明細書 · ' 圧電単結晶素子およびその製造方法
技術分野
本発明は、圧電単結晶素子 (piezoelectric single crystal device)及 ぴその製造方法に関する。さらに詳しくは、 Pb[(Mg, Nb)1_xTix]03で表わされる マグネシウムニオブ酸 Pb ( g, Nb) 03(lead magnesium niobate)とチタン酸鉛 PbTi03(lead titanate)からなる固溶体(solid solution) (PMN-PT 又は PMNTと呼称する。)であって、正方晶(tetragonal system)の複合ぺロプスカイト 構造(complex perovskite structure)の圧電体単結晶素子材料からなり、高温 (具体的には 150°C)使用環境下であっても、分極方向(polarization direction) とほぼ直交する方向、いわゆる横方向の振動モード (lateral vibration mode)の 電気機械結合係数 (electromechanical coupling factor) k3iを低下させず に安定して 50%以上の高い値に維持できる、耐熱性に優れた圧電単結晶素子、 及び該圧電単結晶素子の製造方法に関する。 背景技術
横方向の振動モードの電気機械結合係数 k31は、例えば、図 1に示すように、 アスペクト比(aspect ratio) :a/bが 2.5以上の長方形板(aZb≥2.5, a>>L, b >>L)について、分極方向 3に電圧をかけた時の分極方向 3に直交する方向 1 の振動(横方向振動)の大きさに関する電気的エネルギーと機械的エネルギー の変換効率の平方根に比例し、この数値が大きいほど効率が良いことを意味す る。なお、圧電単結晶素子は、前述の長方形板のほか、方形板や円板や棒状
体等の形状でもよく、それぞれの形状についても同様に、電気機械結合係数 k31を求めることができる。
上記圧電素子を構成する材料として、従来は、 T. Ogawa, M.Matsushita, Y. Tachi and K. Echizenya, Program Summary and Extended Abstracts of the 10th US-Japan Seminar on Dielectric and Piezoelectric Ceramics" (Sept.26- 29, (2001) pp245- 248)に記載されているようなジルコン チタン酸鉛(lead zircon titanate, Pb(Zr, Ti) 03 ) (PZT)が広く用いられて いた。しかしながら、上記の Ogawa らの文献に記載されたジルコンチタン酸鉛 (PZT)では、電気機械結合係数 k31は、 30%程度である。
上述した PZT.より高い k
31を得るために、例えば特開平 11 - 171644号公報に は、 x(Pb
2Me
20
7)l/
2'
、副成分として Crと Si を添カロし 7こ圧亀 器組成物 piezoelectric porcelain composition)力 S開 示されている。しかしながら、特開平 11-171644号公報に開示された圧電磁器 組成物の電気機械結合係数 k
31は、 40%以下である。
また、 Jpn. J.Appl.Phys.90 (2001) ( p.3471-3475) には、電気機械結合 係数 k31が 59%(0.59)と高い値をもつ 0.67Pb(Mgl/3Nb2/3)O3— 0.33PbTi〇3 単 結晶の [001]方向を分極方向とし、 [100]方向または、 [010]方向への横振 動モード k31を測定した圧電特性等が開示されている。
しかしながら、 Jpn. J.Appl.Phys.90 (2001) (p.3471-3475) 記載の電気機 械結合係数 k31は、室温で測定したときのものであり、高温(具体的には 150°C) 環境下で使用した場合の電気機械結合係数 k31の値は定かではない。例えば、 圧電素子として使用するに際しては、はんだ付けを行なったり、樹脂などと接合
することによって、圧電素子が室温と高温(具体的には 150°C)までの温度変化 のある環境下で使用される場合があり、力かる場合には、圧電素子が劣化して、 電気機械結合係数 k31 の値が低下する傾向があるが、かかる点について、 Jpn. J. Appl. P ys. 90 (2001) (p. 3471-3475) には示唆や開示がない。 発明の開示】
本発明は、 Pb[(Mg,
で表わされるマグネシウムニオブ酸鉛とチタ ン酸鉛からなる固溶体(PMN— PT又は PMNTと呼称する。)であって、正方晶の 複合ぺロプスカイト構造を有する圧電体単結晶素子材料からなり、室温から高 温(具体的には 150°C)までの温度変化のある使用環境下であっても、電気機 械結合係数 k
31を低下させずに安定して 50 %以上の高い値に維持できる、耐 熱性に優れた圧電単結晶素子とその製造方法を提供することを目的とする。 上記目的を達成するため、本発明の要旨は以下のとおりである。
( 1) CO 0 1〕軸を C軸(最も格子定数の大きな軸)とする正方晶の〔1 0 1〕軸を分 極方向としたとき、圧電単結晶素子端面の法線方向が、分極方向にほぼ直交 する方向である〔-1 0 1〕軸を含んで該〔- 1 0 1〕軸 ± 25° の立体角の角度範囲 内にあり、分極方向とほぼ直交する方向、いわゆる横方向の振動モードの電気 機械結合係数 k31が 50%以上である圧電単結晶素子。
(2)〔0 0 1〕軸を C軸(最も格子定数の大きな軸)とする正方晶の〔0 1 1〕軸を分 極方向としたとき、圧電単結晶素子端面の法線方向が、分極方向にほぼ直交 する方向である〔0 -1 1〕軸を含んで該〔0 -1 1〕軸 ± 25° の立体角の角度範囲 内にあり、分極方向とほぼ直交する方向、いわゆる横方向の振動モードの電気
機械結合係数 k31が 50%以上である圧電単結晶素子。
( 3 )上記( 1 )または(2 )において、前記圧電単結晶素子が、 Pb[(Mg, Nb)^ xTix]03 (伹し、 Xは、 Mg, Nbおよび Tiのモル分率の合計を 1としたときの、 Τί のモル分率とする。)からなる固溶体であって、前記 Xが、 0.30 <Χ< 0.40 の 式を満足し、かつ、複合べロプスカイト構造を有する単結晶素子材料からなる圧 電単結晶素子。
なお、ここでいう「正方晶」は、直方体の単位格子を持ち、最も大きな格子定 数を有する軸を〔0 0 1〕軸(c軸)としたときに、それに直交する等しい長さの 〔100〕軸(a軸)及び〔0 1 0〕軸(b軸)を有する結晶構造を有するものである力 上記 (3)でいう固溶体において、チタン酸鉛(PT)のモル分率が 0.30に近い場合 は、熱力学的に低温相である擬立方晶を示す部分をその構造中に有するもの を含む。
また、「ぺロブスカイト構造」とは、固溶体単結晶の単位格子が図 2に模式的に 示したように、 Rイオンが、単位格子の角に位置し、酸素イオンが、単位格子の 面心に位置し、 Mイオンが単位格子の体心に位置するような構造(RM03)をな していることを言う。なお.、本発明が対象としている「複合べロプスカイト構造」と は、図 2の体心位置にある Mイオンが、 1種類の元素イオンでなく、 2種類以上の 複数の元素イオンのいずれかの元素からなることを言う。
(4)上記(1 ) 〜 (3 ) において、 前記圧電単結晶素子が、 さらに、 前記 固溶体に Inを 0. 05mol °/o〜30mol %含有する圧電単結晶素子。
( 5)上記(1 )〜(4)のいずれか記載の圧電単結晶素子を製造する方法であつ て、単結晶インゴットから所定形状の単結晶素子材料を所定方向に切り出す処
3 理の前後に、 単結晶のイ ンゴッ トのまたは、 切り出された単結晶ブロッ クあるいは、 切り出された単結晶素子の分極すべき方向である〔1 0 1〕ま たは〔0 1 1〕方向に、所定の条件で電界を印加して分極する主分極処理とを有 する圧電単結晶素子の製造方法。
