極は、アルカリ金属ハロゲン化物水溶液の電気分解等に好適である。

Description

電極基体およびそれを用いた水溶液電気分解用陰極、およびそれらの製造方法
 本発明は、水溶液の電気分解用電極に用いる電極基体に関するものである。さらに、本発明は、前記電極基体上に電極触媒層を形成し、アルカリ金属ハロゲン化物水溶液の電気分解用の陰極として好適な水溶液電気分解用陰極およびその製造方法に関するものである。
 大量の電力を消費する電気分解工業においては、電力原単位の低下、地球温暖化対策として二酸化炭素排出量削減の観点から、製造に要するエネルギーを削減することがより大きな課題とされている。電気分解に要するエネルギーを削減するべく、特に電極、イオン交換膜、電解槽等の改良が進められている。
 水溶液の電気分解に使用する水溶液電気分解用陰極としては、ニッケル等の基体上に、白金族の金属あるいは金属酸化物からなる電極触媒層を形成したり、ランタン等の希土類金属あるいはその化合物等と白金族の金属等を含む電極触媒層を形成することによって、水素過電圧が低く、長寿命である水溶液電気分解用陰極が提案されている。
 これらの水溶液電気分解用陰極は、水素過電圧が低く、従来の粒子状物質を表面に析出した電極触媒層表面に比べて平滑であって、イオン交換膜と密着して電気分解を行った場合にもイオン交換膜との繰り返し接触による損傷の発生は防止できるという特徴を有している。
 しかしながら、水溶液電気分解用陰極の基体として用いられている金属ニッケルが、ニッケルよりも貴な電位を示す電極触媒層と接しているために、電気分解の停止期間中や大気曝露中には、ガルバニック腐食によるニッケル基体の腐食が起こりやすくなる。
 また、陰極、陽極、イオン交換膜を装着して電解槽を組み立てた後に、電解槽内に電解液を充填しない状態で保管していると、陰極とイオン交換膜との接触によってニッケル基体の腐食によって生成したニッケルイオン等がイオン交換膜に浸入し、イオン交換膜中にニッケル化合物として析出する等の現象が生じる結果、イオン交換膜の特性が劣化して電気分解電圧の上昇や電流効率が低下することがあった。
 このような問題点を解決するために、ニッケル基材表面を350~550℃の温度で5~60分間加熱焼成し、該導電性基体表面にニッケル酸化物を主成分とする中間層を形成する陰極の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、中間層と基体が本来一体である部材から構成されるため密着力が大きく、中間層の剥離や欠落は生じなくなると、記載されている。
 また、本出願人は、白金族金属化合物、ランタノイドを含んだ電極触媒層を有する電気分解特性に優れた水溶液電気分解用陰極を提案している(例えば、特許文献2参照)。
特許第4142191号公報 特許第4274489号公報
 特許文献1に記載された陰極は、電極基体からのニッケル成分の溶出の防止は図られているものとみられる。しかしながら、電気分解の開始後電解槽の運転停止後には、槽電圧が上昇することも記載されている。
 また、特許文献2に記載の電極は、従来の同種の電極に比べて電気分解特性が良好なものであるが、電解槽の運転の緊急停止時等には、より充分な逆電流への耐性を求められている。
 本発明は、ニッケルを表面に有する導電性基材を電極基体とした水溶液電気分解用陰極として、電極基体からのニッケルの溶出を防止し、更には、陽極、イオン交換膜、陰極の三者を一体にして組み立てた電解槽を大気中で保管した場合、あるいは電解槽の運転停止時に陰極基体からのニッケルの溶出を防止し、電解槽の緊急停止時に生じる逆電流による影響を受けにくい陰極を提供することを目的としたものである。また、本発明は、電解槽の初期運転開始時の電解槽電圧および運転停止後に再度通電した後にも電解槽電圧が低い水溶液電気分解用陰極を提供することを目的とするものである。
 即ち、本発明は下記[1]~[15]に記載の構成を有する。
 [1]ニッケル表面を有する導電性基材表面に、金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層が形成されていることを特徴とする電極基体。
 [2]前記混在層が、ニッケル原子、炭素原子、酸素原子、水素原子からなるニッケル化合物を前記導電性基材表面に塗布して熱分解することによって形成されたものである前項1に記載の電極基体。
 [3]前記ニッケル化合物が、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケルのいずれかである前項2に記載の電極基体。
 [4]ニッケル表面を有する導電性基材と、
 前記導電性基材表面に形成され、金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層と、
 前記混在層表面に形成され、白金族の金属または白金族の金属化合物を含有する電極触媒層と
を備えることを特徴とする水溶液電気分解用陰極。
 [5] 前記電極触媒層は、さらにランタノイド化合物を有する前項4に記載の水溶液電気分解用陰極。
 [6]前記電極触媒層が、硝酸ルテニウムと酢酸ランタンとを含有する電極触媒層形成液を、酸素含有雰囲気において400℃から600℃で熱分解することによって形成されたものである前項5に記載の水溶液電気分解用陰極。
