JP2000300903A - 無堰多孔板、無堰多孔板塔、および蒸留方法 - Google Patents
無堰多孔板、無堰多孔板塔、および蒸留方法Info
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Abstract
たは易重合性化合物含有液を長期にわたり安定して蒸留
できる無堰多孔板、無堰多孔板塔、および蒸留方法を提
供する。 【解決手段】 本発明にかかる無堰多孔板は、孔径d:
10〜25mm、隣接する2つの孔の中心間隔:1.2
d〜3d、板厚:2〜8mm、開孔率:10〜30%の
各条件を全て満たしている。また、本発明にかかる無堰
多孔板塔は、2枚以上の上記無堰多孔板を、多孔板の設
置間隔:0.1D〜0.5D(Dは塔径)、各多孔板の
水平公差8mm以下、同一棚に複数枚の多孔板を使用す
る場合、隣接した多孔板における最も近接した2つの孔
の中心間隔:50〜150mmの各条件を全て満たすよ
うに設けている。これらを用いて易重合性化合物を蒸留
することで、重合物の生成を効果的に防止した蒸留方法
を実現することができる。
Description
多孔板塔および蒸留方法に関するものであり、詳しく
は、(メタ)アクリル酸などの易重合性化合物または易
重合性化合物含有液(以下、単に「易重合性化合物」と
表現する場合もある)を、重合物の生成を効果的に防止
して、長期にわたり安定して蒸留することができるよう
にした無堰多孔板、およびこの無堰多孔板を設けてなる
無堰多孔板塔、並びにこの無堰多孔板塔を用いる蒸留方
法に関するものである。
のエステルなどといった易重合性化合物を、その重合を
防止することを目的として、酸素や重合防止剤の存在下
に蒸留、精製して、製品とすることは工業的に広く行わ
れている。また、この蒸留に無堰多孔板およびこれを用
いた無堰多孔板塔が用いられることも公知である。
は、サポートビームやサポートリングとの固定に用いら
れるクランプ、ボルトなどのための穴を除いては、全面
にほぼ均一に孔が設けられている。この孔の形成(開
孔)には、通常、パンチングプレス、ドリルなどが用い
られている。また、上記無堰多孔板では、処理能力向上
のために、孔径、孔型、板厚、開孔率などの規定が重要
であり、さらに無堰多孔板を無堰多孔板塔に設置した際
には、板間隔や水平公差などの規定が重要であることが
知られている(橋本他,「無堰多孔板トレイの特性」化
学工学,第34巻,567-571,1970、および『蒸留工学ハン
ドブック』朝倉書店,1966)。
用いて(メタ)アクリル酸などを蒸留すると重合物が生
成する場合があるため、運転を中止して人為的あるいは
化学的にこれら重合物を除去しなければならないという
問題点が生じる。
堰多孔板塔を用いた蒸留に際してのさらなる重合防止対
策として、次の各状態を実現させる技術が提案されてい
る。これら各技術は、上記重合防止剤(安定剤)による
重合防止効果をより確実とするものである。
重合性化合物含有液で濡らした状態である。これは、上
記重合防止剤が主として液相部(液体部分)に存在し、
気相部(気体部分)では少なくなるので、気液接触させ
ることにより気相部を常に重合防止剤に接触させるため
である。
は、具体的には、多孔板の塔壁面近くの孔径を大きくし
たり、スリット状にしたりすることで塔壁面と多孔板の
裏側を液体で完全に濡らす方法(米国特許第 3,717,553
号公報)が挙げられる。
相反する技術であるが、塔壁における重合防止に関する
技術として、塔壁の温度を気相部よりも高く保つために
ジャケットを設置し、塔壁において、重合防止剤が含ま
れていない気体が凝縮して重合することを防止する方法
(米国特許第 3,988,213号公報)がある。
液体の偏流や滞留を回避する状態である。これは、偏流
や滞留により重合防止剤が十分に分散せず偏在すること
