WO2007060786A1

WO2007060786A1 - レース編地および編レース

Info

Publication number: WO2007060786A1
Application number: PCT/JP2006/319603
Authority: WO
Inventors: Shigeo Yoshita
Original assignee: Kuroda Tex Co., Ltd
Priority date: 2005-11-24
Filing date: 2006-09-29
Publication date: 2007-05-31
Also published as: JP2007146310A; JP3966423B2

Abstract

　本発明の目的は、美観の低下を抑えるとともに、糸のほつれを防ぐことができるレース編地を提供することである。編成後のレース編地２０を、鎖編糸２１の溶融温度未満でかつ熱接着糸２３の溶融温度以上の温度に加熱することで、熱接着糸２３の一部が部分的に溶解する。溶解部分の一部は、鎖編糸２１およびジャカード糸２２に付着する。これによって各糸２１～２３の連結状態が維持され、糸のほつれを防ぐことができる。したがって鎖編組織を構成する鎖編糸の一部が分断されたとしても、鎖編組織のほどけが熱接着糸２３の付着部分で阻止され、付着部分を超えて鎖編組織がほどけることを抑制することができる。また熱接着糸２３とは異なる鎖編糸２１を用いて鎖編組織を形成することで、鎖編糸２１および熱接着糸２３を細くすることができ、レース編地２０の透け感を向上することができ、柄模様をはっきりとさせることができる。

Description

レース編地および編レース

技術分野

[0001] 本発明は、模様が形成されるレース編地および編レースに関する。

背景技術

[0002] 第 1の従来技術のレース編地がたとえば特公昭 63— 52142号公報に開示される。

このレース編地は、熱溶解性の熱接着糸が、スカラップ部分に編込まれる。編成後にレース編地を加熱することで、熱接着糸が溶融する。熱接着糸は、ピコット糸の基部と他の糸との重なり部分を接着し、重なり部分以外で熱接着糸が露出した部分を溶解除去する。これによつて編レースのうちで、スカラップ部分におけるほつれを防ぐ。第 2の従来技術のレース編地がたとえば特開平 11— 81073号公報に開示される。このレース編地は、カバーリング糸力スカラップ部分に編込まれる。カバーリング糸は、熱溶融性を有する芯糸と、熱可塑性合成繊維糸である被覆糸から成る。編成後にレース編地を加熱することで、カバーリング糸のうちの、芯糸の一部が溶融し、溶融物が被覆糸の間から染み出してくる。そしてこの溶融物が、隣接する他の糸を接着しあうようにして固化する。これによつて編レースのうちで、スカラップ部分におけるほつれを防ぐ。

図 21は、第 3の従来技術のアイラッシュレース 1を示す写真である。アイラッシュレース 1は、鎖編組織を有するレース編地をゥエール方向 Wに分断して形成されるレースである。アイラッシュレースは、コース方向 C両端部に、鎖編糸が他の糸とは単独でコース方向に突出するまつげ状部分 2が形成される。まつげ状部分は、ラン止め組織を形成することができないので、コース方向後段 C2側でほつれた部分 3が生じやすい。

上述した第 1および第 2の従来技術のレース編地は、スカラップ部分にのみ、熱接着糸が編込まれる。この場合、レース編地が加熱されて形成される編レースについては、スカラップ部分以外では、依然としてほつれが生じやすい。たとえば図 21に示すアイラッシュレースのまつげ状部分におけるほつれを防ぐことができない。このように第 1および第 2の従来技術では、スカラップ部分以外のほつれを防ぐことができない。仮に、ほつれ防止のために編レース全体において、熱溶融性を有する糸を鎖編糸として用いると、レース編地を加熱した後に形成される編レースに鎖編組織を残すために、熱接着糸を太くしなければならず、単位面積あたりの糸の量が不所望に増えてしまう。この場合、単位面積あたりの糸の量が疎な下地部と、単位面積あたりの糸の量が密な柄部との糸の疎密差が小さくなつてしまう。したがってレース編地を用いて製造される編レースの柄模様がはっきりとせず、美観を損ねてしまうという問題がある。

発明の開示

したがって本発明は、美観の低下を抑えるとともに、糸のほつれを防ぐことができる編レースおよび編レースに用いられるレース編地を提供することを目的とする。

本発明は、鎖編糸によって、複数のループ状部分が形成される鎖編組織を有するレース編地であって、

鎖編組織に、鎖編糸よりも低い溶融温度を有する熱接着糸が編込まれる部分を有して、糸が疎な下地部と、

鎖編組織に、前記熱接着糸と、模様を形成するための挿入糸とが編込まれる部分を有して、糸が密な柄部とを含むことを特徴とするレース編地である。

また本発明は、前記熱接着糸は、複数のループ状部分が連なって形成されるゥェールに沿って延びて、鎖編組織に編込まれることを特徴とする。

また本発明は、前記熱接着糸は、表面部分に熱溶融性を有する裸糸であることを特徴とする。

また本発明は、鎖編組織の全領域にわたって、熱接着糸が編込まれることを特徴とする。

また本発明は、前記鎖編部は、第 1ループ状部分と第 2ループ状部分とが交互に連なって予め定めるコース方向に複数段並び、注目する第 2ループ状部分が、その第 2ループ状部分のコース方向前段の第 1ループ状部分を挿通してコース方向後段に向力つて延び、かつ前記第 2ループ状部分のコース方向同段の第 1ループ状部分を挿通して、コース方向後段の第 1ループ状部分に連なることによって連鎖状に形成されてコース方向に延び、

熱接着糸および挿入糸がともに編込まれる部分では、第 1ループ状部分と第 2ループ状部分との間を挿入糸が挿通し、挿入糸と第 1ループ部分との間を熱接着糸が挿通することを特徴とする。

また本発明は、鎖編組織には、鎖編組織に熱接着糸と伸縮性を有する伸縮糸とが編込まれる部分をそれぞれ有することを特徴とする。

また本発明は、前記レース編地によって製造される編レースである。

図面の簡単な説明

本発明の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。

図 1は、本発明の第 1実施形態であるレース編地 20の一部を模式的に示す編成組織図である。

図 2は、鎖編糸 21および熱接着糸 23以外の糸を省略してレース編地 20を模式的に示す編成組織図である。

図 3は、本実施の形態の編レース 20Aのほどけ防止を説明するための編成図である。

図 4は、比較例の編レース 10Aを示す編成図である。

図 5は、本実施の形態の編レース 20Aのほつれを説明するための編成図である。図 6は、比較例の編レース 10Aを示す編成図である。

図 7は、第 1実施形態のレース編地 20を編成するためのバックジャカードラッシェル編機 60の編成部を示す側面図である。

図 8A〜図 8Eは、鎖編部分 26の編み針 72と地箴 66との動きを説明するために模式的に示す断面図である。

図 9A〜図 9Cは、ジャカードバー 62および熱接着糸用箴 61の動きを説明するために模式的に示す断面図である。

図 1 OAおよび図 1 OBは、図 2における S領域を模式的に示す組織図である。

図 11は、編レース製品の製造手順を示すフローチャートである。

図 12は、本発明の第 2実施形態であるレース編地 20Bの一部を模式的に示す編成組織図である。

図 13は、本発明の第 3実施形態であるレース編地 20Cの一部を模式的に示す編成組織図である。

図 14は、鎖編糸 21、熱接着糸 23および伸縮糸 27以外の糸を省略してレース編地 20Cを模式的に示す編成組織図である。

図 15は、本発明の第 4実施形態であるレース編地 20Dの一部を模式的に示す編成組織図である。

図 16は、鎖編糸 21、熱接着糸 23および伸縮糸 27以外の糸を省略してレース編地 20Dを模式的に示す編成組織図である。

図 17は、本発明の第 5実施形態であるレース編地 20Eの一部を模式的に示す編成組織図である。

図 18は、第 3〜5実施形態のレース編地 20C〜20Eを編成するためのバックジャカ一ドラッシェル編機 60Cの編成部を示す側面図である。

図 19は、本発明の第 6実施形態であるレース編地 20Fの一部を模式的に示す編成組織図である。

図 20は、第 6実施形態のレース編地 20Fを編成するためのバックジャカードラッシエル編機 60Fの編成部を示す側面図である。

図 21は、第 3の従来技術のアイラッシュレース 1を示す写真である。

発明を実施するための最良の形態

以下図面を参考にして本発明の好適な実施例を詳細に説明する。

図 1は、本発明の第 1実施形態であるレース編地 20の一部を模式的に示す編成組織図である。図 2は、鎖編糸 21および熱接着糸 23以外の糸を省略してレース編地 2 0を模式的に示す編成組織図である。図 1および図 2に示す編成組織図は、理解を容易にするために模式的に示したものである。実際のレース編地は、第 1ループ状部分 24および第 2ループ状部分 25の曲率が小さぐ各糸 21, 22, 23が極めて近接または接触した状態となる。また本発明において、各糸によって編成された編地をレース編地 20と称し、レース編地が加熱されたものを編レースと称する。

レース編地 20は、複数の透孔が形成され、それらの透孔の形状および配置によつてレース模様が形成される。またレース編地 20は、単位面積あたりに配置される糸の量が密な柄部と、単位面積あたりに配置される糸の量が疎な下地部とが形成され、これらの柄部と下地部の形状および配置によって柄模様が形成される。このような柄模様入りのレース編地は、たとえば女性用肌着などに用いられる。

