明 細 書
(メタ)アクリル酸又は (メタ)アクリル酸エステルの製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、(メタ)アクリル酸又は (メタ)アクリル酸エステルを製造するための蒸留精 製方法に関する。
[0002] なお、本明細書にぉ 、て、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸との総称で あり、そのいずれか一方又は両方を指す。また (メタ)アクリル酸類とは、(メタ)アクリル 酸及びこれらの酸とアルコールと力 得られる (メタ)アクリル酸エステルを総称するも のであり、そのうち少なくとも一種を指す。
背景技術
[0003] 周知の通り、アクリル酸を生成させる方法として、プロピレンの接触気相酸化反応に よる方法がある。このプロピレンを酸ィ匕してアクリル酸を得る方法には、プロピレンから ァクロレインまでの酸化とァクロレイン力 アクリル酸までの次の段階の酸化とを、それ ぞれを別の反応器にぉ 、て異なる条件で行う二段酸ィ匕プロセスと、一段の酸化で直 接アクリル酸まで酸ィ匕するプロセスとがある。
[0004] 図 1は二段酸ィ匕プロセスによりアクリル酸を生成させ、更に、生成したアクリル酸とァ ルコールとの反応によりアクリル酸エステルを生成させる工程の一例を示す図である
。プロピレン、水蒸気及び空気が原料ガスとして第一反応器へ供給され、さらに第二 反応器へ供給される。第一反応器及び第二反応器には、例えばモリブデン系触媒 等の触媒が充填されている。原料ガスは、第一反応器及び第二反応器を経て原料 ガス中のプロピレンが二段酸化されてアクリル酸含有ガスとなる。このアクリル酸含有 ガスを捕集塔にて水と接触させてアクリル酸水溶液とし、これに適当な抽出溶剤を加 えて抽出塔にて抽出し、溶剤分離塔にて前記抽出溶剤を分離する。
[0005] 次 ヽで、酢酸分離塔にて酢酸を分離して粗アクリル酸とし、この粗アクリル酸から精 留塔にて副生物を分離することによりアクリル酸の精製物が得られる。また、このァク リル酸 (精製物)がエステルィヒ反応塔にてエステルィヒ反応した後、抽出塔及び低沸 分離塔を経て粗アクリル酸エステルとされ、この粗アクリル酸エステルカゝら精留塔にて
副生物(高沸分)が分離されることによって、前記粗アクリル酸エステルがアクリル酸 エステル精製物となる。前記溶剤分離塔、酢酸分離塔、低沸分離塔、及び精留塔で は、アクリル酸やアクリル酸エステルを含有する組成物の蒸留が行われる。
[0006] なお、アクリル酸エステルの種類によっては図 2のような工程を経る場合もある。この 場合、副生物はアクリル酸分離塔の缶出液として得られる。
[0007] 図 2に示すアクリル酸エステル製造プロセスにおいては、アクリル酸、アルコール、 回収アクリル酸、回収アルコールをそれぞれエステルイ匕反応器に供給する。このエス テル化反応器には強酸性イオン交換榭脂等の触媒が充填されて 、る。この反応器 カゝら取り出された生成エステル、未反応アクリル酸、未反応アルコール及び生成水等 からなるエステル化反応混合物はアクリル酸分離塔に供給される。
[0008] このアクリル酸分離塔の塔底から未反応アクリル酸を含む塔底液を抜き出す。塔底 液の一部は、エステルイ匕反応器へ循環させる。前記塔底液の一部は高沸分分離塔 へ供給し、高沸分を塔底から分離する。高沸分は、高沸分解反応器 (図示せず)に 供給され、分解される。分解により生じた有価物を含む分解生成物はプロセスに循環 される。循環されるプロセス内の場所は、プロセス条件によって異なる。重合物等の 高沸点不純物は高沸分解反応器力 系外へ除去する。
[0009] 前記アクリル酸分離塔の塔頂からは、アクリル酸エステル、未反応アルコール及び 生成水が留出する。留出物の一部は還流液としてアクリル酸分離塔に循環され、残り は抽出塔に供給される。この抽出塔にはアルコール抽出のための水が供給される。 塔底力 流出するアルコールを含む水はアルコール回収塔に供給される。蒸留され たアルコールはエステルイ匕反応器に循環される。
[0010] 抽出塔の塔頂から流出した粗アクリル酸エステルは、低沸分離塔へ供給される。低 沸分離塔では、その塔頂力 低沸分が抜き出され、プロセス内へ循環される。循環さ れるプロセス内の場所は、プロセス条件によって異なる。低沸分が除去された粗ァク リル酸エステルは精製塔へ供給される。精製塔では、塔頂より高純度のアクリル酸ェ ステルが得られる。塔底液はアクリル酸を多く含むので、プロセス内へ循環される。循 環されるプロセス内の場所はプロセス条件によって異なる。前記アクリル酸分離塔、 低沸分離塔、及び精製塔では、アクリル酸やアクリル酸エステルを含有する組成物の
蒸留が行われる。
[0011] なお、近年では、上記のアクリル酸水溶液力もアクリル酸を回収するのに、抽出溶 剤を用いて行う溶剤抽出法の代わりに共沸分離法も行われる。この共沸分離法では 、水と共沸溶剤とを用いて蒸留し、共沸分離塔の塔頂からは水と共沸溶剤との共沸 混合物を留出させ、塔底からアクリル酸を回収する。
[0012] また、プロピレンの代わりにプロパンを用いて触媒の存在下で接触気相酸化反応を 行い、アクリル酸を得る方法も行われている。前記触媒には、例えば Mo— V— Te系複 合酸化物触媒或いは Mo - V - Sb系複合酸化物触媒等が用いられる。
[0013] メタクリル酸及びメタクリル酸エステルの場合は、プロピレンの代わりにイソブチレン もしくは t ブチルアルコールを用い、前述の説明と同様の酸ィ匕プロセス及びその後 のエステルイ匕プロセスを経てメタクリル酸精製物及びメタクリル酸エステル精製物が 得られる。
