JP2023553068A - 内部電界を有する圧電単結晶、その製造方法、並びにそれを用いた圧電及び誘電応用部品 - Google Patents

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Abstract

内部電界を有する圧電単結晶、その製造方法、並びに前記圧電単結晶を用いた圧電及び誘電応用部品に関する。圧電単結晶は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O3)において、[A]サイトイオン、[B]サイトイオン及び[O]サイトイオンの組成変化及び製造工程上の熱処理時に酸素分圧を制御することで、圧電単結晶固有の高い誘電定数及び圧電定数を維持するとともに、圧電単結晶の電気的安定性に必須の高い内部電界(Internal Bias Electric Field、EI)特性を同時に満足することにより、優れた特性の圧電単結晶を用いた圧電応用部品及び誘電応用部品を、広い温度領域と使用電圧条件下で作製して使用することができる。【選択図】図4

Description

本発明は、内部電界を有する圧電単結晶、その製造方法、並びにそれを用いた圧電及び誘電応用部品に関し、より詳細には、単結晶の圧電特性を向上させるためにペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオン、[B]サイトイオン及び[O]サイトイオンの組成変化及び製造工程上の熱処理時の酸素分圧の制御することで、圧電単結晶固有の高い誘電定数及び高い圧電定数を維持するとともに、高い抗電界と圧電単結晶の電気的安定性に必須の内部電界(Internal Bias Electric Field、E≧0.5~3.0kV/cm)特性を同時に満足する、新規ペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶、その製造方法、並びにそれを用いた圧電及び誘電応用部品に関する。
ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)の圧電単結晶は、既存の圧電多結晶体材料に比べて遥かに高い誘電定数(K )と圧電定数(d33、k33)を示し、圧電アクチュエータ、超音波トランスデューサ、圧電センサー、及び誘電キャパシタなどのような高性能部品に利用され、各種薄膜素子の基板材料としてもその応用が期待される。
現在まで開発されたペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶には、PMN-PT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO)、PZN-PT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O-PbTiO)、PInN-PT(Pb(In1/2Nb1/2)O-PbTiO)、PYbN-PT(Pb(Yb1/2Nb1/2)O-PbTiO)、PSN-PT(Pb(Sc1/2Nb1/2)O-PbTiO)、PMN-PInN-PT、PMN-PYbN-PT、及びBiScO-PbTiO(BS-PT)などがある。このような単結晶は、溶融(melting)時に共融(congruent melting)挙動を示し、通常は既存の単結晶成長法であるフラックス法(flux method)やブリッジマン法(Bridgman method)等で製造されていた。
しかし、開発された既存のPMN-PTとPZN-PTの圧電単結晶は、常温で高い誘電及び圧電特性(K >4,000、d33>1,400pC/N、k33>0.85)を示すという利点があるが、低い相転移温度(T、TRT)、低い抗電界(E)及び脆性(brittleness)などの欠点により、圧電単結晶の応用が非常に制限される。
一般に、ペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶は、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界、すなわち、モルフォトロピック相境界(モルフォトロピックそうきょうかい、morphotropic phase boundary、MPB)組成の付近領域において、最も高い誘電及び圧電特性を有することが知られている。
しかしながら、ペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶は、一般的に菱面体晶相を有する場合に最も良好な誘電及び圧電特性を示すので、菱面体晶相の圧電単結晶の応用が最も活発であるが、菱面体晶相の圧電単結晶は、菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(TRT)以下でのみ安定した挙動を示すため、菱面体晶相が安定した挙動を示し得る最大温度であるTRT以下でのみ使用が可能である。したがって、TRT相転移温度が低い場合には、菱面体晶相の圧電単結晶の使用温度が低くなり、圧電単結晶応用部品の作製温度と使用温度もTRT以下に制限される。
また、相転移温度(T、TRT)と抗電界(E)が低い場合には、機械加工、応力、発熱、及び駆動電圧下で圧電単結晶のポーリングが除去(depoling)され易くなり、優れた誘電及び圧電特性を喪失してしまう。したがって、相転移温度(T、TRT)と抗電界(E)の低い圧電単結晶は、単結晶応用部品の作製条件、使用温度条件、駆動電圧条件などが制限される。PMN-PT単結晶の場合、一般的にT<150℃、TRT<80℃、E<2.5kV/cmであり、PZN-PT単結晶の場合、一般的にT<170℃、TRT<100℃、E<3.5kV/cmである。また、かかる圧電単結晶により作製された誘電及び圧電応用部品も、製造条件、使用温度範囲や使用電圧条件などが制限されて、圧電単結晶応用部品の開発と実用化に障害要因となってきている。
圧電単結晶の欠点を克服するために、PInN-PT、PSN-PT、BS-PTなどの新規な組成の単結晶が開発され、また、PMN-PInN-PT、PMN-BS-PTなどのように互いに混合されt単結晶組成も研究されてきている。
しかし、このような単結晶の場合、誘電定数、圧電定数、相転移温度、抗電界、及び機械的特性などを同時に改善することはできず、ScやInなどの高価な元素を主成分とする圧電単結晶は、高い単結晶の製造コストのため単結晶の実用化に障害となっているとう問題がある。
現在まで開発された、PMN-PTを含むペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶が低い相転移温度を示す理由は、大きく三つに分けられる。第一に、PTとともに主な構成成分となるリラクサー(relaxor;PMNやPZNなど)の相転移温度が低いということである。
第二に、正方晶相と菱面体晶相との境界をなすMPBが温度軸に対して垂直でなく緩やかに傾いているため、菱面体晶相と正方晶相との間の相転移温度(TRT)を上昇させるためには、キュリー温度(T)を低下させることが必須であることから、キュリー温度(T)と菱面体晶相と正方晶相との間の相転移温度(TRT)を同時に上昇させることは困難である。
第三に、比較的高い相転移温度を有するリラクサー(PYbN、PInNやBiScOなど)をPMN-PTなどに混ぜ込む場合にも、相転移温度が組成に比例して単純に上昇しないか、または誘電及び圧電特性が低下するという問題を発生させるためである。
さらに、非特許文献1に開示されているRelaxor-PT系単結晶は、主に溶融工程を用いる既存の単結晶成長法であるフラックス法やブリッジマン法などにより製造されているが、単結晶製造工程上の理由から、組成が均一な大きな単結晶の製造が困難であり、製造コストが高く、大量生産が困難であるため、商用化にはまだ成功していないる。
また、一般に圧電多結晶セラミックに比べて、圧電単結晶は、高い圧電定数(d33≧2,000~4,000pC/N)を有するが、抗電界が低い(EC≦2kV/cm)ことからデポーリング(depoling)され易いので、電気的安定性が低くて実用に限られている。このため、圧電単結晶の抗電界を高める方法が提案されてきているが、抗電界の増加は圧電特性の劣化を伴う問題で、依然として低い実効性が指摘されている。
そこで、本発明者らは、従来問題点を改善しようと努力した結果、抗電界と内部電界を適宜増加させることで、圧電単結晶の電気的安定性及び高い圧電特性を維持する方法を設計し、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオン、[B]サイトイオン及び[O]サイトイオンの組成変化及び製造工程上の熱処理時の酸素分圧を制御することで、圧電単結晶固有の高い誘電定数及び圧電定数を維持するとともに、圧電単結晶の電気的安定性に必須の高い内部電界(Internal Bias Electric Field、E)特性を同時に満足する物性を確認することにより、本発明を完成するに至った。
韓国特許第0564092号(2006.03.27公告) 韓国特許第0743614号(2007.07.30公告)
IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control,vol.44,no.5,1997,pp.1140-1147。
本発明の目的は、内部電界を有する圧電単結晶を提供することである。
本発明の他の目的は、前記圧電単結晶の製造方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記圧電単結晶を用いた圧電部品または誘電部品を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明は、
(1)誘電定数(Dielectric Constant、K )が4,000以上、
(2)圧電定数(Piezoelectric Charge Constant、d33)が1,400pC/N以上、
(3)抗電界(Coercive Electric Field、E)が3.5kV/cm以上、及び
(4)内部電界(Internal Bias Electric Field、E)が0.5kV/cm以上である物性を満足する、内部電界を有するペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶を提供する。
好ましくは、(1)誘電定数(Dielectric Constant、K )が5,000以上、
(2)圧電定数(Piezoelectric Charge Constant、d33)が1,500pC/N以上、
(3)抗電界(Coercive Electric Field、E)が4.0kV/cm以上、及び
(4)内部電界(Internal Bias Electric Field、E)が1.0kV/cm以上であることを満足する、ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶を提供する。
本発明のペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶は、[A]サイトイオン、[B]サイトイオン及び[O]サイトイオンの組成を制御することにより、抗電界と内部電界を増加させて、圧電単結晶の電気的安定性と高い圧電特性を維持する。
そこで、本発明のペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶の第1実施形態は、下記化学式1の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
化学式1
[A1-(a+1.5b)BaC][(MN)1-x-y(L)Ti]O
式中、AはPbまたはBaであり、
Bは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn及びSrからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Lは、ZrまたはHfから選択される単独または混合形態であり、
Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb及びZnからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Nは、Nb、Sb、Ta及びWからなる群より選択される少なくとも1種であり、
0<a≦0.10、0<b≦0.05、0.05≦x≦0.58、及び0.05≦y≦0.62である。
また、本発明のペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶の第2実施形態は、下記化学式2の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
化学式2
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O3-z
前記式中、
Aは、PbまたはBaであり、
BはBa、Ca、Co、Fe、Ni、Sn及びSrからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Lは、ZrまたはHfから選択される単独または混合形態であり、
Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb及びZnからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Nは、Nb、Sb、Ta及びWからなる群より選択される少なくとも1種であり、
0<a≦0.10、0<b≦0.05、0.05≦x≦0.58、0.05≦y≦0.62、及び0<z≦0.02である。
前記Lが混合形態であるとき、下記化学式3または化学式4の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
化学式3
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w、HfTi]O
化学式4
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w、HfTi]O3-z
前記式中、A、B、C、M及びNは、前記化学式1または化学式2と同じであり、a、b、x及びyも前記化学式1または化学式2と同一である。但し、0.01≦w≦0.20を表す。
本発明の化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶は、0.01≦a≦0.10及び0.01≦b≦0.05を満足し、より好ましくは前記式においてa/b≧2を満足する。
本発明の化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶は、0.10≦x≦0.58及び0.10≦y≦0.62を満足することがより好ましい。
本発明の化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶は、単結晶内の気孔率(Porosity)が0.5vol%以上であることが好ましい。
また、本発明の化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶は、単結晶内の組成勾配が0.2~0.5モル%であるもので、均一性の特徴が付与される。
前記圧電単結晶において、前記x及びyは、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)組成領域から10モル%の範囲にあり、より好ましくは、前記x及びyは、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB) 組成領域から5モル%の範囲にある。
以上の圧電単結晶は、キュリー温度(Curie temperature、Tc)が180℃以上であり、同時に菱面体晶相と正方晶相との間の相転移温度(phase transition temperature between rhombohedral phase and tetragonal phase、TRT)が100℃以上である圧電単結晶を提供する。
また、前記圧電単結晶は、電気機械結合係数(longitudinal electromechanical coupling coefficient、k33)が0.85以上であり、抗電界(coercive electric field、Ec)が3.5~12kV/cmであることを満足する。
本発明は、上記の圧電単結晶を製造する方法であって、
(a)前記圧電単結晶の組成を有する多結晶体のマトリックス粒子(matrix grains)の平均粒径を調整することにより、異常粒子の数密度(number density:number of abnormal grains/unit area)を減少させる段階と、
(b)前記段階(a)により得られた異常粒子の数密度が減少した多結晶体を熱処理して異常粒子を成長させる段階と、
を含み、
前記圧電単結晶を構成する組成の粉末を800~900℃未満の温度で仮焼して粉末成形体を得て、前記粉末成形体を焼結する1次熱処理工程及び前記単結晶成長時の2次熱処理工程を行う、圧電単結晶の製造方法を提供する。
前記圧電単結晶の製造方法は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)の圧電単結晶において、[A]サイトイオン及び[B]サイトイオンの組成を制御し、製造工程における熱処理時の酸素分圧を制御することにより、圧電単結晶の固有の高い誘電定数、圧電定数及び抗電界を維持するとともに、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない内部電界(Internal Bias Electric Field、EI)を十分に誘導することができ、外部環境に抵抗性の強い新規な圧電単結晶を提供することができる。
また、本発明は、上記の優れた特性の圧電単結晶からなる圧電体、または、前記圧電単結晶とポリマーとが複合化された圧電体を提供する。
さらに、本発明は、前記圧電体を用いた圧電応用部品及び誘電応用部品を提供する。
前記圧電応用部品及び誘電応用部品の一例は、超音波トランスデューサ(ultrasonic transducers)、圧電アクチュエータ(piezoelectric actuators)、圧電センサー(piezoelectric sensors)、誘電キャパシタ(dielectric capacitors)、電界放射トランスデューサ(Electric Field Generating Transducers)及び電界-振動放射トランスデューサ(Electric Field and Vibration Generating Transducers)からなる群より選択されたいずれか一つであり得る。
本発明による圧電単結晶及び圧電単結晶応用部品は、誘電定数(K )4,000以上、圧電定数(d33)1,400pC/N以上及び抗電界(E)3.5kV/cm以上の優れた物性はもとより、「圧電単結晶の電気的安定性に必須である」高い内部電界(Internal Bias Electric Field、E≧0.5~3.0kV/cm)特性を同時に有し、これにより広い温度領域及び使用電圧条件下で使用可能であるという利点がある。
また、単結晶の大量生産に適した固相単結晶成長法を用いて圧電単結晶を製造し、高価な原料を含まない単結晶組成を開発して圧電単結晶を商用化することができる。
さらに、本発明による圧電単結晶及び圧電単結晶応用部品によれば、優れた特性の圧電単結晶を用いた圧電応用部品及び誘電応用部品を広い温度領域で作製し使用することができる。
本発明の第1実施形態による[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]Oの圧電単結晶である。 本発明の第1実施形態による[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.05、実施例1-3)の圧電単結晶[単結晶成長雰囲気(Air);Mnの添加による黒色]である。 本発明の第1実施形態による[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.05、実施例1-3)の圧電単結晶[単結晶成長雰囲気(N-H);Mn添加による黒色]である。 本発明の第1実施形態による[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.05、実施例1-3)の圧電単結晶[単結晶成長雰囲気(Air)]に対する分極(Polarization)-電界(Electric Field)のグラフである。 固相単結晶成長法で製造された一般的なPMN-30PT圧電単結晶[単結晶成長雰囲気(Air)]に対する分極(Polarization)-電界(Electric Field)のグラフである。 本発明の第1実施形態による[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.1、実施例1-4)の圧電単結晶[単結晶成長雰囲気(N-H)]に対する分極(Polarization)-電界(Electric Field)のグラフである。 本発明の第2実施形態による[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O3-z(x=0.01;z=0.0、比較例5)の圧電単結晶である。 本発明の第2実施形態による[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O3-z(x=0.01;z=0.005、実施例3-3)の圧電単結晶である。 本発明の第2実施形態による[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O3-z(x=0.01;z=0.01実施例3-4)の圧電単結晶である。 本発明の第2実施形態による[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.35(Mn1/3Nb2/30.05Zr0.25Ti0.35]O3-zの中で、x=0.01;z=0.0(比較例2)とx=0.01;z=0.02(実施例4-5)の圧電単結晶と一般的なPMN-30PT圧電単結晶に対する分極(Polarization)-電界(Electric Field)の変化グラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、抗電界と内部電界を増加させて圧電単結晶の電気的安定性とともに高い圧電特性を維持する圧電単結晶を提供する。
本発明は、
(1)誘電定数(Dielectric Constant、K )が4,000以上、
(2)圧電定数(Piezoelectric Charge Constant、d33)が1,400pC/N以上、
(3)抗電界(Coercive Electric Field、E)が3.5kV/cm以上、及び
(4)内部電界(Internal Bias Electric Field、E)が0.5kV/cm以上である物性を満足する、内部電界を有するペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶を提供する。
より好ましくは、
(1)誘電定数(Dielectric Constant)が5,000以上、
(2)圧電定数(Piezoelectric Charge Constant、d33)が1,500pC/N以上、
(3)抗電界(Coercive Electric Field、E)が4.0kV/cm以上、及び
(4)内部電界(Internal Bias Electric Field、E)が1.0kV/cm以上であることを満足する、ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶を提供する。
具体的に、本発明の圧電単結晶は、
