明 細 書
磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスク
技術分野
[0001] 本発明は、磁気ディスク装置であるハードディスクドライブ (HDD)に用いられる磁 気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクに関する。
背景技術
[0002] 今日、情報記録技術、特に、磁気記録技術は、 V、わゆる IT産業の発達に伴って飛 躍的な技術革新が要請されている。そして、コンピュータ用ストレージとして用いられ る磁気ディスク装置であるハードディスクドライブ (HDD)に搭載される磁気ディスクに おいては、磁気テープやフレキシブルディスクなどの他の磁気記録媒体と異なり、急 速な情報記録密度の増大化が続けられて 、る。パーソナルコンピュータ装置に収納 することができる情報容量は、上述の情報記録密度の増大化に支えられて、飛躍的 に増加している。
[0003] このような磁気ディスクは、アルミニウム系合金基板などの基板上に、磁性層等が成 膜されて構成されている。ハードディスクドライブにおいては、磁気ヘッドが高速回転 される磁気ディスク上を浮上飛行する。この磁気ヘッドが、情報信号を磁化パターン として磁性層に記録し、また、再生を行なう。
[0004] したがって、このようなハードディスクドライブに用いる磁気ディスクにおいては、磁 気ヘッドの浮上飛行方向の磁気特性が優れていることが求められる。そこで、例えば 、特開 2002— 30275号公報に記載されているように、磁気ディスク用基板の主表面 に同心円状のテクスチャ加工を行うことにより、磁気ディスクの磁気特性に円周方向 の磁気異方性を与え、磁気記録媒体としての磁気特性を向上させ、高記録密度化を 図る技術が提案されている。
[0005] また、近年、ハードディスクドライブを携帯用機器 ( 、わゆる「ノート型パーソナルコン ピュータ装置」など)に搭載すること (いわゆる「モノくィル用途」)に対する要求が高ま つている。これに伴い、磁気ディスク用の基板として、高強度、かつ、高剛性材料であ り耐衝撃性の高いガラス基板が採用されている。また、ガラス基板は、平滑な表面を
容易に得ることが可能なので、磁気ディスク上を浮上飛行しながら記録再生を行う磁 気ヘッドの浮上量を狭隘ィ匕することが可能である。このため、ガラス基板を時期ディス ク用基板として用いれば、高い情報記録密度の磁気ディスクを得ることができる。つま り、ガラス基板は、磁気ヘッドの低浮上量対応性に優れた基板であるといえる。
[0006] このような磁気ディスク用ガラス基板としては、例えば、特開 2002— 32909号公報 に記載されているように、基板の主表面上に同心円状のテクスチャ加工をすることに より、磁気ディスクの磁気特性、記録再生特性を向上させ、情報記録密度の増大化 に貢献しょうとするものが提案されている。
[0007] 一方、磁気ディスクにおける情報記録容量を増大させるためには、磁気ディスクに ぉ 、て情報信号の記録がなされな 、無駄な領域の面積を小さくすることが必要であ る。そこで、ハードディスクドライブの起動停止方式として、従来より用いられている C SS方式(「コンタクトスタートストップ(Contact Start Stop)方式」)に代えて、情報記録 容量の増大が可能な LUL方式(「ロードアンロード(Load Unload)方式」、別名「ラン プロード方式」ともいう。)の導入が進められている。
[0008] CSS方式にぉ ヽては、磁気ディスクの非使用状態 (停止状態)にお!ヽて磁気ヘッド が載置される CSSゾーンを磁気ディスク上に設ける必要がある。
[0009] これに対し、 LUL方式にぉ 、ては、磁気ディスクの非使用状態 (停止状態)にお ヽ ては、磁気ヘッドが磁気ディスクの外周側に移動し、磁気ディスク上より退避されて支 持される。したがって、 CSS方式とは異なり、磁気ヘッドと磁気ディスクとが接触するこ とがなぐまた磁気ディスク上に CSSゾーンにおけるような吸着防止用の凸凹形状を 設ける必要がない。このため、 LUL方式では、磁気ディスクの主表面を極めて平滑 化することが可能となる。
[0010] CSS方式用の磁気ディスクと比較して、 LUL方式用の磁気ディスクにおいては、磁 気ヘッドの浮上量を一段と低下させることができ、記録信号の SZN比(Signal Noise Ratio)の向上を図ることができ、高記録密度化が図られるという利点がある。
[0011] このような、 LUL方式の導入に伴う磁気ヘッド浮上量の低下により、 10nm以下の 極狭な浮上量においても、磁気ヘッドが安定して動作することが求められるようにな つてきた。しかし、極狭な浮上量で磁気ディスク上に磁気ヘッドを浮上飛行させる場
合には、フライスティクシヨン障害が頻発するという問題が生じた。
[0012] フライスティクシヨン障害とは、磁気ディスク上を浮上飛行して!/ヽる磁気ヘッドが、浮 上姿勢や浮上量に変調をきたす障害であり、これにより不規則な再生出力変動の発 生を伴うことである。また、このフライスティクシヨン障害が生ずると、浮上飛行中の磁 気ヘッドが磁気ディスクに接触してしまうヘッドクラッシュ障害を生じてしまうことがある
[0013] 従来のハードディスクドライブにおいては、このようなフライスティクシヨン障害の発 生を防止するため、磁気ディスクの回転速度の高速ィ匕による磁気ディスクと磁気へッ ドとの間の相対的な線速度の高速ィ匕や、磁気ヘッドの構造による浮上性の安定ィ匕を 図ってきた。
[0014] 特許文献 1 :特開 2002— 30275号公報
特許文献 2:特開 2002— 32909号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0015] 前述したように、近年の磁気ディスクにお ヽては、磁気ディスクと磁気ヘッドとの間の スペーシングロスを改善し、記録信号の SZN比を向上させた結果、情報記録密度 力 平方インチ当り 40ギガビットを超えるまでに到っており、さらに、 1平方インチ当り 100ギガビットを超えるような超高記録密度をも実現されようとしている。
[0016] このように高 ヽ情報記録密度が実現できるようになった近年の磁気ディスクは、従 来の磁気ディスクに比較してずつと小さなディスク面積であっても、実用上十分な情 報量を収納できるという特徴を有している。また、磁気ディスクは、他の情報記録媒体 に比較して、情報の記録速度や再生速度 (応答速度)が極めて敏速であり、情報の 随時書き込み及び読み出しが可能であると 、う特徴も有して 、る。
[0017] このような磁気ディスクの種々の特徴が注目された結果、近年においては、いわゆ る携帯電話、デジタルカメラ、携帯情報機器 (例えば、 PDA (personal digital assistant):パーソナルデジタルアシスタント)、あるいは、カーナビゲーシヨンシステム などのように、パーソナルコンピュータ装置よりも筐体がずつと小さぐかつ、高い応答 速度が求められる機器に搭載できる小型のハードディスクドライブが求められるように
なってきている。具体的には、例えば、外径が 50mm以下、板厚が 0. 5mm以下の 基板を用いて製造した磁気ディスクを搭載した小型のハードディスクドライブが求めら れている。
[0018] このような小型のハードディスクドライブにおいて使用される外径が 50mm以下とい うような磁気ディスクにおいては、外周径及び内周径ともに小径ィ匕するため、磁気デ イスクと磁気ヘッドとの間の相対的な線速度が低下する。また、磁気ディスクの小径ィ匕 に伴ってこの磁気ディスクを回転させるスピンドルモータも小型化され、磁気ディスク の回転速度をさらに高速ィ匕することも容易ではない。このため、浮上姿勢や浮上量に 対する影響や、前述したようなフライスティクシヨン障害の発生を充分に防止できな ヽ おそれがある。
[0019] さらに、磁気ディスクの小径ィ匕に伴って磁気ヘッドも小型化されるため、この磁気へ ッドの浮上安定性が低下するおそれもある。
[0020] そこで、本発明は、前述のような実情に鑑みてなされたものであり、その第 1の目的 は、例えば、いわゆる携帯電話、デジタルカメラ、携帯型の「MP3プレイヤー」、 PDA などの携帯情報機器、あるいは、「カーナビゲーシヨンシステム」などの車載用機器な ど、非常に可搬性の高い機器に搭載できる小型のハードディスクドライブにも用いる ことができるように小径ィ匕した場合においても、フライスティクシヨン障害の発生を充分 に防止できるようになされた磁気ディスクを提供することにあり、また、このような磁気 ディスクの製造を可能とする磁気ディスク用ガラス基板を提供することにある。
[0021] さらに、上述したように、磁気ディスクの小径ィ匕によって径の小さいディスク(1インチ や 0. 85インチ等)では、特に ID側での磁気ディスクと磁気ヘッドとの間の相対的な 線速度が遅くなるため、磁気ヘッドが磁気ディスク上に落ちやすくなる。特に、減圧時 には上記現象が生じやすい。そこで、このような浮上性改善の評価として TDP ( Touch Down Pressure)測定および TOP (Take Off Pressure)測定が行われている。
[0022] カロえて、上述したような磁気ディスク装置を内蔵する携帯用機器 (携帯電話、デジタ ルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯型音楽プレイヤー、 PDA等)は、その携帯性か ら登山や飛行機内など気圧が変わる環境にぉ 、ても使用した 、と 、う要求がある。し 力しながら、このような気圧の変化が大きい環境では、使用環境における気圧変化か
ら磁気ディスク装置内部の気圧も影響を受け、磁気ヘッドが磁気ディスク上に落ちや すくなる。このため、 TDP (Touch Down Pressure)および TOP (Take Off Pressure)の 値と、その差 Δ Ρを改善することが望まれている。
[0023] そこで、本発明の第 2の目的は、上記問題に鑑み、 TOPを改善することで、浮上特 性を向上させることが可能な磁気ディスクおよび磁気ディスク用ガラス基板を提供す るものである。
課題を解決するための手段
