JP2022181707A - 非変性チャネルロドプシン検出キット - Google Patents
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Abstract
【課題】立体構造を保持した非変性ChRの細胞外ドメイン(Nドメイン)に存在するエピトープに特異的に結合できる抗体を製造することである。【解決手段】ChRをリポソームで再構成し、免疫原として使用することで機能的な構造を保持したChRに対する抗非変性ChR抗体を作製し、提供する。【選択図】なし
Description
本発明は、非変性チャネルロドプシン検出キット、並びに抗C1C2型チャネルロドプシン抗体及びそれを用いたC1C2型チャネルロドプシン検出方法に関する。
緑藻類で発見された膜タンパク質のチャネルロドプシン(以下、本明細書では、しばしば「ChR」と表記する)は、光照射により細胞内に陽イオンを輸送する。この性質は、ChRを動物の神経細胞で異所的に発現させた場合にも保持される。このようなChRの光反応性を利用した光遺伝学(オプトジェネティクス)は、神経細胞等の生理学的機能を操作できる極めて有用な手法として注目を集めている(非特許文献1及び2)。
光遺伝学では、ChRを発現する神経細胞の形態や挙動を細胞レベルで分析するため抗体を用いた免疫組織化学染色法が活用される。ところが、真核生物の膜タンパク質は一般に不安定な上、ChRは発現量も低く、機能性を有する状態で正確にフォールディングされたタンパク質として精製することは困難である。そのため、ChRの立体構造を認識できる抗体は、これまで製造することができなかった。実際、現在知られている抗ChR抗体は、市販品を含めて全てChRの一次配列しか認識することができない。また、いずれの抗ChR抗体も全て細胞内のC末端ドメインに存在するエピトープを認識する抗体であり、ChRの細胞外ドメインを認識して結合できる抗ChR抗体は知られていない。それ故に、従来の抗ChR抗体は、抗原特異性が低く、また細胞内ドメインに結合するため免疫染色性が悪いという大きな問題があった。
Deisseroth K., 2015, Nat. Neurosci., 9: 1213-25.
Deisseroth K, and Hegemann P., 2017, Science, 357: 6356, eaan5544
本発明の課題は、立体構造を保持したChRにおいて、その細胞外ドメイン(Nドメイン)に存在するエピトープに特異的に結合できる抗体を製造することである。
本発明者らは、抗体製造にあたり、ChRをリポソームで再構成後、マウスに免疫することで機能的な構造を保持したChRに対する抗ChR抗体を作製することに成功した。
得られた抗ChR抗体をELISA法により評価した結果、ChRの細胞外ドメインに結合し、立体構造を認識することのできるChRにおいて、初めての「細胞外構造認識抗体」であることが判明した。本発明は、当該研究結果に基づくもので、以下を提供する。
得られた抗ChR抗体をELISA法により評価した結果、ChRの細胞外ドメインに結合し、立体構造を認識することのできるChRにおいて、初めての「細胞外構造認識抗体」であることが判明した。本発明は、当該研究結果に基づくもので、以下を提供する。
(1)高次構造を保持したチャネルロドプシンの細胞外ドメインに結合する抗チャネルロドプシン抗体及び/又はその活性断片を少なくとも1つ含む非変性チャネルロドプシンの検出キットであって、前記抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片はチャネルロドプシンの細胞外ドメインに含まれる構造的エピトープを特異的に認識する、前記検出キット。
(2)前記チャネルロドプシンが、C1C2型チャネルロドプシン、ChRmine型チャネルロドプシン、及びGtACR1型チャネルロドプシンからなる群から選択されるいずれか一以上のチャネルロドプシンである、(1)に記載の検出キット。
(3)前記C1C2型チャネルロドプシンが、ChR1、ChR2、C1C2、ReaChR、C1V1、C1 Chrimson、iC1C2、ChloC、iC++、SwiChR++、及びPhobosからなる群から選択されるいずれか一以上のチャネルロドプシンである、(2)に記載の検出キット。
(4)前記抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片が抗C1C2型チャネルロドプシン抗体又はその活性断片であって、配列番号16で示される構造的エピトープを特異的に認識し、結合する、(3)に記載の検出キット。
(5)前記抗C1C2型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号17、18及び19で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号20、21及び22で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、(4)に記載の検出キット。
(6)前記抗C1C2型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号23、24及び25で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号26、27及び28で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、(4)又は(5)に記載の検出キット。
(7)前記抗C1C2型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号29、30及び31で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号32、33及び34で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、(4)~(6)のいずれかに記載の検出キット。
(8)前記抗ChRmine型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号35、36及び37で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号38、39及び40で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、(2)に記載の検出キット。
(9)前記抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片が標識されている、(1)~(8)のいずれかに記載の検出キット。
(10)免疫組織化学染色用又は構造解析用である、(1)~(9)のいずれかに記載の検出キット。
(2)前記チャネルロドプシンが、C1C2型チャネルロドプシン、ChRmine型チャネルロドプシン、及びGtACR1型チャネルロドプシンからなる群から選択されるいずれか一以上のチャネルロドプシンである、(1)に記載の検出キット。
(3)前記C1C2型チャネルロドプシンが、ChR1、ChR2、C1C2、ReaChR、C1V1、C1 Chrimson、iC1C2、ChloC、iC++、SwiChR++、及びPhobosからなる群から選択されるいずれか一以上のチャネルロドプシンである、(2)に記載の検出キット。
(4)前記抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片が抗C1C2型チャネルロドプシン抗体又はその活性断片であって、配列番号16で示される構造的エピトープを特異的に認識し、結合する、(3)に記載の検出キット。
(5)前記抗C1C2型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号17、18及び19で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号20、21及び22で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、(4)に記載の検出キット。
(6)前記抗C1C2型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号23、24及び25で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号26、27及び28で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、(4)又は(5)に記載の検出キット。
(7)前記抗C1C2型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号29、30及び31で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号32、33及び34で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、(4)~(6)のいずれかに記載の検出キット。
(8)前記抗ChRmine型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号35、36及び37で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号38、39及び40で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、(2)に記載の検出キット。
(9)前記抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片が標識されている、(1)~(8)のいずれかに記載の検出キット。
(10)免疫組織化学染色用又は構造解析用である、(1)~(9)のいずれかに記載の検出キット。
(11)それぞれ配列番号17、18及び19で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号20、21及び22で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
(12)それぞれ配列番号23、24及び25で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号26、27及び28で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
(13)それぞれ配列番号29、30及び31で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号32、33及び34で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
(14)C1C2、ReaChR、C1V1、C1 Chrimson、iC++、SwitChR++、及びPhobosからなる群から選択されるいずれか一以上のC1C2型チャネルロドプシンに結合する、(11)~(13)のいずれかに記載の抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
(15)抗体又はその活性断片が標識されている、(11)~(14)のいずれかに記載の抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
(16)それぞれ配列番号35、36及び37で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号38、39及び40で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗ChRmine型ChR抗体。
(17)抗体又はその活性断片が標識されている、(16)に記載の抗ChRmine型チャネルロドプシン抗体。
(18)細胞表面上の高次構造を保持したチャネルロドプシンを検出する方法であって、試料を(11)~(17)に記載のいずれか一以上の抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片に接触させる工程、及び抗原抗体反応によって形成された前記抗チャネルロドプシン抗体と細胞表面上のチャネルロドプシンによる抗原抗体複合体を検出する工程を含む前記方法。