 [7]前記電極触媒層形成液が、さらに白金化合物を含有する前項6に記載の水溶液電気分解用陰極。
 [8]前記電極触媒層が、酸化セリウムと白金を含有することを特徴とする前項5に記載の水溶液電気分解用陰極。
 [9]ニッケル表面を有する導電性基材表面に、ニッケル原子、炭素原子、酸素原子、水素原子からなるニッケル化合物を塗布し、酸素含有雰囲気において250℃から600℃で熱分解することにより、金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層を形成することを特徴とする電極基体の製造方法。
 [10]前記ニッケル化合物が、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケルのいずれかである前項9に記載の電極基体の製造方法。
 [11]ニッケル表面を有する導電性基材表面に、ニッケル原子、炭素原子、酸素原子、水素原子からなるニッケル化合物を塗布し、酸素含有雰囲気において250℃から600℃で熱分解することにより、金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層を形成して電極基体を作製し、
 前記電極基体の混在層表面に、白金族の金属化合物を含有する電極触媒層形成液を塗布し、酸素含有雰囲気において熱分解することにより電極触媒層を形成することを特徴とする水溶液電気分解用陰極の製造方法。
 [12]前記ニッケル化合物が、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケルのいずれかである前項11に記載の水溶液電気分解用陰極の製造方法。
 [13]前記電極触媒層形成液が硝酸ルテニウムと酢酸ランタンとを含有し、この電極触媒層形成液を電極基体の混在層表面に塗布した後、酸素含有雰囲気において400℃から600℃で熱分解することによって電極触媒層を形成する前項11または12に記載の水溶液電気分解用陰極の製造方法。
 [14]前記電極触媒形成液が、さらに白金化合物を含有する前項13に記載の水溶液電気分解用陰極の製造方法。
 [15]前記電極触媒層形成液が、さらに硝酸セリウムを含有する前項11または12に記載の水溶液電気分解用陰極の製造方法。
 本発明の電極基体は、ニッケルを表面に有する導電性基材上に、例えばニッケルのカルボン酸化物のように、ニッケル原子、炭素原子、酸素原子、水素原子から構成されたニッケル化合物の低温熱分解によって、金属ニッケル、ニッケル酸化物、および炭素を含む混在層を形成したものである。前記混在層の存在によって電解槽の運転を緊急停止した場合のように、陰極に逆電流が流れる場合にもニッケル基材からニッケルが溶出して、イオン交換膜へ沈着することがない。また、前記混在層の存在によって導電性基材の耐食性が高くなるとともに、導電性基材と電極触媒層との密着性も高くなる。更に、電気分解を開始した初期の電位安定性が高く、電気分解の開始直後から安定した運転が可能であって水素過電圧が小さな水溶液電気分解用陰極を提供することができる。特に前記混在層がギ酸ニッケルまたは酢酸ニッケルに代表されるカルボン酸ニッケルの低温熱分解によって形成されたものである場合は上記効果が大きい。
図1は、本発明の陰極の陽分極試験結果を説明する図である。 図2は、本発明の一実施例の陰極電位の推移を説明する図である。 図3は、本発明の他の実施例の陰極電位の推移を説明する図である。 図4は、本発明の他の実施例の陰極電位の推移を説明する図である。 図5は、本発明の他の実施例の陰極電位の推移を説明する図である。
 本発明の電極基体は、ニッケル表面を有する導電性基材表面に、金属ニッケル、ニッケル酸化物、および炭素原子を含む混在層を設けたものである。
 本発明の電極基体は、ニッケル表面を有する導電性基材上に、金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層を表面に有していることにより、電解槽の運転中に緊急に電解電流を遮断して運転を停止した場合に生じる逆電流による陽分極時にも破壊されることがなく、再度の通電後には停止前と同様に運転することができるという効果が得られる。
 本発明においてニッケル表面を有する導電性基材とは、ニッケル、あるいはステンレス、鉄、銅等の導電性材料の表面に、めっき、クラッド等によってニッケル層を形成したものを意味する。
 前記混在層は、その分析結果からニッケル金属とニッケル酸化物と炭素原子が混在する層であることが明かであるが、このような混在層を設けたことによって優れた特性が得られる理由は定かではないが、導電性基体のニッケル表面との密着性が良好であると共に、前記混在層が陽分極された場合にも耐食性を有すると共に、導電性基材の表面との腐食反応を抑制しているものと推察される。
 本発明の電極基体は、例えば以下の方法によって製造することができる。
 ニッケル表面を有する導電性基材の表面に、ニッケル原子、炭素原子、酸素原子、水素原子からなるニッケル化合物を導電性基材の表面に塗布し、大気中等の酸素含有雰囲気において焼成する。これにより、金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層を形成することができる。前記ニッケル化合物の導電性基材の表面への塗布は、例えば前記ニッケル化合物を含有する塗布液の塗布によって行う。また、前記ニッケル化合物として、ニッケルの有機酸塩等を用いることができ、特にギ酸ニッケル、酢酸ニッケルに代表されるカルボン酸ニッケルを用いることが好ましい。
