JP5724303B2 - Dmeサプライポンプのシール構造 - Google Patents

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本発明は、DMEサプライポンプのシール構造に関するものである。
DME(ジメチルエーテル)を燃料としたディーゼルエンジンは、DME自体の粘性が低く、潤滑性に乏しいため、DME燃料中に潤滑性向上剤を数100ppm添加して使用している。この低粘性によりサプライポンプなどのプランジャ隙間からDMEが漏れやすい状況となるため、一般的にはプランジャ部位にロッドシールなどのシール装置を用いている。また、サプライポンプのカム室はエンジンオイルによる潤滑を行い、ポンプカムとベアリングなどの潤滑を担う。
特開2007−120423号公報
図3、図4(a)、(b)に示すように、プランジャ部位にロッドシールなどのシール装置50を用いた場合、DME燃料をシールするためにリップ構造などを採るケースがある。このリップ構造は、リップ51の材質、角度、スプリング初張力を適切に調整することでDME燃料をシール可能である。しかし、プランジャ上昇行程中にプランジャ7に付着したエンジンオイルが逆にリップ51を通過し、DME燃料中に吸い上げられることがある。エンジンオイルには、各種添加剤(酸化防止剤、摩耗防止剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、消泡剤、流動点降下剤)などが含まれる。DME燃料は洗浄作用もあり、エンジンオイルのベースオイル成分は金属表面に固着せず流されてしまうが、粘度指数向上剤などの高分子ポリマーは金属表面あるいは滞留箇所などに付着することがあり、金属摺動部などの固着を促進することがある。また、エンジンオイルの吸い上げを防ぐ目的でリップ51のストローク行程時のリップ面圧を上げるとリップ摩耗が促進され、所望のシール性能を長く維持できないという問題が生じる。
なお、DME燃料に混入したエンジンオイルは、サプライポンプ以降の燃料噴射装置(コモンレール、インジェクタなど)へ流れ込み、インジェクタに入り込んだエンジンオイルは燃焼室内へDME燃料と一緒に噴射され、燃焼してしまうが、Z−DTPなど酸化防止剤などで用いられる成分にはCaなどの金属成分が含まれているため、排気系統(ターボ、触媒など)へ付着し、PM排出の悪化を招くことになる。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、DME燃料へのエンジンオイルの混入を防ぐことができるDMEサプライポンプのシール構造を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明は、DME燃料の吸込口を有すると共に吐出口を有するシリンダ内にプランジャを往復動可能に設け、該プランジャにエンジンの駆動部を接続し、前記シリンダ又は前記プランジャの一方に、他方との間をシールするためのシール装置を設けたDMEサプライポンプのシール構造において、前記シール装置が、前記シリンダからのDME燃料をシールするDME用ロッドシールと、該DME用ロッドシールよりも前記駆動部側に配置され前記シリンダ内へのエンジンオイルの浸入をシールするオイル用ロッドシールとを備え、該オイル用ロッドシールには、オイル用ロッドシールと前記DME用ロッドシールとの間の中間室に浸入したエンジンオイルを前記駆動部側に戻すための逆止弁が設けられるものである。
前記逆止弁が、入口より出口を窄めるように形成されたテーパ穴からなるとよい。
前記DME用ロッドシールと前記オイル用ロッドシールは、前記一方から前記他方に延びるリップ部を有すると共に該リップ部が先端を窄めるように形成され、前記リップ部のシールする側の面が前記プランジャのストローク方向に対して40°の角度となるように形成され、前記シールする側とは反対側の面が前記プランジャのストローク方向に対して20°の角度となるように形成されるとよい。
本発明によれば、DME燃料へのエンジンオイルの混入を防ぐことができる。
本実施の形態に係るDMEサプライポンプの概略説明図である。 本実施の形態に係るDMEサプライポンプのシール装置の側面断面図である。 従来のシール装置の側面断面図である。 (a)はプランジャ上昇行程のシール装置の説明図であり、(b)はプランジャ下降行程のシール装置の説明図である。
図1に示すように、DMEサプライポンプ1は、DME燃料の吸込口2を有すると共に吐出口3を有するシリンダ4と、吸込口2に設けられた電磁弁5と、吐出口3に設けられた逆止弁6と、シリンダ4内に往復動可能に設けられたプランジャ7と、シリンダ4に設けられシリンダ4とプランジャ7との間をシールするためのシール装置8とを備える。
シリンダ4は、上下に延びるように配置されている。吸込口2は、シリンダ4の頂部に形成されている。吸込口2には、電磁弁5を介してポンプギャラリ9が接続されている。ポンプギャラリ9には、DME燃料を収容する燃料タンク10が接続されている。電磁弁5は、吸込口2を開閉するための弁体11と、弁体11を駆動するソレノイド12とからなる。ソレノイド12は図示しない制御装置に接続されている。制御装置は、プランジャ7が下降するとき電磁弁5を開き、プランジャ7が上昇するとき電磁弁5を閉じるようにソレノイド12を制御する。吐出口3は、シリンダ4の上部に形成されており、逆止弁6を介してコモンレール(図示せず)に接続されている。逆止弁6は、シリンダ4側の圧力がコモンレール側の圧力より高いときにのみ開弁するようになっている。また、シリンダ4の側面には、プランジャ7とシリンダ4の間にリークした高圧のDME燃料をポンプギャラリ9に戻すためのリーク回収路13が接続されている。