(6) 上記 (5) において、 前記単結晶インゴットまたは、 前記単結晶 プロ ックの 〔1 0 1〕 または 〔0 1 1〕 方向に、 所定の条件で電界を印加 して分極する主分極処理と、 前記単結晶インゴジ トまたは、 前記単結晶 プロックから所定形状の単結晶素子を所定方向に切り出す処理とを有す る圧電単結晶素子の製造方法。
(7) 上記 (5) あるいは、 ( 6) において、 前記主分極処理は、 前記単 結晶ィンゴッ トまたは、 前記単結晶プロックの〔10 1〕または〔0 1 1〕方向 に、 20〜200DCの温度範囲で βδΟ ΙδΟθνΖηιηιの直流電界を印加する処理、 または前記単結晶ィンゴッ トまたは、 前記単結晶プロックのキュリー温 度(Tc)より高い温度で 250〜500V/mm の直流電界を印加したまま室温 まで冷却する処理である圧電単結晶素子の製造方法。
(8) 上記 (5) において、 前記単結晶インゴッ トから所定形状の単結 晶素子を所定方向に切り出す処理と、前記単結晶素子の〔101〕または〔01 1〕方向に、 所定の条件で電界を印加して分極する主分極処理とを有する 圧電単結晶素子の製造方法。
(9) 上記 (5) あるいは、 (8) において、 前記主分極処理は、切り出し た単結晶素子の〔101〕または〔011〕方向に、 20〜200°Cの温度範囲で 350〜 1500V/mmの直流電界を印加する処理、または前記単結晶素子のキュリー温
度 (Tc)より高い温度で 250〜500VZmmの直流電界を印加したまま室温まで冷 却する処理とを有する圧電単結晶素子の製造方法。
(10)上記 (5 ) 〜 (9 ) において、 前記主分極処理の前後いずれかに、分 極方向と直交する方向に電界を印加して分極する'補助分極処理をさらに有す る圧電単結晶素子の製造方法。
分極方向 3と直交する方向 1に印加する電界の種類としては、直流電界、パ ルス電界、交流電界、またこれらの定常電界のほか、減衰電界などがあり、電界 の強さや印加時間、温度条件等は、個々の圧電単結晶素子の特性及び分極 方向 3に直交する方向 1の電気機械結合係数 k31の所望の値に応じて適正条 件がある。これらは、実験等によって定めることができる。また、前記のパルス電 界としては、直角波のほか、交流三角波などュニポーラ及ぴバイポーラパルスを 用いることができる。
本発明によれば、分極方向 3に直交する方向 1 (横方向振動モード)の電気 機械結合係数 k31を積極的に利用する、例えば磁気ヘッド(magnetic head)の 精密位置決めァクチユエータ(accurate positioning actuator)、圧電ジャィ 口素子、 piezoelectric gyro device)、デジタル 7メフ、 digital still camera)の手振れ防止センサー (image stabilizer) 、心臓ペースメーカー 用セン^ー(cardiac pacemaker sensor)等の用途に使用される圧電単結晶 素子(デバイス)の製造が可能である。特に、本発明の圧電単結晶素子は、室 温から高温(具体的には 150°C)までの温度変化のある使用環境下であっても、 横方向振動モードの電気機械結合係数 k31を低下させずに安定して 50%以上 の高い値に維持できる。
図面の簡単な説明
図 1: 本発明に従う圧電単結晶素子の方位と形状を示す斜視図であり、分極 するときの状態で示す。
図 2: ぺロプスカイト結晶構造(RM03)の模式的斜視図である。
図 3: 本発明に従う圧電単結晶素子の横方向振動モードを利用する端面の 種々の形状を示す図である。
図 4: PMN- PT(PMNT)の相図である。
図 5: (1 0 1)面をウェハー面(もっとも広い面)として圧電単結晶素子 10Aを切 り出す状態を 3軸直交座標系で示したときの斜視図である。
図 6: (0 1 1)面をウェハー面(もっとも広い面)として圧電単結晶素子 10Bを切 り出す状態を 3軸直交座標系で示したときの斜視図である。
図 7: バイポーラ三角波パルスの波形図である。
図 8A: 圧電単結晶素子 10Aに直流電界を印加するときの説明図である。 図 8B: 圧電単結晶素子 10Bに直流電界を印加するときの説明図である。 図 9A: 単結晶ウェハー 11 から、圧電素子端面 10c (または、 T)の法線方向 1 が 0〜90° の範囲で圧電単結晶素子 10Aを切り出す方向を説明するための図 である。
図 9B: 単結晶ウェハー 11 から、圧電素子端面 10c (または、 T)の法線方向 1 が 0~90° の範囲で圧電単結晶素子 10Bを切り出す方向を説明するための図 である。
図 10: Tiモル分率 が 0.30<X<0.40を満足する本発明の圧電単結晶素子 10Aおよび, 10Bについて、温度に対する誘電率の変化をプロットした図である。
16473 図 1 1 : Ti モル分率 が 0.30 以下である種々の圧電単結晶素子 10A およ び, 10Bについて、温度に対する誘電率の変化をプロットした図である。
図 12A : Tiモル分率 が 0.30く X < 0.40を満足する本発明の圧電単結晶素 子 10Aに対して、熱サイクル試験を繰り返したときの、電気機械結合係数 k31の 数値の変化をプロットした図である。
図 12B : Tiモル分率 が 0.30く Xく 0.40を満足する本発明の圧電単結晶素 子 10Bに対して、熱サイクル試験を繰り返したときの、電気機械結合係数 k31の 数値の変化をプロットした図である。
図 13 : Tiモル分率 Xが 0.30以下である圧電単結晶素子 10Aおよび , ΙΟΒ に 対して、熱サイクル試験を繰り返したときの、電気機械結合係数 k31の数値の変 化をプロットした図である。
(符号の説明)
10 圧電単結晶素子
10a 圧電単結晶素子の上面(又は電極面)
10b 圧電単結晶素子の下面(又は電極面)
10cまたは、 T 圧電単結晶素子の横方向振動モードを利用する端面
11 単結晶ウェハー
10A 分極方向が〔1 0 1〕方向である圧電単結晶素子
10B 分極方向が〔0 1 1〕方向である圧電単結晶素子
a 圧電単結晶素子の横方向(横振動の方向 1)寸法 、 b 圧電単結晶素子の端面の(奥行き(方向 2) )寸法
T/JP2004/016473 b '圧電単結晶素子の凸状の端面
b"圧電単結晶素子の凹状の端面
L 圧電単結晶素子の縦方向(分極の方向 3)寸法
V 直流電圧
1 圧電単結晶素子端面の法線方向(横振動方向)
3 分極方向(縦振動方向) 発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の圧電単結晶素子の限定理由について、説明する。
( 1)分極方向と圧電素子端面の法線方向との関係:
図 5に示すように、 〔0 0 1〕軸を C軸(最も格子定数の大きな軸)とする正方 晶の〔1 0 1〕軸を分極方向としたとき、 圧電単結晶素子 10Aの端面 Tの法 線方向 1が、 分極方向〔1 0 1〕にほぼ直交する方向である〔- 1 0 1〕軸を含ん で該〔- 1 0 1〕軸 ± 25° の円錐状の立体角の角度範囲内であるか、または、図 6に示すように、 前記正方晶の〔0 1 1〕軸を分極方向としたとき、圧電単結晶 素子 10Aの端面 Tの法線方向 1力 分極方向〔0 1 1〕にほぼ直交する方向で ある〔0 -1 1〕軸を含んで該〔0 -1 1〕軸 ± 25° の円錐状の立体角の角度範囲内 にあることが好ましい。 ここで、 これらの圧電単結晶素子の最も広い面 の法線方向 nは、 図 5と図 6に示すように分極方向の〔1 0 1〕方向あるい は、 〔0 1 1〕方向を 0 ° としたときに、 0 ° ± 25° 以内の円錐状の立体角 の角度範囲内となる。
このような角度範囲に横方向振動を利用する圧電単結晶素子の端面 Tの法
線方向 1が限られることの理由は、以下のように考えられる。上記で規定された 立体角の角度範囲内では、 〔_1 0 1〕軸方向の横方向の振動あるいは、 〔0 -1 1〕軸方向の横方向の振動がそれらの軸方向以外に分散することがないの で、該軸方向の横振動モードのエネルギーが減少することなく維持され、
