以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、1級又は2級アルキルエステル基を有する化合物と水酸基を有する化合物との間のエステル交換反応によって硬化させる熱硬化性樹脂組成物において、良好な硬化反応が得られることを見出すことによって完成されたものである。
(メタ)アクリル酸の1級又は2級アルキルエステルを構成単位とする重合体は、熱硬化性樹脂組成物用の材料としては周知の材料である。このような重合体は、一般に、水酸基も有する重合体として、硬化剤と併用することによって、硬化させることが知られている。
しかしながら、このような周知のポリアクリル樹脂等のように、樹脂の主鎖に直接1級又は2級アルキルエステル基が結合した場合、このエステル基は反応性が低く、エステル交換反応によって良好な硬化を行うことは困難である。これは、主鎖近傍の1級又は2級アルキルエステル基は、主鎖によって拘束され、自由度が小さいため、水酸基と近づくことが困難になりやすいためであると推測される。
このため、1級又は2級アルキルエステル基を有する化合物を使用し、エステル交換反応によって熱硬化性樹脂組成物を硬化させることは、これまで充分に検討されていなかった。本発明者は、種々の検討を行うことによって、1級又は2級アルキルエステル基と水酸基との反応によって良好な硬化を得ることができる組成を見出すことによって、本発明を完成した。
1級又は2級アルキルエステル基と水酸基との反応によって良好な硬化を得ることができれば、3級アルキルエステル基(特にターシャリーブチルエステル)を使用した場合の問題である、気体成分の発生による硬化物表面の発泡による外観悪化という問題を改善することができる点で好ましい。
また、特許文献1において開示したような3級アルキルエステル基を有する化合物のエステル交換反応は、酸触媒によって最も好適に触媒される。このことは、塩基性条件下で反応を進行させることが困難であることを意味する。一方、1級又は2級アルキルエステル基の場合は、酸ではない触媒(例えば、金属触媒や塩基触媒等)によっても反応が促進される。したがって、塩基性条件下での硬化反応を良好に進行させられる点でも好ましいものである。
このような、1級又は2級アルキルエステル基と水酸基との反応によって硬化を図る方法として具体的には、2以上の−COOR基を有する化合物(A−a)及び/又は1以上の−COOR(Rは、1級又は2級アルキル基)及び/又は水酸基を有する化合物(A−b)である化合物(A)を含有するものである。すなわち、1分子中にエステル交換反応に関与する官能基を2以上有する化合物(A)を必須とするものである。
本発明においては、2以上の−COOR基を有する化合物(A−a)及び/又は1以上の−COOR(Rは、1級又は2級アルキル基)及び/又は水酸基を有する化合物(A−b)であって、分子量3000以下の化合物(A)を使用することが、良好な硬化性を得るという点で、特に好ましい。これによって、アルキルエステル基が拘束されず、容易に水酸基に接近することができるため、反応が良好に進行すると推測される。
なお、このような低分子量である化合物を使用する場合には、硬化反応性に優れることに加えて、塗料の高固形分化(ハイソリッド化)を図ることができる点でも好ましい。塗料等の熱硬化性樹脂組成物の分野においては、塗装効率や排出溶媒量の低減という観点から、組成物中の固形成分の含有量を高めることが好まれている。この場合、固形分を増加させても粘性が上昇しにくい点で好ましい。スプレー等の一般的な塗装方法に適用できるような粘性であることが好まれている。すなわち、高固形分化しても、粘性が高くなりすぎないことが望まれる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、ポリオール(B)が上述した低分子量のものであると、粘性を低く維持したままで高固形分化することができる点でも好ましい。具体的には、このような低分子量であるエステル化合物を反応性希釈剤として使用することで、固形分55重量%以上とすることができる。
本発明において、2以上の−COOR(Rは、1級又は2級アルキル基)を含有する分子量3000以下の化合物(A)は、分子量として3000以下の化合物を少なくとも1含有することを意味する。すなわち、平均分子量という観点で3000以下であることを意味するのではなく、分子量3000以下の化合物を含有することを意味する。そして、分子量3000を超える2以上の−COOR(Rは、1級又は2級アルキル基)を含有する化合物の併用を妨げるものではない。
更に、上記化合物(A)は、分子量が2500以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましく、1000以下であることが最も好ましい。
本発明において、上記化合物(A)の分子量は、NMR、マススペクトル等の公知の化学分析によって化合物(A)の分析を行うことによって測定された値を意味する。
また、高固形分の塗料を得つつ、塗膜物性を良好なものとするためには、反応点となる官能基の数が多い化合物を化合物(A)として使用することが好ましい。このような観点から、化合物(A)においては、分子量/−COOR基数=300以下であることが好ましい。上記分子量/−COOR基数は、200以下であることがより好ましく、150以下であることが更に好ましい。
Rは、1級又は2級であれば特に限定されず、炭素数50以下のアルキル基を使用することができる。Rは、炭素数20以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましく、4以下であることが最も好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。これらは、直鎖状である必要はなく、1級又は2級アルキル基であれば分岐状のものであってもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、化合物(A)を組成物全量(固形物換算)に対して、1〜99重量%の割合で含有することが好ましい。上記含有量の下限は、5重量%であることがより好ましく、10重量%であることが更に好ましい。上記含有量の上限は、90重量%であることがより好ましく、80重量%であることが更に好ましい。
化合物(A)は、更に、アルキルエステル基以外の官能基を有するものであっても差し支えない。分子中に存在
していてもよい官能基としては、水酸基、アミド基、エステル基、エーテル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基等を挙げることができる。また、芳香環や脂環構造を有するものであっても差し支えない。
上記化合物(A)として使用することができる化合物としては特に限定されず、分子量が3000以下で水酸基との間でエステル交換反応を生じるアルキルエステル基を2以上有するものであればよいが、より具体的には、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
(A−1)活性メチレン基を有する化合物の誘導体として得られる化合物下記一般式(6)で表される活性メチレン基を有する化合物は、活性メチレン基の反応によって、各種化合物(例えば、ビニル基を有する化合物、ハロゲン基を有する化合物等)との反応によって、アルキルエステル基を有する化合物を得ることができる。このような反応によって得られた化合物も、本発明の化合物(A)として使用することができる。
(式中、R1は1級又は2級のアルキル基を表す。Xは、OR1基又は炭素数5以下の炭化水素基を表す。なお1分子中に2のR1が存在する場合、これらのR1は同一であっても相違するものであってもよい。)
上記R1はその構造を特に限定されるものではないが、メチル基、エチル基、ベンジル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基等の、公知のアルキル基を有するものを使用することができる。
このような活性メチレン基を有する化合物として具体的には、マロン酸エステル及びアセト酢酸エステル等を挙げることができる。これらの化合物をビニル化合物やハロゲン基含有化合物と反応させて得られた化合物を使用することができる。以下、これらについてそれぞれ説明する。
(A−1−1)活性メチレン基を有する化合物とビニル基含有化合物との反応によって得られた化合物活性メチレン基を有する化合物は、マイケル付加反応によって二重結合に付加することができる。このような活性メチレン基を有する化合物による一般的なマイケル付加反応を下記式で示す。
上記反応においては、活性メチレン基の2つの水素の両方がマイケル反応を生じることによって、下記一般式(7−1)で表される化合物を得ることもできる。
このような反応によって得られた化合物は、一般式(7)で表される構造及び/又は一般式(7−1)で表される構造を有するものであり、これは2以上のアルキルエステル基を有する化合物であることから、本発明の目的において特に好適に使用することができる。
特に、上記一般式のビニル化合物として、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を使用した場合は、
との反応を生じることとなる。上記一般式中、R1は、炭素数50以下の1級又は2級アルキル基を示す。R2は、水素又はメチル基を示す。R16は、特に限定されず、目的に応じて任意の官能基とすることができる。
上記反応においては、活性メチレン基の2つの水素の両方がマイケル反応を生じることによって、下記一般式(9)で表される化合物を得ることもできる。
上記一般式(9)で表される化合物は、原料の配合において(メタ)アクリル酸エステルと活性メチレン化合物とのモル比を調製することによって得ることができる。更に、これらのモル比を調製することで、上記一般式(8)で表される化合物と上記一般式(9)で表される化合物との混合物として得ることもできる。このような反応によって得られたエステル化合物は、
の構造で表される構成単位を分子中に有することとなる。
上述した反応において、原料として、2以上の不飽和結合を有するアクリル酸誘導体を使用することで、上述した一般式で表される構造(1)及び/又は(2)で表される構造を分子中に2以上有するエステル化合物とすることもできる。すなわち、当該官能基を有する、
の一般式で表される構造を有する化合物を本発明において好適に使用することができる。このような化合物は、エステル交換反応性が高く、多くのCOOR基を分子中に有するために良好な硬化性を得ることができる点で好ましいものである。上記一般式におけるn3,n4は、2〜12であることが最も好ましい。また、L,M,Cは、当該化合物の分子量が3000以下となるような構造であれば特に限定されず、水酸基、エステル基、エーテル基、等の任意の官能基を有していてもよい炭化水素基を表す。
また、上記「(A−1−1)活性メチレン基を有する化合物とビニル基含有化合物との反応によって得られた化合物」は、一分子中に2以上の不飽和結合を有する化合物を原料とするものを使用し、上記一般式(10)で表される構造及び/又は一般式(11)で表される構造を一分子中に2以上有するものであってもよい。
活性メチレン基を有する化合物エステルに由来する構造を有する化合物は、多く知られているが、上記構造を有する化合物は、マロン酸エステルまたはアセト酢酸エステルとビニル基の付加反応が進行し易く、合成が容易であり、出発原料を選ぶことでエステル基の数を調整できるため、硬化性能や硬化後の樹脂の性能を容易に調整できるという点で特に好ましい。具体的には、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を好適に使用することができる。
このような化合物は、各種の1以上の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体を原料として、活性メチレン基を有する化合物とのマイケル付加反応を行うことで得られるものである。上記「1以上の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体」としては特に限定されるものではないが、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