図 1に示すようにレース編地 20は、鎖編糸 21と、熱接着糸 23と、挿入糸であるジャカード糸 22とを含んで構成される。鎖編糸 21は、経糸または地編編成糸と称される場合もある。またジャカード糸 22は、緯糸と称される場合もある。熱接着糸 23は、レ一ス編地 20として用いられる他の糸よりも低ヽ溶融温度を有する糸であって、熱可塑性を有する。

図 2に示すように、鎖編糸 21は、鎖編みされることによって、第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25とが形成される。第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25とは、交互に連なってコース方向 Cに複数段並んで形成される。ここで、第 1ループ状部分 24は、ニードルループと称され、第 2ループ状部分 25は、シンカーループと称される場合がある。第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25とが交互に連なってコース方向 Cに延びることで、ゥエール 26が形成される。ゥエール 26は、ゥエール方向 Wに並んで複数形成され、それらが互いに連結されることで、鎖編組織、言い換えるとチェーンステッチ組織を形成する。また鎖編糸 21が適宜横振りして、ゥエール方向 Wに隣接するゥエール 26を連結することで、ほつれ防止機能を有する鎖編組織を形成する。鎖糸 21が横振りする部分をラン止め部分 42と称する。

各第 1ループ状部分 24は、大略的に U字状に形成されて、予め定めるコース方向 Cおよびコース方向 Cに直交するゥエール方向 Wに大略的に並んで配置される。また各第 1ループ状部分 24は、コース方向一方となるコース方向前段 C1に開く。第 1 ループ状部分 24がゥエール方向 Wに一列に並んでコースを形成し、第 1ループ状部分 24がコース方向 Cに一列に並んでゥエールを形成する。

第 2ループ状部分 25は、コース方向 Cに並ぶ第 1ループ状部分 24を連結する。たとえば 1つの第 2ループ状部分 25aに注目する。注目する第 2ループ状部分 25aは、その一端部が、注目する第 2ループ状部分 25aと同一段の第 1ループ状部分 24aの端部に連なる。注目する第 2ループ状部分 25aは、一端部から他端部に向かうにつれて、注目する第 2ループ状部分 25aのコース方向前段 C1の第 1ループ状部分 24b を一方側から他方側に挿通してコース方向後段 C2に延びて、注目する第 2ループ状部分 25aと同一段の第 1ループ状部分 24aを他方側力も一方側に挿通してコース方向後段 C2に延びて、注目する第 2ループ状部分 25aのコース方向後段 C2の第 1 ループ状部分 24cの端部に連なる。このようにして各ループ状部分 24, 25が連鎖状に連結されて、コース方向 Cに延びるゥエール 26が形成される。ジャカード糸 22および熱接着糸 23などの各挿入糸 22, 23は、第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25との間に挟まれることによって、ゥエール 26に編込まれる。

本発明において、コース方向 Cは、編地のたて方向であり、レース編み立て方向を意味する。またゥエール方向 Wは、編地の横方向であり、レース編立て方向に対して、交差する方向を意味する。第 1ループ状部分 24は、コース方向 Cおよびゥエール方向 Wに複数並んで配置される。またコース方向 Cおよびゥエール方向 Wに並ぶ複数の第 1ループ状部分 24は、予め定める仮想平面に大略的に接して並ぶ。この場合、ジャカード糸 22および熱接着糸 23などの鎖編組織に編込まれる各編込糸は、その仮想平面に対して一方に配置される。

本発明では、前記第 1ループ状部分 24に沿って延びる仮想平面に対して各編込糸 22, 23が配置される方向を表方向 Z1と称し、各挿入糸 22, 23に対して前記仮想平面が配置される方向を裏方向 Z2と称する。図 1および図 2では、紙面に垂直な厚み方向 Zのうち紙面力手前に遠ざ力る方向を表方向 Z1とし、紙面に垂直な方向のうち紙面から奥に遠ざ力る方向を裏方向 Z2とする。

レース編地 20の表方向 Z1の面は、ジャカード糸 22および熱接着糸 23などの編込糸によって、第 1ループ状部分 24が隠れる。したがってレース編地 20の表方向 Z1の面は、裏方向 Z1の面に比べて、レース編地 20に形成される柄模様およびレース模様が明確となる。

たとえば注目する第 2ループ状部分 25aは、その第 2ループ状部分 25aのコース方向前段 C1の第 1ループ状部分 24bを表方向 Z1に挿通して、その第 2ループ状部分 25aのコース方向同段の第 1ループ状部分 24aを裏方向 Z2に揷通して、コース方向後段 C2の第 1ループ状部分 24cに連なる。ジャカード糸 22は、鎖編組織にレース模様を形成するための糸である。ジャカード糸 22は、ゥエール方向 Wに隣接するゥエール 26にそれぞれ編込まれることで、ゥェール方向 Wに隣接する 2つのゥエール 26を連結する。図 1に示すように、ジャカード糸 22は、ゥエール方向 Wに隣接する一方のゥエール 26から他方のゥエール 26にわたって延びる横振り部分と、ゥエール 26に編込まれるジャカード糸編込部分とを有する。

コース方向 Cに並ぶ 2つの横振り部分と、横振り部分が連結するゥエール 26とによつて囲まれる空間には、編地の厚み方向に挿通する透孔が形成される。ジャカード糸 22の横振り部分が選択的に配置されることで、透孔の形状および配置が調整される。これによつてレース編地 20には、透孔の配置および形状によって表わされるレース模様を形成することができる。ここで横振り部分とゥエール 26とによって囲まれる透孔は、後述する柄糸によって埋められて、柄模様を形成する場合もある。

ジャカード糸 22は、第 1ループ状部分 24よりも表方向 Z1の領域を延びる。ジャカード糸 22は、予め設定される第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25との間を揷通して、ゥエール方向 Wに延びる。また本実施形態では、鎖編組織には、複数のジャカード糸 22が編込まれ、各ジャカード糸 22は、ゥエール方向 Wに並んで編込まれる。各ジャカード糸 22が編込まれる位置は、レース編地 20に形成されるレース模様によつて適宜選択される。

熱接着糸 23は、鎖編糸 21およびジャカード糸 22よりも低い融点温度を有する糸によって実現される。本実施の形態では、レース編地編成後に行われる加熱工程での加熱状態で、部分的に溶融する糸が用いられる。熱接着糸 23は、レース編地 20を構成する鎖編糸 21およびジャカード糸 22のほつれを防止するために用いられる。本実施形態では、熱接着糸 23は、非被覆糸、すなわち被覆糸によって被覆されていない裸糸、いわゆるベアヤーンによって実現され、その溶融温度が約 140°C以上 190 °C以下のポリウレタン弾性糸によって実現される。熱接着糸 23は、自然状態に対して伸張した状態で、鎖編組織に編込まれる。

熱接着糸は、ゥエール 26に沿って延び、ゥエール 26を構成する全てのループ状部分に編込まれる。したがって鎖編組織のうちで、単位面積あたりの糸の量が疎な下地部分と、単位面積あたりの糸の量が、下地部分よりも密な柄部分との両方に、熱接着糸 23が編込まれる。また本実施の形態では、レース編地 20は、複数の熱接着糸 2 3を有し、各熱接着糸 23は、ゥエール 26毎にそれぞれ編込まれる。このように鎖編組織の全領域にわたって、熱接着糸 23が編込まれる。

熱接着糸 23は、第 1ループ状部分 24よりも表方向 Z1の領域を延び、第 2ループ状部分 25よりも裏方向 Z2の領域を延びる。熱接着糸 23は、対応するゥエール 26に沿つてコース方向 Cに進むにつれてジグザクに進む。たとえば熱接着糸 23は、注目する第 1ループ状部分 24aと第 2ループ状部分 25aとの間を、ゥエール方向一方 W1からゥエール他方 W2に通過すると、注目する第 1ループ状部分 24cのコース方向後段 C2の第 1ループ状部分 24cと第 2ループ状部分 25cとの間を、ゥエール方向他方 W 2からゥエール方向一方 W1に通過する。

編成直後には、熱接着糸 23は、第 1ループ状部分 24よりも表方向 Z1の領域を延び、ジャカード糸 22よりもレース編地 20の裏方向 Z2の領域を延びる。したがって熱接着糸 23とジャカード糸 22とが同じ第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25との間を揷通する領域では、熱接着糸 23は、第 1ループ状部分 24とジャカード糸 22との間を揷通する。またジャカード糸 22は、熱接着糸 23と第 2ループ状部分 25との間を揷通する。この場合、鎖編糸 21がコース方向 Cに張られることによって、第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25との曲率半径力 S小さくなり、熱接着糸 23は、ジャカード糸 22と第 1ループ状部分 24との間に配置されて、ジャカード糸 22および第 1ループ状部分 24に接触する。

本実施の形態では、熱接着糸 23とジャカード糸 22とが同じ第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25との間を揷通する領域では、熱接着糸 23とジャカード糸 22とは、互いに交差して、第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25とを通過する。具体的には、熱接着糸 23は、注目する第 1ループ状部分 24aがコース方向前段 C1の第 2ループ状部分 25bと連なる側から、注目する第 1ループ状部分 24aとコース方向同段の第 2ループ状部分 25aを通過する。

