WO2007049329A1

WO2007049329A1 - ログ材

Info

Publication number: WO2007049329A1
Application number: PCT/JP2005/019482
Authority: WO
Inventors: Michiru Imase
Original assignee: Michiru Imase
Priority date: 2005-10-24
Filing date: 2005-10-24
Publication date: 2007-05-03

Abstract

　ログ材（１）は、長手方向を略水平方向に一致させて配されると共に、基材上面（１５）から基材下面（１６）にかけて貫通して設けられた孔部（２０）を有する基材（１０）と、孔部（２０）の内壁に密着して嵌挿され、乾燥による収縮率が略鉛直方向で基材（１０）より小であると共に、略鉛直方向の圧縮強度が基材（１０）より大である嵌挿体（３０）とを具備する。

Description

明細書

ログ材

技術分野

[0001] 本発明は、ログ材に関するものであり、特にセトリングの発生を抑制することが可能なログ材に関するものである。

背景技術

[0002] 従来から、複数のログ材を積重して壁面（ログ壁、またはログウォール)を構築し、口グハウスを建築することが行われている。近年のアウトドア志向によって、従来の別荘やセカンドハウスとしての用途以外に、一般住宅として力かるログハウスを建築する人々も増加している。

[0003] ログハウスに使用されるログ材は、建築した際の外観の趣や風合いなどによって種々の種類のものが利用されている。例えば、木材を機械によって製材したマシンカツトのログ材には、ムクの木材を芯を含んだ状態でカットした芯持ち材、芯の部分を外してカットした芯去り材、及び複数の板材を接着剤を利用して張り合わせたラミネート材などがある。また、これらのログ材の断面形状の違いによって、丸ログ、角ログ、 Dログ、及びタイコログ等に大別することができる。さらに、これらのログ材は、上下方向に積重するためのグループや、直交方向に交差させて組上げるためにノッチが設けられている。これにより、多段に積重したログ材によってログ壁を構築することができる。

[0004] ここで、一般的なラミネート材からなるログ材 100は、図 4に示されるように、一対の芯去り材 101を木表同士を接着剤で張り合わせることによって構成されている。木材は、一般に乾燥によって収縮し、木表 102から「割れ」が生じることが知られている。そこで、互いの木表 102同士を張り合わせることにより、芯去り材 101の木表 102の辺縁近傍は、乾燥による収縮によって当接面の方向に向力、う力が作用し、互いに押し付け合うようになる。一方、木表 102の中心部分は、木裏 103の方向に向力力が作用する。これにより、互いの芯去り材 101同士の密着性が向上し、張り合わされたログ材 100の強度を高めることができる。さらに、上述した「割れ」の問題の他に、ムクのログ材で発生する「ねじれ」等を解消することができる。そのため、芯持ち材ゃ芯去り材に比べ、施工後の収縮などの変化を抑えることができる。換言すれば、従来の丸太材によるログ材よりも優れた性質を有することから、近年では特に多用されるようになっている。

[0005] ここで、ラミネート材に用いられる木材 (板材）は、張り合わせ作業の前に予め所定の含水率以下（例えば、 15%前後）になるように乾燥処理が行われている。しかしながら、これらの乾燥処理の後であっても、ログハウスの施工された施工地の気候や周囲の環境条件によって、ログ材の含水率は大きく変化することがある。そのため、多段に積重されたログ材 100からなるログ壁 104は、乾燥による収縮及び自重によって、施工から数年を経過すると、図 5に模式的に示したように、当該ログ壁 104の高さ Y が低くなることがある。なお、この高さ Yの変化は、当初高さに対して 3%前後縮むこともめる。

[0006] そして、これらの収縮によって、ログ壁 104と天井部分の間に隙間が形成され、室内への雨水や湿気の浸入、或いは外気の侵入によって室内温度を一定に保持することができなくなる等の不具合を生じることがある。カロえて、ログ材 100の収縮による口グ壁 104の高さ Yの変化によって、ログ壁 104の間に配設された窓枠（図示しない）に過剰な負荷が加えられることがあった。すなわち、ログ壁 104の高さ Yが高さ Y'に変化することによって、窓枠を押し潰し、変形させたり、或いは窓の開閉ができなくなつたり、ガラスにヒビ割れを生じさせるなどの問題を生じることがあった。

