明細書 無反射 L Cフィル夕及びその製造方法 腿分野 本発明は、 LCフィルタ、 特に高周波領域において有用であり、 中心周波数にお いて無反射特性を有する L Cフィル夕及びその製造方法に関する。 背景技術 近年、 移動体通信の普及にはめざましいものがあるが、 これに伴ない、 通信機器 あるいはその中継基地局などに用いられる高周波領域用フィル夕の小型化、 特性の 改善が重要な課題となっている。 また、 情報処理機器などのディジタル機器におい てもクロック信号の高周波化が進んでおり、小型で廉価な高周波領域用フィル夕が、 情報通信分野の広い部門にわたって求められている。
従来、 携帯電話機送信用フィル夕には積層型の低域通過フィル夕 (LPF) が用 られている。 これは、 一般的には約 1000で程度で焼結するセラミック原料粉を薄 ぃシ一ト状に成形して、 ィンダクタおよびキャパシ夕電極をシ一ト表面に厚膜印刷 して製造される。 例えば、 B aO-A 1203-S i 02, BaO-S rO-S i 02 — Z r〇2、 C aO- Z r〇2—ガラスなどの低温焼結セラミック材料を用い、 F i g. 20に示すようにインダク夕層 L、 キャパシ夕層 Cをパターニングにより 形成した上、 さらにシールド層 S、 トリミングパターン Tなどを誘電体 εを介して 順次積層し、 これを焼成して 1チップの積層 LCフィル夕とする。 し力し、 この場 合、 パ夕一ニングと積層との組み合わせになるため工程が複雑であり特別な生産設 備が必要である。
かかる問題点にもかかわらず、 ±¾Εのように、 従来の LCフィル夕の 1チップ化
では、 同時焼成によるインダク夕層とキャパシ夕層の積層化によるアプローチが採 られている。 その大きな理由としては、 より高い周波数領域でも適用可能な L Cフ ィルタを構成しょうとした場合、 インダク夕の特性改善よりはキャパシ夕の大容量 化の方が容易であり、 かかる観点から積層化によるアプローチが有利であると考え られたという点が挙げられる。
インダクタは自己容量のために共振周波数以上では特性が誘導性から容量性に変 化する。 すなわち、 共振周波数以上ではキャパシ夕となりインダク夕としては機能 しなくなる。 そこで、 自己容量を抑圧し共振周波数を高くしてインダク夕の適用可 能周波数を高めることが重要な課題となる。 これには導体線路に対して垂直で放射 状に発生する電磁界の相互の結合を抑圧することが効果的である。
ィンダク夕を直線状の導体線路とすれば自己容量は小さくなるが、 このような細 長いインダク夕は実用的でない。 一方、 導体線路をコの字のジグザグ状にしたり、 螺旋(スパイラル) 状にすれば小型ィ匕は実現できるが、 ~«に自己容量が増大する。 このように、 インダク夕の特性低下を招くことなく、 インダクタの小型化、 イン ダク夕容量の増大を図ることには技術的困難が多い。 一方、 積層技術においてキヤ パシ夕の大容量化は比較的容易である。 また、 積層技術によればインダク夕との一 体ィ匕が可能である。 そこで、 小さなインダクタ容量を補うために大容量のキャパシ 夕を用いることにより、 積層 L Cフィル夕の小型化が進められてきた。
しカゝし、 積層型 L Cフィル夕ではセラミック材料に低温焼結材料を用いるため、 誘電率は 2 0以下である。 このため、 単層で得られるインダク夕およびキャパシタ 容量は小さく、 Q値も 2000以下と小さいので 1層当りのシート厚みも厚くなる。 実用上満足な容量を得るために幾重にも積層され、 積層後に同時に焼成することで 一体化してフィルタ特性を得ている。 しカゝし、 焼成時に不可避な電極パターンの機 械的な歪の増大や寸法精度の変動および小さな材料 Q値のために中心周波数の変動 は大きい。
従って、 これらの積層型 L P Fでは、 フィル夕の中心周波数を厳密に制御した製 品を得ることが難しく、 中心周波数における定在波比 (V SWR) を 1. 7未満に
低減した製品は得られていない。 少なくとも、 従来の小型 L Cフィルタでは、 用い られる周波数帯域での無反射特性が保証されない。 このため、 例えば、 携帯電話の 送信部に用いる場合には、 L Cフィルタの前段にアイソレータを設けるなどの方法 により、 反射波に起因する問題を解消する必要があった。
また、 従来の積層型 L Cフィルタは、 その構造上、 少なくとも電極を配置するェ 程以後では個別チップ (部品) として取り扱われる。 このため、 製品の小型化が進 む程、 その取扱いは難しくなる。 さらに、 製品の猫工程も、 製品それぞれに対応 した形状 ·寸法を有し個別チップに設けた電極と電気的に接触する専用の測定治具 に頼らざるを得ない。 専用治具は製作に多額の費用を要するだけでなく、 チップと の接触部分は寿命が短く数百万個の試験毎に交換が必要である。 また、 チップが小 型となるに連れ、 チップを専用治具に固定して する作業がコスト増大の大きな 要因の一つとなっている。 自動搬送機も実用化されているが、 大型で高価であるだ けでなく、 処理能力も十分ではない。 さらに、 これらの専用治具を用いた場合、 ^^性値には治具の特性も含まれるため、 個々の製品についての精密な出荷検査 ができないという問題もある。 発明の開示 本発明者らは、 誘電体基板表面上に、 複数のインダク夕パターンを近接して配置 した L Cフィル夕を先に提案したが (特願平 10-25959号)、 この L Cフィル夕にお いて、 基板材料の選択等を行うことにより、 中心周波数近傍での定在波比 (V SW R) を大きく低減した特性 (無反射特性) が実現されるという予想外の知見を得て 本発明を完成するに至った。 また、 本発明の L Cフィル夕は高い精度で中心周波数 を制御することが可能であり、 中心周波数の変動のない製品を製造すること力河能 でめる。
すなわち、 本発明は以下の無反射 L Cフィル夕を提供する。
(1) 無機 体材料からなる基板、 該基板表面上に近接して配置された複数のィ ンダクタ、 及び、 フィルタ特性を示すように前記インダクタと電気的に接続された キャパシ夕を含む、 フィル夕の中心周波数において無反射特性を示すことを特徴と する LCフィル夕。