[0024] 本発明者は、前記第 1の目的を達成すべく研究を進めた結果、以下の手段によつ て前記課題が解決できることを見出した。磁気ディスク用ガラス基板の主表面に対し て、異方的に凹凸形状が分布するテクスチャ (例えば、筋状のテクスチャ。以下、「異 方性テクスチャ」という。 )を磁気ディスク用ガラス基板の円周方向成分をもって互い に交差する状態に形成する際に、主表面において磁気ディスク用ガラス基板の円周 方向についての表面粗さを磁気ディスク用ガラス基板の外周側から内周側に向けて 増大するようにした。この異方性テクスチャ力 主表面上に形成される磁性層に磁気 異方性を付与する作用を発揮し、併せて、特に内周側において、磁気ヘッドの浮上 性を安定化させた。
[0025] また、この磁気ディスク用ガラス基板の主表面に対して、異方性テクスチャ同士の交 差する角度 (クロス角)を全主表面の外周側から内周側に向けて増大させると、この 異方性テクスチャが、主表面上に形成される磁性層に磁気異方性を付与する作用を 発揮し、併せて、特に内周側において、磁気ヘッドの浮上性を安定化させ、前記課 題が解決できることも見出した。
[0026] さらに、本発明者は、前記第 2の目的を達成すべく研究した結果、第 1の目的を達 成する手段と同様に磁気ディスク用基板の表面粗さに解決手段を見出した。すなわ ち、磁気ディスクの表面粗さが、磁気記録層などを形成する前の磁気ディスク用基板 における表面粗さに影響されることから、基板の表面粗さを制御することで、磁気ディ スクの表面粗さを制御した。磁気ディスク表面の表面粗さを内周側と外周側で異なら しめることで、 TOPに影響を与えることができることを見出した。
[0027] 具体的には、磁気ディスクの ID側の表面粗さを粗くすべぐ磁気ディスク用基板の I
D側の表面粗さを粗くすることで磁気ディスクの ID側の表面粗さを粗くした。磁気ディ スク用基板の表面粗さは、連続的または段階的に OD側から ID側に向力つて増大さ せるように付ける。これにより、基板上に磁性膜を形成した磁気ディスクにおいても、 OD側力 ID側に向かって表面粗さが連続的または段階的に増大して付く。
[0028] なお、異方性テクスチャは、磁気ディスク用ガラス基板の主表面において円周方向 に形成されることにより、この磁気ディスク用ガラス基板上に磁性層を形成したときに 、磁性層の磁気異方性 (磁ィ匕容易軸)を円周方向に誘導するように作用する。このよ うな異方性テクスチャは、例えば、機械研磨カ卩ェ (メカ-カルテクスチャ加工とも呼ば れている)により形成することができる。
[0029] 本発明は以下の構成を有するものである。
[0030] 〔構成 1〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、ハードディスクドライブに搭載される磁 気ディスク用のガラス基板であって、主表面における磁気ディスク用ガラス基板の円 周方向につ 、ての表面粗さは、全主表面の外周側より内周側に向力つて増大して 、 る。
[0031] 〔構成 2〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、構成 1の磁気ディスク用ガラス基板であ つて、主表面における磁気ディスク用ガラス基板の円周方向についての表面粗さは、 全主表面の外周側より内周側に向力つて連続的または段階的に増大している。
[0032] 〔構成 3〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、構成 1の磁気ディスク用ガラス基板であ つて、主表面にぉ 、て磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 6mmの箇所にお!ヽ ては、磁気ディスク用ガラス基板の円周方向についての表面の算術平均粗さ (Ra-c) が 0. 25nm以上であって、主表面において磁気ディスク用ガラス基板の中心から半 径 11mmの箇所にぉ 、ては、磁気ディスク用ガラス基板の円周方向にっ 、ての表面 の算術平均粗さ(Ra-c)が 0. 24nm以下である。
[0033] 〔構成 4〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、構成 1に記載の磁気ディスク用ガラス
基板であって、主表面における磁気ディスク用ガラス基板の円周方向についての表 面の算術平均粗さ (Ra-c)の主表面における磁気ディスク用ガラス基板の径方向に ついての表面の算術平均粗さ (Ra-r)に対する比〔Ra-cZRa-r〕は、全主表面の外 周側より内周側に向力つて増大している。
[0034] 〔構成 5〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、構成 1の磁気ディスク用ガラス基板であ つて、主表面にぉ 、て磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 6mmの箇所にお!ヽ ては、主表面における磁気ディスク用ガラス基板の円周方向についての表面の算術 平均粗さ(Ra-c)の主表面における磁気ディスク用ガラス基板の径方向についての表 面の算術平均粗さ(Ra-r)に対する比〔Ra-cZRa-r〕が 0. 61以上であって、主表面 にお 、て磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 11mmの箇所にお!、ては、主表 面における磁気ディスク用ガラス基板の円周方向についての表面の算術平均粗さ( Ra-c)の主表面における磁気ディスク用ガラス基板の径方向についての表面の算術 平均粗さ(Ra-r)に対する比〔Ra-cZRa-r〕が 0. 60以下である。
[0035] 〔構成 6〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、ハードディスクドライブに搭載される磁 気ディスク用のガラス基板であって、主表面上には、テクスチャ力 磁気ディスク用ガ ラス基板の円周方向成分をもって互いに交差する状態に形成されており、テクスチャ 同士が交差する角度は、磁気ディスク用ガラス基板の全主表面の外周側から内周側 に向力つて増大していることを特徴とする。
[0036] 〔構成 7〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、構成 6の磁気ディスク用ガラス基板であ つて、テクスチャ同士が交差する角度は、磁気ディスク用ガラス基板の全主表面の外 周側から内周側に向かって連続的に増大している。
[0037] 〔構成 8〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、構成 6の磁気ディスク用ガラス基板であ つて、主表面にぉ 、て磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 6mmの箇所にお!ヽ ては、テクスチャ同士が交差する角度が 5. 0° 以上であって、主表面において磁気
ディスク用ガラス基板の中心から半径 11mmの箇所においては、テクスチャ同士が交 差する角度が 4. 5° 以下である。
[0038] 〔構成 9〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、構成 1又は構成 6の磁気ディスク用ガラ ス基板であって、主表面上に磁性層が成膜されることにより磁気ディスクとされる磁気 ディスク用ガラス基板であり、主表面には、磁性層に磁気異方性を付与するテクスチ ャが形成されている。
[0039] 〔構成 10〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、構成 1又は構成 6の磁気ディスク用ガラ ス基板であって、 1インチ型ハードディスクドライブ、または、 1インチ型ハードディスク ドライブよりも小径の磁気ディスクを用いるハードディスクドライブに搭載される磁気デ イスク用のガラス基板である。
[0040] 〔構成 11〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、構成 1又は構成 6の磁気ディスク用ガラ ス基板であって、ロードアンロード方式で起動停止動作を行うハードディスクドライブ に搭載するための磁気ディスク用ガラス基板である。
[0041] 〔構成 12〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、主表面に第 1領域と、この第 1領域の 表面粗さよりも粗い第 2領域を有し、第 1領域が、円形の板状ガラス基板上において 第 2領域よりも外周側にある。
[0042] 〔構成 13〕
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、構成 12の磁気ディスク用ガラス基板で あって、第 1領域が、磁気ヘッドが磁気ディスクに導入する領域である。
[0043] 〔構成 14〕
本発明に係る磁気ディスクは、構成 構成 6又は構成 12の磁気ディスク用ガラス 基板を備え、この磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層が成膜されている
[0044] 〔構成 15〕
本発明に係る磁気ディスクは、構成 14の磁気ディスクであって、この磁気ディスクの 主表面上のいずれの領域の粗さ力 使用される磁気ヘッドの表面粗さよりも小さいこ とを特徴とするものである。
[0045] なお、磁気ディスク用ガラス基板の主表面の円周方向についての表面の算術平均 粗さ (Ra-c)とは、主表面における 5 μ m四方の領域を原子間力顕微鏡で測定したと き、測定用プローブを前記磁気ディスク用ガラス基板の円周方向に走査したときに測 定される表面の算術平均粗さを示して!/ヽる。
[0046] また、磁気ディスク用ガラス基板の主表面の径方向にっ 、ての表面の算術平均粗 さ (Ra-r)とは、主表面における 5 μ m四方の領城を原子間力顕微鏡で測定したとき、 測定用プローブを前記磁気ディスク用ガラス基板の径方向に走査したときに測定さ れる表面の算術平均粗さを示して!/、る。
[0047] 磁気ディスク用ガラス基板の主表面の表面の算術平均粗さ (Ra)とは、主表面にお ける 5 μ m四方の領城を原子間力顕微鏡で測定したとき、測定用プローブを前記磁 気ディスク用ガラス基板の径方向に走査したときに測定される表面の算術平均粗さを 示している。なお、上記の算術平均粗さとは、 日本工業規格 (JIS) B0601に準拠して 算出する値である。
発明の効果