 混在層焼成温度としては250℃~600℃が好ましく、250℃~500℃とすることがより好ましい。
 焼成時間は5分~60分が好ましく、5分~30分とすることがより好ましい。
 ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル等のカルボン酸ニッケル等は、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル等の無機塩に比べて、低温度で熱分解反応が進行すると共に、焼成時に金属の腐食を引き起こす可能性がある窒素酸化物、硫黄酸化物等の酸性気体を生成することがないので基体のニッケル表面に影響を及ぼすことがないものとみられる。また、焼成炉から排出される気体も格別の除害設備を設けることが不要であって、作業環境も良好であるという特徴を有している。
 また、カルボン酸ニッケル化合物のうち、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケルは、水に対する溶解度が大きいので水溶液として塗布することができる。
 前記の金属ニッケルとニッケル酸化物と炭素原子とが混在する混在層は膜厚が厚過ぎると抵抗損失が大きくなり、膜厚が薄過ぎると基体保護が不十分になる。したがって、混在層の厚みは0.001μm~1μmとすることが好ましい。
 本発明の水溶液電気分解用陰極は、前記電極基体の混在層表面に電極触媒層を形成したものである。前記電極触媒層は、白金族の金属または白金族の金属化合物を含有する層で構成され、好ましくは、白金族の金属または白金族の金属化合物、およびランタノイド化合物を含有する層で構成されている。
 前記電極触媒層を構成する成分、即ち、白金族金属、白金族金属化合物からなる白金族成分、およびランタノイド化合物からなるランタノイド成分は、低水素過電圧と、食塩水のイオン交換膜電解法において使用する陰極として大きな耐性を有している。
 本発明の水溶液電気分解用陰極は、電極基体の混在層によって、ニッケル基材からのニッケルの溶出を防止するとともに、電解槽への通電開始時の電位安定性を向上することが可能であって、電解槽の運転を緊急に停止した場合の逆電流による電極の劣化を効果的に防止することができる。また、本発明は、電解槽の通電前の保管時の電解槽の劣化を効果的に防止することができる。
 また、前記水溶液電気分解用陰極は、白金族の金属または白金族の金属化合物を含有し、さらにはランタノイド化合物を含有する電極触媒層を形成した水溶液電気分解用陰極において、その特性をより一層発揮するものである。
 本発明の水溶液電気分解用陰極は、例えば以下の方法によって製造することができる。
 まず、上述した方法によって電極基体を作製する。次いで、この電極基体の混在層の表面に電極触媒層を形成する。
 前記電極触媒層は、白金族金属または白金族金属化合物、あるいはさらにランタノイド化合物を溶解、あるいは分散した電極触媒形成液を塗布し、酸素含有雰囲気において熱分解することによって形成することができる。
 前記白金族成分には、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム等が挙げられる。白金を使用する場合には電極触媒層形成液中にジニトロジアンミン白金塩として溶解させることが好ましく、ルテニウムを使用する場合には電極触媒層形成液中に硝酸ルテニウムとして溶解させることが好ましい。このように塩素を含有しない化合物を用いることによって、電極触媒層の形成時に、混在層および導電性基材への悪影響を防止することが可能となる。
 前記ランタノイド系成分としては、原子番号57から71のランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムを挙げることができるが、なかでも、ランタン、セリウムを使用することが好ましい。また、ランタノイド系成分がランタンである場合は、酢酸ランタン等のカルボン酸塩が好ましく、セリウムの場合には硝酸セリウムが好ましい。
 また、前記電極触媒層が白金成分とランタノイド成分の両方を含有する場合、電極触媒層形成液中の白金族原子とランタノイド原子の原子比は30/70~90/10であることが好ましい。
 前記電極触媒層は、前記電極基体の混在層表面に電極触媒層形成液を塗布して乾燥及び焼成(熱分解)を行うことによって形成する。塗布および乾燥、および焼成の操作は複数回行うことによって厚みを調整してもよい。塗布した電極触媒層形成液の乾燥は60~80℃で10~20分間行い、焼成は酸素含有雰囲気において400~600℃の温度で10~20分間行えば良い。
 形成する電極触媒層の厚さはいずれも3~6μmとすることが好ましい。
 このように形成された電極触媒層は、水溶液電気分解用の陰極としての水素発生反応における触媒活性に優れると共に、低い電流密度のみならず高い電流密度で電解する場合であっても長期間にわたって低水素過電圧を維持することができる。また、陰極面は電流均一性にも優れ、またイオン交換膜と陰極とを接触して電気分解を行った場合にもイオン交換膜が重金属によって汚染されることを防止できる。