(2) フィルタの中心周波数における定在波比が 1. 7未満である前記 (1) に記 載の無反射 LCフィルタ。
(3) 前記インダク夕が厚膜印刷により形成され、 1 nH以上のインダク夕ンスを 有するものである前記 (2) に記載の高周波帯域用無反射 LCフィル夕。
(4) 前記インダク夕が近接した領域において、 各インダクタにおける電流の向き が反対方向となるように配線され、 前記複数のインダク夕間及びインダクタとキヤ パシ夕とがワイヤボンディングにより電気的に接続されている前記 (3) に記載の 無反射 LCフィル夕。
( 5 ) 前記ィンダク夕とキャパシ夕が低域通過特性を示すように電気的に接続され た前記 (1) 乃至 (4) のいずれかに記載の無反射低域通過 LCフィルタ。
また、 本発明は、 中心周波数における無反射特性を確実に実現する以下の無反射 L Cフィル夕の製造方法を提供する。
(6) 無機絶縁体材料からなる基板上に複数のインダク夕パターンを近接して厚膜 印刷する工程、 前記ィンダク夕パターンの端部と基板に設けた 1個以上の高精度キ ャパシ夕の電極とをフィルタ特性を示すように電気的に接続する工程を含む、 中心 周波数において無反射特性を示す L Cフィルタの製造方法。
(7) 無機絶縁体材料からなる基板上に分割線を縦横に設けることによって、 個別 フィルタ素 成用領域を複数形成する工程;欄別フィルタ素 成用領域内に ィンダクタパターンを近接して厚膜印刷する工程;前記領域内に 1個以上の高精度 キャパシ夕を設ける工程;前記領域のそれぞれにおいて前記インダク夕パターンの 端部と高精度キャパシ夕の電極とをフィル夕特性を示すように電気的に接続するェ 程;インダク夕パターンとキャパシ夕とが 12置された基板表面を樹脂封止するェ 程;及び、 Ml己基板を前記分割線に沿って分割する工程を含む、 中心周波数におい
て無反射特性を示す L Cフィルタの製造方法。
( 8) 無機腿体材料からなる基板上にスルーホールを含む分割線を縦横に設ける ことによって、 個別フィル夕素子 成用領域を複数形成する工程;前記スルーホー ルを通って基板表裏面を導通する導体路を形成する工程;各個別フィルタ素子形成 用領域内において、 近接して配置されたインダク夕パターン、 該インダク夕パター ンの外端部と前記導体路とを接 ^ rる導体パターン、 及び、 該インダク夕パターン とは接続せず前記導体路と接^ τる 1個以上の電極ランド部を厚膜印刷により形成 する工程;前記電極ランド部に高精度キャパシ夕を設ける工程;前記インダクタパ 夕一ンの端部と前記高精度キャパシ夕の電極とをフィルタ特性を示すように電気的 に接^する工程;インダク夕パターンとキャパシタとが己置された基板表面を樹脂 封止する工程;基板裏面において前記スルーホールの導体路とウェハプローバのプ ローブとを電気的に接触することにより L cフィル夕の特性を する工程;及び、 前記基板を前記分割線に沿って分割する工程を含む、 中心周波数において無反射特 性を示す L Cフィル夕の製造方法。 図面の簡単な説明
F i g. 1は本発明により製造される L Cフィル夕の一例を示す等価回路図であ る。
F i g. 2〜7は本発明により製造される L Cフィルタ (F i g. 1 ) における 基板表面の配線パターンを示し、 F i g. 8 板裏面の導体パターンを示す模式 図である。
F i g. 9〜1 8及び 2 2は本発明により製造される L Cフィルタの周波数特性 を示すグラフである。
F i g. 1 9は本発明の好適態様の一つにおけるインダクタ電流の方向を示す模 式図である。
F i g. 2 0は従来技術における積層型 L Cフィル夕の構造の概略を示す模式図
である。
F i g . 2 1は本発明の L Cフィル夕の製造方法の好適態様の概略を示す模式図 である。 発明の詳細な説明 以下、 図面を参照して本発明の無反射 L Cフィルタ及びその製造方法を具体的に 説明する。 なお、 以下の説明においては、 主として低域通過フィルタ (L P F) に 関して説明するが、 これに回路構成上必要な変更を加えて帯域通過フィルタ (B P F) に適用することも可能である。 なお、 本明細書及び請求の範囲において 「無反 射」 とは、 ¾έ¾の L Cフィル夕に比較して大きく低減された V SWRを有すること を含み、 より厳密には下記の 「2. 無反射特性」 の項で説明される特性である。 1 . : L Cフイリレ夕の構造
本発明の L Cフィル夕は、 無機絶縁体材料からなる基板、 該基板表面上に近接し て配置された複数のインダク夕、 及び、 フィル夕特性を示すように前記インダク夕 と電気的に接続されたキャパシ夕を含む。
(1)インダク夕
上述のように、 従来、 L Cフィル夕においては、 インダク夕の自己容量を抑制す るアプローチが採られている力、 複数個のインダク夕を基板表面に配置する場合に は、 インダク夕相互の距離を可能な限り大きく採って結合容量を抑圧するべきもの と考えられていた。 例えば、 スパイラルインダク夕では、 実際的には、 その直径の 数倍程度の,を隔てることが必要とされていた。
これに対し、 本発明では、 基板表面上に複数のインダクタを近接して配置した構 成を採るものであり、 L Cフィル夕の小型化と無反射特性とを同時に実現する。 ここで、 「近接して」 とは、 使用する回路要素の形状や大きさ及び電気的特性、 基板材料、 使用するフィル夕の周波数帯域等の条件により決まる条件である。 基本 的には、 無反射特性は、 後述の実験例に示すように、 近接したインダクタの電磁界
の相互作用に関係しているものと考えられ、 当該作用が効果を示す範囲であればよ レ^ 例えば、 スパイラルインダク夕の場合、 通常は、 好ましくは、 その直径以下の 距離とすることが小型化の観点からも好ましい。 直径数 mm程度のスパイラルイン ダク夕の場合、 当該複数のインダク夕が最近接する位置で l mm以下程度、 より好 ましくは 0. 5 mm以下、 さらに好ましくは 0. 3 mm以下である。
このようなコイルパターンの配置の例を F i g . 2〜7に示した。 これは F i g.