[0048] 本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板においては、主表面における磁気ディスク 用ガラス基板の円周方向にっ 、ての表面粗さが、全主表面の外周側より内周側に向 カゝつて増大している。この結果、主表面上に形成される磁性層に磁気異方性を付与 する作用が得られ、併せて、特に内周側において、磁気ヘッドの浮上性が安定化さ れる。
[0049] また、主表面において磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 6mmの箇所にお いて、磁気ディスク用ガラス基板の円周方向についての表面の算術平均粗さ (Ra-c) を 0. 25nm以上とし、主表面において磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 11 mmの箇所にお 、て、磁気ディスク用ガラス基板の円周方向につ!、ての表面の算術 平均粗さ(Ra-c)を 0. 24nm以下とする。この結果、主表面の特に内周側において、 磁気ヘッドの浮上性を充分に安定化させることができる。
[0050] さらに、この磁気ディスク用ガラス基板において、主表面における磁気ディスク用ガ ラス基板の円周方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ(Ra-c)の径方向にっ 、ての表 面の算術平均粗さ (Ra-r)に対する比、すなわち、〔Ra-cZRa-r〕は、主表面の外周 側から内周側に向かって増大している。この結果、主表面上に形成される磁性層に 磁気異方性を付与する作用が得られ、併せて、特に内周側において、磁気ヘッドの 浮上性が安定化される。
[0051] また、主表面において磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 6mmの箇所にお V、て、主表面における磁気ディスク用ガラス基板の円周方向にっ 、ての表面の算術 平均粗さ(Ra-c)の主表面における磁気ディスク用ガラス基板の径方向についての表 面の算術平均粗さ (Ra-r)に対する比〔Ra-cZRa-r〕を 0. 61以上とし、主表面にお V、て磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 11mmの箇所にぉ 、て、主表面にお ける磁気ディスク用ガラス基板の円周方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ (Ra-c)の 主表面における磁気ディスク用ガラス基板の径方向についての表面の算術平均粗さ (Ra-r)に対する比〔Ra-cZRa_r〕を 0. 60以下とする。この結果、主表面の特に内周 側において、磁気ヘッドの浮上性を充分に安定ィ匕させることができる。
[0052] また、主表面上において磁気ディスク用ガラス基板の円周方向成分をもって互いに 交差する状態に形成されたテクスチャは、テクスチャ同士が交差する角度 (クロス角) が磁気ディスク用ガラス基板の全主表面の外周側から内周側に向力つて増大するよ うに形成されている。この結果、主表面上に形成される磁性層に磁気異方性を付与 する作用が得られ、併せて、特に内周側において、磁気ヘッドの浮上性が安定化さ れる。
[0053] なお、磁気ディスク用ガラス基板におけるテクスチャ同士が交差する角度は、主表 面上の 5 μ m四方の領域を原子間力顕微鏡で測定した測定結果をフーリエ変換して 特定されるものであるので、容易かつ正確に特定することができる。
[0054] さら〖こ、主表面において磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 6mmの箇所に おいて、テクスチャ同士が交差する角度を 5. 0° 以上とし、主表面において磁気ディ スク用ガラス基板の中心から半径 11mmの箇所にぉ 、て、テクスチャ同士が交差す る角度を 4. 5° 以下とする。この結果、主表面の特に内周側において、磁気ヘッドの
浮上性を充分に安定化させることができる。
[0055] 本発明に係る磁気ディスクは、前述の磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁 性層が成膜されているものである。この結果、例えば、外径が 50mm以下というような 小径ィ匕を図った場合においても、主表面上に形成された磁性層が磁気異方性を有 するとともに、内周側においても磁気ヘッドの浮上性を安定ィ匕させ、かつ、ロードアン ロード耐久性に優れた磁気ディスクを提供することができる。すなわち、この磁気ディ スクは、 LUL (ロードアンロード)方式により起動停止動作を行うハードディスクドライ ブに搭載する磁気ディスクとしても、良好に用いることができる。
[0056] さらに、磁気ディスク用ガラス基板にぉ ヽて ID側 (内周側)と OD側(外周側)で表面 粗さを異ならしめたことによって、 ID側から OD側まで一定の表面粗さを有する磁気 ディスクに比べて、 ID側の TOPを良好にさせることができる。従って、ハードディスク ドライブ内の気圧が TDPまで下がり、磁気ヘッドが磁気ディスク上へ接触したとしても 、 TOPが低いためすぐに上昇し、磁気ヘッドが磁気ディスクから離れる。
[0057] また、登山や飛行機内などのような気圧変化が大きな状況であっても、磁気ヘッド が磁気ディスク上に落ちにくぐかつ、落ちても上昇しやすい浮上特性の良いハード ディスクドライブに好適な磁気ディスク用基板および磁気ディスクを提供することがで きる。
[0058] したがって、本発明によれば、例えば、 V、わゆる携帯電話、デジタルカメラ、携帯型 の「MP3プレイヤー」、 PDAなどの携帯情報機器、あるいは、「カーナビゲーシヨンシ ステム」などの車載用機器など、非常に可搬性の高い機器に搭載できる小型のハー ドディスクドライブにも用いることができるように小径ィ匕した場合にぉ ヽても、フライステ ィクシヨン障害の発生を充分に防止できるようになされた磁気ディスクを提供すること ができ、また、このような磁気ディスクの製造を可能とする磁気ディスク用ガラス基板を 提供することができる。
図面の簡単な説明
[0059] [図 1]図 1は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造工程において、テクスチ ャ加工を行うテクスチャ加工装置の構成を示す斜視図である。
[図 2]図 2は、本発明におけるテクスチャカ卩ェにおいて、ガラスディスクと研磨テープと
の相対的な摺接移動方向を示す模式図である。
[図 3]図 3は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板及び比較例の主表面の各個所 における円周方向についての表面の算術平均粗さ (Ra-c)を示すグラフである。
[図 4]図 4は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板及び比較例の主表面の各個所 における円周方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ(Ra-c)の径方向につ!、ての表面 の算術平均粗さ (Ra-r)に対する比〔Ra-cZRa-r〕を示すグラフである。
[図 5]図 5は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の主表面の各個所について測 定された原子間力顕微鏡像をフーリエ変換した結果を示す画像である。
[図 6]図 6は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板及び比較例の主表面の各個所 におけるテクスチャのクロス角を示すグラフである。
[図 7]図 7は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクの実施例と、 比較例における主表面の各個所での表面の算術平均粗さ (Ra)を示すグラフである
[図 8]図 8は、 TDPZTOP試験の概念図である。
[図 9]図 9は、本発明に係る磁気ディスクの実施例と、比較例における主表面の各個 所での TOPを示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態
[0060] 以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明 する。
[0061] 本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、板状ガラスの主表面を研削処理してガ ラス母材とし、このガラス母材を切断してガラスディスクを切り出し、このガラスディスク の主表面に対して研磨処理を行い、さらに、化学強化処理及びテクスチャ加工を経 て製造される。
[0062] 研削処理に供する板状ガラスとしては、様々な形状の板状ガラスを用いることがで きる。この板状ガラスの形状は、矩形状であっても、ディスク状(円盤状)であってもよ い。ディスク状の板状ガラスは、従来の磁気ディスク用ガラス基板の製造において用 V、られて 、る研削装置を用いて研削処理を行うことができ、信頼性の高!、加工を安 価にて行うことができる。
[0063] この板状ガラスのサイズは、製造しょうとする磁気ディスク用ガラス基板より大きいサ ィズである必要がある。例えば、「1インチ型ハードディスクドライブ」、あるいは、それ 以下のサイズの小型ハードディスクドライブに搭載する磁気ディスクに用いる磁気デ イスク用ガラス基板を製造する場合にあっては、この磁気ディスク用ガラス基板の直 径は略々 20mm乃至 30mm程度である。よって、ディスク状の板状ガラスの直径とし ては、 30mm以上、好ましくは、 48mm以上であることが好ましい。特に、直径が 65 mm以上のディスク状の板状ガラスを用いれば、 1枚の板状ガラスから、複数の「1ィ ンチ型ハードディスクドライブ」に搭載する磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラス 基板を採取することができ、大量生産に好適である。板状ガラスのサイズの上限につ いては、特に限定する必要はないが、ディスク状の板状ガラスの場合には、直径が 1 OOmm以下のものを用いることが好まし!/、。
[0064] この板状ガラスは、例えば、溶融ガラスを材料として、プレス法やフロート法、または 、フュージョン法など、公知の製造方法を用いて製造することができる。これらのうち、 プレス法を用いれば、板状ガラスを廉価に製造することができる。