(1)誘電定数(Dielectric Constant、K )が4,000~15,000、
(2)圧電定数(Piezoelectric Charge Constant、d33)が1,400~6,000pC/N、
(3)抗電界(Coercive Electric Field、E)が3.5~12kV/cm、及び
(4)内部電界(Internal Bias Electric Field、E)が0.5~3.0kV/cmであることを満足する。
また、本発明の圧電単結晶は、20~80℃の温度で前記(1)~(4)の物性が維持されることを特徴とする。
前記誘電定数及び圧電定数値は、常温の同一温度条件下で評価可能であり、本発明の明細書では、特記しない限り、30℃で評価された誘電定数及び圧電定数値を意味する。
前記ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶は、[A]サイトイオン、[B]サイトイオン及び[O]サイトイオンの組成を制御することにより、抗電界と内部電界を増加させて圧電単結晶の電気的安定性と高い圧電特性を維持する。
したがって、本発明は、第1実施形態のペロブスカイト型構造([A][B]O)の下記化学式1の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
化学式1
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O
式中、Aは、PbまたはBaであり、
Bは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn及びSrからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Lは、ZrまたはHfから選択される単独または混合形態であり、
Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb及びZnからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Nは、Nb、Sb、Ta及びWからなる群より選択される少なくとも1種であり、
0<a≦0.10、0<b≦0.05、0.05≦x≦0.58、0.05≦y≦0.62である。
また、本発明は、第2実施形態のペロブスカイト型構造([A][B]O)の下記化学式2の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
化学式2
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O3-z
前記式中、
Aは、PbまたはBaであり、
Bは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn及びSrからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Lは、ZrまたはHfから選択される単独または混合形態であり、
Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb及びZnからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Nは、Nb、Sb、Ta及びWからなる群より選択される少なくとも1種であり、
0<a≦0.10、0<b≦0.05、0.05≦x≦0.58、0.05≦y≦0.62、及び0<z≦0.02である。
本発明の化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶は、化学的組成が複合的になるにつれて圧電特性がさらに高くなる傾向に基づいて、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンを複合組成で構成する。
この場合、化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶において、[A]サイトイオンの複合組成を具体的に説明すると、[A1-(a+1.5b)]で構成されてもよく、前記A組成は、有鉛または無鉛元素を含み、本発明の実施例では、AがPbである有鉛系圧電単結晶に限定して説明するが、これに限定されない。
前記[A]サイトイオンにおいて、B組成は金属2価元素、好ましくはBa、Ca、Co、Fe、Ni、Sn及びSrからなる群より選択される少なくとも1種であり、C組成は金属3価の元素であれば使用可能である。
好ましくは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくは、ランタン系元素を1種または2種混合形態で使用することである。
本発明の実施例では、[A]サイトイオンにおいて、C組成はLa及びSmを含む単独または1種以上の混合組成で説明しているが、これらに限定されない。
前記化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶において、[A]サイトイオンの複合組成において、[A]サイトイオンに該当する[A1-(a+1.5b)]組成は、目的の物性を実現するための必須条件であり、Aが有鉛系または無鉛系圧電単結晶である場合、金属2価元素及び金属3価元素を組み合わせて構成されることを特徴とする。
好ましくは、化学式1の圧電単結晶の組成におけるドナー(Donor)に該当する[A]サイトイオンの複合組成において、0.01≦a≦0.10及び0.01≦b≦0.05を満足する必要があり、より好ましくは、a/b≧2を満足する。この場合、上記でaが0.01未満であれば、ペロブスカイト相が不安定であるという問題があり、0.10を超えると、相転移温度が低すぎて実際に用いることが困難になって好ましくない。
また、a/b≧2要件を満たしていない場合には、誘電及び圧電特性が最大化されないか、単結晶成長が制限されるため好ましくない。
このとき、化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶における[A]サイトイオンの複合組成において、金属3価元素または金属2価元素が単独で構成された場合に比べて、複合組成である場合、優れた誘電定数を実現することができる。
一般的に知られている[A][MN]O-PbTiO-PbZrO状態図は、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)の周りにおいて優れた誘電及び圧電特性を示す組成領域を示す。[A][MN]O-PbTiO-PbZrO状態図において、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界組成領域において誘電及び圧電特性が最大となり、MPB組成領域から離れるにつれて次第に誘電及び圧電特性が低下する。そして、MPB組成領域から菱面体晶相領域の中への5モル%以内の組成範囲では、誘電及び圧電特性の低下が少なく非常に高い誘電及び圧電特性値を維持し、また、MPB組成領域から菱面体晶相領域の中への10モル%以内の組成範囲では、誘電及び圧電特性が連続して低下するが、誘電及び圧電応用部品に適用するのに十分に高い誘電及び圧電特性値を示す。MPB組成領域から正方晶相領域の中へとその組成が変わっていく場合は、菱面体晶相領域の中へとその組成が変わっていく場合に比べて、誘電及び圧電特性がより速く低下する。しかしながら、正方定常領域中への5モル%以内の組成範囲や10モル%以内の組成範囲である場合にも、誘電及び圧電特性が連続して低下していたが、誘電及び圧電応用部品に適用するのに十分に高い誘電及び圧電特性値を示す。
PbTiOとPbZrOとの間の相境界(MPB)は、PbTiO:PbZrO=x:y=0.48:0.52(モル比)として知られている。
MPB組成領域から菱面体晶相領域の中へ及び正方晶相領域の中へとその組成がそれぞれ5モル%変わる場合は、xとyの最大値は、それぞれ0.53と0.57(言い換えれば、xが最大である場合のx:y=0.53:0.47であり、yが最大である場合のx:y=0.43:0.57である)となる。また、MPB組成領域から菱面体晶相領域の中へ及び正方晶相領域の中へとその組成がそれぞれ10モル%変わっていく場合には、xとyの最大値は、それぞれ0.58と0.62(言い換えれば、xが最大である場合のx:y=0.58:0.42であり、yが最大である場合のx:y=0.38:0.62である)となる。MPB組成領域から菱面体晶相領域の中へ及び正方晶相領域の中へのそれぞれ5モル%以内の組成範囲では、高い誘電及び圧電特性値を維持し、また、MPB組成領域から菱面体晶相の中へ及び正方晶相領域の中へのそれぞれ10モル%以内の組成範囲では、誘電及び圧電応用部品に適用するのに十分に高い誘電及び圧電特性値を示す。
また、PbTiOとPbZrOの含有量、すなわち、xとyの値が0.05以下である場合は、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界を作ることができないか、または相転移温度と抗電界が低すぎて本発明には適していない。
したがって、前記化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶の組成においてアクセプター(Acceptor)に該当する[B]サイトのイオン複合組成において、xは0.05≦x≦0.58の範囲であることが好ましく、0.10≦x≦0.58であることがより好ましい。ここで、xが0.05未満の場合は、相転移温度(Tc、TRT)、圧電定数(d33、k33)または抗電界(Ec)が低く、xが0.58を超過する場合は、誘電定数(K )、圧電定数(d33、33)または相転移温度(TRT)が低いためである。一方、yは0.05≦y≦0.62の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.10≦y≦0.62を満足する。その理由は、yが0.05未満の場合は、相転移温度(Tc、TRT)、圧電定数(d33、k33)または抗電界(Ec)が低く、0.62を超過する場合は、誘電定数(K )または圧電定数(d33、k33)が低いためである。
本発明の化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[B]サイトイオンは金属4価元素を含み、特にL組成に対して、ZrまたはHfから選択される単独または混合の形態に限定される。
前記混合形態であれば、下記化学式3または化学式4の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
化学式3
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w、HfTi]O
化学式4
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w、HfTi]O3-z
前記式中、A、B、C、M及びNは、前記化学式1または化学式2と同一であり、a、b、x及びyも同一であり、但し、0.01≦w≦0.20を表す。
ここで、前記wが0.01未満であれば、誘電及び圧電特性が最大にならないし、0.20を超えると、誘電及び圧電特性が急激に低下するため好ましくない。
本発明の第1実施形態の圧電単結晶において、下記化学式5の組成式を有するペロブスカイト型構造の圧電単結晶に基づいて、実施例を具体的に説明する。
化学式5
[Pb1-(a+1.5b)Sr][(MN)1-x-y(Zr)Ti]O
前記式中、
Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb及びZnからなる群より選択される少なくとも1種であり、
Nは、Nb、Sb、Ta及びWからなる群より選択される少なくとも1種であり、
0.02≦a≦0.10、0.005≦b≦0.05、0.35≦x≦0.58、及び0.05≦y≦0.62である。
