明 細 書
ポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物、それを含有するポリ乳酸樹脂組 成物及び成形品
技術分野
[0001] 本発明は、ポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物、それを含有するポリ乳酸榭脂組 成物及び成形品に関し、更に詳しくは、ポリ乳酸を連結することによってポリ乳酸榭 脂との相溶性を改善したポリカルポジイミドィ匕合物、それを含有する耐加水分解性に 優れ、機械特性に優れるポリ乳酸榭脂組成物及び成形品に関する。
背景技術
[0002] 石油原料の代替として、近年、植物由来樹脂が注目され、各種の植物由来榭脂を 利用した榭脂組成物の実用化検討が盛んに行われている。植物由来榭脂を利用し た例として、特にポリ乳酸樹脂が注目され、各種用途で製品化されつつある。このポ リ乳酸樹脂の用途は、主に容器包装や農業用フィルム等のように使用期間が短ぐ 使用後に廃棄することを前提とした用途であるが、最近では、家電製品や OA機器の 筐体材及び自動車用部品などの、初期の特性を長期間保持することが必要な耐久 消費材まで、使用範囲が広がりつつある。
[0003] しかし、ポリ乳酸榭脂は、従来の汎用榭脂に比べ容易に加水分解される性質を有 しており、それ故に耐久性に劣るという問題がある。したがって、初期の物性を長時 間保持するためには、ポリ乳酸樹脂の耐加水分解性を向上させることが必要である。
[0004] そこで、ポリ乳酸榭脂の耐加水分解性を改善するため、カルポジイミドィ匕合物ゃェ ポキシ化合物のように、ポリ乳酸樹脂のカルボン酸末端を封鎖できる官能基を有する 化合物により端末が封鎖することが行なわれている。なお、カルポジイミドィ匕合物とは 、分子中にカルボジイミド基 [— N = C = N— ]を有する化合物である。このカルボジィ ミドィ匕合物は、公知のカルポジイミドィ匕合物の製造法 (例えば、 USP2941956 (特許 文献 1)、特公昭 47— 33279号公報 (特許文献 2)、ジャーナル'ォブ'オーガニック' ケミストリー(J.Org.Chem.) , 2069— 2075 (1963) (非特許文献 1)、ケミカル 'レ ビュー(Chemical Review) . 81 (4) , 619— 621 (1981) (非特許文献 2)等)で製造さ
れる。
[0005] また、ポリ乳酸樹脂に、耐熱性、安定性に優れたポリカルポジイミドィ匕合物を 1質量 %程度添加することも提案されて ヽる (特開平 11 - 80522号公報 (特許文献 3) )。こ のポリ乳酸榭脂組成物では、カルポジイミド基がポリ乳酸樹脂のカルボン酸末端と反 応し、封鎖することにより、ポリ乳酸樹脂の耐加水分解性を向上している。
[0006] しかしながら、耐久消費材用途にポリ乳酸榭脂を使用する場合、耐加水分解性を 十分向上させるためには、ポリカルポジイミドィ匕合物の添力卩量を 5〜10質量%まで増 やす必要がある。その結果、ポリ乳酸榭脂組成物では、の機械特性が悪化するという 問題が生じる。その原因は、ポリ乳酸榭脂組成物の均一性が失われ、組成物中に分 散している、強度に劣るポリカルポジイミド相が増加したことであると考えられる。その ため、ポリ乳酸樹脂の機械特性の向上には、別途補強材を添加する必要があった。 特許文献 1 : USP2941956
特許文献 2:特公昭 47 - 33279号公報
特許文献 3:特開平 11― 80522号公報
非特許文献 1 :ジャーナル'ォブ 'オーガニック 'ケミストリー(J.Org.Chem.) , 28, 2069 - 2075 (1963)
非特許文献 2 :ケミカル 'レビュー(Chemical Review) , 81 (4) , 619— 621 (1981) 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] したがって、本発明の目的は、ポリ乳酸樹脂に耐加水分解性を付与しながら、機械 特性の向上にも寄与するポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物、それを含有するポ リ乳酸樹脂組成物及び成形品を提供することである。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリカルボジィ ミドィ匕合物とポリ乳酸樹脂との相溶性を改善することで、従来技術の問題点が克服で きることを見出した。具体的には、ポリカルポジイミドィ匕合物に特定範囲の分子量を持 つポリ乳酸を一部連結したポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物を、ポリ乳酸樹脂に 配合した場合に、従来のポリカルポジイミドィ匕合物を添加した場合に比べて、ポリ乳
