JPWO2020171228A1 - 廃液固化剤および廃液固化方法 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、上記課題を解決するために、本発明の廃液固化剤は、(A)表面架橋された吸水性樹脂粉末と、(B)該表面架橋された吸水性樹脂粉末の表面に存在する水不溶性のカチオン性添加剤とを含む吸水性樹脂組成物を含有する。
上記課題を解決するために、本発明は、上記の廃液固化剤による廃液の固化方法を提供する。
上記課題を解決するために、本発明は、上記の廃液の固化方法で固化された廃液を容器ごと廃棄する、廃液の廃棄方法を提供する。
上記課題を解決するために、上記何れかの廃液固化剤が排出口を有する水不溶性容器で包装された廃液固化剤包装体を提供する。
上記課題を解決するために、本発明は、[(A)表面架橋された吸水性樹脂粉末と、(B)該吸水性樹脂粉末の表面に存在する水不溶性のカチオン性添加剤と、を含む吸水性樹脂組成物]を含有する廃液固化剤を提供する。以下、本発明についてさらに説明する。
吸水性樹脂とは、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性水不溶性の架橋重合体のことであり、非特許文献3に規定の吸水倍率(CRC)(NWSP241.0.R2(15))が5g/g以上で、非特許文献3に規定の可溶分(Extractables)(NWSP270.0.R2(15))が0〜50質量%、より好ましくは0〜25質量%、さらに好ましくは0〜20質量%、特に好ましくは0〜15質量%、最も好ましくは0〜10質量%のものを指す。なお、「NWSP」は非特許文献3の「Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015」を表し、EDANA(European Disposables And Nonwovens Association、欧州不織布工業会)とINDA(Association of the Nonwoven Fabrics Industry、北米不織布工業会)が、不織布及びその製品の評価法を米国および欧州で統一して共同で発行したものであり、吸水性樹脂の標準的な測定法を示すものである。
以下、より具体的に説明する。
本発明の廃液固化剤は、表面架橋された吸水性樹脂粉末が必須に使用される。廃液固化剤に使用される吸水性樹脂が表面架橋されていない場合、本発明の課題である迅速かつ均一な廃液のゲル化(実質的に非流動性ゲルへの廃液のゲル化)が達成されない。
本発明の廃液固化剤は、吸水性樹脂組成物を含有する。該吸水性樹脂組成物は(A)表面架橋された吸水性樹脂粉末と、(B)該吸水性樹脂粉末の表面に存在する水不溶性のカチオン性添加剤と、を含有する。本発明の吸水性樹脂組成物は、(A)上記(2)の表面架橋された吸水性樹脂粉末の表面に必須に(B)水不溶性のカチオン性添加剤を含むことが好ましい。吸水性樹脂粉末の表面に水不溶性のカチオン性添加剤を「含む」、或いは水不溶性のカチオン性添加剤が「存在する」とは、吸水性樹脂粉末の表面にカチオン性添加剤が付着している状態、吸水性樹脂粉末内部取り込まれたカチオン性添加剤の一部が吸水性樹脂粉末の表面に出現している状態など、カチオン性添加剤が吸水性樹脂粉末の表面に存在していることをいう。またカチオン性添加剤は吸水性樹脂粉末の表面の少なくとも一部に存在していればよく、好ましくは表面近傍に局在化していればよい。なお、水不溶性のカチオン性添加剤の存在状態は、蛍光X線で確認できる。具体的には、蛍光X線分析により、吸水性樹脂組成物中の金属カチオン量を測定することができ、必要に応じて粉砕や磨砕等の前処理を行った吸水性樹脂粉末の測定を行うことにより、吸水性樹脂粉末の表面に水不溶性のカチオン性添加剤が存在することを確認することができる。
(カチオン)
本発明の課題を解決するため、本発明でカチオン性添加剤は特定のカチオンを含む化合物であればよく、好ましく3価以上の金属カチオン、代表的にはアルミニウムカチオンを含む化合物であればよい。カチオン性添加剤がアルミニウムカチオンを含む無機系添加剤であり、カウンターアニオンは有機アニオンでもよく無機アニオンでもよいが、好ましくは無機アニオンをカウンターに持つ無機化合物であるカチオン性無機添加剤が使用される。
本発明の課題を解決するため、カチオン性添加剤は水不溶性である。なお、水不溶性とは、水難溶性も含み、具体的には水(23℃)に対する添加剤の溶解度が10g/水100g以下であり、好ましくは5g/水100g以下であり、さらには1g/水100g以下、0.1g/100g以下の順に好ましい。また、水不溶性のカチオン性添加剤はカチオン性微粒子であることが好ましい。水不溶性のカチオン性微粒子はコロイド状態(ゾル)やスラリー状態を含め水分散状態でもあってもよく、必要により界面活性剤や分散剤で水に分散させてもよい。カチオン性コロイダルシリカなどが好適に水不溶性のカチオン性微粒子として使用される。