[0065] また、板状ガラスの材料としては、化学強化されるガラスであれば、特に制限は設け ないが、アルミノシリケートガラスを好ましく挙げることができる。特に、リチウムを含有 するアルミノシリケートガラスが好ましい。このようなアルミノシリケートガラスは、イオン 交換型化学強化処理、特に、低温イオン交換型化学強化処理により、好ましい圧縮 応力を有する圧縮応力層及び引張応力を有する引張応力層を精密に得ることがで きるので、磁気ディスク用化学強化ガラス基板の材料として特に好まし 、。
[0066] このようなアルミノシリケートガラスの組成比としては、 SiOを、 58乃至 75重量%、 A
2
1 Oを、 5乃至 23重量%、 Li Oを、 3乃至 10重量%、 Na Oを、 4乃至 13重量%、主
2 3 2 2
成分として含有することが好ま 、。
[0067] さらに、アルミノシリケートガラスの組成比としては、 SiOを、 62乃至 75重量0 /0、 A1
2 2
Oを、 5乃至 15重量%、 Li Oを、 4乃至 10重量%、 Na Oを、 4乃至 12重量%、 ZrO
3 2 2
を、 5. 5乃至 15重量%、主成分として含有するとともに、 Na Oと ZrOとの重量比(
2 2 2
Na O/ZrO )が 0. 5乃至 2. 0、 Al Oと ZrOとの重量比(Al O /ZrO )が 0. 4乃
2 2 2 3 2 2 3 2 至 2. 5であることが好ましい。
[0068] また、 ZrOの未溶解物が原因で生じるガラスディスクの表面の突起を無くすために
2
は、モル%表示で、 SiOを、 57乃至 74%、 ZrOを、 0乃至 2. 8%、 Al Oを、 3乃至
2 2 2 3
15%、 Li Oを、 7乃至 16%、 Na Oを、 4乃至 14%含有する化学強化用ガラスを使
2 2
用することが好ましい。
[0069] このようなアルミノシリケートガラスは、化学強化処理を施すことによって、抗折強度 が増加し、ヌープ硬度にも優れたものとなる。
[0070] 研削処理は、ワーク、すなわち、板状ガラスの主表面の形状精度 (例えば、平坦度) や寸法精度 (例えば、板厚の精度)を向上させることを目的とする加工である。この研 削処理は、板状ガラスの主表面に、砥石、あるいは、定盤を押圧させ、これら板状ガ ラス及び砥石または定盤を相対的に移動させることにより、板状ガラスの主表面を研 削することにより行われる。このような研削処理は、遊星歯車機構を利用した両面研 削装置を用いて行うことができる。
[0071] また、この研削処理においては、板状ガラスの主表面に研削液を供給することによ り、スラッジ (研削屑)を研削面力も洗い流し、また、研削面を冷却するとよい。さらに、 この研削液に遊離砥粒を含有させたスラリーをワークの主表面に供給して研削しても よい。
[0072] 研削処理において用いる砥石としては、ダイヤモンド砥石を用いることができる。ま た、遊離砥粒としては、アルミナ砥粒ゃジルコ -ァ砥粒、または、炭化珪素砥粒など の硬質砥粒を用いるとょ 、。
[0073] この研削処理により、板状ガラスの形状精度が向上し、主表面の形状が平坦化され るとともに板厚が所定の値となるまで削減されたガラス母材が形成される。
[0074] 本発明においては、ガラス母材の主表面が研削処理により平坦となされ、また、板 厚が削減されている。よって、このガラス母材を切断して、このガラス母材からガラス ディスクを切り出すことができる。すなわち、ガラス母材カゝらガラスディスクを切り出すと きに、欠け、ひび、割れといった欠陥が発生することを防止することができる。
[0075] ガラス母材の平坦度としては、例えば、 7088mm2 (直径 95mmの円の面積)にお いて、 30 m以下であることが好ましぐ 10 m以下であることがより好ましい。また、 ガラス母材の板厚としては、 2mm以下であることが好ましぐ 0. 8mm以下であること
力 り好ましい。なお、ガラス母材の板厚が 0. 2mm未満であると、ガラス母材自体が 、ガラスディスクを切り出す工程における負荷に耐えられないおそれがあるので、ガラ ス母材の板厚は、 0. 2mm以上とすることが好ましい。ガラス母材の板厚が 2mmを超 えると、板厚が厚すぎるために精密な切り出しができないおそれがあり、また、ガラス ディスクを切り出すときに、欠け、ひび、割れといった欠陥が発生するおそれがある。
[0076] ガラス母材のサイズは、製造しょうとする磁気ディスク用ガラス基板より大きいサイズ である必要がある。例えば、「1インチ型ハードディスクドライブ」、あるいは、それ以下 のサイズの小型ハードディスクドライブに搭載する磁気ディスクに用いる磁気ディスク 用ガラス基板を製造する場合にあっては、磁気ディスク用ガラス基板の直径は略々 2 Omm乃至 30mm程度である。そのため、ガラス母材の直径としては、 30mm以上、 好ましくは、 48mm以上であることが好ましい。特に、直径が 65mm以上のガラス母 材を用いれば、 1枚のガラス母材から、「1インチ型ハードディスクドライブ」に搭載す る磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラス基板となるガラスディスクを複数枚切り 出すことができ、大量生産に好適である。ガラス母材のサイズの上限については、特 に限定する必要はないが、ディスク状のガラス母材の場合には、直径が 100mm以 下とすることが好ましい。
[0077] ガラス母材の切断は、ダイヤモンドカツタゃダイヤモンドドリルなど、ガラスよりも硬質 な物質を含む切刃や砲石を用いて行うことができる。また、ガラス母材の切断は、レ 一ザカツタを用いて行ってもよい。ただし、レーザカツタを用いて直径 30mm以下のよ うな小型のガラスディスクを精密に切り出すことは困難な場合があり、切刃や砥石を 用いるほうが簡便に切り出しを行うことができ、好適である。
[0078] ここで、ガラス母材カゝら切り出されるガラスディスクのサイズとして、特に好適なサイ ズは、直径 30mm以下である。
[0079] 次に、円筒状の砲石を用いて、ガラスディスクの中央部分に所定の直径の円孔を 形成するとともに、外周端面の研削をして、所定の直径とした後、外周端面及び内周 端面に所定の面取り加工を施す。
[0080] そして、ガラス母材カゝら切り出されたガラスディスクに対して、少なくとも研磨処理を 施し、ガラスディスクの主表面を鏡面化する。
[0081] この研磨処理を施すことにより、ガラスディスクの主表面のクラックが除去され、主表 面の表面粗さは、例えば、 Rmaxで 7nm以下、 Raで 0. 7nm以下となされる。ガラスデ イスクの主表面がこのような鏡面となっていれば、このガラスディスクを用いて製造さ れる磁気ディスクにおいて、磁気ヘッドの浮上量力 例えば、 lOnmである場合であ つても、いわゆるクラッシュ障害ゃサーマルアスペリティ障害の発生を防止することが できる。また、ガラスディスクの主表面がこのような鏡面となっていれば、後述する化 学強化処理にぉ 、て、ガラスディスクの微細領域にお!、て均一に化学強化処理を施 すことができ、また、微小クラックによる遅れ破壊を防ぐことができる。
[0082] なお、 Rmaxとは、最大高さ(Ryとも言う)であって、平均線から最も高い山頂までの 高さ(最大山高さ: Rp)と平均線力 最も低い谷底までの深さ(最大谷深さ: Rv)の和( Rp+Rv)で示される。また、最大高さ Rmaxとは、 日本工業規格 (JIS) B0601に準拠 して算出した値である。
[0083] この研磨処理は、例えば、ガラスディスクの主表面に、研磨パッド (研磨布)が貼り付 けられた定盤を押圧させ、ガラスディスクの主表面に研磨液を供給しながら、これらガ ラスディスク及び定盤を相対的に移動させ、ガラスディスクの主表面を研磨することに より行われる。このとき、研磨液には、研磨砲粒を含有させておくとよい。研磨砲粒と しては、酸ィ匕セリウム研磨砥粒、コロイダルシリカ研磨砥粒、または、ダイヤモンド研磨 砲粒を用いることができる。
[0084] なお、ガラスディスクを研磨する前に、研削処理をしておくことが好ま 、。このとき の研削処理は、前述した板状ガラスに対する研削処理と同様の手段により行うことが できる。ガラスディスクを研削処理して力も研磨処理を行うことにより、より短時間で、 鏡面化された主表面を得ることができる。
[0085] また、ガラスディスクの端面を鏡面研磨しておくことが好ま ヽ。ガラスディスクの端 面は切断形状となっているため、この端面を鏡面に研磨しておくことにより、パーティ クルの発生を抑制することができ、この磁気ディスク用ガラス基板を用いて製造された 磁気ディスクにおいて、いわゆるサーマルアスペリティ障害を良好に防止することが できる力 である。
[0086] そして、ガラスディスクの研磨工程の後に、化学強化処理を施す。化学強化処理を
行うことにより、磁気ディスク用ガラス基板の表面に高い圧縮応力を生じさせることが でき、耐衝撃性を向上させることができる。特に、ガラスディスクの材料としてアルミノ シリケートガラスを用いている場合には、好適に化学強化処理を行うことができる。
[0087] 化学強化処理としては、公知の化学強化処理方法を用いたものであれば、特に制 限されない。ガラスディスクの化学強化処理は、例えば、加熱した化学強化塩に、ガ ラスディスクを接触させ、ガラスディスクの表層のイオンが化学強化塩のイオンでィォ ン交換されることによって行われる。
[0088] ここで、イオン交換法としては、低温型イオン交換法、高温型イオン交換法、表面結 晶化法、ガラス表面の脱アルカリ法などが知られている力 本発明においては、ガラ スの徐冷点を超えな 、温度領域でイオン交換を行う低温型イオン交換法を用いるこ とが好ましい。
[0089] なお、ここで 、う低温型イオン交換法は、ガラスの徐冷点以下の温度領域にお!、て 、ガラス中のアルカリイオンをこのアルカリイオンよりもイオン半径の大きいアルカリィ オンと置換し、イオン交換部の容積増加によってガラス表層に圧縮応力を発生させ、 ガラス表層を強化する方法のことをさす。
[0090] なお、化学強化処理を行なうときの溶融塩の加熱温度は、イオン交換が良好に行 われると!ヽぅ観点、等力ら、 280° C乃至 660° C、特に、 300° C乃至 400° Cである ことが好ましい。
[0091] ガラスディスクを溶融塩に接触させる時間は、数時間乃至数十時間とすることが好 ましい。
[0092] なお、ガラスディスクを溶融塩に接触させる前に、予備加熱として、ガラスディスクを 100° C乃至 300° Cに加熱しておくことが好ましい。また、化学強化処理後のガラ スディスクは、冷却、洗浄工程等を経て、製品 (磁気ディスク用ガラス基板)となされる