 また、この電極触媒層を有する水溶液電気分解用陰極では、大気暴露された場合であっても電極触媒層が酸化等によって劣化を防止することができる。
 また、前記電極基体上に電極触媒層形成液を塗布した後に、酸素含有雰囲気において熱分解して形成された電極触媒層は、電極触媒層形成用の金属化合物を形成する金属以外の成分として、塩素化合物を含有していないので、導電性基体、混在層、及び電極触媒層に対して悪影響を及ぼさないものと考えられる。
 従来、電極触媒として作用する酸化ルテニウム等を酸素含有雰囲気において加熱することによって形成する際には、一般に塩化ルテニウムを用いていたので形成された電極触媒層は塩素化合物を含むものであったが、本発明のように塩素化合物が生成することがない硝酸ルテニウム等の塩類を用いることが好ましい。
 本発明において、ルテニウム成分とともに使用するランタノイドのカルボン酸塩を使用する場合には、例えば、酢酸ランタン、ギ酸ランタン及びシュウ酸ランタン等の群から選ばれる1種または2種以上のカルボン酸ランタンを用いるのが好ましく、溶解度が大きな酢酸ランタン等が好ましい。
 特に、ランタンのカルボン酸塩からは、電極触媒層を形成する熱分解工程における400ないし600℃の酸素含有雰囲気においては、オキシ炭酸塩、あるいは炭酸塩が生成するものと考えられる。
 その結果、形成された電極触媒層中に均一に炭素原子が存在していることが確認されている。更に、ランタンのカルボン酸塩の熱分解によって電極触媒層中に炭素原子を含む化合物が存在していることが水溶液電気分解用陰極の電気化学的特性にも寄与しているものと考えられる。
 また、本発明の水溶液電気分解用陰極は、電解槽の運転を停止して電解槽から取り出して大気中に放置した後に、再度、電解槽に装着して運転した場合でも、電極の特性の劣化が見らなかった。このことは、硝酸ルテニウムとランタンのカルボン酸塩から形成された電極触媒層が大気中で特性が変化せず、また、電極の導電性基材が緻密な混在層層および電極触媒層で覆われているものと考えられる。
 更に、電極の導電性基材が緻密な混在層および電極触媒層で覆われているために、導電性基材の金属成分の溶出等による劣化がなく、その結果、金属成分の溶出によるイオン交換膜への悪影響を防止することがなく長期間の安定な運転が可能であるという効果を得ることができる。
 また、前記電極触媒層を形成するための電極触媒層形成液には、ルテニウム化合物、ランタンのカルボン酸塩に加えて、塩素原子を含まない白金化合物を配合したものを用いることによって電極触媒層中に白金を含有せしめても良い。
 前記電極触媒層にルテニウム、ランタンに加えて白金を含有させることによって効果が得られる理由は定かではないが、通電後の電極触媒層の性能の劣化を防止し、電極触媒層の減耗を抑制する効果が得られた。
 また、塩素原子を含まない白金化合物を配合する場合には、電極触媒層形成液中のPt/Laの原子比を0.005以上とすることが好ましく、0.005よりも小さい場合には、充分な効果を得ることはできない。
 塩素原子を含有しない白金化合物としては、ジニトロジアンミン白金、ヘキサヒドロキソ白金酸の少なくともいずれか一種を用いることができる。また、白金の存在によって電極触媒層の減耗をより一層効果的に抑制することができるので、電極触媒層の厚さが5μm以下の厚みであっても長期間にわたって水素発生反応に対して十分な触媒活性を維持できる。
 また、前記電極触媒層の形成は、酸素含有雰囲気において400℃から600℃の温度で熱処理することが好ましく、460℃から540℃の温度で熱処理することがより好ましい。400℃未満では水素発生反応に対する電極触媒活性に優れた被覆層が形成され難くなり、一方、600℃を超えると導電性基材が酸化され易くなる。酸素を含む雰囲気としては、空気、酸素100体積%の雰囲気が挙げられる。
 また、前記電極触媒層が白金を含有する場合には、白金がより貴な酸化還元電位を有することから、ガルバニック腐食によるニッケル基体の腐食が起こりやすくなるものと考えられるが、本発明の電極基体は、導電性基材表面に金属ニッケルと、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層を有するので、電極基体の腐食反応が抑制される結果、白金を含有する電極触媒層を有する場合にも、電極基体のニッケルの腐食を抑制することが可能と考えられる。
 また、水溶液電気分解用陰極の電極触媒層に貴金属を用いた場合、通電までの保管時や通電の停止中に生じる基体ニッケルの溶出がイオン交換膜へ与える損傷が懸念される。この現象は、水溶液電気分解用陰極が電解分解において使用する前の状態よりも電気分解を行った後に、陰極を保管、あるいは通電を停止したときの方がより顕著に現れる。
 これは、未電解状態では基体ニッケル表面が安定な酸化被膜層によって被覆されているが、電気分解後には基体のニッケル表面が腐食反応を起こし易くなっているためと考えられている。
