明 細 書
インジウム含有メタルの製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、 ITO薄膜製造時に飛散した ITOの回収物、廃棄 ITOターゲット、 ITOを 含むスクラップ等を溶解してなるインジウム含有溶液から、インジウムを高純度で含む インジウム含有メタルを製造する方法に関する。
背景技術
[0002] インジウムは、光学材料、光電子材料、化合物半導体、ろう材等各種の分野で活用 されている金属であり、最近では、液晶ディスプレイ (LCD)、プラズマディスプレイ (P DP)などの電極材料原料などとして広く利用されて 、るが、インジウムは高価である ため、インジウムを含む回収物や廃棄物など力 インジウムを再利用することが求め られている。
[0003] インジウム—スズ酸ィ匕物 (ITO)からなる ITO薄膜は、高い導電性と可視光透過性を 併せ持つため、太陽電池や液晶表示デバイス、タツチパネル、窓ガラス用結露防止 発熱膜等、様々な透明導電膜用途に用いられている。
[0004] ITO薄膜を製造する方法としては、スパッタリング、真空蒸着、ゾル 'ゲル法、クラス タービーム蒸着、 PLD等の方法を挙げることができる。中でもスパッタリング法は、大 面積基板上に低抵抗な薄膜を比較的低温で作製できるため工業的に広く用いられ ている。
[0005] スパッタリング法によって ITO薄膜を製造する場合、酸化インジウムと酸化スズとの 混合物を焼結して得られる ITO焼結体をターゲットとしてプラズマ等を照射して ITO をスパッタさせ、基板上に ITO薄膜を蒸着形成するのが一般的である。この際、スパ ッタさせた ITOが基板上に蒸着せず、周囲に飛散する ITOが発生するため、飛散し た ITOを塩酸などの酸で溶解してインジウム'スズ含有酸溶液とし、このインジウム'ス ズ含有酸溶液からインジウムおよびスズを回収して再び ITO原料等として再利用する ことが求められている。
[0006] この種のインジウム含有物からインジウム (In)を回収する方法としては、従来、酸溶
解法、イオン交換法、溶媒抽出法等の湿式精製を組み合わせた方法が知られている ほか、新たな方法が幾つ力提案されている。
[0007] 例えば、下記特許文献 1には、 Inのほ力に不純物として Sn、 Pb、 Cu、 Agを含む In 電解スライムを塩酸で浸出し、アルカリ剤で pHO. 5〜2. 0に調整した後、不溶解残 渣を分離し、次いで還元剤を添加し、生成した沈澱物を分離後、還元剤を添加して 電解用粗インジウムを回収する方法が開示されている。
[0008] 下記特許文献 2には、 Inのほかに不純物として As及び Mnを含む In含有物に、過 酸化水素水及び硫酸を添加して金属塩を溶解し、その後アルカリ剤を添加して pH4 . 5〜6. 0に調整し、次いで濾過処理して As及び Inが共存する沈澱物を得ると共に 中和後液に Mn、 Znを移行させ、その後前記沈澱物から Asを除去することを特徴と するインジウムの回収方法が開示されている。
[0009] 下記特許文献 3には、インジウム含有塊状物を粉砕処理し、該粉砕物を過酸化水 素の存在下で酸性水溶液中で浸出処理し、該浸出液中にアルミニウム板を浸して置 換反応によりアルミニウム板上にスポンジインジウムを析出させ、次 ヽで該スポンジィ ンジゥムをアルカリ熔铸してインジウムメタルを得るインジウムの回収方法が開示され ている。
[0010] 下記特許文献 4には、インジウムを含有する塩酸溶液を溶媒和抽出型の抽出剤で 抽出し、次にこれを希酸で逆抽出して回収したインジウム溶液を電解採取する力、或 いは中和して水酸ィ匕物とし、カーボン若しくは水素により還元するか又は硫酸で溶解 し電解してインジウムを回収する方法が開示されて ヽる。
[0011] 下記特許文献 5には、 ITOインジウム含有スクラップを塩酸で溶解して塩化インジゥ ム溶液とする工程、該塩化インジウム溶液に水酸ィ匕ナトリウム水溶液を添加してスクラ ップ中に含有する錫を水酸ィ匕錫として除去する工程、該水酸ィ匕錫を除去した後液か ら亜鉛によりインジウムを置換、回収する工程カゝらなることを特徴とするインジウムの 回収方法が開示されて!、る。
特許文献 1:特開平 5 - 156381号公報
特許文献 2:特開平 5 - 311267号公報
特許文献 3:特開平 9 - 268334号公報
特許文献 4:特開 2002— 201026号公報
特許文献 5 :特開 2002— 69544号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0012] 本発明は、 ITO薄膜製造時に飛散したインジウムを回収して得られるインジウム含 有物を酸などで溶解して得られるインジウム含有溶液を出発原料とする場合に、イン ジゥムを効率良く高収率で得ることができる新たなインジウム含有メタルの製造方法 を提供せんとするものである。
課題を解決するための手段
[0013] カゝかる課題を解決するため、本発明者らは、インジウム含有溶液に沈澱剤を混合し 、インジウムを沈澱させて回収する方法を選択した。かかる方法であれば、より少ない 操作でインジウム含有メタルを得ることが可能となるからである。
[0014] 一方、このような簡易な方法では、このインジウムを沈澱させる際、できるだけ不純 物が沈澱物中に同伴しないようにすることが必要となる。そこで本発明者らは、インジ ゥム含有溶液からインジウムを沈澱させる際に不純物の同伴を極力抑制させることが 可能な沈澱剤につき検討を行ない、その結果、シユウ酸が特にインジウムの分離能 に優れて ヽることを見出し、本発明を想到したものである。
[0015] すなわち、本発明は、インジウムを含有するインジウム含有溶液からインジウム含有 メタルを製造する方法であって、インジウム含有溶液に、沈澱剤としてシユウ酸を混合 することによりシユウ酸インジウムの沈澱物を生成させる工程と、前記シユウ酸インジゥ ムの沈澱物を固液分離により回収する工程とを有するインジウム含有メタルの製造方 法を提案するものである。
[0016] 上記の如く回収して得たシユウ酸インジウムの沈澱物は、そのまま、或いは必要に 応じてアンモニア又はアンモニア及び水酸ィ匕アルカリと接触させた後、焙焼してイン ジゥム含有メタルとすることができる。
[0017] また、上記の如く回収して得たシユウ酸インジウムの沈澱物を酸に溶解して酸溶解 液とした後、この酸溶解液中に金属を入れて当該金属との置換反応によりスポンジィ ンジゥムを生成させ、このスポンジインジウムからインジウム含有メタルとすることもでき
る。なお、この際、回収して得たシユウ酸インジウムの沈澱物を、インジウムが溶解さ れない液体に浸漬させて、後の置換析出工程で金属表面に不動態を形成する原因 となるイオンを該液体中に溶解させ、この溶解液を除去する不動態形成原因イオン 洗浄処理を 1回以上行った後、この不動態形成原因イオン洗浄処理で得られた洗浄 処理済物を酸に溶解させて酸溶解液とし、そしてこの酸溶解液中に金属を入れて当 該金属との置換反応によりスポンジインジウムを生成させ、このスポンジインジウムか らインジウム含有メタルとすることもできる。
[0018] このようなインジウム含有メタルの製造方法によれば、 ITOターゲット等の各種イン ジゥム含有スクラップをインジウム含有溶液として、或いは、インジウムを含む廃洗浄 液等を出発原料として効率的にインジウム含有メタルを製造することができるば力りか 、不純物の同伴を抑制してインジウムを高純度で含有するインジウム含有メタルを製 造することができる。
[0019] インジウムは、 LCD、 PDPの普及に伴いその使用量が増大すると共に、材料コスト の高騰ィ匕が注目されている材料である。従って、本発明は、インジウムの有効利用を 通じて材料コストの低減、ひ ヽてはこれらデバイスの低価格ィ匕を図ることもできる。
[0020] なお、本発明にお 、て「インジウム含有メタル」とは、金属塊状のインジウム含有物( インジウム純度 80質量%以上、好ましくは 90質量%以上)の意味であり、酸化インジ ゥムも包含する意である。
図面の簡単な説明
[0021] [図 1]実施例 1〜18及び比較例 1〜5におけるインジウム回収の工程を説明するフロ
[図 2]実施例 19〜27におけるインジウム回収の工程を説明するフロー。
[図 3]析出直後の沈澱物 (a)、接触処理後の沈澱物 (b)、焙焼後の酸化インジウム (c )の X線回折パターンを示す図。
発明を実施するための形態
[0022] 以下、実施形態に基づいて本発明を説明するが、本発明が下記実施形態に限定 されるものではない。
(第 1実施形態)
第 1実施形態に係るインジウム含有メタルの製造方法は、次の工程を経てインジゥ ム含有メタルを製造することを特徴とする。
[0023] インジウム含有溶液に、沈澱剤としてシユウ酸を加えて混合することによりシユウ酸ィ ンジゥムの沈澱物を生成させる工程 (;シユウ酸インジウム沈澱工程)、
前記シユウ酸インジウムの沈澱物を固液分離により回収する工程(;沈澱物回収ェ 程)、
必要に応じて、回収した沈澱物を、アンモニア又はアンモニア及び水酸ィ匕アルカリ と接触させる工程 (:アルカリ接触工程)、