官能基数1の(メタ)アクリレートの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP−A)、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;ライトアクリレートBP−4EA、BP−10EA)ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP−4PA、BP−10PA等)を含む。なかでも、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP−4PA)、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP−A)等を好ましく用いることができる。
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
官能基数5以上の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
(A−1−2)活性メチレン基を有する化合物とハロゲン含有化合物との反応によって得られた化合物これによって得られた化合物もまた、本発明において好適に使用することができる。特に、エステル基のカルボニル炭素が直接ハロゲン化された化合物を挙げることができる。ハロゲンとしては特に限定されず、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。このような化合物としては、以下の一般式(15)で表される反応式によって得られる化合物を挙げることができる。
R
1、R
2は炭素数50以下の1級又は2級アルキル基(R
1とR
2は同一でも良い)、Xは炭素数5以下の炭化水素基又は−OR
1基、Yはハロゲン、nは1又は2
上述したような化合物(A−1)に該当する化合物の具体例を以下に示す。
式中Rは同一または異なる1級又は2級アルキル基を表す。n5は1から10を表す。
上記化合物(A−1)は、架橋点となる1級又は2級のアルキルエステルが分子中に3以上存在するものであることが好ましい。すなわち、分子中のアルキルエステル基の数が多いほど、硬化後の樹脂の架橋密度が高いものとなるため、硬化物の硬度が良好となり、優れた物性の硬化物が得られる点で好ましい。1級又は2級のアルキルエステルは、分子中に5以上あることがより好ましい。
(A−2)
下記一般式(31)で表される官能基を有する化合物
n=0〜20
R1は、炭素数50以下のアルキル基。
R3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
上記化合物(A)は、アルキルエステル基が上記一般式(31)で表されるような構造を有するものであってもよい。
上記一般式(31)で表されるエステル基は、理由は不明であるが、エステル交換反応の反応性が高い。このため、当該官能基を有するエステル化合物を化合物(A)の一部又は全部として使用することで、優れた硬化性能を有する熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
(一般式(31)の構造について)
上記一般式(31)の構造は、α置換カルボン酸エステル骨格を基本とするものである。
一般式(31)において、nは0〜20である。
nの下限は、1であることがより好ましい。nの上限は5であることがより好ましい。
更に、上記一般式(31)においてnの値が異なる複数の成分の混合物であってもよい。この場合nの平均値navは、0〜5であることが好ましい。navの下限は、1であることがより好ましい。navの上限は3であることがより好ましい。navの測定は、NMR分析によって行うことができる。さらに、nの値についてもNMR分析によって測定することができる。
nは、0であってもよいが、0を超える値であるほうが、より反応性が高い熱硬化性樹脂組成物を得ることができる点で好ましい。
すなわち、nが1以上であるほうが、より低い温度での硬化を図ることができ、これによって本発明の効果をより好適に発揮することができる。
上記一般式(31)において、R1としては炭素数50以下の1級又は2級のアルキル基を使用することができ、1級、2級のいずれであってもよい。
上記アルキルエステル基におけるアルキル基(すなわち、上記一般式におけるR1)は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1〜20の範囲内であり、更に好ましくは、1〜10の範囲内であり、更に好ましくは、1〜6の範囲内である。最も好ましくは、1〜4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
上記アルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、ベンジル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基等の、公知のアルキル基を有するものを使用することができる。
上記官能基(31)を有する化合物は、目的とする化合物の構造に対応したカルボン酸又はカルボン酸塩化合物に下記一般式(32)
(Xは、ハロゲン、水酸基を表す)
の構造を有するカルボニル基のα位に活性基Xが導入されたエステル化合物を、反応させることで得ることができる。これを一般式で表すと以下のようになる。
上記一般式において、一般式(33)で表される原料として使用することができる化合物は、上述した反応を生じることができるカルボン酸又はカルボン酸誘導体であれば任意のカルボン酸に対して行うことができる。カルボン酸誘導体としては、YがOM(カルボン酸塩)、OC=OR(酸無水物)、Cl(酸塩化物)等を挙げることができる。上記Y=OMのカルボン酸塩である場合、カルボン酸塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、亜鉛塩等を挙げることができる。なお、重合体の単量体として使用する場合は、不飽和基を有する化合物を一般式(33)で表される化合物として使用することができる。
上記一般式(32)で表される化合物としては、目的とする一般式(31)で表される構造に対応した骨格を有する化合物とすることができる。
また、上記一般式(32)で表される化合物は、その製造方法を特に限定されるものではない。上記一般式(32)で表される化合物のうち、n=0の化合物は、α位にXで表される活性基を有する化合物であり、各種αヒドロキシ酸、αハロゲン化カルボン酸を挙げることができる。具体的には、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、2−クロロプロピオン酸メチル、グリコール酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を挙げることができる。
上記一般式(32)で表される化合物のうち、n=1以上の化合物については、以下にその製造方法の一例を示す。
なお、以下に示す内容は製造方法の一例であり、本発明においては以下の製造方法によって得られた化合物に限定されるものではない。
例えば、α位にハロゲンを有するカルボン酸、その塩又はその誘導体と、α位にハロゲン又は水酸基を有するカルボン酸アルキルエステルとの反応によって得ることができる。これを一般式で表すと、下記のようなものとなる。
α位にハロゲンを有するカルボン酸、その塩又はその誘導体としては、カルボン酸のアルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩等)、酸無水物、酸クロライド等を挙げることができる。上記一般式(34)であらわされる化合物として具体的には、クロロ酢酸ナトリウム等を使用することができる。
α位にハロゲン又は水酸基を有するカルボン酸アルキルエステルとしては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、乳酸、等のα置換カルボン酸化合物のアルキルエステルを挙げることができる。上記アルキルエステルのアルキル基は特に限定されず、炭素数1〜50のアルキル基であればよい。
このようなアルキル基は、1級、2級であればよく、具体的にはメチル基、エチル基、ベンジル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基等を挙げることができる。
上記反応においては、X1とX2とを別種のものとすることが好ましい。これらを別種の官能基として反応性が相違するものとし、X1が未反応で残存するよう官能基の組み合わせを選択することが好ましい。具体的には、X1がブロモ基、X2がクロロ基の組み合わせが特に好ましい。
また、上記反応において2種の原料の混合比を調整することで,nの値を調整することができる。上記反応においては、一般に相違するnを有する複数種の化合物の混合物として得られる。上記一般式(31)の構造を有する化合物は精製することで、nが特定の値を有するもののみを使用してもよいし、nの値が相違する複数種の化合物の混合物であってもよい。
上記一般式(31)で表される化学構造は、上記一般式(32)で表される化合物を、各種カルボン酸化合物と反応させることで形成させることができる。したがって、2以上のカルボキシル基を有する化合物又は1のカルボキシル基を有する化合物及び水酸基を有する化合物に対して、上記一般式(32)で表される化合物を反応させた化合物を本発明において好適に使用することができる。
上記化合物は、本発明の熱硬化性樹脂組成物において使用するには、2以上の官能基を有する化合物であることが好ましく、2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、カルボキシル基及び水酸基を有するヒドロキシカルボン酸等を使用することができる。
各種のポリカルボン酸は、ポリエステル原料、ポリアミド原料、中和剤、合成原料その他の多くの用途において幅広く安価に提供される汎用原料である。このようなポリカルボン酸を公知の方法によって上述した一般式(31)で表される官能基に変換した化合物も本発明において使用することができる。
このような化合物を一般式(31)で表される官能基を有する化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。また、エステル化することで有機溶剤への相溶性が良くなり好適に使用することができるという点で好ましい。
ここで使用するポリカルボン酸としては特に限定されず、例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、ブタンテトラカルボン酸、メタントリカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;
グリコール酸、クエン酸、乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;
等を挙げることができる。
なお、このような化合物の一例として、ポリカルボン酸としてクエン酸を使用して、上述した反応を行った場合の化合物の一般構造を以下に示す。
(A−3)
下記一般式(41)で表される官能基及び/又は下記一般式(42)で表される官能基を有する化合物
(上記一般式(41)、一般式(42)のいずれにおいても、R
1は炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基)
すなわち、COOR基が上記一般式(41)で表されるような構造及び/又は一般式(42)で表されるような構造を有するものであってもよい。また、上記一般式(41)、一般式(42)で表される構造においては、−COOR基に加えて、水酸基も有する化合物であることから、このような官能基を1有する化合物であれば、エステル交換反応による架橋を生じることができる。但し、より好適な硬化性能を得るという点からは、COOR8基が上記一般式(41)で表されるような構造及び/又は一般式(42)で表されるような構造を2以上有するものであることが好ましい。
