明 細 書
磁気ディスク媒体及びその製造方法並びに磁気記録装置 技術分野
この発明は磁気ディスク媒体及ぴその製造方法並びに磁気記録装置に 関する。 背景技術
現在、 ハードディスク装置においては円盤状の基板に磁性膜を蒸着し た磁気ディスクが記録媒体として用いられている。 記録密度の向上に伴 い、 媒体に起因するノイズの増大が問題となっている。 媒体ノイズの主 たる原因はビッ ト境界部のジグザグ状の磁壁に起因すると考えられてお り、 このノイズを低減するためには磁性膜を形成する結晶粒を微細化す ることが有効である。
一方、 媒体の熱揺らぎ耐性の観点から、 結晶粒は数 n m以下まで微細 化することは困難である。 この問題に対応するため、 磁性粒子を規則的 に配列し、 1粒子に 1 ビッ トの記録を行う方式、 いわゆるパターンドメ ディア、 が提案されている (たとえば日本国特許公開広報 (A) 特開平 3 - 2 2 2 1 1やジャーナルォブアプライ ドフィジックス 7 6卷 1 0号 6 6 7 3頁 (S . Y. C h o u e t a l ., J A P 7 6 ( 1 9 9 4), p - 6 6 7 3 )。 本手法によると熱揺らぎ限界まで 1 ビッ トを小さくする ことができるので、 高密度磁気記録が可能になる。
磁性粒子パターンを作成するためには、 例えばジャーナルォブァブラ イ ドフィジックス 8 5卷 1 2号 8 3 2 7頁 (C . H a g i n o y a e t a 1 . , J A P 8 5 ( 1 9 9 9 ), p . 8 3 2 7 ) では磁性膜上のレ
ジス トに電子線リ ソグラフィ一で直接、 描画し、 アルゴンイオンで削る. 方法が提案されている。 また、 アプライ ドフィジックスレターズ 7 8卷 6号 78 4頁 (K. K o i k e e t a 1. , AP L 7 8 ( 2 00 1 ), P . 78 4 ) では磁性膜を収束イオンビーム (F I B) で削る方法が提 案されている。 これらの手法では比較的容易に粒子形状を制御できる反 面、 磁性膜毎に電子線も しくはイオン描画を行うため、 スループッ トの 向上が困難である。
スループッ ト向上のために, 例えばアイ ト リプルィー トランザクショ ンオンマグネテイ クス 34卷 4号 1 0 8 7頁 (M. F a r h o u d e t a 1. , I E E E T r a n s . Ma g n. 3 4 ( 1 9 9 8), p . 1 0 8 7 ) では光干渉リ ソグラフィーを用いた描画が提案されている。 しかし、 本手法では光の干渉を利用しているため、 作成できる構造は光 の波長による制限を受けること、 任意の形状の粒子を作成することが困 難である、 といった問題点を有する。
例えば、 アプライ ドフィジックスレターズ 7 5卷 3号 4 0 3頁 ( B . D . T e r r i s e t a 1. , AP L 7 5 ( 1 9 9 9 ), p . 40 3 ) によると磁性膜表面から離れた場所にあるシリ コン製マスクを通してへ リ ゥムなどイオンを照射し、 照射部位だけ磁化容易磁区方向を変化させ る方法が提案されている。 本手法ではマスクが磁性膜に接していないた め磁性体表面をク リーンに保つことが可能, 機械的な加工を伴わないた め平滑な表面が得られるといったメ リ ッ トがある反面、 マスク 自体が充 分に硬く 単独で形状を保つ必要があるため、 マスクの作成が困難である、 このマスクを通して直接イオン照射を行うためマスクの劣化が早く 、 コ ス トなどの問題が発生するといつた問題点がある。 また本手法では化学 的に不活性なイオンを用いているため, 磁性膜内での化学変化は用いら
れていない。
マスクの劣化を避ける方法と して、 モール ドを作成し、 それをレジス トに転写する方法が例えば、 アプライ ドフィジックスレターズ 7 1卷 2 1号 3 1 74頁 (P. R . K r a u s s e t a 1. , A P L ( 1 9 9 7), 7 1 ( 1 9 9 7), p . 3 1 74) ゃァプライ ドフィジックス レタ ーズ 6 7卷 2 1号 3 1 1 4頁 (S. Y. C h o u e t a 1 . , A P L 6 7 ( 1 9 9 5 ), p . 3 1 1 4) などに提案されている。 しかし、 上述 の文献によると本手法により作成したパターンを再生専用のメモリーと して用いることが提案されているが、 化学変化のためのマスクとして用 いることは提案されていない。
