明 細 書
強アルカリイオン水及び脱脂 ·防鲭方法
技術分野
[0001] 本発明は、環境に優しぐ安全性が高い、 pHが 12以上の強アルカリイオン水、及 び、この強アルカリイオン水を使用した脱脂 ·防鲭方法に関するものである。
背景技術
[0002] 従来、ねじ '工具'産業機械などの金属部品や金属製品の切肖 1 圧造'転造などの 加工、表面処理の中間工程などに、脱脂 (洗浄)や防鲭が必要とされている。このうち の、主にねじ部品などの金属切削部品や圧造 ·転造部品の脱脂には、従来、トリクロ 口エチレンなどの有機塩素系溶剤が使用されていた。
[0003] し力しながら、このトリクロロエチレンなどの有機塩素系溶剤は、廃棄時に環境を汚 染し (環境面)、人体に良くなく (衛生面)、引火性があり危険で (安全面)、管理がし にく 、 (管理面)などの点から、公害防止協定によってその使用が廃止される傾向に なってきている。
[0004] そのため、その代替洗浄剤として、灯油と!/、つたアルコール系などの洗浄剤が一部 で使用されている。し力しながら、これらの洗浄剤でも、上記環境面、衛生面、安全面 、管理面などの問題が解決されたわけではない。また、これらの洗浄剤は、トリクロ口 エチレンほどの洗浄力を発揮できない。
[0005] ところで、脱脂 (洗浄)とは、油分を除去することであるから、金属部品や金属製品を 脱脂した場合は、鲭を助長することになる。従って、脱脂は防鲭とは全く別の工程で ある。よって、脱脂は可能でも、酸ィ匕は防止できない(防鲭作用がない)と言うのがー 般的な考え方であった。
[0006] しかし、近年、例えば pHが 10以上の強アルカリイオン水に、特定濃度の 6価クロム を含有させることで、油分の洗浄除去に加えて、防鲭効果も得られるという技術が提 案されている。
特許文献 1 :日本特開 2001-89879号公報
[0007] この強アルカリイオン水を使用すれば、次の 3点によって、油分の洗浄除去を行うこ
とがでさる。
1)多量のマイナスイオンが汚れや物質の表面をプラスイオン化する分子間引力現象
2)微量の酵素による触媒作用により汚れの隙間や物質の表面まで水を行き渡らせる 毛細管現象促進効果
3)マイナスイオン同士の反発作用により物質力 汚れを引き離す剥離現象促進効果 [0008] し力しながら、従来は、 10以上の pHを得るために、例えば塩ィ匕ナトリウム (NaCl)を 添加していたので、耐食性が悪くなり、水素よりイオン化傾向の高い鉄、亜鉛、アルミ ニゥムなどの酸ィ匕を助長して鲭を発生させることになつていた。従って、鲭の発生を 防止するために、酸ィ匕防止剤など、必ず何らかの薬品を添加する必要があった。上 記の技術では、特定濃度の 6価クロムを含有させて、防鲭効果を得ている。
[0009] すなわち、従来は、いずれの方法も、何らかの薬品を添加して洗浄力や防鲭カを 得て 、るので、根本的な解決には至って!/、な!/、のが実情である。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 本発明が解決しょうとする問題点は、従来は、 pH促進剤を使用せずに、 pHが 12 以上の強アルカリイオン水を製造することができないという点、及び、脱脂や防鲭を 薬品に頼っていた従来技術では、環境面、衛生面、安全面、管理面に問題があり、 公害防止協定を遵守できな!/、と!/、う点である。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明者らは、上記の強アルカリイオン水に着目し、種々の実験を行った。その結 果、従来、塩 (Nacl)又は界面活性剤や水酸ィ匕ナトリウム (NaOH)などの pH促進剤 を使用しなければ生産が不可能であった、 pHが 12以上の強アルカリイオン水を、前 記 pH促進剤を使用することなぐ強電解のみによって生産することが可能となった。