前記化学式5の組成を有する圧電単結晶の組成において、ドナー(Donor)及びアクセプター(Acceptor)組成比を限定して、圧電単結晶固有の高い誘電定数、圧電定数及び抗電界を維持するとともに、抗電界と内部電界が効果的に増加する結果を説明しているが、前記組成及び組成比はこれに限定されず、化学式1の組成範囲内で種々の変形及び修正が可能である。
図1から図3は、本発明の第1実施形態により製造されたペロブスカイト型構造の圧電単結晶写真であって、ドナー(Donor)とアクセプター(Acceptor)の組成比の変化や、単結晶成長時の雰囲気によって変わる単結晶の外観を確認することができる。
また、図4から図6に示すように、第1実施形態の圧電単結晶の組成において、ドナー(Donor)含有量及びアクセプター(Acceptor)、好ましくは、Mn含有量を最適化して調整することにより、抗電界(Corecive Electric Field)及び内部電界(Internal Electric Field)を効果的に増加させて、電界駆動時及び機械的荷重の条件下で圧電単結晶の安定性を向上させる。
また、図7から図9は、本発明の第2実施形態によるペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)の圧電単結晶において、ドナー(Donor)及び[O]サイトの酸素空孔(Oxygen vacancy)を制御することにより変化する単結晶の外観を示す。
このとき、第2の実施形態の圧電単結晶において、[O]サイトの酸素空孔(Oxygen vacancy)は0≦z≦0.02に制御されることを特徴とする。前記zが0.02を超えると、誘電及び圧電特性が急激に低下するという問題があるため好ましくない。
酸素空孔(Oxygen vacancy)が前記範囲に誘導されると、図10に示すように、抗電界(Corecive Electric Field)及び内部電界(Internal Electric Field)が効果的に増加し、電界駆動時及び機械的荷重の条件下で圧電単結晶の安定性が向上する。したがって、圧電特性を最大化するとともに安定性をも高めることができる。
以上の化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンの複合組成と[B]サイトイオン及び[O]サイトイオンの組成を組み合わせることにより、キュリー温度(Curie temperature、Tc)が180℃以上であり、かつ菱面体晶相と正方晶相との間の相転移温度(phase transition temperature between rhombohedral phase and tetragonal phase、TRT)が100℃以上である圧電単結晶が得られる。このとき、キュリー温度が180℃未満であれば、抗電界(Ec)を5kV/cm以上、または相転移温度(TRT)を100℃以上に上昇させることが困難である。
また、本発明による化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶は、電気機械結合係数(k33)が0.85以上であり、ここで、前記電気機械結合係数が0.85未満であれば、圧電多結晶体セラミックスと類似の特性を有し、エネルギー変換効率が低いことから好ましくない。
また、本発明の化学式1または化学式2の組成式を有する圧電単結晶は、単結晶内部の組成勾配が0.2~0.5モル%であって均一な単結晶を提供することができる。
ジルコン酸鉛(PbZrO)は、230℃の高い相転移温度を有するだけでなく、MPBを温度軸に対してより垂直にすることができるという効果を有するため、高いキュリー温度を維持するとともに、菱面体晶相と正方晶相との間の高い相転移温度(TRT)を得ることができ、その結果、高いTcとTRTを同時に有する組成を開発することができる。
これは、従来の圧電単結晶の組成にジルコン酸鉛を配合しても、ジルコン酸鉛の含有量に比例して相転移温度が上昇するためである。したがって、ジルコニウム(Zr)またはジルコン酸鉛を含むペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶は、既存の圧電単結晶の問題点を克服することができる。また、ジルコニア(ZrO)又はジルコン酸鉛は、既存の圧電多結晶材料の主成分として使用されており、しかも安価な原料であるため、単結晶の原料コストを上げることなく、本発明の目的を達成することができる。
一方、ジルコン酸鉛を含むペロブスカイト型圧電単結晶は、溶融時に、PMN-PTやPZN-PTなどとは異なり、共融(congruent melting)挙動を示さず、非共融(incongruent melting)挙動を示す。したがって、非共融挙動を示す場合、固相の溶融時に液相と固相ジルコニア(solid phase ZrO)に分離され、液相内の固相ジルコニア粒子が単結晶成長を妨害するため、溶融工程を用いる一般的な単結晶成長法であるフラックス法やブリーマン法などでは作製できない。
また、溶融工程を用いる一般的な単結晶成長法では、強化第二相を含む単結晶の作製することは困難であり、まだ報告されていない。これは、溶融温度以上で強化第二相が液相と化学的に不安定で反応するので、独立した第二相の形状を維持できず消滅してしまうからである。また、液相中の第二相と液相との密度差により第二相と液相が分離するため、第二相を含む単結晶の製造が困難となり、単結晶内における強化第二相の体積分率(volume fraction)、大きさ(size)、形状(shape)、配列(arrangement)及び分布(distribution)などを調整することができない。
よって、本発明は、溶融工程を用いない固相単結晶成長法を用いて強化第二相を含む圧電単結晶を製造する。固相単結晶成長法によれば、融点(溶融温度)以下で単結晶成長が起こるため、強化第二相と単結晶との化学的反応が抑制され、強化第二相が単結晶内部で独立した形状で安定して存在することができる。
また、強化第二相を含む多結晶体内で単結晶が成長し、単結晶成長中に強化第二相の体積分率、大きさ、形状、配列及び分布等が変化しない。したがって、強化第二相を含む多結晶体を作製する工程において、多結晶の内部における強化第二相の体積分率、大きさ、形状、配列及び分布等を調整して単結晶を成長させると、結果として、所望の形状の強化第二相を含む単結晶、すなわち、第二相強化圧電単結晶(second phase-reinforced single crystals)を製造することができる。
ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)の場合、従来の単結晶成長法であるフラックス法やブリッジのみ法では複合組成で圧電単結晶を製造することができない。特に、溶融工程を含むフラックス法やブリッジマン法では、製造工程において単結晶内部の組成勾配が1~5モル%であるのに対し、本発明の固相単結晶成長法では、単結晶内部の組成勾配が0.2~0.5モル%で均一な組成で製造することができる。
したがって、本発明は、固相単結晶成長法によるジルコン酸鉛を含むペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンの複合組成及び[B]サイトイオン間の組み合わせが複雑な組成であっても圧電単結晶を均一に成長させることにより、従来の圧電単結晶に比べて、誘電定数(KT≧4,000~15,000)と圧電定数(d33≧1,400~6,000pC/N)及び抗電界(E≧3.5~12kV/cm)が著しく増加した新規の圧電単結晶を提供することができる。
特に、前記抗電界(E)が3.5kV/cm以上、好ましくは4~12kV/cmであり、ここで、前記抗電界が3.5kV/cm未満であれば、圧電単結晶加工時または圧電単結晶応用部品の製造時や使用時にポーリング(poling)が容易に除去されるという問題がある。
また、圧電単結晶の電気的安定性に必須である高い内部電界(Internal Bias Electric Field、E)は0.5kV/cm以上、好ましくは0.5~3.0kV/cmの特性を兼ね備えているため、広い温度領域と使用電圧条件下で使用可能であるという利点がある。
本発明は、固相単結晶成長法による圧電単結晶の製造方法を提供する。前記固相単結晶成長法は、特許文献1及び2に基づいており、固相単結晶成長法により成長された圧電単結鏡は、フラックス法とブリーマン法に比べて、安価で大量生産が可能である。
具体的には、本発明の圧電単結晶の製造方法は、以下である。
(a)前記圧電単結晶を構成する組成を有する多結晶体のマトリックス粒子(matrix grains)の平均粒径を調整することにより、異常粒子の数密度(number density:number of abnormal grains/unit area)を減少させる段階と、
(b)前記段階(a)により得られた異常粒子の数密度が減少した多結晶体を熱処理して異常粒子を成長させる段階と、
を含み、
前記圧電単結晶を構成する組成の粉末を800~900℃未満の温度で仮焼して粉末成形体を得て、前記粉末成形体を焼結する1次熱処理工程及び前記単結晶成長時に2次熱処理工程を行う、圧電単結晶の製造方法を提供する。
他の製造方法として、前記組成を有する多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調整することにより、異常粒子の数密度を減少させる条件下で多結晶体を熱処理する、圧電単結晶の製造方法を提供する。
上記で多結晶体の異常粒子の数密度を減少させた状態で発生する少数の異常粒子のみを継続して成長させることにより単結晶を得ることができる。
前記多結晶体の熱処理前に種子単結晶を多結晶体に接合して、熱処理中に種子単結晶を多結晶体中に成長させ続ける圧電単結晶の製造方法を提供することができる。
前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)は、異常粒子の発生が起こる臨界粒径(異常粒子の数密度が「0(ゼロ)」になるマトリックス粒子の平均粒径、R)の0.5~2倍の粒径範囲(0.5R≦R≦2R)に調整される。このとき、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が0.5Rcよりも小さい場合(0.5Rc>R)には、異常粒子の数密度が高すぎて単結晶が成長せず、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が2Rcよりも大きい場合(2Rc<R)には、異常粒子の数密度が「0」であるが、単結晶の成長速度が遅すぎて大きい単結晶を製造することができない。
本発明の圧電単結晶の製造方法において、1次及び2次熱処理工程を900~1,300℃で1~100時間行い、熱処理時に1~20℃/分の昇温速度で行うことが好ましい。
前記熱処理は、酸素分圧を調整して行うことができる。このとき、酸素分圧の調整を空気(Air)条件、N2雰囲気またはH-N雰囲気で行ってもよく、前記雰囲気中で酸素分圧が減少するにつれて、誘電定数及び圧電定数が連続して減少するが、抗電界(E)及び内部電界(E)が増加する傾向の物性が実現される。
また、ペロブスカイト型構造の圧電単結晶は、アクセプター(Acceptor)と酸素空孔との結合により欠陥双極子(defect dipole)を誘導して内部電界を大きくすることができる。
したがって、圧電単結晶の内部にアクセプター(Acceptor)を添加して酸素空孔の濃度を高めると、自然に欠陥双極子(defect dipole)の濃度が高くなり、その結果、抗電界と同時に内部電界も増加する。
そこで、1次及び2次熱処理による単結晶の成長が十分でないかまたは該成長を促進するために、成長した単結晶に3次熱処理をさらに施すことにより、圧電単結晶内の酸素空孔含有量を調整することができる。
このとき、3次熱処理工程は、酸素雰囲気によって温度及び時間が変わることがあるが、600~1,300℃で0.1~100時間行うことが好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、単結晶成長工程後の追加の3次熱処理工程における雰囲気中の酸素分圧条件により酸素空孔含有量(0<z≦0.02)を調整することにより、第2実施形態の圧電単結晶を製造することができる。
