JP2009139372A - ラットIgE測定試薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】操作が簡便で、かつ測定精度、特異性、再現性に優れたラットIgEの測定試薬を提供すること。
【解決手段】被験試料中のラットIgEを測定する試薬において、ラットIgEを認識するが抗原認識部位を異にする2種のモノクローナル抗体を構成成分とすることを特徴とするラットIgE測定試薬が提供される。当該ラットIgE測定試薬としては、寄託番号FERM P−21376で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体及び寄託番号FERM P−21375で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体を構成成分とするラットIgE測定試薬が好適である。
【選択図】なし
【解決手段】被験試料中のラットIgEを測定する試薬において、ラットIgEを認識するが抗原認識部位を異にする2種のモノクローナル抗体を構成成分とすることを特徴とするラットIgE測定試薬が提供される。当該ラットIgE測定試薬としては、寄託番号FERM P−21376で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体及び寄託番号FERM P−21375で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体を構成成分とするラットIgE測定試薬が好適である。
【選択図】なし
Description
本発明はラットイムノグロブリンE(IgE)を認識し、ラットのその他のイムノグロブリン(IgG、IgA、IgM、IgD)を認識しない、特異性の高いモノクローナル抗体を使用する、高感度の被験試料中のラットIgE測定試薬に関する。
血清蛋白のグロブリンの1つであるγ-グロブリンは免疫に関与していることから免疫グロブリン(Ig)と呼ばれ、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5つが知られている。IgEはアレルギー反応に関与しており、最初体内に侵入したアレルゲンに対して、マクロファージ、T細胞及びB細胞の相互作用によってIgEが過剰に産生され、このIgEが組織の肥満細胞上のFcレセプターに固着して感作が成立する。次に、再びアレルゲンが体内に侵入すると、細胞のFcレセプターに固着したIgEとアレルゲンが結合し、それによって肥満細胞が活性化され、ヒスタミン、ロイコトリエン等の炎症性化学伝達物質が血中に放出されて多彩なアレルギー症状を引きおこすことになる。よって、特定の物質に対するIgEの抗体価を測定することで、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を調べることができる。
また血中の総IgE量を定量することはI型アレルギー疾患、特にアトピー性疾患においては重要な診断基準となる。さらに寄生虫感染、重症肝障害、湿疹、IgEミエローマでもIgEが上昇することが知られており、血中総IgE量を定量することはこれらの疾患を診断することにも役立つ。
IgE関連疾患を研究するための動物モデルとしては、一般にマウスが用いられているが、マウスは血液量も少なく、近年ラットを用いた動物実験が多くなってきている。
ラットのIgEを測定するには、抗ラットIgE抗体を使用するのが簡便であり、特許文献1にはポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を用いたラットIgE測定キット及び測定方法が開示されている。
ラットのIgEを測定するには、抗ラットIgE抗体を使用するのが簡便であり、特許文献1にはポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を用いたラットIgE測定キット及び測定方法が開示されている。
しかしながらポリクローナル抗体をモノクローナル抗体と組み合わせてエンザイムノアッセイを行う場合は、ポリクローナル抗体中に夾雑抗原に対する抗体が含まれる可能性があり特異性の面で課題がある。また抗原吸収法によりポリクローナル抗体の交差反応性を除去する工程を経て測定試薬が調製されることから、一定品質の試薬を安定して製造し、供給する面でも課題があった。
そこで、本発明の課題は、操作が簡便で、かつ測定精度、特異性、再現性に優れたラットIgEの測定試薬を提供することにある。
そこで、本発明の課題は、操作が簡便で、かつ測定精度、特異性、再現性に優れたラットIgEの測定試薬を提供することにある。
本発明者らは鋭意努力を重ね、互いにエピトープを異にする抗ラットIgEモノクローナル抗体を複数種取得することに成功し、さらにその中から選択した2種のモノクローナル抗体を組み合わせることにより高感度にラットIgEを検出することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の発明は、被験試料中のラットIgEを測定する試薬において、ラットIgEを認識するが抗原認識部位を異にする2種のモノクローナル抗体を構成成分とすることを特徴とするラットIgE測定試薬に関する。
本発明の第1の発明に使用されるモノクローナル抗体としては、モノクローナル抗体が寄託番号FERM P−21376で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体及び寄託番号FERM P−21375で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。
さらに本発明の第1の発明の態様として、測定方法としてエンザイムイムノアッセイを用いるラットIgE測定試薬が挙げられる。
本発明の第1の発明に使用されるモノクローナル抗体としては、モノクローナル抗体が寄託番号FERM P−21376で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体及び寄託番号FERM P−21375で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。
さらに本発明の第1の発明の態様として、測定方法としてエンザイムイムノアッセイを用いるラットIgE測定試薬が挙げられる。
本発明の第2の発明は、第1の発明のラットIgE測定試薬を使用することを特徴とする、被験試料中のラットIgEの測定方法に関する。
本発明の第2の発明において測定に供される試料としては、血漿、血清又は細胞培養物が例示される。
本発明の第2の発明において測定に供される試料としては、血漿、血清又は細胞培養物が例示される。
本発明の第3の発明は、寄託番号FERM P−21376で表されるハイブリドーマ細胞又は寄託番号FERM P−21375で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体に関する。