[0007] これらのログ材の収縮の現象（一般に「セトリング」と呼ばれる）は、ログハウスを施工する上で不可避の問題であった。そのため、力かるセトリングに対応するために、施ェ時に予めログ材 100の乾燥による収縮量を想定した空間（セトリングスペース）を設ける作業が行われている。具体的に説明すると、窓枠の上部に位置するログ材 100 にトリムボード（図示しなレ、）を取設し、さらに該トリムボードとログ材 100と天井の間に空間を形成する。なお、該空間には断熱材などが充填されることが多い。これにより、ログ材 100が収縮した場合であっても、窓枠に直接ログ材 100が当接することがなく

、また充填された断熱材によって外気温を遮断し、室内を快適な状態にすることができる。また、ログ壁のセトリングに対応するために、ログ材で構成されない間仕切り壁においても、上部と天井との間にスペースを設ける作業が行われている。 [0008] さらに、ログハウスの各所には、力かるセトリングに対応するための対策が個々に施されており、例えば、配管の連結部分に伸縮自在な伸縮継ぎ手を用いたり、階段部分やログ壁の一部に、セトリングに対応可能なようにスライド部材を設け、収縮に応じて連結箇所を締結し直すことができるようになっているものもある。また、ログハウスの基礎となるコンクリートのベースの上に高さ方向の調整が可能なスクリュージャッキを配設し、ベースと支柱との間にセトリングスペースを設け、セトリングによる収縮に応じてログ壁の高さを調整するものも知られている。

[0009] また、土台に一段目のログ材をコーチボルトで固着し、さらにその上に多段にログ材を載置し、緊結ボルトで緊結するログ壁において、このコーチボルト又は緊結ボルトを、ログ材の高さに相応する長さのネジを下端に有するボルト部と、ボルト部の上端に該ネジと螺合可能なネジ孔が設けられたナット部と、ボルト部及びナット部の間に一体化された受け座金とを具備するものを用レ、るものが知られている（特許文献 1参照）。これは、ログ材に貫設されたボルト挿入孔に緊結ボルト等のボルト部を挿入し、下段のネジ孔に螺合させることにより、互いにボルトを連結し、さらに受け座金によつて下段のログ材を締め付けて組み付けることにより、上述したセトリングを解消することを意図しているものである。

[0010] 特許文献 1 :特開平 9 209478号公報

[0011] し力しながら、上述したセトリングスペースを設ける作業を含むログハウスの施工は、以下に掲げるような問題を生じることがあった。すなわち、セトリングの発生する箇所は、ログハウスの全体に存在し、それぞれの場所に対してセトリングスペースを設定することは工程数が増大し、作業者に多大な労力の負担を強いることがあった。加えて、ログ壁のセトリングに合わせて、セトリングの生じない間仕切り壁においても上部にスペースを設けることによって工程数はより増大し、労力の負担もより大きなものとなっていた。さらに、セトリングは、使用するログ材の種類或いはログハウスを施工する施工場所の周囲環境や気候等によってその度合いが大きく変化し、セトリングスぺースの設定量を見極めることは熟達した経験を要することがあった。また、かかる工程数の増大により、施工期間が長期化することがあった。また、ログハウスの施工後であつても、ログ壁のセトリングを抑制するものは、作業工数及び施工コストを増大することがあった。そのため、施工主及びログハウスを施工するログハウスメーカーは、比較的簡易な構成でセトリングの発生を抑え、施工時の作業を簡易化し、さらに施工後のメンテナンス作業を容易に行うことができるログ材を望む声が大きかった。また、コーチボルト又は緊結ボルトを用いるログ材では、ボルト及びナット、受け座金等の多くの部品を要し、ログ材の組立てが複雑になることに加え、各段のログ材の下面がコーチボルトの受け座金に受け止められることにより、夫々のログ材の収縮がログ壁全体として積算されないという効果はあっても、ログ材自体の収縮が抑制されるものではなかつた。

[0012] そこで、本発明は、ログ材の自重による圧縮及び乾燥による収縮が生じにくぐログ壁の高さが低下するセトリングの発生を抑制することが可能であり、かつ簡易な構成のログ材を提供することを課題とするものである。

発明の開示

[0013] 本発明に力かるログ材は、「長手方向を略水平方向に一致させて配されると共に、基材上面から基材下面にかけて貫通して設けられた孔部を有する基材と、前記孔部の内壁に密着して嵌挿され、乾燥による収縮率が略鉛直方向で前記基材より小であると共に、略鉛直方向の圧縮強度が前記基材より大である嵌揷体とを」主に具備して構成されている。

