JP5492276B2 - 磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスク - Google Patents

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本発明は、磁気ディスク装置であるハードディスクドライブ(HDD)に用いられる磁気ディスクに用いられる磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクに関する。
近年、情報記録技術、特に、磁気記録技術は、いわゆるIT産業の発達に伴って飛躍的な技術革新が要請されている。そして、コンピュータ用ストレージとして用いられる磁気ディスク装置であるハードディスクドライブ(HDD)に搭載される磁気ディスクにおいては、磁気テープやフレキシブルディスクなどの他の磁気記録媒体と異なり、急速な情報記録密度の増大化が続けられている。パーソナルコンピュータ装置に収納することのできる情報容量は、このような磁気ディスクの情報記録密度の増大に支えられて、飛躍的に増加している。
このような磁気ディスクは、アルミニウム系合金基板やガラス基板などの基板上に、磁性層等が成膜されて構成されている。そして、ハードディスクドライブにおいては、高速回転される磁気ディスク上に磁気ヘッドを浮上飛行させながら、この磁気ヘッドにより、情報信号を磁化パターンとして磁性層に記録し、また、再生を行なう。
そして、近年、磁気ディスク用の基板として、高強度、かつ、高剛性のガラス基板が注目されている。また、ガラス基板においては、平滑な表面が得られるので、磁気ディスク上を浮上飛行しながら記録再生を行う磁気ヘッドの浮上量を狭隘化することが可能であり、高い情報記録密度の磁気ディスクを得ることができる。
しかしながら、ガラス基板は、脆性材料であり破損する虞れがあるという側面も有している。そのため、従来より、様々なガラス基板の強化方法が提案されている。例えば、ガラス基板に対して、所定の化学強化処理を行なうことにより、十分な強度を得ることができることが知られている。
また、例えぱ、特許文献1に記載されているように、ガラス基板の機械的強度を高める目的で、ガラス基板の端面部に存在する傷を、エッチング処理によって除去する技術が提案されている。
一方、ハードディスクドライブにおいては、近年、記録再生信号のS/N比(Signal Noise Ratio)を向上させて情報記録容量の増大を図るために、磁気ヘッドの再生部に、磁気抵抗効果型素子が用いられている。このような磁気抵抗効果型の再生素子を備える磁気ヘッドにおいては、サーマルアスペリテイ障害が発生し易い。そのため、磁気ディスクにおいては、ディスク基板の主表面のみならず、端面部についても、所定の鏡面状態に仕上げられていることが必要となった。
例えば、特許文献2には、ガラス基板の端面部の表面粗さ(Ra)を、例えば、1μm未満とすることにより、サーマルアスペリテイの原因となるパーティクルの発生を防止することができるディスク基板が記載されている。
特開平7−230621号公報 特開平10−154321号公報
最近、磁気ディスクの情報記録密度は1平方インチ当たり40ギガビット以上に到達するまでに増大している。このため、サーマルアスペリテイ障害を従来の水準以上に抑制することが求められる場合がある。
また、このような高い情報記録密度での記録再生が可能となった結果、比較的小型の磁気ディスクであっても実用上十分な情報を格納できるようになってきた。このため、机上等の静置環境で記録再生させるパーソナルコンピュータ用途のハードディスクドライブ(HDD)の他に、モバイル機器用途の小型ハードディスクドライブが盛んに開発され始めている。このため、信頼性向上のために、ハードディスクドライブを構成する部品について耐衝撃性の向上が求められている。
具体的には、例えば、外径が30mm以下、あるいは、例えば、ディスク厚が0.4mm以下の小型ガラスディスク基板を利用して、カーナビゲーションシステムなどの車載用途、PDA(personal digital assistant:パーソナルデジタルアシスタント)用途、携帯型「MP3」プレイヤ用途、携帯電話用途等の、可搬性を前提としたモバイル用途のハードディスクドライブ(HDD)が検討されている。
これらのモバイル用途のハードディスクドライブの場合では、停止時だけではなく、記録再生時においても持ち運びの衝撃や落下衝撃の存在を前提として部品設計を行う必要が生じた。従って、従来の用途のガラス基板に比ぺて格段に耐衝撃性を向上させた設計とする必要が生じた。具体的には、3000Gの重力加速度を加えた場合であっても、ガラス基板が破損しないように耐衝撃性を設計する必要がある。
ところが、前記特許文献1に記載された技術により製造したガラス基板では、パーソナルコンビュータ装置用のハードディスクドライブの磁気ディスクとしては所望の機械的強度を得ることができても、「モバイル機器」用のハードディスクドライブの磁気ディスクとしては、耐衝撃性が不十分であり、破損する虞れがあることが判明した。
そこで、本発明は、前述のような「モバイル機器」用のハードディスクドライブにおいて特に深刻となる耐衝撃性の不足を解消するとともに、高い情報記録密度が実現できる磁気ディスク用ガラス基板を実現するために提案されたものである。
すなわち、本発明は、1平方インチ当たり40ギガビット以上のような高記録密度での使用に供される磁気ディスクとして構成しても、サーマルアスぺリテイ障害を起こすことがなく、また、耐衝撃性に優れた磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、例えば、いわゆる携帯電話、デジタルカメラ、携帯型の「MP3プレイヤー」、PDAなどの携帯情報機器、あるいは、「カーナビゲーションシステム」などの車載用機器など、非常に可搬性の高い機器に搭載できるように、例えば、外径が30mm以下のような小型の磁気ディスクとして構成しても、十分な耐衝撃性が得られ、サーマルアスぺリテイ障害もなく、安定した動作を実現できる磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを提供することを第2の目的とする。