[0093] また、化学強化処理を行うための処理漕の材料としては、耐食性に優れるとともに、 低発塵性の材料であれば、特に限定されない。化学強化塩や化学強化溶融塩は酸 化性があり、かつ、処理温度が高温なので、耐食性に優れた材料を選定することによ り、損傷や発塵を抑制し、もって、サーマルアスペリティ障害や、ヘッドクラッシュを抑
制する必要がある。この観点からは、処理漕の材料としては、石英材が特に好ましい 力 ステンレス材ゃ、特に耐食性に優れるマルテンサイト系、または、オーステナイト 系ステンレス材も用いることができる。なお、石英材は、耐食性に優れるが、高価なの で、採算性を考慮して、適宜選択することができる。
[0094] 化学強化塩の材料としては、硝酸ナトリウム、及び Z又は、硝酸カリウムを含有する 化学強化塩材料であることが好ましい。このような化学強化塩は、ガラス、特に、アル ミノシリケートガラスをィ匕学強化処理したときに、磁気ディスク用ガラス基板としての所 定の剛性及び耐衝撃性を実現することができるからである。次に、ガラスディスクの主 表面に対してテクスチャ力卩ェを施す。
[0095] 図 1は、本発明にお 、て、テクスチャ加工を行うテクスチャ加工装置の構成を示す 斜視図である。
[0096] このテクスチャ加工においては、まず、図 1に示すように、ガラスディスク 1を、中央 部分の円孔 2において、テクスチャ加工装置のチヤッキング軸 101の先端側に装着 する。このチヤッキング軸 101は、円筒状の先端側が軸方向に複数の部分に分割さ れており、内方側より力を加えることによりこの先端側を拡径できるようになつている。 このチヤッキング軸 101の先端側をガラスディスク 1の円孔 2に挿入して拡径させるこ とにより、ガラスディスクは、このチヤッキング軸 101によって保持される。
[0097] このチヤッキング軸 101は、図 1中矢印 Aで示すように、所定の回転速度によって軸 回りに回転操作されるとともに、図 1中矢印 Bで示すように、軸に直交する方向に所定 の周囲及び振幅にて往復移動されるようになって!/、る。
[0098] そして、このテクスチャ加工装置においては、一対の研磨テープ 102, 103力 図 1 中矢印 Cで示すように、サプライロール 102a, 103aからテイクアップロール 102b, 1 03bに向けて、所定の速度で送り操作されて巻き取られるようになつている。これら研 磨テープ 102, 103は、互いに重ね合わされた状態で、等しい速度で送り操作される
[0099] チヤッキング軸 101に保持されたガラスディスク 1は、主表面となる部分を、送り操作 される一対の研磨テープ 102, 103の間に挿入される。そして、これら研磨テープ 10 2, 103は、一対の加圧ローラ 104, 105により、ガラスディスク 1の両面側の主表面に
対して、図 1中矢印 D及び矢印 Eで示すように、それぞれ所定の圧力にて押接される 。すなわち、ガラスディスク 1は、両主表面を、一対の研磨テープ 102, 103によって 挟持されることとなる。
[0100] この状態において、チヤッキング軸 101をガラスディスク 1とともに軸回りに回転させ るとともに、このチヤッキング軸 101を軸に直交する方向に所定の周囲及び振幅にて 往復移動させる。このとき、チヤッキング軸 101の往復移動の方向は、一対の研磨テ ープ 102, 103の送り操作方向に直交する方向となっている。また、このとき、ガラス ディスク 1と各研磨テープ 102, 103との間には、液体状の研磨剤を供給する。
[0101] このとき、ガラスディスク 1と各研磨テープ 102, 103とは、相対的に摺接移動される
[0102] 図 2は、本発明におけるテクスチャカ卩ェにおいて、ガラスディスクと研磨テープとの 相対的な摺接移動方向を示す模式図である。
[0103] 各研磨テープ 102, 103の送り操作の速度は極めて遅いので、ガラスディスク 1と各 研磨テープ 102, 103との相対的摺動は、ガラスディスク 1の回転速度及び往復移動 の周期及び振幅によって決まる。そして、ガラスディスク 1に対する各研磨テープ 102 , 103の相対的摺動は、図 2に示すように、このガラスディスク 1の円周方向(接線方 向)の移動 (F)を基本としつつ、この円周方向に対して、サインカーブを描いて揺動 する移動 (G)となる。
[0104] このようにしてテクスチャが形成されたガラスディスク 1の主表面においては、円周方 向についての表面粗さは、径方向についての表面粗さよりも小さくなつている。すな わち、このテクスチャ加工において形成されるテクスチャは、基本的に、ガラスデイス ク 1の円周方向に沿って形成された「異方性テクスチャ」であると!/、える。
[0105] また、このようにしてテクスチャが形成されたガラスディスク 1の主表面においては、 ガラスディスク 1の円周方向についての表面粗さ力 全主表面の外周側より内周側に 向かって増大しているので、このガラスディスク 1の主表面上に磁性層を形成すると、 この磁性層に磁気異方性を付与する作用が得られ、併せて、特に内周側において、 磁気ヘッドの浮上性が安定化される。
[0106] なお、この磁気ディスク用ガラス基板にぉ 、て、主表面にお!、て磁気ディスク用ガラ
ス基板の中心から半径 6mmの箇所にぉ 、て、磁気ディスク用ガラス基板の円周方向 についての表面の算術平均粗さ(Ra-c)を 0. 25nm以上とし、主表面において磁気 ディスク用ガラス基板の中心から半径 11mmの箇所において、磁気ディスク用ガラス 基板の円周方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ (Ra-r)を 0. 24nm以下とすること が好ましい。この場合には、主表面の特に内周側において、磁気ヘッドの浮上性を 充分に安定化させることができる。
[0107] さらに、このテクスチャが形成されたガラスディスク 1の主表面においては、円周方 向につ 、ての表面の算術平均粗さ(Ra-c)の径方向につ!、ての表面の算術平均粗 さ(Ra-r)に対する比、すなわち、〔Ra-cZRa-r〕は、主表面の外周側から内周側に 向かって増大して!/ヽることとなる。
[0108] この磁気ディスク用ガラス基板において、主表面において磁気ディスク用ガラス基 板の中心から半径 6mmの箇所において、主表面における磁気ディスク用ガラス基板 の円周方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ (Ra-c)の主表面における磁気ディスク 用ガラス基板の径方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ (Ra-r)に対する比〔Ra-cZ Ra-r〕を 0. 61以上とし、主表面において磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 1 lmmの箇所において、主表面における磁気ディスク用ガラス基板の円周方向につ V、ての表面の算術平均粗さ (Ra-c)の主表面における磁気ディスク用ガラス基板の径 方向につ 、ての表面の算術平均粗さ (Ra-r)に対する比〔Ra-cZRa-r〕を 0. 60以下 とすることが好ましい。この場合には、主表面の特に内周側において、磁気ヘッドの 浮上性を充分に安定化させることができる。
[0109] また、このようにしてガラスディスク 1の主表面に形成されるテクスチャは、主表面上 においてガラスディスク 1の円周方向成分をもって互いに交差する状態に形成されて おり、テクスチャ同士が交差する角度 (クロス角)が、ガラスディスク 1の主表面の外周 側から内周側に向力つて増大するように形成される。これは、ガラスディスク 1の主表 面においては、外周側よりも内周側の接線速度が遅いからである。
[0110] そのため、このガラスディスク 1の主表面上に磁性層を形成すると、この磁性層に磁 気異方性を付与する作用が得られ、併せて、特に内周側において、磁気ヘッドの浮 上性が安定化される。
[0111] なお、このテクスチャのクロス角は、ガラスディスクの主表面において、 5 μ m四方の 領域を原子間力顕微鏡で測定し、この測定結果をフーリエ変換することによって、容 易、かつ、正確に特定することができる。
[0112] この磁気ディスク用ガラス基板において、主表面において磁気ディスク用ガラス基 板の中心から半径 6mmの箇所において、テクスチャ同士が交差する角度を 5. 0° 以上とし、主表面にぉ 、て磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 11mmの箇所 において、テクスチャ同士が交差する角度を 4. 5° 以下とすることが望ましい。この 場合には、主表面の特に内周側において、磁気ヘッドの浮上性を充分に安定ィ匕させ ることがでさる。
[0113] このテクスチャ加工が終了した後、ガラスディスク 1を洗浄することにより、磁気デイス ク用ガラス基板が完成する。
[0114] 前述のようにして製造される本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、「1インチ 型ハードディスクドライブ」、または、「1インチ型」よりも小型のハードディスクドライブ に搭載するための磁気ディスク用ガラス基板として好適である。なお、「1インチ型ハ ードディスクドライブ」に搭載する磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用ガラス 基板の直径は、約 27. 4mmである。また、「0. 85インチ型ハードディスクドライブ」に 搭載する磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用ガラス基板の直径は、約 21. ommで to 。
[0115] そして、本発明に係る磁気ディスクにおいて、磁気ディスク用ガラス基板上に形成さ れる磁性層としては、例えば、コバルト (Co)系強磁性材料力もなるものを用いること ができる。特に、高い保磁力が得られるコバルト—プラチナ (Co— Pt)系強磁性材料 や、コバルト一クロム (Co— Cr)系強磁性材料力もなる磁性層として形成することが好 ましい。なお、磁性層の形成方法としては、 DCマグネトロンスパッタリング法を用いる ことができる。