上述した構造を有する化合物は、構造中に水酸基を有する。当該水酸基もまたエステル交換反応に寄与すると推測される。このため、上記一般式(41)で表されるような構造及び/又は一般式(42)で表されるような構造を分子中に1有する化合物であれば、熱硬化性を有するものとすることができる。但し、より好適な硬化性能を得るためには、当該構造を2以上有するものであることが好ましい。
更に、上記一般式(41)で表されるような構造及び/又は一般式(42)で表されるような構造を分子中に有する化合物は、エステル交換反応性が高く、この点で好ましいものである。
上記アルキルエステル基におけるアルキル基(すなわち、上記一般式におけるR1)は、炭素数が50以下の1級又は2級アルキル基であるが、より好ましくは炭素数1〜20の範囲内であり、更に好ましくは、1〜10の範囲内であり、更に好ましくは、1〜6の範囲内である。最も好ましくは、1〜4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
上記アルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、ベンジル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基等の、公知のアルキル基を有するものを使用することができる。
上記一般式(41)におけるR2基は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、またはベンゼン環、シクロへキシル環のような環状構造を含んでいてもよい(炭素鎖1〜50)。なかでも、原料が安価であり、反応性において優れる点でエチレン基であることが特に好ましい。
上記一般式(41)で表される官能基を有するエステル化合物の製造方法としては特に限定されないが、アルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物に対して、エポキシ化合物を反応させる方法を挙げることができる。これを一般式で表すと下記のような反応となる。
上記反応において、使用するアルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物は、例えば、下記反応のような、酸無水物とアルコールとの反応で製造することができる。
上記一般式(52)で表される反応における原料である酸無水物としては特に限定されず、例えば、環状構造を持つコハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、安息香酸無水物、イタコン酸無水物等の各種二塩基酸の無水物を使用することができる。上記一般式(52)で表される反応は周知の一般的な反応であり、その反応条件などは一般的な条件によって行うことができる。
なお、上記一般式(51)で表される合成方法において使用されるアルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物は、上記一般式(52)の方法で得られたものに限定されず、その他の方法で得られたものであっても差し支えない。
上記一般式(51)で表される合成方法においては、エポキシ化合物を必須成分として使用する。上記エポキシ化合物は、特に限定されず、任意のものを使用することができる。
例えば、エピクロルヒドリンを使用すれば、これをフェノール化合物、カルボン酸化合物、水酸基含有化合物等と反応させることで、種々の骨格を有する化合物に対してエポキシ基を導入することができる。このような任意のエポキシ化合物に対して、上述した反応を行うことで、上述した一般式(41)で表される官能基を有する化合物を得ることができる。このような反応の一般式を以下に示す。
更に、上述したエポキシ化合物は、環状エポキシ化合物であってもよい。
すなわち、環状エポキシ化合物をエポキシ化合物として使用した場合、下記反応によって、一般式(42)で表される構造を有する化合物を得ることができる。
上述した一般式に使用することができる脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、3´,4´−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等を挙げることができる。
一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物は、上述したような製造方法によって得ることができる。
このような官能基を2以上有する化合物や、このような官能基及び水酸基を有する化合物は、エステル交換反応を硬化反応とする樹脂組成物の成分として好適に使用することができる。
一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物は、硬化性樹脂組成物における硬化性官能基として使用するものである。したがって、2以上の官能基を有する化合物であることが好ましい。より具体的には、上記一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を2以上有するものであってもよいし、上述した一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基で表される官能基に加えて、更に、水酸基等を有するものであってもよい。
上述したように、各種エポキシ化合物に対して、一般式(51)で表される反応又は一般式(54)で表される反応を行うことによって、上記一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を導入することができる。
したがって、公知のエポキシ化合物に対して、上記一般式(54)で表される反応を行うことで得られた化合物も、本発明において使用することができる。
このような反応に使用することができるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族系多官能液状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールの誘導体エポキシ樹脂、ナフタレン骨格又は脂環式骨格含有ノボラック系エポキシ樹脂等が挙げられ、オキシラン環がグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂などを挙げることができる。
上記エポキシ化合物は、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。
更に、上述したようにカルボン酸又はその誘導体に対して一般式(53)で表される反応を行うことによって、エポキシ化合物を得ることができる。
そして、当該エポキシ化合物に対して、上記一般式(51)で表される反応を行うことで、一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物を得ることができる。
したがって、各種のポリカルボン酸やヒドロキシカルボン酸に対して上述した反応を行うことによって、このような官能基を有する化合物や、このような官能基及び水酸基を有する化合物を得ることができる。
上記反応によって一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物とする際の原料とすることができるポリカルボン酸としては、特に限定されず例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、上記一般式(31)の構造を有する化合物を得る際の原料として記載した各種ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
更に、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸も挙げることができる。
このような化合物の具定例として、例えば、以下に表すような構造を有する化合物を挙げることができる。
(A−4)多官能カルボン酸のアルキルエステル化物多官能カルボン酸又はその誘導体と、アルコールの反応によって得られる化合物も本発明のエステル化合物(A)として使用することができる。このような反応は、下記一般式で表すことができる。
各種の多官能カルボン酸は、ポリエステル原料、ポリアミド原料、中和剤、合成原料その他の多くの用途において幅広く安価に提供される汎用原料である。このような多官能カルボン酸を公知の方法によってアルキルエステル化した化合物も本発明において使用することができる。エステル化は、上述した炭素数50以下の1級又は2級アルキル基によるものとすることができる。
このような化合物をエステル化合物(A)として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。また、エステル化することで有機溶剤への相溶性が良くなり好適に使用することができるという点で好ましい。
ここで使用する多官能カルボン酸としては特に限定されず、例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。より具体的には、上記一般式(31)の構造を有する化合物を得る際の原料として記載した各種ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。
本発明においては、上述した多官能カルボン酸のアルキルエステル化の方法は特に限定されるものではなく、アルコールとの脱水縮合等の公知の方法を適用することができる。また、原料としてはこれらの化合物の酸無水物を使用しても良い。
上記(A−1)〜(A−4)に該当する化合物において、水酸基及びアルキルエステル基の両方を有する化合物は、自己架橋性を有する点で、好ましいものである。同一化合物中にこれらの官能基の両方が存在することで、同一化合物間でエステル交換反応が生じることとなり、これによって、硬化性能がより良好なものとなる。(A−1)に該当する化合物で、分子中に水酸基を有する化合物としては、水酸基を有する化合物を原料として得られた、(A−1),(A−2)に該当する各化合物が挙げられる。更に、(A−3)に該当する化合物は、すべて水酸基を有する化合物に該当する。更に、(A−4)に該当する化合物においては、水酸基を有する多官能カルボン酸のアルキルエステル化物は水酸基を有する化合物に該当する。
本発明においては、上述した化合物(A)を2種以上併用して使用するものであっても差し支えない。
本発明において、2官能の化合物(A)及び3官能以上の化合物(A)を併用することが好ましい。このような組成とすることで、樹脂組成物としての低粘度化又は相溶性の向上といった効果が得られやすく、熱硬化膜の架橋密度も向上しやすい、という点で好ましい。この場合、混合割合は、2官能の化合物(A):3官能以上の化合物(A)=1:9〜9:1 (重量比)の割合で混合することが好ましい。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、水酸基数に対して、エステル化合物(A)におけるエステル基は任意に配合できるが、1〜200%(個数比)であることが好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物が、2以上の水酸基を有する化合物(A)を配合するものである場合、ポリオールとしては、ポリイソシアネート硬化剤やメラミン樹脂等を使用した従来の熱硬化性樹脂組成物において使用されてきたものをそのまま使用できるという利点を有する。
上記化合物(A)を使用する場合、以下で詳述するポリオール化合物は、水酸基価が1〜300mgKOH/gであることが好ましい。
また、上記(A)を使用する場合、これと組み合わせて使用されるポリオール樹脂(B)は、重量平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。これによって、塗装等の工程を容易に行うことができる点で好ましい。上記下限は、2000であることがより好ましく、3000であることが更に好ましい。上記上限は、800000であることがより好ましく、700000であることが更に好ましい。