本発明者は、前記課題を解決すべく研究を進めた結果、磁気ディスク用ガラス基板において、研削加工により円盤状に仕上げられたガラスディスクの端面部を鏡面研磨を行うことにより、前記課題が解決できることを見出した。
端面部の鏡面研磨工程、すなわち、メカニカルな研磨方式においては、サーマルアスペリテイ障害を防止できる優れた鏡面品質が得られる一方で、研磨表面にごく微細なクラックを生成させてしまうことが知られている。
研磨中においては、研磨の進行に伴ってガラスが削減され、表面が次第に鏡面状態に研磨されていくが、研磨表面に生成された微細なクラックが表層部(表面下)に徐々に伸展していってしまう場合がある。
したがって、鏡面研磨後の端面部は、表面は鏡面であるが、表層部には、微細なクラックが残留している場合がある。
本発明においては、このようなクラックを除去することにより、「モバイル機器」用のハードディスクドライブに用いても十分な耐衝撃性を有する磁気ディスク用ガラス基板を製造することに成功した。
すなわち、この磁気ディスク用ガラス基板においては、ガラスディスクの端面部の鏡面加工工程は、「鏡面研磨」工程と「化学処理」工程の2つのサブプロセスで構成される。「鏡面研磨」工程では、端面部の表面が鏡面状態とされ、「化学処理」工程では、端面部の表層部に存在するクラックが除去される。ここで、「表層部」とは、端面部の表面下の微小な深さまでの領域のことである。また、クラックを除去する処理とは、凹状の欠陥そのものを除去しないとしても、クラックの底部の先鋭形状を鈍化させることによって実質的にクラック形状ではない形状に変質させることによりクラックを除去する処理を含む。
この化学処理では、ガラスディスクを構成するガラスに対する溶解能が所定の処理液、言い換えると、溶解速度が所定の処理液を用い、この化学処理によって除去されるガラスの量は1μm以下の少量とされているので、この化学処理によって、すでに鏡面研磨工程によって形成されている鏡面状態が乱されることはない。
なお、ガラスに対する溶解能は、ガラスの種類、処理液の組成や濃度や、環境温度などにより変動するが、本発明は、この化学処理を行うときにおいて、ガラスに対する溶解速度が毎分10nm乃至毎分800nmとなる溶解能であるようにすることが好ましい。
発明は以下の構成を有する。
〔構成1〕
端面部が鏡面加工された、磁気抵抗効果型の素子を備える磁気ヘッドと共に用いられる磁気ディスクの基板となる磁気ディスク用ガラス基板であって、端面部は、鏡面研磨工程の後に、ガラス基板を構成するガラスに対して溶解能のある処理液により化学処理された表面を有し、端面部の表面の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下であることを特徴とするものである。
本発明にいう鏡面とは、梨子地状ではなく、平坦平滑な表面のことであって、表面粗さの数値で定義すると、算術平均粗さ(Ra)で100nm以下の表面のことを言う。表面粗さの定義については、日本工業規格(JIS)B0601に準拠するものであり、例えぱ、原子間カ顕微鏡(AFM)によって測定される表面粗さのことを言う。
なお、本発明における磁気ディスク用ガラス基板とは、ディスク状形態のものの他に、中心部に円孔が形成されたドーナツ状の形態のものも含む。ドーナツ状のガラスディスクにおいては、外周側の端面部のみならず、内周側の端面部にも、本発明を適用することができる。
〔構成
構成1を有する磁気ディスク用ガラス基板において、化学処理の後に、化学強化処理がなされていることを特徴とするものである。
〔構成
構成1を有する磁気ディスク用ガラス基板において、化学処理の後に、化学強化処理がなされており、抗折強度が2.2kgf以上であることを特徴とするものである。
〔構成
構成1、または、構成を有する磁気ディスク用ガラス基板において、化学処理の後に、化学強化処理がなされており、耐衝撃性が5000G以上であることを特徴とするものである。
〔構成
構成1乃至構成のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板において、板厚が0.5mm未満であることを特徴とするものである。
〔構成
構成1乃至構成のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板において、リチウムを含有するアルミノシリケートガラスにより構成されていることを特徴とするものである。
〔構成
構成1乃至構成のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板において、主成分として、SiOを58乃至75重量%、Alを5乃至23重量%、LiOを3乃至10重量%、NaOを4乃至13重量%含有するアルミノシリケートガラスで構成されていることを特徴とするものである。
〔構成
構成1乃至構成のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板において、端面部の表層部に、化学処理によって底部の先鋭形状が鈍化された微細クラックを有していることを特徴とするものである。
〔構成
磁気ディスクであって、構成1乃至構成のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に、少なくとも磁性層が成膜されていることを特徴とするものである。
本発明者は、磁気ディスク用ガラス基板の耐衝撃性を「モバイル機器」用のハードディスクドライブに適したものにまで引き上げるために、様々な視点から開発を行なった。例えば、ガラス材料の組成や剛性、化学強化処理の方法、研磨方法、傷、それらの原因など、耐衝撃性を低下させる因子として考えられる要因について一つ一つ丁寧に洗い出し、耐衝撃性試験を繰り返した。