1に等価回路を示す L P Fに対するものであり、 詳細は後述するが、 3個のスパイ ラル状のインダク夕パターン L 1〜L 3を配置したものである。 なお、 フィルタ構 成としては図に示す T型 L P Fでは 1段以上であればよく、 従って、 インダクタは 2個以上含まれればよい。 また、 F i g . 2〜7に示すように、 複数のインダクタ はそのすべてが残りのインダク夕に近接している必要はない (図では L 1と L 2、
L 2と L 3のみが近接して配置されている。)。
インダク夕の形状は、 基板表面に配置し得るものであれば特に限定されない。 こ のようなインダク夕には、 スパイラルインダクタの他に、 クランク若しくはループ またはその一部をなす導体路で構成される種々のィンダク夕パターンが含まれるが、 高周波領域で用いる場合には、 I n H以上、 通常 1〜5 O n H程度のものが用いら れる。
これらの回路パターンの形成方法としては慣用のいずれの方法も用い得る。 例え ば、 導電材料を厚膜印刷もしくは薄膜形成したり、 あるいは、 細線をコイル状に載 置することにより形成することができる。 厚膜印刷では通常、 6 0〜 3 0 0 m程 度の線幅で直径 0. 5〜 1 O mm のコイルが形成できる。 薄膜形成では通常、 1 〜: L 0 0 / m程度の線幅で直径 0. 1〜 2 mm程度のコイルが形成できる。 導体材料 は慣用のものでよく、 例えば、 厚膜印刷では厚膜用導電ペースト、 薄膜形成では C u薄膜のレジスト電極などが挙げられる。 製造工程が簡便で比較的精度の高いパ ターンの形成が可能な厚膜印刷が好ましい。
(2)基板
基板材料は、 各種の無機誘電体材料を用いることができるが、 無反射特性を実現
するためには、 高誘電率かつ高 Q値材料が好ましい。 このような材料の例としては、 アルミナ基板が挙げられる。
アルミナ基板の中でも 96重量%のアルミナを含有するいわゆる 96アルミナは、 かつ、 従来の積層 LCフィル夕における基板材料と比較して Q値は ι桁以 上も高い。 このため本発明における中心周波数での無反射化に有用であり、 また、 薄型フィル夕が実現できる。 後述の実施例では厚さ 640 mの 96 %アルミナ基 板を適用して、 厚さが 1. 3 mm以下と世界最薄を達成している。 更に、 96%ァ ルミナの材料 Q値は 20000以上であるので 640 m以下の薄い基板の適用も可能 で容易に薄型化できる。 なお、 96%アルミナ以上の誘電率及び Q値を有する誘電 体材料も用い得ること、 目的によっては、 それ以下の無機誘電体材料も使用可能で あることは容易に理解されるであろう。
(3)キャパシ夕
本発明においては、 中心周波数を精確に制御して当該帯域における無反射特性を 実現するために、 高精度のキャパシタを用いることが重要である。 もっとも、 特別 に設計するには及ばず、 慣用のチップコンデンサでよい。 あるいは、 基板にキャパ シ夕を形成した後、 トリミング等により容量を調整してもよい。 キャパシ夕の容量 は、 LCフィル夕の目的に従い決定される。
(4)配線パターン
上記のインダク夕及びキャパシ夕は、 例えば、 F i g. 2〜 7に示すように接続 されてフィル夕を構成する。 これらの例は F i g. 1に示す T型の LP Fであり、 図中、 L 1〜L 3がインダク夕を、 C 1及び C 2がキャパシ夕を表している。 L l、 L 3, Cl、 じ2はそれぞ^子1、 2、 3 (3a、 3 b) 及び 4 (4a、 4b) を有する。 L Cフィル夕におけるィンダク夕間の結合容量を考慮すると π型よりも、 図示した Τ型 L P Fが好ましいと考えられるが、 本発明は Τ型 L P Fに限定される ものではなく、 BPF等に適用してもよい。
ィンダク夕アレイとキャパシ夕との間の配線方法は、 配線層を設け厚膜印刷ある いは薄膜形成等の方法によってもよいが、 F i g. 2〜7において、 インダク夕 L
1、 L2、 L 3の間及びこれらとキャパシ夕 Cl、 C 2とはワイヤポンドで接続さ れている。 伝送∞に位置するワイヤは挿入損失を劣化させると考えられるため、 実効的な抵抗を抑圧するために 2本のワイヤ線でコイル間を接続したものである。 これを図中 wで示した。
また、 F i g. 2〜7では、 ワイヤの接続点を変更することにより、 インダク夕 パターンに流れる電流の方向 (F i g. 1に示す等価回路上での矢印の向きを追つ たもの。 以下同じ) を変えている。 これを図中 「→」 で示した。 F i g. 2及び 4 の接続方法では L I (L 3) および L 2のコイルに流れる電流の方向は互いに逆方 向であるが、 F i g 3及び 5では順方向となるようにワイヤボンディングされてい る。 また、 F i g. 6及び F i g. 7ではボンディングワイヤは伝送線路に位置し、
L 1 (L 3) および L 2のコイルに流れる電流の方向は互いに逆方向となるように ワイヤボンディングした。
後述の実施例に示すように、 LI (L3) および L 2のコイルに流れる電流の方 向が互レに 向である F i g. 2、 4、 6及び 7の接続方法では、 無反射特性が 得られた。 一方、 順方向となる F i g. 3及び 5では定在波比の有効な抑;£¾1果が 見られた。
(5)GND層
