明細書
ラベル化蛋白質合成用ポリヌクレオチド 技術分野
本発明は、 ラベル化物質よりなるラベル部と、 翻訳系において合成された蛋白 質の C末端に結合する能力を有する化合物よりなるァクセプター部とを含むラベ ル化化合物の存在下で遺伝子テンプレートを翻訳してラベル化蛋白質を製造する 方法において、 目的蛋白質をコードする塩基配列の 3, 末端に付加することによ り該ラベル化効率を増強させる活性を有するラベル化蛋白質合成用ポリヌクレオ チドに関するものである。 さらに本発明は、 上記ポリヌクレオチドの選択方法、 上記ポリヌクレオチドを用いたラベル化蛋白質製造方法、 上記ポリヌクレオチド を含むラベル化蛋白質合成のためのベクター等、 目的蛋白質の部分べプチドから なるラベル化蛋白質の製造方法、 該方法により得られる蛋白質群を用いた蛋白質 の機能解析方法、 並びに上記ポリヌクレオチドあるいはラベルィヒ化合物との結合 体に対する抗体等に関するものである。 背景技術
蛋白質は生体の構造と機能の最も基本的かつ不可欠な担い手であり それなく して生命はありえない。 蛋白質は遺伝子 (D NA) から m R NAへの転写反応、 そして mR N Aの翻訳反応の過程を経て合成され、 通常 2 0種類の L—アミノ酸 から構成されている。 これらのアミノ酸は酸アミド結合を介し、 蛋白質ごとに固 有の配列順序 (一次構造) で一列につながったポリペプチドと呼ばれる高分子と して存在する。 このポリぺプチドは水素結合により局所的に二次構造を形成する とともに、 ポリぺプチドが折りたたまれて個々の蛋白質に固有の立体構造を形成 する。 この様にして合成された蛋白質は、 生体内で様々な生体分子、 例えば遺伝 子 (D NA) や他の蛋白質に対して親和性を示したり、 リン酸化反応などの酵素 活性を示したりする。
蛋白質はこれらの相互作用を通じて細胞の骨格構築や組織形成、 さらにはシグ ナル伝達など生命活動の一翼に深く関与している。 特にシグナル伝達に関与する 蛋白質は、 その分子内に機能的に独立性の高い部位 (ドメイン) から構成されて いることが知られている。 これらのドメインは、 蛋白質の分子認識などの相互作 用に関与しており、 分子内や分子間におけるドメイン同士の会合を通して、 蛋白 質自身の活性を制御している。 近年の膨大な遺伝子配列解析の結果、 遺伝子には 生命活動における機能不明な数多くの蛋白質のアミノ酸配列がコードされてレヽる ことが判ってきた。 このため、 蛋白質を対象とした効率的かつ有効な機能解析法 が必要とされている。
蛋白質の機能を明らかにする試みのなかで注目されている方法として、 蛋白質 相互作用 (例えば、 蛋白質一蛋白質間、 蛋白質一 DNA間、 蛋白質一医薬化合物 間に関する結合反応や修飾反応) に関する解析法が挙げられる。 例えば、 機能や 活性が判明している物質を固定しておき、 これと相互作用する蛋白質を見い出し た場合、 見い出した蛋白質は結合した物質の機能や活性を調節する作用を持って いることが期待できる。 一般的にこの蛋白質相互作用の解析を行うためには、 蛋 白質にその挙動を検出するための標識をつけることが必要となる。 このため通常 は、蛋白質のァミノ酸側鎖を蛍光物質で化学的に修飾したり、蛋白質を GFP (green fluorescent protein)などの蛍光蛋白質と結合する方法 (以下、 これらを 「従来 法」 と称することがある) がとられていた。
目的蛋白質の C末端に直接ラベル化化合物を結合させることによる蛋白質ラベ ル化法は、 無細胞蛋白質合成系を用いて蛋白質を合成する際に、 蛍光物質などが 付加したピューロマイシンなどの核酸誘導体を適当濃度添加することにより、 合 成された蛋白質の C末端にこの核酸誘導体が特異的に結合する原理に基づいた蛋 白質ラベル化法 (FEBS Le t t. , 462, 43— 46 (1999) 、 特 開平 1 1— 322781号公報、 特開 2000— 139468号公報、 米国特許 6228994号など、 本明細書中ではこれを 「蛋白質 C末端ラベル化法」 と称 することがある) 等が用いられる。
上記の方法によれば、 目的蛋白質の C末端のみを特異的にラベル化することが 可能である。 従って、 従来法と比較して蛋白質の活性が保持されやすく、 しかも 無細胞蛋白質合成時に目的蛋白質をラベル化できるため、 簡便かつ多種の蛋白質 合成およびそのラベルィヒが可能となる。 さらにこれらのラベル化蛋白質を利用す ることにより、 in vitro (試験管内) 系において多種類の蛋白質を対象とした相 互作用の解析が可能となる (WOO 1/16600号公報) 。 この in vitroにお ける蛋白質相互作用の解析は、反応を厳密にコントロールすることが可能なため、 従来の酵母などの細胞を用いる場合と比較し、 擬陽性が少なく多種類の蛋白質を 効率良く解析可能であり、 新しい蛋白質相互作用ネットワークの解明に有効な方 法と考えられる。
しかしながら、上記蛋白質 C末端ンラベル化法では蛋白質の種類によってラベル 化効率が大きく異なり、 蛋白質の種類によっては全くラベル化されない蛋白質も 存在するという問題があった。 従って、 上記蛋白質ラベル化方法によって製造さ れた蛋白質は、 C末端がラベルイ匕されているものとされていないものが混在する こととなり、 これらの蛋白質を用いて効率よく相互作用解析を行うことは困難で めった。
一方、 蛋白質は一般的に自分自身の分子内における相互作用、 すなわち活性部 位 (ドメイン) を自分自身の制御部位 (ドメイン) で覆って抑制している場合が 非常に多く、 autoregulation (自己制御) と呼ばれている状態にあることが知ら れている(J. B i o l . Ch e m. , 265, 1823— 1826 (1990))。 例えば、 細胞内シグナル伝達に関与するキナーゼやそのアダプター蛋白質、 受容 体、 転写因子などの蛋白質は、 他の蛋白質や生体成分の作用を受け、 その制御モ ジュールにリン酸化などの修飾を受けることにより初めて活性モジュールが蛋白 質表面に露出して活性ィ匕し、 結合活性や酵素活性を獲得する。 従って、 目的蛋白 質の全長のラベル化蛋白質を用いて上記相互作用を解析する場合、 目的蛋白質自 身に制御ドメインが含まれ、 相互作用が不活ィヒされて検出ができない可能性があ つた。
発明の開示
本発明の第 1の目的は、 ラベル化物質よりなるラベル部と、 翻訳系において合 成された蛋白質の C末端に結合する能力を有する化合物よりなるァクセプター部 とを含むラベル化化合物の存在下で遺伝子テンプレートを翻訳してラベル化蛋白 質を製造する方法において、 目的蛋白質をコードする塩基配列の 3 ' 末端に付加 することにより該ラベル化効率を増強させる活性を有する ベル化蛋白質合成用 ポリヌクレオチドを提供することである。
本発明の第 2の目的は、 上記ポリヌクレオチドの選択方法を提供することであ る。
本発明の第 3の目的は、 上記ポリヌクレオチドを用いたラベル化蛋白質製造方 法を提供することである。
また本宪明の第 4の目的は、 上記ポリヌクレオチドを含むベクター等、 および それらを含む試薬キットを提供することである。
また本努明の第 5の目的は、 目的蛋白質の部分ぺプチドからなるラペル化蛋白 質の製造方法、 並びに該方法により得られる蛋白質群を用いた蛋白質の機能解析 方法を提供することである。
さらに 本発明の第 6の目的は 上記ポリヌクレオチドあるいはラベル化化合 物との結合体を抗原として得られる抗体を提供することである。
本発明者らは上記蛋白質 C末端ラベル化法を用い、 様々な蛋白質に対してラベ ル化検討を行った。 具体的には、 蛍光物質として C y 3が結合したピュー口マイ シン誘導体を使用し、 コムギ胚芽抽出液を用いた無細胞蛋白質合成系に様々な蛋 白質をコードする mR NAを加え、 合成された蛋白質を解析した。 これらの検討 の結果、 ( 1 ) 蛋白質の種類によりそのラベルイ匕効率が著しく異なること、 (2 ) ラベル化蛋白質の合成量が多い目的蛋白質は、 その全長が適当な大きさで断片化 した蛋白質の C末端にラベル化化合物が結合したものを含んでいることを見出し、 ラベ/レイヒ蛋白質の合成量が多い目的蛋白質の C末端のアミノ酸配列、 あるいはそ
れをコ一ドする塩基配列が、 目的蛋白質のラベル化蛋白質の合成量に関連するこ とを見出した。
即ち、 本発明によれば、 以下の発明が提供される。
( 1 ) ラベルイ匕物質よりなるラベル部と、 翻訳系において合成された蛋白質の C末端に結合する能力を有する化合物よりなるァクセプター部とを含むラベル化 化合物の存在下で遺伝子テンプレートを翻訳してラベル化蛋白質を製造する方法 において、 遺伝子テンプレートの目的蛋白質をコードする塩基配列の 3, 末端に 付加することによりラベル化効率を増強する機能を有することを特徴とする、 ラ ベルイ匕蛋白質合成に用いるためのポリヌクレオチド。
( 2 ) ラベルイ匕効率を増強する機能を有するポリヌクレオチドを選択するため の方法であって、 以下の工程からなることを特徴とする方法;
( i ) 目的蛋白質をコードする塩基配列の 3 ' 末端に候補塩基配列を付加した 遺伝子テンプレートを作製する工程。
( i i ) ラベルイ匕物質よりなるラベル部と、 翻訳系において合成された蛋白質 の C末端に結合する能力を有する化合物よりなるァクセプター部とを含むラベル 化化合物の存在下で、 該遺伝子テンプレートを翻訳する工程。
( i i i ) 得られるラベル化目的蛋白質量を測定する工程。
( i v ) 該蛋白質量を指標として、 該候補配列を選択する工程。
( 3 ) ラベル化効率を増強する機能を有するボリヌクレオチドを選択するため の方法であって、 以下の工程からなることを特徴とする方法;
( i ) 目的蛋白質をコードする塩基配列の 3 ' 末端に候補塩基配列を付加した 遺伝子テンプレートを作製する工程。
( i i ) ラベル化物質よりなるラベル部と、 翻訳系において合成された蛋白質 の C末端に結合する能力を有する化合物よりなるァクセプター部とを含むラベル 化化合物の存在下で、 該遺伝子テンプレートを翻訳する工程。
( i i i ) リボソームをポージングさせる活性の測定し、 該活性を指標として 該候補配列を選択する工程。
(4) (2) 又は (3) に記載の方法により選択されることを特徴とするラベ ル化蛋白質合成に用いるためのポリヌクレオチド。
(5) ポリヌクレオチドが、 6〜60塩基でグァニンおょぴシスチジンが全体 の 30%以上を占める塩基配列を有することを特徴とする (1) 又は (4) に記 載のポリヌクレオチド。
(6) ポリヌクレオチドが、 00〇または0。00じ0を含む塩基配列を有す ることを特徴とする (5) に記載のポリヌクレオチド。
(7) ポリヌクレオチドが、 2〜 20残基のシスティン、 ヒスチジン、 グルタ ミン、 ァラニンの何れかからなるポリペプチドをコードする塩基配列を有するこ とを特徴とする (1) あるいは (4) 〜 (6) の何れかに記載のポリヌクレオチ ド、。
(8) ポリヌクレオチドが、 2〜 20残基のシスティン、 ヒスチジン、 グルタ ミン、 ァラニン、 グリシン、 メチォニン、 チロシン、 ァ/レギニン、 プロリン、 フ ェニルァラニンの何れかの組み合わせからなるポリぺプチドをコ一ドする塩基配 列を有することを特徴とする (1) あるいは (4) 〜 (6) の何れかに記載のポ リヌクレオチド。
(9) ポリヌクレオチドが、 配列番号 5〜 9に記載のァミノ酸配列のうちの C 末端から 2残基以上のァミノ酸配列からなるポリぺプチドをコ一ドする塩基配列 を有することを特徴とする (1) あるいは (4) 〜 (8) の何れかに記載のボリ ヌクレオチド。
(10) ポリヌクレオチドが、 配列番号 1 1又は 13に記載のァミノ酸配列か らなるポリペプチドをコードする塩基配列を有することを特徴とする (1) ある いは (4) 〜 (9) の何れかに記載のポリヌクレオチド。
(1 1) ラベル化蛋白質を製造するための方法であって、 以下の工程からなる ことを特徴とする方法;
(i) 目的蛋白質をコードする塩基配列の 3' 末端に (1) あるいは (4) 〜 (10) の何れかに記載のポリヌクレオチドを付カ卩した遺伝子テンプレートを用
意する工程。
(i i) ラベルィヒ物質よりなるラベル部と、 翻訳系において合成された蛋白質 の C末端に結合する能力を有する化合物よりなるァクセプター部とを含むラベル 化化合物の存在下で、 該遺伝子テンプレートを翻訳する工程。
(12) 目的蛋白質をコードする塩基配列が、 終止コドンを含まないことを特 徴とする (11) に記載の方法。
(13) 目的蛋白質をコードする塩基配列が、 終止コドンを含むことを特徴と する (11) に記載の方法。
(14) ラベル化化合物を、 翻訳反応が開始された後に添加することを特徴と する、 (1 1) から (13) の何れかに記載の方法。
(15) ラベル化化合物の添加の時期が、 リボソームがポージングするに十分 な時間の後であることを特徴とする、 (14) に記載の方法。
(16) (1 1) から (15) の何れかに記載の方法により製造されるラベル 化蛋白質群。
(17) (16) に記載のラベル化蛋白質群と被検物質とを接触させ、 該蛋白 質と被検物質との相互作用を解析することを特徴とする蛋白質の機能解析方法。
(18) 少なくとも (1) あるいは (4) 〜 (10) の何れかに記載のポリヌ クレオチドを含むことを特徴とする,, (1 1) 〜 (15) の何れかに記載の方法に おいて用いられる遺伝子テンプレートを作製するためのベクター又はポリメラー ゼチェインリアクション用プライマー。
(19) 少なくとも (18) に記載のベクター及ぴポリメラーゼチェインリア クション用プライマーを含むことを特徴とする、 (11) 〜 (15) の何れかに記 载の方法を行うためのキット。
(20) (1) あるいは (4) 〜 (10) の何れかに記載のポリヌクレオチド がコードするポリぺプチドを含む物質に対する抗体。
(21) (1) あるいは (4) 〜 (10) の何れかに記載のポリヌクレオチド がコードするポリべプチドとラベル化化合物の結合体に対する抗体。
図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の蛋白質ラベル化方法の概略図である。
図 2は、 ァクセプター部にリンカ一が結合した化合物の例を示した化学式であ る。
図 3は、 ラベル化化合物の例を示した化学式である。
図 4は、 異なる蛋白質を上記蛋白質ラベル化方法によりラベル化して合成した 結果を示す電気泳動写真、 およびラベル化蛋白質量を示すグラフである。 蛋白質 の種類によつて合成されるラベル化蛋白質量が著しく異なることが判る。
図 5は、 GSTの 3, 末端配列をラベル化増強配列として付加した遺伝子テンプ レートを用いてラベル化蛋白質合成を行った結果を示す電気泳動写真、 およびラ ベル化蛋白質量を示すグラフである。 G S Tの 3, 末端配列を付加することによ り、 ラベル化蛋白質合成量が増加した。
図 6は、 ラベルィヒ蛋白質合成量が低かった蛋白質の O R Fからストップコドン を除いた配列に G S Tの 3, 末端の配列を付加した遺伝子テンプレートを用いて ラベル化蛋白質合成を行った結果を示す電気泳動写真である。 G S Tの 3, 末端 の配列は、 ラベル化蛋白質の合成量を増加させる機能を有する。
図 7は、 ランダム配列から選択されたラベル化増強配列の候補配列を付カ卩した 遗伝子テンプレートを用いて蛋白質 C末端ラベル化方法を行った結果を示す電気 泳動写真、 およびラベル化蛋白質量を示すグラフである。 アミノ酸配列 G R G A AGをコードする塩基配列などが、 ラベルイ匕増強活性が高いことが判った。 図 8は、 選択されたラベル化増強配列に欠失、 付加を導入して最適化を計った 結果のラベル化蛋白質量を示すグラフである。
図 9は、 異なるアミノ酸を 4つ連結した配列を候補配列として、 これを付カロし た遺伝子テンプレートを用いてラベルイ匕蛋白質を合成し、 得られたラベル化蛋白 質量を示すグラフである。 ァラニン 4残基をコードする塩基配列が、 特に高いラ ベル化増強効果を持っていた。
図 1 0は、 ラベル化増強配列の長さの影響を確認するため、 ァラニン 1〜 6残 基をコードする配列を付カ卩した遺伝子テンプレートを用いてラベル化蛋白質を合 成し、 得られたラベル化蛋白質量を示すグラフである。
図 1 1は、 R GAAをコードする塩基配列を付カ卩した遺伝子テンプレートを用 いてラベル化蛋白質を合成して得られた蛋白質のラベル化効率を示すグラフであ る。
図 1 2は、 異なるラベル化化合物、 および異なる濃度のラベル化化合物の存在 下でラベル化蛋白質合成を行つて得られた蛋白質のラベル化効率を示すグラフで める。
図 1 3は、 ピオチンを付加したラベル化化合物を用いて、 異なるラベル化化合 物、 および異なる濃度のラベル化化合物の存在下で蛋白質 C末端ラベル化方法を 行って得られた蛋白質のラベル化効率を示すグラフである。
図 1 4は、 異なる無細胞蛋白質合成方法を用いてラベル化蛋白質を合成して得 られた蛋白質のラベルイ匕効率を示すグラフである。
図 1 5は、 無細胞蛋白質合成系において、 ラベル化化合物を異なる層に添加し てラベル化蛋白質を合成して得られた蛋白質のラベル化効率を示すグラフである。 図 1 6は、 目的蛋白質をコードする遺伝子 (ストップコドン含むものと含まな いもの) テンプレートを用いて転写 '翻訳を行うことにより得られたラベル化蛋 白質の電気泳動バンドを解析した結果を示す。
図 1 7は、 無細胞蛋白質合成系においてラベル化蛋白質を合成する場合に、 ラ ベル化化合物を添加するタイミングを変えて合成して得られた蛋白質のラベル化 効率を示すグラフである。 ラベルィヒ化合物を合成反応が始まってから適当時間後 に添加すると、 目的蛋白質の全長の C末端にラベルィヒ化合物が結合したラベルイ匕 蛋白質が合成される割合が多レ、ことが判つた。
図 1 8は、 異なる無細胞蛋白質合成用細胞抽出液を用いてラベル化蛋白質を合 成した場合のラベル化効率を示すグラフである。 V、ずれの細胞抽出液でもラベル 化増強配列の効果が確認された。
図 1 9は、 ラベル化増強配列の G C含量について、 異なる G C含量である候補 配列を、 目的蛋白質の O R Fの 3 '末端に付カ卩した遺伝子テンプレートを用いて ラベル化蛋白質を合成した場合の、 G C含量とラベル化蛋白質合成量との関係を 示すグラフである。 G C含量が 3 0 %を超えると、 付カ卩しなかったものの 1 . 5 倍のラベル化蛋白質が合成されることが判つた。
図 2 0は、 リボソームポージング機能を有する配列を含む候補配列を、 目的蛋. 白質の O R Fの 3 '末端に付加した遺伝子テンプレートを用いてラベル化蛋白質 を合成した場合の、 ラベル化効率を示す表である。
図 2 1は、 異なるアミノ酸を 4つ連結した配列を候補配列として、 これを付加 した遺伝子テンプレートを用いてラベル化蛋白質を合成し、 ラベル化効率を測定 した結果およぴ侯補配列を示す表である。
図 2 2は、 ラベル化増強配列とラベル化化合物の連結体を認識する抗体を解析 した結果を示すグラフである。 発明を実施するための最良の形態
本発明は、 ラベル化化合物よりなるラベル部と、 翻訳系において合成された蛋 白質の C末端に結合する能力を有する化合物よりなるァクセプター部とを含むラ ベル化化合物の存在下で遺伝子テンプレートを翻訳してラペル化蛋白質を製造す る方法において、 遺伝子テンプレートの目的蛋白質をコードする塩基配列の 3 5 末端に付加することによりラベル化効率を増強する機能を有することを特徴とす るラベルイ匕蛋白質合成に用いるためのポリヌクレオチド、 目的蛋白質の全長ある いは部分ペプチドからなる蛋白質の C末端にラベルィヒ化合物が結合していること を特徴とする蛋白質群の製造方法、 および該方法により得られる蛋白質群を用い た蛋白質の機能解析方法等に関するものである。 本発明の概略を図 1に示す。 図 1において、 先ず、 (A— 1 ) では、 目的タンパク質をコードする c D NA の 3 ' 末端側に標識効率増強配列が結合し、 (A— 2 ) では、 目的タンパク質を コードする c D NAの 3 ' 末端側に、 終止コドンを有する標識効率増強配列が結
合させる。 (B ) では (A— 1 ) 又は (A— 2 ) で作製した遺伝子テンプレート (転写反応おょぴタンパク質合成反応用) を用いて転写反応を行い、 mR NAを 合成する。 次いで、 反応混合物にラベル化化合物を添加せずに、 又はラベル化化 合物を添加して、 タンパク質合成を行う (C) 。 (C) では、 反応層とエネルギ 一供給層を分離させた状態で反応を開始する (これを重層法とも言う) ことによ り、 無細胞タンパク合成系にてタンパクシ質合成と標識化反応を行う。 (C) の 例 1では上層にエネルギー供給層があり、下層に比重の重い反応層がある。 (C) の例 2では上層に反応層があり、 下層にエネルギー供給層を含むゲル又はビーズ 等がある。 (C) の例 3では内側に反応層があり、 半透膜などの界面をはさんで 外側にエネルギー供給層が存在する。 (C) のタンパク質合成を行う前にラベル 化化合物を添加しなかった場合には、 タンパク質合成開始後にラベル化化合物を 添加する。 即ち、 (D) はタンパグ質合成開始後に標識剤 (ラベル化化合物) を 添加することを特徴とする、 全長タンパク質の標識方法である。 (D) の方法の 場合、 標識全長タンパク質が生成する (E— 1 ) 。 タンパク質合成を行う前にラ ベル化化合物を添加した場合には、 標識全長タンパク質と標識断片化タンパク質 が生成するか (E—2 ) 、 標識断片化タンパク質が生成する (E— 3 )。 (E— 1 ) の標識全長タンパク質は、 本発明のペプチド '標識剤を認識する抗体を用い て, 標識タンパク質の検出、 精製、 固定化又は相互解析を行うことができる (F — 1 )。 ( E - 2 ) の標識全長タンパク質と標識断片化タンパク質又は (E - 3 ) の標識断片化タンパク質は、 標識タンパク質に付加したタグを認識する抗体を用 いて、標識タンパク質の検出、精製、固定化又は相互解析を行うことができる (F 一 2 ) 。
本明細書で使用する用語は特に断らない限り以下の意味を有する。
「ラベル化蛋白質」 とは、 目的蛋白質あるいはその C末端に本発明の 「ラベル 化増強タグ」 が連結したものの C末端にラベル化化合物が結合したものをいう。 目的蛋白質とは、 ラベルィヒ蛋白質の対象となる蛋白質であり、 生細胞または無細 胞蛋白質翻訳系において合成され得るものであれば如何なるものでもよレ、。また、
これをコードする塩基配列を有する D NAは、 天然の D NAから調製したもので もよいし、遺 ί云子組み換えや、 ポリメラーゼチエインリアクション (PCR) 等で作 製したものでもよく、 さらには、 翻訳系に適したコドンに置き換えた塩基配列か ら設計し、 合成したもの等でもよい。
「ラベル化増強タグ」 とは、 ラベルイ匕物質よりなるラベル部と、 翻訳系におい て合成された蛋白質の C末端に結合する能力を有する化合物よりなるァクセプタ 一部とを含むラベル化化合物の存在下で遺伝子テンプレートを翻訳してラベル化 蛋白質を製造する方法において、 遺伝子テンプレートの目的蛋白質をコードする 塩基配列の 3 '末端に付加することによりラベル化効率を増強する機能を有する ポリヌクレオチドであり、 上記ラベルイ匕蛋白質の合成の.ために用いられる。 この ようなラベノレ化増強タグは、 上記機能を有する限り特に制限はない。
「目的蛋白質の C末端ラベルイ匕効率を増強する機能」 とは、 該機能を有するポ リヌクレオチド (ラベル化増強タグ) を目的蛋白質をコードする塩基配列に付カロ する力 \ または該配列で目的蛋白質をコードする塩基配列の 3 ' 末端を置換した 遗伝子テンプレートを用いて、 蛋白質 C末端ラベル化法を行つた場合に、 ラベル 化増強タグを含まない遗伝子テンプレートを用いた場合と比べて、 得られるラベ ル化蛋白質の量が 1 . 2倍以上、 好ましくは 1 . 5倍以上、 さらに好ましくは 2 倍以上になる. あるいは目的蛋白質 あるいはそれに結合したラベル化増強タグ がコードするポリべプチドの C末端にラベル化化合物が結合する効率が 1 . 2倍 以上、 好ましくは 1 . 5倍以上、 さらに好ましくは 2倍以上となる機能を意味す る。
「ラベル化増強タグ」 は、 例えば、 以下のような方法で選択取得することがで きる。 まず、 1つ以上の候補ポリヌクレオチドを、 目的蛋白質をコードする塩基 配列の 3, 側に付加、 あるいは目的蛋白質をコードする塩基配列の 3 ' 末端を置 換した遺伝子テンプレートを作製し、 これを用いて後述する蛋白質 C末端ラベル 化法を行い、 翻訳反応液中に含まれる蛋白質について、 その C末端にラベル化化 合物が結合している効率やラベ/レ化蛋白質の合成量を適当な方法で測定する。 さ
らに、 候補ポリヌクレオチドを含まない遺伝子テンプレートにつ 、て同様に行つ た翻訳反応液中の蛋白質についても、 その c末端にラベル化化合物が結合してい る効率やラベル化蛋白質の合成量を適当な方法で測定し、 候補ポリヌクレオチド を含む遺伝子テンプレートを用いた場合に、 c末端にラベル化化合物が結合して いる効率が上がるか、 C末端ラベル化蛋白質の合成量が増加した時、 該候補ポリ ヌクレオチドは目的蛋白質のラベルイ匕蛋白質の合成を増加させる機能を有するも のとして選択される。
候補ポリヌクレオチドとしては、 アミノ酸をコードするものでもしないもので もよいが、 アミノ酸をコードする場合、 目的蛋白質とオープンリーディングフレ ームの読み枠がずれないように付加または置換する。 アミノ酸をコードするもの としては、 天然の蛋白質内に存在する部分アミノ酸配列、 もしくはランダムなァ ミノ酸配列をコードするものでもよいし、 さらには単一のアミノ酸をコードする ポリヌクレオチドでもよい。 これらのうち、 好ましくは 2〜2 0アミノ酸残基、 より好ましくは 3〜 6アミノ酸残基からなるポリヌクレオチドをコードするポリ ヌクレオチドがよい。 また、 アミノ酸の種類としては、 例えば、 グリシン、 メチ ォニン、 チロシン、 アルギニン (EMBO. J, 7 : 3559-3569 (1988) ; Mol. Cell. Biol, 22 : 3959-3969 (2002) ) 、 プロリン' (J. Biol. Chem, 277: 33825-33832 (2002) ) 、 了 ラニン フエニルァラエン システィン、 ヒスチジン、 グルタミン、 等が挙げら れる。
また、 候補ポリヌクレオチドとして、 既に蛋白質 C末端ラベル化法を行った場 合に、 そのラベル化蛋白質合成量が多いことが既にわかっている蛋白質の C末端 のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドも好ましく用いられる。 このよう な蛋白質として具体的には、 ダルタチオン一 S—トランスフェラーゼおよびその 誘導体、 タウプロティンキナーゼ -1 (TPK1)、 プロテインチロシンホスファターゼ -IB (PTP1B)、 ジヒドロ葉酸レダクターゼ (DHFR) などが挙げられる。
上記ラベル化増強タグの選択方法で用いる目的蛋白質は、 それ自身ではラベル 化蛋白質の合成量が低いものを用いることが好ましレ、。 具体的には、 PPAR Y
(GenBank accession No. 匪一 015869) 、 R X R a (GenBank accession No.