50%以上の高い電気機械結合係数 k31が得られる。 しかし、 圧電単結晶 素子の端面 Tの法線方向 1が、上記で規定された立体角の角度範囲外では、 前者の圧電単結晶素子 10Aの場合は、〔- 1 0 1〕軸方向に対し約 35° の角度 をなす〔- 1 1 1〕軸又は〔-1 - 1 1〕軸の影響により、横方向振動が分散される。ま た、後者の圧電単結晶素子 10Bの場合は、〔0 -1 1〕軸方向に対し約 35° の角 度をなす〔1 -1 1〕軸又は〔- 1 -1 1〕軸の影響により、横方向振動が分散される。 このことは、該〔- 1 0 1〕方向又は〔0 -1 1〕方向の横方向振動モードのエネルギ 一が減少することを意味する。その結果、横振動モードの電気機械結合係数 k 3 i: 50 %以上が得られなくなるもの考えられる。なお、正方晶の対称性から図 5 の圧電単結晶素子 10Aと図 6の圧電単結晶素子 10Bは、等価なものである。
( 2)圧電単結晶素子の結晶構造(正方晶の複合べロプスカイト構造): 本発明の結晶構造は、正方晶である。「正方晶」は、直方体の単位格子を持 ち、最も大きな格子定数を有する軸を〔0 0 1〕軸(c軸)としたときに、それに直交 する等しい長さの〔100〕軸(a軸)及び〔0 1 0〕軸(b軸)を有する結晶構造を有す るものであるが、上記 (3)でいう Pb [(Mg, Nb^— xTix]03の固溶体において、チタン 酸鉛(PT)のモル分率が 0.30に近い場合は、熱力学的に低温相である擬立方 晶を示す部分をその構造中に有するものを含む。
また、本発明の結晶構造は、図 2の単位格子において、 Pb イオンが、単位格
子の角に位置し、酸素イオン力 S、単位格子の面心に位置し、 Mg, Nb, In、Ti 等の Mイオンが単位格子の体心に位置するような複合ぺロブスカイト構造 (RM03)である。
(3)単結晶素子の組成:
本発明の圧電単結晶素子の組成は、例えば、 Pb[(Mg,
X は、 Mg, Nb および Ti のモル分率の合計を 1としたときの、 Ti のモル分率とす る。)からなる固溶体であって、前記 が、 0.30く Xく 0.40 の式を満足し、かつ、 複合べロプスカイト構造である。 より好適には、 0.34く Xく 0.38 とする。前記モ ル分率 Xが 0.3 以下だと、図 4に示すように、ほぼ擬立方晶が固溶体素子の大 部分を占め、しかも、相転移温度 T
rtが室温以上の比較的低温に存在するため、 室温から高温(例えば 150 °C )までの温度範囲にわたって使用する場合には、 正方晶と擬立方晶との間で相転移が生じやすくなり、その結果、正方晶圧電素 子としての性能が劣化して、電気機械結合係数 k
31が低下するおそれがあるか らであり、前記モル分率 Xが 0.40以上だと、擬立方晶と正方晶の相転移温度は 室温以下になり、室温から 150°Cの範囲で相転移は生じないが、チタン酸鉛の モル分率が大きすぎるため、固溶体としての圧電特性が劣化する傾向があり、 その結果、横振動モードの電気機械結合係数 k
31 : 50 %以上が得られなくなる おそれがあるからである。
なお、マグネシウムニォプ酸鉛 Pb (Mg, Nb) 03中の Mgと Nbの比率 Mg/Nb のモル比は、 0. 45〜0. 54の範囲であれば、複合べロプスカイト構造が維持さ れるので、本発明の範囲である。
また、本発明の他の圧電素子として、マグネシウム'ニオブ酸鉛一チタン酸鉛
(PMN-PT)にインジウム Inを、好適には 0.05〜30mol%含有させた、インジウム' マグネシウム'ニオブ酸鉛一チタン酸鉛(PIMN-PT)を用いることもできる。ィン ジゥム (In) のイオン半径は、 マグネシウム (Mg) よりは大きいがニォ プ (Nb) よりは小さいイオン半径を有するため、 ぺロプスカイ ト構造の 単位格子の体心位置に配置されるニオブ (Nb) とマグネシウム (Mg) と のイオン半径の差に起因する格子歪が緩和され、 単結晶育成時のクラッ ク発生ゃ圧電素子加工時のチッビング発生が生じにく くする作用を有す る。 このため本発明では、 上記作用を発揮させるため、 インジウムは 0. 05mol %以上添加することが必要であるが、 30ιιιΟ1 %を超える添加は、 単結晶を育成時の原料の融点が上昇し、 製造に当たり処理管理が難しく なるため好ましくない。
さらに、比誘電率 ε rを大きくする必要がある場合は、上記圧電単結晶素子の 組成に、さらに、 Sb, La, W , Taの内の 1又は複数の元素をそれぞれ 0. 5 mol ρρπ!〜 5 mol %添加しても良い。 また、 機械的品質係数 Qmを大きくする必 要がある場合には、さらに、上記圧電単結晶素子の組成に、 Mn, Cr のうちの 1又は複数の元素をそれぞれ 0. 5ρρπ!〜 5 mol %添加しても良い。
また Al、 Liは、 単結晶の成長時の安定化に寄与する。 その効果を得る ためには、 Al、Liの一種以上を合計で、 0. 05mol%以上の添加が好ましい。 これらの原子(Sb, La, W , Ta 、 Mn, Cr、 Al、 Li) は、単位格子の体心 位置または、格子間位置に配置される。合計で、 5 mol %を超える添加は、 単結晶を得るのが難しく、 多結晶となる恐れがある。
また、原料中に酸化カルシウムを添加した場合は、単結晶を育成中に、
酸化カルシウム中のカルシウム (Ca) は、 鉛系ぺロブスカイ ト構造化合 物 (マグネシウムニオブ酸鉛およびチタン酸鉛、インジウムニオブ酸鉛) の固溶体からなる結晶格子の鉛 (Pb) サイ ト (図 2の Rイオン) の一部 に置換型原子として配置され、 高温での酸化鉛の蒸発を抑止する作用が ある。この Caの作用によって、パイ口クロァ相の生成が抑制できる結果、 所望の複合べロプスカイ ト相の単結晶の生成を容易にする。本発明では、 上記 Caの作用を発揮させるため、カルシウムは 0. 05mo l %以上置換する ことが必要であるが、 10mo l °/oを超える置換は、単結晶の育成が困難とな る。 このため、 結晶格子中の鉛の 0. 05mo l %〜: 10mol %がカルシウムと置 換されているのが、 好ましい。 さらに、 0. 05mo l %〜 5mo l %がカルシゥ ムと置換されているのが、 好ましい。
単結晶インゴッ トの組成物中 (結晶格子中) の鉛の 0. 05〜10mol %を カルシウムと置換させるためには、 単結晶を育成中のカルシウムの蒸発 量を考慮して、 カルシウムを添加する必要がある。 カルシウムを添加す る方法は、 特に規定されない。 例えば、 カルシウム置換マグネシウム二 ォブ酸鉛やカルシウム置換亜鈴ニオブ酸鉛あるいは、 カルシウム置換チ タン酸鉛を使用しても良い。 あるいは、 酸化カルシゥゥムや炭酸カルシ ゥムを原料に添加する方法でも良い。
また、 Fe、 Pt、 Au、 Pd、 Rhなどの不純物は、圧電単結晶の製造過程で、 原料やルツポ等から混入する可能性があるが、 これらの不純物は単結晶 の生成を妨げるので、合計で 0. 5mol %以下に抑えておく ことが望ましい。 (4)圧電単結晶素子の形状
本発明が対象とする「圧電単結晶素子」の形状は、図 1に示すような長方形 板が、分極方向 3にほぼ直交する方向 1 (横方向振動モード)の電気機械結合 係数 k31を効果的に大きくする点で望ましい。特に、望ましい素子の形状は、ァ スぺタト比: aZb力 S 2.5以上の長方形板(a/b≥2.5 , a> > L, b > > L)、さらに 望ましくは、アスペクト比: a/bが 3以上の長方形板である。なお、本発明の長方 形板の両端部(短辺 b)の形状は、用途に応じて、図 3に示すように凸状に湾曲 b一(破線)あるいは、凹状に湾曲 b " (—点鎖線)していても良い。また、 a= b の 方形板であっても良い。なお、本発明でいう圧電素子端面は、図 3のような平面 視で、長辺 aに直角な短辺 bで示される。従って、圧電素子端面の法線方向 1 は、圧電素子の長辺 aに平行である。 次に、本発明の圧電単結晶素子の好適な製造方法について、説明する。 本発明の圧電単結晶素子の製造方法は、 正方晶を有する単結晶ィンゴ ッ トまたは、 単結晶ブロックの〔1 0 1〕または〔0 1 1〕方向に、 所定の条件 で電界を印加して単結晶インゴッ トを分極する主分極処理と、 前記単結 晶インゴッ トから所定形状の単結晶素子を所定方向に切り出す処理と、 を有する圧電単結晶素子の製造方法である。