本発明においては、 基板の裏面に導電層 (GND層) を設けることが好ましい。 F i g. 8に GND層を中央に有する基板裏面の模式図を示した。 GND電極を設 けることによりィンダク夕の高 Q値化による L Cフィルタ特性の改善やシールド特 性の改善、 自己容量の抑圧が可能になる。 この結果、 複数の螺旋状インダク夕が近 接して配置可能となり、 では実現されていない特性を有する L cフィルタ 力得られる。
GND層は、 厚膜、 薄膜、 メツキ膜等のいずれの方法でも形成できるが、 例えば、 インダクタアレイの裏面に絶縁性接着剤で金属箔を張り付ければ簡単に低ィンピー ダンスの GND層の形成ができる。
GND層を設けることは実装上も有利である。 すなわち、 高周波回路では GND
が様々と設けられており、 GND構造に起因する浮遊容量が問題となる。 他方、 G NDはィンダク夕およびキャパシ夕がー様に分布した導体層と考えられるが、 キヤ パシ夕容量は小さく数 GH z帯ではィンダク夕が 配的であろうことは容易に推察 できる。 GND間の静電容量と GND層のインダク夕とは並列共振し、 並列共振周 波数 (6 GH z程度と推察している) に近付くに従い GNDのインピーダンス 急 激に増大する。 この結果 GNDに流れ込もうとする電流は制限され帯域外減衰量は 劣化する。 GND層に分布するィンダクタの抑圧には金属箔に比透磁率が 1に近い 材料を選定することが有効である。 この点で銅の比透磁率は 1であるので好適であ る。 インダク夕アレイの GNDを直接にマザ一ボードの GNDに接^すれば、 イン ダク夕アレイの GN Dとマザ一ボードの G N Dとの間に発生する G N D— G N D間 浮遊容量は無くなる。
2 . 無反射特性
本発明により L Cフィルタの中心周波数近傍において V SWRが大きく低減され る原因の詳細は厳密には不明である。 しカゝし、 ①チップキャパシ夕 Cの容量、 ②コ ィルとキャパシタの接続方法、 ③コイル形状、 ④ L 1および L 2の容量、 ④ L P F 部品構造を変更した各種のサンプルにおいて、 中心周波数における定在波比 (V S WR) の抑圧が実現されており、 近接するインダク夕の電流方向 (上述の意味) が 特定の関係にあるときには V SWR≤ 1. 0 5が実現されている。
送信用フィル夕として広く適用されている積層型 L P Fでは V S WR = 1. 7で ある。 入力電力に対する反射電力は約 7 %でありアンテナに給電されない電力とな るが、 この不足分は電力増幅器の出力を大きくして補うことができる。 また、 電力 増幅器の高出力化ができない場合には整合回路を付加してもよい。 以上のように、 定在波比の大きな送信用フィル夕を実用に用いるためには設計上の配慮が必要とな ることがある。
本発明の L Cフィル夕は、 V SWRが上記以下に低減された L Cフィル夕を提供 するものであり、 必要により、 V SWR< 1. 7、 さらに V SWR≤1. 3を満たす。 さらに、 V SWR= 1. 0 5レベルの製品も実現するものであり、 ^^的なセミリ
ジッドケーブルでは V SWR< 1. 0 5であるから、 V SWR≤ 1. 0 5であれば、 実際上、 上記の意味よりも厳密な意味で 「無反射」 と見なせる。
F i g . 1 9には、 インダク夕の電流方向を変えた L Cフィルタにおいて、 L 1 と L 2との境界で生じる電磁界の様子を模式的に示した。 電界^は電流の方向に一 致し、 磁界 //は円周の切線方向で図中のような向きとなる。 F i g . 1 9 ( a) に示すように、 L 1および L 2に流れる電流が互いに逆方向の時には、 電流 · 1お よび i 2が生じる電界 jおよび £ 2は弱め合い、 磁界 /^および/ 2は強め合うこ とになる。 また、 F i g. 1 9 (b) に示すように、 L 1および L 2に流れる電流 が互いに順方向の時には、 jおよび £2は強め合い、 /^および/ 2は弱め合うこ とになる。
コイルィンダク夕による電磁界の厳密な解析、 特に高周波帯域でのそれは困難で あり、 理論的に確認はできないが、 いずれにせよ無反射特性は、 し 1ぉょびし2の コィリレが発生する電磁界と深く関係していると思われ インダク夕を近接配置して なる本発明で初めて現実に得られたものである。
3. L Cフィル夕の製造方法
本発明はまた、 無機絶縁体材料からなる基板上に複数のインダク夕パターンを近 接して厚膜印刷する工程、 前記ィンダクタパターンの端部と基板に設けた 1個以上 の高精度キャパシ夕の電極とをフィル夕特性を示すように電気的に接^する工程を 含む、 中心周波数における定在波比力従来品よりも大きく低減された (すなわち、 上述の意味で無反射の) L Cフィル夕の製造方法を提供する。
インダク夕パターンの印刷方法、 インダク夕パターンの端部と高精度キャパシ夕 の電極との接続の方法は慣用の方法に従い行うことができる。 接続方法の例として はワイヤボンディングが挙げられる。 インダク夕が近接した領域において、 各イン ダク夕における電流の向きが反対方向となるように配線することが好ましい。また、 高精度キャパシ夕としては、 チップコンデンサまたはトリミング等により容量を調 整したキャパシ夕が含まれる。 本発明によれば、 このような簡単な方法により中心 周波数がほぼ精確に制御され、 中心周波数近傍で無反射特性を示す L Cフィル夕を
製造することが可能となる。
