JP5928734B2 - 新規モノクローナル抗体、及びそのタグ抗体としての利用 - Google Patents

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Description

本発明は、新規モノクローナル抗体に関する。より詳細には、タグ抗体として、ウエスタンブロット法、免疫沈殿法、クロマチン免疫沈降法及び免疫染色法など、抗原抗体反応を用いた免疫検出法に広く使用できる新規モノクローナル抗体に関する。また、本発明は、当該モノクローナル抗体、及びそのエピトープをタグとして用いた、免疫検出法に関する。
従来より、複数のタンパク質が混在する被験試料の中から所望のタンパク質のみを検出または分離精製するために、タグと呼ばれるオリゴペプチドが使用されている。具体的には、例えば細胞培養系で得られるタンパク質を簡便且つ高純度に検出したり精製する方法として、目的タンパク質を標識となるオリゴペプチド(標識ペプチド)との融合タンパク質として発現させ、当該標識ペプチドを特異的に認識し結合するアフィニティー分子(抗体を含む)を用いて、融合タンパク質を検出し精製する技術が知られている。
ここで標識となるオリゴペプチド(標識ペプチド)は、「アフィニティータグ」または前述するよう単に「タグ(Tag)」と称され、中でもアフィニティー分子(抗体)との抗原抗体反応を利用して用いられるタグを「エピトープタグ」という。
標識ペプチドとして、従来からFLAGタグ、3XFLAGタグ、HAペプチド、3XHAペプチド、mycペプチド、6XHisタグ、GSTポリペプチド、MBPポリペプチド、PDZドメインポリペプチド、TAP(Tandem Affinity Purification)ペプチド、アルカリフォスファターゼ、及びアジビン等が知られている。これらの標識ペプチドは、通常目的のタンパク質のN末端またはC末端に融合して用いられるが、場合によっては目的のタンパク質内に挿入して使用される場合もある。しかし、いずれにしても、これらの標識ペプチドを、免疫検出法においてアフィニティータグとして有効に機能させるためには、当該標識ペプチドを特異的に認識し、それと選択的に結合するタグ抗体の使用が不可欠である。
特開2005-326165号公報
「免疫生化学研究法(続生化学実験講座5)」、日本生化学会編、89頁(1986年) Galfre, G. and Milstein, C.: Preparation of monoclonal antibodies: strategies and procedures. Methods Enzymol., 73: 3-46, 1981
本発明は新規なモノクローナル抗体を提供することを目的とする。より詳細には、特定のアミノ酸配列を有するペプチドを特異的に認識し結合するタグ抗体として有効に用いられるモノクローナル抗体を提供することを目的とする。
また本発明は、上記ペプチドをエピトープタグとし、本発明のモノクローナル抗体をそのタグ抗体として用いることを特徴とする免疫検出法を提供することを目的とする。
発明が解決するための手段
本発明者らは、日本住血吸虫グルタチオンSトランスフェラーゼ(以下、「GST」という)を認識する抗体を作製すべく、GST融合タンパク質発現用ベクターpGEX-2T(GEヘルスケア・ジャパン社)の遺伝子産物をマウスに免疫してハイブリドーマG196を作製し、当該ハイブリドーマG196からモノクローナル抗体(以下、これを「G196抗体」ともいう)を調製したところ、当該G196抗体は、GSTを発現するGST融合タンパク質発現用ベクターの遺伝子産物のすべてを認識できるものではなく、GST融合タンパク質発現用ベクターの遺伝子産物の一部を特異的に認識することを見出した。
かかる知見に基づいて、当該モノクローナル抗体(G196抗体)が認識するエピトープ領域を検討したところ、当該モノクローナル抗体は、GST融合タンパク質発現用ベクターの遺伝子産物のアミノ酸配列において、GSTのアミノ酸配列ではなく、その末端側に結合したプロテアーゼ認識部位を含むリンカー配列中の5アミノ酸残基からなるアミノ酸配列「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」(配列番号1)(配列中、XaはVal、Ala、IleまたはThrのいずれか一つのアミノ酸残基、XbはLys以外の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基から選択されるいずれか一つのアミノ酸残基を意味する。)を特異的に認識することを確認した。
本発明者らは、かかる知見に基づき、上記モノクローナル抗体(G196抗体)が、上記「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」のアミノ酸配列を有するペプチドを「エピトープタグ」として、タグ抗体として用いることができると考え、なかでも水溶性である上記ペプチドは、分子生物学的研究において頻繁に使用される免疫検出法、具体的にはウエスタンブロット法、免役沈降法、クロマチン免疫沈降法及び細胞染色法等に広く適用できることを確認した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであって、下記の実施形態を包含するものである。
(I)モノクローナル抗体及びその製造方法
(I-1)下記に示すアミノ酸配列:
Asp-Leu-Xa-Xb-Arg(配列番号1)
(配列中、XaはVal、Ala、IleまたはThrのいずれか一つのアミノ酸残基、XbはLys以外の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基から選択されるいずれか一つのアミノ酸残基を意味する。)
で示されるアミノ酸配列をエピトープ領域として含むペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体であって、
配列番号2に示す18〜25番目のアミノ酸配列からなるCDR1、43〜50番目のアミノ酸配列からなるCDR2、及び89〜97番目のアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに
配列番号3に示す18〜23番目のアミノ酸配列からなるCDR1、41〜43のアミノ酸配列からなるCDR2、及び80〜88のアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域
を含むことを特徴とするモノクローナル抗体。
(I-2)上記モノクローナル抗体が、配列番号1中、Xaで示されるアミノ酸残基がバリン残基(Val)であるアミノ酸配列をエピトープ領域として含むペプチドに特異的に結合する抗体である、(I-1)記載のモノクローナル抗体。
(I-3)配列番号6に示すアミノ酸配列をエピトープ領域として含むペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体である、(I-1)または(I-2)記載のモノクローナル抗体。
(I-4)上記モノクローナル抗体が、配列番号2に記載するアミノ酸配列またはそれと85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号3に記載するアミノ酸配列またはそれと85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものである、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載するモノクローナル抗体。
(I-5)配列番号30に示すアミノ酸配列からなるペプチドに対する反応速度定数(Kd値)が0.1〜10nM、好ましくは0.1〜5nM、より好ましくは0.1〜2nMである、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載するモノクローナル抗体。
(I-6)マウスに由来する免疫グロブリンG(IgG)またはその抗原結合断片である、(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載するモノクローナル抗体。
(I-7)抗体クラスがIgG1またはIgG2である、(I-5)に記載するモノクローナル抗体。
(I-8)抗体クラスがIgG1κである、(I-5)に記載するモノクローナル抗体。
(I-9)上記抗原結合断片がscFv(リンカー配列を有するペプチドで連結されたVH−VLヘテロ二量体)である、(I-5)に記載するモノクローナル抗体。
(I-10)上記scFvが、配列番号2に示す18〜25番目のアミノ酸配列からなるCDR1、43〜50番目のアミノ酸配列からなるCDR2、及び89〜97番目のアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域(VH)のペプチドと、配列番号3に示す18〜23番目のアミノ酸配列からなるCDR1、41〜43のアミノ酸配列からなるCDR2、及び80〜88のアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)のペプチドとが、リンカー配列を有するペプチドを介して連結されてなるものである(I-9)に記載するモノクローナル抗体。
(I-11)上記scFvが、配列番号32で示されるアミノ酸配列を有するものである、(I-10)に記載するモノクローナル抗体。
(I-12)「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」(配列番号1)
(配列中、XaはVal、Ala、IleまたはThrのいずれか一つのアミノ酸残基、XbはLys以外の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基から選択されるいずれか一つのアミノ酸残基を意味する。)
で示されるアミノ酸配列をエピトープ領域として含むペプチドからなるエピトープタグに対するタグ抗体として用いられる、(I-1)乃至(I-11)のいずれかに記載するモノクローナル抗体。
(I-13)下式に示すアミノ酸配列を含むペプチドからなるエピトープタグに対するタグ抗体として用いられる、(I-1)乃至(I-12)のいずれかに記載するモノクローナル抗体:
−X−X−X−X(配列番号31)
(式中、XはAsp、GluまたはSer;XはLeu、IleまたはMet;XはVal、Ala、IleまたはThr;XはLys以外の19種のタンパク質構成アミノ酸から選択されるいずれかのアミノ酸残基;XはArgを、それぞれ示す。)。
(I-14)GST融合タンパク質発現用ベクターpGEX-2T(GEヘルスケア・ジャパン社)の遺伝子産物を抗原(免疫抗原)として用いて非ヒト動物を免疫する工程を有することを特徴とする、(I-1)乃至(I-13)のいずれかに記載するモノクローナル抗体の製造方法。
(I-15)非ヒト動物がマウスである、(I-14)に記載する製造方法。
(I-16)(I-1)乃至(I-15)のいずれかに記載するモノクローナル抗体をコードする遺伝子であって、
配列番号4に示す塩基配列または当該塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を、上記モノクローナル抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列として、また
配列番号5に示す塩基配列または当該塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を上記モノクローナル抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列として
含むことを特徴とする、上記遺伝子。
(II)エピトープタグ、及びそれを含有する融合タンパク質の製造方法
(II-1)(I-1)乃至(I-11)のいずれかに記載するモノクローナル抗体との抗原抗体反応に使用されるエピトープタグであって、
「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」(配列番号1)