[0012] この場合には、有機塩素系溶剤は勿論のこと、アルカリ系、中性、酸系などの水系 溶剤、可燃性溶剤を組み合わせて界面活性剤を添加した準水系溶剤、アルコール 系、炭化水素系、シリコン溶剤系などのいかなる薬品や溶剤を混合しなくても、優れ た脱脂効果と共に防鲭効果をも発揮することを知見した。
[0013] 本発明の pHが 12以上の強アルカリイオン水は上記の知見に基づいてなされたも
のであり、
環境面、衛生面、安全面、管理面に問題がなぐ公害防止協定を遵守可能とする ために、
pH促進剤を使用することなぐ強電解により生産したことを最も主要な特徴とする。
[0014] また、本発明の脱脂 ·防鲭方法は、
金属部品に、 pH促進剤を使用することなぐ強電解により生産した、 pHが 12以上 の前記本発明の強アルカリイオン水のみを噴霧する、或いは、前記強アルカリイオン 水中に金属部品を浸漬することを最も主要な特徴とするものである。
かかる本発明方法は、強アルカリイオン水の温度を上げることにより、温熱効果で、 その作用効果の向上が期待できる。
[0015] 本発明の脱脂'防鲭方法において、 pH促進剤を使用せずに強電解により生産した 本発明の強アルカリイオン水を使用するのは、従来方法のような、 pH促進剤を使用 して生産した強アルカリイオン水を使用した場合には、酸化が助長され、防鲭のため に他の薬品や溶剤の使用が必要となるためである。
[0016] また、本発明の脱脂'防鲭方法において、 pHが 12以上の強アルカリイオン水を使 用するのは、本発明者らの実験によれば, pHが 12以上の強アルカリイオン水を使用 することにより、他の薬品や溶剤を使用しなくとも、脱脂と防鲭が両立できることが判 明した力 である。
[0017] 強アルカリイオン水の pHは 12以上であればいくらでも良いが、生産性と生産コスト との関係から、強アルカリイオン水の PHは 12— 13のものを使用することが望ましい。
[0018] 本発明の脱脂'防鲭方法において、 pHが 12以上の本発明の強アルカリイオン水 のみとは、従来の脱脂'防鲭方法に用いられていた、有機塩素系溶剤は勿論のこと、 アルカリ系、中性、酸系などの水系溶剤、可燃性溶剤を組み合わせて界面活性剤を 添加した準水系溶剤、アルコール系、炭化水素系、シリコン溶剤系などのいかなる薬 品をも一切含まな 、意味である。
[0019] また、本発明において、金属部品とは、一般に言われる金属製の部品の他に、木- ガラス .ゴム .榭脂等の表面を金属でコーティングしたものも含む。
発明の効果
[0020] 本発明は、一切の薬品や溶剤を含まない、強電解により生産した pHが 12以上の 強アルカリイオン水であるので、脱脂'防鲭を行う場合には、優れた洗浄力や防鲭効 果を安定して発揮しつつ、環境に優しぐ高い安全性を得ることができる。
発明を実施するための最良の形態
[0021] 本発明に係る pHが 12以上の強アルカリイオン水は、環境面、衛生面、安全面、管 理面に問題がなぐ公害防止協定を遵守可能とする目的を、 pH促進剤を使用するこ となぐ強電解により生産することで、実現した。
[0022] 具体的には、本発明に係る pHが 12以上の強アルカリイオン水は、例えば水道水 に含まれる微量の残留塩素、赤鲭、トリハロメタン、溶解性鉛、農薬などを、粒状抗菌 活性炭や亜硫酸カルシウムなどを用いて除去した後電解槽に供給し、この電解槽の 陰極側出口カゝら排出されたアルカリイオン水を電解槽の陰極側に送って繰返し循環 させるようにした連続式の特殊還流電解装置にて、生産する。