[0014] なお、(メタ)アクリル酸エステル (アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル)を製造 する方法としては、低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルと高級アルコールとを 、酸等を触媒としてトランスエステルイ匕反応させ、高級アルコールの (メタ)アクリル酸 エステルを製造する方法も行われて 、る。このトランスエステルイ匕反応で得られた粗( メタ)アクリル酸エステルは、触媒分離、濃縮、精留等の工程を経て精製 (メタ)アタリ ル酸エステルとされる。
[0015] 上記の粗アクリル酸、 ¾ ^タクリル酸、粗アクリル酸エステル、 ¾ ^タクリル酸エステル の蒸留精製には、精留効果をもたらすために、内部に各種のトレィを配置した棚段塔 又は各種の充填剤を充填した充填塔が一般に採用されている。
[0016] 棚段(トレイ)としては、泡鐘トレイ (バブルキャップ)、ュ-フラックストレイ、フレキシト レイ、バラストトレイ、多孔板トレイ (シーブトレイ)、チムニートレイ、波板式無堰多孔板 、平板式無堰多孔板、バッフルトレイ等がある。
[0017] 充填剤としては、リング型充填剤としての、ラシヒリング、スパイラルリング、ポーノレリ ング等、サドル型充填剤としての、バールサドル、インターロックサドル等、その他、グ ッドローパッキング、ディクソンリング、マクマホンパッキング、垂直平板型の規則充填 物等がある。
[0018] (メタ)アクリル酸又はそのエステルの蒸留工程の特徴は、蒸留工程に存在するプロ セス液中にポリマー等の固形物が含まれ得ることにある。(メタ)アクリル酸及び (メタ) アクリル酸エステルは非常に重合しやす 、物質である。そのため前記蒸留工程では 前記プロセス液に重合禁止剤を添加して重合を抑制する力 それでもプロセス液中 にはアクリル酸ダイマーやその他のポリマー物質が含まれることがある。この様な固形 物は蒸留操作の中でも生成するため、前記蒸留工程には一般に充填塔は適さない 。またダウンカマー部で固形物が生成しやすい。このため、(メタ)アクリル酸又は (メタ )アクリル酸エステルの製造では、ダウンカマーのな 、段塔を構成する平板式無堰多 孔板がよく使用される(例えば、特公昭 49 15153号公報参照)。
[0019] 平板式無堰多孔板は前記貫通孔の開口部が同一平面状にあるため、上段から下 段に落ちる液と下段力 上段へ上がる蒸気は同一の条件で開口部を通過する。した 力 Sつて開口面積のすべてが液の通過に使用されることはなぐし力も蒸気により上昇 方向に圧力が力かるので、固形物が開口部に閉塞しやすいという欠点を持つ。平板 式無堰多孔板の開孔率等の微細部分の設定を試み、商業的プラントでの実用化を 目指す技術も知られている(例えば、特開 2000-300903号公報参照。;)。しかしな がら、基本的に平板式無堰多孔板が有する上述の欠点を補うものではな力つた。
[0020] 前記固形物は、さらに蒸留精製操作において (メタ)アクリル酸又はそのエステルが 加熱されることにより、新たに析出したり、生成する。すると、蒸留塔の内部のトレイの 上や充填剤の空隙等に、これらの固形物の付着や堆積、蓄積が起こり、塔頂と塔底 との差圧の上昇、気液の接触状態の悪化、更には閉塞等が起こる。この結果、 目的 生成物の回収率を低下させたり、安定した蒸留塔の連続運転を妨げるといった問題 点がめった。
[0021] 従って、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルの双方の製造工程において、 上記問題点を解決しつつ、高回収率が安定して得られる蒸留精製プロセスの出現が 望まれていた。
発明の開示
[0022] 本発明は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルの蒸留精製に当たり、このよ うな固形物の付着、堆積、蓄積を防止して、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステ
ルの高い回収率を安定的に維持し、長期に亘り蒸留塔の安定した連続運転を行うこ とができる (メタ)アクリル酸類の製造方法を提供することを目的とする。
[0023] 本発明者らは、鋭意研究の結果、蒸留塔の内部の構造において所定の条件を満 たすことでこれらの弊害を解決する方法を見出し、本発明に至った。
[0024] すなわち本発明は、(メタ)アクリル酸又は (メタ)アクリル酸エステル (以下これらの 総称として Γ (メタ)アクリル酸類」とも 1ヽぅ)を含有する組成物を、複数段のトレィを内部 に有する蒸留塔で蒸留する工程を含み、前記組成物から (メタ)アクリル酸又は (メタ) アクリル酸エステルを取り出して (メタ)アクリル酸又は (メタ)アクリル酸エステルを製造 する方法において、蒸留塔には、断面形状が波型で貫通孔を複数有する波板式無 堰多孔板と、平板に貫通孔を複数有する平板式無堰多孔板とをトレイとして備える蒸 留塔を用いる。
図面の簡単な説明
[0025] [図 1]アクリル酸及びアクリル酸エステルの製造工程の一例を示す図である。
[図 2]アクリル酸エステルの製造工程の他の一例を示す図である。
[図 3]波板式無堰多孔板を備える蒸留塔を示す模式的な断面図である。
[図 4]平板式無堰多孔板を備える蒸留塔を示す模式的な断面図である。
[図 5]図 3の X部を拡大して示す断面図である。
[図 6]図 4の Y部を拡大して示す断面図である。
発明を実施するための最良の形態
[0026] 本発明では、(メタ)アクリル酸類を含有する組成物を、複数段のトレィを内部に有 する蒸留塔で蒸留する工程を含み、前記組成物から (メタ)アクリル酸類を取り出して (メタ)アクリル酸類を製造する。
