WO2007080739A1 - 高圧燃料ポンプおよび高圧燃料ポンプ用シールシステム - Google Patents

Abstract

　本発明は、「高速」「高圧」および「耐燃料油」の条件下で使用することが可能なシールシステムを備えた高圧燃料ポンプを提供することを目的とする。この目的達成のため本発明は、ポンプ内で往復動する軸と前記軸を挿通したハウジング間の環状空間に密封対象である燃料と潤滑油を分離・密封するシールシステム２１を設けた高圧燃料ポンプであって、シールシステム２１は、燃料をシールする燃料側シール３１と、潤滑油をシールする潤滑油側シール４１の組み合わせよりなる。燃料側シール３１は、樹脂製シールリング３２と前記シールリング３２をバックアップするゴム状弾性体製Ｏリング３３よりなる。潤滑油側シール４１は、金属環４３に被着したゴム状弾性体製シールリップ４４を潤滑油側へ向けて配置するシングルリップタイプのオイルシール４２単体よりなる。燃料側シール３１および潤滑油側シール４１は、その間隔を軸の往復動距離よりも大きく設定されている。

Description

明 細 書

高圧燃料ポンプおよび高圧燃料ポンプ用シールシステム

技術分野

[0001] 本発明は、高圧燃料ポンプと、これを用いるシールシステムに関するものである。

背景技術

[0002] 図 11に示すように、従来の高圧燃料ポンプにおいては、そのプランジャー（軸） 51 の外周側にゴムタイプのオイルシール 52が摺動自在に配置され、このオイルシール 52によりガソリン (燃料) Gとエンジンオイル (潤滑油） Oの 2液を分離'密封して 、る。 また、この高圧燃料ポンプにおいては、プランジャー 51とその軸受であるシリンダー（ ハウジング） 53の間から僅かに漏れ出るガソリン Gをフューエルタンクに戻すベぐリタ ーン配管 54がシリンダー 53に設けられて 、る（特許文献 1参照)。

[0003] 上記高圧燃料ポンプにお!、ては現在、その構造を簡素化すべく、リターン配管 54 によるガソリン回収回路を省略することが鋭意研究されている力 このようにガソリン回 収回路を省略すると、プランジャー 51およびシリンダー 53間から漏れ出るガソリン G がそのまま滞留するために、吐出圧 (約 lOMPa)と同圧となる可能性があり、このよう な高圧の状況下ではオイルシール 52が早期に破損する虞がある。またこれを防ぐた め、フューエルポンプから高圧燃料ポンプの吸入口につなぐ配管をリターン口へ分 配することで、オイルシール 52に加わる圧力をフューエルポンプの最下圧（約 0. 5M Pa)とすることができるが、この圧力でもなお、オイルシール 52に与える影響は小さく ない。また、プランジャー 51はエンジンの稼動に伴って極めて高速で往復動するもの である。

[0004] し力しながら、このような「高速」「高圧」「耐燃料油」と云う過酷な条件下で使用可能 なオイルシールの単体製品は未だ開発されておらず、よってこのような過酷な条件に 対応可能な新たなシールシステムの開発が求められている。

[0005] 特許文献 1 :特開平 8— 68370号公報（図 2)

発明の開示

発明が解決しょうとする課題 [0006] 本発明は以上の点に鑑みて、上記したような「高速」「高圧」「耐燃料油」の条件下 で使用することが可能なシールシステムを備えた高圧燃料ポンプとこれに用いるシー ルシステムを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007] 上記目的を達成するため、本発明の請求の範囲 1による高圧燃料ポンプは、ボン プ内で往復動する軸と前記軸を揷通したハウジング間の環状空間に、密封対象であ る燃料と潤滑油を分離'密封するシールシステムを設けた高圧燃料ポンプであって、 前記シールシステムは、燃料をシールする燃料側シールと、潤滑油をシールする潤 滑油側シールの組み合わせよりなり、前記燃料側シールは、榭脂製シールリングと前 記榭脂製シールリングをバックアップするゴム状弾性体製 Oリングよりなり、前記潤滑 油側シールは、金属環に被着したゴム状弾性体製シールリップを潤滑油側へ向けて 配置するシングルリップタイプのオイルシール単体よりなり、前記燃料側シールおよ び潤滑油側シールは、その間隔を前記軸の往復動距離よりも大きく設定されているこ とを特徴とする。