[0116] また、この磁性層を形成する前に、ガラスディスクに対し、円周方向のテクスチャカロ ェを施すことにより、磁気特性を向上させることもできる。また、ガラス基板と磁性層と の間に、適宜、下地層等を介挿させることが好ましい。これら下地層の材料としては A 1 Ru系合金や、 Cr系合金などを用いることができる。
[0117] また、磁性層上には、磁気ヘッドの衝撃カゝら磁気ディスクを防護するための保護層 を設けることができる。この保護層としては、硬質な水素化炭素保護層を好ましく用い ることがでさる。
[0118] さらに、この保護層上に、 PFPE (パーフルォロポリエーテル)化合物力もなる潤滑 層を形成することにより、磁気ヘッドと磁気ディスクとの干渉を緩和することができる。 この潤滑層は、例えば、ディップ法により、塗布成膜することにより形成することができ る。
[0119] [第 1実施例]
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、具体的に説明する。なお、本発明は 、これら実施例の構成に限定されるものではない。
[0120] 〔実施例 1 (磁気ディスク用ガラス基板の実施例)〕
以下に述べる本実施例における磁気ディスク用ガラス基板は、以下の(1)乃至(8) の工程により作成される。
[0121] (1)粗研削工程
(2)形状加工工程
(3)精研削工程
(4)端面鏡面加工工程
(5)第 1研磨工程
(6)第 2研磨工程
(7)化学強化工程
(8)テクスチャ加工
[0122] まず、アモルファスのアルミノシリケートガラスカゝらなるディスク状のガラス母材を用意 した。このアルミノシリケートガラスは、リチウムを含有している。このアルミノシリケート ガラスの組成は、 SiOを、 63. 6重量0 /0、 Al Oを、 14. 2重量0 /0、 Na Oを、 10. 4重
2 2 3 2
量0 /0、 Li Oを、 5. 4重量%、 ZrOを、 6. 0重量%、 Sb Oを、 0. 4重量%含むもの
2 2 2 3
である。
[0123] (1)粗研削工程
溶融させたアルミノシリケートガラスカゝら形成した厚さ 0. 6mmのシートガラスをガラ
ス母材として用いて、このシートガラスから、研削砥石により、直径 28. 7mm、厚さ 0. 6mmの円盤状のガラスディスクを得た。
[0124] シートガラスを形成する方法としては、一般に、ダウンドロー法やフロート法が用いら れるが、これ以外に、ダイレクトプレスによって、円盤状のガラス母材を得てもよい。こ のシートガラスの材料であるアルミノシリケートガラスとしては、 SiOを、 58乃至 75重
2
量%、 Al Oを、 5乃至 23重量%、 Na Oを、 4乃至 13重量%、 Li Oを、 3乃至 10重
2 3 2 2 量0 /θ、含有するものであればよい。
[0125] 次に、ガラスディスクに対し、寸法精度及び形状精度の向上のために、粗研削工程 を施した。この粗研削工程は、両面研削装置を用いて、粒度 # 400の砥粒を用いて 行なった。
[0126] 具体的には、始めに粒度 # 400のアルミナ砲粒を用い、荷量を 100kg程度に設定 して、サンギアとインターナルギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガ ラスディスクの両面を、面精度 0乃至 1 μ m、表面粗さ(Rmax) 6 μ m程度に研削した
[0127] (2)形状加工工程
次に、円筒状の砲石を用いて、ガラスディスクの中央部分に直径 6. 1mmの円孔を 形成するとともに、外周端面の研削をして、直径を 27. 43mmとした後、外周端面及 び内周端面に所定の面取り加工を施した。このときのガラスディスクの端面の表面粗 さは、 Rmaxで 4 μ m程度であった。
[0128] なお、一般に、「2. 5インチ型 HDD (ノヽードディスクドライブ)」では、外径が 65mm の磁気ディスクを用いて 、る。
[0129] (3)精研削工程
次に、砲粒の粒度を # 1000に替え、ガラスディスクの主表面を研削することにより、 主表面の表面粗さを、 Rmaxで 2 μ m程度、 Raで 0. 2 μ m程度とした。
[0130] この精研削工程を行うことにより、前工程である粗研削工程や形状加工工程におい て主表面に形成された微細な凹凸形状を除去することができる。
[0131] このような精研削工程を終えたガラスディスクを、超音波を印力!]した中性洗剤及び 純水の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄を行なった。
[0132] (4)端面鏡面加工工程
次いで、ガラスディスクの端面について、従来より用いられているブラシ研磨により、 ガラスディスクを回転させながら、ガラスディスクの端面(内周端面及び外周端面)の 表面の粗さを、 Rmaxで 1 μ m、 Raで 0. 3 μ m程度に研磨した。
[0133] そして、端面鏡面力卩ェを終えたガラスディスクの主表面を水洗浄した。
[0134] なお、この端面鏡面カ卩ェ工程にぉ 、ては、ガラスディスクを重ね合わせて端面を研 磨するが、この際に、ガラスディスクの主表面にキズ等が付くことを避けるため、後述 する第 1研磨工程よりも前、あるいは、第 2研磨工程の前後に行うことが好ましい。
[0135] この端面鏡面加工工程により、ガラスディスクの端面は、パーティクル等の発塵を防 止できる鏡面状態に加工された。端面鏡面加工工程後にガラスディスクの直径を測 定したところ、 27. 4mmであった。
[0136] (5)第 1研磨工程
次に、前述した精研削工程において残留した傷や歪みを除去するため、両面研磨 装置を用いて、第 1研磨工程を行なった。
[0137] 両面研磨装置においては、研磨パッドが貼り付けられた上下定盤の間に、キャリア により保持させたガラスディスクを密着させ、このキャリアを、サンギア及びインターナ ルギアに嚙合させるとともに、ガラスディスクを上下定盤によって挟圧する。その後、 研磨パッドとガラスディスクの研磨面(主表面)との間に研磨液を供給しながら、サン ギアを回転させることによって、ガラスディスクは、定盤上で自転しながらインターナル ギアの回りを公転して、両主表面を同時に研磨カ卩ェされる。
[0138] 以下の実施例で使用する両面研磨装置としては、同一の装置を用いている。具体 的には、ポリッシャとして硬質ポリシャ (硬質発泡ウレタン)を用いて、第 1研磨工程を 実施した。研磨条件は、酸ィ匕セリウム(平均粒径 1. 3 m)及び RO水力もなる研磨液 を用い、荷重を 100g/cm2、研磨時間を 15分とした。そして、この第 1研磨工程を終 えたガラスディスクを、中性洗剤、純水 (1)、純水 (2)、 IPA (イソプロピルアルコール)、 I PA (蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸潰させて、超音波洗浄し、乾燥させた。
[0139] (6)第 2研磨工程
次に、第 1研磨工程で使用した両面研磨装置と同様の両面研磨装置を用いて、ポ
リツシャを軟質ポリッシャ (スウェードパット)に替えて、主表面の鏡面研磨工程として、 第 2研磨工程を実施した。
[0140] この第 2研磨工程は、前述した第 1研磨工程により得られた平坦な主表面を維持し つつ、この主表面の表面粗さ Raを、例えば、 0. 5乃至 0. 3nm程度以下まで低減さ せることを目的とするものである。
[0141] 研磨条件は、コロイダルシリカ(平均粒径 80nm)及び RO水力 なる研磨液を用い
、荷重を 100gZcm2、研磨時間を 5分とした。
[0142] そして、この第 2研磨工程を終えたガラスディスクを、中性洗剤、純水 (1)、純水 (2)、 I
PA (イソプロピルアルコール)、 IPA (蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬させて、超音 波洗浄し、乾燥させた。
[0143] (7)化学強化工程
次に、洗浄を終えたガラスディスクに対し、化学強化処理を施した。化学強化処理 は、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとを混合させた化学強化液を用いて行い、強化処理 されたガラスディスクから溶出されるリチウム含有量を ICP発光分析装置を用いて測 し 7こ。
[0144] この化学強化溶液を、 340° C乃至 380° Cに加熱し、洗浄及び乾燥を終えたガラ スディスクを、約 2時間乃至 4時間浸漬して、化学強化処理を行なった。この浸漬の 際には、ガラスディスクの表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラスデ イスクが端面で保持されるように、ホルダーに収納した状態で行った。
[0145] 化学強化処理を終えたガラスディスクを、 20° Cの水槽に浸漬して急冷し、約 10分 間維持した。
[0146] そして、急冷を終えたガラスディスクを、約 40° Cに加熱した濃硫酸に浸漬して洗 浄を行った。さら〖こ、硫酸洗浄を終えた磁気ディスク用ガラス基板を、純水 (1)、純水 (2)、 IPA (イソプロピルアルコール)、 IPA (蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬させて 、超音波洗浄し、乾燥させた。
[0147] 次に、洗浄を終えたガラスディスクの主表面及び端面について、目視検査を行い、 さら〖こ、光の反射、散乱及び透過を利用した精密検査を実施した。その結果、ガラス ディスクの主表面及び端面には、付着物による突起や、傷等の欠陥は発見されなか
つた o
[0148] また、前述のような工程を経たガラスディスクの主表面の表面粗さは、原子間カ顕 微鏡 (AFM)によって測定したところ、 Rmaxで 2. 5nm、 Raで 0. 30nmと、超平滑な 表面となっていることが確認された。なお、表面粗さの数値は、 AFM (原子間力顕微 鏡)によって測定した表面形状にっ 、て、 日本工業規格 (JIS) B0601にしたがって 算出したものである。
[0149] また、前述のような工程を経たガラスディスクは、内径が 7mm、外径が 27. 4mm、 板厚は 0. 381mmであり、「1. 0インチ型」磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラ ス基板の所定寸法であることを確認した。
[0150] さらに、このガラスディスクの円孔の内周側端面の表面粗さは、面取り部 Rmaxで 0.