本発明により、操作が簡便で、測定精度が高く、特異性、再現性にも優れたラットIgEの測定試薬が安定して提供される。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明で「ラットIgE」とはラットに由来する全てのIgEを意味し、いかなる抗原を認識するものであってもよい。ラット血中には遊離のIgEとして肥満細胞や好塩基球上のIgEレセプター(FcεRI及びFcεRII)に結合するものと、それらレセプターには結合しないものが存在するが、その何れであってもよく、その混合物であってもよい。またラットB細胞やラットミエローマ細胞などのラットIgEを産生しうる細胞を人為的に培養して得られる培養上清中に遊離されるIgEでもよい。更に、B細胞のmRNAやそのcDNA等を用いて遺伝子工学的に作製したリコンビナントのラットIgEでもよい。
本発明で「ラットIgE」とはラットに由来する全てのIgEを意味し、いかなる抗原を認識するものであってもよい。ラット血中には遊離のIgEとして肥満細胞や好塩基球上のIgEレセプター(FcεRI及びFcεRII)に結合するものと、それらレセプターには結合しないものが存在するが、その何れであってもよく、その混合物であってもよい。またラットB細胞やラットミエローマ細胞などのラットIgEを産生しうる細胞を人為的に培養して得られる培養上清中に遊離されるIgEでもよい。更に、B細胞のmRNAやそのcDNA等を用いて遺伝子工学的に作製したリコンビナントのラットIgEでもよい。
本発明で「モノクローナル抗体」とは、単一クローンの抗体産生細胞が分泌する抗体を意味し、単クローン(性)抗体ともいう。単一の抗原決定基を認識する抗体であり、アミノ酸配列の一次構造が均一である。本発明のモノクローナル抗体は、細胞融合法により調製されるハイブリドーマが産生する抗体に加えて、抗体産生細胞のmRNA等を用いて遺伝子工学的に作製された抗体も含まれる。
本発明の測定試薬は、ラットIgEを認識するがラットのその他のイムノグロブリン(IgG、IgA、IgM、IgD)を認識しない、特異性の高い2種のモノクローナル抗体を構成成分とすることを特徴とする。また前記の2種のモノクローナル抗体は、それぞれ抗原上の異なる部位を認識する。
以下に上記のモノクローナル抗体について説明する。本発明で用いる抗体は、前述のラットIgEを抗原として認識し、かつ当該IgEを高感度で検出できるモノクローナル抗体であればいかなるものでも良い。また得られたモノクローナル抗体をもとに、遺伝子工学的に製造される組換え抗体や、定常領域を他の抗体の定常領域に置換したキメラ抗体等であっても良い。更に、前記の抗体にペプシン、パパイン等のタンパク質分解酵素を作用させ、抗体のFc部分を除去して得られる、F(ab’)2、Fab’、Fab等のフラグメントやscFvも本発明で使用する抗体に含まれる。
本発明に使用されるモノクローナル抗体は、例えば、固相サンドイッチ法などのような二段階の抗原抗体反応を行う測定方法においては、担体へのコーティングに用いられる固相モノクローナル抗体(一次抗体)、標識モノクローナル抗体(二次抗体)として使用することが出来る。本発明に使用されるモノクローナル抗体は、後者として使用する際には、適切な化合物、例えば放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質、タンパク質等で標識される。
以下に上記のモノクローナル抗体について説明する。本発明で用いる抗体は、前述のラットIgEを抗原として認識し、かつ当該IgEを高感度で検出できるモノクローナル抗体であればいかなるものでも良い。また得られたモノクローナル抗体をもとに、遺伝子工学的に製造される組換え抗体や、定常領域を他の抗体の定常領域に置換したキメラ抗体等であっても良い。更に、前記の抗体にペプシン、パパイン等のタンパク質分解酵素を作用させ、抗体のFc部分を除去して得られる、F(ab’)2、Fab’、Fab等のフラグメントやscFvも本発明で使用する抗体に含まれる。
本発明に使用されるモノクローナル抗体は、例えば、固相サンドイッチ法などのような二段階の抗原抗体反応を行う測定方法においては、担体へのコーティングに用いられる固相モノクローナル抗体(一次抗体)、標識モノクローナル抗体(二次抗体)として使用することが出来る。本発明に使用されるモノクローナル抗体は、後者として使用する際には、適切な化合物、例えば放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質、タンパク質等で標識される。
本発明に使用されるモノクローナル抗体は、いわゆる細胞融合法によって作製されたハイブリドーマを使用して製造される。前記のハイブリドーマは、抗体産生細胞の集団と骨髄腫細胞との融合ハイブリドーマを形成させ、該ハイブリドーマをクローン化し、ラットIgEを認識する抗体を産生するクローンを選択し、さらに本発明の目的に好適なクローンを選別することによって樹立される。
抗体産生細胞には、例えばラットIgE又はその一部によって免疫された動物の脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等が利用できる。免疫させる動物としては、マウス、ハムスター等が挙げられる。抗原としてはラットIgEやその断片が利用可能であり、例えば次のようにして製造され、免疫に使用される。免疫原として用いるラットIgEを天然から得る場合は、IgEを含むラット血清画分あるいは血漿画分から塩析、透析やアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等各種クロマトグラフィーを用いてIgEを精製することが可能である。またIgEを産生するラットミエローマ細胞等、適当な細胞を培養し、その培養上清から精製することも可能である。かくして得られたラットIgEは、例えばKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)に代表されるキャリアタンパク質と結合後、又はPVP(ポリビニルピロリドン)と混合後、フロイントのアジユバントと混合し、動物の免疫に使用する。またはラットIgEを直接フロイントのアジユバントと混合し、動物の免疫に使用する。免疫は動物の皮下、筋肉内あるいは腹腔内に、1回にラットIgE量として20〜200μg相当のIgE−アジュバント混合物を、2〜3週間に1回、3〜7回投与することにより行われる。最終免疫より約3〜5日後、免疫動物から抗体産生細胞を採取する。
