明 細 書
二輪車の転倒防止制御装置
技術分野
[0001] 本発明は二輪車の転倒防止制御装置、特に無人で自立走行できる二輪車の転倒防 止制御装置に関するものである。
背景技術
[0002] 従来、電動モータや内燃機関を原動機として用い、無線操縦や自動操縦によって走 行がコントロールされる無人自走二輪車が知られている。直進走行する場合、車体が 右に傾 、たときにはハンドルを右に切り、車体が左に傾 、たときにはハンドルを左に 切ることで、ノ《ランスを保つことができる。また、カーブを走行する場合には、車体の 傾き角の目標値を垂直方向から傾斜した方向に設定し、その角度を基準として車体 が右に傾 、たときにはハンドルを右に切り、車体が左に傾 、たときにはハンドルを左 に切ればよい。いずれにせよ、車体の傾き角を推定する必要がある。
[0003] 特許文献 1には、低速から高速まで、安定かつ様々なモードで常に実機に近似した 走行を可能とした無人自走二輪車が提案されて ヽる。この無人自走二輪車は、車体 を構成するフレームと、このフレームの一端に配置されて原動機により回転駆動され る駆動車輪と、フレームの他端に取り付けられて操舵車輪を回転自在に支持するフ オークとを有するものであって、車体の倒れ角の角速度信号を出力する角速度セン サと、操舵角制御信号を生成する演算器と、演算器力 出力される操舵角制御信号 により操舵車輪の走行角度を変化させるァクチユエ一タとを備えている。演算器は、 外部から与えられる操舵車輪の走行角度を指令する走行制御信号に基づいて角速 度指令値を作成する角速度指令値作成手段と、角速度センサの検出信号である角 速度信号と角速度指令値作成手段の出力である角速度指令値との偏差値に基づい てァクチユエータへの操舵角制御信号を生成する制御信号生成手段と、制御信号 生成手段で生成された操舵角制御信号を角速度指令値作成手段に帰還する帰還 手段とから構成される。そして、ァクチユエータは演算器の操舵角制御信号により走 行中の車体の倒れ角速度偏差を減少させる方向に操舵車輪を制御する操舵制御信
号を生成するものである。
[0004] 車体が倒れた場合に、その倒れ角速度が減少する向きに操舵車輪の方向を制御す るのは当然であるが、上記無人自走二輪車の場合には、角速度センサの検出信号と 、外部力 与えられる操舵車輪の走行角度を指令する走行制御信号に基づいて作 成した角速度指令値との偏差に基づいてァクチユエータへの操舵角制御信号を生 成している。しかし、操舵車輪の走行角度力も適正な角速度指令値を求めること、お よび角速度検出値と角速度指令値との偏差力 直接的に操舵角を求めることは、複 雑な演算や多数のパラメータが必要であり、制御が複雑になるため、安定した自立走 行を行うことは難しい。
[0005] 比較的簡単な二輪車の転倒防止制御方法として、図 7に示す方法が考えられる。こ の方法は、角速度センサ 20で車体の左右傾き方向の角速度 ω を検出し、この角速
1
度 ω を積分器 21で積分して車体の左右傾き方向の傾斜角 0を求め、この傾斜角
1 f
Θ と傾斜角指令値 Θ との偏差を比例ゲイン G を持つ演算手段 22に入力して操舵 f r 1
角指令値 δ を生成し、この指令値 δをァクチユエータ 23に出力する方法である。こ の制御方法は、傾斜角の偏差力 比例ゲイン G を用いて操舵角を求める方法であ
1
るから、演算が簡単であり、多数のパラメータを必要としないので、比較的簡単に実 施できる利点がある。
[0006] しかしながら、一般に角速度センサは環境温度の変化や、時間の経過に伴う検出信 号の偏差 (ドリフト)を持ち、これらがオフセットとして悪影響を及ぼす。また、角速度セ ンサ 20に入る外部ノイズはオフセットと共に角速度検出信号に影響を及ぼす。さらに 、走行開始時に車体に既に傾きがある場合には、ゼロセット誤差 Θ
0として傾斜角 Θ f に影響を及ぼす。このような問題は、図 7に示す制御方法に限らず、特許文献 1に示 された制御方法でも同様に発生し得る。
[0007] 図 8は、図 7のブロック線図に誤差要因(ゼロセット誤差 0 およびオフセット 'ノイズ Δ
0
)をカ卩えた実際の制御ブロック線図である。図 8に示すように、ゼロセット誤差 Θ は傾
0 斜角 0 に印加され、オフセット 'ノイズ Δは角速度 ω に印加される。
f 1
