難水溶性薬物のハードカプセル剤
技術分野
本発明は、 難水溶性薬物のハードカプセル剤に関する。 さらに詳しくは、 本 発明は、 経口投与される消化管内の p Hである 1 . 2から 8 . 0における難水 明
溶性薬物の溶解性改善だけでなく、 長期保存後においても品質に優れた難水溶 性薬物の八一ドカプセル剤に関する。 田
書 背景技術
日本薬局方において、 水にほとんど溶けない薬物の定義は、 0 . l m g Zm 1以下の溶解度を示す薬物であると規定されている (非特許文献 1 )。 通常、 経 口投与された薬物は、 まず消化管内分泌液で溶解しながら、 小腸に移行し、 吸 収されるが、 難水溶性薬物を経口投与した場合、 難水溶性薬物が消化管内の分 泌液に溶解しないために充分に吸収されないまま便として排出されることは容 易に類推でき、 しばしば観察される。 この難水溶性薬物の溶解性を改善するこ とで経口吸収性を上げる為に、 いままで多くの製剤的検討がなされてきた (非 特許文献 2 )。 たとえば、 難水溶性薬物の原末の微細化、 結晶多形、 非晶質化、 塩、 溶媒和物の形成などの原末固体を保持した処理方法が報告されているが、 これらの方法は溶解度を改善するというよりも溶解速度を改善する方法であり、 経口吸収性改善においても限界があった。 また、 たとえ、 有望な処理方法が見 つかってもその後の工業化検討や品質管理などにおいて多大な労力が必要であ つた。
—方、 難水溶性薬物のみかけの溶解度を改善する方法としては、 ポリエチレ ングリコールなどの親水性可溶化剤による可溶化方法が報告されてきた。 例え
ば、 低分子量ポリエチレンダリコールで可溶化した難水溶性であるジゴキシン は、 その錠剤より約 2倍高い経口吸収性を示すと報告されている (非特許文献 3 )。 また、 酸性、 塩基性および両性薬物をソフトカプセル化またはハードカブ セル化するために可溶化したシステムとして、 ポリエチレングリコ一ルと水酸 化イオンまたは水素イオンを添加することで高含量の難水溶性薬物を可溶化で き、 カプセル剤が調製できるという特許が公開されているが、 イブプロフェン の可溶化処方の溶解性改善を錠剤と P H 7で溶解速度比較を行っているだけで あり、 長期の品質保存性や消化管内 pHである 1 . 2から 8 . 0における溶解 度についてなんらコメントしていない (特許文献 1 )。
一方で、 ポリエチレングリコールを用いる可溶化方法においては、 難水溶性 薬物が試験管内でみかけ上溶解するが、 難水溶性薬物の経口吸収改善が前記の 処理方法と比較してそれほど変わらないことが経験されてきている。 その原因 として難水溶性薬物含有製剤は経口投与後、 消化管内の分泌液 (P H 1 . 2か ら 8 . 0 ) に接触すると、 その薬物が析出することがわかってきた。 本質的な 経口吸収性改善につながる可溶化方法とは、 消化管内でも溶解していることが 重要であるので、 最近、 消化管内の分泌液でも析出しない可溶化法が報告され てきた。 例えば、 特許文献 2には、 脂質と界面活性剤の共溶媒効果によって、 難水溶性薬物であるシクロスポリン, 二フエジピン, インドメタシンを 1 0重 量%含有し、水溶性を改善したドラッグデリバリ一システムが公開されている。 これらの可溶化処方は、 水で希釈しても析出しないことを確認しているが、 品 質を保証したハードカプセル剤などの経口製剤化まで明記されていない。
他方、 中鎖脂肪酸トリグセライド等の油脂などの親油性可溶化剤と界面活性 剤の混合による可溶化方法は、 多く報告されており、例えば、 ビタミン A、 D、 Eゃシクロスポリンなどの油に容易に溶解する薬物に応用されてきたが、 これ らの製剤は、 基本的には経口投与された後、 消化管内でェマルジヨンに乳化さ れ、 ェマルジヨンの粒子が大きいためにリンパへ吸収され、 それから体内へ吸
収されることが知られているが、 通常の吸収と比較し、 吸収効率が悪い上に、 油脂と親和性が強い薬物の場合、 経口吸収性が低下することもしばしば起こつ ている。 さらに油脂単独で溶解される薬物も少ない。
また、 最近、 免疫抑制剤であるシクロスポリン約 15重量%と可溶化剤と界 面活性剤を配合し、 水溶性が増大し、 経口投与後消化管内で析出せず、 経口吸 収性の変動が少なく、 経口吸収が改善したゼラチンソフトカプセル剤 (ネオラ ル (登録商標)) が販売されている (非特許文献 4)。 また、 抗エイズ剤である アンプレナビルについても同様に、 (a) アンプレナビル 15重量%と、 (b) 親水性可溶化剤としてポリエチレングリコールと少量のプロピレングリコール と、 (c)界面活性剤としてコハク酸ビタミン Eポリエチレングリコール 100 0エステルとを配合したゼラチンソフト力プセル剤が市販されている。
さらに、 ゼラチンソフトカプセル以外に、 ゼラチンハードカプセルも提案さ れてきている。 例えば、 カプトプリルを油脂で単に懸濁した半固形油性懸濁マ トリックスを充填した徐放性ハードカプセル剤が市販されている (非特許文献 5) が、 本製剤は、 徐放製剤であり、 難水溶性薬物の溶解性改善カプセル剤で はない。
【非特許文献 1】
「第 14改正日本薬局方解説書」, 広川書店, 2001年 6月, A14 【非特許文献 2】
橋本 充著, 「経口投与製剤の処方設計」, じほう, 1998年 4月, p.