(配列中、XaはVal、Ala、IleまたはThrのいずれか一つのアミノ酸残基、XbはLys以外の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基から選択されるいずれか一つのアミノ酸残基を意味する。)
で示されるアミノ酸配列をエピトープ領域(最小認識配列)として含むペプチドからなるものである、上記エピトープタグ。
(II-2)上記エピトープタグが、配列番号1中、Xaで示されるアミノ酸残基がバリン残基(Val)であるアミノ酸配列を含むペプチドからなるものである、(II-1)記載のエピトープタグ。
(II-3)(I-1)乃至(I-11)のいずれかに記載するモノクローナル抗体との抗原抗体反応に使用されるエピトープタグであって、
下式に示すアミノ酸配列を含むペプチドからなるエピトープタグ:
−X−X−X−X(配列番号31)
(式中、XはAsp、GluまたはSer;XはLeu、IleまたはMet;XはVal、Ala、IleまたはThr;XはLys以外の19種のタンパク質構成アミノ酸から選択されるいずれかのアミノ酸残基;XはArgを、それぞれ示す。)。
(II-4)上記エピトープタグが、配列番号1に示すアミノ酸配列または配列番号31に示すアミノ酸配列のN及び/またはC末端側に、Gly、Serまたはこれらから選択されるいずれか少なくとも1種のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を結合してなるオリゴペプチドである、(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載するエピトープタグ。
(II-5)上記Gly及びSerから選択されるいずれか少なくとも1種のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列がGSリンカー配列である、(II-4)に記載するエピトープタグ。
(II-6)上記オリゴペプチドがアミノ酸残基数7〜40、好ましくは7〜30、より好ましくは7〜20、特に好ましくは7〜10からなるものである、(II-4)または(II-5)に記載するエピトープタグ。
(II-7)水溶性であることを特徴とする、(II-1)乃至(II-6)のいずれかに記載するエピトープタグ。
なお、ここで水溶性であるとは、日本薬局方第16改正の規定に基づいて、溶質1gを溶解するために必要な水の量が30mL未満であることを意味する(やや溶けやすい〜極めて溶けやすい)。好ましくは、溶質1gを溶解するために必要な水の量が10mL未満(溶けやすい〜極めて溶けやすい)であり、また溶質1gを溶解するために必要な水の量が1mL未満であってもよい(極めて溶けやすい)。
(II-8)上記エピトープタグをコードする塩基配列が標的ペプチドをコードする塩基配列に人工的に結合されてなるDNAを含む発現ベクターで宿主を形質転換する工程、及び当該工程で得られた形質転換体を培養する工程を有する、上記エピトープタグを融合してなるペプチド(タグ融合ペプチド)の製造方法。
(III)被験物質の検出方法
(III-1)下記の工程を有する被験物質の検出方法:
(1)(I-1)乃至(I-13)のいずれかに記載するモノクローナル抗体をタグ抗体として用いて、(II-1)乃至(II-7)のいずれかに記載するエピトープタグで標識してなる被験物質と抗原抗体反応を行う工程、
(2)タグ抗体が結合した抗原抗体反応物を指標として、被験物質を検出する工程。
(III-2)上記エピトープタグで標識してなる被験物質が、(II-8)に記載する方法で製造されてなるタグ融合ペプチドである、(III-1)記載の検出方法。
(IV)被験物質の単離又は回収方法
(IV-1)下記の工程を有する、被験試料の中から被験物質を単離または回収する方法:
(1)(II-1)乃至(II-7)のいずれかに記載するエピトープタグで標識してなる被験物質を含有する被験試料と、(I-1)乃至(I-13)のいずれかに記載するモノクローナル抗体をタグ抗体として反応させる工程、
(2)上記タグ抗体が結合した抗原抗体反応物を被験試料から単離または回収する工程、
(3)タグ抗体が結合した抗原抗体反応物からタグ抗体を除去し、被験物質を回収する工程、及び
(4)必要に応じて、エピトープタグで標識してなる被験物質からエピトープタグを除去する工程。
(IV-2)上記エピトープタグで標識してなる被験物質が、(II-8)に記載する方法で製造されてなるタグ融合ペプチドである、(IV-1)記載の方法。
本発明によれば、タグ抗体として、ウエスタンブロット法、免疫沈殿法、クロマチン免疫沈降法及び免疫染色法など、抗原抗体反応を用いた免疫検出法に広く使用できる新規モノクローナル抗体を提供することができる。より詳細には、本発明のモノクローナル抗体は、少なくとも「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」(配列番号1)(XaはVal、Ala、IleまたはThrのいずれか一つのアミノ酸残基、XbはLys以外の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基から選択されるいずれか一つのアミノ酸残基を意味する。)に示すアミノ酸配列をエピトープ領域として含むペプチドを特異的に認識し結合することができるため、当該ペプチドをエピトープタグとして、ウエスタンブロット法、免疫沈殿法、クロマチン免疫沈降法及び免疫染色法など、抗原抗体反応を用いた免疫検出法に広く応用可能である。
本発明のモノクローナル抗体(G196抗体)の製造に際して、免疫抗原として使用したpGEX-2Tベクター(GEヘルスケア・ジャパン社)のベクターマップを示す。 実験例2(1)及び(2)(2-1)において、A:本発明のモノクローナル抗体(G196抗体)の認識部位の同定に使用したGST融合タンパク質発現用ベクター(pGEX-4T-2ベクター、pGEX-6P-1ベクター)の遺伝子産物(4T-2、6P-1)のGSTに融合したペプチドのアミノ酸配列、及びエピトープの候補アミノ酸配列をコードするヌクレオチドを導入したpGEX-6P-1ベクターの遺伝子産物(6P-12、6P-14、6P-16、6P-15、6P-17、6P-19)のGSTに融合したペプチドのアミノ酸配列を示す。B:上記各遺伝子産物に対するG196抗体の結合反応をウエスタンブロット法で測定した結果、及び各遺伝子産物のタンパク量をクマシー染色により測定した結果を示す。 実験例2(2)(2-2)において、A: GST融合タンパク質発現用ベクター(pGEX-4T-2ベクター、pGEX-6P-1ベクター)の遺伝子産物(4T-2、6P-1)のGSTに融合したポリペプチドのアミノ酸配列、及びG196抗体のエピトープの同定に使用した最小認識部位の候補アミノ酸配列をコードするヌクレオチドを導入したpGEX-6P-1ベクターの遺伝子産物(6P-15、6P-24、6P-25、6P-26、6P-27、6P-28、6P-29)のGSTに融合したポリペプチドのアミノ酸配列を示す。B:上記各遺伝子産物に対するG196抗体の結合反応をウエスタンブロット法で測定した結果、及び各遺伝子産物のタンパク量をクマシー染色により測定した結果を示す。 実験例3において、実施例1で作製した本発明のモノクローナル抗体(G196抗体)の、合成ペプチド(GSDLVPRGSC:配列番号31)との結合性を、等温滴定カロリーメータを用いて測定した結果を示す。 実験例4において、実施例1で作製したG196抗体と結合するペプチドのアミノ酸配列を、酵素結合免疫吸着法(ELISA)により調べた結果を示す。 実験例5(1)において、FLAG-HA-EGFP(FHG)を発現するHeLa細胞、及びFHG-6P12を発現するHeLa細胞の細胞溶解液に対して、タグ抗体として「FLAG(M2)抗体(Sigma社)」(図A)及び本発明の「G196抗体」(図B)を用いてウエスタンブロット法を行った結果を示す。 実験例5(2)において、FHGを発現するHeLa細胞、及びFHG-6P12を発現するHeLa細胞の細胞溶解液について、タグ抗体として「FLAG(M2)抗体(Sigma社)」及び本発明の「G196抗体」を用いて免疫沈降法を行った結果を示す。 実験例5(2)において、HeLa細胞に「FHG」(図A)または「FHG-6P12」(図B)をそれぞれ導入し、抗体として「GFP抗体」及び本発明の「G196抗体」を用いて免疫染色を行った結果を示す。 実験例6(2)において、実施例1で調製したG196抗体、及び実験例6(1)で調製したG196(scFv)抗体をそれぞれ用いて、免疫沈降法により、FHG及びFHG-6P12に対する結合性を評価した結果を示す。 実験例7(1)において、タグ抗体として、本発明のG196抗体(上段の泳動像)及び抗GFP抗体(下段の泳動像)を用いて、(図の左から)野生型酵母、Atf1-G196-GFPタンパク質を発現させた分裂酵母、及びGFP-Iws1タンパク質を発現させた分裂酵母の細胞溶解液に対して、ウエスタンブロットを行った結果を示す。 実験例7(2)において、タグ抗体として、本発明のG196抗体を用いて、(図の左から)野生型酵母、及びAtf1-G196-GFPタンパク質を発現させた分裂酵母のそれぞれの細胞溶解液に対して、クロマチン免疫沈降法を行った結果を示す。 実験例7(3)において、野生型酵母、及びAtf1-G196-GFPタンパク質を発現させた分裂酵母について、透過光観察、DAPI染色(核染色)、及び抗GFP抗体(ウサギ)(バイオアカデミア社)またはG196抗体を一次抗体とした免疫染色を行った結果を示す。
I.本発明で使用する用語の定義
本明細書における塩基配列(ヌクレオチド配列)、核酸などの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAc-IUB communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138; 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作製のためのガイドライン」(特許庁編)及び当該分野における慣用記号に従うものとする。
また本明細書中において「ペプチド」とは、特に言及しない限り、5以上のアミノ酸がペプチド結合により連結してなるペプチドを意味し、アミノ酸残基数が50以下のオリゴペプチド、及びアミノ酸残基数50より多いポリペプチド(タンパク質を含む)がいずれも含まれる。また糖が結合してなる糖ペプチド(糖タンパク質)も本発明が対象とするペプチドに含まれる。
また本明細書中において「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体である。当該集団に含まれる個々の抗体は、微量に存在しえる天然に生じる突然変異を除いて同一である。さらに、モノクローナル抗体は、特定の抗原性部位に対して特異的であることを特徴とする。モノクローナル抗体は、抗原ペプチド中の単一の抗原決定基を特異的に認識する点で、種々異なる抗原決定基(エピトープ)を認識する抗体の集合物であるポリクローナル抗体とは区別することができる。
II.モノクローナル抗体
本発明が対象とするモノクローナル抗体は、「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」のアミノ酸配列(配列番号1)をエピトープ領域として含むペプチドを特異的に認識し、結合するモノクローナル抗体である。
エピトープ領域に相当する上記アミノ酸配列(配列番号1)において、Xaは、バリン(Val)、アラニン(Ala)、イソロイシン(Ile)またはスレオニン(Thr)のいずれか一つのアミノ酸残基であり、またXbは、リジン(Lys)以外の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基から選択されるいずれか一つのアミノ酸残基を意味する。
ここでLys以外のアミノ酸残基としては、タンパク質を構成するLys以外の19種のαアミノ酸(例えば、Ala, Arg, Asn, Gln, Glu, Gly, His, Ile, Leu, Met, Phe, Pro, Ser, Thr, Trp, Tyr, Val)を任意に挙げることができ、特に制限されない。
Xaとして好ましくはVal, Ala,Ile, 及びThrであり、より好ましくはValである。