(12)それぞれ配列番号23、24及び25で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号26、27及び28で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
(13)それぞれ配列番号29、30及び31で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号32、33及び34で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
(14)C1C2、ReaChR、C1V1、C1 Chrimson、iC++、SwitChR++、及びPhobosからなる群から選択されるいずれか一以上のC1C2型チャネルロドプシンに結合する、(11)~(13)のいずれかに記載の抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
(15)抗体又はその活性断片が標識されている、(11)~(14)のいずれかに記載の抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
(16)それぞれ配列番号35、36及び37で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号38、39及び40で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗ChRmine型ChR抗体。
(17)抗体又はその活性断片が標識されている、(16)に記載の抗ChRmine型チャネルロドプシン抗体。
(18)細胞表面上の高次構造を保持したチャネルロドプシンを検出する方法であって、試料を(11)~(17)に記載のいずれか一以上の抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片に接触させる工程、及び抗原抗体反応によって形成された前記抗チャネルロドプシン抗体と細胞表面上のチャネルロドプシンによる抗原抗体複合体を検出する工程を含む前記方法。
本発明の検出キットによれば、包含する抗ChR抗体により細胞表面上に存在するChRを、その立体構造を保持した非変性状態で特異的に検出することができる。
1.非変性チャネルロドプシン検出キット(非変性ChR検出キット)
1-1.概要
本発明の第1の態様は、非変性チャネルロドプシン検出キットである。本発明の検出キットは、ChRの細胞外ドメインに含まれる構造的エピトープを特異的に認識する抗ChR抗体を包含することを特徴とする。
本発明の検出キットによれば、これまで細胞内ドメインしか検出することができなかったChRを、立体構造を保持した天然に近い非変性状態で、特異的に検出することができる。それにより光遺伝学において、より特異性の高い免疫染色が可能となる。
1-1.概要
本発明の第1の態様は、非変性チャネルロドプシン検出キットである。本発明の検出キットは、ChRの細胞外ドメインに含まれる構造的エピトープを特異的に認識する抗ChR抗体を包含することを特徴とする。
本発明の検出キットによれば、これまで細胞内ドメインしか検出することができなかったChRを、立体構造を保持した天然に近い非変性状態で、特異的に検出することができる。それにより光遺伝学において、より特異性の高い免疫染色が可能となる。
1-2.用語の定義等
本発明で使用する以下の用語について説明をする。
1-2-1.チャネルロドプシン(ChR)
(1)ChRの構成
「チャネルロドプシン(channelrhodopsin)」(本明細書では、しばしば「ChR」と表記する)とは、ロドプシンスーパーファミリーに属する緑藻類由来の7回膜貫通型タンパク質として同定されたタンパク質である。N末端側の細胞外ドメイン(Nドメイン)、7回膜貫通領域、及びC末端側の細胞内ドメイン(Cドメイン)により構成されており、細胞膜上で二量体構造を形成している。
本発明で使用する以下の用語について説明をする。
1-2-1.チャネルロドプシン(ChR)
(1)ChRの構成
「チャネルロドプシン(channelrhodopsin)」(本明細書では、しばしば「ChR」と表記する)とは、ロドプシンスーパーファミリーに属する緑藻類由来の7回膜貫通型タンパク質として同定されたタンパク質である。N末端側の細胞外ドメイン(Nドメイン)、7回膜貫通領域、及びC末端側の細胞内ドメイン(Cドメイン)により構成されており、細胞膜上で二量体構造を形成している。
ChRは、青色光を吸収すると陽イオン(カチオン)、特にNa+を取り込む光駆動性陽イオンチャネルとして機能する。この機能は、チャネルロドプシンを動物の神経細胞で人為的に発現させた場合も保持される。それを利用して、チャネルロドプシンを発現する神経細胞に青色光を照射することによって、Na+が細胞内に流入し、脱分極が生じる結果、時間分解能及び空間分解能でその神経細胞を興奮させることが可能となる。それ故に、ChRはオプトジェネティクス(光遺伝学)分野において強力な生物学的ツールとして利用されている。
ただし、本明細書においてチャネルロドプシン(ChR)と表記した場合、特段の断りのない限り、広く「光駆動性イオンチャネル」として機能するタンパク質を意味するものとする。したがって、本来の光駆動性陽イオンチャネルとして機能するChRだけでなく、光駆動性陰イオン(アニオン)チャネルを包含するChRも包含する。本明細書において光駆動性イオンチャネルとしてのChRは、共通構造としてNドメイン、7回膜貫通領域、及びCドメインにより構成され、細胞膜上で二量体構造を形成することを特徴とする。吸収波長域は限定されず、短波長域の青色光だけでなく、長波長域の赤色光を吸収し、所定のイオンを取り込むチャネルとして機能すればよい。
(2)ChRの種類
本明細書のChRには、天然型ChRの他、その天然ChRに基づいて人為的に改変された人工型ChRが含まれる。
本明細書のChRには、天然型ChRの他、その天然ChRに基づいて人為的に改変された人工型ChRが含まれる。
限定はしないが、天然ChRの例として、Chlamydomonas reinhardtii由来の配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる光駆動性陽イオンチャネルChR1及び配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるChR2、海洋微生物のトランスクリプトームデータから同定され、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる長波長(赤色)吸収型光駆動性陽イオンチャネルであるChRmine、及びGuillardia thetaから単離され、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる光駆動性陰イオンチャネルであるGtACR1及び配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるGtACR2が挙げられる。
また、人工型ChRの具体例として、X線結晶構造解析用として改変されたChR1及びChR2のキメラChRであり、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるC1C2が挙げられる。さらに、そのC1C2のアミノ酸配列をベースに、吸収波長が長波長域にシフトするように改変された光駆動性陽イオンチャネルであって、配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるReaChR、配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるC1V1、配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるC1 Chrimson、配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるSwiChR++、及び配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるPhobosが挙げられる。同様にC1C2アミノ酸配列をベースに、光駆動性陰イオンチャネルとして改変された配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるiC1C2及び配列番号13で示されるアミノ酸配列からなるChloC、並びにiC1C2及びChloCのそれぞれのアミノ酸配列をベースに、さらに改良された配列番号14で示されるアミノ酸配列からなるiC++及び配列番号15で示されるアミノ酸配列からなるiChloCが挙げられる。そして、GtACR1のアミノ酸配列をベースに高いコンダクタンス及び高い陰イオン選択性を保持し、かつ速いキネティクスを有する光駆動性陰イオンチャネルであるFLASHが挙げられる。
本明細書では、ChR1及び/又はChR2に由来するChRを「C1C2型チャネルロドプシン(C1C2型ChR)」、ChRmineに由来するChRを「ChRmine型チャネルロドプシン(ChRmine型ChR)」、そしてGtACR1及び/又はGtACR2に由来するChRを「GtACR1型チャネルロドプシン(GtACR1型ChR)」と表記し、各ChRを分類する。C1C2型チャネルロドプシンには、例えば、C1C2、ReaChR、C1V1、C1 Chrimson、iC1C2、ChloC、iC++、SwiChR++、及びPhobosが含まれる。ChRmine型チャネルロドプシンには、ChRmineが含まれる。また、「GtACR1型チャネルロドプシン」には、GtACR1、GtACR2、及びFLASHが含まれる。
本発明のChRは前記ChRの活性変異体も包含する。本明細書において「活性変異体」とは、前記ChRのアミノ酸配列において、細胞外ドメインに含まれる構造的エピトープ以外の領域に1個若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されたもの、又は前記アミノ酸配列と90%以上、92%以上、94%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸同一性を有するものをいう。「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列が最大一致度となるように、必要に応じてギャップを導入して整列(アラインメント)させたときに、一方の全アミノ酸残基数に対する他方の同一アミノ酸残基数の割合(%)をいう。ここでいう「複数個」とは、2~10の整数、例えば、2~7、2~5、2~4、又は2~3の整数をいう。変異体の具体例としては、SNPs(一塩基多型)等の多型に基づく天然の変異体やスプライス変異体(スプライスバリアント)等が挙げられる。また、前記アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換であることが好ましい。保存的アミノ酸とは、同じアミノ酸群に分類されるアミノ酸どうしの関係をいう。前記アミノ酸群には、非極性アミノ酸群(グリシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、トリプトファン)、極性アミノ酸群(非極性アミノ酸以外のアミノ酸)、荷電アミノ酸群(酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)及び塩基性アミノ酸群(アルギニン、ヒスチジン、リジン))、非荷電アミノ酸群(荷電アミノ酸以外のアミノ酸)、芳香族アミノ酸群(フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン)、分岐鎖アミノ酸群(ロイシン、イソロイシン、バリン)、並びに脂肪族アミノ酸群(グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン)等が知られている。
本明細書において「非変性チャネルロドプシン」とは、化学的、及び/又は物理的処理による変性を受けていないチャネルロドプシンをいう。したがって、本明細書における非変性チャネルロドプシンは、天然構造と同一又はそれに極めて近いタンパク質の高次構造(二次構造、又は三次構造)を保持している。
1-2-2.抗チャネルロドプシン抗体(抗ChR抗体)
(1)抗ChR抗体の構成