また、 本発明の圧電単結晶素子の別の製造方法は、 正方晶を有する単 結晶ィンゴッ トから所定形状の単結晶素子を所定方向に切り出す処理 と、 前記単結晶素子の〔1 0 1〕または〔0 1 1〕方向に、 所定の条件で電界を 印加して単結晶素子を分極する主分極処理とを有する圧電単結晶素子 の製造方法である。
なお、ここで単結晶ブロックは、単結晶インゴットからワイヤーソ一等でブロック 状に切り出されたものを言う。単結晶インゴットの形状から分極処理が困難な場 合に、分極処理が容易な単結晶ブロック状に切り出して分極処理する。
以下、各処理における本発明の製造方法の限定理由を説明する。
( 1 )単結晶インゴットの製造:
本発明は、 Pb[(Mg, Nb xTiJO 但し、 Xは、 Mg, Nbおよび Τίのモル分率 の合計を 1としたときの、 Tiのモル分率とする。)からなる固溶体であって、前記 X が、 0.30く Xく 0.40 の式を満足する単結晶、あるいは、さらに、 上記組成に、 Inを 0. 05〜30mol %、 Mn, Cr, Sb, W, Al , La, Li , Taのうちの 1又は 複数の元素を 0. 5 mol ppn!〜 5 mol %添加した組成に、 あるいは、 さら に、 上記組成物中の鉛の 0. 05〜: I0mol %がカルシウムと置換されている 組成にした単結晶のインゴッ トには、 上記の組成に調整された原料をフ ラックス中に溶解させた後、 降温させて凝固させる方法か、 融点以上に 加熱して融解させた後、 一方向に凝固させる方法がある。 前者の方法と しては、 溶液プリ ッジマン法、 または、 TSSG 法 (Top Seeded solut ion Growth) などがあり、 後者としては、 融解ブリッジマン法、 CZ法 (チヨ クラルスキー法) などがあるが、 本発明では、 特に限定しない。
( 2 )単結晶インゴットの結晶学的方位の決定:
単結晶インゴットの〔1 0 1〕軸方位または〔0 1 1〕軸方位をラウエ法によって概 ね決定し、同時に〔1 0 1〕軸方位とほぼ直交する〔- 1 0 1〕軸方位及び〔0 1 0〕 軸方位、または〔0 1 1〕軸方位とほぼ直交する〔0 -1 1〕軸方位及び〔1 0 0〕軸方 位を概ね決定する。なお、正方晶の対称性から図 5と図 6に示すように、〔1 0 1〕
軸と〔0 1 1〕軸は、等価なものである。 .
さらに、上記方位軸等のいずれかの結晶軸に直交する結晶学的面 { 1 1 0 }面 や { 1 0 0 }面を研磨し、エックス線方位測定機 (X- ray direction finder)などを用 いて正確な方位を決定し、上記の研磨面のズレを修正する。
(3)粗切断(適当な厚さのウェハーやプロックの作製):
上記の単結晶インゴットの研磨面 { 1 1 0 }面や { 1 0 0 }面に平行又はほぼ直交 して単結晶インゴットをワイヤーソー(wire saw)又は内周刃切断機(inner diamond saw)などの切断機を用いて切断し、適当な厚さの板材(ウェハー (wafer))やプロックを得る。尚、切断後に、必要に応じてエッチング液を用いて 化学エッチングする処理を含むこともできる。
(4)研磨(所定厚さのウェハー作製):
上記のウェハーをラッピング機(lapping machine) ,ポリツシング機(polishing machine)などの研削機又は研磨機 (grinding machine)によって研削又は研磨し、 所定厚さのウェハーを得る。尚、研削、研磨後に、必要に応じてエッチング液を 用いて化学エッチングする処理を含むこともできる。
( 5)単結晶素子の製作:
本発明のウェハーは、 (1 0 1)面又は (0 1 1)面をウェハー面(もっとも広い面) に持つ。なお、正方晶の対称性から図 5と図 6に示すように、(1 0 1)面と(0 1 1) 面は、等価なものである。ウェハー面が(1 0 1)面の場合には、圧電素子 10Aの 端面 Tの法線方向 1 f 〔- 1 0 1〕軸を含んで該〔-1 0 1〕軸 ± 25° の立体角の 角度範囲内になるように、また、ウェハー面が (0 1 1)面の場合には、圧電素子 1 0Βの端面 Τの法線方向 1が、 〔0 -1 1〕軸を含んで該〔0 -1 1〕軸 ± 25° の立
体角の角度範囲内になるように、それぞれウェハーから所定形状の単結晶素子 材料を、ダイシングソー(dicing saw)やカッティングソー(cutting saw)などの精密 切断機を用いて切り出して作製する。
図 5は、(1 0 1)面をウェハー面(もっとも広い面)とし、横方向振動モードを利用 する圧電素子 10Aの端面 Tの法線方向 1が〔-1 0 1〕方向となるように単結晶を 切り出す状態を 3軸直交座標系で示したものであり、図 6は、(0 1 1)面をウェハ 一面(もっとも広い面)とし、横方向振動モードを利用する圧電 10Bの端面 Tの 法線方向 1が〔0 - 1 1〕方向となるように単結晶を切り出す状態を 3軸直交座標 系で示したものである。また、上記の単結晶プロックをダイシングソーや力 ッティングソ一などの精密切断機を用いて直接、 圧電素子の寸法に切り 出して作製することもできる。
(6)電極の作製:
主分極処理あるいは、さらに、補助分極処理で、印加電界を掛けるために必 要な電極を事前に作製する必要がある。
主分極処理前に、作製した単結晶素子材料の上下面(図 5では (1 0 1)面と (-1 0 - 1)面、図 6では (0 1 1)面と (0 -1 - 1)面)に、スパッタ法で Cr- Au被膜(1 層目に Cr層:厚み約 50 A、 2層目に Au層:厚み約 100〜200 A)を形成する力、 プラズマ蒸着で、金被膜を形成するか、あるいは、スクリーン印刷で銀被膜を形 成した後、焼成して電極を作製する。
また、補助分極処理前では、補助分極方向に垂直な対向する 2つの面に、上 記と同じ方法で電極を形成する。
なお、補助分極処理後に主分極処理する場合、あるいは、主分極処理後に
捕助極処理する場合には、最初の分極処理に使用した電極が残っていると、 後の分極処理を不安定にするので、適当な化学エッチング液あるいは、または、 酸で完全に電極を除去しておく必要がある。
( 7)主分極処理:
育成後の単結晶インゴットから切り出された単結晶のままでは、分極方向 3及 ぴこれと直交する方向において、同一方向の電気双極子(electric dipole)の集 合からなるドメイン内の電気双極子の向きがドメイン毎に種々の方向を向いてい るため、圧電性を示さず、未分極の状態にある。
したがって、分極する必要があるが、本発明の組成の圧電素子では、単結晶 インゴットのまま、また、 ブロック状に切断された単結晶、 あるいは、切り出し た単結晶素子の分極方向 3に、 20〜200°Cの温度範囲で 350〜1500VZmmの 直流電界を印加するのが好適である。すなわち、分極処理の温度が、 20°C未 満の場合や電界が、 350V/mm 未満の場合には、分極が不十分になる場合が あり、また、電界の温度が、 200°Cを超える場合や電界が、 I SOOVZmm を超える 場合には、過分極(オーバーポール)が起こり、圧電単結晶素子の圧電特性を 劣化させる場合がある。また、過度の電界により、結晶中の歪が増大し、圧電単 結晶素子にクラックが発生する恐れもある。
なお、分極時間は、上記の好適範囲内で選ばれた分極処理温度と印加電界 に応じて調整し、その上限を 180分とすることが好ましい。
