明細書 圧電磁器組成物 技術分野
本発明は、 例えば、 圧電ァクチユエータゃ圧電トランス等の圧電デ バイスに好適な圧電磁器組成物に係り、 特に、 良好な振動特性を有して いて高電圧駆動に対して有効に対応することができるように改良したも のに関する。 背景技術
一般に圧電素子は、 圧電ァクチユエータゃ圧電トランス等の応用デ パイスとして広く利用されている。 上記圧電ァクチユエータは、 微小変 位制御が可能で、 しかも応答性が速く電磁ノイズを出さないことから、 精密位置決め用のモータ素子として利用されている。 又、 上記圧電トラ ンスは、 電磁トランスと比較して高い昇圧比が得られ、 効率が優れるこ とから、 液晶ディスプレイ用インパータのパックライ ト用に広く用いら れている。
これら圧電デパイスの機能は、 もともと圧電素子に印加した電気的 エネルギーを機械的エネルギーに変換する性質を利用している。 印加す る交流電圧の大きさに比例して圧電素子の振動振幅が大きくなる。 しか し、 圧電素子に印加する電圧をさらに高く していく と、 エネルギー損失 が大きくなり、 素子自体の発熱がひどくなり、 期待されたほどの高い振 動振幅が得られず、 酷い場合には、 圧電素子は破壊されてしまう。 圧電 素子の最大振動振幅 ( ) とそのときの共振周波数 ( f r ) とその圧電 素子の実効振動速度 (V ) は次の式(I )によって表される。
ν = ^2·π-β··ξ … ( I )
但し、
V :実効振動速度
f r :共振周波数
5 ξ :最大振動振幅
その為、 実際は圧電素子があまり発熱しない範囲の低い電圧で駆動 させる力、 或いは断続的に高い電圧を印加するといつた手法が採用され ている。
尚、 この種の圧電素子を開示するものとして、 例えば、 特許文献 1 10 、 特許文献 2、 特許文献 3等がある。
特許文献 1 特開 2 0 0 3— 6 3 8 6 5号公報
特許文献 2 特開 2 0 0 2— 3 6 2 9 7 3号公報
特許文献 3 特開 2 0 0 2— 3 5 6 3 7 2号公報
近年、 これら圧電デバイスの高性能化に伴い、 圧電素子に対してさ 15 らに高い振動振幅で駆動することが要求されている。 次の式(I I )に示 すように、 この振動速度 (V) は、 圧電素子の材料定数である圧電定数 (d
31) と機械的品質係数 (Q
m) の積に比例することが知られている 。 このため、 より高い振動振幅を得るためには、 圧電素子の圧電定数( d ^)と機械的品質係数 (Q
m) を共に大きくすることが必要である。
但但しし、、
VV :: 振振動動速速度度
CcEE :: ヤヤンンググ率率
PP :: 密密度度
2255 dd 3311 :: 圧圧電電定定数数
Qm : 機械的品質係数
E : 電界
このように、 高い振動振幅を得るためには、 圧電素子の圧電定数 ( d 31) や機械的品質係数 (Qm) を大きくする必要がある。 しかしなが ら、 従来の圧電素子においては高い振動振幅が得られる有用なものは存 在せず、 その為、 高周波領域における高電圧駆動に対して十分に対応で きないという問題があった。
本発明は、 このよ うな点に基づいてなされたものでその目的とする ところは、 高周波領域において高い振動振幅を有する圧電磁器組成物を 提供することにある。 発明の開示
上記目的を達成するべく本願発明の請求項 1による圧電磁器組成物 は、 結晶系を正方晶と菱面体晶との混合領域である混晶領域に近い菱面 体晶領域とし、 それによつて振動振幅 ( ξ ) を高くするようにしたこと を特徴とするものである。
又、 請求項 2による圧電磁器組成物は、 平均結晶粒径が 5 μ m以下 とし、 それによつて振動振幅 (ξ ) を高くするようにしたことを特徴と するものである。
又、 請求項 3による圧電磁器組成物は、 請求項 2記載の圧電磁器組 成物において、 平均結晶粒径を 3 μ m以下としたことを特徴とするもの である。
又、 請求項 4による圧電磁器組成物は、 ぺロプスカイ ト型酸化物で あって置換元素のモル比による組成式を P b x_yXy (Mn1/3M2/3)aZ r b T i。03 と表しこれを基本組成とし、 一般記号 A B 03で表される酸化 物圧電磁器組成物であって、 上記 Xはカルシウム (C a )、 ス トロンチ
ゥム (S r ) の内少なく とも 1種類を含み、 上記 Mはアンチモン (S b )、 ニオブ (N b)、 タンタル (T a ) の内少なく とも 1種類を含み、 y力 S O . 0 1 ≤ y ≤ 0 . 0 7の範囲にあり、 a、 b、 cが夫々 0 · 0 1 ≤ a ≤ 0. 1 5、 0. 3 8 ≤ b ≤ 0. 6 0、 0. 3 8 ≤ c ≤ 0. 6 0の範囲にあるとともに、 a + b + c = l . 0であることを特徴とする ものである。
又、 請求項 5による圧電磁器組成物は、 請求項 4 記載の圧電磁器組 成物において、 上記 Mとしてアンチモン ( S b )、 ニオブ (N b )、 タン タル (T a ) の内の二種類を使用するようにしたことを特徴とするもの である。
まず、 請求項 1 に記載された発明から説明する。 まず、 材料の振動 振幅 ( ξ ) を 次の式 ( I I 1 )、 ( I V) に示すように定義する。
但し、
a :振動振幅
f r :共振周波数
c Ε : ヤング率
β :密度
Ε :電界
k 3 1 :電気機械結合係数
ε 3 3 Τ :比誘電率
S 1 1 Ε :弾性コンプライアンス
d 3 1 :圧電定数
Qm :機械的品質係数