[0008] 図 9は、図 8におけるブロック線図を等価なブロック線図に書き換えたものである。図 9 に示すように、ゼロセット誤差 Θ は傾斜角指令値 Θ に直接印加され、オフセット'ノ
0 r
ィズ Δの積分値も傾斜角指令値 θ ^こ印加される。そのため、ゼロセット誤差により、 傾斜角指令 Θ =0の場合でも車体は傾こうとし、二輪車は曲線を描くことになる。また 、オフセット ·ノイズ Δの積分値は、傾斜角指令 Θ に影響を与え、オフセット ·ノイズ Δ の積分値を含んだ傾斜角指令 0 に追従してしまうので、実際の傾斜角は増大し続け 、やがて二輪車は転倒してしまう。このように、図 7に示す制御方法は簡単な制御方 法である力 実際の制御ではゼロセット誤差 Θ やオフセット 'ノイズ Δのために、安
0
定した自立走行ができな!/ヽと!ヽぅ問題があった。
特許文献 1:実用新案登録第 2577593号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] そこで、本発明の好ま 、実施形態の目的は、比較的簡単な制御ループで、ゼロセ ット誤差やオフセット 'ノイズがあっても、安定した自立走行ができる二輪車の転倒防 止制御装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0010] 本発明は、車体と、上記車体の前端部に設けられた操舵可能な前輪と、上記前輪を 操舵させるァクチユエータと、上記車体の後端部に設けられた後輪と、上記後輪を駆 動させる後輪駆動部と、を持つ二輪車において、検出軸が車体前方よりも所定角度 下方に傾斜するように上記車体に取り付けられ、上記検出軸回りの角速度 ωを検出 する角速度センサと、上記ァクチユエータを制御するための操舵角指令信号 δを出 力する制御手段とを備え、上記制御手段は、上記角速度 ωを積分して第 1角度信号 を得る積分手段と、外部から指令される第 2角度信号と上記第 1角度信号との偏差を 用いて操舵角指令信号 δを生成する操舵角信号生成手段とを備え、上記操舵角指 令信号 δ を上記ァクチユエータに入力することにより、上記第 1角度を第 2角度に近 づけるよう制御することを特徴とする二輪車の転倒防止制御装置である。
[0011] 従来の角速度センサは、車体の左右傾き方向の角速度 ω のみを検出するため、そ
1
の検出軸を車体前方(車体の進行方向の水平軸)に向けて取り付けてある。これに対 し、本発明では、角速度センサをその検出軸が車体前方よりも下方に傾斜するように 車体に取り付けることで、車体の左右傾き方向の角速度 ω の成分と方位角方向の
角速度 ω の成分とを含む角速度 ωを検出している。この角速度 ωを積分して第 1角
2
度信号を得るとともに、外部から指令される第 2角度信号と第 1角度信号との偏差を 用いて操舵角指令信号 δを生成し、この操舵角指令信号 δをァクチユエ一タに入 力すれば、傾斜角ループの外側に方位角ループを設定したのと同様の効果が得ら れる。ゼロセット誤差は方位角指令の初期値に偏差を与えるだけであり、オフセットと ノイズは積分されて方位角指令に影響を与えるだけである。つまり、ゼロセット誤差や オフセット 'ノイズは、方位角指令に繰り込まれ、左右傾き方向の傾斜角は、内部ルー プ (傾斜角ループ)で自動的に制御されるので、二輪車の転倒を防止できる。ここで、 傾斜角とは車体の左右傾き方向の角度のことであり、操舵角とは前輪の向きを表す 角度である。さらに、方位角とは車体の進行方向を表す角度であり、取付角とは角速 度センサの検出軸の前方水平軸に対する下方への傾き角のことである。なお、角速 度センサの検出軸は前後方向に延びるので、検出軸を後方水平軸に対する上方へ の傾き角で設定しても等価となる。
[0012] 好ましい実施の形態によれば、角速度センサの検出軸の水平軸に対する取付角 φ は、角速度 ωから車体の左右傾き方向の角速度 ω と方位角方向の角速度 ω とが
1 2 抽出できる角度とするのがよい。取付角 Φは、車体構造 (重量や重心位置など)や二 輪車の走行速度等によって最適値は変わる力 少なくとも角速度 ωから車体の左右 傾き方向の角速度 ω と方位角方向の角速度 ω とが抽出できる角度とするのがよい
1 2
。取付角 φが小さ過ぎると、方位角方向の角速度 ω