その後、回収した沈澱物を焙焼する工程(;焙焼工程)、
これらの工程を経てインジウム含有メタルを製造する。
[0024] 以下、本実施形態につき詳細に説明する。
(原料:インジウム含有溶液)
本実施形態に用いる原料はインジウムを含有するインジウム含有溶液である。
[0025] このインジウム含有溶液としては、 ITO、インジウム合金のスクラップや LCD、 PDP のスクラップを酸で溶解させた溶液の他、インジウムを含有する半導体を酸洗浄した 溶液等、インジウムを含む溶液であれば特に限定されるものではな 、。
[0026] 尚、このインジウム含有スクラップ等を溶解する酸としては、硝酸、フッ化水素酸、塩 酸、硫酸等が考えられ、これらの酸による硝酸系インジウム溶液、フッ酸系インジウム 溶液、塩酸系インジウム溶液等が対象となる。
[0027] インジウム含有溶液中には不純物が含まれていても良い。このとき不純物の含有量 は溶液中のインジウムに対して 0. 1重量%以上の不純物を含有するものであっても 良ぐ 1重量%以上、 5重量%以上、 10重量以上%、更には 20重量%以上と大量に 不純物を含有するインジウム水溶液に対しても適用可能である。
[0028] また、インジウム含有溶液は、上記のように、スクラップ、洗浄液に由来するものであ ること力ら、不純物元素としてはアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、銅、鉄、 -ッ ケル、錫、クロム、ケィ素が単独又は複数含まれることが考えられる力 これらの元素 が含まれていても良い。特に、ターゲットのスクラップには錫が含まれているものが多 いと予測されるが、このターゲットから得られるインジウム含有溶液も処理対象とする
ことができる。
(シユウ酸インジウム沈澱工程)、
インジウム含有溶液にシユウ酸を加えて混合することで、不純物を含有するインジゥ ム含有溶液力も選択的にインジウムをシユウ酸インジウムとして沈澱させることができ る。
[0029] 混合させるシユウ酸の形態は、固形状のもの(粉末含む)、水溶液、固形状のものが 分散したスラリー等何れの形態でも適用可能である。固形状のシユウ酸を混合する場 合には、無水和物を混合しても良いが、コスト面力 みれば二水和物の混合が好まし い。
[0030] 但し、シユウ酸インジウムを均一に沈澱させて不純物の巻き込みを抑制するために は、水溶液の状態での混合がより好ましい。シユウ酸を水溶液で添加の場合、水溶 液中のシユウ酸濃度は、飽和濃度より 10%以上低い濃度とすることでシユウ酸水溶 液の液温変動が生じても固形のシユウ酸沈澱物を発生させ難くなる。また、シユウ酸 濃度を余りに低くすると、インジウム回収のためのシユウ酸水溶液量が増大し、排水 量が増加する。以上を鑑みれば、シユウ酸水溶液のシユウ酸濃度は 0. ImoLZL以 上が好ましく 0. 2moLZL以上がより好ましい。
[0031] 尚、混合するシユウ酸として、シユウ酸アンモ-ゥムゃシユウ酸水素アンモ-ゥムを 適用することは、両ィ匕合物共にシユウ酸を含むことから適用可能ではあるが、本発明 者の検討によれば、これらの化合物を用いた場合、インジウム含有溶液との混合後 にインジウム含有溶液中に残留するインジウムの量力 シユウ酸を用いる場合よりも多 くなり、インジウムの回収率が低下することとなるためシユウ酸の適用が好ましい。
[0032] インジウム含有溶液と混合するシユウ酸の混合量 (言 、換えればシユウ酸を加える 量)は、インジウム含有溶液に含まれるインジウム量に対する当量 (理論量ともいう)の 1. 2〜5倍とするのが好ましい。 1. 2倍未満ではインジウムの溶液中の残留量が増 カロして回収率が低下し、 5倍を超えて混合しても回収率の向上に寄与しないからであ る。そして、より好ましい混合量としては、インジウム含有溶液に含まれるインジウム量 に対する当量の 1. 4〜4倍である。尚、シユウ酸のインジウムに対する当量は、インジ ゥム ImoL当たりシユウ酸 1. 5moLである。従って、インジウムに対する当量の 1. 2
〜5倍とは、インジウム ImoL当たりシユウ酸 1. 8〜7. 5moLとなる。
[0033] 本実施形態においては、回収されるインジウムの純度の観点から、シユウ酸混合前 後のインジウム含有溶液の pHの管理を行うことが好ま 、。シユウ酸混合前のインジ ゥム含有溶液の ρΗは 2以下とするのが好ま 、。 pHが 2を超えた状態のインジウム 含有溶液ではインジウムの一部が不純物を同伴した水酸ィ匕物として存在しており、シ ユウ酸と混合して得られるシユウ酸インジウム中の不純物が多くなるからである。また、 シユウ酸混合前のインジウム含有溶液の pHを 2以下とすることで、シユウ酸と混合後 の pHを後述する好適な範囲にすることができる。このインジウム含有溶液の pHはより 低い方が好ましぐ 1. 0以下がより好ましぐ 0. 5以下が特に好ましい。
[0034] 従って、インジウム含有溶液の pHが上記範囲外にある際には、溶液に pH調整を 行うことが好ましい。この pH調整は、インジウム含有溶液に硝酸、塩酸、フッ化水素 酸、硫酸等を添加して pHを低下させる方法が好ましい。但し、 pHを低下させようとし て、あまりに過剰の酸を添加することは好ましくない。過剰の酸濃度が一塩基酸に換 算して 3moLZLを超えるような多量の酸を添加した場合 (硝酸、塩酸、フッ化水素酸 等の一塩基酸では 3moL/L以上、硫酸等の二塩基酸では 1. 5moLZL以上の酸を 添加した場合)、インジウムの回収率が低下することとなる。従って、 pH調整の際に は、酸添力卩量を上記した値を超えないようにして添加するカゝ、これを超えていた場合 には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを添加して酸濃度をこの値以下に調整す ることが好ましい。
[0035] 一方、シユウ酸を混合した後のインジウム含有溶液の pHについては、沈澱物中の 不純物低減の観点から、 1. 0以下にすることが好ましぐ 0. 5以下とより低減すること が更に好ましい。シユウ酸混合後の溶液の pH範囲をかかる範囲とすることは、混合 前の pHを上記した範囲にすることで、容易に達成できる。
[0036] インジウム含有溶液と沈澱剤(シユウ酸)との混合の方法にっ ヽては、インジウム含 有液を攪拌し、これに沈澱剤を添加する方法の他、水溶液又はスラリー状の沈澱剤 を攪拌しつつインジウム含有溶液を添加する方法、 1の槽、容体にインジウム含有溶 液及び沈澱剤を同時に導入する方法があるが何れによっても良い。
[0037] インジウム含有溶液とシユウ酸との混合時間は、 5分〜 24時間とするのが好ましぐ
10分〜 12時間が特に好ましい。 5分未満はシユウ酸インジウムへの不純物の混入量 が増加するおそれがあり、また、 24時間を超えて混合しても不純物低減効果に差異 はなぐ効率が低下するだけだ力 である。
[0038] また、インジウム含有溶液とシユウ酸とを混合する際の液温は、 0〜90°Cの範囲が 好ま 、が、温度調節を行なわな 、常温での混合がエネルギーコストの面力も好まし い。尚、混合時の液温は、ある程度高いほうが不純物の同伴が少なくなり、また、シュ ゥ酸インジウム及び焙焼後の酸化インジウムの粒度にも影響を与え得るが、液温はさ ほど重要ではない。不純物同伴の差異はほとんどなぐまた、粒度の相違についても 、回収される酸化インジウムは更なる高純度化を実施する場合も多いが、このような 場合は溶解後更に精製して酸化インジウム等のインジウム化合物又はインジウム金 属として用いることが想定されて 、る力らである。
[0039] 以上説明したインジウム含有溶液と沈澱剤との混合によりシユウ酸インジウムが沈澱 する。
[0040] ここで、上述したように、本実施形態は、インジウム含有溶液中にアルミニウム等の 不純物が含有して 、る場合にも有用であるが、錫に関しては大部分が沈澱物中に同 伴することがある。このシユウ酸インジウムに同伴する錫については、インジウムの用 途として ITOがあることから、そのまま回収して最終的に酸化インジウム及び酸ィ匕錫と して再生することができる。
[0041] また、かかる場合、本実施形態では、錫を分離しインジウムのみ回収することも可能 である。
[0042] 本実施形態における錫の分離法としては、インジウム含有溶液とシユウ酸との混合 前に、インジウム含有溶液を酸又はアルカリで pHを 0. 5〜4. 0の範囲に調整し、こ れをろ過することで錫が除去することができる。インジウム含有溶液中の錫は、 pHO. 5以上であれば水酸ィ匕物として沈澱することから、これをろ過することで錫の除去が 可能となる。また、 PH4.0を超えると、錫に同伴して沈澱するインジウムの量が増大し 、インジウムの回収率が低下するため好ましくない。尚、この錫除去のための pHの調 整に際し、使用するアルカリとしては、水酸ィ匕ナトリウム又は水酸ィ匕カリウムの添加が 好ましい。同じアルカリであってもアンモニアを添加する場合、シユウ酸添加後のイン
ジゥム含有溶液中のインジウム残留量が増大するからである。
