JP3286291B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体に関
し、さらに詳細には、例えば磁気ディスク装置(HD
D:ハードディスクドライブ)等の磁気記録再生装置に
用いられる磁気記録媒体に関し、特に高い記録密度を有
する磁気記録媒体の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】大容量記憶装置、特にハードディスクド
ライブ装置は、高データ転送速度、高速アクセス、高信
頼性、低価格等の点から大容量化、高密度化が著しく進
展している。面記録密度の向上は、磁気記録層中に形成
する記録磁区の微小化によって達成され、現在1平方イ
ンチ当たり5ギガビットを超え、10ギガビットから1
00ギガビットを目指した開発が進んでいる。
【0003】記録再生を行う磁気ヘッドとしては、イン
ダクティブヘッドを記録ヘッドとし、磁気抵抗効果型ヘ
ッド(MRヘッド)を再生ヘッドとして、これらをスラ
イダに搭載した複合型磁気ヘッドが用いられている。M
Rヘッドは、周方向における単位長さでの磁束変化によ
って出力が決まるため、原理的にはトラック幅をいくら
狭くしても出力が減少しない。そのためMRヘッドを使
用することにより、狭トラック化が見込める。さらに高
記録密度が見込める巨大磁気抵抗効果型ヘッド(GMR
ヘッド)についても、同様のことがいえる。
【0004】しかし、トラック幅があまりに狭くなる
と、隣接する記録トラックの磁気信号による干渉(クロ
ストーク)が大きくなるので、再生信号の劣化が問題と
なる。
【0005】また、記録ビット長の短縮によっても面記
録密度を向上できるが、記録ビット長を短くしすぎる
と、隣接ビット間における磁気信号の干渉(パーシャル
イレージャ)が大きくなり、再生信号の劣化が問題とな
る。
【0006】特開平9−297918号公報には、トラ
ック幅と最短ビット規定長とを2辺の長さとする矩形領
域からなる記録部を複数設け、この複数の記録部が隙間
部により互いに分離して配置されており、記録部で情報
の蓄積を行う磁気記録媒体が記載されている。この媒体
は、いわゆるパターンド媒体である。パターンド媒体で
は、クロストークやパーシャルイレージャによる再生信
号の劣化を低減できる。
【0007】ところで、CSS(コンタクト・スタート
・アンド・ストップ)方式を利用した磁気ディスク装置
では、静止時に磁気ヘッドのスライダは磁気ディスクと
接触しているので、起動時に吸着を起こして記録情報の
破壊を招くおそれがある。そのため、吸着の防止が大き
な課題となっている。
【0008】CSS方式の磁気ディスク装置において、
スライダの吸着現象を発生し難くするには、微小な凹凸
をディスク表面に設けることが有効であると考えられ
る。微小な凹凸により、スライダに対するディスク面の
接触面積が減少するため、吸着力を低減することができ
る。
【0009】例えば特開平2−156417号公報に
は、粒径の大きい無機微粒子と粒径の小さい無機微粒子
とを含むゲルからなる塗布層を基板上に形成した後、磁
性層を形成することが記載されている。塗布層からは粒
径の大きな粒子が頭を出すため、磁気ディスク表面に凹
凸が形成され、スライダの吸着が防止される。
【0010】また、特開平5−234070号公報で
は、基板表面上にアルマイト皮膜を形成し、このアルマ
イト皮膜を、フッ素を含有する溶液もしくはガス、また
は酸、塩基および強酸の塩からなる群から選択されたい
ずれか1種の溶液により処理し、その後、磁性膜を形成
することにより、媒体表面に突起を形成する提案がなさ
れている。
【0011】このように、従来、媒体表面に凹凸を形成
するには、そのための独立した工程を設ける必要があ
り、その結果、生産性の低下を招いていた。また、前記
したパターンド媒体においては、スライダ吸着防止のた
めの有効な提案はなされていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、非磁
性体からなる非記録部を挟んで、磁性体からなる単位微
小記録部が配列してなる記録トラックを有する、いわゆ
るパターンド媒体において、磁気ヘッドのスライダの媒
体への吸着を防ぐことにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(4)の本発明により達成される。 (1) 非磁性体からなる非記録部を挟んで、磁性体か
らなる単位微小記録部が配列してなる記録トラックを有