[0014] 基材は、従来からログハウスに用いられる丸太材や、複数の板材を接着剤で互いに張り合わせて形成されるラミネート材から構成することができる。後述のように、本発明のログ材は、嵌揷体を具備することによってセトリングの発生を抑制することが可能であるため、基材自体は特別な材料である必要はなぐごく一般的にログハウスに用レ、られる材料を使用することができる。

[0015] 孔部は、長手方向を略水平方向に一致させて積重される基材の夫々において、その上面から下面にかけて基材を貫通するように、すなわち、基材が積重される方向に一致して穿設されるものである。この孔部の形状は特に限定されず、断面形状が円形、楕円形、四角形、三角形等のものを例示することができる。この孔部の大きさは特に限定されないが、後述の嵌挿体の大きさは孔部の大きさによって定まるため、セトリングを抑制する効果を有効に発揮するためには、基材の上面の面積に対して、孔部がある程度の断面積を有して形成されることが必要である。また、孔部と孔部との距離 (ピッチ)も特に限定されないが、孔部のピッチが嵌挿体のピッチとなるため、セトリングを抑制する効果を有効に発揮するためには、建造される建物に対して要求される強度や使用する材料の性質等を考慮した構造設計により最適なピッチが算出されることが望ましい。

[0016] 嵌揷体は、乾燥による収縮率が略鉛直方向（積重方向）において基材より小であり、かつ、この方向での圧縮強度が基材より大であり、所望の長さに切断可能なものであれば、その材質は特に限定されず、木材、プラスチック、金属等によって構成すること力 Sできる。例えば、木材の場合、基材よりも堅い材質を有する種類の木材や、基材よりも木目の緻密な木材によって構成することができる。或いは、同じ木材でも木目の方向により乾燥による収縮のし易さや圧縮に対する強度が異なることから、基材と嵌揷体とで木目の方向を異なるものにすることにより、略鉛直方向での嵌揷体の乾燥収縮が基材より小さぐかつ、圧縮強度が基材よりも大きいものとなるように設定すること力 Sできる。

[0017] 力かる嵌挿体が孔部の内壁に密着されるためには、接着剤を使用し、孔部の内壁に嵌揷体を接着することができる。或いは、木材等の変形し得る材料によって嵌挿体を構成する場合、孔部の断面積より嵌挿体の断面積をやや大きく設定し、ハンマー等で打ち込んで強制的に孔部に挿入することにより、嵌挿体の側面が孔部の内壁に対して押し付けられるように密着させることができる。例えば、断面が円形の孔部に対し、孔部の径よりやや大径の円柱状の嵌揷体を、孔部に押し込むようにして嵌挿させること力 Sできる。

[0018] 従って、本発明によれば、ログ材の長手方向を略水平方向に一致させて積重してログ壁を構成する際、上段側のログ材の重量により下段側のログ材に対して圧縮応力が加えられても、所定の間隔で基材に嵌揷されている嵌揷体が、略鉛直方向に対して大きな圧縮強度を有することにより、下段側のログ材が圧縮される度合いを低減すること力 Sできる。また、基材が経時的に乾燥により収縮しょうとしても、略鉛直方向で基材より収縮率が小さぐかつ基材に対して密着している嵌揷体によって、基材の略鉛直方向の収縮を引き止めるような力が作用することとなり、この方向での基材の乾燥収縮が抑制される。すなわち、ログ材の自重による圧縮及び乾燥による収縮によってログ壁の高さが低下するセトリングの発生を、抑制することが可能となる。

[0019] 力 0えて、特別な材料ではない一般的な基材と、基材に設けられた孔部と、孔部に嵌揷された嵌揷体という簡易な構成であるため、製造コストを抑えて、セトリング抑制効果を有するログ材を製造することができる。

[0020] また、本発明にかかるログ材は、「長手方向を略水平方向に一致させて配されると共に、基材上面から基材下面にかけて貫通して設けられた孔部を有する基材と、前記孔部に充填された樹脂体とを」主に具備して構成されている。

[0021] 樹脂体を構成する樹脂は、孔部に流し込んで充填する際には流動性を有し、硬化して高強度を有するものが適しており、加熱や、光、紫外線、高周波の照射等によつて重合反応が進行し硬化する合成樹脂を使用することができる。また、基材である木材と親和性を有する樹脂であれば、硬化した際に孔部の内壁と密着されるため好適である。