[0043] そして、回収した沈澱物(シユウ酸インジウム)は、インジウムをより高純度で回収す るため洗浄工程により洗浄するのが好ましい。この際の洗浄液としては水又はシユウ 酸水溶液が好ましいが、水は純水、超純水を含み、また、シユウ酸水溶液としては 0. 5moLZL以下の濃度のシユウ酸水溶液が好ま 、。
(アルカリ接触工程)
インジウム含有溶液の原料となるスクラップの種類及び酸の種類によってはインジゥ ム含有溶液中に比較的高濃度の銅が含まれていることがある。この銅は、シユウ酸ィ ンジゥム力 なる沈澱物中に混入しやすぐこの銅は上記した水、シユウ酸水溶液で 洗浄しても除去が困難である。
[0044] そこで、銅が含まれて 、るインジウム含有溶液からの回収工程にぉ 、ては、沈澱物 と、アンモニア又はアンモニア及び水酸化アルカリ(以下、アンモニア等と略するとき がある)とを接触させて銅を除去することがより好ま 、。
[0045] 沈澱物であるシユウ酸インジウム中に混入して 、る銅は、アンモニアと反応すること で銅アンモニア錯イオン(〔Cu(NH ) 〕2+)となり除去可能な状態となる。ここで、この
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反応はシユウ酸インジウムのままでも生じ得るが、本発明で析出したシユウ酸インジゥ ムは結晶性が高ぐその内部に混入する銅に対して反応を進行させることが困難であ る。この接触処理では、アンモニアと、又は、アンモニアと水酸化アルカリと、とシユウ 酸インジウムとを接触させることでシユウ酸インジウムを水酸化インジウムへと変化させ て結晶を破壊しつつアンモニアと銅との反応を容易に進行させて ヽる。この接触処理 は、アンモニアのみを接触させても良ぐアンモニアと沈澱物との接触前後、或いは、 同時に (混合した状態を含む)水酸ィ匕アルカリを接触させてシユウ酸インジウムの水 酸化物への転換を促進しつつ銅の反応を進行させても良 、。
[0046] なお、本発明にお 、て「水酸化アルカリ」とは、アルカリ金属の水酸ィ匕物を意味しァ ンモユアは含まれない。この水酸ィ匕アルカリとしては水酸ィ匕ナトリウム、水酸化カリウム 等が挙げられ、特にコスト面力も水酸ィ匕ナトリウムの適用が好まし!/、。
[0047] そして、沈澱物に接触させるアンモニアの量又は沈澱物に接触させるアンモニアの 量と水酸ィ匕アルカリの量の合計量は、少なくとも沈澱物の銅 ImoLあたり 4moLに相
当するモル数以上とするのが好ましい。この量が銅を反応させるための理論的必要 量である。
[0048] 中でも好ましくは、沈澱物の銅 ImoLあたり 4moLに相当するモル数と沈澱物のィ ンジゥム ImoLあたり 3moLに相当するモル数との合計モル数以上とする。シユウ酸 インジウムが十分水酸化インジウム転換され、かつ、銅がアンモニアと反応、除去され やすくなるからである。一方、これらアンモニア等の接触量の上限については、沈澱 物の銅 ImoLあたり 4moLに相当するモル数と沈澱物のインジウム ImoLあたり 3mo Lに相当するモル数との合計モル数の 2. 5倍のモル数以下とするのが好ましい。この 上限値は、銅の除去という観点から限定されるものではないが、余りに多量のアンモ ユア等を使用するとインジウムの溶出が生じ回収率の低下が生じることを考慮するも のである。
[0049] ところで、上記したアンモニア等の使用量は、沈澱物(シユウ酸インジウム)の量を基 準とするものである力 沈澱物中の成分を基準としてアンモニア等の使用量を定める ためには、沈澱物の分析を行いその結果に基づいて使用量を算出することが必要と なる。この分析のためには多少とも待ち時間が必要となり、効率的な回収作業の妨げ となる。一方、通常の回収作業では、作業前にインジウム含有溶液の成分分析を行う のが一般的である。
[0050] 従って、本実施形態ではインジウム含有溶液中の成分を基準としてアンモニア等の 使用量を定めるのが好まし ヽと 、える。
[0051] このインジウム含有溶液中の成分を基準としたアンモニア等の使用量としては、イン ジゥム含有溶液中の銅の大部分が沈澱物に混合する場合を考慮して、インジウム含 有溶液中の銅 ImoLあたり 4moLに相当するモル数以上とするのが好ましい。そして 、より好ましくは、インジウム含有溶液中の銅 ImoLあたり 4moLに相当するモル数と インジウム含有溶液中のインジウム ImoLあたり 3moLに相当するモル数との合計モ ル数以上とする。そして、その上限は、インジウム含有溶液中の銅 ImoLあたり 4mo Lに相当するモル数とインジウム含有溶液中のインジウム ImoLあたり 3moLに相当 するモル数との合計モル数の 2倍量以下とするのが好まし 、。このように設定すること で、アンモニア等の使用量の下限値は、沈澱物を基準とした場合の使用量の下限値
よりも小さくはならず、また、上限値も沈澱物を基準とした場合の使用量の上限値より も大きくはならず銅の除去を確実に行なうことができる。
[0052] 沈澱物への接触処理は、水溶液の状態で行うことが好ま ヽ。そして、これには、沈 澱物と水とを混合してアンモニアガスを吹き込む、アンモニア水溶液を添加する、固 体の水酸ィ匕アルカリを添加する等、最終的に水溶液の状態となっていることを含む。
[0053] アンモニア水溶液、水酸化アルカリ水溶液を使用する場合の濃度は、特に限定は なぐ上記した必要量を含有する溶液であれば良い。但し、濃度が低すぎると排水量 が増え、濃度が高すぎると沈澱物の量に対する液量が少なくなりすぎて接触が不十 分となることから、これらの水溶液濃度は 0. 5〜15moLZLとするのが好ましぐ 1〜 lOmoLZLとするのがより好まし!/、。
[0054] また、処理回数は、必要量のアンモニア(水溶液)又はアンモニア(水溶液)及び水 酸ィ匕アルカリ(水溶液)を複数回に分けて沈澱物と接触させても良いが、効率面等か ら 1回で行うのが好ましい。
[0055] 尚、アンモニア水溶液の温度は、加熱しても良いが常温であっても効率が低下する ことはなく常温が好ましい。
[0056] このようにアンモニアとの接触処理を行う場合にっ 、ても、その工程の前及び Z又 は後、特に前に沈澱物を水又はシユウ酸水溶液で洗浄することが好ましい。これによ りきわめて高純度のインジウムを回収することができる。そして、接触処理前に洗浄す ることで接触処理により水酸ィ匕物を生成し得る他の不純物の除去が可能となる。
[0057] 沈澱物の洗浄方法及びアンモニアとの接触処理の方法としては、インジウム含有溶 液中のシユウ酸インジウムを沈降させて上澄み液を抜出し、これに洗浄液又はアンモ ユア溶液を入れて攪拌する方法、又は、インジウム含有溶液をろ過し、ろ過ケーキを 洗浄液又はアンモニア溶液と混合する工程を 1回以上行なうリバルプ洗浄法、若しく は、インジウム含有溶液にっ 、て真空ろ過やフィルタープレス等によるろ過を行!、ろ 過装置に洗浄液又はアンモニア溶液を通液するろ過洗浄法、のいずれかによる方法 を挙げることができる。
[0058] 尚、沈澱剤添加後、洗浄を行なうことなく直ちにシユウ酸インジウムを回収する場合 、又は、ろ過洗浄以外の方法で洗浄を行なったときには、シユウ酸インジウムを固液
分離することとなるが、これは通常のろ過方法を採用することができる。
(焙焼工程)
固液分離した沈澱物 (シユウ酸インジウム又は水酸化インジウム)は、焙焼すること で酸化インジウムとすることができる。この焙焼は固液分離後の沈澱物を直接加熱す ることが好ましい。固液分離後乾燥しその後焙焼しても良いが、エネルギーコスト、効 率等の観点力も直接焙焼した方が好ましい。焙焼温度としては、 600〜1200°Cが好 ましぐ 700〜: L100°Cがより好ましい。また、焙焼時間は 1〜48時間、より好ましくは 2〜24時間が好ましい。焙焼条件については、下限値未満だと完全に酸化物にする ことができず、また、上限値を超える温度、時間で焙焼してもエネルギーの無駄にな るだけだからである。
(第 2実施形態)
第 2実施形態に係るインジウム含有メタルの製造方法は、次の工程を経てインジゥ ム含有メタルを製造することを特徴とする。
[0059] 回収原料であるインジウム含有物を酸に溶解してなるインジウム含有溶液に、沈澱 剤としてシユウ酸をカ卩えて混合することによりシユウ酸インジウムの沈澱物を生成させ る工程(;シユウ酸インジウム沈滅工程)、
前記シユウ酸インジウムの沈澱物を固液分離により回収する工程(;沈澱物回収ェ 程)、
回収した沈澱物を、インジウムが溶解されな 、液体に浸漬させて不動態形成原因 イオンを該液体中に溶解させ、この溶解液を除去する不動態形成原因イオン洗浄処 理を 1回以上行う工程 (;不動態形成原因イオン洗浄工程)、
前記の不動態形成原因イオン洗浄処理で得られた洗浄処理済物を酸に溶解させ て酸溶解液とする工程 (;酸溶解工程)、
該酸溶解液中に金属板を浸して当該金属との置換反応によりスポンジインジウムを 析出させる工程(;置換析出工程)、
スポンジインジウムからインジウム含有メタルを得る工程(;メタル化工程)、 これらの工程を経てインジウム含有メタルを製造する。
[0060] なお、「スポンジインジウム」とは、金属との置換反応によって生成する多孔質状 (ス
ポンジ状)のインジウム含有物の意味である。
[0061] また、「置換析出工程で金属板上に不動態を形成する原因となるイオン」を「不動態 形成原因イオン」ともいう。