これに対して、ジャカード糸 22は、注目する第 1ループ状部分 24aがコース方向前段 C1の第 2ループ状部分 25bと連なる側と反対側から、注目する第 1ループ状部分 24aとコース方向同段の第 2ループ状部分 25aを通過する。この場合、レース編地 20 がコース方向 Cに張られることによって、第 2ループ状部分 25をともに通過する部分 3 1で、熱接着糸 23とジャカード糸 22とが近接する。

また編成直後では、鎖編組織に編込まれるジャカード糸 22および熱接着糸 23は、鎖編組織に完全に拘束されてはいないので、ジャカード糸 22と熱接着糸 23とが接触する複数部分のうちのいくらかは、熱接着糸 23がジャカード糸 22よりも表方向 Z1 に配置されない部分が存在する場合がある。この場合であっても、ジャカード糸 22と熱接着糸 23とが接触する複数部分のうちのほとんどは、熱接着糸 23がジャカード糸 22よりも裏方向 Z2に配置されることになる。

また鎖編糸 21およびジャカード糸 22の繊度は、 50デニール以下、特に 40デニール以下のマルチフィラメントが用いられる。鎖編糸 21の繊度は、編レース製品として用いられるときに切断しない太さで、可及的に細いものが用いられる。たとえばナイ口ン（ポリアミド系合成繊維）、レーヨン、ポリエステルおよびポリプロピレン等の各種の繊維によって実現可能である。また、このような本実施形態で用いた各種糸は例示に過ぎず、他の種類の糸を用いてもよい。

また熱接着糸 23の繊度は、 10デニール以上、 300デニール以下のポリウレタン弹性糸が用いられる。またポリウレタン弾性糸のほか、溶融温度が比較的低くて、熱可塑性を有する材料であればよぐポリアミド系合成繊維などによって実現されてもょヽ。また非伸縮性の糸を用いて、熱接着糸 23としてもよい。

本実施形態のレース編地 20は、編成後に熱接着糸 23の溶融温度以上であって、残余の糸 21, 22の融点温度未満で加熱される。これによつて熱接着糸 23の一部が部分的に溶解する。溶解部分の一部は、隣接する鎖編糸 21およびジャカード糸 22 に付着する。この状態で固化することで、熱接着糸 23に接する鎖編糸 21およびジャカード糸 22が、熱接着糸 23から遊離することを防ぐことができる。また熱接着糸 23に接する各糸 21, 22を、熱接着糸 23によって互いに接着させることができる。これによつて各糸の連結状態が維持され、糸のほつれを防ぐことができる。

このように熱接着糸 23が他の糸と付着した付着部分で鎖編組織の結束が強化される。具体的には、第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25とが熱接着糸 23を介して接着される。これによつて鎖編糸 21の一部が分断されたとしても、第 1ループ状部分 24力も第 2ループ状部分 25が遊離することを防ぐことができる。これによつて鎖編糸 21のほどけが第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25との接着部分で阻止され、接着部分を超えて鎖編糸 21がほどけることを防ぐことができる。

図 3は、本実施の形態の編レース 20Aのほどけ防止を説明するための編成図であり、図 4は、比較例の編レース 10Aを示す編成図である。図 3に示す本実施の形態の編レース 20Aは、上述した熱接着糸 23が編込まれたレース編地 20を加熱したものである。また図 4に示す比較例の編レース 10Aは、熱接着糸 23が編込まれていないレース編地 20Aを加熱したものである。

図 4に示すように比較例のレース編地 10では、コース方向 Cに並ぶ 2つの第 2ループ状部分 25が分断部分 40, 41で断ち切れた場合、コース方向後段 C2の分断部分 40が表方向 Z1に引っ張られることで、鎖編糸 21が係止される部分が断たれて、分断部分 40よりもコース方向後段 C2に沿って鎖編組織がほどけてしまう。比較例の編レース 10Aでは、鎖編組織のほどけは、コース方向後段 C2に沿って進行し、ラン止め部分 42に達して、ラン止め部分 42でほどけが抑制される。したがってほどけの進行を短くするためには、ラン止め部分 42を増やす必要がある。ラン止め部分 42が増えると、ゥエール方向 Wに延びる糸が増えてしまい、編レース 10Aの透け感が損なわれる。またこの場合、ゥエール 26がコース方向 Cに分断されてしまう。

これに対して図 3に示すように、本実施の形態の編レース 20Aでは、熱接着糸 23 がコース方向 Cに延びるので、コース毎に、コース方向同段の第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25とが接着される。

本実施の形態のレース編地 20では、コース方向 Cに並ぶ 2つの第 2ループ状部分 25が分断部分 40, 41で断ち切れた場合、コース方向後段 C2の分断部分 40が表方向 Z1に引っ張られたとしても、コース方向後段 C2の分断部分 40よりもコース方向後段 C2で第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25とが接着された接着部分 44が存在するので、この接着部分 44で鎖編組織のほどけが阻止され、さらなるほどけの進行が防がれる。したがって比較例の編レース 10Aに比べて鎖編組織がほどけることを防ぐことができる。また接着部分 43, 44でほどけが抑制されるので、ラン止め部分 42を減らすまたは無くすことができ、比較例に比べて編レース 20Aの透け感を向上することができる。また本実施形態では、各コース方向 C毎に、コース方向同段の第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25とが接着されるので、第 2ループ状部分 25の一部が分断されたとしても、ゥエール 26がコース方向 Cに分断されることを防ぐことができる。このように本実施の形態では、ゥエール 26に沿って延びて熱接着糸 2 3が編成されるので、鎖編糸且織について、コース方向 Cの結束を高くすることができ、耐久性を向上することができる。

図 5は、本実施の形態の編レース 20Aのほつれを説明するための編成図であり、図 6は、比較例の編レース 10Aを示す編成図である。図 5に示す本実施の形態の編レース 20Aは、上述した熱接着糸 23が編込まれたレース編地 20を加熱したものである。また図 6に示す比較例の編レース 10Aは、熱接着糸 23が編込まれていないレース編地 20Aを加熱したものである。図 5および図 6には、複数のゥエール 26にわたつてジャカード糸 22が編込まれる。

図 6に示すように比較例の編レース 10Aでは、ジャカード糸 22が、分断部分 45で断ち切れた場合、ジャカード糸 22のうちで分断部分 45よりも、 1または複数のゥエール 26を超えたゥエール方向一方 W1の部分 46が、ゥエール方向一方 W1に引っ張られることで、分断部分 45がゥエール 26を抜けてジャカード糸 22が編レース 10Aから抜けてしまう。たとえばジャカード糸 22は、鎖編糸 21との摩擦力によって移動することが阻止される程度であるので、大きな力が与えられることで、ジャカード糸 22が編込部分力もずれたり、抜け落ちたりしてしまうことがある。

これに対して図 5に示すように、本実施の形態の編レース 20Aでは、熱接着糸 23 が各ゥエール 26に編込まれるので、ゥエール毎にジャカード糸 22力第 1ループ状部分 24および第 2ループ状部分 25に接着される。

本実施の形態の編レース 20Aでは、ジャカード糸 22が、分断部分 45で断ち切れた場合、ジャカード糸 22のうちで分断部分 45よりも、 1または複数のゥエール 26を超えたゥエール方向一方 W1の部分 46が、ゥエール方向一方 W1に引つ張られたとしても、ジャカード糸 22とゥエール 26との接着部分 47, 48とが接着されることで、分断部分 45がゥエール 26を抜けることが防がれ、ジャカード糸 22のずれが進行することが防がれる。このように本実施の形態では、ジャカード糸 22は、熱接着糸 23による接着力によって鎖編糸且織に固定されるので、ジャカード糸 22のずれおよび抜け落ちを防ぐことができる。

またゥエール方向 Wに隣接するゥエール 26は、ジャカード糸 22を介して、互いに接着されることで、隣接するゥエール 26の間のゥエール方向 W間隔力広がったり狭まったりすることが防がれ、編レース 20Aのレース模様が乱れることを防ぐことができる。

このように本実施の形態によれば、編レース 20Aを構成する各糸のほつれを防ぐことができる。たとえば編レース 20Aの縫製または裁断などの製造状態に起因する糸のほつれ、着用または洗濯などの使用状態に起因する糸のほつれを防ぐことができ、品質を向上することができる。

また熱接着糸 23を用いて鎖編組織を形成する場合、レース編地の加熱後にも鎖編組織を残すために、熱接着糸 23を太くしなければならず、下地部を構成する単位体積あたりの糸の量が増えてしまい、下地部と柄部との糸の疎密差が小さくなつてしまう。またレース編地 20自体が硬くなつて、変形しずらくなつてしまう。

これに対して本実施形態では、熱接着糸 23とは異なる鎖編糸 21を用いて鎖編組織を形成することで、耐熱性を有する糸を鎖編糸 21として用いることで、レース編地 2 0の全体の形態を安定させることができる。また鎖編糸 21および熱接着糸 23を細くすることができる。これによつて下地部を構成する糸を減らして、下地部と柄部との糸の疎密差を大きくすることができる。これによつてレース編地 20およびレース編地 20 を加熱した編レース 20Aについて、透け感を向上することができ、柄模様をはっきりとさせることができる。また熱接着糸 23の溶融量を少なくすることができ、溶融部分がレ一ス編地 20の全体に与える影響を小さくして、柄模様を損ねることを防ぐことができる。さらに鎖編糸 21を細くすることができるので、編レース 20Aを軟らかぐ言い換えると変形しやすくすることができる。これによつてたとえば編レース 20Aを肌着などの布地として好適に用いることができる。