一般的に、 材料の硬さは、 式 ( I I I ) におけるヤング率 (CE) で 表すことができる。 又、 式 ( I I I ) から明らかなようにヤング率 (C
E) の高い材料は、 同時に振動振幅 ( ξ ) の高い材料でもある。 そして
、 本件発明者は、 ヤング率 (CE) は混晶領域で最小となり、 且つ、 混 晶領域近傍では正方晶側よりも菱面体晶側 (Z r リツチ組成) の方がよ り大きくなることを確認した {このとき、 圧電定数 (d 31) の低下度合 よりも、 ヤング率 (CE) の上がる度合いの方が高い }。 そこで、 本件 発明者は、 結晶系を正方晶と菱面体晶との混合領域である混晶領域に近 ぃ菱面体晶領域としたものである。
次に、 請求項 2に記載された発明について説明する。 まず、 本件発 明者は、 上記式 ( I I I ) に挙げられている圧電定数 (d 31) と機械 的品質係数 (Qm) の関係と ドメイン (双極子が一定の方向に揃ってい る領域) の流動性とが密接な関係にあることに着目した。 すなわち、 ド メインが動きやすいと圧電定数 (d 31) は大きく機械的品質係数 (Qm ) は小さくなる。 そして、 圧電素子の粒径が小さくなるほど粒内のドメ インも小さくなり、 又、 互いに接しているドメインが干渉し易くなるた めドメインの流動性が低下する。 これにより、 ドメイン間の摩擦による エネルギー損失が小さくなり、 機械的品質係数 (Qm) の急激な低下を 抑えることが可能となる。 このため、 高い電圧を加えてもより大きな振 動振幅 ( ) が得られることになる。 そこで、 本件発明者は、 平均結晶 粒径を 5 μ m以下とすることにより、 機械的品質係数 (Qm) の低下を 抑えることで、 高い振動振幅 (ξ) を得ることができるようにしたもの である。
又、 請求項 3記載の発明の場合には、 請求項 2記載の発明において 、 その効果をさらに高くするために、 平均結晶粒径を 3 μ m以下とした' ものである。
次に、 請求項 4記載の発明について説明する。 圧電材料には一般的 にハード材とソフト材がある。 ハード材は、 硬くて変位し難い材料であ つて、 式 ( I I I ) における圧電定数 (d 31) が小さく機械的品質係 数 (Qm) の高い材料である。 一方ソフ ト材は、 軟らかく変位し易い材 料であって、 式 ( I I I ) における圧電定数 (d 31) が大きく機械的 品質係数 (Qm) が小さな材料である。 前者はマンガン (Mn)、 鉄 ( F e ) といった元素を、 後者は、 ェォブ (N b )、 タンタル (T a )、 了 ンチモン (S b) といった元素を夫々加えることにより効果がある。 そして、 振動振幅 ( e ) をより大きくするためには、 式 ( I I I ) から明らかなように、 圧電定数 (d 31) と機械的品質係数 (Qm) が共 に大きな材料が必要である。 このため、 それぞれ効果のある元素として ハード材と してマンガン (Mn) をソフ ト材としてニオブ (Nb)、 タ ンタル (T a)、 アンチモン (S b) を選定して組み合わせたものであ る。
さらに、 圧電定数 ((^31) をより大きくするためには、 式 ( I I I ) から明らかなように、 電気機械結合係数 (k 31) と比誘電率 ( ε 33 τ) が共に大きな材料が必要である。 電気機械結合係数 (k 31) は圧電 材料の結晶系により大きく左右される。 混晶と呼ばれる正方晶と菱面体 晶との混合領域で最大となることが知られており、 その結晶系は主とし てジルコニウム (Z r )、 チタン (T i ) の比率を制御することによつ て決定される。
又、 比誘電率 ( ε 33 τ) を大きくするためには、 ス トロンチウム (S r ) やカルシウム (C a) といった元素が効果的である。
そこで、 通常の圧電材料 P Z Tをベースにストロンチウム (S r )、 マンガン (Mn), タンタル (T a ) {ニオブ (N b )、 ァンチモン ( S b )} といった元素を同時に加えることによって、 圧電定数 (d 31) と
機械的品質係数 (Qm) が共により大きな材料となる。 このとき、 圧電 定数 (d 31) が大きくなるほど機械的品質係数 (Qm) は小さくなり、 逆に圧電定数 (d 31) が小さくなるほど機械的品質係数 (Qm) は大き くなり、 圧電定数 (d 31) と機械的品質係数 (Qm) の関係は互いにト レードオフの関係にある。 このため、 圧電定数 ( d 3 J と機械的品質 係数 (Qm) のバランスに注意する必要があり、 そのバランスをとるた めには、 マンガン (Mn )、 タンタル (T a ) {ニオブ (N b )、 アンチ モン (S b)} の置換量を制御することになる。
又、 請求項 5に記載された発明の場合には、 Mとしてアンチモン ( S b)、 ニオブ (N b)、 タンタル (T a) の内の二種類を使用するよう にしたものであり、 それによつて、 より高い効果を期待することができ るものである。 図面の簡単な説明
第 1図は、 本発明の第 1の実施の形態を示す図で、 材料組成 (X = T a ) の場合において、 「a」、 「b」、 「 c」 の値と振動速度(V)の関係を 示した図である。
第 2図は、 本発明の第 1の実施の形態を示す図で、 表 1の資料 1一 8の組成 「a」、 「b」、 「c」 において、 平均結晶粒径と振動速度の関係 を示した図である。