その結果、意外にも、従来は耐衝撃性を低下させる因子とは考えられていなかった端面部の鏡面研磨工程に、その原因の一つがあることを見出した。従来、この工程により端面部が傷のない鏡面状態に仕上げられるので、この工程が耐衝撃性についての問題を生じさせているとは考えられていなかったのである。
1平方インチ当り40ギガビット以上のような高記録密度に供される磁気ディスク用ガラス基板にあっては、優れた鏡面品質の得られるメカニカルな研磨方式以外の方法を開発することは、困難を極めた。そのため、本発明においては、メカニカルな鏡面研磨工程を前提としつつ、この鏡面研磨工程の後に、化学処理を施すことにより、鏡面研磨工程で形成された表層部の微細クラックを除去することとしている。
本発明においては、鏡面研磨工程によって形成された端面部の鏡面状態を保持しながら、表層部の微細クラックを除去するため、化学処理を行うための処理液が備える溶解能は、抑制されたものとする必要がある。処理液の溶解能が過剰であると、端面部の表面粗さが粗大化し、サーマルアスペリティ障害を発生させる虞れが生じてくるからである。
本発明者による検討結果によれば、鏡面研磨工程において生成されるクラックは微細なものなので、ごく弱い溶解能しか有さない処理液であっても、耐衝撃性上問題がなくなる水準までクラックの底部の先鋭形状を鈍化させることができると考えられる。
すなわち、本発明においては、凹状の欠陥そのものをエッチング等により完全に除去せずとも、クラックの底部(先端)の先鋭形状を鈍化させる(例えぱ、鋭利な形状から丸みを帯ぴた形状に変形させる)ことで、クラック形状を除去すれば、十分な耐衝撃性を有する磁気ディスク用ガラス基板を提供できる。
すなわち、本発明においては、端面部が鏡面加工された磁気ディスク用ガラス基板であって、端面部の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下であることにより、「モバイル機器」用のハードディスクドライブにおいて特に深刻となる耐衝撃性の不足を解消するとともに、高い情報記録密度が実現できる磁気ディスク用ガラス基板を実現することができるものである。
また、本発明においては、例えば、研削加工により円盤状に仕上げられたガラスディスクの端面部を鏡面研磨し、その後に、適切な化学処理を行うことにより、「モバイル機器」用のハードディスクドライブにおいて特に深刻となる耐衝撃性の不足を解消するとともに、高い情報記録密度が実現できる磁気ディスク用ガラス基板を実現することができるものである。
すなわち、本発明は、1平方インチ当たり40ギガビット以上のような高記録密度での使用に供される磁気ディスクとして構成しても、サーマルアスぺリテイ障害を起こすことがなく、また、耐衝撃性に優れた磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを提供することができるものである。
また、本発明は、例えば、いわゆる携帯電話、デジタルカメラ、携帯型の「MP3プレイヤー」、PDAなどの携帯情報機器、あるいは、「カーナビゲーションシステム」などの車載用機器など、非常に可搬性の高い機器に搭載できるように、例えば、外径が30mm以下のような小型の磁気ディスクとして構成しても、十分な耐衝撃性が得られ、サーマルアスぺリテイ障害もなく、安定した動作を実現できる磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを提供することができるものである。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、板状ガラスの主表面を研削処理してガラス母材とし、このガラス母材を切断してガラスディスクを切り出し(切削)、このガラスディスクの端面部を研削し、次いで、鏡面研磨及び化学処理を行い、次に、このガラスディスクの主表面に対して少なくとも研磨処理を行い、化学強化処理を行って製造されるものである。
この板状ガラスは、例えば、溶融ガラスを材料として、プレス法やフロート法、または、フュージョン法など、公知の製造方法を用いて製造することができる。これらのうち、プレス法を用いれば、板状ガラスを廉価に製造することができる。
また、本発明において用いるガラスとしては、アモルファスガラスが好ましい。ガラスの材料としては、アルミノシリケートガラスを好ましく挙げることができる。また、このようなアルミノシリケートガラスは、端面部の鏡面研磨において、所定の鏡面品質を得ることができるとともに、化学処理において、処理液を好ましく作用させることができるからである。特に、リチウムを含有するアルミノシリケートガラスが好ましい。
このようなアルミノシリケートガラスの組成比としては、SiOを、58乃至75重量%、Alを、5乃至23重量%、LiOを、3乃至10重量%、NaOを、4乃至13重量%、主成分として含有することが好ましい。
さらに、アルミノシリケートガラスの組成比としては、SiOを、62乃至75重量%、Alを、5乃至15重量%、LiOを、4乃至10重量%、NaOを、4乃至12重量%、ZnOを、5.5乃至15重量%、主成分として含有するとともに、NaOとZnOとの重量比(NaO/ZnO)が0.5乃至2.0、AlとZnOとの重量比(Al/ZnO)が0.4乃至2.5であることが好ましい。
また、ZnOの未溶解物が原因で生じるガラスディスクの表面の突起を無くすためには、モル%表示で、SiOを、57乃至74%、ZnOを、0乃至2.8%、Alを、3乃至15%、LiOを、7乃至16%、NaOを、4乃至14%含有するガラスを使用することが好ましい。
このようなアルミノシリケートガラスは、化学強化処理を施すことによって、抗折強度が増加し、ヌープ硬度にも優れたものとなるので、本発明にとって特に好ましい。
以上のようにして切削加工(切り出し)により得られたガラスディスクの端面部は研削加工により所定の形状に形状加工される。研削には、ダイヤモンド砥石などの研削砥石を用いる。この研削加工により、端面部に所定の面取り面(チャンファー面)が形成される。