これにより、単結晶成長熱処理工程中の雰囲気(酸素分圧の大きさ)を調整することにより、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない内部電界(E)を十分大きく誘導することができ、外部環境に抵抗性の強い新規な圧電単結晶を製造することができる。
さらに、本発明は、上記の圧電単結晶単独からなる圧電体、または、前記圧電単結晶とポリマーとが複合化された圧電体を提供する。
前記ポリマーは、特に限定されないが、代表的な一例としてエポキシ樹脂を混用するとき、機械的衝撃に対する高い抵抗性および容易な機械加工を有する形で提供され得る。
また、本発明は、前記圧電体を用いる圧電応用部品及び誘電応用部品を提供してもよく、前記圧電応用部品としては、超音波トランスデューサ(医療用超音波診断機、ソナー用トランスデューサ、非破壊検査用トランスデューサ、超音波洗浄機、超音波モーターなど)、圧電アクチュエータ(d33型アクチュエータ、d31型アクチュエータ、d15型アクチュエータ、微細位置制御用圧電アクチュエータ、圧電ポンプ、圧電バルブ、及び圧電スピーカーなど)と圧電センサー(圧電加速度計など)、電界放射トランスデューサ(Electric Field Generating Transducers)及び電界-振動放射トランスデューサ(Electric Field and Vibration Generating Transducers)などがある。
また、誘電応用部品としては、高効率キャパシタ(capacitor)、赤外線センサー、誘電体フィルターなどがある。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
パート1:第1実施形態の圧電単結晶の製造、並びに第1実施形態の圧電単結晶の誘電特性及び圧電特性の評価
<実施例1>内部電界を有する圧電単結晶の製造1
固相単結晶成長法により[Pb0.981.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02[ドナー含有量];0.0≦y≦0.1[アクセプター含有量])の圧電単結晶を製造した。
粉末合成工程で過量のMgOとPbOを添加して、製造された単結晶内部にMgO第二相と気孔強化相2vol%を含ませた。まず、下記表1に示すように、[Pb0.981.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02、0.0≦y≦0.1)の組成を有するセラミック粉末をクーロンバイト(Columbite)法を用いて製造した。まず、MgOとNbの粉末をボールミリングして混合した後、仮焼してMgNb相を製造し、原料粉末を定量比でさらに混合し、仮焼してペロブスカイト相粉末を製造した。前記製造された粉末に過量のPbOとMgOを添加して混合粉末を製造した。前記混合粉末を成形した後、200MPaの静水圧で加圧成形し、これにより得られた粉末成形体に対して、900℃~1300℃の様々な温度条件下にて25℃おきに100時間にかけてそれぞれ熱処理した。
多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を、異常粒子の生成が起こる臨界粒径の0.5倍以上2倍以下の粒径範囲(0.5R≦R≦2R)に調整できる条件として、添加される過剰なPbOの量を10~20モル%範囲とし、熱処理温度を1000~1200℃とした(1次焼結)。このように製造された多結晶体上にBa(Ti0.7Zr0.3)O種子単結晶を載置して熱処理(単結晶成長熱処理)し、種子単結晶の多結晶体中への連続的な成長により、多結晶体と同じ組成を有する単結晶を製造した。
前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を異常粒子の生成が起こる臨界粒径(異常粒子の数密度が「0(ゼロ)」になるマトリックス粒子の平均粒径、R)の0.5倍以上2倍以下の粒径範囲(0.5R≦R≦2R)に調整したとき、種子単結晶は多結晶体中へと成長し続けた。本実施例では、過量PbOの量及び熱処理温度を調整したとき、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を異常粒子の生成が起こる臨界粒径の0.5倍以上2倍以下の粒径範囲に調整することができた。多結晶体の基地相粒子の平均粒径(R)を0.5Rc≦R≦2Rcの範囲に調整したとき、熱処理中にBa(Ti0.7Zr0.3)O種子単結晶が[Pb0.981.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02;0.0≦y≦0.1)の多結晶体中へと成長し続けて、多結晶体と同じ組成を有する単結晶を製造したこのとき、成長した単結晶の大きさは20×20mm以上であった。
上記で製造された圧電単結晶の一例として、図1は、[Pb0.981.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.1;y=0)の圧電単結晶を示し、図2は、[Pb0.981.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.05)の圧電単結晶を示すこのとき、図2では、単結晶成長雰囲気の空気(Air)上にMnを添加することで黒色を帯びる。
また、セラミック粉末成形体の1次焼結および単結晶成長熱処理における雰囲気中の酸素分圧を変化させて圧電単結晶を製造してもよく、一例として、図3の[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.05)の圧電単結晶を製造してもよい。このとき、単結晶成長雰囲気のN-HにMnを添加することで黒色を帯びることを確認した。
<実施例2>内部電界を有する圧電単結晶の製造2
前記実施例1と同様にして行うが、[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.25(Ni1/3Nb2/30.10-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02[ドナーの含有量];0.0≦y≦0.1[アクセプター含有量])の圧電単結晶を製造した。
<実験例1>実施例1の圧電単結晶の誘電特性及び圧電特性の評価
前記実施例1で製造された[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02[ドナー含有量];0.0≦y≦0.1[アクセプター含有量])の圧電単結晶において、表1に示す圧電単結晶の組成(xとyの変化)と表2に示すセラミック粉末成形体の1次焼結と単結晶成長熱処理における雰囲気中の酸素分圧を調整して製造された圧電単結晶の誘電及び圧電特性を評価した。
具体的に、前記製造された[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02;0.0≦y≦0.1)の単結晶において、x[ドナー含有量]とy[Mn含有量]の変化による誘電定数、相転移温度(T、TRT)、圧電定数、抗電界(E)及び内部電界(E)の特性の変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して下記表1に示した。
Figure 2023553068000002
前記表1から確認できるように、圧電単結晶(x=0.0、y=0.05)の場合(比較例1)、圧電電荷定数、誘電定数及び誘電損失特性を評価した結果、圧電電荷定数(d33)は1,600[pC/N]であり、誘電定数は5,640であり、誘電損失(tan δ)は0.4%であって、誘電及び圧電特性に優れていた。このとき、内部電界(E)は0.4であった。
また、(001)圧電単結晶(x=0.01、y=0.0)単結晶の場合(比較例2)、圧電電荷定数(d33)は2,650[pC/N]であり、誘電定数は8,773であり、誘電損失(tanδ)は0.5%であった。このとき、内部電界(E)は0であった。
一方、x[ドナー含有量]とy[Mn含有量]の変化により製造された圧電単結晶の場合、x[ドナー含有量]の増加に応じて誘電定数と圧電定数が増加し、一方、y[Mn含有量]の増加に応じて誘電定数と圧電定数が連続的に減少するが、抗電界(E)と内部電界(E)は増加した。
また、表1に示すように、本発明の圧電単結晶は、x[ドナー含有量]とy[Mn含有量]の値が一定値以上である場合(x≠0.0及びy≠0.0)、誘電定数と圧電定数を一般的なPMN-PT単結晶と類似に維持するとともに、抗電界(E)と内部電界(E)を大幅に増加させることができた。特に、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない内部電界(E)を十分に大きく誘導でき、外部環境に抵抗性の強い新規な圧電単結晶を開発した。
また、下記表2に示す物性は、前記製造された[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x≦0.02;0.0≦y≦0.1)の圧電単結晶において、1次焼結と単結晶成長熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]変化による圧電単結晶の物性変化を観察した結果である。
Figure 2023553068000003
前記表2に示すように、1次焼結と単結晶成長熱処理工程における雰囲気中の酸素分圧が減少するにつれて、誘電定数と圧電定数は連続的に減少するが、抗電界(E)と内部電界(E)は増加した。
このような効果は、x[ドナー含有量]とy[Mn含有量]の値が大きいほどさらに高まる傾向を示した。したがって、x[ドナー含有量]とy[Mn含有量]を含む圧電単結晶を酸素分圧が低い条件下で製造した場合、誘電定数と圧電定数を一般的なPMN-PT単結晶と類似に維持するとともに、抗電界(E)と内部電界(E)を大幅に増加させることができた。
以上のことから、本発明は、1次焼結と単結晶成長熱処理工程中の雰囲気(酸素分圧の大きさ)を調整することにより、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない内部電界(E)を十分に大きく誘導でき、外部環境に抵抗性の強い新規な圧電単結晶を開発した。
上記の結果から、[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02;0.0≦y≦0.1)の単結晶において、「x[ドナー含有量]、y[Mn含有量]、x/y比率」を調整すると同時に1次焼結と単結晶成長熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]を調整した場合、製造された圧電単結晶の圧電定数、抗電界(E)及び内部電界(E)を最適化することができた。したがって、特定以上の大きさ(E>0.5または1.0kV/cm)の内部電界(E)を含む圧電単結晶は、既存の一般的なPMN-PTまたはPIN-PMN-PT単結晶とは異なり、外部環境の変化に対して高い圧電特性が安定的に維持される特徴を示した。
<実験例2>実施例2の圧電単結晶の誘電特性及び圧電特性の評価
前記実施例2で製造された[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.25(Ni1/3Nb2/30.10-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02[ドナー含有量];0.0≦y≦0.1[アクセプター含有量])の圧電単結晶において、表3に示す圧電単結晶の組成(xとyの変化)と表4に示すセラミック粉末成形体の1次焼結と単結晶成長熱処理における雰囲気中の酸素分圧を調整して製造された圧電単結晶の誘電及び圧電特性を評価した。