「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」の配列として、制限されないものの、一例として、Asp-Leu-Val-Pro-Arg(配列番号6)、Asp-Leu-Ala-Pro-Arg(配列番号7)、Asp-Leu-Val-Ala-Arg(配列番号8)、及びAsp-Leu-Ala-Ala-Arg(配列番号9)を挙げることができる。好ましくはAsp-Leu-Val-Pro-Arg(配列番号6)である。
これらのアミノ酸配列を有するペプチドは、「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。また、少なくとも当該アミノ酸配列をエピトープ領域として有するものであれば、その限りにおいて、また上記アミノ酸配列のN末端側及び/またはC末端側に任意に1乃至複数の任意のアミノ酸残基を有するものであってもよい。
当該ペプチドを、エピトープタグとして用いる場合、そのアミノ酸残基数としては、上記5アミノ酸残基からなる配列を含むものである限り、特に制限はされず、50より多いアミノ酸残基からなるポリペプチド(タンパク質)の形態にしてもよいし、また5〜50のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドの形態にしてもよい。
オリゴペプチドの形態に設計する場合、そのアミノ酸残基数としては、好ましくは5〜40程度、より好ましくは7〜30程度、さらに好ましくは7〜20程度、特に好ましくは7〜10程度を挙げることができる。かかるエピトープタグとしては、制限されないが、上記エピトープ領域(最小認識配列)の前後(N及びC末端側)に1または複数のGlyあるいはSerなどのリンカー配列(例えば、後述するGSリンカー配列)を有するオリゴペプチドを例示することができる。かかるエピトープタグとして、「Ser-Asp-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser」(配列番号29)で示すアミノ酸配列からなるオリゴペプチド、及び当該アミノ酸配列においてプロニン(Pro)をアラニン(Ala)に置換したアミノ酸配列からなるオリゴペプチドを一例として例示することができる。また上記リンカー配列としては、(GGGGS)n(配列番号10)または(GGGS)n(配列番号33)等で示されるGSリンカー配列(いずれも、nは1〜3の整数を意味する)を用いることもできる。
本発明が対象とするモノクローナル抗体は、少なくとも配列番号2に記載する18〜25番目のアミノ酸配列からなるCDR1(相補性決定領域1)、43〜50番目のアミノ酸配列からなるCDR2(相補性決定領域2)、及び89〜97番目のアミノ酸配列からなるCDR3(相補性決定領域3)を含む重鎖可変領域;並びに配列番号3に記載する18〜23番目のアミノ酸配列からなるCDR1(相補性決定領域1)、41〜43番目のアミノ酸配列からなるCDR2(相補性決定領域2)、及び80〜88番目のアミノ酸配列からなるCDR3(相補性決定領域3)を含む軽鎖可変領域;を有することを特徴とする免疫グロブリンまたはその抗原結合断片である。
当該免疫グロブリンまたはその抗原結合断片には、少なくとも配列番号2に記載するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号3に記載するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する免疫グロブリンまたはその抗原結合断片が含まれる。ここで免疫グロブリンは、哺乳動物に由来するものであれば、特に制限されず、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、サル、ヒト、ヤギなどに由来する免疫グロブリンを挙げることができるが、好ましくはマウスやラット等のげっ歯類、より好ましくはマウスに由来する免疫グロブリンG(IgG)であり、そのサブクラスとしてはIgG1及びIgG2を例示することができる。
なお、当該重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、前述するエピトープ領域に対する特異的な結合性が損なわれない限り、それらのアミノ酸配列の任意のアミノ酸残基が、1または複数個、置換、欠失または付加されていてもよい。かかる重鎖可変領域(改変された重鎖可変領域)としては、配列番号2に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものを例示することができ、また軽鎖可変領域(改変された軽鎖可変領域)としては、配列番号3に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものを例示することができる。改変された重鎖可変領域として、より好ましくは重鎖可変領域(配列番号2)のCDR1、CDR2及びCDR3以外の領域のアミノ酸残基が、1または複数個、置換、欠失または付加されており、配列番号2に記載する上記領域に対応するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものである。ここでCDR1、CDR2及びCDR3以外の領域としては、免疫グロブリンの重鎖可変領域のフレームワーク領域(以下、単に「FR」ともいう)を挙げることができる。つまり、改変された重鎖可変領域として、そのFR領域のアミノ酸配列のアミノ酸残基が1または複数個、置換、欠失または付加され、その結果、配列番号2に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる領域を挙げることができる。当該FR領域(重鎖可変領域のFR領域[FR1〜4])のアミノ酸配列には、ヒト由来のアミノ酸配列またはその変異体が含まれる。つまり、本発明のモノクローナル抗体には、重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列として、それぞれ配列番号2に記載する18〜25番目のアミノ酸配列、43〜50番目のアミノ酸配列、及び89〜97番目のアミノ酸配列を有し、且つ重鎖可変領域のFR1〜4のアミノ酸配列として、ヒト由来の重鎖可変領域のFR1〜4のアミノ酸配列を有するヒト型化抗体が含まれる。完全ヒト型化抗体のFRまたは準領域の配列は、例えばNCBIのウエブサイトに収載されているので、適宜参照することができる。
また改変された軽鎖可変領域としてより好ましくは、軽鎖可変領域(配列番号3)のCDR1、CDR2及びCDR3以外の領域のアミノ酸残基が、1または複数個、置換、欠失または付加されており、配列番号3に記載する上記領域に対応するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものである。ここでCDR1、CDR2及びCDR3以外の領域としては、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のフレームワーク領域(以下、単に「FR」ともいう)を挙げることができる。つまり、改変された軽鎖可変領域として、そのFR領域のアミノ酸配列のアミノ酸残基が1または複数個、置換、欠失または付加され、その結果、配列番号3に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる領域を挙げることができる。当該FR領域(軽鎖可変領域のFR領域[FR1〜4])のアミノ酸配列には、ヒト由来のアミノ酸配列またはその変異体が含まれる。つまり、本発明のモノクローナル抗体には、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列として、それぞれ配列番号3に記載する18〜23番目のアミノ酸配列、41〜43番目のアミノ酸配列、及び80〜88番目のアミノ酸配列を有し、且つ軽鎖可変領域のFR1〜4のアミノ酸配列として、ヒト由来の軽鎖可変領域のFR1〜4のアミノ酸配列を有するヒト型化抗体が含まれる。完全ヒト型化抗体のFRまたは準領域の配列は、前述するように、例えばNCBIのウエブサイトに収載されているので、適宜参照することができる。
本発明のモノクローナル抗体は、免疫グロブリン(IgG)そのものであってもよいし、その抗原結合断片であってもよい。抗原結合断片としては、免疫グロブリン(IgG)の重鎖可変領域と軽鎖可変領域からなる可変領域断片(Fv)、当該領域を含むFab、Fab’、 F(ab’)2、及びscFvを例示することができる。
ここでscFvとしては、例えば、配列番号2に示す18〜25番目のアミノ酸配列からなるCDR1、43〜50番目のアミノ酸配列からなるCDR2、及び89〜97番目のアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域(VH)のペプチドと、配列番号3に示す18〜23番目のアミノ酸配列からなるCDR1、41〜43のアミノ酸配列からなるCDR2、及び80〜88のアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)のペプチドとが、リンカー配列(例えば、前述するGSリンカー配列)を有するペプチドを介して連結させてなるリコンビナントタンパク質を例示することができる。なお、上記重鎖可変領域(VH)のペプチドには、配列番号2に記載するアミノ酸配列または当該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチドが含まれる。また上記軽鎖可変領域(VL)のペプチドには、配列番号3に記載するアミノ酸配列または当該アミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域のペプチドが含まれる。
当該scFVにおける重鎖可変領域(VH)のペプチドと軽鎖可変領域(VL)のペプチドの位置は、特に制限なく、VH-「リンカーペプチド」-VLであっても、またVL-「リンカーペプチド」-VHであってもよい。前者VH-「リンカーペプチド」-VLの一例として実験例6で作製したモノクローナル抗体(G196(scFv)抗体)を挙げることができる。当該モノクローナル抗体(G196(scFv)抗体)のアミノ酸配列(配列番号32)のアミノ酸番号22〜123領域は、本発明モノクローナル抗体(IgG)の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸番号7〜108の領域(CDR1:18-25、CDR2:43-50、CDR3:89-97)に相当し、当該アミノ酸配列(配列番号32)のアミノ酸番号148〜245の領域が、本発明モノクローナル抗体(IgG)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3)のアミノ酸番号1〜98の領域(CDR1:18-23、CDR2:41-43、CDR3:80-88)に相当し、これらの領域が、GSリンカー配列を有するペプチドを介して結合してなる構造を有している。なお、配列番号32に示すアミノ酸配列のアミノ酸番号1〜21の領域は、実験例6でモノクローナル抗体(G196(scFv)抗体)の作製に使用したpET28-His-TEVベクター(Novagen社のpET28を改変)に由来するHis-TEV配列に相当する。
なお、本発明のモノクローナル抗体の上記エピトープ領域への結合性は、上記「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」(Xa及びXbは前述の通り)のアミノ酸配列からなるペプチドに対する結合性を評価することで判断することができる。評価方法としては、制限されないが、好ましくは、実験例2(2)(2-2)に記載するウエスタンブロット法を用いたアラニンスキャン、実験例3に示すような等温カロリメータを用いる方法、または実験例4に示すような酵素結合免疫吸着法(ELISA)を用いる方法を挙げることができる。