 また、後述する実施例、比較例において、通電開始後の水溶液電気分解用陰極とイオン交換膜とを接触させた場合のイオン交換膜へのニッケル汚染を比較しているが、カルボン酸ニッケルによって形成した混在層は未電解試料からニッケルの溶出は認められなかったが、硫酸ニッケルを混在層の形成用の塗布材料に使用した場合には、未電解試料にも関わらずニッケルの溶出が認められた。これは、混在層の成分分析から、硫酸ニッケルでは、熱分解されず塩の状態で残存しており、安定な混在層が形成されていないことがわかる。
 また、高温での焼成の方がニッケル酸化物は形成され易いが、低温で混在層を形成する方が電気分解の開始初期の電位安定性に向上がみられる。
 また、後述の実施例、比較例で示す様に、金属ニッケルと、ニッケル酸化物おおび炭素原子を含む混在層は陽分極した場合にもニッケル基体を大気中で焼成して作成したニッケル酸化物層に比べて陽分極した場合に耐食性が大きいという特徴を有しており、陽分極時にも混在層の破壊が進行しないという特徴を有している。
 したがって、電解槽の運転中に電気分解を緊急停止した場合のように、陰極が陽分極して逆電流が流れた場合にも、混在層の破壊が進行せず、再通電後には運転停止前と同様の性能を発揮することができる。
 これらのことから、本発明は、白金族金属あるいはその化合物を含有する電極触媒層を有する水溶液電気分解用陰極において、電極基体の表面に形成する混在層としては、低温での生成が可能であるカルボン酸ニッケルが好ましいことを示している。
 また、電解槽への通電開始後の電位安定性を向上させるために、混在層を低温焼成条件下においても形成する場合にも、カルボン酸ニッケルの熱分解によって形成した混在層であることが好ましいことが示している。
 以下に、実施例、比較例を示し本発明を説明する。
実施例1
 電極基体の陽分極試験
 厚さ0.9mm、縦20mm、横20mmのニッケル製エキスパンドデッドメタルを用い、その表面に粒径50μmアルミナ粒子でサンドブラストして表面を粗面化して試料の導電性基材とした。
 導電性基材を温度60℃の濃度30質量%硫酸中に10分間浸漬し、エッチングすることで表面酸化皮膜と残存アルミナ粒子を除去した。
 次にギ酸ニッケル(II)二水和物(和光純薬工業製)の濃度0.1mol/Lの水溶液を調製し、これを混在層塗布液とした。表面処理を行ったニッケル製エキスパンデッドメタルに混在層塗布液を塗布し、60℃で3分間乾燥した後、マッフル炉(デンケン製KDF-P80G)で300℃において10分間焼成した陽分極試験試料1(電極基体)を陰極とし、20mm×20mmのニッケルエキスパンデットメタルを陽極として、32質量%、90℃の水酸化ナトリウム水溶液を電解液として電流密度10kA/mの条件で1時間の第一回目の予備電解を行った。
 予備電解停止後、直ちに通電方向を逆転させて、陽分極試験試料1を電流密度10A/mの条件で陽分極を行い、通電電気量に対する陽分極試験試料1の水銀/酸化水銀参照電極に対する電極電位の変化を、電極電位がニッケルの酸化還元電位から急激に貴な電位へ上昇するまで測定して通電を遮断する第一回目の陽分極試験を行った。その結果を図1に試験1として示す。
 続いて、通電方向を逆転させて、第1回目の電気分解と同様に第2回目の予備電解を行った後に、第二回目の陽分極試験を行った。その結果を図1に陽分極試験2として示す。
 更に、同様にして第三回目の予備電解、陽分極を行い、その結果を図1に陽分極試験3として示す。
比較例1
 酸化物層の比較陽分極試験
 実施例1の陽分極試験試料1に代えて、導電性基材を500℃で10分間焼成してニッケル酸化被膜を形成した比較陽分極試験試料1を作製して、実施例10と同様にして第1回目の比較陽分極試験、第2回目の比較陽分極試験、および第3回目の比較陽分極試験を行った。
 その結果を、比較陽分極試験1、比較陽分極試験2、および比較陽分極試験3として、図1に示す。
 本発明の電極基体は、陽分極によって陰極を酸化する電流に対する耐性が大気中での基材ニッケルの酸化によって形成した酸化被膜に比べて大きいことを示している。
実施例2
 ギ酸ニッケルの熱分解生成物の確認
 ニッケル板上に実施例1で調整したギ酸ニッケル水溶液を塗布し、大気中で300℃で焼成する操作を10回繰り返して、熱分解性生物確認試料1を作製した。
 熱分解生成物確認試料1をエネルギー分散型X線分析装置(EDAX社 Genesis-XM2型)を用いて、ギ酸ニッケルを塗布焼成した面の10箇所について測定した。
 10箇所の平均値のニッケル、酸素、炭素の存在比は、原子比で45.5:39.8:14.7であった。
 次いで焼成温度を500℃に変えて同様にして熱分解生成物確認試料2を作製して上記と同様に測定した。10箇所の平均値のニッケル、酸素、炭素の存在比は、原子比で51.4:36.7:11.9であった。
 いずれの試料からも炭素の存在を確認することができた。
比較例2
 ニッケル板にギ酸ニッケル水溶液を塗布しない点を除き実施例2と同様に大気中で300℃で焼成する操作を10回繰り返して、熱分解生成物確認比較試料1を作製して、実施例2と同様にして表面の生成物を測定した。ニッケル、酸素、炭素の存在比は、原子比で91.1:8.9:0であった。
 次いで、焼成温度を500℃に変えて同様にして熱分解生成物確認比較試料2を作製して上記と同様に測定した。10箇所の平均値のニッケル、酸素、炭素の存在比は、原子比で80.9:19.1:0であった。
 いずれの熱分解生成物確認比較試料からも炭素は存在しないことがわかった。
実施例3,4および比較例3
