明 細 書
ポリイミドフィルム
技術分野
[0001] 本発明は、フレキシブルプリント基板またはフレキシブルプリント基板用カバーレイ フィルムに好適に使用することができる非熱可塑性ポリイミドフィルムに関する。 背景技術
[0002] 近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化にともない、各種プリント基 板の需要が伸びている力 中でも、フレキシブルプリント配線板 (FPC等とも称する) の需要が特に伸びている。 FPCは、絶縁性フィルム上に金属箔カもなる回路が形成 された構造を有している。
[0003] 上記 FPCは、一般に、各種絶縁材料により形成され、柔軟性を有する絶縁性フィル ムを基板とし、この基板の表面に、各種接着材料を介して金属箔を加熱'圧着するこ とにより貼りあわせる方法により製造されるフレキシブル金属張積層板を用いることが 多い。上記絶縁性フィルムとしては、ポリイミドフィルム等が好ましく用いられている。 上記接着材料としては、エポキシ系、アクリル系等の熱硬化性接着剤が一般的に用 V、られて 、る(これら熱硬化性接着剤を用いた FPCを以下、三層 FPCとも 、う)。
[0004] また、より高 、耐熱性、屈曲性、電気的信頼性に対する要求を満たすために、絶縁 性フィルムに直接金属層を設けたり、接着層に熱可塑性ポリイミドを使用した FPC ( 以下、二層 FPCともいう)が提案されており、二層および三層 FPCともに益々その需 要が大きなものに成長している。
[0005] このような背景の中で基材として用いられるポリイミドフィルムの性能向上、およびそ の収率向上に対する要求が益々高まってきている。具体的には、 FPCに用いた場合 に、その製造工程にお 、て発生する寸法変化率が小さ 、ポリイミドフィルムが要求さ れてきており、また、寸法変化率の小さい FPCを高収率で得ることが要求される。寸 法変化率が小さい FPCを高収率で得るとは、 FPCの製造に使用する金属張積層板 を、連続的に生産した場合に、シヮなどの異常部位が少なぐしかも得られる金属張 積層板力も FPCに加工した場合の寸法変化率が小さいことを意味する。たとえ寸法
変化率の小さいポリイミドフィルムを用いたとしても、長尺の金属張積層板において、 シヮの発生などにより使用できな 、部位が多くなると、その部位は廃棄しなければな らず、 FPCの収率が低下し、コストが高くなるなどの問題が生じる。
[0006] 特に FPCの寸法安定性を見据えた場合、ポリイミドフィルムの有する加熱収縮率が 小さいことが重要である(特許文献 1、 2)ことは当業者にはよく知られているが、寸法 変化率の小さ 、FPCを高収率で得るための検討は遅々として進んで 、な 、のが実 情である。すなわち、 FPCを高収率で得るために、シヮが少なく外観異常のない金属 張積層板を得る方法は検討されている、あるいは、金属張積層板に供するポリイミド フィルムの組成を工夫することによって、寸法変化率を小さくするという検討はなされ て 、るが、連続生産における収率にっ 、てはあまり考慮されて ヽな 、。
[0007] こういった状況の中で最大タルミ量を規定することにより生産性改善が試みられて いるが、延伸操作により改善を図っているため、幅方向での異方性の大きなばらつき が発現してしまうと 、う致命的な問題点を有して 、た (特許文献 3)。
特許文献 1:特開平 10— 77353号公報
特許文献 2:特開 2003 - 335874号公報
特許文献 3:特開 2004— 346210号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、益々需要が 高まっている FPCの基材として好適に使用しうるポリイミドフィルムを提供することにあ る。具体的には、 FPCに用いた場合に、その製造工程において発生する寸法変化 率が小さいポリイミドフィルムを提供し、特に、シヮなどの異常部位が少ない金属張積 層板を製造し、寸法変化率の小さ 、FPCを高収率で得ることを目的とする。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、ポリイミドフィルムの諸特性 を設計することにより FPCの基板に好適に使用しうるポリイミドフィルムが得られること を見出し、本発明に至った。
[0010] 即ち本発明は、以下の新規なポリイミドフィルムによって、上記課題を解決しうること
を見出した。
1)動的粘弾性測定において 320°C以上 380°C未満に tan δピーク温度を有するポリ イミドフィルムであって、かつフィルムの最大タルミ量が 13mm以下であることを特徴と するポリイミドフィルム。
2) PCT処理前後の、引裂き強度の保持率が 60%以上であることを特徴とする 1)記 載のポリイミドフィルム。
3) tan δピークの最大値が 0. 1以上であることを特徴とする 1)または 2)記載のポリイ ミド、フイノレム。
4) tan δピークの最大値が 0. 2以下であることを特徴とする 3)記載のポリイミドフィル ム。
5) 100〜200°Cの平均線膨張係数が 5〜20ppmであることを特徴とする 1)〜4)の V、ずれかに記載のポリイミドフィルム。
6)酸二無水物とジァミンを重合して得られるポリイミド榭脂を含むポリイミドフィルムで あって、前記ジァミン成分は、 2, 2—ビス [4— (4—アミノフエノキシ)フエ-ル]プロパン を含むことを特徴とする 1)〜5)の 、ずれかに記載のポリイミドフィルム。
発明の効果
[0011] 本発明のポリイミドフィルムを用いてフレキシブル金属張積層板を連続的に製造す ると、フレキシブル金属張積層板の外観収率を向上させることが可能となる。さらに得 られた金属張積層板を用いて FPCを製造すると、製造工程で発生する寸法変化の 発生を抑制でき、さらには、寸法変化率の小さい FPCを高収率で得ることが可能とな る。
図面の簡単な説明
[0012] [図 1]フィルム垂れ量測定装置の断面図
[図 2]フィルム垂れ量測定装置の全体図
[図 3]A— B間断面図
符号の説明
[0013] 1 フィルム
2 テープ等にて固定
3 おもり 3kgZm
4 水平基線 (垂れ遷 IJ定点)
5 支持ロール
6 固定
7 510mm
8 1. 5m
9 1. 5m
10 3m
11 フィルム MD方向
12 水平基線 (垂れ舅 ί測定点)
13 水平基線 (垂れ舅 ί測定点)
14 垂れ量
15 フィルム
16 フイノレム TD方向
発明を実施するための最良の形態
[0014] (本発明のポリイミドフィルムの物性)
本発明のポリイミドフィルムは、
(1)動的粘弾性測定において 320°C以上 380°C未満に tan δピーク温度を有する、 とともに、
(2)フィルムの最大タルミ量が 13mm以下となっている。