第 3図は、 本発明の第 2の実施の形態を示す図で、 材料組成 (X = T a ) の場合 (表 2における資料 2— 1 0〜 2— 1 8) において、 「a」、 「b」、 「c」 の値と振動振幅 m)の関係を示した図である。
第 4図は、 本発明の第 2の実施の形態を示す図で、 材料組成 (X = T a ) の場合 (表 2の資料 2 - 1 0) の組成 「 a」、 「b」、 「 c」 におい て、 平均結晶粒径と振動振幅 m)の関係を示した図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、 第 1図及ぴ第 2図を参照して本発明の第 1の実施の形態を説明 する。
まず、 本実施の形態による圧電磁器組成物は、 ぺロブスカイ ト型酸化 物であって、 置換元素のモル比による組成式は次の式 (V) に示すよう になっている。
a P b (Mn1/3X2/3) 03 - b P b Z r 03- c P b T i 03 - - - (V) 本実施の形態による圧電磁器組成物は、 これを基本組成として一般記 号 AB O3で表されるものである。 上記 「X」 としては、 例えば、 タン タル(T a)、 ニオブ (Nb) の少なく とも何れか 1種類を使用すること が考えられる。
又、 上記 「 a」、 「 b」、 「 c」 は夫々 0. 0 1 < a < 0. 1 1、 0. 4 0 < b < 0. 60、 0. 2 9 < c < 0. 5 9の範囲にあり、 且つ、 a + b + c = 1. 00である。
そして、 各種酸化物を上記化学量論組成になるように秤量し、 遊星型 ポールミルで湿式混合を行った。 その後、 乾燥させてペレット状に成形 し、 850°Cで 2時間仮焼を行った。 次いで、 ライカイ機で粉砕後、 パ インダーを加えて造粒を行った。 次いで、 矩形状に成形した後、 1 23 0°Cで 2時間本焼成を行った。
そして、 得られた試料を X線回折により相を同定し、 電子顕微鏡 (S EM) より焼結体の破断面を観察して平均結晶粒径を求めた。 又、 圧電 特性については、 1 2 mm X 3 mmX 1 mmの試験片に電極を印刷 ·焼 き付けし、 分極処理 ( 1 3 0°C中 3. 0 k V /mm X 1 0分) を行つ た後、 インピーダンスアナライザー (HP 4 1 94A) で周波数特性を 測定し、 各種圧電定数を求めた。 一方、 大振幅振動時の高電圧特性につ
いては、 40 mmX 5 mmX 2 mmの試験片を作製した後、 圧電素子に 共振周波数近傍のバース ト電圧を印加して短時間だけ大振幅振動を励起 し、 電気端子間を短絡状態にして、 振動速度(V)と電流の過渡的な減衰 波形をレーザードップラー振動速度計(LDV)と電流プローブを用いて 測定した。
尚、 この過渡応答を利用した測定では、 ほとんど発熱を伴わず、 印加 電界一定下での測定となるため、 圧電素子の発熱の影響を極力排除した 条件で振動応力依存性のみを得ることが可能であり、 その結果、 振動速 度(V)を正確に測定することができるものである。
因みに、 従来は、 高電圧を加えるとエネルギーロスにより、 圧電素子 自身が発熱して特性が大きく変わるために、 正確な振動速度(V)を測定 することが困難であった。
以上の試験の結果を表 1に示す。
οτ
1 ¾ 0/S00ZdT/13d 8第 OOZ OAV
表 1は、 試料 1 — 1〜試料 1 _ 4 6までの各試験片に対して、 既に 説明した試験を施して、 振動速度(V)と平均結晶粒径 ( i m) を計測し て示したものである。 又、 試料 1 — 1〜試料 1一 4 4は何れも本実施の 形態による実施例に該当するものである。
まず、 試料 1一 1〜試料 1 — 3は、 a P b (Mn1/3X2/3) 03- b P b Z r 03-c P b T i 03 の 「 a」、 「b」、 「c」については、 前述した範 囲内の値に設定されているが、 計測した平均結晶粒径は 5 (μ m) を超 えるものである。
試料 1 — 4、 1— 5は、 「a」、 「b」、 「c」については、 前述した範囲 内の値に設定されていて、 且つ、 計測した平均結晶粒径は 5 (μ m) 以 下のものである。
試料 1 — 6、 1— 7は、 「a」、 「b」、 「 c」の内「b」については範囲外 のものであるが、 計測した平均結晶粒径は 5 ( μ τη) 以下のものであ る。
試料 1 — 8〜 1一 1 1は、 「 a」、 「b」、 「c」については、 前述した範 囲内の値に設定されていて、 且つ、 計測した平均結晶粒径は 5 (^ m) 以下のものである。
試料 1 — 1 2、 1一 1 3は、 「a」、 「b」、 「 c」の内 Γ b」については範 囲外のものであるが、 計測した平均結晶粒径は 5 ( β ΐΏ.) 以下のもの である。
試料 1 — 1 4〜 1ー 1 9は、 「a」、 「b」、 「c」については、 前述した 範囲内の値に設定されていて、 且つ、 計測した平均結晶粒径は 5 (, m ) 以下のものである。
試料 1 — 2 0は、 「a」、 「b」、 「c」の内「b」については範囲外のもの であるが、 計測した平均結晶粒径は 5 (μ m) 以下のものである。 試料 1 — 2 1、 1一 2 2は、 「a」、 「b」、 「c」については、 前述した
範囲内の値に設定されていて、 且つ、 計測した平均結晶粒径は 5 m ) 以下のものである。
試料 1一 2 3〜試料 1一 2 5は、 「a」、 「b」、 「0」については、 前述 した範囲内の値に設定されているが、 計測した平均結晶粒径は 5 (μ m ) を超えるものである。