[0022] 従って、本発明によれば、硬化した樹脂の有する圧縮強度と、木材のように乾燥によって経時的に収縮しない性質を利用し、基材に略鉛直方向に穿設される孔部に充填された樹脂体によって、上記の嵌挿体と同様の作用、効果を奏することができ、口グ材の自重による圧縮及び乾燥による収縮に起因するセトリングの発生を抑制することが可能となる。また、硬化前の樹脂は流動性を有するため、孔部の内壁が滑らかに形成処理されている必要がなぐ多少の凹凸を有していたとしても、孔部内壁と密着して樹脂体が構成される。また、孔部に充填されるのが樹脂であることにより、製造されるログ材を軽量化することが可能となり、運搬や積重作業の容易化を図ることができる。

[0023] 次に、本発明にかかるログ材は、「前記孔部は円形の断面を有する」ものとすることができる。

[0024] 円形の断面を有する孔部の形成は、従来からのログ材の製造工程において、ダボ孔を形成するために用いられている技術を利用することができる。ここで、「ダボ」とは、積重されたログ材が水平方向に加えられる力によって横ずれすることを防止するために、ログ材に略鉛直方向に差し込まれ、上下段のログ材を接合する小片である。そして、このダボを差し込むためにログ材に穿設される孔がダボ孔であり、断面形状を円形に形成されるのが通常である。そして、力かるダボ孔の穿設については、口グハウスの設計図面における入力に基づいて、コンピュータ制御によって自動的に行われる技術が既に確立されてレ、る。

[0025] 従って、本発明によれば、従来のログ材の製造設備をそのまま利用することができるため、新たな設備投資をする必要がなぐ製造コストを抑えて、セトリング抑制効果を有するログ材を製造することができる。また、従来の製造工程におけるダボ孔の形成と同様の方法で、本発明の孔部を形成することができるため、セトリング抑制効果を有する本発明のログ材と、従来のログ材とを、異なる製造ラインで製造する必要がない。すなわち、従来のログ材の製造ラインにおいて、穿設する孔 (本発明の孔部、ダボ孔）の数及び位置を付加的に設定するのみで、本発明のログ材の製造に対応させること力 Sできる。これにより、例えば顧客からの要望の有無等に応じ、効率的かつ経済的に本発明のログ材を製造することができる。カロえて、従来の設備を利用できることにより、基材に孔部を穿設し、嵌挿体を嵌挿させ、または樹脂体を充填する全ェ程を工場内で行うことも可能となる。その場合は、現場で孔部を穿設し、或いは嵌挿体を孔部に嵌挿させる等の作業を行う必要がなぐ出来上がったログ材を積重する作業のみでログ壁を構築することができる。そのため、セトリングスペースの設定やスクリユージャツキの配設等を行っていた従来の作業に比べ、現場での作業を極めて容易なものとして、セトリング抑制効果を有するログ壁を構築することができる。

[0026] また、本発明に力かるログ材は、「前記孔部は、複数の前記基材を積重した際に、上段側の前記基材の孔部下端と下段側の前記基材の孔部上端とが当接可能に形成される」ちのとすること力 Sできる。

[0027] 従って、本発明によれば、嵌揷体または樹脂体によるセトリング抑制効果を、より効果的に発揮することができる。すなわち、ログ材が積重された際に、上段側と下段側とで嵌揷体または樹脂体 (以下、嵌揷体等と称する）の位置がずれていると、上段側の嵌揷体等によって支持されている、それより上方に積重されたログ材の重量を、下段側では基材が受け止めることとなる。これに対し、本発明では、上段側の孔部下端と下段側の孔部上端が当接可能に孔部が穿設されるため、積重されるログ材の全てにおいて嵌挿体の位置を一致させることが可能となる。これにより、上方に積重されるログ材の重量は、それより下方に積重されるログ材の嵌揷体等によって、順次確実に支持され、ログ壁全体として高さが低下することを抑制することができる。カロえて、鉛直方向で乾燥による収縮率の小さい嵌揷体等が、ログ壁にぉレ、てほぼ一直線上に垂設されることとなるため、嵌揷体等と嵌揷体等との間で基材が多少収縮したとしても、ログ壁全体としての高さが低下することを抑制することができる。

[0028] カロえて、上記のように、従来の製造工程におけるダボ孔の形成技術を利用して孔部を穿設する場合は、コンピュータ制御によって自動的に所望の位置に孔を形成する技術が確立されていることにより、上段側となるべき基材の孔部下端と下段側となるべき基材の孔部上端とを当接可能となるように孔部を穿設することも、何ら新たな設備投資をする必要なぐ極めて容易に行うことができる。