[0015] 動的粘弾性特性にっ 、て説明する。動的粘弾性測定における tan δのピーク温度 iS 320°Cよりも低いとガラス転移温度が低くなりすぎ、加熱時の寸法安定性が悪ィ匕 する。また、 380°C以上では、 FPCへカ卩ェする際の歪を緩和することができなくなり、 その結果、寸法安定性が悪くなる傾向にある。該 tan δのピーク温度は、 330〜370 °Cにあることが好ましい。
[0016] さらに tan δピークの最大値の好ましい下限値は 0. 05である。 tan δのピーク値が この範囲を下回ると FPCへ加工する際の歪を緩和することができなくなり、その結果 、寸法安定性が悪くなる傾向にある。さらに好ましい下限値は 0. 08であり、最も好ま
しい下限値は 0. 1である。一方、 tan δピークの最大値の好ましい上限値は、 0. 2で ある。この範囲を上回るとフィルム製造時にフィルムが軟ィ匕しすぎてしまい、タルミ量 が増大する原因となる場合がある。
[0017] また、動的粘弾性測定による tan δがピークとなる温度での貯蔵弾性率 (Ε' )力 0 . 4GPa以上であることが好ましい。 E,がこの範囲を下回るとフィルム製造時にフィル ムが軟ィ匕しすぎてしまい、タルミ量が増大する原因となる場合がある。好ましくは 0. 5 GPa以上、特に好ましくは 0. 6GPa以上である。
[0018] 次に、タルミ量について説明する。一般にポリイミドフィルムは、タルミ量が大きいも のとなつている。タルミ量が大きくなる原因は、その焼成に高い温度を必要とする、あ るいは、焼成炉内の温度ムラ等が起因すると考えている。本発明者らは、従来公知の ポリイミドフィルムにつ 、て種々検討した結果、タルミ量が大き!/、と金属張積層板の外 観が悪くなり、その結果得られる FPCの収率およびその信頼性が低下してしまうこと を見出した。さらに、ポリイミドフィルムのタルミ量が大きいと FPCの寸法変化率および そのバラツキも大きくなる傾向にあることを見出した。これは、 FPCを製造する工程と 関係していると考えている。すなわち、ポリイミドフィルムのタルミが起因し、 FPCの製 造工程で発生する張力の幅方向でのばらつきが生じ、結果として寸法変化のばらつ きを生じてしまう。そこで、本発明においては、ポリイミドフィルムのタルミ量を 13mm 以下、好ましくは 11mm以下、特に好ましくは 10mm以下で規定する。
[0019] さらに、本発明のポリイミドフィルムの加熱収縮率は、 0.05%以下、さらには 0.04% 以下となって!/、ることが好ま 、。加熱収縮率がこの範囲を上回ると寸法安定性が悪 くなる傾向にあり、 FPCの収率が低下する傾向にある。
[0020] (本発明のポリイミドフィルムの好まし 、製造例)
本発明の実施の一形態について、以下に説明する。
[0021] 本発明に用いられるポリイミドフィルムは、ポリアミド酸を含む溶液を用い、従来公知 の方法を採用してポリイミドフィルムを製造することができる。
[0022] ポリアミド酸の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができ、通常、芳 香族酸二無水物と芳香族ジァミンを、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、 得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物と
ジァミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらのポリアミド酸 溶液は通常 5〜35wt%、好ましくは 10〜30 %の濃度で得られる。この範囲の濃度 である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。
重合方法としてはあらゆる公知の方法およびそれらを組み合わせた方法を用いるこ とができる。ポリアミド酸の重合における重合方法の特徴はそのモノマーの添加順序 にあり、このモノマー添加順序を制御することにより得られるポリイミドの諸物性を制御 することができる。従い、本発明においてポリアミド酸の重合にはいかなるモノマーの 添加方法を用いても良い。代表的な重合方法として次のような方法が挙げられる。す なわち、
1)芳香族ジァミンィ匕合物を有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香 族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジァミンィ匕合 物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレボリマーを得 る。続いて、全工程において用いられる芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジ ァミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジァミンィ匕合物を用いて、一段階 あるいは多段階に重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジァミンィ匕合 物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレボリマーを得る。 続、てここに芳香族ジァミンィ匕合物を追加添加後、全工程にぉ 、て用いる芳香族テ トラカルボン酸二無水物と芳香族ジァミンィ匕合物が実質的に等モルとなるように芳香 族テトラカルボン酸二無水物を用いて、一段階または多段階に重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び Zまたは分散さ せた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジァミンィ匕合物を用いて重合させる方法
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジァミンの混合物を 有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
などのような方法である。これら方法を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせ て用いることちでさる。
[0024] これらポリアミド酸溶液力もポリイミドフィルムを製造する方法にっ 、ては従来公知の 方法を用いることができる。この方法には熱イミドィ匕法と化学イミドィ匕法が挙げられ、ど ちらの方法を用いてフィルムを製造してもかまわないが、化学イミド化法によるイミド化 の方が本発明に好適に用いられる諸特性を有したポリイミドフィルムを得やす ヽ傾向 にある。
[0025] また、本発明にお 、て特に好ま 、ポリイミドフィルムの製造工程は、
a)有機溶剤中で芳香族ジァミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させてポリ アミド酸溶液を得る工程、
b)上記ポリアミド酸溶液を含む製膜ドープを支持体上に流延する工程、
c)支持体上で加熱した後、支持体力ゝらゲルフィルムを引き剥がす工程、