を防止するためである。
は、具体的には、サポートリング(多孔板支持部材)に
穴を開け、該サポートリング上の液体を速やかに流下さ
せる方法(日本国特許出願:特開平10-212249 号公報、
欧州特許出願:0 856 343 A1号公報)、あるいは、無堰
多孔板と塔壁との間を1〜15mm開けることで、塔壁
付近の液体の滞留を防止する方法(日本国特許出願:特
開平10-76103号公報)が挙げられる。
技術では、ある程度は重合物の生成を防止できるもの
の、その効果は未だ不十分である。すなわち、上記従来
の技術においては、多孔板や塔内に特定の構成を加える
ことで、上記第1の状態および第2の状態の何れかを満
たすことについては考慮されているものの、上記各状態
の双方を、同時かつ確実に実現することについては何ら
考慮されていなかった。
方法の場合は、大きな設備投資が必要である上に、温度
管理を厳密にしなければならないという問題がある。そ
のため、実用上、好ましい技術ではない。また、このジ
ャケット設置する方法では、気体の凝縮を防止するため
に、塔壁を濡れていない(乾いている)状態としてい
る。そのため、第1の状態とは相反する状態を実現させ
るものとなっている。
態を同時かつ確実に実現させることによって、より一層
効果的に重合物の生成を防止し、長期にわたって安定し
た蒸留を実施できるような蒸留技術が望まれている。
鑑みてなされたものであって、その目的は、(メタ)ア
クリル酸などの易重合性化合物を蒸留する場合に、重合
物の生成を効果的に防止して長期にわたり安定して蒸留
を行えるようにした、特に(メタ)アクリル酸などの易
重合性化合物の蒸留に好適な無堰多孔板、無堰多孔板
塔、および蒸留方法を提供することにある。
鋭意検討した結果、無堰多孔板の孔径、板厚、開孔率に
加えて孔の間隔を特定範囲に規定すること、および、該
無堰多孔板を設けてなる無堰多孔板塔において、各無堰
多孔板の設置間隔、傾き(水平公差)に加えて、同一棚
に複数枚の無堰多孔板を使用した際に、最も近接した2
つの孔の間隔を特定範囲に規定すること、並びに、該無
堰多孔板塔を用いてなされる蒸留を特定条件下に行うこ
とによって、上記第1の状態および第2の状態の双方を
確実に実現することが可能になり、その結果、重合物の
生成を効果的に防止して長期にわたり安定して蒸留を行
うことができることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
上記の課題を解決するために、次の条件(a)〜(d)
を満たすものである。
ある。
2d〜3dの範囲内にある。
満たしていることが好ましい。
る。
に曲面を形成する。
記無堰多孔板の2枚以上を、下記条件を満たす条件下で
設けてなるものである。
間隔を0.1D〜0.5Dの範囲内とする。
ないようにする。
する場合、隣接した無堰多孔板における最も近接した2
つの孔の間隔を50〜150mmの範囲内とする。
たしていることが好ましい。
堰多孔板において、ブラインド率を0.2以上とする。
無堰多孔板を用いて易重合性化合物または易重合性化合
物含有液を蒸留する方法であり、特に、下記各条件を満
たすことが好ましい。
m3 /m2 ・h以上、好ましくは1m3 /m2 ・h以上
となる。
して1m3 /m2 ・h以上、好ましくは3m3 /m2 ・
h以上となる。
孔板あるいは無堰多孔板塔を用いて易重合性化合物を蒸
留すると、少なくとも次の各作用が得られる。
堰多孔板上の液体の濃度勾配や重合防止剤濃度の不均一
がなくなる。
し、かつ滞留時間が短くなる。
板や塔壁が濡らされるため、内部がほぼ完全に濡らさ
れ、乾いている部分がなくなる。
なる。
る結果、上記第1の状態および第2の状態の双方を同時
かつ確実に実現することが可能になり、重合物の形成を
効果的に防止することができる。
1ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りであ
る。なお、本発明はこれに限定されるものではない。ま
た、以下の説明では、無堰多孔板を単に「多孔板」と表
現し、無堰多孔板塔を単に「塔」と表現する場合があ
る。
実施態様を示した説明図である。図1に示すように、本
発明にかかる多孔板1には、複数個の孔2…が、下記条
件(b)を満たす範囲内で実質的に均一な径となるよう
にして、相互に実質的に等間隔に設けられている。そし
て、この孔2…に関して、次の各条件が規定されてい
る。
あり、好ましくは12〜22mmの範囲内である。
L1は、1.2d〜3dの範囲内であり、好ましくは、
1.5d〜2.5dの範囲内である。
好ましくは2〜4mmの範囲内である。
り、好ましくは12〜27%の範囲内である。
を設ける塔(無堰多孔板塔)の横断面積に対する多孔板
1の全ての孔2…の合計面積の割合(パーセンテージ)
を意味する。つまり、上記開孔率は、全孔2…(全ての
孔2…をまとめて「開口部」と表現する)の合計面積を
Pとし、多孔板1を設ける塔の横断面積をQとすると、
次式で表される。
満たす孔2を設けるに十分なスペースがない場合もある
が、このような場合には、上記条件を満たさない小さな
孔を設けてもよい。これにより、多孔板1の端部にまで
気液を流動させることができるため、液体の滞留を防止
して、重合物の生成を防止することができる。
を設けてなる塔を用いて易重合性化合物を蒸留すると、
重合物の形成を効果的に防止することができる。その理
由について、以下に説明する。
m未満では、液体が孔2…から落ちにくくなって重合が
起こりやすくなる。また25mmを超えると、孔2・2
の間隔が大きくなり過ぎて液体が滞留し、重合が起り易
くなる。
d未満では、気液の流動状態が悪くなる。また3dを超
えると孔2・2の間隔が大きくなりすぎて液体が滞留
し、重合が起り易くなる。
より多孔板1上に液勾配が生じ、部分的に乾きやすくな
る。また8mmを超えると、孔2内部に液体が滞留し
て、重合が起こりやすくなる。
0%未満では液体が滞留して重合が起りやすくなる。ま
た30%を超えると流動状態が悪くなって重合が起りや
すくなる。
においては、易重合性化合物を気液接触させる場合に、
多孔板1上にある程度液体を貯めた状態で、しかも孔2
から液体をある程度降下させ、かつ、孔2から気体を上
昇させなければならない。つまり、孔2を介しての液体
および気体の流通を適切な状態に制御する必要がある
が、従来では、この制御が非常に困難であった。
(d)の全てを満たすことによって、孔2を介しての液
体の降下と気体の上昇とを良好な状態に制御して、気液
接触をより確実に実施することができる。しかも、この
ような孔2を介しての気液の流通が適切に制御される
と、多孔板1上に適切に液体が貯められることになるの
で、多孔板1上での液体の存在にムラがなくなり、該多
孔板1を備える無堰多孔板塔内が液体で十分に濡らされ
ることになる。
(d)の条件を満たす多孔板1を用いているので、該多
孔板1を備える無堰多孔板塔内を液体で濡らした第1の
状態と、気体や液体の偏流や滞留を回避する第2の状態
とを何れも同時に確実に実現させることができる。その
ため、重合防止効果をより一層向上させることが可能と
なる。
り、パンチングプレスやドリルなどにより開けられるの
で、開孔後の孔縁2aには、図2(a)に示すように、
反りが生じる。しかしながら、このような反りによる突
起2bをそのままにしておくと、液体が滞留して重合が
起りやすくなる。
は、上記突起2bを除去することが好ましく、図2
(b)に示すように、孔縁2aの上端および下端の一
方、あるいは両方に、曲面を形成することがより好まし
い。なお、この曲面のサイズおよび形状は、液体の降下
を促進するようなサイズおよび形状であれば特に限定さ