本発明の課題を解決するため、カチオン性添加剤が微粒子として使用される場合、その粒径は50μm以下、30μm以下、10μm以下、5μm以下、2μm以下、1μm以下の順に好ましい。下限は10nm程度である。なお、カチオン性添加剤の粒径、特に体積平均粒子径は、「レーザー回折散乱法」(例えば、日機装社製、商品名:マイクロトラックMT3000II粒度分析計を使用して測定)で測定することができる。
本発明で好適に使用されるカチオン性添加剤として、カチオン性コロイダルシリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、アルミニウム塩から選ばれる1種以上の無機微粒子が挙げられる。これらのカチオン性添加剤として、カチオン性コロイダルシリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライトが特に好ましい。また、正電荷を帯びていることが好ましく、正電荷を帯びたカチオン性添加剤として、カチオン性コロイダルシリカ、ハイドロタルサイトが挙げられ、好適に使用することができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また以下の具体的な例示において複数例示されているときは、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
カチオン性コロイダルシリカとしては、二酸化ケイ素粒子表面をアルミニウムイオンで被覆されたカチオン性コロイダルシリカが使用できる。カチオン性コロイダルシリカとしては、アルミニウムイオンにより被覆されていることにより正電荷を帯びた微粒子であることが好ましい。また、ゼータ電位が正の値であり、通常は+60mV以下、好適には+5〜+55mVの範囲にあるカチオン性コロイダルシリカが好ましい。このような、カチオン性コロイダルシリカの製法は、特に限定はされないが、例えば特開平2−172812号公報に記載されている方法等、公知の製法が挙げられる。
更に、層間に有機化合物をインターカレーションしていても良く、吸水性樹脂等との混合性を高めるための表面処理が施されていても良い。
ゼオライトは、構造中にSiO4およびAlO4四面体(以下両者をまとめてTO4四面体と呼ぶ)が頂点酸素を共有し3次元に無限に連なった網目状構造を有する結晶性含水アルミノケイ酸塩である。
本発明に用いることが出来るゼオライトは、アルミニウムカチオンを含んでいればよく、天然ゼオライト及び合成ゼオライトのいずれを用いることも可能であるが、好ましくは商業的に安定に入手しうる合成ゼオライトである。具体的には、例えば、A型ゼオライト(Na12 (AlO2)12(SiO2)12・27H2O)、X型ゼオライトゼオライト(Na86 (AlO2)86(SiO2)106・264H2O) 、Y型ゼオライト(Na56(AlO2)56(SiO2)136 ・250H2O) 、L型ゼオライト(K9(AlO2)9(SiO2)27 ・22H2O)、オメガ型ゼオライト(Na6.8TMA1.6(AlO2)8(SiO2)28 ・21H2O 、TMA:tetramethyl-ammonium) 、ZSM−5((Na,TPA)3 (AlO2)3(SiO2)93・16H2O 、TPA:tetrapropyl-ammonium) 等が挙げられる。
本発明の水不溶性のカチオン性微粒子として、アルミニウム塩を用いることもできる。水不溶性のアルミニウム塩として、乳酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種が使用できる。なお、これらアルミニウム塩は、粉体として使用しても良いし、前駆体を水中で反応させて水分散体として調製したものをスラリーまたは粉体として使用しても良い。
本発明の吸水性樹脂組成物でカチオン性添加剤の添加量は、表面架橋された吸水性樹脂粉末に対して0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜4.5質量%であり、更に好ましくは0.1〜4.5質量%であり、より更に好ましくは0.1〜4質量%であり、特に好ましくは0.15〜3.5質量%である。
水不溶性カチオン性添加剤の添加量が0.01質量%未満では、迅速かつ均一な廃液の固化で十分な効果が得られないことがあり、5質量%を超えて添加しても添加量に見合うだけの効果は得られない。