前記[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.25(Ni1/3Nb2/30.10-y(Mn0.30Ti2/3Zr1/3Nb0.35]O(0.0≦x≦0.02;0.0≦y≦0.1)の圧電単結晶の誘電定数、相転移温度(T、TRT)、圧電定数、抗電界(E)及び内部電界(E)の特性の変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して下記表3に示した。
Figure 2023553068000004
前記表3の単結晶の圧電電荷定数、誘電定数及び誘電損失特性を評価した結果、固相単結晶成長法により得られた[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.25(Ni1/3Nb2/30.10-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02;0.0≦y≦0.1)の圧電単結晶において、組成(x=0.0、y=0.05)の場合(比較例3)及び組成(x=0.01、y=0.0)の場合(比較例4)は、圧電電荷定数(d33)、誘電定数及び誘電損失(tanδ)特性に優れているが、内部電界(E)は低いか、誘導されていないことが確認された。
したがって、表3に示すように、本発明の圧電単結晶は、x[ドナー含有量]とy[Mn含有量]の値が一定値以上である場合(x≠0.0及びy≠0.0)、誘電定数と圧電定数を一般的なPMN-PT単結晶と類似に維持するとともに、抗電界(E)と内部電界(E)を大幅に増加させることができることが確認された。
特に、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない内部電界(E)を十分に大きく誘導でき、外部環境に抵抗性の強い新規な圧電単結晶を開発した。
下記表4に示す物性は、前記製造された[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.25(Ni1/3Nb2/30.10-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02;0.0≦y≦0.1)の圧電単結晶において、1次焼結と単結晶成長熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]変化による圧電単結晶の物性変化を観察した結果である。
Figure 2023553068000005
前記表4に示すように、1次焼結と単結晶成長熱処理工程における雰囲気中の酸素分圧が減少するにつれて、誘電定数と圧電定数は連続的に減少するが、抗電界(E)と内部電界(E)は増加した。
このような効果は、x[ドナー含有量]とy[Mn含有量]の値が大きいほどさらに高まり、x[ドナー含有量]とy[Mn含有量]を含む圧電単結晶を酸素分圧が低い条件下で製造した場合には、誘電定数と圧電定数を一般的なPMN-PT単結晶と類似に維持するとともに、抗電界(E)と内部電界(E)を大幅に増加させることができることが確認された。
したがって、本発明は、1次焼結と単結晶成長熱処理工程中の雰囲気(酸素分圧の大きさ)を調整することで、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない内部電界(E)を十分に大きく誘導でき、外部環境に抵抗性の強い新規な圧電単結晶を開発することができた。
上記結果から、[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.25(Ni1/3Nb2/30.10-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦x≦0.02;0.0≦y≦0.1)の単結晶において「x[ドナー含有量]、y[Mn含有量]、x/y比率」を調整すると同時に1次焼結と単結晶成長熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]を調整した場合、製造された圧電単結晶の圧電定数、抗電界(E)及び内部電界(E)を最適化することができた。このように特定以上の大きさ(E>0.5または1.0kV/cm)の内部電界(E)を含む圧電単結晶は、既存の一般的なPMN-PTまたはPIN-PMN-PTの単結晶とは異なり、外部環境の変化に対して高い圧電特性が安定的に維持される特徴を示した。
<実験例3>温度変化に伴う内部電界の変化の観察
前記実施例1の[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.05)の圧電単結晶と一般的なPMN-30PTの圧電単結晶とを、固相単結晶成長法でそれぞれ製造した。前記製造された圧電単結晶を用いて「(001)4×4×0.5(T)mm」の大きさの測定サンプルを作製し、温度上昇に伴う抗電界(E)と内部電界(E)の変化を観察した。
図4は、前記実施例1の[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.05)の圧電単結晶[単結晶成長雰囲気-Air]の電界(Electric Field)に対する分極(Polarization)変化グラフであり、常温で温度を上昇させながら抗電界と内部電界の変化を観察した。
その結果、25℃では、抗電界(E)と内部電界(E)はそれぞれ4.4と1.0kV/cmであり、温度が80℃に上昇すると、抗電界と内部電界はそれぞれ2.3と0.6kV/cmに低下することが確認された。
図5は、固相単結晶成長法で製造された一般的なPMN-30PT圧電単結晶[単結晶成長雰囲気-Air]の電界(Electric Field)に対する分極(Polarization)変化を観察したグラフであって、常温で温度を上昇させながら抗電界と内部電界の変化を観察した。
結果として、25℃で抗電界は2.5kV/cmであり、内部電界は観察されておらず、また、温度が80℃に上昇すると、抗電界は1.2kV/cmに顕著に減少することが確認された。
上記結果から、本発明の実施例1において、[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.05)の圧電単結晶[単結晶成長雰囲気-Air]は、一般的なPMN-30PTの圧電単結晶[単結晶成長雰囲気-Air]に比べて、抗電界は約2倍であり、特に内部電界を有するという特徴がある。
また、温度が上昇しても抗電界と内部電界を維持して、温度変化に対してデポーリング(Depoling)されず、特性を維持する特性を示した。特に、80℃における[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.05)の圧電単結晶[単結晶成長雰囲気-Air]の抗電界は、常温におけるPMN-30PTの圧電単結晶[単結晶成長雰囲気-Air]の抗電界と類似しており、内部電界を維持して、相対的に高い安定性を示すことが確認された。
<実験例4>酸素分圧条件による内部電界の変化の観察
前記実施例1において[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.1)の圧電単結晶を固相単結晶成長法で製造した。製造工程では、1次焼結と単結晶成長熱処理中にN-Hの雰囲気を用いて、酸素分圧を調整して製造された圧電単結晶を用いることで「(001)4×4×0.5(T)mm」の大きさの測定サンプルを作製し、抗電界(E)と内部電界(E)の変化を観察した。
図6は、[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.4-y(Mn1/3Nb2/3Zr0.25Ti0.35]O(x=0.01;y=0.1、実施例1-4)の圧電単結晶[単結晶成長雰囲気-N-H]の分極(Polarization)-電界(Electric Field)のグラフであり、一定の大きさ以上のx[ドナー含有量]とy[Mn含有量]を有する圧電単結晶を、酸素分圧が低い条件下で製造すると、抗電界(E)と内部電界(E)をそれぞれ5.6と2.8kV/cmに大きく増加させることができることが確認された。
以上のことから、圧電単結晶の組成においてx[ドナー含有量]とy[Mn含有量]を調整すると同時に、1次焼結と単結晶成長熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]を調整することにより、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない内部電界(E)を十分に大きく誘導できることが確認された。
パート2:第2実施形態の圧電単結晶の製造、並び第2実施形態の圧電単結晶の誘電特性及び圧電特性の評価
<実施例3>酸素空孔を含む圧電単結晶製造1
固相単結晶成長法により[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02[ドナー含有量];0.0≦z≦0.03[酸素空孔含有量])の圧電単結晶を製造した。
粉末合成工程で過量のMgOとPbOを添加して、製造された単結晶内部にMgO第二相と気孔強化相2vol%を含ませた。まず、下記表5に示すように、[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02;0.0≦z≦0.03)の組成を有するセラミック粉末をクーロンバイト(Columbite)法を用いて製造した。まず、MgOとNb粉末をボールミリングして混合した後、仮焼してMgNb相を製造し、原料粉末を定量比でさらに混合し、仮焼してペロブスカイト相粉末を製造した(仮焼工程)。前記製造された粉末に過量のPbOとMgOを添加して混合粉末を製造した。前記混合粉末を成形した後、200MPaの静水圧で加圧成形し、これにより得られた粉末成形体に対して、900℃~1300℃の様々な温度条件下にて25℃おきに100時間にかけてそれぞれ熱処理した。多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を、異常粒子の生成が起こる臨界粒径の0.5倍以上2倍以下の粒径範囲(0.5R≦R≦2R)に調整できる条件として、添加される過量なPbOの量を10~20モル%範囲とし、熱処理温度を1000~1200℃とした(焼結工程、1次熱処理)。このように製造された多結晶体上にBa(Ti0.7Zr0.3)O種子単結晶を載置して熱処理(単結晶成長熱処理、2次熱処理)し、種子単結晶の多結晶体中への連続的な成長により、多結晶体と同じ組成を有する単結晶を製造した。
前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を異常粒子の生成が起こる臨界粒径(異常粒子の数密度が「0(ゼロ)」になるマトリックス粒子の平均粒径、R)の0.5倍以上2倍以下の粒径範囲(0.5R≦R≦2R)に調整したとき、種子単結晶は多結晶体中へと成長し続けた。本実施例では、過量PbOの量及び熱処理温度を調整したとき、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を異常粒子の生成が起こる臨界粒径の0.5倍以上2倍以下の粒径範囲に調整することができた。多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を0.5Rc≦R≦2Rcの範囲に調整したとき、熱処理中にBa(Ti0.7Zr0.3)O種子単結晶が多結晶体中へと成長し続けて、多結晶と同じ組成を有する単結晶を製造し、成長した単結晶の大きさは20×20mm以上であった。
前記単結晶製造工程[粉末仮焼工程、粉末成形体の焼結工程(1次熱処理)、単結晶成長工程(2次熱処理)]における雰囲気中の酸素分圧を調整して酸素空孔含有量[z]を調整し、成長した単結晶をさらに熱処理[3次熱処理]することにより、最終的に「0.0≦z≦0.03」の範囲で多様な[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02;0<z≦0.03)の圧電単結晶を製造した。