[0027] 前記 (メタ)アクリル酸類として代表的なものは、(メタ)アクリル酸、及び (メタ)アタリ ル酸エステル類である。アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸 ェチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、ァ クリル酸 2—ェチルへキシル、アクリル酸 2—ヒドロキシェチル、アクリル酸 2—ヒドロ キシプロピル、アクリル酸メトキシェチル等が挙げられる。メタアクリル酸エステル類と しては、前述したアクリル酸エステル類の「アクリル酸」を「メタクリル酸」に代えたィ匕合
物が挙げられる。
[0028] 本発明では、本発明の効果を損なわない範囲で、前記蒸留する工程以外に、(メタ )アクリル酸類の製造に関する他の工程を含んでいても良い。このような他の工程とし ては、(メタ)アクリル酸類を製造するために通常行われる工程が挙げられる。
[0029] (メタ)アクリル酸類を含有する組成物には、(メタ)アクリル酸類を製造する通常の方 法において得られる組成物を用いることができる。このような組成物としては、(メタ)ァ クリル酸類そのもの、(メタ)アクリル酸類の水溶液、有機溶剤を溶媒とする (メタ)アタリ ル酸類の溶液等が挙げられる。前記有機溶剤には、(メタ)アクリル酸類の水溶液か ら (メタ)アクリル酸類を抽出する公知の抽出溶剤や、水と共沸する公知の共沸溶剤 等を用いることができる。
[0030] 前記 (メタ)アクリル酸を製造する通常の方法としては、アクリル酸を例にすると、例 えば次の(1)一 (3)等が挙げられる。
[0031] (1) プロパン、プロピレン及び Z又はァクロレインを接触気相酸ィ匕させてアクリル酸 含有ガスを生成させる酸化工程、酸化工程で生成したアクリル酸含有ガスを水と接 触させてアクリル酸をアクリル酸水溶液として捕集する捕集工程、このアクリル酸水溶 液から適当な抽出溶剤を用いてアクリル酸を抽出する抽出工程、得られた抽出物か らアクリル酸と溶剤を蒸留によって分離する工程、分離されたアクリル酸を蒸留によつ て精製する工程、精製工程後に得られたアクリル酸ミカエル付加物、及び各工程で 用いられた重合禁止剤を含む高沸分を原料として分解反応塔に供給して有価物を 回収する工程、及び、得られた有価物を捕集工程以降のいずれかの工程に供給す る工程、を含む方法。
[0032] (2) プロパン、プロピレン及び Z又はァクロレインを接触気相酸ィ匕させてアクリル酸 含有ガスを生成させる酸化工程、酸化工程で生成したアクリル酸含有ガスを水と接 触させてアクリル酸をアクリル酸水溶液として捕集する捕集工程、このアクリル酸水溶 液を共沸溶剤の存在下において共沸分離塔内で蒸留して塔底から粗アクリル酸を 取り出す共沸分離工程、得られた粗アクリル酸から蒸留によって酢酸を除去するため の酢酸分離工程、酢酸が分離されたアクリル酸組成物から更に高沸分を蒸留によつ て除去する精製工程、精製工程後に得られたアクリル酸ミカエル付加物、及び各ェ
程で用いられた重合禁止剤を含む高沸分を原料として分解反応塔に供給して有価 物を回収する工程、及び、得られた有価物を捕集工程以降のいずれかの工程に供 給する工程、を含む方法。
[0033] (3) プロパン、プロピレン及び Z又はァクロレインを接触気相酸ィ匕させてアクリル酸 含有ガスを生成させる酸化工程、酸化工程で生成したアクリル酸含有ガスを有機溶 媒と接触させてアクリル酸をアクリル酸有機溶媒溶液として捕集し、水、酢酸等を同 時に除去する捕集 Z分離工程、このアクリル酸有機溶媒溶液カゝらアクリル酸を蒸留 によって取り出す分離工程、各工程で用いられた重合禁止剤、有機溶媒、及びアタリ ル酸ミカエル付加物を含む高沸分を原料として分解反応塔に供給して有価物を回 収する工程、得られた有価物を捕集 Z分離工程以降のいずれかの工程に供給する 工程、及び有機溶媒を一部精製する工程、を含む方法。
[0034] (メタ)アクリル酸エステルを製造する通常の方法としては、アクリル酸エステルを例 にすると、例えば、有機酸あるいはカチオン性イオン交換榭脂等を触媒としてアクリル 酸とアルコールとを反応させるエステル化反応工程、及び反応で得られた粗アクリル 酸エステル液を濃縮するための単位操作として抽出、蒸発、蒸留を行う精製工程を 含む方法が挙げられる。原料のアクリル酸には、例えば前述した(1)一(3)に示す方 法で製造されたアクリル酸を用いることができる。
[0035] 各単位操作は、エステル化反応のアクリル酸とアルコールの原料比、エステル化反 応に用いる触媒の種類、あるいは原料、反応副生成物、アクリル酸エステル類それ ぞれの物性等により適宜選定される。各単位操作を経て、精製塔でアクリル酸エステ ルの製品が得られる。
[0036] 精製塔の塔底液はアクリル酸エステル類、 j8—アタリロキシプロピオン酸エステル類 、 β アルコキシプロピオン酸エステル類、 βーヒドロキシプロピオン酸エステル類を主 成分としたミカエル付加物を含む。前記塔底液及び Ζ又は各工程で用いられた重合 禁止剤を含む高沸分を分解反応塔に供給するか、あるいはプロセス内に戻すことで 有価物を回収する。
[0037] アルコールの種類によっては、アクリル酸、アクリル酸二量体(以下、ダイマー)、ァ クリル酸三量体(以下、トリマー)、 j8—アルコキシプロピオン酸類、 j8—アルコキシプロ
ピオン酸エステル類を主成分とし、製造工程で用いられた重合禁止剤を含んだ高沸 分が、エステルイ匕反応工程や前記精製工程における各単位操作の 、ずれかから得 られることもある。この高沸分についても、ミカエル付加物を含む高沸分として分解反 応塔に供給して有価物を回収し、有価物は反応工程、もしくは精製工程に供給され るものもある。