[0008] また、本発明の請求の範囲 2による高圧燃料ポンプは、上記した請求の範囲 1記載 の高圧燃料ポンプにおいて、ゴム状弾性体製 Oリングは、潤滑油側から燃料側へか けて漸次縮径するテーパー状に形成したハウジングの内面に密接することを特徴と する。

[0009] また、本発明の請求の範囲 3による高圧燃料ポンプは、上記した請求の範囲 1記載 の高圧燃料ポンプにおいて、燃料側シールの更に燃料側に、ヮッシャが配置される ことを特徴とする。

[0010] また、本発明の請求の範囲 4によるシールシステムは、高圧燃料ポンプ内で往復動 する軸と前記軸を揷通したハウジング間の環状空間に装着され、密封対象である燃 料と潤滑油を分離'密封するシールシステムであって、燃料をシールする燃料側シー ルと、潤滑油をシールする潤滑油側シールの組み合わせよりなり、前記燃料側シー ルは、榭脂製シールリングと前記榭脂製シールリングをバックアップするゴム状弾性 体製 Oリングよりなり、前記潤滑油側シールは、金属環に被着したゴム状弾性体製シ ールリップを潤滑油側へ向けて配置するシングルリップタイプのオイルシール単体よ りなり、前記燃料側シールと潤滑油側シールは、その間隔を前記軸の往復動距離よ りも大きく設定されて ヽることを特徴とする。

[0011] また、本発明の請求の範囲 5によるシールシステムは、上記した請求の範囲 4記載 のシールシステムにお 、て、ゴム状弾性体製 Oリングは、潤滑油側から燃料側へかけ て漸次縮径するテーパー状に形成したハウジングの内面に密接することを特徴とす る。

[0012] 更にまた、本発明の請求の範囲 6によるシールシステムは、上記した請求の範囲 4 記載のシールシステムにおいて、燃料側シールの更に燃料側に、ヮッシャが配置さ れることを特徴とする。

[0013] 上記従来技術に係るゴムタイプのオイルシールと比較して榭脂製シールリングには 一般に、「高速」および「高圧」の条件に対応する耐摩耗性、ならびに「耐燃料油」の 条件に対応する耐油性が備えられているので、本発明ではこの榭脂製シールリング を燃料側シールとして用いることにより燃料をシールする。また、この榭脂製シールリ ングの軸追随性を確保するために、ノ ックアップリングとしてゴム状弾性体製 Oリング を併用する。また、潤滑油側シールとしてはオイルシールを用いることにより潤滑油を シールする。オイルシールとしては特に、軸が高速で往復動することを考慮すると、シ ールリップと軸の接触状態が最も安定する金属環付きタイプのオイルシールを用いる のが好ましい。更にオイルシールは、潤滑油をシールする向きにシールリップを配置 する。このように潤滑油をシールする向きにシールリップを配置すると、榭脂製シール リングが形成する油膜 (燃料油膜)カゝら僅かに垂れてくるものがオイルシールにより搔 き出されるため、これにより燃料側シールおよび潤滑油側シール間に蓄圧現象が発 生するのを防止することが可能となる。また、このようにシールリップを漏れ出る燃料 は極微量であるために、ポンプ機器に問題を生じることも無 、。

[0014] また、燃料側シールの漏れ量を最小限に抑えるには、燃料側シールおよび潤滑油 側シール間の軸方向間隔を軸の往復動距離よりも大きく設定するのが有効であり、 各部品の寸法公差等を考慮すると、両シール間の間隔を軸の往復動距離よりも 0. 5 mm以上大きく設定するのが望ましい。そして、このように両シール間の間隔を軸の 往復動距離よりも大きく設定すると、軸の作動時、潤滑油側シールは、燃料側シール が形成する油膜 (上記垂れ分を除く）に届力ないことになるため、これにより潤滑油側 シールが油膜 (燃料)を潤滑油側へ搔き出すのを防止することが可能となる。