[0062] 以下、本実施形態における原料及び各工程について詳細に説明する。
(インジウム含有物)
原料としてのインジウム含有物の由来は特に制限されるものではない。例えば ITO 薄膜製造時に飛散した ITOの回収物、廃棄 ITOターゲット、 ITOやインジウム合金の スクラップ、或いは LCDや PDPのスクラップ、インジウムを含有する半導体の回収物 など、使用済あるいは本来の使用用途力も外れたインジウム含有物を回収したものを 挙げることができる。中でも、 ITO薄膜製造時に飛散したインジウム含有物を回収し たもの、例えば酸化インジウムと酸化スズとの混合物を焼結して得られる ITO焼結体 をターゲットとしてプラズマ等を照射して ITOをスパッタさせた際に、基板上に蒸着せ ずに周囲に飛散した ITOを回収して得られるインジウム含有物は本実施形態の原料 用として最も適した一例である。
(インジウム含有溶液)
インジウム含有溶液は、上記のインジウム含有物を酸に溶解したものが好まし 、。
[0063] インジウム含有溶液中のインジウム含有量は特に限定するものではないが、インジ ゥム含有量は lOgZL以上、特に 15gZL以上、中でも特に 20gZL以上であるのが 好ましい。また、スズに関しては、インジウム含有量の 10%未満であるのが好ましい。 また、インジウム及びスズ以外の金属に関しては、置換析出に用いる金属(例えばァ ルミ-ゥム又は亜鉛等)を除いて考えると、その総量力 Sインジウム含有量の 10%未満 であるのが好ましい。これらをインジウム含有量の 10%以上含んでいても本実施形 態の製造方法が不可能になる訳ではないが、置換析出工程における効率やインジゥ ム純度が低下するのでインジウム含有量の 10%未満であるのが好ましい。
[0064] インジウム含有物を溶解する酸の種類は特に限定するものではないが、本実施形 態に適しているのは、塩酸、硝酸、フッ酸、硝フッ酸等の無機酸で溶解したインジウム 含有溶液であり、中でも硝酸が最も好ましい。
[0065] 硝酸を用いればインジウム含有物を容易に溶解することができる。硝酸を用いた場
合には、置換析出工程で硝酸イオンが不動態を形成し置換析出を妨害するおそれ がある力 本実施形態のようにシユウ酸をカ卩えてシユウ酸インジウムを析出させると、 硝酸とシユウ酸との相性が良ぐし力もシユウ酸インジウム (沈澱物)の結晶が大きくな るため固液分離した際の分離性能が高くなり、固液分離後の沈澱物中の母液量の軽 減を図ることができ、これにより硝酸イオン残留量を少なくすることができ、固液分離 の仕方によっては不動態形成原因イオン洗浄工程の省略も可能となる。
[0066] また、インジウム含有物を硝酸に溶解してなるインジウム含有硝酸溶液の場合は、 インジウム含有硝酸溶液の状態で適宜時間静置することにより、インジウム含有硝酸 溶液に含まれるスズをメタスズ酸 (H SnO )として沈澱除去することができ、後工程の
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負担を軽減することができる。この際の静置時間としては、 24時間以上、特に 168時 間以上とするのが好ましい。
(シユウ酸インジウム沈澱工程)、
インジウム含有溶液にシユウ酸を加えて混合することで、インジウム含有溶液から選 択的にインジウムをシユウ酸インジウムとして沈澱させることができる。
[0067] 加えるシユウ酸の形態は、固形状のもの(粉末含む)、水溶液、固形状のものが分 散したスラリー等何れの形態でも適用可能である。固形状のシユウ酸を混合する場合 には、無水和物を混合しても良いが、コスト面力もみれば二水和物の混合が好ましい
[0068] 但し、シユウ酸インジウムを均一に沈澱させて不純物の巻き込みを抑制するために は、水溶液の状態での混合がより好ましい。シユウ酸を水溶液で添加する場合、水溶 液中のシユウ酸濃度を、飽和濃度より 10%以上低い濃度とすることでシユウ酸水溶 液の液温変動が生じても固形のシユウ酸沈澱物が発生し難くすることができる。その 一方、シユウ酸濃度を余りに低くすると、インジウム回収のためのシユウ酸水溶液量が 増大して排水量が増加する可能性がある。これらの点を考慮すると、シユウ酸水溶液 のシユウ酸濃度は 0. ImoLZL以上が好ましく 0. 2moLZL以上がより好ましい。
[0069] 尚、混合するシユウ酸として、シユウ酸アンモ-ゥムゃシユウ酸水素アンモ-ゥムを 適用することは、両ィ匕合物共にシユウ酸を含むことから適用可能ではある力 これら の化合物を用いた場合、インジウム含有溶液との混合後にインジウム含有溶液中に
残留するインジウムの量が、シユウ酸を用いる場合よりも多くなり、インジウムの回収率 が低下するためシユウ酸の適用が好まし 、。
[0070] インジウム含有溶液と混合するシユウ酸の混合量 (言 、換えればシユウ酸を加える 量)は、インジウム含有溶液中のインジウムの等量 (理論量ともいう)の 1. 2〜5倍とす るのが好ましい。 1. 2倍未満ではインジウムの溶液中の残留量が増加して回収率が 低下し、 5倍を超えて混合しても回収率の向上に寄与しないからである。より好ましい 混合量としては、インジウムに対する当量の 1. 4〜4倍である。
[0071] 尚、シユウ酸のインジウムに対する当量は、インジウム ImoL当たりシユウ酸 1. 5mo Lである。従って、インジウムに対する当量の 1. 2〜5倍とは、インジウム ImoL当たり シユウ酸 1. 8〜7. 5moLとなる。
[0072] 回収されるインジウム含有メタルのインジウム純度を高める観点から、シユウ酸混合 前後のインジウム含有溶液の pHの管理を行うことが好ま 、。シユウ酸混合前のイン ジゥム含有溶液の pHは 3. 5未満、特に 2以下であるのが好ましい。 pH3. 5以上であ ると、インジウムの一部が水酸化物となってシユウ酸インジウムとならないためインジゥ ムの回収率が低下する力もである。また、 pH2以下とすることによりインジウム回収率 を上げることができ、この観点で言えばインジウム含有溶液の pHはより低 、方が好ま しいから 1. 0以下、特に 0. 5以下がさらに好ましい。
[0073] インジウム含有溶液の pHが上記範囲外にある際には、溶液の pH調整を行うことが 好ましい。但し、 pHを低下させようとして、あまりに過剰の酸を添加することは好ましく な 、。過剰の酸濃度が一塩基酸に換算して 3moLZLを超えるような多量の酸を添 加した場合 (硝酸、塩酸、フッ化水素酸等の一塩基酸では 3moL/L以上、硫酸等の 二塩基酸では 1. 5moLZL以上の酸を添加した場合)、インジウムの回収率が低下 することとなる。従って、 pH調整の際には、酸添加量を上記した値を超えないように して添加する力、これを超えていた場合には、水酸ィ匕ナトリウム又は水酸ィ匕カリウムを 添加して酸濃度をこの値以下に調整することが好ましい。
[0074] 一方、シユウ酸を混合した後のインジウム含有溶液の pHについては、沈澱物中の 不純物低減の観点から、 2. 0以下にすることが好ましぐ 1. 0以下にすることが更に 好ましい。
[0075] インジウム含有溶液と沈澱剤(シユウ酸)との混合の方法にっ ヽては、インジウム含 有液を攪拌し、これに沈澱剤を添加する方法の他、水溶液又はスラリー状の沈澱剤 を攪拌しつつインジウム含有溶液を添加する方法、 1の槽、容体にインジウム含有溶 液及び沈澱剤を同時に導入する方法があるが何れによっても良い。
[0076] また、シユウ酸と混合する際のインジウム含有溶液の液温は 0〜90°Cの範囲であれ ばよい。混合時の液温は比較的高いほうが不純物の同伴が少なくなる傾向はあるが 大きな影響はな 、ため、温度調節を行なわな 、常温での混合がエネルギーコストの 面力 好ましい。
[0077] インジウム含有溶液にシユウ酸を加えた後、適宜時間攪拌して混合し、必要に応じ て適宜静置するのが好まし ヽ。
[0078] この際、攪拌時間は、 5分〜 24時間、特に 10分〜 12時間とするのが好ましい。 5分 未満であると、シユウ酸インジウムへの不純物の混入量が増加するおそれがあり、ま た、 24時間を超えて混合しても不純物低減効果に差異はなぐ効率が低下するだけ だからである。
(沈澱物回収工程)、
前記シユウ酸インジウムの沈澱物を固液分離する方法は、周知の固液分離方法を 採用すればよぐ吸引濾過等の真空濾過、フィルタープレス等の加圧濾過、デカンタ 一や遠心分離等の分離方法等の固液分離方法を採用することができる。
[0079] なお、本工程で行う固液分離の程度によっては、次の不動態形成原因イオン洗浄 工程を省略することも可能である。特にインジウム含有硝酸溶液を出発原料とする場 合には、硝酸イオンが置換析出工程において不動態形成原因イオンとなり置換析出 反応を妨害するため一般的には不動態形成原因イオン洗浄工程が必要となるが、 本工程の固液分離をより十分に行うことにより、例えば分離性能の良い固液分離方 法を採用したり、濾過時間を長くしたり、或いは濾過面積を大きくしたりするなどして、 シユウ酸インジウム沈澱物に含まれる母液量を減らして不動態形成原因イオンの量を 減らすことにより、不動態形成原因イオン洗浄工程を省略することが可能となる。具体 的には、不動態形成原因イオン洗浄工程を省いた際に、酸溶解工程において作製 する溶解液中の不動態形成原因イオン濃度が lOOOOppm以下となるように、好まし