試料 1 — 2 6、 1一 2 7は、 「a」、 「b」、 「c」については、 前述した 範囲内の値に設定されていて、 且つ、 計測した平均結晶粒径は 5 (μ m ) 以下のものである。
試料 1一 2 8、 1 — 2 9は、 「a」、 「b」、 「 c」の内「 b」については範 囲外のものであるが、 計測した平均結晶粒径は 5 (μ m) 以下のもの である。
試料 1一 3 0〜: 1 — 3 3は、 「a」、 「b」、 「c」については、 前述した 範囲内の値に設定されていて、 且つ、 計測した平均結晶粒径は 5 (/z m ) 以下のものである。
試料 1 — 3 4、 1ー 3 5は、 「a」、 「b」、 「 c」の内「 b」については範 囲外のものであるが、 計測した平均結晶粒径は 5 ( μ τα) 以下のもの である。
試料 1一 3 6〜 1 — 4 1は、 「 a」、 「b」、 「c」については、 前述した 範囲内の値に設定されていて、 且つ、 計測した平均結晶粒径は 5 ( μ ΐΏ. ) 以下のものである。
試料 1一 4 2は、 「a」、 「b」、 「c」内「b」については範囲外のもので あるが、 計測した平均結晶粒径は 5 m) 以下のものである。
試料 1 — 4 3、 1 — 4 4は、 「a」、 「b」、 「c」については、 前述した 範囲内の値に設定されていて、 且つ、 計測した平均結晶粒径は 5 ( μ τη ) 以下のものである。
試料 1一 1〜試料 1一 2 2は、 「X」 として T aを使用したものであ
り、 試料 1一 2 3〜 1一 44は、 「X」 として N bを使用したものであ る。
又、 資料 1— 4 5、 1一 4 6は比較例であり、 「X」 としてアンチモ ン (S b) を使用したものである。
上記表 1に示す結果から明らかなように、 何れの実施例についても、 ある程度の振動速度(V)を得ることができている。 その中でも、 「 a」、 「b」、 「c」については、 前述した範囲内の値に設定されていて、 且つ、 計測した平均結晶粒径は 5 (μ πι) 以下の実施例については、 比較的高 い振動速度(V)を得ることができたものである。 そして、 特に、 「a」、 「b」、 「c」については、 前述した範囲内の値に設定されていて、 且つ、 計測した平均結晶粒径は 3 (μ m) 以下の実施例については、 特に高い 振動速度(V)を得ることができたものである。 具体的には、 試料 1一 8 〜:!一 1 1、 試料 1— 1 5〜: I— 1 8、 試料 1一 2 0、 1— 2 1、 試料 1一 3 2〜: L— 3 5、 試料 1— 3 9〜 1一 4 2、 試料 1— 44、 1一 4 5である。
又、 試料 1— 6〜試料 1一 1 1に関して、 試料 1一 1 3〜試料 1一 1 7に関して、 試料 1一 20〜試料 1— 2 2に関して、 「 a」、 「b」、 「 c」 の値によって、 振動速度 (V)がどのように変化するかを考察してみた 。 その結果を図 1に示す。 第 1図は、 横軸に 「b」 の値をとり、 縦軸に 品導速度(V)をとり、 「a」 の値が、 0 · 0 5、 0. 0 7、 0. 1 1の 各場合において、 「b」 の値を変化させた場合に、 振動速度(V)がどの ように変化するかを示した図である。
それによると、 「a」 が 0. 1 1の場合は別として、 「a」 が 0. 0 5 、 0. 0 7の場合には、 「b」 が略 0. 4 < b < 0. 5 5の範囲内で、 特に高い振動速度(V)を得られていることがわかる。
又、 試料 1 _ 8に示した 「a」、 「b」、 「 c」の値であって平均結晶粒
径が異なる複数種類の試験片を用意して、 振動速度 (V)がどのように 変化するかについて考察してみた。 その結果を第 2図に示す。 第 2図は 、 横軸に平均結晶粒径をとり、 縦軸に振動速度(V)をとつて両者の関係 を示した図である。 それによると、 平均結晶粒径が 5 μ m以下の場合に 高い振動速度(V)を得られることがわかる。 又、 特に、 平均結晶粒径が 3 μ m以下の場合には極めて良好な振動速度(V)が得られていることが わ力 ¾る。
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。 まず、 本実施の形態による圧電磁器組成物によると、 ぺロブスカイ ト 型酸化物であって、 置換元素のモル比による組成式を a P b (Mn1/3X 2/3) O 3-b P b Z r Og-c P b T i 03 と表し、 これを基本組成とし て一般記号 A B 03で表され、 高い振動速度を有する構成になっている ので、 それによつて、 高電圧を加えても機械的な破壌がなく、 安定駆動 が可能な圧電磁器組成物を得ることが可能になった。
特に、 上記 a、 b、 cを、 モル比でそれぞれ 0. 0 1 < a < 0. 1 1 、 0. 40 < b < 0. 60、 0. 29 < c < 0. 5 9の範囲内で設定し 、 且つ、 a+b + c = l . 00であるように構成しているので、 上記効果 をより確実に得ることができる。
又、 それと同時に平均粒径を 5 /xm以下とした焼結体とすることによ つて、 上記のような高い振動速度を有する圧電磁器組成物をより確実に 得ることが可能になった。 特に、 平均粒径を 3 μ m以下とすることによ り、 より確実なものとなる。
尚、 「X」 としては、 T a、 N b以外にも可能性はある。
又、 「a」、 「b」、 「c」 としては、 別の範囲も可能性はある。
