JPWO2021040006A1 - ゴム組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]成分(A):アニオン化度が0.06meq/g以上2.50meq/g以下であり、平均繊維径が500nmよりも大きい、変性セルロースマイクロフィブリル、及び
成分(B);ゴム成分
を含むゴム組成物。
[2]成分(A)は、以下の式:
保水能=(B+C−0.003×A)/(0.003×A−C)
(式中、Aは、変性セルロースマイクロフィブリルの固形分濃度0.3質量%の水分散体の質量、Bは、質量Aの水分散体を30℃、25000G、30分間遠心分離した後に分離される沈降物の質量、Cは前記遠心分離後に分離される水相中の固形分の質量をそれぞれ表す)
で表される保水能が10以上の変性セルロースマイクロフィブリルを少なくとも含む、[1]に記載のゴム組成物。
[3]成分(A)は、固形分1質量%の水分散体とした際のB型粘度(25℃、60rpm)が、4,000mPa・s以下である、変性セルロースマイクロフィブリルを少なくとも1種含む、[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[4]成分(A)は、酸化セルロースマイクロフィブリル、カルボキシアルキル化セルロースマイクロフィブリル及びリン酸化セルロースマイクロフィブリルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のゴム組成物。
[5]酸化セルロースマイクロフィブリルのカルボキシル基量が0.1〜2.5mmol/gである、[4]に記載のゴム組成物。
[6]酸化セルロースマイクロフィブリルのカルボキシ置換度が0.01〜0.50であり、及び/又は、カルボキシル化セルロースマイクロフィブリルのカルボキシアルキル置換度が0.01〜0.50である、[4]または[5]に記載のゴム組成物。
[7](A)成分と(B)成分を混合および混練し、ゴム組成物を得ることを含む、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のゴム組成物の製造方法。
変性セルロースマイクロフィブリルは、通常、変性セルロースのフィブリル化繊維及びフィブリル化セルロース繊維の変性物である。フィブリル化を経ることにより、比表面積が大きくなり、保水性や強度付与効果の向上が期待される。また、変性(通常、化学変性)を経ることにより、フィブリル化の際に繊維同士がほぐれやすく、変性を経ない場合と比較して少ない電力で効率よくフィブリル化を進めることができる。また、水との親和性が向上し、繊維長が比較的長くとも良好な保水性を呈することができる。
変性セルロースマイクロフィブリルの形状における特徴は以下のとおりである。フィブリル化を経ない変性セルロースと比較すると、通常、繊維表面にセルロースのミクロフィブリルの毛羽立ちがみられる。化学変性セルロースナノファイバーと比較すると、通常、繊維自体の微細化が抑制され、繊維表面の毛羽立ち(外部フィブリル化)が効率よくなされている。化学変性なされていないフィブリル化セルロースナノファイバーと比較すると、保水性が良好であり、チキソトロピー性が観察される。変性セルロースマイクロフィブリルは、好ましくは、化学変性セルロースのフィブリル化繊維である。これにより、フィブリル化の際に繊維同士がほぐれやすく、繊維の損傷を抑制できる。
変性セルロースマイクロフィブリルの水分散体(固形分濃度1質量%)の透明度(660nm光の透過率)は、60%未満が好ましく、50%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましく、30%以下がさらに好ましい。これにより、フィブリル化の程度が適度であり、本発明の効果を十分得ることができる。下限は0%以上でよく、特に限定されない。変性セルロースマイクロフィブリルは、水分散体(固形分濃度1%以上程度)で、通常、半透明から白色を示し、ゲル状、クリーム状、またはペースト状を示す。
変性セルロースマイクロフィブリルの平均繊維径は、通常500nm以上、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。これにより、未解繊のセルロース繊維に比べて高い保水性を呈することができ、微細に解繊されたセルロースナノファイバーと比較して少量でも高い強度付与効果や歩留まり向上効果が得られる。平均繊維径の上限は60μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、20μm以下がさらにより好ましいが、特に制限はない。
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