従来の積層型 L P Fでは、 焼成時の収縮率が一定でないために、 高い精度でのィ ンダク夕およびキャパシ夕容量の調整は不可能で、 容量変動を土 1 0 %以下に制御 することはできない。 し力 ^し、 本発明の製造方法によれば、
①厚膜印刷による高精度ィンダクタの形成が可能である。
②ディスクリートキャパシ夕の容量精度は ± 1. 5%と高い。
このため中心周波数の変動はほとんどない。
本発明は、 さらに、 無機! &椽体材料からなる基板上に分割線を縦横に設けること によって、 個別フィル夕素子形成用領域を複数形成する工程;各個別フィルタ素子 形成用領域内にィンダク夕パターンを近接して厚膜印刷する工程;前記領域内に 1 個以上の高精度キャパシ夕を設ける工程;前記領域のそれぞれにおいて前記インダ クタパターンの端部と前記高精度キャパシ夕の電極とをフィルタ特性を示すように 電気的に接続する (例えば、 ワイヤボンディングによる配線) 工程;インダクタパ ターンとキャパシ夕とが ΪΞ置された基板表面を樹脂封止する工程;及び、 前記基板 を前記分割線に沿って分割する工程を含む、 中心周波数において無反射特性を示す L Cフィル夕の製造方法を提供する。 これは、 簡単に言えば、 1枚の基板上に多数 の L Cフィルタを形成し、 この集合基板から個別のチップを切り出すものである。
F i g. 2 1に示す態様では、 無機絶縁体基板 1 1の所定の位置に穿孔 (スルー ホール) 1 2を形成する (F i g. 2 1 (a) )。 スルーホールの形成は任意の方法で 可能である。 例えば、 レーザービームによる穿孔、 ドリルによる穿孔等が挙げられ る。 セラミックグリーンシートにパンチングした後に焼成してもよい。
次いで、 スルーホール 1 2内に導体を印刷、 充填及び Zまたはメツキし、 基板表 面にインダク夕パターン 1 3及びランド部を、 基板裏面に電極端子を形成する (F i g. 2 1 (b)。 なお、 同図では煩雑さを避けるためランド部とスルーホール間の導 体路は最左端のチップ領域を除いて省略して示してある。)。 導体ペーストを厚膜印 刷する方法が好ましい。 この際、 導体べ一ストを用いて裏面の GND層を形成して もよい。
導体ペーストを焼成した後、 ランド部にキャパシ夕 1 4を搭載する。 キャパシ夕 はノヽンダ付け等により固定すればよい。
しかる後、 ワイヤボンディングによる結線を行なう (F i g. 2 1 (b)最左端のチ ップ領域)。インダクタパターンとボンディングワイヤとを安定して,するため、 好ましくは、インダクタパターン及びキャパシ夕の¾¾を除いた部分に保護層(F i g . 2 1には示していない。) を形成した後に結線する。 保護層は、 ガラス等の 適当な,材料からなるものであればよい。
ワイヤボンディング後、 基板表面を樹脂層 1 5で封止してから、 個々の L Cフィ ル夕 1 6に分離する (F i g. 2 1 (c) )。 個別チップへの分離は、 例えば、 ソーィ ング等の慣用の方法により行なうことができるが、 基板に分割線を浅く形成してお き、 樹脂封止後に当該分割線に沿つて変形力を加えることによつて基板を分割して もよい。 スルーホールに沿って分割する方法が好ましく、 これにより分割されたス ルーホール 1 7を裏面への導通部または側面電極として用いることか^ J能となる。 なお、 上記の説明において、 スルーホールを設けないで集合基板とすること、 ェ 程の順番を前後すること、 各工程における操作を慣用の同等の操作に置き換えるこ と等の様々な修正や変更も本発明の範囲に含まれる。 例えば、 上記のワイヤボンデ ィングに代えて導体細線 (例えば、 銅細線) のハンダ付けによる結線等の手法を用 いることも可能である。
本発明の製造方法では、 さらに、 集合基板として形成した後、 個別チップへの分 割前に検査することにより、 L Cフィルタの製造プロセス全体をさらに効率化する 方法が提供される。
本発明による L Cフィルタの検査方法は、 ウェハプローバを用いることにより行 なう。
ウェハプロ一バは、 半導体製品の精密測定、 中間 、 出荷検査に広く用いられ ている測定機器であり、 テス卜ヘッド、 プローブカード及び XY方向及び上下方向 に移動自在なステージを含む。 プローブカードはテストへッドに取り付けられる交 換可能な部品であり、 複数の配線と当該配線とそれぞれ電気的に接続された複数の
プローブピンとからなる。 ウェハプローバによる半導体ウェハの検査では、 ダイシ ングされる前の半導体ウェハをステージ上に載置し、 ゥェ八上に集合的に形成され た半導体製品の電極に前記プローブピンを接触させて電極間に流れる電流を計測し、 電気特性の検査により不良品の識別を行なう。
本発明の検査方法は、 半導体ウェハの検査装置としては既知であるが、 従来、 L
Cフィル夕の検査には用いられることのなかったウェハプロ一バを L Cフィル夕の 検査に用いることを特徴とする。 具体的には、 前述の樹脂封止された集合基板を基 板表面を下側にしてウェハプロ一バのステージに載置し、 基板裏面の電極に対して プローブピンを接触させて個別の L Cフィル夕の検査を行なう。具体的検査方法は、 ウェハプローバによる半導体ウェハの検査方法をほぼそのまま利用することが可能 である。 例えば、 L Cフィル夕の入出力電極位置を所望の電気特性に応じて変更し た場合でも、 プローブカードやプローブピンの交換、 制御プログラムの変更により 行えばよい。 このため、 多様な製品を低コストで検査することが可能となる。 ゥェ ハプローバの検査処理能力は精密測定でも 1製品領域当たり 1秒は超えない。 マル チプローバを適用して複数のフィルタを同時に検査してもよい。 この場合には 1製 品領域当たりの検査時間は 1/2〜1/3秒に短縮される。