プランジャ7は、シリンダ4下端からシリンダ4内に挿入されており、プランジャ7より上方のシリンダ4内にシリンダ室14を形成するようになっている。シリンダ室14は、プランジャ7が上下に移動することで容積が変化する。また、プランジャ7は、図示しないリターンスプリングにより常時下方に弾発付勢されるようになっている。プランジャ7には、エンジンの駆動部15が接続されている。
エンジンの駆動部15は、エンジンの動力で回転するカム16と、プランジャ7に設けられると共にカム16に当接されカム16の回転に応じて上下動するカムフォロワー17とからなる。カムフォロワー17は、プランジャ7の下端に設けられたタペット18と、タペット18に設けられると共にカム16に当接され、カム16の回転に応じて回転するローラ19とからなる。エンジンの駆動部15は、エンジンに形成されたカム室20内に収容されており、エンジンオイルにて潤滑されるようになっている。
図2に示すように、シール装置8は、シリンダ4の内周面に形成された凹部21内に設けられている。凹部21はシリンダ4の下端部の内径を段状に拡径するようにして形成されており、凹部21の下端内周部には、シール装置8を保持するためのシール押さえ22が設けられている。シール装置8は、自己潤滑性があるPTFE等を用いた樹脂からなる上下二段のロッドシール23、24と、これらロッドシール23、24の先端をプランジャ7に向けて弾発付勢するスプリング25とを備える。上側のロッドシール(DME用ロッドシール)23は、シリンダ4からのDME燃料をシールするためのものであり、下側のロッドシール(オイル用ロッドシール)24は、シリンダ4内へのエンジンオイルの浸入をシールするためものである。
DME用ロッドシール23は、凹部21の内周面に沿うように環状に形成された基部26と、基部26の内周に沿って環状に形成されると共に径方向内方に突出して形成され先端がプランジャ7に液密に当接されるリップ部27とを備える。基部26には、スプリング25を収容するための空隙28が形成される。空隙28は、リング状に形成されると共に上端が開放された溝状に形成されている。リップ部27は、先端を窄めるように形成されており、上側(DME燃料をシールする側)に形成されたDMEシール面29を有すると共に、下側に形成された背面30を有する。DMEシール面29は、プランジャ7のストローク方向に対して40°の角度αで傾斜されており、背面30はプランジャ7のストローク方向に対して20°の角度βで傾斜されている。
オイル用ロッドシール24は、凹部21の内周面に沿うように環状に形成された基部31と、基部31の内周に沿って環状に形成されると共に径方向内方に突出して形成され先端がプランジャ7に液密に当接されるリップ部32とを備える。基部31には、スプリング25を収容するための空隙33が形成される。空隙33は、リング状に形成されると共に下端が開放された溝状に形成されている。リップ部32は、先端を窄めるように形成されており、下側(エンジンオイルをシールする側)に形成されたオイルシール面34を有すると共に、上側に形成された背面35を有する。オイルシール面34は、プランジャ7のストローク方向に対して40°の角度αで傾斜されており、背面35はプランジャ7のストローク方向に対して20°の角度βで傾斜されている。また、DME用ロッドシール23のリップ部27とオイル用ロッドシール24のリップ部32との間には、中間室36が形成されており、オイル用ロッドシール24を通過したエンジンオイルを収容するようになっている。
また特に、オイル用ロッドシール24には、中間室36に浸入したエンジンオイルを駆動部15側に戻すための逆止弁たるテーパ穴40が複数設けられている。テーパ穴40は、入口37より出口38を窄めるように形成されている。テーパ穴40の入口37はリップ部32の背面35に形成されており、出口38は基部31の空隙33に連通されている。出口38は極めて小さな径に形成されており、エンジンオイルが空隙33からテーパ穴40に浸入しないようになっている。また、シール押さえ22には、空隙33内からカム室20にエンジンオイルを排出するためのオイル排出穴39が上下に貫通して形成されている。
次に本実施の形態の作用を述べる。
カム16の回転に応じてプランジャ7が下降すると共に電磁弁5が開弁すると、ポンプギャラリ9内のDME燃料がシリンダ室14内に吸い込まれる。このとき、DME用ロッドシール23のリップ部27はDME燃料をシールしやすい状態となるため、シリンダ室14内のDME燃料がシール装置8を通過してリークすることはない。