[0015] また、榭脂製シールリングとゴム状弾性体製 Oリングの組み合わせよりなる燃料側シ ールは、軸方向に対称な形状であるのが一般的であるところ、このように軸方向に対 称な形状であると、軸の作動方向によって形成される油膜厚さが軸の往動時も復動 時も同じと云うことになつて、シール方向性を持つリップタイプシールと比較してシー ル性に劣ることが懸念される。そこで、本発明ではこの懸念に対処するため、 Oリング を保持するハウジングの内面を潤滑油側から燃料側へかけて漸次縮径するテーパ 一状とし、これにより軸に対するシールリングの面圧分布のピークを燃料側へ移動さ せることにした。このようにシールリングの面圧分布のピークを燃料側へ移動させると 、軸が燃料側力 潤滑油側へ作動するときに形成される油膜厚さを薄くすることが可 能となる。従来、榭脂製シールリップの形状をリップタイプにする例は数多く見られる 力 加工にコストがかかることと、 Oリングを介しての軸との接触になるため、接触状態 は不安定なものとならざるを得な 、。

[0016] 更にまた、榭脂製シールリングおよびゴム状弾性体製 Oリングがハウジング力 抜け 出さな 、ように規制する必要がある場合には、これら燃料側シールの更に燃料側に ヮッシャを組み込むと良い。また、このヮッシャの配置からして、ヮッシャ内径及びプラ ンジャー外径との間の隙間部分による燃料圧脈動吸収の効果を期待することも可能 となる。

発明の効果

[0017] 本発明は、以下の効果を奏する。

[0018] すなわち、本発明の請求の範囲 1による高圧燃料ポンプにおいては、耐摩耗性お よび耐油性に優れた榭脂製シールリングにより燃料をシールするとともに、シールリツ プと軸の接触状態が最も安定する金属環付きタイプのオイルシールにより潤滑油を シールする。したがって、このように適材適所のシール構成を実現したことにより、「高 速」「高圧」「耐燃料油」と云う過酷な条件下で使用されるのに適したシールシステム を備える高圧燃料ポンプを提供することができる。

[0019] また、オイルシールとして、シールリップを潤滑油側へ向けて配置するシングルリツ プタイプのオイルシールを用いることにしたために、榭脂製シールリング力も漏れ出る 微量の燃料をシールリップを通過させて潤滑油側へ放出することが可能とされている 。したがって、燃料側シールおよび潤滑油側シール間に蓄圧が発生するのを防止す ることができ、シールに過大な負荷が力かるのを防止することができる。尚、この場合 、オイルシールを漏れ出る燃料は極微量であることから、潤滑油に混入しても機器に 問題を生じることは無い。

[0020] また、燃料側シールと潤滑油側シールの間隔を軸の往復動距離よりも大きく設定す るようにしたために、軸の作動時、潤滑油側シール力 燃料側シールが形成する油 膜 (上記垂れ分を除く）に届くのを防止することが可能とされている。したがって、潤滑 油側シールが油膜 (燃料)を潤滑油側へ搔き出すのを防止することができ、垂れ流れ てきた最低限の燃料のみに漏れを抑えることができる。

[0021] また、本発明の請求の範囲 2による高圧燃料ポンプにぉ 、ては、ゴム状弾性体製 O リングを、潤滑油側力も燃料側へかけて漸次縮径するテーパー状に形成したハウジ ングの内面に密接させるようにしたために、軸に対する榭脂製シールリングの面圧分 布のピークを軸方向対称形状の場合よりも燃料側へ移動させることが可能とされてい る。したがって、軸が燃料側から潤滑油側へ作動するときに形成される油膜厚さを薄 くすることができ、よってこの点からも燃料漏れ量を低減させることができる。