前記圧電単結晶において、組成(xの変化)と熱処理[粉末仮焼工程、粉末成形体の焼結工程(1次熱処理)、単結晶成長工程(2次熱処理)、及び単結晶成長工程後の追加熱処理(3次熱処理)]における雰囲気中の酸素分圧を調整して、表5及び表6に示す多様な「0<z≦0.03[酸素空孔含有量]」を有する圧電単結晶を製造した。
<実施例4>酸素空孔を含む圧電単結晶製造2
前記実施例3と同様にして行うが、[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.35(Mn1/3Nb2/30.05Zr0.25Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02[ドナーの含有量];0.0≦z≦0.0.03[酸素空孔の含有量])組成の圧電単結晶を製造した。
粉末合成工程で過量のMgOとPbOを添加して、製造された単結晶内部にMgO第二相と気孔強化相2vol%含ませた。そして、単結晶作製工程[粉末仮焼工程、粉末成形体の焼結工程(1次熱処理)、単結晶成長工程(2次熱処理)]における雰囲気中の酸素分圧を調整して酸素空孔含有量[z]を調整し、成長した単結晶をさらに熱処理(3次熱処理)することにより、最終的に「0.0≦z≦0.03」の範囲で多様な[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.35(Mn1/3Nb2/30.05Zr0.25Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02;0<z≦0.03)の圧電単結晶を製造した。
前記圧電単結晶において、組成(xの変化)と熱処理[粉末仮焼工程、粉末成形体の焼結工程(1次熱処理)、単結晶成長工程(2次熱処理)、及び単結晶成長工程後の追加熱処理(3次熱処理)]における雰囲気中の酸素分圧を調整して、表7及び表8に示す多様な「0<z≦0.03[酸素空孔含有量]」を有する圧電単結晶を製造した。
<実験例5>実施例3の圧電単結晶の誘電特性及び圧電特性の評価1
前記実施例3で製造された[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02;0.0≦z≦0.03)の圧電単結晶の誘電特性及び圧電特性を評価した。
具体的に、前記製造された[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O-z (0.0≦x≦0.02;0.0≦z≦0.03)の単結晶において、x[ドナー含有量]とz[酸素空孔含有量]の変化による誘電定数、相転移温度(T、TRT)、圧電定数、抗電界(E)及び内部電界(E)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して下記表5に示した。
Figure 2023553068000006
前記表5から確認できるように、(001)圧電単結晶(x=0.01、z=0.0)の場合(比較例5)、圧電定数(d33)は4,457[pC/N]であり、誘電定数は14,678であり、誘電損失(tanδ)は、1.0%であった。
一方、x[ドナーの含有量]と0<z[酸素空孔の含有量]の変化に応じて、圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。すなわち、x[ドナー含有量]の増加に伴って誘電定数と圧電定数が増加し、0<z[酸素空孔含有量]の増加に伴って、誘電定数と圧電定数は連続的に減少するが、抗電界(E)と内部電界(E)は増加した。
したがって、x[ドナー含有量]とz[酸素空孔含有量]の値が一定値以上である場合(x≠0.0及びz≠0.0)、誘電定数と圧電定数を一般的なPMN-PT単結晶と類似に維持するとともに、抗電界(E)と内部電界(E)を大幅に増加させることができた。特に、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない内部電界(E)を十分に大きく誘導でき、外部環境に抵抗性の強い新規な圧電単結晶を開発することができた。
<実験例6>実施例3の圧電単結晶の誘電特性及び圧電特性の評価2
前記実施例3の[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02;0<z≦0.03)の単結晶のうち、図7は(x=0.01;z=0.0、比較例5)の圧電単結晶を示し、図8は(x=0.01;z=0.005、実施例3-3)の圧電単結晶を示し、図9は(x=0.01;z=0.01、実施例3-4)の圧電単結晶を示すものである。
このとき、前記図8に示す「x=0.01;z=0.005(実施例3-3)」の単結晶および図9に示すx=0.01;z=0.01(実施例3-4)」の単結晶を用いて、単結晶成長工程終了後に3次熱処理をさらに行い、3次熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]を調整して「z[酸素空孔含有量]」を増加させた。
また、3次熱処理後に圧電単結晶の誘電定数、圧電定数、抗電界(E)及び内部電界(E)の特性の変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定し、下記表6に示した。
Figure 2023553068000007
前記表6に示すように、単結晶成長工程終了後に3次熱処理をさらに行い、熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]の変化によって酸素空孔含有量[z]と同時に圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。
熱処理雰囲気中の酸素分圧が減少するにつれて、誘電定数と圧電定数は連続的に減少するが、抗電界(E)と内部電界(E)は増加した。また、このような効果は、x[ドナー含有量]とz[酸素空孔含有量]の値が大きいほどさらに増加した。
したがって、x[ドナー含有量]とz[酸素空孔含有量]を含む圧電単結晶を酸素分圧が低い条件下で製造すると、誘電定数と圧電定数を一般的なPMN-PT単結晶と類似に維持するとともに、抗電界(E)と内部電界(E)を大幅に増加させることができた。
熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]を調整することにより、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない酸素空孔含有量(z)を十分に大きく誘導でき、外部環境に抵抗性の強い新規な圧電単結晶を開発することができた。
上記結果から、[Pb0.98-1.5xSr0.02Sm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02;0<z≦0.03)の単結晶において「x[ドナー含有量]、z[酸素空孔含有量]、x/z比率」を調整すると同時に熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]を調整した場合、製造された圧電単結晶の圧電定数、抗電界(E)及び内部電界(E)を最適化することができた。このように特定範囲(0<z≦0.03)の酸素空孔の含有量を含む圧電単結晶は、既存の一般的なPMN-PTまたはPIN-PMN-PTの単結晶とは異なり、外部環境の変化に対して高い圧電特性が安定的に維持される特徴を示した。
<実験例7>実施例4の圧電単結晶の誘電特性及び圧電特性の評価1
前記実施例4で製造された[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.35(Mn1/3Nb2/30.05Zr0.25Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02;0.0≦z≦0.03)の圧電単結晶の誘電特性及び圧電特性を評価した。
前記製造された[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.35(Mn1/3Nb2/30.05Zr0.25Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02;0.0≦z≦0.03)の単結晶において、x[ドナー含有量]とz[酸素空孔含有量]の変化による誘電定数、相転移温度(T、TRT)、圧電定数、抗電界(E)及び内部電界(E)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して下記表7に示した。
Figure 2023553068000008
前記表7に示すように、(001)圧電単結晶(x=0.01、z=0.0)の場合(比較例6)、圧電定数(d33)は1,760[pC/N]であり、誘電定数は6,920であり、誘電損失(tanδ)は、0.3%であった。
一方、前記x[ドナーの含有量]と0<z[酸素空孔の含有量]の変化に応じて、圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。すなわち、x[ドナー含有量]の増加に伴って誘電定数と圧電定数が増加し、0<z[酸素空孔含有量]の増加に伴って、誘電定数と圧電定数は連続的に減少するが、抗電界(E)と内部電界(E)は増加した結果が確認された。
したがって、x[ドナー含有量]とz[酸素空孔含有量]の値が一定値以上である場合(x≠0.0及びz≠0.0)、誘電定数と圧電定数を一般的なPMN-PT単結晶と類似に維持するとともに、抗電界(E)と内部電界(E)を大幅に増加させることができた。特に、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない内部電界(E)を十分に大きく誘導でき、外部環境に抵抗性の強い新規な圧電単結晶を開発することができた。
<実験例8>実施例4の圧電単結晶の誘電特性及び圧電特性の評価2
前記実施例4の[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.35(Mn1/3Nb2/30.05Zr0.25Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02;0.0≦z≦0.0.03)組成の単結晶のうち、「x=0.01;z=0.005」の単結晶および「x=0.01;z=0.01」の単結晶を用いて、単結晶成長工程終了後に3次熱処理をさらに行い、3次熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]を調整して「z[酸素空孔含有量]」を増加させた。3次熱処理後に圧電単結晶の誘電定数、圧電定数、抗電界(E)及び内部電界(EI)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定し、下記表8に示した。
Figure 2023553068000009
前記表8に示すように、単結晶成長工程終了後に3次熱処理をさらに行い、熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]の変化によって酸素空孔含有量[z]と同時に圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。熱処理雰囲気中の酸素分圧が減少するにつれて、誘電定数と圧電定数は連続的に減少するが、抗電界(E)と内部電界(E)は増加した。
このような効果は、x[ドナー含有量]とz[酸素空孔含有量]の値が大きいほどさらに高まった。したがって、x[ドナー含有量]とz[酸素空孔含有量]を含む圧電単結晶を酸素分圧が低い条件下で製造した場合、誘電定数と圧電定数を一般的なPMN-PT単結晶と類似に維持するとともに、抗電界(E)と内部電界(E)を大幅に増加させることができた。熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]を調整することにより、一般的なPMN-PT単結晶には存在しない酸素空孔含有量(z)を十分に大きく誘導でき、外部環境に抵抗性の強い新規な圧電単結晶を開発することができた。