また本実施の形態によれば、熱接着糸 23は、表面部分が熱溶融性を有する裸糸である。したがってレース編地 20が加熱されると、熱接着糸 23のうちで鎖編糸 21に接触する部分が溶けて、鎖編糸 21に付着する。また熱接着糸 23のうちでジャカード糸 22に接触する部分が溶けて、ジャカード糸 22に付着する。このように本実施の形態によれば、熱接着糸 23のうちで、他の糸と直接接触する露出部分が、他の糸と付着する部分となるので、熱接着糸 23が他の糸に付着する付着量を増やすことができ、接着力を向上することができる。したがって、各糸のほつれをさらに確実に防ぐことができる。

また非被覆糸、すなわち被覆糸によって被覆されていない裸糸で熱接着糸 23を実現することで、下地部の糸の量をさらに減らすことができ、下地部と柄部との糸の疎密差を大きくして、レース編地 20の透け感を向上することができ、柄模様をはっきりとさせることができる。

また本実施の形態に従えば、鎖編組織の全領域にわたって熱接着糸 23が編込まれるので、編レース 20Aの全体における糸のほつれを防ぐことができる。たとえば編レース 20Aが任意の位置で縫製されたり裁断されたりしたとしても、縫製部分および裁断部分力も糸がほつれることを防ぐことができる。

また編レース 20全体にわたる糸のほつれを防ぐことができるので、図 21に示したァィラッシュレースを形成するためのレース編地として本実施の形態の編レースを用いても、まつげ状部分のほつれを防ぐことができる。また編レース 20Aを任意の位置でカットするモチーフカットについても、そのカット部分のほつれを防止することができ、幅広レースなどにも応用が可能となる。またレース編地 20全体にわたるほつれを防ぐことができるので、耐久性が要求される上着の一部にもレース編地を用いることができる。このように本実施の形態によれば、編レース全体にわたって糸のほつれを防ぐことができるので、使用用途を広げることができる。

また本実施の形態に従えば、熱接着糸 23およびジャカード糸 22は、第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25との間を揷通することで、鎖編組織に編込まれる。レ一ス編地 20は、鎖編組織に編込まれるジャカード糸 22に対して、第 1ループ状部分 24が配置される側の面が裏の面となり、その反対側の面が表の面となる。本実施の形態では、熱接着糸 23とジャカード糸 22とが共通して編込まれる部分には、ジャカード糸 22は、熱接着糸 23よりも表方向 Z1に配置される。したがって編レース 20Aを表の面から見ると、ジャカード糸 22によって、熱接着糸 23および第 1ループ状部分 2 4が隠れる。

このようにジャカード糸 22によって熱接着糸 23を隠すことができ、熱接着糸 23を表の面力も見え難くすることができる。これによつて編レース 20Aに形成される模様を明確にすることができる。また熱接着糸 23が溶けたとしても、表の面から見た柄模様に与える影響を少なくすることができる。また熱接着糸 23が、第 1ループ状部分 24とジャカード糸 25との間を通過することによって、第 1ループ状部分 24とジャカード糸 25 とを接着させることができ、ジャカード糸 25が鎖編組織力も離脱することを防ぐことができる。

また本実施の形態では、熱接着糸 23とジャカード糸 22とが同じ第 1ループ状部分 24と第 2ループ状部分 25との間を揷通する領域では、熱接着糸 23とジャカード糸 2 2とは、互いに異なる方向にループ状部分 25を通過する。この場合、レース編地 20 をゥエール方向 Wに引っ張ることで、熱接着糸 23とジャカード糸 22とで囲まれた領域が互いにゥエール方向 Wに近接して、熱接着糸 23、ジャカード糸 22、第 1ループ状部分 24および第 2ループ状部分 25が互いに接近する接近部分 34が生じる。このようにゥエール方向 Wに引っ張った状態でレース編地 20を加熱することで、接近部分 34で熱接着糸 23の一部を溶かすことができ、熱接着糸 23、ジャカード糸 22、第 1 ループ状部分 24および第 2ループ状部分 25を接着する接着力を高めることができるまた本実施の形態では、熱接着糸 23の繊度は、 10デニール以上 300デニール以下に設定され、鎖編糸は、 20デニール以上 70デニール以下に設定される。熱接着糸が 10デニール未満であると、編レースの熱接着糸のすべてが溶けるおそれがあり、また熱接着糸の一部が溶けるようにしても、他の糸と熱接着糸との接着量が不足するおそれがある。この場合、糸のほつれが生じてしまう場合がある。また熱接着糸が 3 00デニールを超えると、熱接着糸によって下地部と柄部との糸の疎密差が少なくなることに起因して、編レースのすけ感が低下し、美感が低下してしまう。また編レースが硬くなつてしまう。これに対して、本発明では、熱接着糸を 10デニール以上でかつ 300デニール以下とすることで、糸のほつれを解消するとともに、美感の低下を抑えることができる。また熱接着糸は、 70デニール以下であることによって、美感の低下をさらに抑えることができる。

図 7は、第 1実施形態のレース編地 20を編成するためのバックジャカードラッシェル編機 60の編成部を示す側面図である。レース編地 20は、たとえばバックジャカードラッシェル編機によって編成することができる。ノックジャカードラッシェル編機 60 (以下単に編機 60と称する）は、鎖編糸 21、ジャカード糸 22、熱接着糸 23を編み針 72近傍に設けられる編成位置 73に向けて導糸する導糸手段を有する。本実施形態では、熱接着糸 23を編成位置 73に向けて導糸する導糸手段が、ジャカード糸 22を編成位置 73に向けて導糸する導糸手段よりも、編機後方に配置される。ここで編機後方とは、編み針 72の背面力もフック部へ向力方向である。

具体的には、編機が有する導糸手段は、熱接着糸用箴 61、ジャカードバー 62, 63 、複数の柄箴 64、および地箴 65によって実現される。鎖編糸 21は地箴 65に通糸され、ジャカード糸 22はジャカードバー 62, 63に通糸され、熱接着糸 23は熱接着糸用箴 61に通糸される。また柄模様を形成するための糸である柄糸がゥエール 26に編込まれる場合には、それらの柄糸は、複数の柄箴 64に通糸される。以下、熱接着糸 23およびジャカード糸 22のほかに、柄糸が編込まれる場合について説明する。このような各導糸手段 61〜65は、編み針 72が鎖編糸 21を捕捉する編成位置 73 に向かって、放射状に並び、編み針 72が鎖編糸 21を捕捉する方向となる編機後方に向かうにつれて、地箴 65、複数の柄箴 64、ジャカードバー 62, 63、熱接着糸用箴 61の順に配置される。したがって各糸は、鎖編糸 21、複数の柄糸、ジャカード糸 22 および熱接着糸 23の順で、予め定める編成位置から編機後方に並ぶ。

編み針 72は、編機前後方向に直交する方向に複数並んで形成され、各編み針 72 を保持する保持手段となる-一ドルバー 69に固定される。ニードルバー 69は、各編み針 72を昇降運動する。また-一ドルバー 69が動作して、各導糸手段 61〜65に導糸される各糸が予め定める編成位置に導かれる。

それぞれの導糸手段 61〜65は、対応する各糸を、編み針 72の昇降運動に同期して、編み針 72に対して編機後方の空間で対応する各糸を、編み針 72が並ぶ方向に移動させるオーバーラップ (編目編成運動）と、編み針 72に対して編機前方の空間で対応する各糸を、編み針 72が並ぶ方向に移動させるアンダーラップ (挿入運動）とを行う。またこれらのラップ運動にカ卩えて編み針 72が並ぶ方向に直交する方向に移動するいわゆるスイング (揺動運動）がなされる。具体的には、 2つのスイング動作がある。

第 1のスイング動作であるスイングイン (バックスイング)動作では、編み針 72の側方を通過して、編み針 72に対して編機後方の空間から編機前方の空間に対応する各糸を移動させる。また第 2スイング動作であるスイングアウト（フロントスイング)動作では、編み針 72の側方を通過して、編み針 72に対して編機前方の空間から編機後方の空間に対応する各糸を移動させる。各導糸手段 61〜65に取付けられたガイドが動作することによって、対応する各糸が編み針 72のまわりを予め定められる経路に従って通過し、対応する各糸を含む編地が形成される。

また編成部 73は、ステッチコームバー 71、トリックプレートバー 68およびトングバー 70を備える。トングバー 70は、先端部に各編み針に対応した複数のトングが形成される。編機 60は、導糸手段 61〜65および-一ドルバー 69の動作によって、上述したレース編地 20を編成する。そしてステッチコームバー 71の編成補助作用によって編成されたレース編地 20を補助編成し、トリックプレートバー 68を通過させて、編成部の近傍に設けられる巻き取り部によって、レース編地 20を巻き取る。

図 8A〜図 8Eは、鎖編部分 26の編み針 72と地箴 66との動きを説明するために模式的に示す断面図であり、図 8A〜図 8Eの順に鎖編糸 21の鎖編部分 26の編成作業が進む。編み針 72は、先端部に鎖編糸 21を係止するフック部 50が形成され、基端部に編み針幹 51が形成される。またトングバー 70の先端部には、フック部 50によつて形成される開口を開閉するためのトング 52が形成される。編み針 72およびトング 52は、地箴 65に対して個別に昇降可能に形成される。図 8A〜図 8Eを用いて、まずゥエール 26の編成についてのみ説明し、ゥエール 26に編込まれるジャカード糸 22 および熱接着糸 23については後述する。