し、単位微小記録部の表面高さが非記録部の表面高さよ
りも高い磁気記録媒体。 (2) 単位微小記録部の表面高さが非記録部の表面高
さよりも5〜30nm高い上記(1)の磁気記録媒体。 (3) 各単位微小記録部が単磁区である上記(1)ま
たは(2)の磁気記録媒体。 (4) 単位微小記録部がCo、Co−Cr、Co−C
r−TaおよびCo−Cr−Ptのいずれか一種で構成
されている上記(1)〜(3)のいずれかの磁気記録媒
体。
【0014】
【作用および効果】本発明では、単位微小記録部の表面
高さを非記録部の表面高さより高く設定するので、単位
微小記録部と非記録部とで凹凸が形成され、この凹凸に
よりスライダの吸着を防ぐことができる。そのため本発
明では、媒体表面に凹凸を設けるための特別な工程が不
要となる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明は、主として磁気ディスク
媒体に適用される。図1に、本発明の磁気ディスク媒体
の構成例を、斜視図として示す。
【0016】図1に示す磁気ディスク媒体10は、ディ
スク状の基板12上に、同心円状またはスパイラル状
に、周方向および半径方向に間隔をおいて配置された多
数の単位微小記録部14と、隣り合う単位微小記録部1
4間を埋める非記録部16とを有する。単位微小記録部
14は、情報を磁気的に記録する磁性体から構成され、
非記録部16は、非磁性材料から構成される。各単位微
小記録部14は、それぞれほぼ完全に磁気的に孤立した
状態となるので、隣り合う単位微小記録部間におけるク
ロストークやパーシャルイレイジャを防ぐことができ
る。
【0017】本発明では、単位微小記録部14の表面高
さが、非記録部16の表面高さより高く設定されてい
る。すなわち、単位微小記録部14表面が非記録部16
表面に対し突出している。そのため本発明の媒体では、
表面に微小な凹凸が存在することになるため、媒体表面
に対するスライダの吸着を防ぐことができる。
【0018】非記録部16表面に対する単位微小記録部
14表面の突出量、すなわち、両者の表面高さの差は、
好ましくは5〜30nm、より好ましくは10〜30nm、
さらに好ましくは10〜20nmである。突出量が小さす
ぎると本発明の効果が不十分となる。一方、突出量が上
記範囲より大きい媒体は、製造が困難である。
【0019】各単位微小記録部14は、単磁区構造であ
ることが好ましい。単磁区構造とすれば、単位微小記録
部を構成する結晶粒径を大きくすることができるので、
熱擾乱による磁化の劣化を抑えることができる。また、
単磁区構造とすれば、磁化のスイッチング速度を高速化
することができる。
【0020】単位微小記録部14の形状は特に限定され
ないが、長軸と短軸とを有する形状であることが好まし
い。具体的には、図1に示すような直方体状のほか、例
えば回転楕円体をほぼ半分に切断した形状であってもよ
い。ビット密度を高くし、かつ、十分な出力を得るため
には、単位微小記録部14を、長軸および短軸を有する
形状とした上で、長軸がトラック幅方向(ディスク半径
方向)に平行で、短軸がトラック長さ方向(ディスク円
周方向)に平行となるように配置することが好ましい。
【0021】単位微小記録部14の寸法は特に限定され
ないが、通常、長軸の長さは0.1〜1.0μm、短軸
の長さは0.05〜0.5μm、厚さは10〜100nm
程度とすることが好ましい。
【0022】単位微小記録部14を構成する磁性材料は
特に限定されないが、Co、Ni、Feまたはこれらの
少なくとも1種を含有する合金であることが好ましく、
特に、Co、Co−Cr、Co−Cr−TaまたはCo
−Cr−Tiが好ましい。なお、本発明は、面内磁化媒
体にも垂直磁化媒体にも適用可能である。
【0023】本発明の磁気記録媒体では、図3および図
4に示すように、基板12と単位微小記録部14との間
に、単位微小記録部14に接して配向制御用の下地層1
8が形成されていてもよい。下地層18の組成は、単位
微小記録部14構成材料に応じ、所望の配向が得られる
ように適宜決定すればよい。例えば、単位微小記録部1
4を上記したCo−Cr系磁性材料から構成し、かつ、
面内磁化媒体とする場合、下地層18はTi、Ru、G
e、ZrおよびCrのいずれか一種で構成することが好
ましい。また、本発明を垂直磁化媒体に適用する場合に
は、通常、基板12と単位微小記録部14との間に軟磁
性下地膜が設けられる。
【0024】また、磁気ヘッドとの接触から媒体表面を