本発明の廃液固化剤は表面架橋された吸水性樹脂粉末が主成分であることが好ましく、吸水性樹脂粉末の含有量は廃液固化剤中に50〜100質量%未満、好ましくは70〜99質量%、さらに好ましくは80〜98質量%とされ、吸水性樹脂粉末以外の成分として上記カチオン性添加剤が用いられる。
本発明の廃液固化剤は上記水不溶性カチオン性添加剤に加え、さらに好ましくは、本発明の課題をより解決するために、通液性の観点から、水溶性アルミニウム塩などの水溶性のカチオン性多価金属添加剤(水への溶解度が上記不溶性カチオン性添加剤以上の水溶性のカチオン性多価金属添加剤)を含んでも良い。また廃液固化剤は水を含んでいることが好ましい。その他、さらに、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、タンパク架橋剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールやポリエチレンイミンなどの親水性高分子、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を添加する等、種々の機能を付与する添加剤を含んでいてもよい。
本発明の廃液固化剤の製造方法は、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合することによって得られる架橋構造を有する吸水性樹脂粉末を必須とする粒子状廃液固化剤の製造方法であって、上記吸水性樹脂粉末の表面架橋前、表面架橋中、表面架橋後のいずれかに上記カチオン性添加剤を混合して、表面架橋された吸水性樹脂の表面にカチオン性添加剤を存在させる。
本発明の課題を解決するため、本発明の表面架橋された吸水性樹脂粉末、吸水性樹脂組成物、および吸水性樹脂組成物を含む廃液固化剤(以下、(5−1)〜(5−6)に共通して「廃液固化剤」と称する)は下記の物性を更に満たすことが好ましい。以下、代表的な物性は非特許文献3のNONWOVENS STANDARD PROCEDURES(2015年)で規定でき、同様の測定法は特許文献8,9にも記載されている。
本発明の廃液固化剤の吸収倍率(CRC)は生理食塩水に対して通常10g/g以上、好ましくは25g/g以上、より好ましくは30g/g以上、さらに好ましくは33g/g以上とされる。上限は特に問わないが、通常100g/g程度,50g/g程度で十分である。25〜50g/gの範囲に好適に調整される。吸収倍率(CRC)が低い場合、多量の固化剤が必要である上、固化時間も長くなる。上述した通り、吸水性樹脂の内部架橋および表面架橋を適宜調整することにより、上記範囲の吸水倍率(CRC)とすることができる。
本発明の廃液固化剤の加圧下吸収倍率(AAP0.3)は好ましくは15〜40g/g、加圧下吸収倍率(AAP0.7)が10〜35g/gである。
本発明の廃液固化剤の重量平均粒子径(D50)は、200〜600μm、好ましくは250〜500μm、より好ましくは280〜500μm、更に好ましくは300〜450μmである。また、目開き150μmの篩(JIS標準篩)を通過する微細な粒子(吸水性樹脂の微粉)は、全体に対して、好ましくは0〜25重量%、より好ましくは0〜15重量%、更に好ましくは0〜10重量%である。また目開き850μm以上(或いは710μm以上)(JIS標準篩)を通過しない巨大な粒子は少ないほどよく、吸水性樹脂粒子全体に対して、好ましくは0〜3重量%、より好ましくは0〜1重量%、更に好ましくは0重量%である。
本発明の廃液固化剤の吸収速度(Vortex)は好ましくは60秒以下、50秒以下、40秒以下、30秒以下である。なお、VortexはJIS K7224に記載される、高吸水性樹脂の吸水速度試験法に準拠し、液温30℃の0.9%塩化ナトリウム水溶液に対する吸収時間で規定される。
「Moisture Content」は、吸水性樹脂の含水率を意味し、具体的には、廃液固化剤1gを105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;質量%)である。なお、乾燥温度を180℃に変更しても良い。本発明の表面架橋された吸水性樹脂粉末、吸水性樹脂組成物、および吸水性樹脂組成物からなる廃液固化剤の含水率は、乾燥温度を1gで180℃に変更した測定条件で、0%〜20%、より好ましくは1%〜10%である。
本発明の廃液固化剤は、遠心保持容量(CRC)が25〜50g/g、加圧下吸収倍率(AAP0.3)が15〜40g/g、加圧下吸収倍率(AAP0.7)が10〜35g/g、吸収速度(Vortex)が60秒以下、重量平均粒子径(D50)が200〜600μmの吸水性樹脂粉末を主成分として含有し、さらに上記の範囲を満たすものであることが好ましい。