現在、 ハードデイ スク装置においては円盤状の記録媒体にロータリ一 ァクチユエータで駆動される磁気へッドにより記録を行っている。 この ような記録方式において、 ディスクの内周と外周ではへッ ドとディスク の相対的な線速度は異なっているため、 ディスクの内周部と外周部では ビッ ト長が異なっている。 また、 ヘッ ドのョ一角によりディスクの半径 と記録ビッ トのなす角も異なってく る。 従って、 各記録ビッ トの形状や 向きは必ずしも一定ではない。 従来の磁気記録方式では磁性膜はディス ク上に連続的に存在するため、 ディスク上のどの部分にも記録すること が可能であり、 このような各記録ビッ ト毎の形状や向きが異なることは 問題とはならなかった。
しかし、 パターンドメディァにおいては磁性粒子は離散的に存在する ため、 任意の場所、 形状に記録することはできない。 これまで磁性微粒 子記録は同一の形状、 方向を持つ磁性微粒子に記録を行うことが想定さ れており、 トラックごと、 あるいは部分ごとに磁性粒子の形状を変える こと、 その手法、 およびそれを利用した磁気記録装置などについては報
告されていない。
従って、 本発明は磁性体が規則的に配列した高密度磁気記録媒体、 そ の製造方法、 およびそれを用いた磁気記録方式を提供することを目的と する。 発明の開示
本発明は、
( 1) 予め作成したモールドを磁性膜上に塗布されたレジス トに押し付 け、 形状を転写する。
(2) レジス トに転写されたパターンをマスクに反応性イオンエツチン グなどにより、 局所的に磁性体を非磁性体に変化させる。
(3) 余分なレジス トを除去し、 保護膜をつける。
以上の工程により記録媒体を作成することにより、 パターン形成のた めのモール ドはエッチングによる損傷を受けない。 従って比較的、 低コ ス トでの複製が可能となる。
また、 このとき形成するパターンとして、 ディスク上の半径方向位置 に応じて磁性粒子の大きさを変化させたパターンを形成すると、 デイ ス クの回転速度を一定に保ったまま記録 ·再生が可能となる。 このような 特徴を持つモールドを作成し、 前述の手法により複製することが可能で ある。 さらに、 場所毎に微粒子の大きさが異なる記録媒体に記録を行う ために記録電流を制御する機構を加えることで安定した書き込みが可能 になる。
又、 本発明は記録媒体上の特定の部分を酸化など化学反応により磁気 特性を変化させるため、 機械的な加工に比べ平坦なディスク表面を得る ことが可能となる。 また、 レプリ カをレジス トに転写してマスクとして
用いるため、 もとのレプリカは繰り返し使用可能である。
さ らに本発明は、 元のレプリカと して実使用時の線速度および磁気へ ッ ドのテーパー角に応じたパターンを作成することによ り、 ディスクの 角速度を一定に保ったままの記録再生およびテーパー角に起因するへッ ド磁場と ビッ ト位置のずれなどのない、 高密度記録に適した媒体を提供 することが可能となる。 図面の簡単な説明
第 1図は、 この発明に係る磁性粒子媒体の作成方法の一例を示す概略 図であり、 第 2図はこの発明に係る磁性粒子の配列の一例を示す概略図 であり、 第 3図はこの発明に係る磁性粒子媒体を用いた記録装置の一例 を示す概略図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明をよ り詳細に説述するために、 添付の図面を参照してこれを詳 細に説明する。
第 1図は本発明による記録媒体の作成方法を模式的に示した断面図で ある。 (1) . 基板 1 0 4上に磁気記録膜 1 0 3が成長させてある。 磁気記 録膜と して T b F e C o合金が用いられている。 T b F e C o以外にも 化学変化によ り強磁性を失う、 あるいは磁気特性が変化する物質であれ ばこれ以外の物質を用いてもよい。 図中では省略されているが基板 1 0 4 と磁気記録膜 1 0 3 の間に裏打ち層、 中間層などがある。 この磁気記 録層 1 0 3の上にス ピンコーターによ り 6 0 O n mのレジス ト 1 0 2を 塗布する。 本実施例において、 レジス トは P MM Aを使用したが、 他の レジス トを用いてもよい。 ここに電子線リ ソグラフィ一によ り作成した
S i o 2製のモール ド 1 0 1 を押し付ける。