端面部の鏡面研磨は、メカニカル研磨方式で行なわれる。メカニカル研磨方式であれば、エッチング方式に比ぺて、平坦、かつ、平滑な鏡面状態を得ることができるので、サーマルアスペリティ障害を良好に防止できるからである。
通常、ガラスディスクは、切削や研削工程によりディスク状(あるいはドーナツ状)とされている。このとき、#100乃至#500程度の粗い砥石を用いて研削を行なうので、端面部には、傷が生成されてしまう。このような傷があると、ガラスディスクの強度が保てないが、鏡面研磨により、この傷を確実に除去することができる。
本発明における端面部の鏡面研磨では、端面部に研磨スラリーを供給し、研磨ブラシ、または、研磨パッドを端面部の表面に接触させながら、この研磨ブラシ、または、研磨パッドとガラスディスクとを、相対的に移動させ、鏡面研磨を行なうことが好ましい。
このように鏡面研磨を行なうことにより、端面部において優れた鏡面品質を実現することができる。研磨スラリーに含有される遊離砥粒としては、平均粒径が0.05μm乃至2μmの微細砥粒を用いる。砥粒としては、酸化セリウム砥粒を用いることができる。研磨手段としては、研磨ブラシ、または、研摩パッドのいずれも好適に用いることができるが、端面部に面取面が形成されている場合には、研磨ブラシを用いると、面取面も確実に鏡面研磨することができるので好ましい。
そして、本発明における化学処理は、鏡面研磨により得られた鏡面品質を乱さないように行なうことが必要である。鏡面品質を乱してしまうと、サーマルアスペリテイ障害を発生させる虞れがあるからである。具体的には、化学処理後の端面部の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で100nmを超えないように、化学処理を行う必要がある。この範囲内で、ガラスディスクを構成するガラスに対して溶解能のある処理液を、ガラスディスクの端面部に接触させればよい。例えぱ、ガラスディスクの端面部に処理液を供給してもよいし、あるいは、ガラスディスクを処理液に浸漬させてもよい。
化学処理の条件としては、具体的には、化学処理により除去されるガラスの取り代が、50nm乃至800nmの範囲内となるようにすればよい。また、ガラスディスクを構成するガラスに対する溶解速度(溶解能)が、例えば、毎分10nm乃至毎分800nmとなる処理液をガラスディスクの端面部に接触させることにより、化学処理を行うことができる。
この化学処理における処理液としては、弗酸、弗化アンモニウム、弗化ナトリウムなど、ガラスディスクを構成するガラスに対して溶解能のある物質を含有する液体を用いることができる。とりわけ、弗酸、弗化ナトリウムを用いるのが好適である。
この化学処理を行う処理漕の材料としては、耐食性に優れた低発塵な材料であればよい。処理槽の材料として耐食性に優れた材料を選定することにより、損傷や発塵を抑制し、もって、サーマルアスぺリティ障害や、ヘッドクラッシュを抑制することができる。この観点からは、石英材が特に好ましいが、ステンレス材、特に、耐食性に優れる、マルチンサイト系、または、オーステナイト系ステンレス材も好ましい。石英材は耐食性に優れるが、高価なので、採算性を考慮して、適宜選択すればよい。
次に、ガラスディスクの主表面を鏡面化する。主表面に鏡面研磨を行うことにより、ガラスディスクの主表面のクラックが除去され、主表面の表面粗さは、例えば、Rmaxで5nm以下、算術平均粗さ(Ra)で0.5nm以下となされる。ガラスディスクの主表面がこのような鏡面となっていれば、このガラスディスクを用いて製造される磁気ディスクにおいて、磁気ヘッドの浮上量が、例えば、10nmである場合であっても、いわゆるクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害の発生を防止することができる。また、ガラスディスクの主表面がこのような鏡面となっていれば、後述する化学強化処理において、ガラスディスクの微細領域において均一に化学強化処理を施すことができ、また、微小クラックによる遅れ破壊を防ぐことができる。
この主表面鏡面研磨は、例えば、ガラスディスクの主表面に、研磨布(例えば、研磨パッド)が貼り付けられた定盤を押圧させ、ガラスディスクの主表面に研磨液を供給しながら、これらガラスディスク及び定盤を相対的に移動させ、ガラスディスクの主表面を研磨することにより行われる。このとき、研磨液には、研磨砥粒を含有させておくとよい。研磨砥粒としては、コロイダルシリカ研磨砥粒を用いることができる。研磨砥粒としては、平均砥粒が10nm乃至200nmの砥粒を用いるとよい。
また、本発明においては、ガラスディスクの端面部を鏡面研磨しているので、パーティクルの発生を抑制することができ、この磁気ディスク用ガラス基板を用いて製造された磁気ディスクにおいて、いわゆるサーマルアスペリティ障害を良好に防止することができるからである。また、端面部が鏡面であれば、化学強化処理を施した場合において、微小クラックによる遅れ破壊を防止できる。端面部の鏡面状態としては、算術平均粗さ(Ra)で100nm以下の鏡面が好ましい。
本発明における化学強化処理としては、公知の化学強化処理方法を用いたものであれば、特に制限されない。ガラスディスクの化学強化処理は、例えば、加熱した化学強化溶融塩に、ガラスディスクを接触させ、ガラスディスクの表層のイオンが化学強化塩のイオンでイオン交換されることによって行われる。
ここで、イオン交換法としては、低温型イオン交換法、高温型イオン交換法、表面結晶化法、ガラス表面の脱アルカリ法などが知られているが、本発明においては、ガラスの徐冷点を超えない温度領城でイオン交換を行う低温型イオン交換法を用いることが好ましい。
なお、ここでいう低温型イオン交換法は、ガラスの徐冷点以下の温度領域において、ガラス中のアルカリイオンをこのアルカリイオンよりもイオン半径の大きいアルカリイオンと置換し、イオン交換部の容積増加によってガラス表層に圧縮応力を発生させ、ガラス表層を強化する方法のことをさす。
なお、化学強化処理を行なうときの溶融塩の加熱温度は、イオン交換が良好に行われるという観点等から、280°C乃至660°C、特に、300°C乃至400°Cであることが好ましい。