4 m、 Raで 0. 04 μ m、側壁部 Rmaxで 0. 4 m、 Raで 0. 05 μ mであった。外周 端面における表面粗さ Raは、面取部で 0. 04 ^ m,側壁部で、 0. 07 mであった。 このように、内周側端面は、外周側端面と同様に、鏡面状に仕上がつていることを確 した 0
[0151] また、このガラスディスクの表面に異物ゃサーマルアスペリティの原因となるパーテ イタルは認められず、円孔の内周側端面にも異物やクラックは認められな力つた。
[0152] (8)テクスチャ加工
次に、化学強化処理を終えたガラスディスクに対し、テクスチャ力卩ェを行った。この テクスチャ加工は、テクスチャカ卩ェ装置を用いて、ガラスディスクと、このガラスデイス クの両主表面を挟持する研磨テープとを所定の状態で相対的に摺接移動させること によって行った。これらガラスディスクと各研磨テープとの相対的摺動は、ガラスディ スクの円周方向(接線方向)の移動を基本としつつ、この円周方向に対して、サイン力 ーブを描 、て揺動する移動として行った。
[0153] また、このとき、ガラスディスクと各研磨テープとの間に、研磨砥粒としてダイヤモン ド砥粒を含有する液体状の研磨剤を供給した。
[0154] このテクスチャ加工の条件は、以下の〔表 1〕に示すように、この実施例 1において、 研磨テープとして織布テープを使用し、研磨剤 (スラリー)として多結晶型ダイヤモン ドスラリーを使用し、ガラスディスクの回転数を毎分 597回転とし、ガラスディスクの揺
動(オシレーシヨン)の周波数を 7. 8Hzとし、ガラスディスクの揺動(オシレーシヨン)の 振幅を lmmとし、加圧ローラによる加工力卩重を 3. 675kg (l . 5pound)とした。
[表 1]
このテクスチャ加工が終了した後、ガラスディスクを洗浄し、磁気ディスク用ガラス基 板を得た。
[0157] 〔実施例 2 (磁気ディスク用ガラス基板の実施例)〕
〔表 1〕に示すように、実施例 1においてテクスチャ加工の条件のみを変更した実施 例 2を作成した。
[0158] この実施例 2においては、テクスチャ加工の条件は、研磨テープとして織布テープ を使用し、研磨剤 (スラリー)として多結晶型ダイヤモンドスラリーを使用し、ガラスディ スクの回転数を毎分 883回転とし、ガラスディスクの揺動(オシレーシヨン)の周波数を 7. 8Hzとし、ガラスディスクの揺動(オシレーシヨン)の振幅を lmmとし、加圧ローラに よる加工加重を 3. 675kg (l. 5pound)とした。
[0159] 〔比較例 1〕
〔表 1〕に示すように、実施例 1においてテクスチャ加工の条件のみを変更した比較 例 1を作成した。
[0160] この比較例 1においては、テクスチャ加工の条件は、研磨テープとして織布テープ を使用し、研磨剤 (スラリー)として多結晶型ダイヤモンドスラリーを使用し、ガラスディ スクの回転数を毎分 1083回転とし、ガラスディスクの揺動(オシレーシヨン)の周波数 を 7. 8Hzとし、ガラスディスクの揺動(オシレーシヨン)の振幅を lmmとし、加圧ローラ によるカロ工加重を 3. 675kg (l . 5pound)とした。
[0161] 〔比較例 2〕
〔表 1〕に示すように、実施例 1においてテクスチャ加工の条件を変更した比較例 2を 作成した。
[0162] この比較例 2は、外径が 65mmの磁気ディスク用ガラス基板の例である。
[0163] この比較例 2においては、テクスチャ加工の条件は、研磨テープとして織布テープ を使用し、研磨剤 (スラリー)として多結晶型ダイヤモンドスラリーを使用し、ガラスディ スクの回転数を毎分 383回転とし、ガラスディスクの揺動(オシレーシヨン)の周波数を 5Hzとし、ガラスディスクの揺動(オシレーシヨン)の振幅を lmmとし、加圧ローラによ る加工加重を 13. 475kg (5. 5pound)とした。
[0164] 〔磁気ディスク用ガラス基板の主表面における円周方向につ!、ての表面の算術平均 粗さ(Ra-c)、円周方向につ!、ての表面の算術平均粗さ(Ra-c)の径方向につ!、ての 表面の算術平均粗さ (Ra-r)に対する比〔Ra-cZRa_r〕及びテクスチャのクロス角の
測定〕
前述のようにして作成した磁気ディスク用ガラス基板の実施例 1、実施例 2、比較例 1及び比較例 2につ 、て、主表面における円周方向につ!、ての表面の算術平均粗さ (Ra-c)を測定した。
[0165] 図 3は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板及び比較例の主表面の各個所に おける円周方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ (Ra-c)を示すグラフである。
[0166] また、磁気ディスク用ガラス基板の実施例 1、実施例 2、比較例 1及び比較例 2につ V、て測定された、磁気ディスク用ガラス基板の主表面の各個所(中心力もの距離が 6 . Omm, 8. 5mm及び 11. Omm)における円周方向についての表面の算術平均粗 さ(Ra-c)を、以下の〔表 2〕に示す (なお、比較例 2については、中心力もの距離が 14 . 5mm、 22. Omm及び 30. 6mmの箇所について示す)。
[0167] なお、これら〔比較例 1〕及び〔比較例 2〕の磁気ディスク用ガラス基板は、本発明に おける前述の〔構成 3〕、〔構成 5〕及び〔構成 8〕の磁気ディスク用ガラス基板につ!、て の比較例となる。
[0168] [表 2]
ディスク 板サイズ AFM 円周方向算術半径方向算術
算術平均粗さ クロス角 L/UL耐久 最外怪 最内径 測定半径 平均粗さ 平均粗さ Ra-c/Ra-r
Ra (nm) (degree) 動作テスト [mm] Emm] r国) Ra-c (nm) Ra- r画
6.0 0.45 0.27 0.41 0.66 10.0
実施例 1 27.4 7.0 8.5 0.43 0.25 0.40 0.63 8.0 60万回以上
11.0 0.43 0.23 0.39 0.59 3.6
6.0 0.43 0.25 0.40 0.63 6.4
実施例 2 27.4 7.0 8.5 0.42 0.23 0.38 0.61 5.2 50万回
11.0 0.41 0.21 0.37 0.57 2.4
6.0 0.42 0.22 0.38 0.58 4.3
比較例 1 27.4 7.0 8.5 0.42 0.21 0.38 0.55 2.8 30万回
11.0 0.41 0.20 0.37 0.54 2.2
14.5 0.44 0.22 0, 39 0.56 3.6
比較例 2 65.0 20.0 22.0 0.44 0.22 0.39 0.56 3 60万回以上
30.6 0.43 0.21 0.38 0.55 2.6
[0169] これら図 3及び〔表 2〕に示すように、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の各実 施例における主表面においては、主表面における円周方向についての表面粗さが、 主表面の外周側から内周側に向力つて連続的に増大していることがわかる。
[0170] そして、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の実施例にぉ ヽては、主表面にお いて磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 6mmの箇所において、磁気ディスク 用ガラス基板の円周方向についての表面の算術平均粗さ (Ra-C)が 0. 25nm以上 であって、主表面にぉ 、て磁気ディスク用ガラス基板の中心から半径 11mmの箇所 にお 、て、磁気ディスク用ガラス基板の円周方向につ!、ての表面の算術平均粗さ (R a-c)が 0. 24nm以下となっている。
[0171] また、前述のようにして作成した磁気ディスク用ガラス基板の実施例 1、実施例 2、 比較例 1及び比較例 2について、円周方向についての表面の算術平均粗さ (Ra-c) の径方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ(Ra-r)に対する比〔Ra-cZRa-r〕を測定 した。
[0172] 図 4は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板及び比較例の主表面の各個所に おける円周方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ(Ra-c)の径方向につ!、ての表面の 算術平均粗さ (Ra-r)に対する比〔Ra-cZRa-r〕を示すグラフである。
[0173] また、磁気ディスク用ガラス基板の実施例 1、実施例 2、比較例 1及び比較例 2につ V、て測定された、磁気ディスク用ガラス基板の主表面の各個所における円周方向に つ 、ての表面の算術平均粗さ(Ra-c)の径方向につ!、ての表面の算術平均粗さ(R a-r)に対する比〔Ra-cZRa-r〕を、〔表 2〕に示す。
[0174] これら図 4及び〔表 2〕からもゎカゝるように、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板 の主表面においては、主表面における円周方向についての表面粗さ力 主表面に おける径方向にっ 、ての表面粗さよりも小さくなつて 、ることがわ力る。
[0175] また、円周方向につ!、ての表面の算術平均粗さ(Ra-c)の径方向につ!、ての表面 の算術平均粗さ (Ra-r)に対する比、すなわち、〔Ra-cZRa-r〕力 主表面の外周側 力 内周側に向力つて連続的に増大していることがわかる。
[0176] 本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の実施例にぉ ヽては、主表面にお!ヽて磁 気ディスク用ガラス基板の中心から半径 6mmの箇所において、主表面における磁気
ディスク用ガラス基板の円周方向についての表面の算術平均粗さ (Ra-c)の主表面 における磁気ディスク用ガラス基板の径方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ (Ra-r) に対する比〔Ra-cZRa_r〕が 0. 61以上であって、主表面において磁気ディスク用ガ ラス基板の中心から半径 11mmの箇所において、主表面における磁気ディスク用ガ ラス基板の円周方向についての表面の算術平均粗さ (Ra-c)の主表面における磁気 ディスク用ガラス基板の径方向にっ 、ての表面の算術平均粗さ (Ra-r)に対する比〔 Ra- cZRa- r〕が 0. 60以下となっている。
[0177] また、前述のようにして作成された磁気ディスク用ガラス基板の主表面において、 5
IX m四方の領域を原子間力顕微鏡で測定し、この測定結果を 2次元 FFTによってフ 一リエ変換した。
[0178] 図 5は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の主表面の各個所について測定さ れた原子間力顕微鏡像をフーリエ変換した結果を示す画像である。
[0179] そして、図 5に示すように、磁気ディスク用ガラス基板の主表面上において円周方 向成分をもって互いに交差する状態に形成されたテクスチャ同士が交差する角度 (ク ロス角)を特定した。
[0180] 図 6は、本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板及び比較例の主表面の各個所に おけるテクスチャのクロス角を示すグラフである。