モール ドの作成方法については例えばアプライ ドフイ ジックス レター ズ 6 7卷 2 1号 3 1 1 4頁 ( S . Y. C h o u e t a 1 . A P L 6 7 ( 1 9 9 5 ) p . 3 1 1 4)、 アプライ ドフィジックスレターズ 6 9卷 2 7号 4 2 6 2頁 (B . D. T e r r i s e t a 1 . A P L 6 9 ( 1 9 9 6 ) p . 4 2 6 2 )、 (アプライ ドフィジックスレターズ 7 1卷 2 1 号 3 1 7 4頁 (P . R . K r a u s s e t a 1 . A P L 7 1 ( 1 9 9 7 ) p . 3 1 7 4 ) などに示されている。 またこれら以外に X線描画、 S PM描画など、 必要な形状の得られる描画方法を用いてもよい。
押し付け方については、 例えば、 J U S T B 1 7 , 2 9 6 1 ( 1 9
9 9 ) に示されている。
( 2 ) レジス トの軟化点を超える温度、 例えば 2 0 0°C程度まで (前 記文献)、 記録媒体上のレジス トの温度を上げ、 高温を保った状態でモー ルド 1 0 1 を押し付ける。
( 3 ) 続いてレジス トの温度が冷えた後にモール ド 1 0 1をレジス ト
1 0 2から引き離すと磁気記録層 1 0 3の上にレジス トのパターンが形 成される。 このとき、 レジス ト 1 0 3は凹部には存在しないこ とが望ま しいが、 残っていても構わない。 なお、 インプリ ン トによる複製につい ては、 温度プロセス以外に、 光硬化 .光軟化樹脂を用いた光プロセス ( J U S T B 1 8 , 3 5 7 2 ( 2 0 0 0 ) など) や化学反応を用いたプロ セス (A P L 7 6 , 8 7 0 ( 2 0 0 0 )) などを用いてもよい。
( ) この試料を反応性イオンエッチング (R I E) 装置にて酸素ィ オン 1 0 5照射を行う。 このとき、 酸素イオン 1 0 5照射に変えて 02ま たは O 3雰囲気に暴露、 も しく は過酸化水素水などの液体への浸漬でもよ い。 この工程によ り レジス トに保護されていない部分のみ酸化され磁気
特性が変化し、 強磁性をなく した部分 1 0 6となる。
一方、 レジス トに保護されている部分は酸化されないため磁気特性は 変化しない。 凹部に若千、 レジス トが残っていた場合でもレジス トは酸 素と化学反応を起こし取り去られてしまうため、 凸部に比べ、 早くから 磁性層が酸素に暴露され、 同様に磁性膜上で部分的な酸化が進行する。 従って初めのモールドのパターンを反映した磁性体の構造が作成される 本プロセスでは記録ビッ トが充分、 磁気的に分離される構造になれば、 図に示されるように磁性膜途中までの酸化であっても、 磁性膜の一番下 までの酸化であっても構わない。
( 5 ) 有機溶媒による洗浄で残ったレジス トを除去する。 有機溶媒以 外でもレジス トに保護されていた部分が酸化されてしまわない手法なら ば他の手段を用いてもよい。 また、 ディスク表面上の凹凸の大きさなど により ( 5 ) の工程が不必要な場合は省略することも可能である。
( 6 ) 保護膜 1 0 7を形成する。 図中には示されていないが、 必要に 応じてさらに潤滑膜を作成してもよい。 以上の工程により、 記録媒体の 作成が完成する。
なお, 本実施例では磁性膜と して T b F e C o合金をイオン照射によ り酸化させることで磁気特性を変化させたが, これ以外にも窒化, 硼化 など化学変化により磁気特性を変化させる組み合わせの物質を用いても よい。
第 2図は本発明による記録媒体を模式的に示した図である。 ディスク 2 0 1の内周部拡大図 2 0 2、 外周部拡大図 2 0 3に示されるように磁 性粒子 2 0 4が非磁性部 2 0 5に囲まれた状態で配列してある。 本来、 磁気記録媒体最表面には保護膜などがついているが、 本図ではそれらを 取り除いた部分を示してある。 内周部拡大図 2 0 2において、 内周部磁
性粒子円周方向長 2 0 6と内周部非磁性部円周方向長 2 0 7が、 外周部 拡大図 2 0 3においては外周部磁性粒子円周方向長 2 0 8と外周部非磁 性部円周方向長 2 0 9がそれぞれ示されている。
内周部磁性粒子円周長 2 0 6 と内周部非磁性部円周方向長 2 0 7の比 ( 2 0 6 ) / ( 2 0 7 )は、 外周部磁性粒子円周方向長 2 0 8と外周部非磁 性部円周方向長 2 0 9の比 (2 0 8 ) / ( 2 0 9 )と比較すると小さくなつ ている。 これは本実施例においては内周部非磁性部円周方向長 2 0 7と 外周部非磁性部円周方向長 2 0 9は等しく 5 n mであるのに対し、 磁性 体円周方向長はその半径値によって変化して, 外周部の方が大きくなつ ているためである。 本実施例では内周部非磁性粒子円周方向長 2 0 7お よび外周部非磁性粒子円周方向長 2 0 9は 5 n mであったが、 磁性粒子 同士が磁気的に切断されるのに充分な距離であれば、 これより も長くて も短くてもよく、 一定の値である必要はない。