抗体産生細胞には、例えばラットIgE又はその一部によって免疫された動物の脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等が利用できる。免疫させる動物としては、マウス、ハムスター等が挙げられる。抗原としてはラットIgEやその断片が利用可能であり、例えば次のようにして製造され、免疫に使用される。免疫原として用いるラットIgEを天然から得る場合は、IgEを含むラット血清画分あるいは血漿画分から塩析、透析やアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等各種クロマトグラフィーを用いてIgEを精製することが可能である。またIgEを産生するラットミエローマ細胞等、適当な細胞を培養し、その培養上清から精製することも可能である。かくして得られたラットIgEは、例えばKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)に代表されるキャリアタンパク質と結合後、又はPVP(ポリビニルピロリドン)と混合後、フロイントのアジユバントと混合し、動物の免疫に使用する。またはラットIgEを直接フロイントのアジユバントと混合し、動物の免疫に使用する。免疫は動物の皮下、筋肉内あるいは腹腔内に、1回にラットIgE量として20〜200μg相当のIgE−アジュバント混合物を、2〜3週間に1回、3〜7回投与することにより行われる。最終免疫より約3〜5日後、免疫動物から抗体産生細胞を採取する。
骨髄腫細胞としてはマウス、ラット、ヒト等由来のものが使用される。細胞融合は例えばG.ケラー(G.Kehler)[ネーチャー(Nature)第256巻、第495頁(1975)]に記載の方法、又はこれに準ずる方法により行われる。この際、30〜50%ポリエチレングリコール(分子量1000〜6000)を用い、抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを30〜40℃の温度下、約1〜3分間程度反応させる。細胞融合により得られたハイブリドーマはスクリーニングに付される。例えば、抗原としてラットIgEを用いた酵素抗体法等により前記IgEを認識する抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングが行われる。得られた抗体産生ハイブリドーマは、例えば限界希釈法によりクローン化される。得られたクローンは、次いで目的とする高感度、高特異性のモノクローナル抗体を産生するクローンを選択するため、例えば酵素抗体法等によるスクリーニングに供される。
こうして選ばれたクローンは、例えばあらかじめプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)を投与したBALB/cマウスの腹腔内へ移植し、10〜14日後にモノクローナル抗体を高濃度に含む腹水を採取する。この腹水からのモノクローナル抗体の回収は、イムノグロブリンの精製法として従来既知の硫安分画法、ポリエチレングリコール分画法、イオン交換クロマトグラフ法、ゲルクロマトグラフ法、アフィニティークロマトグラフ法等を応用することで達成される。
こうして選ばれたクローンは、例えばあらかじめプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)を投与したBALB/cマウスの腹腔内へ移植し、10〜14日後にモノクローナル抗体を高濃度に含む腹水を採取する。この腹水からのモノクローナル抗体の回収は、イムノグロブリンの精製法として従来既知の硫安分画法、ポリエチレングリコール分画法、イオン交換クロマトグラフ法、ゲルクロマトグラフ法、アフィニティークロマトグラフ法等を応用することで達成される。
本発明に使用されるラットIgEに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選抜には、ラットで作製した抗マウスIgGラットモノクローナル抗体カクテル(3種の混合モノクローナル抗体)−ペルオキシダーゼ標識抗体が大いに威力を発揮する。このカクテルに使用するモノクローナル抗体は、それぞれ認識部位がマウスIgG特異的であり、当該カクテル−ペルオキシダーゼ標識抗体を使用することにより特異性の高いIgGクラスのラットIgEに特異的な抗体を産生するハイブリドーマの選抜を行うことができる。また当該ラットモノクローナル抗体は抗原(ラットIgE)及びブランク抗原(ラットIgG)と種を同じくすることから、マウスIgG以外への非特異的な反応を見せず、マウスIgG産生ハイブリドーマの選別を容易に行うことができる。多量にまた高力価で存在するマウスIgM産生ハイブリドーマの中から、目的のマウスIgG産生ハイブリドーマを選別することは困難であるが、本発明の抗体を産生するハイブリドーマはこの手法を駆使することによってはじめて単離することが可能になった。
また本発明で得られたモノクローナル抗体は、特にブランク抗原(ラットIgG)に対して直接的な結合反応を全く示さない。すなわち、ポリクローナルで作製した二次抗体では、相当な吸収操作を行わないと果たせない効果を発揮しうる点で、当該二次抗体を使用する試薬に対して優位性を持つ。
さらに、かくして得られた抗IgEモノクローナル抗体の種々の組み合わせを作成し、ラットIgEの検出感度や交差反応を検証することによって、高感度で再現性よくラットIgEを測定できるモノクローナル抗体の組み合わせが決定される。
また本発明で得られたモノクローナル抗体は、特にブランク抗原(ラットIgG)に対して直接的な結合反応を全く示さない。すなわち、ポリクローナルで作製した二次抗体では、相当な吸収操作を行わないと果たせない効果を発揮しうる点で、当該二次抗体を使用する試薬に対して優位性を持つ。
さらに、かくして得られた抗IgEモノクローナル抗体の種々の組み合わせを作成し、ラットIgEの検出感度や交差反応を検証することによって、高感度で再現性よくラットIgEを測定できるモノクローナル抗体の組み合わせが決定される。
本発明の測定試薬は、上記のようにして得た2種のモノクローナル抗体を構成成分とするが、該抗体は、例えば、固相抗体及び/又は標識抗体として、被験試料中の被検物質であるラットIgEとの抗原抗体反応によって、被験試料中の被検物質ラットIgEをトラップする為に使用されるのに好適である。前記の2種のモノクローナル抗体で構成されるラットIgE測定試薬は、試料中に0.13ng/mLの濃度で存在するIgEを検出することが可能である。本発明の一態様として、これらのモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞RatIgE 32−12Cにより産生されるモノクローナル抗体Rat IgE 32−12C及びハイブリドーマ細胞RatIgE 16−9Eにより産生されるモノクローナル抗体Rat IgE 16−9Eである。ハイブリドーマ細胞RatIgE 32−12Cは、平成19年9月27日(原寄託日)より独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305−8566))にFERM P−21376として寄託されている。ハイブリドーマ細胞RatIgE 16−9Eは、平成19年9月27日(原寄託日)より独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305−8566))にFERM P−21375として寄託されている。これら2種の抗体を構成成分とするラットIgE測定試薬は、非特異的な結合反応がなく、他のサブクラスにも交差することなく高感度にラットIgEのみを測定できることから、広くラットIgEの測定に適用することができる。