d)更に加熱して、残ったアミド酸をイミド化し、かつ乾燥させる工程、
を含むことが好ましい。
[0026] 上記工程において無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、 β —ピコリン、ピリジン等の第三級ァミン類等に代表されるイミドィ匕触媒とを含む硬化剤 を用いても良い。
[0027] 以下本発明の好ま 、一形態、化学イミド法を一例にとり、ポリイミドフィルムの製造 工程を説明する。ただし、本発明は以下の例により限定されるものではない。
[0028] 製膜条件や加熱条件は、ポリアミド酸の種類、フィルムの厚さ等により、変動し得る
[0029] a)有機溶剤中で芳香族ジァミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させてポ リアミド酸溶液を得る工程は、上述のような方法でポリアミド酸の溶液を得ればょ 、。
[0030] 本発明において使用できる適当な酸無水物はいかなるものを用いてもよいが、ピロ メリット酸二無水物、 2, 3, 6, 7 ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、 3, 3 ' , 4, 4 ,ービフエ-ルテトラカルボン酸二無水物、 1, 2, 5, 6 ナフタレンテトラカルボン酸 二無水物、 2, 2' , 3, 3,ービフエ-ルテトラカルボン酸二無水物、 3, 3 ' , 4, 4,一べ ンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物、 4, 4'ーォキシジフタル酸二無水物 2, 2 ビ ス(3, 4 ジカルボキシフエ-ル)プロパン二無水物、 3, 4, 9, 10 ペリレンテトラ力 ルボン酸二無水物、ビス(3, 4 ジカルボキシフエ-ル)プロパン二無水物、 1, 1
ビス(2, 3 ジカルボキシフエ-ル)エタンニ無水物、 1, 1—ビス(3, 4 ジカルボキ シフエ-ル)エタンニ無水物、ビス(2, 3 ジカルボキシフエ-ル)メタン二無水物、ビ ス(3, 4—ジカルボキシフエ-ル)エタンニ無水物、ォキシジフタル酸二無水物、ビス (3, 4ージカルボキシフエ-ル)スルホン二無水物、 ρ—フエ-レンビス(トリメリット酸モ ノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物 )、ビスフエ ノール Aビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物を含み、これら を単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。この中も、 3, 3' , 4, 4'— ビフエ-ルテトラカルボン酸二無水物、 2, 2' , 3, 3,ービフエ-ルテトラカルボン酸二 無水物、 3, 3' , 4, 4'一べンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物、 4, 4'ーォキシジ フタル酸ニ無水物、ピロメリット酸二無水物力 選択される少なくとも 1種を用いること 力 目的とするポリイミドフィルムを容易に得ることができ、しかも、 FPCのベースフィ ルムとして必要な物性を実現しやす 、と 、う点力 好ま U、。
[0031] 本発明において使用し得る適当なジァミンとしては、 p—フエ-レンジァミン、 4, 4, ージアミノジフエニルプロパン、 4, 4'ージアミノジフエニルメタン、ベンジジン、 3, 3' —ジクロ口べンジジン、 4, 4'—ジアミノジフエ-ルスルフイド、 3, 3,一ジアミノジフエ ニルスルホン、 4, 4'ージアミノジフエニルスルホン、 4, 4'ージアミノジフエニルエー テル、 3, 3'—ジアミノジフエニルエーテル、 3, 4'—ジアミノジフエニルエーテル、 1, 5—ジァミノナフタレン、 4, 4'ージアミノジフエ二ルジェチルシラン、 4, 4'ージァミノ ジフエ-ルシラン、 4, 4'ージアミノジフエ-ルェチルホスフィンォキシド、 4, 4'ージァ ミノジフエ-ル N—メチルァミン、 4, 4'ージアミノジフエ-ル N—フエ-ルァミン、 1, 4ージァミノベンゼン(p—フエ-レンジァミン)、 1, 3 ジァミノベンゼン、 1, 2 ジアミ ノベンゼン、 2, 2 ビス(4一(4 アミノフエノキシ)フエ-ル)プロパン及びそれらの類 似物などが挙げられる。これらのジァミンの中で、 2, 2 ビス [4 (4ーァミノフエノキシ )フエ-ル]プロパンを用いることが、 目的とするポリイミドフィルムを容易に得ることがで き、し力も、低吸湿性を実現しやすいという点から力も好ましい。
[0032] 本発明のポリイミドフィルムは、 100〜200°Cの平均線膨張係数が 5〜20ppmであ ることが、得られる FPCの寸法安定性が良好なものになるという点から好ましい。上記 平均線膨張係数が、 5〜20ppmとなるように、酸二無水物あるいはジァミンを選択す
ることが好ましい。
[0033] なお、 a)工程で用いる酸二無水物およびジァミンの選択については、後述の、 d) 更に加熱して、残ったアミド酸をイミドィ匕し、かつ乾燥させる工程と関係することから、 d)工程で説明する。
[0034] ポリイミド前駆体 (以下ポリアミド酸と!、う)を合成するための好ま U、溶媒は、ポリア ミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、アミド系溶媒す なわち N, N—ジメチルフオルムアミド、 N, N—ジメチルァセトアミド、 N—メチルー 2 —ピロリドンなどであり、 N, N—ジメチルフオルムアミド、 N, N—ジメチルァセトアミド が特に好ましく用い得る。
[0035] また、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの 諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるも のを用いても良いが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、 窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
[0036] フィラーの粒子径は改質すべきフィルム特性と添加するフイラ一の種類によって決 定されるため、特に限定されるものではないが、一般的には平均粒径が 0. 05-100 m、好ましく ίま 0. 1〜75 m、更に好ましく ίま 0. 1〜50 m、特に好ましく ίま 0. 1 〜25 /ζ πιである。粒子径がこの範囲を下回ると改質効果が現れに《なり、この範囲 を上回ると表面性を大きく損なったり、機械的特性が大きく低下したりする可能性があ る。また、フィラーの添加部数についても改質すべきフィルム特性ゃフイラ一粒子径な どにより決定されるため特に限定されるものではない。一般的にフィラーの添加量は ポジイミド 100重量咅に対して 0. 01〜: LOO重量咅、好ましくは 0. 01〜90重量咅^更 に好ましくは 0. 02〜80重量部である。フィラー添加量がこの範囲を下回るとフイラ一 による改質効果が現れにくぐこの範囲を上回るとフィルムの機械的特性が大きく損 なわれる可能性がある。フィラーの添カロは、