あるいは、 分極方向 3に、 該単結晶素子のキュリー温度(Curie temperature)Tc (例えば、 図 4の T c線) より高い温度、好適には、 190〜 220°Cの温度範囲で 250〜5G0V/mmの直流電界を印加したまま室温まで冷却
(電界冷却(electric field cooling))してもょレ、。キュリー温度 Tcより高い温度に することで、電気双極子の存在をー且無くし、その後、電界の印加下でキュリー 温度以下に冷却することで、電気双極子の向きが、よりきれいに揃うためである。 キュリー温度以下の低い温度の場合には、一部に、電気双極子が残るために、 分極が不十分になる場合がある。また、電界が、 250V/mm 未満の場合には、 分極が不十分となる可能性がある。 また、電界が、 500V/mmを超えた場合に は、過分極(オーバーポール (over pole))を発生しやすくなる。 なお、冷却速度 は、冷却中に素子にクラックが生じない冷却速度が望ましい。
なお、キュリー温度 Tcは、それ以上の温度になると電気双極子がそれぞれ無 秩序な方向を向いて整列しなくなり、圧電性または、強誘電性を示さなくなる転 移温度である。これは、組成や物質の構造により決まっている(図 4の T c線参 照)。
( '8 )補助分極処理:
上述した主分極処理は、圧電単結晶素子の主たる分極を行う処理であるが、 該主分極処理の実施前あるいは実施後に、上記の分極方向 3と直交する方向、 望ましくは、横振動方向 1 に電界を印加し、上記の分極方向 3と直交する方向 の強誘電体ドメイン (ferroelectric domain)の整列状態を制御する補助分極処 理も有効である。
上記の分極方向 3と直交する方向に印加する電界の種類としては、直流電界 (direct current electric fieia)、ノヽルス fe界、 pulse electric field)、交 i¾電界 (alternating current electric field) またこれらの定常電界(steady state)のほか、 減衰電界(attenuation electric fiel などがあり、電界の強さや印加時間、温度
条件等は、個々の圧電単結晶素子の特性及び分極方向に直交する方向の電 気機械結合係数 k31の所望の値に応じて適正条件がある。これらは、実験等に よって定めることができる。補助分極の効果を得るためには、補助分極処理温 度は、 25°C〜相転移温度(例えば、図 4に示す Trt線)以下、印加電界範囲は、 βδθ ΐδθθν,πιπι が好ましい。なお、分極時間は、上記の好適範囲内で選ば れた分極処理温度と印加電界に応じて調整することが好ましいが、特に、 10 分 〜2時間が望ましい。
また、前記のパルス電界としては、直角波のほか、図 7に示すような交流三角 波などュニポーラ及ぴバイポーラパルスを用いることができる。
実施例 1
実施例に使用した単結晶素子は、マグネシウム ·ニオブ酸鉛(ΡΜΝ) +チタン 酸鉛(ΡΤ) (ΡΜΝ-ΡΤ) (組成式: Pb[(Mg, Nb xTgo 但し、 X = 0.36) )の単結 晶素子 10Aおよび、 10B力^なる。分極方向が〔1 0 1〕方向である圧電単結晶 素子 10A, と分極方向が〔0 1 1〕方向である圧電単結晶素子 10B (キュリー温 度 Tc= 186°C、素子形状: 13mm長さ X 4mm幅 X 0.36mm厚み)の形状等を、そ れぞれ図 8Aおよび図 8Bに示す。
この圧電単結晶素子 10A および、 10B の製造は、以下のように行った。 Pb[(Mg, Nb xTix]03 (伹し、 X = 0.36)の組成になるように原料を調整した後、 前述の融液ブリッジマン法により、単結晶インゴットを得た。次に、この単結晶ィ ンゴットの正確な結晶学的方位を決定し、研磨し、この研磨面である(1 0 1)面と (0 1 1)面とにそれぞれ平行して単結晶インゴットをワイヤーソ一で切断し、 0.5mm
厚みの板材を得た。この板材をポリツシング機によって研磨し、 0.36mm厚みのゥ ェハーを得た。このウェハーから素子形状: 13mm長さ X 4mm幅 X 0.36mm厚み の形状にダイシングソーを用いて切り出して作製した。
このとき、前記研磨面が (1 0 1)面である圧電単結晶素子 10Aの場合には、分 極方向 3を正方晶の〔1 0 1〕軸とし、前記研磨面が (0 1 1)面である圧電単結晶 素子 10B.の場合には、分極方向 3を正方晶の〔0 1 1〕軸とし、圧電単結晶素子 の端面 Tの方位(より厳密には、端面 Tの法線方向 1)を変化させた。具体的な 電気機械結合係数 k31の大きさを調べるため、圧電単結晶素子 10A の場合に は、図 9Aに示すように、圧電単結晶素子の端面 T ( 10c)の法線方向 1が 0° (〔- 1 0 1〕方向)から 5° ごとに 90° ( [0 1 0〕方向)まで変化させ、圧電単結晶 素子 10Bの場合には、図 9Bに示すように、圧電単結晶素子の端面 T ( 10c)の 法線方向 1が 0° (〔0 - 1 1〕方向)から 5° ごとに 90° (〔1 0 0〕方向)まで変化さ せて、ダイシングソーを用いて、切り出した。作製した単結晶素子の対向する上 下面 10a及び 10bに、スパッタ法で Cr- Au被膜(1層目に Cr層:厚み約 50 A、 2層目に Au層:厚み約 100〜200A)を形成して金電極を作製した。また、上記 分極は、 25°Cの大気中で 700V/mmの直流電界を 60分間印加する条件で行 なった。その後、 25°Cの大気中で 700VZmmの直流電界を 60分間印加する分 極法を用いて図 9A及ぴ 9Bの紙面にそれぞれ垂直な方向(それぞれ〔1 0 1〕方 向及び〔0 1 1〕方向)に分極した。圧電単結晶素子 10Aと, 10Bの電気機械結 合係数 k31は、既知の計算式(電子材料工業会標準規格: EMAS- 6008, 6100 参照)によって算出した。その測定結果を表 1及び表 2に示す。
ここで、分極方向 3とほぼ直交する面内の〔-1 0 1〕軸方向(図 9A)または〔0
-1 1〕軸方向(図 9B)に対して 0° から 90° の範囲を選択したことは、正方晶の 対称性から、分極方向と直交する前記結晶平面内のすべての方向に関する情 報を得るに必要十分な角度範囲であるためである。なお、参考のため、従来例 であるジルコン酸チタン酸鉛(Pb (Zr, Ti) 03)焼結体(PZT)で作製した圧電素 子についての電気機械結合係数 k31を表 1及ぴ表 2に併記した。 PZT は焼結体 であり、ここに示した圧電単結晶のように結晶方位に伴う異方性を持たないので、 横方向振動モードに関する電気機械結合係数 k31は、端面 T ( 10c)の法線方 向 1とは無関係で全結晶方位にわたって同じ値である。
表 1に示す結果から、圧電単結晶素子 10Aでは、分極方向 3と直交する面内 の〔- 1 0 1〕軸を含んで 0〜25° (結晶(正方晶)の対称性から一 25° 〜十 25° の範囲と同等)の角度範囲内である場合だけ、電気機械結合係数 k31が 50 % 以上を示し、横方向振動利用の圧電素子として好適であることがわかる。
また、表 2に示す結果から、圧電単結晶素子 10Bでは、分極方向 3と直交する 面内の〔0 -1 1〕軸を含んで該〔0 -1 1〕軸 ± 25° の角度範囲内である場合だけ、 電気機械結合係数 k31が 50%以上を示し、横方向利用の素子として好適であ ることがわかる。
更に、前記角度範囲内において、角度を 5° 刻みでなく更に、その間の角度 についても k31を詳細に測定した結果、該範囲において、電気機械結合係数 k31は常に 50%以上であることも確認した。
また、 上記実施例では、 単結晶素子板の [ 1 0 1 ] 方向を分極方向と して、13 m m X 4 in m X 0. 36m mの圧電単結晶素子の最大面積の面を〔 1 0 1〕 方向に直交する ( 1 0 1 ) 面内について好適な方位、 あるいは、