NM— 002957)、 S m a d 2 (GenBank accession No. NM— 005901)、 S m a d 3 (GenBank accession No. NM— 005902) 、 S m a d 4 (GenBank accession No. NM— 005359) などが挙げられる。
具体的な選択方法として、 候補ポリヌクレオチドをランダムなァミノ酸配列を コードするものを用いた場合を以下に示す。 まず、 目的蛋白質をコードする D N Aの 3, 側にそのオープンリーディングフレームが合うように、 それぞれ異なる 適当な長さのアミノ酸配列、 好ましくは 2〜2 0個のアミノ酸をコードする D N Aが付加した個別の D N Aから遺伝子テンプレートを作製し、 後述する蛋白質 C 末端ラベル化法を行い、 得られたラベル化蛋白質量を後述の方法で解析し、 ラベ ル化蛋白質の合成量が多い、 またはラベルイ匕効率が高い遺伝子テンプレートに含 まれる候補ポリヌクレオチドを選択する。 さらに得られたポリヌクレオチドにつ いて、 その 3, 末端または 5, 末端に異なるアミノ酸をコードする D NAを付加 した、 または欠失した遺伝子テンプレートを作製し、 蛋白質 C末端ラベル化法以 降の工程を繰り返す。 また, 上記で、 付加するポリヌクレオチドを 1ァミノ酸を コードする 3塩基とし、 上記の解析を、 複数回繰り返すことにより、 好ましい数 のアミノ酸からなるポリペプチドをコードするラベル化増強配列を選択すること ができる。
このようにして選択されたラベル化増強タグとしては、 好ましくは、 6〜6 0 塩基でグァニンぉょぴシスティンが全体の 3 0 %以上を占めるポリヌクレオチド、 2〜2 0残基のシスティン、 ヒスチジン、 グルタミン、 ァラニンの何れかからな るポリぺプチドをコ一ドするポリヌクレオチド、 あるいは 2〜2 0残基のシステ イン、 ヒスチジン、 グルタミン、 ァラニン、 グリシン、 メチォニン、 チロシン、 アルギニン、 プロリン、 フエ二ルァラニンの何れかの組み合わせからなるポリべ プチドをコードするポリヌクレオチド、 並びに 6〜 6 0塩基のポリヌクレオチド であって、 少なくとも 1つの G G Cまたは G C G G C Gモチーフを含むものが挙 げられる。 又、 さらに好ましくは、 配列番号 5〜 9の何れかに記載のァミノ酸配
列のうちの、 C末端側から少なくとも 2アミノ酸からなるポリペプチドをコード する塩基配列が挙げられる。 さらに好ましくは、 配列番号 1 1又は 13に記載の ァミノ酸配列からなるポリぺプチドをコ一ドする塩基配列が挙げられる。
また、 上記の共通の配列である GGCモチーフは、 リボソームをポージングさせ る酉己列として知られているため、 ラベル化増強タグは、 リボソームをポージング させる活性を指標としても選択することができる。 リボソームをポージングさせ る活性の測定方法としては、 例えば、 FEBS Lett., 14: 106 - 110 (2002)に記載され たリボソームディスプレー法、もしくは EMB0.J, 7 :3559- 3569 (1988)に記載された mR A上のリポソームポージング位置の決定法が挙げられる。具体的には、例えば、
(1) ラベルイ匕蛋白質の合成量が低い目的蛋白質をコードする DNAの 3' 側に そのオープンリーディングフレームが合うように、 ランダムな DNA配列、 望ま しくは 6塩基以上からなる D N A配列を付カ卩した遺伝子テンプレートを作成し、
(2) 後述する方法で蛋白質合成系を実施し、 (3) FEBS Lett. , 514: 106-110 (2002)の方法に従い、 超遠心法、 さらには合成された蛋白質に対する親和性物質 を固定した樹脂を用い、 mRNA上でポージングした状態のリボソーム · mRN A ·蛋白質の複合体を回収する。 (4) この複合体より回収された mRNAの 3, 末端に逆転写用のプライマーを T4RNAリガーゼ等で連結し、このプライマーに相 補的な DNAプライマーをアニーリングさせるか., もしくはこの複合体より回収 された m R N Aに対してランダムプライマーをアニーリングさせる。 (5) 次に この複合体について、 逆転転写反応を行う、 (6) RNa s eH処理後、 DNA ポリメラーゼおよび DNAリガーゼで処理し、二本鎖 c D N Aを調製する、 (7) T4 DNAポリメラーゼ等で処理した後、 適当なベクターに挿入してトランスフォー メーシヨン後、 ベクター内に挿入されたランダムな DN A部分の塩基配列を決定 することにより、 リボソームをポージング (pausing) させる塩基配列を取得す ることができる。特に EMBO. J, 7:3559-3569(1988)に記載された方法を用いる場合 は、 ラベルイ匕蛋白質合成量が多い目的蛋白質をコードする遺伝子を対象として、
その内部に含まれるリボソームをポージングさせる塩基配列を取得するのに有用 である。
上記ラベル化増強タグは、 目的蛋白質をコードする塩基配列の 3 ' 末端側に付 加または、 目的蛋白質をコードする塩基配列の 3, 末端部分をラベル化増強配列 で置換した状態で使用することが好ましい。 通常はラベル化増強タグを付加また は置換した目的蛋白質をコードする塩基配列の 3 ' 末端には終止コドンを付カロし ない様にすることが望ましい。 ここで、 ラベルイ匕増強タグを付加又は置換した目 的蛋白質をコードする塩基配列の 3 ' 末端が終止コドンである場合、 これを後述 する蛋白質 C末端ラベル化法に用いると、 目的蛋白質の一部のアミノ酸配列から なる蛋白質の C末端にラベル化化合物が結合したものを含む蛋白質群が合成され る。
「遺伝子テンプレート」は、目的蛋白質をコードする塩基配列、およびその 3, 末端にラベル化増強タグを含むことを特徴とし、 D NAか、 またはそれを転写す ることにより得られる R N Aを意味する。 遺伝子テンプレート又はその転写铸型 となる D NAには、 他に転写 (mR NA合成反応) 、 翻訳 (蛋白合成反応) する ための転写反応用プロモーターおよぴ翻訳反応用ェンハンサー (以下これらを合 わせて 「5, 非翻訳領域」 と称することがある) を目的蛋白質をコードする配列 の 5 ' 上流側に付加することが好ましい。 この 5, 非翻訳領域は D NAから m R N Aへの転写及ぴ niR N Aからの蛋白質への翻訳を可能とするあらゆるプロモー ター、 ェンハンサー、 コザック配列、 シャイン《ダルガーノ配列等の塩基配列か ら、 利用する無細胞蛋白質合成系に用いる抽出液が由来する細胞系、 例えば大腸 菌などの微生物、 昆虫細胞、 酵母、 小麦、 赤血球等の様々な動物細胞に応じて選 択することができる。
例えば、 無細胞転写、 翻訳系にて使用する場合、 転写反応用プロモーターとし ては S P 6もしくは T 7 R NAポリメラーゼのプロモーターを含み、翻訳用ェン ハンサ一としてタバコモザイクウィルス (TMV) のオメガ配列の全部もしくは
一部等を使用することができる。 また、 遺伝子テンプレートの 5 ' 末端に C a p 構造を付加しても良い。
また、 目的蛋白質中に特定の物質と親和性を有するポリペプチド (以下、 これ を 「タグ」 と称することがある) を挿入、 付加することによれば、 ラベル化蛋白 質を該ポリペプチドを介して固相に固定したり、 精製等を行うことができる。 タ グとしては、 目的蛋白質の立体構造や活性に影響を与えない
もの、 または挿入位置を選択することが必要である。 具体的には、 タグをコード する塩基配列からなるポリヌクレオチドを、 目的蛋白質をコードする塩基配列中 に挿入、付加して作製することができる。タグをコードするポリヌクレオチド(以 下、 これを 「タグ配列」 と称することがある) を目的蛋白質をコードするポリヌ クレオチドの 5, 上流側に付加する場合には、 タグ配列の 5 ' 末端に翻訳開始反 応に必要なメチォニンをコードする配列を付加するとよい。 逆に、 タグ配列を目 的蛋白質をコードする配列の 3, 下流に付加する場合には、 ラベル化増強配列を 付加又は置換した目的蛋白質をコードする塩基配列とオープンリ一ディングフレ ームが合うように付加することが好ましい。
タグとしては、例えば、 β -galactosidase ( β -gal: 1 1 6 kDa) N Maltose Binding Protein (MBP: 4 I kDa) 、 Green Fluorescent Protein (GFP: 2 7 kDa) およびそ の誘導体、 Glutathion - S- transferase (GST: 2 6 kDa) -. Thioi-edoxin (Thio (TRX) : 1 4 kDa)、 CreRecombninase、 ぺプチド性のタグとして、 AU5 (TDFYLK)、 c-Myc (EQKLISEEDL) CruzTag 09 (MKAEFRRQESDR) CruzTag 22 (MRDALD
RLDRLA) 、 CruzTag 41 (MKDGEEYSRAFR) 、 Glu-Gl (EEEEYMPME) 、 (Influenza) Hemagglutinin (HA: YPYDVPDYA) 、 (Influenza) Hemagglutinin (Ha. 11: CYPYDVPDYASL) 、 Hi sti dine Tag (His: HXn (nは自由に設定可能である) 、 HisG(HHHHHHG)、 hexapeptide- (KT3: PPEPET)、 Octapeptide (FLAG(R): DYKDDDDK)、 Omni - probe (between the His (6) and poly linker sequences of the Xpress series: DLYDDDDK) , S- Tag encoded domain of thepET- 29a - c (+) (S- probethe)、 T7 (MASM TGGQQMG) , V5 (GKPIPNPLLGLDST)、 VSV- G (YTDIEMNRLGK)、 Biotinylation peptide
by Biotin Ligase (Biotin AviTag : GLNDIFEAQKIEWHE) HGFtag (EFGHEFDLYENK )、 cMettag (STKKEVFNILQAAYVSKPGAQLARQ) , GAL4 DNA Binding Domain (GAL4) 、 E. coli protein Lex A (Lex A)、 HSV-1 protein VP5 (VP5)、 HSV protein VP16 (VP16)、 B42、 TAP (ProtenA- ZZDomain、 calmodulin binding Peptode、 Protein A、 Maltose Binding Protein^ Calmodulin Binding Peptide^ antibodyFcDomain などから選択することができる。 これらのタグはそれ自体既知の通常用いられる ものである。 遺伝子テンプレートに含まれるタグ配列は、 上記タグの全長のアミ ノ酸配列を含む必要はなく、 特定の物質と親和性を有する限り特に制限はない。 一方、 ラベル化蛋白質の合成量を低下させたい場合には、 遺伝子テンプレート またはその転写铸型となる D N Aの 3, 側に終止コドンを付加したものや、 終始 コドンのあとにポリ A配列などを含む長い 3, 非翻訳配列を付加することにより 行うことができる。
遺伝子テンプレートの転写铸型となる D NAは、 上記の各構成要素を別々に調 製した後に、 これらを通常の遺伝子組み換え方法を用いて結合してもよいし、 い くつかの構成要素を結合した DNA断片として調製し、 さらに結合することもでき る。具体的には、遺伝子テンプレートの転写铸型である D N A (以下、 これを「テ ンプレート D NA」 と称するこおとがある) を調製する場合、 適当なクローニン グベクターに上記構成要素を挿入することにより D NAべクターとして作製する 方法や、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA、 99: 14652-14657 (2002)に記載されてレ、る方法 に準じて PCR反応により作製することもできる。 このようにして作製されたテン プレート D NAは、 該 D NAが含むプロモーターに応じて選択される R NA合成 酵素、 例えば、 SP6腿 Polymerase (Promega社製) などを用いて in vitroにて 転写反応を行なえば、 R Aである遺伝子テンプレートを調製することができる。
「ラベル化化合物」 は、 標識物質よりなる 「ラベル部」 と蛋白質の C末端に結 合する能力を有する化合物よりなる 「ァクセプター部」 を含む化合物である。 ラ ベル部とァクセプター部は直接結合していてもよく、 またリンカ一を介して化学 結合していてもよい。 また、 ラベル部は複数の標識物質からなってもよい。
リンカ一としては、好ましくは核酸誘導体、あるいはその連結体が用いられる。 具体的には、 デォキシシチジル酸 (d C) 、 デォキシァデュル酸 (d A) 、 デォ キシグァニル酸 (d G) 、 デォキシチミジル酸 (d T) 、 シチジル酸 (r C) 、 アデニル酸 (r A) 、 グァニル酸 (r G) 、 ゥリジル酸 ( r U) 、 あるいはその 連結体や、 これらにァミノへキサノールや Amino - mod ierC6 (Am C) が結合し たもの等が挙げられるが、 これらのうちデォキシシチジル酸 ( d C) が含まれる ものが好ましく用いられ、 さらに 1〜 3残基の連結体や、 これらにァミノへキサ ノールや Amino- modifierC6 (Am C) が結合したもの等が好ましい。
また、 リンカ一として、 複数の標識物質を結合するための分岐点を導入し得る ものも用いられる。 このようなリンカ一として、 具体的には、 例えば、 リジンや システィン等のァミノ酸、 5, ァミノ修飾 C'6 d T (Amino - mod ier C6- dT:合 成機に導入するホスホアミダイドの正式名称では
5 -Dimethoxytrityl-5- [N - (trifluoroacetylaminohexyl) - 3 - acrylimido] -2 -deo xyUridine^ 3 - [ (2 - cyanoethyl) - (N、 N- diisopropylノ」 - phosphoramidite:グレン リサーチ社)等の核酸誘導体、あるいはその連結体等が挙げられる。 リンカ一は、 用いるァクセプター部おょぴ標識物質によって異なるので、 適宜選択して用いる ことが好ましい。 リンカーの選択方法としては、 例えば、 WO O 2 / 4 6 3 9 5 号公報に記載の方法等を用いることができる。
ラベル化化合物として、 ラベル部が一つのものは、 例えば、 下記式 1に示され るものが挙げられ、 またラベル部が二つのものは、 下記式 2に示すもの等が挙げ られる。
( 1— m) m 式 1
(式中、 Xはァクセプター部を構成する分子の残基を示し、 Rはラベル部を構成 する分子の残基を示す。 X1"1 "は、 リンカ一を示す。 mは 1以上の整数を示す)
(式中、 Xはァクセプター部を構成する分子の残基を示し、 R 1及び R 2はラベル 部を構成する分子の残基を示す。 X1— mは、 リンカ一を示す。 Lは、 分岐点を導入 するためのコネクターを示す。 mは 1以上の整数を示す)
ァクセプター部を構成する化合物の結合方法は特に制限はないが、 リン酸ジェ ステル結合、 アミド結合、 スルホンアミド結合、 チォゥレア結合、 エステル結合 等が挙げられ、特に好ましくはリン酸ジエステル結合とアミド結合が用いられる。 また、 ァクセプター部にリンカ一が結合した化合物としては、 図 2に記載のもの 等が挙げられる。 図中、 R 1および R 2はラベル物質を示す。
「ラベル部」 は、 ラベル化蛋白質の検出に用いられる標識物質を含む物質を意 味し、 その構造に特に制限はない。 「標識物質」 は、 通常の検出方法で蛋白質の 存在を検出するために用いられる物質を意味し、 ラベル化化合物の目的蛋白質の C末端への結合を妨げない限り特に制限はない。 具体的には、 放射性物質、 非放 射性物質のいずれでもよく、放射性物質としては、 3 3 P、 3 2 P、 3 5 S等が挙げら れる。 非放射性物質としては、 蛍光物質、 特定の物質と親和性を有する物質 (以 下、 これを 「親和性物質」 と称することがある) 、蛋白質、 ポリペプチド、糖類、 脂質類、 色素、 ポリエチレングリコールのような高分子、 ビーズ、 ナノビーズ、 および核酸等が挙げられる。
蛍光性物質としては フルォレセイン系列、 ローダミン系列、 ェォシン系列、 NBD系列等の蛍光色素や、 緑色蛍光蛋白質 (GFP) 等の蛍光性蛋白質、 ホタルルシ フェリン、 ルミノール誘導体、 ェクオリン、 アタリジゥム塩、 アタリジゥムサク シィミ ドエステル、 CDP— Star., CSPD、 AMPPD, Galacton、 Galacton-Plus, Galacton- Star、 Glucuron, Glucin等の発光化合物なども挙げられる。 具体的に は、 フルォレセイン、才レゴングリーン (モレキュラープロ一ブ社製)、 Alexa488
(モレキュラープローブ'社製) 、 テトラメチルローダミン、 テキサスレツド (モ レキュラープローブ社製) 、 IC3 (同仁化学社製) 、 IC5 (同仁化学社製) 、 Cy3
(アマシャムパイォサイェンス社製) 、 Cy5 (アマシャムバイオサイエンス社製) などが挙げられる。
親和性物質及ぴ該物質と親和性を有する物質の組み合わせとしては、 例えば、 ビォチンあるいはイミドビォチンとァビジン及びストレプトァビジン等のビォチ ン結合蛋白質、 マルトースとマルトース結合蛋白質、 ニッケルあるいはコバルト
等の金属イオンとポリヒスチジンペプチド、 グルタチオンとグルタチオン一 S— トランスフェラーゼ、抗原分子と抗体、アデノシン 3リン酸と AT P結合蛋白質、 エチレンジァミン四酢酸と 2価イオン等が挙げられる。 このうち特に、 ピオチン やグルタチオンが好ましく用いられる。
このような標識物質が、 ァクセプター部に結合する場合に用いられる反応性官 能基としてはチオール基、 ケトン基、 ヒドラジド基、 アジド基、 チォエステル基 などが挙げられる。
「ァクセプター部」は、無細胞蛋白質合成系または生細胞中で蛋白質の合成(翻 訳) が行われたときに、 合成された蛋白質の C末端に結合する能力を有する化合 物を意味し、 この機能を有する限り特に制限はない。 通常は、 核酸に類似した化 学構造骨核を有する物質あるいはその連続体とアミノ酸あるいはアミノ酸に類似 した化学構造骨核を有する物質が化学的に結合したもの (核酸誘導体) である。 このような化合物としては、 化学結合としてアミド結合を有するピューロマイシ ン (Puromycin) 、 3, -N -アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド (3' -N-Aminoacylpuromycin aminonucleoside^ PANS—ァ ノ酸) 、 及ぴィ匕学結合 として 3' -ァミノアデノシンのァミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合 した結果形成されたァミド結合でつながった 3, -N-ァミノアシルアデノシンァミ ノヌクレオシ' (3 —Aminoacy丄 adenosine aminonucleoside、 AAN5—ダ ¾ノ酸) 等 が挙げられる。
PANS—ァミノ酸の具体例としては、 ァミノ酸部がグリシンの PANS - Gly、パリン の PANS - Val、 ァラニンの PANS- Ala、 その他、 全アミノ酸に対応する PANS-全アミ ノ酸化合物が挙げられる。 また、 AANS-アミノ酸の具体例としては、アミノ酸部が グリシンの AANS-Gly、 パリンの AANS- Val、 ァラニンの NS- Ala、 その他、 全ァ ミノ酸に対応する AANS -全ァミノ酸化合物が挙げられる。
ァクセプター部としては、 さらに、 ヌクレオシドあるいはヌクレオチドとアミ ノ酸のエステル結合したもの等も使用できる。 即ち、 核酸あるいは核酸に類似し た化学構造骨格および塩基を有する物質と、 アミノ酸に類似した化学構造骨格を
有する物質とを化学的に結合可能であれば、 そのようにして結合した化合物は、 すべて使用できる。
なお、 ここで核酸とは、 ヌクレオシド若しくはその誘導体またはそれらが 3 ' と 5, 位炭素の間でリン酸を介してジエステル結合により結合した連結体を意味 する。 ァクセプター部は、 好ましくは、 核酸とアミノ酸またはアミノ酸誘導体と が結合した化合物である。 さらに好ましくは、 2 ' 若しくは 3 ' —アミノアデノ シンまたはその誘導体とアミノ酸またはァミノ酸誘導体とが結合した化合物であ る。 特に好ましくは、 ピューロマイシンまたはピューロマイシンに後述するリン カーが結合したピューロマイシン誘導体である。
ピューロマイシン誘導体としては、 例えば、 リボシチジルピューロマイシン ( (rCp) nPur: nは 1以上の整数で適宜選択される) 、 デォキシシチジルピュー ロマイシン ( (dCp) nPur : nは 1以上の整数で適宜選択される) 、 デォキシゥリ ジルピューロマイシン ( (dUp) nPur: nは 1以上の整数で適宜選択される) 等が 挙げられる。 これらのうちで特にデォキシシチジン 1〜 3残基にピューロマイシ ンが結合しているものが好ましい。
ァクセプター部を構成する化合物の、 無細胞蛋白質合成系または生細胞中での 蛋白質の合成 (翻訳) が行われる際に合成された蛋白質の C末端に結合する能力 は その化合物の存在下に無細胞蛋白質合成系または生細胞中で蛋白質の合成を 行い、 ぺプチジル化合物の生成を測定することによって評価可能である。