[0022] また、本発明の請求の範囲 3による高圧燃料ポンプにぉ 、ては、燃料側シールの 更に燃料側に、ヮッシャを配置するようにしたために、ヮッシャ内径及びプランジャー 外径との間の隙間部分による燃料圧脈動吸収の効果を期待することができる。

[0023] また、本発明の請求の範囲 4によるシールシステムにお 、ては、耐摩耗性および耐 油性に優れた榭脂製シールリングにより燃料をシールするとともに、シールリップと軸 の接触状態が最も安定する金属環付きタイプのオイルシールにより潤滑油をシール する。したがって、このように適材適所のシール構成を実現したことにより、「高速」「高 圧」「耐燃料油」と云う過酷な条件下で使用されるのに適した高圧燃料ポンプ用シー ルシステムを提供することができる。

[0024] また、オイルシールとして、シールリップを潤滑油側へ向けて配置するシングルリツ プタイプのオイルシールを用いることにしたために、榭脂製シールリング力も漏れ出る 微量の燃料をシールリップを通過させて潤滑油側へ放出することが可能とされている 。したがって、燃料側シールおよび潤滑油側シール間に蓄圧が発生するのを防止す ることができ、シールに過大な負荷が力かるのを防止することができる。尚、この場合 、オイルシールを漏れ出る燃料は極微量であることから、潤滑油に混入しても機器に 問題を生じることは無い。

[0025] また、燃料側シールと潤滑油側シールの間隔を軸の往復動距離よりも大きく設定す るようにしたために、軸の作動時、潤滑油側シール力 燃料側シールが形成する油 膜 (上記垂れ分を除く）に届くのを防止することが可能とされている。したがって、潤滑 油側シールが油膜 (燃料)を潤滑油側へ搔き出すのを防止することができ、垂れ流れ てきた最低限の燃料のみに漏れを抑えることができる。

[0026] また、本発明の請求の範囲 5によるシールシステムにお 、ては、ゴム状弾性体製 O リングを、潤滑油側力も燃料側へかけて漸次縮径するテーパー状に形成したハウジ ングの内面に密接させるようにしたために、軸に対する榭脂製シールリングの面圧分 布のピークを軸方向対称形状の場合よりも燃料側へ移動させることが可能とされてい る。したがって、軸が燃料側から潤滑油側へ作動するときに形成される油膜厚さを薄 くすることができ、よってこの点からも燃料漏れ量を低減させることができる。

[0027] 更にまた、本発明の請求の範囲 6によるシールシステムにお 、ては、燃料側シール の更に燃料側に、ヮッシャを配置するようにしたために、燃料圧脈動吸収の効果を期 待することができる。

図面の簡単な説明

[0028] [図 1]本発明の第一実施例に係る高圧燃料ポンプの断面図

[図 2]同ポンプに備えられるシールシステム（プランジャー復動時）の断面図

[図 3]同シールシステム（プランジャー往動時）の断面図

[図 4]本発明の第二実施例に係るシールシステムの断面図

[図 5]同シールシステムにおけるシールリング面圧分布のピーク発生状態を示す説明 図

[図 6]本発明の第三実施例に係る高圧燃料ポンプの断面図

[図 7]本発明の第四実施例に係る高圧燃料ポンプの断面図 [図 8]ヮッシャの単品図

[図 9]本発明の第五実施例に係るシールシステムの要部断面図 [図 10]本発明の第六実施例に係るシールシステムの要部断面図 [図 11]従来例に係る高圧燃料ポンプの要部断面図