2を取り出し難くなり、一方取付 角 φが大き過ぎると、方位角ループゲインが過大となり、制御が不安定になる。
[0013] 好ましい実施の形態によれば、角速度センサで検出される角速度 ωは、検出軸の水 平軸に対する取付角を Φ、車体の左右傾き方向の角速度を ω 、方位角方向の角
1
速度を ω とすると、
2
ω = ω cos φ + ω sin φ
1 2
で表すことができる。
[0014] 好ま 、実施の形態によれば、第 2角度信号を目標方位角 X sin φで与えることがで きる。つまり、指令信号である第 2角度信号は方位角成分のみであるから、車体の進 行方向を目標の方向(方位)に向けることができる。つまり、進行方向の制御も可能に
なる。なお、方位角指令はオフセットとノイズの影響を受けるので、他の位置認識手 段によって補正することで、目標位置へ正確に制御することも可能である。
発明の好ましい実施形態の効果
[0015] 以上のように、本発明に係る二輪車の転倒防止制御装置によれば、角速度センサを その検出軸が車体前方よりも下方に傾斜するように車体に取り付けたので、傾斜角 ループの外側に方位角ループを設定したのと同様の効果が得られ、これによりゼロ セット誤差やオフセット 'ノイズは方位角指令に繰り込まれ、左右傾き方向の傾斜角は 、内部ループ (傾斜角ループ)で自動的に制御されるので、二輪車の転倒を確実に 防止できる。また、操舵角指令信号を出力する制御手段を、積分手段と比例ゲインを 持つ簡単な演算器とで構成できるので、構成が簡単となり、容易に実現できる。 発明を実施するための最良の形態
[0016] 以下に、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
[0017] (第 1実施形態)
図 1〜図 3は本発明にかかる転倒防止制御装置を自転車ロボットに適用した第 1実 施形態を示す。この自転車ロボット Aは、操舵用ハンドル 1と、操舵用ハンドル 1によつ て操舵可能な前輪 2と、後輪 3と、後輪 3を駆動させる後輪駆動モータ 4と、前輪 2およ び後輪 3を回転自在に支持するフレーム 5と、フレーム 5上に搭載された人形 6と、ハ ンドル 1 (前輪 2)を操舵するァクチユエータ 7とを備えている。
[0018] この例ではァクチユエータ 7をノヽンドル 1の中心部に設けた力 前輪 2を操舵できるも のであれば如何なる位置、如何なる形式でもよい。例えば人形 6の腕がハンドル 1を 介して前輪 2を操舵してもよい。また、後輪駆動モータ 4がローラ 4aを介して後輪 3を 駆動する例を示したが、これに限るものではなぐ後輪駆動モータ 4が後輪 3の軸を 駆動してもよぐ人形 6がペダルを踏むことで、チェーンを介して後輪 3を駆動してもよ い。さらに、駆動モータ 4に代えて内燃機関などを用いてもよい。
[0019] フレーム 5には、角速度センサ 8が、その検出軸 8aを自転車 Aの車体前方よりも所定 角度 Φだけ下方に傾斜させて取り付けられている。角速度センサ 8はその検出軸 8a 回りの角速度 ωを検出することができる。角速度センサ 8の取付角 φ (検出軸 8aの水 平軸に対する傾き角)は、角速度 ω力も車体 (フレーム 5、人形 6などを含む)の左右
傾き方向の角速度 ω と方位角方向の角速度 ω とを抽出できる角度とするのがよく
1 2
、例えば 4° 〜8° 程度がよい。なお、取付角 φは車体構造 (重量や重心位置など) や走行速度等によって最適値は変わるので、上記角度範囲に限るものではない。
[0020] ここで、以下の説明において用いる各記号について定義する。図 3に示すように、傾 斜角 Θとは鉛直方向に対する車体 (後輪 3)の左右傾き方向の角度のことであり、操 舵角 δとは車体の進行方向に対する前輪の向きを表す角度であり、方位角 φとは基 準となる方位 (例えば北)に対する車体の進行方向を表す角度であり、取付角 φとは 上述のように水平軸 (前方)に対する検出軸 8aの傾き角のことである。また、角速度 ωとは検出軸 8a回りの角速度、 ω とは車体の左右傾き方向の角速度、 ω とは方
1 2 位角方向の角速度のことである。