保護するため、従来の媒体と同様に、表面に保護層や潤
滑層を設けてもよい。保護層は例えばCやSiO2等か
ら構成すればよく、スパッタリング法等で形成すればよ
い。潤滑層は公知の潤滑剤から構成すればよく、スピン
コート法等により形成すればよい。
【0025】非記録部16を構成する非磁性材料として
は、SiO2、Al23、TiO2等の酸化物、Si
34、AlN、TiN等の窒化物、TiC等の炭化物、
BN等の硼化物、およびC系、CH系、CF系のうちい
ずれかの重合化合物等が用いられる。
【0026】基板12は、アルミ合金、ガラス、シリコ
ン等の通常の磁気ディスク基板材料から構成すればよ
い。基板12の厚さは、通常、500〜1000μm程
度とすればよい。
【0027】次に、図5を参照して、本発明の磁気記録
媒体を製造する方法の一例について説明する。
【0028】この方法では、まず、図5(a)に示すよ
うに、基板12上に磁性物質104をスパッタリング等
により付着させ、次いで、その上にフォトレジスト層1
00を塗布形成する。
【0029】次に、フォトレジスト層100をフォトリ
ソグラフィーによりパターニングし、図5(b)に示す
形状とする。このパターニングにより形成される凹部で
は、完全にフォトレジストが除去され、磁性物質104
表面が露出している。上記フォトリソグラフィーに際し
ては、例えばマスクを使った露光、照射位置を制御でき
るレーザー光を使った露光、または電子ビーム装置を使
った露光が利用できる。
【0030】次に、図5(c)に示すように、フォトレ
ジスト層100上および磁性物質104の露出した表面
に、マスク材料108をスパッタリング等により付着さ
せる。マスク材料108は、RIE(Reactive Ion Etc
hing)等のドライエッチングの際のエッチングマスクと
なるものであり、例えばCrやTi等から構成される。
【0031】次に、フォトレジスト層100をレジスト
除去液により除去することにより、その上に付着してい
たマスク材料108も同時に除去する。これにより、図
5(d)に示すように、磁性物質104表面に付着して
いるマスク材料108だけが残存することになる。な
お、レジスト除去液には、例えばアセトン、MEK等を
用いることができる。
【0032】次に、マスク材料108をエッチングマス
クとして、RIE等により磁性物質104をエッチング
し、図5(e)に示すように基板12表面を露出させ
る。
【0033】次いで、磁性物質104上および基板12
の露出した表面に、非磁性物質106をスパッタリング
等により付着させ、図5(f)に示す状態とする。続い
て、磁性物質104上に積層されているマスク材料10
8および非磁性物質106を、化学的機械的研磨により
除去する。これにより、図5(g)に示すように、単位
微小記録部14の表面高さが非記録部16の表面高さよ
り高い磁気ディスク媒体10が得られる。なお、図5
(f)における非磁性物質106の付着厚さは、化学的
機械的研磨の終了後に、単位微小記録部14の表面高さ
と非記録部16の表面高さとの差が所望の値となるよう
に設定する。
【0034】次に、図6を参照して、本発明の磁気記録
媒体を製造する方法の他の例について説明する。
【0035】この方法では、まず、図6(a)に示すよ
うに、基板12上に非磁性物質106をスパッタリング
等により付着させ、次いで、その上にフォトレジスト層
100を塗布形成する。
【0036】次に、フォトレジスト層100をフォトリ
ソグラフィーによりパターニングし、図6(b)に示す
形状とする。このパターニングにより形成される凹部で
は、完全にフォトレジストが除去され、非磁性物質10
6表面が露出している。
【0037】次に、フォトレジスト層100をエッチン
グマスクとして、RIE等により非磁性物質106をエ
ッチングする。このとき、図6(c)に示すように、非
磁性物質106のエッチングはその高さ方向の一部だけ
にとどめてもよく、基板12表面が露出するまでエッチ
ングしてもよい。
【0038】次に、非磁性物質106の露出した表面お
よびフォトレジスト層100上に磁性物質104をスパ
ッタリング等により付着させ、図6(d)に示す状態と
する。続いて、フォトレジスト層100をレジスト除去
液により除去することにより、その上に付着していた磁
性物質104も同時に除去する。これにより、図6
(e)に示すように、単位微小記録部14の表面高さが
非記録部16の表面高さより高い磁気ディスク媒体10