変性セルロースマイクロフィブリルのBET比表面積は、好ましくは25m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上、さらに好ましくは100m2/g以上である。BET比表面積は、窒素ガス吸着法(JIS Z 8830)に従い、水分散体をt−BuOHで置換後、凍結乾燥したサンプルをBET比表面積計で測定できる。
変性セルロースマイクロフィブリルにおけるセルロースI型の結晶化度は、通常は50%以上、好ましくは60%以上である。上限は特に限定されないが、現実的には90%程度と考えられる。セルロースの結晶性は、化学変性の程度により制御できる。セルロースI型の結晶化度は、X線回折測定をして、22.6°付近の(200)ピークと、(200)と(110)の谷(18.5°付近)の強度を測定し比較して算出できる。
変性セルロースマイクロフィブリルのアニオン化度(アニオン電荷密度)は、通常は2.50meq/g以下であり、2.30meq/g以下が好ましく、2.0meq/g以下がより好ましく、1.50meq/g以下がさらに好ましい。これにより、アニオン化度がより高い化学変性セルロース繊維に比べ、化学変性がセルロース全体にわたり均一になされていると考えられ、保水性等の化学変性セルロース繊維に特有の効果をより安定に得ることができると考えられる。下限は、通常は0.06meq/g以上、好ましくは0.10meq/g以上、より好ましくは0.30meq/g以上であるが、特に限定されない。従って、0.06meq/g以上2.50meq/g以下が好ましく、0.08meq/g以上2.50meq/g以下、又は0.10meq/g以上2.30meq/g以下がより好ましく、0.10meq/g以上2.00meq/g以下がさらに好ましい。アニオン化度は、単位質量の変性セルロースマイクロフィブリルあたりのアニオンの当量であり、単位質量の変性セルロースマイクロフィブリルにおいてアニオン性基を中和するのに要するジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)の当量から算出できる。
変性セルロースマイクロフィブリルの保水能は、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上、さらにより好ましくは30以上である。上限は、現実的には200以下程度となると思われるが、特に限定されない。保水能は、沈降物中の繊維の固形分の質量に対する沈降物中の水の質量に相当し、繊維の0.3質量%水分散液を25,000Gで遠心分離して測定及び算出される、沈降ゲル中の水分量/固形分量の比である。すなわち、以下の式で算出される:
保水能=(B+C−0.003×A)/(0.003×A−C)
A:変性セルロースマイクロフィブリルの固形分濃度0.3質量%の水分散体の質量
B:質量Aの水分散体を30℃で25,000Gで30分間遠心分離した後に分離される沈降物の質量
C:前記遠心分離後に分離される水相中の固形分の質量
変性セルロースマイクロフィブリルを水分散体とした時、水分散体の粘度が低いことが好ましい。これにより、フィブリル化されているにもかかわらず、ハンドリング性の良い素材となり得る。例えば、固形分1質量%の水分散体のB型粘度(25℃、60rpm)は、通常4,000mPa・s以下、好ましくは3,500mPa・s以下、より好ましくは3,000mPa・s以下、さらに好ましくは2,500mPa・s以下である。下限値は、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは20mPa・s以上、さらに好ましくは50mPa・s以上である。B型粘度の測定は、例えば、以下の方法で測定できる。フィブリル化(例、解繊)後1日以上静置した後、必要に応じて希釈し、ホモディスパーで撹拌(例、3000rpm、5min)撹拌後、粘度測定を行う(60rpm、3分回転後の粘度を測定)。
変性セルロースマイクロフィブリルのフィブリル化率(Fibrillation %)は、1.0%以上が好ましく、1.2%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましい。これによりフィブリル化が十分なされていることを確認できる。フィブリル化率は、用いるセルロース系原料の種類により調整できる。フィブリル化率は、バルメット株式会社製フラクショネーター等の、画像解析型繊維分析装置により求めることができる。
変性セルロースマイクロフィブリルの水分散体(固形分濃度1.0質量%)の電気伝導度は、好ましくは500mS/m以下、より好ましくは300mS/m以下、さらに好ましくは200mS/m以下、さらにより好ましくは100mS/m以下、とりわけ好ましくは70mS/m以下である。下限は、好ましくは5mS/m以上、より好ましくは10mS/m以上である。電気伝導度は、変性セルロースマイクロフィブリルの固形分濃度1.0質量%の水分散体200gを調製し、電気伝導度計(HORIBA社製ES−71型)を用いて測定できる。