前記の抗体、すなわちモノクローナル抗体Rat IgE 32−12C及びモノクローナル抗体Rat IgE 16−9E、ならびにこれらの抗体を産生するハイブリドーマ細胞RatIgE 32−12C、RatIgE 16−9Eは、いずれも本発明に包含される。
前記の抗体、すなわちモノクローナル抗体Rat IgE 32−12C及びモノクローナル抗体Rat IgE 16−9E、ならびにこれらの抗体を産生するハイブリドーマ細胞RatIgE 32−12C、RatIgE 16−9Eは、いずれも本発明に包含される。
本発明の測定試薬は、測定方法として二抗体サンドイッチ法などの固相酵素免疫検定法(ELISA)を含むエンザイムイムノアッセイに用いることができるラットIgE測定試薬である。またその一態様として、被験試料は血漿、血清又は細胞培養物等が挙げられる。
本発明の測定試薬は、上記のようにして得た2種のモノクローナル抗体を構成成分とするが、これらの抗体のうち、一方は固相モノクローナル抗体、他方は標識モノクローナル抗体として使用する。ここで、固相抗体とは適切な不溶性担体に固定化された抗体を意味し、標識抗体とは適切な標識物質により標識化された抗体を意味する。対象試料中の被検物質であるラットIgEとの抗原抗体反応によって、対象試料中の被検物質ラットIgEをトラップするために固相モノクローナル抗体が使用され、トラップされたラットIgEを検出するために標識モノクローナル抗体が使用される。本発明に使用される標識モノクローナル抗体は、特に限定されるものではないが、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質、タンパク質等を用いて標識化される。放射性同位体としては、特に限定されるものではないが、例えば[125I]、[131I]、[3H]、[14C]などが好ましい。酵素としては、特に限定されるものではないが、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えばβ−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが挙げられる。蛍光物質としては、特に限定されるものではないが、例えばフルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが挙げられる。発光物質としては、特に限定されるものではないが、例えばルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが挙げられる。さらに、ビオチンのような化合物を用いることができる。
固相モノクローナル抗体は、ビーズ、マイクロタイタープレート、試験管、ニトロセルロース膜、ナイロン膜等の担体表面に、当業者には公知の方法によって、本発明の抗ラットIgEモノクローナル抗体を結合させることによって調製される。また、固相モノクローナル抗体を調製するための抗体、担体および固相化に必要な試薬を、固定化する前の段階で提供しても良い。前記目的に使用される抗体も、本発明の固相モノクローナル抗体に含まれる。
本発明の一つの態様として、抗ラットIgE固相モノクローナル抗体、抗ラットIgE標識モノクローナル抗体、ラットIgE標準品を構成成分として含有するラットIgE測定キットが例示される。当該キットにおいて、標識モノクローナル抗体及びラットIgE標準品は、溶液又は凍結乾燥等の各種形態で提供することができる。さらに、本キットには前記の構成成分に加えて、様々な試薬、材料、器具等を適宜含有させることができる。例えば、標識した抗体を検出するための試薬、使用する際にコントロールとなる試薬を含んでいてもよい。
当該キットは、ラットを用いた動物モデル実験における各種アレルギー疾患の病勢や薬剤による治療効果の判定、疾患の診断に有用な情報を提供する。
当該キットは、ラットを用いた動物モデル実験における各種アレルギー疾患の病勢や薬剤による治療効果の判定、疾患の診断に有用な情報を提供する。
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。
実施例1 抗体の作製
(1)抗原免疫・細胞融合
ミエローマ由来ラットIgE 1mg/mL溶液を抗原とし、マウス4匹に50μg/shot/bodyの投与量で、初回免疫は、フロイント完全アジュバントとエマルジョンを形成させてから腹腔投与し、2回目以降は、市販の水溶性アジュバント(RIBI Adjuvant)と混合して、2週間隔合計4回の投与を行った。以上の免疫操作は、マウスを2匹ずつ2群に分け、2週間の時差をおいて実施した。先に免疫を開始した群のマウスについて、眼窩静脈血清中のラットIgEに対する抗体価の上昇を確認した上で、両個体に最終免疫を実施した。最終免疫3日後にこの2個体の免疫動物の脾臓を摘出し、無血清培地で分散・洗浄した後、細胞融合用ミエローマ細胞株(P3U1)と細胞数の相対比5:1(脾臓:ミエローマ)の割合で混合した。混合後、無血清培地で遠心洗浄し、上清を除去した細胞混合物に適温に保温した50%PEG溶液1mLを一定速度で、軽い振とうを加えながら混合し、合計3mLまで加え、そのあとは、無血清培地7mLを同様に一定速度で加え、10mLにフィルアップし、この操作で細胞融合を実施した。残る2匹のマウスも同様の最終免疫をさらに1回追加して、3日後に採取した脾臓を細胞融合に供した。
2回のチャレンジで、多数の融合細胞を取得した。この幅広い母集団より抗原に特異的な抗体をスクリーニングした。
(1)抗原免疫・細胞融合
ミエローマ由来ラットIgE 1mg/mL溶液を抗原とし、マウス4匹に50μg/shot/bodyの投与量で、初回免疫は、フロイント完全アジュバントとエマルジョンを形成させてから腹腔投与し、2回目以降は、市販の水溶性アジュバント(RIBI Adjuvant)と混合して、2週間隔合計4回の投与を行った。以上の免疫操作は、マウスを2匹ずつ2群に分け、2週間の時差をおいて実施した。先に免疫を開始した群のマウスについて、眼窩静脈血清中のラットIgEに対する抗体価の上昇を確認した上で、両個体に最終免疫を実施した。最終免疫3日後にこの2個体の免疫動物の脾臓を摘出し、無血清培地で分散・洗浄した後、細胞融合用ミエローマ細胞株(P3U1)と細胞数の相対比5:1(脾臓:ミエローマ)の割合で混合した。混合後、無血清培地で遠心洗浄し、上清を除去した細胞混合物に適温に保温した50%PEG溶液1mLを一定速度で、軽い振とうを加えながら混合し、合計3mLまで加え、そのあとは、無血清培地7mLを同様に一定速度で加え、10mLにフィルアップし、この操作で細胞融合を実施した。残る2匹のマウスも同様の最終免疫をさらに1回追加して、3日後に採取した脾臓を細胞融合に供した。