単結晶板の [011] 方向を分極方向として、 13mmX 4 mmX0.36mmの 圧電単結晶素子の最大面積の面を 〔011〕 方向に直交する (011) 面內に ついて好適な方位を確認したが、 図 5に示す端面 Tの法線方向 1が〔-10 1〕軸 ±25° の立体角の角度範囲内である(101)面と直交する(010)面上の [- 101]軸 +15° において k31が 54.3%と高い値が得られた。 また、 図 6に 示す端面 Tの法線方向 1が〔0 -1 1〕軸 ±25° の立体角の角度範囲内であ る (011) 面と直交する(100)面上の [0-11]軸 +15° において k31が 55.2% と高い値が得られた。
また、インジウム ·マグネシウム.ニオブ酸鉛(PIMN) +チタン酸鉛(PT) (65PIMN-35PT)についても、上記と同様の製造方法で圧電単結晶素子を作 製し、上記と同様の試験条件で電気機械結合係数 k31を調べたところ、表 1と表 2に示すように、 64PMN- 36PTとほぼ同様に高い電気機械結合係数 k31が得ら れることが確かめられた。なお、インジウム含有量は、 20mol%であった。 実施例 2
次に、分極方向が〔1 0 1〕方向である圧電単結晶素子 10A と分極方向が〔0 11〕方向である圧電単結晶素子 10Bとして、それぞれ表 3及ぴ表 4に示すような Tiモル分率の異なる Pb[(Mg,
の各単結晶素子 No.l〜: 11を、実 施例 1と同様な方法で作製し、電気機械結合係数 k
31を実施例 1と同様の方 法によって算出した。その結果を表 3及び表 4に示す。尚、表 3及び表 4に示す 電気機械結合係数 k
31の数値は、各単結晶素子について、サンプル数 n=5で ある場合の平均値である。また、圧電単結晶素子 10Aと 10Bの組成は、実施例
1と同じ組成の素子を用いた。なお、圧電単結晶素子 10Aと 10Bの方位は、実 施例 1と同じように圧電素子端面 T,10c の法線方向 1が、それぞれ [-101]軸あ るいは、 [0-11]軸に対して 0° になるように、素子形状: 13mm長さ X 4mm幅 X 0.36mm厚みの単結晶素子材料を、ダイシングソーを用いて切り出して作製し た。
表 3およぴ表 4の結果から、圧電単結晶素子 10Aおよび 10B はいずれも、 Ti のモル分率 Xが 0.30 < X < 0.40 の式を満足する発明例は、いずれも電気機械 結合係数 k31が 50 %以上の高い値が安定して得られている。 実施例 3
次に、横方向振動モード利用に好適な圧電単結晶素子を製造する好適な分 極処理方法について説明する。種々の分極処理条件で製造した分極方向が 〔1 0 1〕方向である圧電単結晶素子 10A, と分極方向が〔0 1 1〕方向である圧 電単結晶素子 10B の電気機械結合係数 k31を測定した結果を表 5に示す。な お、圧電単結晶素子の製造方法や素子寸法および、試験条件は、実施例 1と 同様に行った。 また、圧電単結晶素子 10Aと 10B の組成は、実施例 1と同じ 組成の素子を用いた。なお、圧電単結晶素子 10Aと 10Bの方位は、実施例 1と 同じように圧電素子端面 10c の法線方向 1が、それぞれ [-101]軸あるいは、 [0-11]軸に対して 15 ° になるように、素子形状: 13mm 長さ X 4mm 幅 X 0.36mm 厚みの単結晶素子材料を、ダイシングソーを用いて切り出して作製し た。
表 5の(1)〜(7)は、 25〜60°Cの温度範囲で 350〜1500VZmmの直流電界を
30分から 180分の範囲で印加する分極処理条件で圧電単結晶素子を作製し た場合である。この場合において、横方向振動モード利用に好適な結晶の分 極方向に直交する方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数 k31は、マグ ネシゥム.ニオブ酸鉛(PMN)—チタン酸鉛(PT) (Ti モル分率 X : 36mol%)では、 圧電単結晶素子 10Aで 51.6〜61.0 %、圧電単結晶素子 10Bで 52.0〜61.2 % といずれも 50 %以上であった。
また、インジウム ·マグネシウム 'ニオブ酸鉛(PIMN ) +チタン酸鉛(PT ) (PIMN-PT)についても、マグネシウム'ニオブ酸鉛(PMN)—チタン酸鉛(PT)と 同様の製造方法で圧電単結晶素子を作製し、マグネシウム 'ニオブ酸鉛 (PMN)—チタン酸鉛(PT)と同様の試験条件で電気機械結合係数 k31を調べた ところ、表 5に示すように、 25〜60°Cの温度範囲で 350〜1500V//mm の直流電 界において、電気機械結合係数 k31が 50%以上の高い圧電単結晶素子が得 られた。このように、マグネシウム 'ニオブ酸鉛(PMN) —チタン酸鉛(PT) (Tiモル 分率 X : 45mol%)に、適正範囲内で In (20mol%)を含有させた組成の圧電単結 晶素子において、いずれもマグネシウム ·ニオブ酸鉛( PMN) —チタン酸鉛( PT ) (Tiモル分率 X : 36mol%)と同じ結果が得られた。
なお、 主分極処理条件の温度範囲と電界範囲が、 上記の好適範囲を外 れた場合も本発明の範囲であるが、単結晶素子の分極処理温度を 25°Cと し、 印加電界を本発明の好適範囲の下限値を下回る 320V/mmとした場 合は、 発明例の 64PMN- 36PT素子と 65PIMN- 35PT素子において、 圧電単 結晶素子 10Aと圧電単結晶素子 10Bの電気機械結合係数 k31は、 50 %未 満になる場合があった。
また、単結晶素子の温度を 40°Cとし、印加電界を本発明の好適範囲の上限 値を超える 1700V/ mm にした場合は、発明例の 64PMN- 36PT 素子と 65PIMN- 35PT素子において、 圧電単結晶素子 10A と圧電単結晶素子 10B の電気機械結合係数 k31は、 50 %未満となる場合があり、 加えて、印加中ま たは印加終了直後に圧電単結晶素子中にクラックを発生する例もあった。 さらに、単結晶素子を、図 4に示すキュリー温度 Tcより高い温度である 210°C のシリコンオイル中で、 400VZmmの直流電界を印加したまま、 120分かけて、 シリコンオイルの温度を室温(25°C)まで降下させると、表 5の(8)に示すように、 分極方向に直交する方向(横方向振動モード)の電気機械結合係数 k31は、マ グネシゥム'ニオブ酸鉛(PMN)—チタン酸鉛(PT) (Tiモル分率 X : 36mol%)では、 圧電単結晶素子 10Aで 58.6°/。、圧電単結晶素子 10Bで 58.4%であった。ま た、マグネシウム'ニオブ酸鉛(PMN)—チタン酸鉛(PT) (Tiモル分率 X:
45mol%)に、適正範囲内で In (30mol%)を含有させた組成の圧電単結晶素子 (PIMN-PT)についても、マグネシウム ·ニオブ酸鉛(PMN)—チタン酸鉛(PT)と 同様の試験条件で電気機械結合係数 k31を調べたところ、表 5の (8 ) に示す ように、圧電単結晶素子 10Aで 57.3 %、圧電単結晶素子 10Bで 58.1 %であり、 マグネシウム 'ニオブ酸鉛(PMN)—チタン酸鉛(PT)と同様に向上した。
このことは、電界を印加したまま冷却する方法(電界冷却)が有効であること を示している。
なお、印加電界が 250V/mm未満では、発明例の 64PMN- 36PT素子と 65PIMN-35PT素子において、 圧電単結晶素子 10Aと圧電単結晶素子 10B の電気機械結合係数 k31は、 50%未満となる場合があった。 これは、印加電
16473 界が 200V/mm未満では、分極が不十分なためであると考えられる。一方、印 加電界が 500V/mniを超えると、発明例の 64PMN- 36PT素子と 65PIMN- 35PT 素子において、圧電単結晶素子 10Aと圧電単結晶素子 10Bの電気機械結 合係数 k31は、 50%未満となる場合もあった。加えて、印加電界が 600V/mni で印加中または印加終了直後に圧電単結晶素子中にクラックを発生する場合 もあった。