又、 「X」 としては、 例えば、 タンタル(T a)、 ュォブ (Nb) の少 なく とも何れか 1種類を使用することが考えられるが、 両者の併用、 両
者以下のものの使用もその可能性を否定するものではない。
次に、 第 3図及ぴ第 4図を参照して本発明の第 2の実施の形態を説 明する。 この第 2の実施の形態においては、 まず、 圧電材料の振動振幅 ( ξ ) を既に説明した式 ( I I 1 )、 ( I V) によって規定した。
説明の都合上同じ式 ( I I 1)、 ( I V) を繰り返し記す。
·· (in)
π ·νρ
但し、
e. :振動振幅
f r :共振周波数
CE :ヤング率
P :密度
E :電界
k 31 :電気機械結合係数
ε 33Τ :比誘電率
S! !Ε :弾性コンプライアンス
d 31 :圧電定数
Qm :機械的品質係数
次に、 上記式 ( I I 1 )、 ( I V) に基づいて、 次のような第 1〜第 3の材料選定基準を設定し、 それら第 1〜第 3の選定基準に基づいて圧 電磁器組成物を構成した。
まず、 第 1の材料選定基準から説明する。 一般的に、 材料の硬さは 、 式 ( I I I ) におけるヤング率 (CE) で表すことができる。 又、 式 ( I I I ) から明らかなように、 ヤング率 (CE) の高い材料は、 同時 に振動振幅 ( ) の高い材料でもある。 そして、 ヤング率 (CE) は混
晶領域 (正方晶と菱面体晶との混合領域) で最小となり、 混晶領域近傍 では正方晶側よりも菱面体晶側 (Z r リッチ組成) の方がより大きくな る {このとき、 圧電定数 (d 31) の低下度合よりも、 ヤング率 (CE) の上昇度合の方が高い }。 そこで、 圧電材料の結晶系を正方晶と菱面体 晶との混合領域である混晶領域に近い菱面体晶領域としたものである。 これが第 1の材料選定基準である。
次に、 第 2の材料選定基準について説明する。 式 ( I I I ) に挙げ られている圧電定数 (d 31) と機械的品質係数 (QJ の関係と ドメイ ン (双極子が一定の方向に揃っている領域) の流動性との間には密接な 関係がある。 すなわち、 ドメインが動き易いと圧電定数 (d 31) は大 きく機械的品質係数 (Qm) は小さくなる。 そして、 圧電素子の粒径が 小さくなるほど粒内のドメインも小さくなる。 さらに、 互いに接してい るドメインが干渉し易くなるため、 ドメインの流動性が低下する。 これ により、 ドメイン間の摩擦によるエネルギー損失が小さくなり、 結果的 に機械的品質係数 (Qm) の急激な低下を抑えることとなる。 このため 、 高電圧印加においてより大きな振動振幅 ( ) が得られることになる 。 そこで、 平均結晶粒径を 5 μ m以下とすることにより、 機械的品質係 数 (Qm) の急激な低下を抑えることで、 振動振幅 ) を高くするよ うにしたものである。 これが第 2の材料選定基準である。
尚、 この実施の形態では、 平均結晶粒径を 5 μ m以下とし、 中でも 3 μ m以下をより好ましいものとして選択している。
次に、 第 3の材料選定基準について説明する。 圧電材料としては一 般的にハード材とソフ ト材に分けられる。 ハード材は、 硬くて変位し難 い材料であって、 式 ( I I I ) における圧電定数 ( d 31) が小さく機 械的品質係数 (Qm) の大きな材料である。 一方ソフ ト材は、 軟らかく 変位し易い材料であって、 式 ( I I I ) における圧電定数 (d 31) が
大きく機械的品質係数 (Qm) が小さな材料である。 前者はマンガン ( Mn)、 鉄 (F e) といった元素を、 後者は、 ニオブ (Nb)、 タンタル (T a ), アンチモン (S b) といった元素を夫々加えることにより効 果がある。
そして、 振動振幅 ( ξ ) をより大きくするためには、 圧電定数 (d 3 1) と機械的品質係数 (Qm) が共に大きな材料が必要である。 そこで 、 ハード材としてマンガン (Mn) をソフト材としてニオブ (N b)、 タンタル (T a )、 アンチモン (S b) の中の少なく とも一種を選定し て組み合わせたものである。
さらに、 圧電定数 (d 31) をより大きくするためには、 電気機械結 合係数 (k 31) と比誘電率 ( ε 33 τ) が共に大きな材料が必要である 。 電気機械結合係数 (k 31) は圧電材料の結晶系により大きく左右さ れ、 既に説明した混晶領域で最大となることが知られている。 又、 その 結晶系は主としてジルコユウム (Z r )、 チタン (T i ) の比率を制御 することによって決定される。
又、 電気機械結合係数 ( ε 33 Τ) を大きくするためには、 ストロンチ ゥム (S r ) やカルシウム (C a) といった元素が効果的である。
このため、 通常の圧電材料 P Z Tをベースにス トロンチウム (S r ) 、 マンガン (Mn)、 タンタル (T a) {ニオブ (Nb)、 アンチモン ( S b) }といった元素を同時に加えることによって、 圧電定数 (d 31) と機械的品質係数 (Qm) が共により大きな材料となる可能性が高くな る。 このとき、 圧電定数 (d 31) が大きくなるほど機械的品質係数 ( Qm) は小さくなり、 逆に圧電定数 (d 31) が小さくなるほど機械的品 質係数 (Qm) は大きくなり、 圧電定数 (d 31) と機械的品質係数 (Q m) の関係は互いにトレードオフの関係にある。 よって、 圧電定数 (d 31) と機械的品質係数 (QJ のバランスに注意する必要があり、 その