 酢酸ニッケル、ギ酸ニッケル、および硝酸ニッケルを、それぞれ300℃、および500℃の大気中において10分間熱した試料を、X線回折装置(パナリティカル製 X’Pert PRO MPD、ターゲット:銅、加速電圧:45kV)によって測定して、測定結果をニッケル酸化物(NiO)とニッケル金属(Ni)の原子比で表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
実施例5
 実施例1で用いたギ酸ニッケル粉末を300℃、および500℃の大気中において加熱して熱分解した試料を、高エネルギー加速器研究機構 放射光科学研究施設(Photon Factory)において、ビームラインBL-12CでX線吸収微細構造(XAFS)を測定した。
 測定は、分光器:Si(111)2結晶分光器、ミラー:集光ミラー、吸収端:透過法
使用検出器:Ionization chamberの条件で行いXANESスペクトルによって存在量比を求めた。
 測定結果は、測定ピークに対して、成分と考えられる金属ニッケル、酸化ニッケルの標準ピークから合成した合成ピークと、測定ピークの差が最小二乗法で最小になるように計算処理するXANESスペクトルの一般的な解析方法によって求め、その割合を各成分の存在比率とした。
 300℃で熱分解したギ酸ニッケルは、金属ニッケル31.6%、酸化ニッケル68.4%であった。
 また、500℃で熱分解したギ酸ニッケルは、金属ニッケル18.6%、酸化ニッケル81.4%であった。
実施例6
 厚さ0.9mm、縦20mm、横20mmのニッケル製エキスパンドデッドメタルを用い、その表面に粒径50μmアルミナ粒子でサンドブラストして表面を粗面化して試料の導電性基材とした。
 導電性基材を温度60℃の濃度30質量%硫酸中に10分間浸漬し、エッチングすることで表面酸化皮膜と残存アルミナ粒子を除去した。
 次に酢酸ニッケル(II)四水和物(和光純薬工業製)の濃度0.1mol/Lの水溶液を調製し、混在層塗布液とした。表面処理を行ったニッケル製エキスパンデッドメタルに混在層塗布液を塗布し、60℃で3分間乾燥した後、マッフル炉(デンケン製KDF-P80G)で300℃において10分間焼成した混在層形成試料1-1(電極基体)と、500℃で10分間焼成した混在層形成試料1-2(電極基体)を作製した。
 次いで、硝酸ルテニウム硝酸溶液(田中貴金属工業製)及び酢酸ランタンn水和物(和光純薬工業製)及びジニトロジアンミン白金硝酸溶液(田中貴金属工業製)を用いて、硝酸ルテニウム-酢酸ランタン-ジニトロジアンミン白金硝酸溶液を、原子比でRu:La:Pt=1:1:0.05になる電極触媒層形成液1を調製した。
 先に作製した混在層形成試料1-1および1-2に電極触媒層形成液1を塗布、乾燥して500℃で10分間焼成する操作を5回繰り返し、試験陰極1-1および1-2を作製した。
 作製した試験陰極1-1および1-2を、試験陰極1-1の基体に用いたものと同じニッケル製エキスパンドデッドメタルを陽極とし、温度90℃、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液中で、10kA/mの電流密度で1時間の電気分解を行った後、更に20kA/mの電流密度で1時間の電気分解を行った。
 電気分解後の試験陰極1-1および1-2の表面を走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM-6490)によって皮膜の剥離等を観察してその結果を表2に示す。
電気分解後のニッケル溶出試験
 電気分解後の試験陰極1-1および1-2を、pH11の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬処理した陽イオン交換膜(デュポン社製N-2030)と密着させた状態で、981Paの圧力を印加した状態でポリエチレン製の袋に密封して24時間放置した。
 次いで、取り出した陽イオン交換膜中のニッケルをICP発光分光分析装置(島津製ICPS-8100)にて検出してその結果を、4cmの面積当たりのニッケル沈着量として表2に示す。
実施例7
 混在層形成用材料を酢酸ニッケルに代えて、ギ酸ニッケルを用いた点を除き実施例6と同様にして、300℃で混在層を形成した試験陰極2-1と、500℃で混在層を形成した試験陰極2-2を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
実施例8
 実施例6と同様にして、300℃で混在層を形成した混在層形成試料3-1、および500℃で混在層を形成した混在層形成試料3-2を作製した。
 次いで、硝酸セリウムとジニトロジアンミン白金塩を原子比が Pt:Ce=1:1になるように、濃度8質量%の硝酸に溶解し、セリウムと白金の合計濃度が5質量%である電極触媒層形成液2を調製した。
 電極触媒層形成液2を塗布、乾燥して500℃で10分間焼成する操作を5回繰り返し、試験陰極3-1および3-2を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
実施例9
 実施例7と同様に作製した、300℃で混在層を形成した混在層形成試料4-1および500℃で混在層を形成した混在層形成試料4-2を作製した。