[0181] また、磁気ディスク用ガラス基板の実施例 1、実施例 2、比較例 1及び比較例 2につ V、て測定された、磁気ディスク用ガラス基板の主表面の各個所におけるテクスチャの クロス角を、〔表 2〕に示す。
[0182] その結果、この磁気ディスク用ガラス基板においては、図 6に示すように、クロス角 1S 主表面の外周側から内周側に向力つて増大していることが確認された。このクロ ス角を Θとすると、 tan Θは、磁気ディスク用ガラス基板の中心からの距離 rに反比例( すなわち、〔lZr〕に比例)していることがわかる。
[0183] 本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の実施例にぉ ヽては、主表面にお!ヽて磁 気ディスク用ガラス基板の中心から半径 6mmの箇所において、テクスチャ同士が交 差する角度 (クロス角)が 5. 0° 以上であって、主表面において磁気ディスク用ガラス 基板の中心から半径 11mmの箇所にぉ 、て、テクスチャ同士が交差する角度 (クロス
角)が 4. 5° 以下となっている。
[0184] 〔実施例 3 (磁気ディスクの実施例)〕
次に、以下の工程を経て、本発明に係る磁気ディスクを製造した。
[0185] 前述の工程により得た実施例 1及び実施例 2の磁気ディスク用ガラス基板の両主表 面に、静止対向型の DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、 Al—Ru合金のシ ード層、 Cr— W合金の下地層、 Co— Cr— Pt— Ta合金の磁性層、水素化炭素保護 層を順次成膜した。シード層は、磁性層の磁性グレインを微細化させる作用を奏し、 下地層は、磁性層の磁ィ匕容易軸を面内方向に配向きせる作用を奏する。
[0186] この磁気ディスクは、非磁性基板である磁気ディスク用ガラス基板と、この磁気ディ スク用ガラス基板上に形成された磁性層と、この磁性層上に形成された保護層と、こ の保護層上に形成された潤滑層とを少なくとも備えて構成される。
[0187] そして、磁気ディスク用ガラス基板と磁性層との間には、シード層及び下地層からな る非磁性金属層(非磁性下地層)が形成されている。この磁気ディスクにおいて、磁 性層以外は、全て非磁性体カゝらなる層である。この実施例においては、磁性層及び 保護層、保護層及び潤滑層は、それぞれ接した状態で形成されている。
[0188] すなわち、まず、スパッタリングターゲットとして、 Al—Ru (アルミニウム一ルテニウム )合金 (Al: 50at%、 Ru: 50at%)を用いて、磁気ディスク用ガラス基板上に、膜厚 30 nmの Al—Ru合金カゝらなるシード層をスパッタリングにより成膜した。次に、スパッタリ ングターゲットとして、 Cr—W (クロム—タングステン)合金(Cr: 80at%、 W: 20at%) を用いて、シード層 5上に、膜厚 20nmの Cr—W合金からなる下地層をスパッタリン グにより成膜した。次いで、スパッタリングターゲットとして、 Co— Cr— Pt— Ta (コバ ルト—クロム—プラチナ—タンタル)合金(Cr: 20at%、 Pt: 12at%、 Ta: 5at%、残 部 Co)力もなるスパッタリングターゲットを用いて、下地層上に、膜厚 15nmの Co— C r—Pt—Ta合金力もなる磁性層をスパッタリングにより形成した。
[0189] 次に、磁性層上に水素化炭素力もなる保護層を形成し、さらに、 PFPE (パーフロロ ポリエーテル)からなる潤滑層をディップ法で成膜した。保護層は、磁気ヘッドの衝撃 力も磁性層を保護する作用を奏する。このようにして、磁気ディスクを得た。
[0190] 得られた磁気ディスクを用い、浮上量が 10nmのグライドヘッドによりグライド検査を
行ったところ、衝突する異物等は検出されず、安定した浮上状態を維持することがで きた。また、この磁気ディスクを用いて、 700kFCIで記録再生試験を行ったところ、十 分な信号強度比(SZN比)を得ることができた。また、信号のエラーは確認されなか つた o
[0191] さらに、 1平方インチ当り 60ギガビット以上の情報記録密度を必要とする「1インチ型 ハードディスクドライブ」に搭載して駆動させたところ、特に問題なく記録再生を行うこ とができた。すなわち、クラッシュ障害ゃサーマルアスペリティ障害は発生しな力つた
[0192] また、前述の工程により得た比較例 1及び比較例 2の磁気ディスク用ガラス基板に ついても、前述の実施例 3と同様に、磁気ディスクを作成した。
[0193] そして、実施例 1及び実施例 2の磁気ディスク用ガラス基板を用いて作成された磁 気ディスクと、比較例 1及び比較例 2の磁気ディスク用ガラス基板を用いて作成された 磁気ディスクとについて、ロードアンロード耐久性について試験を行った。このロード アンロード耐久性試験についての結果を、〔表 2〕に示す。
[0194] 前述の実施例 1の磁気ディスク用ガラス基板については、磁気ディスクとして構成し た後のロードアンロード耐久性は、 60万回以上であり、充分な耐久性となっているこ とが確認された。
[0195] 前述の実施例 2の磁気ディスク用ガラス基板についても、磁気ディスクとして構成し た後のロードアンロード耐久性は、 50万回であり、充分な耐久性となっていることが 確認された。
[0196] 前述の比較例 1の磁気ディスク用ガラス基板については、磁気ディスクとして構成し た後のロードアンロード耐久性は、 30万回以上であり、充分な耐久性を有しないこと が確認された。
[0197] なお、前述の比較例 2の磁気ディスク用ガラス基板にっ ヽては、磁気ディスクとして 構成した後のロードアンロード耐久性は、 60万回以上と充分な耐久性を有して 、る 力 この比較例 2は、外径が 65mmの磁気ディスクの例であり、表面粗さ等の測定個 所は中心からの距離が 14. 5mm、 22. Omm及び 30. 6mmの箇所であるので、外 径を 27. 4mmとした場合につ!、ての比較はできな!、。
[0198] [第 2実施例]
次に本発明に係る第 2実施例を説明する。
[0199] 第 2実施例においては、第 1実施例よりも更に小径の磁気ディスク用基板を用いた 。磁気ディスク用基板の作成、磁気ディスク用基板に対するテクスチャ加工および磁 気ディスクの製造については、第 1実施例と実質的に同様である。
[0200] 表 3は、本発明に係る磁気ディスク用基板の算術平均粗さ (Ra)および本発明に係 る磁気ディスクの算術平均粗さ (Ra)を測定半径に応じて測定した結果と、それぞれ の測定半径における TOPを示している。また、表 3では、比較として、表面粗さが異 なる比較例 3および比較例 4の TOPも示している。なお、表 3の TOPにおける 0. 91a tmt 、う値は、測定地における常圧値である。
[0201] [表 3]
[0202] 図 7は、表 3における粗さをグラフにしたものであり、実施例 3、比較例 3、比較例 4に おける磁気ディスク用基板での粗さと磁気ディスクの粗さを示して 、る。ここでの表面 粗さは前述したように原子間力顕微鏡で測定したものである。磁気ディスクの粗さが 磁気ディスク用基板の粗さを反映していることがわかる。すなわち、磁気ディスク用基 板の粗さを粗くすれば、磁気ディスクの粗さも粗くなつている。また、実施例 3におい ては、ある測定半径 (第 1領域)での粗さが、この測定半径よりも内周側の測定半径( 第 2領域)の粗さよりも小さくなつていることがわかる。なお、上記第 1領域は、ディスク 回転開始時または記録,再生開始時に磁気ヘッドが接触する可能性がある領域、す なわち LUL方式にぉ 、て磁気ヘッドが磁気ディスクに導入される領域であってもよ!/ヽ 。これにより、この領域よりも内周側での表面粗さが粗くなる。また、この領域力も内周
側に向力つて段階的または連続的に表面粗さを増大させるようにしてもよい。
[0203] ここで、 TDP (Touch Down Pressure)および TOP (Take Off Pressure)につ!/ヽて説 明する。近年、磁気ディスクの記録密度増加に伴う、磁気ヘッド浮上量の低下から、 磁気ヘッドと磁気ディスクとの接触頻度が増加することが懸念されている。そこで、浮 上特性の評価として TDP測定、 TOP測定が行われて 、る。
[0204] 図 8は TDPZTOP試験の概念図である。 TDP (Touch Down Pressure)とは、ハー ドディスクドライブ内の気圧を徐々に下げていったときに、磁気ヘッドが浮上状態から 摺動状態へ移行したときの気圧の値をいう。 TOP (Take Off Pressure)とは、 TDPと は逆にハードディスクドライブ内の気圧を徐々に上げていったときに、磁気ヘッドが摺 動状態から浮上状態へ移行したときの気圧の値を!、う。浮上状態から摺動状態へ移 行、すなわち磁気ディスクと磁気ヘッドの接触状態は、 AE (Acoustic Emission)セン サの出力を見ることで確認する。実験は気圧コントロールが可能な容器にて行った。
[0205] TDP測定することで、磁気ヘッドの磁気ディスクへの接触しにくさを見ることができ、 TOP測定によって磁気ディスクに接触し、摺動状態となった磁気ヘッドが磁気ディス タカも離れる離れやすさを見ることができる。したがって、 TDP, TOPともに小さいこと が求められ、かつ TDPと TOPの差である Δ Ρが小さいことが望まれる。この Δ Ρが小 さ 、ときに、ヘッド浮上特性が良好であると 、える。
[0206] 図 9は、表 3における TOPをグラフにしたものであり、実施例 3、比較例 3、比較例 4 における TOPを測定半径に応じてプロットしたものになっている。実施例 3と比較して 粗さが小さい比較例 3と、実施例 3を比べると、粗さが小さいため、 TOPがほぼ常圧と なっていることがわかる。比較例 4では、主表面の半径方向においてほぼ同一の粗さ であるため、 TOPが実施例 3と比べて大きな TOP値となっている。特に、 ID側の粗さ 力 S小さ 、ため TOP値がほぼ常圧となって 、る。
[0207] V、ずれの例にお ヽても ID側で TOPが高 、値となって!/、るのは、特に小径の磁気デ イスクにおいては、内周側に行くほど、磁気ディスクと磁気ヘッドの相対先速度が遅く なるので、磁気ヘッドが十分な揚力を得られず、不安定になるためだと考えられる。 そこで、さら〖こ、磁気ディスクと磁気ヘッドの粗さを粗くすることで、 TOPを良好にする ことが考えられる。例えば、磁気ヘッドの粗さを粗くすることが考えられる。この場合、
磁気ヘッドの表面粗さは磁気ディスクのいずれの領域よりも粗くすることが好ましい。
[0208] また、磁気ディスクを記録方向に駆動する駆動部と、再生部と記録部とを備えた磁 気ヘッドと、この磁気ヘッドを前記磁気ディスクに対して相対運動させる手段を有する 磁気記録装置において、磁気ヘッドを NPABスライダーとすることも好ましい。これに より、さらに磁気ヘッドが磁気ディスクに接触 '摺動しにくぐまた接触 '摺動したとして も上昇しやすくなる。さらに、これらを組み合わせることで、磁気ヘッドの浮上特性がよ り良好となる。
[0209] なお、本発明にお 、ては、磁気ディスク用ガラス基板の直径 (サイズ)につ 、ては、 特に限定されるものではない。しかし、本発明は、特に、小径の磁気ディスク用ガラス 基板を製造する場合に優れた有用性を発揮する。ここでいう小径とは、例えば、直径 が 30mm以下の磁気ディスク用ガラス基板である。
産業上の利用可能性
[0210] 本発明は、携帯電話、デジタルカメラ、 PDA,カーナビゲーシヨンなどの携帯用、車 載用機器に搭載できる小型ハードディスクドライブに適用できる。