本発明の課題を解決するため、本発明の吸水性樹脂組成物を含有する廃液固化剤は下記の物性を更に満たすことが好ましい。
本発明の廃液固化剤は、1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃、更に好ましくは23±0.5℃)に対する廃液固化剤33gの投入後30秒での沈降率が80%以上であることが好ましい。
本発明の廃液固化剤のゲル化時間は、具体的には実施例で記載する方法で評価すればよいが、水平な架台上に設置した1000mlメスシリンダー(外径70mm)に入れた1000mlの0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃、更に好ましくは23±0.5℃)に対する廃液固化剤33gの投入後のゲル化時間(廃液固化剤が吸液し切るまでの時間)で規定し、好ましくは15分以内であり、より好ましくは13分以内、さらに好ましくは10分以内である。ゲル化時間が15分を超える場合、実使用で不便をきたす場合があり、更にはゲル化に至らない場合がある。
本発明の廃液固化剤のゲル流動性は、具体的には実施例で記載する方法で評価すればよいが、水平な架台上に設置した1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9質量%生理食塩水(23±1℃、更に好ましくは23±0.5℃)に対する廃液固化剤33gの投入後の15分後のゲル流動性で規定する。より具体的には、図1に示すように、1000mlメスシリンダーを45°傾けて、30秒後の膨潤ゲルの移動距離(メスシリンダーに沿った距離、mm)で規定される。当該ゲル流動性は好ましくは0〜5mmである。より好ましくは3mm以内、最も好ましくは1mm以内である。
本発明の廃液固化剤の上下ゲル倍率の比は、2倍以内であることが好ましい。上下ゲル倍率の比は、具体的には実施例で記載する方法で評価すればよいが、図2に示すように、水平な架台上に設置した1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃、更に好ましくは23±0.5℃)に対して、廃液固化剤33gを投入し、ゲル化後の上下ゲル倍率の比で規定する。ゲル化後の上下ゲル倍率の比は、1000mlメスシリンダー中の最上層約200ml部分に存在する膨潤ゲルと最下層約200ml部分に存在する膨潤ゲルの吸収倍率の比率で規定され、具体的には下記式で算出できる。
上下ゲル倍率=上層ゲル膨潤倍率/下層ゲル膨潤倍率
本発明の廃液固化剤で固化(ゲル化、流動性のある液体を全て吸液し、流動性のないゲル状態とする)できる廃液としては、吸水性樹脂が膨潤ゲル化しうる限り特に問わず、廃棄を前提とする液であればよく、廃液中で水を主成分とし、その他、血液中の各種成分や水以外の溶媒、無機塩、有機物などが含まれた排液である。当該廃液中の水の含有量としては、50重量%以上であればよく、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上が水であることが好ましい。なお、水とは血液中の水、排水や汚泥に含まれる水、尿中の水など、当該廃液中に含まれる水の合計量を指す。また、廃液の温度は液体である限り特に問わないが、通常は室温程度である。
本発明の廃液固化方法は、廃液に処理剤を投入することによって前記廃液をゲル状に固化させる廃液の処理方法であって、処理剤として前述した本発明の廃液固化剤を用いるものである。本発明の廃液固化剤は、飲料廃液、工場廃液、放射線廃液、など各種の廃液の固化に使用でき、廃液中に有機物や固体分散物等が含まれていてもよく、その迅速かつ均一な固化から、従来の問題を多く抱えた医療廃液の固化に好ましく使用される。廃液とは、廃棄するための水性液もしくは濾漏した水性液を指す。水性液は例えば上記である。
本発明の方法で固化された廃液は容器から取り出してもよいが、好ましくは廃液を収容した容器(ただし多重容器の場合は廃液と接している内側の容器)ごと廃棄されることで衛生的に処理できる。
本発明の廃液固化用包装体は、排出口を有する水不溶性容器中に包装された廃液固化剤の廃液への投入用包装体である。廃液固化を行う場合は、当該排出口を開放して、粉体状の廃液固化剤を廃液が収容された容器に投入することができる。
本実施例の廃液固化剤のゲル化時間は、1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃)に対する廃液固化剤33gの投入後のゲル化時間で規定した。