れるものではなく、たとえば図2(d)に示すような、
孔縁2aの角部を面取りした角張った形状も包含する。
さらに、上記曲面は形成されることが好ましいけれど
も、図2(e)に示すように、孔縁2aの上下端ともに
平坦になっており、曲面が形成されていなくても構わな
い。
においては、上記(a)〜(d)の条件に加えて、さら
に、次の条件(e)・(f)の少なくとも一方を満たす
ことが好ましい。これによって、上記第1および第2の
状態がより確実に実現されるので、易重合性化合物の蒸
留に際して、重合物の形成がより効果的に防止される。
る。
に曲面を形成する。
特に条件(b)が満たされていることが好ましい。これ
によって、本発明にかかる無堰多孔板1は十分な効果を
発揮し得る。
て説明する。本発明にかかる無堰多孔板塔3は、図3に
示すように、2枚以上の上記多孔板1…を複数の棚状に
設置したものであり、これら多孔板1…の設置において
は、次の各条件が規定されている。
置間隔Hを0.1D〜0.5Dの範囲内とする。
ましくは4mmを超えないようにする。すなわち、水平
公差が8mm未満が好ましく、4mm未満がより好まし
い。
る場合、隣接した多孔板1における最も近接した二つの
孔2・2の中心間隔L2を50〜150mmの範囲内、
好ましくは50〜100mmの範囲内とする。
とし、かつ、奇数段目の棚の多孔板1を1aとし、偶数
段目の棚の多孔板1を1bとしている。
ード入口3a、蒸気入口3b、および還流口3cが設け
られ、塔3の頂部には、蒸気出口3dが、塔3の底部に
は、液体出口3eが設けられている。図3では、フィー
ド入口3aは、塔3の中段に配置され、最上段の多孔板
1の上に還流口3cが、最下段の多孔板の下に蒸気入口
3bが配置されている。
給するためのものであり、易重合性化合物の液組成によ
って、塔3の頂部から中段、底部の何れかに設けられる
ようになっている。蒸気出口3dは、図示しないコンデ
ンサーに接続されている。この蒸気出口3dから排出さ
れる易重合性化合物の蒸気(気体)は、コンデンサーで
凝縮され、一部が抜出され、残りが還流口3cから再投
入される。
接続されている。この液体出口3eからは、塔3内の易
重合性化合物(液体)が一部抜出され、リボイラーに送
られる。リボイラーでは、液体を再沸騰させ、少なくと
も気液混合状態として蒸気入口3bから塔3内へ再投入
する。
供給したり再投入する構成は、これに限定されるもので
はなく、従来から用いられている種々の構成を用いるこ
とができる。
置間隔H(図3参照)が0.1D(すなわち塔径の10
%)未満では、気体の偏流が生じて重合が起こりやすく
なる。また0.5D(すなわち塔径の50%)を超える
と、気体の滞留時間が長くなりすぎて気相部での重合が
起こりやすくなる。
多孔板1上での液勾配が大きくなり、気体や液体の偏流
が大きくなって、重合が起りやすくなる。なお、水平公
差とは、多孔板1の最高点と最低点との差を意味する。
この水平公差は水マノメータを用いて常法にしたがって
測定される。
特に制限がなく、図1に示したような円形の他に、半円
形、欠円形、扇形、四角形などの形状でもよい。
と、図4に示すように、通常、マンホールからの搬入を
考慮して、同一棚に2枚以上の多孔板1が設けられる。
換言すれば、大面積多孔板11が複数の多孔板1…から
なっている。この際の多孔板1はそれぞれ同一形状であ
ってもよく、あるいは異なる形状、例えば欠円形と四角
形との組み合わせであってもよい。
孔板1…(それぞれ大きさは異なる)と、4枚の略三角
形状の多孔板1…との計21枚の多孔板1…から1つの
円形の大面積多孔板11が形成されている。また、説明
の便宜上、図4においては、孔2…の記載を省略してい
る。さらに、上記多孔板1…は、支持部材としてのサポ
ートリング4a(図中環状部位)やサポートビーム4b