変性セルロースマイクロフィブリルの原料であるセルロース系原料は、セルロースを含む材料であればよく、特に限定されない。セルロース系原料としては、例えば、植物、動物(例えば、ホヤ類)、藻類、微生物(例えば、酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物に由来するものが挙げられる。植物由来のセルロース系原料としては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(例えば、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、針葉樹溶解パルプ、広葉樹溶解パルプ、再生パルプ、古紙)が挙げられる。セルロース系原料は、これらのいずれかでも、2種以上の組み合わせでもよい。好ましくは植物または微生物由来のセルロース系原料、より好ましくは植物由来のセルロース系原料、さらに好ましくはパルプ(例、木質系パルプ)である。
変性セルロースは、セルロース系原料またはセルロースマイクロフィブリルの変性(通常は化学変性)を経て得られる。本明細書において変性とは通常は化学変性であり、化学変性とは化学的に変性することを意味し、通常はセルロースのグルコース単位が有するヒドロキシル基を化学的に変性することを意味する。セルロースはグルコース単位により構成され、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有している。化学変性としては、例えば、酸化、エーテル化、リン酸エステル化等のエステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化が挙げられる。中でも、酸化(カルボキシル化)、エーテル化(例えば、カルボキシアルキル化)、カチオン化、エステル化が好ましく、酸化(カルボキシル化)、カルボキシアルキル化がより好ましい。
セルロースを酸化又はエーテル化すると、セルロースが有するヒドロキシル基がカルボキシル基又はカルボキシアルキル基に変性され、変性後のセルロース繊維は、通常、−COOHで表される基(酸型カルボキシル基)と、−COO-で表される基(塩型カルボキシル基)とを両方含む。塩型カルボキシル基のカウンターカチオンは特に限定されず、例えば、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオン、その他の金属イオンが挙げられる。
酸化セルロースは、その構造中、セルロースが本来有するヒドロキシル基の少なくとも1つがカルボキシル基に変性されていればよく、グルコピラノース環の6位の炭素原子に結合するヒドロキシル基の少なくとも1つがカルボキシル基に変性されていることが好ましい。
酸化セルロースは、酸化を経た結果カルボキシル基を含有するが、酸型カルボキシル基を塩型カルボキシル基より多く含有してもよいし、塩型カルボキシル基を酸型カルボキシル基よりも多く含有してもよい。酸化セルロースは、さらに脱塩処理を経ていてもよい。これにより、塩型カルボキシル基を酸型カルボキシル基に変換できる。本明細書において、「酸型」を付する場合脱塩を経ていることを示し、「塩型」を付する場合脱塩を経ていないことを示す。酸型セルロースが有するカルボキシル基に占める酸型カルボキシル基の割合は、40%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。酸型カルボキシル基の割合は以下の手順で算出できる。
1)先ず、脱塩処理前の酸型酸化セルロースの固形分濃度0.1質量%水分散体を250mL調製する。調製した水分散体に、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHが11になるまで電気電導度を測定する。電気電導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて、酸型カルボキシル基量および塩型カルボキシル基量、つまりトータルのカルボキシル基量を算出する:
トータルのカルボキシル基量(mmol/g酸化セルロース(塩型))=a(ml)×0.1/酸化セルロース(塩型)の質量(g)
2)脱塩処理した酸型酸化セルロースの固形分濃度0.1質量%水分散体を250mL調製する。調製した水分散体に、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHが11になるまで電気電導度を測定する。電気電導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(b)から、下式を用いて、酸型カルボキシル基量を算出する:
酸型カルボキシル基量(mmol/g酸型酸化セルロース)=b(ml)×0.1/酸型酸化セルロースの質量(g)
3)算出したトータルのカルボキシル基量と酸型カルボキシル基量から、下式を用いて、酸型カルボキシル基の割合を算出する。
酸型カルボキシル基の割合(%)=(酸型カルボキシル基量/トータルのカルボキシル基量)×100
エーテル化としては、例えば、カルボキシアルキル化、メチル化、エチル化、シアノエチル化、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシプロピル化、エチルヒドロキシエチル化、及びヒドロキシプロピルメチル化から選ばれる反応によるエーテル化が挙げられ、カルボキシアルキル化が好ましく、カルボキシメチル化がより好ましい。
マーセル化剤とカルボキシメチル化剤のモル比(マーセル化剤/カルボキシメチル化剤)は、カルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムを使用する場合、0.90以上が好ましい。これにより十分カルボキシメチル化反応が進行し、未反応のモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムの残留を抑制できる。上限は、2.45が好ましい。これにより、マーセル化剤が過剰となることがなく、マーセル化剤とモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムによる副反応の進行が抑制されグリコール酸アルカリ金属塩の生成を抑制でき、経済的に反応を進めることができる。従って、マーセル化剤とカルボキシメチル化剤のモル比は、一般には0.90〜2.45である。
AM=(DS×セルロースのモル数)/カルボキシメチル化剤のモル数
DS:カルボキシメチル置換度
セルロースのモル数=パルプ質量/162
パルプ質量は100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量を意味し、162はセルロースのグルコース単位当たりの分子量を意味する。
カルボキシアルキル化セルロースは、酸型カルボキシル基より塩型カルボキシル基を多く含有してもよいし、塩型カルボキシル基より酸型カルボキシル基を多く含有してもよい。カルボキシアルキル化セルロースは、さらに脱塩処理を経ていてもよい。これにより、塩型カルボキシル基を酸型カルボキシル基に変換できる。酸型カルボキシアルキル化セルロースが有するカルボキシル基に占める酸型カルボキシル基の割合は、40%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。酸型カルボキシル基の割合の算出方法は前述のとおりである。
エステル化としては、例えば、セルロース系原料に対しリン酸基を有する化合物を反応させる方法(リン酸エステル化)が挙げられる。リン酸エステル化方法としては、例えば、セルロース系原料にリン酸基を有する化合物の粉末または水溶液を混合する方法、セルロース系原料の水分散体にリン酸基を有する化合物の水溶液を添加する方法が挙げられ、後者が好ましい。これにより、反応の均一性を高め、且つエステル化効率を高めることができる。
変性セルロースマイクロフィブリルは、通常、上記化学変性セルロースをフィブリル化することにより得られる。フィブリル化の条件を調整することにより、(A)成分の物性(例えば、繊維長、粘性)をコントロールでき、これを含むゴム組成物の物性を向上させることができる。フィブリル化は、解繊または叩解によればよい。解繊および叩解は、湿式で(すなわち、水分散体の形態で)行うことが好ましい。解繊および叩解は、精製装置(リファイナー;例、ディスク型、コニカル型、シリンダー型)、高速解繊機、せん断型撹拌機、コロイドミル、高圧噴射分散機、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、高速離解機(トップファイナー)、高圧または超高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、振動ミル、ビーズミル、1軸、2軸又は多軸の混錬機・押出機高速回転下でのホモミキサー、精製装置(refiner)、デフィブレーター(defibrator)、摩擦グラインダー、高せん断デフィブレーター(high shear defibrator)、ディスパージャー(disperger)、ホモゲナイザー(例、微細流動化機(microfluidizer))、キャビテーション装置等の機械的な解繊力を付与できる装置を用いて行うことができ、湿式にて解繊力を付与できる装置が好ましいが、特に限定されない。装置は1つ用いてもよいし、2以上の装置を用いる解繊および叩解処理を組み合わせてもよい。