ガラスディスクを溶融塩に接触させる時間は、数時間乃至数十時間とすることが好ましい。
なお、ガラスディスクを溶融塩に接触させる前に、予備加熱として、ガラスディスクを100°C乃至300°Cに加熱しておくことが好ましい。また、化学強化処理後のガラスディスクは、冷却、洗浄工程等を経て、製品(磁気ディスク用ガラス基板)となされる。
また、本発明において、化学強化処理を行うための処理漕の材料としては、耐食性に優れるとともに、低発塵性の材料であれば、特に限定されない。化学強化塩や化学強化溶融塩は酸化性があり、かつ、処理温度が高温なので、耐食性に優れた材料を選定することにより、損傷や発塵を抑制し、もって、サーマルアスペリティ障害や、ヘッドクラッシュを抑制する必要がある。この観点からは、処理漕の材料としては、石英材が特に好ましいが、ステンレス材や、特に耐食性に優れるマルテンサイト系、または、オーステナイト系ステンレス材も用いることができる。なお、石英材は、耐食性に優れるが、高価なので、採算性を考慮して、適宜選択することができる。
本発明における化学強化塩の材料としては、アルカリ金属元素を含有する硝酸塩、例えぱ、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムなどを含有する硝酸塩を用いることが好適である。このような化学強化塩は、ガラス、特に、アルミノシリケートガラスを化学強化処理したときに、磁気ディスク用ガラス基板としての所定の剛性及び耐衝撃性を実現することができるからである。
前述のようにして製造される本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、ディスク厚が0.5mm未満、特に、ディスク厚が0.1mm乃至0.4mmの薄型磁気ディスク用ガラス基板として特に好適である。また、この磁気ディスク用ガラス基板は、ディスクの直径(外径)が30mm以下の小径磁気ディスク用ガラス基板として特に好適である。このような薄型、小径の小型磁気ディスクは、「1インチ型ハードディスクドライブ」、または、「1インチ型ハードディスクドライブ」よりも小型のハードディスクドライブに搭戴されるからである。すなわち、この磁気ディスク用ガラス基板は、「1インチ型ハードディスクドライブ」、または、「1インチ型ハードディスクドライブ」よりも小型のハードディスクドライブに搭戴される磁気ディスク用ガラス基板として好適である。
なお、「1インチ型ハードディスクドライブ」に搭載する磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用ガラス基板の直径は、約27.4mm、ディスク厚は、0.381mmである。また、「0.85インチ型ハードディスクドライブ」に搭載する磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用ガラス基板の直径は、約21.6mmである。
なお、このような小型の磁気ディスクガラス基板は、従来の磁気ディスク用ガラス基板に比ぺて、ディスク厚が薄いという特徴がある。ディスク厚が薄いと、化学強化処理で生じる圧縮応力が小さくなってしまうという問題があるが、本発明においては、端面部を前述のように処理しているので、圧縮応力が小さくなってしまっても、十分な耐衝撃性を得ることができる。この観点からも、本発明は、「モバイル機器」用のハードディスクドライブに搭載するのに好適である。
すなわち、本発明においては、製造される磁気ディスク用ガラス基板の耐衝撃性について、3000Gの加速度を加えた場合であっても破損しないように製造することが好ましい。このように製造することで、耐衝撃性に優れ、「モバイル機器」用のハードディスクドライブに好適な磁気ディスク用ガラス基板を得ることができる。
また、本発明おいて、磁気ディスク用ガラス基板の主表面の表面粗さは、磁気ヘッドが安全に浮止走行でき、また、サーマルアスペリティ障害を生じさせない程度の鏡面であることが好ましい。具体的には、主表面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で0.5nm以下、最大高さ(RMax)で5nm以下の鏡面であることが好ましい。
そして、本発明に係る磁気ディスクにおいて、磁気ディスク用ガラス基板上に形成される磁性層としては、例えば、コバルト(Co)系強磁性材料からなるものを用いることができる。特に、高い保磁力が得られるコバルト−プラチナ(Co−Pt)系強磁性材料や、コバルト−クロム(Co−Cr)系強磁性材料からなる磁性層として形成することが好ましい。なお、磁性層の形成方法としては、スバッタリング法(DCマグネトロンスパッタリング法)を用いることができる。
また、ガラス基板と磁性層との間に、適宜、下地層等を介挿させることが好ましい。これら下地層の材料としてはAl−Ru系合金や、Cr系合金などを用いることができる。
また、磁性層上には、磁気ヘッドの衝撃から磁性層を防護するための保護層を設けることができる。この保護層としては、硬質なアモルファス炭素層や水素化炭素保護層を好ましく用いることができる。保護層の成膜方法としては、例えば、プラズマCVD法を用いることができる。
さらに、この保護層上に、PFPE(パーフルオロポリエーテル)化合物からなる潤滑層を形成することにより、磁気ヘッドと磁気ディスクとの干渉を緩和することができる。この潤滑層は、例えば、ディップ法により、塗布成膜することにより形成することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、具体的に説明する。なお、本発明は、これら実施例の構成に限定されるものではない。
〔実施例1(磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の実施例)〕
以下に述べる本実施例における磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、以下の(1)乃至(6)の工程からなる。