ラベル化化合物の具体的な例としては、図 3に示す化合物等が挙げられる。 こ れらの化合物の合成方法としては、 特に制限はなく、 それ自体既知の通常用いら れる方法を用いることができる。 例えば、 標識物質として蛍光色素のみを有する ラベル化化合物 (例えば、図 3 ( 1 )〜( 5 )に示される化合物)は、特開 2002-257832 号公報などに記載された方法などにより合成することができる。
また、 標識物質として蛍光色素、 親和性物質としてビォチンを有するラベル化 化合物のうち、 チミン塩基の修飾部分に蛍光色素を導入したもの (例えば、 図 3 ( 1 4 ) 〜 ( 1 7 ) に示される化合物等) は、 WO O 2 / 4 6 3 9 5号公報に記
載された方法等により合成することができる。 また、 もう一方の分岐部分にリジ ン残基を持つタイプのもの (例えば、 図 3 ( 6 ) 〜 (1 3 ) に示される化合物) は特願 2002-044955号明細書に記載された新規ピュー口マイシン支持体
(ZF-Puromycin support) を出発物質として合成することもできる。
具体的な合成法として、図 3 ( 6 ) に示す化合物であって、蛍光色素として Cy3 をもつ BiotAC2- Lys (Cy3) - AmC- dC- dC- Puro (Bio- Cy3- Lys- dC2- Puro) の合成法の 例を以下に示す。 まず、通常のホスホアミダイト DNA合成法により ZF- Puromycin (PFZ) supportに Ac- dC - CE ホスホアミダイトと 5' -ァミノ修飾 C6 (ともに例え ば、ダレンリサーチ社製)を連結して AmC- dC - dC- PFZを合成する。このうち 1 μ mol を 0. 1 M炭酸ナトリゥム緩衝液 (pH 9. 2) 150 μ 1と DMF 350 μ 1に溶解し、 Fmoc-Lys (Boc)-Opfp (novabiochem) の 0. 2 Mジメチルホルムアミド (DMF) 溶液 25 μ 1をミキサー上で激しく撹拌しながら 10分おきに 4回加える。 DMF 200 と 0. 1 Μ炭酸ナトリゥム緩衝液 (ρΗ 9. 2) 200 μ 1を加えて 1時間撹拌したのち、 20% ピぺリジン DMF溶液 100 μ 1をカロえてさらに室温で 2時間撹拌する。 溶液を希釈 して中性にしたのち酢酸トリェチルァミン水溶液とァセトニトリルを移動相とし た逆相 HPLCで精製し、 目的物 Lys (Boc) - AmC- dC- dC- PFZ (約 800 nmol) を得るこ とができる。 これを 0. 15 M炭酸ナトリウム緩衝液 (pH 9. 2) 80 μ 1、 DMF 20 1 に溶解し、 100 πιΜ Biotin- (AC5) 2-0Su (同仁化学) の DMF溶液 20 1を 10分お きに 4回加えたのち 1時間撹拌する。 逆相 HPLCでピオチンが導入された目的物 BiotAC2-Lys (Boc) - AmC- dC- dC- PFZ (約 700 nmol) を精製する。 これをあらかじめ 氷冷した 80%TFA 20 μ 1に溶かし、 氷上で 45分放置して脱 Boc反応を行なう。 水 で 20 mlに希釈したのち凍結乾燥機で濃縮し、 水による再溶解と濃縮をほぼ中性 になるまで繰り返す。得られた目的物 BiotAC2- Lys- AmC- dC- dC- PFZ約 600 nmolの うち 150 nmolを 0. 15 M炭酸ナトリウム緩衝液 (pH 9. 2) 60 μ ΐに溶かし、 20 μ 1 ずつ Cy3 Mono-functional Dye (アマシャムフアルマシアバイオテク) のチュー プに加え室温で 2時間撹拌する。 この溶液に 50 mMリン酸緩衝液 (pH8. 1) 100 1
と 10 mg / mlのキモトリプシン溶液 (50 mM酢酸ナトリゥム緩衝液、 H3. 6) 2. 5 μ 1を加え 37°Cで 3時間過熱する。逆相 HPLCで精製し、目的物である Bio C2- Lys ( Cy3)-AmC-dC-dC-Puro約 60 nmol) を得ることができる。
上記の合成法として、 例えば、 蛍光色素が Cy5、 フルォレセイン、 Alexa488の ものはそれぞれ市販の Cy5 Mono-functional Dye (アマシャムフアルマシアバイ ォテク) 、 6-フルォレセイン- 5 (6) -カルボキサミドへキサン酸コハク酸イミ ドエ ステノレ (フナコシ) 、 Alexa Fluor488 carboxylic acid (Molecular Probes) 等 を上記方法で使用する Cy3 Mono-functional Dyeの代わりに用いて合成すること ができる。
ラベル化蛋白質は、 上記遺伝子テンプレートを、 ラベル化化合物の適当な濃度 の存在化で適当な翻訳系で翻訳することにより合成することができる。 また、 後 述の工程の一部およぴ全ェ程は、 各種分注器およびその機能を備えた自動化口ボ ット、 例えばテカン社やベックマンコールター社等のものを利用し、 その工程を 半自動化もしくは自動化することができる。
「翻訳系」 とは、 3宜伝子テンプレートと翻訳に必要な物質を添加することによ り、 それが含むコーディング配列を翻訳して蛋白質を合成し得る系を意味する。 本発明で遺伝子テンプレートの翻訳に用いられる蛋白質合成系は、 無細胞蛋白質 合成系、 生細胞発現系の何れでもよいが、 無細胞蛋白質合成系が好ましい。 無細 胞蛋白質合成系としては、 例えば、 小麦胚芽抽出液、 ゥサギ網状赤血球抽出液、 大腸菌 S 3 0画分を用いた無細胞蛋白質合成系等が挙げられる。 具体的には、 例 えば、 コムギ胚芽抽出液を用いた無細胞蛋白質合成系の場合、
Pro Natl. Acad. Sci. USA, 97: 559-564 (2000)、 特開 2000-236896号公報、 特開 2002-125693号公報、 特開 2002-204689号公報などに従って調製された小麦胚芽 抽出液およぴその無細胞蛋白質合成系を用いることができる。
蛋白質合成系として用いる生細胞は、 大腸菌、 枯草菌、 好熱菌、 酵母などの微 生物、 昆虫細胞、 動物細胞などの培養細胞や生命個体等、 遺伝子テンプレートが 導入可能なものはいずれも使用可能であり、 各細胞で効率よく転写 ·翻訳される
様にデザィンされた 5, 非翻訳領域を有する D N Aもしくは R N Aの遺伝子テン プレートと 1〜100 μΜのラベル化化合物をマイクロインジェクション法ゃ電 気穿孔を用いて細胞に導入し、 その細胞が生育する至適温度で 1〜数十時間反応 させることにより、 ラベル化化合物が C末端に結合した蛋白質が合成される。 本発明で用いるコムギ胚芽抽出液としては、 遺伝子テンプレート、 アミノ酸、 エネルギー源等を供給することにより無細胞蛋白質合成を行なうことができるも のであればその製造方法は特に限定されない。 本発明で用いるコムギ胚芽抽出液 として好ましくは、 コムギ種子中の胚芽を胚乳を除去するように分離して、 該胚 芽から抽出して精製したものを用いることができる。 このようなコムギ胚芽抽出 液は、 コムギ種子から以下のようにして調製したものか、 あるいは市販のものを 用いることができる。 市販の細胞抽出液としては、 コムギ胚芽由来のものは PR OTE I OSTM (TOYOBO社製) 等が挙げられる。
コムギ胚芽抽出液の作製法としては、 例えば J o h n s t o n, F. B. e t a 1. 、 Na t u r e、 179、 160— 161 (1957) 、 あるいは E r i c k s o ii、 A. H. e t a l . 、 (1996) Me t h. I n E n z y m o 1. 、 96、 38-50等に記載の方法を用いることができるが、 以下にさら に詳細に説明する。
本発明で用いるコムギ胚芽抽出液の製造においては、 先ず、 コムギの胚芽以外 の成分、 特に胚乳をほぼ完全に除去することが好ましい。 このような胚芽の調製 方法としては、通常、まず、コムギ種子に機械的な力を加えることにより、胚芽、 胚乳破砕物、 種皮破砕物を含む混合物を得、 該混合物から、 胚轧破砕物、 種皮破 碎物等を取り除いて粗胚芽画分 (胚芽を主成分とし、 胚乳破碎物、 種皮破砕物を 含む混合物) を得る。 コムギ種子に加える力は、 コムギ種子から胚芽を分離する ことができる程度の強さであればよい。 具体的には、 公知の粉碎装置を用いて、 植物種子を粉砕することにより、 胚芽、 胚乳破砕物、 種皮破碎物を含む混合物を 得る。
コムギ種子の粉砕は、 通常公知の粉碎装置を用いて行うことができるが、 ピン ミル、 ハンマーミル等の被粉砕物に対して衝撃力を加えるタイプの粉碎装置を用 いることが好ましい。 粉碎の程度は、 例えばコムギ種子の場合は、 通常、 最大長 さ 4mm以下、 好ましくは最大長さ 2 mm以下の大きさに粉砕する。 また、 粉砕 は乾式で行うのが好ましい。
次いで、 得られたコムギ種子粉砕物から、 通常公知の分級装置、 例えば、 篩を 用いて粗胚芽画分を取得する。 例えば、 コムギ種子の場合、 通常、 メッシュサイ ズ 0. 5mm〜2. Omm、 好ましくは 0. 7mm〜l. 4 mmの粗胚芽画分を 取得する。 さらに、 必要に応じて、 得られた粗胚芽画分に含まれる種皮、 胚乳、 ゴミ等を風力、 静電気力を利用して除去してもよい。
また、胚芽と種皮、胚乳の比重の違いを利用する方法、例えば重液選別により、 粗胚芽画分を得ることもできる。 より多くの胚芽を含有する粗胚芽画分を得るた めに、上記の方法を複数組み合わせてもよレ、。さらに、得られた粗胚芽画分から、 例えば目視ゃ色彩選別機等を用!、て胚芽を選別する。
このようにして得られた胚芽画分は、胚乳成分が付着している場合があるため、 通常胚芽純化のために更に洗浄処理することが好ましい。 洗浄処理としては、 通 常 10 °C以下、 好ましくは 4 °C以下に冷却した水又は水溶液に胚芽画分を分散 · 懸濁させ、 洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄することが好ましい。 また 通常 1 0°C以下、 好ましくは 4°C以下で、 界面活性剤を含有する水溶液に胚芽画分を分 散 ·懸濁させて、 洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄することがより好ましい。 界 面活性剤としては、 非イオン性のものが好ましく、 非イオン性界面活性剤である かぎりは、 広く利用ができる。 具体的には、 例えば、 好適なものとして、 ポリオ キシエチレン誘導体であるブリッジ (B r i j ) 、 トリ トン (Tr i t o n) 、 ノニデット (No n i d e t) P40、ツイーン (Tw e e n)等が例示される。 なかでも、 ノニデット (No n i d e t) P 40が最適である。 これらの非ィォ ン性界面活性剤は、 例えば 0. 5%の濃度で使用することができる。 水又は水溶 液による洗浄処理及ぴ界面活性剤による洗浄処理は、 どちらか一方でもよいし、
両方実施してもよい。 また、 これらの洗浄処理は、 超音波処理との組み合わせで 実施してもよい。
本発明においては、 上記のようにコムギ種子を粉砕して得られた粉砕物からコ ムギ胚芽を選別した後洗浄して得られた無傷 (発芽能を有する) の胚芽を抽出溶 媒の存在下に細分化した後、 得られるコムギ胚芽抽液を分離し、 更に精製するこ とにより無細胞蛋白質合成用コムギ胚芽抽出液を得ることができる。
抽出溶媒としては、 緩衝液、 カリウムイオン、 マグネシウムイオン及び 又は チオール基の酸化防止剤を含む水溶液を用いることができる。 また、 必要に応じ て、 カルシウムイオン、 L型アミノ酸等をさらに添加してもよい。 例えば、 N— 2—ヒ ドロキシェチルピペラジン一N, 一2—エタンスルホン酸 (H E P E S ) — K O H、 酢酸カリウム、 酢酸マグネシウム、 L型アミノ酸及び Z又はジチォス レイ トールを含む溶液や、 P a t t e r s o nらの方法を一部改変した溶液 (H E P E S— KO H、 酢酸カリウム、 酢酸マグネシウム、 塩化カルシウム、, L型ァ ミノ酸及び Z又はジチオスレィトールを含む溶液) を抽出溶媒として使用するこ とができる。 抽出溶媒中の各成分の組成。濃度はそれ自体既知であり、 無細胞蛋 白質合成用のコムギ胚芽抽出液の製造法に用いられるものを採用すればよい。 胚芽と抽出に必要な量の抽出溶媒とを混合し、 抽出溶媒の存在下に胚芽を細分 化する。 抽出溶媒の量は,, 洗浄前の胚芽 1 gに対して、 通常 0 . 1 ミリ リ ットル 以上、 好ましくは 0 . 5ミリリツトル以上、 より好ましくは 1ミリリツトル以上 である。 抽出溶媒量の上限は特に限定されないが、 通常、 洗浄前の胚芽 l gに対 して、 1 0ミリリツトル以下、 好ましくは 5ミリリツトル以下である。 また、 細 分ィ匕しようとする胚芽は従来のように凍結させたものを用いてもよいし、 凍結さ せていないものを用いてもよいが、 凍結させていないものを用いるのがより好ま しい。
細分ィ匕の方法としては、 摩砕、 圧砕、 衝撃、 切断等、 粉碎方法として従来公知 の方法を採用することができるが、 特に衝撃または切断により胚芽を細分化する ことが好ましい。 ここで、 「衝撃または切断により細分化する」 とは、 植物胚芽
の細胞核、 ミトコンドリア、 葉緑体等の細胞小器官 (オルガネラ) 、 細胞膜や細 胞壁等の破壌を、 従来の摩碎又は圧碎と比べて最小限に止めうる条件で植物胚芽 を破壌することを意味する。
細分化する際に用いることのできる装置や方法としては、 上記条件を満たすも のであれば特に限定されないが、 例えば、 ワーリンダブレンダ一のような高速回 転する刃状物を有する装置を用いることが好ましい。 刃状物の回転数は、 通常 1 0 0 0 r p m以上、 好ましくは 5 0 0 0 r p m以上であり、 また、 通常 3 0 0 0 0 r p m以下、 好ましくは 2 5 0 0 0 r p m以下である。 刃状物の回転時間は、 通常 5秒以上、 好ましくは 1 0秒以上である。 回転時間の上限は特に限定されな いが、 通常 1 0分以下、 好ましくは 5分以下である。 細分ィヒする際の温度は、 好 ましくは 1 0 °C以下で操作が可能な範囲内、 特に好ましくは 4 °C程度が適当であ る。 ·
このように衝撃または切断により胚芽を細分化することにより、 胚芽の細胞核 や細胞壁を全て破壌してしまうのではなく、 少なくともその一部は破壌されるこ となく残る。 即ち、 胚芽の細胞核等の細胞小器官、 細胞 S莫ゃ細胞壁が必要以上に 破壌されることがないため、 それらに含まれる D N Aや脂質等の不純物の混入が 少なく、 細胞質に局在する蛋白質合成に必要な R NAやリボソーム等を高純度で 効率的に胚芽から抽出することができる。
このような方法によれば、 従来の植物胚芽を粉砕する工程と粉碎された植物胚 芽と抽出溶媒とを混合してコムギ胚芽抽出液を得る工程とを同時に一つの工程と して行うことができるため効率的にコムギ胚芽抽出液を得ることができる。 上記 の方法を、 以下、 「プレンダ一法」 と称することがある。
次いで、 遠心分離等によりコムギ胚芽抽出液を回収し、 ゲルろ過等により精製 することによりコムギ胚芽抽出液を得ることができる。 ゲルろ過としては、 例え ば予め溶液 (H E P E S— K O H、 酢酸カリウム、 酢酸マグネシウム、 ジチォス レイトール又は L型アミノ酸を含む溶媒) で平衡化しておいたゲルろ過装置を用 いて行うことができる。 ゲルろ過溶液中の各成分の組成 ·濃度はそれ自体既知で
あり、 無細胞蛋白合成用のコムギ胚芽抽出液の製造法に用いられるものを採用す ればよい。
ゲルろ過後の胚芽抽出物含有液には、 微生物、 特に糸状菌 (力ビ) などの胞子 が混入していることがあり、 これら微生物を排除しておくことが好ましい。 特に 長期 (1 以上) の無細胞蛋白質合成反応中に微生物の繁殖が見られることがあ るので、 これを阻止することは重要である。 微生物の排除手段は特に限定されな いが、 ろ過滅菌フィルターを用いるのが好ましい。 フィルターのポアサイズとし ては、 混入の可能性のある微生物が除去可能なものであれば特に制限はないが、 通常 0 . 1〜1マイクロメーター、 好ましくは 0 . 2〜0 . 5マイクロメーター が適当である。 ちなみに、 小さな部類の枯草菌の胞子のサイズは 0 . 5 μ πι χ 1 / mであることから、 0 . 2 0マイクロメーターのフィルター (例えば S a r t o r i u s製の M i n i s a r t™等)を用いるのが胞子の除去にも有効である。 ろ過に際して、 まずポアサイズの大きめのフィルターでろ過し、 次に混入の可能 性のある微生物が除去可能であるポアサイズのフィルターを用いてろ過するのが 好ましい。
このようにして得られた細胞抽出液は、 原料細胞自身が含有する又は保持する 蛋白質合成機能を抑制する物質 (トリチン、 チォニン、 リボヌクレアーゼ等の、 m R N A、 t R N A , 翻訳蛋白質因子やリボソーム等に作用してその機能を抑制 する物質) を含む胚乳がほぼ完全に取り除かれ純化されている。 ここで、 胚乳が ほぼ完全に取り除かれ純化されているとは、 リポソ一ムが実質的に脱アデニン化 されない程度まで胚乳部分を取り除いたコムギ胚芽抽出液のことであり、 また、 リボソームが実質的に脱ァデニン化されなレ、程度とは、 リボソームの脱アデニン 化率が 7 %未満、 好ましくは 1 %以下になっていることをいう。
このような細胞抽出液は、 上記のごとく低分子の蛋白質合成阻害物質 (以下、 これを 「低分子合成阻害物質」 と称することがある) を含有しているため、 細胞 抽出液の構成成分から、 これら低分子合成阻害物質を分子量の違いにより分画排 除する。 排除されるべき物質 (低分子阻害物質) の分子量は、 細胞抽出液中に含
まれる蛋白質合成に必要な因子よりも小さいものであればよい。 具体的には、 分 子量 50, 000-14, 000以下、好ましくは 14, 000以下のものが挙げら れる。
低分子合成阻害物質の細胞抽出液からの排除方法としては、 それ自体既知の通 常用いられる方法が用いられるが、 具体的には透析膜を介した透析による方法、 ゲルろ過法、あるいは限外ろ過法等が挙げられる。 このうち、透析による方法(透 析法) 力 透析内液に対しての物質の供給のし易さ等の点において好ましい。 以 下、 透析法を用いる場合を例に詳細に説明する。
透析に用いる透析膜としては、 50, 000〜12, 000の排除分子量を有す るものが挙げられる、 具体的には排除分子量 12, 000〜 14,000の再生セ ルロース膜 (V i s k a s e S a l e s、 Ch i c a g o製) や、 排除分子量 50, 000のスぺクトラ ポア 6 (SPECTRUM LABOTRATOR I ES I NC. , CA,USA製) 等が好ましく用いられる。 このような透析膜中 に適当な量の上記細胞抽出液を入れ常法を用いて透析を行う。透析を行う時間は、 30分〜 24時間程度が好ましい。
低分子合成阻害物質の排除を行う際、 細胞抽出液に不溶性成分が生成される場 合には、 これを阻害する (以下、 これを 「細胞抽出液の安定化」 と称することが ある) ことにより、 最終的に得られる細胞抽出液 (以下、 これを 「処理後細胞抽 出液」 と称することがある) の蛋白質合成活性が高まる。 細胞抽出液の安定化の 具体的な方法としては、上記( 1 )に記載した低分子阻害物質の排除を行う際に、 少なくとも高エネルギーリン酸化合物、 例えば AT Pまたは GT P等を含む溶液 中で行う方法が挙げられる。 高エネルギーリン酸化合物としては、 AT Pが好ま しく用いられる。また、好ましくは、 ATPと GTP、 さらに好ましくは ATP、 GTP、 及ぴ 20種類のアミノ酸を含む溶液中で行う。
これらの成分 (以下、 これを 「安定化成分」 と称することがある) を含む溶液 中で低分子阻害物質の排除を行う場合は、細胞抽出液に予め安定ィ匕成分を添カ卩し、 インキュベートした後、 これを低分子阻害物質の排除工程に供してもよい。 低分
子合成阻害物質の排除に透析法を用いる場合は、 細胞抽出液だけでなく透析外液 にも安定化成分を添加して透析を行い低分子阻害物質の排除を行うこともできる。 透析外液にも安定化成分を添加しておけば、 透析中に安定化成分が分解されても 常に新しい安定化成分が供給されるのでより好ましい。 このことは、 ゲルろ過法 や限外ろ過法を用いる場合にも適用でき、 それぞれの担体を安定化成分を含むろ 過用緩衝液により平衡ィ匕した後に、 安定ィ匕成分を含む細胞抽出液を供し、 さらに 上記緩衝液を添加しながらろ過を行うことにより同様の効果を得ることができる。 安定ィヒ成分の添加量、 及び安定化処理時間としては、 細胞抽出液の種類や調製 方法により適宜選択することができる。 これらの選択の方法としては、 試験的に 量及び種類をふった安定ィ匕成分を細胞抽出液に添加し、 適当な時間の後に低分子 阻害物質の排除工程を行い、 取得された処理後細胞抽出液を遠心分離等の方法で 可溶化成分と不溶化成分に分離し、 そのうちの不溶性成分が少ないものを選択す る方法が挙げられる。 さらには、 取得された処理後細胞抽出液を用いて無細胞蛋 白質合成を行い、 蛋白質合成活性の高いものを選択する方法も好ましい。 また、 上記の選択方法において、 細胞抽出液と透析法を用いる場合、 適当な安定化成分 を透析外液にも添加し、 これらを用いて透析を適当時間行った後、 得られた細胞 抽出液中の不溶性成分量や、 得られた細胞抽出液の蛋白質合成活性等により選択 する方法も挙げられる。