酸榭脂組成物は高 、耐加水分解性を維持しつつ機械特性が大きく向上する。本発 明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものである。
[0009] すなわち、本発明は、下記 [1]〜[5]により特定される、相溶性を改善したポリ乳酸 変性ポリカルポジイミド化合物、それを含有するポリ乳酸榭脂組成物及び成形品に 関する。
[0010] [1]下記一般式 (I)の構造単位及び下記一般式 (Π)で表される構造単位力 なり、 一般式 (Π)で表される構造単位を 2〜10モル%含有する、数平均分子量 1, 000〜 100, 000のランダム共重合体であって、一般式 (Π)で表される構造単位には下記 の一般式 (ΠΙ)で表されるポリ乳酸基が連結して 、ることを特徴とするポリ乳酸変性ポ リカルポジイミド化合物。
[0012] [化 2]
-R— N— C— - H 0 *
[0013] [化 3]
(但し、式 (I)及び式 (Π)中、 Rは C及び H力 なる脂鎖型、脂環型又は芳香族型の 2 価の炭化水素骨格であり、式(Π)中の *は式(ΠΙ)の *と結合しており、 nは 6〜210 である。 )
[0014] [2]—般式 (III)で表されるポリ乳酸基の数平均分子量が、 1, 000〜10, 000である ことを特徴とする [1]に記載のポリ乳酸変性ポリカルポジイミド化合物。
[0015] [3]カルポジイミド当量力 500gZeq以下であることを特徴とする [1]又は [2]に記
載のポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物。
[0016] [4] [1]〜 [3]の 、ずれかに記載のポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物 5〜20質 量%と残部が数平均分子量 3万以上のポリ乳酸榭脂であることを特徴とするポリ乳酸 榭脂組成物。
[0017] [5] [4]に記載のポリ乳酸榭脂組成物力 なる成型品。
発明の効果
[0018] 本発明のポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物は、従来のポリカルポジイミド化合 物が有する特性を損なわずに、連結したポリ乳酸基を介してポリ乳酸樹脂との化学 的親和性を向上できる。また、本発明のポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物は、ポ リ乳酸樹脂に添加することにより、優れた耐加水分解性と共に分子鎖同士の絡み合 い効果が増幅されてポリ乳酸榭脂組成物の機械特性が向上する。したがって、本発 明のポリ乳酸組成物からなる成形品は、射出成形法、フィルム成形法、ブロー成形法 、発泡成形法などの各種方法により得られ、電化製品の筐体などの電気'電子機器 用途、建材用途、自動車部品用途、 日用品用途、医療用途、農業用途などの各種 用途に使用できる。
発明を実施するための最良の形態
[0019] 本発明のポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物は、一般式 (I)で表される構成単位
(以下、簡単のために「構造単位 I」と 、う)及び一般式 (Π)で表される構成単位 (以下 、簡単のために「構造単位 II」という)を有するポリマーであり、構成単位 IIには一般式
(III)で表されるポリ乳酸基 (以下、簡単のために「ポリ乳酸基 m」 t 、う)を連結して ヽ ることが特徴であるポリカルポジイミド化合物である。
[0020] [化 4]
— (― R— =C=N^— ( I )
[0021] [化 5]
-†-R— N— C— -^— ( I I )
H 0 *
[0022] [化 6]
(但し、式 (I)及び式 (Π)中、 Rは C及び Η力 なる脂鎖型、脂環型又は芳香族型の 2 価の炭化水素骨格であり、式(Π)中の *は式(ΠΙ)の *と結合しており、 ηは 6〜210 である。 )