(図中横方向の線状部位)によって支持されているが、
これら支持部材に対応する領域や、多孔板1の端部同士
を重ね合わせた領域1d(図中縦方向の線状部位)につ
いては、図4では破線で示している。なお、上記各領域
をまとめて固定領域とする。加えて、図4における最外
部が塔壁3fである。
が設けられる場合には、図5(a)に示すように、サポ
ートリング4aおよびサポートビーム4b(支持部材)
上に個々の多孔板1…が載置される。そして、各多孔板
1・1間の接続部1cでは、多孔板1の端部同士が略密
接となっており、さらにこの密接状態を保持するために
クランプ5aおよびボルト−ナット5b(固定部材)に
よってサポートリング4aおよびサポートビーム4bに
固定されている。なお、図5(a)では、説明の便宜
上、多孔板1に形成されている孔2…の配列を菱形また
は三角形の模様として記載している。この模様における
頂点は孔の中心の位置を示している。また、図5(a)
における最外部は塔壁3fである。
置され、大面積多孔板11の辺縁部となる多孔板1…を
支持し、上記サポートビーム4bは、塔断面を架橋する
ように配置され、上記接続部1cを支持する。また、上
記クランプ5aはサポートリング4aに多孔板1を固定
し、上記ボルト−ナット5bは、サポートビーム4bに
多孔板1を固定する。
多孔板1…を設ける場合には、図5(b)にも示すよう
に、接続部1cを介して隣接した多孔板1・1における
最も近接した2つの孔2・2の中心間隔L2(接続部1
cを介して隣接する孔2・2の中心間隔L2)を、50
〜150mmの範囲内、好ましくは50〜100mmの
範囲内とするように設定することが好ましい。
孔板1…が設置されている構成では、各多孔板1・1間
の接続部1cは、図4および図5(a)におけるA−A
線矢視断面図である図6(b)や、図4および図5
(a)におけるB−B線矢視断面図である図6(a)に
示すように、上面が略水平となっているサポートビーム
4b上に、各多孔板1の端部を載置するか、各多孔板1
の端部同士を重ねるかなどといった構成とした上で、さ
らに多孔板1・1が動かないように、ワッシャー5cを
介してボルト−ナット5bで固定している。なお、図4
における領域1dに相当する領域は、図6(a)におい
て、ボルト−ナット5bで固定されている多孔板1・1
の重ね合わせ部位に相当する。
めには、各多孔板1の端部に、サポートビーム4bなど
の支持部材上に載置してボルト−ナット5bなどの固定
部材で固定したり、多孔板1の端部同士を重ねて固定部
材で固定するための固定領域が確保されるよう考慮する
必要がある。
間隔を確保する必要があるため、隣接した多孔板1にお
ける最も近接した二つの孔2・2の中心間隔L2を上記
の範囲内に限定することが好ましい。したがって、中心
間隔L2が150mmを超えると、多孔板1上で液体が
滞留して重合が発生しやすくなるので好ましくない。ま
た、50mm未満では、各多孔板1の固定が不十分にな
り、大面積多孔板11などの強度が十分でないなどの問
題が生じるため好ましくない。
を満たさない孔を設ける場合には、条件(a)・(b)
を満たす孔2…と、条件(a)・(b)を満たさない孔
との中心間隔が150mmを超えないようにする。つま
り、一方の多孔板1の孔2と他方の多孔板1の孔との間
隔をできる限り短くする。
(g)〜(i)を満たすように設けてなる無堰多孔板塔
3を用いて易重合性化合物の蒸留を行うと、前述したよ
うに、多孔板1における孔2を介しての気液の流通がよ
り良好に制御される。しかも、複数の多孔板1…を棚状
に設けた場合の各棚についても条件を規定しているの
で、塔3内を確実に濡らした状態とすることができる。
満たすと、塔3内を液体で濡らした第1の状態と、気体
や液体の偏流や滞留を回避する第2の状態とを何れも確
実に実現させることができる。そのため、気液接触させ