本明細書において、「抗チャネルロドプシン抗体」(本明細書では、しばしば「抗ChR抗体」と表記する)とは、天然の立体構造を保持する非変性状態のChRにおける細胞外ドメイン(Nドメイン)に含まれる構造的エピトープを特異的に認識し、かつ結合することができる抗体である。したがって、本明細書における抗ChR抗体は、特段の断りのない限り、抗非変性型ChR細胞外ドメイン抗体を意味する。「特異的に認識し、かつ結合する」とは、他のエピトープとの交差反応性が無いか又は極めて弱いため、その構造的エピトープをNドメインに有していないChRに対して認識も結合もできないことをいう。
(1)抗ChR抗体の構成
本明細書において、「抗チャネルロドプシン抗体」(本明細書では、しばしば「抗ChR抗体」と表記する)とは、天然の立体構造を保持する非変性状態のChRにおける細胞外ドメイン(Nドメイン)に含まれる構造的エピトープを特異的に認識し、かつ結合することができる抗体である。したがって、本明細書における抗ChR抗体は、特段の断りのない限り、抗非変性型ChR細胞外ドメイン抗体を意味する。「特異的に認識し、かつ結合する」とは、他のエピトープとの交差反応性が無いか又は極めて弱いため、その構造的エピトープをNドメインに有していないChRに対して認識も結合もできないことをいう。
一方、共通の構造的エピトープを有するChRに対しては、抗ChR抗体はChRの種類が異なる場合であっても認識し、結合し得る。例えば、前述のC1C2型ChRに含まれるReaChR、C1V1、C1 Chrimson、iC1C2、ChloC、iC++、SwiChR++、及びPhobosは、C1C2をベースとする変異型C1C2のChRであり、いずれもNドメインに共通する構造的エピトープを包含し得る。そのようなエピトープの具体例として、配列番号16で示されるアミノ酸配列からなるエピトープが挙げられる。したがって、このエピトープを認識し、結合する抗体は、全てのC1C2型ChRを認識し、結合できる抗C1C2型ChR抗体となり得る。同様に、ChRmine型ChRのNドメインに共通する構造的エピトープを認識する抗体は抗ChRmine型ChR抗体となり得、またGtACR1型ChRのNドメインに共通する構造的エピトープを認識する抗体は抗GtACR1型ChR抗体となり得る。
(2)抗ChR抗体の種類
本明細書における、抗ChR抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、及び合成抗体のいずれであってもよい。均質の効果を得るためには、モノクローナル抗体、又はそれに基づく組換え抗体若しくは合成抗体が好ましい。
本明細書における、抗ChR抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、及び合成抗体のいずれであってもよい。均質の効果を得るためには、モノクローナル抗体、又はそれに基づく組換え抗体若しくは合成抗体が好ましい。
本明細書において「ポリクローナル抗体」とは、同一抗原の異なるエピトープを認識し結合する複数種の免疫グロブリン群をいう。
本明細書において「モノクローナル抗体」とは、単一免疫グロブリンのクローン群をいう。モノクローナル抗体は、単一細胞由来のハイブリドーマから入手することができ、同一ハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体は、互いに同一抗原の同一エピトープを認識し、それに結合することができる。
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、哺乳動物及び鳥を含むいずれかの動物由来とすることができる。例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ロバ、ヒツジ、ラクダ、ウマ、ニワトリ又はヒト等が挙げられる。
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を構成する典型的な免疫グロブリン分子は、重鎖及び軽鎖と呼ばれる2本のポリペプチド鎖一組がジスルフィド結合によって2組相互接続された四量体として構成される。重鎖は、N末端側の重鎖可変領域(H鎖V領域:以下、「VH」と表記する)とC末端側の重鎖定常領域(H鎖C領域:以下、「CH」と表記する)からなり、軽鎖は、N末端側の軽鎖可変領域(L鎖V領域:以下、「VL」と表記する)とC末端側の珪砂定常領域(L鎖C領域:以下、「CL」と表記する)からなる。免疫グロブリン分子内においてVL及びVHは、抗体特異性に関与する重要な領域であり、両者が相対してヘテロ二量体を形成することによって抗原結合部位を形成している。VH及びVLは、いずれも約110個のアミノ酸残基で構成されている。VH及びVLは、その内部に、抗原分子と相補的な立体構造を形成し、抗体の特異性を決定する相補性決定領域(Complementarity Determining Region:以下、「CDR」と表記する)を3つ(すなわちCDR1、CDR2、及びCDR3)と、可変領域の骨格構造として機能するフレームワーク領域(Framework Region:以下、「FR」と表記する)を4つ(すなわちFR1、FR2、FR3、及びFR4)有している(Kabat E.A., et al., 1991, Sequences of proteins of immunological interest, Vol. 1, eds. 5, NIH publication)。前記3つのCDRと4つのFRは、可変領域においてN末端からC末端方向にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配列されている。また、本明細書ではVHにおける3つのCDRをVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3、並びにVLにおける3つのCDRをVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3と表記する。
抗体がポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の場合、免疫グロブリン分子には、IgG、IgM、IgA、IgE、及びIgDの各クラスが知られているが、本発明の抗体は、いずれのクラスであってもよい。好ましくはIgGである。
本明細書において「組換え抗体」とは、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は多重特異性抗体を含む。「キメラ抗体」とは、少なくとも2種の異なる動物由来の抗体のアミノ酸配列を組み合わせて作製される抗体で、具体的には、ある抗体の可変領域を他の抗体の可変領域で置換した抗体をいう。例えば、任意のヒト抗体における可変領域をC1C2のNドメインに特異的に結合するマウスモノクローナル抗体の可変領域と置換して、可変領域がマウス抗体由来、定常領域がヒト抗体由来となった抗C1C2抗体が該当する。「ヒト化抗体」とは、ヒト以外の哺乳動物、例えば、上記C1C2と特異的に結合するマウス抗C1C2抗体において、可変領域であるCDRs(CDR1、CDR2、CDR3)をヒトモノクローナル抗体のCDRとを置換したグラフト抗体が該当する。「多重特異性抗体」は、多価抗体、すなわち抗原結合部位を一分子内に複数有する抗体において、それぞれの抗原結合部位が異なるエピトープと結合する抗体をいう。例えば、IgGのように2つの抗原結合部位を有する抗体であれば、それぞれの抗原結合部位が第1態様に記載の同一の又は異なる炎症性筋疾患鑑別マーカーと特異的に結合する二重特異性抗体(Bispecific抗体)が挙げられる。
本明細書において「合成抗体」とは、化学的方法又は組換えDNA法を用いることによって合成した人工抗体をいう。例えば、適当な長さと配列を有するリンカーペプチド等を介して、特定の抗体の一以上のVL及び一以上のVHを人工的に連結させた一量体ポリペプチド分子、又はその多量体ポリペプチドが該当する。このようなポリペプチドの具体例としては、一本鎖Fv(scFv :single chain Fragment of variable region)(Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995, Pierce Chemical Co., Rockford, IL参照)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)又はテトラボディ(tetrabody)等が挙げられる。
本明細書において抗体の「活性断片」とは、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の部分断片であって、該抗体が有する抗原特異的結合活性と実質的に同等の活性を有するポリペプチド鎖又はその複合体をいう。例えば、抗原結合部位を少なくとも1つ包含する抗体部分、すなわち、少なくとも1組のVLとVHを有するポリペプチド鎖、又はその複合体が該当する。具体例としては、免疫グロブリンを様々なペプチダーゼで切断することによって生じる多数の十分に特徴付けられた抗体断片等が挙げられる。
(3)抗ChR抗体の標識又は修飾
本明細書の抗ChR抗体又はその活性断片は、標識されていてもよい。標識は、抗ChR抗体又はその活性断片の検出に資する。
本明細書の抗ChR抗体又はその活性断片は、標識されていてもよい。標識は、抗ChR抗体又はその活性断片の検出に資する。
抗ChR抗体又はその活性断片の標識は、抗ChR抗体等のアミノ酸を標識物質で直接的又は間接的に標識することができる。直接的な標識には、抗ChR抗体又はその活性断片に標識物質を結合させる標識方法、標識ペプチドとの融合タンパク質として発現させる標識方法が挙げられる。間接的な標識には、抗ChR抗体又はその活性断片のアミノ酸配列や立体構造を認識して結合する標識化抗体(二次抗体)や標識化アプタマー等を介した標識方法が挙げられる。
抗体標識に用いる標識物質には、例えば、放射性同位元素、蛍光物質、酵素、又は結合性低分子化合物が挙げられる。
「放射性同位元素」とは、質量数が異なる同位元素のうち、放射線を放出する元素をいう。例えば35S等が挙げられる。
「蛍光物質」とは、特定波長の励起光を吸収することで励起状態となり、元の基底状態に戻る際に蛍光を発する性質を有する物質をいう。蛍光色素、及び蛍光タンパク質等が知られているが限定はしない。
「蛍光色素」には、例えば、FITC、Texas、Texas Red(登録商標)、Alexa Flour 405、Alexa Flour 488、Alexa Flour 647、Alexa Flour 700、Pacific Blue、DyLight 405、DyLight 550、DyLight 650、PE-Cy5(phycoerythrin-cyanin5)、PE-Cy7 (phycoerythrin -cyanin 7)、PE(phycoerythrin)、PerCP(peridinin chlorphyll protein)、PerCP-Cy5.5(peridinin chlorphyll protein-cyanin5.5)、cy3、cy5、cy7、FAM、HEX、VIC(登録商標)、JOE、ROX、TET、Bodipy493、NBD、TAMRA、Quasar(登録商標)670、Quasar(登録商標)705、APC(Allophycocyanin)、フルオレサミン若しくはその誘導体、フルオレセイン若しくはその誘導体、アゾ類、又はローダミン若しくはその誘導体、クマリン若しくはその誘導体、ピレン若しくはその誘導体、シアニン若しくはその誘導体等が挙げられる。
「蛍光タンパク質」には、例えば、GFPが挙げられる。
「酵素」には、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase:HRP)、アルカリフォスファターゼ(Alkaline Phosphatase: ALP)、グルコースオキシダーゼ(Glucose oxidase:GOx)等が挙げられる。
「酵素」には、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase:HRP)、アルカリフォスファターゼ(Alkaline Phosphatase: ALP)、グルコースオキシダーゼ(Glucose oxidase:GOx)等が挙げられる。