[0023] また、本発明のポリ乳酸榭脂組成物は、上記のポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合 物とポリ乳酸樹脂からなることを特徴とする。
[0024] そして、本発明の成形品は、上記ポリ乳酸榭脂組成物力もなることを特徴とする。
[0025] 1.ポリ乳酸変性ポリカルポジイミド化合物
本発明におけるポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物は、ポリカルポジイミド化合 物の分子鎖中に複数有する構成単位 I力 なるカルポジイミド基の一部にポリ乳酸が グラフトイ匕して、ポリ乳酸基 ΠΙが結合した構成単位 IIが形成されることによって得られ る。
[0026] ポリカルポジイミドィ匕合物は、一般的に良く知られた方法で合成されたものを使用 することができる。このポリカルポジイミド化合物は、例えば、触媒として有機リン系化 合物又は有機金属化合物を用い、各種有機ジイソシァネートを約 70°C以上の温度 で、無溶媒で又は不活性溶媒中で、脱炭酸縮合反応させることにより合成することが できる。
[0027] ポリカルポジイミドィ匕合物の製造における原料有機ジイソシァネートとして、例えば、 芳香族ジイソシァネート、脂肪族ジイソシァネート、脂環族ジイソシァネート及びこれ らの混合物を挙げることができる。具体的には、 1, 5 ナフタレンジイソシァネート、 4 , 4'ージフエ-ルメタンジイソシァネート、 4, 4'ージフエ-ルジメチルメタンジイソシァ ネート、 1, 3 フエ二レンジイソシァネート、 1, 4 フエ二レンジイソシァネート、 2, 4 —トリレンジイソシァネート、 2, 6 トリレンジイソシァネート、へキサメチレンジイソシァ ネート、シクロへキサン一 1, 4ージイソシァネート、キシリレンジイソシァネート、イソホ
ロンジイソシァネート、ジシクロへキシルメタン 4, 4'ージイソシァネート、メチルシク 口へキサンジイソシァネート、テトラメチルキシリレンジイソシァネート、 3, 3' , 5, 5,一 テトライソプロピルビフエ-ル一 4, 4,一ジイソシァネート、 1, 3, 5 トリイソプロピル ベンゼン 2, 4 ジイソシァネート等を例示することができる。
[0028] 本発明のポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物がポリ乳酸樹脂に配合される場合 、カルポジイミド成分の機能は、添加後初期の段階では、加水分解を促進させると考 えられるポリ乳酸榭脂内に残存するカルボキシル基と反応して加水分解を抑制し、そ の後は、加水分解反応によってエステル結合が切断されて生成したポリ乳酸樹脂の カルボキシル基末端に付加することにより、ポリ乳酸の分子鎖を再結合させるものとし て働くものである。
[0029] カルポジイミド成分に結合してポリ乳酸基 ΠΙとなるポリ乳酸は、一般的に良く知られ た方法で合成されたものを使用することができる。その方法としては、 L—乳酸、 D— 乳酸、 DL 乳酸 (ラセミ体)を溶媒中で直接脱水縮合を行う 1段階の直接重合法と、 乳酸を原料として得られる環状二量体のラクチドから、開環重合を行う 2段階のラクチ ド法が知られている。
[0030] これらの製法で用いることができる触媒として、錫、アンチモン、亜鉛、チタン、鉄、 アルミニウム等を含む金属化合物を例示することができる。中でも、錫系、アルミ-ゥ ム系の触媒が好ましぐ特に、ォクチル酸錫及びアルミニウムァセチルァセトナートが 好適である。
[0031] 本発明でポリ乳酸変性ポリカルポジイミド化合物の製造に用いるポリ乳酸は 、ずれ の製法で得られたものも使用する可能である。このポリ乳酸として、その数平均分子 量 Mnが 500以上 15, 000以下、好ましくは 1, 000以上 10, 000以下であるものが 好ましい。ポリ乳酸の数平均分子量が上記範囲であると、得られるポリ乳酸変性ポリ カルポジイミドィ匕合物をポリ乳酸樹脂に配合した時、耐加水分解性と機械特性をより 優れたレベルで達成したポリ乳酸榭脂組成物とすることができる。ここで、ポリ乳酸の 数平均分子量 Mnは重合度 nと下記計算式 (1)で関連付けられる。
Mn=72 X (n+l) 式(1)