が得られる。なお、図6(d)における磁性物質104
の付着厚さは、単位微小記録部14の表面高さと非記録
部16の表面高さとの差が所望の値となるように設定す
る。
【0039】
【実施例】縦1.235mm、横1.0mm、高さ0.3mm
のアルチック(Al23・TiC)製30%スライダ
(重さ1.5mg)に、記録ヘッドと再生ヘッドとを搭載
して、複合型磁気ヘッドを作製した。記録ヘッドには、
磁極幅0.1μm、ギャップ長0.2μmのインダクティ
ブヘッドを用い、再生ヘッドにはMRヘッドを用いた。
【0040】磁気ディスク媒体は、図5に工程の流れを
示す方法により作製した。単位微小記録部14は直方体
とし、その寸法は、記録トラック幅方向において0.2
μm、記録トラック長さ方向において0.1μm、厚さ4
0nmとした。また、隣り合う単位微小記録部14の間隔
(非記録部16の寸法)は、記録トラック幅方向におい
て0.16μm、記録トラック長さ方向において0.0
8μmとし、非記録部16の厚さは20nmとした。した
がって、非記録部16表面に対する単位微小記録部14
表面の突出量は、20nmである。また、トラックピッチ
は0.36μm(70kTPI)、ビットピッチは0.18
μm(141kBPI)である。この記録密度は10Gb/in2
に相当する。
【0041】なお、単位微小記録部14は、Coからな
る単磁区構造体であり、その保磁力(Hc)は750Oe
であり、その磁化容易軸は記録トラック長さ方向を向い
ていた。また、非記録部16は炭素から構成した。
【0042】この磁気ディスク媒体に対し、上記複合型
磁気ヘッドにより記録を行った。磁気ディスク媒体の回
転速度は10,000rpmとし、スライダの浮上量は2
5nmとした。記録後、磁気ディスク媒体の磁化状態をM
FM(磁気力顕微鏡)により観察したところ、単位微小
記録部が記録信号に応じて磁化されていることが確認で
きた。
【0043】一方、単位微小記録部14と非記録部16
とをいずれも20nmの厚さとして、両者の表面高さを同
じとしたほかは上記磁気ディスク媒体と同様にして比較
用媒体を作製した。なお、この比較用媒体においては、
その表面へのスライダの吸着を防止するため、従来から
行われているテクスチャ処理を基板表面に施した。
【0044】そして、この比較用媒体と上記本発明の媒
体とについて、媒体回転速度および磁気ヘッド浮上量を
上記値として、CSSを5万回繰り返した。その結果、
どちらの媒体においてもスライダの吸着による記録情報
の破壊は認められなかった。
【0045】以上の実施例により、本発明の効果が確認
できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の構成例について、一部
を拡大して示す斜視図である。
【図2】図1に示す磁気記録媒体のA−A断面図であ
る。
【図3】本発明の磁気記録媒体の構成例について、一部
を拡大して示す斜視図である。
【図4】図3に示す磁気記録媒体のB−B断面図であ
る。
【図5】本発明の磁気記録媒体を製造する方法の一例を
説明する断面図である。
【図6】本発明の磁気記録媒体を製造する方法の一例を
説明する断面図である。
【符号の説明】
10 磁気ディスク媒体 12 基板 14 単位微小記録部 16 非記録部 18 下地層 100 フォトレジスト層 104 磁性物質 106 非磁性物質 108 マスク材料

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性体からなる非記録部を挟んで、磁
    性体からなる単位微小記録部が配列してなる記録トラッ
    クを有し、 単位微小記録部の表面高さが非記録部の表面高さよりも
    高い磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 単位微小記録部の表面高さが非記録部の
    表面高さよりも5〜30nm高い請求項1の磁気記録媒
    体。
  3. 【請求項3】 各単位微小記録部が単磁区である請求項
    1または2の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 単位微小記録部がCo、Co−Cr、C
    o−Cr−TaおよびCo−Cr−Ptのいずれか一種
    で構成されている請求項1〜3のいずれかの磁気記録媒
    体。
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