(B)ポリオール本発明においては、上述した化合物(A)に加えて、ポリオール(B)を含有するものである。これによって、分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物(B)と上述したエステル化合物(A)との反応を生じさせ、塗膜を効率よく硬化させるものである。
このような化合物(B)としては特に限定されず、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、等を挙げることができる。これらのうち、2以上を同時に使用するものであってもよい。なかでも、アクリルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを使用することが特に好ましい。更に、低分子量ポリオールを使用することもできる。ここで使用されるアクリルポリオール及び/又はポリエステルポリオールは、塗料分野において汎用される樹脂を使用することができる。また、上記ポリオール(B)が、上述したアルキルエステル基を有する重合体であっても差し支えない。以下、これらについて詳述する。
(B−1)アクリルポリオールアクリルポリオールは、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b1)及び上記(b1)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b2)を、公知の方法により共重合することによって製造することができる。より具体的には、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法、水溶液重合法、等の重合方法を挙げることができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(b1)は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。水酸基含有重合性不飽和モノマー(b1)としては、特に限定されない。このような水酸基含有ビニル単量体として特に代表的なものを以下に例示する。2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテルもしくは6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルのような、種々の水酸基含有ビニルエーテル類;またはこれら上掲の各種のビニルエーテルと、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテルもしくは6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテルのような、種々の水酸基含有アリルエーテル;またはこれら上掲の各種のアリルエーテルと、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物;あるいは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような、種々の水酸基含有(メタ)アクリレート類;またはこれら上掲の各種の(メタ)アクリレートと、ε−カプロラクトンの付加反応主成分などである。
上記アクリルポリオールがアルキルエステル基を有するものである場合、エステル交換反応を生じやすいアルキルエステル基であることが好ましい。このようなアルキルエステル基を以下に詳述する。上記アクリルポリオールがアルキルエステル基を有するものである場合、下記一般式(4)で表される単量体を一部又は全部の構成単位とする重合体であることが好ましい。
n1:1〜10 (式中、R4、R5,R6は、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R7−[COOR8]n1で表される構造。 R7は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。 R8は、炭素数50以下のアルキル基。 上記一般式(4)で表される化合物は、R7−[COOR8]n1基が下記一般式(4−1)のラクトン構造であってもよい。)
(Rxは、分岐鎖を有していてもよい炭素数2〜10の炭化水素基)
上記一般式(4)で表される単量体は、1級又は2級アルキルエステルを有するものである。このような単量体に由来する1級又は2級アルキルエステル基は、水酸基との反応を生じやすく、このため本発明の目的を充分に達成することができる。
このような化合物は、不飽和結合による重合反応によって重合体を得ることができる。このようにして得られた重合体は、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化型樹脂組成物に使用した場合、不飽和結合の重合に基づいて形成された主鎖と、アルキルエステル基とが連結基を介して離れて存在している。このため、アルキルエステル基が比較的自由に動くことができる。このため、アルキルエステル基と水酸基とが近づきやすくなり、エステル交換の反応性が向上することが本発明者らによって見いだされた。このようにエステル交換反応の反応性が向上することで、短時間硬化や硬化温度の低下を実現することができ、エステル交換反応による熱硬化型樹脂組成物の有用性を高めることができる。
また、アルキルエステル基がt−ブチルエステル基である場合、加熱硬化時に気体成分が発生する。t−ブチル基が脱離反応によりイソブテンとなったものと推測されるが、これによって、硬化樹脂中に気泡が生じて、外観悪化、強度低下等の種々の問題を生じる場合があることが知られていた。本発明においては、1級または2級のアルキルエステルを有するものであることから、このような問題が改善したものである。なお、このような観点から、本発明における組成物は、t−ブチル基を有さないことが好ましいものであるが、上述した問題を生じない範囲でt‐ブチル基を有することは差し支えない。
上述した本発明の不飽和基含有エステル化合物を使用すると、硬化中の塗膜粘度が低下することで発泡が抑制され、上述した問題が大幅に改善されると推測される。この点でも本発明は好適な効果を有するものである。
上記不飽和基含有エステル化合物においては、アルキルエステル基は1級又は2級であれば、限定されることはない。
上記アルキルエステル基のアルキル基としては特に限定されず、メチル基、エチル基、ベンジル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基等の、公知のアルキル基を有するものを使用することができる。なお、アルキル基は炭素数50以下のものとすることが好ましい。上記アルキル基は、エステル交換反応中にアルコールとして生成され、揮散することが好ましいため、アルキル基としては炭素数が20以下のものであることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、硬化反応において揮発するアルコールの沸点が300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
上記アルキルエステル基におけるア
ルキル基(すなわち、上記一般式におけるR5)は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1〜20の範囲内であり、更に好ましくは、1〜10の範囲内であり、更に好ましくは、1〜6の範囲内である。最も好ましくは、1〜4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
また、上記アルキルエステル基がラクトン基となる場合も本発明に包含される。このようなラクトン基のエステル基も本発明のエステル交換反応を生じることができ、硬化反応に利用することができる。このような化合物は上記(4−1)の化学構造を有するものである。上記一般式(4)で表される構造としてより具体的には、例えば、
n2:1〜10 (式中、R9は、H又はメチル基。 R10は、主鎖の原子数が48以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。R1は、1級又は2級アルキル基。)で表されるものが例示できる。このような化合物は(メタ)アクリル酸の誘導体であり、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を原料として使用する公知の合成方法によって得ることができる。
上記R1の主鎖の原子数は、40以下であることがより好ましく、30以下であることが更に好ましく、20以下であることが更に好ましい。R10の主鎖に含まれてもよい原子としては特に限定されず、炭素原子のほかに酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等を有するものであってもよい。更に具体的には、R10の主鎖中には、アルキル基のほかにエーテル基、エステル基、アミノ基、アミド基、チオエーテル基、スルホン酸エステル基、チオエステル基、シロキサン基等を有するものであってもよい。
上記一般式(5)で表される化合物の具体例を、以下に(B−1−1)〜(B−1−4)として示す。
(B−1−1) 上記一般式(5)で表される構造として更に具体的には、例えば、下記一般式(12)で表される化合物等を挙げることができる。
(式中、R20は、炭素数1〜50のアルキル基。 R21は、主鎖の原子数が44以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。 R22は、H又はメチル基。 R23は、1級又は2級のアルキル基。 R24は、H又はメチル基。 n7は、0又は1。 n8は、1又は2。)
上記一般式(12)で表される化合物は、分子中に不飽和結合を有するマロン酸エステルやアセト酢酸エステル等の活性アニオンを生じる化合物と、アルキルエステル基を有する不飽和化合物との反応によって合成された化合物である。
すなわち、マロン酸エステルやアセト酢酸エステルは、カルボキシ炭素に挟まれたメチレン基を有しており、このメチレン基はアニオン化されやすく、アニオン反応を容易に生じるものとして広く知られている。このようなマロン酸エステルやアセト酢酸エステルのアルキル基中に不飽和結合を有する化合物(例えば、マロン酸やアセト酢酸と、以下で「水酸基含有単量体」として詳述する水酸基を有する不飽和単量体とのエステル化合物)を、不飽和基を有するアルキルエステル化合物と反応させることによって、不飽和基とアルキルエステル基の両方を有する化合物を合成することができる。
このような構造を有する化合物は、広く汎用される原料を用いてアルキルエステル基のみを容易に変更でき、結果、硬化反応性を容易に調整できる。また、活性メチレン基への反応率を変えることでも硬化反応性を調整できるという点で特に好ましいものである。
上記反応で使用する「不飽和基を有するアルキルエステル化合物」として使用できる化合物は特に限定されず、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、メチレンマロン酸アルキルエステル、不飽和基を有するラクトン化合物(例えば、γ-クロトノラクトン、5,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−オン)等を使用することができる。
当該反応は、塩基性条件下で行うことができ、例えば、アルカリ金属塩のクラウンテーテル存在下での有機溶媒中での反応等によって行うことができる。このような合成反応の一例を以下に示す。
(B−1−2)上記一般式(5)で表されるアルキルエステル化合物は、この化合物に対応したカルボン酸のエステル化によって得ることもできる。すなわち、下記一般式(5−1)で表されるような化合物は、上記一般式(5)で表されるアルキルエステル化合物に対応したカルボン酸である。
n2:1〜10 (式中、R9は、H又はメチル基。 R10は、主鎖の原子数が48以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。)
