明 細 車両組立ラインの構成方法 技術分野
本発明は、複数の車種の異なる車体をタク卜制御にて組み立てるための車両組 立ラインの構成方法の改良に関する。 背景技術
近年、車両の組立ラインにおいて、混流方式と称して互いに種類の異なる複数 の車両(車種 A、車種 B )を共通のラインに流し、そこで組立を行うことで組立ライ ンの数を抑えること並びに作業の集約化が図られている。この混流方式に関する 発明としては、例えば、特許第 292080 1号公報「車両組立ラインにおける搬送 方法」が知られている。
この搬送方法は、組立工程数の異なる複数の車種 A及び車種 Bの車両を各々 多数連ねた車両グループに構成し、そのグループ単位で纏めた各車種 A, Bが順 次組立ライン上を流れる様にし、車種 Aが車種 Bより組立工程数が大きい場合、車 種 Aが組立ラインに進入する直前にライン速度をロングタクト、すなわち低速に切 替え、組立ラインに車種 Aが存在する間は組立ラインをロングタク卜のままとし、車 種 Aがライン出口から抜けて組立ラインに存在しなくなり、車種 Bだけになつたとき は、組立ラインをショー卜タク卜、すなわちライン速度を高速に切替え、もって生産 性を高めるというものである。
上記公報の混流組立方式では、組立に手間が掛る車種 Aと組立容易な車種 B を処理する場合、車種 Aがライン中にあるときにはロングタク 車種 Aがライン中 に無いとき、すなわち車種 Bのみがラインにあるときにはショートタク卜で処理する もので、ロングタク卜のみのライン速度で組立ラインを運転するケースに比べて、 上記公報のようにロングタク卜とショートタク卜との 2速で組立ラインを運転する方 が平均ライン速度を上げることができ、その分だけ生産性を高めることができる。 しかし、組立ラインに組立工程数の大きな方の車種が 1台でもあればロングタク
トにしなければならないので、平均ライン速度を上げる点においての効果はそれ 程高くはない。 発明の開示
そこで、本発明は組立ラインに組立工数(組立工程数)の大きい車種が存在し ていても一定の条件が満たされればライン速度を増加することのできる組立ライ ンの構成方法を提供することを目的とする。
本発明の第 1の概念によれば、複数の異なる車種の塗装を終えた車体を搬送 する間に、組付け部品を順次組付け、検査し、必要に応じて補修することによって 完成車を提供する車両組立ラインの構成方法であって、組付け部品を取付け作 業位置、組付け手順及び部品の機能を基準としてグルーピングすることにより、 上記車両組立ラインを少なくとも 3つのゾーンに区分するステップと、これらの区 分されたゾーン毎に車種間共通の標準組立工数を設定するステップと、上記標準 組立工数と車種毎のゾーン毎組立工数とを比較するステップと、ゾーン毎組立ェ 数の最も大きいゾーンと次に大きい組立工数を有するゾーンとを隣合せにするス テツプと、から成ることを特徴とする車両組立ライン構成方法が提供される。
このように、車両組立ラインを少なくとも 3つのゾーンに区分し、これらのゾーン 毎の標準組立工数を設定し、この標準組立工数と車種毎のゾーン毎組立工数と を比較し、ゾーン毎組立工数の最も大きいゾーンと次に大きいゾーンとを隣合せ にすることにより、ロングタク卜とショートタク卜との中間的なミドルタク卜の採用が 可能となる。
好ましくは、上記車両組立ライン構成方法は、組立工数の大きい車種が組立ェ 数の最も大きいゾーンと次に大きいゾーンとにあるときにはロングタク卜に、組立 工数の大きい車種が組立工数の最も大きいゾーン及び次に大きいゾーン以外の 他のゾーンにあるときはミドルタク卜に、組立工数の大きい車種が組立ラインに無 いときはショートタク卜に設定するステップを更に含む。これにより、細かなタクト選 択を実施することが出来、生産性を向上させることができる。