[0021] 人形 6の胸部には慣性ロータ 9と、慣性ロータ 9を駆動するバランス用モータ 10と、バ ランス用モータ 10の回転角度を測定するエンコーダ 11とが取り付けられている。慣 性ロータ 9およびモータ 10の回転軸は自転車 Αの略前後方向に向けて取り付けられ ている。ここで、略前後方向とは、厳密な前後方向を含んで、上下に若干角度ずれて いてもよいことを表している。人形 6の背中には、後輪駆動モータ 4、操舵用ァクチュ エータ 7、バランス用モータ 10などを制御する制御基板 12および電池 13が装備され ている。
[0022] 通常の走行中は、ハンドル 1 (前輪 2)を操舵することでバランスをとり、転倒を防止す る。具体的には、車体が傾く方向にハンドル 1を操舵することで、転倒を防止する。一 方、停止状態ゃ微速進行状態では、ハンドル 1の操舵だけでバランスをとることは困 難であるため、慣性ロータ 9を駆動するときの反動を利用してバランスをとるように制 御している。このうち、慣性ロータ 9を用いた転倒防止制御については、本願出願人 による特願 2005— 348373号に示されているため、ここでは省略する。
[0023] 図 4は自転車ロボット Aの走行中における転倒防止制御を実施するための制御ブロッ クの一例を示す。この制御ブロックは、図 8と同様に、角速度センサの出力を積分した 値をフィードバック信号としたものであり、図 8と同一部分には同一符号を付して重複 説明を省略する。
[0024] 角速度センサ 8が検出する角速度 ωは、車体の左右傾き方向の角速度 ω の成分と
方位角方向の角速度 ω の成分とを含んでおり、取付角を φとすると、次式で表すこ
2
とがでさる。
ω = ω cos φ + ω sin φ
1 2
[0025] 図 4から明らかなように、角速度信号 ωには、オフセット 'ノイズ信号 Δが加算され、こ れらが積分器 21で積分される。積分された信号にゼロセット誤差 Θ が加算され、フ
0
イードバック信号 Rとなる。入力される指令信号 Rとフィードバック信号 Rとの偏差が f f
演算手段 22に入力され、操舵角指令値 δ が生成される。この指令値 δ はァクチュ エータ 7に出力され、ハンドル 1 (前輪 2)が操舵される。なお、指令信号^については 後述する。
[0026] 図 5は、図 4のブロック線図における角速度 ωを、左右傾き方向の角速度 ω の成分
1 と方位角方向の角速度 ω の成分に分けて表した等価ブロック線図である。図 5から
2
明らかなように、ゼロセット誤差 Θ
0は入力された指令信号 R
rに直接印加され、オフセ ット 'ノイズ Δを積分器 21aで積分した値も指令信号 Rに印加される。方位角方向の 角速度 ω に対しゲイン( = sin φ )を掛け算 24し、これを積分器 21bで積分して方位
2
角のフィードバック信号 φを得る。同様に、左右傾き方向の角速度 ω に対しゲイン( f 1
= cos φ )を掛け算 25し、これを積分器 21cで積分して左右傾き方向のフィードバッ ク信号 0
fを得る。
[0027] 図 6Aは図 5のブロック線図をさらに書き換えた等価ブロック線図である。図 6Bは、図 6Aに対して定常走行状態 (入力 Rは一定速度で増加するランプ状入力)における自 転車を書き加えた、制御系全体のブロック線図を示す。
[0028] 図 6Bにおいて、自転車 Aはハンドル操舵用ァクチユエータ 7を含む自転車モデルで あり、ハンドル操舵角指令 δ に対してハンドル 1を操舵し、自転車 Αがそれに反応し て何らかの運動をすることによって、傾斜角 Θが決まる。傾斜角 = Θの時、カーブを 曲がろうとする求心力は、
mgtan Θ ^mg Θ (m :自転車質量、 g :重力加速度)
で表される。一方、自転車 Aの速度を v、方位角速度を ω とすると、遠心力は mv co
2 2 で表され、この 2つの力が釣り合っているので、
ω =g θ Zv
で表される。従って、図 6Bのように、方位角ループの内部に傾斜角ループがあるよう に描くことができ、傾斜角ループ、方位角ループの両方とも安定ィ匕できる。
[0029] 図 6Bについて、さらに詳しく説明する。指令信号 Rにゼロセット誤差 Θ およびオフ r 0
セット'ノイズ Δの積分値が印加されたあと、この指令値にゲイン( = lZsin φ )が掛 け算 26されて方位角指令 φが得られる。この方位角指令 φと、方位角方向の角速 度 ω を積分器 2 lbで積分して得られたフィードバック信号 φ との偏差が求められる