上記一般式(5−1)で表される化合物として、公知の化合物が存在している。このような公知の化合物を通常のエステル化反応(例えば、目的とするアルキルエステルのアルキル基に対応したアルコールとの反応)を行うことによって、本発明の不飽和基含有エステル化合物とすることもできる。
以上に例示した方法で合成することができる化合物の具体的な化学構造の例を以下に示す。なお、本発明は以下で例示する化合物に限定されるものではない。
(上記一般式中、Rは、1級又は2級アルキル基を表す)
上記一般式で表される化合物においても、一般式におけるRは、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1〜20の範囲内であり、更に好ましくは、1〜10の範囲内であり、更に好ましくは、1〜6の範囲内である。最も好ましくは、1〜4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
(B−1−3)
上記一般式(5)で表される化合物は、下記一般式(31)で表される官能基及び不飽和基を有する化合物であってもよい。
n=0〜20
R1は、炭素数50以下のアルキル基。
R3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
すなわち、(A−2)において詳述した一般式(31)で表される構造と不飽和基を有する化合物を使用することができる。
具体的には例えば、上記一般式(32)で表される化合物を(メタ)アクリル酸と反応させると、下記一般式(36)で表される化合物が得られる。
(式中、R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、水素又はメチル基。
nは、1〜20)
その他、各種不飽和基を有する化合物を上記一般式(32)で表される化合物と反応させることで得られた化合物を使用することができる。
(B−1−4)
上記一般式(5)で表される化合物は、下記一般式(41)で表される官能基及び/又は下記一般式(42)で表される官能基、並びに、不飽和基を有する化合物であってもよい。
(上記一般式(41)、一般式(42)のいずれにおいても、R
1は炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基)
すなわち、一般式(5)で表される化合物において、COOR8基が上記一般式(41)で表されるような構造及び/又は一般式(42)で表されるような構造を有するものであってもよい。
上記アルキルエステル基におけるアルキル基(すなわち、上記一般式におけるR1)は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1〜20の範囲内であり、更に好ましくは、1〜10の範囲内であり、更に好ましくは、1〜6の範囲内である。最も好ましくは、1〜4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
上記アルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、ベンジル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基等の、公知のアルキル基を有するものを使用することができる。
上記一般式(41)におけるR2基は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、またはベンゼン環、シクロへキシル環のような環状構造を含んでいてもよい(炭素鎖1〜50)。なかでも、原料が安価であり、反応性において優れる点でエチレン基であることが特に好ましい。
上記一般式(41)で表される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(43)で表される化合物を挙げることができる。
(式中、R
1は炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基。
R
3は、水素又はメチル基。)
上記一般式(43)で表されるエステル化合物のうち、下記一般式(45)で表されるエステル化合物がより好ましい。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(b1)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b2)としては、例えば、下記モノマー(i)〜(xix)等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、等
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー
(ix)ビニル化合物:N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等
(xi)含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等
(xii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等
(xiii)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等
(xiv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート
(xv)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等
(xvi)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等
(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等
(xviii)紫外線安定性重合性不飽和モノマー:4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等
(xix)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、炭素数約4〜約7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等
本明細書において、「重合性不飽和基」は、ラジカル重合、またはイオン重合しうる不飽和基を意味する。上記重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
アクリルポリオール(B−1)を製造する際の水酸基含有重合性不飽和モノマー(b1)の割合は、モノマー成分の合計量を基準として、0.5〜50重量%が好ましい。このような範囲内とすることで、適度な架橋反応を生じさせることができ、優れた塗膜物性を得ることができる。上記下限は、1.0重量%であることがより好ましく、1.5重量%であることが更に好ましい。上記上限は、40重量%であることがより好ましい。
アクリルポリオール(B−1)の水酸基価は、形成される塗膜の耐水性等の観点から、1〜200mgKOH/gであることが好ましい。上記下限は、2mgKOH/gであることがより好ましく、5mgKOH/gであることが更に好ましい。上記上限は、180mgKOH/gであることがより好ましく、170mgKOH/gであることが更に好ましい。
このようなアクリルポリオール(B−1)としては、市販のものを使用することもできる。市販のものとしては特に限定されず、例えば、DIC株式会社品のアクリディックA−801−P、A−817、A−837,A−848−RN、A−814,57−773、A−829、55−129、49−394−IM、A−875−55、A−870、A−871、A−859−B、52−668−BA、WZU―591、WXU−880、BL−616、CL−1000、CL−408等を挙げることができる。
(B−2)ポリエステルポリオールポリエステルポリオール(B−2)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物が挙げられる。上記酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等、並びにそれらの無水物及びエステル化物を挙げることができる。
上記脂肪族多塩基酸並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、上記脂肪族化合物の酸無水物及び上記脂肪族化合物のエステル化物、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;上記脂肪族多価カルボン酸の無水物;上記脂肪族多価カルボン酸の炭素数約1〜約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物であることが好ましい。
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基とを有する化合物、上記化合物の酸無水物及び上記化合物のエステル化物が挙げられる。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;上記脂環族多価カルボン酸の無水物;上記脂環族多価カルボン酸の炭素数約1〜約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が好ましく、そして1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物がより好ましい。
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、上記芳香族化合物の酸無水物及び上記芳香族化合物のエステル化物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;上記芳香族多価カルボン酸の無水物;上記芳香族多価カルボン酸の炭素数約1〜約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、及び無水トリメリット酸が好ましい。
また、上記酸成分として、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノ
レン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,1,1−トリメチロールプロパン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;上記3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
また、上記アルコール成分として、上記多価アルコール以外のアルコール成分、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXIONSpecialtyChemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
ポリエステルポリオール(B−2)は、特に限定されず、通常の方法に従って製造されうる。例えば、上記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、約150〜約250℃で、約5〜約10時間加熱し、上記酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応を実施することにより、ポリエステルポリオール(B−2)を製造することができる。
上記ポリエステルポリオールは、市販の樹脂を使用することもできる。使用することができる市販のポリエステル樹脂としては、アラキードシリーズ(商品名、荒川化学工業社製)、バイロンシリーズ(商品名、東洋紡社製)、ベッコライトシリーズ(DIC社製)、アデカニューエースシリーズ(ADEKA社製)等を挙げることができる。
上記ポリオール(B)は、上述したアクリルポリオール、ポリエステルポリオールである場合、その分子量を特に限定されるものではないが、例えば、重量平均分子量が3,000〜300,000であることが好ましい。上記ポリオール(B)の重量平均分子量の上限は、100,000であることがより好ましく、50,000であることが更に好ましく、30,000であることが更に好ましい。上記ポリオール(B)の重量平均分子量の下限は、5,000であることが更に好ましい。