くは 8500ppm以下となるように固液分離すれば不動態形成原因イオン洗浄工程を 省!ヽても置換反応を進めることができる。
(不動態形成原因イオン洗浄工程)
次に、固液分離して得た沈澱物を、インジウムが溶解されない液体(「浸漬液」とも いう)に浸漬させ、後の置換析出工程で金属板上に不動態を形成する原因となるィ オン (不動態形成原因イオン)を該液体中に溶解させて、この溶解液を除去すると ヽ う処理を 1回以上行うことにより、沈澱物表面に付着した母液や沈澱物の凝集体内部 に取り込まれた母液を浸漬液に置換させるようにして不動態形成原因イオンを洗浄 除去する。不動態形成原因イオンを洗浄除去することによって、後の置換析出工程 を効率的に行うことができ、より高純度のインジウム含有メタルを回収することができる
[0080] 不動態形成原因イオンとしては、 In以外の金属、例えば Fe、 Co、 Cr、 Ni等の金属 のイオン、並びに、これら金属イオンと塩を形成する、硝酸イオン (NO―)、フッ化物ィ
3
オン (F— )等の陰イオンを挙げることができる。出発原料としてインジウム含有硝酸溶 液を用いる場合には主に硝酸イオン (NO ")が不動態形成原因イオンとなり、インジ
3
ゥム含有フッ酸溶液を用いる場合には主にフッ素イオン (F— )及びフッ化水素イオン( HF―)等が不動態形成原因イオンとなる。
2
[0081] インジウムは溶解しな 、が、不動態形成原因イオンは溶解する浸漬液としては、水 、シユウ酸水溶液、メタノールやエタノールといった低級アルコール、又はそれらの混 合物等を挙げることができる力 最も好ましいのは水である。水は純水、超純水を含 み、また、シユウ酸水溶液としては 0. 5moLZL以下の濃度のシユウ酸水溶液が好ま しい。
[0082] 不動態形成原因イオン洗浄処理の方法としては、例えば回収した沈澱物を浸漬液 に投入して固液分離する工程を少なくとも 1回以上行えばよい。 2回以上に分けて行 うと、浸漬液の使用量を低減することができるほか、不動態形成原因イオンを短時間 で除去することができる。また、沈澱物を浸漬液に投入して適宜時間攪拌するのがよ り好ましい。
[0083] 不動態形成原因イオン洗浄処理で使用する浸漬液の量や処理時間は、特に限定
するものではない。
[0084] 溶解する際の浸漬液の温度は、特に制限するものではな 、が、効率の観点力も室 温程度からさらに加温するようにしてもよ!、。
[0085] 不動態形成原因イオンの洗浄目安としては、次工程にお!、て洗浄処理済物を酸で 溶解した際の酸溶解液中の硝酸イオン濃度が lOOOOppm以下、特に 8500ppm以 下になるように行うのが好ましい。すなわち、これを目安として、処理時間や処理回数 などを調整するのが好ましい。溶解液中の硝酸イオン濃度が lOOOOppm以下であれ ば、後の置換析出工程において、不動態形成原因イオンが金属板表面に不動態を 形成するのを抑制することができ、金属板の金属イオンとの置換反応によってスポン ジインジウムを析出させることができる。
[0086] このような観点から、次工程における酸溶解液中の硝酸イオン濃度が 5000ppm以 下であればさらに好適にスポンジインジウムの析出を促すことができる。
[0087] なお、上述したように沈澱物回収工程における固液分離をより一層十分に行うこと により、例えば分離性能の良い固液分離方法を採用したり、濾過時間を長くしてシュ ゥ酸インジウム沈澱物に含まれる母液量を減らして不動態形成原因イオンの量を減 らすことにより、本工程 (不動態形成原因イオン洗浄工程)を省略することも可能であ る。
(酸溶解工程)
次に、上記不動態形成原因イオン洗浄処理で得られた洗浄処理済物を酸に溶解 させて酸溶解液とする。
[0088] 本工程で用いることができる酸の種類としては、硫酸、塩酸などの無機酸を用いるこ とが可能であるが、出発原料としてインジウム含有硝酸溶液を用いる場合には塩酸を 用いることが重要である。
[0089] この際、塩酸の濃度は特に限定するものではないが、溶解性の観点から 1N〜12
Nの塩酸を用いるのが好まし!/、。
[0090] また、酸溶解の温度は、酸を添加する際の溶解熱の他、温度調節をして 30°C以上 に調整するのが好ましぐ効率的には 30〜60°Cの範囲であるのが好ましい。
[0091] なお、洗浄処理済物を酸に溶解させた際に溶解残渣がある場合には、適宜時間、
例えば 1時間程度攪拌した後、必要に応じて適宜時間静置し、固液分離して溶解残 渣を除去して酸溶解液を回収するようにすればよ!、。
(置換析出工程)
次に、上記工程で得られた酸溶解液を反応槽に入れ、金属板、好ましくはアルミ- ゥム板を浸し、該金属板の金属(例えばアルミニウム)と置換反応させてスポンジイン ジゥムを析出させるようにする。
[0092] 置換反応させる際の酸溶解液の pHは 0. 5よりも低いか或いは 1. 5よりも高いと、ィ ンジゥムと金属(例えばアルミニウム)との置換反応性が低下するので、酸溶解液の p H値は、例えばアルカリィ匕合物や水等を添加することによって 0. 5〜1. 5、特に 0. 5 〜1. 0の範囲内に調整することが好ましい。この際、添加するアルカリィ匕合物として は、水酸化ナトリウム、水酸ィ匕カリウム、水酸ィ匕カルシウム、アンモニア、又はこれらの 水溶液等を挙げることができる。また、水を添加して pHを調整する場合は、酸溶解液 中のインジウム濃度が低下し過ぎな 、ようにするとよ 、。
[0093] インジウムと金属(例えばアルミニウム)との置換反応は、液の温度が 20°Cよりも低く なるにつれて急激に低下する傾向があり、その結果としてスポンジインジウムの析出 量が低下する。逆に、温度が高くなり過ぎると、作業性、熱エネルギーの損失等の点 で問題となる可能性がある。従って、この置換反応を実施する際の温度は、好ましく は 20°C以上、特に好ましくは 20°C〜60°Cの範囲に調整するようにする。
[0094] インジウムの置換析出は、アルミ板などの金属板を浸漬する方法のほか、亜鉛粉末
(粒状)などの金属粉を投入する方法も採用可能である。但し、亜鉛粉末 (粒状)など の金属粉を投入する場合、スポンジインジウムに亜鉛が残留するという課題があり、こ の課題を解決するための工夫をすることが好ましいため、上記の如く金属板を用いた 方法が本実施形態には好ま 、。
(メタル化工程)
次 、で、上記のようにして得られたスポンジインジウムをメタル化して塊状のインジゥ ムメタルとする。
[0095] メタルイ匕の具体的方法は特に限定するものではないが、アルカリ熔铸、すなわち、 少なくともインジウムの融点(156°C)以上に加熱したアルカリ溶液中で铸造してメタ
ルイ匕するのが好ましい。スポンジインジウムは酸ィ匕され易レ、が、アルカリ熔铸を行うこ とにより酸ィ匕を防止することができ、さらにはスポンジインジウムの表面に存在してい た酸ィ匕被膜並びにスポンジインジウム中の不純物を分離、除去することもできる。
[0096] アルカリ熔铸に使用するアルカリィ匕合物については特には限定されないが、工業 的には水酸ィ匕ナトリウムを用いるのが好ましい。このアルカリ熔铸により得られるイン ジゥム含有メタルは、インジウム品位が高 L、ものとなる。
[0097] なお、上記説明した実施形態は本発明の一例であって、本発明による効果を妨げ ない限り、上記工程に別の工程を揷入したり、各工程の順序を入れ替えることも可能 である。
実施例
[0098] 以下、本発明の実施例について比較例と比較しつつ説明する。
(実施例 1〜 18及び比較例 1〜 5)
下記の 2種のインジウム含有溶液を用意し、これらにつきインジウム回収を行なった
。これらのインジウム含有溶液は、インジウム含有スクラップを硝酸にて溶解したもの である。
[0099] [表 1]
上記 2種のインジウム含有溶液 (A, B)にっき、条件を種々変更してインジウム回収 を行なった。この工程の基本的な流れを図 1を用いつつ説明する。
A、 Bいずれかのインジウム含有溶液を 10L用意し(工程(1) )、この溶液の pHを参 照しつつ適宜に添加して pHを調整した (工程 (2) )。そして、場合により 60°Cで昇温 し (工程 (3) )、インジウム含有溶液と沈澱剤とを混合した (工程 (4) )。混合工程では
、基本的にインジウム含有溶液を攪拌しつつ沈澱剤 (実施例ではシユウ酸を比較例 ではアンモニア水)を添加した力 一部の実施例では、沈澱剤を攪拌しこれにインジ ゥム含有溶液を添加する形式を採った。
[0101] 沈澱剤を添加し沈澱が完全に発生したところで、溶液を真空ろ過し (工程 (5) )、沈 殿物を純水にて洗浄した(工程 (6) )。この洗浄工程は lOOmLの水を 4回通液するこ とにより行なった。洗浄完了後、得られたシユウ酸インジウム (比較例では水酸化イン ジゥム)は、電気炉中 1000°Cで 5時間加熱することにより焙焼し(工程(7) )、酸化ィ ンジゥムとした。