このようにして選択された細胞抽出液の安定化条件の例として、 具体的には、 上述のプレンダ一法を用いて調製したコムギ胚芽抽出液で、 透析法により低分子 阻害物質の排除工程を行う場合においては、 そのコムギ胚芽抽出液、 及び透析外 液中に、 AT Pとしては 1 0 0 Μ〜0 . 5 mM、 G T Pは 2 5 ju M〜 1 mM、 2 0種類のアミノ酸としてはそれぞれ 2 5 μ Μ〜5 πιΜ添カ卩して 3 0分〜 1時間 以上の透析を行う方法等が挙げられる。 透析を行う場合の温度は、 蛋白質合成活 性が失われず、 かつ透析が可能な温度であれば如何なるものであってもよレ、。 具 体的には、 最低温度としては、 溶液が凍結しない温度で、 通常一 1 0 °C、 好まし
くは一 5°C、 最高温度としては透析に用いられる溶液に悪影響を与えない温度の 限界である 40 °C、 好ましくは 38 °Cである。
細胞抽出液への安定化成分の添加方法は、 特に制限はなく、 低分子阻害物質の 排除工程の前に添カ卩しこれを適当時間ィンキュベートして安定ィヒを行った後、 低 分子合成阻害物質の排除工程を行ってもよいし、 安定化成分を添カ卩した細胞抽出 液、 及ぴ Zまたは安定ィ匕成分を添カ卩した該排除工程に用いるための緩衝液を用い て低分子合成阻害物質の排除工程を行ってもよい。
本発明で用いるコムギ胚芽抽出液としては、 DN A含有量および/または総脂 肪酸(パルミチン酸、ォレイン酸及びリノール酸)含有量が低レ、ものが好ましく、 例えば、 (a) 260 nmにおける光学密度 (O.D.) (A260) が 90の時の D N A含有量が 230 μ g/m 1以下であるもの、 あるいは (b) 260nmにおけ る光学密度 (0. D. ) (A260) が 90の時の総脂肪酸(パルミチン酸、 ォレイン酸 及びリノール酸) 含有量の合計量が 0. 03 g/100 g以下であるものが好ま しく、 さらに上記 (a) 及び (b) の両方の条件を満たすものが特に好ましい。 無細胞蛋白質合成系において、 遺伝子テンプレートの翻訳反応を行う場合、 上 記細胞抽出液、 遺伝子テンプレート等が含まれる反応層に、 蛋白質を構成するァ ミノ酸 (基質) や ATP、 GTPなどのエネルギーなど (本明細書中では、 これ らを 「供給物質」 と称することがある) を含む供給層からその接触面を通してェ ネルギ一源や基質等の供給物質が供給される系が好ましく用いられる。 即ち、
(1) 蛋白質合成反応の開始時には、 反応層と供給層が分離された状態にあり、
(2) 反応時間とともに供給物質が、 供給層から反応層へ供給される工程を含む 蛋白質合成系が好ましい。
このような工程を含む無細胞蛋白質合成系として、 具体的には、 (1) 比重の 高い反応層に対してその上部にエネルギー供給層を重層する方法 (例えば、 wo
2002/24939号公報等) 、 ( 2 ) 反応層に糖などを添加してさらに比重 を高くし、その上に重層するエネルギー供給層の添加を簡便にする方法 (例えば、 WO 2002/24939号公報等) 、 (3) エネルギー供給層をセフアデック
ス、 セファロース、 ァガロース、 アクリルアミドなどの吸水性の樹脂やビーズも しくはゲルに吸収 ·包埋し、 それと反応層を混合する方法、 もしくはその上部も しくは下部もしくは内部に反応層を添加する方法 (例えば、 特願 2 0 0 2— 3 5 4 0 6 2明細書等) 、 ( 4 ) 半透膜を利用して反応層とエネルギー供給層を分離 する透析法 (例えば、 WO 8 8 Z 0 8 4 5 3号公報等) 、 (5 ) 反応層に対して 経時的に供給層を添加する方法 (例えば、 WO 2 0 0 2 2 4 9 3 9号公報等) などが好ましく用いられる。 このうち、 (1 ) 、 (2 ) および (3 ) の方法が特 に好ましい。
これらの無細胞蛋白質合成系を使用して遺伝子テンプレートを翻訳おょぴラベ ル化する際、 蛋白質をコードする遺伝子テンプレート (mR NA) および適当な 濃度のラベル化化合物は反応層、 供給層の何れか一方、 もしくは両方に添加する ことが可能である。 より望ましくは、 遺伝子テンプレートは反応層に添加するの が良く、 ラベル化化合物は反応層および供給層の両方に後述する適当な濃度とな るように添加するのが好ましい。
ここで、 ラベル化化合物の適当な濃度とは、 合成された蛋白質の C末端にラベ ル化化合物が結合するのに有効な濃度、 即ち無細胞蛋白質合成系または生細胞中 での蛋白質合成を阻害せず、 かつ蛋白質の C末端に検出可能な量で結合し得る濃 度を意味する。 このような濃度範囲の選択は 下記例 7に詳述するとおり、 実際 に蛋白質合成を行う系において、 異なる濃度のラベル化化合物の存在下で遺伝子 テンプレートを翻訳し、 得られた蛋白質に標識物質が結合しているか否かを、 適 当な方法で検出して、 得られた蛋白質に標識物質が結合している系で用いたラベ ル化化合物の濃度範囲を選択することにより行うことができる。
選択された濃度のラベル化化合物の存在下で遺伝子テンプレートを用いる蛋白 質合成系に適した反応方法で翻訳する。 具体的には、 例えば、 遺伝子テンプレー トとして GSK— PK14 (GenBank accession No. AK一 074856) 、 ラベル化化合物とし て Cy3-AmC-dC-Puromycin (図 3 ( 1 ) ) を用い、 これらを上記プレンダ一法で得
られたコムギ胚芽抽出液を用いた蛋白質合成系で重層法で翻訳反応を行う場合で 詳細に説明する。
まず、 9 6穴プレートに最終濃度 16 μ Μになるようにラベルイ匕化合物を添カロし た 1 2 5 μ 1の供給液(31. 3mM HEPES/K0H(pH7. 8)、 2. 67mM Mg (OAc) 2、 93mM K0Ac、 1. 2mMATP,0. 257mM GTP, 16mM creatine phosphate, 2. lmM DTT 0. 41mM spermidine, 0. 3mML型アミノ酸 (20種) 、 Ι μ Μ Ε- 64、 0. 005% NaN3、 0. 05% ΝΡ-40) を入れ、 その上部に遺伝子テンプレートを転写した mRNAを 2 O pmolとラベル化化合物が 最終濃度で 16μ Μとなるように添カ卩した反応溶液 (6 1のコムギ胚芽抽出液、 24 mM Hepes/ K0H(pH 7. 8)、 1. 2 mM ATP、 0. 25 mM GTP、 16 mM creatine phosphate, 10 g creatine kinase^ ribonuclease inhibitor (20units)、 2 mM DTT、 0. 4 mM spermidine, 0. 3 mM L型ァミノ酸 (20種) 、 2. 7 mM magnesium acetate, 100 mM potassium acetate, 5 μ g小麦胚芽由来 tRNA、 0. 05% Nonidet P-40および 0. 005% NaN3) を重層し、 このプレートを 2 5〜 3 7 °Cで保温して 1〜数十時間反応させ ることにより翻訳反応を行う。
「ラベル化蛋白質」 は、 目的蛋白質の全長からなるもの (これを 「全長蛋白質」 と称することがある) の C末端にラベル化化合物が結合したものだけではなく、 その一部のァミノ酸配列からなる、即ち目的蛋白質が種々断片化された蛋白質(こ れを 「断片化蛋白質」 と称することがある) の C末端にラベル化化合物が結合し た蛋白質も含まれる。 このような c末端がラベル化された断片化蛋白質は、 上記 の蛋白質 C末端ラベル化法により取得することができるが、 遺伝子テンプレート として目的蛋白質をコードする配列の 3 ' 末端にストップコドンを有しているも のを用いると全長蛋白質よりも断片化されたラベルイ匕蛋白質が多く合成されるの で好ましい。
C末端がラベル化された断片化蛋白質群は、 後述する蛋白質と物質の相互作用 の解析等に用いることができる。 断片化蛋白質が好ましく用いられる場合とは、 例えば、 目的蛋白質が活性化するのに、 自分自身の分子内における相互作用、 す なわち活性部位 (ドメイン) を自分自身の制御部位 (ドメイン) で覆って抑制し
ている場合 (autoregulation (自己制御) ) 等が挙げられる。 具体的には、 目的 蛋白質の全長の C末端にラベル化化合物が結合した蛋白質を用いて上記相互作用 を解析する場合、 目的蛋白質自身に制御ドメインが含まれ、 相互作用が不活化さ れて検出ができないような場合、 上記断片化蛋白質を含む蛋白質群 (ライブラリ 一) を用いることが好ましい。
上記蛋白質 C末端ラベル化法において、 ラベル化化合物を添加することなく、 蛋白質合成反応を開始させた一定時間後、 具体的には数分から数時間後にラベル 化化合物を添加することにより、 目的蛋白質の全長の C末端にラベル化化合物が 結合した蛋白質 (以下、 これを 「C末端ラベル化全長蛋白質」 と称することがあ る) の発現量を向上させ、 逆にラベル化された断片化蛋白質の発現量を低下させ ることが可能である。
ラベル化化合物を添加するタイミングは、 用いる蛋白質合成系や遺伝子テンプ レートにより適宜選択して用いることができる。 選択の方法は、 特に制限はない が、 例えば、 上記の蛋白質 C末端ラベル化方法を行うにあたり、 蛋白質合成を行 う際、 蛋白質合成系に遺伝子テンプレートを添カ卩した後、 適当な時間ごとにラベ ル化化合物を添加して合成反応を進行させる。 反応終了後、 反応溶液中の蛋白質 を、 SDS- PAGE等により分離し、 C末端にラベル化化合物が結合した蛋白質を適当 な方法により解析し その分子量から、全長蛋白質が最も多く合成される時間を C末端ラベル化全長蛋白質を合成するのに好ましいラベル化化合物を添加するタ ィミングとして選択する方法等が挙げられる。
c末端ラベル化全長蛋白質を合成するのに好ましいラベル化化合物を添加する タイミングの選択方法としては、 さらに、蛋白質合成反応中のリボソームを mRNA 上でポージングさせるのに十分な時間として選択する方法も用いられる。 このよ うな時間の選択方法としては、 FEBS Lett. , 514, 106- 110 (2002)等に記載の方法 等が用いられる。
また、 C末端ラベル化全長蛋白質を選択的に合成する方法として、 J. Biol. Chem、 276: 38036- 38043 (2001)記載の方法に従ってスペルミジンゃスペルミンなどのポ
リアミンを適量、 具体的には 1〜1000 /ζ Μ程度添加する方法等が挙げられる。 さ らに、 遺伝子テンプレートとして、 目的蛋白質をコードする塩基配列の 3, 末端 にストップコドンを有していないものを用いることも好ましい。
以上の方法で合成されたラベル化蛋白質を含む反応溶液に対し、 各種界面活性 剤、 E D T Aや E G TAなどのキレート剤、 0 . 1〜 2 Mの各種塩を添加するこ とにより、 合成された蛋白質と合成系に含まれる夾雑物、 例えば、 各種核酸、 リ ポソーム、脂質、糖、他の蛋白質との結合を抑制もしくは解離することができる。 かくして得られたラベル化蛋白質を含む上記反応溶液としては、 (1 ) 目的蛋 白質の全長の C末端にラベル化ィヒ合物が結合した蛋白質と、 断片化された蛋白質 の C末端にラベルィヒ化合物が結合した蛋白質の混合物、 ( 2 ) 目的蛋白質の全長 の C末端に、 ラベルィヒ化合物が結合したタンパク質、 (3 ) 断片化された蛋白質 の C末端にラベル化化合物が結合した蛋白質を含む蛋白質群 (ライブラリー) か らなるものが挙げられる。 このようなライブラリ一は、 それぞれに適した上述の 方法により調製することができる。 目的蛋白質の全長の C末端にラベル化化合物 が結合した蛋白質は、 例えば、 ラベル化増強配列がァミノ酸をコードしていた場 合には、 該配列がコードするポリペプチドが目的蛋白質の内部、 好ましくはその C末端側に存在し、 その C末端にラベル化化合物が結合している。 一方、 断片化 された蛋白質の C末端にラペル化化合物が結合してレヽる蛋白質は、 目的蛋白質の 一部のァミノ酸配列からなる複数の蛋白質の C末端にラベル化化合物等が結合し たものの混合物で、 ラベル化増強配列がァミノ酸をコードしていた場合でも、 必 ずしもそれを含むとは限らない。
このようなラベル化蛋白質を回収または精製する方法としては、 該蛋白質また は蛋白質群がその種類等により回収率等が変化しない方法であれば如何なるもの であってもよい。 具体的には、 例えば、 C末端ラベル化蛋白質に含まれる物質と 親和性を有する物質を、 樹脂やビーズもしくはプレート等の固相に結合させ、 該 物質とラベ/レイヒ蛋白質を接触させた後に洗浄し、 該固相に結合した蛋白質を抽出 して回収する方法等が挙げられる。 ここで、 ラベルィヒ蛋白質に含まれる物質と、
該物質と親和性を有する物質との組み合わせとしては、 上記した 「タグ」 と該タ グに特異的に結合する抗体、 ラベル化化合物に付加された親和性物質と該物質と 特異的に結合する物質、 あるいは目的蛋白質の部分べプチドと該ぺプチドに対す る抗体等が挙げられる。 親和性物質としては、 上記と同様のものが用いられる。
「目的蛋白質の部分ポリペプチド」とは、目的蛋白質のいずれの部分でもよい。 好ましくは合成されるラベルイ匕蛋白質の立体構造において外側に露出している部 分のポリペプチドが用いられる。このような部分ポリペプチドとして好ましくは、 ラベル化増強配列がァミノ酸をコードする場合そのポリぺプチド、 または、 該ポ リぺプチドとその C末端にラベル化化合物が結合した分子等が用いられる。 タグ や目的蛋白質の部分ポリべプチドに特異的に結合する抗体は、 モノクローナル抗 体でもポリクローナル抗体でもよい。 また、 タグに対する抗体は市販のものが好 ましく用いられる。
目的蛋白質の部分べプチドのうち、 特にラベル化増強タグがコ一ドするポリぺ プチド、 あるいは該ポリぺプチドとその C末端にラベルイ匕化合物が結合した分子 を抗原とする抗体の取得方法について以下に詳細に説明する。 上記抗原となる分 子に、 一般的にはキャリア一として K L H (キーホール · リンペット 'へモシァ ニン) 、 B S A (ゥシ血清アルブミン) 、 O V A (ォバルブミン) などの蛋白質 または高分子体に結合もしくは重合させたものを免疫用抗原として使用する。 具 体的には、 例えば、 選択されたラベル化増強配列がコードするポリぺプチドの N 末端にさらにシスティンを付加したものや、 該ポリぺプチドの C末端にラベル化 化合物が結合した分子の N末端にさらにシスティンを付加したものを合成し、 P I E R C E社 Imject Maleimide Activated Carrier Proteinsに結合させたもの 等が挙げられる。 また、 このようにして作製した免疫用抗原を 1種以上混合して 免疫用抗原としてもよい。 抗原となる部分ポリベプチドは、 化学合成したもので もよいし、 公知の遺伝子工学的手法を用いて作製したものでもよい。
免疫に使用する動物は特に限定されないが、 ゥサギ、 ャギ、 ヒッジ、 マウス、 ラット、 モルモット、 -ヮトリ等はいずれも使用できる。 免疫用抗原の動物への
接種は、 皮下、 筋肉内、 腹腔内に完全フロイントアジュバントや不完全フロイト アジュパントと免疫用抗原をよく混和して行う接種は、 2週間から 5週間ごとに 実施し、 接種した抗原に対する免疫動物の抗体価が充分に上昇するまで続ける。 モノクローナル抗体を調製する場合、 この後、 免疫動物に対して抗原のみの静 脈注射を行い、 その 3日後に抗体産生細胞を含むと考えられる脾臓もしくはリン パ節を採取し、 この脾臓細胞またはリンパ細胞を腫瘍細胞と細胞融合させる。 こ の後、 細胞融合して不死化した抗体産生細胞 (ハイプリ ドーマ) を単離する。 こ こで使用する腫瘍細胞は、 一般的に免疫を行つた動物から調製される脾臓細胞も しくはリンパ細胞と同一種であることが望ましいが、 異種動物間のものでも可能 である。
腫瘍細胞の例として、 p3 (p3/x63 - Ag8)、 P3U1、 NS - 1、 MPC - 11、 SP2/0、 F0、 x63. 6. 5. 3、 S194、 R210等の骨髄腫細胞が使用される。 細胞融合は一般に行わ れている方法、 例えば 「単クローン抗体実験マニュアル」 (講談社サイヱンティフィック 1987年出版) に従って実施すればよレ、。 細胞融合は、融合させる細胞を懸濁した 融合培地に細胞融合促進剤を加えることに実施することができる。 細胞融合促進 剤としては、センダイウィルスや平均分子量 1000〜6000のポリエチレングリコー ルなどが挙げられる。 この際、 更に融合効率を高めるために、 ジメチルスルホキ シド等の補助剤や I L一 6等のサイトカインを融合培地に添加することもできる。 免疫を行った脾臓細胞もしくはリンパ細胞に対する腫瘍細胞の混合比は、 例えば 腫瘍細胞に対し、 脾臓細胞もしくはリンパ細胞を約 1倍から 1 0倍程度用いれば よい。
上記の融合培地としては ERDF培地、 RPMI-1640培地、 MEM培地等の通常の各種 培地を使用することができ、 融合時は通常、 牛胎児血清 (F B S ) 等の血清を培 地から抜いておくのがよレ、。 融合は、 上記の免疫を行った脾臓細胞もしくはリン パ細胞と腫瘍細胞との所定量を上記の培地内でよく混合し、 予め 3 7 °C程度に加 温しておいたポリエチレンダリコール溶液を 2 0〜 5 0 %程度加え、 好ましくは
3 0〜3 7 °Cで 1〜1 0分程度反応させることによって実施する。 以降、 適当な 培地を逐次添加して遠心し、 上清を除去する操作を繰り返す。
目的とするハイプリ ドーマは、 通常の選択培地、 例えば HAT培地 (ヒポキチ ンサン、 アミノプテリン及ぴチミジンを含む培地) で培養する。 この HAT培地 での培養は、 目的とするハイプリ ドーマ以外の細胞 (未融合細胞等) が死滅する のに充分な時間、 通常では数日から数週間行えばよい。
ラベル化増強配列がコードするポリぺプチド、 あるいは該ポリぺプチドの C末 端にラベル化化合物が結合した分子に対するモノクローナル抗体を取得する際、 最も技術的に重要な点がそのスクリ一ユングである。 ラベル化増強配列がコード するポリべプチド、 あるいは該ポリべプチドの C末端にラベル化化合物が結合し た分子に対するモノクローナノレ抗体を産生しているハイプリ ドーマのスクリー二 ングは、 ラベル化増強配列がコードするポリぺプチド、 あるいは該ポリぺプチド の C末端にラベルイ匕化合物が結合した分子もしくはキヤリァー蛋白質とラベル化 増強配列がコードするポリぺプチド、 あるいは該ポリぺプチドの C末端にラベル 化化合物が結合した分子が結合したものなどを材料とし、 様々な免疫化学的方法 で解析することにより可能となる。
例えば、 ラベル化増強配列がコ一ドするポリぺプチド、 あるいは該ポリぺプチ ドの C末端にラベル化化合物が結合した分子をスクリーニング用抗原として用い これらのスクリーニング用抗原とハイプリ ドーマ培養上清中に分泌されるモノク ローナル抗体との結合を、 E L I S A法などの酵素免疫測法、 またはウェスタン ブロッテイング法などで解析して、 目的とするハイプリ ドーマを選択することが できる。
具体的には、 ラベル化増強配列がコードするポリペプチド、 あるいは該ポリぺ プチドの C末端にラベル化化合物が結合した分子、 もしくはこれらが結合したキ ャリア一蛋白質をスクリーニングプレートなどに付着させ、 スクリーニングプレ ートをブロッキング操作後、 上記ハイプリ ドーマの培養上清を添カ卩して、 これら を認識する抗体を分泌しているハイプリ ドーマを選別する。 これら選別されたハ
イブリ ドーマに対し、 さらにキャリアー蛋白質のみを付着させブロッキング操作 を行ったスクリーニングプレートを使用し、 このキャリアー蛋白質を認識しない 抗体を分泌しているハイプリ ドーマを選別する。
例えば、 選択するハイプリ ドーマの培養上清をラベル化増強配列がコードする ポリぺプチド、 あるいは該ポリぺプチドの C末端にラベルイ匕化合物が結合した分 子、 もしくはこれらが結合したキャリアー蛋白質、 およびキャリアー蛋白質のみ が付着した E L I S A法用のプレートに添加して反応させ、 十分な洗浄操作後、 標識抗マウス I g Gポリクローナル抗体を添カ卩してさらに反応させる。 洗浄操作 後に標識の検出を行い、 ラベル化増強配列がコードするポリペプチド、 あるいは 該ポリぺプチドの C末端にラベル化化合物が結合した分子、 もしくはこれらが結 合したキヤリァー蛋白質を付着したプレートに反応性を有し、 キヤリァー蛋白質 のみを付着させたプレートに対して反応性を示さない培養上清を有するハイプリ ドーマを選択する。標識としては、後述する各種酵素、蛍光物質、化学発光物質、 ラジオァイソトープ、 ピオチンまたはアビジン等が用いられる。
上記のスクリーニングにより、 ラベル化増強配列がコードするポリぺプチド、 あるいは該ポリぺプチドの C末端にラベル化化合物が結合した分子を認識するモ ノクローナル抗体を産生するハイプリ ドーマが得られる。
得られたハイブブリ ドーマは、限界希釈法によりクローユングすることにより、 単一のモノク口ーナル抗体を産生するハイブリ ドーマクローンを得ることができ る。このハイブリ ドーマクローンは、あらかじめ F B S中に含まれるゥシ抗体( I g G) を除いた F B Sを 1〜 1 0 %程度加えた培地または無血清用培地を用いて 培養を行い、 得られた培養上清を目的のモノクローナル抗体を精製する原料とす る。 一方、 得られたハイプリ ドーマクローンをあらかじめプリステンを投与した Balb/Cマウスまたは Balb/c (nu/nu)マウスの腹腔内に移植し、 1 0〜1 4日後に モノクローナル抗体を高濃度に含む腹水を採取し、 目的のモノクローナル抗体を 精製する原料としてもよい。 モノクローナル抗体を精製する方法は、 通常の免疫 グロプリン精製法を用レ、れば良く、 例えば、 硫安分画法、 ポリエチレン分画
法、 エタノール分画法、 陰イオン交換クロマトグラフィー、 プロテイン Aまたは プロテイン Gが結合したァフィ二ティークロマトグラフィー等により実施するこ とができる。