[0038] 前記ミカエル付加物とは、(メタ)アクリル酸類の製造において、活性メチレン基を有 する化合物と不飽和カルボキシルイ匕合物とが反応して生成する化合物である。上述 のアクリル酸又はアクリル酸エステルのミカエル付加物とは、例えばアクリル酸を製造 する場合のミカエル付加物として、ダイマー、トリマー、アクリル酸四量体 (以下、テトラ マー)等であり、アクリル酸エステルを製造する場合のミカエル付加物として、炭素数 力 2— 8のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル等の上述のアクリル酸エス テルへのアクリル酸のミカエル付加物、具体的には 13—アタリロキシプロピオン酸エス テル、アルコールのミカエル付カ卩物、具体的には j8—アルコキシプロピオン酸エステ ノレ、ダイマー、トリマー、テトラマー、トリマーのエステノレ体、テトラマーのエステノレ体、 βーヒドロキシプロピオン酸、 13ーヒドロキシプロピオン酸エステル類等が挙げられる。
[0039] また、(メタ)アクリル酸類の製造においては、前述の通り、製造中の重合物の発生 を抑制するために重合禁止剤が通常使用される。
[0040] 重合禁止剤として、具体的にはアクリル酸銅、ジチォ力ルバミン酸銅、フエノールイ匕 合物、フヱノチアジンィ匕合物等が挙げられる。
[0041] ジチォ力ルバミン酸銅としては、ジメチルジチォカルバミン酸銅、ジェチルジチォカ ルバミン酸銅、ジプロピルジチォ力ルバミン酸銅、ジブチルジチォカルバミン酸銅等 のジアルキルジチォ力ルバミン酸銅、エチレンジチォ力ルバミン酸銅、テトラメチレン ジチォ力ルバミン酸銅、ペンタメチレンジチォ力ルバミン酸銅、へキサメチレンジチォ 力ルバミン酸銅等の環状アルキレンジチォ力ルバミン酸銅、ォキシジエチレンジチォ 力ルバミン酸銅等の環状ォキシジアルキレンジチォ力ルバミン酸銅等が挙げられる。
[0042] フエノール化合物としては、ハイドロキノン、メトキノン、ピロガロール、カテコール、レ ゾルシン、フエノール、又はタレゾール等が挙げられる。
[0043] フエノチアジン化合物としては、フエノチアジン、ビス一( α—メチルベンジル)フエノチ
ァジン、 3, 7—ジォクチルフエノチアジン、ビス—(α—ジメチルベンジル)フエノチアジ ン等が挙げられる。
[0044] 上記以外の物質もプロセスによっては含まれる場合がある力 その種類は、(メタ) アクリル酸類の製造や精製において悪影響を与えない物質であれば特に限定され ない。
[0045] 前記蒸留する工程では、波板式無堰多孔板と平板式無堰多孔板とをトレイとして有 する蒸留塔が用いられる。前記蒸留する工程は、(メタ)アクリル酸類を含有する組成 物を蒸留する工程であれば特に限定されない。このような工程としては、例えば前述 したような、抽出工程、抽出溶剤等の溶剤とアクリル酸とを分離する工程、分離された アクリル酸を精製する工程、共沸分離工程、酢酸分離工程、有機溶剤を一部精製す る工程、及び抽出、蒸留等の単位操作等が挙げられる。本発明では、前記固形物が より発生しやすい系、例えば前記組成物中の (メタ)アクリル酸類の濃度がより高い系 、においてより一層効果的であり、より具体的には、前記蒸留する工程が (メタ)アタリ ル酸類を精製する工程であるときに、より一層効果的である。
[0046] 前記蒸留塔は、波板式無堰多孔板と平板式無堰多孔板とをトレイとして設置するこ とができる蒸留塔であれば特に限定されない。このような蒸留塔としては、例えば棚 段塔等の化学品プラントで一般に使用される蒸留塔を用いることができる。前記蒸留 塔に設置されるトレイの数 (段数)は、対象物質ゃトレイの種類等の諸条件に応じて 適宜設定されるが、(メタ)アクリル酸類を蒸留する場合では、通常は 10— 50であるこ とが好ましい。
[0047] 前記波板式無堰多孔板は、図 3及び図 5に示すように、例えば多孔板を波板状に 加工したものであり、断面形状が波型の板で貫通孔を複数有する。前記波板式無堰 多孔板は、(メタ)アクリル酸類の蒸留において通気と通液との適度なバランスが得ら れる多孔板であれば良ぐ例えば開孔率が 5— 30%の多孔板であることが好ま U、。
[0048] 波板式無堰多孔板では、山の部分、谷の部分、山又は谷における側面の部分のい ずれに貫通孔を設けることができる。なお波板式無堰多孔板の断面形状において、 凸部の上端と凹部の下端との中間の高さを結ぶ中線よりも上側を「山」といい、中線よ りも下側を「谷」という。また「側面」とは、山の頂部力も谷の底部までの面をいう。
[0049] また前記「波型」とは、断面形状において山と谷とが連続して繰り返される形状であ り、かつ山の頂部から谷の底部にかけて板の面が傾斜している形状である。前記「波 型」は、例えば正弦波のように、連続する曲線によって山と谷とが形成される形状で あっても良いし、例えばパルス波を斜辺で結んで形成される形状のように、断続的な 線の結合によって形成される形状であっても良い。また前記「波型」は、山と谷力 な る単位形状が繰り返されてなる力 この単位形状は同一であっても良いし、異なって いても良い。
[0050] 前記平板式無堰多孔板は、図 4及び図 6に示すように、貫通孔を複数有する平板 である。前記平板式無堰多孔板も、(メタ)アクリル酸類の蒸留において通気と通液と の適度なバランスが得られる多孔板であれば良ぐ例えば開孔率が 5— 30%の多孔 板であることが好ましい。なお、図 3— 6において、図中の実線の矢印は蒸留塔内に おける蒸気の移動を示し、破線の矢印は液の移動を示している。
[0051] (メタ)アクリル酸類の蒸留操作では、平板式無堰多孔板が通常使用される。一般 に、無堰多孔板を用いる蒸留塔ではダウンカマーを設けないので、蒸留塔の全段面 積を気液接触に利用できて、液の分散は均一である。また泡鐘段に比べて処理量も 効率もよ!/ヽと!ヽぅ特徴を有する。