73〜75, p. 164〜166
【非特許文献 3】
E. Astorri, et. al. , Bioavailability and related heart function index of digoxin capsules and t blets in cardiac patients" , Journal of Pharmaceutical Sciences, vol.68, p.104, 1979
【非特許文献 4】
W. A. Ritschel, "Microemulsion technology in the reformulation of cyclosporin; The reason behind the pharmacokinetic properties of Neoral (R)" , Clin- Transplant, vol.10, No. , p.364-373, 1996
【非特許文献 5】
Y. Seta, et. al. , "Design and preparation of captopril sustained- release dosage forms and their biopharmaceutical properties" , International Journal of Pharmacognosy, vol.41, p.245-254, 1988
【特許文献 1】
米国特許 5360615
【特許文献 2】
国際公開第 99/56727号パンフレツト 発明の開示
難水溶性薬物を経口吸収改善するためには、 消化管内の分泌液でも析出しな い可溶化方法が必要である。 一方、 最近の難水溶性薬物は、 水はもちろん油に も溶けにくいという性質をもっているので、 従来の可溶化剤だけでは溶解しな いことが多くなつてきた。 また、 難水溶性薬物を親水性可溶化剤により、 可溶 化できても普通、ハードカプセルに充填するとハードカプセルが溶解、液漏れ、 変形、 割れなどが観察され、 品質が長期保持されないことが知られている。 そ こで、 このような親水性可溶化剤を含んでも品質が長期保持される経口投与用 固形製剤が求められている。
前述したシクロスポリン、 アンプレナビルの 2製剤を含めて、 従来、 可溶化 処方を製剤化する方法といえばゼラチンソフトカプセルに充填するしか方法が なかった。 しかし、 ソフトカプセルは、 溶融したゼラチンのシートをソフト力 プセルに成型すると同時に薬液を充填するという製法上、 粘度の低い薬液など にしか適用できないという問題点を有する。 さらに、 ソフトカプセル剤は、 皮
膜中に主成分であるゼラチンとグリセリンなどの可塑剤が多く配合されている ため、ハードカプセルよりも環境の湿度に影響され易いという問題点も有する。 例えば、 ソフトカプセルが吸湿した場合は軟化、 変形、 固着を生じる。 水分が 少なくなると割れ易く、 液漏れを起こす。 また、 冷所に置かれた場合ももろく なるので通常は剤皮には 6から 1 0 %の水分を保有する必要がある。 加えて強 力な親水性可溶化剤であり、 可塑剤でもあるプロピレンダリコールなどが剤皮 に悪影響を及ぼすだけでなぐゼラチンを変質させることも考えられる。また、 最近、 狂牛病の観点から牛などの動物性由来のゼラチンを使用することのリス クが問題視されてきており、 ゼラチン量が多いソフトゼラチンカプセルはなる ベく避けることが望まれている。
一方、 ハ一ドカプセルは、 ゼラチンに代わる植物性や合成ポリマーのハード カプセルも提供されてきた。 また、 充填機やキャップとボディの接合部からの 液漏れを防止するためのシール機の技術革新だけでなく、 加温機などの周辺機 器の充実により、 高い粘度の薬液も充填できるようになり、 ソフトカプセルに 比べて簡便に製造でき、 ソフトカプセルでは液状の可溶化処方だけしか製造で きなかったのに対し、 液状ばかりでなく、 半固形の可溶化処方も製造できるよ うになつてきた。 しかし、 ハードカプセル自体は環境の湿度には影響を受けに くいが、 膜厚が薄く、 充填される内容物、 特に可溶化剤によって多大な影響を 受けるため、 ソフトゼラチンカプセル以上に許容される可溶化剤の種類が限定 される。 例えば、 ソフトカプセルで許容されている低分子量ポリエチレンダリ コールでさえ、 ハードカプセルのゼラチンの変性だけでなく、 液漏れや変形さ せることが知られている。
上記状況に鑑み、 本発明者らは、 難水溶性薬物を経口吸収改善するために、 難水溶性薬物を高濃度に可溶化できる親水性可溶化剤の探索とその親水性可溶 化剤を充填しても、 液漏れや変形などを起こさないで、 品質が長期に保持され るハードカプセル剤を求めて鋭意検討した結果、 ハードカプセルを長期間保存
してもハ一ドカプセルの劣化を防止する品質保持剤を Λ—ドカプセルに充填す る内容物に添加すれば顕著にハードカプセル剤の品質が長期に保持されるとい う知見を得た。 具体的には、 難水溶性薬物と高濃度に可溶化できる親水性可溶 化剤と品質保持剤とを混合した内容物をハードカプセルに充填し、 40°C6ケ 月間 (室温 3年間と同等である加速試験)観察した検討において、 (a) ハード カプセルの外観変化として溶解、漏れ、割れおよび変形の有無について、また、
(b) 外観変化がなかった場合についても、 そのハードカプセルの質的変化を みるために、 既知薬物ァセトァミノフェンを充填したそのハード力プセルから のァセトァミノフェンの溶出性について、 品質保持剤を添加した場合としない 場合とを比較検討して、 品質保持剤を添加したハードカプセル剤は明らかにハ ードカプセルの品質が保持されるという知見を得た。 さらに、 本発明者らは、 種々の難水溶性薬物の可溶化処方を製造し、 胃液の pHである 1. 2と小腸液 の PHである 6. 8の緩衝液中での溶解性や溶出性を検討した結果、 本発明の ハードカプセル剤においては、 難水溶性薬物が消化管内で析出しないことを知 見し、 さらに検討を重ねて本発明を完成した。
すなわち、 本発明は、
(1) 難水溶性薬物と、
(i) 界面活性剤または
(ii) 親水性溶媒と界面活性剤
を含有する親水性可溶化剤と、
品質保持剤とを含有する内容物が八ードカプセルに充填されていることを特徴 とする難水溶性薬物のハードカプセル剤、