本明細書において「結合性低分子化合物」とは、特定の結合性タンパク質と新和性に基づいて結合する低分子化合物をいう。その具体例として、ビタミンB7として知られるビオチンが挙げられる。ビオチンは、卵白由来のタンパク質であるアビジン、その誘導体であるストレプトアビジン、又はニュートラアビジンと極めて高い親和性を有し、互いに強固に結合する。この性質を利用して、抗体をビオチン標識しておくことで、アビジン標識した他の標識物質(蛍光色素等)が結合し、抗体標識することができる。
標識方法は、それぞれの標識に合わせた当該分野で公知の方法を用いて標識すればよい。標識位置は、標識物質の特性や使用目的に応じて適宜定めればよい。例えば、抗体に酵素等の標識物質を結合させて標識化する場合、抗体のアミノ基(NH2基)に結合させてもよいし、チオール基(SH基)に結合させてもよい。
本明細書の抗ChR抗体又はその活性断片は、修飾されていてもよい。修飾は抗ChR抗体又はその活性断片がChRと特異的結合活性を有する際に必要な機能上の修飾(を含む。例えば、抗体配列内の一以上のグリコシル化部位を変更すればよい。より具体的には、例えば、FR内の一以上のグリコシル化部位を構成するアミノ酸配列に一以上のアミノ酸置換を導入して該グリコシル化部位を除去することにより、その部位のグリコシル化を喪失させることができる。このような脱グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させる上で有効である(米国特許第5714350号、及び同第6350861号)。
(4)抗ChR抗体の作製
本明細書において、非変性ChRに特異的に結合する抗ChR抗体の作製方法は、原則として抗体作製の常法に従えばよい。ただし、本明細書の抗ChR抗体又はその活性断片は、生きた細胞の表面に提示されているChRの天然の立体構造を認識し、かつ非常に高い親和性及び特異性を有する抗体である。膜タンパク質を抗原とする場合、精製したタンパク質を担体表面に固相化する際に、従来技術では界面活性剤存在下での操作が必要であった。そのため、抗原を担体表面に効率的に固相化することができないか、あるいは固相化できたとしても界面活性剤を含んだバッファーで洗浄する操作を繰り返す過程で膜タンパク質が変性するため、天然の立体構造を認識する抗体を取得することは困難であった。
本明細書において、非変性ChRに特異的に結合する抗ChR抗体の作製方法は、原則として抗体作製の常法に従えばよい。ただし、本明細書の抗ChR抗体又はその活性断片は、生きた細胞の表面に提示されているChRの天然の立体構造を認識し、かつ非常に高い親和性及び特異性を有する抗体である。膜タンパク質を抗原とする場合、精製したタンパク質を担体表面に固相化する際に、従来技術では界面活性剤存在下での操作が必要であった。そのため、抗原を担体表面に効率的に固相化することができないか、あるいは固相化できたとしても界面活性剤を含んだバッファーで洗浄する操作を繰り返す過程で膜タンパク質が変性するため、天然の立体構造を認識する抗体を取得することは困難であった。
固相担体表面上での変性を防ぎ、立体構造が維持された状態のChRに対する抗体を作製する方法として、例えばプロテオリポソームを用いる方法が挙げられる。この方法では脂質と抗原であるChRを混合してChRを担持するプロテオリポソーム(ChRリポソーム)を形成させる。リポソーム上でChRは、天然の立体構造を有する正しいフォールディングで再構成される。続いて、得られた非変性ChRリポソームを抗原としてマウス等に常法により免疫する。その後、免疫した動物から抗体産生細胞を採取し、従来技術によってミエローマ細胞と細胞融合させてハイブリドーマを作製する。次に、ビオチン化した脂質とChRを混合してビオチン化ChRリポソームを形成後、プレートに固相化したストレプトアビジンを介してビオチン化非変性ChRリポソームをプレートに固定する。このプレートを用いて、各ハイブリドーマから得られる抗ChRモノクローナル抗体に対してリポソームELISAを行う。このスクリーニングで得られた陽性抗体を、さらに、ChRリポソーム及び変性ChRを用いたELISAを行い、両社の結果の差分からChRの天然の立体構造を特異的に認識する抗体を選択することで、目的の非変性ChRに特異的に結合する抗ChR抗体を得ることができる。
1-3.検出キットの構成
本態様の非変性ChR検出キットは、少なくとも1つの抗ChR抗体及び/又はその活性断片を必須の構成要素として、その他の選択的構成要素と共に包含する。以下、各構成要素について説明する。
本態様の非変性ChR検出キットは、少なくとも1つの抗ChR抗体及び/又はその活性断片を必須の構成要素として、その他の選択的構成要素と共に包含する。以下、各構成要素について説明する。
(1)抗チャネルロドプシン抗体(抗ChR抗体)及び/又はその活性断片
本態様の非変性ChR検出キットは、抗ChR抗体及び/又はその活性断片(本明細書では、しばしば「抗ChR抗体等」と表記する)を必須の構成要件として含む。本検出キットに含まれる抗ChR抗体等の具体的な構成及び特徴については、前述の「1-2-2.抗チャネルロドプシン抗体(抗ChR抗体)」の章に記載した通りなので、ここでの説明は省略する。
本態様の非変性ChR検出キットは、抗ChR抗体及び/又はその活性断片(本明細書では、しばしば「抗ChR抗体等」と表記する)を必須の構成要件として含む。本検出キットに含まれる抗ChR抗体等の具体的な構成及び特徴については、前述の「1-2-2.抗チャネルロドプシン抗体(抗ChR抗体)」の章に記載した通りなので、ここでの説明は省略する。
本検出キットに含まれる抗ChR抗体の具体例として、第2態様に記載の抗C1C2型ChR抗体や第3態様に記載の抗ChRmine型ChR抗体が挙げられる。
本検出キットは、複数種の抗ChR抗体等を含むことができる。この場合、異なる抗ChR抗体等は、同一のChRを認識する抗体であってもよいし、それぞれが異なるChRを認識する抗体であってもよい。
(2)その他の構成要素
本態様の非変性ChR検出キットは、前記抗ChR抗体に加えて、その他の構成要素を選択的要素として含むことができる。
本態様の非変性ChR検出キットは、前記抗ChR抗体に加えて、その他の構成要素を選択的要素として含むことができる。
その他の構成要素は、非変性ChRを検出する上で必要又は有用な様々なものを包含し得るが、具体的な構成要素については、本検出キットの用途、検出するChRの種類、抗ChR抗体等の種類等に応じて適宜定めればよく、その包含数や種類については、限定はしない。一例として、標識二次抗体、標識物質、標識の検出に必要な酵素基質、洗浄バッファー、試料希釈液、反応停止液、使用説明書等を含むことができる。
標識二次抗体は、本発明の抗ChR抗体等を認識し、結合する抗体で、自身が標識されている。標識二次抗体には、限定はしないが酵素標識抗体、蛍光標識抗体等を挙げられる。
標識物質には、例えば、抗ChR抗体等がビオチンで標識されている場合、アビジン標識された蛍光物質等が挙げられる。
標識の検出に必要な酵素基質の例として、前記酵素標識抗体が西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識された抗体であれば、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)等のHRP発色基質が挙げられる。
1-4.検出キットの用途
本発明の非変性ChR検出キットの用途は、ChR検出用としての使用であれば特に限定はしない。例えば、ウェスタンブロットやELISA等での使用を含む。ただし、本発明の非変性ChR検出キットは、従来法では困難であった細胞表面上のChRの高次構造を保持した状態で検出することができる。したがって、その特性を活用し、非変性ChRの検出が必要とされる用途での使用が好適である。例えば、免疫組織化学染色用又は構造解析用としての使用が挙げられる。その他、フローサイトメトリーでの細胞選別用としても使用であってもよい。
上記各検出用途における具体的な方法については、いずれも当該分野で公知の常法に準じて行えばよい。
本発明の非変性ChR検出キットの用途は、ChR検出用としての使用であれば特に限定はしない。例えば、ウェスタンブロットやELISA等での使用を含む。ただし、本発明の非変性ChR検出キットは、従来法では困難であった細胞表面上のChRの高次構造を保持した状態で検出することができる。したがって、その特性を活用し、非変性ChRの検出が必要とされる用途での使用が好適である。例えば、免疫組織化学染色用又は構造解析用としての使用が挙げられる。その他、フローサイトメトリーでの細胞選別用としても使用であってもよい。
上記各検出用途における具体的な方法については、いずれも当該分野で公知の常法に準じて行えばよい。
2.抗C1C2型チャネルロドプシン抗体(抗C1C2型ChR抗体)又はその活性断片
2-1.概要
本発明の第2の態様は抗C1C2型ChR抗体又はその活性断片である。本発明の抗体は、C1C2型ChRのNドメインに含まれる配列番号16で示される構造的エピトープを特異的に認識し、結合する抗体又はその活性断片である。
本発明の抗C1C2型ChR抗体又はその活性断片によれば、C1C2型ChRを、立体構造を保持した天然に近い状態で特異的に検出することができる。それによって光遺伝学における特異性の高い免疫染色が可能となる他、C1C2型ChRのより具体的な構造解析が可能となる。
2-1.概要
本発明の第2の態様は抗C1C2型ChR抗体又はその活性断片である。本発明の抗体は、C1C2型ChRのNドメインに含まれる配列番号16で示される構造的エピトープを特異的に認識し、結合する抗体又はその活性断片である。
本発明の抗C1C2型ChR抗体又はその活性断片によれば、C1C2型ChRを、立体構造を保持した天然に近い状態で特異的に検出することができる。それによって光遺伝学における特異性の高い免疫染色が可能となる他、C1C2型ChRのより具体的な構造解析が可能となる。
2-2.構成
本態様の抗C1C2型ChR抗体又はその活性断片の基本構成は、前記第1態様の「1-2-1.チャネルロドプシン(ChR)」の章に記載の構成に準ずる。
本態様の抗C1C2型ChR抗体又はその活性断片の基本構成は、前記第1態様の「1-2-1.チャネルロドプシン(ChR)」の章に記載の構成に準ずる。
本態様の抗C1C2型ChR抗体又はその活性断片は、Nドメインに配列番号16で示す構造的エピトープを有するC1C2型ChRを特異的に認識し、結合することを特徴とする。したがって、本態様の抗C1C2型ChR抗体又はその活性断片の抗原には、Nドメインに配列番号16で示す構造的エピトープを有する全てのC1C2型ChRが該当する。例えば、C1C2、ReaChR、C1V1、C1 Chrimson、iC++、SwiChR++、及びPhobosが挙げられる。
本態様の抗C1C2型ChR抗体の具体的な例として、可変領域に特定のCDR配列を含む以下の3種の抗体が挙げられる。
本態様の抗C1C2型ChR抗体の具体的な例として、可変領域に特定のCDR配列を含む以下の3種の抗体が挙げられる。
(1)重鎖可変領域に含まれるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号17、18及び19で示されるアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域に含まれるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号20、21及び22で示されるアミノ酸配列からなる抗C1C2型ChR抗体
(2)重鎖可変領域に含まれるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号23、24及び25で示されるアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域に含まれるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号26、27及び28で示されるアミノ酸配列からなる抗C1C2型ChR抗体
(3)重鎖可変領域に含まれるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号29、30及び31で示されるアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域に含まれるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号32、33及び34で示されるアミノ酸配列からなる抗C1C2型ChR抗体