上記結果から、[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.35(Mn1/3Nb2/30.05Zr0.25Ti0.35]O-z(0.0≦x≦0.02;0<z≦0.03)の単結晶において、「x[ドナー含有量]、z[酸素空孔含有量]、x/z比率」を調整すると同時に熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]を調整した場合、製造された圧電単結晶の圧電定数、抗電界(E)及び内部電界(E)を最適化することができた。このように特定範囲(0<z≦0.02)の酸素空孔の含有量を含む圧電単結晶は、既存の一般的なPMN-PTまたはPIN-PMN-PTの単結晶とは異なり、外部環境の変化に対して高い圧電特性が安定的に維持される特徴を示した。
<実験例9>温度変化による内部電界の変化観察
一般的なPMN-30PT圧電単結晶と前記実施例2の[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.35(Mn1/3Nb2/30.05Zr0.25Ti0.35]O-zの圧電単結晶のうち、「x=0.01;z=0.0」(比較例6)の圧電単結晶および「x=0.01;z=0.02」(実施例4-5)の圧電単結晶を用いて、「(001)4×4×0.5(T)mm」の大きさの測定サンプルを作製し、電気分極-電界グラフにおいて抗電界(E)と内部電界(E)の大きさを比較した。
図10は、本発明の[Pb0.98-1.5xSr0.02La][(Mg1/3Nb2/30.35(Mn1/3Nb2/30.05Zr0.25Ti0.35]O-zのうち、x=0.01;z=0.0(比較例6)圧電単結晶、x=0.01;z=0.02(実施例4-5)圧電単結晶、及び一般的なPMN-30PT圧電単結晶に対する分極(Polarization)-電界(Electric Field)変化グラフである。
その結果、25℃で一般的なPMN-30PT圧電単結晶の抗電界と内部電界は、それぞれ2.5と0.0kV/cmであり[内部電界なし]、「x=0.01;z=0.0」(比較例6)圧電単結晶の抗電界と内部電界は、それぞれ4.4と1.0kV/cmで相対的に高かった。また、z値がさらに増加した「x=0.01;z=0.02」(実施例4-5)の圧電単結晶の抗電界と内部電界は、それぞれ5.6と3.4kV/cmに大きく増加した。このような結果から、圧電単結晶内の酸素空孔の含有量に比例して抗電界と内部電界が増加することが分かった。
以上のことから、圧電単結晶の組成においてx[ドナー含有量]とz[酸素空孔含有量]を調整すると同時に熱処理工程中の雰囲気[酸素分圧の大きさ]調整した場合、一般的なPMN-PT単結晶には存在しないz[酸素空孔含有量]を十分に大きく誘導することができた。
以上、本発明は、記載された具体例について詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲内で様々な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって明らかなものであり、このような変形および修正が、添付の特許請求の範囲に属するものである。

Claims (25)

  1. 下記(1)~(4)の物性:
    (1)誘電定数(Dielectric Constant、K )が4,000~15,000、
    (2)圧電定数(Piezoelectric Charge Constant、d33)が1,400~6,000pC/N、
    (3)抗電界(Coercive Electric Field、E)が3.5~12kV/cm、
    (4)内部電界(Internal Bias Electric Field、E)が0.5~3.0kV/cm
    を満たす内部電界を有しペロブスカイト型構造([A][B]O)である
    ことを特徴とする圧電単結晶。
  2. 前記物性が20~80℃の温度で維持される
    請求項1に記載の圧電単結晶。
  3. 前記ペロブスカイト型構造の圧電単結晶が、下記化学式1:
    化学式1
    [A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O
    (前記式中、
    Aは、PbまたはBaであり、
    Bは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn及びSrからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    Lは、ZrまたはHfから選択される単独または混合形態であり、
    Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb及びZnからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    Nは、Nb、Sb、Ta及びWからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    0<a≦0.10、0<b≦0.05、0.05≦x≦0.58、及び0.05≦y≦0.62である)
    の組成式を有する
    請求項1に記載の圧電単結晶。
  4. 前記ペロブスカイト型構造の圧電単結晶が、下記化学式2:
    化学式2
    [A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O3-z
    (前記式中、
    Aは、PbまたはBaであり、
    BはBa、Ca、Co、Fe、Ni、Sn及びSrからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    Lは、ZrまたはHfから選択される単独または混合形態であり、
    Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb及びZnからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    Nは、Nb、Sb、Ta及びWからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    0<a≦0.10、0<b≦0.05、0.05≦x≦0.58、0.05≦y≦0.62、及び0<z≦0.02である)
    の組成式を有する
    請求項1に記載の圧電単結晶。
  5. 前記圧電単結晶においてLが混合形態であるとき、下記の化学式3または化学式4:
    化学式3
    [A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w、HfTi]O
    化学式4
    [A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w,HfTi]O3-z
    (前記式中、A、B、C、M及びN、並びに、a、b、x、y及びzは、化学式1または化学式2と同一であり、但し、0.01≦w≦0.20である)
    の組成式を有する
    請求項3または4に記載の圧電単結晶:
  6. 前記式中、0.01≦a≦0.10及び0.01≦b≦0.05である
    請求項3または4に記載の圧電単結晶。
  7. 前記式中、a/b≧2である
    請求項3または4に記載の圧電単結晶。
  8. 前記式中、0.10≦x≦0.58及び0.10≦y≦0.62である
    請求項3または4に記載の圧電単結晶。
  9. 前記単結晶内の気孔率(Porosity)が0.5vol%以上である
    請求項3または4に記載の圧電単結晶。
  10. 前記単結晶内の組成勾配が0.2~0.5モル%である
    請求項3または4に記載の圧電単結晶。
  11. 前記x及びyは、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)組成から10モル%の範囲にある
    請求項3または4に記載の圧電単結晶。
  12. 前記x及びyは、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)組成から5モル%の範囲にある
    請求項3または4に記載の圧電単結晶。
  13. キュリー温度(Curie temperature、Tc)が180℃以上であり、同時に菱面体晶相と正方晶相との間の相転移温度(phase transition temperature between rhombohedral phase and tetragonal phase、TRT)が100℃以上である
    請求項3または4に記載の圧電単結晶。
  14. 電気機械結合係数(longitudinal electromechanical coupling coefficient、k33)が0.85以上である
    請求項3または4に記載の圧電単結晶。
  15. (a)請求項3または4に記載の圧電単結晶を構成する組成を有する多結晶体のマトリックス粒子(matrix grains)の平均粒径を調整することにより、異常粒子の数密度(number density:number of abnormal grains/unit area)を減少させる段階と、
    (b)前記段階(a)により得られた異常粒子の数密度が減少した多結晶体を熱処理して異常粒子を成長させる段階と、
    を含み、
    前記圧電単結晶を構成する組成の粉末を800~900℃未満の温度で仮焼して粉末成形体を得て、前記粉末成形体を焼結する1次熱処理工程及び前記単結晶成長時の2次熱処理工程を行う
    ことを特徴とする圧電単結晶の製造方法。
  16. 前記1次及び2次熱処理工程が900~1,300℃で1~100時間行われる
    請求項15に記載の圧電単結晶の製造方法。
  17. 前記熱処理が1~20℃/分の昇温速度で行われる
    請求項16に記載の圧電単結晶の製造方法。
  18. 前記熱処理中の酸素分圧条件に応じて抗電界(E)及び内部電界(E)の物性を制御する
    請求項17に記載の圧電単結晶の製造方法。
  19. 前記酸素分圧の減少条件に応じて抗電界(E)及び内部電界(E)の物性が増加する
    請求項18に記載の圧電単結晶の製造方法。
  20. 前記単結晶の成長完了後、3次熱処理工程をさらに行う
    請求項15に記載の圧電単結晶の製造方法。
  21. 前記3次熱処理工程が600~1,300℃で0.1~100時間行われる
    請求項20に記載の圧電単結晶の製造方法。
  22. 前記3次熱処理工程中の酸素分圧条件に応じて酸素空孔含有量(0<z≦0.02)が調整される
    請求項20に記載の圧電単結晶の製造方法。
  23. 請求項1ないし14のいずれかに記載の圧電単結晶の単独からなる、または、前記圧電単結晶とポリマーとが複合化される
    ことを特徴とする圧電体。
  24. 請求項23に記載の圧電体が用いられた
    ことを特徴とする圧電応用部品及び誘電応用部品。
  25. 前記圧電応用部品及び誘電応用部品が、超音波トランスデューサ(ultrasonic transducers)、圧電アクチュエータ(piezoelectric actuators)、圧電センサー(piezoelectric sensors)、誘電キャパシタ(dielectric capacitors)、電界放射トランスデューサ(Electric Field Generating Transducers)及び電界-振動放射トランスデューサ(Electric Field and Vibration Generating Transducers)からなる群より選択されるいずれか一つである
    請求項24に記載の圧電応用部品及び誘電応用部品。
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