(2) 品質保持剤が、 (a) 精製水、 (b) 内容物の動粘度を 100〜20 00 (mp a s) にする増粘剤および (c) 内容物の融点を 30〜 80 °Cにす る高融点の添加剤のレ ^ずれかまたはその組み合わせであることを特徴とする前 記 (1) に記載のハードカプセル剤、
(3) 品質保持剤が、 (a) 精製水、 (b) セルロース系高分子添加剤もし くはポリビエルピロリドン、 または前記物質を精製水もしくは多価アルコール またはそれらの混液で溶解 ·分散した液、 (c) 軽質無水ケィ酸、 (d) 高級脂 肪アルコールおよび (e) グリセリン長鎖脂肪酸エステルからなる群から選ば れる 1以上であることを特徴とする前記 (1) に記載のハードカプセル剤、
(4) 八一ドカプセルに充填されている混合物が半固形状または液体状を 呈していること特徴とする前記 (1) 〜 (3) のいずれかに記載のハードカブ セル剤、 ,
(5) 難水溶性薬物が、 0. 1〜50重量%含有されている前記 (1) 〜 (4) のいずれかに記載のハードカプセル剤、
(6) 親水性可溶化剤が、 20〜99. 8重量%含有されている前記 (1) 〜 (5) のいずれかに記載のハードカプセル剤、
(7) 品質保持剤が、 0. 1〜30重量%含有されている前記(1)〜(6) のいずれかに記載のハ一ドカプセル剤、
(8) 界面活性剤が少なくともコハク酸ビタミン Eポリエチレンエステル 又はポリォキシエチレンヒドロキシ脂肪酸エステルを含有することを特徴とす る前記 (1) 〜 (7) のいずれかに記載のハードカプセル剤。
に関する。 発明を実施するための最良の形態
本発明で用いる難水溶性薬物としては、 水、 具体的には消化管内 pHである pH 1. 2〜pH 8の水に対する溶解度が室温で約 0. lmgZml以下の薬 物であれば、 特に限定されない。 本発明で用いる難水溶性薬物としては、 日本 薬局方に水にほとんど溶けない薬物として規定されている医薬品に限定されず、 例えば、 生理活性を有する化合物、 食品、 特に機能性食品、 漢方薬、 動物薬、 飼料または試薬などが挙げられる。
本発明で用いる難水溶性薬物としては、 例えば、 中枢神経系用薬であるフエ ニトイン, イミブラミン, ニトラゼパム, ハロペリドールおよびそれらの塩な どや、 末梢神経系用薬であるインドメタシン, フエ二ルブ夕ゾン, イブプロフ ェン,ピロキシカムおよびそれらの塩などや、循環器官用薬であるジゴキシン, ピンドロール, 二フエジピン, レセルピン, シンナリジン, プロブコール, ク ロフイブレートおよびそれらの塩などや、呼吸器官用薬であるレジブホゲニン, ノス力ピン, プランルカスト, オン夕ゾラスト、 モンテルカストおよびそれら の塩などや、 消化器官用薬であるソファルコン, ウルソデォキシコール酸, ド ンぺリドンおよびそれらの塩などや、 ホルモン剤であるダナゾ一ル, ェチニル エストラジオール, コルチゾンアセテート, デキサメタゾンおよびそれらの塩 などや、 泌尿器生殖器系用薬であるフロセミド, スピロノラクトン, トリべノ シドおよびそれらの塩などや、腫瘍用薬である夕モキシフェン,ブスルファン, タキソールおよびそれらの塩などや、 抗生物質や化学療法剤であるグリセオフ ルビン, ケトコナゾ一ル, アルベンダゾ一ルおよびそれらの塩などや、 抗エイ ズ剤であるアンプレナビル, ネルフィナビル, リトナビル, サキュナビルおよ びそれらの塩などや、 脂溶性ビタミン類であるビタミン A, Dもしくはそれら の誘導体, 酢酸トコフエロールなどや、 その他として、 チクロピジン, ァミオ ドロン, 口ペラミド, ケタンセリン, ベラパミル, テルフエナジン, トリフル ォロペラジン, トロダリ夕ゾン, ピオダリ夕ゾン, イブリフラボン, 夕クロリ ムス, シクロスポリンおよびそれらの塩などが挙げられる。
本発明で用いる親水性可溶化剤としては、 (ィ) 界面活性剤又は(口) 親水性 溶媒と界面活性剤とを含有するものであれば特に限定されないが、 経口投与が 許容されうるものが好ましい。
界面活性剤としては、 例えば H C O 1 0、 H C O 4 0、 H C O 5 0、 H C O 6 0、 C r e m o p h o r R H 4 0などのポリオキシエチレン硬化ひまし油類、 ポリオキシル 3 5硬化ひまし油、 ポリオキシル 4 0水素添加硬化ひまし油など
の各種硬化ひまし油、 例えば Twe e n40、 Twe en 60、 Twe e n 6 5、 Twe e n 80などの各種ポリソルべ一ト、例えば Labrasol (登録商標), Gelucire (登録商標) 44Z14, Gelucire (登録商標) 50/13などのポ リエチレングリコール 1500脂肪酸トリダリセリド類等のポリエチレンダリ コール脂肪酸トリグリセリド類、 例えばポリオキシエチレンヒドロキシステア リン酸エステル (SolutolHS15 (登録商標)) などのポリオキシエチレンヒドロ キシ脂肪酸エステル類、 Imwiter (登録商標) 191、 308、 380、 742、 パルミトステアリン酸グリセリンなどのグリセリン脂肪酸エステル類等が挙げ られ、 脂肪酸としては炭素数 1〜50の脂肪酸が好ましい。 また、 例えばコハ ク酸ビタミン Eポリエチレングリコール 1000エステル (Tocophersolan (登 録商標))等のコハク酸ビタミン Eポリエチレングリコールエステル類、 ステア リン酸、 ラウリル酸、パルミチン酸、ォレイン酸などの脂肪酸やそれらの塩類、 ポロキサマ一類、 ラウリル硫酸ナトリウムなども好ましい。 本発明で用いる界 面活性剤としては、 各種ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、 ラウリル硫酸ナト リウム、 Gelucire44/14、 コハク酸ビタミン Eポリエチレングリコール 1 000エステル、 ポリオキシエチレンヒドロキシステアリン酸エステル、 Imwiter 742がより好ましい。界面活性剤としては、親水性溶媒と共にミセル を形成することによって、 難水溶性薬物を水に可溶化できるものが好ましい。 親水性溶媒としては、例えば P EG400、 PEG600、 PEG1000、 PEG 1500, PEG 1540. PEG4000、 PEG6000、 PEG 20000などの各種ポリエチレングリコール、 グリセリン、 プロピレンダリ コール, エタノール, プロピレンカーバメイト, N—メチル 2—ピロリドン, ジメチルスルホオキサイド, ジメチルァセトアミド, ジメチルフオルムアルデ ヒド, ジエチレングリコールエーテルなどが好ましく、 なかでも各種ポリェチ レンダリコール、 プロピレングリコ一ル、 ジエチレングリコールエーテルがよ り好ましい。親水性溶媒は、単独で用いず界面活性剤と組み合わせて使用する。