1.重合前または途中に重合反応液に添加する方法
2.重合完了後、 3本ロールなどを用いてフィラーを混鍊する方法
3.フィラーを含む分散液を用意し、これをポリアミド酸有機溶媒溶液に混合する方法 など!/、かなる方法を用いてもょ 、が、フィラーを含む分散液をポリアミド酸溶液に混
合する方法、特に製膜直前に混合する方法が製造ラインのフィラーによる汚染が最も 少なくすむため、好ましい。フィラーを含む分散液を用意する場合、ポリアミド酸の重 合溶媒と同じ溶媒を用いるのが好ましい。また、フィラーを良好に分散させ、また分散 状態を安定化させるために分散剤、増粘剤等をフィルム物性に影響を及ぼさな ヽ範 囲内で用いることもできる。
次に、 b)上記ポリアミド酸溶液を含む製膜ドープを支持体上に流延する工程につ いて説明する。
脱水剤及びイミドィ匕触媒をポリアミド酸溶液中に混合して製膜ドープを得る。引き続 いてこの製膜ドープをガラス板、アルミ箱、エンドレスステンレスベルト、ステンレスドラ ムなどの支持体上にフィルム状にキャストし、支持体上で 80°C〜200°C、好ましくは 1 00°C〜180°Cの温度領域で加熱することで脱水剤及びイミド化触媒を活性化するこ とによって部分的に硬化及び Zまたは乾燥した後、支持体力 剥離してポリアミド酸 フィルム(以下、ゲルフィルムという)を得る。
ゲルフィルムは、ポリアミド酸力 ポリイミドへの硬化の中間段階にあり、自己支持性を 有し、式 (1)
(A-B) Χ 100/Β· · · · (1)
式 (1)中
A, Bは以下のものを表す。
A:ゲルフィルムの重量
B:ゲルフィルムを 450°Cで 20分間加熱した後の重量
力も算出される揮発分含量は 5〜500重量%の範囲、好ましくは 5〜200重量%、よ り好ましくは 5〜150重量%の範囲にある。この範囲のゲルフィルムを用いることが好 適であり、この範囲を逸脱すると焼成過程でフィルム破断、乾燥ムラによるフィルムの 色調ムラ、異方性の発現、特性ばらつき等の不具合が起こることがある。
脱水剤の好ましい量は、ポリアミド酸中のアミド酸ユニット 1モルに対して、 0. 5〜5モ ル、好ましくは 1. 0〜4モルである。
また、イミドィ匕触媒の好ましい量はポリアミド酸中のアミド酸ユニット 1モルに対して、 0 . 05〜3モル、好ましくは 0. 2〜2モルである。
脱水剤及びイミドィ匕触媒が上記範囲を下回ると化学的イミドィ匕が不十分で、焼成途 中で破断したり、機械的強度が低下したりすることがある。また、これらの量が上記範 囲を上回ると、イミドィ匕の進行が早くなりすぎ、フィルム状にキャストすることが困難とな ることがある。
[0038] 次に、 c)支持体上で加熱した後、支持体力もゲルフィルムを引き剥がす工程により 、ゲルフィルムを得る。
[0039] 次に、 d)更に加熱して、残ったアミド酸をイミド化し、かつ乾燥させる工程を説明す る。 d)工程は、 c)工程で得られたゲルフィルムの端部を固定して硬化時の収縮を回 避して乾燥し、水、残留溶媒、残存イミド化触媒、残存脱水剤を除去し、そして残った アミド酸を完全にイミド化する方法が好ましい。 d)工程では、熱風乾燥炉、遠赤外線 乾燥炉などの公知の加熱炉を用いればょ 、。
[0040] 既に述べたように、本発明者らは、ポリイミドフィルムの最大タルミ量力 その焼成条 件に起因していると考えている。本発明者らの検討によれば、タルミ量を特定の範囲 に抑える方法としては、下記の(1)〜(3)の条件を選択あるいは組み合わせることで 、目的とするポリイミドフィルムを得ることができることが判明した。すなわち、
(1)加熱炉内の温度を徐々に上げていく方法
(2)加熱炉内の幅方向の温度ムラを小さくする方法
(3)最終焼成温度を低く抑える方法
等があり、これら方法を単独で用いることでも効果を奏するが、複数を組み合わせて 用 、ることも好まし 、。
これら方法のうち、(1)、 (2)の方法は設備設計により達成することができる。例えば、 (1)の方法について、複数の加熱炉を連結して使用する場合、各炉の温度差を小さ くすることが好ましい。各炉の温度差は、 150°C以下、さらには 120°C以下であること が好ましい。また、(2)の方法について、加熱炉内の幅方向の温度ムラは、 60°C以 下、さらには 50°C以下、特には 30°C以下に抑えることが好ましい。
[0041] また、(3)の最終焼成温度は、 400〜500°Cの温度で 5〜400秒加熱するのが好ま しい。フィルムのタルミ量を 13mm以下、好ましくは 11mm以下、特に好ましくは 9m m以下とするには最高焼成温度を上記範囲にすると達成しやすい傾向にある。加熱
時間は上記範囲内で、温度が低いときには長ぐ温度が高いときには短くするといつ た当業者の常識の範囲内で制御すればよい。
[0042] この時、熱風による乾燥のみならず遠赤外線ヒーター、マイクロ波加熱などの公知 の如何なる加熱手段を併用してもよい。最終焼成温度 (フィルム近傍の温度)は好ま しくは 400〜480°C、特に好ましくは 400〜460°Cである。温度が低すぎると乾燥'ィ ミドィ匕不足により FPCとして過酷な条件下で使用した際の信頼性低下をきたす恐れ があり、高すぎるとフィルムのタルミ量が大きくなる傾向にある。
[0043] また、フィルム中に残留している内部応力を緩和させるためにフィルムを搬送するに 必要最低限の張力下において加熱処理をすることもできる。この加熱処理はフィルム 製造工程において行ってもよいし、また、別途この工程を設けても良い。加熱条件は フィルムの特性や用いる装置に応じて変動するため一概に決定することはできない 力 一般的には 200°C以上 500°C以下、好ましくは 250°C以上 500°C以下、特に好 ましくは 300°C以上 450°C以下の温度で、 1〜300秒、好ましくは 2〜250秒、特に好 ましくは 5〜200秒程度の熱処理により内部応力を緩和することができ、 200°Cでの 加熱収縮率を小さくすることができる。
[0044] また、フィルムの異方性を悪ィ匕させない程度にゲルフィルムの固定前後でフィルム を延伸することもできる。この時、好ましい揮発分含有量は 100〜500重量%、好まし くは 150〜500重量%である。揮発分含有量がこの範囲を下回ると延伸しに《なる 傾向にあり、この範囲を上回るとフィルムの自己支持性が悪ぐ延伸操作そのものが 困難になる傾向にある。
[0045] 延伸は、差動ロールを用いる方法、テンターの固定間隔を広げていく方法等公知 の ヽかなる方法を用いてもょ 、。
[0046] (3)最終焼成温度を低く抑える方法を採用する場合、ポリイミドフィルムの最終焼成 温度は、ポリイミドの分子構造によって大きく制約を受けるため、ポリイミドを適切に分 子設計することにより、低温での焼成が可能となる。