2 f
。この偏差(= φ — φ )に、方位角ループゲイン(=tan φ )が掛け算 27されて傾斜 f
角指令 0 が得られる。この傾斜角指令 0 と、左右傾き方向の角速度 ω を積分器 2 lcで積分して得られたフィードバック信号 Θ との偏差が求められる。この偏差(= Θ f
— Θ )に、ゲイン( = cos φ )を掛け算 28するとともに、ゲイン G を掛け算 22すること f 1
で、操舵角指令 δを得る。この場合、 cos φと G との積が傾斜角ループゲインとなる r 1
。ゲイン G の演算器 22は図 7における傾斜角ループゲイン G の演算器 22と基本的
1 1
に同じでよい。
[0030] 操舵角指令 δ は自転車 Α (ァクチユエータ 7を含む)に入力され、出力された左右傾 き方向の傾斜角 Θは微分器 29によって角速度 ω
1に変換される。傾斜角 Θにゲイン gZvを掛け算 30することにより、方位角方向の角速度 ω が得られ、角速度 ω を積
2 2 分器 31で積分すれば、方位角が得られる。
[0031] 図 6Βから明らかなように、方位角指令 φが定数ならば、傾斜角 Θは 0度に収束する 。方位角ループゲイン(=tan φ )は、角速度センサ 8の取付角 φによって任意に設 定可能であり、方位角方向の応答を自在に変更可能である。入力される指令信号 R として、目標方位角 X sin φを入力すれば、方位を制御することが可能になる。但し、 オフセットとノイズの影響を受けるので、必要であれば他の位置認識手段、例えば搭 載カメラを用いた画像認識による位置の補正を行うことで、目的の位置へ二輪車を誘 導することができる。
[0032] 上記のように、角速度センサ 8の出力角速度 ωが方位角成分 ω と傾斜角成分 ω と
2 1 を持つので、傾斜角ループの外側に方位角ループを設定したのと同様の効果が得 られる。ゼロセット誤差は方位角指令 φの初期値に偏差を与えるだけであり、初期状 態で車体が傾いていても、直ぐに直立状態( Θ =0° )へ復帰させることができる。ま
た、オフセット 'ノイズは積分されて方位角指令に影響を与えるだけである。つまり、ゼ 口セット誤差やオフセット 'ノイズは、方位角指令 φ に繰り込まれ、傾斜角は内部ルー プ (傾斜角ループ)で自動的に制御されるので、二輪車の転倒を確実に防止できる。
[0033] 上記実施形態では、自転車ロボットの転倒防止について説明したが、本発明はこれ に限らず、有人の自動操縦二輪車などの転倒防止にも適用できる。また、上記実施 形態では、停止状態ゃ微速進行状態では慣性ロータ 9を用いた転倒防止制御を実 施する例について説明した力 このような慣性ロータ 9を備えない二輪車にも適用で きることは勿論である。但し、その場合には、走行開始時に車体に初期傾きがあると 方位角に影響を与えるのに対し、停止状態で慣性ロータ 9を用いてバランス制御を行 う二輪車の場合、走行開始時に車体の初期傾斜角 Θがほぼ 0° であり、ゼロセット誤 差が殆ど発生しな 、ので、目標とする方位へ正確に制御することができる。
図面の簡単な説明
[0034] [図 1]本発明にかかる転倒防止制御装置を適用した自転車ロボットの一実施形態の 斜視図である。
[図 2]自転車ロボットの側面図である。
[図 3]本発明にかかる転倒防止制御装置を説明するための各記号の定義を示す図 である。
[図 4]本発明にかかる転倒防止制御装置のブロック線図である。
[図 5]図 4のブロック線図を角速度成分に分解して表した等価ブロック線図である。
[図 6A]図 5のブロック線図をさらに書き換えた等価ブロック線図である。
[図 6B]図 6Aに対して定常走行状態における自転車を書き加えた、制御系全体のブ ロック線図である。
[図 7]参考例である転倒防止制御装置の理想的なブロック線図である。
[図 8]図 7のブロック線図に誤差要因を追加した実際のブロック線図である。
[図 9]図 8のブロック線図を書き換えた等価ブロック線図である。
符号の説明
[0035] A 自転車ロボット(本体)
1 操舵用ハンドル (操舵部)
前輪
後輪
後輪駆動モータ (後輪駆動部) フレーム
人形
操舵用ァクチユエータ 角速度センサ
検出軸
慣性ロータ
バランス用モータ
エンコーダ(回転センサ) 制御基板
電池