例えば、 親水性可溶化剤としてポリエチレングリコ一ルのみを使用しても所期 の目的は達成出来ない。
親水性可溶化剤は所望により難水溶性化合物に対イオンを与える化合物をさ らに含有していてもよい。 対イオンを与える化合物として、 酸性薬物には陽ィ オンを与える化合物であればなんでもよく、 具体的には有機陽イオンのメダル ミン、 ジエタノールァミン、 ベンザチンや、 アルカリ金属 (ナトリウム、 カリ ゥムなど) の水酸化物、 またはアルカリ土類金属 (マグネシウム、 カルシウム など) の水酸化物などが好ましい。 特に、 水酸化ナトリウム、 水酸化カリウム がより好ましい。 また、 塩基性薬物には陰イオンを与える化合物であればなん でもよく、 具体的には塩酸、 硫酸、 酢酸、 臭酸、 クェン酸、 マレイン酸、 酒石 酸、 メタンスルホン酸、 リン酸などが好ましい。 特に、 塩酸がより好ましい。 両性薬物には、 前述の化合物の全てが好ましく、 特に、 水酸化ナトリウム、 水 酸化カリウム、 塩酸がより好ましい。 これらは水溶液の状態で使用されるのが 好ましい。
難水溶性化合物に対イオンを与える化合物の添加量としては、 難水溶性薬物 に対して 0 . 2から 1 . 2倍モルが好ましい。 特に、 0 . 5から等モルがより 好ましい。
本発明に係る親水性可溶化剤の好ましい例として、
( 1 ) コハク酸ビタミン Eポリエチレングリコールエステル
( 2 ) ポリオキシエチレンヒドロキシ脂肪酸エステル
( 3 ) コハク酸ビタミン Eポリエチレングリコールエステルとポリエチレング リコールまたはプロピレングリコールとの混合物
( 4 ) (ィ) コハク酸ビタミン Eポリエチレングリコールエステルと (口) ポ リエチレングリコ一ルまたはプロピレングリコールと (ハ) 水酸化ナト リウム、 水酸化カリウムまたは塩酸との混合物
( 5 ) (ィ) ポリオキシエチレンヒドロキシ脂肪酸エステルと (口) ポリェチ
レンダリコールまたはプロピレンダリコールと(八)水酸化ナトリゥム、 水酸化力リゥムまたは塩酸との混合物
等が好ましく、 さらに水酸化ナトリウム、 水酸化カリウムおよび塩酸は適当な 濃度の水溶液として使用するのが好ましい。
本発明で用いる品質保持剤としては、 親水性可溶化した難水溶性薬物を含む 内容物を充填したハードカプセルの化学的安定性または物理的安定性に寄与す るものであれば、 どのようなものでもよい。 具体的には、 難水溶性薬物と可溶 化剤と品質保持剤とが充填されているハードカプセル剤を 4 0 °C下 6ヶ月保存 する加速試験に付し、 その結果、 外観損傷 (例えば、 軟化、 溶解、 漏れ、 割れ および変形など) および八一ドカプセルから薬物の溶出性の悪化が実質的に観 察されないことが好ましい。 このような本発明のハードカプセル剤は、 保存安 定性に優れる。
本発明で用いる品質保持剤としては、 精製水、 増粘剤または高融点の添加剤 などが挙げられる。 前記増粘剤としては、 ハードカプセルに充填される内容物 の動粘度を約 1 0 0〜 2 0 0 0 (m p a s ) 程度にする物質が挙げられ、 より 具体的には、 例えばセル口一ス系高分子もしくはポリビニルピロリドン、 ポリ アルギン酸、 ポリアクリル酸などが好ましい。 または前記物質を精製水もしく は多価アルコールまたはそれらの混液で溶解 ·分散した液や軽質無水ケィ酸や ポリアルギン酸などが挙げられる。 前記高融点の添加剤としては、 室温付近で 固体であり、 融点の高い物質であればなんでもよく、 具体的には内容物の融点 を約 3 0〜8 0 aC程度にする髙融点物質が挙げられる。 より具体的には、 例え ば高級脂肪アルコール類、 グリセリン長鎖脂肪酸エステル、 高分子ポリエチレ ングリコール (1 0 0 0、 1 5 0 0、 ' 4 0 0 0、 6 0 0 0、 2 0 0 0 0 )、 ポリ エチレングリコール 1 5 0 0脂肪酸エステル類またはコハク酸ビタミン Eポリ エチレングリコール 1 0 0 0エステルなどが挙げられる。
本発明で用いる品質保持剤として、 より好ましくは、 (a ) 精製水、 (b ) セ
ルロース系高分子もしくはポリビニルピロリドン (K 2 5, Κ 3 0など)、 また は前記物質を精製水もしくは多価アルコールまたはそれらの混液で溶解 ·分散 した液、 (c ) 軽質無水ケィ酸、 (d ) 高級脂肪アルコール類または (e ) ダリ セリン長鎖脂肪酸エステル類などが挙げられる。 なお、 精製水は蒸溜水、 生理 的食塩水であってもよく、 精製水、 蒸留水が好ましい。 なお、 前記対イオンを 与える化合物が水溶液として配合される場合、 水分が使用されているため、 精 製水などの品質保持剤を使用しなくともよい。
また、 溶媒として、 セルロース系高分子添加剤もしくはポリビニルピロリド ンなどを精製水もしくは多価アルコールまたはそれらの混液で溶解、 分散した 液を用いると、 かかる溶媒は品質保持剤の役割を兼ねることができるため、 品 質保持剤を添加しなくてもよい。
前記セルロース系高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルセル口一ス, ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。 前記の多価アルコー ルとしては、 例えばエチレングリコール類 (エチレングリコール、 ジエチレン グリコール、 トリエチレングリコール)、 グリセリン、 プロピレングリコール、 1 , 3—ブチレングリコ一ル等の低分子のグリコール類;ポリエチレングリコ ールもしくはポリプロピレングリコール等の分子量が約 2 0 0〜約 6, 0 0 0 の高分子のグリコール類等が挙げられ、 中でもポリエチレングリコール 4 0 0 またはプロピレングリコールがより好ましい。