[0047] 最高焼成温度とポリイミドの分子構造の関係は次のようである。
部分的に乾燥および Zまたはイミド化したポリアミド酸フィルム (ゲルフィルム)を焼成 する際に、同じ焼成温度を適用しても、ポリアミド酸 (あるいはポリイミド)の分子構造
によって、イミドィ匕が進行しやす 、構造もあれば進行しにく 、構造もある。
[0048] 一方、最終的に得られるポリイミドフイルムの接着性や PCT耐性 (PCT処理前後の 接着強度の保持率)を良好なものとするためには、フィルムのイミドィ匕を十分に行う必 要がある。具体的には、十分にイミドィ匕するのに必要な温度で焼成する必要がある。 しかし、焼成温度が高くなるほど、フィルムのタルミ量は大きくなつてしまう。
[0049] フィルムのタルミ量が大きくならないような温度で焼成することができればよいが、よ く知られたポリイミドフィルムは、接着性などの特性を向上させるために、高い温度で 焼成されている。すなわち、よく知られたポリイミドフィルムは、タルミ量の小さいポリイ ミドフィルムを得ようとして低温で焼成すると、接着性や PCT耐性に劣る傾向にある。 この傾向は、当業者にとって、ポリイミドフィルムの製造工程における最高焼成温度を 低く設定しようと考える妨げとなっていた。
[0050] ところが、ポリイミドの分子構造を適切に設計することによって、最高焼成温度を低く 抑えても、イミドィ匕が十分に進行し、その結果、タルミ量が大きくなることなぐ接着性 や PCT耐性に優れたポリイミドフィルムが得ることが可能になることを本発明者らは見 出した。
[0051] さらに、本発明者らは、ポリイミドフィルムの分子設計について種々検討した結果、 分子設計の自由度は高ぐ上記特性に加えて寸法安定性までも考慮に入れることが できることが判明した。すなわち、低温での焼成を実現しうるような分子設計の範囲に おいて、最終的に得られるポリイミドフィルムの tan δピーク温度を 320°C以上 380°C 未満とすることが、寸法安定性のょ 、ポリイミドフィルムを得る点で有効であることを見 出した。
[0052] 以下、分子設計の一例について説明する。
[0053] 最終焼成温度を低くするには、 tan δピークを有するポリイミドを用いる必要がある。
以下に示す指標に基づいて試行を繰り返せば、当業者であれば容易に分子設計す ることがでさる。
I)パラフエ-レンジァミンやべンジジン誘導体などのような剛直構造のジァミンの使用 量を大きくすることにより、 tan δピーク温度が高くなる及び Ζ又は tan δピークが不 明瞭になりついには消失する及び Ζ又は tan δ値が小さくなる。
[0054] 剛直構造を有するジァミンの例としては、
[0055] [化 1]
NH2— R2-NH2
一般式 (1 )
[0056] 式中の R2は
[0057] [化 2]
[0058] で表される 2価の芳香族基力 なる群力 選択される基であり、式中の Rは同一また
3
は異なって CH —、 一 OH、 -CF 、 一 SO 、 一 COOH、 一 CO— NH 、 C1一、 Br—、
3 3 4 2
F—、及び CH O—からなる群より選択される何れかの 1つの基である)
3
が挙げられる。
Π)分子鎖中に、エーテル基、カルボニル基、エステル基、スルホン基、脂肪族基など のような屈曲構造を有するジァミンの使用量を大きくした場合、 tan δピーク温度が低 くなる及び Ζ又は tan δピークが明瞭になる及び Ζ又は tan δ値が大きくなる。
[0059] 屈曲性を有するジァミンの例としては、
[0060] [化 3]
4
[0062] [化 4]
[0063] で表される 2価の有機基力 なる群力 選択される基であり、式中の Rは同一または
5
異なって、 CH―、— OH、 -CF 、 -SO 、— COOH、— CO— NH 、 CI—、 Br―、
3 3 4 2
F―、及び CH O—力 なる群より選択される 1つの基である。 )
3
が挙げられる。
III)ピロメリット酸二無水物のような剛直構造の酸二無水物の使用量を大きくした場合 、 tan δピーク温度が高くなる及び Ζ又は tan δピークが不明瞭になりついには消失 する及び Ζ又は tan δ値が小さくなる。
IV) 3,3',4,4'—ビフエ-ルテトラカルボン酸二無水物、 3, 3' , 4, 4, 一ベンゾフエノ ンテトラカルボン酸二無水物、 4, 4'ーォキシジフタル酸二無水物などのような屈曲構 造を有する酸二無水物の使用量を大きくすると tan δピーク温度が低くなる及び Ζ又 は tan δピークが明瞭になる及び Ζ又は tan δピーク値が大きくなる。
[0064] また、(3)最終焼成温度を低く抑える方法が最大タルミの抑制に効果的なポリイミド
フィルムの組成として、熱可塑性ポリイミド由来のブロック成分を有する非熱可塑性榭 脂を含むポリイミドフィルムが挙げられる。すなわち、本発明において理想的なポリイ ミドフィルムを説明すると、ポリイミド榭脂全体としては非熱可塑性であり、その中に特 定のブロック成分が存在するポリイミド榭脂により構成されるポリイミドフィルムである。 そして、特定のブロック成分とは、該ブロック成分のみ力 なるポリイミドフィルムを製 造した場合に、熱可塑性を示すようなものとなっている。
[0065] そのようなポリイミド榭脂を与えるポリアミド酸の重合方法の一例を挙げると、例えば 、ポリアミド酸の重合方法として記載した、前述の 2)あるいは 3)の方法において、プ レポリマーを製造する際に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジァミンィ匕合 物を等モル反応させた場合に熱可塑性ポリイミドとなるように組成を選択してプレポリ マーを製造し、かつ最終的に得られるポリイミドが非熱可塑性となるように全工程にお V、て用いる芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジァミンィ匕合物を選択すれば よい。
[0066] たとえば、 DMF (N, N—ジメチルホルムアミド)に 2, 2—ビス〔4— (4—アミノフエノ キシ)フエ-ル〕プロパン(BAPP)と 4, 4,ージアミノジフエ-ルエーテル(4, 4,—OD A)を溶解させ、ここに 3, 3 ' ,4, 4,,-ベンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物(BTD A)を添カ卩し、次にピロメリット酸二無水物(PMDA)を添加する。このとき、 BTDAと P MDAの添カ卩量が合計で、 BAPPおよび 4, 4,一 ODAに対して過小量となるように 加えて熱可塑性ポリイミドブロック成分を合成する。その後、この溶液にさらに、ノ ラフ ェ-レンジアミンを溶解させ、さらに全工程にお 、て用いる酸二無水物とジァミン量が ほぼ等モルとなるようにピロメリット酸二無水物をカ卩えてポリアミド酸溶液を得ることが できる。