(2)重鎖可変領域に含まれるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号23、24及び25で示されるアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域に含まれるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号26、27及び28で示されるアミノ酸配列からなる抗C1C2型ChR抗体
(3)重鎖可変領域に含まれるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号29、30及び31で示されるアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域に含まれるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号32、33及び34で示されるアミノ酸配列からなる抗C1C2型ChR抗体
3.抗ChRmine型チャネルロドプシン抗体(抗ChRmine型ChR抗体)又はその活性断片
3-1.概要
本発明の第3の態様は抗ChRmine型ChR抗体又はその活性断片である。本発明の抗体は、ChRmine型ChRのNドメインに含まれる構造的エピトープを特異的に認識し、結合する抗体又はその活性断片である。
本発明の抗ChRmine型ChR抗体又はその活性断片によれば、ChRmine型ChRを、立体構造を保持した天然に近い状態で特異的に検出することができる。それによって光遺伝学における特異性の高い免疫染色が可能となる他、ChRmine型ChRのより具体的な構造解析が可能となる。
3-1.概要
本発明の第3の態様は抗ChRmine型ChR抗体又はその活性断片である。本発明の抗体は、ChRmine型ChRのNドメインに含まれる構造的エピトープを特異的に認識し、結合する抗体又はその活性断片である。
本発明の抗ChRmine型ChR抗体又はその活性断片によれば、ChRmine型ChRを、立体構造を保持した天然に近い状態で特異的に検出することができる。それによって光遺伝学における特異性の高い免疫染色が可能となる他、ChRmine型ChRのより具体的な構造解析が可能となる。
3-2.構成
本態様の抗ChRmine型ChR抗体又はその活性断片の基本構成は、前記第1態様の「1-2-1.チャネルロドプシン(ChR)」の章に記載の構成に準ずる。
本態様の抗ChRmine型ChR抗体又はその活性断片の基本構成は、前記第1態様の「1-2-1.チャネルロドプシン(ChR)」の章に記載の構成に準ずる。
本態様の抗ChRmine型ChR抗体又はその活性断片は、Nドメインに存在するChRmine型ChRに特異的な構造的エピトープを認識し、結合することを特徴とする。本態様の抗ChRmine型ChR抗体の具体的な例として、ChRmineが挙げられる。
本態様の抗ChRmine型ChR抗体の具体的な例として、可変領域に特定のCDR配列を含む以下の2種の抗体が挙げられる。
本態様の抗ChRmine型ChR抗体の具体的な例として、可変領域に特定のCDR配列を含む以下の2種の抗体が挙げられる。
(1)重鎖可変領域に含まれるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号35、36及び37で示されるアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域に含まれるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号38、39及び40で示されるアミノ酸配列からなりChRmine型ChRの細胞外ドメインに結合する抗ChRmine型ChR抗体
(2)重鎖可変領域に含まれるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号41、42及び43で示されるアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域に含まれるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号44、45及び46で示されるアミノ酸配列からなりChRmine型ChRの細胞内ドメインに結合する抗ChRmine型ChR抗体
(2)重鎖可変領域に含まれるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号41、42及び43で示されるアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域に含まれるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号44、45及び46で示されるアミノ酸配列からなりChRmine型ChRの細胞内ドメインに結合する抗ChRmine型ChR抗体
4.チャネルロドプシン検出方法(ChR検出方法)
4-1.概要
本発明の第4の態様は、細胞表面上に存在するChRを、その高次構造を保持した状態で検出する方法である。
4-1.概要
本発明の第4の態様は、細胞表面上に存在するChRを、その高次構造を保持した状態で検出する方法である。
4-2.方法
本態様では、第2態様に記載の抗C1C2型ChR抗体及び/又はその活性断片、第3態様に記載の抗ChRmine型ChR抗体及び/又はその活性断片を用いて、細胞表面上ChRを検出する方法を例に挙げて具体的に説明するが、それに限定されず、それぞれのChRのNドメインに存在する構造的エピトープを特異的に認識し、結合できる抗体であれば、C1C2型ChR又はChRmine型ChRに限られず、あらゆるChRが検出対象となり得る。
本態様のChR検出方法は、接触工程、及び検出工程を必須の工程として含む。以下、それぞれの工程について説明をする。
本態様では、第2態様に記載の抗C1C2型ChR抗体及び/又はその活性断片、第3態様に記載の抗ChRmine型ChR抗体及び/又はその活性断片を用いて、細胞表面上ChRを検出する方法を例に挙げて具体的に説明するが、それに限定されず、それぞれのChRのNドメインに存在する構造的エピトープを特異的に認識し、結合できる抗体であれば、C1C2型ChR又はChRmine型ChRに限られず、あらゆるChRが検出対象となり得る。
本態様のChR検出方法は、接触工程、及び検出工程を必須の工程として含む。以下、それぞれの工程について説明をする。
4-2-1.接触工程
「接触工程」は、試料を抗ChR抗体に接触させる工程である。本工程によって、ChRと抗ChR抗体との抗原抗体反応が生じ得る。
「接触工程」は、試料を抗ChR抗体に接触させる工程である。本工程によって、ChRと抗ChR抗体との抗原抗体反応が生じ得る。
本発明において「試料」とは、限定はしないが、生物学的試料である。特に、天然で、又は人為的操作によって異所的にChRを発現している、又は発現し得る生物学的試料が好ましい。例えば、ChRを発現させた神経細胞等が挙げられる。
本工程で使用する抗ChR抗体は、特に限定はしない。検出すべき目的のChRにおけるNドメインに含まれる構造的エピトープを認識し、結合できる抗ChR抗体であればよい。例えば、C1C2型ChRを検出する場合、抗C1C2型ChR抗体を用いればよい。C1C2型ChRのNドメインに含まれる構造的エピトープを認識する抗C1C2型ChR抗体としては、例えば、配列番号16で示すアミノ酸配列からなる構造的エピトープを認識する抗C1C2型ChR抗体が挙げられる。より具体的には、前記第2態様の「2-2.構成」の章において(1)~(3)に記載した特定のCDR配列を含む抗C1C2型ChR抗体を例示できる。また、抗ChRmine型ChR抗体であってもよい。より具体的には、前記第3態様の「3-2.構成」の章において(1)又は(2)に記載した特定のCDR配列を含む抗ChRmine型ChR抗体を例示できる。
本明細書において「接触」とは、二以上の対象物が物理的に接することをいう。本工程では、試料と抗ChR抗体、より具体的には試料中に存在し得るChRとそのNドメインに含まれる構造的エピトープを特異的に認識し、結合し得る抗ChR抗体が互いに接することをいう。本工程は、試料と抗ChR抗体が接近し、ChRとそのNドメインに含まれる構造的エピトープと抗ChR抗体が結合可能な状態にすることをいう。
接触工程は、限定はしないが、通常、試料と抗ChR抗体を同一液体中、例えば同一溶液(培地、バッファを含む)中で混合することで達成し得る。接触機会が増加するように、本工程期間中、溶液を振盪又は撹拌してもよい。
本工程における温度は特に限定はしないが、氷点下では反応速度が遅延することや混合溶液の凍結を生じ、また70℃を超える高温下では資料や抗ChR抗体が変性する可能性があるため、10~50℃、15~45℃、18~40℃、又は20~37℃が好ましい。
本工程での処理時間は、限定はしないが、通常、10分~2時間、20分~1時間半、又は30分~1時間でよい。
4-2-2.検出工程
「検出工程」とは、前記検出工程における抗原抗体反応によって形成された抗ChR抗体と細胞表面上のChRによる抗原抗体複合体を検出する工程である。
「検出工程」とは、前記検出工程における抗原抗体反応によって形成された抗ChR抗体と細胞表面上のChRによる抗原抗体複合体を検出する工程である。
検出すべきChRは前記接触工程において、使用した抗ChR抗体が特異的に認識し、結合する構造的エピトープをNドメインに含むChRとなる。例えば、接触工程で抗C1C2型ChR抗体を使用した場合、本工程で検出する対象は、抗C1C2型ChR抗体とC1C2型ChRとの複合体となる。
抗原抗体複合体の検出方法は、該複合体を免疫学的に検出する公知の方法を利用することができる。そのような免疫学的検出法には、例えば、免疫組織化学法(免疫染色法)、酵素免疫測定法(ELISA法、EIA法を含む)、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法、放射免疫測定法(RIA法)、表面プラズモン共鳴法(SPR法)、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法、免疫比濁法、ラテックス凝集免疫測定法、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応、粒子凝集反応法、金コロイド法、キャピラリー電気泳動法、ウェスタンブロット法が挙げられる。いずれの方法も、当該分野で周知された方法であり、いずれも検出には一般的な常法で行えばよい。
本発明の場合、検出に用いる抗ChR抗体(例えば、抗C1C2型ChR抗体)が、、従来の抗ChR抗体では検出し得なかった細胞表面上に存在するChR(例えば、C1C2型ChR)について、その高次構造を変性することなく、機能的状態を保持したままで検出することができる。それ故に、その利点を活用できる免疫組織化学法は特に好ましい検出方法である。
<実施例1:抗C1C2型抗体の作製>
(目的)
C1C2型ChRの細胞外ドメインを特異的に認識し、C1C2型ChRを非変性状態で検出可能な抗体を作製する。
(目的)
C1C2型ChRの細胞外ドメインを特異的に認識し、C1C2型ChRを非変性状態で検出可能な抗体を作製する。
(方法)
(1)免疫原の調製
ChRをフォスファチジルコリン及びlipid Aと共に再構成し、得られたプロテオリポソームを免疫原として用いた。
まず、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるC1C2型ChRをコードする塩基配列を包含する発現ベクターを昆虫細胞に導入し、C1C2型ChRを発現させた後、抽出及び精製を行った。次に、0.4~0.8%のコール酸ナトリウムを含むPBSで可溶化した0.5mg/mLのlipid A(Sigma社)と5mg/mLの鶏卵由来フォスファチジルコリン(Avanti社)の混合溶液に、前記C1C2型ChRを最終濃度1mg/mLとなるように加え、氷上で静置した。続いて、試料溶液1mLに対して200mgのBio-Beadsを加えて撹拌し、その後Bio-Beadsを取り除いて、再構成されたC1C2型ChRリポソームを得た。
(1)免疫原の調製
ChRをフォスファチジルコリン及びlipid Aと共に再構成し、得られたプロテオリポソームを免疫原として用いた。