[0052] し力しながら前述したように、平板式無堰多孔板は前記貫通孔の開口部が同一平 面状にある。このため、図 6に示すように、上段から下段に落ちる液と下段から上段へ 上がる蒸気は相対する向きで貫通孔を通過する。したがって開口面積のすべてが液 の通過に使用されることはなぐし力も蒸気により上昇方向に圧力が力かるので、固 形物が貫通孔を閉塞しやすいという欠点を持つ。この欠点は、孔径ゃ開孔率によつ てある程度調整することが可能である。
[0053] 波板式無堰多孔板は、平板式無堰多孔板とは異なり、貫通孔の開口部が同一平 面状にないので、液は主として谷の部分から落ち、蒸気は山の部分を通過する。液 中の固形物は谷の部分の下部に集まって下段に抜けるため、固形物が沈着、堆積し にくい。また図 5に示すように、波板式無堰多孔板の貫通孔では、液は鉛直方向に 貫通孔を通過するのに対して、蒸気は貫通孔の軸線に沿った方向に貫通孔を通過 する。このため、固形物による貫通孔の閉塞が構造上抑制されやすい。
[0054] また、波板状の加工により、同一の蒸留塔に設置した場合に、平板式無堰多孔板 に比べて表面積を大きくすることができ、貫通孔も多く設置できる。
[0055] さらに万一、固形物が谷の部分の貫通孔を塞いだとしても、液は山の部分や山又 は谷の側面の部分の貫通孔を通って落下することができるので、平板式無堰多孔板 に比べてより長期間安定して蒸留塔を運転させることができる。また、固形物が通過 しやすいよう谷の部分の貫通孔の孔径を多少大きくしておくことも効果的である。
[0056] また、たとえ谷の部分の貫通孔が閉塞しても側面の部分の貫通孔が気液接触に利 用できるため、液の分散は均一に保たれる。この特性によって固形物の付着、堆積、 蓄積の問題を解決することができる。
[0057] 更に (メタ)アクリル酸類含有液の蒸留では、トレイ裏に重合物が形成、ある ヽは蓄 積される現象が確認されている。この主原因の 1つには、トレイ裏へ回り込んだ液ある いは付着した液等の滞留時間が増すことが挙げられる。平板式無堰多孔板は、裏面 (下面)が平面である為に、下面に付着した液が落下し難いことから、その滞留時間 が長くなりやすい。
[0058] 波板式無堰多孔板は、その構造から裏面には傾斜が形成されており、これによりト レイ裏に存在する液は流れ落ち易いため、上述の主原因を回避できる。
[0059] また、波板式無堰多孔板は、平板式無堰多孔板と同様に構造が極めて単純である ため、蒸留塔の製作費、設置費等の建設コストが極めて安価となる利点もある。
[0060] このように、平板式無堰多孔板では、発生した固形物を落下させ、蒸留塔内の固形 物の発生を抑制するためには、孔径を比較的大きくすることが必要とされるが、波板 式無堰多孔板では、平板式無堰多孔板に比べて、蒸留塔内の固形物の発生を抑制 するために孔径を大きくする必要がな 、。
[0061] また、無堰多孔板では、孔径を小さくすると、無堰多孔板一枚当たりの蒸留に対す る効果 (トレイ効率)は良くなるが、無堰多孔板一枚当たりの差圧が大きくなる。この結 果、蒸留塔全体の差圧 (塔頂と塔底の圧力差)が大きくなり、塔底部の圧力が高くな ることで塔底部の (沸点が高くなることで)温度が上昇し、固形物の生成を増長させる ことがある。
[0062] 本発明の特徴は (メタ)アクリル酸及び Z又は (メタ)アクリル酸エステルを、蒸留塔
に導入して、精製する方法において、前記蒸留塔として、内部に波板式無堰多孔板 と平板式無堰多孔板の両方を使用することである。
[0063] 本発明では、貫通孔の孔径を小さくできる波板式無堰多孔板と、閉塞の防止の観 点から貫通孔の孔径を比較的大きくする必要がある平板式無堰多孔板との両方を設 けることによって、(メタ)アクリル酸類の効率的な蒸留、蒸留塔における塔頂と塔底と の差圧の上昇の防止、及び固形物による蒸留塔内部の閉塞の防止を少なくとも達成 する。
[0064] 波板式無堰多孔板と平板式無堰多孔板の設置数や設置割合は、それぞれの無堰 多孔板における貫通孔の孔径、一枚当たりに生じる差圧、一枚当たりの蒸留に対す る効果等に応じて適宜設定することができる。本発明では、波板式無堰多孔板と平 板式無堰多孔板との設置数の割合が 1: 1一 4 : 1であることが好ましい。前記波板式 無堰多孔板の設置数の割合が 1より小さいと、効率的な蒸留の観点から貫通孔の孔 径を選択したときに、平板式無堰多孔板で発生する固形物により蒸留塔の連続運転 期間が短くなることがある。前記波板式無堰多孔板の設置数の割合力 より大きいと 、蒸留塔全体の差圧が大きくなり、塔底部での温度の上昇で固形物が発生し易くなり 蒸留塔の連続運転期間が短くなることがある。
[0065] 蒸留塔内部において、波板式無堰多孔板及び平板式無堰多孔板は、一枚ずつ交 互に配置されて ヽても良!ヽし、所定の枚数ずつに交互に配置されて!ヽても良!ヽし、 種類ごとに配置しても良いし、また不規則的に配置しても良い。本発明では、蒸留塔 内部において最下段に設けられる多孔板が波板式無堰多孔板であることが好ましい
[0066] 塔底部では、リボイラで炊き上げられたガスによる飛沫同伴で、ガスと共に固形物を 含有した塔底液が舞い上がり、最下部のトレイの裏に固形物が付着しやすい。この固 形物は平板式無堰多孔板では残留しやす!、が、波板式無堰多孔板では (前述のよ うに)傾斜を有する板になっているので、トレイ裏で液の流れが生じ、固形物が洗い 落とされる。
[0067] 波板式無堰多孔板を連続して複数枚設置する場合は、波形が連続する方向又は 波の山及び谷の部分が延出する方向が上下段で交差するように配置されることが、
蒸留塔内における液の水平方向への分散を高める観点から好ましぐ特に直交する ように配置されることがより好ま 、。
[0068] また、平板式無堰多孔板を連続して複数枚設置する場合では、蒸留塔内における 液の水平方向への分散を高める観点から、上下段において、開孔率が同じでも貫通 孔の断面形状や貫通孔の配置が異なる平板式無堰多孔板を配置しても良い。