符号の説明

1 高圧燃料供給ポンプ

2 シリンダー

3 チェック弁部

4 プランジャー

5 電磁弁

6 リターンスプリング

7 シーノレハウジング

8, 9, 35 シール装着部

8a 内周面

21 シーノレシステム

31 燃料側シール

32 シールリング

33 Oリング

34 シールホルダー

36 ヮッシャ

37 溝

41 潤滑油側シール

42 オイルシール

43 金属環

43a 筒状部

44 シールリップ

45 ガータースプリング

G ガソリン (燃料） o エンジンオイル (潤滑油）

発明を実施するための最良の形態

[0030] つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。

[0031] 第一実施例 · · ·

図 1は、本発明の実施例に係る高圧燃料供給ポンプ 1の断面を示している。

[0032] 当該実施例に係る高圧燃料供給ポンプ 1は、燃料であるガソリンを図示しない吸入 口から吸入するシリンダー 2、吸入したガソリンを加圧して圧送するプランジャー（軸） 4、加圧したガソリンの吐出量を制御する電磁弁 5、およびプランジャー 4を復帰動さ せるリターンスプリング 6等を備え、特に以下のように構成された密封装置であるシー ルシステム 21を備える点に特徴を有している。このシールシステム 21は、上記シリン ダー 2の下部に組み付けたスプリングリテーナ一兼用のシールハウジング (ノヽゥジン グ） 7と、このシールハウジング 7の軸孔内周に往復動自在に揷通したプランジャー 4 との間の環状空間に組み込まれ、上記燃料であるガソリン Gと潤滑油であるエンジン オイル Oとを分離'密封するものであって、以下のように構成されて 、る。

[0033] すなわち、図 2に拡大して示すように、シールハウジング 7の内周であってガソリン G 側に溝状のシール装着部 8が設けられて、このシール装着部 8に燃料側シール 31が 装着されており、またシールハウジング 7の内周であってエンジンオイル O側に同じく 溝状のシール装着部 9が設けられて、このシール装着部 9に潤滑油側シール 41が装 着されている。

[0034] 燃料側シール 31は、榭脂製のシールリング 32と、このシールリング 32をバックアツ プするゴム状弾性体製の Oリング 33との組み合わせよりなり、シールリング 32はプラ ンジャー 4の周面に摺動自在に密接し、その外周側に Oリング 33が嵌合されている。

[0035] シールリング 32は、所定の榭脂にて断面矩形状に成形されている力 その材質とし ては、耐燃料油性に優れ、高速'高圧化での使用を考慮し、摺動材で、耐摩耗性に 優れた PTFE (ポリテトラフルォロエチレン）を用いるのが特に望ましい。

[0036] また、 Oリング 33は、所定のゴム状弾性体にて断面 O字状に成形されている力 そ の材質としては、耐燃料油性、耐アルコール性に優れたゴム材料であるフッ素系のゴ ムを用いるのが特に望まし 、。 [0037] 一方、潤滑油側シール 41は、金属環 43にゴム状弾性体製のシールリップ 44をカロ 硫接着したシングルリップタイプのオイルシール 42の単体よりなり、金属環 43により シールハウジング 7の内周側に嵌合されるとともに、シールリップ 44によりプランジャ 一 4の周面に摺動自在に密接している。シールリップ 44は、エンジンオイル Oを有効 にシールするようエンジンオイル O側へ向けて配置されており、更にこのシールリップ 44には締め代調整用のガータースプリング 45が嵌合されて!/、る。このオイルシール 42は、シールリップ 44とプランジャー 4との接触状態が最も安定するものとして、金属 環 43付きタイプのオイルシールが選定されて!、る。

[0038] また、上記燃料側シール 31と潤滑油側シール 41との間隔 (シールリング 32摺動面 のエンジンオイル O側端部からシールリップ 44のリップ端までの間隔) Aは、プランジ ヤー 4の往復動距離 Bよりも実寸で 0. 5mm以上大きく設定されている (A>B)。ブラ ンジャー 4の往復動距離 Bは、プランジャー 4の往復動に伴う移動距離のことを云い、 この距離にしたがってプランジャー 4の周面上に油膜が形成されることになる。

[0039] 上記構成の高圧燃料ポンプ 1は、そのシールシステム 21が上記したようにポンプ内 で往復動するプランジャー 4とシールノヽウジング 7間の環状空間に装着されて、ガソリ ン Gとエンジンオイル Oとを分離'密封するものであって、上記構成により以下の作用 効果を奏する点に特徴を有して ヽる。