ることにより気相部を常に重合防止剤に接触させること
ができるとともに、偏流や滞留が回避されることにより
重合防止剤が十分分散して重合防止効果をより一層向上
させることが可能となる。その結果、重合物の生成を効
果的に防止することができる。
は、2枚以上の上記多孔板1…を、次に定義するブライ
ンド率が0.2以上、好ましくは0.4以上、さらに好
ましくは0.6以上となるように設置する条件(j)を
満たしていることがより好ましい。
板1の孔2…(図中実線で示す)と下方の多孔板1の孔
2…(図中点線で示す)とが部分的に重なりあっている
状態とする。このとき、互いの多孔板1・1において孔
2…の面積が重なりあった部分(同図において斜線で示
す部分)と、重なりあっていない部分とが生じる。そし
て、本発明においては、上下2枚の隣接する多孔板1・
1の一方において、全ての孔2…(開口部)の合計面積
に対する他方の多孔板1の孔2…と重なりあっていない
面積をブラインド率という。
隣接する上下2枚の多孔板1・1に関して、上方の多孔
板1の孔2と下方の多孔板1の孔2とが重なりあってい
る部分(図中斜線部分)の合計面積をSとし、上方およ
び下方の多孔板1・1のうち、全ての孔2…の合計面積
が小さい多孔板1における、全ての孔2…の合計面積を
Tとすると、次式で定義されるものである。
上であることが好ましい。ブラインド率が0.2未満で
は、気体や液体に同一箇所で偏流が生じて、重合が起り
やすくなる。特に、隣接する上下2つの棚にそれぞれ孔
径、2つの孔2・2の中心間隔、開孔率が同一の多孔板
1をすべて孔2が相対するように設けると、上方の多孔
板1の孔2と下方の多孔板1の孔2とはすべて重なりあ
った状態となり、さらに偏流が生じ易くなるので好まし
くない。
3は、上記条件(a)〜(d)、好ましくはさらに条件
(e)、より好ましくはさらに条件(f)を満たす、2
枚以上の多孔板1…を、上記条件(g)〜(i)を満た
し、より好ましくは、上記条件(j)を満たすように設
けてなっている。そのため、易重合性化合物を蒸留する
際の重合物の生成を効果的に防止できる。
11が、本発明にかかる無堰多孔板塔3に複数枚設置さ
れているとする。このとき、上記条件(j)を満たすた
めには、たとえば、図8に示すように、奇数段目の棚の
大面積多孔板11a(図3における多孔板1aに相当)
の設置方向に対して、偶数段目の棚の大面積多孔板11
b(図3における多孔板1bに相当)の設置方向を約9
0°回転させておくことが好ましい。
される設置方向の回転角度は、大面積多孔板11を形成
する各多孔板1…の形状によって適宜選択されるもので
あり、特に限定されない。すなわち、約90°の回転角
度は、図4に示すように、1枚の円形の大面積多孔板1
1が、主として複数の略長方形状の多孔板1…によって
形成されている場合に好適なものであり、多孔板1…の
形状が異なれば、好ましい回転角度も適宜異なる。した
がって、本発明においては、上記条件(j)を満たすた
めには、大面積多孔板11(すなわち多孔板1…)の設
置方向を回転させるように変化させればよく、その具体
的な角度は限定されない。
す2枚以上の多孔板1…を、少なくとも条件(i)また
は(j)を満たすように設けてもよい。これによって
も、本発明にかかる無堰多孔板塔3は十分な効果を発揮
し得る。
孔板塔3を用いて易重合性化合物の蒸留を行うものであ
る。したがって、本発明にかかる蒸留方法は、上記条件
(a)〜(d)、好ましくはさらに条件(e)、あるい
はさらに好ましくは条件(f)を満たす無堰多孔板1を
2枚以上、上記条件(g)〜(i)、好ましくは条件
(j)を満たすように設けてなる無堰多孔板塔3を用い
て行うものである。
物ないしは易重合性化合物含有液の蒸留に好適に用いら
れるものである。上記易重合性化合物の代表例として