パランスをとるためには、 マンガン (Mn)、 タンタル (T a ) {ニオブ (Nb)、 アンチモン (S b) }の置換量を制御することになる。
そこで、 本実施の圧電磁器組成物は、 ぺロブスカイ ト型酸化物であ つて、 置換元素のモル比による組成式が次の式 (V I ) に示すようにな つている。
P b yXパ Mn1/3M2/3)aZ rbT i 0O3—- (V I )
これを基本組成として一般記号 AB 03で表されるものである。 上記 X」 としては、 例えば、 ストロンチウム(S r )、 カルシウム (C a ) の少なく とも何れか一種類を使用することが考えられる。 一方、 上記 「 MJ としては、 例えば、 タンタル(T a )、 ニオブ (N b )、 アンチモン (S b) の少なく とも何れか一種類を使用する とが考えられる。 又、 上記 「y 「a」、 b」、 c」 は夫々 0. 0 1≤ y≤ 0. 0 7、 0. 0 1≤ a≤ 0. 1 5、 0. 38≤ b≤ 0. 60、 0. 3 8≤ c≤ 0. 60 の範囲にあり、 且つ、 a+b + c = l . 00である。 これが第 3の材料選 定基準である。
以上が第 1〜第 3の材料選定基準であり、 本実施の形態ではこれら第 1〜第 3の材料選定基準に基づいて多数の試料を作成し、 それらについ て各種試験を施したものである。
尚、 試料の中には上記第 1〜第 3の材料選定基準の全てを満足するも のと、 それらの一部の材料選定基準を満足するものの二種類が混在して いるものである。
以下、 それらの試料に関して説明する。 まず、 各種酸化物を上記化 学量論組成 (第 3の材料選定基準) になるように抨量し、 遊星型ポール ミルで湿式混合を行った。 その後、 乾燥させてペレッ ト状に成形し、 8 50°Cで 2時間仮焼を行った。 次いで、 ライカイ機で粉碎後、 バインダ 一を加えて造粒を行い、 矩形状に成形した後、 1 230°Cで 2時間で本
焼成を行った。 そして、 得られた試料を X線回折により結晶相を同定し 、 S EMより焼結体の破断面を観察して平均結晶粒径を求めた。
又、 圧電特性については、 得られた焼結体を 1 2mmX 3 mm X 1 m mの試験片に加工を行った。 さらに電極印刷 ·焼付け、 分極処理 (1 3 0°C中 2. 8 k v/mm X 1 0分) を行った後、 インピーダンスアナ ライザ一 (HP 41 94A) で周波数特性を測定し、 各種圧電特性を求 めた。 一方、 振動振幅特性については、 外形 φ 1 5 111111 内径<) 8 mm X 3 mmの試験片を作製した後、 ランジュパ 型振動子を組み立てた。 そして、 その振動子に共振周波数近傍の 1 00 Vの交流電圧を印加して 振動させて、 レーザードップラー振動速度計(LDV)にて振動振幅量を 測定した。 以上の試験の結果を表 2に示す。
5 000947
2 ) (a)M (b)Zr (C)Ti 取大振動 平均 fh日日系
S& 1=1 (y
振幅 粒径
Sr Ca Ta Nb Sb ( j" m) ( m)
-1* 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.53 0.47 1.2 <3 混晶 **-2 0.01 0.00 0.01 0.00 0.00 0.40 0.59 2.1 3〜5 正方晶-3 0.01 0.00 0.01 0.00 0.00 0.50 0.49 2.7 3〜5 正方晶-4 0.01 0.00 0.01 0.00 0.00 0.60 0.39 2.2 3~5 rf 体晶-5* 0.01 0.00 0.16 0.00 0.00 0.37 0.47 1.5 >5 混晶 **-6 0.01 0.00 0.15 0.00 0.00 0.34 0.51 2.0 3〜5 正方晶-7 0.01 0.00 0.15 0.00 0.00 0.38 0.47 2.3 3 ;a
〜5 /比日日
-8 0.01 0.00 0.15 0.00 0.00 0.42 0.43 2.1 3〜5 面; (本晶-9* 0.01 0.00 0.07 0.00 0.00 0.36 0.57 1.7 3〜5 正方晶-10 0.01 0.00 0.07 0.00 0.00 0.38 0.55 2.4 3〜5 正方晶-11 0.01 0.00 0.07 0.00 0.00 0.47 0.46 3.8 3〜5 面体晶-12 0.01 0,00 0.07 0.00 0.00 0.55 0.38 2.5 3〜5 rfSife晶-13 0.01 0.00 0.10 0.00 0.00 0.38 0.52 2.6 3〜5 正方晶-14 0.01 0.00 0.10 0.00 0.00 0.47 0.43 4.5 3~5 面体晶-15 0.01 0.00 0.10 0.00 0.00 0.55 0.35 2.8 3〜5 siSi体晶-16 0.01 0.00 0.12 0.00 0.00 0.38 0.50 2.7 3〜5 正方晶-17 0.01 0.00 0.12 0.00 0.00 0.47 0.41 3.5 3~5 ¾卤体晶-18 0.01 0.00 0.12 0.00 0.00 0.55 0.33 2.8 3〜5 体晶-19* 0.01 0.00 0.00 0.07 0.00 0.36 0.57 1.7 >5 i£ 日日-20 0.01 0.00 0.00 0.07 0.00 0.38 0.55 2.2 <3 lEJ日日-21 0.01 0.00 0.00 0.07 0.00 0.47 0.46 