実験例2及び4に示すように、本発明のモノクローナル抗体は、少なくとも「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」(Xa及びXbは前述の通り)のアミノ酸配列を有するペプチドに対して結合性を有し、当該アミノ酸配列において、例えば少なくとも1番目のアミノ酸残基(Asp)を、例えばAsp、Glu、Gly、Gln及びSer以外のタンパク質構成アミノ酸残基に置換した場合;2番目のアミノ酸残基(Leu)を例えばLeu、Phe、His、Ile、Met及びAsn以外のタンパク質構成アミノ酸残基に置換した場合;3番目のアミノ酸残基(Xa)を例えばVal、Ala、Ile、Ser及びThr以外のタンパク質構成アミノ酸残基に置換した場合;4番目のアミノ酸残基(Xb)を例えばLysに置換した場合;及び5番目のアミノ酸残基(Arg)を例えばLys及びHis以外のタンパク質構成アミノ酸残基に置換した場合に、当該アミノ酸配列からなるペプチドに対して結合性が消失するか、または結合性が著しく低下する。
本発明のモノクローナル抗体の「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」(Xa及びXbは前述の通り)のアミノ酸配列を有するペプチドに対する反応速度定数(Kd値)は特に制限されないが、例えば、配列番号30に示すアミノ酸配列からなるペプチドに対する反応速度定数(Kd値)として、0.1〜10nM、好ましくは0.1〜5nM、より好ましくは0.1〜2nMを挙げることができる。
本発明のモノクローナル抗体は、実施例1で説明するように、GST融合タンパク質発現用ベクターpGEX-2T(GEヘルスケア・ジャパン社)の遺伝子産物を免疫抗原として用いて非ヒト動物を免疫する工程を有する、モノクローナル抗体の作製方法に従って製造することができる。pGEX-2Tベクターのベクターマップを図1に示す。
pGEX-2Tベクターの遺伝子産物で免疫するための非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ等が挙げられるが、好ましくはマウスやラットなどのげっ歯類であり、より好ましくはマウスである。免疫に際しての粘液源の投与経路は、特に限定されず、例えば皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内などのいずれの経路でも投与することができる。具体的には、例えばBALB/cマウスにpGEX-2Tベクターの遺伝子産物を、アジュバンドとともに、数日〜数週間毎に1〜数回接種する。pGEX-2Tベクターの遺伝子産物で免疫されたマウスより脾臓を摘出し、遠心分離により抗体産生細胞(脾臓細胞)を得る。この細胞は増殖能が無いので、自己増殖能を有する細胞と融合させる。自己増殖能を有する細胞としてはミエローマ細胞等のリンパ球様細胞が特に好ましい。ミエローマ細胞としては、抗体産生細胞を得た動物と同種の動物のものを用いるのが好ましく、また、抗体を分泌しないものを選択するのが好ましい。かかるミエローマ細胞としては、例えばマウスミエローマ細胞P3/NSI/1-Ag4-1(ATCC TIB-18)、Sp2/O-Ag14(ATCC CRL-1581)、P3X63Ag8U.1(ATCC CRL-1597)などが挙げられる。抗体産生細胞とミエローマ細胞等との融合は、常法に従い、例えばこれら細胞をポリエチレングリコール等の細胞融合剤を含む溶液(又は懸濁液)で処理することにより実施できる。抗体産生細胞とミエローマ細胞の使用割合は、細胞数比で約1:1〜10:1とするのが好ましい。
得られた融合細胞を限界希釈法により分離し、分離した融合細胞を増殖させ、各ウェルにおいて産生される抗体を、例えばpGEX-2Tベクターの遺伝子産物(例えば、pGEX-2Tベクター由来の精製GSTタンパク質)を用いたELISA法において試験し、さらに必要に応じて、Asp-Leu-Xa-Xb-Arg(配列番号1)、好ましくはAsp-Leu-Val-Pro-Arg(配列番号6)を有するペプチドを用いたELISA法によって、当該ペプチドとの反応性を調べ、その結果から所望の抗体を産生するハイブリドーマを選択する。なお、上記ペプチドを用いたELISA法は、例えば、上記ペプチドをアルキレンジアルデヒドおよび塩基性ポリペプチド又は塩基性合成ポリマーの存在下に固相化させてアッセイプレートを調製し、このアッセイプレートを用いて、上記融合細胞が産生する抗体をELISA法で試験し、当該ペプチドに反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択する方法を用いることもできる。
本発明のモノクローナル抗体は、上記において選択されたハイブリドーマを適当な培地を用いて培養して得られる培養上清から常法(例えば、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAを用いるアフィニティークロマトグラフィー等)により容易に取得することができる。また、上記ハイブリドーマを適当な哺乳動物(例えば、マウス等)の腹腔内に接種し、ハイブリドーマ細胞を増殖させた後、当該哺乳動物の腹水、血清等から所望のモノクローナル抗体を採取することもできる。
得られたモノクローナル抗体は、そのまま使用することもできるが、抗原結合断片として断片化して使用することもできる。抗原結合断片としては、Fv、F(ab’)2、Fab’、Fab、scFv等の各種フラグメントで、Asp-Leu-Xa-Xb-Arg(配列番号1)のアミノ酸配列を有するペプチドへの特異的結合活性が失われていないものであればよい。これら活性フラグメントの調製は、精製モノクローナル抗体に対してパパイン、ペプシン、トリプシン処理などの公知の方法を適用することで行うことができる(例えば、「免疫生化学研究法(続生化学実験講座5)」、日本生化学会編、89頁(1986年)参照)。
また本発明のモノクローナル抗体は、上記方法のほか、モノクローナル抗体のアミノ酸配列を参考にしてアミノ酸合成により調製する方法、並びにモノクローナル抗体をコードする遺伝子の塩基配列を参考にして遺伝子工学的手法により調製する方法によっても調製することができる。
本発明のモノクローナル抗体の重鎖可変領域(配列番号2)をコードする塩基配列を配列番号4に、また軽鎖可変領域(配列番号3)をコードする塩基配列を配列番号5に示す。また重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3をコードする塩基配列は、配列番号4中、それぞれ52〜75番目の塩基配列、127〜150番目の塩基配列、及び265〜291番目の塩基配列である。軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3をコードする塩基配列は、配列番号5中、それぞれ52〜69番目の塩基配列、121〜129番目の塩基配列、及び238〜264番目の塩基配列である。
なお、本発明のモノクローナル抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列は、配列番号4の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有し、ストリンジェントな条件でこれらの塩基配列と相補的な塩基配列に結合する塩基配列を有するものであってもよい。また本発明のモノクローナル抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列は、配列番号5の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有し、ストリンジェントな条件で当該塩基配列と相補的な塩基配列に結合する塩基配列を有するものであってもよい。ここでストリンジェントな条件としては、例えば42℃での50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDSを含む緩衝液中でのハイブリダーゼーション、または65℃での5×SSC、および1%SDSを含む緩衝液中でのハイブリダーゼーション(いずれも65℃での0.2×SSCおよび0.1%SDSの洗浄を伴う)を挙げることができる。
III.エピトープタグ、及びその利用
本発明が対象とするエピトープタグは、上記本発明のモノクローナル抗体が認識し、結合する、少なくとも「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」のアミノ酸配列(配列番号1)を最小認識配列として含むペプチドである。当該ペプチドは、水溶性であることが好ましい。なお、水溶性の定義は、前述した通りである。
当該エピトープタグは、前述する本発明のモノクローナル抗体との抗原抗体反応に好適に使用することができる。
ここで、前述するように、上記アミノ酸配列(配列番号1)において、Xaは、バリン(Val)、アラニン(Ala)、イソロイシン(Ile)またはスレオニン(Thr)のいずれか一つのアミノ酸残基であり、またXbは、リジン(Lys)以外の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基から選択されるいずれか一つのアミノ酸残基を意味する。
ここでLys以外のアミノ酸残基としては、タンパク質を構成するLys以外の19種のαアミノ酸(例えば、Ala, Arg, Asn, Gln, Glu, Gly, His, Ile, Leu, Met, Phe, Pro, Ser, Thr, Trp, Tyr, Val)を任意に挙げることができ、特に制限されない。
Xaとして好ましくはVal, Ala,Ile, 及びThrであり、より好ましくはValである。
「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」の配列として、制限されないものの、一例として、Asp-Leu-Val-Pro-Arg(配列番号6)、Asp-Leu-Ala-Pro-Arg(配列番号7)、Asp-Leu-Val-Ala-Arg(配列番号8)、及びAsp-Leu-Ala-Ala-Arg(配列番号9)を挙げることができる。好ましくはAsp-Leu-Val-Pro-Arg(配列番号6)である。
また本発明が対象とするエピトープタグには、下式で示されるアミノ酸配列
−X−X−X−X(配列番号31)
を最小認識配列として含むペプチドが含まれる。
これらの配列中、X、X、X、X及びXはそれぞれ下記のアミノ酸残基を意味する:
:Asp、GluまたはSerのいずれかのアミノ酸残基、
:Leu、IleまたはMetのいずれかのアミノ酸残基、
:Val、Ala、IleまたはThrのいずれかのアミノ酸残基、
:Lys以外の19種のタンパク質構成アミノ酸のうち任意に選択されるいずれかのアミノ酸残基、
:Arg。
かかるアミノ酸残基の組み合わせからなるアミノ酸配列としては、制限はされないものの、例えば下記のアミノ酸配列が含まれる。
(a)Asp-Leu-Val-X4-Arg(配列番号34)、例えばAsp-Leu-Val-Pro-Arg(配列番号6)、Asp-Leu-Val-Ala-Arg(配列番号8)、
(b)Asp-Leu-Ala-X4-Arg(配列番号35)
(c)Asp-Leu-Ile-X4-Arg(配列番号36)
(d)Asp-Leu-Thr-X4-Arg(配列番号37)
(e)Asp-Ile-Val-X4-Arg(配列番号38)
(f)Asp-Met-Val-X4-Arg(配列番号39)
(g)Glu-Leu-Val-X4-Arg(配列番号40)
(h)Ser-Leu-Val-X4-Arg(配列番号41)。
(上記配列中、X4は、Lys以外の19種のタンパク質構成アミノ酸のうちから任意に選択されるいずれかのアミノ酸残基を意味する)。
これらのなかでも好ましいアミノ酸配列(最小認識配列)としては、Asp-Leu-Val-Pro-Arg(配列番号6)を挙げることができる
これらのアミノ酸配列を有するペプチドは、「Asp-Leu-Xa-Xb-Arg」(配列番号1)または「X-X-X-X-X」(配列番号31)で示される5つのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなるものであってもよい。また、少なくとも当該アミノ酸配列を最小認識配列として有するものであれば、その限りにおいて、また上記アミノ酸配列のN末端側及び/またはC末端側に任意に1乃至複数の任意のアミノ酸残基を有するものであってもよい。エピトープタグを構成するペプチドのアミノ酸残基数としては、上記5アミノ酸残基からなる配列を含むものである限り、特に制限はされず、50より多いアミノ酸残基からなるポリペプチド(タンパク質)の形態にしてもよいし、また5〜50のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドの形態にしてもよい。