前記高級脂肪アルコールとしては、 例えば、 セチルアルコール、 ステアリル アルコールまたはセトステアリルアルコールなどの炭素数 1 6〜 2 2の脂肪ァ ルコールが挙げられ、 中でもセトステアリルアルコールが好ましい。
前記グリセリン長鎖脂肪酸エステルとしては、 長鎖脂肪酸とグリセリンまた はポリグリセリンのエステルおよびその誘導体をいい、 モノエステル、 ジエス テル、 トリエステルまたはポリエステルのいずれでもよい。 例えば、 長鎖脂肪 酸とグリセリンのエステル(狭義のグリセリン長鎖脂肪酸エステル)、 グリセリ
ン酢酸長鎖脂肪酸エステル、 グリセリンクェン酸長鎖脂肪酸エステル、 グリセ リン乳酸長鎖脂肪酸エステル、 グリセリンジァセチル酒石酸エステル、 ポリグ リセリン長鎖脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合リシレイン酸エステル などが挙げられる。 前記長鎖脂肪酸としては、 例えば炭素数 1 2〜4 0、 好ま しくは炭素数 1 2〜2 2の飽和または不飽和脂肪酸などが挙げられる。 該脂肪 酸としては、 例えばステアリン酸、 パルミトステアリン酸、 ォレイン酸、 ラウ リン酸、 リノール酸またはべヘン酸などが好ましく、 パルミトステアリン酸が より好ましい。
本発明で用いる品質保持剤として、 より好ましくは、 (a ) 精製水、 (b ) セ ルロース系高分子添加剤もしくはポリビエルピロリドンなど、 またはこれらを 精製水、 ポリエチレングリコール 4 0 0もしくはプロピレングリコールまたは それらの混液で溶解 '分散した液、 (c ) 軽質無水ゲイ酸、 (d ) セトステアリ ルアルコールおよび (e ) パルミトステアリン酸グリセリンからなる群から選 ばれる 1以上が挙げられる。
なお、例えば高級脂肪アルコールまたはダリセリン脂肪酸エステルのように、 1つの添加剤が親水性可溶化剤としての役割と品質保持剤としての役割の双方 を有する場合がある。 本発明で用いる品質保持剤としては、 精製水が最も好ま しい。
本発明に係る八一ドカプセル剤において、 難水溶性薬物の製剤中含有量は、 約 0 . 1重量%から約 5 0重量%程度であり、 約 1重量%から約 3 0重量%が より好ましい。 親水性可溶化剤の製剤中含有量は、 約 2 0重量%から約 9 9 . 8重量%が好ましく、 約 5 0重量%から約 9 0重量%がより好ましい。 親水性 溶媒の製剤中含有量は、 約 0 . 1重量%から約 2 0重量%が好ましく、 約 1重 量%から約 1 0重量%がより好ましい。 品質保持剤の製剤中含有量は、 約 0 . 1重量%から約 3 0重量%までが好ましく、 約 1重量%から約 2 0重量%がよ り好ましい。
本発明に係るハードカプセル剤を構成する素材(以下、カプセル素材という。) としては、 公知の素材を用いてよいが、 経口投与することが許容される素材が 特に好ましい。 例えば、 天然由来の多糖類である寒天, アルギン酸塩, デンプ ン, キサンタンもしくはデキストランや、 タンパクであるゼラチンもしくは力 ゼインなどが挙げられる。 化学処理品としては, ヒドロキシデンプン, プルラ ン, ヒドロキシプロピルセルロース, ヒドロキシプロピルメチルセルロース, ポリビニルアルコールもしくはその誘導体, ポリアクリル誘導体, ポリビニル ピロリドンもしくはその誘導体, またはポリエチレングリコールなどが挙げら れる。本発明に係るハード力プセル剤は、その中でもゼラチンハード力プセル、 ヒドロキシプロピルメチルセルロースハードカプセルまたはプルランハード力 プセルであることが好ましく、 ヒドロキシプロピルメチルセルロースハ一ドカ プセルまたはプルランハードカプセルであることがより好ましい。
本発明で用いるハードカプセルは公知方法にしたがって容易に製造すること ができる。 例えば、 上記カプセル素材、 および所望によりゲル化剤、 更に所望 によりゲル化補助剤を溶解した水溶液 (ジエル) 中に成型ピンを浸漬し、 これ を引き上げ、 上記カプセル素材をゲル化、 乾燥するという方法により、 ハード カプセルを得ることができる。
上記のようにして得られるハードカプセルに、 難水溶性薬物と、 親水性可溶 化剤と、 品質保持剤とを、 好ましくはこれらを均一に混合、 溶解または分散し た後に充填することにより、 本発明のハードカプセル剤を得ることができる。 八ードカプセルには、 難水溶性薬物、 親水性可溶化剤と品質保持剤以外にも、 本発明の目的に反しない限り他の添加物が充填されていてもよい。 前記 「他の 添加物」 としては、 本発明のハ一ドカプセル剤の用途に応じて当該用途に通常 用いられている添加物を用いることができ、 例えば、 食用色素、 不透明化剤、 粘度改変剤、 ゲル化剤、 ゲル化補助剤または陚形剤 (例、 乳糖、 ブドウ糖、 シ ョ糠、 マンニットなど) 等が挙げられる。 なお、 ハ一ドカプセルに充填される
物質を 「内容物」 と総称する。
内容物の充填方法は、 常法に従って行えばよい。 例えば、 上述の八一ドカプ セル (ボディ一とキャップの対からなる) を薬物充填機にセットし、 ボディー とキャップとを分離した後、 ボディーに一定量の内容物を充填し、 キャップを 結合するなどの方法を採用することができる。 また、 所望により、 キャップと ボディ一の結合部に、 当該カプセル素材と同一成分などによって、 いわゆるバ ンドシ一ルゃマイクロスプレー ·シーリングを施すことが好ましい。
例えば、 ボディーとキャップの接合部からの液漏れを防止する為に、 ボディ 一に内容物を充填後、 キャップを閉めて接合部を速やかに融合させてシ一リン グするのが好ましい。 このように、 親水性可溶化剤が含まれていてもハード力 プセルを品質保持する添加剤さえあれば、 経口投与時の吸収性が改善された難 水溶性薬物を含む内容物を八一ドカプセルに充填することにより、 経口投与用 固形製剤化できる。
ハードカプセルに充填される内容物は、 液状、 半固形状または固形状 (例え ば、 粉末、 顆粒または錠剤など) 等いかなる形態を有していてもよいが、 経口 投与時の吸収性の改善という観点からは液状または半固形状を呈していること が好ましい。