[0023] また、本発明に係る脱脂'防鲭方法では、環境に優しぐ高い安全性を確保すると いう目的を、一切の薬品や溶剤を使用しないで強電解のみにより生産した、 pHが 12 以上の本発明の強アルカリイオン水のみを使用することで、実現した。
実施例 1
[0024] 以下、本発明に係る脱脂 ·防鲭方法の効果を確認するために実験した結果にっ 、 て説明する。
試験品として、オーステナイト系の SUS304ステンレス鋼製のボルトを、以下の液体 や脱脂洗浄剤(水温は 21— 24°C)に、 22— 25°Cの室温中で 60分間浸漬した後、 1 0日間自然乾燥させ、脱脂効果、防鲭効果などを調査した。その結果を下記表 1に示 す。
[0025] [表 1]
脱脂 防鲭 消臭 除菌 の 使用した液体 衛生 安全性 - そ 効果 効果 効果 効果 面 面 危険性 他
P H I 2〜1 3
本発明
の強電解水 0 O O 〇 O O 〇 〇
P H 7の水道水 X 厶 X X X X
(塩素等を含む) O X p H 8のミネラ
ルウォー夕一 X Δ X X X X
(無電解の弱ァ 〇 X 比較 ルカリ水)
p H 9のアル力
X 厶 X
リイオン水 △ X X O X p H10〜 1 1の
強アル力リイォ X △ X 厶 X Δ O X ン水
トリクロロェチ
従来 厶 X 〇 X X X X レン 0
[0026] 上記表 1において、強電解によって生産した pHが 12〜: 13の強ァノレカリイオン水 ( 表 1では強電解水と表す。表 2, 3も同じ。)を使用した本発明方法では、分子間引力 現象、毛細管現象促進効果、剥離現象促進効果によって、ほぼ確実に脱脂できた。
[0027] 防鲭についても、本来、锖ぴにくいステンレス鋼ではあるものの、効果的に酸化を
抑制でき、鲭の発生がなく輝きがみられた。また、臭いの元になる汚れ (油分)や他の 成分を、酸化を防ぐ防腐効果や前記の剥離現象促進効果により除去でき、臭いもほ とんど気にならず消臭効果にも優れていた。さらに、強アルカリであるため、菌がっき にくく除菌効果にも優れ、環境面でも全く問題がな力つた。また、処理がしゃすく衛生 面にも優れ、安全性'危険性の問題もなカゝつた。さらに、本発明方法を施した試験品 は、表面が輝いて美しぐ 50〜60°Cの加熱により、さらに前述の効果が増した。
[0028] 一方、比較例である水道水を使用した場合は、安全性に優れて ヽるのは当然では あるが、安全性以外の点で問題があり、脱脂'防鲭用には採用できないことが確認さ れた。すなわち、油が浮くだけで脱脂できず、防鲭については洗浄前と変わりはなく 、処理後はきつい油の臭いが残って消臭効果はな力 た。また、塩素がなくなって菌 がっき易く、油と混ざって汚染され、環境面にも悪い。さらに、油水となるため、不衛 生で、産業用としては使用できなレ、ことが確認された。
[0029] また、ミネラルウォーターを使用した場合も、脱脂効果、防鲭効果、衛生面、安全性
•危険性などは前記の水道水を使用した場合と同じで、消臭面ではかなり臭いが残つ た。除菌面では、処理後は中性水まで pHが下がるので、発菌の可能性が大きい。ま た、環境面では汚くて排水できず、水道水を使用した場合とあまり大差はな力つた。
[0030] また、 pH9のアルカリイオン水を使用した場合は、水道水や前記ミネラルウォーター を使用した場合よりも、脱脂効果ゃ除菌効果は若干よくなつた。しかし、かなりの油分 が表面に残る点、除菌効果は僅かである点で、本発明方法で使用する pHが 12— 1 3の強アルカリイオン水と比べて大幅に劣った。なお、脱脂面、除菌面以外は前記ミ ネラルウオーターと大差はな力つた。