オリゴペプチドの形態に設計する場合、そのアミノ酸残基数としては、好ましくは5〜40程度、より好ましくは7〜30程度、さらに好ましくは7〜20程度、特に好ましくは7〜10程度を挙げることができる。かかるエピトープタグとしては、制限されないが、上記最小認識配列の前後(N及びC末端側)に1または複数のGlyあるいはSerなどのリンカー配列(例えば、GSリンカー配列)を有するオリゴペプチドを例示することができる。かかるエピトープタグとして、「Ser-Asp-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser」(配列番号29)で示すアミノ酸配列からなるオリゴペプチド、及び当該アミノ酸配列においてプロリン(Pro)をアラニン(Ala)に置換したアミノ酸配列からなるオリゴペプチドを一例として例示することができる。また上記リンカー配列としては、(GGGGS)n(配列番号10)または(GGGS)n(配列番号33)等で示されるGSリンカー配列(いずれも、nは1〜3の整数を意味する)を用いることもできる。
本発明のエピトープタグには、上記のようなリンカー配列を間に挟んで、配列番号1または配列番号31で示されるアミノ酸配列を2〜12個程度繰り返して含むオリゴまたはポリペプチドが含まれる。
当該エピトープタグは、被験物質、好ましくはペプチド(ポリペプチドを含む)(以下、これを「被験ペプチド」と総称する)を修飾する「タグ」として用いられる。そして、当該タグで修飾された被験ペプチドは、当該タグを特異的に認識する本発明のモノクローナル抗体との結合を指標として、検出することができる。つまり、本発明のエピトープタグは、前述する本発明のモノクローナル抗体と組み合わせて、被験ペプチドの相互作用解析、スクリーニング、定量、発現プロファイリングなどに用いることができる。また、目的とする被験ペプチドを、遺伝子工学を用いて上記タグとの融合ペプチドとして製造した場合、当該タグに特異的に結合する本発明のモノクローナル抗体とのアフィニティーを利用して、タグ融合ペプチドを単離回収することができる。つまり、本発明のエピトープタグは、前述する本発明のモノクローナル抗体と組み合わせて、抗原抗体反応を利用して、当該被験ペプチドの単離回収、精製などに用いることができる。
本発明のエピトープタグと融合した被験ペプチド(タグ融合ペプチド)の調製は、遺伝子工学的に行うことができる。具体的には、例えば、本発明のエピトープタグをコードする塩基配列を有し、当該エピトープタグを被験ペプチドの末端等に融合した状態で発現することが可能な「融合ペプチド発現用ベクター」を用いることによって実施することができる。この場合、まず被験ペプチドをコードする塩基配列を有するヌクレオチドを当該融合ペプチド発現用ベクターに組み込み、当該ベクターをそれに適した発現系に供してタグ融合ペプチドを発現させる。斯くして発現産生されたタグ融合ペプチドは、前述するように、本発明のモノクローナル抗体との親和性を利用したアフィニティー精製法により単離回収することができる。なお、ここでタグ融合ペプチドとして、タグと被験ペプチドとの間に任意のプロテアーゼが認識する配列(プロテアーゼ認識配列)を含むペプチドを用いることもでき、斯くして調製したタグ融合ペプチドは、必要に応じて、精製した後に、当該タンパク質分解酵素を用いてタグと被験ペプチドとを切断し、再度、本発明のモノクローナル抗体との親和性を利用したアフィニティー精製法を利用して、タグ及び消化されなかったタグ融合ペプチドを除去して、被験ペプチドを単離回収することもできる。例えばプロテアーゼとしては、トロンビンやTEVプロテアーゼ等を制限なく例示することができるが、特異性の高い点からTEVプロテアーゼを好適に用いることができる。
なお、このような精製において、本発明のモノクローナル抗体は任意の支持体に固定化した状態で用いることができ、かかる固相化抗体として、抗体固定化カラム、抗体固定化ビーズ及び抗体固定化チップ等を例示することができる(例えば、特開2005-326165号公報)。
IV. 被験物質の検出方法
前述するように、本発明のエピトープタグ及びモノクローナル抗体は、被験物質の検出に有効に用いることができる。ここで被験物質は、本発明のエピトープタグを結合させるか、若しくはエピトープタグと融合させることができるものであればよく、好適にはペプチド(ポリペプチドを含む)を挙げることができる。
本発明の検出方法は、本発明のモノクローナル抗体を本発明のエピトープタグのタグ抗体として用いることを特徴とする。具体的には、本発明の検出方法は、本発明エピトープタグを結合若しくは融合させた被験物質と、当該エピトープタグを特異的に認識してそれと結合する本発明のモノクローナル抗体(タグ抗体)との抗原抗体反応を利用して、被験物質を検出するというものであり、下記の工程を有することができる。
(1)本発明のモノクローナル抗体をタグ抗体として用いて、本発明のエピトープタグで標識してなる被験物質と抗原抗体反応を行う工程、
(2)タグ抗体が結合した抗原抗体反応物を指標として、被験物質を検出する工程。
ここで「エピトープタグで標識してなる被験物質」としては、好適にはエピトープタグを融合してなる被験ペプチド(以下、これを「タグ融合ペプチド」という)を挙げることができ、当該タグ融合ペプチドの調製方法は前述の通りである。
また抗原抗体反応に採用される条件は、本発明のモノクローナル抗体がタグ融合タンパク質のタグ領域を認識し結合する条件であればよく、特に制限されない。例えば、実験例3(3)に示すように、本発明のモノクローナル抗体とそのエピトープタグを含むペプチドは、3.7%ホルマリンで固定化した細胞においても抗原抗体反応することが確認されている。なお、当該抗原抗体反応は、タグ融合タンパク質を発現させた細胞内の生体環境条件下で実施することもでき、斯くして、所望タンパク質の発現プロファイリング等に応用することができる。
被験物質(タグ融合タンパク質)の検出は、抗原抗体反応により、タグ抗体が結合した抗原抗体反応物を指標として行うことができる(免疫染色)。この場合、タグ抗体として、放射性若しくは非放射性同位体、蛍光色素、または酵素等で標識された本発明のモノクローナル抗体を用いることにより、当該標識物また標識物による反応(酵素と基質との反応)を指標にして抗原抗体反応物を検出することができる。また、本発明のモノクローナル抗体としてFc領域を有する免疫グロブリンを用いる場合は、当該Fc領域を認識する第2抗体を用い、当該第2抗体と上記抗原抗体反応によって生じた抗原抗体反応物との複合体を検出することができる。この場合、第2抗体として、放射性若しくは非放射性同位体、蛍光色素、または酵素等で標識された抗体を用いることにより、当該標識物また標識物による反応(酵素と基質との反応)を指標にして抗原抗体反応物を検出することができる。
斯くして本発明の検出方法(免疫検出方法)によれば、被験タンパク質の相互作用解析、スクリーニング、定量、発現プロファイリングなどを行うことができる。
V.被験物質の単離回収方法(精製方法)
また前述するように、本発明のエピトープタグ及びモノクローナル抗体は、被験物質の単離回収(以下、単に「精製」という)に有効に用いることができる。ここで被験物質は、本発明のエピトープタグを結合させるか、若しくはエピトープタグと融合させることができるものであればよく、好適にはペプチド(ポリペプチドを含む)及びタンパク質を挙げることができる。
本発明の精製方法は、本発明のモノクローナル抗体を本発明のエピトープタグのタグ抗体として用いることを特徴とする。具体的には、本発明の精製方法は、本発明のエピトープタグを結合若しくは融合させた被験物質(タグ標識被験物質)と、当該エピトープタグを特異的に認識してそれと結合する本発明のモノクローナル抗体(タグ抗体)との抗原抗体反応を利用して、タグ標識被験物質または被験物質を単離し回収するというものであり、下記の工程を有することができる。
(1)本発明のエピトープタグで標識してなる被験物質を含有する被験試料と、本発明のモノクローナル抗体をタグ抗体として反応させる工程、
(2)上記タグ抗体が結合した抗原抗体反応物を被験試料から単離または回収する工程、
(3)必要に応じて、タグ抗体が結合した抗原抗体反応物からタグ抗体を除去し、被験物質を回収する工程。
ここで「エピトープタグで標識してなる被験物質」としては、好適にはエピトープタグを融合してなる被験ペプチド(ポリペプチドを含む)(タグ融合ペプチド)を挙げることができ、当該タグ融合ペプチドの調製方法は前述の通りである。また当該被験物質を含有する被験試料としては、タグ融合ペプチドを発現産生する細胞、組織、及びそれらの破砕物、並びにタグ融合ペプチドを含有する生体試料を例示することができる。
また抗原抗体反応に採用される条件は、前述するように、本発明のモノクローナル抗体がタグ融合ペプチドのタグ領域を認識し結合する条件であればよく、特に制限されない。なお、当該抗原抗体反応は、タグ融合ペプチドを発現させた細胞内の生体環境条件下で実施することもでき、斯くして、遺伝子工学的手法により、タグ融合ペプチドを発現産生させた細胞から、所望のペプチドを単離回収することができる。
被験物質(タグ融合ペプチド)の回収は、まず、抗原抗体反応により、タグ抗体が結合した抗原抗体反応物を被験試料から単離回収することによって行なわれる。この場合、可溶性のタグ融合ペプチド(抗原)が本発明のモノクローナル抗体との抗原抗体反応により不溶化するようであれば、これを沈殿させることでタグ融合ペプチドを抗体抗原反応物として被験試料から分離及び精製することができる(免疫沈降法)。またこの場合、予め被験試料を特異性のない抗体と処理して、非特異的に吸着する成分を取り除いておいてもよい。また当該方法は、本発明のモノクローナル抗体を任意の支持体に固定化した状態で用いることができ、かかる固相化抗体として、前述するように、抗体固定化カラム、抗体固定化ビーズ及び抗体固定化チップ等を例示することができる(例えば、特開2005-326165号公報)。また、本発明のモノクローナル抗体としてFc領域を有する免疫グロブリンを用いる場合は、当該Fc領域を認識する第2抗体を用い、当該第2抗体と上記抗原抗体反応によって生じた抗原抗体反応物との結合を利用して抗原抗体反応物を回収することもできる(プルダウン法(Pull-down assay)。
タグ抗体が結合した抗原抗体反応物からタグ抗体を除去する方法としては、制限はされないが、例えば、タグ融合ペプチドとして、タグと被験ペプチドとの間にトロンビンやTEVプロテアーゼ等のプロテアーゼを認識する配列を入れたペプチドを用い、抗原抗体反応後に、当該プロテアーゼで切り出すという方法を例示することができる。
またタグ融合ペプチドからタグを除去する方法として、例えばトロンビンやTEVプロテアーゼ等のプロテアーゼを用いてタグとペプチドとを切断し、再度、本発明のモノクローナル抗体との親和性を利用したアフィニティー精製法を利用して、タグ及び消化されなかったタグ融合ペプチドを除去して、目的のペプチドを単離回収することもできる。
斯くして本発明の精製方法によれば、種々のペプチドが共存する、例えば生体試料の中から、所望のペプチドを選択的に単離し回収することができる。
以下、本発明の構成及び効果を、下記の実施例及び実験例を例として説明する。但し、本発明はかかる実験例等によって何ら制限されるものではない。
実施例1 ハイブリドーマG196及びモノクローナル抗体(G196抗体)の調製
(1)ハイブリドーマG196の調製