液状および半固形状の内容物は、 公知の方法に従って得ることができる。 例 えば、液状の内容物は、適当な溶媒に難水溶性薬物、親水性可溶化剤、乳化剤、 品質保持剤および所望により他の添加物を溶解または分散することにより得る ことができる。 ここで、 溶媒としては、 本発明のハードカプセル剤の用途によ り適宜選択することができ、 また、 品質保持剤として増粘剤を用いれば、 この とき、 増粘剤とともに、 増粘補助剤を同時に用いてもよい。 増粘補助剤として は、 固体であるセルロース系高分子添加剤やポリビニルピロリドンや軽質無水 ケィ酸やポリアルギン酸やポリアクリル酸などを溶解 ·分散する担体であれば よく、 例えば、 精製水や多価アルコールやグリセリンなどまたはそれらの混液
などが好ましい。 さらに、 品質保持剤として高融点の添加剤を用いれば半固形 状の内容物を調製することができる。 この添加剤として本発明の高融点の親水 性可溶化剤も上げられる。 例えば、 高級脂肪アルコール類、 グリセリン長鎖脂 肪酸エステル、 PEG1000、 PEG 1500, PEG4000、 PEG6 000、 PEG20000などの高分子ポリエチレングリコール、 ポリエチレ ングリコール 1500脂肪酸エステル類またはコハク酸ビタミン Eポリエチレ ングリコール 1000エステルが好ましい。 特に高級脂肪アルコール、 グリセ リン長鎖脂肪酸エステル、 PEG1000、 PEG 1500, PEG4000、 PEG6000、 PEG20000などの高分子ポリエチレングリコール、 ポ リエチレングリコール 1500脂肪酸エステル類またはコハク酸ビタミン Eポ リエチレングリコール 1000エステルがより好ましい。
本発明のハードカプセル剤は、 医薬品または食品をはじめとして、 動物また は植物用の薬品や肥料もしくは飼料などに適用可能である。 特に医薬品として は、 経口投与される薬剤だけでなく、 吸入剤などの非経口薬剤、 または坐剤な どの外用剤としても適用可能である。 更に、 入れ歯、 眼鏡またはコンタクトレ ンズなどの消毒 ·洗浄などを目的とするいわゆる医薬部外品としても適用可能 である。 実施例
以下、 製造例、 試験例および実施例を示すが、 これらによって本発明が限定 されるものではない。 以下の例中、 部は重量部を、 %は重量%を意味する。 比較例 1
9. 5部のポリエチレングリコール (PEG) 400と 0. 5部の精製水を 混合し、 その混合物を各 1号サイズのゼラチンハードカプセル(HGC), ヒド ロキシプロピルメチルセルロースハードカプセル (HPMC) またはプルラン
ハードカプセル (HPC) に市販品の使い捨て lmlシリンジで約 0. 3ml ずつ充填し, ハードカプセル剤とした。 比較例 2
7部の PEG400に蒸留水を 0. 5部とポリビニルピロリドン (P VP) K25を 2. 5部とを混合、 溶解し、 得られた溶解液を各 1号サイズの HGC , HPMCまたは HPCに市販品の使い捨て lm 1シリンジで約 0. 3mlず つ充填し、 ハードカプセル剤とした。 製造例 1
約 60°Cで溶融したコハク酸ビタミン Eポリエチレングリコール 1000ェ ステル (TPGS) を 9部と PEG400を 1部と混合し、 得られた混合液を 各 1号サイズの HGC, HPMCまたは HPCに市販品の使い捨て lm 1シリ ンジで約 0. 3mlずつ充填し、 ハ一ドカプセル剤とした。 製造例 2
約 60 で溶融した TPGSを 7部と PEG400を 3部とをよく混合し、 得られた混合液を各 1号サイズの H G C, H P M Cまたは H P Cに市販品の使 い捨て lm 1シリンジで約 0. 3 mlずつ充填し、 ハードカプセル剤とした。 製造例 3
約 60°Cで溶融した TP GSを 9部とプロピレングリコ一ル(PG) を 1部 とをよく混合し、 得られた混合液を各 1号サイズの HGC, HPMCまたは H PCに市販品の使い捨て lm 1シリンジで約 0. 3mlずつ充填し、 ハード力 プセル剤とした。
製造例 4
約 60°Cで溶融した TPGSを 7部と PGを 3部とをよく混合し、得られた 混合液を各 1号サイズの H G C , H P M Cまたは H P Cに市販品の使い捨て 1 mlシリンジで約 0. 3mlずつ充填し、 ハードカプセル剤とした。 製造例 5
約 60°Cで溶融した TPGSを 6. 7部と PVPK25の 0. 3部を溶解し た PGを 3部とをよく混合し、 得られた混合液を各 1号サイズの HGC,' HP MCまたは HPCに市販品の使い捨て lm 1シリンジで約 0. 3mlずつ充填 し、 ハードカプセル剤とした。 製造例 6
約 40°Cで溶融したポリオキシエチレンヒドロキシステアリン酸(HS 15) を 9部と PGを 1部とをよく混合し、 1号サイズの HGC、 HPMC, HPC に市販品の使い捨て lmlシリンジで約 0. 3ml充填し、 ハードカプセル剤 とした。 製造例 7
約 60°Cで溶融したポリエチレングリコ一ル 1500脂肪酸トリグリセリド である Gelucire44/14を 6部と同じくポリエチレングリコール 1500脂肪酸 トリグリセリドである Labrasol を 3部とジエチレングリコールエーテルを 1 部とよく混合し、 得られた混合液を各 1号サイズの HGC、 HPMCまたは H PCに市販品の使い捨て lmlシリンジで約 0. 3mlずつ充填し、 ハード力 プセル剤とした。 製造例 8
約 60°Cで溶融したグリセリン中鎖脂肪酸エステルである I mw i t e r 7 42を 9部とポリオキシエチレン硬化ひまし油(HC〇) 60を 1部を約 6 Ot 下でよく混合し、 得られた混合液を各 1号サイズの HGC、 HPMCまたは H PCに市販品の使い捨て lm 1シリンジで約 0. 3mlずつ充填し、 ハード力 プセル剤とした。 実施例 1
約 60°Cで溶融した TPGSを 8部と PEG400を 1部と精製水を 1部と を混合し、 得られた混合液を各 1号サイズの HGC, HPMCまたは HP Cに 市販品の使い捨て lm 1シリンジで約 0. 3mlずつ充填し、 ハードカプセル 剤とした。 実施例 2
前もって、 0. 5部の PVPK25を溶解した。 PEG400を 3部と蒸留 水を 0. 5部に約 60°Cで溶融した TPGSを 6部とをよく混合し、 溶解し、 得られた混合液を各 1号サイズの H GC, H P M Cまたは H P Cに市販品の使 い捨て lm 1シリンジで約 0. 3mlずつ充填し、 ハードカプセル剤とした。 実施例 3