図 8Aに示すように、地箴 65が編み針 72の前方に配置された状態で、フック部 50 力鎖編糸 21によって形成される新たな第 1ループ状部分 24jを引っ掛け、トング 52 がフック部 50の開口を塞ぐ。次に図 8Bに示すように、編み針 72がトング 52に対して地箴 65に向力つて上昇する。これによつてフック部 50の開口が開放されて、フック部 50が引っ掛けた鎖編糸 21の第 1ループ状部分 24jがフック部 50から抜け出て、編み針幹 51に移動する。

次に図 8Cに示すように、地箴 65が編み針 72に対してノックスイングする。次に、地箴 65がオーバーラップし、さらにフロントスイングする。これによつて地箴 65に導糸される鎖編糸 21が、編み針 72を巻き込むように移動して、新しい第 1ループ状部分 24 kを形成する。この新しい第 1ループ状部分 24kは、フック部 50によって引っ掛けられる。次に図 8Dに示すように、トング 52がフック部 50に向かって上昇し、フック部 50の開口を塞ぐ。このとき編み針 72には、編み針幹 51に形成される古い第 1ループ状部分 24jとフック部 50が係止する新しい第 1ループ状部分 24kとが形成される。

次に図 8Eに示すように、編み針 72とトング 52とがともに降下することによって、古い第 1ループ状部分 24jが編み針 72を抜出て、トリックプレート 53側に移動する。そして地箴 65が編み針 72の前方に配置された状態で、フック部 50が鎖編糸 21によって形成される新たな第 1ループ状部分 24kを引っ掛け、図 8Aとほぼ同じ状態となる。そして図 8A〜図 8Eを用いて示した動作サイクルを繰返すことによって、第 1ループ状部分 24が順次形成されるとともに、各第 1ループ状部分 24j, 24kを連結する第 2ループ状部分 2¾が順次形成されるゥエール 26が形成される。本実施例では、地箴 65 が適宜アンダーラップすることによって、複数のゥエール 26がゥエール方向 Wに連結される。このようなゥエール 26の編成作業を行いながら、ジャカード糸 22および熱接着糸 23などの挿入糸をゥエール 26に編込むことによって、本実施の形態のレース編地 20を編成することができる。

図 9A〜図 9Cは、ジャカードバー 62および熱接着糸用箴 61の動きを説明するために模式的に示す断面図であり、図 9A〜図 9Cの順に動作が進む。図 9Aは図 8Cに、図 9Bは図 8Dに、図 9Cは図 8Eにそれぞれ対応し、それぞれジャカードバー 62および熱接着糸用箴 61を加えて示す図である。上述したように編機 60は、鎖編糸を導糸する地箴 65よりも、ジャカードバー 62, 63のほうが編機後方に配置される。またジャカードバー 62, 63よりも、熱接着糸用箴となる熱接着糸用箴 61のほうが編機後方に配置される。図 9Aおよび図 9Cに示すように、地箴 66が編み針 72に対して編機後方に配置される状態では、ジャカードバー 62および熱接着糸用箴 61もまた編み針 72に対して編機後方に配置される。また図 9Bに示すように、地箴 66が編み針 72に対して編機前方に配置される状態では、ジャカードバー 62および熱接着糸用箴 61もまた編み針 72の前方に配置される。

またジャカードバー 62および熱接着糸用箴 61は、図 9Bに示すように、地箴 66がバックスイングした状態で、アンダーラッピングすることで、導糸される熱接着糸 23およびジャカード糸 22が鎖編糸 21を跨ぐ。この状態で、鎖編糸 21によって新たにループを形成すると、そのループに熱接着糸 23およびジャカード糸 22が編込まれることになる。このように熱接着糸用箴 61およびジャカードバー 62は、地箴 66のスイング動作に同期して動作する。

ジャカードバー 62が熱接着糸用箴 61よりも編機前方に配置される。これによつて、地箴 66によって形成される鎖編部分 26に熱接着糸 23およびジャカード糸 22が編込まれる場合、編成位置に導糸される熱接着糸 23のほうが、編成位置に導糸されるジャカード糸 22よりも編機後方に配置され、ジャカード糸 22のほうが熱接着糸 23よりもレース編地 20の表面側に位置することになる。

図 10Aおよび図 10Bは、図 2における S領域を模式的に示す組織図であり、図 10 Aに鎖編糸 21の組織図を示し、図 10Bに熱接着糸 23の組織図を示す。

たとえば任意の位置にある編み針 72を第 1編み針 72aとし、第 1編み針 72aに対してゥエール方向一方 W1に隣接する編み針 72を第 2編み針 72bとし、第 2編み針 72 bに対してゥエール方向一方 W1に隣接する編み針 72を第 3編み針 72cとする。第 1 編み針 72aと第 1編み針 72aに対してゥエール方向他方 W2に配置される編み針 72 との間の間隔を第 1編み針間 L 1とし、第 1編み針 72aと第 2編み針 72bとの間の間隔を第 2編み針間 L2とし、第 2編み針 72bと第 3編み針 72cとの間の間隔を第 3編み針間 L3とし、第 3編み針 72cと第 3編み針 72cに対してゥエール方向一方 W1に配置される編み針 72との間の間隔を第 4編み針間 L4とする。

各鎖編糸 21を導糸する地箴 65は、各鎖編糸 21について同様の編成動作を行う。第 1コース C1において、第 2編み針 72bに鎖編糸 21を引っ掛ける鎖編糸ガイドに注目して説明し、残余の鎖編糸ガイドについての説明を省略する。

図 10Aに示すように、第 1コース C1では、注目する鎖編糸ガイドは、第 3編み針間 L3をバックスイングし、オーバーラップして第 2編み針間 L2を通ってフロントスイングする。第 2コース C2では、注目する鎖編糸ガイドは、第 2編み針間 L2をバックスイングし、オーバーラップして第 2編み針間 L2を通ってフロントスイングする。

第 3コース C3では、注目する鎖編糸ガイドは、第 4編み針間 L4にアンダーラップし、第 4編み針間 L4をバックスイングし、オーバーラップして第 3編み針間 L3を通ってフロントスイングする。第 4コース C4では、注目する鎖編糸ガイドは、第 3編み針間 L3 をバックスイングし、オーバーラップして第 4編み針間 L4を通ってフロントスイングする。第 5コース C5では、注目する鎖編糸ガイドは、第 4編み針間 L4をバックスイングし、オーバーラップして第 3編み針間 L3を通ってフロントスイングする。

第 6コース C6では、第 4コース C4と同様の動作を行い、第 7コース C7では、第 5コース C5と同様の動作を行う。第 8コース C8では、注目する鎖編糸ガイドは、第 4編み針間 L4にアンダーラップし、第 4編み針間 L4をバックスイングし、オーバーラップして第 3編み針間 L3を通ってフロントスイングする。第 9コース C9では、注目する鎖編糸ガイドは、第 2編み針間 L2にアンダーラップし、第 2編み針間 L2をバックスイングし、オーバーラップして第 3編み針間 L3を通ってフロントスイングする。

このように地箴 65は、鎖編糸 21ごとに設けられるガイドを用いて、各コースで各編み針 72に、所定の鎖編糸 21を引っ掛ける動作を繰返し行う。これによつて、連鎖状に延びる鎖編部分 26を形成することができる。また本実施の形態では、編機 60は、各コースで編み針 72に鎖編糸 21を引っ掛ける過程で、適宜アンダーラップさせる。これによつて第 2ループ状部分 25をゥエール方向一方 W1およびゥエール方向他方 W2に横振りさせることができ、ゥエール方向 Wに隣接するゥエール 26を連結して、ほつれ防止機能を有する鎖編組織を形成することができる。

熱接着糸用箴 61によって熱接着糸 23は、地箴 65に同期してスイング動作を行う。各熱接着糸 23を導糸する熱接着糸用箴 61は、過苦熱接着糸 23について同様の編成動作を行う。第 1コース C1において、第 2編み針間 L3に熱接着糸 23を位置させる熱接着糸ガイドについて注目して説明し、残余の熱接着糸ガイドについての説明を省略する。

図 10Bに示すように、第 1コース C1では、注目する熱接着糸ガイドは、第 2編み針間 L2をアンダーラップして、第 3編み針間 L3に達する。また第 2コース C2では、第 3 編み針間 L3をアンダーラップして、第 2編み針間 L2に達する。注目する熱接着糸ガイドは、第 2コース C2以降、第 1コース C1および第 2コースの動作を順に繰返す。このように熱接着糸 23は、熱接着糸用箴 61によって、地箴 65のスイング動作と同期して、隣接する 2つの編み針間の間をアンダーラップして往復する。

また熱接着糸以外の挿入糸、たとえばジャカード糸 22についても、ジャカードバー 62が地箴 65のスイング動作と同期して、予め定める位置で予め定める距離と方向とについてアンダーラップを繰返す。同様に柄糸についても、柄箴 64が地箴 65のスィング動作と同期して、予め定める位置で予め定める距離と方向とについてアンダーラップを繰返す。