[0032] カルポジイミド基へのポリ乳酸のグラフトイ匕反応は、構造単位 I中のカルポジイミド基
にポリ乳酸のカルボキシル基が付加反応することによって進行し、ポリ乳酸が付加し て構造単位 Iは構造単位 IIに変化する。この反応は余分な副生成物を系外に出す必 要がないため、例えば、クロ口ホルム、テトラヒドロフラン等の溶媒中でポリカルポジイミ ド化合物とポリ乳酸を混溶し還流することによって、ほぼ定量的にポリ乳酸変性ポリ力 ルボジイミドィ匕合物とすることができる。
[0033] また、ポリカルポジイミド化合物とポリ乳酸を無溶媒下で溶融混合する方法でも当該 化合物を得ることができるが、原料のポリ乳酸が熱分解する可能性があるため、より 精密な合成を行うためには、上記した溶媒を還流させて反応させる方法の方が好ま しい。
[0034] ポリカルポジイミドィ匕合物に含まれる全カルポジイミド基のうち、置換基 IIIが連結さ れている割合をグラフトイ匕率 X [モル%]と称するが、上記グラフトイ匕反応がほぼ定量 的に進行することから、グラフトイ匕率 Xは下記計算式(2)によって求められる。
X={(a/Mn)/(l/c)} X 100 = (ac/Mn) X 100 式(2)
(但し、 aはポリカルポジイミドィ匕合物 lgに対するポリ乳酸の量 (g)を、 Mnはポリ乳酸 の数平均分子量を、また、 cはポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド当量 (g/eq )を示す。すなわち、 aZMnはポリ乳酸の末端カルボキシル基のモル量を意味し、 1 Zcはポリカルポジイミドィ匕合物 lg当りのカルポジイミド基のモル数を意味する。 )
[0035] このグラフトイ匕率 Xは、ポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物の性質に大きく影響 する。すなわち、小さすぎるとポリ乳酸樹脂との相溶性が改善せず、機械特性が向上 しない。また、大きすぎると耐加水分解性を向上させる効果が低下する。したがって、 このグラフトイ匕率 Xは、好ましくは 2モル%以上 10モル%以下である。グラフト化率 X を力かる範囲とした場合には、ポリ乳酸変性ポリカルポジイミド化合物をポリ乳酸榭脂 に配合して得られるポリ乳酸榭脂組成物は、耐加水分解性と機械特性がより優れた レべノレにめる。
[0036] 更に、ポリ乳酸基 IIIの水酸基末端を封鎖することによって、更に耐加水分解性を向 上させることができる。水酸基末端の封鎖は、ポリ乳酸基 IIIをポリカルポジイミドィ匕合 物へ導入した後、イソシァネート化合物等の水酸基と反応する化合物を反応系中へ 添カ卩して行われる。
[0037] 2.ポリ乳酸榭脂
本発明におけるポリ乳酸榭脂は、上記ポリ乳酸変性ポリカルポジイミド化合物の製 造に使用するポリ乳酸と同様、一般的によく知られた方法で合成されたものを使用す ることができる。その方法としては、上記ポリ乳酸の製造方法と同様である。本発明に おいては、ポリ乳酸樹脂の数平均分子量 Mnは高いほど好ましぐ通常好ましくは 3 万以上、更に好ましくは 7万〜 10万である。
[0038] 3.その他の添加物
本発明のポリ乳酸榭脂組成物は、ポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物に加えて 、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリカルポジイミドィ匕合物以外の添加物を含有 していてもよい。そのような添加剤として、例えば、無機フィラー、補強剤、着色剤 (酸 化チタンなど)、安定剤 (ラジカル補足剤、酸ィ匕防止剤など)、難燃剤 (公知の金属水 和物、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤等)、公知の結晶核剤 (タルク等)、抗菌剤や 防かび剤等を挙げることができる。
[0039] 無機フイラ一として、シリカ、アルミナ、砂、粘土、鉱滓等が使用でき、補強材として は針状無機物等を使用可能である。また、抗菌剤として、銀イオン、銅イオン、これら を含有するゼオライト等を例示できる。
[0040] 本発明のポリ乳酸榭脂組成物は、射出成形法、フィルム成形法、ブロー成形法、発 泡成形法等により、電ィ匕製品の筐体などの電気'電子機器用途、建材用途、自動車 部品用途、 日用品用途、医療用途、農業用途などの成形体に加工できる。