2回のチャレンジで、多数の融合細胞を取得した。この幅広い母集団より抗原に特異的な抗体をスクリーニングした。
(2)HAT選択
融合細胞のスクリーニングには、クローニング培地(三光純薬社製)にHAT(H:ヒポキサンチン、A:アミノプテリン、T:チミジン)を加えたものを用意し、融合日の翌日から3回の培地交換をこのHAT培地で行った。アミノプテリンは核酸のde novo合成を阻害するので、ヒポキサンチンとチミジンを用いたサルベージ経路を利用しない限り細胞の生育ができない。上記経路に必須なHGPRT(ヒポキサンチン・グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)酵素を欠損しているミエローマ細胞はHAT培地中では生育できない。B細胞にはこの酵素があるので、融合したハイブリドーマのみがHAT培地中で生育できることになる。したがって、この培地交換操作で成長してきた細胞は、脾臓由来のde novo合成系を持ちかつ不死化した融合細胞と言えた。
融合細胞のスクリーニングには、クローニング培地(三光純薬社製)にHAT(H:ヒポキサンチン、A:アミノプテリン、T:チミジン)を加えたものを用意し、融合日の翌日から3回の培地交換をこのHAT培地で行った。アミノプテリンは核酸のde novo合成を阻害するので、ヒポキサンチンとチミジンを用いたサルベージ経路を利用しない限り細胞の生育ができない。上記経路に必須なHGPRT(ヒポキサンチン・グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)酵素を欠損しているミエローマ細胞はHAT培地中では生育できない。B細胞にはこの酵素があるので、融合したハイブリドーマのみがHAT培地中で生育できることになる。したがって、この培地交換操作で成長してきた細胞は、脾臓由来のde novo合成系を持ちかつ不死化した融合細胞と言えた。
(3)スクリーニング
免疫原と同じラットIgEを、5μg/mL PBS、50μL/wellで、イムノプレート(ナルジェヌンク社製)上に添加し、4℃で一晩放置してIgEを物理吸着させた。ブランク用抗原として、ラット血清より精製したポリクローナルラットIgGを準備し、5μg/mL PBS、50μL/wellで同様にコーティングした。上記の操作の後、抗原溶液を捨てて、50%Blocker Casein(PIERCE社製)を200μL/wellになるように加えて、室温(20〜30℃)で1時間放置してブロッキング操作を行った。その後、ブロッキング溶液を捨て、上記(2)で得られた融合細胞の培養上清(原液使用)を、ナンバリングした上で抗原プレートに投入し、一次反応を室温(20〜30℃)で1時間行った。PBSで反応終了後の各ウェルを3回洗浄し、ペーパータオルで充分に液を切った。検出にはマウスIgGでラットを免疫し作製した抗マウスIgGラットモノクローナル抗体カクテル−ペルオキシダーゼ標識抗体を使用した。前記抗体を1μg/mL、50μL/wellで添加し、室温(20〜30℃)で1時間反応を行った。その後、標識抗体液を捨て、ウェルをPBSで4回洗浄した。ペーパータオルに打ち付けて、洗浄液を充分に除き、ペルオキシダーゼ基質であるABTS[2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)]溶液(PIERCE社製)を50μL/well投入し、室温で15〜30分発色させ、強弱ある陽性株を幅広く検出した。等量の150mM シュウ酸を加えて反応を停止させた後、肉眼及びプレートリーダーで陽性株を確認し、ブランク抗原に反応せず、目的のラットIgE蛋白に反応する株、総数50株を選抜した。
免疫原と同じラットIgEを、5μg/mL PBS、50μL/wellで、イムノプレート(ナルジェヌンク社製)上に添加し、4℃で一晩放置してIgEを物理吸着させた。ブランク用抗原として、ラット血清より精製したポリクローナルラットIgGを準備し、5μg/mL PBS、50μL/wellで同様にコーティングした。上記の操作の後、抗原溶液を捨てて、50%Blocker Casein(PIERCE社製)を200μL/wellになるように加えて、室温(20〜30℃)で1時間放置してブロッキング操作を行った。その後、ブロッキング溶液を捨て、上記(2)で得られた融合細胞の培養上清(原液使用)を、ナンバリングした上で抗原プレートに投入し、一次反応を室温(20〜30℃)で1時間行った。PBSで反応終了後の各ウェルを3回洗浄し、ペーパータオルで充分に液を切った。検出にはマウスIgGでラットを免疫し作製した抗マウスIgGラットモノクローナル抗体カクテル−ペルオキシダーゼ標識抗体を使用した。前記抗体を1μg/mL、50μL/wellで添加し、室温(20〜30℃)で1時間反応を行った。その後、標識抗体液を捨て、ウェルをPBSで4回洗浄した。ペーパータオルに打ち付けて、洗浄液を充分に除き、ペルオキシダーゼ基質であるABTS[2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)]溶液(PIERCE社製)を50μL/well投入し、室温で15〜30分発色させ、強弱ある陽性株を幅広く検出した。等量の150mM シュウ酸を加えて反応を停止させた後、肉眼及びプレートリーダーで陽性株を確認し、ブランク抗原に反応せず、目的のラットIgE蛋白に反応する株、総数50株を選抜した。
(4)陽性株選抜とクローニング・株樹立
二次スクリーニングとして、マウスIgEやモノクローナルラットIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgMに対する交差反応がない株で、かつラットIgEに強く反応する10種類のハイブリドーマ元株を選び、直ちに限界希釈法によりクローニングを行った。10種類のハイブリドーマはいずれも順調に生育し、それぞれクローンを各2種(本株・亜株)確保した。
二次スクリーニングとして、マウスIgEやモノクローナルラットIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgMに対する交差反応がない株で、かつラットIgEに強く反応する10種類のハイブリドーマ元株を選び、直ちに限界希釈法によりクローニングを行った。10種類のハイブリドーマはいずれも順調に生育し、それぞれクローンを各2種(本株・亜株)確保した。
(5)マウス腹水採取
上記の10種類のハイブリドーマクローンは、本株・亜株ともに凍結細胞としてマスター細胞を保管し、ほぼ並行しながら、本株をBALB/cマウスの腹腔内で大量培養し、腹水として粗精製抗体を得た。腹水は、1個体あたりおよそ3〜5mLであった。