前述のように、 従来の積層型 L Cフィルタでは、 その構造上、 検査には個別チッ プに対応した専用治具の製作が必要であつたが、 本発明の方法では、 ウェハプロ一 バにおいて集合基板をウェハに代えて用いるため、 個別チップ用の専用治具は不要 となる。 さらに、 ウェハプローノ は可動ステージを有しているため、 従来の L Cフ ィル夕の自動検査で用いられていた大型の搬送装置も不要であり、 プローブは半永 久的に利用可能である。
さらに、 ウェハプローバでは、 校正用基板の利用によりプローブ先端までの校正 が可能となる。 この結果、 製品本来の特性が精密に測定できるようになる。 また、 温度特性の検査も容易である。 温度特性に関する品質保証は、 従来からセラミック 電子部品における大きな問題点であり、 従来の大型の搬送装置を用いた自動検査装 置を用いて室温以外の^ Sを行おうとすると検査システム全体を恒温室に保持する
などの犬がかりな変更が必要であり現実的ではなかった。 し力 ^し、 一般にゥェ八プ ローバは持ち運びできる程度の小型の装置であり、 S O L T (Short- Open- Load- Through)校正などのプロ一ブレベルでの校正が可能であるため、 温度特性の精密な 測定を容易に行なうことができる。
従って、 本発明の検査方法を用いれば、 (1) L Cフィル夕を効率的かつ精密に低 コストで検査できる; (2)製品の設計変更に容易に対応できるため多品種少量生産 での検査が実現できる; (3)温度特性の測定が容易であるため単結晶製品並の高品 質な製品の供給が可能となる。 なお、 (3)に関連して言えば、 一般にセラミック電 子部品ではセラミックスに固有の材料特性のバラツキにより製品特性が変動するた め、 高いレベルでの品質保証が困難であり、 これが単結晶製品に比較して製品開発 上の大きな限定要因となっていたが、 本発明によれば、 出荷検査段階で規定値以下 の製品が除去できるため、 セラミック材料の欠点である材料特性のバラツキによる 製品特性の変動を補うことができる。 従って、 製品開発の自由度が増し、 さらに、 試験に要する時間の短縮により、 製品開発期間が短縮できる。
なお、 検査後の個別チップへの分離は前述と同様に行なえばよい。
4. L Cフィルタの応用
本発明の L Cフィルタは、 マイク口波通信における端末通信機器やその中継局等 での利用、 デジタル回線における高調波信号の処理などの分野で幅広く利用するこ とができる。本発明の L Cフィル夕は幅広い周波数領域において利用可能であるが、 特に 3 0 0 MH z〜8 GH z程度の領域で有用である。
また、 本発明の L Cフィル夕は、 個別のチップとして製造することが可能である だけでなく、 他の回路素子とともに基板上に搭載して、 種々の機能を有する素子、 装置、 システムの一部としても用いることができる。 このようなシステムの例とし ては無線通信用の送受信システムが挙げられる。
(1)無反射 L P Fによる無線通信用送受信システム
従来の無線通信機の送信部では、 不要波 (スプリアス) を除去する目的でフイリレ 夕がアンテナと電力増幅器との間に挿入される。 局部発振器でのスプリァスの発生
は避けられないので送信用フィル夕は必要不可欠である。 かっては発振器の高周波 での連続発振は困難で、 発振信号波は何段か遲倍されて搬送波を得ていた。 この場 合にはスプリァスは搬送波の上下の周波数帯で発生するので、 除去には帯域フィル 夕 (B P F) が必要である。 しかし、 今日では^ 術の進歩により高い周波数 でも発振器の連続発振力河能で運倍なしに搬送波が得られる。 この場合にはスプリ ァスは搬送波以上の周波数帯のみで発生する。 携帯 mis機では搬送波は発振器の直 接発振で得ているので送信用フィル夕は L P Fが主流である。 もちろん、 B P Fも 適用できるが L P ?カ好適である。 携帯電話機用のフィル夕には小型化のために集 中定数型が用いられるが、 集中定^ C では B P Fと比較して L P Fの定在波比が小 さいからである。 なお、 定在波比はフィルタやアイソレータ等の高周波用電子部品 において入射波に対する反射波の程度を表す定数で定在波比が大きくなるほど反射 波は強くなる。 透過特性と同様に定在波比特性 (反射特性) は高周波用電 品の 重要な特性である。
ここで無線通信機用送信器の 構成を考える。 搬送波で変調された信号波は、 基本的には電力増幅器—アイソレータ—送信用フィル夕—アンテナを経て送信され るが、 従来の送信用フィルタでは定在波比が 1よりも相当に大きな値である上、 定 在波比が極小となるフィルタの中心周波数にも製品によりずれがある。 また、 アン テナとのインピーダンス整合も問題である。 この結果、 大きな反射電力が電力増幅 器に戻り、 その破壊を引き起こすことがある。