[0069] 本発明では、前記波板式無堰多孔板の断面形状において、波長に対する波の高 さの比(波の高さ Z波長)が 1Z2— 1Z20であることが好ましい。なお、「波長」とは、 山の頂点から隣の山の頂点までの水平距離であり、蒸留の対象物質、蒸留塔の塔径 や蒸留条件等によって異なる力 20-6, OOOmmであることが好ましい。「波の高さ」 とは、山の頂点から谷の最下点までの鉛直距離であり、蒸留の対象物質、蒸留塔の 塔径ゃ蒸留条件等によって異なるが、 10— 300mmであることが好まし 、。
[0070] 蒸留時における無堰多孔板は、液で常に濡らされる必要がある。乾いている(つま り重合禁止剤が無い状態)と固形物が発生しやすい。前記比が 1Z2より大きいと、波 板式無堰多孔板の上面に溜まる液の深さが大きくなり、波板式無堰多孔板一枚当た りの差圧が大きくなりすぎて、蒸留塔全体の差圧が大きくなり、塔底部の温度の上昇 で固形物が発生し易くなり蒸留塔の連続運転期間が短くなることがある。前記比が 1 Z20より小さいと、平板式無堰多孔板と同じようになり、波型部分での液の流れが小 さくなり、発生した固形物の除去が困難になるので、蒸留塔の連続運転期間が短くな ることがある。
[0071] 本発明では、波板式無堰多孔板の貫通孔の孔径が平板式無堰多孔板の貫通孔 の孔径より小さいことが好ましい。具体的には、波板式無堰多孔板の貫通孔の孔径 a と平板式無堰多孔板の貫通孔の孔径 bとの比 bZaが 1. 1-3. 0であることが好まし い。前記比が 1. 1より小さいと、波板式無堰多孔板による蒸留塔の差圧の緩和効果 が高まるものの平板式無堰多孔板における閉塞が発生しやすくなり、蒸留塔の連続 運転期間が短くなることがある。前記比が 3より大きいと、両無堰多孔板の貫通孔より 吹き出すガスの速度の相対差が大きくなり、蒸留塔内のガスの流れが乱され易くなり 、これにより固形物が発生し易くなり、蒸留塔の連続運転期間が短くなることがある。
[0072] 前記波板式無堰多孔板及び前記平板式無堰多孔板における貫通孔について、貫
通孔の横断面形状 (開口部の形状)は、通常は円形だが、矩形、楕円形、多角形等 の非円形であっても良い。また一つの貫通孔における横断面形状は、単一の形状で あっても良いし、ある形状力 他の形状に連続して変化しても良い。また前記貫通孔 について、貫通孔の縦断面形状は通常は矩形だが、上辺より下辺が長い台形や釣り 鐘型等の他の形状であっても良 、。
[0073] また一枚の無堰多孔板には、同じ断面形状の貫通孔のみを設けても良いし、異な る断面形状の複数種の貫通孔を設けても良い。また一枚の無堰多孔板には、多孔 板全体に均一に分布するように貫通孔が設けられて 、ても良 、し、不均一に分布す るように貫通孔が設けられ (例えば多孔板の中心部には多くの貫通孔が設けられ、多 孔板の周縁部には貫通孔が少なく設けられ)ていても良い。
[0074] 前記波板式無堰多孔板の貫通孔の孔径は、一般には 10— 40mmである力 本発 明でもこの範囲が好ましい。また前記平板式無堰多孔板の貫通孔の孔径は、 10— 5 Ommであることが好ましい。本発明では、これらの無堰多孔板において、同一の孔 径の貫通孔のみを設けても良 、し、異なる孔径の複数種の貫通孔を設けても良 、。
[0075] 前記蒸留塔は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記無堰多孔板以外の他の 構成を有していても良い。このような他の構成としては、例えば蒸留塔における原料 液の供給口に設けられ、供給される原料液が衝突するように設けられる衝突板、衝 突板での原料液の上方への飛沫を防止するための天板、蒸留塔に供給された原料 液を加熱するためのリボイラ、液の流路中に適宜配置される各種ノズル、前述した無 堰多孔板以外のトレイ、及び前記充填剤等が挙げられる。
[0076] 前記リボイラには、蒸留塔の塔底液の加熱に用いられる公知のリボイラを用いること ができる。前記リボイラは、一般には塔内に設置される場合と塔外に設置される場合 に大別される力 本発明では塔外に設置されるものが好ましい。リボイラの型式として は特に限定されない。具体的には、竪型固定管板型、横型固定管板型、 U字管型、 二重管型、スパイラル型、角ブロック型、プレート型、薄膜蒸発器型等の塔底液加熱 用の各種熱交^^が挙げられる。
[0077] 前記蒸留塔における各種構成の材質は、取り扱う易重合性ィ匕合物とその温度条件 により選定されるが、本発明では特に限定されない。例えば、易重合性物質として代
表的な (メタ)アクリル酸、及び (メタ)アクリル酸エステル類の製造においては、ステン レススチール類、例えば SUS304、 SUS304L, SUS316、 SUS316L, SUS317 、 SUS317L、 SUS327 ;あるいはハステロィ類が使用され、本発明においても好適 に用いることができる。前記材質は、耐食性の観点からそれぞれの液物性に対応し て選定すればよい。
実施例
[0078] 以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[0079] <実施例 1 >
直径 1, OOOmmの減圧蒸留塔を用いてアクリル酸を蒸留した。この減圧蒸留塔は 、蒸留用の原料液が供給される缶と、加熱された缶内の液の蒸気が通る塔と、塔頂 部から排出される蒸気を凝縮させるためのコンデンサとを有する。
[0080] 前記缶には、供給された前記原料液を加熱するためのリボイラが設けられている。
前記塔は棚段塔である。前記塔は、トレイとしての 30枚の任意の多孔板を設置するこ とができるように構成されて!、る。
[0081] 本実施例では、前記トレイとして、波板式無堰多孔板と平板式無堰多孔板とを合わ せて 30枚設置した。本実施例では、波板式無堰多孔板 4枚、平板式無堰多孔板 1 枚を、この順番で下力も配置した多孔板群を一組とし、この多孔板群の 6組を下から 順に配列することによってトレイとしての無堰多孔板を配置した。すなわち、前記減圧 蒸留塔には、 30段の無堰多孔板が設けられている。