[0041] ポリ乳酸榭脂組成物への各種配合成分の混合方法に、特に制限はなぐ公知の混 合機、例えば、タンブラ一、リボンプレンダー、単軸や二軸の混練機等による混合や 押出機、ロール等による溶融混合が挙げられる。
[0042] 本発明のポリ乳酸榭脂組成物を成形する方法としても、特に制限はなぐ公知の射 出成形、射出'圧縮成形、圧縮成形法等、通常の電気'電子機器製品の製造に必要 とされる成形方法を用いることができる。これらの溶融混合や成形時における温度に つ!、ては、ポリ乳酸樹脂の溶融温度以上でかつポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合 物やポリ乳酸樹脂が熱劣化しない範囲で設定することが可能である。
実施例
[0043] 以下、具体例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。なお、実施例中の物性は次 の方法で測定し、評価したものである。
[0044] (1)耐加水分解性
製造された榭脂組成物のペレットについて、温度 80°C、湿度 95RH%の雰囲気下 に一定時間置き、 GPC (ゲルパーミテーシヨンクロマトグラフィ)を用いて、数平均分 子量の変化を測定し、下記基準で耐加水分解性を評価した。
〇: 150時間経過時にも初期の数平均分子量を維持していた。
X : 150時間経過時には分解が進行し、初期の数平均分子量を維持できていなかつ た。
[0045] (2)相溶性
製造された榭脂組成物ペレットを 200°Cに加熱したスライドガラス上に置き、溶解し たところでカバーガラスをかけた後に室温まで冷却して、測定用試料を作成する。次 いで、その測定用試料を光学顕微鏡で観察し、ポリ乳酸変性ポリカルポジイミド化合 物の分散粒径を測定する。その結果を用いて、下記基準で相溶性を評価した。 〇:ポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物の分散粒径が 1 μ m未満。
X:ポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物の分散粒径が 1 μ m以上。
[0046] (3)機械特性(曲げ特性)
製造された榭脂組成物から JIS K 7171に準拠する試験片を作成し、この試験片 について、曲げ特性を測定して、機械特性の指標とした。
[0047] 製造例 1 (ポリ乳酸変性ポリカルポジイミド製造用ポリ乳酸の製造 1 :原料 乳酸) 攪拌モーター及び冷却管を付けたフラスコに、 L—乳酸 (試薬 1級)を入れ、減圧下 に 150°Cで 6時間発生した水分を系外に排出しながら、脱水反応した。得られた反応 マスをへキサンで沈殿させて、数平均分子量が 300〜500であるポリ乳酸 (オリゴマ 一)を得た。なお、数平均分子量は末端カルボン酸の定量により求めた。
[0048] 製造例 2 (ポリ乳酸変性ポリカルポジイミド製造用ポリ乳酸の製造 2 :原料 ラクチド) 攪拌モーター及び冷却管を付けたフラスコに、 L ラクチド (試薬 1級)とォクチル酸 錫 150ppm (L ラクチドに対し)を投入し、窒素雰囲気下 190°Cで重合反応を行つ た。反応時間を調整して、分子量の異なるポリ乳酸を得た。なお、末端カルボン酸を
定量して求めた数平均分子量は 1000〜20000の範囲にあった。
[0049] 製造例 3 (ポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物 (A— 1)の合成)
攪拌モーター及び冷却管を付けたフラスコに、脂肪族ポリカルポジイミドィ匕合物"力 ルボジライト LA— 1" (商品名、 日清紡株式会社製、カルポジイミド当量 = 250gZeq ) 100質量部と、製造例 1で得た数平均分子量が 300であるポリ乳酸 12質量部及び クロ口ホルム 1000質量部をカ卩え、 65°Cで 6時間還流した後メタノールで再沈殿して ポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物 (A— 1)を得た。得られたポリ乳酸変性ポリ力 ルボジイミド化合物のカルボジイミド当量は 310gZeqであり、ポリ乳酸グラフトイ匕率は 10モル%であった。
[0050] 製造例 4〜 13 (ポリ乳酸変性ポリカルポジイミド化合物 (A— 2〜A— 9の合成)