[0031] また、 pHが 10— 11の強アルカリイオン水を使用した場合は、 pH9のアルカリイオン 水を使用した場合と大差がな力つたが、前記アルカリイオン水を使用した場合よりも、 脱脂効果、消臭効果、衛生面の面で若干優れていた。すなわち、脱脂面では少しは 除去でき、また、消臭面では少し臭いが残る程度であった。また、衛生面では、可も なく不可もなくという程度であった。
[0032] なお、従来のトリクロロエチレンを使用した場合は、脱脂ゃ除菌面では優れているが 、洗浄剤の臭いがきつぐ環境汚染防止の面力 処理済の溶剤を排出できず、健康 面からも使用はひかえるべきであることは、前述の通りである。
実施例 2
[0033] 試験品として、機械構造用炭素鋼鋼材 (JIS G 4051、 S45C)製のボルトを使用 した他は、前述の表 1と同じ液体や脱脂洗浄剤 (水温は 21— 24°C)を使用して同じ 条件 (22— 25°Cの室温中で 60分間浸漬した後、 10日間自然乾燥)で試験を行い、 脱脂効果、防鲭効果などを調査した。その結果を下記表 2に示す。
[0035] 上記表 2において、 pHが 12〜: 13の強アルカリイオン水を使用した本発明方法では 、鲭ぴやすい機械構造用炭素鋼鋼材の場合にも、ほぼ確実に脱脂でき、鲭も発生し な力つた。また、消臭効果、除菌効果、環境面、衛生面、安全性'危険性、その他の 面でも、 SUS304ステンレス鋼の場合と同じであった。
[0036] 一方、比較例である水道水、ミネラノレウォータ一、 pH力 S9のアルカリイオン水や pH が 10〜11の強アルカリイオン水を使用した や、従来のトリクロロエチレンを使用 した場合は、完全に鲭っレ、て耐食性を失った他は SUS304ステンレス鋼の場合と同 じであった。
実施例 3
[0037] また、本発明者らは、本発明方法に使用する前述の強アルカリイオン水や、前述の 実験に使用した水道水などの pHの時間経過による変動を調査した。 pHの測定は、 市販のアクリル製ウォータ一カップに 6個ずつ、上記液体を約 2/3程度入れ、酸素 に接触する状態で気化させてゆき、ウォーターカップ毎にその日の平均 PHを調べた oその結果のうちの最低値を下記表 3に示す。
[0038] [表 3]
実験した液体 第 1曰目 第 2曰目 第 3日目 第 4曰目 第 7曰目 H l 2 . 6
本発明 pH1 2. 60 pH12. 50 pH12. 09 ρΗΠ . 44 ρΗΙ Ο. 54 の強電解水
水道水 pH7. 08 pH7. 08 PH7. 05 ρΗ7. 01 ρΗ7. 00 ミ不ラノレ
pH8. 40 pH7. 89 pH8. 50 ρΗ8. 45
ウォー夕一 ρΗ8. 25 比較
アルカリィォ
pH8. 90 pH8. 50 pH8. 50 ρΗ8. 20
ン水 ρΗ8. 1 5 強アル力リィ pH9. 80 pH9. 1 1 pH8. 60 ρΗ8. 31
オン水 ρΗ8. 28 強電解水(食
參考 pH" . 30 pH10. 31 pH9. 62 ρΗ9. 17 ρΗ8. 73 塩使用)
ものである。
[0039] 上記表 3より、 pH促進剤を使用することなく強電解により生産した pHが 12以上の 強アルカリイオン水は、通常の保管状態よりも悪い上記状況下であっても、従来の Ρ Η促進剤を使用した強アルカリイオン水などと異なり、数日間経過しても高い ΡΗを安 . 定して維持していることが確認できた。
[0040] なお、上記表 3に示した第 1〜第 4日目及ぴ第 7日目における各測定時の室温及ぴ 水温は、第 1日目、第 2日目及び第 3日目は、室温が 25°Cで水温が 23°C、第 4日目 は室温が 24°Cで水温が 23°C、第 7日目は室温、水温共に 21°Cであった。
産業上の利用可能性
[0041] 以上のように本発明の脱脂 ·防鲭方法は、脱脂ゃ防鲭のみならず、消臭や除菌方 法としても適用できる。