[0040] すなわち先ず、上記したように耐摩耗性および耐燃料油性に優れた PTFEよりなる シールリング 32がガソリン Gをシールするとともに、シールリップ 44とプランジャー 4と の接触状態が最も安定の良 、金属環 43付きタイプのオイルシール 42がエンジンォ ィル Oをシールする。 PTFEよりなるシールリング 32は、その材質上の特性から、高 速-高圧の条件下で使用されても摺動摩耗しにくぐかつガソリン Gに侵されにくいも のである。またオイルシール 42は、プランジャー 4に安定良く接触するため、やはり摩 耗しにくいものである。したがって、このように適材適所のシール構成が実現されてい ること力 、上記「高速」「高圧」「耐燃料油」と云う過酷な条件下で使用されるのに適 している。

[0041] また、オイルシール 42として、シールリップ 44をエンジンオイル O側へ向けて配置 するシングルリップタイプのオイルシールが用いられて 、るために、シールリング 32か ら漏れ出る微量のガソリン Gをシールリップ 44を通過させてエンジンオイル O側へ放 出することが可能とされている。したがって、燃料側シール 31および潤滑油側シール 41間に蓄圧現象が発生するのを防止することができ、オイルシール 42に過大な負 荷が作用して異常摩耗等の不具合が発生することを防止することができる。また、ォ ィルシール 42を漏れ出るガソリン Gは極微量であることから、エンジンオイル Oに混入 してち問題を生じることは無い。

[0042] また、燃料側シール 31と潤滑油側シール 41の間隔 Aがプランジャー 4の往復動距 離 Bよりも大きく設定されているために、プランジャー 4の往動時（図 2矢印）、潤滑油 側シール 41は、燃料側シール 31が形成する油膜 (図 2ではこの油膜をプランジャー 4上に付した多数の点々にて示している）に届かないよう構成されている。したがって 、潤滑油側シール 41がこの油膜 (ガソリン G)をエンジンオイル O側へ搔き出すことが ないために、垂れ流れてきた最低限の燃料のみに漏れを抑えることができる。

[0043] 尚、このようにシールが油膜に届力ないと云う状態は、図 3に示すように軸方向反対 向きに、プランジャー 4の復動時（図 3矢印）にも発生するので、潤滑油側シール 41 が形成する油膜（図 3ではこの油膜をプランジャー 4上に付した多数の点々にて示し ている）が燃料側シール 31の摺動部に浸入するのを防止することもできる。

[0044] また、上記第一実施例に係る高圧燃料供給ポンプ 1は、その構成を以下のように付 カロ '変更しても良い。

[0045] 第二実施例 · · ·

上記第一実施例では、燃料側シール 31の Oリング 33を保持するシール装着部 8の 内周面 8aが円筒面状に形成されているが、図 4に示すように、このシール装着部 8の 内周面 8aをエンジンオイル O側力もガソリン G側へかけて漸次縮径するテーパー面 状（円錐面状）に形成すると、図 5に示すように、プランジャー 4に対するシールリング 32の面圧分布のピークをガソリン G側へ移動させることが可能となる。図 5では、シー ル装着部 8の内周面 8aが円筒状の場合を実線で示し、テーパー状の場合を点線で 示している。また、前者円筒状の場合のピーク位置を Pで示すとともに後者テーパー 状の場合のピーク位置を Pで示しており、このようにピーク位置が P力 Pへとガソリ

2 1 2 ン G側へ移動する。そして、このようにシールリング 32の面圧分布のピークがガソリン G側へ移動すると、プランジャー 4がガソリン G側力 エンジンオイル O側へ作動する ときに形成される油膜厚さ (ガソリン油膜の厚さ）を薄くできることから、これによつても ガソリン漏れ量を低減させることができる。