上記の10種類のハイブリドーマクローンは、本株・亜株ともに凍結細胞としてマスター細胞を保管し、ほぼ並行しながら、本株をBALB/cマウスの腹腔内で大量培養し、腹水として粗精製抗体を得た。腹水は、1個体あたりおよそ3〜5mLであった。
(6)抗体精製
得られた腹水は、50%飽和硫安塩析・透析を行い、その画分をProtein Aカラムに供した。平衡化緩衝液は、3M NaCl、1.5M glycin−NaOH緩衝液(pH8.9)の高塩濃度のものを調製し、どのサブクラスのIgGであっても良好に結合する条件を採用した。平衡化緩衝液で2倍希釈した腹水硫安塩析画分を腹水液量とほぼ等量の容積のProtein A樹脂にアプライし、溶出液の吸光度A280がほぼゼロになるまで平衡化緩衝液でカラムを洗った。その後、クエン酸緩衝液(pH4.0)とクエン酸緩衝液(pH3.0)の2段階で溶出を行った。サブクラスIgG1、IgG2a、IgG3は主にpH4.0で溶出され、IgG2bは、pH3.0で溶出された。溶出画分は、ただちに1M Tris緩衝液(pH9.0)で中和し、硫安塩析もしくは、遠心限外ろ過濃縮を行った。最終抗体は、PBSで透析し、0.22μmフィルターろ過により無菌化した。抗体を10%SDS−PAGE(還元加熱条件)により分析し、H鎖とL鎖以外のものがない良好な純度の抗体であることを確認した。
得られた腹水は、50%飽和硫安塩析・透析を行い、その画分をProtein Aカラムに供した。平衡化緩衝液は、3M NaCl、1.5M glycin−NaOH緩衝液(pH8.9)の高塩濃度のものを調製し、どのサブクラスのIgGであっても良好に結合する条件を採用した。平衡化緩衝液で2倍希釈した腹水硫安塩析画分を腹水液量とほぼ等量の容積のProtein A樹脂にアプライし、溶出液の吸光度A280がほぼゼロになるまで平衡化緩衝液でカラムを洗った。その後、クエン酸緩衝液(pH4.0)とクエン酸緩衝液(pH3.0)の2段階で溶出を行った。サブクラスIgG1、IgG2a、IgG3は主にpH4.0で溶出され、IgG2bは、pH3.0で溶出された。溶出画分は、ただちに1M Tris緩衝液(pH9.0)で中和し、硫安塩析もしくは、遠心限外ろ過濃縮を行った。最終抗体は、PBSで透析し、0.22μmフィルターろ過により無菌化した。抗体を10%SDS−PAGE(還元加熱条件)により分析し、H鎖とL鎖以外のものがない良好な純度の抗体であることを確認した。
(7)抗体修飾
得られた精製抗体のうち、一定量(試験的に各抗体1mg)を用いて、過ヨウ素酸法によるペルオキシダーゼ標識を施した。過ヨウ素酸法は、ペルオキシダーゼの糖鎖ジオールを脱水素酸化させてシッフベースを形成させ、抗体側のアミノ基に結合させる方法である。10種類の抗体は、すべてペルオキシダーゼ標識体とした。いずれの抗体も抗原ラットIgEを固相化したプレート上で、これらの標識抗体の段階希釈物を反応させた後にペルオキシダーゼの検出反応に供すると、表1に示すような吸光度が得られたことから、抗原との結合活性を保持した状態で酵素標識体とすることができた。
得られた精製抗体のうち、一定量(試験的に各抗体1mg)を用いて、過ヨウ素酸法によるペルオキシダーゼ標識を施した。過ヨウ素酸法は、ペルオキシダーゼの糖鎖ジオールを脱水素酸化させてシッフベースを形成させ、抗体側のアミノ基に結合させる方法である。10種類の抗体は、すべてペルオキシダーゼ標識体とした。いずれの抗体も抗原ラットIgEを固相化したプレート上で、これらの標識抗体の段階希釈物を反応させた後にペルオキシダーゼの検出反応に供すると、表1に示すような吸光度が得られたことから、抗原との結合活性を保持した状態で酵素標識体とすることができた。
実施例2 測定系の構築及び性能試験
(1)測定系構築
実施例1で得られた10種類の抗体それぞれを固相抗体と標識抗体とに用い、合計100とおりの組み合わせで、ラットIgEを定量できる系をスクリーニングした。試験された抗IgEモノクローナル抗体の種々の組み合わせの中には非特異的な結合反応を示すものや、IgE以外のサブクラスのラット抗体に反応するものが多数存在した。本スクリーニングによって、非特異的な結合反応がなく、他のサブクラスにも交差することなく高感度にラットIgEのみを測りこむことのできる測定系をようやく1種類得ることに成功した。
(1)測定系構築
実施例1で得られた10種類の抗体それぞれを固相抗体と標識抗体とに用い、合計100とおりの組み合わせで、ラットIgEを定量できる系をスクリーニングした。試験された抗IgEモノクローナル抗体の種々の組み合わせの中には非特異的な結合反応を示すものや、IgE以外のサブクラスのラット抗体に反応するものが多数存在した。本スクリーニングによって、非特異的な結合反応がなく、他のサブクラスにも交差することなく高感度にラットIgEのみを測りこむことのできる測定系をようやく1種類得ることに成功した。
(2)測定系の性能試験
実施例2−(1)でのスクリーニングから、固相抗体にモノクローナル抗体Rat IgE 32−12C、標識抗体にモノクローナル抗体Rat IgE 16−9Eを用いる組み合わせの測定系が確立した。その測定系を使用した測定方法を以下に示す。
(A)イムノプレート器材(ナルジェヌンク社製)に、PBSで10μg/mLに希釈したモノクローナル抗体Rat IgE 32−12C溶液を100μL/wellで投入し、4℃で一晩放置する。
翌日、抗体溶液を捨て、25%ブロックエース+0.3Mマルトース/PBS溶液(ブロッキング溶液)を200μL/wellで投入し、4℃で一晩放置し、器材余剰部分をタンパク質ブロックする。
翌日、ブロッキング溶液を捨て、以下の測定に使用する。
(B)各濃度の検体を100μLずつマイクロピペットで各wellに2連ずつ加え、室温(20〜30℃)で1時間反応させる。(第一反応)
反応液を捨て、0.1%Tween20含有PBSで3回洗浄後、モノクローナル抗体Rat IgE 16−9E標識抗体液を100μLずつ各wellに加え、室温(20〜30℃)で一時間反応させる。(第二反応)
反応液を捨て、0.1%Tween20含有PBSで4回洗浄後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMBZ)溶液(BioFX社製)を100μlずつ各wellに加え、室温(20〜30℃)で15分反応させる。(第三反応)
1N 硫酸を100μLずつ、TMBZ溶液を入れた順番に各wellに加え、反応を停止させた後よく混和する。
蒸留水を対照としてマイクロプレートリーダーをゼロ調整し、波長450nmで吸光度を測定する。標準曲線を作成し、検体の吸光度から対応するRat IgE濃度を読み取る。
上記測定系により、ラットIgE標準品を測定した結果を表2に示す。表2に示すように、この系では1ng/mL未満のラットIgEであっても検出可能であり、試験された範囲での検出限界は0.13ng/mLであった。