ポリクローナル抗体を調製する場合には、 上述の免疫動物に対して抗原のみの 静脈注射を行い、 その 3〜 5日後に抗血清を取得する。 取得した抗血清からポリ クローナル抗体を精製する方法は、通常の免疫グロプリン精製法を用いれば良く、 例えば、 硫安分画法、 ポリエチレン分画法、 エタノール分画法、 陰イオン交換ク 口マトグラフィー、 プロテイン Aまたはプロテイン Gが結合したァフィ二ティー クロマトグラフィー等により実施することができる。
ラベル化増強配列がコードするポリぺプチド、 あるいは該ポリぺプチドの C末 端にラベル化化合物が結合した分子を抗原とするポリクローナル抗体を取得する ための精製操作とは、 上述と同様の方法を用いることができる。
このようにして得られる目的蛋白質の部分ポリペプチド、 あるいはタグと特異 的に結合する抗体は、 そのまま用いてもよいし、 定法であるパパイン処理によつ て得られる F a bもしくはペプシン処理によって得られる F ( a b ' ) 2または F ( a b ' ) の形態として用いてもよい。 また、該抗体の H鎖と L鎖の両可変ドメィ ン内の相補性決定領域 (C D R) 、 または超可変領域などを含む断片や、 これを コードする遺伝子も本発明に含まれる。 さらに、 上述のモノクローナル抗体を産 生するハイプリ ドーマ細胞系も本発明に含まれる。
上記以外にも、 本発明におけるラベルイ匕蛋白質の精製法に関しては、 一般的に 蛋白質の精製に用いられるあらゆる方法が利用可能であり、 例えば、 イオン交換 クロマトグラフィー、疎水ク口マトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、 逆相クロマトグラフィー、 ヒドロキシァパタイトクロマトグラフィー、 ァフィ二 ティークロマトグラフィー、 ゲル電気遊動法、 免疫電気遊動法、 透析法、 沈殿、 限外濾過法等を用いることができ、 また、 これらを組み合わせて使用することも できる。
また、 ここで述べた工程の一部および全工程は、 各種分注器おょぴその機能を 備えた自動化ロボット、 例えばテカン社やベックマンコールター社等のものを利 用し、 その工程を半自動化もしくは自動化することができる。
かくして精製、 回収されたラベル化蛋白質は、 S D S—ポリアクリルアミドゲ ル電気泳動 (SDS-PAGE) 等により分離し、 該蛋白質に結合しているラベル化化合 物を検出することにより確認することができる。また、蛋白質のラベル化効率は、 上記 SDS-PAGEにより分離された蛋白質のラベル量、およぴラベル化された蛋白質 量を解析することにより算出することが可能である。 これらのラベルから蛋白質 は、その分子量ごとに SDS - PAGEやゲル濾過法などで分離、回収することもできる。 そしてこれらをマススぺクトル法等を用いて質量分析したり、 そのペプチドを解 析することにより、 C末端ラベル化蛋白質内に存在するアミノ酸配列を決定する ことが可能である。 また簡便には、 断片化されたラベル化蛋白質の場合等、 その 混合物に含まれる各蛋白質の分子量を SDS- PAGE等を用いて決定し、目的蛋白質の 全長の分子量とァミノ酸配列とを比較することにより、 断片化されたラベル化蛋 白質が有するァミノ酸配列を求めることが可能である。
本発明の方法により合成されるラベル化蛋白質は、 分子生物学や細胞生物学、 さらには生化学等の種々の分野で利用が可能である。 例えば、 目的蛋白質と物質 間の相互作用に対する検出,. 解析、 測定や、 目的蛋白質の個体あるいは細胞内に おける動態の解析、 あるいは目的蛋白質のラベル部から発せられる信号量を指標 とした蛋白質の定量等に用いることができる。
上記の解析に用いられるラベルィヒ蛋白質は、 本発明の方法により作製されたも のであれば如何なるものでもよい。 このうち、 上記の C末端がラベル化された断 片化蛋白質 (または蛋白質群) は、 目的蛋白質の活性状態が不明で、 相互作用に 必要な活性部位 (ドメイン) を自分自身の制御部位 (ドメイン) で覆って抑制し ている (autoregulation (自己抑制) ) ことが疑われる蛋白質一物質間の相互作 用解析で特に好ましく用いられる。また、数多くの目的蛋白質について網羅的に、 ハイスループットに解析する場合にも該蛋白質群を用いることが好ましい。
また、 解析方法に応じて、 該蛋白質を固相 (基盤) に結合して用いることも好 ましい。 例えば、 複数種類のラベル化蛋白質を、 一つの基盤表面に、 または複数 の領域に区画された基盤表面のそれぞれに結合させたもの (以下、 これを 「蛋白 チップ」 と称することがある) 等が挙げられる。 蛋白チップ上の領域数は特に制 限はないが、 検出機器等との組み合わせから、 6の倍数であることが好ましく、 具体的には、 6〜1 5 3 6個の範囲、 又はそれ以上であることが好ましい。 基盤材料としては、 非伝導性の材質として、 ガラス、 セメント、 陶磁器等のセ ラミックス又はニューセラミックス、 ポリエチレンテレフタレート、 酢酸セル口 ース、 ビスフエノーノレ Aのポリカーボネート、 ポリスチレン、 ポリメチ /レメタク リレート等のポリマー、 シリコン、 活' ]·生炭、 多孔質ガラス、 多孔質セラミック、 多孔質シリコン、 多孔質活性炭、 織編物、 不織布、 濾紙、 短繊維、 メンブレンフ ィルターなどの多孔質物質などを挙げることができる。 具体的には、 マイクロタ イタ一プレートや各種ビーズ、 チップ等が挙げられる。 また、 導電性のものとし ては、 グラフアイト、 グラシ一カーボン、 パイリティックグラフアイト、 カーボ ンペースト、 カーボンファイバーなどの炭素、 白金、 白金黒、 金、 パラジウム、 ロジウム等の貴金属、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、酸化鉛等の酸化物、 S i、 G e、 Z n O、 C d S、 T i 0 2、 G a A s等の半導体電極、 チタン等を 挙げることができる。 これらは 導電性高分子によって被覆されいてもよい。 こ れらの中で、 特に、 各種ポリマー、 ガラス、 シリコン、 金もしくはグラシ一力一 ボン等のチップを用いることが好ましい。 基盤の厚さや形は、 用いる解析方法や 検出機に応じて適宜選択することができる。
ラベル化蛋白質の上記基盤への固定は、 その何れの位置で固定されていてもよ く、 また二箇所以上で固定されていてもよい。 また、 固定化した蛋白質を物質と の相互作用解析に用いる場合には、 相互作用に影響のなレ、位置で固定されている ことが好ましい。 固定化方法は特に制限はなく、 共有結合、 イオン結合、 物理的 吸着等による結合で固定化されていることが好ましい。 例えば、 蛋白質の特定の 反応基と基板との間の共有結合による方法、 目的蛋白質中のぺプチドと親和性を
有する物質との結合による方法、 目的蛋白質に結合させた物質と親和性を有する 物質との結合による方法等が挙げられる。
具体的な固定化方法としては、例えば、基盤表面を金で蒸着処理した場合には、 システィン基を導入したラベル化蛋白質を上記の方法に準じて作製し、 そのシス ティン残基のメルカプト基と金との配位結合を介して、 ラベル化蛋白質を基盤に 結合させることができる。このシスティン残基の該蛋白質内における配位位置は、 蛋白質の C末端あるいは N末端であることが好ましい。 しかしながら、 蛋白質の 高次構造形成あるいは相互作用を阻害する位置であれば必ずしも蛋白質の末端で なくてもよい。
また、 基盤表面を、 グラシ一カーボンで塗布処理した場合には、 そのグラシ一 カーボン層を過マンガン酸カリウムで酸ィ匕することによって、 基盤表面、 あるい はグラシ一カーボン層のさらに表面にカルボン酸基が導入され、 蛋白質はアミド 結合により基盤上に固定化される。 さらに、 基盤上に CMデキストラン等の親水 性ポリマーが固定されている場合には、 これらを介して C末端ラベル化蛋白質を 基盤上に固定化することができる。 親水性ポリマーとしては、 カチオン性、 ある いはァニオン性もしくは両性イオン性のポリマーを用いることができ、 目的蛋白 質の物質との相互作用を阻害しないものであることが好ましい。 さらに、 基盤表 面を ポリ一 L一リシン、 ポリェチレンィミン、 ポリアルキルァミン等で処理し た場合には、 ラベル化蛋白質を固定することができる。 この場合、 ラベル化蛋白 質を付着させた後に、 該基盤を加熱処理や紫外線処理を行うことにより、 蛋白質 と基盤表面との間に架橋を形成し、 より安定に固定化することができる。
また、 目的蛋白質中のペプチドと親和性を有する物質との結合による方法とし て、 上記の目的蛋白質の部分ペプチドに対する抗体を基盤に結合させ、 この抗体 と C末端蛋白質との結合により該蛋白質を固定化する方法等が挙げられる。 この ような抗体を用いたラベルイ匕蛋白質の基盤への固定ィ匕は、 該蛋白質を含む水性液 として、 上述の無細胞蛋白質合成系において合成した合成液を精製せずに用いる ことができるため好ましい。 抗体は、 上記した方法により作製されたものが用い
られるが、 断片化蛋白質群を固定ィヒする場合には、 目的蛋白質の N末端の部分べ プチド、 または目的蛋白質の N末端に融合させたタグぺプチドを抗原とする抗体 を用いることが好ましい。 抗体の基盤への固定化は、 上記のラベル化蛋白質の基 盤への固定化方法と同様にして行うことができる。 また、 基盤に抗体に対する親 和性物質が結合しているものに抗体を結合させる方法によることもできる。 抗体 に対する親和性物質とは、 例えば、 プロテイン Gやプロテイン A等が挙げられ、 これらの固定化方法は、 上記ラベル化蛋白質の基盤への固定化方法と同様にして 行うことができる。 かくしてラベル化蛋白質と特異的に結合する抗体を表面に結 合した基盤は、 表面の過剰な蛋白質結合部位をゥシ血清アルブミン、 スキムミル ク、 またはゼラチン等でブロッキングした後に、 ラベル化蛋白質と接触させるこ とが好ましい。 ここで、 C末端ラベルイ匕タンパク質は、 これを合成した無細胞蛋 白質合成反応液をそのまま用いることができる。
上記した何れの方法においても、 蛋白質が含まれる水性液を基板上に点着して 行うことが好ましい。 点着の方法としては、 マニュアル操作によっても行うこと ができるが、 D NAマイクロアレイ法等で利用されている各種スポッタ一装置を 用いて行うこともできる。 点着の条件は、 使用する基盤の大きさ、 点着する蛋白 質の種類、 数などによって適宜選択される。 具体的には、 例えば、 市販のスポッ ター装置を用いて、 複数の領域に区画された基板上に それぞれの領域に対応す るようにラベル化蛋白質を含む水性液を点着することが好ましい。 点着後、 未固 定の蛋白質を各種界面活性剤や E D T A、あるいは E G T A等のキレート剤、 0 . 1〜2 Mの各種塩等を含む洗浄液を使用し、 洗浄除去しておくことが好ましい。 ラベルイ匕蛋白質の固相への固定ィヒは、 その工程の一部または全部を各種分注機 およびその機能を備えた自動化ロボット、 例えばテカン社やベックマンコールタ 一社などの市販のロボットを用いて、 半自動化または自動化することができる。 本発明の方法で合成されたラベル化蛋白質は、 蛋白質一物質間相互作用の解析 に用いることができる。
「蛋白質一物質間相互作用解析」 とは、 蛋白質と標的物質が相互に何らかの作 用をすることを解析することを意味する。 なんらかの作用とは、 例えば、 結合、 活性化、 修飾などが挙げられる。 「標的物質」 とは、 具体的には蛋白質、 核酸、 糖鎖、 低分子化合物などが挙げられる。
蛋白質一物質間相互作用解析法としては、 例えば、 蛍光測定法、 時間分解蛍光 測定法、 蛍光偏向解析法、 蛍光スキャナーやイメージヤーを利用した蛍光ィメー ジング法、 蛍光共鳴エネルギー移動法 (Fluoresence Resonance Energy Transfer: FRET) 、 蛍光相関分光法 (Fluorescence orrelation Spectroscopy: FCS)、 蛍光 相 _i相関分光法 (Fluorescence Cross-Correlation Spectroscopy: FCCS)、 ェパ ネッセント場分子ィメージング法、 平面導波路エバネッセント蛍光法、 Luminex システム (Luminex Corporation) などに代表されるフロ一サイトメトリ一法、 さ らに酵素を利用した発色 ·吸光測定法、 発光蛋白質を用いた発光測定法、 発光化 合物などを利用した化学発光測定法、 電気化学発光法もしくは化学発光酵素測定 法、 表面プラズモン共鳴装置を利用した S P R法、 さらにはラベル化蛋白質を細 胞ゃ組織内で検出することを特徴とした組織解析法、 親和性樹脂吸着法、 ポリア クリルアミドゲル及びァガロースゲル電気泳動法、 液体ク口マトグラフィ一装置 などを利用したクロマトグラフィ一法、 放射能スキャナ一法、 シンチレーシヨン カウント法、 さらには、 固相に対し、 ラベル化蛋白質を高密度に結合させたプロ ティンチップやプロティンァレイ法などが用いられる。 これらの方法を用いた具 体的な解析方法は、 例えば、 WO 0 1 Z 1 6 6 0 0号公報に記載の方法が挙げら れる。 また、 目的蛋白質の部分ペプチド、 または目的蛋白質に融合させたタグぺ プチドを抗原とする抗体を用いた検出方法も用いられる。 抗体は、 上記した方法 により作製されたものが用いられるが、 断片化蛋白質群について解析する場合に は、 目的蛋白質の N末端の部分ペプチド、 または目的蛋白質の N末端に融合させ たタグぺプチドを抗原とする抗体を用いることが好ましい。 また、 検出方法とし ては、 それ自体公知の一般に用いられる方法、 例えば、 酵素免疫測定法、 蛍光免
疫測定法、 化学発光免疫測定法、 ィムノブロッテイング法、 ィムノクロマト法、 ラテックス凝集法が用いられる。
上記相互作用の一例として、 ラベル化蛋白質と c末端ラベル化蛋白質間の相互 作用を蛍光イメージング法を用いて解析する方法を以下に示す。 まず、 上記した 方法で、 蛋白チップを作製する。 次に、 蛋白チップに用いたラベル化蛋白質の蛍 光物質とは異なる蛍光物質を有するように、 上記の本発明の方法によりラベル化 蛋白質を無細胞蛋白質合成系を用いて合成する。 この解析対象となるラベル化蛋 白質を含む無細胞蛋白質合成系の反応液を上記蛋白チップに対して添加する。 そ して、 タンパクチップ上で添カ卩したラベルイ匕蛋白質と固定化されたラベノレイ匕蛋白 質による蛋白質複合体を形成させる。 次に洗浄操作を行うことにより、 添加した 反応溶液中に含まれる無細胞蛋白質合成用の細胞抽出液由来の蛋白質や、 蛋白質 の c末端に結合しなかったラベル化化合物を除去する。 洗浄方法は、 蛋白チップ を作製する際の洗浄と同様にして行うことができる。 この後、 形成された蛋白質 複合体を蛋白チップ上で検出する。 検出方法としては、 添加したラベル化蛋白質 の蛍光量と固定化されているラベル化蛋白質の蛍光量を、 蛍光プレートリ一グー で解析したり、 蛍光スキャナーやイメージヤーを用いた蛍光イメージング法で解 析し、 解析対象となる蛋白質の蛍光量と固定化した蛋白質の蛍光量の比率を解析 すること等により両者の相互作用を解析することができる。 また、 後述する方法 によれば、 両者の蛋白質の定量を行うこともできる。
これらのラベルイ匕蛋白質を用いた蛋白質一物質間相互作用解析は、 その工程の —部または全部を各種分注機おょぴその機能を備えた自動化ロボット、 例えばテ カン社やベックマンコールター社などの市販のロボットを用いて、 半自動化また は自動化することができる。
本発明の方法により作製されるラベルィヒ蛋白質は、 そのラベル部から発せられ る信号量を測定することにより、 該蛋白質を定量することができる。 例えば、 上 記で詳述した方法によりラベル化蛋白質を固定化し、 固定化された蛋白質のラベ ル部より発せられる信号を検出して定量する方法などが用いられる。 c末端蛋白
質のラベル部より発せられる信号の検出方法は、 該信号を検出し得る方法であれ ば如何なるものであってもよい。 例えば、 ラベル化物質として蛍光部物質を用い た場合には、 蛍光測定法、 時間分解蛍光測定法、 蛍光偏向解析法、 蛍光スキャナ ーゃィメ一ジャーを利用した蛍光ィメ一ジング法、 蛍光共鳴エネルギー移動法
(Fluoresence Resonance Energy Transfer: FRET) 、 ェ / 不ッセン 場分子ィメ 一ジング法、平面導波路エバネッセント蛍光法などにより検出することができる。 また、 ラベル化蛋白質を、 これに特異的に結合する抗体を用いて競合的結合アツ セィ方法やサンドイッチアツセィ法によりラベル化蛋白質を定量することができ る。 さらに、 ラベル化蛋白質に特異的に結合する抗体を用い免疫組織染色法や免 疫沈降法を行うことにより、 細胞や組織に導入したラベル化蛋白質を定量するこ とも可能である。
これらの方法の中で、 ラベル化蛋白質を合成した無細胞蛋白質合成系の反応溶 液中のラベル化蛋白質を定量する方法をその一例として詳述する。 上記した無細 胞蛋白質合成系を用い、 C y 3などの蛍光物質をラベル部に有するラベル化蛋白 質を合成する。 この C末端ラベル化蛋白質を含む反応溶液を、例えば上記 (i) の 該ラベル化蛋白質に特異的に結合する抗体を固相化したマイクロタイタープレー トなどの基盤に対して添加する。 この基盤上でラベル化蛋白質と抗体の複合体を 形成させ、 溶液中のラベル化蛋白質を抗体を介して基盤上に固定化する。 次に洗 浄操作を行うことにより、 添カ卩した翻訳溶液中に含まれる無細胞蛋白質合成用の 細胞抽出液由来の蛋白質や、 蛋白質の C末端に結合しなかったラベル化化合物を 基盤表面より除去する。 この後、 基盤上の蛍光量を蛍光プレートリーダーで解析 したり、 蛍光スキャナーゃィメ一ジャーを利用した蛍光ィメ一ジング法で解析す ることにより、基盤上に固定ィ匕されたラベルイ匕蛋白質量を測定することができる。 このように、 無細胞蛋白質合成系の反応溶液中に含まれるラベル化蛋白質の活性 を検討する前に、 本方法によりラベル化蛋白質量を定量しておくことにより、 ラ ベル化蛋白質の活性の解析をより簡便に定量的に行うことができる。
また、 ラベル化蛋白質のラベル部のラベル物質として、 アルカリホスファタ一 ゼ、 西洋わさびペルォキシターゼ、 ]3—ガラクトシダーゼ、 ゥレアーゼ、 ダルコ 一スォキシダーゼなどの酵素が付加されている場合、 これらの酵素に対する発色 基質を添加して発色、 または吸光量を測定する方法が利用できる。 またラベルイ匕 蛋白質のラベル部のラベル物質としてボタルルシフエリン、 ルミノール誘導体、 ェクオリン、 アタリジゥム塩、 アタリジゥムサクシイミドエステル、 CDP- Star、 CSPD、 AMPPD、 Galacton、 Galacton - Plus、 Galacton-Star Glucuron^ Glucinな どの発光化合物などを利用した場合、 発光測定法、 化学発光測定法、 電気化学発 光法、 化学発光酵素測定法などが利用可能である。 さらにラベル部のラベル物質 として、 32P、 35 S等の放射性同位元素が付加されている場合は放射能スキャナー 法を利用できる。
また、 ラベル化蛋白質の定量法の他の一例としては、 上記で用いた抗体をドナ 一蛍光色素 (E uキレート等) で標識しておき、 これに対してァクセプター蛍光 色素 (C y 5等) をラベル部に持つラベル化蛋白質を含む無細胞蛋白質合成系の 反応溶液と混合し, 該抗体と該 C末端ラベル化蛋白質との免疫複合体を形成させ る。 この後、 ドナー蛍光色素を光源によって励起させることによりこの免疫複合 体上で蛍光共鳴エネルギー転移 (FRET)が起こり、 ァクセプタ一蛍光色素が励起さ れる。 この際、 ァクセプター蛍光色素から放射された特定波長を検出 '解析する ことによりラベル化蛋白質を測定することができる。 この方法の場合、 一般的に はドナー蛍光色素で標識された抗体は固相面に固定する必要はなく、 また免疫複 合体を形成させたあとの洗浄操作も不要である。 すなわち上記のラベル化蛋白質 を含む無細胞蛋白質合成系の反応溶液と抗体溶液を混合すれば測定できる。 従つ て、無細胞蛋白質合成系の反応溶液中に含まれるラベル化蛋白質の活性の検討や、 該蛋白質を基盤に固定化する前に、 本方法によりラベル化蛋白質量を定量してお くことにより、 これらを簡便に定量的に行うことができる。
また、 本発明によれば、 少なくとも上記のラベル化増強配列を含む、 遺伝子テ ンプレート又はその転写鐯型となる D N Aを製造するためのベクターまたはポリ
メラーゼチェインリアクション用プライマーが提供される。 ベクターとしては、 通常のクローニングベクター又は発現ベクターを用いることができ、 プラスミド ベクター、 ファージベクターのいずれでもよい。 通常は、 該 DNAが導入される 宿主に適したプロモーター等の発現制御領域 DNAが既に挿入されている市販の 発現べクタ一に、上記のラベル化増強配列を挿入したものを用いることができる。 このようなラベル化増強配列を挿入すベき発現べクタ一として、 具体的には例え ば、 宿主が大腸菌の場合では、 pET3、 p ET 11 (ストラタジーン社製) GEX (アマシャムフアルマシアバイオテク社製) 等が挙げられ、 酵母の場合で は pESP— Iエクスプレッションベクター (ストラタジーン社製) 等が挙げら れ、 さらに昆虫細胞の場合では B a c PAK6 (クロンテック社製) 等が用いら れる。 また宿主が動物細胞の場合では、 ZAP Exp r e s s (ストラタジー ン社製) 、 p SVK3 (アマシャムフアルマシアバイオテク社製) 等が挙げられ る。ラベルイ匕増強配列の挿入部位は、 目的蛋白質の O R Fを挿入すべき部位の 3, 末端側で、 OR Fと読み取り枠がずれないようにマルチクローニングサイト等を 設計するのが好ましい。 ポリメラーゼチェインリアクション用プライマーとして は、 該プライマーを用いて目的蛋白質の OR Fを含むポリヌクレオチドを増幅し て得た DN Aが、 上記無細胞蛋白質合成系で蛋白合成を行ぅ铸型となり得るもの が好ましい。 具体的には、 コムギ胚芽抽出液を含む合成系の铸型として作製する 場合、 WO 02/24939に記載の方法で設計し、 3, 側のプライマーの目的 蛋白質の O R Fの 3, 側に本願発明のラベル化増強配列が O R Fとの読み取り枠 がずれないように結合されているものが好ましい。 また、 上記のベクター中に挿 入されているラベル化増強配列を増幅することができるプライマーを適宜設計し て使用することができる。 プライマーの設計及び合成は当業者に公知の常法によ り行うことができる。