(B−3)低分子量ポリオール本発明において使用することができるポリオール(B)としては、2以上の水酸基を有する低分子量ポリオール化合物も挙げることができる。ここで使用することができる低分子量ポリオール化合物としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,1,1−トリメチロールプロパン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット、シクロデキストリン、セルロース等の3価以上のアルコール等を挙げることができる。なお、ここでいう「低分子量ポリオール」は、分子量が3000以下のものを意味する。ここでの分子量は、NMRや質量分析等の汎用的な化学分析によって化学構造を明らかにして、その化学構造に従って算出した値である。上記分子量は、2500以下であることがより好ましく、2000以下であることが最も好ましい。また、水酸基は立体障害の影響が小さい第1級のものであることが最も好ましい。
このような低分子量ポリオールを使用した熱硬化型樹脂組成物は、使用する成分である低分子ポリオールが汎用品として知られているものであり、安価で入手することができる。更に低分子ポリオールは水溶性が強く、水系での硬化を目的とする場合は架橋剤として好適に使用できる。近年では環境問題が叫ばれており、VOCの低減を進め、ハイソリッド化を実現する上では非常に重要な架橋剤として好適に使用ができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ポリオール(B)を組成物全量(固形物換算)に対して、1〜99重量%の割合で含有することが好ましい。上記含有量の下限は、5重量%であることがより好ましく、10重量%であることが更に好ましい。上記含有量の上限は、90重量%であることがより好ましく、80重量%であることが更に好ましい。
上記ポリオール(B)としては、アクリルポリオールやポリエステルポリオールのような樹脂と、低分子量ポリオールとを併用して使用するものであってもよい。特に、上記(A)成分として、分子量が低いものを使用した場合に、アクリルポリオール(B−1)及び/又はポリエステルポリオール(B−2)並びに低分子量ポリオール(B−3)を併用することが好ましい。低分子量ポリオールを使用することで、低分子量の(A)成分間に架橋鎖を生じさせることができ、これによって、高架橋密度の硬化物を得ることができ、これによって、硬化物の物性を向上させることができる点で好ましい。更に、組成物全体で、低分子量の成分の含有量を高くすることができる。このため、組成物の粘度を低粘度とすることができる。例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を塗料組成物とする場合には、スプレー塗装を行うことが可能な粘度に調整する必要がある。この場合には、最適な粘度とするために、有機溶媒を添加することが一般的である。上述したように、熱硬化性樹脂組成物の粘度を低粘度化することができれば、組成物のハイソリッド化を図ることができ、これによって溶媒の使用量を低減することができる、という利点を有する。
また、ポリエステルポリオールを上記(A)成分と組み合わせた熱硬化性樹脂組成物は、可撓性・光沢性・密着性に優れた皮膜を形成することができる、という点で好ましい。
上記アクリルポリオール(B−1)及び/又は上記ポリエステルポリオール(B−2)を低分子量ポリオール(B−3)と併用して使用する場合、配合割合は、〔(B−1)と(B−2)の合計量〕に対する(B−3)の重量%が、0.5〜50の範囲内であることが好ましい。このような範囲内とすることで、良好な硬化性能が得られる点で特に好ましい。
本発明において、上記化合物(A)とポリオール(B)とを混合した状態において、水酸基とアルキルエステル基の比は、1:100〜100:1であることが好ましい。このような割合であることで、良好な硬化性が得られる点で好ましい。
(C)エステル交換触媒本発明の熱硬化型樹脂組成物は、エステル交換触媒(C)を含有するものである。すなわち、エステル基と水酸基との間のエステル交換反応を効率よく生じさせ、充分な熱硬化性を得るために、エステル交換触媒(C)を配合する。
上記エステル交換触媒(C)としては、エステル交換反応を活性化させることができるものとして公知の任意の化合物を使用することができる。
具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、燐酸又はスルホン酸、ヘテロポリ酸などのような種々の酸性化合物;LiOH、KOH又はNaOH、アミン類、ホスフィン類などのような種々の塩基性化合物;PbO、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、酸化亜鉛、酢酸鉛、酢酸マンガン、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸パラジウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミナ、ジルコニウムアセチルアセトナート、酸化ジルコニウム、塩化鉄、塩化コバルト、塩化パラジウム、ジチオカルバミン酸亜鉛、三酸化アンチモン、テトライソプロピルチタネート、酸化チタン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、モノブチル錫オキサイドまたはモノブチル錫酸などのような種々の金属化合物;テトラメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムメチルカルボナートなどの4級アンモニウム塩等、テトラブチルホスホニウムブロミド、水酸化テトラブチルホスホニウムなどのホスホニウム塩等、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7などの強塩基等を挙げることができる。また、光や熱によって酸を発生させる光応答性触媒、熱潜在性触媒も使用することができる。更に、亜鉛クラスター触媒(例えば、東京化成工業株式会社製のZnTAC24(商品名)等を使用することもできる。
更に、上述した化合物のうち、2種以上を併用して使用するものであってもよい。
本発明においては、エステル交換触媒として金属化合物触媒を使用することが最も好ましい。当該金属化合物触媒は、金属種の選定や、その他の化合物との併用等によって、エステル交換反応性を得ることができる。更に、樹脂組成との組み合わせによって、適宜、必要な性能を得ることができる点で好ましい。
上記金属化合物触媒は、亜鉛、スズ、チタン、アルミ、ジルコニウム及び鉄からなる群より選択される少なくとも1の金属元素を含む化合物(C−1)であることが好ましい。このような化合物は、好適なエステル交換反応性を有する点で好ましい。
上記金属化合物としては、アニオン成分として、金属アセチルアセトネートを使用すると、同種金属化合物よりも優れたエステル交換能が得られる傾向がある点で好ましい。例えば、亜鉛アセチルアセトネートやジルコニウムアセチルアセトネートは、特に好適に使用することができる。
上記金属化合物を触媒として使用する場合、更に、有機リン化合物、尿素、アルキル化尿素、スルホキシド化合物、ピリジン及びピリジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1の化合物(C−2)を併用すると、触媒性能が向上する点でより好ましい。
これらの化合物を併用することで活性化された金属化合物を使用すると、上述した硬化開始温度及びゲル分率を得ることができる点で特に好ましいものである。
このような効果が得られる作用は明らかではないが、金属化合物に化合物(C−2)が配位することで、触媒活性を向上させているものと推測される。したがって、化合物(C−2)としては、金属化合物に配位することができるような化合物を選択することが好ましい。
上記有機リン化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスホン酸、有機ホスフィンオキシド、有機ホスフィン化合物並びにこれらの種々のエステル、アミド及び塩を挙げることができる。エステルは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、及び置換アリールのエステルであってよい。アミドは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、及び置換アリールのアミドであってよい。
これらのなかでも、ホスホン酸エステル、リン酸アミド及び有機ホスフィンオキシド化合物からなる群より選択される少なくとも1の化合物であることが特に好ましい。これらの有機リン化合物を使用すると、エステル交換触媒機能が最も良好なものとなる。さらに具体的には、トリフェニルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド、などの、有機ホスフィンオキシド化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリス(N,N−テトラメチレン)リン酸トリアミド等のリン酸アミド化合物、トリフェニルホスフィンスルフィド、トリブチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド等の有機ホスフィンスルフィド化合物、等を好適に使用することができる。
上記アルキル化尿素としては、特に限定されず、尿素、ジメチル尿素、ジメチルプロピレン尿素等を挙げることができる。なお、ジメチルプロピレン尿素等のように、環状構造を有するものであってもよい。
上記アルキル化チオ尿素としては、特に限定されず、ジメチルチオ尿素等を挙げることができる。
上記スルホキシド化合物としては、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等を挙げることができる。
上記ピリジン誘導体としては、キノリン、イソキノリン、ニコチン酸エステル等を挙げることができる。
本発明のエステル交換触媒は、化合物(C−1)と化合物(C−2)とを(C−1):(C−2)=100:1〜1:100(重量比)の割合で含有することが好ましい。このような割合で配合することで、特に好適な結果を得ることができる。上記下限は、50:1であることがより好ましく、10:1であることがさらに好ましい。上記上限は、1:50であることがより好ましく、1:10であることがさらに好ましい
上記化合物(C−1)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01〜50重量%の割合で含有させることが好ましい。
上記化合物(C−2)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01〜50重量%の割合で含有させることが好ましい。
更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、酸触媒を使用しなくても良好な硬化反応を生じさせることができることから、塩基性化合物を添加した熱硬化性樹脂組成物とすることができる点でも好ましい。
すなわち、顔料分散剤等の添加剤としてアミン化合物が使用される場合がある。更に、塗料を水性化する場合は、樹脂中にカルボン酸基、スルホン酸基等の酸基を導入し、これをアミン化合物等で中和して水溶化することが広く行われている。この場合、酸性触媒と併用することは困難であった。このことは、エステル交換触媒を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物の水性化の妨げとなる問題であった。本発明においては、塩基性条件下でも硬化させることができるため、水性化を図ることができる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物を溶剤系塗料組成物として使用する場合であっても、多層塗膜のうちの一部の層として水性塗料を組み合わせて使用する場合がある。この場合、多層塗膜を同時に加熱硬化する場合、多層塗膜を形成するその他の層からアミンやアンモニア等が発生する場合がある。このような場合であっても、良好な硬化を行うことができるという点で好ましいものである。