GST(glutathione S-transferase)融合タンパク質発現用ベクターであるpGEX-2Tベクター(GEヘルスケア・ジャパン社)を用いて、大腸菌の形質転換を行った。イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)誘導されたGSTタンパク質を含む大腸菌溶解液からグルタチオンアガロースビーズ(Sigma社)を用いてGSTタンパク質を精製した。精製したGSTタンパク質をフロイント完全アジュバント(DIFCO社)でエマルジョン化し、BALB/c マウス(8週齢、メス)に皮下注射し、免疫を開始した。2回目以降はフロイント不完全アジュバント(DIFCO社)を用いて、精製したGSTタンパク質をエマルジョン化して免疫に使用した。2週間間隔で合計3回の免疫をした後、採血し、取得した血清を用いてイムノブロット(SDS-PAGEでGSTタンパク質を泳動、コントロールとしてウシ血清アルブミン)により抗体価を確認した。
抗体価の上昇を確認した免疫済みのマウスから脾臓細胞を調整後、Galfreらによる方法(非特許文献1:Galfre, G. and Milstein, C.: Preparation of monoclonal antibodies: strategies and procedures. Methods Enzymol., 73: 3-46, 1981)に準じて、ポリエチレングリコールを用いてマウスミエローマ細胞P3/NSI/1-Arg-1(ATCC TIB-18)と融合を行った。混合させる脾臓細胞/ミエローマ細胞比は、脾臓細胞:ミエローマ=10:1でおこなった。これを、前々日に96ウェル培養プレートに蒔き込んだフィーダー細胞(腹腔浸出細胞)に重層して、炭酸ガス培養器で培養(37℃、5%CO2)した。培養の翌日、20% FCS(fetal calf serum)およびHAT(ヒポキサンチン,アミノプテリン、チミジン)(ICN社)RPMI1640培地(ニッスイ社)を用いて細胞を培養し、選択を開始した。2週間後、HAT選択培地において増殖した細胞を含むウェルの培養上清を回収した後、pGEX-2Tベクター由来の精製GSTタンパク質を用いたELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法により、抗体生成を確認するとともに、抗体価を評価した。ELISA陽性の抗体を産生する融合細胞(ハイブリドーマ)をさらに限界希釈法により3回のクローニングをおこない、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得た。以下、このハイブリドーマを「ハイブリドーマG196」といい、当該ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を「G196抗体」と称する。
(2)モノクローナル抗体の精製
上記で調製したハイブリドーマG196が産生するモノクローナル抗体(G196抗体)を、プロテインAカラム(GEヘルスケア・ジャパン社)を用いて精製した。具体的には、まずハイブリドーマG196の培養上清を0.45μmのメンブランを通じて濾過することによって浄化し、pHを1N NaOHで8.0に調整した。次いで、これをプロテインAカラムに通液し、PBS(pH8)で洗浄した後、抗体を0.1M クエン酸溶液を用いてカラムから溶出させた。G196抗体を含む溶出液を、PBSで透析することにより、精製G196抗体を調製取得した。
(3)モノクローナル抗体のサブタイプの決定
上記で取得したモノクローナル抗体(G196抗体)の抗体クラスを、サブクラスタイピングキット(HyCult Biotech社)を用いた酵素免疫測定法で評価したところ、IgG1κであることが確認された。
実験例1 モノクローナル抗体(G196抗体)の遺伝子解析
上記実施例1で取得したハイブリドーマG196からRNAを抽出した後、oligo-dTプライマーを用いて、逆転写し、cDNAを作製した。かかるcDNAを鋳型として、下記に示す重鎖プライマーセット及び軽鎖プライマーセットを用いてPCRを行い、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド及びそのアミノ酸配列、並びに軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド及びそのアミノ酸配列を解析した。
Figure 0005928734
その結果、判明したハイブリドーマG196が産生するモノクローナル抗体(G196抗体)の重鎖可変領域のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号2及び4に示す。これらのアミノ酸配列及び塩基配列のうち、アミノ酸番号18〜25及び塩基番号52〜75の領域が重鎖可変領域のCDR1に相当し、アミノ酸番号43〜50及び塩基番号127〜150の領域が重鎖可変領域のCDR2に相当し、またアミノ酸番号89〜97及び塩基番号265〜291の領域が重鎖可変領域のCDR3に相当する。
またG196抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号3及び5に示す。これらのアミノ酸配列及び塩基配列のうち、アミノ酸番号18〜23及び塩基番号52〜69の領域が軽鎖可変領域のCDR1に相当し、アミノ酸番号41〜43及び塩基番号121〜129の領域が軽鎖可変領域のCDR2に相当し、またアミノ酸番号80〜88及び塩基番号238〜264の領域が軽鎖可変領域のCDR3に相当する。
実験例2 G196抗体の認識部位の同定
(1)G196抗体とGST融合タンパク質発現用ベクターの遺伝子産物との結合性
GST融合タンパク質発現用ベクターとして、pGEX-4T-2ベクターとpGEX-6P-1ベクター(いずれもGEヘルスケア・ジャパン社)を用いて、実施例1で調製したハイブリドーマG196から産生されるモノクローナル抗体(G196抗体)と当該GST融合タンパク質発現用ベクターの遺伝子産物との結合性を評価した。
具体的には、上記各GST融合タンパク質発現用ベクターを用いて大腸菌を形質転換し、形質転換した大腸菌の溶解液から、各GST融合タンパク質を精製した。pGEX-4T-2ベクターの遺伝子産物(以下、「遺伝子産物4T-2」または単に「4T-2」という)は、GSTのC末端側に、図2Aの最下段(表示「4T-2」)に示すアミノ酸配列(配列番号15)を有しており、pGEX-6P-1ベクターの遺伝子産物(以下、「遺伝子産物6P-1」または単に「6P-1」という)は、GSTのC末端側に、図2Aの下から2段目(表示「6P-1」)に示すアミノ酸配列(配列番号16)を有している。ウエスタンブロット法を用いて、精製した各GST融合タンパク質に対するG196抗体の認識結合の有無を評価した。なお、各タンパク質の量はクマシー染色により確認した。
結果を図2Bに示す。「遺伝子産物4T-2」の結果を図2Bの最左列に、「遺伝子産物6P-1」の結果を図2Bの左から2番目の列に、それぞれ示す。これから分かるように、G196抗体は、pGEX-4T-2ベクターの遺伝子産物4T-2は認識するものの、pGEX-6P-1ベクターの遺伝子産物6P-1は認識しなかった。
「遺伝子産物4T-2」と「遺伝子産物6P-1」のアミノ酸配列(図2A:4T-2と6P-1)を比較し、G196抗体はGSTそのもののアミノ酸配列ではなく、GSTのC末端側のプロテアーゼ認識部位を含むリンカー配列を認識する可能性が示唆された。
(2)G196抗体の認識部位の検討と同定
(2-1)最小認識アミノ酸配列の決定
上記(1)の結果から、G196抗体が認識するエピトープの候補配列として、「遺伝子産物4T-2」が特有に有するアミノ酸配列「SDLVPRGSP」(配列番号15のアミノ酸番号6〜14の領域)から3〜9アミノ酸残基からなる複数のオリゴペプチドを作製し(図2A参照)、それをコードするヌクレオチドをpGEX-6P-1ベクター(GEヘルスケア・ジャパン社)に導入して、大腸菌を形質転換した。なお、前述するように、pGEX-6P-1ベクターそのものの遺伝子産物は、G196抗体によって認識されない。形質転換した大腸菌の溶解液から、各候補アミノ酸配列を融合させたGST融合タンパク質を精製した。各候補アミノ酸配列を融合させたGST融合タンパク質(以下、単に「6P-12」、「6P-14」、「6P-16」、「6P-15」、「6P-17」、または「6P-19」ともいう。)のGSTからC端側までのアミノ酸配列(配列番号17〜22)を、候補アミノ酸配列を含めて図2Aに示す。
次いで、ウエスタンブロット法を用いて、(1)と同様に、精製した各GST融合タンパク質に対するG196抗体の認識結合の有無を評価した。結果を図2Bに示す。右側から「6P-19」、「6P-17」、「6P-15」、「6P-16」、「6P-14」、及び「6P-12」の結果を示す。
これからわかるように、G196抗体は「6P-15」、「6P-14」、及び「6P-12」を認識するものの、「6P-19」、「6P-17」、及び「6P-16」は認識しなかった。このことから、G196抗体の最小認識配列は、「DLVPR」(配列番号6)であることが判明した。
(2-2)アラニンスキャン
次いで、最小認識配列「DLVPR」(配列番号6)のうち、どのアミノ酸残基がG196抗体の認識に重要であるかを確認するために、アラニンスキャンを実施した。具体的には、最小認識配列「DLVPR」中のアミノ酸残基を一つずつアラニンに置換した5アミノ酸残基からなる複数のオリゴペプチドを作製し(図3A中の候補配列参照)、それをコードするヌクレオチドをpGEX-6P-1ベクターに導入して、大腸菌を形質転換し、当該大腸菌が産生する候補配列を融合させたGST融合タンパク質を用いて、(2-1)と同様にウエスタンブロット法を行った。各候補配列を融合させたGST融合タンパク質(以下、単に「6P-15」、「6P-24」、「6P-25」、「6P-26」、「6P-27」、「6P-28」または「6P-29」ともいう。)のGSTからC端側までのアミノ酸配列(配列番号20,23〜28)を、候補配列を含めて図3Aに示す。また、ウエスタンブロット及びクマシー染色の結果を図3Bに示す。右側から「6P-29」、「6P-28」、「6P-27」、「6P-26」、「6P-25」、「6P-24」、「6P-15」、「6P-1」及び「4T-2」の結果を示す。
これからわかるように、G196抗体は「6P-15」、「6P-26」、及び「6P-27」を認識するものの、「6P-24」、「6P-25」、「6P-28」及び「6P-29」は認識しなかった。このことから、G196抗体の最小認識配列「DLVPR」(配列番号6)のうち、「DL_ _R」のアミノ酸残基が重要であることが判明した。
実験例3 G196抗体の評価(その1)
実施例1で作製したG196抗体について、「DLVPR」(配列番号6)を有するペプチド(GSDLVPRGSC:配列番号30)との親和性を、等温滴定カロリーメータを用いて測定した。
結果を図4に示す。この結果から、Kd値は、約0.4〜2nM、具体的には1.25±0.77×10−9M(1.25±0.77nM)であり、本発明のG196抗体は「DLVPR」のアミノ酸配列を有するペプチドに対して高い親和性を有することが確認された。
実験例4 G196抗体の評価(その2)
N末端にビオチンを付加した合成ペプチド(GSGSDLVPRG)(配列番号42)、およびその変異体(エピトープ部位であるDLVPR領域のアミノ酸残基を各々他の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基で置換した合成ペプチド)をストレプトアビジンでコートしたプレート上に結合させた。その後、実施例1で作製したG196抗体との結合を、常法に従い酵素結合免疫吸着法(ELISA)により確認し、G196抗体と結合するペプチドのアミノ酸配列を調べた。
結果を、使用したペプチドのアミノ酸配列とともに、図5に示す。この結果から、G196抗体は、「DLVPR」(配列番号6)のアミノ酸配列に特異的に結合するのみならず、当該アミノ酸配列(DLVPR)のうち、Asp(D)をGlu(E)またはSer(S)に置換したアミノ酸配列;Leu(L)をIle(I)に置換したアミノ酸配列;Val(V)をIle(I)またはThr(T)に置換したアミノ酸配列;Pro(P)を19種の全てのタンパク質構成アミノ酸のいずれかに置換したアミノ酸配列をいずれも認識し、選択的に結合することが確認された。
実験例5 G196抗体の評価(その3)