まず、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるC1C2型ChRをコードする塩基配列を包含する発現ベクターを昆虫細胞に導入し、C1C2型ChRを発現させた後、抽出及び精製を行った。次に、0.4~0.8%のコール酸ナトリウムを含むPBSで可溶化した0.5mg/mLのlipid A(Sigma社)と5mg/mLの鶏卵由来フォスファチジルコリン(Avanti社)の混合溶液に、前記C1C2型ChRを最終濃度1mg/mLとなるように加え、氷上で静置した。続いて、試料溶液1mLに対して200mgのBio-Beadsを加えて撹拌し、その後Bio-Beadsを取り除いて、再構成されたC1C2型ChRリポソームを得た。
(2)免疫原による宿主動物への免疫
前記C1C2型ChRリポソームを2匹のBalb/cマウス腹腔内に2週間おきに3回投与した。マウスの血中抗体価が上昇したことを、後述のリポソームELISAにより確認した。
前記C1C2型ChRリポソームを2匹のBalb/cマウス腹腔内に2週間おきに3回投与した。マウスの血中抗体価が上昇したことを、後述のリポソームELISAにより確認した。
(3)抗体産生細胞の回収とハイブリドーマの作製
最後の免疫から1週間後、マウスの脾臓を摘出し、脾臓細胞を抗体産生細胞として採取した。続いて、その脾臓細胞を一般的なPEG法によりミエローマ細胞と細胞融合してハイブリドーマを作製した。
最後の免疫から1週間後、マウスの脾臓を摘出し、脾臓細胞を抗体産生細胞として採取した。続いて、その脾臓細胞を一般的なPEG法によりミエローマ細胞と細胞融合してハイブリドーマを作製した。
(4)抗C1C2型ChRモノクローナル抗体の選抜
(a)ビオチン修飾C1C2型ChRリポソームの作製
0.4~0.8%コール酸ナトリウムを含むPBSにより可溶化した0.025mg/mL の16:0 biotinyl CAP-PE(Avanti社)と5mg/mLの鶏卵由来フォスファチジルコリンの混合溶液に、精製したC1C2型ChRを最終濃度0.5mg/mLとなるように加えて氷上で静置した。続いて、試料溶液1mLに対し200mgのBio-Beadsを加えて撹拌し、その後Bio-Beadsを除去してビオチン修飾C1C2型ChRリポソームを得た。
(a)ビオチン修飾C1C2型ChRリポソームの作製
0.4~0.8%コール酸ナトリウムを含むPBSにより可溶化した0.025mg/mL の16:0 biotinyl CAP-PE(Avanti社)と5mg/mLの鶏卵由来フォスファチジルコリンの混合溶液に、精製したC1C2型ChRを最終濃度0.5mg/mLとなるように加えて氷上で静置した。続いて、試料溶液1mLに対し200mgのBio-Beadsを加えて撹拌し、その後Bio-Beadsを除去してビオチン修飾C1C2型ChRリポソームを得た。
(b)ビオチン化C1C2型ChRリポソームを用いたリポソームELISA
立体構造認識抗体を単離するためビオチン化C1C2型ChRリポソームを用いてリポソームELISA法を行った。C1C2型ChRビオチン化リポソームをPBSで0.5mg/mLに希釈後、Immobilizer streptavidin coat plateへ50μL添加し、4℃で一晩静置して固相化した。PBSで3回洗浄後、1%BSAを含むPBSでブロッキングを行った。PBSで3回洗浄後、適宜希釈した検体(マウス血清又はハイブリドーマ培養上清)50μLを添加して、4℃で1時間インキュベートした。試料を除去してPBSにより洗浄後、二次抗体として1%BSA-PBSにより希釈したHRP F(ab)2 goat anti-mouse IgG Fcγ(Jackson Immu. 115-036-071) 50μLを加え、1時間室温で静置した。PBSによる洗浄後、TMBを50μL加えて10分反応させた後、50μLの2M H2SO4を加えて反応を停止させた。次いで分光光度計により450nmの吸光度を測定した。
立体構造認識抗体を単離するためビオチン化C1C2型ChRリポソームを用いてリポソームELISA法を行った。C1C2型ChRビオチン化リポソームをPBSで0.5mg/mLに希釈後、Immobilizer streptavidin coat plateへ50μL添加し、4℃で一晩静置して固相化した。PBSで3回洗浄後、1%BSAを含むPBSでブロッキングを行った。PBSで3回洗浄後、適宜希釈した検体(マウス血清又はハイブリドーマ培養上清)50μLを添加して、4℃で1時間インキュベートした。試料を除去してPBSにより洗浄後、二次抗体として1%BSA-PBSにより希釈したHRP F(ab)2 goat anti-mouse IgG Fcγ(Jackson Immu. 115-036-071) 50μLを加え、1時間室温で静置した。PBSによる洗浄後、TMBを50μL加えて10分反応させた後、50μLの2M H2SO4を加えて反応を停止させた。次いで分光光度計により450nmの吸光度を測定した。
(c)変性C1C2型ChRに対するELISA
立体構造認識抗体の単離において、配列認識抗体を選別するため変性C1C2型ChRに対するELISAを行った。C1C2型ChR溶液を1%SDS及び0.05M DTTを含むバッファー中にて終濃度1mg/mLとなるように希釈し、1時間室温で静置した。この変性C1C2型ChRをPBSで希釈して終濃度10 μg/mLとした。これをMaxisorp F96 plateに50μLずつ分注し、4℃で一晩静置して固相化した。PBSで3回洗浄後、1%BSAを含むPBSを加えてブロッキングを行った。PBSで3回洗浄後、適宜希釈した検体(マウス血清又はハイブリドーマ培養上清)50μLを添加して4℃で1時間インキュベートした。試料を除去してPBSにより洗浄後、二次抗体として1%BSA-PBSにより60,000倍希釈したHRP F(ab)2 goat anti-mouse IgG Fcγ(Jackson Immu. 115-036-071) 50μLを加え1時間室温で静置した。PBSによる洗浄後、TMBを50μL加えて10分反応させた後、50μLの2M H2SO4を加えて反応を停止させた。次いで分光光度計により450nmの吸光度を測定した。
立体構造認識抗体の単離において、配列認識抗体を選別するため変性C1C2型ChRに対するELISAを行った。C1C2型ChR溶液を1%SDS及び0.05M DTTを含むバッファー中にて終濃度1mg/mLとなるように希釈し、1時間室温で静置した。この変性C1C2型ChRをPBSで希釈して終濃度10 μg/mLとした。これをMaxisorp F96 plateに50μLずつ分注し、4℃で一晩静置して固相化した。PBSで3回洗浄後、1%BSAを含むPBSを加えてブロッキングを行った。PBSで3回洗浄後、適宜希釈した検体(マウス血清又はハイブリドーマ培養上清)50μLを添加して4℃で1時間インキュベートした。試料を除去してPBSにより洗浄後、二次抗体として1%BSA-PBSにより60,000倍希釈したHRP F(ab)2 goat anti-mouse IgG Fcγ(Jackson Immu. 115-036-071) 50μLを加え1時間室温で静置した。PBSによる洗浄後、TMBを50μL加えて10分反応させた後、50μLの2M H2SO4を加えて反応を停止させた。次いで分光光度計により450nmの吸光度を測定した。
(d)立体構造認識抗体の選別・モノクローン化
一次スクリーニング:作製したハイブリドーマの培養上清(約1000サンプル)から前記(b)に記載のリポソームELISAを用いて陽性候補クローンをとして単離した。
二次スクリーニング:一次スクリーニングで単離したクローンに対してリポソームELISAと前記(c)に記載の変性膜蛋白質ELISAを実施し、リポソームELISAにおいて高値を示し、変性膜蛋白質ELISAにおいては低値となるクローンを陽性クローンをとして単離した。この陽性クローンの産生ハイブリドーマを、目的とするC1C2型ChRの立体構造認識抗体を産生するモノクローナル抗体産生株として樹立した。
一次スクリーニング:作製したハイブリドーマの培養上清(約1000サンプル)から前記(b)に記載のリポソームELISAを用いて陽性候補クローンをとして単離した。
二次スクリーニング:一次スクリーニングで単離したクローンに対してリポソームELISAと前記(c)に記載の変性膜蛋白質ELISAを実施し、リポソームELISAにおいて高値を示し、変性膜蛋白質ELISAにおいては低値となるクローンを陽性クローンをとして単離した。この陽性クローンの産生ハイブリドーマを、目的とするC1C2型ChRの立体構造認識抗体を産生するモノクローナル抗体産生株として樹立した。
(5)抗C1C2型ChRモノクローナル抗体の配列決定
陽性ハイブリドーマ3株(YN6317-2-6、YN6327-8、及びYN6354-04)から全RNAを抽出し、可変領域特異的配列を有する混合プライマーを用いて抗体遺伝子の可変領域(VH及びVL)をコードするcDNAをRT-PCRにより増幅した。PCR産物を一般的なクローニングベクターに挿入して、DNAシーケンス解析を行った。シークエンス後の塩基配列を翻訳し、得られたアミノ酸配列からKabatナンバリング(Kabat E.A., et al, 1991, Sequences of proteins of immunological interest, Vol.1, eds.5, NIH publication)に基づいて各CDR配列を抽出した。
陽性ハイブリドーマ3株(YN6317-2-6、YN6327-8、及びYN6354-04)から全RNAを抽出し、可変領域特異的配列を有する混合プライマーを用いて抗体遺伝子の可変領域(VH及びVL)をコードするcDNAをRT-PCRにより増幅した。PCR産物を一般的なクローニングベクターに挿入して、DNAシーケンス解析を行った。シークエンス後の塩基配列を翻訳し、得られたアミノ酸配列からKabatナンバリング(Kabat E.A., et al, 1991, Sequences of proteins of immunological interest, Vol.1, eds.5, NIH publication)に基づいて各CDR配列を抽出した。
(結果)
YN6317-2-6株が産生するYN6317-2-6抗体のCDR配列は、VH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号17、18及び19、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号20、21及び22であった。
また、YN6327-8株が産生するYN6327-8抗体のCDR配列は、VH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号23、24及び25、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号26、27及び28であった。
さらに、YN6354-04株が産生するYN6354-04抗体のCDR配列は、VH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号29、30及び31、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号32、33及び34であった。
YN6317-2-6株が産生するYN6317-2-6抗体のCDR配列は、VH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号17、18及び19、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号20、21及び22であった。
また、YN6327-8株が産生するYN6327-8抗体のCDR配列は、VH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号23、24及び25、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号26、27及び28であった。
さらに、YN6354-04株が産生するYN6354-04抗体のCDR配列は、VH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号29、30及び31、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号32、33及び34であった。
<実施例2:抗C1C2型抗体の非変性C1C2型ChRに対する結合活性の検証>