このように熱接着糸用箴 61、ジャカードバー 62, 63、複数の柄箴 64、地箴 65および編み針 72が編成動作を行うことで、 S領域に形成するレース編地部分を形成することができる。編機 60は、編機後方に向かうにつれて、地箴 65、ジャカード糸用箴 62 , 63および熱接着糸用箴 61の順に配置されることによって、ジャカード糸 22を熱接着糸 23よりも、レース編地 20の表側に配置することができ、図 1および図 2に示す本実施の形態のレース編地 20を形成することができる。

図 11は、編レース製品の製造手順を示すフローチャートである。まず、ステップ sO で、編成すべき編レースの模様を決定すると、ステップ siに進む。ステップ siでは、鎖編糸 21、ジャカード糸 22、熱接着糸 23および柄糸を用意し、ステップ sOで決定した模様となるように、編機 60の各導糸手段の動作プログラムを入力する。次に、編機 60を動作させる。これによつて所望の模様を有するレース編地 20を編成することができる。レース編地 20の編成作業が完了するとステップ s2に進む。

ステップ s2では、ステップ siで編成したレース編地 20を染色し、染色が完了すると、ステップ s3に進む。ステップ s3では、レース編地 20を整えるために、レース編地 20 を予め定める温度に加熱する。このとき、レース編地 20は、ゥエール方向 Wに引っ張られた状態で加熱される。これによつてレース編地 20が整うとともに、上述した熱接着糸 23の一部が溶融し、隣接する他の糸に付着する。レース編地 20の加熱を予め定める温度で予め定める時間加熱することによって、編レース 20Aを形成し、ステップ s 4に進む。本実施の形態では、 150〜160°Cに保った状態で、 60秒維持することによって、レース編地 20を整える。編レース 20Aは、レース編地 20Aが加熱されているので、熱接着糸 23の一部が他の糸に固着している。

ステップ s4では、編レース 20Aを裁断するとともに、裁断した編レース 20Aを縫製することによって、編レース製品を製造し、編レース製品を製造するとステップ s5に進み、作業を終了する。

ステップ s5における裁断縫製工程時には、熱接着糸 23の一部が他の糸に固着しているので、鎖編組織の結束が強化されている。したがって裁断または縫製時に、各糸がほつれることが防がれ、製造される編レース製品の歩留まりを向上して、品質を向上することができる。また製造された編レース製品についても鎖編組織の結束が強化されているので、着用または洗濯などの使用に起因するほつれを抑えることができ、編レース製品の耐久性を向上することができる。またステップ s3に示す加熱工程において、レース編地をゥエール方向 Wに引っ張った状態で加熱することによって、ループ状部分 24, 25にジャカード糸 22と熱接着糸 23とが近接することになる。これによって熱接着糸 23によって、ループ状部分 24, 25とジャカード糸 23とを強固に接着することができる。

図 12は、本発明の第 2実施形態であるレース編地 20Bの一部を模式的に示す編成組織図である。第 2実施形態のレース編地 20Bは、第 1実施形態のレース編地 20 に比べて熱接着糸 23が第 2ループ状部分 25を通過する方向が異なり、他の構成については同様である。したがって第 1実施形態のレース編地 20と同様の構成については、同様の参照符号を付して、説明を省略する。

本実施形態では、熱接着糸 23は、ジャカード糸 22と同方向に第 2ループ状部分 2 5を通過し、第 1ループ状部分 24と、ジャカード糸 22との間を揷通する。具体的には、熱接着糸 23およびジャカード糸 22は、注目する第 1ループ状部分 24aがコース方向前段 C1の第 2ループ状部分 25bと連なる側と反対側から、注目する第 1ループ状部分 24aとコース方向同段の第 2ループ状部分 25aを通過する。このように熱接着糸 23がジャカード糸 22と同方向に第 2ループ状部分 25を挿通することで、ジャカード糸 22と熱接着糸 23との接触部分を増やすことができ、熱接着糸 23がジャカード糸 22を接着する接着力を向上することができる。これによつてジャカード糸 22のほつれをさらに確実に防ぐことができる。

また他の実施形態として、熱接着糸 23およびジャカード糸 22は、注目する第 1ループ状部分 24aがコース方向前段 C1の第 2ループ状部分 25bと連なる側から、注目する第 1ループ状部分 24aとコース方向同段の第 2ループ状部分 25aを通過する場合も本発明に含まれる。

また熱接着糸 23は、注目する第 1ループ状部分 24aがコース方向前段 C1の第 2ループ状部分 25bと連なる側から、注目する第 1ループ状部分 24aとコース方向同段の第 2ループ状部分 25aを通過し、ジャカード糸 22は、注目する第 1ループ状部分 24a がコース方向前段 C1の第 2ループ状部分 25bと連なる側と反対側から、注目する第 1ループ状部分 24aとコース方向同段の第 2ループ状部分 25aを通過する場合も本発明に含まれる。

図 13は、本発明の第 3実施形態であるレース編地 20Cの一部を模式的に示す編成組織図である。図 14は、鎖編糸 21、熱接着糸 23および伸縮糸 27以外の糸を省略してレース編地 20Cを模式的に示す編成組織図である。第 3実施形態のレース編地 20Cは、第 1実施形態のレース編地 20に比べて、熱接着糸 23とは別に、伸縮性を有する伸縮糸 27がさらに編込まれ、他の構成については同様である。したがって第 1実施形態のレース編地 20と同様の構成については、同様の参照符号を付して、説明を省略する。

第 3実施形態のレース編地 20Cは、熱接着糸 23とは別に伸縮糸 27が伸張状態で編込まれることで、編成後のレース編地 20Cが収縮する。これによつてレース編地 20 Cに伸縮性を与えることができる。たとえば伸縮糸は、ポリウレタン弾性糸、いわゆるスパンデッタスが用いられる。

伸縮糸 27は、ジャカード糸 22よりも第 1ループ状部分 24側を延びる。また伸縮糸 2 7と熱接着糸 23とは、同じ方向に第 2ループ状部分 25を通過して、鎖編組織に編込まれる。言換えると、熱接着糸 23は、伸縮糸 27と同様に延びて編込まれる。伸縮糸 2 7は、各ゥエール 26に編込まれて、それぞれゥエール 26に沿ってコース方向 Cに進みにつれてジグザグに通過する。

本実施の形態では、伸縮糸 27および熱接着糸 23は、注目する第 1ループ状部分 24aがコース方向前段 C1の第 2ループ状部分 25bと連なる側から、注目する第 1ループ状部分 24aとコース方向同段の第 2ループ状部分 25aを通過する。またジャカード糸は、注目する第 1ループ状部分 24aがコース方向前段 C1の第 2ループ状部分 2 5bと連なる側と反対側から、注目する第 1ループ状部分 24aとコース方向同段の第 2 ループ状部分 25aを通過する。したがって伸縮糸 27と熱接着糸 23とジャカード糸 22 とがともに同じループを通過する部分では、伸縮糸 27および熱接着糸 23が、ジャカード糸 22に交差する。

第 3実施形態のように伸縮糸 23がレース編地 20Cに編込まれた場合についても、第 1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち熱接着糸 23が、他の糸を接着することによって、各糸のほつれを防ぐことができる。また熱接着糸 23が、伸縮糸 2 3と鎖編糸 21とを接着することによって、伸縮糸 23が鎖編組織力も抜ける、いわゆるスパン抜けを防ぐことができる。

また第 3実施形態では、レース編地 20をゥエール方向 Wに引っ張ることで、伸縮糸 27とジャカード糸 22とで囲まれた領域が互いにゥエール方向 Wに近接して、熱接着糸 23、ジャカード糸 22、伸縮糸 27、第 1ループ状部分 24および第 2ループ状部分 2 5が互いに接近する接近部分 34が生じる。このようにゥエール方向 Wに引つ張った状態でレース編地 20を加熱することで、接近部分 34で熱接着糸 23の一部を溶かすことができ、熱接着糸 23、伸縮糸 27、ジャカード糸 22、第 1ループ状部分 24および第 2ループ状部分 25を接着する接着力を高めることができる。また第 3実施形態では、伸縮糸 27と熱接着糸 23とが同方向に延びることによって、熱接着糸 23が伸縮糸 2 7に接触する接触部分を増やすことができ、伸縮糸 27が抜けることをより確実に防ぐことができる。

また図 13に示すレース編地 20Cは、伸縮糸 27に比べて、熱接着糸 23が第 1ループ状部分 24側に配置されるように見える。伸縮糸 27と熱接着糸 23とが同じ方向に進んでループ状部分に編込まれる場合には、伸縮糸 27と熱接着糸 23とが並走して進むので、熱接着糸 23は、伸縮糸 27に比べて第 2ループ所部分 25側に配置される場合がある。また熱接着糸 23は、伸縮糸 27と厚み方向 Zに並んで配置される場合がある。このように伸縮糸 27と熱接着糸 23との位置関係がランダムとなることによって、熱接着糸 23がジャカード糸 22と伸縮糸 27との間に配置されることもある。これによつて、ジャカード糸 22と伸縮糸 27とを接着するとともに、鎖編糸 21と伸縮糸 27とを接着することができる。