[0067] ここで、熱可塑性ポリイミドブロック成分とは、ブロック成分を構成する芳香族テトラ力 ルボン酸二無水物と芳香族ジァミンィ匕合物を等モル反応させて得られるポリイミド榭 脂のフィルム (便宜上、熱可塑性ポリイミドブロック成分力 なるポリイミドフィルムとす る)が、金属製の固定枠に固定して 450°Cで 1分加熱した際に軟ィ匕し、元のフィルム の形状を保持しな 、ようなものを指す。熱可塑性ポリイミドブロック成分力 なるポリィ ミドフィルムは、公知の方法で、最高焼成温度 300°C、焼成時間 15分として得ること
ができる。具体的な作製方法としては、例えば、前述の熱可塑性ポリイミド由来のプロ ック成分を有する力否かを確認する方法に記載したような方法にぉ 、て、最高焼成 温度 300°Cで 15分とする方法が挙げられる。熱可塑性のブロック成分を決定する際 に、上述のようにフィルムを作製してみて、溶融する温度を確認すればよい。
[0068] この熱可塑性ブロック成分は、上述のように作製した熱可塑性ポリイミドブロック成 分力もなるポリイミドフィルムが 250〜450°Cに加熱した際に軟ィ匕して形状保持しなく なるもの好ましぐ特には 300〜400°Cに加熱した際に軟ィ匕して形状保持しなくなる が好ましい。この温度が低すぎると、最終的に非熱可塑性ポリイミドフィルムを得ること が困難になり、この温度が高すぎると目的とするフィルムが得られにくくなる傾向にあ る
またさらに熱可塑性ポリイミドブロック成分は、ポリイミド全体の 20〜60mol%含まれ るのが好ましぐさらには 25〜55mol%、特に 30〜50mol%含有されることが好まし い。
[0069] 熱可塑性ポリイミドブロック成分がこの範囲を下回ると目的とするフィルムが得られ にくくなる場合があり、この範囲を上回ると最終的に非熱可塑性ポリイミドフィルムとす ることが困難となる。
[0070] 例えば、上記 2)の重合方法を用いた場合、熱可塑性ポリイミドブロック成分の含有 量は、下記式(1)に従って計算される。
(熱可塑性ブロック成分含有量) = a/Q X IOO (1)
a:熱可塑性ポリイミドブロック成分を製造する際に用いた酸二無水物成分の量 (mol )
Q:全酸二無水物成分量 (mol)
また上記 3)の重合方法を用いた場合、熱可塑性ポリイミドブロック成分の含有量は 、下記式(2)に従って計算される。
(熱可塑性ブロック成分含有量) = b/P X IOO (2)
b :熱可塑性ポリイミドブロック成分を製造する際に用いたジァミン成分の量 (mol) P :全ジァミン量(mol)
本発明における熱可塑性ポリイミドブロック成分は、上述のように熱可塑性ポリイミド
ブロック成分力もなるポリイミドフィルムを製造した場合に、 150〜300°Cの範囲にガ ラス転移温度 (Tg)を有していることが好ましい。なお、 Tgは動的粘弾性測定装置 (D MA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値等により求めることができる。
[0071] この方法のポイントは、まず、熱可塑性ポリイミドブロック成分を合成し、その後、該 熱可塑性ポリイミド前駆体と、残りのジァミンおよび酸二無水物とを反応させて、非熱 可塑性ポリイミド前駆体を製造する点にあり、熱可塑性ポリイミドブロック成分、非熱可 塑性ポリイミド前駆体は、ジァミンと酸二無水物の組み合わせを適切に選定すること によって、製造することができる。
[0072] 熱可塑性ポリイミドブロック成分と組み合わせるジァミンおよび酸二無水物としては 、前述した一般式(1)で表されるような剛直なジァミン成分、ピロメリット酸二無水物を 主成分として用いるのが好ま 、。剛直構造を有するジァミンを用いることにより非熱 可塑性とし、且つ高い弾性率を達成しやすくなる。また、ピロメリット酸二無水物はよく 知られて!/、るようにその構造の剛直性力も非熱可塑性ポリイミドを与えやす 、傾向に ある。このようにして、最終的に得られるポリイミドフィルムが非熱可塑性となるように、 分子設計を行う。
[0073] この方法とは異なり、まず剛直な構造を有するジァミンおよび酸二無水物を用いて 、剛直な構造を有するブロック成分を合成し、その後、剛直な構造を有するブロック 成分と、前述の一般式(2)で示されるような屈曲性ジァミンや 3, 3',4,4'—ビフ ニル テトラカルボン酸二無水物、 3, 3' , 4, 4'一べンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物 、 4, 4'ーォキシジフタル酸二無水物などのような屈曲構造を有する酸二無水物を適 宜組み合わせて重合することによって、最終的に得られるフィルムが非熱可塑性を示 し、かつ、 tan δピークを持つような非熱可塑性ポリイミド前駆体を重合することもでき る。ただし、熱可塑性ポリイミドブロック成分をまず合成する方法のほうが、ポリアミド酸 の重合安定性が優れ、 目的とするポリイミドフィルムが得られやす 、傾向にあると 、う 点から好ましい。
[0074] なお、得られるポリイミドフィルムが非熱可塑性であるか否かの判定は、次のようにし て行う。ポリイミドフィルムを金属製の固定枠に固定して 450°C1分加熱した際に、元 のフィルム形状を保持 (タルミ、溶融などが無 、)して 、るものを非熱可塑性とする。
[0075] 本発明の非熱可塑性ポリイミドフィルムの線膨張係数は、 5〜20ppmであることが 好ましい。また、吸湿膨張係数は 13ppm以下であることが好ましい。
さらに、弾性率は 5〜: LOGPaであることが好ましい。
[0076] これらの物性は、通常組成を変えることによって変動しうる力 本発明の熱可塑性ブ ロック成分の選び方を変更することでもコントロールが可能である。
[0077] また、本発明にお 、ては、ポリイミドフィルムの動的粘弾性測定における tan δピー クを 320°C以上 380°C未満とすることが必須である力 このようなフィルムを得るため の方法としては、上記 I)〜IV)の指標に基づいて tan δをコントロールする方法が挙 げられる。また、組成によっては、イミドィ匕の方法の選択 (熱イミドィ匕法力ィ匕学イミドィ匕 法力 、キュア剤の量によっても、 tan δピークの値は変動する場合があるので、これ らの方法を適宜組み合わせて、目的とする tan δピークにすればよい。
[0078] このようにして得られたポリイミドフィルムを用いて得られるフレキシブル金属張積層 板は、寸法変化率が小さいものとなっており、寸法変化率の小さいフレキシブル金属 張積層板を高収率で得ることができる。さらに、外観も優れたものとなり、外観収率を 向上させることが可能となる。また、 PCT処理前後の、フィルムの引裂き強度の保持 率が 60%以上とすることが可能であり、信頼性に優れたものとなっている。 PCT処理 前後の、フィルムの引裂き強度の保持率は、温度 150°C、湿度 100%RHの環境下 に 12時間曝した後の、引裂き強度の保持率である。本発明において PCT前後の引 裂き強度保持率は 60%以上、好ましくは 70%以上である。