2.6 <3 晶-22 0.01 0.00 0.00 0.07 0.00 0.55 0.38 2.3 <3 siSl体晶-23* 0.01 0.00 0.00 0.16 0.00 0.37 0.47 1.5 >5 混晶"-24 0.01 0.00 0.00 0.15 0.00 0.34 0.51 2.1 3〜5 正方晶-25 0.01 0.00 0.00 0.15 0.00 0.38 0.47 2.4 3〜5 / 日日-26 0.01 0.00 0.00 0.15 0.00 0.42 0.43 2.2 3~5 ¾ώ体晶-27* 0.01 0.00 0.03 0.00 0.04 0.36 0.57 1.7 3〜5 ι£ ϊ日日-28 0.01 0.00 0.03 0.00 0.04 0.38 0.55 2.4 3〜5 正方晶-29 0.01 0.00 0.03 0.00 0.04 0.47 0.46 3.7 3~5 : 曰
Ή日日-30 0.01 0.00 0.03 0.00 0.04 0.55 0.38 2.5 3~5 本晶-31* 0.01 0.00 0.03 0.00 0.04 0.61 0.32 2.3 >5 ^g]体 ¾-32 0.01 0.00 0.02 0.00 0.05 0.47 0.46 4.2 3〜5 /£B日日-33 0.01 0.00 0.02 0.00 0.05 0.47 0.46 4.4 3 za 曰
〜5 /比曰曰
-34 0.02 0.00 0.02 0.00 0.05 0.47 0.46 4.2 3〜5 / 日日-35 0.04 0.00 0.02 0.00 0.05 0.47 0.46 4.3 3〜5 /IE日日-36* 0.08 0.00 0.07 0.00 0.00 0.47 0.46 1.7 >5 /芘日日-37 0.02 0.02 0.07 0.00 0.00 0.47 0.46 4.4 3〜5 /££日日-38 0.02 0.04 0.07 0.00 0.00 0.47 0.46 4.1 3〜5 ^日日-39* 0.02 0.06 0.07 0.00 0.00 0,47 0.46 1.6 >5 日日
表 2は、 試料番号 2—:!〜 2— 3 9までの各試験片に対して、 上記 手法によって測定した最大振動振幅 )と平均結晶粒径 ( m) の結果 を示したものである。 又、 表 2中結晶系において 「混晶」 とあるのは 「 正方晶」 と 「菱面体晶」 の何れの結晶系をも含んでいることを意味して いる。
試料番号 2 _ 1は、 本組成のぺロブスカイ ト型の結晶構造において 、 一般記号 ΑΒ 03の Αサイ ト位置に入る鉛 (P b) 以外の元素は使用 せず、 さらに Bサイ ト位置に入るジルコニウム (Z r ) 及ぴチタン (T i ) 以外の第 3成分元素 (a) としてタンタル (T a)、 ュォブ (N b ) 、 アンチモン (S b) を全く加えないものであり、 比較例に相当するも のである。 焼成後の平均粒径は 3 μ m以下と小さいが、 最大振動振幅量 が 2. 0 μ m以下と低くハイパワー用の圧電磁器組成物としては不適切 なものであった。
試料番号 2 _ 9と 2— 1 9は、 第 3成分としてそれぞれタンタル ( T a ) とニオブ (N b ) を加えたものであるが、 ジルコニウム (Z r ) については (b = 0. 3 6) と少なく、 0. 3 8≤ b 0. 60と規定 している第 3の材料選定基準からは外れるものであり、 比較例に相当す るものである。 そして、 混晶領域 {正方晶と菱面体晶が共存する領域で ジルコニウム (Z r ) とチタン (T i ) の比率により決まる }から大き く外れるために、 電気機械結合係数 (k 31) や機械的品質係数 (QJ といった圧電特性が大きく低下してしまい、 最大振動振幅量も 2. 0 μ m以下と小さくハイパワー用圧電磁器組成物としては不適切なものであ つた。
試料番号 2— 5と 2— 2 3は、 逆に混晶領域であるが、 第 3成分と して夫々タンタル (T a) とニオブ (Nb) を所定よりも多く ( a = 0 . 1 6) 加えたものであり、 0. 0 1≤ a≤ 0. 1 5と規定する第 3の
材料選定基準から外れるものであり、 比較例に相当するものである。 そ して、 平均粒径が 5 ^u mと大きく異常な粒成長がみられ圧電特性が低下 した。 このため、 最大振動振幅も 2. Ο μ πι以下となり、 ハイパワー用 圧電磁器組成物としては不適切なものであった。
試料番号 2— 2、 2— 3、 2— 4、 2— 6、 2— 7、 2— 8と試料 番号 2— 1 0〜 2— 1 8は、 第 3成分としてタンタル (T a ) を加えた ものであり、 何れも本実施の形態における実施例に相当するものである 。 何れも最大振動振幅量が 2. Ο μ πι以上であり、 ハイパワー用圧電磁 器組成物としては有用であった。 特に、 第 3成分のタンタル (T a ) 量 が 0. 0 7≤ a≤ 0. 1 2の範囲で、 且つ、 結晶系が混晶領域に近い菱 面体晶のとき、 最大振動振幅量はさらに大きくなつた (試料番号 2— 1 1、 2— 1 4、 2— 1 7)。 中でも試料番号 2— 1 4は、 最大振動振幅 量が 4. 5 /x mと最大となった。 これは、 高電圧印加時の電気機械結合 係数 (k 31) と機械的品質係数 (QJ の積の値が最大になったからで ある。