表 1に示すようにポリ乳酸の数平均分子量及び添加量を変更する外は、製造例 3と 同じようにして、ポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物 (A—2〜A— 9)を得た。また 、得られたポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物のカルポジイミド当量とポリ乳酸ダラ フトイ匕率は表 1に示すとおりであった。
[0051] [表 1]
注) L A— 1 : 脂肪族ポリカルポジイ ミ ド化合物 "カルポジライ ト L A— 1 " (商品名、 日清紡株式会社製、 カルボジィ ミ ド当量 = 2 5 0 g / e q )
ュ-チカ株式会社製、数平均分子量 10万) 95質量%を混合し、この混合物の温度 が約 180°Cになるように設定した卓上混練機内で溶融混練して、ペレットを作製した 。得られたペレットを耐加水分解性及び相溶性の評価に供した。また、 100°Cで 7時 間以上乾燥させたペレットを用い、金型表面温度を 180°Cに設定した圧縮成型機で 板厚 3. 2mmの成型体 (長さ 130mm、幅 10mm)を作成して、機械特性を評価した 。組成と評価結果を表 2に示す。
[0053] 実施例 2
ポリ乳酸変性ポリカルポジイミド化合物 (A— 4) 10質量%とポリ乳酸榭脂 90質量% と変更する外は実施例 1と同じ操作を行ってペレットを作製し、そのペレットを用い、 耐加水分解性、相溶性及び機械特性を評価した。組成と評価結果を表 2に示す。
[0054] 実施例 3
ポリ乳酸変性ポリカルポジイミド化合物 (A— 4) 20質量%とポリ乳酸榭脂 80質量% と変更する外は実施例 1と同じ操作を行ってペレットを作製し、そのペレットを用い、 耐加水分解性、相溶性及び機械特性を評価した。組成と評価結果を表 2に示す。
[0055] 比較例 1
ポリ乳酸榭脂のみを用いる外は実施例 1と同じ操作を行ってペレットを作製し、その ペレットを用い、耐加水分解性、相溶性及び機械特性を評価した。組成と評価結果 を表 2に示す。
[0056] 比較例 2〜4
ポリ乳酸変性カルポジイミドィ匕合物に代えて、脂肪族ポリカルポジイミド「カルボジラ イト LA— 1」(商品名)に変更する外は、それぞれ実施例 1〜3と同じ操作を行い、ぺ レットを作製し、耐加水分解性、相溶性及び機械特性を評価した。組成と評価結果を 表 2に示す。
[0058] 表 2に示される結果から明らかなように、ポリ乳酸をグラフトイ匕したポリ乳酸変性ポリ カルポジイミドィ匕合物 5〜20質量%をポリ乳酸樹脂に配合することによって、高い耐 加水分解性が達成されると同時に機械特性も向上する。
[0059] 実施例 4〜8及び比較例 5〜7
ポリ乳酸変性ポリカルポジイミド化合物として、表 3に示すものを用いる外は実施例 1と同じ操作を行い、ペレットを製造し、耐加水分解性、相溶性及び機械特性を評価
ボリ乳酸樹脂組成物
注) ポリ乳酸変性ポリカルポジィ ミ ド化合物 : 表 1参照。
機械特性 : J I S K 7 1 7 1に準拠する曲げ特性。
〔〕0060
[0061] 表 3に見られるように、実施例 1及び 4〜8では、ポリ乳酸樹脂との相溶性が向上し、 高 ヽ耐加水分解性を維持しつつ機械特性も 20%以上向上して 、る。比較例 5では、 グラフトイ匕するポリ乳酸の数平均分子量 Mnが小さ 、ためにポリ乳酸変性ポリカルボ ジイミドィ匕合物の極性が高ぐポリ乳酸樹脂との相溶性が改善しないとともに耐加水 分解性も悪化している。比較例 6では、カルボジイミド当量が 500を超えているため、 十分な耐加水分解性が得られて 、な 、。比較例 7ではポリ乳酸のグラフトイ匕率力 、さ V、ため、ポリ乳酸樹脂との相溶性が改善されずに機械特性が向上して!/、な!/、。
産業上の利用可能性
[0062] 本発明のポリ乳酸変性ポリカルポジイミドィ匕合物は、ポリ乳酸樹脂との親和性が向 上しているので、ポリ乳酸樹脂に添加することにより、優れた耐加水分解性と共に機 械特性が良好である。したがって、本発明のポリ乳酸組成物は、射出成形法、フィル ム成形法、ブロー成形法、発泡成形法などの各種方法により成形でき、電化製品の 筐体などの電気 ·電子機器用途、建材用途、 自動車部品用途、 日用品用途、医療用 途、農業用途などに使用できる。