[0082] なお、無堰多孔板(トレイ)の段数は、下力も順に 1一 30段と数えるものとする。前記 波板式無堰多孔板には、孔の孔径が 20mmであり、波板式無堰多孔板の断面形状 における波長が 200mmであり、波の高さが 20mmである波板式無堰多孔板を用い た。前記平板式無堰多孔板には、孔の孔径が 25mmである平板式無堰多孔板を用 V、た。波板式無堰多孔板の開孔率 (貫通孔が形成されて 、な 、と仮定したときの無 堰多孔板の表面積に対する開口面積の比率)は 23%であり、平板式無堰多孔板の 開孔率は 23%である。
[0083] 本実施例では、蒸留塔の最下部の多孔板を波板式無堰多孔板とした。この 30段の 多孔板(トレイ)は理論段数 9段に相当する。なお、前記波板式無堰多孔板について
は、波板の山及び谷が延びる方向力 上下の位置関係にある多孔板において互い に直交するように設けられて 、る。
[0084] 蒸留用の原料液として、質量濃度でアクリル酸 55%、酢酸 1. 5%、ホルムアルデヒ ド 0. 3%及び若干のギ酸を含むアクリル酸水溶液 (以下 (A)液と略記する)を使用し た。また、共沸溶剤としてトルエンを用い、脱水蒸留塔として前記減圧蒸留塔の運転 を行った。
[0085] 始めにトルエンを用いて蒸留塔を安定させた後、 16段目のトレイに (A)液を毎時 1 , 100kgで、 30段目のトレイにトルエンを毎時 3, 100kgでそれぞれ供給した。塔頂 圧力は 14. OkPaに制御し、塔頂部力も重合防止剤としてノ、イドロキノン及びフエノチ アジンを供給した。これらの重合防止剤の供給量は、缶出液中の重合防止剤の濃度 がハイドロキノン 800ppm、フエノチアジン 500ppmになるように調整した。塔底には 空気を毎時 500リットルで供給した。
[0086] 塔頂のコンデンサで凝縮された留出液は、デカンタで静置分離した後、共沸溶剤 相は全量蒸留塔へ還流し、水相は抜き出した。リボイラはゲージ圧で 196kPaのスチ ームで加熱した。このようにして塔頂圧力を 15. 5kPa、塔底液の温度を 82°Cとし、前 記減圧蒸留塔を連続して運転した。運転中に塔底力も抜き出した缶出液には、アタリ ル酸の他に質量組成で酢酸 2. 3%、水 0. 6%、及びトルエン 15%が含まれ、また微 量の重合防止剤が含まれていた。本実施例における実験条件及びその結果を表 1 に示す。
[0087] 運転中の蒸留塔における塔頂と塔底との差圧は 6. 5kPa以下であり、上昇はなぐ 安定に運転を継続できた。 3ヶ月後に運転を停止し蒸留塔を開放点検したところ、少 量のアクリル酸の重合体が 2段目のトレイ上に発見された。
[0088] <比較例 1 >
表 1に示すように、実施例 1にお!/、てトレイを全て平板式無堰多孔板に変更したこと 以外は実施例 1と同様にして脱水蒸留の実験を行った。運転中に塔底力も抜き出し た缶出液の組成は実施例 1と同様であった。
[0089] 運転は実施例 1と同様、安定に継続できたが、蒸留塔における塔頂と塔底との差圧 は 8. 5kPaから 16kPaまで上昇した。 3ヶ月後に運転を停止し蒸留塔を開放点検し
たところ、多量のアクリル酸の重合体が 1一 5段目のトレイ上に発見された。
[0090] <比較例 2 >
表 1に示すように、 1及び 5段目を平板式無堰多孔板とし、 2— 4段目を波板式無堰 多孔板とし、 6段目以上では、波板式無堰多孔板 4枚、平板式無堰多孔板 1枚を、こ の順番で下力 配置した多孔板群を一組とし、この多孔板群の 5組を下力 順に配 列することによってトレイとしての多孔板を配置した以外は、実施例 1と同様にして脱 水蒸留の実験を行った。運転中に塔底力 抜き出した缶出液の組成は実施例 1と同 様であった。
[0091] 運転は実施例 1と同様、安定に継続できたが、蒸留塔における塔頂と塔底との差圧 は 8. 5kPaから 15kPaまで上昇した。 3ヶ月後に運転を停止し蒸留塔を開放点検し たところ、 0段目の平板式無堰多孔板の下面に多量のアクリル酸の重合体が発見さ れた。
[0092] <実施例 2 >
本実施例では、表 1に示すように、波板式無堰多孔板 3枚、平板式無堰多孔板 2枚 を、この順番で下力も配置した多孔板群を一組とし、この多孔板群の 6組を下力も順 に配列することによってトレイとしての多孔板を配置した。また平板式無堰多孔板に は、孔の孔径が 30mmであり、開孔率が 27%である平板式無堰多孔板を用いた。こ れらを除いて、本実施例では、実施例 1と同様にして脱水蒸留の実験を行った。運転 中に塔底力も抜き出した缶出液の組成は実施例 1と同様であった。
[0093] 実施例 1と同様、蒸留塔における塔頂と塔底との差圧は 5. 5kPaであり、上昇はなく 、安定に運転を継続できた。 3ヶ月後に運転を停止し蒸留塔を開放点検したところ、 微量のアクリル酸の重合体が 3及び 4段目のトレイ上に発見された。
[0094] <比較例 3 >
表 1に示すように、 1一 5段目を平板式無堰多孔板とし、 6段目以上では、波板式無 堰多孔板 3枚、平板式無堰多孔板 2枚を、この順番で下力 配置した多孔板群を一 組とし、この多孔板群の 5組を下力 順に配列することによってトレイとしての多孔板 を配置した以外は、実施例 2と同様にして脱水蒸留の実験を行った。運転中に塔底 力も抜き出した缶出液の組成は実施例 2と同様であった。
[0095] 運転は実施例 2と同様、安定に継続できたが、蒸留塔における塔頂と塔底との差圧 は 5. 5kPaから 15kPaまで上昇した。 3ヶ月後に運転を停止し蒸留塔を開放点検し たところ、多量のアクリル酸の重合体が 1一 4段目のトレイ上面及び下面の全体にわ たって発見された。