また、プランジャ7が上昇すると共に電磁弁5が閉弁すると、シリンダ室14内のDME燃料が加圧される。シリンダ室14内の圧力がコモンレール圧より高くなると、逆止弁6が開き、シリンダ室14内のDME燃料が吐出口3からコモンレール側に吐出される。このとき、シリンダ室14内のDME燃料がシリンダ4とプランジャ7との間隙にリークすることもあるが、このDME燃料はリーク回路13を通じてポンプギャラリ9に戻るため、シール装置8にシリンダ室14内の圧力が作用することはない。また、プランジャ7と共に上昇するエンジンオイルがオイル用ロッドシール24のリップ部32にて掻き落とされる一方、プランジャ7表面に付着した極薄いエンジンオイル油膜はリップ境界面を通じて中間室36に入り込むことがある。中間室36に入り込んだエンジンオイルは、プランジャ7の往復動に応じてDME用ロッドシール23及びオイル用ロッドシール24が変形したときテーパ穴40からオイル用ロッドシール24の空隙33に排出され、オイル排出穴39からカム室20内に戻る。
テーパ穴40は、出口38を小径に形成されているため、空隙33内のエンジンオイルが出口38からテーパ穴40に入ることは難しい。また、オイル用ロッドシール24のリップ部32にはエンジンオイル油膜が存在することにより、リップ面の境界潤滑膜が維持される。DME用ロッドシール23のリップ部27にはDME燃料として混入する潤滑性向上剤にてリップ面の境界潤滑膜は維持される。すなわち、両リップ部27、32の境界潤滑膜を維持しつつ、DME燃料中へのエンジンオイルの混入を抑制することができる。
このように、シール装置8が、シリンダ4からのDME燃料をシールするDME用ロッドシール23と、DME用ロッドシール23よりも駆動部15側に配置されカム室20からシリンダ4内へのエンジンオイルの浸入をシールするオイル用ロッドシール24とを備え、オイル用ロッドシール24には、中間室36に浸入したエンジンオイルを駆動部15側(カム室20)に戻すための逆止弁(テーパ穴40)が設けられるものとしたため、DMEシール性能を維持しつつ、エンジンオイルの吸い上げを防ぐことができ、DME燃料へのエンジンオイルの混入を防ぐことができる。またこれにより、燃料噴射装置の部品の固着化、摺動不良を防ぐことができ、気筒間の噴射量バラツキやアイドル振動などを防ぐことができる。また、シール性能を継続的に維持できる。
上記逆止弁が、入口37より出口38を窄めるように形成されたテーパ穴40からなるものとしたため、簡易な構造で逆止弁効果を発揮でき、プランジャ径が数ミリのDMEサプライポンプ1のシール装置8に容易に適用できる。
DME用ロッドシール23とオイル用ロッドシール24は、シリンダ4からプランジャ7に延びるリップ部27、32を有すると共にリップ部27、32が先端を窄めるように形成され、リップ部27、32のシールする側の面(DMEシール面29またはオイルシール面34)がプランジャ7のストローク方向に対して40°の角度となるように形成され、シールする側とは反対側の面(背面30、35)がプランジャ7のストローク方向に対して20°の角度となるように形成されるものとしたため、DME用ロッドシール23にあってはDME燃料をシールでき、オイル用ロッドシール24にあってはエンジンオイルの吸い上げを良好に抑えることができる。
なお、シール装置8はシリンダ4に設けるものとしたが、プランジャ7に設けるものとしてもよい。
また、駆動部15はカム機構であるものについて説明したがこれに限るものではない、エンジンオイルを使用する他の機構からなるものであってもよい。
オイル用ロッドシール24には、テーパ穴40が複数設けられるものとしたが、単数であってもよい。
1 サプライポンプ
2 吸込口
3 吐出口
4 シリンダ
7 プランジャ
8 シール装置
15 駆動部
23 DME用ロッドシール
24 オイル用ロッドシール
27 リップ部
29 DMEシール面(シールする側の面)
30 背面(シールする側とは反対側の面)
32 リップ部
34 オイルシール面(シールする側の面)
35 背面(シールする側とは反対側の面)
36 中間室
40 テーパ穴(逆止弁)

Claims (2)

  1. DME燃料の吸込口を有すると共に吐出口を有するシリンダ内にプランジャを往復動可能に設け、該プランジャにエンジンの駆動部を接続し、前記シリンダ又は前記プランジャの一方に、他方との間をシールするためのシール装置を設けたDMEサプライポンプのシール構造において、前記シール装置が、前記シリンダからのDME燃料をシールするDME用ロッドシールと、該DME用ロッドシールよりも前記駆動部側に配置され前記シリンダ内へのエンジンオイルの浸入をシールするオイル用ロッドシールとを備え、該オイル用ロッドシールには、オイル用ロッドシールと前記DME用ロッドシールとの間の中間室に浸入したエンジンオイルを前記駆動部側に戻すための逆止弁が設けられ、前記逆止弁が、入口より出口を窄めるように形成されたテーパ穴からなることを特徴とするDMEサプライポンプのシール構造。
  2. 前記DME用ロッドシールと前記オイル用ロッドシールは、前記一方から他方に延びるリップ部を有すると共に該リップ部が先端を窄めるように形成され、前記リップ部のシールする側の面が前記プランジャのストローク方向に対して40°の角度となるように形成され、前記シールする側とは反対側の面が前記プランジャのストローク方向に対して20°の角度となるように形成された請求項1記載のDMEサプライポンプのシール構造。
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