(目的)
実施例1で作製した抗C1C2型ChR抗体が、神経細胞の細胞表面に発現するC1C2型ChRであるC1V1を未変性状態で検出可能なことを免疫組織化学染色により検証する。
(目的)
実施例1で作製した抗C1C2型ChR抗体が、神経細胞の細胞表面に発現するC1C2型ChRであるC1V1を未変性状態で検出可能なことを免疫組織化学染色により検証する。
(方法)
C1V1-TS-EYFPを発現するAAV2ベクターをラットの線条体に注入した。注入2週間後のラットに常法で還流固定を行い、30%のスクロースを含むリン酸緩衝液で置換した。続いて、ミクロトーム(大和光機工業株式会社)を用いて40μm厚の薄切切片を作製し、得られた一部の切片に対して免疫蛍光二重染色を実施した。具体的には、1%Skimmilk を含む0.1M PBSでブロッキングを行い、一次抗体として実施例1で作製したYN6327-8抗体(500倍希釈)及び ウサギ抗GFP抗体(Thermo Fisher Scientific社, 1000倍希釈)を1%正常ロバ血清及び0.1% Triton-Xを含むPBS中で、4℃にて2昼夜反応させた。PBSで洗浄後、Alexa488標識ロバ抗ウサギ抗体及びAlexa555標識ロバ抗ウサギ抗体をPBS中で常温2時間反応させた。PBSで洗浄後、切片をスライドグラスに貼り付けて封入し、蛍光観察を行った。
C1V1-TS-EYFPを発現するAAV2ベクターをラットの線条体に注入した。注入2週間後のラットに常法で還流固定を行い、30%のスクロースを含むリン酸緩衝液で置換した。続いて、ミクロトーム(大和光機工業株式会社)を用いて40μm厚の薄切切片を作製し、得られた一部の切片に対して免疫蛍光二重染色を実施した。具体的には、1%Skimmilk を含む0.1M PBSでブロッキングを行い、一次抗体として実施例1で作製したYN6327-8抗体(500倍希釈)及び ウサギ抗GFP抗体(Thermo Fisher Scientific社, 1000倍希釈)を1%正常ロバ血清及び0.1% Triton-Xを含むPBS中で、4℃にて2昼夜反応させた。PBSで洗浄後、Alexa488標識ロバ抗ウサギ抗体及びAlexa555標識ロバ抗ウサギ抗体をPBS中で常温2時間反応させた。PBSで洗浄後、切片をスライドグラスに貼り付けて封入し、蛍光観察を行った。
(結果)
結果を図1に示す。線条体ニューロンにC1V1-TS-EYFPを発現させたラットに対する抗GFP抗体(A)と抗C1C2型ChR抗体(B)の反応局在性は一致していた(C)。線条体ニューロン上のC1V1は未変性状態である。この結果から実施例1で作製した抗C1C2型ChR抗体は、神経細胞表面の未変性C1V1を認識し、結合できることが確認された。
結果を図1に示す。線条体ニューロンにC1V1-TS-EYFPを発現させたラットに対する抗GFP抗体(A)と抗C1C2型ChR抗体(B)の反応局在性は一致していた(C)。線条体ニューロン上のC1V1は未変性状態である。この結果から実施例1で作製した抗C1C2型ChR抗体は、神経細胞表面の未変性C1V1を認識し、結合できることが確認された。
<実施例3:抗ChRmine型ChR抗体の作製>
(目的)
ChRmine型ChRの細胞外ドメインを特異的に認識し、ChRmine型ChRを非変性状態で検出可能な抗体を作製する。
(目的)
ChRmine型ChRの細胞外ドメインを特異的に認識し、ChRmine型ChRを非変性状態で検出可能な抗体を作製する。
(方法)
基本的な作製手順については、実施例1に準ずる。実施例1の方法との相違点として、実施例1では抗原用のChRとしてC1C2型ChRを用いたのに対して、ここではChRmine型ChRを用いた点が挙げられる。ChRmine型ChRの発現には、配列番号3で示す塩基配列からなるChRmine型ChR遺伝子を包含する発現ベクターを用いた。
基本的な作製手順については、実施例1に準ずる。実施例1の方法との相違点として、実施例1では抗原用のChRとしてC1C2型ChRを用いたのに対して、ここではChRmine型ChRを用いた点が挙げられる。ChRmine型ChRの発現には、配列番号3で示す塩基配列からなるChRmine型ChR遺伝子を包含する発現ベクターを用いた。
実施例1と同様の方法で得られた陽性ハイブリドーマ2株(YN7002_7、及びYN7006_5)から全RNAを抽出し、可変領域特異的配列を有する混合プライマーを用いて抗体遺伝子の可変領域(VH及びVL)をコードするcDNAをRT-PCRにより増幅して、DNAシーケンス解析を行った。シークエンス後の塩基配列を翻訳し、実施例1と同様の方法で各CDR配列を抽出した。
(結果)
YN7006_5株が産生するYN7006_5抗体のCDR配列は、VH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号35、36及び37、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号38、39及び40であった。
YN7006_5株が産生するYN7006_5抗体のCDR配列は、VH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号35、36及び37、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号38、39及び40であった。
また、YN7002_7株が産生するYN7002_7抗体のCDR配列は、VH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号41、42及び43、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3のアミノ酸配列がそれぞれ配列番号44、45及び46であった。
<実施例4:非変性ChRmine型ChRとの結合様式の解析>
(目的)
実施例3で作製した抗ChRmine型ChR抗体のFab(Fragment antigen binding)領域とChRmineとの結合様式を低温電子顕微鏡にて解析する。
(目的)
実施例3で作製した抗ChRmine型ChR抗体のFab(Fragment antigen binding)領域とChRmineとの結合様式を低温電子顕微鏡にて解析する。
(方法)
(a)ChRmineの調製
野生型ChRmineを、N末端にHA(インフルエンザ血球凝集素)シグナル配列及びFLAGタグエピトープを、またC末端にeGFP(強化緑色蛍光タンパク質)及びHis10(10×ヒスチジン)タグを含むように改変した改変型ChRmine遺伝子を構築した。なお、いずれのタグも、ヒトライノウイルスの3Cプロテアーゼによって切断除去が可能である。pFastBacバキュロウイルスシステムを使用して前記改変型ChRmine遺伝子をSpodoptera frugiperda Sf9細胞で発現した。Sf9昆虫細胞を増殖後、ChRmineバキュロウイルスで感染させて、27℃で24時間振盪培養した。その後、培養液に10μMのオールトランスレチナール(ATR)(シグマ社)を添加し、さらに27℃で24時間振盪培養した。
(a)ChRmineの調製
野生型ChRmineを、N末端にHA(インフルエンザ血球凝集素)シグナル配列及びFLAGタグエピトープを、またC末端にeGFP(強化緑色蛍光タンパク質)及びHis10(10×ヒスチジン)タグを含むように改変した改変型ChRmine遺伝子を構築した。なお、いずれのタグも、ヒトライノウイルスの3Cプロテアーゼによって切断除去が可能である。pFastBacバキュロウイルスシステムを使用して前記改変型ChRmine遺伝子をSpodoptera frugiperda Sf9細胞で発現した。Sf9昆虫細胞を増殖後、ChRmineバキュロウイルスで感染させて、27℃で24時間振盪培養した。その後、培養液に10μMのオールトランスレチナール(ATR)(シグマ社)を添加し、さらに27℃で24時間振盪培養した。
培養後の細胞ペレットを低張溶解バッファー(20mM HEPES pH 7.5;20mM NaCl;10 mM MgCl2;1mMベンズアミジン;1μg/mLロイペプチン、10μM ATR)で溶解し、遠心分離して細胞ペレットを回収した。続いて、高張溶解緩衝液(20mM HEPES pH 7.5;1M NaCl;1mM MgCl2;1mMベンズアミジン;1μg/mL ロイペプチン;10μM ATR)中でダウンス型ガラスホモジナイザーを用いて細胞を破砕した。125,000×gで1時間、超遠心分離を行い、粗膜画分を回収した。ダウンス型ガラスホモジナイザーを用いて膜画分を可溶化バッファー(1%n-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM);0.2%ヘミコハク酸コレステリル(CHS);20mM HEPES pH 7.5;500mM NaCl;20%グリセロール;5mMイミダゾール;1mMベンザミジン;1μg/mL ロイペプチン)中でホモジナイズした。125,000×gにて1時間の遠心分離後、上清を回収した。上清をNi-NTAスーパーフローアガロースレジンと混合し、Ni-NTA樹脂をガラスクロマトグラフィーカラムに充填した後、カラムを2.5 CV wash1バッファー(0.05% DDM;0.01% CHS、20mM HEPES pH7.5;100mM NaCl;50mMイミダゾール)、2.5 CV wash2バッファー(0.05%DDM;0.06% GDN;0.016% CHS;20mM HEPES pH7.5;100 mM NaCl;50mMイミダゾール)、及び2.5 CV wash3バッファー(0.06% GDN;0.006% CHS;20mM HEPES pH7.5;100mM NaCl;50mMイミダゾール)で洗浄した。その後、300mMイミダゾールで補完したwash3バッファーにて溶出した。N末端のFLAGタグ、及びC末端のeGFP-His10タグを3Cプロテアーゼで切断した後、サンプルをNi-NTAカラムにリロードして切断されたeGFP-His10タグを捕捉、除去した。ChRmineを含む画分を回収し、濃縮した後、最終バッファー(2 mM HEPES pH7.5、100mM NaCl、0.03%GND、0.003%CHS)でゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した。
(b)ChRmine-Fab複合体の形成と精製
精製したChRmineを実施例3で作製したYN7002_7抗体のFab断片と混合し、4℃で一晩免疫反応を行った。形成されたChRmine-Fab複合体をSuperdex200increase 10/300GLカラム(GEヘルスケア社)を用いた20mM HEPES pH7.5、100mM NaCl、0.03%GDN、0.003%CHSで、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。電子顕微鏡解析用にピーク画分が約15mg/mLとなるよう濃縮した。
精製したChRmineを実施例3で作製したYN7002_7抗体のFab断片と混合し、4℃で一晩免疫反応を行った。形成されたChRmine-Fab複合体をSuperdex200increase 10/300GLカラム(GEヘルスケア社)を用いた20mM HEPES pH7.5、100mM NaCl、0.03%GDN、0.003%CHSで、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。電子顕微鏡解析用にピーク画分が約15mg/mLとなるよう濃縮した。
(c)低温電子顕微鏡解析
低温電子顕微鏡(Cryo-EM)の画像データは、BioQuantumTMエネルギーフィルタ(Gatan社)と電子カウントモードのK3 Direct Detection Camera(Gatan社)を備えたKrios G3i Cryo-EM(Thermo Fisher Scientific社)を用いて300kVで取得した。映像データは、SerialEMソフトウェアのnine-hole image shift strategyを用いて、0.8μm~1.6μmのデフォーカスレンジで、CDS(correlated double sampling)モードにて収集した。