実施例
[0079] 本発明におけるフィルムの評価は下記のようにして行った。
[0080] (PCT前後弓 I裂き強度保持率)
ASTM D— 1938に従って PCT処理の前後で測定した。
尚、 PCT処理は 150°C 100%RH の条件下で 12時間行った。
[0081] (タルミ量)
フィルムを 3mの間隔で設置した 2本の支柱ロールに掛け、一方の端を固定して、他 方の端に荷重 3kgZmを掛けた際に生じるフィルムの幅方向(TD)の水平基線から のたるみ差を読み取った。なお、タルミ量の測定においては、図 3に示すように TD方
向にお 、てフィルムの最も高 、位置に接する線を水平基線として 、る。タルミ量はフ イルム端部を起点に 50mm間隔で測定を行 、、その最大値を読み取った。
[0082] (動的粘弾性の測定)
セイコー電子(株)社製 DMS200を用いて(サンプルサイズ 巾 9mm、長さ 40mm) 、周波数 1、 5、 10Hzで昇温速度 3°CZminで 20〜400°Cの温度範囲で測定した。 温度に対して貯蔵弾性率をプロットした曲線の変曲点となる温度をガラス転移温度と した。
[0083] (線膨張係数)
100〜200°Cの線膨張係数の測定は、セイコー電子 (株)社製 TMA120Cを用いて (サンプルサイズ 幅 3mm、長さ 10mm)、荷重 3gで 10°CZminで 10°C〜400°Cま で一且昇温させた後、 10°Cまで冷却し、さらに 10°C/minで昇温させて、 2回目の昇 温時の 100〜200°Cにおける熱膨張率から平均値として計算した。
[0084] (加熱収縮率)
IPC-TM-650 2. 2. 4 Method Aに準じて、 200°C2時間加熱処理前後の寸法変化 により求めた。なお、加熱収縮率は、幅方向でタルミ量が最大となる位置と、最小の 位置の 2箇所で測定した。
[0085] (外観と FPCカ卩ェ性の判定)
得られたポリイミドフィルムをコロナ密度 200W · minZm2で処理した後、参考例に従 つて得た Bステージ接着剤付き PETフィルムを重ね合わせ、 90°Cで lkgZcm2の圧 力で圧着した。 PETフィルムを剥がし、 12 111の圧延銅箔と120°〇、圧力は 2kgZc mでロールラミネート法により連続的に張り合わせた。銅張あわせ品を、 60°Cで 3時 間、 80°Cで 3時間、 120°Cで 3時間、 140°Cで 3時間、 160°Cで 4時間のステップで 加熱後徐冷して接着剤の硬化を行って、フレキシブル銅張積層板を得た。得られた 金属張積層板のカールの有無により外観を判断した。また、 FPCの加工性は、銅箔 をラミネートした際のシヮの有無で判断した。シヮが多く発生しているほど、 FPCとし て加工できる部位が少なぐ加工性が悪 ヽと 、える。
[0086] (参考例 1:ナイロン変性エポキシ系接着剤の合成)
ポリアミド榭脂(日本リルサン社製プラタボンド Ml 276) 50重量部、ビスフエノール A
型エポキシ榭脂(油化シェルエポキシ社製ェピコート 828) 30重量部、クレゾ一ルノボ ラック型エポキシ榭脂 10重量部、トルエン Zイソプロピルアルコール 1 Z 1混合溶液 1 50重量部を混合した溶液に、ジアミノジフエ-ルスルホン Zジシアンジアミド 4Z1 2 0%メチルセ口ソルブ溶液 45重量部を混合した接着剤溶液を調製し、
25 /z m厚みの PETフィルム上に接着剤を、乾燥後 11 mになるように塗布し、 120 °Cで 2分乾燥して支持体つき Bステージ接着剤を得た。
[0087] (熱可塑性の判定)
熱可塑性ポリイミドブロック成分力もなるポリイミドフィルムを、最高焼成温度 300°C、 焼成時間 15分で作製し、金属製の固定枠に固定して 450°Cで 1分加熱した際に軟 化し、元のフィルムの形状を保持しないような力つた場合、熱可塑性であると判定した
[0088] (実施例 1)
10°Cに冷却した N, N—ジメチルホルムアミド(DMF)に、 2, 2—ビス [4— (4—ァミノ フエノキシ)フエ-ル]プロパン(BAPP) 25molと 4, 4'—ジアミノジフエ-ルエーテル( 4, 4,— ODA) 25molを溶解した。ここに 3, 3' , 4, 4,—ビフエ-ルテトラカルボン酸 二無水物(BPDA)を 30mol添カ卩して溶解させた後、ピロメリット酸二無水物 15molを 添加して 1時間攪拌し、熱可塑性ポリイミド前駆体ブロック成分を形成した。
この溶液に、パラフエ-レンジァミン (p— PDA)を 50mol溶解した後、ピロメリット酸二 無水物(PMDA)を 53mol添加し 1時間攪拌して溶解させた。さらに別途調整してあ つた PMDAの DMF溶液を注意深く添カ卩し、粘度が 2200ボイズ(23°C)に達したとこ ろで添加を止めた。 1時間攪拌を行って(固形分濃度 18wt%、 2750ボイズ (23°C) ) のポリアミド酸溶液を得た。反応中、系内の温度は 20°Cに保った。
[0089] このポリアミド酸溶液に、イソキノリン Z無水酢酸 ZDMFを重量比で 7. 1/19. 0 /44. 0の割合で混合した硬化剤を、前記ポリアミド酸 100重量部に対して 60重量 部の割合ですばやくミキサーで攪拌し Tダイ力も幅 1200mmで押出してダイの下 15 mmを 12mZ分の速度で走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した 。この榭脂膜を 105°Cで 100秒乾燥させた後、自己支持性を有するゲルフィルムを 引き剥がした。このときの残揮発成分量は 47%であった。このゲルフィルムの両端を
テンターピンに固定して 250°C X 15秒(1炉:熱風循環)、 350°C X 15秒(2炉:熱風 循環)、 450°C X 15秒(3炉:熱風循環)、 450°C X 30秒 (4炉:遠赤外線式)乾燥 ·ィ ミドィ匕させ 12. 5 mのポリイミドフィルムを得た。このフィルムを 1028mmにスリットし 、 300°Cの加熱炉で 3kgZmの張力下 30秒熱処理した。得られたフィルム特性を表 1 に示す。ー炉内の幅方向の温度バラツキは 25°C、ニ炉内の幅方向のバラツキは 20 。C、三炉内の幅方向の温度バラツキは 45°C、四炉内の幅方向の温度バラツキは 55 °Cであり、 300°Cでの加熱処理工程における加熱炉内の幅方向の温度バラツキは 2 0°Cであった。幅方向の温度バラツキは、両端、中央の 3点における雰囲気温度を測 定して求めた。
[0090] なお、 BAPPZ4, 4,—ODAZBTDAZPMDA= 25Z25Z30Zl5の比で得 たポリアミド酸溶液をガラス板状に流延し、最高焼成温度 300°Cで 15分焼成してフィ ルムを作製し、金属製の固定枠に固定して 450°Cで加熱しょうとしたが、熔融して形 態を保持せず、熱可塑性ブロック成分となって ヽることが確認できた。
[0091] (実施例 2)