さらに本発明によれば、 上記のベクター及ぴポリメラーゼチェインリアクショ ン用プライマーを含むラベルイ匕蛋白質を製造するためのキットも提供される。 本 キットには、 上記以外にも PC R用試薬等の試薬類、 陽性コントロール、 遺伝子
テンプレートの翻訳のための試薬、 遺伝子テンプレートの調製のための転写用試 薬等を含むこともできる。 実施例
以下に実施例を挙げ本発明をさらに具体的に説明する。 以下の実施例は本発明 の一例を示すものに過ぎず、 本発明の範囲は以下の実施例により何ら制限される ものでない。
例 1 各種 C末端ラベル化蛋白質の製造
(1) 遺伝子テンプレートの調製
PK14 (Ge nB a nk a c c e s s i o n No. AKO 74856) , PK-22 (アミノ酸配列:配列番号 2、 塩基配列:配列番号 1) 、 POU (ァ ミノ酸配列:配列番号 15、 塩基配列:配列番号 14) 、 ΡΚ20 (アミノ酸配 列:配列番号 4、 塩基配列:配列番号 3) のオープンリーディング配列 (以下、 これを 「ORF」 と称することがある) の各々 5' 上流に G 1 u t a t h i o n -S - t r a n s f e r a s e (以下、 これを 「GST」 と称することがある、 ァミノ酸配列:配列番号 17、 塩基配列:配列番号 16) の O R F配列を付加し た DNA断片、 及ぴ GSTの OR F配列からなる DN A断片を調製し、 それぞれ Ge n ome Re s e a r c h, 1 2 : 487— 492 (2002) および P r o c. Na t l . Ac a d. S c i. USA, 99 : 14652-14657 (2002) に記載の方法に準じて PC Rを行い、 遺伝子テンプレートの転写铸 型となる DNAを調製した。 この DNAを铸型として S P 6 RNA P o l y m e r a s e (P r ome g a社製) を用いて転写反応を行ない mRN Aを合成 後、 エタノール沈殿操作により mRN Aを精製した。 この mRN Aを小麦胚芽抽 出液を用いた蛋白質合成に使用する遺伝子テンプレートとした。
(2) コムギ胚芽抽出液の調製
北海道産のチホク小麦 (未消毒) を 1分間に 100 gの割合でミル (F r i t s c h社 R o t o r S e e d Mi l l p u l v e r i s e t t e 1
4型) に添加し、 回転数 7 0 0 0 r p mで種子を温和に破砕した。 この破砕処理 を 4回繰り返して行った。 篩いで発芽能を有する胚芽を含む画分 (メッシュサイ ズ 0 . 7 1 mm〜l . 0 0 mm) を回収した後、 四塩化炭素とシクロへキサンの 混合液 [四塩ィ匕炭素:シクロへキサン = 2 . 4 : 1 (容量比) ] を用いた重液選 別によつて、 発芽能を有する胚芽を含む浮上画分を回収し、 室温乾燥によって有 機溶媒を除去した後、 室温送風によつて混在する種皮等の不純物を除去して粗胚 芽画分を得た。
次に、 ベルト式色彩選別機 B LM- 3 0 0 K (製造元:株式会社安西製作所、 発売元:株式会社安西総業) を用いて、 次の通り、 色彩の違いを利用して粗胚芽 画分から胚芽を選別した。 この色彩選別機は、 粗胚芽画分に光を照射する手段、 粗胚芽画分からの反射光及び Z又は透過光を検出する手段、 検出値と基準値とを 比較する手段、 基準値より外れたもの又は基準値内のものを選別排除する手段を 有する装置である。
色彩選別機のベルト上に粗胚芽画分を 1 0 0 0乃至 5 0 0 0 . m2となるよ うに供給し、 ベルト上の粗胚芽画分に蛍光灯で光を照射して反射光を検出した。 ベルトの搬送速度は、 5 0 mZ分とした。 受光センサーとして、 モノクロの C C Dラインセンサー ( 2 0 4 8画素) を用いた。
まず、 胚芽より色の黒い成分 (種皮等) を排除するために,, ベージュ色のベル トを取り付け、 胚芽の輝度と種皮の輝度の間に基準値を設定し、 基準値から外れ るものを吸引により取り除いた。 次いで、 胚乳を選別するために、 濃緑色のベル トに取り替えて胚芽の輝度と胚乳の輝度の間に基準値を設定し、 基準値から外れ るものを吸引により取り除いた。 吸引は、 搬送ベルト上方約 1 c m位置に設置し た吸引ノズル 3 0個 (長さ 1 c m当たり吸引ノズル 1個並べたもの) を用いて行 つた o
この方法を繰り返すことにより胚芽の純度 (任意のサンプル 1 g当たりに含ま れる胚芽の重量割合) が 9 8 %以上になるまで胚芽を選別した。
上記によって得られた小麦胚芽 5 0 gを 4 °Cの蒸留水中に懸濁し、 超音波洗浄
器を用いて洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄した。 次に、 ノニデット (No n i d e t) ?40の0. 5容量%溶液に懸濁し、 超音波洗浄器を用いて洗浄液が白 濁しなくなるまで洗浄して胚 し分を除去した小麦胚芽を得た。
次いで、 以下の操作を 4°Cで行い、 胚芽抽出物含有液を得た。 まず、 洗浄した 小麦胚芽を抽出溶媒 (HEPES-KOH (pH7. 6) 80mM、 酢酸力リウ ム 200mM、 酢酸マグネシウム 2 mM、 塩ィ匕カルシウム 4 mM、 L型アミノ酸 20種類各0. 6 mM及ぴジチオスレィトール 8 mM) 1 0 Om lとともにヮー リングブレンダ一に入れ、回転数 5000〜20000 r pmで 30秒粉碎した。 プレンダー内壁に付着した胚芽等をかき落とした後再ぴ 5000〜20000 r pmで 30秒粉砕する作業を 2回行: oた。 得られた胚芽粉砕物の粒径分布をレー ザ一散乱方式粒度分布装置 (堀場製作所製 LA— 920) を用いて測定した。 得られた抽出液と粉碎胚芽の混合物を遠心管に移し 30000 g、 30分間の 遠心をかけ上清を採取した。 これをさらに 30000 g、 30分間の遠心をかけ 上清を採取する操作を 5回繰り返し濁りのない上清を得た。 これをあら力 じめ溶 液 (HEPES— KOH (pH7. 6) 40 mM、 酢酸カリウム 1 00mM、 酢 酸マグネシゥム 5 mM、 L型ァミノ酸 20種類各 0. 3 mM及ぴジチォスレイト ール 4mM) で平衡化しておいたセフアデックス G— 25カラムでゲルろ過を行 つた。 得られた液を 30000 g , 1 2分間の遠心をかけ上清を採取し、 これを 小麦胚芽抽出物含有液とした。 試料の濃度は、 260 nmにおける光学密度 (O . D. ) (A260) が 80〜 1 50 (A 260/A280 = 1. 5) になるよ うに抽出溶媒で調整した。
(3) 蛋白質合成
反応層溶液 ( 25 μ 1 ) は、 ( 2 ) で調製した小麦胚芽抽出液: 6 1、 ( 1 ) で調製した mR Ν Α:約 20 pmo l Z5〜20 ju g) を含み、 その組成が、 2 4mM He p e s/KOH (pH 7. 8) 、 1. 2 mM ATP、 0. 2 5 mM G T P、 1 6 mM c r e a t i n e p h o s p h a t e、 10 μ g
c r e a t i n e k i n a s e、 20 u n i t s r i b o n u c l e a s e i n h i b i t o r , 2mM DTT、 0. 4mM s p e r m i d i n e、 0 . 3 mM L型ァミノ酸 (2 0種) 、 2. 7 mM ma g n e s i um a c e t a t e、 1 00 mM p o t a s s i um a c e t a t e、 5 g 小麦胚 芽由来 t RNA、 0. 0 5% N o n i d e t P— 40、 0. 005% Na N3から成るものを調製した。 一方、 供給層用溶液は、 3 1. 3mM HEPE S/KOH ( H 7. 8) 、 2. 6 7 mM Mg (OAc) 2、 9 3 mM KO Ac、 1. 2mM ATP、 0. 2 5 7 mM GTP、 1 6 mM c r e a t i e p h o s p h a t e、 2. 1 mM DTT、 0. 4 1 mM s p e r m i d i n e、 0. 3 mM L型ァミノ酸(20種) 、 1 μΜ Ε— 64、 0. 0 0 5% Na N3、 0. 0 5% ΝΡ— 40から成るものを調製した。
上記反応層溶液、 及び供給層溶液それぞれに対し、 ラベル化化合物として、 C y 3を付カ卩したピューロマイシン誘導体 (図 3 (1) ) を最終濃度 1 6 にな るように添カ卩した。 得られた供給層溶液 (1 2 5 1 ) に対し、 反応層溶液 (2 5 μ I ) を重層後、 2 6 °Cにて保温し、 1 6時間の蛋白質合成および標識反応を 行った。
反応終了後、 反応層溶液および供給層溶液をよく混合し、 このうち 6 μ 1に対 して。 還元条件下の S D S—ポリアクリルアミドゲル ( 1 5 %) 電気泳動を実施 し、 ラベル化蛋白質を示すバンドの蛍光量を、 Mo l e c u l a r I m a g e r (B i o R a d社製)を用いて定量した。 この際、上記のラベル化蛋白質合成 に用いたラベル化化合物を上記と同様に SD S—ポリアクリルアミドゲル (1 5%) 電気泳動により分離したバンドを同様に定量し、 これを標準 (スタンダー ド) とした。
この結果を図 4 Aに示す。 また、 図 4 Bは上記で合成されたラベルイ匕蛋白質の うち、 ORF全長によりコードされる蛋白質 (以下、 これを 「全長蛋白質」 と称 することがある;図 4Aの矢印で示されたバンド) の蛍光量の定量値を示す。 図 中①は、 GS T—PK 1 4のラベル化蛋白質を示し、 ②は GST_PK2 2、 ③
は GST— POU、 ④は GST_PK20、 ⑤は G S Tのみのラベル化蛋白質を 示す。
図から明らかなように、 GST— PK14、 GST— PK22、 GST-PO Uではラベルイ匕蛋白質はほとんど検出されなかった。 一方、 GST— PK20、 G S Τはラベル化蛋白質が強く検出されるとともに、その断片化された蛋白質 (以 下、 これを 「断片化蛋白質」 と称することがある) がラベル化されたものも検出 された (図 4Α、 ⑤の点線矢印で示されたパンド) 。 これらの結果からラベルイ匕 化合物を用いた蛋白質 C末端ラベル化法では、 蛋白質の種類によりそのラベル化 効率が著しく異なることが判つた。 例 2 G S Τ蛋白質の各種断片化蛋白質のラベル化
(1) 断片化蛋白質の解析
上記例 1において GST—PK20および GSTは、 その全長蛋白質が強くラ ベル化されると共に、ラベルィヒ断片化蛋白質も検出された(図 4Α④および⑤)。 そこで、 上記例 1で得られたラベル化 GST全長蛋白質を SDS—ポリアクリル アミドゲル (18%) 電気泳動法にて解析し、 GST全長蛋白質と同等にラベル 化される断片化蛋白質の分子量を測定し、該分子量から断片化蛋白質を予測した。 この結果を図 5 Αに示す。
図から明らかなように、 用いた GST蛋白質では、 分子量約26〜291£0& の全長蛋白質 (図中実線で示すバンド) が強くラベル化されているが、 これと同 等に強くラベル化された断片化蛋白質が分子量約 13〜15 kDの位置のバンド として観察された (図中点線で示すパンド) 。 上記蛋白質合成系において、 GS T蛋白質は、 N末端から蛋白質が合成され、 そのペプチド伸長中の C末端にラベ ル化化合物が取り込まれることにより蛋白質合成が中断する。 その結果、 C末端 にラベル化化合物が取り込まれた断片化蛋白質が生成されると考えられる。 そこ で、 上記断片化蛋白質が有するァミノ酸配列は、 配列番号 17記載したアミノ酸
配列のアミノ酸番号 1から始まって、その C末端は 1 15番ァスパラギン酸(D) から 130番メチォニン (M) の間であると予測した。
(2) GST中のアミノ酸配列をコードする塩基配列がラベル化効率へ与える影 響の検討
次に GST蛋白質中のアミノ酸配列又はそれをコードする塩基配列がタンパク 質のラベル化量に影響を及ぼすかどうかを調べるために、 G S T全長蛋白質の C 末端欠失体 (配列番号 17のアミノ酸番号で 1〜195、 1〜189、 1〜15 2、 1〜147、 1〜130、 1〜122および 1〜1 15で示されるアミノ酸 配列を有する断片化蛋白質) をコードする塩基配列を含む DNAを調製し、 これ を転写して遺伝子テンプレートを調製した。この遺伝子テンプレートを、例 1 ( 3 ) と同様に翻訳して、 得られたラベル化断片化蛋白質の量を解析した。
各断片化蛋白質の C末端 6残基の.アミノ酸配列およびその塩基配列を図 5 Bに 示した (図中、 「各ドメイン長」 として記載されている番号及び記号は、 配列番 号 17のアミノ酸番号とアミノ酸を示す) 。 又、 図 5Cは、 得られたラベル化断 片化蛋白質量を、 全長蛋白質との相対値として示した。
図から明らかなように、 (1) GST蛋白質は、 その C末端のアミノ酸を欠失 するに従いラベル化蛋白質の合成量が減少すること、 (2) 酉己列番号 17のアミ ノ酸番号 1〜1 15番のァスパラギン酸、 1〜12· 2番のァスパラギン酸、 およ び 1〜130番のァミノ酸配列を有する断片化蛋白質において、 合成されるラベ ルイ匕蛋白質量が多いことが判った。 これらの結果は、 合成される蛋白質の C末端 アミノ酸配列又はそれをコードする塩基配列が、 ラベル化蛋白質の合成量に重要 な役割を担っていることを示している。 例 3 特定のアミノ酸 (塩基) 配列を C末端に付加することの C末端ラベル化効 率への影響の検討
例 1に示した方法により、 ラベル化蛋白質の合成量が低い蛋白質の OR Fから ストップコドンを削除した塩基配列の 3' 末端に、 GSTの C末端 6残基のアミ
ノ酸配列をコードする塩基配列を付カ卩した遺伝子テンプレートを調製し、 蛋白質 の C末端ラベル化効率に及ぼす影響を検討した。
ラベル化蛋白質合成量が低い蛋白質として、 Sma d 3 (Ge nB a n k A c c e s s i o n No. NM— 005 902) を用い、 その ORFからストッ プコドンを削除した塩基配列を有する DNAの 3' 末端に、 GSTの C末 6残基 のアミノ酸 (配列番号 1 7のアミノ酸番号 23 7〜242版で示される) をコー ドする塩基配列を例 1 (1) に記載の方法と同様に; PC R法にて付加した。 又、 コントロールとして、 上記塩基配列を付カ卩しない DN Aも作製した。 これらの D NAを、 例 1に記載の方法と同様に転写、 翻訳し、 反応溶液を SDS—ポリアク リルァミド電気泳動 ( 1 8 %) で分離し解析した。 この結果を図 6 Aおよび Bに 示す。 図中、 ①はコントロールの結果を、 また②は GSTC末アミノ酸を付加し たもの結果を示す。 又、 図 6 Aの太矢印は、 ラベ/レイ匕された全長 Sm a d 3蛋白 質のバンドを示す。 図 6 Bは、 コントロールを用いて合成されたラベル化された 全長 Sma d 3タンパク量に対して、 GSTC末アミノ酸を付加した蛋白質のラ ベル化蛋白質合成量をその相対値で示した。
図から明らかなように、 G S Tの C末 6残基のァミノ酸をコードする塩基配列 を Sma d 3のストップコドンを削除した O R Fの 3, 末端に付加した結果、 ラ ベル化された Sma d 3蛋白質の合成量が極めて向上することが判った。 これら の結果は蛋白質 C末端ラベル化法においては、 ラベル化タンパク合成量の低い蛋 白質をコードする塩基配列の 3' 末端に、 ラベル化蛋白質合成量の多い蛋白質の C末端の数残基ァミノ酸ををコードする塩基配列を付加することにより、 ラベル 化蛋白質合成量を上げることができることを示している。 さらにラベル化された 全長蛋白質とともに、 ラベルィヒされた断片化蛋白質の合成量も増加することが判 つた o 例 4 C末端ラベル化増強配列の選択
C末端ラベル化増強配列の選択
ランダムなァミノ酸配列より選択された 5ァミノ酸残基からなる 5つのアミノ 酸配列をコードする塩基配列 (図 7Aの 「塩基配列」 に示す) を、 上記 Sma d 3の O R Fからストップコドンを削除したものの 3 ' 末端に付加した塩基配列を 有する DNAを調製し、 これを遺伝子テンプレートの踌型となる DNAとして調 製した。 該 DNAを例 1と同様に転写'翻訳し、 合成されたラベル化蛋白質につ いて例 2と同様にして解析した。 このうち、 (1) で示した GRGAAGをコー ドする塩基配列については、 その 3 '末端にさらにアデニン 2残基を付加したも の (配列番号 1 0) を用いた。
得られた C末端ラベル化蛋白質の SDSポリアクリルアミド電気泳動 (1 8%) により分離したパターン、 およびラベル化全長蛋白質量について、 例 2と同様の 方法で解析した結果を、図 7Bおよび Cに示す。これらの結果から、図 7Aの(1) 〜 (5) に示されるアミノ酸配列又はそれをコードする塩基配列を付加すること により、 合成されるラベル化蛋白質量を向上させた。 また (1) で示されるアミ ノ酸配列 (配列番号 9) 又はこれをコードする塩基配列 (配列番号 10) の付カロ が、. ラベル化蛋白質合成量が最も高いことが判った。
これらの結果は例 3で示した天然の蛋白質 (例えば、 GST等) 内に存在する ぺプチドのみならず、 ランダムなアミノ酸配列から選択されるポリぺプチドある いはそれをコードする塩基配列の付加が、 ラベル化蛋白質合成量を向上させる機 能を有することを示している。
( 2 ) 増強配列の複数種の蛋白質のラベル化蛋白質合成量への影響の確認 次に、 ラベル化蛋白質合成量が最も高かった図 7 A (1) で示される塩基配列
(配列番号 1 0) を、 ラベルイ匕蛋白質合成量低い複数の蛋白質のストップコドン を削除した OR Fの 3' 末端に付加して、 これを遺伝子テンプレートとして例 1 と同様の方法で作製し、 翻訳した。 また、 合成されたラベル化蛋白質量について は、 例 2と同様に解析した。 ラベル化蛋白質合成量が低い蛋白質としては、 P P AR γ (Ge nB a n k a c c e s s i o n No. NM— 0 1 586 9) 、 RXR a (Ge nB a n k a c c e s s i o n N o . NM一 0029 5 7 )、
Sma d 2(Ge nB a nk Ac c e s s i o n N o . NM— 005901 )、 Sma d 3 (Ge nB a nk a c c e s s i o n N o . NM— 005902 )、 Sma d4 (Ge nB a nk a c c e s s i o n N o . NM_005359) を用いた。
合成されたラベル化蛋白質を SDSポリアクリルアミド電気泳動 ( 18 %)で分 離した泳動パターンを、 図 7 Dに示す。 図中 (+ ) は、 図 7 A (1) に示される 塩基配列 (配列番号 10) (以下、 これを 「増強配列 (1) 」 と称する) を付カロ した場合の結果を示し、 (一) は付加していない場合の結果を示す。 図から明ら かなように、 増強配列 (1) を付加することにより、 全ての蛋白質でラベル化蛋 白質合成量が上昇した。 例 5 C末端ラベルィヒ効率増強配列ラベルィヒ増強配列の最適化
(1) 欠失体、 およぴコドン置換体
上記例 4にて見いだされた増強配列 (1) に欠失あるいはアミノ酸のコドン変 異体を作製し、 増強配列の最適化をはかった。 欠失体は、 増強配列 (1) 3 s末 端に付加されていた 2残基のアデニンを欠失させたもの (図 8 A、 C-d e 1
(1) ) 、 増強配列 (1) がコードするアミノ酸 GRGAAGの C末から 1アミ ノ酸残基を欠失させたもの (図 8AS C - d e 1 (2) ) , 2アミノ酸残基を欠 失させたもの (図 8 A, C一 d e l (3) ) 、 3ァミノ酸残基を欠失させたもの
(図 8A、 C- d e 1 (4) ) 、 増強配列 (1) がコードするアミノ酸 GTGA AGの N末から.1ァミノ酸残基を欠失させたもの (図 8 A、 N— d e 1 (1) )、 2アミノ酸残基を欠失させたもの (図 8 A, C— d e 1 (2) ) 、 3アミノ酸残 基を欠失させたもの (図 8、 C-d e 1 (3) ) をそれぞれコードする塩基配列 を用いた。 また、 コドン置換体としては、 増強酉 3列 (1) を、 異なるコドンによ り置換した塩基配列 (図 8 A、 Mu t a t i o n (1) 〜 (3) ) を用いた。 これらの塩基配列を、 上記した Sma d 3のストップコドンを削除した ORF の 3, 末端に付加した塩基配列を有する遺伝子テンプレートを作製し、 例 1と同
様にして翻訳し、 合成されたラベル化蛋白質について例 2と同様に解析した。 こ の結果を図 8 Cに示す。
これらの結果、 増強配列 (1) のアミノ酸配列の C末端から 1アミノ酸残基を 欠失させたポリペプチドをコードする塩基配列の付加により、 欠失させないもの を付加した時よりラベル化蛋白質合成量が上昇するが(図 8 C、C—d e 1 (2))、 さらにァミノ酸残基を欠失させると合成されるラベル化蛋白質量は低下し、 3ァ ミノ酸残基を欠失させた場合にはラベル化蛋白質合成量が激しく低下すること