(1)粗研削工程
(2)端面部研削加工工程
(3)精研削工程
(4)端面部鏡面加工工程
(4−1)端面部鏡面研磨工程
(4−2)端面部化学処理工程
(5)主表面鏡面加工工程
(6)化学強化工程
まず、アモルファスのアルミノシリケートガラスを切り出し(切削)して、ディスク状のガラス母材を用意した。このアルミノシリケートガラスは、リチウムを含有している。このアルミノシリケートガラスの組成は、SiOを、63.6重量%、Alを、14.2重量%、NaOを、10.4重量%、LiOを、5.4重量%、ZnOを、6.0重量%、Sbを、0.4重量%含むものである。
(1)粗研削工程
上記のディスク状のガラス母材を用いて、直径28.7mm、厚さ0.6mmの円盤状のガラスディスクを得た。
具体的には、始めに粒度#400のアルミナ砥粒を用い、荷量を100kg程度に設定して、サンギアとインターナルギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラスディスクの両面を、面精度0乃至1μm、表面粗さ(Rmax)6μm程度に研削した。
(2)端面部研削加工工程(形状加工工程)
この端面部研削加工工程は、研削砥石を用いて、ガラスディスクに外周側端面部と内周側端面部とを作成する工程である。
この端面部研削加工工程においては、円筒状の砥石を用いて、ガラスディスクの中央部分に直径6mmの孔を形成するとともに、外周端面部の研削をして、直径を27.5mmとした後、外周端面部及び内周端面部に所定の面取り加工を施した。この形状加工工程で用いる研削砥石は、砥粒を#400とした。そして、ガラスディスクの端面部の表面粗さを、Rmaxで4μm程度とした。この段階では、端面部の表面には、研削砥石による加工により、小さな傷が付いている状態であった。
(3)精研削工程
次に、砥粒の粒度を#1000に替え、ガラスディスクの主表面を研削することにより、主表面の表面粗さを、Rmaxで2μm程度、Raで0.2μm程度とした。
この精研削工程を行うことにより、主表面に形成された微細な凹凸形状を低減させることができる。
このような精研削工程を終えたガラスディスクを、超音波を印加した中性洗剤及び水の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄を行なった。
(4)端面部鏡面加工工程
(4−1)端面部鏡面研磨工程
次いで、ガラスディスクの端面部について、ブラシ研磨により、ガラスディスクを回転させながら、ガラスディスクの端面部(内周端面部及び外周端面部)の表面の粗さを、Raで30nm程度に鏡面研磨した。
すなわち、研磨スラリーをガラスディスクの端面部に噴霧して供給しながら、ナイロン樹脂毛が配設された軸付研磨ブラシをガラスディスクの端面部に当接させ、研磨ブラシの回転軸とガラスディスクとを互いに逆方向に回転させることにより、端面部のブラシ研磨を行い、鏡面研磨を実行した。このとき、研磨スラリーに含有される遊離砥粒として、平均粒径が1μmの酸化セリウム砥粒を使用した。この端面部鏡面研磨工程では、形状加工工程における研削加工により端面部に生じた傷を確実に取り除くため、ガラスの取り代を、例えば、20μm乃至50μm程度とした。この端面部鏡面研磨工程により、端面部の表面は鏡面状態となり、その表面粗さは、Raで30nmであった。
(4−2)端面部化学処理工程
次に、端面部の化学処理を行なった。具体的には、弗酸水溶液(0.5重量%)を処理液とし、この処理液にガラスディスクを2分間浸漬させた。処理槽は、マルチンサイト系の耐食性ステンレス合金材料からなるものを用いた。
この化学処理において、ガラスディスクを構成するアルミノシリケー卜ガラスに対する処理液の溶解能を溶解速度で表現すると、毎分50nmである。また、この化学処理において除去されるガラスの取り代は、100nmである。
この化学処理の後に、ガラスディスクの端面部を分析したところ、鏡面状態であった。すなわち、この端面部鏡面加工工程により、ガラスディスクの端面部は、パーティクル等の発塵を防止できる状態に加工された。また、端面部の表面粗さは、Raで40nmであり、化学処理前後で表面粗さの変化は僅かであった。
なお、端面部鏡面加工工程後にガラスディスクの直径を測定したところ、27.4mmであった。
(5)主表面鏡面加工工程
両面研磨装置を用いて、ガラスディスクの主表面鏡面研磨加工を行なった。両面研磨装置においては、研磨パッドが貼り付けられた上下定盤の間にキャリアにより保持したガラスディスクを密着させ、このキャリアをサンギアとインターナルギアとに噛合させ、このガラスディスクを上下定盤によって挟圧する。その後、研磨パッドとガラスディスク主表面との間に研磨スラリーを供給して回転させることによって、ガラスディスクが定盤上で自転しながら公転して両面を同時に研磨加工されものである。研磨キャリアの保持孔は、ガラスディスクの端面部が傷つかない部材で構成した。
研磨スラリーに含有される遊離砥粒としては、酸化セリウム研磨砥粒を用いた。平均粒径を段階的に減少させることにより、高品質の鏡面状態に仕上げた。主表面鏡面研磨加工を終えたガラスディスクの主表面を分析したところ、鏡面状態であった。表面粗さはRaで0.5nm、RMaxで5nm程度であった。
(6)化学強化工程
ガラスディスクに化学強化を施した。化学強化は、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとを混合した化学強化用硝酸塩を用意し、340°C乃至380°Cに加熱して溶融塩とし、ガラスディスクを約2時間乃至4時間浸漬し、イオン交換を行なうことで、化学強化処理を行なった。
化学強化を終えたガラス基板を洗浄し乾燥した。
以上のようにして磁気ディスク用ガラス基板を製造した。そして、外周の直径が27.4mm、内周の直径が7mmの「1インチ型」ハードディスクドライブに搭載するための磁気ディスク用ガラス基板が製造されたことが確認された。
〔検査・試験結果〕