本実施例の廃液固化剤の沈降率は、1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃)に対する廃液固化剤33gの投入後30秒での沈降率で規定した。
固化剤沈降率(%)=下層500mL分の固形分重量(g)/33(g)×100(式1)
なお、廃液固化剤の投入30秒後に、廃液固化剤全量の沈降が目視確認できた場合は100%としても良い。
本実施例の廃液固化剤のゲル流動性は、1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%生理食塩水(23±1℃)に対する廃液固化剤33gの投入後の15分後のゲル流動性で規定した。
本実施例の廃液固化剤の上下ゲル倍率の比は、1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃)に対して廃液固化剤33gを投入し、ゲル化後の上下ゲル倍率の比で規定した。上下ゲル倍率の比は、1000mlメスシリンダーの最上層約200ml部分に存在する膨潤ゲルと最下層約200ml部分に存在する膨潤ゲルの吸収倍率の比率で規定した。
上層ゲル膨潤倍率[g/g]=WA/WB (式2)
前記1000mlのメスシリンダーの0〜200mlの位置(最下層)の内容物(膨潤ゲル)についても同様に、下層ゲル膨潤倍率を求めた。これらにより、下式(3)に従い、上下ゲル倍率を算出した。
上下ゲル倍率=上層ゲル膨潤倍率/下層ゲル膨潤倍率 (式3)
上記(1)のゲル化時間測定(固化試験)において、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液に代えて、模擬廃液(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液:カルボキシメチルセルロース:グリセリン=94.75重量部:0.25重量部:5重量部)を使用し、同様の操作を行った。ただし、15分後にゲル化が完了していない場合、さらに廃液固化剤を33g追加し、引き続きゲル化時間を測定した。
容量1Lのポリプロピレン製容器に、アクリル酸351g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量522.66、平均エチレンオキサイドユニット数;n=9)0.76g、0.1重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液21.50g、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液296g及びイオン交換水316gを投入して撹拌、混合した。当該操作で得られた混合液を単量体水溶液(a)とした。また、単量体水溶液(a)は、中和熱によって約80℃まで上昇した。その後も攪拌を継続し、単量体水溶液(a)の液温が78℃となった時点で、3.8重量%の過硫酸ナトリウム水溶液15.4gを添加し、反応液(a)とした。
上記反応液(a)を直ちにステンレス製バット型反応装置(底面;340×340mm、高さ;25mm、内表面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注ぎ込んだところ、間もなく重合反応が開始した。なお、上記ステンレス製バット型反応装置は、ホットプレート(NEO HOTPLATE HI−1000/株式会社井内盛栄堂製)を用いて、表面温度を50℃に予め設定しておいた。
上記製造例1で得られた吸水性樹脂粉末(a)をドイツレーディゲ社製回転ミキサーに移し、吸水性樹脂粉末(a)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、プロピレングリコール1.5重量部、水3.5重量部からなる表面架橋剤水溶液を均一に混合し、100℃で40分間加熱処理した。その後、目開きが850μmのJIS標準篩を通過させることで、含水率7.8%の吸水性樹脂(表面架橋された吸水性樹脂粉末)(A)を得た。吸水性樹脂(A)は、不定形であり、150μm以上850μm未満の範囲に95質量%以上含まれていた。尚、吸水性樹脂粉末(a)のCRC(無加圧下吸収倍率)は35.6[g/g]であった。