[0102] 尚、一部の実施例では、 pHの調整前に 4moLZLの NaOHを pHが 1. 8になるま で添加後溶液をろ過し、インジウム含有溶液中の錫を除去する処理を行なった(工程 (8) )。
[0103] 上記工程に従い、実施例で行なった複数のインジウム回収の条件は以下のとおり である。
[0104] [表 2]
沈》
使用 Μ
pHffl整値 混合後
»液 濃度 備考 種類 PH
(raol/l) 使用量 *1
実施例 1 A 0.1 シユウ》水溶液 0.5 2.5倍 <0
実施例 2 A 0.5 シユウ酸水溶液 0.5 2.5倍 <0
実施例 3 A 1.0 シユウ ϋ水溶液 0.5 2· 5倍 0.1
実施例 4 A 2.0 シユウ酸水溶液 0.5 2.5倍 0.6
実施例 5 A 2.6 シユウ酸水溶液 0.5 2.5倍 1.2
実施例 6 A <0 シユウ酸水溶液 0.5 2.5倍 <0 *2 実施例 7 A ぐ 0 シユウ酸水港液 0.5 2.5倍 <0 *2 実施例 B A 0.1 シユウ 水溶液 0.5 1.0倍 <0
実施例 9 A 0.1 シユウ驗水溶液 0.5 1.2倍 <0
実施例 10 A 0.1 シユウ »水溶液 0.5 1.5倍 <0
実施侧 11 A 0.1 シユウ II水溶液 0.5 5.0倍 <0
実施《112 A 0.1 シユウ酸水溶液 0.5 6.0倍 <0
実施例 13 A 0.1 シユウ酸水溶液 0.5 2.5倍 <0 3 実施例 M A 0.1 シユウ藪水溶液 0.5 2.5倍 ぐ 0 *4 実施倒 15 A 0.1 シユウ u二水和物 - 2.5倍 <0
実施俩 16 B 0.1 シユウ酸水溶液 0.5 2.5倍 <0
実施 0117 B 1.8 シユウ酸水溶液 0.5 2.5倍 0.5 *5 実施例 18 B 0.1 シユウ酸水溶液 0.5 2.5倍 <0 *6 比較例 1 A 2.6 アンモニア水 13.5 PH管理 7.0 *7 比較例 2 A 2.6 アンモニア水 1.0 pH管理 5.0 *7 比較例 3 A 2.6 アンモニア水 1.0 pH管理 7.0 7 比較例 4 A 2.6 アンモニア水 1.0 pH管理 9.0 *7 比較例 5 A 1.0 アンモニア水 1.0 pH管理 7.0 *7
*1:沈》剤使用量はインジウム含有港液中のィンジゥム理腧量に対する倍数
*2:遍 M酸濃度 ···実施例 6:2.5mol/l,実施例 7:3.5mol/l
*3:沈 «剤にインジウム含有溶液を混合
*4: インジウム含有溶液を 60¾まで昇 »後、 60¾の沈 »剤を 加
*5 :肤鰺矩理を行い、 肤錢処理後 pHの謂整鶄しで沈 添加
*6:腴燧想理を行い、 朕鍵処理後 «Stを添加して pH 0.1 として沈数»添加
*7 p H管理 ··■混合後の pHを定め、該 PHとなるまでアンモニア水を添加 そして、表 2の実施例 1 18及び比較例 1 5の条件により回収された酸化インジゥ ムの成分分析値、回収率を表 3に示す。
[表 3]
酸化インジウム分析値 (重量%) In回収率
In AI Mg Si Ca Sn Ζπ ( ) 実施例 1 82.6 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 く 0.1 95.3 実施例 2 82.8 <0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 94.8 実施例 3 82.5 0.2 <0.1 <0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 95.6 実施例 4 82.3 0.5 く 0.1 <0.1 <0.1 く 0.1 く 0.1 95.9 実施例 5 81.3 1.5 <0.1 <0.1 く。.1 <0.1 く 0.1 96.7 実施例 6 82.7 <0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 93.8 実施例 7 82.8 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 85.5 実施例 8 82.7 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 く 0· 1 78.3 実施例 9 82.8 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 90.3 実施例 10 82.6 <0.1 <0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 く 0.1 93.3 実施例 11 82.6 <0.1 <0.1 く 0.1 く 0.1 <0.1 く 0· 1 98.2 実施例 12 82.8 <0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 <0.1 く 0.1 98.4 実施例 13 82.7 く 0.1 <0.1 く 0.1 く 0.1 く 0.1 く 0.1 95.4 実施例 14 82.6 く 0.1 <0.1 <0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 95.3 実施例 15 82.6 0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 95.2 実施例 16 82.0 <0.1 <0.1 く 0· 1 <0.1 0.8 く 0.1 95.1 実施例 Π 82.6 0.3 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 94.2 実施例 18 82.7 く 0.1 <0.1 <0.1 く 0.1 く 0.1 <0.1 94.5 比較例 1 47.4 22.1 0.48 <0.1 <0.1 <0.1 0.15 96.3 比較例 2 49.3 20.9 0.47 <0.1 <0.1 く 0.1 0.12 92.5 比較例 3 48.4 21.4 0.48 <0.1 <0.1 く 0.1 0.11 95.8 比較例 4 47.5 22.1 0.48 <0.1 く 0.1 く 0.1 0.12 98.2 比較例 5 48.7 21.3 0.46 く 0.1 <0.1 く 0.1 0.10 96.0
*ln 回収率(X) = {回収された酸化インジウム i(g) Xインジウム含有率(璽
/1処理溶液 (Α,Β) のインジウム濃度 (g/l) x¾理溶液量(1)}
*K化インジウム中のィンジゥム含有率の理搶僮は、 82.7重量 ¾である。 以上の結果から、まず、実施例とアンモニアを沈澱剤とする比較例とを比較すると、 比較例で回収される酸ィ匕インジウムは何れも不純物の含有量が多ぐ特にアルミ-ゥ ムの同伴が顕著であった。これに対し実施例では、アルミニウムをわずかに含むもの もある力 概して不純物の少ない高純度の酸化インジウムが回収できたことが分った 。このことは、回収された酸ィ匕インジウム中のインジウム含有率が何れも理論値に極 めて近!、ことからも伺えた。
また、各実施例の中で回収条件による相違を検討すると、まず、不純物混入の観点
力も見ると、実施例 3〜実施例 5ではアルミニウムの混入がわずかにみられた。この点 、沈澱剤混合時のインジウム含有溶液の pHの増大に従 、アルミニウム含有率が上 昇して!/、ることから、本発明にお!/、てはインジウム含有液の pHをできるだけ低くする ことが望ましぐ 0. 5以下とすることが特に好ましいことが分った。また、インジウム回 収率に関しては、実施例 8が唯一 80%を下回った。この要因としては沈澱剤の混合 量にあると思われ、実施例 8ではインジウム含有溶液中のインジウム量に対する理論 値の当倍量の沈澱剤しか添加していない。従って、 80%以上の回収率を量るために は、実施例 9〜 12のように、 1. 2倍量以上の沈澱剤の混合が好ましいといえることが 分った。但し、実施例 11 (5倍量添加)と実施例 12 (6倍量添加)とを比較すると、イン ジゥムの回収率はほとんど変わらないため、沈澱剤の添加量としては 5倍量以内が好 ましいといえることが分った。
[0107] 本実施例で使用したインジウム含有溶液において、溶液 Bは錫を比較的高濃度で 含むものであった。この溶液 Bについて回収を行ったのが実施例 16、 17である。両 者の結果を見るとわ力るように、錫を除去する工程((9) )を行った実施例 17では、回 収酸化インジウム中の錫の除去が完全になされていることが確認できた。従って、回 収した酸化インジウムから高純度のインジウム単一金属を回収する場合には、錫の除 去工程を行うことが好ましいことが分った。但し、脱錫工程を行うか否かは、回収され る酸化インジウム力 その後、どのような目的でインジウムを利用するかによるもので あり、脱錫工程を行わない場合であっても、インジウムと錫の双方の回収ができるた め、 ITOを製造する場合においては便宜であり、脱錫処理の有無は使い分けの問題 であり優劣の問題ではな 、ことも分った。
(実施例 19〜27)
ここでは、下記のインジウム含有溶液 (C)を用意し、これらにつきインジウム回収を 行なった。このインジウム含有溶液は、液晶基板をフッ化水素酸で洗浄した際の廃液 である。