磁気ディスク用ガラス基板の主表面及び端面部について、目視検査を行い、さらに、光の反射、散乱及び透過を利用した精密検査を実施した。その結果、磁気ディスク用ガラス基板の主表面及び端面部には、突起や傷、クラックや異物等の欠陥は全く発見されなかった。サーマルアスペリティ障害の原因となる異物も全く発見されなかった。
また、前述のような工程を経て得られた得られた磁気ディスク用ガラス基板の外周側の端面部と内周側の端面部とを、光学顕微鏡、電子顕微鏡、原子間カ顕微鏡(AFM)を用いて、精密に分析した。その結果、清浄な鏡面状態であり、表面粗さは、Raで40nmであった。傷や微細なクラック等も全く確認されなかった。
さらに、この磁気ディスク用ガラス基板の主表面の表面粗さは、原子間カ顕微鏡(AFM)によって測定したところ、Rmaxで2.5nm、Raで0.30nmと、超平滑な鏡面となっていることが確認された。
なお、表面粗さの数値は、AFM(原子間力顕微鏡)によって測定した表面形状について、日本工業規格(JIS)B0601にしたがって算出したものである。
また、得られた磁気ディスク用ガラス基板は、内径が7mm、外径が27.4mm、板厚は0.381mmであり、「1インチ型」ハードディスクドライブに用いる磁気ディスク用ガラス基板の所定寸法であることを確認した。
〔強度測定及び耐衝撃試験〕
得られた磁気ディスク用ガラス基板について、強度測定を行なった。この磁気ディスク用ガラス基板の内径部分に、直径10mmの鋼球を置き、外周を保持した状態で、鋼球を毎分3mmの速度で押し下げて、磁気ディスク用ガラス基板が破壊したときの荷重を測定した。その結果、2.2kgfの荷重を加えるまで、破壊しなかった。なお、強度測定には、島津製作所製「オートグラフAG−I5kN」を用いた。
次に、この磁気ディスク用ガラス基板の耐衝撃性試験を行なった。得られた磁気ディスク用ガラス基板に、様々な撃力を加え、磁気ディスク用ガラス基板が破壊したときの撃力を量力加速度に換算して耐衝撃性を分析した。その結果、5000G(1Gは、9.8m/sec)の加速度にも破損せず、耐久した。
〔実施例2(磁気ディスクの製造方法の実施例)〕
次に、以下の工程を経て、磁気ディスクを製造した。
前述の工程により得た磁気ディスク用ガラス基板の両主表面に、静止対向型のDCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、Al−Ru合金のシード層、Cr−W合金の下地層、Co−Cr−Pt−Ta合金の磁性層、水素化炭素保護層を順次成膜した。シード層は、磁性層の磁性グレインを微細化させる作用を奏し、下触層は、磁性層の磁化容易軸を面内方向に配向きせる作用を奏する。
この磁気ディスクは、非磁性基板である磁気ディスク用ガラス基板と、この磁気ディスク用ガラス基板上に形成された磁性層と、この磁性層上に形成された保護層と、この保護層上に形成された潤滑層とを少なくとも備えて構成される。
そして、磁気ディスク用ガラス基板と磁性層との間には、シード層及び下地層からなる非磁性金属層(非磁性下地層)が形成されている。この磁気ディスクにおいて、磁性層以外は、全て非磁性体からなる層である。この実施例においては、磁性層及び保護層、保護層及び潤滑層は、それぞれ接した状態で形成されている。
すなわち、まず、スパッタリングターゲットとして、Al−Ru(アルミニウム−ルテニウム)合金(Al:50at%、Ru:50at%)を用いて、磁気ディスク用ガラス基板上に、膜厚30nmのAl−Ru合金からなるシード層をスパッタリングにより成膜した。次に、スパッタリングターゲットとして、Cr−W(クロム−タングステン)合金(Cr:80at%、W:20at%)を用いて、シード層上に、膜厚20nmのCr−W合金からなる下地層をスパッタリングにより成膜した。シード層は、磁性層の磁性グレインを微細化させる作用を有し、下地層は、磁性層の磁化容易軸を面内方向に配向させる作用を有している。
次いで、スパッタリングターゲットとして、Co−Cr−Pt−B(コバルト−クロム−プラチナ−ボロン)合金(Cr:20at%、Pt:12at%、B:5at%、残部Co)からなるスパッタリングターゲットを用いて、下地層上に、膜厚15nmのCo−Cr−Pt−B合金からなる強磁性層をスパッタリングにより形成した。
次に、プラズマCVD法により、磁性層上にアモルファス水素化炭素からなる保護層を形成し、さらに、PFPE(パーフロロポリエーテル)からなる潤滑層をディップ法で成膜した。保護層は、磁気ヘッドの衝撃から磁性層を保護する作用を奏する。このようにして、磁気ディスクを得た。
得られた磁気ディスクを用い、1平方インチ当り40ギガビット以上の情報記録密度を必要とする「1インチ型ハードディスクドライブ」に搭載し、磁気ヘッドには再生素子が磁気抵抗効果型素子である磁気ヘッドを搭載して駆動させたところ、特に問題なく記録再生を行うことができた。すなわち、クラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害は発生しなかった。
また、得られた磁気ディスクを用い、浮上量が5nmのグライドヘッドによりグライド検査を行ったところ、衝突する異物等は検出されず、安定した浮上状態を維持することができた。
さらに、この磁気ディスクについて、ロードアンロード耐久性試験を行なったところ、良好な耐久性を示した。
なお、本発明においては、磁気ディスク用ガラス基板の直径(サイズ)については、特に限定されるものではない。しかし、本発明は、特に、小型の磁気ディスク用ガラス基板を製造する場合に優れた有用性を発揮する。ここでいう小型とは、例えば、直径が30mm以下の磁気ディスク用ガラス基板である。
すなわち、例えば、直径が30mm以下の小型の磁気ディスクは、いわゆる「カーナビゲーションシステム」などの車載用機器や、いわゆる「PDA」や携帯電話端末装置などの携帯用機器における記憶装置において用いられ、固定されて使用される機器における通常の磁気ディスクに比較して、高い耐久性や耐衝撃性が要求されるからである。
〔実施例3〕