[0029] 更に、本発明にかかるログ材は、「前記嵌揷体は、繊維方向を略鉛直方向に一致させた木材により形成される」ものとすることができる。

[0030] 従って、本発明のログ材によれば、特別な材料を別途必要とすることなぐ簡易に嵌挿体を形成することができる。すなわち、木材の乾燥収縮は木口面方向（年輪方向）で大きぐ木材の成長する際の長手方向（繊維方向）で小さいこと、及び、木材は繊維方向に加えられる圧縮応力に対して大きな強度を有することから、繊維方向を略鉛直方向に一致させるのみにより、嵌挿体としての上述の条件を備えたものとすることができる。また、木目の方向の設定により、基材と同素材の木材を使用することも可能となるため、基材を製造する際に生じた端材を嵌揷体として利用することもできる。これにより、資源の有効利用及び製造コストの点で有意なものとなる。

[0031] また、本発明にかかるログ材は、「前記嵌揷体は、嵌揷方向に沿って形成された複数の溝部を有し、前記溝部に充填される接着剤部を」具備するものとすることができる。

[0032] 溝部は、嵌揷体の側面において、嵌揷体が孔部に嵌挿される方向、すなわち、嵌揷体の高さ方向に形成されるものであり、断面がコ字状、 V字状、 U字状に形成されるものを例示すること力できる。このような溝部は、複数本を設けることができる。例えば、嵌揷体を円柱状とした場合、その断面の円周上に溝部の断面が放射状に等間隔で位置するように、複数の溝部を形成することができる。また、接着剤は、強固な接着強度を有し、木材の呼吸を妨げない、 PVAc (ポリ酢酸ビニル樹脂）等の従来から周知の接着剤を利用することが可能である。

[0033] 従って、本発明のログ材によれば、嵌揷体を孔部に嵌揷させることが容易となる。すなわち、溝部が形成されていることにより、嵌揷体の表面積が減少するため、嵌揷体を揷入する際に孔部の内壁との間に生じる摩擦が減少する。また、木材のように変形し得る材料で嵌揷体を構成する場合は、溝部が形成されていることによって嵌揷体がその側面に沿って変形し易いものとなり、嵌揷体を孔部に押し込むように揷入することが容易となる。カロえて、嵌揷体の側面に溝部が形成されることにより、塗布等によつて嵌揷体の側面に施された接着剤が溝部に保持されるため、接着剤が嵌揷体に馴染みやすいと共に、嵌揷体を挿入する際に接着剤が孔部から押し出されてしまうことを防止すること力 Sできる。そして、接着剤が溝部に充填されると共に、嵌揷体と孔部の内壁との間に接着剤部が形成されることにより、基材に対する嵌挿体の密着性がより高められる。これにより、略鉛直方向で乾燥による収縮率が小さい嵌挿体が、基材の略鉛直方向の収縮を引き止める作用を、より有効に発揮させることができる。加えて、略鉛直方向で大きな圧縮強度を有する嵌挿体が、上方に積重されるログ材の重量による圧縮に抗する効果を、有効に基材側に反映させ、基材の圧縮や橈みを抑制すること力 S可言となる。

[0034] 以上述べたように、本発明のログ材は、孔部が穿設された基材、孔部に嵌挿された嵌挿体または孔部に充填された樹脂体という極めて簡易な構成により、ログ材の自重による圧縮及び乾燥による収縮に起因してログ壁の高さが低下するセトリングの発生を、有効に抑制することが可能となる。また、従来のログ材の製造工程をそのまま利用することが可能であるため、新たな設備投資を必要とすることなぐ製造コストを抑えて、セトリング抑制効果を有するログ材を製造することができる。

図面の簡単な説明

[0035] [図 1]本実施形態のログ材の構成を示す斜視図である。

[図 2]本実施形態のログ材の構成を示す分解斜視図である。

[図 3] (a)はログ材の構成を示す平面図であり、（b)はその正面図であり、（c)はその側面図である。

[図 4]従来のログ材の一例を示す斜視図である。

[図 5]セトリング現象を例示する説明図である。

発明を実施するための最良の形態

[0036] 以下、本実施形態のログ材 1について、図 1乃至図 3に基づいて説明する。ここで、図 1はログ材 1の構成を示す斜視図であり、図 2はログ材 1の構成を示す分解斜視図であり、図 3 (a)はログ材 1の構成を示す平面図であり、図 3 (b)はその正面図であり、図 3 (c)はその側面図である。