 次いで、実施例8と同様に電極触媒層形成液2を塗布、乾燥して500℃で10分間焼成する操作を5回繰り返し、試験陰極4-1および4-2を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例4
 混在層として酢酸ニッケルに代えて、硫酸ニッケルを用いた点を除き実施例6と同様にして、混在層を300℃で形成した比較陰極2-1と、混在層を500℃で形成した比較陰極2-2を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例5
 混在層として酢酸ニッケルに代えて、硝酸ニッケルを用いた点を除き実施例6と同様にして、混在層を300℃で形成した比較陰極2-1と,混在層を500℃で形成した比較陰極2-2を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例6
 混在層を形成しなかった点を除き実施例6と同様にして、比較陰極3を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例7
 酢酸ニッケル等のニッケル塩を塗布せずに、導電性基材を大気中で500℃で焼成して混在層を形成した点を除き実施例6と同様にして、比較陰極4を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例8
 混在層として酢酸ニッケルに代えて、硫酸ニッケルを用いた以外は実施例8と同様にして、混在層を300℃で形成した比較陰極5-1と、混在層を500℃で形成した比較陰極5-2を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例9
 混在層として酢酸ニッケルに代えて、硝酸ニッケルを用いた以外は実施例8と同様にして、混在層を300℃で形成した比較陰極6-1と、混在層を500℃で形成した比較陰極6-2を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例10
 混在層を形成しなかった点を除き実施例8と同様にして、比較陰極7を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
比較例11
 酢酸ニッケル等のニッケル塩を塗布せずに、導電性基材を大気中で500℃で焼成して混在層を形成した点を除き実施例8と同様にして、比較陰極8を作製し、実施例6と同様に評価試験を行った。その結果を表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
実施例10
 厚さ0.15mmのニッケル製エキスパンドデッドメタルを導電性基材に用いた点を除き、実施例6と同様の方法で、300℃で混在層を形成して、実施例6と同じ電極触媒層形成液1を塗布して、実施例6と同様に試験陰極5を作製した。
電極性能評価
 試験電解槽に、陰極として作製した試験陰極5を装着し、陽極としてチタン製エキスパンデッドメタルを基体とした塩素発生用電極(ペルメレック電極株式会社製 DSE JP-202)を装着し、2質量%-水酸化ナトリウム水溶液で処理した陽イオン交換膜(デュポン社製N-2030)で、陰極室と陽極室を区画すると共に、陰極、イオン交換膜、陽極を一体に接触したゼロギャップ式のイオン交換膜を組み立てた。組み立て後15時間は電解液を充填せずに、電解槽を保管した。
 次に、陽極液として濃度が200g/Lの食塩水と、陰極液として濃度が32質量%水酸化ナトリウム水溶液を循環して、運転温度90℃、電流密度6kA/mの条件で電気分解を行った。
 100日間の電気分解期間の内、51日目と52日目の2日間、電気分解を停止して、電解槽を解体して大気曝露下での保管を行ったが、その後の電気分解において電解槽電圧の上昇がみられず、電流効率は97%に保持した。
 100日間の電気分解の後に電解槽を解体してイオン交換膜を観察したが、ニッケル沈着はなかった。
短絡性能評価
 電極性能評価を行って解体した試験電解槽のイオン交換膜のみを交換して再び電気分解を行った。通電電流が電流密度6kA/mで安定したことを確認した後、電気分解電流を遮断して、陽極と陰極を短絡させた状態で、陽極液、陰極液の供給、排出を停止して電解槽を70℃で2時間保持した。
 その後、6kA/m電流密度で電気分解の運転を再開して10日後の性能劣化を確認する試験を2回繰り返した。
 第1回目の短絡試験後に、電解槽電圧は0.004V上昇し、水素過電圧は0.7mV上昇した。
 また、第2回目の短絡試験後に、電解槽電圧は0.004V上昇し、水素過電圧は2.4mV上昇した。すなわち、第2回目の短絡試験後には、第1回目の短絡試験前に比べて、電解槽電圧は0.008V、水素過電圧は3.1mV上昇したのみであった。
比較例12
 ニッケル塩を塗布して熱分解によって混在層を形成することに代えて、導電性基材を500℃で10分間焼成することで混在層とした点を除き実施例10と同様にして比較試験陰極9を作製し、実施例10と同様にして電気分解したしたところ、実施例10と比較して初期の電解槽電圧が0.010V高い電圧を示した。また、実施例10と同様にして、100日間の電気分解期間の内、51日目と52日目の2日間、電気分解を停止して、電解槽を解体して大気曝露下での保管を行ったが、その後の電気分解において電解槽電圧の上昇がみられず、電流効率は97%に保持した。しかし、電解槽電圧は0.010V上昇した。また、電解槽を解体後のイオン交換膜へのニッケル沈着は確認されなかった。