約 60°Cで溶融した TPGSを 8部とプロピレングリコール(PG) を 1部 と精製水を 1部とをよく混合し、 得られた混合液を各 1号サイズの HGC, H PMCまたは HP Cに市販品の使い捨て lm 1シリンジで約 0. 3mlずつ充 填し、 ハードカプセル剤とした。 実施例 4
約 40°Cに溶融した HS 15を 5部と PGを 1部と精製水を 1部と高級脂
肪アルコールを 3部とをよく混合し、得られた混合液を各 1号サイズの HGC, H PMCまたは HP Cに市販品の使い捨て lm 1シリンジで約 0. 3mlずつ 充填し、 ハードカプセル剤とした。 実施例 5
約 60°Cで溶融した Gelucire44/14を 4. 5部と Labrasolを 2部とジェチレ ングリコ一ルエーテルを 0. 5部とグリセリン長鎖脂肪酸エステルであるパル ミトステアリン酸グリセリンを 3部とをよく混合、 溶解し、 得られた混合液を 各 1号サイズの HGC、 H PMCまたは HP Cに市販品の使い捨て lm 1シリ ンジで約 0. 3mlずつ充填し、 ハードカプセル剤とした。 実施例 6
約 60°Cに溶融したグリセリン中鎖脂肪酸エステルである Imwi t e r 7 42を 8部とポリオキシエチレン硬化ひまし油(HC〇) 60を 1部と約 60 下でよく混合、 溶解し、 さらに、 軽質無水ケィ酸を 1部加え、 よく混合した。 得られた混合液に各 1号サイズの H G C、 H P M Cまたは H P Cに市販品の使 い捨て lmlシリンジで約 0. 3mlずつ充填し、 ハードカプセル剤とした。 試験例 1 :外観変化試験
製造例 1から 8までのカプセル剤を、 キャップ部とボディ部の接合部から内 溶液が漏れないようにボディ部を下にして試験管に入れ、 試験管の開口部を密 封し、 室温 3年間に相当する加速試験条件である 40°Cの恒温室に 6ヶ月間保 存し、 外観変化 (溶解、 割れ、 漏れ、 変形など) を観察した。 その結果を下記 表に示す。 表中、 〇は外観変化がないことを、 Xは軟化、 割れ、 漏れおよび変 形が生じることを示す。
第 1表
上表に示したように、 品質保持剤を含有していない比較例 1、 製造例 4、 5 の HGCカプセル剤と比較例 1、 2、 製造例 1〜5、 7の HP MCカプセル剤 は軟化、 割れ、 変形が生じ、 不適合を示す。 一方、 品質保持剤を含有する実施 例 1〜6は、 適合を示す。 試験例 2 :溶出試験
試験例 1で保存期間終了まで大きな外観変化のなかった比較例 2、製造例 1、 2、 3、 6、 7、 8の HGCまたは HPMCのカプセル剤について、 充填され ていた内容液を取り出し、 その代わりに約 25 Omgのァセトァミノフェンを 充填しァセトァミノフェンカプセルを得た。 第 14改正日本薬局方の溶出試験 法第 2法に従い、 溶出液を精製水とし、 パドル回転数 50回転で前記ァセトァ ミノフェン力プセルからのァセトアミノフェンの溶出率を測定した。 その結果 を下記表に示す。表中の数値は、 45分後のァセトァミノフェンの溶出率 (%)
を示す。 また、 Xは 45分後のァセトァミノフェンの溶出率が 85%以下であ り、 不満足な結果であったことを示す。 なお、 前記溶出率は試験数 2の平均値 である。
上表に示したように、 外観に大きな変化がなかった品質保持剤を含有してい ない比較例 2と製造例 1、 2、 3、 6、 7、 8の HGCまたは HPMCカプセ ルからのァセトァミノフェンの 45分後の溶出率は、 85%以下であり、 前述 した条件で保存しなかったカプセル(非保存品)より顕著に低い溶出率を示し、 品質保持剤が充填されていないため品質的に各種親水性可溶化剤の悪影響があ つたことを示す。 これは、 各種親水性可溶化剤によって、 HGCの主成分であ るゼラチンが変質し、 それに伴いゼラチンの不溶化が起こっていたことと、 H PMCに関しては H PMCのゲル化が起こつた結果であると考えられた。一方、 品質保持剤を含有する実施例 1〜 6の 3種のカプセルからの溶出率は、 非保存 品と変わらず、 45分後のァセトァミノフェンの溶出率は 85%以上であった ことから、 品質的に各種親水性可溶化剤の悪影響がなかったことを示す。 つま
り、 精製水、 PVP、 高級脂肪アルコール、 グリセリン中鎖脂肪酸エステル、 無水軽質ケィ酸が力プセル素材に対し品質保持剤として効果があったことがわ かった。 実施例 7
実施例 1と同様の親水性可溶化剤組成で以下のように八一ドカプセル剤を調 製した。 つまり、 ダナゾールを l g (10重量%) と TPGSを 7 gと PEG を 0. 7 gとラウリル硫酸ナトリウムを 0. 6 gとを約 80°C加温下よく混合 し、 ダナゾ一ルを溶解した。 溶解後、 精製水を 0. 7 g加え、 よく混合し、 こ の薬液を市販品の使い捨て lm 1シリンジで、 各 1号サイズの HGC, HPM Cまたは HP Cカプセルに約 0. 3mlずつ充填し、 1カプセルあたり約 30 mg含有ダナゾールカプセル剤を調製した。 実施例 8
実施例 2と同様の親水性可溶化剤組成で以下のようにハードカプセル剤を調 製した。 つまり、 予め 0. 3 gの PEG400と 0. 05 gの精製水に 0. 0 5 gのポリビニルピロリドン K25を約 80°C加温下よく混合し、 溶解した。 この混液に 0. 7 gの TPGSを加え、 よく混合、 溶解した。 得られた混液に シクロスポリンを 0. 2 g (15. 4重量%) を加え、 約 80°C加温下よく混 合し、 溶解した。 この薬液を市販品の使い捨て lm lシリンジで、 各 1号サイ ズの HP MCまたは HP Cカプセルに約 0. 3m lずつ充填し、 1カプセルあ たり約 45mg含有シクロスポリンカプセル剤を調製した。 実施例 9
実施例 3と同様の親水性可溶化剤組成で以下のようにハードカプセル剤を調 製した。 つまり、 夕クロリムス 0. 2 g (10重量%) と TPGSを 1. 4 g