上記製造例2で得られた表面架橋された吸水性樹脂(A)100重量部に対して、カチオン性添加剤としてコロイダルシリカ(Klebosol30CAL25,粒径25μm;Merck製)0.3質量%(固形分30%)を混合した。混合は、表面架橋された吸水性樹脂(A)30gを容量225mLのマヨネーズ瓶にコロイダルシリカと共に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製)を用いて3分間振とうすることで行い、カチオン性コロイダルシリカ(固形分で対吸水性樹脂0.09質量%)を表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる廃液固化剤(1)を得た。廃液固化剤(1)のCRC=35.3[g/g]、AAP0.3=31.9[g/g]、AAP0.7=23.0[g/g]、vortex=42[秒]、D50=360[μm]であった。廃液固化剤(1)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
上記実施例1において、コロイダルシリカ0.3質量%をカチオン性添加剤としてハイドロタルサイト(DHT−6,粒径0.5μm;共和化学工業株式会社製)0.3質量%に代えた他は同様の操作を行い、ハイドロタルサイトを表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる廃液固化剤(2)を得た。廃液固化剤(2)のCRC=35.6[g/g]、AAP0.3=31.2[g/g]、AAP0.7=22.4[g/g]、vortex=40[秒]、D50=350[μm]であった。廃液固化剤(2)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
上記実施例1において、コロイダルシリカ0.3質量%をゼオライト(Y型、HSZ−360CHUA,平均粒径6.0μm;東ソー株式会社製)0.3質量%に代えた他は同様の操作を行い、ゼオライトを表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる廃液固化剤(3)を得た。廃液固化剤(3)のCRC=35.3[g/g]、AAP0.3=31.1[g/g]、AAP0.7=21.3[g/g]、vortex=44[秒]、D50=345[μm]であった。廃液固化剤(3)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
上記製造例2で得られた表面架橋された吸水性樹脂(A)をそのまま比較廃液固化剤(1)として使用した。比較廃液固化剤(1)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
上記実施例2において、表面架橋された吸水性樹脂(A)を製造例1の吸水性樹脂粉末(a)(表面架橋されていない吸水性樹脂粉末)に代えた以外は同様の操作を行い、ハイドロタルサイトを吸水性樹脂(a)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる比較廃液固化剤(2)を得た。比較廃液固化剤(2)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
上記実施例1において、コロイダルシリカ0.3質量%をアニオン性添加剤のモンモリロナイト(粒径0.5μm;Alfa Aesar製)0.3質量%に代えた他は同様の操作を行い、モンモリロナイトを表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる比較廃液固化剤(3)を得た。比較廃液固化剤(3)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
上記実施例1において、コロイダルシリカ0.3質量%を中性添加剤のカオリン(粒径0.7μm;IMERYS製)0.3質量%に代えた他は同様の操作を行い、カオリンを表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる比較廃液固化剤(4)を得た。比較廃液固化剤(4)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
上記実施例1において、コロイダルシリカ0.3質量%を中性添加剤のタルク(SG−2000,粒径1.0μm;日本タルク株式会社製)0.3質量%に代えた他は同様の操作を行い、タルクを表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる比較廃液固化剤(5)を得た。比較廃液固化剤(5)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
上記して得られた沈降タイプの廃液固化剤(1)〜(3)、および比較廃液固化剤(1)〜(5)についてゲル化時間、ゲル流動性の評価結果を表1に示す。