[0046] 第三実施例 · · ·

また、上記第一実施例では、シールハウジング 7の内周側に Oリング 33が直接嵌合 されている力 図 6に示すように、シールハウジング 7の内周側に環状のシールホル ダー 34を嵌合し、このシールホルダー 34の内周面に設けた溝状のシール装着部 35 にシールリング 32および Oリング 33の組み合わせよりなる燃料側シール 31を装着す る。また、このシールリング 32および Oリング 33の組み合わせよりなる燃料側シール 3 1がシール装着部 35から脱落することがないよう、同図に示すように、燃料側シール 31のガソリン G側にヮッシャ 36を装着する。また、このヮッシャ 36については、ヮッシ ャ内径及びプランジャー外径との間の隙間部分によって、燃料圧に発生する脈動を 吸収する燃料圧脈動吸収の効果を発揮することができる。

[0047] 第四実施例 · · ·

図 7および図 8の例では、ヮッシャ 36の一面に径方向溝 37aおよび環状溝 37bが設 けられ、燃料通路を形成している。また、ヮッシャ 36の他面にも同様の径方向溝及び 環状溝を設けても構わない。尚、図 7に示したように、シールシステム 21はその全体 をシリンダー 2に直接組み付けるようにしても良 、。

[0048] 第五実施例 · · ·

また、潤滑油側シール 41のオイルシール 42の構造に関しては、図 9に示すように、 金属環 43にガソリン G側へ延びる筒状部 43aを設けても良ぐこの場合には、この筒 状部 43aの内周側に、シールホルダー 34、燃料側シール 31およびヮッシャ 36等の 構成部品を組み付けることができる。

[0049] 第六実施例 · · ·

また、図 10に示すように、この筒状部 43aを利用して、オイルシール 42をシールハ ウジング 7の外周側に嵌合することも考えられる。

Claims

請求の範囲

[1] ポンプ内で往復動する軸と前記軸を揷通したハウジング間の環状空間に、密封対 象である燃料と潤滑油を分離'密封するシールシステムを設けた高圧燃料ポンプで あって、

前記シールシステムは、燃料をシールする燃料側シールと、潤滑油をシールする 潤滑油側シールの組み合わせよりなり、

前記燃料側シールは、榭脂製シールリングと前記榭脂製シールリングをバックアツ プするゴム状弾性体製 oリングよりなり、

前記潤滑油側シールは、金属環に被着したゴム状弾性体製シールリップを潤滑油 側へ向けて配置するシングルリップタイプのオイルシール単体よりなり、

前記燃料側シールおよび潤滑油側シールは、その間隔を前記軸の往復動距離より も大きく設定されて ヽることを特徴とする高圧燃料ポンプ。

[2] 請求の範囲 1記載の高圧燃料ポンプにお!、て、

ゴム状弾性体製 Oリングは、潤滑油側力 燃料側へかけて漸次縮径するテーパー 状に形成したハウジングの内面に密接することを特徴とする高圧燃料ポンプ。

[3] 請求の範囲 1記載の高圧燃料ポンプにお!、て、

燃料側シールの更に燃料側に、ヮッシャが配置されることを特徴とする高圧燃料ポ ンプ。

[4] 高圧燃料ポンプ内で往復動する軸と前記軸を揷通したハウジング間の環状空間に 装着され、密封対象である燃料と潤滑油を分離'密封するシールシステムであって、 燃料をシールする燃料側シールと、潤滑油をシールする潤滑油側シールの組み合 わせよりなり、

前記燃料側シールは、榭脂製シールリングと前記榭脂製シールリングをバックアツ プするゴム状弾性体製 Oリングよりなり、

前記潤滑油側シールは、金属環に被着したゴム状弾性体製シールリップを潤滑油 側へ向けて配置するシングルリップタイプのオイルシール単体よりなり、

前記燃料側シールと潤滑油側シールは、その間隔を前記軸の往復動距離よりも大 きく設定されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ用シールシステム。

[5] 請求の範囲 4記載のシールシステムにお!/、て、

ゴム状弾性体製 Oリングは、潤滑油側力 燃料側へかけて漸次縮径するテーパー 状に形成したハウジングの内面に密接することを特徴とする高圧燃料ポンプ用シー ノレシステム。

[6] 請求の範囲 4記載のシールシステムにお!/、て、

燃料側シールの更に燃料側に、ヮッシャが配置されることを特徴とする高圧燃料ポ ンプ用シールシステム。