そこで、 電力増幅器の直後には反^力からの保護を目的としてアイソレー夕が 設置されている。 携帯電話機に用いられる集中定 のアイソレータには磁性体が 適用されている。 この 体が発生する磁力はアイソレー夕の外部に漏れて周辺に 配置された部品に悪影響を及ぼす。 集中定数型アイソレ一夕では機械的寸法が小型 化されても磁性体が適用される設計である限り電気的寸法の小型化は困難で、 携帯 電話機送受信モジュールの全体としての小型化を阻害する大きな原因の一つとなつ ている。
再び、 無線通信機用送信器の基本構成を考える。 送信用フィル夕として携帯電話
機では積層型 L P Fが適用されている。 一般的な積層型 L P Fでは VSWR= 1. 7程度であるから入^ «力波の約 7 %は反射され電源に帰還する電力となる。 この 積層型 LP Fに代えて本発明の無反射 LP Fを適用する。 VSWRく 1.06であ るから入射電力に対する反射電力は 0. 1%以下となる。 アンテナに対しては完全 な整合が れて VSWR=1.0となるような設計ができるので、 アンテナからも LPF (送信用フィルタ) 力らも反^力は無くなりアイソレータを省略して送信 器の基本構成が可能となる。
(2) 携帯電話機高周波送受信部の 化
受信用、 局部発振器用、 電力増幅器用等の表面弾性波 (SAW) フィル夕がある。 つい最近まで送信用の SAWフィル夕は実用化が灘しいとされていたが、 今日では 送信用フィルタとして 1 W程度の許容電力および 2 d B程度の挿入損失を保証した SAWフィル夕が登場している。 SAWフィル夕の開発は目覚ましいが未解決の問 題点もある。 その一つは、 SAWは結晶表面に生じる弾性波 (音響波) であるから S AWチップは安価な樹脂封止が適用できずに個別のパッケージを必要とすること である。 当然のことのようにセラミックパッケージが適用されているが高価で量産 性に乏しく小型化も阻害している。 榭脂封止できないという欠点は SAWフィル夕 の動作原理を起源とするので解決は容易でない。
し力し、 同軸型誘電体共振器帯域フィル夕 (DRO型 BPF) では何らの支障も 無く樹脂封止できる。最大の欠点であった大きな外形寸法も DRO型 B P F回路〔本 発明者らによる特願平 11- 20568号 (平成 11年 1月 28日出願)〕 によれば SAW フィル夕程度の寸法で DRO型 BPFが実現できる。 96アルミナ基板は安価で高 周波での応用に高性能である。 無反射 LP Fおよび LCフィル夕 〔本発明者らによ る特願平 10- 25959号 (平成 10年 2月 6日出願)〕 用の L成分として螺旋インダク 夕電極を厚膜印刷等で形成し、 C成分としてチップキャパシタ等を搭載する。 また、 螺旋インダク夕 〔本発明者らによる特願平 10-182045号 (平成 10年 6月 29日出 願)〕 を無共振化することも可能である。
0尺〇型8 P F回路用電極も 96アルミナ基板に厚膜印刷等で形成し DROおよ
び結合キャパシ夕を搭載して B P F特性を得る。 DROに代えてストリップライン 共振器やステップインピーダンス共振器の適用も容易である。 半導体等の能動部品 も 96アルミナ厚膜電極、 印刷基板に搭載する。 個々の構成要素は適当な特性イン ピーダンスのストリップ伝送線路で接続し樹脂封止されて、 携帯電話機用高周波送 受信部は 1個に集積化されるのである。 集積化の効果は小型化や低価 1 ^匕にとどま らない。 96アルミナ基板の誘電損失は小さく携帯電話用の周波数帯ではストリッ プ伝送線路は実用的に無反射であり挿入損失もほぼ 0 [dBZcm] である。 アイ ソレー夕の省略、 送信部の小型化、 96アルミナ基板ストリップ伝送線路の適用に より電力増幅器からァンテナまでの挿入損失および反射電力を限界まで抑圧できる。 携帯電話機の電池の小型化や通話時間の増大までもが実現するのである。 加えて、 部品搭載面の裏面は GND電極であるので電磁波ノィズの抑圧に効果的であり、 よ り良好なアンテナと給電線との整合、 平衡、 不平衡が得易い。
なお、 これらの例は本発明による LCフィルタの応用例の一例であり、 これら以 外にも種々の応用が可能である。 発明を実施するための最良の形態 以下、 実施例により本発明の効果を具体的に示す。 なお、 以下の実施例 1〜2に おいて周波数特性の測定は、 LCフィル夕を治具に固定し、 治具をヒューレット ' パッカード社製ネットワークアナライザ HP 8722 Cと専用ケーブルにより接続 して行なつた。 測定器は、 0. 05〜 3. 05GHzの周波数範囲で SOL T校正し た。 なお、 温度による特性の変化を併せて調べるため、 測定は恒温槽内において行 なった。
実施例 1
96アルミナ基板 (4. 8 OmmX 3. 5 OmmX 640 nm) の表面に厚膜用の 電極を使用して F i g. 2〜 7の回路パターンを印刷焼成し、 電極ランド部にチッ プキャパシ夕を接続することで、 F i g. 1で表される LP Fを形成した。 インダ
クタパターンの導体幅と導体線络間スペースはいずれも 100 である。 また、 L 1ZL 3と L 2との距離 (それぞれの導体路が最も接近している領域における当 該導体路間の距離) も l O O mである。 なお、 これらの例では L 1=L 3 = 7. 5nH、 L2=l 5nHとした。
基板裏面のほぼ全面には GNDとして厚膜電極を形成した (F i g. 8)。