又、 試料番号 2— 2 0、 2— 2 1、 2— 2 2は前記の第 3成分の元 素をュォブ (N b) に変更したものであり、 何れも本実施の形態におけ る実施例に相当するものである。 そして、 何れも最大振動振幅量が 2. 0 μ mを超えており、 さらに焼結後の平均粒径が 3 μ m以下と著しく小 さくなつており、 これによりタンタル (T a) で置換した試料と同等以 上の効果が得られることを確認した。
又、 試料番号 2— 2 8、 2— 2 9、 2— 3 0は、 第 3成分としてタ ンタル (Ta) とアンチモン (S b) を同時に加えたものであり、 何れ も本実施の形態における実施例である。 そして、 これらの最大振動振幅 量も、 何れも 2 μ mを大きく超えている。 このように、 複数の元素を加 えることによってさらに最大振動振幅量の改善を図ることができたもの
である。
その一方で試料番号 2— 2 7と 2 — 3 1はタンタル (Ta) とアンチ モン (S b ) を同時に加えたものであるが、 それぞれジルコニウム (Z r ) とチタン (T i ) が少なく、 0. 3 8 ≤ b ≤ 0. 6 0、 0. 3 8 ≤ c ≤ 0. 6 0と規定している第 3の材料選定基準から外れるものであり 、 比較例に相当するものである。 そして、 混晶領域から大きく外れるた めに、 圧電特性が大きく低下したために、 最大振動振幅量が 2. 0 μ τη 以下と小さくハイパワー用圧電磁器組成物としては不適切なものであつ た。
又、 試料番号 2 — 3 2、 2 — 3 3、 2 — 3 4、 2 — 3 5と 2 — 3 7 、 2 — 3 8は、 本組成のぺロプスカイ ト型の結晶構造において、 一般記 号 A B O 3の Αサイ ト位置に入る鉛 (P b ) の一部をス トロンチウム ( S r ) 或いはカルシウム (C a ) で置換したものであり、 0. 0 1 ≤ y ≤ 0. 0 7と規定した第 3の材料選定基準を満足するものであり、 本実 施の形態における実施例に相当するものである。 これらの Aサイ ト置換 により最大振動振幅量は著しく改善された。 しかし、 試料番号 2 — 3 6 と 2 — 3 9は何れも、 一般記号 A B 03の Aサイ ト置換量が 0. 0 7を 超えるものであって、 0. 0 1 y≤ 0. 0 7と規定した第 3の材料選 定基準を外れるものであり、 比較例に相当するものである。 そして、 焼 結後の平均粒径が著しく大きくなり最大振動振幅量も 2 μ m以下となり ハイパヮ一用圧電磁器組成物としては不適切なものであった。
又、 試料番号 2 — 1 0〜2 _ 1 8に関して、 「 a」、 「b」、 「c」の値 によって、 振動振幅(ξ )がどのように変化するかを考察してみた。 その 結果を第 3図に示す。 第 3図は、 横軸に 「b」 の値をとり、 縦軸に振動 振幅( )をとり、 「a」 の値が、 0. 0 7、 0. 1 0、 0. 1 2の各場 合において、 「b」 の値を変化させた場合に、 振動振幅(ξ )がどのよう
に変化するかを示した図である。 それによると、 「 a」 が 0. 1 0の場 合には、 「b」 が 0. 4 < b < 0. 5 5の範囲内で、 特に高い振動振幅( ξ )を得られていることがわかる。
又、 試料番号 2— 1 0に示した 「 a」、 「b」、 「c」の値であって平均 結晶粒径が異なる複数種類の試験片を用意して、 振動振幅 ( )がどの ように変化するかについて考察してみた。 その結果を第 4図に示す。 第 4図は、 横軸に平均結晶粒径をとり、 縦軸に振動振幅( )をとつて両者 の関係を示した図である。 それによると、 平均結晶粒径が 5 μ m以下の 場合に高い振動振幅(ξ)を得られることがわかる。 又、 特に、 平均結晶 粒径が 3 μ m以下の場合には極めて良好な振動振幅(ξ )が得られている ことがわ力 る。
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。 まず、 結晶系を正方晶と菱面体晶との混合領域である混晶領域に近 ぃ菱面体晶領域としているので、 高い振動振幅(ξ)を有する圧電磁器組 成物をより確実に得ることが可能になった。
又、 平均結晶粒径を 5 μ m以下とすることにより、 高い振動振幅を 有する圧電磁器組成物をより確実に得ることが可能になった。 特に、 平 均粒径を 3 β m以下とすることによってより高い効果を得ることができ るものである。
又、 本実施の形態による圧電磁器組成物によると、 ぺロプスカイ ト 型酸化物であつて置換元素のモル比による組成式を P b — y X y (M n 1/3 M2/3)aZ r bT i c03 と表しこれを基本組成とし、 一般記号 A B O 3で表 される酸化物圧電磁器組成物であって、 上記 Xはカルシウム (C a;)、 ストロンチウム (S r ) の内少なく とも 1種類を含み、 上記 Mはアンチ モン (S b )、 ニオブ (Nb)、 タンタル (T a) の内少なく とも 1種類 を含み、 yが 0. 0 1≤ v 0. 07の範囲にあり、 a、 b、 cが夫々
0 . 0 1 ≤ a ≤ 0 . 1 5、 0 . 3 8≤ b ≤ 0 . 6 0、 0 . 3 8≤ c ≤ 0
. 6 0の範囲にあるとともに、 a + b + c = l . 0を満足するような材 料構成になっているので、 それによつて、 高電圧を加えても機械的な破 壌がなく、 安定駆動が可能な圧電磁器組成物を得ることが可能になつた
産業上の利用可能性
本発明による圧電磁器組成物は、 高い振動速度を有するため、 より 高い出力が可能となり、 ハイパワー用の圧電ァクチユエータゃ圧電トラ ンス等の圧電磁器組成物として最適である。