実施例2−(1)でのスクリーニングから、固相抗体にモノクローナル抗体Rat IgE 32−12C、標識抗体にモノクローナル抗体Rat IgE 16−9Eを用いる組み合わせの測定系が確立した。その測定系を使用した測定方法を以下に示す。
(A)イムノプレート器材(ナルジェヌンク社製)に、PBSで10μg/mLに希釈したモノクローナル抗体Rat IgE 32−12C溶液を100μL/wellで投入し、4℃で一晩放置する。
翌日、抗体溶液を捨て、25%ブロックエース+0.3Mマルトース/PBS溶液(ブロッキング溶液)を200μL/wellで投入し、4℃で一晩放置し、器材余剰部分をタンパク質ブロックする。
翌日、ブロッキング溶液を捨て、以下の測定に使用する。
(B)各濃度の検体を100μLずつマイクロピペットで各wellに2連ずつ加え、室温(20〜30℃)で1時間反応させる。(第一反応)
反応液を捨て、0.1%Tween20含有PBSで3回洗浄後、モノクローナル抗体Rat IgE 16−9E標識抗体液を100μLずつ各wellに加え、室温(20〜30℃)で一時間反応させる。(第二反応)
反応液を捨て、0.1%Tween20含有PBSで4回洗浄後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMBZ)溶液(BioFX社製)を100μlずつ各wellに加え、室温(20〜30℃)で15分反応させる。(第三反応)
1N 硫酸を100μLずつ、TMBZ溶液を入れた順番に各wellに加え、反応を停止させた後よく混和する。
蒸留水を対照としてマイクロプレートリーダーをゼロ調整し、波長450nmで吸光度を測定する。標準曲線を作成し、検体の吸光度から対応するRat IgE濃度を読み取る。
上記測定系により、ラットIgE標準品を測定した結果を表2に示す。表2に示すように、この系では1ng/mL未満のラットIgEであっても検出可能であり、試験された範囲での検出限界は0.13ng/mLであった。
(3)同時再現性試験
実施例2−(2)記載の測定系で同時再現性試験を行った。表3に結果を示すように、CV値は5%以下で良好な同時再現性を示した。
実施例2−(2)記載の測定系で同時再現性試験を行った。表3に結果を示すように、CV値は5%以下で良好な同時再現性を示した。
(4)日差再現性試験
実施例2−(2)記載の測定系で日差再現性試験を行った。表4に結果を示すように、CV値は5%以下で良好な日差再現性を示した。
実施例2−(2)記載の測定系で日差再現性試験を行った。表4に結果を示すように、CV値は5%以下で良好な日差再現性を示した。
(5)添加回収試験
実施例2−(2)記載の測定系でラットIgEの添加回収試験を行った。各種濃度のラット血清検体に標準ラットIgEを等量添加し、実測値から添加したIgE量の理論値との差(=回収率)を求めた。表5に結果を示すように、添加回収率79.58%から130.44%(平均値98.73%)と良好な結果が得られた。
実施例2−(2)記載の測定系でラットIgEの添加回収試験を行った。各種濃度のラット血清検体に標準ラットIgEを等量添加し、実測値から添加したIgE量の理論値との差(=回収率)を求めた。表5に結果を示すように、添加回収率79.58%から130.44%(平均値98.73%)と良好な結果が得られた。
実施例3 キットの応用例
以下、当該キットの応用例として、アレルギー治療におけるIgG療法の有効性を調べた例を示す。
本願明細書において、「IgG療法」とは、I型アレルギーの原因となるアレルゲンを少量ずつアレルギー患者に皮下注射することによって、病因アレルゲンに対する感受性を低下させる治療法である。アレルゲンを少量ずつアレルギー患者に皮下注射すると、リンパ腺や脾臓でアレルゲンに対する特異的IgGが作られる。当該IgGは、肥満細胞表面に結合しているIgEよりもアレルゲンと結びつき易い性質をもっており、アレルゲンが肥満細胞表面のIgEと結びつく前にIgGと結びつくため、アレルゲンとIgEとの結合が阻害され、炎症性化学伝達物質の放出が抑制される。その結果、アレルギー症状が抑えられる。
以下、当該キットの応用例として、アレルギー治療におけるIgG療法の有効性を調べた例を示す。
本願明細書において、「IgG療法」とは、I型アレルギーの原因となるアレルゲンを少量ずつアレルギー患者に皮下注射することによって、病因アレルゲンに対する感受性を低下させる治療法である。アレルゲンを少量ずつアレルギー患者に皮下注射すると、リンパ腺や脾臓でアレルゲンに対する特異的IgGが作られる。当該IgGは、肥満細胞表面に結合しているIgEよりもアレルゲンと結びつき易い性質をもっており、アレルゲンが肥満細胞表面のIgEと結びつく前にIgGと結びつくため、アレルゲンとIgEとの結合が阻害され、炎症性化学伝達物質の放出が抑制される。その結果、アレルギー症状が抑えられる。
(1)ラット・アレルギーモデルでのIgG療法の有効性の確認
感作抗原として卵白アルブミン(OVA、SIGMA社製)を使用して、アレルギーモデル(I型アレルギー)のラットを参考文献(Biosci. Biotechnol. Biochem.,67,951−957,2003)に記載の方法に基づいて作製した。
具体的には、Brown Norway Rat(略してBNラット)6週令、雄2匹(Rat No.1、2)を使用し、以下のような感作方法で行った。初回免疫は、水酸化アルミニウムゲル(Imject Alum、PIERCE社製、製品コード:77161)とOVA溶液を混合した懸濁液をDay0とDay4の2回、腹腔内投与した(100μg/mL OVA溶液100μL+水酸化アルミニウムゲル100μL/ラット1匹)。
追加免疫は、Rat No.2の場合は、Day10、11、12、13、14、17、18、19、20、21、25、26、27、28、31に午前と午後の2回、鼻にOVA溶液を投与して、経鼻感作した(250μg/mL OVA溶液100μL/Rat No.2)。また、Rat No.1の場合は、上記の経鼻感作に加え、Day7にフットパッド免疫した[100μg/mL OVA溶液100μL+フロイント完全アジュバント(FCA、PIERCE社製、製品コード:77140)100μL/Rat No.1]。
抗OVA−IgG抗体価及び総ラットIgE量を測定するために、Day0、10、14、18、25、31、32(Day32は、Rat No.2のみ)に眼窩静脈より採血し、部分血清採取を行った。
抗OVA−IgG抗体価は、以下のようにして測定した。
(A)イムノプレート器材(ナルジェヌンク社製)に、PBSで10μg/mLに希釈したOVA(SIGMA社製)溶液を50μL/wellで投入し、4℃で一晩放置する。
翌日、抗原液を捨て、25%ブロックエース+0.3Mマルトース/PBS溶液(ブロッキング溶液)を200μL/wellで投入し、4℃で一晩放置し、器材余剰部分をタンパク質ブロックする。
翌日、ブロッキング溶液を捨て、以下の測定に使用する。