[0108] [表 4]
In Al Mg Si Ca Sn Zn Cu P H 濃度(g/l) 58.0 <0.01 く 0.01 0.21 く 0.01 19.7 く 0.01 2.1 c
n 0.1 In比率
100 <0.02 く 0.02 0.36 34.0 <0.02 3.6
(重量%) く 0.02
このインジウム含有溶液 (c)にっき、条件を変更しつつインジウム回収を行なった。
[0109] 本実施例の工程の基本的な流れを図 2を用いつつ説明する。インジウム含有溶液 を 60L用意し (インジウム含有量 3480g(30.3moL)、銅含有量 126g(l.98moL) :工程(1))、インジウム含有溶液と沈澱剤 (シユウ酸)とを混合した (工程 (2))。このシ ユウ酸溶液の混合は、 0.5moL,Lのシユウ酸水溶液を、シユウ酸量がインジウム含 有溶液中のインジウムの理論量に対して 2.5倍となる液量を 10分間かけて添加した 。この際インジウム含有溶液を攪拌しつつシユウ酸水溶液を添加した。
[0110] 沈澱剤を添加し沈澱が完全に発生したところで、溶液を真空ろ過し (工程(3))、沈 殿物を純水にて洗浄した(工程 (4) )。この洗浄工程は 1200mLの水を 4回通液す ることにより行なった。洗浄完了後、得られたシユウ酸インジウム (比較例では水酸ィ匕 インジウム)について分析を行なったところ、インジウム 3228g (28. ImoL)、 銅 108g(l.70moL)含まれていた。
[0111] 次に、回収したシユウ酸インジウムを 12等分し、そのうち 9個のシユウ酸インジウムに ついて条件を変更しつつ接触処理を行なった (以下、条件毎に実施例 19〜27とす る:工程(5))。接触処理の内容は表 5のとおりである。尚、本実施例では、比較のた めに沈澱物のアンモニア接触処理を行なわな 、ものにっ 、ても検討を行った (参考 例)。
[0112] [表 5]
接触処理溶液
接 ft処理の内容 NaOH水溶液 アンモニア水溶液
合計 mol数 Jk废 Mol数 液濃度 Mol数
実施伢 19 アンモニアのみ接触 ― ― 1mol/l 0.5mol 0.5mo I 実施例 20 アンモニアのみ接触 ― ― 1mol/l 0.66moi 0.66mol 実施例 21 アンモニアのみ接触 ― ― 3mol/l 7mol 7mol 実旄例 22 アンモニアのみ接触 ― ― 3mol/l 8.25mol 8.25mol 実施例 23 アンモニアのみ接触 ― ― 3mol/l 10ποΙ 10mol 実施例 24 アンモニアのみ接触 ― ― 3mol/l 16.5mo I 16.5mol 実施例 25 アンモニアのみ接触 ― ― 3mol/l 20mol 20mol 実旄例 26 aOH+アンモニア接触 3mol/l 9.34mol 3mol/l 0.66mol 10mol 実施例 27 NaOH+アンモニア接触 3mol/l 9.5mol 3mol/l 0.5mol 10mol 参考例 接触処理なし ― ― 一 ― ― 注:処理対象であるインジウム含有溶液 (の 1 2分の 1 ) に含まれるインジ
ゥム量、 及び、 析出したシユウ酸インジウム (の 1 2分の 1 ) に含まれ るインジウム量から求められるアンモニア量の下限值、 及び、 接 «処理 溶液量 (アンモニア +水¾化アルカリ) の上限值、 下 ΚΛは以下の通 yで ある。
接触処理後の沈澱物については、溶液を真空ろ過し(工程 (6))、回収した沈澱物 を純水にて洗浄した(工程(7))。この洗浄工程は lOOmLの水を 1回通液することに より行なった。そして、洗浄後の沈澱物 (水酸化インジウム)を、電気炉中 1000°Cで 5 時間加熱することにより焙焼し (工程 (8))、酸化インジウムとした。
[0113] 製造した酸ィ匕インジウムについてインジウム回収の効果を確認した。この確認に際 しては、この評価は、酸化インジウムの糸且成分析及びその結果から得られる酸化イン ジゥム中のインジウム重量力 算出されるインジウムの回収率を比較することにより行 なった。その結果を表 6に示す。
[0114] [表 6]
酸化インジウム分析儈 (重量 In回収率
In Al Mg Si Ca Sn Ζη Cu (%) 実施例 19 81.4 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 0.1 <0.1 1.2 91.8 実施例 20 81. θ <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 0.69 91.8 実施例 21 82.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 0.1 <0.1 0.42 91.9 実施例 22 82.5 く 0.1 <0· 1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 0.12 92.0 実施例 23 82.6 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 0.09 91.8 実施例 24 82.7 <0.1 <0.1 <0.1 く 0.1 0.1 <0.1 0.08 91.3 実施例 25 82.6 <0.1 <0.1 く 0· 1 <0.1 0.1 <0.1 0.07 73.2 実施例 26 82.6 く 0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 く 0.1 <0.1 0.09 91.9 実施例 27 82.0 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 0.1 <0.1 0.55 92.0 参考例 79.9 く 0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 く 0.1 2.5 91.7 表 6の結果に関し、まずアンモニアの接触処理の有無について、各実施例と参考 例とを比較すると、回収された酸化インジウム中の銅濃度は、アンモニアの接触処理 を行うことにより半分以下となっており、その除去の効果が認められた。
[0115] 一方、接触処理の条件に関し検討するに、アンモニア(アンモニアと水酸ィ匕アルカリ )の接触量の範囲について好適とする範囲(表 5の下表参照)内で処理した結果 (表 5の二重線で囲まれた実施例 22〜24、実施例 26, 27))とそれ以外の実施例の結 果を対比すると、接触量が少ない場合(実施例 19〜21)においては、酸化インジウム 中の銅濃度が比較的高くなつた。これは、アンモニア (又はアンモニア及び水酸ィ匕ァ ルカリ)の接触量が不足し、シユウ酸インジウムが完全に水酸化インジウムとならず、 部分的に残留するシユウ酸インジウムに混入する銅が除去できな力つたことによるも のと考えられた。また、接触量が多い場合(実施例 25)においては、回収された酸ィ匕 インジウムの純度においては満足できるものである力 回収率に劣っていた。これは 、過剰のアルカリ添カ卩により酸化インジウムの溶解が生じたためと考えられた。以上の こと力ら、アンモニア(又はアンモニア及び水酸化アルカリ)の接触処理は酸化インジ ゥム中の銅の除去において有用であり、更に、その接触量を適正なものとすることで より有効なインジウム回収が可能となることが確認された。
[0116] 図 3は、析出直後の沈澱物(シユウ酸インジウム)及びアンモニア接触処理を行なつ た沈澱物(水酸ィ匕インジウム)について行なった X線回折分析の結果を示す。
[0117] 図 3 (a)より、析出直後の沈澱物 (シユウ酸インジウム)は、鋭いピークを呈する結晶 性の強い状態のシユウ酸インジウムであった。そして、このシユウ酸インジウム結晶に アンモニアを接触させることにより、沈澱物は比較的ブロードのことなる形状の回折パ ターンを示す(図 3 (b):実施例 23のものを示した)。この変化は、シユウ酸インジウム 力もなる沈澱物が、アンモニアと接触することにより、その結晶が壊れ結晶性の弱い 水酸化インジウムへと置換されたことによるものと考えられた。そして、このようなシユウ 酸インジウム結晶の破壊、水酸化インジウムへの置換の過程において沈澱物に巻き 込まれた銅が除去されるものと考えられた。
[0118] 尚、図 3 (c)には、この水酸化インジウムの焙焼後の酸化インジウムの回折パターン を示した。
[0119] (実施例 28— 30)
本実施例では、酸化インジウムと酸化スズとの混合物を焼結して得られる ITO焼結 体をターゲットとしてプラズマ等を照射して ITOをスパッタさせた際に周囲に飛散し防 着板に付着した ITO含有物を硝酸で溶解して得られるインジウム含有硝酸溶液 (pH 0. 12)を原料として用いた。このインジウム含有硝酸溶液をイオンクロマトで分析した ところ、 In30gZL、 SnO. 06g/L, A110g/L, MgO. 23g/L, ZnO. 03g/L, Fe O. 04gZL、 CrlOppm未満を含んでいた。