図 15は、本発明の第 4実施形態であるレース編地 20Dの一部を模式的に示す編成組織図である。図 16は、鎖編糸 21、熱接着糸 23および伸縮糸 27以外の糸を省略してレース編地 20Dを模式的に示す編成組織図である。第 4実施形態のレース編地 20Dは、第 2実施形態のレース編地 20Bに比べて、熱接着糸 23とは別に、伸縮性を有する伸縮糸 27がさらに編込まれ、他の構成については同様である。したがって第 1実施形態のレース編地と同様の構成については、同様の参照符号を付して、説明を省略する。

第 4実施形態のレース編地 20Dは、熱接着糸 23とは別に伸縮糸 27が伸張状態で編込まれることで、編成後のレース編地 20Dが収縮する。これによつてレース編地 20 Dに伸縮性を与えることができる。たとえば伸縮糸は、ポリウレタン弾性糸、いわゆるスパンデッタスが用いられる。

伸縮糸 27は、ジャカード糸 22よりも第 1ループ状部分 24側を延びる。また伸縮糸 2 7と熱接着糸 23とは、交差する方向に第 2ループ状部分 25を通過して、鎖編組織に編込まれる。言換えると、熱接着糸 23は、伸縮糸 27とは異なる方向に延びて編込まれる。伸縮糸 27は、各ゥエール 26に編込まれて、それぞれゥエール 26に沿ってコース方向 Cに進みにつれてジグザグに通過する。

本実施の形態では、伸縮糸 27は、注目する第 1ループ状部分 24aがコース方向前段 C1の第 2ループ状部分 25bと連なる側から、注目する第 1ループ状部分 24aとコース方向同段の第 2ループ状部分 25aを通過する。またジャカード糸 22および熱接着糸 23は、注目する第 1ループ状部分 24aがコース方向前段 C1の第 2ループ状部分 25bと連なる側と反対側から、注目する第 1ループ状部分 24aとコース方向同段の第 2ループ状部分 25aを通過する。したがって伸縮糸 27と熱接着糸 23とジャカード糸 22とがともに同じループを通過する部分では、伸縮糸 27が、熱接着糸 23およびジャカード糸 22に交差する。

第 4実施形態のように伸縮糸 23がレース編地 20Dに編込まれた場合についても、第 1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち熱接着糸 23が、他の糸を接着することによって、各糸のほつれを防ぐことができる。また熱接着糸 23が、伸縮糸 2 3と鎖編糸 21とを接着することによって、伸縮糸 23が鎖編組織力も抜ける、いわゆるスパン抜けを防ぐことができる。

また第 4実施形態では、レース編地 20をゥエール方向 Wに引っ張ることで、伸縮糸 27とジャカード糸 22とで囲まれた領域が互いにゥエール方向 Wに近接して、熱接着糸 23、ジャカード糸 22、伸縮糸 27、第 1ループ状部分 24および第 2ループ状部分 2 5が互いに接近する接近部分 34が生じる。このようにゥエール方向 Wに引つ張った状態でレース編地 20を加熱することで、接近部分 34で熱接着糸 23の一部を溶かすことができ、熱接着糸 23、伸縮糸 27、ジャカード糸 22、第 1ループ状部分 24および第 2ループ状部分 25を接着する接着力を高めることができる。

本実施の形態では、ジャカード糸 23と熱接着糸 23とが同方向に延びることによつて、熱接着糸 23がジャカード糸 22に接触する接触部分を増やすことができ、ジャカード糸 22が抜けることをより確実に防ぐことができる。また熱接着糸 23と伸縮糸 27とが交差することによって、熱接着糸 23が伸縮糸 27に接着して、伸縮糸 27を拘束する拘束部分を少なくすることができる。これによつてレース編地の伸縮性の低下を抑えつつ、スパン抜けを防ぐことができる。

図 17は、本発明の第 5実施形態であるレース編地 20Eの一部を模式的に示す編成組織図である。第 5実施形態のレース編地 20Dは、第 4実施形態のレース編地 20 Bに比べて、伸縮糸 27の延びる方向が異なり、他の構成については同様である。本実施の形態では、伸縮糸 27は、注目する第 1ループ状部分 24aがコース方向前段 C 1の第 2ループ状部分 25bと連なる側と反対側から、注目する第 1ループ状部分 24a とコース方向同段の第 2ループ状部分 25aを通過する。したがって伸縮糸 27、ジャカード糸 22および熱接着糸 23がともに同じ第 2ループ状部分 25を通過する場合には、同方向に通過する。伸縮糸 27、ジャカード糸 22および接接着糸 23がともに同じ第 2ループ状部分を通過する部分では、それらの各糸 22, 23, 27が近接した位置に位置する。したがって熱接着糸 23が溶融した場合には、ジャカード糸 22と伸縮糸 27 との接着力を高めることができる。

図 18は、第 3〜5実施形態のレース編地 20C〜20Eを編成するためのバックジャカ一ドラッシェル編機 60Cの編成部を示す側面図である。編機 60は、ジャカードバー 6 2と、熱接着糸用箴 61との間に、伸縮糸 27を編成位置 73に向けて導糸する導糸手段となる伸縮糸用箴 66が配置される。その他の構成については、図 7に示す編機と同様であるので説明を省略する。

このように伸縮糸用箴 66および熱接着糸用箴 61が配置されることで、ジャカード糸 22よりも裏側に伸縮糸用箴 66および熱接着糸用箴 61が配置されることなる。これによって、レース編地 20Cを表側から見た場合に、ジャカード糸 22によって伸縮糸 27 および熱接着糸 23が隠れることになる。これによつてレース編地の模様を明確にすることができる。またジャカードバー 62, 63、伸縮糸用箴 66および熱接着糸用箴 61の動作を異ならせることによって、第 3〜第 5実施形態に示すレース編地 20C〜20Dを編成することができる。また伸縮糸用箴と熱接着糸用箴とは、前後が逆に配置されてもよい。この場合、第 3〜第 5実施形態のレース編地のうちで、伸縮糸と熱接着糸との上下が逆となる。このような伸縮糸と熱接着糸との糸の上下が入れ替わる場合であつても、本発明に含まれる。また上述したバックジャカード編機のほか、ジャカードバー 62, 63が、柄糸よりも編機前方に配置されるフロントジャカード編機で編成されたレ一ス編地も、熱接着糸が編込まれる場合には、本発明に含まれる。

図 19は、本発明の第 6実施形態であるレース編地 20Fの一部を模式的に示す編成組織図である。熱接着糸 23は、ジャカード糸 22よりも裏側に配置されるほうが好ましいが、図 19に示すように、ジャカード糸 22よりも表側に編込まれる場合も本発明に含められる。図 20は、第 6実施形態のレース編地 20Fを編成するためのバックジャカ一ドラッシェル編機 60Fの編成部を示す側面図である。編機 60は、ジャカードバー 6 2よりも編み機前方に、熱接着糸用箴 61が配置される。その他の構成については、図 17に示す編機と同様であるので説明を省略する。

以上のように第 2〜第 6実施形態のレース編地であっても、第 1実施形態と同様の効果を得ることができる。また上述する本発明の実施の一形態は、発明の例示に過ぎず、発明の範囲内で構成を変更することができる。たとえば本実施の形態では、ほつれ防止機能を有する鎖編組織に、熱接着糸 23およびジャカード糸 22が編込まれたが、基となる編地は、鎖編に形成されていればよぐ上述する鎖編組織に限定されない。たとえば鎖編糸 21の第 2ループ状部分が横振りしない鎖編組織、すなわちほつれ止め効果を有しな!/、鎖編組織であっても同様の効果を得ることができる。また基礎となる編地は、基本的なチェーンステッチ組織のほか、チユール編地であってもよぐパワーネット組織に形成されていてもよい。パワーネット組織に形成されることで、多方向に伸縮性を有して、はっきりとした柄模様を形成することができる。また基礎となる編地は、広巾レース（オールオーバレース）および細巾レースであってもよい。また本実施の形態の編機で編成されたレース編地は、スパンデッタスが鎖編組織に編込まれることで伸縮性を有する。本発明はこれに限らない。すなわち、本発明の他の実施の形態の編機として、スパンデッタスを編込まなヽ編機で編成されたレース編地も含む。この場合、レース編地は、伸縮性をほとんど持たず、いわゆるリジットレース編地となる。

また本実施の形態では、挿入糸をジャカード糸としたがこれに限定されない。たとえば挿入糸を柄糸としてもよぐ浮力ゝし糸としてもよい。また熱接着糸 23は、すべての鎖編部分に編込まれる必要はなぐゥエール方向 Wに間隔をあけて鎖編部分に編込まれてもよい。このように上述する実施形態に示すレース編地組織は、一例示に過ぎず、基礎となる編地の組織、各挿入糸の編込みかた、鎖編糸および各挿入糸の種類について、適宜変更することが可能である。また熱接着糸 23は、非被覆糸であるとした力芯糸と被覆糸とによって構成されるカバーリング糸によって実現されてもよい。本発明は、その精神または主要な特徴力逸脱することなぐ他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。

産業上の利用可能性請求項 1記載の本発明に従えば、単位面積あたりの糸の量が密な柄部と、単位面積あたりの糸の量が疎な下地部とを有する。柄部と下地部とが組合わされることによつて、糸の疎密差によって編地にコントラストをつけることができ、柄模様を有するレ一ス編地を形成することができる。本発明では、レース編地を、鎖編糸の溶融温度未満でかつ熱接着糸の溶融温度以上の温度に加熱することで、熱接着糸の一部が部分的に溶解する。溶解部分の一部は、鎖編糸および挿入糸に付着する。この状態で固化することで、レース編地を用いて製造した編レースについて、熱接着糸に接する鎖編糸および挿入糸が、熱接着糸から遊離することを防ぐことができる。また熱接着糸に接する各糸を、熱接着糸によって互いに接着させることができる。これによつて各糸の連結状態が維持され、糸のほつれを防ぐことができる。