上記エステル交換触媒(C)の使用量は、化合物(A)とポリオール(B)との重量の合計に対して、0.01〜50重量%であることが好ましい。このような範囲内のものとすることで、良好な硬化反応を低温で行うことができる点で好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、その形態を特に限定されるものではないが、有機溶媒系又は水系の形態を有するものであることが特に好ましい。これによって、薄膜塗装可能であり、低温硬化を行うことができる点で好ましい。水系としては、水溶性、水分散性のいずれであってもよく、水に加えて、エタノール、メタノール、アルコール系、グリコール系、エーテル系、ケトン系等の水と任意の割合で混合することができる水性溶媒を含有するものであってもよい。
有機溶媒系の熱硬化性樹脂組成物は、各種有機溶媒中に上記成分が溶解又は分散した状態の組成物である。使用することができる有機溶媒は特に限定されず、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、等のケトン、トリクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン等の塩素系炭化水素、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、シクロヘキサノン等の公知の任意のものを使用することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、溶剤系の組成物である場合、高固形分の組成物とすることができる。具体的には、顔料等の添加剤を含まず、成分(A)〜(C)及び溶媒のみを含有する状態で、固形分55重量%以上において、25℃における粘度が200mPa・s以下という条件を満たすものとすることができる点で好ましいものである。
なお、上記「成分(A)〜(C)及び溶媒のみを含有する状態で、固形分55重量%以上において、25℃における粘度が200mPa・s以下」とは、熱硬化性樹脂組成物を構成する樹脂成分のみで測定した粘度が上述した範囲を満たすものを意味し、このような樹脂組成物のみを含有する熱可塑性樹脂組成物であってもよいし、このようなパラメータを満たす樹脂組成物に顔料を含む各種添加剤を配合したものであってもよい。
また、2液型の樹脂組成物として、化合物(A)を含む溶液と、ポリオール(B)を含む主剤溶液とを組み合わせて、使用直前に混合して使用するものであってもよい。このようにすることで、保存安定性が良好なものとなる点で好ましい。また、化合物(A)及びポリオール(B)を含む溶液に、エステル交換触媒(C)を含む触媒溶液を混合するタイプの2液型とすることもできる。
更に、粉体塗料等の、粉体形状の熱硬化性樹脂組成物とする場合は、化合物(A)、ポリオール(B)及びエステル交換触媒(C)を通常の方法によって乾燥・混合・粉砕することによって製造することができる。
本発明の熱硬化性組成物は、上記(A)〜(C)の成分に加えて、更に、塗料や接着剤の分野において一般的に使用されるその他の架橋剤を併用して使用するものであってもよい。使用できる架橋剤としては特に限定されず、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シラン化合物等を挙げることができる。また、ビニルエーテル、アニオン重合性単量体、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体等を併用するものであってもよい。これらの併用した架橋剤の反応を促進させるための硬化剤を併用するものであってもよい。
なお、上述したその他架橋剤は必須ではなく、本発明の熱硬化性樹脂組成物はこれを含有しないものであっても、良好な硬化性を得ることができる点で好ましいものである。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、目的に応じて必要な場合には、非水分散樹脂(NAD)を含有するものであってもよい。但し、非水分散樹脂(NAD)は、必須ではなくこれを含有しないものであっても差し支えない。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性塗料、熱硬化性接着剤等の分野において好適に使用することができる。
熱硬化性塗料として使用する場合は、上述した各成分以外に、塗料分野において一般的に使用される添加剤を併用するものであってもよい。例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせを併用してもよい。
顔料を使用する場合、樹脂成分の合計固形分100重量%を基準として、好ましくは合計で1〜500重量%の範囲で含むことが好ましい。上記下限はより好ましくは3重量%であり、更に好ましくは5重量部である。上記上限はより好ましくは400重量%であり、更に好ましくは300重量%である。
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、硫酸バリウム及び/又はタルクが好ましく、そして硫酸バリウムがより好ましい。
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム及びリーフィング型アルミニウムが含まれる。
上記熱硬化性塗料は、所望により、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、上記疎水性溶媒以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤をさらに含有するものであってもよい。
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、上記疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着する、上記疎水性部分同士が会合する等により増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記ポリアクリル酸系増粘剤は市販されており、例えば、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLASE−60」、「ACRYSOLTT−615」、「ACRYSOLRM−5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
また、上記会合型増粘剤は市販されており、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLRM−8W」、「ACRYSOLRM−825」、「ACRYSOLRM−2020NPR」、「ACRYSOLRM−12W」、「ACRYSOLSCT−275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。
上記熱硬化性塗料を適用することができる被塗物としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器、等の家庭電気製品、建築材料、家具、接着剤、フィルムやガラスのコーティング剤等、様々な例を挙げることができる。自動車用塗料として使用する場合は、中塗り塗料、ベース塗料、クリヤー塗料等の任意の層の効果に用いることができる。
上記被塗物は、上記金属材料及びそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、また、塗膜を有する被塗物であってもよい。上記塗膜を有する被塗物としては、基材に所望により表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの等を挙げることができる。特に、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
上記被塗物は、上記プラスチック材料、それから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望により、表面処理、プライマー塗装等がなされたものであってもよい。また、上記プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
上記熱硬化性塗料の塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等が好ましい。塗装に際して、所望により、静電印加してもよい。上記塗装方法により、上記水性塗料組成物からウェット塗膜を形成することができる。
上記ウェット塗膜は、加熱することにより硬化させることができる。当該硬化は、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉により実施することができる。上記ウェット塗膜は、好ましくは約80〜約180℃、より好ましくは約100〜約170℃、そしてさらに好ましくは約120〜約160℃の範囲の温度で、好ましくは約10〜約60分間、そしてより好ましくは約15〜約40分間加熱することにより硬化させることができる。また、80〜140℃での低温硬化にも対応することができる点で好ましいものである。
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、塗料分野において使用する場合は平滑性や耐水性・耐酸性等の性能を有する充分な硬化性能が必要とされる。一方、接着剤や粘着剤等の分野において使用する場合は、塗料において要求されるほどの高い硬化性能は必要とされない。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、塗料として使用できるレベルのものとすることが可能であるが、このような水準に到達しない組成物であっても、接着剤や粘着剤等の分野においては使用できる場合がある。
本発明は、上述した熱硬化型樹脂組成物を三次元架橋することによって形成されたことを特徴とする硬化膜である。このような硬化膜は、塗料・接着剤として使用することができるような充分な性能を有したものである。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお文中、部は重量を表す。
(合成例1)エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート54部、n−ブチルアクリレート58部、炭酸カリウム38部、18−クラウン−6エーテル2部、テトラヒドロフラン112部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮し、モノマーAを得た。
(合成例2)エチレングリコールモノアセトアセタートモノメタクリラート54部、メチルアクリレート43部、炭酸カリウム33部、18−クラウン−6エーテル2部、テトラヒドロフラン97部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮し、モノマーBを得た。
(合成例3)n−ブチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB) 240部、ヒドロキシエチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO−250) 110部、 スチレン 30部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬 V−65) 25部を芳香族炭化水素(T−SOL 100)に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T−SOL 100) 250部及びシクロヘキサノン 250部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量7300、分散度2.05のポリマー溶液Aを得た。