[0120] 上記のインジウム含有硝酸溶液 (液温 27°C) 500mLを用意し、この溶液にシユウ酸 水溶液 (液温 26°C、シユウ酸濃度 80gZL) 500mLを加え、 30分間攪拌した後、 1時 間 30分静置した。次いで、表 7に示す各種大きさの濾紙 (東洋濾紙 (株)社製 4A)を 用いてヌッチェにて吸引濾過を行い、沈澱物(シユウ酸インジウム)とろ液 (NO—濃度
3
、 pH、 In濃度を表 7に示す)を得た。なお、濾過の途中でケーキに割れが生じた際に は表面を一度均して濾過を続行し、 V、ずれの場合もインジウム含有硝酸溶液をロート に投入してから 15分経過した時点で濾過を終了した。
[0121] 得られた沈澱物を 450mLの水に投入し、 12N塩酸 50mLを加えて pHO. 5に調整 して酸溶解させて 500mLの酸溶解液を得た (NO—濃度、 pH、 In濃度を表 7に示す)
3
[0122] 次に、酸溶解液が 60°Cを超えないように温度制御しながら 1時間攪拌し、ヌッチェ
によって濾過して残渣 (未溶解の固体)を除去し、酸溶解液を回収し、この酸溶解液( pHO. 7)中に、幅 100mm、長さ 300mm、厚さ 6mmのアルミニウム板を浸漬させ、 液温を 50°Cになるように温度制御しながら、攪拌下、 1時間置換反応を継続した。そ して、置換反応によって析出したスポンジインジウムを回収し、水分等を除去した後、 水酸ィ匕ナトリウムを用いてアルカリ熔铸(300°C)を行い、インジウム含有メタルを金型 に抜き出した。
[0123] スポンジインジウムの採取量 (g)、インジウム含有メタルの採取量 (g)、インジウム含 有メタルの In品位、並びに酸溶解液力 インジウム含有メタルとして回収できた In回 収率 (In回収率(%) = (インジウム含有メタル中の In量 Z酸溶解液中の In量) X 100 )、以下「In回収率」という)を表 7に示した。
[0124] なお、インジウム含有メタルの In品位は ICP発光分光法によって分析し、硝酸ィォ ン濃度はイオンクロマト法で測定した (後に同じ)。
[0125] (実施例 31— 32)
実施例 28と同様のインジウム含有硝酸溶液 500mLを用意し、この溶液にシユウ酸 水溶液 (液温 26°C、シユウ酸濃度 80gZL) 500mLを加え、 30分間攪拌した後、 1時 間 30分静置した。次いで、表 7に示す各種大きさの濾紙 (東洋濾紙 (株)社製 4A)を 用いてヌッチェにて吸引濾過を行い、沈澱物(シユウ酸インジウム)とろ液 (NO—濃度
3
、 pH、 In濃度を表 7に示す)を得た。なお、濾過の途中でケーキに割れが生じた際に は表面を一度均して濾過を続行し、 V、ずれの場合もインジウム含有硝酸溶液をロート に投入してから 15分経過した時点で濾過を終了した。
[0126] 得られた沈澱物を 200mLの水(20°C)に投入して 10分間攪拌した後、攪拌を止め 0. 5時間静置しデカンテーシヨンにより水相を除去するという洗浄処理を実施例 31 では 1回、実施例 32では 2回繰り返し、そして洗浄処理済物と洗浄済液
(NO—濃度、 pH、 In濃度を表 7に示す)を得た。
3
[0127] この洗浄処理済物を 450mLの水に投入し、 12N塩酸 50mLをカ卩えて pHO. 5に調 整して酸溶解させて 500mLの酸溶解液を得た (NO—濃度、 pH、 In濃度を表 7に示
3
す)。
[0128] 次に、酸溶解液が 60°Cを超えないように温度制御しながら 1時間攪拌し、ヌッチェ
によって濾過して残渣 (未溶解の固体)を除去し、酸溶解液を回収し、この酸溶解液( pHO. 7)中に、幅 100mm、長さ 300mm、厚さ 6mmのアルミニウム板を浸漬させ、 液温を 50°Cになるように温度制御しながら、攪拌下 1時間置換反応を継続した。そし て、置換反応によって析出したスポンジインジウムを回収し、水分等を除去した後、水 酸ィ匕ナトリウムを用いてアルカリ熔铸 (300°C)を行!、、インジウム含有メタノレを金型に 抜き出した。
[0129] スポンジインジウムの採取量 (g)、インジウム含有メタルの採取量 (g)、インジウム含 有メタルの In品位並びに In回収率を表 7に示した。
[0130] (比較例 6)
実施例 28と同様のインジウム含有硝酸溶液 500mLを用意し、これに室温(20°C) の水 lOOmLを加え、さらに 25%アンモニア水をカ卩えて pH4. 5に調整した後、 0. 5 時間攪拌し、 0. 5時間静置して水酸化インジウムを析出させスラリーを得た。次いで 、表 7に示す大きさの濾紙 (東洋濾紙 (株)社製 4A)を用いてヌッチェにて吸引濾過を 行い、中和沈澱物とろ液 (NO—濃度、 pH、 In濃度を表 7に示す)を得た。この際、途
3
中ケーキに割れが生じたところで表面を均して濾過を続行し、インジウム含有硝酸溶 液投入してから 1時間後に濾過を終了した。
[0131] この中和沈澱物 260gを 360mLの水に投入し、濃硫酸をカ卩えて pHO. 5に調整し て酸溶解させて 500mLの酸溶解液を得た (NO—濃度、 pH、 In濃度を表 7に示す)。
3
[0132] 次に、酸溶解液が 60°Cを超えないように温度制御しながら 1時間攪拌し、ヌッチェ によって濾過して残渣 (未溶解の固体)を除去し、酸溶解液を回収した。
[0133] 次いで、この酸溶解液 (pHO. 7)に調整した後、幅 100mm、長さ 300mm、厚さ 6 mmのアルミニウム板を浸漬させ、液温を 50°Cになるように温度制御しながら、攪拌 下、 24時間置換反応を継続した力 スポンジインジウムの析出は見られな力つた。
[0134] (比較例 7)
実施例 28と同様のインジウム含有硝酸溶液 500mLを用意し、これに室温(20°C) の水 lOOmLを加え、さらに 25%アンモニア水をカ卩えて pH4. 5に調整した後、 0. 5 時間攪拌し、次いで、表 7に示す大きさの濾紙 (東洋濾紙 (株)社製 4A)を用いてヌッ チヱにて吸引濾過を行い、中和沈澱物とろ液 (NO—濃度、 pH、 In濃度を表 7に示す)
を得た。この際、途中ケーキに割れが生じたところで表面を均して濾過を続行し、イン ジゥム含有硝酸溶液を投入してから 1時間後に濾過を終了した。
[0135] この中和沈澱物 260gを 400mLの水(20°C)に投入して 10分間攪拌した後、攪拌 を止め 0. 5時間静置しデカンテーシヨンにより水相を除去するという洗浄処理を 2回 繰り返して洗浄処理済物と洗浄済液 (NO—濃度、 pH、 In濃度を表 7に示す)を得た。
[0136] 次に、この洗浄処理済物を 360mLの水に投入し、濃硫酸をカ卩えて pHO. 5に調整 して酸溶解させて 500mLの酸溶解液を得た (NO—濃度、 pH、 In濃度を表 7に示す)
[0137] 次 、で、酸溶解液が 60°Cを超えな 、ように温度制御しながら 1時間攪拌し、ヌッチ ェによって濾過して残渣 (未溶解の固体)を除去し、酸溶解液を回収した。
[0138] この酸溶解液(pHO. 7)に調整した後、幅 100mm、長さ 300mm、厚さ 6mmのァ ルミ-ゥム板を浸漬させ、液温を 50°Cになるように温度制御しながら、攪拌下、 8時間 置換反応を継続した。そして、置換反応によって析出したスポンジインジウムを回収 し、水分等を除去した後、水酸ィ匕ナトリウムを用いてアルカリ熔铸 (300°C)を行い、ィ ンジゥムメタルを金型に抜き出した。
[0139] スポンジインジウムの採取量 (g)、インジウム含有メタルの採取量 (g)、インジウム含 有メタルの In品位並びに In回収率を表 7に示した。
[0140] [表 7]
なお、インジウム含有硝酸溶液の分析結果は実施例 28の通りであり、インジウム含 有硝酸溶液の In濃度差ゃノヽンドリング誤差などにより、酸溶解液中の In含有量にばら つきが見られたものの、表 7に示されるように、 In回収率に関しては酸溶解液中の硝 酸含有量が lOOOOppmより少なくなると効率的に Inを回収できることが判明した。 (試験 1:酸溶解液中の硝酸イオン濃度とアルミ置換析出との関係)
酸溶解液中の硝酸イオン濃度がアルミニウム置換析出反応に与える影響を検討し
た。
[0141] 上記実施例 28で得た酸溶解液 500mLに 14N硝酸を所定量カ卩えて、表 8に示すよ うに酸溶解液中の NO—濃度を調整し、実施例 28と同様にアルミニウム板を用いた置
3
換析出を行ってスポンジ Inを得、さらに実施例 28と同様にアルカリ熔铸を行ってイン ジゥム含有メタルを得た。
[0142] この際、アルミニウム板を用いた置換析出反応を次の基準で評価した。
[0143] © : 1時間以内に置換析出終了した。
[0144] 〇:1〜1. 5時間以内に置換析出終了した。
[0145] Δ:置換は行われた力 2時間時点で置換未終了であった。
[0146] X:置換不可であった。
[0147] [表 8]
表 8より、インジウム含有硝酸溶液を出発原料として用いた場合、アルミニウム置換 析出反応を行うためには、酸溶解液中の硝酸イオン濃度 (不動態形成原因イオン濃 度)力 S22000ppm未満である必要力 Sあり、好ましく ίま 15000ppm未満、中でち 1000 Oppm以下であることが好ましいということが判明した。