本発明では、熱接着糸が他の糸と付着した付着部分で鎖編組織の結束が強化される。これによつて鎖編組織を構成する鎖編糸の一部が分断されたとしても、鎖編組織のほどけが付着部分で阻止され、付着部分を超えて鎖編組織がほどけることを抑制することができる。また挿入糸と鎖編糸とが交わる部分に熱接着糸の一部が付着することで、鎖編組織から挿入糸がずれたり、離反したりすることを防ぐことができる。また隣接する 2つの鎖編糸にわたって熱接着糸が延びる場合、熱接着糸を介して挿入糸がそれぞれの鎖編糸に接着することで、隣接する 2つの鎖編糸が互いに離反することが防がれる。

このように本発明によれば、レース編地が加熱されて製造される編レースにっ、て、各糸のほつれを防ぐことができる。たとえば編レースの縫製または裁断などの製造状態に起因する糸のほつれ、着用または洗濯などの使用状態に起因する糸のほつれを防ぐことができ、品質を向上することができる。また鎖編組織が熱接着糸以外の糸で達成されるので、耐熱性を有する糸を鎖編糸として用いることで、編レース全体の形態を安定させることができる。

たとえば熱接着糸を用いて鎖編組織を形成する場合、加熱後にも鎖編組織を残すために、熱接着糸を太くしなければならず、下地部を構成する糸が増えてしまい、下地部と柄部との糸の疎密差が小さくなつてしまう。

これに対して、本発明では、熱接着糸とは異なる鎖編糸を用いて鎖編組織を形成することで、鎖編組織を残すために熱接着糸を太くする必要がなぐ鎖編糸および熱接着糸を細くすることができる。これによつて下地部を構成する糸の単位体積あたりの量を減らして、下地部と柄部との糸の疎密差を大きくすることができる。これによつて編レースの透け感を向上することができ、柄模様をはっきりとさせることができる。また熱接着糸の溶融量を少なくすることができ、溶融部分が編レース全体に与える影響を小さくして、柄模様を損ねることを防ぐことができる。さらに鎖編糸を細くすることができるので、編レースを軟らかぐ言い換えると変形しやすくすることができる。これによってたとえば編レースを肌着などの布地として好適に用いることができる。

また請求項 2記載の本発明に従えば、ゥエールに沿って延びて熱接着糸が鎖編組織に編込まれるので、鎖編組織について、編立て方向の結束を高くすることができる。これによつて鎖編組織のほつれを防止するために形成する鎖編糸の横振り部分、すなわちラン止め部分を減らすことができる。このように本発明によれば、レース編地が加熱された編レースに形成されるラン止め部分を減らすことができるので、隣接するゥエールの間にわたって不所望に糸が延びることを防ぐことができ、美観をさらに向上することができる。

また請求項 3記載の本発明に従えば、熱接着糸は、表面部分が熱溶融性を有する裸糸である。したがってレース編地が加熱されると、熱接着糸のうちで鎖編糸に接触する部分が溶けて、鎖編糸に付着する。また熱接着糸のうちで挿入糸に接触する部分が溶けて、挿入糸に付着する。

このように本発明によれば、熱接着糸のうちで、他の糸と接触する露出部分が、他の糸と付着する部分となるので、熱接着糸が他の糸に付着する付着量を増やすことができ、接着力を向上することができる。したがって、各糸のほつれをさらに確実に防ぐことができる。また非被覆糸、すなわち被覆糸によって被覆されていない裸糸で熱接着糸を実現することで、下地部の糸の量をさらに減らすことができ、下地部と柄部との糸の疎密差を大きくして、編レースの透け感を向上することができ、柄模様をはつきりとさせることができる。

また請求項 4記載の本発明に従えば、鎖編組織の全領域にわたって熱接着糸が編込まれるので、編レース全体における糸のほつれを防ぐことができる。たとえば編レースが任意の位置で縫製されたり裁断されたりしたとしても、縫製部分および裁断部分から糸がほつれることを防ぐことができる。このように本発明によれば、編レース全体にわたつて糸のほつれを防ぐことができるので、使用用途を広げることができる。たとえば編レース全体にわたるほつれを防ぐことができるので、耐久性が要求される上着の一部にも編レースを用いることができる。

また請求項 5記載の本発明に従えば、熱接着糸および挿入糸は、第 1ループ状部分と第 2ループ状部分との間を揷通することで、鎖編組織に編込まれる。レース編地は、鎖編組織に編込まれる挿入糸に対して、第 1ループ状部分が配置される側の面が裏の面となり、その反対側の面が表の面となる。本発明では、熱接着糸と挿入糸とが共通して編込まれる部分には、挿入糸は、熱接着糸よりも表側に配置される。したがってレース編地を表の面力見ると、挿入糸によって、熱接着糸および第 1ループ状部分が隠れる。

本発明によれば、挿入糸によって熱接着糸を隠すことができ、熱接着糸を表の面から見え難くすることができる。これによつてレース編地を加熱して形成される編レースについて、形成される模様を明確にすることができる。また熱接着糸が溶けたとしても、表の面力見た柄模様に与える影響を少なくすることができる。また熱接着糸が、第 1ループ状部分と挿入糸との間を通過することによって、第 1ループ状部分と挿入糸とを接着させることができ、挿入糸が鎖編組織力も離脱することを防ぐことができるまた請求項 6記載の本発明に従えば、伸縮性を有する伸縮糸が鎖編組織に伸張状態で編込まれることで、編レースに伸縮性を与えることができる。またこのような編レースを編成後に加熱することで、熱接着糸と伸縮糸とが接する部分では、熱接着糸の一部が伸縮糸に付着する。これによつて伸縮糸が鎖編組織力抜け出すことを防ぐことができる。これによつてたとえば、縫製部分力伸縮糸が抜け出すことを防ぐことができる。

このように本発明によれば、熱接着糸を鎖編組織に編込むことで、伸縮性を有する編レースについても、糸のほつれを防ぐことができる。また編成後に編レースが伸縮を繰返しても、熱接着糸によって各糸がずれることが防がれる。これによつて伸縮時の編レースの柄模様が、伸縮前の編レースの柄模様に対して大きく異なることを防ぐことができ、編レースの美感を長期にわたつて維持することができる。

また請求項 7記載の本発明に従えば、上述したレース編地を加熱することによって、レース編地に含まれる熱接着糸の一部が溶融して、各糸の結束が強化される。したがってレース編地を用いて形成される編レースについてのほつれを防ぐことができる。また本発明では、熱接着糸とは異なる鎖編糸を用いて鎖編組織を形成することで、鎖編組織を残すために熱接着糸を太くする必要がなぐ熱接着糸および鎖編糸を細くすることができるので、下地部を構成する糸の単位体積あたりの量を減らして、下地部と柄部との糸の疎密差を大きくすることができる。

このように本発明によれば、上述したレース編地を用いて編レースを製造することで、糸のほつれを防ぐことができるとともに、下地部と柄部との糸の疎密差を大きくすることができ、編レースの透け感を向上することができ、柄模様をはっきりとさせて、美観の低下を抑えることができる。

Claims

請求の範囲

[1] 鎖編糸によって、複数のループ状部分が形成される鎖編組織を有するレース編地であって、

鎖編組織に、前記熱接着糸と、模様を形成するための挿入糸とが編込まれる部分を有して、糸が密な柄部とを含むことを特徴とするレース編地。

[2] 前記熱接着糸は、複数のループ状部分が連なって形成されるゥエールに沿って延びて、鎖編組織に編込まれることを特徴とする請求項 1記載のレース編地。

[3] 前記熱接着糸は、表面部分に熱溶融性を有する裸糸であることを特徴とする請求項 1または 2記載のレース編地。

[4] 鎖編組織の全領域にわたって、熱接着糸が編込まれることを特徴とする請求項 1〜 3のいずれ力 1つに記載のレース編地。

[5] 前記鎖編部は、第 1ループ状部分と第 2ループ状部分とが交互に連なって予め定めるコース方向に複数段並び、注目する第 2ループ状部分が、その第 2ループ状部分のコース方向前段の第 1ループ状部分を挿通してコース方向後段に向かって延び

、かつ前記第 2ループ状部分のコース方向同段の第 1ループ状部分を挿通して、コース方向後段の第 1ループ状部分に連なることによって連鎖状に形成されてコース方向に延び、

熱接着糸および挿入糸がともに編込まれる部分では、第 1ループ状部分と第 2ループ状部分との間を挿入糸が挿通し、挿入糸と第 1ループ部分との間を熱接着糸が挿通することを特徴とする請求項 1〜4のいずれか 1つに記載のレース編地。

[6] 鎖編組織には、鎖編組織に熱接着糸と伸縮性を有する伸縮糸とが編込まれる部分をそれぞれ有することを特徴とする請求項 1〜5のいずれか 1つに記載のレース編地

[7] 請求項 1〜6のいずれ力 1つに記載のレース編地によって製造される編レース。