(B)採血した血清をそれぞれ各濃度に調整し、プレートに50μL/wellで投入し、室温(20〜30℃)で1時間反応させる。(第一反応)
反応液を捨て、PBSで3回洗浄後、二次抗体である抗ラットIgG−POD(ZYMED社製)を25%ブロックエースで1000倍に希釈して、50μLずつ各wellに加え、室温(20〜30℃)で一時間反応させる。(第二反応)
反応液を捨て、PBSで4回洗浄後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMBZ)溶液(BioFX社製)を50μLずつ各wellに加え、室温(20〜30℃)で15分反応させる。(第三反応)
1N 硫酸を50μLずつ、TMBZ溶液を入れた順番に各wellに加え、反応を停止させた後よく混和する。
蒸留水を対照としてマイクロプレートリーダーをゼロ調整し、波長450nmで吸光度を測定する。その結果を表6に示す。
また総ラットIgE量の測定は、実施例2−(2)記載の測定系を用い行った。その結果を表7に示す。
表6、7より、Rat No.1は、フットパッド免疫を行ったことで、OVAに対するIgGクラスの抗体価が上昇し、それに呼応するようにIgEの総量の増加は抑えられていた。一方、経鼻免疫を連続で行っただけのRat No.2は、OVAに対するIgGクラスの抗体価がNo.1ほど上昇せず、IgE血中濃度がNo.1に比べて実験期間を通じて高かった。以上の結果から、アレルギー治療におけるIgG療法の有効性がIgEを測定することにより確認できた。
感作抗原として卵白アルブミン(OVA、SIGMA社製)を使用して、アレルギーモデル(I型アレルギー)のラットを参考文献(Biosci. Biotechnol. Biochem.,67,951−957,2003)に記載の方法に基づいて作製した。
具体的には、Brown Norway Rat(略してBNラット)6週令、雄2匹(Rat No.1、2)を使用し、以下のような感作方法で行った。初回免疫は、水酸化アルミニウムゲル(Imject Alum、PIERCE社製、製品コード:77161)とOVA溶液を混合した懸濁液をDay0とDay4の2回、腹腔内投与した(100μg/mL OVA溶液100μL+水酸化アルミニウムゲル100μL/ラット1匹)。
追加免疫は、Rat No.2の場合は、Day10、11、12、13、14、17、18、19、20、21、25、26、27、28、31に午前と午後の2回、鼻にOVA溶液を投与して、経鼻感作した(250μg/mL OVA溶液100μL/Rat No.2)。また、Rat No.1の場合は、上記の経鼻感作に加え、Day7にフットパッド免疫した[100μg/mL OVA溶液100μL+フロイント完全アジュバント(FCA、PIERCE社製、製品コード:77140)100μL/Rat No.1]。
抗OVA−IgG抗体価及び総ラットIgE量を測定するために、Day0、10、14、18、25、31、32(Day32は、Rat No.2のみ)に眼窩静脈より採血し、部分血清採取を行った。
抗OVA−IgG抗体価は、以下のようにして測定した。
(A)イムノプレート器材(ナルジェヌンク社製)に、PBSで10μg/mLに希釈したOVA(SIGMA社製)溶液を50μL/wellで投入し、4℃で一晩放置する。
翌日、抗原液を捨て、25%ブロックエース+0.3Mマルトース/PBS溶液(ブロッキング溶液)を200μL/wellで投入し、4℃で一晩放置し、器材余剰部分をタンパク質ブロックする。
翌日、ブロッキング溶液を捨て、以下の測定に使用する。
(B)採血した血清をそれぞれ各濃度に調整し、プレートに50μL/wellで投入し、室温(20〜30℃)で1時間反応させる。(第一反応)
反応液を捨て、PBSで3回洗浄後、二次抗体である抗ラットIgG−POD(ZYMED社製)を25%ブロックエースで1000倍に希釈して、50μLずつ各wellに加え、室温(20〜30℃)で一時間反応させる。(第二反応)
反応液を捨て、PBSで4回洗浄後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMBZ)溶液(BioFX社製)を50μLずつ各wellに加え、室温(20〜30℃)で15分反応させる。(第三反応)
1N 硫酸を50μLずつ、TMBZ溶液を入れた順番に各wellに加え、反応を停止させた後よく混和する。
蒸留水を対照としてマイクロプレートリーダーをゼロ調整し、波長450nmで吸光度を測定する。その結果を表6に示す。
また総ラットIgE量の測定は、実施例2−(2)記載の測定系を用い行った。その結果を表7に示す。
表6、7より、Rat No.1は、フットパッド免疫を行ったことで、OVAに対するIgGクラスの抗体価が上昇し、それに呼応するようにIgEの総量の増加は抑えられていた。一方、経鼻免疫を連続で行っただけのRat No.2は、OVAに対するIgGクラスの抗体価がNo.1ほど上昇せず、IgE血中濃度がNo.1に比べて実験期間を通じて高かった。以上の結果から、アレルギー治療におけるIgG療法の有効性がIgEを測定することにより確認できた。
本発明の測定試薬を使用する測定系は、ラット血清中の総IgE量を測定することにおいて高感度、高特異性で安定な系である。
ラットIgEを測定して得られる結果は、ラットを用いた動物モデル実験における各種アレルギー疾患の病勢や薬剤による治療効果の判定、疾患の診断に有用な情報を提供する。
ラットIgEを測定して得られる結果は、ラットを用いた動物モデル実験における各種アレルギー疾患の病勢や薬剤による治療効果の判定、疾患の診断に有用な情報を提供する。
Claims (6)
- 被験試料中のラットIgEを測定する試薬において、ラットIgEを認識するが抗原認識部位を異にする2種のモノクローナル抗体を構成成分とすることを特徴とするラットIgE測定試薬。
- モノクローナル抗体が寄託番号FERM P−21376で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体及び寄託番号FERM P−21375で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体である請求項1記載のラットIgE測定試薬。
- 測定方法としてエンザイムイムノアッセイを用いる、請求項1又は2記載のラットIgE測定試薬。
- 請求項1〜3いずれかに記載のラットIgE測定試薬を使用することを特徴とする、被験試料中のラットIgEの測定方法。
- 被験試料が、血漿、血清及び細胞培養物から選ばれる請求項4記載のラットIgEの測定方法。
- 寄託番号FERM P−21376で表されるハイブリドーマ細胞又は寄託番号FERM P−21375で表されるハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体。
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