変性セルロースマイクロフィブリルは、製造後に得られる水分散体の状態であってもよく、必要に応じて後処理を経てもよい。後処理としては、例えば、乾燥(例、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法)、水への再分散(分散装置は限定されない)、粉砕(例えば、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の機器を使用した粉砕)が挙げられるが、特に限定されない。
ゴム成分とはゴムの原料であり、架橋してゴムとなるものをいう。ゴム成分としては、天然ゴム用のゴム成分と合成ゴム用のゴム成分が存在する。天然ゴム用のゴム成分としては、例えば、化学修飾を施さない狭義の天然ゴム(NR);塩素化天然ゴム、クロロスルホン化天然ゴム、エポキシ化天然ゴム等の化学修飾した天然ゴム;水素化天然ゴム;脱タンパク天然ゴムが挙げられる。合成ゴム用のゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム;ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらの中で、天然ゴムおよびジエン系のゴムが好ましく、ジエン系の天然ゴム(化学修飾を施さない狭義の天然ゴム(NR))がより好ましい。
ゴム組成物における(A)及び(B)成分の各含有量は特に限定されないが、好ましい使用量は以下のとおりである。
ゴム組成物は、ゴム組成物の用途等の要望に応じて1種または2種以上の任意成分をさらに含んでもよい。任意成分としては、例えば、補強剤(例えば、カーボンブラック、シリカ)、シランカップリング剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸)、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤、着色剤等、ゴム工業で使用され得る配合剤が挙げられる。このうち加硫促進剤、加硫促進助剤が好ましい。任意成分の含有量は、任意成分の種類等の条件に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。
本発明のゴム組成物の用途は、特に制限されず、最終製品としてゴムを得るための組成物であればよい。すなわち、ゴム製造用の中間体(マスターバッチ)でもよいし、加硫剤を含む未加硫のゴム組成物でもよいし、最終製品としてのゴムでもよい。最終製品の用途は特に限定されず、例えば、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機器;パソコン、テレビ、電話、時計等の電化製品;携帯電話等の移動通信機器;携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器、スポーツ用品;建築材;文具等の事務機器;容器;コンテナーが挙げられる。これら以外であっても、ゴムや柔軟なプラスチックが用いられている部材への適用が可能であり、タイヤへの適用が好適である。タイヤとしては例えば、乗用車用、トラック用、バス用、重車両用等の空気入りタイヤが挙げられる。
本発明のゴム組成物は、(A)成分と(B)成分を混合及び混練し、ゴム組成物を得る方法であればよい。(A)〜(B)成分を混練する際、同時、途中又は混練後に必要に応じて任意成分を添加してもよい。(A)、(B)および任意成分の具体例、使用量は、既述のとおりである。
(光学特性)
・透明度:水分散体(固形分濃度1%(w/v)、分散媒:水)を調製し、UV−VIS分光光度計 UV−1800(島津製作所社製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて波長660nmの光の透過率を測定した(ブランク:イオン交換水)
・カルボキシル(COOH)基量:サンプルの0.5質量%水分散体60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした。その後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定した。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:
カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシル化セルロース質量〔g〕。
A=[(100×F’−0.1N−H2SO4(mL)×F)×0.1]/(酸型サンプルの絶乾質量(g))
置換度=0.162×A/(1−0.058×A)
F’:0.1N−H2SO4のファクター
F:0.1N−NaOHのファクター。
Xc=(I002C−Ia)/I002C×100
Xc:セルロースのI型の結晶化度(%)