(合成例4)n−ブチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)200部、モノマーB175部、ヒドロキシエチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルHO−250)90部、スチレン25部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬 V−65)25部を芳香族炭化水素(T−SOL100)に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T−SOL 100)490部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量9500、分散度1.99のポリマー溶液Bを得た。
(合成例5)トリメチロールプロパントリアクリレート40部、マロン酸ジメチル55部、炭酸カリウム56部、18−クラウン−6エーテル1.5部、テトラヒドロフラン95部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Aを得た。エステル化合物Aの分子量は、692.7である。
(合成例6)ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート40部、マロン酸ジメチル35部、炭酸カリウム56部、18−クラウン−6エーテル1.5部、テトラヒドロフラン75部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Bを得た。エステル化合物Bの分子量は、568.6である。
(合成例7)トリメチロールプロパントリアクリレート40部、マロン酸ジイソプロピル76部、炭酸カリウム56部、18−クラウン−6エーテル1.5部、テトラヒドロフラン116部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Cを得た。エステル化合物Cの分子量は、861.0である。
(合成例8)トリメチロールプロパントリアクリレート40部、マロン酸ジ−n−ブチル88部、炭酸カリウム56部、18−クラウン−6エーテル1.5部、テトラヒドロフラン128部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Dを得た。エステル化合物Dの分子量は、945.1である。
(合成例9)ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート52部、マロン酸ジメチル30部、炭酸カリウム56部、18−クラウン−6エーテル1.5部、テトラヒドロフラン82部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、沈殿物を濾過し、濾液を減圧下濃縮することで、エステル化合物Eを得た。エステル化合物Eの重量平均分子量は、1810である。
(合成例10)トリメチロールプロパントリアクリレート40部、マロン酸ジ−t−ブチル88部、炭酸カリウム56部、18−クラウン−6エーテル1.5部、テトラヒドロフラン128部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Fを得た。エステル化合物Fの分子量は、945.1である。
(合成例11)
アセト酢酸メチル40部、メチルアクリレート60部、炭酸カリウム48部、18−クラウン−6エーテル1.5部、テトラヒドロフラン100部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Gを得た。エステル化合物Gの分子量は、288.3である。
(合成例12)
コハク酸モノメチル190部、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(共栄社化学(株) エポライト100MF)201.5部にトリエチルベンジルアンモニウムクロリド、重合禁止剤を加え90℃で10時間以上反応させエステル化合物Hを得た。エステル化合物Hの分子量は、698.6である。
(合成例13)
マロン酸ジエチル16部、炭酸カリウム14部、テトラヒドロフラン60部を混合し、50℃に昇温した。クロロギ酸エチル12部を1時間で滴下し、70℃で10時間撹拌した。反応終了後、トルエン140部、10%食塩水100部を投入した。有機層を水100部で2回水洗したのち、減圧下濃縮し、エステル化合物Iを得た。エステル化合物Iの分子量は、232.2である。
(合成例14)
精留塔を具備した反応装置に、イソフタル酸118部、アジピン酸50部、ネオペンチルグリコール47部及びトリメチロールプロパン80部を仕込み、160℃まで昇温し、さらに160〜230℃まで3時間かけて徐々に昇温した。
次いで、230℃で30分間反応を続けた後、精留塔を分水器と置換し、内容部にキシレン13部を加え分水器にもキシレンを入れて、水とキシレンとを共沸させて水を除去し、酸価が10mgKOH/g以下になるまで反応後、冷却し、シクロヘキサノンで固形分を調整して樹脂固形分50%のポリエステル樹脂溶液であるポリエステルポリオールAを得た。得られたポリエステルポリオールAは、樹脂固形分として水酸基価122mgKOH/g、数平均分子量3,500を有していた。
なお、本実施例中、Mn(数平均分子量),Mw(重量平均分子量)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した、ポリスチレン換算分子量の値である。カラムはGPC KF−804L(昭和電工(株)製、ポリマー溶液A〜D)、または、KF−802(昭和電工(株)製、エステル化合物E)、溶剤はテトラヒドロフランを使用した。また、エステル化合物A〜Iは、化学分析によって目的の構造を有する化合物が得られていることを確認の上、そのような化合物の化学構造より分子量を算出した。
(塗料組成物の調製及び硬化条件)実施例1〜80、比較例1〜15表1〜11に示した各成分を混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、150℃で30分硬化を行った。
(評価方法)ゲル分率は、実施例で得られた皮膜をソックスレーを用いてアセトン還流中で30分間溶解を行い、皮膜の残存重量%をゲル分率として測定した。ゲル分率は0〜40%を実用に耐えられないものとして×とした。ゲル分率は40〜60%を一定の硬化が認められるものとして△とした。ゲル分率は60〜80%を実用に耐えるものとして○とした。ゲル分率は80〜100%を性能が優れているものとして◎とした。
キシレンラビングは、PETフィルムに実施例の熱硬化型樹脂を塗膜化し、キシレンを染み込ませた薬方ガーゼで10回擦り、表面を観察した。評価は実用に耐えられないものを×とし、実用に耐えられるものを○とし、更に性能が優れているものを◎とした。
塗膜外観は、PETフィルム上に実施例の熱硬化型樹脂を硬化後の膜厚が50〜60μmになるように塗膜化し、表面を観察した。評価は実用に耐えられるものを異常なしとし、外観不良がみられるものは異常内容を記載した。
剛体振り子試験器エーアンドディ社製剛体振り子試験器(型番 RPT−3000W)を用いて、昇温速度3℃/分で180℃まで昇温しその時の周期及び対数減衰率の変化を求めた。特に塗膜の硬化状態を確認するために用いた。振り子:FRB−100膜厚(WET):100μm
引張試験
熱硬化性組成物をDry膜厚100μmとなるように塗膜し、150℃で30分焼き付け、塗膜を得た。各塗膜を剥離し、長さ30mm×幅4mmの短冊状に切り出した。
サン科学社製レオメーター(型番 CR−500DX)を速度10mm/minの引張モードに設定し、短冊状の塗膜の引張試験を実施した。得られたS−S曲線より降伏点における引張強度および引張破断伸びを算出し、以下の基準にて評価した。
降伏点
◎:20MPa以上
○:10〜20MPa
×:10MPa以下
引張破断伸び
◎:100%以上
○:50〜100%
△:10〜50%
×:10%以下
実施例1〜13、比較例1〜12表1〜3に示した各成分を混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、150℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、及び調整液にて剛体振り子試験を行った。結果を表1〜3に示す。
表1〜3の結果から、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、良好な熱硬化性能を有するものであることが明らかである。また、エステル化合物を含有しない比較例1〜6、3級アルキルエステル化合物を使用した比較例7〜12においては、良好な硬化性能及び/又は塗膜外観を有する組成物が得られず、さらに、アミンの存在により硬化性能が大きく低下することが明らかである。
実施例14〜16表4に示した各成分を混合し、アプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、150℃で30分硬化を行った。その後、ゲル分率、キシレンラビング試験、及び調整液にて剛体振り子試験を行った。結果を表4に示す。
上述した各実施例の結果から本発明の熱硬化性樹脂組成物は、良好な硬化性能を有することが明らかである。更に、表4の結果から、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、アミン存在下でも問題なく硬化することが明らかである。
実施例17〜80、比較例13〜15上述した実施例1と同様の方法で組成物の調製、塗膜の形成を行い、評価を行った。結果を表5〜11に示す。
表5〜6の結果から、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ポリエステルポリオール樹脂を含有した場合においても良好な熱硬化性能を有するものであることが明らかである。
表7〜11の結果から、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、低分子量ポリオール(B−3)の併用、2官能と3官能以上のアルキルエステル基を有する化合物(A)の併用、その他の架橋剤との併用が可能であり、所望によりさらに良好な塗膜物性を得られるものであることが明らかである。
(実施例81の塗料の調製及び塗装方法)
2−エチルヘキシルメタクリレート(共栄社化学(株) ライトエステルEH)136部、モノマーB68部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート68部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート68部、スチレン114部、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸(共栄社化学(株) ライトエステルHO-MS(N))45部をモノマー混合液とし、開始剤として2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬(株) V−65)25部を芳香族炭化水素(T−SOL 100)に溶解し開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T−SOL 100)を500部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量8,500、分散度1.93のポリマー溶液Fを得た。
次いで、表12に示した熱硬化性組成物を作成し、105℃における固形分及び、25℃における粘度(E型粘度計:株式会社アタゴ製)を測定した。熱硬化性組成物について、厚さ0.8mmのダル鋼板上に乾燥後膜厚10μmとなるようにスプレー塗装し、150℃で30分焼き付けを行った。得られた塗膜に対し、塗膜状態の目視評価、ゲル分率、耐キシレンラビング性試験を実施した。結果を表12に示す。
上記実施例81の結果から、本発明の熱硬化性組成物をハイソリッドの組成物として使用した場合においても良好な塗装性、硬化性能、塗膜性能が得られることが明らかとなった。