上記のように、発明例の 64PMN- 36PT素子と 65PIMN-35PT素子において、 圧電単結晶素子 10Aと圧電単結晶素子 10B共に本発明の好適な分極条件 の範囲において、 良好な電気機械結合係数 k31値が安定して得られた。 実施例 4
次に、横方向振動モード利-用に好適な圧電単結晶素子を製造する好適な補 助分極処理方法について説明する。種々の補助分極処理条件で製造した圧 電単結晶素子の横方向振動モードの電気機械結合係数 k31を測定した結果を 表 6に示す。なお、圧電単結晶素子の製造方法や素子寸法および、試験条件 は、実施例 1と同様に行った。 また、圧電単結晶素子 10Aと 10B の組成は、 実施例 1と同じ組成の素子を用いた。なお、圧電単結晶素子 10Aと 10Bの方位 は、実施例 1と同じように圧電素子端面 10c (T)の法線方向 1が、それぞれ [- 101]軸あるいは、 [0-11]軸に対して 15° になるように、素子形状: 13imn 長さ X 4mm幅 X 0.36mm厚みの単結晶素子材料を、ダイシングソーを用いて切 り出して作製した。
実施例 1と同様の方法で製造された横方向振動モード利用に好適な結晶の
両端面 10c (T)に、スパッタ法で Cr- Au被膜(1層目に Cr層:厚み約 50 A、 2 層目に Au層:厚み約 100〜200A)を形成して電極を作製し、補助分極処理温 度を 25〜40°Cとし、直流の印加電界を 320〜1700VZmm、印加時間を 10分〜 150分とし、補助分極処理を行った。その後、上記の電極を化学エッチング液あ るいは、または酸で完全に溶かして除去した後、単結晶素子材料 10 の対向す る上下面 10a及び 10bに、スパッタ法で Cr- Au被膜(1層目に Cr層:厚み約 50A、 2層目に Au 層:厚み約 100~20θΑ)を形成して電極を作製し、主分極 処理で、 25°Cの大気中で 700VZminの直流電界を 60分間印加した。電気機 械結合係数 k31を表 6に示す。表 6の(1)〜(5)は、 25〜40°Cの温度範囲で 350 〜1500V/mmの直流電界を 10分から 120分の範囲で印加する補助分極処理 条件で圧電単結晶素子を作製した場合である。
この場合において、電気機械結合係数 k31 は、マグネシウム'ニオブ酸鉛 (PMN)一チタン酸鉛(PT) (Ti モル分率 X : 36mol%)では、補助分極処理を行わ ない表 6の( 9 )示す未処理の場合の k31が、圧電単結晶素子 10Aで 59.8 %、 圧電単結晶素子 10Bで 59.1 %であったのに対して、いずれも 60%以上であつ た。この補助分極処理により、さらに高い電気機械結合係数 k31が得られた。ま た、主分極処理の後に上記(2)と同様の条件で補助分極処理を行った(6)の 場合も、圧電単結晶素子 10Aで 62.4%、圧電単結晶素子 10B で 62.8%と、 高い電気機械結合係数 k31が得られた。
また、図 7に示すようなバイポーラ三角波パルス電界を主分極処理の前後に 10分間印加した場合も (7 ) 及び (8 ) に示すように、高い電気機械結合係 数 k31が得られた。
16473 また、マグネシウム.ニオブ酸鉛(PMN)—チタン酸鉛(PT) (Ti モル分率 X: 45mol%)に、適正範囲内で In (30mol% )を含有させた組成の圧電単結晶素子 (PIMN-PT)についても、マグネシウム 'ニオブ酸鉛(PMN)—チタン酸鉛(PT)同 様の製造方法で圧電単結晶素子を作製し、マグネシウム ·ニオブ酸鉛(PMN) 一チタン酸鉛(PT)と同様の試験条件で電気機械結合係数 k31を調べたところ、 表 6の ( 1 ) 〜 ( 8 ) に示すように、横方向振動モード利用に好適な結晶では、 主分極処理の前後において行われた補助分極処理条件の 25〜40°Cの温度範 囲で 350〜1500VZmniの直流電界の範囲やバイポーラ三角波パルス電界によ る印加電界処理において、電気機械結合係数 k31力 マグネシウム'ニオブ酸 鉛(PMN)—チタン酸鉛(PT)と同様に向上した。
一方、 圧電単結晶素子の補助分極処理温度を 25°Cとし、 印加電界を本 発明の好適範囲の下限値を下回る 320V/鹿とした場合は、電気機械結合 係数 k31は、 発明例の 64PMN- 36PT素子と 65PIMN-35PT素子において、 圧 電単結晶素子 10Aと圧電単結晶素子 10Bが、 50%未満となる場合があつ た。
また、 実施例 1 と同様の方法で製造された圧電単結晶材料の温度を 40。Cとし、 印加電界を本発明の好適範囲の上限値を超える OOVZmmに した場合は、 電気機械結合係数 k31 は、 発明例の 64P丽- 36PT 素子と 65PIMN-35PT素子において、 圧電単結晶素子 10A と圧電単結晶素子 10B が、 50 %未満となる場合があった。 また、 圧電単結晶素子中にクラック を発生する場合もあった。
6473 実施例 5
次に、本発明に従って製造されたマグネシウム'ニオブ酸鉛(PMN) +チタン酸 鉛(PT) (PMN-PT) (組成式: Pb[(Mg, Nb)1_xTix]03 の単結晶素子 10A およ ぴ, 10B力らなり、 Ti モル分率 が 0.30く Xく 0.40 (30mol%超え、 40mol%未満) を満足する種々の圧電単結晶素子 ΙΟΑ, ΙΟΒを作製し、温度に対する誘電率の 変化を測定し、キュリー温度 Tc と相転移温度 Trtを求めた。なお、圧電単結晶 素子 10Aと 10B の方位は、実施例 1と同じように圧電素子端面 10c の法線方 向 1が、それぞれ [-101]軸あるいは、 [0-11]軸に対して 0° になるように、素 子形状: 13ππη長さ X 4mm幅 X 0.36mm厚みの単結晶素子を、ダイシングソーを 用いて切り出して作製した。
その結果を図 10 に示す。 なお、参考のため、 Ti モル分率 が 0.3 以下 (30mol%以下)である種々の圧電単結晶素子についても同様に作製し、温度に 対する誘電率の変化を測定し、キュリー温度 Tc と相転移温度 Trtを求めた。そ の結果を図 11に示す。
Tiモル分率 が 0.30 <X< 0.40(30mol%超え、 40mol%未満)を満足する本発 明の圧電単結晶素子 10Aおよび, 10Bは、図 10に示すように、いずれも、キユリ 一温度 Tc カ 160°C以上と高く、しかも、正方晶構造が擬立方晶構造に優越し て存在するため、相転移温度 T\tが室温以下である。これは、室温と高温(例え ば 150°C)との温度範囲で使用した場合であっても、相転移することなぐ室温と 高温で常に同じ結晶構造(正方晶)を維持することができるため、高温において も圧電単結晶素子 10A,10Bの圧電特性が劣化しにくいことを意味する。
一方、 Tiモル分率 が 0.3以下 (30mol%以下)である圧電単結晶素子は、図 1
1に示すように、キュリー温度 Tcが 130〜155°Cと低く、しかも、相転移温度 Trtが 90°C以下の低温に存在する。これは、室温と高温(例えば 150°C)との温度範囲 で使用した場合に、室温では菱面晶が優越した構造であるが、高温では正方 晶が優越した構造に相転移し、室温と高温で同じ結晶構造を維持することがで きなくなるため、高温において圧電単結晶素子 10Aおよび, 10Bの圧電特性が 劣化することを意味する。
また、図 12Aは、 Ti モル分率 が 0.30'<X< 0.40(30mol%超え、 40mol%未満) を満足する本発明の圧電単結晶素子 10A に対して、室温と高温(100°C、 120°C、 140°C)との間で熱サイクル試験を繰り返し行なったときの、電気機械結 合係数 k31の数値の変化をプロットしたものであり、図 12Bは、 Ti モル分率 が 0.30 <X< 0.40(30mol%超え、 40mol%未満)を満足する本発明の圧電単結晶素 子 10Bに対して、室温と高温(100°C、 120°C、 140°C)との間で熱サイクル試験を 繰り返し行なったときの、横方向振動モードの電気機械結合係数 k31 の数値の 変化をプロットしたものである。なお、熱サイクル試験は、室温から、それぞれ 100°C (保持時間: 60分)、 120°C (保持時間: 30分)及ぴ 140°C (保持時間: 15 分)まで昇温保持後、室温まで冷却して測定した後、さらに同じ条件で熱処理 するという条件で行なった。参考のため、 Tiモル分率 Xが 0.3以下 (30mol%以下) である圧電単結晶素子についても、同様に熱サイクル試験を行い、横方向振動 モードの電気機械結合係数 k31の数値の変化をプロットしたものを図 13に示す。