前述の実施例1において、(4−2)端面部化学処理工程の処理条件を様々に変更して、磁気ディスク用ガラス基板及ぴ磁気ディスクを製造した。処理条件を以下の〔表1〕に示す。
この実施例3における磁気ディスク用ガラス基板について実施例1と同様に検査、試験を行ったところ、端面部及び主表面ともに、突起や傷、クラックや異物等の欠陥やサーマルアスぺリティ障害の原因となる異物は全く発見されなかった。また、同様に端面部及び主表面の表面状態を調査したところ、実施例1の磁気ディスク用ガラス基板と同様の鏡面状態であり、傷や微細なクラックは存存しなかった。
強度試験を実施例1と同様に行ったところ、2.2kgf乃至2.4kgfの荷重を加えるまで破壊しなかった。
耐衝撃試験を実施例1と同様に行ったが、実施例1と同様に、5000Gの加速度にも破壊せず、優秀な耐衝撃性を発揮した。
さらに、実施例3で得られた磁気ディスク用ガラス基板を用いて実施例2と同様に磁気ディスクを製造したところ、実施例2の結果と同様に、クラッシュ障害やサーマルアスぺリティ障害は発生せず、問題なく記録再生を行うことができた。グライト検査結果及びロードアンロード耐久性試験の結果も、ほぼ実施例2の結果と同様の優秀な結果であった。
Figure 0005492276
〔比較例〕
(比較例1)
実施例1における端面部化学処理工程において、処理液への浸漬時間を延ぱし、ガラスの除去量(取りしろ)を3000nmとしたところ、端面部の表面が梨子地状の表面状態となった。
また、この磁気ディスク用ガラス基板を用いて磁気ディスクを製造したところ、サーマルアスぺリティ障害が発生した。
これは、端面部の表面状態が鏡面状ではなく、梨子地状とされていることが原因であると考えられる。
(比較例2)
比較例2−1として、実施例1における端面部化学処理工程を行わない磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
また、比較例2−2として、実施例1における端面部鏡面研磨工程を行わない磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
さらに、比較例2−3として、実施例1における端面部鏡面研磨工程と端面部化学処理工程との順番を入れ替え、まず、端面部化学処理を行い、次に端面部鏡面研磨を行って製造した磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
その結果、比較例2−1においては、端面部の表面状態は鏡面であったが、耐衝撃試験において、3000Gで破損するものが確認された。これは、端面部の表層部に微小なクラックが残留していたことが原因であると考えられる。
また、比較例2−2においては、端面部鏡面研磨工程を経ていないので、端面部の表面が梨子地状の表面状態となった。また、この磁気ディスク用ガラス基板を用いて磁気ディスクを製造したところ、サーマルアスペリティ障害が発生した。これは、端面部の表面状態が鏡面状ではなく、梨子地状とされていることが原因であると考えられる。
さらに、比較例2−3においては、端面部の表面状態は鏡面であったが、耐衝撃試験において、3000Gで破損するものが確認された。これは、端面部の表層部に微小なクラックが残留していたことが原因であると考えられる。
本発明は、磁気ディスク装置であるハードディスクドライブ(HDD)に用いられる磁気ディスクに用いられる磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクに適用される。

Claims (9)

  1. 端面部が鏡面加工された、磁気抵抗効果型の素子を備える磁気ヘッドと共に用いられる磁気ディスクの基板となる磁気ディスク用ガラス基板であって、
    前記端面部は、鏡面研磨工程の後に、前記ガラス基板を構成するガラスに対して溶解能のある処理液により化学処理された表面を有し、
    前記端面部の表面の算術平均粗さ(Ra)が100nm以下である
    ことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板。
  2. 前記化学処理の後に、化学強化処理がなされている
    ことを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板。
  3. 前記化学処理の後に、化学強化処理がなされており、抗折強度が2.2kgf以上である
    ことを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板。
  4. 前記化学処理の後に、化学強化処理がなされており、耐衝撃性が5000G以上である
    ことを特徴とする請求項1、または、請求項3記載の磁気ディスク用ガラス基板。
  5. 板厚が0.5mm未満である
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板。
  6. リチウムを含有するアルミノシリケートガラスにより構成されている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板。
  7. 主成分として、SiOを58乃至75重量%、Alを5乃至23重量%、LiOを3乃至10重量%、NaOを4乃至13重量%含有するアルミノシリケートガラスで構成されている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板。
  8. 前記端面部の表層部に、前記化学処理によって底部の先鋭形状が鈍化された微細クラックを有している
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板。
  9. 請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に、少なくとも磁性層が成膜されている
    ことを特徴とする磁気ディスク。
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