I002C:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度
結晶化度測定用試料は、後段の比表面積の測定における項目(1)〜(9)と同様の手順で調製した凍結乾燥サンプルを、タブレット状に成型して使用した。
q=(V×c)/m
q:アニオン化度(meq/g)
V:流動電流がゼロになるまでのDADMACの添加量(L)
c:DADMACの濃度(meq/L)
m:測定試料中の変性セルロースマイクロフィブリルの質量(g)。
・平均繊維幅及び平均繊維長:固形分濃度0.25質量%に希釈した水分散体を、フラクショネーターにかけ、length−weighted fiber width及びlength−weighted average fiber lengthとして求めた(n=2)。
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
(1)変性セルロースマイクロフィブリルの約2%水分散体を、固形分が約0.1gとなるように取り分け遠心分離の容器に入れ、100mlのエタノールを加えた。
(2)攪拌子を入れ、500rpmで30分以上攪拌した。
(3)撹拌子を取り出し、遠心分離機で、7000G、30分、30℃の条件で変性セルロースマイクロフィブリルを沈降させた。
(4)変性セルロースマイクロフィブリルをできるだけ除去しないようにしながら、上澄みを除去した。
(5)100mlエタノールを加え、撹拌子を加え、(2)の条件で攪拌、(3)の条件で遠心分離、(4)の条件で上澄み除去をし、これを3回繰り返した。
(6)(5)の溶媒をエタノールからt−ブタノールに変え、t−ブタノールの融点以上の室温下で、(5)と同様にして撹拌、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返した。
(7)最後の溶媒除去後、t−ブタノールを30ml加え、軽く混ぜた後ナスフラスコに移し、氷浴を用いて凍結させた。
(8)冷凍庫で30分以上冷却した。
(9)凍結乾燥機に取り付け、3日間凍結乾燥した。
(10)BET測定を行った(前処理条件:窒素気流下、105℃、2時間、相対圧0.01〜0.30、サンプル量30mg程度)。
保水能=(B+C−0.003×A)/(0.003×A−C)。
・B型粘度(25℃、60rpm):解繊後1日以上静置した後、以下の方法で測定した:固形分1%となるよう希釈した後、ホモディスパーで3000rpm・5min撹拌後、粘度測定開始(60rpm)し、3min後の粘度の値を記録した。
表のデータは比較例1のデータを100とした時の指数として示した。
・硬度:JIS K6253−3:2012に従いデュロメータ硬さを測定した。
・引張特性:JIS K6251:2017に従ってM50、破断強度及び破断伸びを測定した。
・引裂強度:JIS K6252−1:2015に従い引裂強度を測定した。
・摩耗特性:FPS摩耗試験機(株式会社上島製作所製)を用い、荷重20N、スリップ率20%で摩耗体積(mm3)を測定した。この特性については、得られた摩耗体積の逆数をとり、比較例1の逆数値を100とした時の指数として示した。指数値が大きいほど摩耗体積が小さく摩耗特性に優れることを示す。
・圧縮疲労特性:フレクソメータ(株式会社上島製作所製)を用い、疲労特性の一つである、物体が一定応力下で時間の経過とともに増大するひずみ(クリープ)を測定した。試験開始温度は50℃とした。得られた数値の逆数をとり、比較例1の逆数値を100とした時の指数として示した。指数値が大きいほどクリープが生じにくく、疲労特性に優れることを示す。
<パルプのTEMPO酸化>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(NBKP、日本製紙(株)製、白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物に塩酸を添加しpH2に調整した後、ガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、分離されたパルプを十分に水洗して、TEMPO酸化パルプを得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.37mmol/g、pHは4.5であった。
得られたTEMPO酸化パルプの固形分濃度2.0質量%の水分散体を調製し、5%NaOH水溶液及び炭酸水素ナトリウムを添加してpH8.0に調整した後、トップファイナー(相川鉄工株式会社製)を用いて10分間処理し、酸化セルロースマイクロフィブリル(TEMPO酸化MFC)を調製した。得られた酸化セルロースマイクロフィブリルの物性値を表1に示す。