Tiモル分率 Xが 0.30 <X< 0.40(30mol%超え、 40mol%未満)を満足する本発明 の圧電単結晶素子 10A、 10Bはいずれも、熱サイクル試験を繰り返し行なっても、 横方向振動モードの電気機械結合係数 k31の数値がほとんど低下していないこ
とがわかる。
一方、 Tiモル分率 Xが 0.3以下(30mol%以下)である圧電単結晶素子は、熱サ イタル試験を繰り返し行なうことによって、図 13に示すように横方向振動モード の電気機械結合係数 k31の数値が顕著に低下している。 産業上の利用可能性
本発明によれば、分極方向に直交する方向(横方向振動モード)の電気機械 結合係数 k31を積極的に利用する、例えば磁気ヘッド精密位置決めァクチユエ ータ、圧電ジャイロ素子、デジタルカメラの手振れ防止センサー、心臓ペースメ 一力一用センサー等の用途に使用される圧電単結晶素子(デバイス)の製造が 可能である。特に、本発明の圧電単結晶素子は、高温(具体的には 150°C)使 用環境下であっても、横方向振動モードの電気機械結合係数 k31を低下させず に安定して 50%以上の高い値に維持できる。
角度 圧電単結晶素子 10Aの電気機械結合係数 k 31 (%) 結晶方位
64PMN-36PT
(。 ) Pb (Zr, Ti)03
(Ti: 36mol%)
〔- 1 0 1〕 0 62. 0 61. 5
5 62. 1 62. 3
10 61. 8 61. 3
15 59. 8 58. 2
2ひ 54. 3 55. 4
O C
25 51. 3 52 ΟO. L
曰曰 0
¾ ο ο
30 41. 2 39. 8
35 30. 0 30. 1
40 28. 3 27. 6
45 27. 3 27. 0 30
50 27. 1 26. 7
55 25. 1 24. 3
60 26. 8 24. 2
65 24. 8 23. 0
70 24. 9 24. 9
75 25. 0 25. 1
80 23. 7 23. 3
85 23. 5 23. 6
〔0 1 0〕 90 23. 8 23. 7
角度 圧電単結晶素子 10Bの電気機械結合係数 k 3! (%) 結晶方位
Co -1 ι〕 0 6 2. 1 6 1. 8
5 ド,- 6 2. 0 6 1. 9
1 0 6 1. 3 6 0. 3
σ¾
1 5 5 9. 1 6 0. 2
20 54. 2 5 3. 6
2 5 5 1. 4 5 1 t CO. 2
o αι
3 0 4 2. 6 4 1. 6
3 5 3 1. 0 3 1. 3
4 0 2 9. 6 2 9. 5
4 5 2 6. 1 2 5. 8 3 0
5 0 2 6. 3 2 6. 0
5 5 2 5. 2 2 5. 0
6 0 2 6. 0 24. 6
6 5 24. 2 24. 1
70 24. 8 24. 2
7 5 2 3. 7 2 3. 0
8 0 2 3. 6 2 3. 2
8 5 2 3. 5 2 3. 1
〔1 0 0〕 9 0 2 3. 8 2 3. 5
圧電単結晶素子 10A 評価結果
サンプル
PM PT Ti 電気機械結
No. 備考 合係数 k si mol mol% mol% (%)
1 72. 0 28. 0 28. 0 47. 3 比較例
2 69. 9 30. 1 30. 1 53. 0 発明例
3 67. 9 32. 1 32. 1 57. 0 発明例
4 66. 7 33, 3 33. 3 59. 8 発明例
5 64. 3 35. 6 35. 6 60. 3 発明例
6 63. 7 36. 3 36. 3 61. 8 発明例
7 62. 6 37. 4 37. 4 62. 0 発明例
8 61. 5 38. 5 38. 5 57. 0 発明例
9 60. 1 39. 9 39. 9 53. 0 発明例
10 59. 5 40. 5 40. 5 46. 8 比較例
11 56. 0 44. 0 44. 0 40. 2 比較例
サンプル
P應 PT Ti 電気機械結
No. 備考 合係数 k31 mol% mol% mol (%)
1 71. 9 28. 1 28. 1 47. 6 比較例
2 69. 7 30. 3 30. 3 53. 2 発明例
3 67. 4 32. 6 32. 6 57. 3 発明例
4 66. 5 33. 5 33. 5 59. 7 発明例
5 64. 3 35. 7 35. 7 60. 5 発明例
6 63. 7 36. 3 36. 3 61. 8 発明例
7 62. 5 37. 5 37. 5 62. 1 発明例
8 61. 4 38. 6 38. 6 57. 3 発明例
9 59. 9 39. 9 39. 9 53. 2 発明例
10 59. 7 40. 3 40. 3 46. 3 比較例
11 56. 0 44. 0 44. 0 39. 8 比較例
分極条件 電気機械結合係数 k31 (%)
65PIMN-35PT
64PMN-36PT
温度 電界 時間 (Ti: 35mol°/o)
(Ti: 36mol°/o)
(In: 20mol%) 備考 圧電単 圧電単 圧電単 圧電単
。C V/mm min 結晶素 結 s日 ; j¾B曰;? if
子 10A 子 10B 子 10A 子 10B
(1) 25 350 180 51. 6 52. 0 51. 5 50. 8 発明例
(2) 60 400 180 56. 8 56. 5 56. 4 56. 9 発明例
(3) 25 700 100 60. 6 61. 2 60. 4 60. 8 発明例
(4) 25 700 60 59. 8 59. 1 59. 2 59. 3 発明例
(5) 40 900 70 6 1. 0 60. 3 60. 4 60. 4 発明例
(6) 30 1200 60 60. 9 60. 8 6 1. 0 60. 4 発明例
(7) 40 1500 30 59. 6 57. 8 58. 3 58. 4 発明例
210→25
(8) 電界冷 400 120 58. 6 58. 4 57. 3 58. 1 発明例 却
補助分極条件 電気機械結合係数 k 3丄 (¾)
65PIMN-35PT
曰 64PMN-36PT
電界 時間 (Ti: 35mol )
補助分 (Ti: 36mol%)
電界 (In: 20mol%) 備考 極
の
処理の
時期 圧電単 圧電単 圧電単 圧電単
°C V/mm min 結晶素 結晶桌 ¾ίΒ曰糸 ¾B-S曰: A
子皿 子 10B 子 10A 子 10B
(1) 40 直流 350 120 前処理 60. 4 60. 3 60. 2 60. 4 発明例
(2) 25 直流 700 100 前処理 62. 5 63. 0 62. 7 62. 1 発明例
(3) 40 直流 900 70 前処理 62. 4 62. 5 6 2. 3 62. 5 発明例
(4) 30 .直流 1200 60 前処理 61. 8 6 1. 8 6 1. 3 61. 5 発明例
(5) 40 直流 1500 10 前処理 61. 4 60. 8 60. 4 6 1. 3 発明例
(6) 25 直流 700 100 後処理 62. 4 62. 8 6 2. 3 62. 4 発明例 ピ ク値
(7) 25 三角 500V/腿,間 前処理 6 1. 2 60. 8 60. 4 6 1. 0 発明例 波
パル 隔
(8) 25 800msec, 10
ス 後処理 6 1. 4 60. 9 60. 5 60. 6 発明例 分
(9) 未処理 59. 8 59. 1 59. 2 59. 3 発明例