と PGを 0. 2 gとを約 80°C加温下よく混合し、 夕クロリムスを溶解した。 溶解後、 精製水 0. 05 gを加え、 よく混合し、 この薬液を市販品の使い捨て lm lシリンジで、 各 1号サイズの HGCまたは HP Cカプセルに約 0. 3 m 1ずつ充填し、 1力プセルあたり約 30mg含有タク口リムスカプセル剤を調 製した。 実施例 1 0
実施例 4と同様の親水性可溶化剤組成で以下のようにハードカプセル剤を調 製した。 つまり、 プロブコール 2 g (17重量%) と HS 15を 7 gと PGを 1 gとセ卜ステアリルアルコールを約 80°C加温下よく混合し、 プロブコール を溶解した。 溶解後、 精製水 0. 5 gを加え、 よく混合し、 この薬液を市販品 の使い捨て lm 1シリンジで、 各 1号サイズの HGCまたは HP Cカプセルに 約 0. 3m lずつ充填し、 1カプセルあたり約 5 Omg含有プロブコールカプ セル剤を調製した。 実施例 1 1
実施例 5と同様の親水性可溶化剤組成で以下のようにハードカプセル剤を調 製した。 つまり、 夕モキシフェンを 0. 3 g (10重量%;) と 60°Cに溶融し た Gelucire44/14を 1. 4 gと Labrasolを 0. 6 gとジェチレングリコ一ルェ 一テルを 0. 2 gとグリセリン長鎖脂肪酸エステルであるパルミトステアリン 酸グリセリンを 0. 5 gとを約 60 でよく混合し、 溶解した。 溶解後、 精製 水 0. 05 gを加え、 よく混合し、 この薬液を市販品の使い捨て lm 1シリン ジで、 各 1号サイズの HGCまたは HPCカプセルに約 0. 3m lずつ充填し 、 1カプセルあたり約 3 Omg含有夕モキシフェンカプセル剤を調製した。 実施例 1 2
実施例 6と同様の親水性可溶化剤組成で以下のように八一ドカプセル剤を調 製した。 つまり、 約 60°Cに溶融した Imw i t e r 742を 15 gとポリオ キシエチレン硬化ひまし油 (HCO) 60を 2 gと約 60 下でよく混合し、 この混合液にアルベンダゾ一ルを 1 g (5重量%) を加え、溶解した。 さらに、 無水軽質ケィ酸を 1部加え、 よく混合した。 得られた混合液に各 1号サイズの HGC、 H PMCまたは HP Cに市販品の使い捨て lm 1シリンジで約 0. 3 mlずつ充填し、 1カプセルあたり約 15mg含有のアルベンダゾールカプセ ル剤を調製した。 実施例 13
実施例 1と同様の親水性可溶化剤組成で以下のように八一ドカプセル剤を調 製した。 つまり、 アルベンダゾ一ルを 2. 5 g (22重量%) に約 60 °Cに溶 融した TPGSを 7. 13 gと PEG400を lgと 12規定の塩酸水溶液を 0. 87 gとを約 60°Cでよく混合し、 溶解した。 得られた混合液を各 1号サ ィズの HGC, HPMCまたは HP Cに市販品の使い捨て lmlシリンジで約 0. 3mlずつ充填し、 1カプセルあたり約 66mg含有のアルベンダゾール カプセル剤を調製した。 実施例 14
実施例 4と同様の親水性可溶化剤組成で以下のようにハ一ドカプセル剤を調 製した。 つまり、 ドンペリドンを 3 g (25重量%) と約 40°Cに溶融した H S 1 5を 7. 35 gと PGを 1 gと 12規定の塩酸水溶液を 0. 65 gとを約 60°Cでよく混合、 溶解し、 得られた混合液を各 1号サイズの HGC, HPM Cまたは H P Cに市販品の使い捨て 1 m 1シリンジで約 0. 3mlずつ充填し、 1カプセルあたり約 75 nag含有ドンペリドンカプセル剤を調製した。
実施例 15
実施例 4と同様の親水性可溶化剤組成で以下のように八一ドカプセル剤を調 製した。 つまり、 トロダリ夕ゾンを 4 g (29重量%) と約 40°Cに溶融した HS 15を 7. 2 gと PGを 1 gと 4規定の水酸化カリウム水溶液を 1. 8 g とを約 60°Cでよく混合、 溶解し、 得られた混合液を各 1号サイズの HGC, HPMCまたは HPCに市販品の使い捨て lm 1シリンジで約 0. 31mlず つ充填し、 1カプセルあたり約 9 Omg含有トロダリ夕ゾンカプセル剤を調製 した。 実施例 16
実施例 1と同様の親水性可溶化剤組成で以下のように八一ドカプセル剤を調 製した。 つまり、 プランルカストを 3. 5 g (25重量%) と約 60 °Cに溶融 した TPGSを 8 gと PEG400を 1 gと 4規定の水酸化ナトリウム水溶液 を 1. 5 gとを約 60°Cでよく混合し、 得られた混合液を各 1号サイズの HG C, HPMCまたは HPCに巿販品の使い捨て lmlシリンジで約 0. 3 ml ずつ充填し、 1カプセルあたり約 75 mg含有プランルカストカプセル剤を調 製した。 実施例 17
イブプロフェンを 5 g (50重量%) に HS 15を 3 gと PGを 1 gとをよ く混合し、 次に 12規定の水酸化ナトリウム水溶液を 1 gとを加え、 約 6 Ot でよく混合、 溶解した。 得られた混合液を各 1号サイズの HGC、 HPMC, HPCに市販品の使い捨て lm 1シリンジで 0. 3mlずつ充填し、 1カプセ ルあたり約 15 Omg含有イブプロフェンカプセル剤を調製した。
なお、 実施例 7〜17のカプセル剤の充填物は、 いずれも第 14改正日本薬 局法の崩壊試験法に記載された人工胃液(pH 1. 2)および人工腸液(pH 6.
8 ) に速やかに溶解し、 上記の難水溶性薬物はその溶液において 2時間析出し なかった。 難水溶性薬物の生体内への吸収性が改善されることがわかる。 産業上の利用可能性
本発明のハードカプセル剤は、 難水溶性薬物の水への溶解度を向上させるた めの親水性可溶化剤を含有させても、 例えば軟化、 溶解、 漏れ、 割れおよび変 形などの外観変化や薬物の溶出性悪化などの質的変化が実質的に見られない。 本発明のハードカプセル剤を経口投与用医薬品として用いた場合は、 親水性可 溶化剤により難水溶性薬物の水への溶解度が向上されるため、 充填されている 難水溶性薬物の経口吸収性を向上させることができるという利点がある。 さら に、本発明のハード力プセル剤においては、従来のソフト力プセルとは異なり、 内容物の粘度について実質的に限定されず、 粘度の比較的高い内容物も充填す ることができる。 また、 本発明のハードカプセル剤は環境の湿度や温度などに 影響を受けにくく、 流通や取り扱いがしゃすい。