実施例 1において、 4炉条件を 490°C X 10秒とし、 4炉内の幅方向の温度ばらつきを 45°Cとした以外は実施例 1と同様にして幅 1028mmのポリイミドフィルムを得た。得ら れたフィルム特性を表 1に示す。
[0092] (実施例 3)
10°Cに冷却した N, N—ジメチルホルムアミド(DMF)に、 BAPP35molと 4, 4,— O DA15molをを溶解した。ここに、 BTDAを 25mol添カロして溶解させた後、ピロメリット 酸二無水物 20molを添加して 1時間攪拌し、熱可塑性ポリイミド前駆体ブロック成分 を形成した。
この溶液に、パラフエ-レンジァミン (p— PDA)を 50mol溶解した後、ピロメリット酸二 無水物(PMDA)を 53mol添加し 1時間攪拌して溶解させた。さらに別途調整してあ つた PMDAの DMF溶液を注意深く添カ卩し、粘度が 2200ボイズ(23°C)に達したとこ ろで添加を止めた。 1時間攪拌を行って(固形分濃度 18wt%、 2750ボイズ (23°C) ) のポリアミド酸溶液を得た。反応中、系内の温度は 20°Cに保った。その後の工程は、 実施例 1と同様にして幅 1028mmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルム特性
を表 1に示す。
[0093] なお、 BAPPZ4, 4,—ODAZBTDAZPMDA= 35Zl5Z25Z25の比で得 たポリアミド酸溶液をガラス板状に流延し、最高焼成温度 300°Cで 15分焼成してフィ ルムを作製し、金属製の固定枠に固定して 450°Cで加熱しょうとしたが、熔融して形 態を保持せず、熱可塑性ブロック成分となって ヽることが確認できた。
[0094] (実施例 4)
10°Cに冷却した N, N—ジメチルホルムアミド(DMF)に、 PDA50molを溶解した。 ここに PMDA45molを添カ卩して 1時間攪拌した。
この溶液に、 BAPP50molを溶解した後、 BTDA20mol、次いでピロメリット酸二無 水物(PMDA)を 33mol添加し 1時間攪拌して溶解させた。さらに別途調整してあつ た PMDAの DMF溶液を注意深く添カ卩し、粘度が 2200ボイズ(23°C)に達したところ で添加を止めた。 1時間攪拌を行って(固形分濃度 18wt%、 2900ボイズ (23°C) )の ポリアミド酸溶液を得た。反応中、系内の温度は 20°Cに保った。その後の工程は、実 施例 1と同様にして幅 1028mmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルム特性を 表 1に示す。
[0095] (実施例 5)
10°Cに冷却した N, N—ジメチルホルムアミド(DMF)に、 PDA60molを溶解した。 ここに PMDA54molを添カ卩して 1時間攪拌した。
この溶液に、 BAPPを 40mol添カ卩した後、 BTDAを 10mol、次いでピロメリット酸二 無水物(PMDA)を 34mol添加し 1時間攪拌して溶解させた。さらに別途調整してあ つた PMDAの DMF溶液を注意深く添カ卩し、粘度が 2200ボイズ(23°C)に達したとこ ろで添加を止めた。 1時間攪拌を行って(固形分濃度 18wt%、 3000ボイズ (23°C) ) のポリアミド酸溶液を得た。反応中、系内の温度は 20°Cに保った。その後の工程は、 実施例 1と同様にして幅 1028mmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルム特性 を表 1に示す。その後の工程は、実施例 1と同様にして幅 1028mmのポリイミドフィル ムを得た。得られたフィルム特性を表 1に示す。
[0096] (比較例 1)
10°Cに冷却した N, N—ジメチルホルムアミド(DMF)に、 4, 4,— ODAlOOmolを
溶解した。この溶液に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を 96mol添加し 1時間攪拌 して溶解させた。さらに別途調整してあった PMDAの DMF溶液を注意深く添カロし、 粘度が 2200ボイズ (23°C)に達したところで添加を止めた。 1時間攪拌を行って(固 形分濃度 18wt%、 2950ボイズ (23°C) )のポリアミド酸溶液を得た。反応中、系内の 温度は 20°Cに保った。その後の工程は、実施例 1と同様にして幅 1028mmのポリイ ミドフィルムを得た。得られたフィルム特性を表 1に示す。
[0097] (比較例 2)
4炉の加熱を 490°C10秒とし、 4炉内のバラツキを 70°Cとした以外は実施例 1と同様 にしてポリイミドフィルムを得た。得られたフィルム特性を表 1に示す。
[0098] (比較例 3)
10°Cに冷却した N, N—ジメチルホルムアミド(DMF)に、 ODA50molと PDA50mo 1を溶解した。ここに、 TMHQを 50mol添加して溶解させた後、 1時間攪拌した。 この溶液に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を 47mol添加し 1時間攪拌して溶解さ せた。さらに別途調整してあった PMDAの DMF溶液を注意深く添カ卩し、粘度が 220 0ボイズ(23°C)に達したところで添加を止めた。 1時間攪拌を行って(固形分濃度 18 wt%、 2600ボイズ (23°C) )のポリアミド酸溶液を得た。反応中、系内の温度は 20°C に保った。その後の工程は、実施例 1において、 4炉の温度を 500°C X 15秒とし、 4 炉内の幅方向の温度バラツキを 50°Cとした以外は、実施例 1と同様にして幅 1028m mのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルム特性を表 1に示す。
[0099] (比較例 4)
10°Cに冷却した N, N—ジメチルホルムアミド(DMF)に、 PDA55molを溶解し、 P MDA49. 5molを添カ卩し、 1時間攪拌をした。
この溶液に、 BAPP45molを溶解し、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を 47. 5mol 添加し 1時間攪拌して溶解させた。さらに別途調整してあった PMDAの DMF溶液を 注意深く添加し、粘度が 2200ボイズに達したところで添加を止めた。 1時間攪拌を行 つて(固形分濃度 18wt%、 2900ボイズ (23°C) )のポリアミド酸溶液を得た。反応中 、系内の温度は 20°Cに保った。その後の工程は、実施例 1において、 4炉の温度を 4 80°C X 15秒とし、 4炉内の幅方向の温度バラツキを 75°Cとした以外は、実施例 1と
同様にして幅 1028mmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルム特性を表 1に示 す。
[表 1]