 また、実施例10と同様に短絡試験を2回行った。
 第1回目の短絡試験後に、電解槽電圧は0.007V上昇し、水素過電圧は7.0mV上昇した。
 また、第2回目の短絡試験後に、電解槽電圧は0.018V上昇し、水素過電圧は6.2mV上昇した。すなわち、第2回目の短絡試験後には、第1回目の短絡試験前に比べて、電解槽電圧は0.025V、水素過電圧は13.2mV上昇した。
 本願は、2010年2月17日付で出願された日本国特許出願の特願2010-032578号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
 本発明の水溶液電気分解用陰極は、水素過電圧が低く、通電停止時においても導電性基材表面のニッケルが溶出することがなく、イオン交換膜電解槽の陰極として使用した場合にも、イオン交換膜中へのニッケルの沈着量が少なく、長期間安定して運転が可能であるとともに、白金系の電極触媒層を形成した場合にも、電気分解の開始時から電気分解電圧が安定しており、電解槽の安定した運転が可能である。かかる効果を有する本発明の水溶液電気分解用陰極はアルカリ金属ハロゲン化物水溶液の電気分解等に好適である。

Claims (15)

  1.  ニッケル表面を有する導電性基材表面に、金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層が形成されていることを特徴とする電極基体。
  2.  前記混在層が、ニッケル原子、炭素原子、酸素原子、水素原子からなるニッケル化合物を前記導電性基材表面に塗布して熱分解することによって形成されたものである請求項1に記載の電極基体。
  3.  前記ニッケル化合物が、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケルのいずれかである請求項2に記載の電極基体。
  4.  ニッケル表面を有する導電性基材と、
     前記導電性基材表面に形成され、金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層と、
     前記混在層表面に形成され、白金族の金属または白金族の金属化合物を含有する電極触媒層と
    を備えることを特徴とする水溶液電気分解用陰極。
  5.  前記電極触媒層は、さらにランタノイド化合物を有する請求項4に記載の水溶液電気分解用陰極。
  6.  前記電極触媒層が、硝酸ルテニウムと酢酸ランタンとを含有する電極触媒層形成液を、酸素含有雰囲気において400℃から600℃で熱分解することによって形成されたものである請求項5に記載の水溶液電気分解用陰極。
  7.  前記電極触媒層形成液が、さらに白金化合物を含有する請求項6に記載の水溶液電気分解用陰極。
  8.  前記電極触媒層が、酸化セリウムと白金を含有することを特徴とする請求項5に記載の水溶液電気分解用陰極。
  9.  ニッケル表面を有する導電性基材表面に、ニッケル原子、炭素原子、酸素原子、水素原子からなるニッケル化合物を塗布し、酸素含有雰囲気において250℃から600℃で熱分解することにより、金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層を形成することを特徴とする電極基体の製造方法。
  10.  前記ニッケル化合物が、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケルのいずれかである請求項9に記載の電極基体の製造方法。
  11.  ニッケル表面を有する導電性基材表面に、ニッケル原子、炭素原子、酸素原子、水素原子からなるニッケル化合物を塗布し、酸素含有雰囲気において250℃から600℃で熱分解することにより、金属ニッケル、ニッケル酸化物および炭素原子を含む混在層を形成して電極基体を作製し、
     前記電極基体の混在層表面に、白金族の金属化合物を含有する電極触媒層形成液を塗布し、酸素含有雰囲気において熱分解することにより電極触媒層を形成することを特徴とする水溶液電気分解用陰極の製造方法。
  12.  前記ニッケル化合物が、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケルのいずれかである請求項11に記載の水溶液電気分解用陰極の製造方法。
  13.  前記電極触媒層形成液が硝酸ルテニウムと酢酸ランタンとを含有し、この電極触媒層形成液を電極基体の混在層表面に塗布した後、酸素含有雰囲気において400℃から600℃で熱分解することによって電極触媒層を形成する請求項11または12に記載の水溶液電気分解用陰極の製造方法。
  14.  前記電極触媒形成液が、さらに白金化合物を含有する請求項13に記載の水溶液電気分解用陰極の製造方法。
  15.  前記電極触媒層形成液が、さらに硝酸セリウムを含有する請求項11または12に記載の水溶液電気分解用陰極の製造方法。
     
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