[0096] <実施例 3 >
表 1に示すように、前記波板式無堰多孔板には、貫通孔の孔径が 25mmであり、開 孔率が 24%であり、波板式無堰多孔板の断面形状における波長が 400mmであり、 波の高さが 30mmである波板式無堰多孔板を用い、前記平板式無堰多孔板には、 貫通孔の孔径が 30mmであり、開孔率が 24%である平板式無堰多孔板を用いた以 外は、実施例 1と同様にして脱水蒸留の実験を行った。運転中に塔底力も抜き出した 缶出液の組成は実施例 1と同様であった。
[0097] 実施例 1と同様、蒸留塔における塔頂と塔底との差圧は 5. 5kPaであり、上昇はなく 、安定に運転を継続できた。 3ヶ月後に運転を停止し蒸留塔を開放点検したところ、 アクリル酸の重合体は発見されな力つた。
[0098] <比較例 4>
表 1に示すように、実施例 3にお 、てトレイを全て平板式無堰多孔板に変更したこと 以外は実施例 3と同様にして脱水蒸留の実験を行った。運転中に塔底力も抜き出し た缶出液の組成は実施例 3と同様であった。
[0099] 運転は実施例 3と同様、安定に継続できたが、蒸留塔における塔頂と塔底との差圧 は 8. 2kPaから 16kPaまで上昇した。 3ヶ月後に運転を停止し蒸留塔を開放点検し たところ、多量のアクリル酸の重合体が 1一 4段目のトレイ上面及び下面の全体にわ たって発見された。
[0100] <実施例 4>
表 1に示すように、 1一 20段目を波板式無堰多孔板とし、 21段目以上を平板式無 堰多孔板とした以外は、実施例 3と同様にして脱水蒸留の実験を行った。運転中に 塔底力も抜き出した缶出液の組成は実施例 3と同様であった。
[0101] 実施例 3と同様、蒸留塔における塔頂と塔底との差圧は 5. 5kPaであり、上昇はなく 、安定に運転を継続できた。 3ヶ月後に運転を停止し蒸留塔を開放点検したところ、
アクリル酸の重合体は発見されな力つた。
[表 1]
表 1
' ______ 実施例 1 比較例 1 比較例 2 実施例 2 比較例 3 実施例 3 比較例 4 実施例 4
1-4, 6-9, 2-4, 6-9, 1-3, 6-8, 6-8, 11-13, 1-4, 6-9,
設置段 11-14, 16-19' —— 11-14, 16 - 19, 11-13, 16-18, 16-18, 21-24, 11-14, 16-19, —— 1-20 波板式 21-24, 26-29 21-24, 26-29 21-23, 26-28 26-29 21-24, 26-29
無堰 孔径 a (mm) 20 —— 20 20 20 25 —— 25 多孔板 波長 c (mm) 200 —— 200 200 200 400 —— 400 波の高さ d (mm) 20 —— 20 20 20 30 —— 30 d/c (-) 0. 1 —— 0. 1 0. 1 0. 1 0. 075 —— 0. 075 平板式 5, 10, 15, 20, 1, 5, 10, 15, 4, 5, 9, 10, 14, 1-5, 9, 10, 14, 5, 10, 15, 20,
無堰 25, 30 1-30 20, 25, 30 15, 19, 20, 24, 15, 19, 20, 24, 25, 30 1-30 21-30 多孔板 25, 29, 30 25, 29, 30
孔径 b (mm) 25 25 25 30 30 30 30 30 b/a (-) 1. 25 —— 1. 25 1. 5 1. 5 1 —— 1 塔頂圧力 (kPa) 15. 5 15. 5 15. 5 15. 5 15. 5 15. 5 15. 5 15. 5 塔底圧力 (kPa) 22 24 22 21 21 21 24 21 塔底液の温度 (°C) 82 89 82 80 80 80 88 80 運転期間 (月) 3 3 3 3 3 3 3 3 塔頂と塔底 初期 (kPa) 6. 5 8. 5 8. 5 5. 5 5. 5 5. 5 8. 2 5. 5 との差圧 停止前 (kPa) 6. 5 16 15 5. 5 15 5. 5 16 5. 5 ポリマーの有無 有り 有り 有り 微量有り 有り 無し 有り 無し
(少量) (最下段下) (3, 4段目)
産業上の利用の可能性
[0103] 本発明によれば、波板式無堰多孔板と平板式無堰多孔板とを有する蒸留塔を用い て (メタ)アクリル酸類を蒸留することから、蒸留塔全体の差圧を低減し、(メタ)アタリ ル酸類の重合物等の固形物の蒸留塔内における付着や堆積、蓄積を防止すること ができ、(メタ)アクリル酸類の高い回収率を安定して維持し、かつ長期に亘り安定し た蒸留塔の連続運転を行うことができる。
[0104] また本発明では、蒸留塔内における最下段の無堰多孔板に波板式無堰多孔板を 用いると、蒸留塔内における固形物による閉塞を防止し、蒸留塔全体における差圧 の上昇を防止する観点からより一層効果的である。
[0105] また本発明では、蒸留塔に設けられて!/、る波板式無堰多孔板と平板式無堰多孔板 との設置数の割合を 1: 1一 4 : 1にすると、蒸留塔全体における差圧の上昇を防止す る観点からより一層効果的である。
[0106] また本発明では、波板式無堰多孔板の断面形状において、波長に対する波の高さ の比 (波の高さ Z波長)を 1Z2— 1Z20とすると、蒸留塔の長期連続運転、及び分 離効率向上によるトレィ枚数の削減を達成する観点力 より一層効果的である。
[0107] また本発明では、波板式無堰多孔板の貫通孔の孔径 aを平板式無堰多孔板の貫 通孔の孔径 bよりも小さく設定すると、蒸留塔の長期連続運転、及び分離効率向上に よるトレィ枚数の削減を達成する観点力 より効果的であり、 bZaを 1. 1から 3に設定 するとより一層効果的である。