更に、 内周部拡大図 2 1 0および外周部拡大図 2 1 1はへッ ドの駆動 機構としてロータ リ一ァクチユエ一ターを用いた場合の磁性粒子 2 0 4 および非磁性部 2 0 5の配置例である。 記録へッ ドのョ一角に対応し、 ディスク半径と磁性粒子なす角が傾いている。
第 2 図においては一例として、 ディスク内周部 1個所、 外周部 1個所 を選んで示してあるが、 これは磁性粒子が 2 種類の大きさ、 向きに限定 されることを示すものではなく、 半径、 あるいはある幅を持つゾーン毎 に異なった値を取ることができる。 本実施例では半径毎に 8 つの領域に わけ, それぞれビッ ト長と半径値がほぼ比例するように磁性粒子を配置 した。 これにより、 ディスク面上の任意の半径位置でディスクの回転数 を一定に保ちながら、 記録 ·再生を行うことが可能となる。
なお、 本図のように半径位置に依存した磁性粒子長と非磁性部長の比
を変化させた構造は前記実施例、 もしく は電子線直描、 X線描画、 S P M描画などの手法で作成するこ とが可能である。 また、 本実施例におい ては磁性粒子の磁化容易軸はディスク垂直方向を向いているが、 これに 限定されることなく磁化容易軸が面内方向を向いていても構わない。 こ の場合、 垂直記録に特有の裏打ち層などは不必要となる。
第 3 図は本発明による記録媒体を用いた磁気記録装置の断面を示す模 式図である。 ディスク基板 3 0 6上に本発明による磁性粒子および非磁 性部よ り なる記録媒体 3 0 2が形成されている。 磁性粒子は T e F e C oからなり、 非磁性部はその酸化物からなる。 記録媒体は内周部拡大図 2 1 0, 外周部拡大図 2 1 1 に示す磁性粒子配置となっている。 また、 記録媒体を保護するための保護層、 磁性粒子の成長を制御する中間層、 単磁極 (SPT) ヘッ ドからの磁束の吸い込みとなる裏打ち層は本図では 省略してある。
へッ ドスライダー 3 0 1 は回転数 5 0 0 0 r p mのときに浮上量が 1 5 n mとなるよう に設計されている。 ヘッ ドスライダーの浮上面には記 録へッ ドと して単磁極へッ ド、 再生素子と して G M R素子が配置されて いる。 ヘッ ドスライダ一はジンパルを介してァクチユエ一ター 3 0 3に つながつており、 ディスク面上を移動することができる。 また信号処理 系 3 0 5は記録へッ ドへの記録電流、 再生へッ ドのセンス電流、 再生信 号、 へッ ド位置などの制御、 検出を行っている。 ディスク基板 3 0 6は スピンドル 3 0 4に固定され、 ディスク中心を回転の中心に自転運動を することができる。 実際の記録装置において、 記録媒体は複数枚、 へッ ドスライダ一はディスク両面につく はずであるが、 本図では省略されて いる。
本装置において、 へッ ドスライダー 3 0 1 が記録媒体 3 0 2の最も内
周部に位置するとき記録電流は 4 0 m A、 最外周部に位置するとき記録 電流は 3 0 m A となるよ うにし、 その間の領域では記録電流を 3 0 〜 4 0 m Aの範囲で最適値となるよ う制御している。 これは磁性粒子の形状 が内周側に向かう につれ各磁性粒子の形状異方性の効果が強く 出てく る ため、 記録しにく く なることに対応するためである。
ただし、 記録ビッ トの大きさ、 周期、 材質などによってはこのとおり ではなく 、 ディスク全域に渡り同じ記録電流でよい場合、 また逆に.内周 部の記録電流を大き くする必要がある場合もあり う る。 本実施例では G M R素子のセンス電流は変化させていないが、 必要に応じて変化させて もよい。 産業上の利用可能性
以上のよ うに、 本発明では記録媒体上の特定の部分を酸化など化学反 応によ り磁気特性を変化させるため、 機械的な加工に比べ平坦なディス ク表面を得る方法と して有用である。 また、 レプリ カをレジス トに転写 してマスク と して用いるため、 もとのレプリ力を繰り返し使用する方法 と しても有用である。
さ らに元のレプリ 力と して実使用時の線速度および磁気へッ ドのテ一 パー角に応じたパターンを作成することによ り、 ディスクの角速度を一 定に保ったままの記録再生およびテーパー角に起因するへッ ド磁場と ビ ッ ト位置のずれなどのない、 高密度記録媒体を提供するのに適している。