[0037] 本実施形態のログ材 1は、図 1乃至図 3に示されるように、長手方向を略水平方向に一致させて配され、孔部 20が設けられた基材 10と、孔部 20に嵌挿される嵌揷体 3 0とを主に具備して構成されている。なお、簡略化のために、図 1では木口面 13側に現れる木目のみを図示し、図 2及び図 3では木目の図示を省略している。更に、ログ材 1は、ログハウスのログ壁 50を構築するために、長手方向に長尺に形成されるものであるが、図 1及び図 2ではログ材 1の端部近傍を図示している。

[0038] 更に、詳細に説明すると、基材 10は、上述した一般的なラミネート材 100 (図 4参照 )と同様に、一対の芯去り材 11の夫々の木表 12側が接着剤で張り合わされ、夫々の木口面 13を端面に向けて構成されている。ここで、一対の芯去り材 11の張り合わせは、 PVAcからなる接着剤を各々の当接面に塗布し、両側から強力な圧力によってプレス加工することによって行われている。

[0039] また、基材 10は、多段に積重されたログ材 1の横ずれを防止するために、基材上面 15から上方に向かって突設された断面台形状の台形突部 17と、基材下面 16に設けられ、台形突部 17の断面形状に一致する断面を有する台形溝部 18とを具備している。また、ログ材 1の四隅に相当する角は、上下にそれぞれ面取りが施されている。これにより、ログ材 1を多段に積重した場合、下段側のログ材 1の台形突部 17が、上段側のログ材 1の台形溝部 18に嵌合された状態となる（図 3 (b)参照）。そのため、仮にログ材 1によって構築されたログ壁 50に水平方向（図 3 (b)における紙面左右方向に相当）の力が作用した場合であっても、台形突部 17及び台形溝部 18の嵌合により、ログ材 1の横ずれが規制され、ログ壁 50の構造を安定して維持することができる。 [0040] 更に、基材上面 15から基材下面 16にかけて、断面形状が円形の孔部 20が貫通して設けられている。力 Pえて、孔部 20は、上段側となるべき基材 10の孔部下端 26と下段側となるべき基材 10の孔部上端 25が当接可能に、すなわち、基材 10を積重した際に孔部 20の位置が一致するように穿設されている。この孔部 20は、積重された口グ材 1の横ずれを防止するためのダボ（図示しない）を差し込むための、ダボ孔を穿設する従来の技術を利用して形成することができる。この技術は、建造すべき建築物 (ログハウス）を設計図面を入力することにより、コンピュータ制御によって自動的に基材 10を所定の長さにカットすると共に、必要とされるログハウスの強度や使用する材料の強度による構造計算に基づいて、所定の間隔でダボ孔の穿設等を行うものである。従って、この技術を利用することにより、孔部 20を所望の間隔で基材 10に穿設するにあたり、孔部 20の位置を高度に制御することができる。なお、本実施形態では、ログ材 1の幅 134〜208mmに対し、径 42〜50mmの孔部 20を約 450mmのピッチで設けることとしている力孔部 20の径及びピッチはこれに限定されず、上記のように、建築すべきログハウスに応じた構造計算に基づいて適した値を設定することができる。

[0041] また、嵌挿体 30は、本実施形態では繊維方向を略鉛直方向に一致させた木材によって構成され、孔部 20よりやや大径で、ログ材 1と略同一の高さを有する円柱形に形成されている。なお、この嵌揷体 30は、図 2に示すように、その周面において高さ方向に複数の溝部 33が形成されている。更に詳しく説明すると、この溝部 33は、嵌挿体 30の断面の円周上に、溝部 33の U字状の断面が放射状に等間隔で位置するように形成されている。この嵌挿体 30は、周面に接着剤を塗布した後、孔部 20に強制的に挿入される。このとき、溝部 33が形成されていることにより、嵌揷体 30の表面積が減少するため、孔部 20の内壁との間に生じる摩擦が減少し、孔部 20に嵌揷体 3 0を揷入しやすい。また、嵌揷体 30を構成する木材が、溝部 33の部分で変形し易いため、孔部 20より大径の嵌揷体 30を孔部 20に押し込むことが容易となる。加えて、嵌揷体 30の側面に塗布された接着剤が溝部 33に保持されるため、接着剤が嵌揷体 30に馴染みやすいと共に、嵌揷体 30を孔部 20に揷入する際に接着剤が孔部 20から押し出されてしまうことが防止される。そして、嵌揷体 30と孔部 20の内壁との間に形成された接着剤部（図示しない）により、嵌揷体 30が基材 10に対してしつかりと密着されることとなる。