は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステ
ル、たとえば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アク
リル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メ
タ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどを挙げることが
できる。本発明における蒸留には、粗製の易重合性化合
物を蒸留して精製する操作、易重合性化合物含有液から
所定の化合物を分離除去するための蒸留操作などが含有
される。
易重合性化合物の蒸留操作、放散操作および吸収操作を
包含する。本発明にかかる無堰多孔板塔3は、特に、上
記蒸留操作に好適に用いられるものである。
各条件(k)・(m)の少なくとも一方、好ましくは
(k)かつ(m)となる条件で行うことが非常に好まし
い。
m3 /m2 ・h以上、好ましくは1m3 /m2 ・h以上
となる。
して1m3 /m2 ・h以上、好ましくは3m3 /m2 ・
h以上となる。
に防止することができる。ここで、上記濡れ液量とは、
1枚の多孔板1上に供給される単位時間当たりの液量
[m3]を塔断面積または全孔2…の合計面積で割った
値である。
m2 ・h未満、あるいは全孔2…の合計面積に対して1
m3 /m2 ・h未満となると、乾き部が生じることで安
定剤の不均一が発生して重合が起こりやすくなる。
記(k)または(m)の条件を満たすと、塔3内を確実
に濡らした状態とすることができる上に、濡れ液量が適
切であるため、多孔板1上に適切な量の液体が貯められ
るので、孔2を介しての気液の流動も適切となる。その
ため、上記条件(k)および/または(m)を満たす
と、塔3内を液体で濡らした第1の状態と、気体や液体
の偏流や滞留を回避する第2の状態とを何れも確実に実
現させることができるので、重合物の生成をより一層効
果的に防止することができる。
挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、次に示
す実施例および比較例は、上記条件(a)〜(k)およ
び(m)の全ての条件を満たしたベストモードを示すも
のであり、本発明がこれに限定されないことは言うまで
もない。つまり、本発明では、蒸留に関わる種々の選択
肢に応じて、上述したように、少なくとも上記各条件の
中の必須条件を満たしていればよい。
孔2の上孔縁が平坦であるとともに、下孔縁に曲面が形
成されている(すなわち、条件(e)・(f)を満た
す)無堰多孔板を用い、これを、 (g)多孔板の設置間隔H=0.25(塔径の25
%)、 (h)水平公差=3mm、 (i)隣接した多孔板における最も近接した2つの孔の
中心間の距離L2=80mm、 (j)ブラインド率=0.65で設置した無堰多孔板塔
を用い、 (k)濡れ液量(対塔断面積)=1.0m3 /m2 ・
h、 (m)濡れ液量(対全孔の合計面積)=5.0m3 /m
2 ・h の条件でアクリル酸の蒸留を行った。
4重量%の液を塔中棚よりフィードし、棚の段数30
段、塔頂絶対圧力5.3kPa(40mmHg)、塔頂
温度44℃の条件で、2カ月連続運転した。なお、重合
禁止剤としてハイドロキノンを使用し、塔頂ベーパーに
対して100ppmとなるように塔頂より添加した。ま
た、酸素含有ガスを塔底より、一定量塔内に供給した。
運転終了後、内部を点検し結果を表1に示した。
0段の無堰多孔板の中の5段について、条件(a)〜
(d)、孔の表面形状(すなわち条件(e)・
(f))、無堰多孔板塔の条件(g)〜(j)、並びに
蒸留の条件(k)・(m)を表1の下線部に示すように
変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリル酸の蒸