キャパシ夕容量 C 1 =C 2及びワイヤボンド結線を表 1最下欄に示すように変え て 10種類の LP F (LPF 1〜LPF 10) を製作した。 F i g. 9〜: 18には、 このように試作した L P Fの透過特性 (S 21 LOGMAG) 及び反射特性 ( S 11 SWR) を示した。 また、 表 1には特性値をまとめ、 特性曲線との対応を記 した。
L 1および L 2のコイルに流れる電流の方向が互いに逆方向の時(L P F 1、 3、 5~ 10) には中心周波数 F oで定在波比 (VSWR) 1. 0となり、 Fo土 10 MHzでは 1.06以下となる。 一般的なセミリジッドケーブルでは VSWR <1.05であるから、 これらの LP Fは Fo土 10 MHzで実用的にほぼ無反射と見 なせる。 しかし、 LPF試料 2及び 4のように電流の方向が順方向であると、 定在 波比の有効な抑 1£¾果は見られるものの、 より厳密な意味での無反射特性は得られ ていないことがわかる。
実施例 2
L 1 ZL 3と L 2との距離 (それぞれの導体路が最も している領域における 導体路間の距離) を 500 zmとし、 L l=L3=10nH、 L2 = 20 nH, C 1=C2=4.65pFとし、インダク夕間及びインダクタ一キャパシ夕間を F i g. 7に準じて層内の導体パターンにより接続したほかは実施例 1と同様にして LCフ ィル夕を作成した。
得られた L P Fの透過特性及び反射特性を F i g. 22に示した。 V S WRの最 小値は 1. 3〜 1.4程度であり、 上記の実施例 1に比較すると劣るが、 従来の積層 LCフィルタ (帯域内 VSWR= 1.7) と比較すると極めて優れた結果を示して いる。
実施例 3
96アルミナ基板 (76mmX 95mmX 0.64mm) の表面に F i g. 21 に示すように、 1領域当たり横 4.8mm、 縦 3. 5 mmの面積を有する個別フィル 夕領域 90個を含むように基板中央部に分割領域を設け (本例では実際に基板表面 に浅い分割線を形成したが、 後述のスルーホール間隔によっては分割線は不要であ る。)、 当該分害 U線上にスルーホールを形成した。 スルーホールは、 F i g. 2等の リ一ド部に対応する箇所に設けてある。
次いで、 スルーホール側面に導体ペーストを充填印刷し、 また、 各個別フィル夕 領域において、 F i g. 6等に示すように導体パターンを印刷した。 裏面には F i g. 8に示す GND層と前記スルーホールの貫通部近傍のランド部を同じく導体べ 一ストのスクリーン印刷により形成した。
しかる後、 回路パターンを焼成し、 基板表面のうちインダク夕の端部の一部と電 極ランド部を除いた部分をガラスコート層で覆い、 し力 ^る後、 電極ランド部にクリ ーム状ハンダを塗布してチップキャパシ夕を搭載し、 加熱後、 金線により実施例 1 の LPF 1と同様にワイヤボンディングを実施した。 なお、 インダク夕及びチップ キャパシ夕の容量値は L P F 1と同様である。 基板表面のすべて個別領域において ワイヤボンディングを完了した後、 基板表面を樹脂封止した。
市販のウェハプローバのステージ上に前記の集合基板を裏面を上側にして載置し、 予めプログラムした手順に従い、 各フィルタ領域の特性を検査した。 なお、 ゥェ八 プローバは校正用基板を用いて予め SOL T校正し、 20 の条件で測定した。 前領域の検査が完了した後、 基板をステージからはずし、 分割線に沿って力を加 えることにより LCフィル夕を個別チップとして得た。 なお、 検査に要した時間は 全体で 90秒であり、 従来法で同数の個別チップを検査する場合と比べ 10分の 1 以下に短縮された。
無反射 L P Fによる無線通信用送受信システム
送信用フィル夕として携帯電話機では積層型 LP F (VSWR-約 1. 7) を用 いた無線通信機用送信器と同様の回路構成において、 アイソレータを除き、 インピ 一ダンス整合部の設計変更をした他はほぼ同様にして、 本発明の無反射 L P Fを適 用する。 例えば、 電力増幅器の出力電力は 1Wとすることができる。
投に、携帯電話機のアンテナ出力は 1Wである。 アイソレータは VSWR=1. 5で揷入損失 I L 0^0.7 [dB] であるから入力電力の約 20%が、 積層型 L PFおよびアンテナスィッチで VSWR=2.0で挿入損失 I LO= 1.0 [dB] であるから入力電力の約 30%がアンテナに給電されない。 従って、 アンテナ出力 を 1Wに設計するには電力増幅機の出力電力を約 1. 8Wに設定する必要がある。 しカゝし、 無反射 L P Fを適用すれば電力増幅器に帰還する反!^力は 3 %以下とな りアイソレータを省略した送信器設計も可能で、 システムの簡素化、 電力増幅器の 軽薄短小化、 低価 匕、 変換効率の改善による電池の小型化も可能となる。 産業上の利用可能性 本発明の小型 L Cフィルタは、 中心周波数及びその近傍における VSWRが従来 品よりも大きく低減された特性を有する。 このため、 携帯端末等の各種無線通信機 器の小型化、 高性能化、 省電力化あるいはシステムの簡略化を図る上で極めて有用 である。 その他、 高周波帯域での様々な応用が可能である。 また、 その製造は容易
であり、 しかも、 従来の積層型 L Cフィル夕では困難であった中心周波数の精確な 制御が可能である。 従って、 廉価な製造コストで信頼性の高いシステムを構築する ことが可能である。 また、 集合基板を用いた製造方法'検査方法を用いることによ り効率的な製造が 能になる。