G196抗体の認識部位「DLVPR」(配列番号6)を含むアミノ酸配列「SDLVPRGS」(「6P12」という)(配列番号29)を、FLAG-HA-EGFP(FHG)に融合させて(FHG-6P12)、HeLa細胞に発現させた(HeLa細胞(FHG-6P12))。また、比較対照のため、6P12を融合させないFLAG-HA-EGFP(FHG)そのものをHeLa細胞に発現させた(HeLa細胞(FHG))。
以下、タグ抗体として、FHGのうちFLAG部位を認識するFLAG(M2)抗体(Sigma社)及び本発明のG196抗体を用いて、定法に従って、ウエスタンブロット法、免疫沈降法および細胞免疫染色法を実施した。
(1)ウエスタンブロット法
(1-1)方法
HeLa細胞(FHG)及びHeLa細胞(FHG-6P12)の各細胞溶解液を、SDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動後、PVDF(フッ化ポリビニリデン)膜(Millipore社)にセミドライ法により転写した。タンパク質が転写された膜を5% 脱脂粉乳および0.1% Tween-20を含むPBSによるブロッキング後、それぞれの特異抗体液を一次抗体として転写膜に結合させ、0.1% Tween-20を含むPBSにより余分な一次抗体をよく洗い落とした。さらにHRP(horseradish peroxidase)標識二次抗体を転写膜に結合させ、0.1% Tween-20を含むPBSにより余分な二次抗体をよく洗い落とした。HRPの基質として、分解されると発光する蛍光試薬(Western lightning Chemiluminescence試薬、パーキンエルマー社)を用いて、転写膜上の目的のタンパク質のバンドからの蛍光によりX線フィルム(富士フィルム社)に感光し、検出した。
(1-2)結果
結果を図6に示す。図6中、Aは、FLAG(M2)抗体(Sigma社)によるエピトープタグ(FHG及びFHG-6P12)の検出結果を、Bは、G196抗体によるエピトープタグ(FHG及びFHG-6P12)の検出結果をそれぞれ示す。図からわかるように、ウエスタンブロット法において、G196抗体はバックグラウンドもなく、また既存のFLAG(M2)抗体(Sigma社)と遜色なく、HeLa細胞内で発現したFHG-6P12を認識することが可能であった。またG196抗体は、FHG部位を認識せず、FHG-6P12のうち6P12部位を選択的に認識することが確認された。
(2)免疫沈降法
(2-1)方法
それぞれの特異的抗体(FLAG(M2)抗体、G196抗体)をプロテインAセファロースビーズ(GEヘルスケア・ジャパン社)に結合させ、余分な抗体をよく洗い落とした。特異的抗体を結合させたビーズをHeLa細胞(FHG)及びHeLa細胞(FHG-6P12)それぞれの細胞溶解液に加え結合させ、ビーズに特異的に結合するタンパク質以外をよく洗い落とした。ビーズを2×SDS サンプル緩衝液に懸濁後、100℃, 5分間処理してサンプルとした。そのサンプルを、SDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動後、PVDF(フッ化ポリビニリデン)膜(Millipore社)にセミドライ法により転写した。タンパク質が転写された膜を5% 脱脂粉乳および0.1% Tween-20を含むPBSによるブロッキング後、それぞれの特異抗体液を一次抗体として転写膜に結合させ、0.1% Tween-20を含むPBSにより余分な一次抗体をよく洗い落とした。さらにHRP(horseradish peroxidase)標識二次抗体を転写膜に結合させ、0.1% Tween-20を含むPBSにより余分な二次抗体をよく洗い落とした。HRPの基質として、分解されると発光する蛍光試薬(Western lightning Chemiluminescence試薬、パーキンエルマー社)を用いて、転写膜上の目的のタンパク質のバンドからの蛍光によりX線フィルム(富士フィルム社)に感光し、検出した。
(2-2)結果
結果を図7に示す。FLAG(M2)抗体(Sigma社)によるエピトープタグ(FHG及びFHG-6P12)の検出結果、及びG196抗体によるエピトープタグ(FHG及びFHG-6P12)の検出結果をそれぞれ示す。図からわかるように、免疫沈降法において、G196抗体は既存のFLAG(M2)抗体(Sigma社)と遜色なく、細胞内で発現したFHG-6P12タンパク質を認識し、免疫沈降することが可能であった。またウエスタンブロット法と同様に、G196抗体は、FHG部位を認識せず、FHG-6P12のうち6P12部位を選択的に認識することが確認された。
(3)細胞染色法
(3-1)方法
3.7% ホルマリンと0.2% Triton X-100を含む緩衝液でそれぞれのHeLa細胞(HeLa細胞(FHG)及びHeLa細胞(FHG-6P12)を固定と透過処理をおこなった。5% 脱脂粉乳を含むPBSによるブロッキング後、それぞれの特異抗体液を一次抗体として細胞と反応させ、PBSにより余分な一次抗体をよく洗い落とした。さらにAlexa Fluor色素標識二次抗体(Molecular Probes社)を細胞に反応させ、PBSにより余分な二次抗体をよく洗い落とした。包埋緩衝液(Vector Laboratories社)を用いて細胞をスライドガラス上に固定後コンフォーカルレーザ顕微鏡(オリンパス社)で観察した。
(3-2)結果
結果を図8に示す。αGFP抗体(ウサギ)(バイオアカデミア社)によるエピトープタグ(FHG及びFHG-6P12)の検出結果(図8A及びB共に右上欄に示す)、G196抗体によるエピトープタグ(FHG及びFHG-6P12)の検出結果(図8A及びB共に左上欄に示す)をそれぞれ示す。図からわかるように、免疫染色法において、G196抗体は、既存のαGFP抗体(バイオアカデミア社)と遜色なく、またバックグラウンドも低く、細胞内で発現したFHG-6P12を認識し、免疫染色することが可能であった(図8B参照)。また、6P12をエピトープタグとして付加しても、FHGの細胞内局在は変わらなかった。また、図8Aからわかるように、G196抗体は、FHG部位を認識せず、FHG-6P12のうち6P12部位を選択的に認識することが確認された。
実験例6 G196(scFv)抗体の作製とその評価
(1)G196(scFv)抗体の作製
pET28-His-TEVベクター(Novagen社のpET28を改変。6X Hisタグ配列の下流にTEVプロテアーゼ認識配列を有する。)を用いて、6X Hisタグ融合タンパク質としてG196のscFvを大腸菌で発現させた。この際、大腸菌中で発現産生した6X Hisタグ融合タンパク質は不溶分画に局在する。そこで8Mの尿素を含むPBS(denature条件)を用いて大腸菌を溶解し、金属キレートアフィニティークロマトグラフィーに供した。具体的には、大腸菌の溶解物を、denature条件下でもHisタグと特異的に結合する金属キレート樹脂(Ni-NTA agarose, Qiagen社)に供して結合させた後、徐々に尿素を除去することで6X Hisタグ融合タンパク質をrenatureさせて精製した。
得られた6X Hisタグ融合タンパク質(G196(scFv)抗体)のアミノ酸配列を、配列番号32に示す。当該アミノ酸配列(配列番号32)のアミノ酸番号22〜123領域は、本発明モノクローナル抗体(IgG)の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸番号7〜108の領域に相当し、当該アミノ酸配列(配列番号32)のアミノ酸番号148〜245の領域が、本発明モノクローナル抗体(IgG)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3)のアミノ酸番号1〜98の領域に相当する。これらの領域が、GSリンカー配列を有するペプチドを介して結合している。
(2)評価(免疫沈降法)
実施例1で調製したG196抗体と、上記で調製したG196(scFv)抗体を用いて、実験例5(2)の方法と同様の方法で、免疫沈降法により、FLAG-HA-EGFP(FHG)及びFHG-6P12に対する結合性を評価した。
結果を図9に示す。図からわかるように、G196(scFv)抗体は、実施例1で調製したG196抗体と遜色なく、細胞内で発現したFHG-6P12を認識し、免疫沈降することが確認された。また、G196(scFv)抗体は、G196抗体と同様には、FHG部位を認識せず、6P12部位を選択的に認識することが確認された。
実験例7 G196抗体の評価(その4)
転写因子であるATF/CREB タンパク質ファミリーであるAtf1のC末端に、G196抗体の認識部位「DLVPR」(配列番号6)を3個含むアミノ酸配列「GSDLVPRGSDLVPRGSDLVPRGS」(配列番号43)(以下、これを「G196」という)と GFP を融合させて(Atf1-G196-GFP)、これを分裂酵母に発現させた(分裂酵母(Atf1-G196-GFP))。また、比較対照のため、GFPのC末端にIws1を融合させて(GFP-Iws1)、これを分裂酵母に発現させた(分裂酵母(GFP-Iws1))。
以下、エピトープタグとして、分裂酵母に発現させた「Atf1-G196-GFP」及び「GFP-Iws1」、並びにタグ抗体として、抗GFP抗体(ウサギ)(バイオアカデミア社)及び実施例1で作製した本発明のG196抗体を用いて、定法に従って、ウエスタンブロット法、クロマチン免疫沈降法および細胞免疫染色法を実施した。
(1)ウエスタンブロット法
(1-1)分裂酵母のlysateの調製法
225 mg/L のadenine, leucine, uracil を添加したYE 培地 (0.5% yeast extract, 3% glucose) で培養した分裂酵母(野生型酵母、分裂酵母(Atf1-G196-GFP)、分裂酵母(GFP-lws1))を、protease inhibitor cocktail (SIGMA, P8215) を含むBuffer 1 (50 mM HEPES-KOH [pH 7.5], 140 mM NaCl, 1 mM EDTA, 1% Triton X-100, and 0.1% Na-deoxycholate) に懸濁し、ガラスビーズ (BioSpec, 11079-105) とMulti-Beads Shocker (Yasui Kikai, MB400U)により破砕した。
(1-2)方法
上記で調製した各酵母の細胞溶解液(Lysate)を、SDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動後(図10中、左側カラムから順に、野生型酵母、分裂酵母(Atf1-G196-GFP)、分裂酵母(GFP-lws1))、PVDF膜(Millipore社)にセミドライ法により転写した。タンパク質が転写された膜を5% 脱脂粉乳および0.1% Tween-20を含むPBSによるブロッキング後、それぞれの特異抗体液を一次抗体として転写膜に結合させ、0.1% Tween-20を含むPBSにより余分な一次抗体をよく洗い落とした。さらにHRP標識二次抗体を転写膜に結合させ、0.1% Tween-20を含むPBSにより余分な二次抗体をよく洗い落とした。HRPの基質として、分解されると発光する蛍光試薬(Western lightning Chemiluminescence試薬、パーキンエルマー社)を用いて、転写膜上の目的のタンパク質のバンドからの蛍光によりX線フィルム(富士フィルム社)に感光し、検出した。
(1-3)結果
結果を図10に示す。図中、上段の電気泳動像は、本発明のG196抗体によるウエスタンブロット検出結果を、下段の電気泳動像は、抗GFP抗体によるウエスタンブロット検出結果をそれぞれ示す。この結果からわかるように、本発明のG196抗体は、G196を融合したAtf1-G196-GFPを発現させた酵母[分裂酵母(Atf1-G196-GFP)]の細胞溶解液に選択的に結合し、野生型酵母やGFPのみを融合させたGFP-Iws1を発現させた酵母[分裂酵母(GFP-Iws1)]の細胞溶解液には結合しないことが確認された。
(2)免疫沈降法
(2-1)クロマチン免疫沈降法(図11)