上記少なくとも 3つのゾーンは、通線■伝達艤装ゾーンと、内装ゾーンと、下回り 艤装ゾーンと、外装ゾーンと、複合保証ゾーンとで構成するのが望ましい。
好ましい実施形態において、上記車両組立ライン構成方法は、上記比較ステツ プの前に、上記異なる車種の各々について上記ゾーン毎組立工数としての工数 比率をゾーン別に算出するステップを更に含み、上記車種の中の組立工数の大き い一方についての上記工数比率の高い上位 2つが上記通線'伝達艤装ゾーン及 び上記内装ゾーンに該当し、上記上位 2つの次に高い上記工数比率が上記下回 リ艤装ゾーンに該当し、上記外装ゾーン及び上記複合保証ゾーンが上記上位 3つ の工数比率より低い定工数比率を有しており、もって上記通線'伝達艤装ゾーン 及び上記内装ゾーンが隣り合わせの状態で最初に配置され、これらのゾーンに隣 接して上記下回りゾーンが配置され、続いて上記外装ゾーン及び上記複合保証ゾ ーンが配置される。 図面の簡単な説明
以下に、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。図 中、
図 1は、本発明の構成方法により提供された車両組立ラインの概略説明図、 図 2は、上記車両組立ラインにおけるゾーン区分の説明図、
図 3は、上記車両組立ラインのタク卜の変化を示す説明図、
図 4は、図 3に対する従来例相当の比較例を示す概略図、
図 5は、上記構成方法のフロー図、そして
図 6は、上記構成方法における車種別工数算定の説明図である。 発明を実施するための最良の形態
図 1を参照するに、車両の組立ライン 1 0は、塗装工程を終えた車体 1 1に、通 線'伝達艤装に係る部品を順次組付け、検査し、必要に応じて補修する通線-伝 達艤装ゾーン 20と、内装部品を順次組付け、検査し、必要に応じて補修する内装 ゾーン 30と、下回り部品を順次組付け、検査し、必要に応じて補修する下回リ艤 装ゾーン 40と、外装部品を順次組付け、検査し、必要に応じて補修する外装ゾー ン 50と、各ゾーン 20〜50内では補修しなかった項目の検査を実施し、補修(各 ゾーンの補修部で補修し切れなかった項目の補修を含む。)を施す複合保証ゾー
ン 60と、をこの順に配置してなる。
組立ライン 1 0は、図 1に示されるようなラインタク卜が設定される。また、組立ラ イン 1 0に連なり、部品を予め小組して供給するためのサブラインエリア Π 0 "!〜 1 05 )が設けられている。このサブラインエリア(1 01〜1 05)は組立ライン 1 0に同 期するものと同期しないものとで構成されている。ラインタク卜の変更については、 図 3に関連して後述する。
次に、図 2を参照して本発明による車両組立ラインにおけるゾーン区分を説明 する。
「通線'伝達艤装」に、配線、配管、ケーブル、エンジンルーム内作業、その他の 組付け前作業を集約する。
「内装」に、インパネ、ペダル類、床マット、天井ライニング、サイドライニング、 ヘッドライト、その他の内装作業を集約する。
「下回り艤装」に、サスペンション、(タイヤ)、エンジン、その他、下からの組付 け作業を集約する。タイヤは基本的には次の外装作業で組付けるが、この下回り 艤装で組付けてもよい。
「外装」に、タイヤ、ウィンドガラス、パンパ、ドア、シート、エンジンルーム後作 業、その他の外装作業を集約する。
次に、図 5を参照して本発明のフローを説明する。なお、 ST X Xはステップ番 号を表す。
ST01:組立ラインを 3つ又はそれ以上の「ゾーン」に区分する。
ST02 :そして、ゾーン毎の「標準組立工数」を設定する。
ST03 :次に、複数車種毎の「ゾーン毎組立工数」を算定する。
ST04 :そして、ゾーン毎の「標準組立工数」と複数車種毎の「ゾーン毎組立ェ 数 Jとを比較する。
ST05 :次に、「標準組立工数」より大きな工数比率の「ゾーン」を隣合せに配列 する。