[0042] 上記のように、一対の芯去り材 11を張り合わせ、孔部 20を穿設した基材 10に、嵌揷体 30を嵌揷することにより、本発明のログ材 1を製造することができる。かかる製造は、ログハウスの建築現場において行うことも可能であるが、本発明のログ材 1は簡易な構造であり、上記のように自動化された従来のログ材の製造ラインを利用して製造することが可能なため、ログ材 1の製造の全工程を工場内で容易に行うこともできる。

[0043] 次に、本実施形態のログ材 1の使用例について説明する。ここで、本実施形態の口グ材 1は、図 3 (b)及び図 3 (c)に示されるように、複数のログ材 1を上下方向に多段に積重することによってログ壁 50が構築される。このとき、下段側に位置するログ材 1 の基材上面 15から突設された台形突部 17が、上段側に位置するログ材 1の基材下面 16に設けられた台形溝部 18に嵌合される。これにより、上段側に位置するログ材 1 は、水平方向（図 5における紙面左右方向に相当）の移動、いわゆる横ずれが規制される。そして、この積重を繰返すことにより、ログ材 1によるログ壁 50が完成する。このとき、上記のように、上段側となるべき基材 10の孔部下端 26と下段側となるべき基材 10の孔部上端 25が当接可能に穿設されることから、図 3 (c)に示されるように、ログ材 1が積重されて構築されたログ壁 50において嵌挿体 30の位置がほぼ一致し、略鉛直方向に一直線上に垂設されることとなる。なお、ログ材 1同士の接続を更に強固なものとするために、上述のダボの他にボルト等の締結具を用いることができる力か力る積重の方法は、従来のログハウスのログ壁を構築する場合と同様のものである。

[0044] 上記のように、嵌揷体 30が所定間隔で嵌挿された本発明のログ材 1によって口グハウスが構築される際、ログ壁 50の最上端と天井との境界、或いは窓枠との間に、ログ壁 50の経時的変化による収縮を考慮したセトリングスペースは設けられなレ、。換言すれば、セトリングスペースを設ける作業を省略してログハウスが構築される。

[0045] そして、ログハウスの施工後、従来のログ材 (例えば、ログ材 100)を使用した場合は、年月の経過に伴って、上段側に積重されたログ材 100の重量による圧縮、及びログ材 100の乾燥による収縮に起因して、夫々のログ材 100の高さが減少し、全体としてログ壁 104の高さが低下する（図 5参照）。かかる高さの減少は木口面 105方向に圧縮されやすぐ乾燥による収縮率も木口面 105方向で大きい木材にとっては不可避の現象である。

[0046] し力ながら、本実施形態のログ材 1は、所定間隔で嵌挿されている嵌揷体 30が、繊維方向を略鉛直方向に一致させた木材で構成されており、略鉛直方向で大きな圧縮強度を有することにより、下段のログ材 1が圧縮される度合いを低減することができる。また、基材 10が経時的に乾燥により収縮しょうとしても、繊維方向を略鉛直方向に一致させていることにより、繊維方向が略水平方向となっている基材 10より、略鉛直方向での収縮率が小さぐかつ基材 10に対して強制的に嵌揷されると共に接着剤によって強固に接着されている嵌揷体 30によって、基材 10の略鉛直方向の収縮を引き止めるような力が作用し、基材 10の略鉛直方向の乾燥収縮が抑制される。し力、も、本実施形態では、積重されるログ材 1の全てにおいて嵌揷体 30の位置が一致しているため、上段側に積重されるログ材 1の重量は、それより下方に積重されるログ材 1の嵌揷体 30によって確実に順次支持される。カロえて、略鉛直方向で乾燥による収縮率の小さい嵌揷体 30が、ログ壁 50においてほぼ一直線上に垂設されることにより、嵌挿体 30と嵌揷体 30との間で基材 10が多少収縮したとしても、ログ壁 50全体としての収縮が抑制されることとなる。

[0047] このように、ログ材 1の自重による圧縮、及び乾燥による収縮が抑制されることにより、ログ壁 50は経時的にほぼ同一の高さを維持することができる。実際に、本発明の口グ材 1を用いて試験的に建築したログハウスにおいて、ログ壁 50の経時的な高さの低下はほとんど見られず、セトリング抑制効果が極めて良好に発揮されることが確認されている。