留を行った。その結果を表1にまとめてに示す。なお、
蒸留の条件(m)については、条件(k)の濡れ液量お
よび条件(d)の開孔率から、次の式にて算出すること
ができる。
各条件を満たすアクリル酸の蒸留では、重合物の発生は
1kg未満となっているが、各条件を満たさない場合に
は、2.5kgを超える重合物が発生している。
明にかかる無堰多孔板および無堰多孔板塔を用いること
により、あるいは本発明にかかる蒸留方法により、第1
の状態および第2の状態が同時かつ確実に実現できるた
め、易重合性化合物あるいは易重合性化合物含有液を、
重合物の生成を効果的に防止して、長期にわたり安定し
て蒸留することができる。
塔、および蒸留方法は、上記各条件を満たしてなるもの
である。そのため、前述した第1の状態(塔内を濡らし
た状態)および第2の状態(気体および/または液体の
偏流や滞留を回避する状態)の双方を同時かつ確実に実
現することが可能になり、重合物の形成を効果的に防止
して長期間にわたり安定した蒸留を行うことができると
いう効果を奏する。
を示す断面図である。
ける孔の断面形態のバリエーションを示す説明図であ
る。
無堰多孔板塔の断面構成の一例を示す説明図である。
多孔板を形成した状態を示す説明図である。
同一棚に複数枚の多孔板を使用する場合に、隣接した多
孔板の接続部の構成を示す説明図であり、(b)は、隣
接した多孔板における最も近接した2つの孔の中心間隔
(L2)を示す説明図である。
示す説明図であり、(a)が、図4および図5(a)に
示す大面積多孔板におけるA−A矢視断面図に対応し、
(b)が、図4および図5(a)に示す大面積多孔板に
おけるB−B矢視断面図に対応する。
率の基準となる上方および下方の多孔板の孔の重なり部
分を示す説明図である。
棚に対する偶数段目棚の設置方向を示す説明図である。
Claims (8)
- 【請求項1】複数個の孔が形成されている無堰多孔板に
おいて、 孔径をdとした場合に、隣接する2つの孔の中心間隔が
1.2d〜3dの範囲内にあることを特徴とする無堰多
孔板。 - 【請求項2】さらに上記孔径dが10〜25mmの範囲
内であり、 板厚が2〜8mmの範囲内にあり、 開孔率が10〜30%の範囲内にあることを特徴とする
請求項1記載の無堰多孔板。 - 【請求項3】さらに無堰多孔板表面が平坦である条件
と、各孔の孔縁における上下の少なくとも一方に曲面を
形成する条件との少なくとも一方を満たすことを特徴と
する請求項1または2記載の無堰多孔板。 - 【請求項4】上記請求項1ないし3の何れか1項に記載
の無堰多孔板を複数枚棚状に設置してなり、 同一棚に複数枚の無堰多孔板を使用する場合、隣接した
多孔板における最も近接した2つの孔の中心間隔が50
〜150mmの範囲内にあることを特徴とする無堰多孔
板塔。 - 【請求項5】さらに、塔径をDとして、無堰多孔板の設
置間隔を、0.1D〜0.5Dの範囲内とするととも
に、各無堰多孔板の水平公差が8mmを超えないように
することを特徴とする請求項4記載の無堰多孔板塔。 - 【請求項6】さらに、隣接する上下の棚における2枚の
無堰多孔板において、ブラインド率が0.2以上である
ことを特徴とする請求項4または5記載の無堰多孔板
塔。 - 【請求項7】上記請求項4ないし6の何れか1項に記載
の無堰多孔板塔を用いて、易重合性化合物または易重合
性化合物含有液を蒸留することを特徴とする蒸留方法。 - 【請求項8】さらに、濡れ液量が塔断面積に対して0.
3m3 /m2 ・h以上である条件、および/または、濡
れ液量が全孔の合計面積に対して1m3 /m2 ・h以上
である条件を満たすことを特徴とする請求項7記載の蒸
留方法。
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