(図 8、 C-d e 1 (4) ) がわかった。 また、 N末端からアミノ酸残基を欠失 させた場合は、 1ァミノ酸残基を欠失させたポリぺプチドをコ一ドする塩基配列 の付カ卩により、ラベル化蛋白質合成量が上昇するが(図 8C、 N— d e 1 (1))、 さらにアミノ酸残基を欠失させると合成されるラベル化蛋白質量は低下傾向にあ るが、 3アミノ酸残基を欠失させた場合でも、 決失させないものを用いた場合と 同等の効果を有していた。 一方、 コドン置換体では、 そのラベル化蛋白質合成量 への大きな影響は見られなかった。
( 2 ) 最適化増強配列のァミノ酸種の影響の解析
上記 (1) で最適化された C一 d e 1 (2) (配列番号 12) がコードするァ ミノ酸配列 (配列番号 11) について、 コドン置換体を上記 (1) と同様に作製 し これ,を GST (配列番号 17.„ 塩基配列は配列番号 16) , S m a d 3 (G e n B a n k a c c e s s i o n No. NM― 005902) 、 S m a d 4 (G e n B a n k a c c e s s i o n No. NM一 005359) のストッ プコドンを削除した ORFの 3 '末端に付カ卩した塩基配列を有する遺伝子テンプ レートを作製し、例 2と同様に翻訳し、合成されるラベル化蛋白質量を測定した。 また、 C— d e l (2) がコードするアミノ酸配列 GRGAAから N末と C末 の 1残基ずつを削除した配列 (以下 「RGAA」 と称することがある、 配列番号 13) アミノ酸種によりどのような変化があるかを次のアミノ酸変異体を作 製して解析した。 まず、 4アミノ酸残基すベてをアルギニンに変えたもの (図 9 A、 R4) 、 グリシンに変えたもの (図 9A、 G4) 、 及ぴァラニンに変えたも
の (図 9A、 A4) をコードする塩基配列 (図 9A、 塩基配列に示す) を、 上記 蛋白質のストップコドンを削除した ORFの 3, 末端に付加した塩基配列を有す る遺伝子テンプレートを調製し、 例 1と同様にして翻訳し、 合成されたラベル化 蛋白質量を例 2と同様にして解析した。 この結果を図 9 Bに示す。
図から明らかなように、 やはり、 コドン置換はそのラベル化蛋白質合成量には 影響しないことがわかった。 また、 アミノ酸種では、 アルギニン及びグリシンに 変えたものは、 RGAAと同等または低下していたが、 ァラニンに変えたものは 比較的高いラベノレイ匕蛋白質合成量を示していることがわかった。 また、 ラベル化 蛋白質を S D S—ポリアクリルアミド電気泳動で解析したところ、 いずれの目的 蛋白質においても、 全長と断片化蛋白質が混合したものが合成されていた。 さらに、 他のアミノ酸種のラベル化蛋白質合成に対する影響を解析した。 複数 種のアミノ酸 4残基からなるポリヌクレオチドをコ一ドする塩基配列を、 G S T 蛋白質の断片 (配列番号 17のアミノ酸番号 1〜219) をコードする塩基配列 の 3 '末端に付加した塩基配列を有する遺伝子テンプレートを調製し、 これを例 1の方法で翻訳した。 得られたラベル化蛋白質の解析は、 以下に述べる蛍光プレ ートアツセィにより、 合成蛋白質量に対するラベル化蛋白質量の割合で行った同 様に翻訳及び解析を行い、 該配列を付カ卩していないコントロールのラベル化蛋白 質の割合に対する相対値として各種配列のラベル化強度を示した。
蛍光プレー卜アツセィは、 まず、 精製ゥサギ抗 GSTポリクローナル抗体 (V ER I TAS社製) を 5 OmM炭酸バッファー (pH9. 2) により濃度 20 μ g/m 1に希釈し、 50 t 1 /w e 1 1の容量で 96ゥエルプレート (CORN I NG社製、 黒、 高結合型) に添カ卩した。 4°Cにて 12時間以上静置して抗体を プレートに吸着させ、このプレートを PB Sバッファーで 2回洗浄した。この後、 上記にて調製したラベル化蛋白質を含む溶液をブロッキングバッファー (3 %ス キムミルク、 0. 05% Twe e n 20/PB S) で 150倍に希釈し、 この 溶液を 50 μ 1 / e 1 1の容量でこのプレートに添加した。 ここで、 GST蛋 白質の断片 (配列番号 17のァミノ酸番号 1〜 219 ) をコードする塩基配列の
3, 末端に、 C— d e l (2) GRGAAをコードする塩基配列を付加したもの も調製し、 得られた G S T蛋白質を G l u t a t h i o n e S e p h a r o s e 4 B (Ame r s h am社製) を用いて精製したものを、 スタンダードとし て用いた。 このプレートを室温で 1時間静置し、洗浄バッファー( 0. 05 % T we e n 2 O/PB S) により 5回洗浄した。 この後、 F l u o r o L i n k— Ab C y 5 L a b e l l i n g K i t (Am e r s h a m社製) を用いて Cy 5標識したゥサギ抗 G S Tポリクローナル抗体をブロッキングバッファ一で 濃度 5〜: L 0 μ g/m 1に希釈し、 50 μ g/m 1の容量で添加した。 このプレ ートを室温で 1時間静置し、 洗浄バッファ一により 5回洗浄後、 P r o t e i n a s e K溶液 ( 10 mM T r i s— HC .l (pH 8. 0) 、 5 mM E DTA、 5 OmM Na C l、 1 00 ^ g/m 1 P r o t e i n a s e K、 0. 5% SDS) を 100 μ l Zwe 1 1の容量で添カ卩し、 65。Cで 2時間以 上反応させた。 この後、 Mo l e c u l a r I ma g e r (B i o R a d社 製) を用いて Cy 3の蛍光値から GST蛋白質に対するラベル化量、 Cy 5の蛍 光値から G S T蛋白量を定量した。
この結果を図 2 1に示す。 図中、 アミノ酸配列及び塩基配列は用いたそれぞれ の配列を示す。 図から明らかなように、 ァラニン、 ヒスチジン、 グルタミン、 及 びシスティンからなるポリぺプチドをコ一ドする塩基配列の付加は、 蛋白質の C 末端ラベル化強度が高かった。 また、 グリシン、 メチォニン、 チロシン、 アルギ ニン、 プロリン、 及ぴフエ二ルァラニンからなるポリペプチドをコードする塩基 配列の付カ卩は、 付加しないものと比較すると、 蛋白質のラベル化強度は高いが、 これらのアミノ酸と、 ァラニン、 ヒスチジン、 グルタミン及びシスティンの組み 合わせのアミノ酸配列からなるポリぺプチドをコ一ドする塩基配列では、 さらに ラベル化強度が高まることがわかった。
(3) アミノ酸残基数の影響の確認
上記 (2) でァラニン 4残基をコードする塩基配列の付加が、 合成されるラベ ル化蛋白質量が多い例であったので、 アミノ酸をァラニンに固定してアミノ酸残
基数が異なる場合でのラベル化蛋白質合成量への影響を解析した。 ァラニン 1残 基〜 6残基までのポリぺプチドをコ一ドする塩基配列 (図 10 A、 塩基配列に示 す) を、 Sma d4 (Ge nB a nk a c c e s s i o n No. NM― 00 5359) のストップコドンを削除した ORFの 3, 末端に付加したテンプレー ト DNAを調製し、 例 1と同様にして転写 '翻訳し、 合成されたラベル化蛋白質 量を例 2と同様に解析した。 また、 上記 Sma d 4のストップコドンを削除した ORFの 3' 末端をァラニンをコードする塩基配列に置換したものも同様に解析 した。 この結果を図 10 Bに示す。
図から明らかなように、 ァラニン 3〜6残基からなるポリペプチドをコードす る塩基配列の付カ卩は、 最適化配列 (C一 d e 1 (2) : GRGAA) と同等であ るので、 アミノ酸 3残基以上にすることが特にラベルィヒ蛋白質の合成量に影響を 及ぼさないことがわかった。 しかし.、 ァラニン 2残基以下では合成されるラベル 化蛋白質合成量が低下することがわかった。 また、 Sma d4の固有の 3 (末端 の塩基配列をァラニンをコードする配列に置換したものでは、 ァラニンをコード する塩基配列を 1つ付加したもの (図 10B 「Al a l」 ) よりラベル化蛋白質 合成量は高かった。
(4) リポソームポージング配列の影響の確認
これらの結果を見ると、 合成されるラベル化蛋白質の量が多い付加配列は、 い ずれもリポソームをポージングさせることを特徴とする塩基配列(EMB O. J、 7 : 3559-3569 (1988) ) である GGC、 又は GCGGCGが含ま れていることが判った。 つまり、 ラベル化蛋白質合成量を増加に影響を及ぼすの は、 铸型のリボソームをポージングさせる能力にあり、 このような能力を有する 塩基配列を目的蛋白質の ORFの 3 '末端に付加することにより合成されるラベ ル化蛋白質量が増加していることが推測された。
そこで、 上記の GGC、 または GCGGCGを含む 4アミノ酸残基をコードす る塩基配列 (図 20、 「塩基配列」 ) を、 GST蛋白質の断片 (配列番号 17の アミノ酸番号 1〜219) をコードする塩基配列の 3 '末端に付加した塩基配列
を有する遺伝子テンプレートを調製し、 これを例 1の方法で翻訳した。 得られた ラベルイ匕蛋白質の解析は、 以下に述べる蛍光プレートアツセィにより、 合成蛋白 質量に対するラベル化蛋白質量の割合で行った同様に翻訳及び解析を行い、 該配 列を付カ卩していないコントロールのラベルィヒ蛋白質の割合に対する相対値として 各種配列のラベル化強度を示した。
蛍光プレートアツセィは、 まず、 精製ゥサギ抗 GSTポリクローナル抗体 (V ER I T AS社製) を 5 OmM炭酸バッファー (pH9. 2) により濃度 20 μ gZmlに希釈し、 50 μ 1 Zwe 1 1の容量で 96ゥエルプレート (CORN I NG社製、 黒、 高結合型) に添カ卩した。 4 °Cにて 12時間以上静置して抗体を プレートに吸着させ、このプレートを PB Sバッファーで 2回洗浄した。この後、 上記にて調製したラベル化蛋白質を含む溶液をブロッキングバッファー (3 %ス キムミルク、 0. 05% Twe e n 2 O/PB S) で 150倍に希釈し、 この 溶液を 50μ 1 /we 1 1の容量でこのプレートに添加した。 ここで、 GST蛋 白質の断片 (配列番号 17のァミノ酸番号 1〜219) をコードする塩基配列の 3 ' 末端に、 C—d e l (2) GRGAAをコードする塩基配列を付カ卩したもの も調製し、 得られた GST蛋白質を G l u t a t h i o n e S e p h a r o s e 4 B (Am e r s li a m社製) を用いて精製したものを、 スタンダードとし て用いた。 このプレートを室温で 1時間静置し、洗浄バッファー ( 0. 05 % T w e e n 20/P B S) により 5回洗浄した。 この後、 F l u o r o L i nk— Ab C y 5 La b e l l i n g K i t (Am e r s h a m社製) を用いて C y 5標識したゥサギ抗 G STポリクローナル抗体をブロッキングバッファ一で 濃度 5〜10 μ g/m 1に希釈し、 50 μ g /m 1の容量で添カ卩した。 このプレ ートを室温で 1時間静置し、 洗浄バッファ一により 5回洗浄後、 P r o t e i n a s e K溶液 (1 ΟηιΜ Tr i s— HC 1 (pH 8. 0) 、 5 mM ED TA、 50mM N a C 1、 100 μ gZm 1 P r o t e i n a s e K、 0. 5% SDS) を 100 1 /w e 1 1の容量で添加し、 65 °Cで 2時間以上反 応させた。 この後、 Mo l e c u l a r Ima g e r (B i o R a d社製)
を用いて Cy 3の蛍光値から GST蛋白質に対するラベル化量、 Cy 5の蛍光値 から GST蛋白量を定量した。
この結果を図 20に示す。 図中、 「アミノ酸配列」 と 「塩基配列」 に用いた配 列を示した。 又、 図中の黒丸は、 その塩基配列中に GCGGCGおよび GGCを 有するものを示し、 白丸は GGCを有するものである。 図から明らかなように、 リボソームポージング機能を有する GCGGCG及び GGCを含む塩基配列の付 加により、 蛋白質の C末端ラベル化強度が一様に高まることがわかった。
(5) GC含量の影響の確認
上記で、 合成される蛋白質量が多い付加配列の特徴として、 GC含量が高いこ とが観察されたので、 この影響を解析した。
候補配列として、 アミノ酸 20種のそれぞれ 4残基からなるポリヌクレオチド をコードする塩基配列 62種類を用いた。 これらを、 GST蛋白質の断片 (配列 番号 17のァミノ酸番号 1〜219) をコードする塩基配列の 3, 末端に付カロし た塩基配列を有する遺伝子テンプレートを調製し、これを例 1の方法で翻訳した。 得られたラベル化蛋白質の解析は、 上記 (4) と同様に蛍光プレートアツセィに より、 合成蛋白質量に対するラベル化蛋白質量の割合で行った同様に翻訳及び解 析を行い、 該配列を付加していないコントロールのラベル化蛋白質の割合に対す る相対値として各種配列のラベル化強度を示した。
この結果のうち、 コントロールより C末端ラベル化強度が高かつたものの結果 を図 19 Bに示す。 図中、 「アミノ酸配列」 および 「塩基配列」 は用いた配列を 示し、 「G + C%」 は該塩基配列中の GC含量を示す。 さらに、 図 19 Aは用い た全 62種類の候補配列中の GC含量と、 C末端ラベル化強度との関係を示した、 図から明らかなように、 塩基配列中の GC含量が増加するに従って、 C末端ラベ ル化強度が上昇し、 GC含量が 60 %以上で飽和することがわかった。 例 6 ラベル化蛋白質合成量とラベルィヒ強度の比較
上記で、 増強配列の機能の指標として、 合成されるラベル化蛋白質量と、 合成 される蛋白質に対するラベルイ匕蛋白質の割合 (ラベル化強度) の 2種を用いてい たが、 これらが相互に関連していることを確認した。
例 1で用いた GST— PK22、 GST— PKPOU、 および GST蛋白質を コードする OR Fのストップコドンを削除したものの 3, 末端に、 例 4で選択し た増強配列 (1) (配列番号 10) を付加したテンプレート DNAを調製し、 例 1と同様に転写 ·翻訳した。 また、 コントロールとして、 上記増強配列を付加し ないテンプレート DNAについても同様に調製し、 転写 ·翻訳を行った。 反応終 了後、 反応溶液に含まれる蛋白質を SDS—ポリアクリルアミド電気泳動 (1 5%)で分離し、ラベル化蛋白質のバンドを蛍光量として Mo 1 e c u 1 a r I ma g e r (B i o Ra d社製)で解析してラベル化蛋白質量を測定した。合成 された蛋白質量に対するラベル化蛋白質量の割合は、 上記例 5で示した方法と同 様に行った。 これらの結果を図 1 1に示す。 図中、 (+) は増強配列 (1) を付 加した遺伝子テンプレートの結果を示し、 また (一) は付カ卩していないコント口 ールの結果を示す。 又、 ①は G S T - P K 22の結果を示し、 ②は GST—PO Uの結果を示す。
図から明らかなように、増強配列 (1)を付加しない場合、 GST-PK22、 G ST- P OUのラベル化強度は極めて低く、図 4 Bの②③の結果と同様であり、 これら 2つの指標はともに関連があることがわかった。 また、 例 2 (図 4B) に おいてラベルィヒ蛋白質が検出されなかったのは、 蛋白質合成量が低いからではな く、 ラベルイ匕効率が著しく低いからであることがわかった。 これに対して増強配 列 (1)を付加した結果、 各目的蛋白質のラベル化強度は増加し、 その標識効率は 合成された総蛋白質 1分子あたりラベル化化合物がおよそ 1分子程度付加してい ることが判った。 一方、 GSTは増強配列 (1) を付加しない場合でもその標識 化効率は良く、 増強配列 (1) を付カ卩した場合、 標識化効率がさらに若干向上す ることが判った。
例 7 ラベル化化合物濃度及び種類のラベル化強度に対する影響の解析
(1) ラベル化化合物濃度
上記 RGAA (配列番号 13) を GST蛋白質の断片 (配列番号 17のァミノ 酸番号 1〜219) をコードする塩基配列の 3, 末端に付カ卩した塩基配列を有す る遺伝子テンプレートを調製し、 これを例 1の方法で転写した。 この遺伝子テン プレートを用い、 0、 10、 20、 30、 40、 50および 60 のラベル化 化合物 (Cy 3-AmC-dC-Pu r o (図 3 (1) )) 存在下で例 1と同様に 翻訳した。 反応終了後、 反応溶液に含まれるラベルィヒ蛋白質を SDS—ポリアク リルアミド電気泳動 (15%) で分離し、 そのパンドの蛍光量を Mo 1 e c u 1 a r Ima g e r (B i o R a d社製) で解析した。 この際、 蛍光のスタン ダードとして、 適当な濃度のラベル化化合物を同様の S D S—ポリアクリルアミ ド電気泳動で解析し、 これをもとに合成されたラベル化蛋白質のモル数を算出し た。
一方、 上記の翻訳反応溶液中に合成された GST蛋白質量を測定するために、 抗 GST抗体を用いた EL I SA法 (GST 96 we l l De t e c t i o n Mo du l e, アマシャムファルマシァ製) を用い、 合成された GST蛋 白質のモル数を定量した。 両者の結果より、 合成された GST蛋白質 (モル) 当 たりのラベル化 GST蛋白質 (モル) の割合 (%) を求めた。
この結果を図 12Aに示す。 図中、 黒丸で示すグラフは、 RGAAを付カ卩した ものの結果を示し、 三角で示すグラフは付カ卩していないものの結果を示す。 図 1 2 Aから明らかなように、 RGAAを付加した場合、 添加するラベル化化合物の 濃度に従って、 蛋白質のラベル化強度が上昇し、 20 M以上の濃度にて合成さ れた蛋白質の大部分(80〜100%)がラベル化されることがわかった。一方、 RGAAを付カ卩しなかつた場合、添加するラベル化化合物の濃度を上昇させても、 蛋白質を十分にラベル化することはできず、 その強度は 50%以下であった。 又、 上記と同様の方法で G S T— P K 20、 GST-PK22についても種々 のラベル化化合物の濃度を変えて翻訳反応を行った結果、 GST— PK20では
16〜48 μΜで同等の蛋白質のラベル化が観察されたが、 64 μΜではラベル 化強度は減少した。 また。 GST— ΡΚ22では、 16〜48 Μで最も高いラ ベル化強度を示した。 これらのことから、 ラベルする蛋白質の種類によって最適 なラベル化化合物の濃度は異なるが、 15 以上で比較的高いラベル化強度が 得られることがわかった。
(2) ラベル化化合物の種類
上記 (1) と同様に、 GST、 GST— PK14、 GST— PK20、 GST -PK22に RGAAをコードする塩基配列を付カ卩した遺伝子テンプレートを用 い、 これを翻訳する際に次の各種ラベル化化合物を 20 添加した。 ラベル化 化合物は、 Cy 3— AmC— dC— Pu r ο (図 3 (1) ) 、 C y 5-AmC- d C-P u r o (図 3 (2) ) 、 F l u— dC— Pu r o (図 3 (3) ) 、 F 1 u-dC-Pu r o (p h e) (図 3 (4) ) 、 およぴ A 1 e x a 488 -Am -dC-Pu r o (図 3 (5) ) を用いた。 翻訳反応により得られた蛋白質を上 記 (1) と同様に解析した結果を図 12 Bに示す。 解析結果は Cy 3— AmC— d C - P u r oを添カ卩した場合の結果を 100 %として相対値で表示した。
図から明らかなように、 ラベル化試薬によってもラベル化強度が異なることがわ かった。 し力 し、 Cy 3— AmC— dC— Pu r oを用いた場合には、 蛋白質の 種類によらず高いラペル化強度が得られることがわかつた。
( 3 ) ビォチンぉよび蛍光物質を有するラベル化化合物
増強配列 (1) (配列番号 12) を、 GST、 GST— PK20、 GST— Ρ Κ 22のストップコドンを削除した OR Fの 3, 末端に付加した塩基配列を含む 遺伝子テンプレートを調製し、 これを例 1に記載の方法で翻訳する際に、 親和性 物質としてビォチンが結合した B i o-Cy 3-Ly s -dC2-Pu r o (図 3 (6) ) 、 B i o-Cy 5-Ly s -dC2-Pu r o (図 3 (7) ) 、 B i o-F l u-Ly s -dC2-Pu r o (図 3 (8) ) 、 B i o— Al e x a 4 88-Ly s -dC2~Pu r o (図 3 (9) ) を 16 μ M添カ卩した。 又、 B i o— Cy 3— Ly s— dC— Pu r o (図 3 (10) ) を、 16、 32、 40、
6 Ο μΜ添加して翻訳反応を行った。 翻訳反応終了後、 反応溶液中の蛋白質を、 上記 (1) と同様に解析した結果を図 1 3 Α及び Βに示す。
解析結果は最終濃度 1 6 ^ Mのラベル化化合物を添加して翻訳反応を行つた場 合の総蛋白質量に対する C末端ラベル化蛋白質の割合を 100%として相対的に 表示し 7こ。
これらの結果から、 添加するラベル化化合物の最適濃度は、 ビォチンを結合し たラベルイ匕試薬を用いた場合でも、 ラベル化強度は蛋白質の種類によって異なり (図 1 3A) 、 GST蛋白質では 1 6〜60 μΜの全てで蛋白質のラベルイ匕が見 られ、 特に 40 μΜで最もラベルイ匕効率が高かった。 また、 03丁ー?1:20で は、 1 6〜40 μΜで蛋白質のラベル化が観察され、 特に 32〜60 μΜでラベ ル化効率が高かった。 又、 GST— ΡΚ22では、 1 6〜60 /iMで高いラベル 化強度を得られることが判った。 .