[0048] 上記に説明したように、本実施形態のログ材 1により、簡易な構成でありながら、ログ材 1の自重による圧縮、及び乾燥による収縮に起因するセトリングの発生を有効に抑制すること力 Sできる。これにより、従来行われていたセトリングスペースを設ける等の作業を省略することができ、施工コスト及びメンテナンスコストなどを削減することができる。更に、作業者が現場でセトリングスペースを設ける複雑な作業を行う必要がないため、施工期間を短縮することができ、かつ作業者に多大な労力を課することがない [0049] また、基材 10として、特別な材料ではなぐ従来から多用されているラミネート材を用いることができる。また、本実施形態では嵌挿体 30として縦繊維の木材を使用しているため、特別な材料を別途必要とすることなぐ木目の方向で性質の異なる木材の特性を生力て、セトリングを抑制することができる。また、基材 10等の製造過程で生じる端材を、嵌揷体 30として利用することも可能となる。カロえて、本実施形態では、従来のログ材 1の製造過程におけるダボ孔の穿設工程を利用して孔部 20を形成しているため、新たな設備投資を行う必要が全くなぐ従来の製造ラインをそのまま使用してログ材 1を製造することができる。これらにより、製造コストを抑えて、簡易に、ログ材 1 を製造することが可能となる。

[0050] 更に、基材 10に嵌揷された嵌揷体 30は、ログ材 1の外表面や端面の木口面 13に現れず、外観に影響しないため、ログ材 1としての風合いを損なうことなくセトリング対策が施されたログ材 1となる。

[0051] 以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなぐ以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。

[0052] 例えば、本実施形態では、基材 10としてラミネート材を用いる場合を例示した力これに限定されず、旧来からの丸太材を使用することもできる。上記のように、丸太材はラミネート材よりも収縮し易い性質を有するが、嵌挿体 30を具備した本発明のログ材 1とすることにより、セトリングを抑制することが可能となる。また、本実施形態では、基材 10として角形の断面形状を有するものを例示したが、勿論これに限定されるものではなぐ丸ログ、 Dログ、タイコログ等に適用可能である。特に、ラミネート材を使用する山小屋風のログハウスでは、素朴な風合いを持つ旧来の丸太材に似た丸ログや Dログが好まれるため、基材の形状によらず、セトリング抑制効果を発揮可能な本発明のログ材は、極めて有用である。

[0053] また、本実施形態のログ材 1では、嵌揷体 30として木材を使用した場合を例示した力これに限定されるものではなレ、。例えば、プラスチックや金属を所定形状に形成し、孔部 20に揷入して接着剤により孔部内壁に接着させることができる。或いは、流動性を有する状態で合成樹脂を孔部 20に流し込み、その後に、熱や光、紫外線、高周波の照射等によって硬化させることもできる。

更に、本実施形態では、孔部 20を断面形状が円形のものとした力これに限定されず、例えば、断面形状が正方形や長方形となるように形成することもできる。また、ラミネート材により基材を構成する場合、張り合わせる前の板材の夫々に溝を形成しておき、板材を張り合わせることによって孔部が形成されるものとすることもできる。

Claims

請求の範囲

[1] 長手方向を略水平方向に一致させて配されると共に、基材上面から基材下面にかけて貫通して設けられた孔部を有する基材と、

前記孔部の内壁に密着して嵌挿され、乾燥による収縮率が略鉛直方向で前記基材より小であると共に、略鉛直方向の圧縮強度が前記基材より大である嵌揷体とを具備することを特徴とするログ材。

[2] 長手方向を略水平方向に一致させて配されると共に、基材上面から基材下面にかけて貫通して設けられた孔部を有する基材と、

前記孔部に充填された樹脂体と

を具備することを特徴とするログ材。

[3] 前記孔部は円形の断面を有することを特徴とする請求項 1または請求項 2に記載のログ材。

[4] 前記孔部は、複数の前記基材を積重した際に、上段側の前記基材の孔部下端と下段側の前記基材の孔部上端とが当接可能に形成されることを特徴とする請求項 1 または請求項 2に記載のログ材。

[5] 前記嵌揷体は、繊維方向を略鉛直方向に一致させた木材により形成されることを特徴とする請求項 1に記載のログ材。

[6] 前記嵌揷体は、嵌揷方向に沿って形成された複数の溝部を有し、

前記溝部に充填される接着剤部を更に具備することを特徴とする請求項 1に記載のログ材。