低温電子顕微鏡(Cryo-EM)の画像データは、BioQuantumTMエネルギーフィルタ(Gatan社)と電子カウントモードのK3 Direct Detection Camera(Gatan社)を備えたKrios G3i Cryo-EM(Thermo Fisher Scientific社)を用いて300kVで取得した。映像データは、SerialEMソフトウェアのnine-hole image shift strategyを用いて、0.8μm~1.6μmのデフォーカスレンジで、CDS(correlated double sampling)モードにて収集した。
取得した画像の処理は、RELION-3.1ソフトウェアで行った。電子線誘起性ドリフト補正(Beam-induced motion correction)と重み付け(dose weighting)は、RELIONに実装されたMotionCor2アルゴリズムを用いて行った。また、CTFパラメータはCTFFIND-4.1.13を用いて推定した。まず、LoG (Laplacian-of-Gaussian)アルゴリズムを用いて粒子を選択した後、自動選択の参照ベース用テンプレートとして2Dクラスの平均画像を生成した。参照ベースで選択された粒子を、2D及び3Dクラスのいくつかのラウンドにかけた後、3D自動精製にかけて2.8Åのマップを作成した。続いて、ベイジアンポリッシングとCTFリファインメントを行った後、3Dオートリファインメントによって2.6Åのマップを作成した。また3Dオートリファインメントの別のラウンドでは、2.13Åのマップを作成した。粒子は、膜貫通領域にフォーカスした3Dオートリファインメント、及び2回目のベイジアンポリッシュにかけられ、2.04Åのグローバルな解像度で最終マップを作成した。
(結果)
低温電子顕微鏡解析によりChRmine-Fab複合体のpotential mapを作成した(データ図示せず)。得られたpotential mapから、YN7002_7抗体のFabはChRmine細胞内領域に結合していることが明らかとなった。
低温電子顕微鏡解析によりChRmine-Fab複合体のpotential mapを作成した(データ図示せず)。得られたpotential mapから、YN7002_7抗体のFabはChRmine細胞内領域に結合していることが明らかとなった。
<実施例5:抗ChRmine型抗体の非変性ChRmine型ChRに対する結合活性の検証>
(目的)
実施例3で得られた抗ChRmine型ChR抗体と非変性ChRmine型ChRとの結合を検証する。
(目的)
実施例3で得られた抗ChRmine型ChR抗体と非変性ChRmine型ChRとの結合を検証する。
(方法)
実施例3で作製した抗ChRmine型ChR抗体であるYN7006_5抗体について、以下の3つの条件で抗原結合性について検証した。
用いたChRmineの濃度は1.0mg/mL、YN7002_7抗体の濃度は15.886mg/mL、及びYN7006_5抗体の濃度は11.350mg/mLである。
実施例3で作製した抗ChRmine型ChR抗体であるYN7006_5抗体について、以下の3つの条件で抗原結合性について検証した。
用いたChRmineの濃度は1.0mg/mL、YN7002_7抗体の濃度は15.886mg/mL、及びYN7006_5抗体の濃度は11.350mg/mLである。
(1)ChRmine:4μL
(2)ChRmine:4μL+YN7002_7:1μL
(3)ChRmine:4μL+YN7006_5:1μL
(4)ChRmine:4μL+YN7002_7:1μL+YN7006_5:1μL
(1)~(4)をそれぞれ4℃で12時間反応させた後、蛍光ゲルろ過クロマトグラフィー(Ex 280nm, Em 350nm)を用いて、その分子サイズを評価した。
(2)ChRmine:4μL+YN7002_7:1μL
(3)ChRmine:4μL+YN7006_5:1μL
(4)ChRmine:4μL+YN7002_7:1μL+YN7006_5:1μL
(1)~(4)をそれぞれ4℃で12時間反応させた後、蛍光ゲルろ過クロマトグラフィー(Ex 280nm, Em 350nm)を用いて、その分子サイズを評価した。
(結果)
図2に結果を示す。抗ChRmine型ChR抗体をそれぞれ1種添加した(2)及び(3)の条件では、溶出位置の約10.4mLに単分散性のピークが観測された。一方、2種の抗体を添加した(4)の条件では、溶出位置約10.2mLの高分子量側に単分散性のピークが観測された。これらの結果からYN7002_7抗体及びYN7006_5抗体は、ChRmineに対して同時に結合可能なことが示唆された。YN7002_7抗体は、ChRmineの細胞内を認識し結合すること、さらにChRmineの細胞内側には2つの抗体が同時に結合する空間的余地がないことから、YN7006_5抗体はChRmineの細胞外を認識する抗体であると結論づけられた。
図2に結果を示す。抗ChRmine型ChR抗体をそれぞれ1種添加した(2)及び(3)の条件では、溶出位置の約10.4mLに単分散性のピークが観測された。一方、2種の抗体を添加した(4)の条件では、溶出位置約10.2mLの高分子量側に単分散性のピークが観測された。これらの結果からYN7002_7抗体及びYN7006_5抗体は、ChRmineに対して同時に結合可能なことが示唆された。YN7002_7抗体は、ChRmineの細胞内を認識し結合すること、さらにChRmineの細胞内側には2つの抗体が同時に結合する空間的余地がないことから、YN7006_5抗体はChRmineの細胞外を認識する抗体であると結論づけられた。
Claims (18)
- 高次構造を保持したチャネルロドプシンの細胞外ドメインに結合する抗チャネルロドプシン抗体及び/又はその活性断片を少なくとも1つ含む非変性チャネルロドプシンの検出キットであって、
前記抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片はチャネルロドプシンの細胞外ドメインに含まれる構造的エピトープを特異的に認識する、前記検出キット。 - 前記チャネルロドプシンが、C1C2型チャネルロドプシン、ChRmine型チャネルロドプシン、及びGtACR1型チャネルロドプシンからなる群から選択されるいずれか一以上のチャネルロドプシンである、請求項1に記載の検出キット。
- 前記C1C2型チャネルロドプシンが、ChR1、ChR2、C1C2、ReaChR、C1V1、C1 Chrimson、iC1C2、ChloC、iC++、SwiChR++、及びPhobosからなる群から選択されるいずれか一以上のチャネルロドプシンである、請求項2に記載の検出キット。
- 前記抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片が抗C1C2型チャネルロドプシン抗体又はその活性断片であって、配列番号16で示される構造的エピトープを特異的に認識し、結合する、請求項3に記載の検出キット。
- 前記抗C1C2型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号17、18及び19で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号20、21及び22で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、請求項4に記載の検出キット。
- 前記抗C1C2型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号23、24及び25で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号26、27及び28で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、請求項4又は5に記載の検出キット。
- 前記抗C1C2型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号29、30及び31で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号32、33及び34で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の検出キット。
- 前記抗ChRmine型チャネルロドプシン抗体が、それぞれ配列番号35、36及び37で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号38、39及び40で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、請求項2に記載の検出キット。
- 前記抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片が標識されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の検出キット。
- 免疫組織化学染色用又は構造解析用である、請求項1~9のいずれか一項に記載の検出キット。
- それぞれ配列番号17、18及び19で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及び
それぞれ配列番号20、21及び22で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。 - それぞれ配列番号23、24及び25で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及び
それぞれ配列番号26、27及び28で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。 - それぞれ配列番号29、30及び31で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及び
それぞれ配列番号32、33及び34で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。 - C1C2、ReaChR、C1V1、C1 Chrimson、iC++、SwitChR++、及びPhobosからなる群から選択されるいずれか一以上のC1C2型チャネルロドプシンに結合する、請求項11~13のいずれか一項に記載の抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
- 抗体又はその活性断片が標識されている、請求項11~14のいずれか一項に記載の抗C1C2型チャネルロドプシン抗体。
- それぞれ配列番号35、36及び37で示されるアミノ酸配列からなるVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3、及びそれぞれ配列番号38、39及び40で示されるアミノ酸配列からなるVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含む、抗ChRmine型チャネルロドプシン抗体。
- 抗体又はその活性断片が標識されている、請求項16に記載の抗ChRmine型チャネルロドプシン抗体。
- 細胞表面上の高次構造を保持したチャネルロドプシンを検出する方法であって、
試料を請求項11~17に記載のいずれか一以上の抗チャネルロドプシン抗体又はその活性断片に接触させる工程、及び
抗原抗体反応によって形成された前記抗チャネルロドプシン抗体と細胞表面上のチャネルロドプシンによる抗原抗体複合体を検出する工程
を含む前記方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021088794A JP2022181707A (ja) | 2021-05-26 | 2021-05-26 | 非変性チャネルロドプシン検出キット |
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JP2021088794A Pending JP2022181707A (ja) | 2021-05-26 | 2021-05-26 | 非変性チャネルロドプシン検出キット |
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- 2021-05-26 JP JP2021088794A patent/JP2022181707A/ja active Pending
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