TEMPO酸化MFCの水分散体(1質量%)500gと天然ゴムラテックス(商品名HA−LATEX、株式会社レヂテックス製、固形分濃度61.4%)162.9gを混合してゴム成分とマイクロフィブリルとの質量比が100:5となるようにし、TKホモミキサー(8000rpm)で10分間、23℃で撹拌した。この水性懸濁液を、70℃の加熱オーブン中で19時間乾燥して混合物(マスターバッチ)を得た。
マイクロフィブリル化において、水分散体におけるTEMPO酸化パルプの固形分濃度を30質量%に変更し、ラボリファイナー(相川鉄工株式会社製)を用いた処理を2回行った後、水で希釈し、5%NaOH水溶液及びH2O2溶液を加えて固形分濃度を4質量%に調整した後にてトップファイナー処理を20分行ったことのほかは、実施例1と同様に行った(表1及び2)。
マイクロフィブリル化において、水分散体におけるTEMPO酸化パルプの固形分濃度を4質量%に変更したこと、トップファイナー処理前に5%NaOH及び炭酸水素ナトリウムの添加を行わなかったこと、マイクロフィブリル化終了後に5%NaOH水溶液を添加しpHを7.4に調整した上で物性評価及びゴムの調整に供したことのほかは、実施例1と同様に行った(表1及び2)。
マイクロフィブリル化において、水分散体におけるTEMPO酸化パルプの固形分濃度を30質量%に変更したこと、及びトップファイナー処理の代わりに実施例2で行ったのと同様のラボリファイナー(相川鉄工株式会社製)を用いた処理を2回行ったこと、のほかは、実施例3と同様に行った(表1及び2)。
以下の処理により得られるカルボキシメチル化パルプをマイクロフィブリル化に供したことのほかは、実施例1と同様に行った(表1及び2)。
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(LBKP、日本製紙(株)製)を100部(100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量)仕込んだ。これらを30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化されたセルロース系原料を調製した。更に撹拌しつつイソプロピルアルコール(IPA)100部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、30%であった。反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、カルボキシメチル化パルプ(ナトリウム塩)を得た。
天然ゴムラテックスのみを用いてゴムを調製したことのほかは、実施例1と同様に行った(表1及び2)。
TEMPO酸化MFCの水分散体の代わりにカーボンブラック20phrを用いたほかは、実施例1と同様に行った(表1及び2)。
Claims (7)
- 成分(A):アニオン化度が0.06meq/g以上2.50meq/g以下であり、平均繊維径が500nmよりも大きい、変性セルロースマイクロフィブリル、及び
成分(B);ゴム成分
を含むゴム組成物。 - 成分(A)は、以下の式:
保水能=(B+C−0.003×A)/(0.003×A−C)
(式中、Aは、変性セルロースマイクロフィブリルの固形分濃度0.3質量%の水分散体の質量、Bは、質量Aの水分散体を30℃、25000G、30分間遠心分離した後に分離される沈降物の質量、Cは前記遠心分離後に分離される水相中の固形分の質量をそれぞれ表す)
で表される保水能が10以上の変性セルロースマイクロフィブリルを少なくとも含む、請求項1に記載のゴム組成物。 - 成分(A)は、固形分1質量%の水分散体とした際のB型粘度(25℃、60rpm)が、4,000mPa・s以下である、変性セルロースマイクロフィブリルを少なくとも1種含む、請求項1または2に記載のゴム組成物。
- 成分(A)は、酸化セルロースマイクロフィブリル、カルボキシアルキル化セルロースマイクロフィブリル及びリン酸化セルロースマイクロフィブリルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 酸化セルロースマイクロフィブリルのカルボキシル基量が0.1〜2.5mmol/gである、請求項4に記載のゴム組成物。
- 酸化セルロースマイクロフィブリルのカルボキシ置換度が0.01〜0.50であり、及び/又は、カルボキシル化セルロースマイクロフィブリルのカルボキシアルキル置換度が0.01〜0.50である、請求項4または5に記載のゴム組成物。
- (A)成分と(B)成分を混合および混練し、ゴム組成物を得ることを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム組成物の製造方法。
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