ST06 : ST05での配列を評価し、良ければ ST08に進み、悪ければ ST07に 進む。
ST07: ST06で Noであれば、サブラインエリアによる組立工数の分担率を算
定する。すなわち、図 1に示すサブラインエリア(1 0 "!〜 1 05 )は、組立ライン 1 0 に同期して組立てるものと、造りだめできる非同期のサブラインとに車種毎に区分 され、前記ゾーンの定工数化を図った上で、各ゾーン毎の工数比率の高いゾーン を隣接させるようにする。
そして、 ST04に戻り、 ST04→ST05→ST06を再トライし、 ST06力《Yesにな るまで、トライを繰り返す。
ST08 : ST06で Yesなら、ライン編成を終える。
次に図 6において、図 5のライン編成(ST08)の一例を示す。
各ゾーンに車種間共通の標準組立工数(標準車種の組立工数)を設定し、これ を各ゾーンともに [ 1 . 0]とする。それぞれ異なる一定の組立工数を有する車種 A, Bについて、その組立工数の標準組立工数に対する比である工数比率(ゾー ン毎組立工数)をゾーン毎に算出し、車種 Aに係る工数比率の高い上位 2つであ る通線'伝達艤装ゾーンと内装ゾーンとを隣接させ(両者は順不同)、次に工数比 率の高い下回り艤装ゾーンを上位 2つのゾーンに隣接させ、このゾーンに定工数 の外装ゾーン及び複合-保証ゾーンを隣接させてラインを編成する。
ゾーン区分は、作業の便利のために機能別に組立項目をグループ分けしたも のであっても、前記サブラインエリア(1 01 ~ 1 05 )により、組立ライン 1 0のゾー ン毎の工数の差を調整することができる。
図 3は本発明による車両組立ラインのタク卜の変化を説明する図である。組立ラ インを、入口から出口にかけて、通線'伝達艤装ゾーン、内装ゾーン、下回り艤装 ゾーン、外装ゾーン及び複合'保証ゾーンの 5つのゾーンに区分し、この様な構成 の組立ラインで、各組立工数の異なる Oで示す車種 Aと Δで示す車種 Bとを混流 形式で組立を実施するときの経過時間を(a)〜(h)でパターン化した。
なお、 0 (車種 A)は、いわゆる高級車であって、部品点数が多く、組立工数が 大きいもの、△ (車種 B)は、いわゆる大衆車であって、車種 Aに比較して部品点 数が少く、組立工数が小さいものを示す。
また、図右欄のタク卜の種別で、 Sはショー卜タクト、 Mはミドルタク卜、 Lはロング タク卜であり、 Sはライン速度を高めたもの、 Lはライン速度を低めたもの、 Mはそ れらの中間速度としたものに相当する。
( a)では、入口に〇(車種 A)が来ているが、全ゾーンに△ (車種 B)が流れてい るためタク卜は S (ショー卜タク卜)に設定することができる。
(b)では、(a)の〇(車種 A)が通線 *伝達艤装ゾーンに来ている。ライン上に〇 (車種 A)があり、この 0 (車種 A)は組立が面倒であるため、タク卜は L (ロングタク ト)に設定変更する。
(c) , (d)は、組立工数の大きな内装ゾーンに 0 (車種 A)が流れているため、タ クトは L (ロングタクト)のまま維持する。
( e)では、通線'伝達艤装ゾーン及び内装ゾーンに流れているのは、前記した 様に相対組立工数の少ない△ (車種 B)であり、また、下回りゾーン及び外装ゾー ンには〇(車種 A)が流れているが相対工数が少ないため組立には余裕が生じ る。
そこで、タク卜を M (ミドルタクト)に切替えてライン速度を増加することができる。
(f), (g)ともに通線■伝達艤装ゾーン及び内装ゾーンに△ (車種 B)が流れてお リ、且つ下回り艤装ゾーン〜複合'保証ゾーンの間には 0 (車種 A)が流れている ので、タク卜は M (ミドルタクト)のまま維持する。
( h)は(a)に戻った状態であり、全部のゾーンに△ (車種 B)が流れているので、 タク卜を S (ショートタクト)に切替える。