また、 ラベル化化合物については、 目的蛋白質によってラベル化効率が異 なることがわかったが、 B i o— Cy 3— Ly s— d C— Pu r o (図 3 (1 0)) および B i o— F l u— Ly s— d C— Pu r o (図 3 (1 2) ) を用いた場合、 蛋白質の種類によらず高いラベル化強度を得られることがわかった。 例 8 目的蛋白質のストップコドンの有無のラベル化への影響の検討
例 1で用いた GST— PK20を目的蛋白質として、 該蛋白質をコードする O RF (ストップコドン含む) の 3 ' 末端に例 4で選択した増強配列 ( 1 ) (配列 番号 1 0) を付加したテンプレート DNAを調製し、 例 1と同様にして転写'翻 訳した。 また、 GSTの ORFからストップコドンを削除したものも同様にして テンプレート DNAを調製した。 これらを同様に転写、 翻訳した。 反応終了後、 反応溶液に含まれる蛋白質を S D S—ポリアクリルアミド電気泳動 ( 1 5 %) で 分離し、 ラベル化蛋白質のバンドを蛍光量として Mo l e c u l a r I ma g e r (B i o R a d社製) で解析した。 この結果を図 1 6に示す。
図中、 「+」 で示すレーンはストップコドンを含む遺伝子テンプレートを用い た結果を示し、 「一」 で示すレーンはストップコドンを削除した遺伝子テンプレ ートを用いた結果を示す。 又、 GST— PK20の全長の蛋白質は図中太矢印で 示すバンドで、 断片化された蛋白質は図中点線矢印で示すバンドである。 図から も明らかなように、 増強酉 3列およびストップコドンを有する遺伝子テンプレート を用いた場合、 断片化された蛋白質が、 全長蛋白質よりも多くラベル化されるこ とがわかった。 例 9 各種無細胞蛋白質合成系のラベル化強度への影響の解析
本発明のラベル化増強配列が、 コムギ胚芽抽出液以外の無細胞蛋白質合成系を 用いた翻訳反応においても有効力否かを以下の方法で解析した。
上記 RGAA (配列番号 13) およびァラニン 4残基 (以下、 「A1 a 4」 と 称することがある) をコードする塩基配列を GST蛋白質の断片 (配列番号 17 のァミノ酸番号 1〜 219 ) をコードする塩基配列の 3, 末端に付加した塩基配 列を有する DNAと、 さらにその 5, 末端に SP 6プロモーター、 t a cプロモ 一ターおよびリボソームバインディングサイト (以下、 「RBS」 と称すること がある) を付加した DN Aを PC R法にて作製し、 大腸菌 S 30抽出物あるいは ゥサギ網状赤血球抽出物を用いた無細胞蛋白質合成に使用するテンプレート DN Aとして用いた。
一方、 上記 RGAA (配列番号 13) あるいは A 1 a 4コード塩基配列を GS T蛋白質の断片 (配列番号 17のアミノ酸番号 1〜219) をコードする塩基配 列の 3, 末端に付カ卩した塩基配列を有するテンプレート DNAをコムギ胚芽抽出 液を用いた蛋白質合成に使用するものとして調製した。 これらのテンプレート D NAを錄型として、 SP6RNAポリメラーゼ (P r ome g a社製) を用いた 転写反応を行って mRNAを合成後、 ィソプロピルアルコール沈殿操作により m RN Aを精製した。
無細胞蛋白質合成反応に使用する大腸菌 S 30抽出物は、 E. c o 1 i Ex t r a c t Sy s t em i o r L i n e a r Temp l a t e s (P r ome g a社) を使用し、 ゥサギ網状赤血球抽出物は R a b b i t Re t i c u 1 o c y t e L y s a t e Sy s t em, Nu c l e a s e Tr e a t e d (P r ome g a社) を使用した。 各抽出物に付属のマニュアルに従って反 応溶液を調製し、 これに上記にて調製した mRNAおよぴ種々の濃度のラベルイ匕 化合物 (Cy 3-AmC-dC-Pu r o (図 3 (1) ) を添カ卩して無細胞蛋白質 合成反応を行った。
反応終了後、 例 7に記載の方法に従って SDS—ポリアクリルアミド電気泳動 法及び EL I SA法を実施し、 合成されたラベル化蛋白質のラベル化強度 (%) を求めた。 これらの結果を図 18に示す。
図 18 Aはゥサギ網状赤血球抽出物を利用した場合、 又図 18 Bは大腸菌 S 3 0抽出物を用いてそれぞれ合成したラベル化 GST蛋白質のバンドを示している。 各々図中①は RGAAを付加していない遺伝子テンプレートを用いた結果を示し、 ②は RGAAを添加したもの、 ③は A 1 a 4を添加したもの、 ④は mRNA自体 を添カ卩していないものの結果を示す。 図から明らかなように、 いずれの抽出液に おいても RGAAおよび A 1 a 4を付カ卩した遺伝子テンプレートを用いた場合に はラベル化 G S T蛋白質のバンドが強く検出されたが(図 18 A矢印)、付加して いないものではほとんどバンドが検出されなかった (図 18 A①)。
図 18 Cは RGAAを付カ卩した遺伝子テンプレートを用いて、 各濃度のラベル 化化合物の存在下で蛋白質合成した場合のラベル化効率と用いたラベル化化合物 の濃度との関係を示している。 図から明らかなように、 添加するラベル化化合物 の濃度に従って、 蛋白質のラベル化効率が上昇し、 20 Μから 60 / Mの濃度 にて合成された蛋白質の大部分が標識されることが判った。
これら結果から、 大腸菌 S 30抽出物、 ゥサギ網状赤血球抽出物を用いた無細 胞蛋白質合成では、 ラベル化化合物を 20〜 60 Mの濃度で用いること、 並ぴ にラベルイ匕増強配列を用いることにより、 高いラベル化強度を有する C末端ラベ
ル化蛋白質を得られることが判った, 例 10 無細胞蛋白質合成法の蛋白質ラベル化への影響の検討
(1) 翻訳反応系の検討
無細胞蛋白質合成系で用いられる異なる反応方法について本発明のラベル化増 強配列の影響を確認した。
蛋白質の標識を実施する際に使用する無細胞タンパク合成系として、 例 1と同 様の方法 (以下、 これを 「重層法」 と称することがある) および反応層とェネル ギー供給層を混合させた状態より無細胞タンパク合成反応開始させる方法 (以下、 これを 「バッチ法」 と称することがある) を用い、 各無細胞タンパク合成系にお ける蛋白質のラベル化強度を比較検討した。
例 1で用いた GST— PK20および上記の GST蛋白質をコードする ORF (ストップコドン含む) の 3, 末端に例 4で選択した増強配列 (1) (配列番号 10) を付カ卩したテンプレート DNAを調製し、 例 1と同様にして転写'翻訳し た。 また、 上記蛋白質の ORFのストップコドンを削除したものについても同様 に調製し、 さらにコントロールとして増強配列を付加しないものも同様に調製し た。 ラベル化化合物は、 C y 3 -AmC- d C-P u r o (図 3 (1) ) で、 い ずれも最終濃度で 16 χΜを、 重層法では、 供給層と反応層の両方に添加し、 パ ツチ法では反応溶液に添カ卩して、 翻訳反応を行った。 翻訳反応終了後、 反応溶液 中の蛋白質を、 例 6と同様に SDS— PAGE (15%) で分離し、 合成された 総蛋白質量に対する C末端がラベル化された蛋白質の割合を測定した。
この結果を図 14に示す。 図中、 レーン Αは、 増強配列を付カ卩していない遺伝 子テンプレートの結果を示し、 レーン Bは増強配列 (1) を付カ卩した目的タンパ ク質の OR Fのストップコドンを含む遺伝子テンプレートの結果を示す。 また、 レーン Cは、 増強配列 (1) を付カ卩した目的蛋白質の ORFからストップコドン を削除した塩基配列を含む遺伝子テンプレートの結果を示す。 また、 ①は重層法
により翻訳反応を行った結果であり、 ②はパッチ法により翻訳反応を行った結果 を示す。
図から明らかなように、 重層法で合成した場合、 いずれの遺伝子テンプレート を用いた場合も、 そのラベル化強度がバッチ法に比べて極めて上昇することが判 つた。 また各遺伝子テンプレートを比較した結果、 増強配列 (1) を付加した場 合力 ラベル化蛋白質合成量もラベル化強度も(図 14 Aおよび Bの C①と C②) 最も向上した。 一方、 ストップコドンに続き増強配列 (1) を付加場合でも蛋白 質のラベル化 (図 14Aおよび Bの B①と B②) が可能であることが判った。
(2) ラベル化化合物の添加方法の検討
上記重層法を用いて無細胞蛋白質合成を実施する際、 添加するラベル化化合物 (Cy 3—AmC— dC— Pu r o最終濃度 16 μΜ) を (1) 反応層溶液およ びエネルギー供給層溶液の両方に添カ卩した場合 (2) 反応層溶液のみに添加した 場合 (3) エネルギー供給層溶液のみに添加した場合で翻訳反応を行った。 目的 蛋白質は、 例 1と同様の GSTを用い、 ストップコドンは削除しないものに増強 配列 (1) を付加したものを遗伝子テンプレートとして用いた。
また、 反応層溶液およびエネルギー供給層溶液の総量を 150 ^ 1に対し、 3 0 にして翻訳反応を行った。 この場合、 溶液の組成及ぴ添加量等は全て同様 の割合でスケールダウンして行った。 翻訳反応終了後、 反応溶液中の蛋白質を、 例 6と同様に S D S _ P A G Ε (15%) で分離し、 合成された総蛋白質量に対 するラベル化蛋白質量の割合を測定した。 解析結果は反応層溶液おょぴエネルギ 一供給層溶液の両方に添加した場合の標識化強度を 100%として表示した。 こ の結果を図 15 Aに示す。 また、 スケールダウンした場合の結果を図 15Bに示 す。
これらの結果から、 ラベル化化合物は反応層溶液およぴエネルギー供給層溶液 の両方に添加することが好ましいが、 何れか一方に添加しても蛋白質の標識が可 能であることが判つた。 また反応層溶液をおよびエネルギー供給層溶液の各量を
1/5量にスケールダウンし、 384we l 1プレートを使用して無細胞蛋白質 合成系を実施しても同様の蛋白質標識化効率が得られることが判つた(図 1 5 B ) , 例 1 1 ラベルイ匕化合物の添カ卩のタイミングの検討
上記増強配列 ( 1 ) (配列番号 10) を例 1に示したものと同様の目的タンパ ク質 (GST— Sma d 3および GST— Sm a d 4) の OR Fの 3, 末端に付 加した塩基配列を含むテンプレート DNAを調製し、 これを例 1に記載の方法で 転写、 翻訳した。 この翻訳を行う際、 無細胞蛋白質合成系にラベル化化合物を添 加するタイミングについて、 (i)ラベルイ匕化合物を添加してから無細胞蛋白質合 成を反応させる方法 (ii) 無細胞蛋白質合成反応を開始させてから一定時間後に ラベル化化合物を添加し、 さらに反応を続ける方法に関して蛋白質のラベルイ匕強 度を比較検討した。 まず、 転写した.遺伝子テンプレートを添加した反応層用溶液 (2 5 μ 1 )を 26 °Cで保温することによりタンパク合成反応を開始し、その 0. 5時間後、 1時間後、 2時間後に C y 3 -AmC- dC-Pu r o (図 3 (1) ) を最終濃度 1 6 Μになるように添カ卩した。 続いて同じラベル化化合物 ( 1 6 μ M) を添加したエネルギー供給層溶液 (1 25 1 ) を例 1の方法に従って添カロ し、 さらに 1 6時間反応させた。一方、 コントロール(上記 (i) の方法) として、 反応層用溶液 (25 1 ) およびエネルギー供給層用溶液 (1 25 1 ) それぞ れに同じラベル化化合物 ( 1 6 Α'- Μ) を添加し、 例 1の方法に従って 26°C1 6 時間の無細胞タンパク合成反応を行った。 目的蛋白質としては、 例 1で用いたも のと同様の GST— Sma d 3および GST— Sm a d 4を用いた。 翻訳反応終 了後、 反応溶液中の蛋白質を、 例 6と同様に SDS— PAGE (1 5%) で分離 し、 合成された総蛋白質量に対するラベル化蛋白質量の割合を測定した。
図 1 7 Aに電気泳動法にて解析されたラベル化蛋白質のバンドパターンを 示す。 また図 1 7 Bには、 図 1 7 Aの太矢印で示した全長蛋白質のパンド量
(O hを 1 00%とした相対量) の変化を示し、 図 1 7Cには断片化された蛋白 質のバンド量(0 hを 1 00%とした相対量)の変化を示す。これらの結果から、
蛋白質合成反応を開始してから 0. 5時間から 1時間後にラベル化化合物を添カロ する事により、 ラベル化全長蛋白質の合成量が増加し、 それととともに、 ラベル 化された断片化蛋白質の合成量は低下することが見レヽだされた。これらの結果は、 無細胞蛋白質合成反応を開始させた一定時間後に、 ラベル化化合物を添加するこ とにより、 全長蛋白質のラベル化量が向上し、 ラベル化蛋白質中に含まれる全長 蛋白質の割合を極めて向上させることができる事を示している。 例 12 ラベル化化合物とラベル化増強ポリべプチドの結合体を抗原とする抗体 調製
(1) 抗原の調製
ラベノレ化増強ポリペプチドである RGAAの C末端にラベル化化合物 (Cy 3 -AmC- d C-P u r o (図 3 (1)) を化学的に結合させた合成ペプチドを調 製した。 これを I m j e c t Ma l e im i d e Ac t i v a t e d C a r r i e r P r o t e i n sキット (P I ERCE社) に付属のマニュアルに 従い、キヤリァー蛋白質(KLH)に結合させたものを免疫用抗原として用いた。 キヤリァ一として KLH (キーホール' リンぺット ·へモシァニン)、 BSA (ゥ シ血清アルブミン)、 OVA (ォバルブミン) などの蛋白質または高分子体に結合 させたものを免疫用抗原として使用した。
(2) ポリクローナル抗体の調製—
上記 (1) で調製した免疫用抗原約 100 gを、 同容量のフロイント完全ァ ジュパントとともに混合したものを抗原として、 ゥサギ皮下へ 2週間間隔で 7回 投与した。 血清中に抗体が産生していることを確認後、 さらに 10 gの免疫用 抗原を脈内に投与し、 5日後に抗血清を取得た。 これを硫安沈殿操作後、 プロテ ィン A力ラムを使用した精製操作により、 ポリクローナル抗体を取得した。
(3) モノクローナル抗体の調製
(1) で調製した免疫用抗原約 200 を、 同容量のフロイント完全アジュ パントとともに、 Balb/cマウスの皮下および腹腔内に 2週間間隔で 6回投与した。
マウスの血清中に抗体が産生していることを確認後、 100 の免疫用抗原を 尾静脈内に投与した。 3日後に脾臓を取り出し、 「単クローン抗体実験マ二ユア ル」 (講談社サイエンティフィック 1987年出版) に従い、 ポリェチエングリコー ル 1500を使用して、脾臓細胞をミエローマ細胞 P 3 U 1と細胞融合させ、 96ゥ エルプレートに注入後 HAT培地を添加して 14日間の培養を行った。 この後、 ラベル化剤が結合したラベル化増強配列もしくはラベルイ匕増強配列に対して特異 的なモノクローナル抗体を培地中に産生するハイプリ ドーマの選別を行った。 このハイブリ ドーマを選別するための EL I S Aプレートは以下の様にして作製 した。 EL I SA用スクリーニング用抗原として、 (1) RGAAの C末端にラベ ル化化合物 (Cy3-AmC-dC-Puro (図 3 (1)) を化学的結合させ、 このものを C末 端側に含みかつ N末端にはキヤリァ一への結合のためのシスティン付加したを合 成ぺプチド【こ対し、 Imject Ma l e.im i d e Ac t i v a t e d C a r r i e r P r o t e i n sキット(P I E R C E社)に付属のマニュアルに従い、 キャリアー蛋白質 (BSA) を結合させた EL I S A用スクリーニング用抗原、
(2) RGAAを C末端側に含みかつ N末端にはキヤリァ一への結合のためのシ スティン付加したを合成ぺプチドに対 ·し、 I mj e c t Ma l e i m i d e Ac t i v a t e d Ca r r i e r P r o t e i n sキッ (P I ERCE 社) に付属のマニュアルに従い.、 キャリアー蛋白質 (B SA) を結合させた EL I S A用スクリーニング用抗原、 (3)例 1 1に記載の方法に従い、ラベル化増強 配列のァミノ酸配列として R G A Aを有し、 ラベル化化合物 (Cy 3— AmC— d C-P u r o (図 3 (1))を用いてラベル化した GST蛋白質を精製したもの、
(4)ラベルイ匕していない GST蛋白質、 (5) 5%ゥシ血清アルブミン(以下「B SA」 と略す) を準備した。
各 EL I S A用スクリーニング用抗原はそれぞれ最終濃度 1 μ g/m 1になる 様に生理的リン酸水素緩衝液 (PB S (一)) に希釈後、 96 we 1 1プレートの ウエノレに 100 μ 1ずつ添加した。 この後、 4°C下にて 24時間保存して、 各抗 原を 96ゥエルプレートに吸着させた。 この抗原付着プレートより溶液を除き、
2. 5%ゼラチンを含む PBS (—) を 250 μ 1ずつゥエルに添カ卩して、 4°C にて一昼夜 ( 12時間程度) または 37 °Cにて 2時間以上おくことによりブロッ キング操作を行い、 ハイプリ ドーマ選別用 EL I SAプレートとして、 4°C下に て保存した。 これらの EL I SAプレートは、 使用直前にプレート中のブロッキ ング溶液を除いて使用した。
上記にて作成したそれぞれのハイプリ ドーマ選別用 EL I SAプレートに対し て、 ハイプリ ドーマの培養上清を添加し、 培養上清に存在するモノクローナル抗 体の反応性を解析した。 各選別用 EL I S Aプレートに対し、 選択するハイプリ ドーマの培養上清を 100 μ 1 Ζゥエルにて添加した後, 4 下にて 2時間以上 反応させた。 この後、 0. 05% Twe e n 20を含む PB S (—) 液 (以下
「PBST液」 と略す) を用いて十分な洗浄を行ない、 HRP (西洋わさぴぺル ォキシターゼ) 標識ヒッジ抗マウス I g G · F cポリクローナル抗体 (D AK〇 社) l ^ g/mlおよび 2. 5%ゼラチンを含む PBS (―) を 100 z 1ずつ ゥエルに添カ卩し、 さらに室温で 1時間反応させた。 P B S T液で充分に洗浄操作 を行った後、 0. Amg.Zm 1オルトフエ二レンジァミン (OPD、 S i gma 社 P— 9029) および 0. 015〜0. 03 %過酸化水素溶液を含むクェン 酸一リン酸緩衝液(PH5. 0)を添カ卩して室温にて反応させ、発色を行なった。 この後 IN H2S O 4溶液を添加して反応を止め、 測定波長 490 n m、 リファ レンス波長 650 nmにて測定を行なった。 このスクリーニングにより、 上記の EL I SA用スクリーニング用抗原(1) (3)に対して反応性が強く、 (2) (4)
(5) への反応性が弱いもの、 すなわちラベル化化合物とラベル化増強ポリぺプ チドの結合体を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイプリ ドーマ
(Cy 3-PURO-RGAA) を取得した。
一方、 上記 EL I S A用スクリーニング用抗原 (1) (2) (3) に対して反応 性が強く、 (4) (5) への反応性が弱いもの、 すなわちラベル化ポリペプチドを 特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイプリドーマ (RGAA) を 取得した。 得られた各ハイブブリ ドーマは、 限界希釈法による 3回のクローニン
グ操作後、 培養上製を回収してプロテイン Aが結合したアブイ二ティークロマト グラフィー (アマシャムフアルマシアバイオテク社製) により、 モノクローナル 抗体の精製を行った。
(4) モノクローナル抗体の解析
例 1 2 (3) で調整および精製されたモノクローナル抗体の反応性を解析する ため、 上記 (3) で作製した各 E L I S Aプレートを用い、 ハイブリ ドーマ C y 3— PURO— RGAAもくしはハイプリ ドーマ RGAA由来のモノクローナル 抗体約 1 gZm 1および 2. 5%ゼラチンを含む PB S (—) を Ι Ο Ο μ Ιず っゥエルに添カ卩して、 4 °C下にて 2時間以上反応させた。 この後、 PB S T液を 用いて十分な洗浄を行ない、 HRP標識ヒッジ抗マウス I g Gポリクローナル抗 体 (DAKO社) l ^ g/m lおよび 2. 5%ゼラチンを含む PB S (—) を 1 00 μ 1ずつゥエルに添加し、 さらに室温で 1時間反応させた。
PB ST液で充分に洗浄操作を行った後、 0. 4mg/m 1オルトフエ二レン ジァミン(OPD、 S i gma社 P— 9 0 2 9)および 0. 0 1 5〜0. 0 3% 過酸化水素溶液を含むクェン酸ーリン酸緩衝液 (pH 5. 0 ) を添加して室温に て反応させ、 発色を行なった。 この後、 I N H2 SO 4溶液を添カ卩して反応を止 め、 測定波長 4 9 0 nm、 リファレンス波長 6 5 0 nmにて測定を行なった。 測 定結果は E L I S A用スクリーニング用抗原(1 ) (図 2 2A : RGAA-C y 3 — d C— P u r o - B S A) への反応性を 1 00 %とした相対活性 (%) として 表示した。
この測定結果を図 2 2に示す。 図 2 2 Aに示す様にハイプリ ドーマ C y 3— P URO— RGAA由来のモノクローナル抗体は、 上記の EL I S A用スクリー二 ング用抗原 (1) (図 2 3A : RGAA-C y 3 _ d C— P u r o— B SA)およ び (3) (図 2 3 Aラベル化 GS T) に対しては反応性が極めて強かった。 一方、 (2) (図 2 3 A: RGAA— B S A)、 (4) (図 2 3 A: GST) および (5) (図 2 3A : B SA) への反応性は非常に弱い、 もしくはほとんど反応しなかつ た。 また、 図 2 2 Bに示す様に、 ハイプリ ドーマ R.GAA由来のモノクローナル
抗体は、上記 EL I S A用スクリーニング用抗原 (1) (図 23 B: RGAA—C y 3— dC— Pu r o—B SA)、 (2) (図 23 B : RGAA— B SA)、 および (3) (図 23 Bラベルイ匕 GST)に対して反応性は極めて強かった。一方、 (4) (図 23 A: GST)および(5) (図 23A: B SA)への反応性は非常に弱い、 もしくはほとんど反応しなかった。 例 1 3 ラベル化剤化合物とラベル化増強ポリぺプチドを認識するモノクローナ ル抗体を用いたラベル化蛋白質の定量
例 1 2で調製したハイブリ ドーマ Cy 3— PURO— RGAA由来のモノクロ ーナル抗体を 30 μ g _ m 1の濃度になるように 0. 05 M炭酸一重炭酸緩衝液 (pH9. 6)に溶解し、 1 00 μ 1 Ζゥエルにて 96ゥエルプレートへ添加し、 4°Cにて一昼夜 (1 2時間程度以上) おいた。 この抗体付着プレートより抗体溶 液を除いた後、 3% スキムミルクを含む PB S (—) を 250〜300 1 / ゥエルずつ添加し、 4 °Cにて一昼夜 (1 2時間程度) または 3 7 °Cにて 2時間以 上おいた後、 このプレートからブロッキング溶液を除レヽた。 例 9に記載で調製し たラベル化 GST蛋白質を含む溶液をブロッキングバッファー (3% スキムミ ルク、 0. 05% Twe e n 20 i n PB S) で数段階に希釈し、 この溶 液を 50 1 /w e 1 1の容量で上記のプレートに添カ卩した。 このプレートを室 温で 1時間静置し、 洗浄バッファー (0. 05% Twe e n 20 i n PB S) により 5回洗浄した。 この後、 Mo l e c l a r I ma g e r (B i o R a d社製) を用いて Cy 3の蛍光値から溶液中に存在するラベル化 GST蛋白 質量を定量した。 この際、 種々の濃度のラベル化化合物 (Cy 3—AmC—d C -Pu r o (図 3 (1)) を同様に定量してスタンダードとして使用した。
この結果は、 例 9の測定結果と一致し、 該抗体によってラベル化蛋白質量が測 定可能であることが判った。 ラベル化蛋白質を用いた蛋白質相互作用の解析
転写因子コファクター候補蛋白質をコードした約 90種類のヒト cDNAを用 い、 それぞれの 3, 末端に RGAAをコードするラベル化増強配列 (配列番号 1 3 ) を P C R法にて付加した配列を含む遺伝子遺伝子テンプレートを作成した。 各個別の遺伝子テンプレートは、 それぞれ例 1と同様に転写し、 さらに 40 μ M のラベル化化合物(Cy 3_AmC— dC— Puro (図 3 (1))存在下にて翻訳し た。 一方、 例 16で調製したモノクローナル抗体を固層化し、 さらに例 12と同 様にプロッキング処理を行ったプレートを準備し、 上記で得られたラベル化蛋白 質を含む溶液を 50 μ 1 /w e 1 1の容量でこのプレートに個別に添カ卩した。 プ レートを室温で 1時間静置し、洗浄バッファー(0. 05% Twe e n 20 i n PB S) により 5回洗浄した後、 Mo l e c u l a r Ima g e r (B i o R a d社製) を用いて C y 3の蛍光値から溶液中に存在する各ラベル化 C末 端ラベル化蛋白質量を定量した。 こ.の際、 種々の濃度のラベル化化合物 (Cy 3 -AmC- d C-P u r o (図 3 (1)) を同様に定量してスタンダードとして使 用した。 このプレートを以下、 Cy 3ラベル化転写因子コファクター固定化プレ ートと呼ぶ。
次に転写因子として知られる Sm a d 3 (G e mB a mk Ac c e s s i o n No. NM— 005902番号) をコードする D N Aに A 1 a 4をコードす るラベル化増強配列を PCR法にて付加したものを調製し、 例 1の方法に従い小麦 胚芽抽出液を用いた蛋白質合成に使用する遺伝子テンプレートを作成した。 これ を、 例 1に従い 40/iMのラベル化化合物 (Cy5-AraC-dC-Puro (図 3 (2)) 存在 下にて翻訳した。 得られたラベル化 S ma d 3蛋白質を含む溶液を上記の Cy3ラ ベル化転写因子コファクター固定化プレートに 50 ^ 1/we 1 1の容量で添加 した。 このプレートを室温で 1時間静置し、 洗浄バッファー (0. 05% Tw e e n 20 i n PB S) により 5回洗浄した。 この後、 Mo l e c u l a r Ima g e r (B i o R a d社製) を用いて C y 5の蛍光値および C y 5 ZC y 3蛍光値の比から転写因子コファクターと Sm a d 3の相互作用値を算出した。 この際、 種々の濃度のラベル化化合物 (Cy 3— AmC— dC— Pu r o (図 3
(1)) および Cy 5-AmC- d C-P u r o (図 3 (2))) を同様に定量して スタンダードとして使用した。
この結果数種類の cDN Aにおいて、 転写因子コファクターと Sma d 3の相 互作用が検出され、 本発明のラベ/レイ匕法と抗体により蛋白質一物質間の相互作用 角率析が行えることがわかった。 産業上の利用の可能性
本発明によれば、 目的蛋白質の C末端にラベル化化合物が結合したラベル化蛋 白質の合成量を高めることができ、 どのような目的蛋白質であっても検出が可能 な程度のラベルイ匕を行う手段が提供される。 また、 目的蛋白質の一部のアミノ酸 配列からなる蛋白質の C末端にラベル化化合物が結合したラベル化蛋白質を選択 的に合成する手段も提供される。 このような断片化されたラベル化蛋白質群は、 蛋白質一分子間相互作用解析を行う場合に有意に使用できる可能性がある。 さらに本発明によれば、 目的蛋白質の全長の C末端にラベルィヒ化合物が結合し た蛋白質を選択的に合成する手段も提供される。 又、 本発明のラベル化増強タグ 又はこれとラベル化化合物の結合体を認識する抗体は、 多くの蛋白質について網 羅的に相互作用解析を行うのに非常に有用なッールとなる。
本出願は 2003年 6月 18日付の日本特許出願 (特願 2003-1 736
34) に基づく優先権を主張する出願であり、 その内容は本明細書中に参照とし て取り込まれる。 また、 本明細書にて引用した文献の内容も本明細書中に参照と して取り込まれる。