YES培地で培養した分裂酵母[野生型、及び分裂酵母(Atf1-G196-GFP)]を、1% formaldehyde/PBSで固定後、125 mM glycineで反応を停止させた。ガラスビーズ (BioSpec, 11079-105) とMulti-Beads Shocker (Yasui Kikai, MB400U)により破砕後、Bioruptor (Cosmo-bio, UCD-250) によりDNA を断片化した。
G196抗体により免疫沈降した後、proteinase K 処理し、QIAquick PCR Purification Kit (QIAGEN, 28106) を用いてDNAを精製した。標的配列は、SYBR Premix ExTaq (TaKaRa, PR041)を用いて, Thermal Cycler Dice Real Time System (TaKaRa, TP800)により解析した。定量的PCRに用いたプライマーを表1に示す。
Figure 0005928734
Atf1は、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseをコードするtdh1 遺伝子(SPBC32F12.11) の300bp上流に存在するCRE (TGACGT) (配列番号48)を認識して結合することが知られている。その配列よりさらに 1 kbp 上流をネガティブコントロールとしてG196抗体によるクロマチン免疫沈降の検出結果をそれぞれ示す。
結果を図11に示す。この結果から、G196抗体は、分裂酵母(Atf1-G196-GFP)の細胞内で発現したG196(GSDLVPRGSDLVPRGSDLVPRGS:(配列番号43)を認識して、クロマチン免疫沈降できることがわかった。
(3)細胞染色法
下記の操作により、分裂酵母(Atf1-G196-GFP)及び野生型酵母の細胞をそれぞれ固定化し透過処理を行った。
1.YES培養液(0.5% yeast extract, 3% glucose)で対数増殖中の分裂酵母(Atf1-G196-GFP)及び野生型酵母に、それぞれホルムアルデヒドを最終濃度3%になるよう加える。
2.固定処理の後、グリシンを最終濃度250 mMになるように加えてクエンチングする。
3.得られた細胞をPEMS'(PBS pH 7.5, 1 mM EGTA, 1 mM MgSO4, 1.2 M sorbitol)で洗い、PEMS'(PBS pH 7.5, 1 mM EGTA, 1 mM MgSO4, 1.2 M sorbitol,5 mg/ml Zymolyase 20T, 0.1% 2-ME)に再懸濁して室温で60分放置する。
4.これをPEM'(PBS pH 7.5, 1 mM EGTA, 1 mM MgSO4、1% Triton X-100)に再懸濁して室温で30分放置する。
5.得られた細胞をPEM'(PBS pH 7.5, 1 mM EGTA, 1 mM MgSO4)で3回洗う。
6.洗浄した細胞を、PEMAL'(PBS pH 7.5, 1 mM EGTA, 1 mM MgSO4, 0.1% Na azide, 0.1 M L-lysine HCl,5% Milk)に懸濁して室温で30分放置する。
斯くして調製した分裂酵母(Atf1-G196-GFP)及び野生型酵母の細胞を、5% 脱脂粉乳を含むPBSによるブロッキング後、透過光観察、DAPI染色(核染色)、及び抗GFP抗体(ウサギ)(バイオアカデミア社)またはG196抗体を一次抗体とした免疫染色を行った。免疫染色は、抗体液を細胞と反応させた後に、Alexa Fluor色素標識二次抗体(Molecular Probes社)を反応させて行った。DAPI染色(核染色)、または免疫染色後、包埋緩衝液(Vector Laboratories社)を用いて細胞をスライドガラス上に固定後コンフォーカルレーザ顕微鏡(オリンパス社)で観察した。
結果を図12に示す。図からわかるように、免疫染色法において、G196抗体は、既存の抗GFP抗体と遜色なく、またバックグラウンドも低く、分酵酵母(Atf1-G196-GFP)で発現したAtf1-G196-GFPタンパク質を認識し、免疫染色することが可能であった。
配列表のフリーテキスト
配列番号1、6〜9、31、34〜41は、本発明のモノクローナル抗体G196が認識するエピトープ領域(最小認識配列)のアミノ酸配列;配列番号10及び33は、GSリンカー配列の構成単位領域のアミノ酸配列;配列番号11〜14はプライマーの塩基配列;配列番号15はpGEX-4T-2ベクターの遺伝子産物のアミノ酸配列;配列番号16はpGEX-6P-1ベクターの遺伝子産物のアミノ酸配列;配列番号17〜28はGST融合タンパク質のGSTに融合したC末領域のペプチドのアミノ酸配列:配列番号29〜30、42及び43は本発明のモノクローナル抗体G196が認識するエピトープ領域(最小認識配列)を含むペプチドのアミノ酸配列;配列番号44〜47は実験例7のクロマチン免疫沈降法において定量的PCRに用いたプライマーの塩基配列をそれぞれ示す。配列番号48はCREのアミノ酸配列を示す。配列番号32は、6X Hisタグ融合タンパク質(G196(scFv)抗体)のアミノ酸配列を示す。

Claims (13)

  1. 下記に示すアミノ酸配列:
    Asp-Leu-Xa-Xb-Arg(配列番号1)
    (配列中、
    XaはVal、Ala、IleまたはThrのいずれか一つのアミノ酸残基であって、XbはProであるか、または
    XaはValであって、XbはLys以外の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基から選択されるいずれか一つのアミノ酸残基を意味する。)
    からなるペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体であって、
    配列番号2に示す18〜25番目のアミノ酸配列からなるCDR1、43〜50番目のアミノ酸配列からなるCDR2、及び89〜97番目のアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに
    配列番号3に示す18〜23番目のアミノ酸配列からなるCDR1、41〜43のアミノ酸配列からなるCDR2、及び80〜88のアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域
    を含むことを特徴とするモノクローナル抗体。
  2. 配列番号6〜8のいずれかに示すアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項1記載のモノクローナル抗体。
  3. 上記モノクローナル抗体が、配列番号2に示すアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号3に示すアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むものである、請求項1または2に記載するモノクローナル抗体。
  4. 配列番号30に示すアミノ酸配列からなるペプチドに対する反応速度定数(Kd値)が0.1〜10nMである、請求項1乃至3のいずれかに記載するモノクローナル抗体。
  5. マウスに由来する免疫グロブリンG(IgG)またはその抗原結合断片である、請求項1乃至のいずれかに記載するモノクローナル抗体。
  6. 請求項1乃至のいずれかに記載するモノクローナル抗体をコードする遺伝子であって、
    配列番号4に示す塩基配列または当該塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を、上記モノクローナル抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列として、また
    配列番号5に示す塩基配列または当該塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を上記モノクローナル抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列として
    含むことを特徴とする、上記遺伝子。
  7. 請求項1乃至のいずれかに記載するモノクローナル抗体との抗原抗体反応に使用されるエピトープタグであって、
    Asp-Leu-Xa-Xb-Arg(配列番号1)
    (配列中、
    XaはVal、Ala、IleまたはThrのいずれか一つのアミノ酸残基であって、XbはProであるか、または
    XaはValであって、XbはLys以外の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基から選択されるいずれか一つのアミノ酸残基を意味する。)
    で示されるアミノ酸配列をエピトープ領域(最小認識配列)とするか、または
    X- X- X- X- X(配列番号31)
    配列中、XはGluまたはSer;XはLeu;XはVal;XPro;XはArg、または
    はAsp;X はIle;X はVal;X はPro;X はArgを示す。)
    で示されるアミノ酸配列をエピトープ領域(最小認識配列)とするペプチドからなるエピトープタグ。
  8. 下記配列からなるいずれかのオリゴまたはポリペプチドであるエピトープタグ:
    Ser-Asp-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser(配列番号29)、
    Gly-Ser-Asp-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-Cys(配列番号30)、
    Gly-Ser-Asp-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-Asp-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser-Asp-Leu-Val-Pro-Arg-Gly-Ser(配列番号43)、
    Gly-Ser-Gly-Ser-Asp-Leu-Xa-Xb-Arg-Gly
    (配列中、XaはVal、Ala、IleまたはThrのいずれか一つのアミノ酸残基であって、XbはProであるか、または
    XaはValであって、XbはLys以外の19種類のタンパク質構成アミノ酸残基から選択されるいずれか一つのアミノ酸残基を意味する。)、
    Gly-Ser-Gly-Ser-X -X -X -X -X -Gly
    (配列中、X はGluまたはSer;X はLeu;X はVal;X はPro;X はArg、または
    はAsp;X はIle;X はVal;X はPro;X はArgを示す。)。
  9. 請求項7に記載する配列番号1または配列番号31に示されるアミノ酸配列のN及び/またはC末端側にGSリンカー配列が結合してなるオリゴまたはポリペプチドであるエピトープタグ。
  10. 請求項乃至のいずれかに記載するエピトープタグを認識するタグ抗体として用いられる、請求項1乃至のいずれかに記載するモノクローナル抗体。
  11. 下記の工程を有する被験物質の検出方法:
    (1)請求項1乃至のいずれかに記載するモノクローナル抗体をタグ抗体として用いて、請求項乃至のいずれかに記載するエピトープタグで標識してなる被験物質と抗原抗体反応を行う工程、
    (2)タグ抗体が結合した抗原抗体反応物を指標として、被験物質を検出する工程。
  12. 下記の工程を有する、被験試料の中から被験物質を単離または回収する法:
    (1)請求項乃至のいずれかに記載するエピトープタグで標識してなる被験物質を含有する被験試料と、請求項1乃至のいずれかに記載するモノクローナル抗体をタグ抗体として反応させる工程、
    (2)上記タグ抗体が結合した抗原抗体反応物を被験試料から単離または回収する工程、及び
    (3)タグ抗体が結合した抗原抗体反応物からタグ抗体を除去し、被験物質を回収する工程。
  13. さらに下記の工程を有する請求項12記載の方法:
    (4)(3)の工程で回収した被験物質からエピトープタグを除去する工程。
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