図 4は図 3に対する従来例相当の比較例を示す図である。ゾーン区分の有無 (図 4ではゾーン区分せず。)を除いては図 3と同じである。
(A):組立ラインに△ (車種 B)があるので、タクトは S (ショートタクト)を選択す る。
( B):組立ラインに〇(車種 A)が進入したので、タクトを L (ロングタクト)に切替 える。
( C;)〜(G):組立ラインに 0 (車種 A)があるので、タク卜を L (ロングタクト)のま ま維持する。
( H):組立ラインから 0 (車種 A)が無くなり、厶(車種 B)のみとなったので、タク トを S (ショートタクト)に切替える。すなわち、(A)に戻る。
図 4のお端に記載したタク卜の種別を数えると、 Sは(1 )個、 Lは(6)個となる。
( H )は(A)と同一であるから数えない。仮に、 S (ショートタク卜)を 64秒 Z台、 L
(ロングタクト)を 67秒 台とするば、次の計算により簡易的に平均タクトを求める ことができる。
平均タク卜 = (67 X 6 + 64 X 1 ) Z7 = 66. 6 すなわち、図における平均タク卜は 66. 6秒/台程度になると考えられる。
これに対して、図 3のお端に記載したタク卜の種別を数えると、 Sは(1 )個、 Lは ( 3 )個、 Mは(3 )個となる。(h)は(a)と同一であるから数えない。仮に、 S (ショー トタク卜)を 64秒 Z台、 L (ロングタクト)を 67秒 台、 M (ミドルタク卜)を 65秒 Z台 とするば、次の計算により簡易的に平均タク卜を求めることができる。
平均タクト = ( 67 X 3 + 65 X 3 + 64 X 1 ) Z7 = 65. 7 すなわち、図 3における平均タク卜は 65. 7秒 台程度になる。
以上に述べた通りに従来はタクトを S (ショー卜タクト)と L (ロングタクト)の 2つを 切替えていたものを、本発明では S (ショートタクト)、 L (ロングタク卜)及び M (ミド ルタク卜)の 3つを切替えるようにしたものであり、本発明は M (ミドルタクト)を介在 させたことにより、生産能率を高めることに成功したものである。
図 3では組立ラインを 5つのゾーンに分けたが、最小 3つのゾーンがあれば本 発明は成立し、仮に 3ゾーンであってもこれらのゾーン毎の標準組立工数を設定 し、この標準組立工数と複数車種毎のゾーン毎組立工数とを比較し、ゾーン毎組 立工数の最も大きいゾーンと次に大きいゾーンとを隣合せにすればよい。
すなわち、最も組立工数の大きいゾーンと、次に大きいゾーンとが離れている と、タクトを Lから Mに替える時期が遅れ、 Lの割合が増え、 Mの割合が減ずること になるからである。従って、 Lから M (又は Mから L)に速かに切替えるには、「組立 工数の最も大きいゾーンと次に大きいゾーンとを隣合せる」ことが必須である。 図 3では組立工数の最も大きいゾーンとしての内装ゾーンと、次に大きなゾーン としての通 '電ゾーンとを隣り合わせると共に、組立ラインの入口に配置したが、こ れらの 2つのゾーンを出口に配置することもできる。
又は、組立ラインの途中であってもよい。すなわち、組立ラインに隣り合わせて 組立工数の最も大きいゾーンと次に大きいゾーンとを配置すれば、 M (ミドルタク ト)に切替えることが可能となる。
実施の形態では、理解を容易にするために、内装ゾーンなどの具体的名称を使
用した力 ゾーンはこれに限るものではなく、ラインタク卜を変更するのに適したゾ ーンに区分けしてラインを編成してもよい。 産業上の利用可能性
上記の構成は、車種の異なる車体を共通の車両組立ライン上で組み立てる際、 該ラインをロングタクト、ミドルタク卜およびショートタク卜の 3速で運転することを可 能とし、この結果、該ラインの平均速度を上げることができるので、車両の生産性 が向上し、車両を製造する上で有用である。