上記製造例2で得られた表面架橋された吸水性樹脂(A)について、特許文献8(特開2016−203106号公報)の実施例1に準じて、上記表面架橋された吸水性樹脂(A)100部に対してステアリン酸亜鉛(関東化学株式会社製鹿1級)0.1質量%を、25℃・相対湿度50%RH下でレディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に投入し、330rpmで90秒間攪拌することにより、ステアリン酸亜鉛を吸水性樹脂の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる比較廃液固化剤(6)を得た。比較廃液固化剤(6)の固化剤沈降率を測定したところ、25%であった。
実施例2で得られた廃液固化剤(2)についてゲル化時間を測定したところ、廃液固化剤(2)33gを投入後に、廃液固化剤(2)は全て沈降し、廃液の下部からゲル化が進行したが、15分後には、メスシリンダー上部(図3では上部2)がゲル化しておらず、余剰液が観察された。余剰液をゲル化させる目的で、さらに廃液固化剤(2)33gを追加したところ、30秒後に余剰液が全てゲル化できた。
廃液固化剤(1)〜(3)はその固化剤沈降率から、沈降タイプの廃液固化剤として迅速かつ均一に固化することが明らかとなった。比較廃液固化剤(1)〜(5)はその沈降率から沈降タイプの廃液固化剤であるが、比較廃液固化剤(1)、(3)、(4)、(5)はカチオン性添加剤を含まないため、比較廃液固化剤(2)は吸水性樹脂粉末が表面架橋されていないため、迅速な固化や均一な固化ができないことが判明した。また特許文献8の実施例1に相当する比較廃液固化剤(6)は沈降率の測定値からは浮遊タイプの廃液固化剤であるため、固化量に合わせて適宜、廃液固化剤を添加することが困難であることが示された。
したがって、本発明にかかる廃液固化剤は、例えば、飲料廃液、工場廃液、放射線廃液、糞尿廃液等の各種廃液、特に血液や体液等を含有した廃液の固化に有効に利用することができる。
2 膨潤ゲル
3 800〜1000mlの位置(最上層)のゲル物
4 600〜800mlの位置のゲル物
5 400〜600mlの位置のゲル物
6 200〜400mlの位置のゲル物
7 0〜200mlの位置(最下層約200ml部分)のゲル物
8 余剰液(浮遊タイプの廃液固化剤では図3の中央部8に余剰水が生じる。)
Claims (18)
- (A)表面架橋された吸水性樹脂粉末と、(B)該吸水性樹脂粉末の表面に存在する水不溶性カチオン性添加剤と、を含む吸水性樹脂組成物を含有する廃液固化剤。
- 前記水不溶性のカチオン性添加剤は、コロイダルシリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、及びアルミニウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種の水不溶性無機化合物である、請求項1に記載の廃液固化剤。
- 前記水不溶性カチオン性添加剤が粒径50μm以下の微粒子である、請求項1または2に記載の廃液固化剤。
- 前記吸水性樹脂組成物中において、前記表面架橋された吸水性樹脂粉末100重量部あたり水不溶性カチオン性添加剤を0.01〜5重量部含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の廃液固化剤。
- 遠心保持容量(CRC)が25〜50g/g、
加圧下吸収倍率(AAP0.3)が15〜40g/g、
加圧下吸収倍率(AAP0.7)が10〜35g/g、
吸収速度(Vortex)が60秒以下、
重量平均粒子径(D50)が200〜600μmである、請求項1〜4の何れか1項に記載の廃液固化剤。 - 前記表面架橋された吸水性樹脂粉末は、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体を主成分とする請求項1〜5の何れか1項に記載の廃液固化剤。
- 1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃)に対する前記廃液固化剤33gの投入後30秒後の沈降率が80%以上である、請求項1〜6の何れか1項に記載の廃液固化剤。
- 1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23℃±1℃)に対する前記廃液固化剤33gの投入後のゲル化時間が15分以内である、請求項1〜7の何れか1項に記載の廃液固化剤。
- 1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23℃±1℃)に対する前記廃液固化剤33gの投入後の15分後のゲル流動性が0〜5mmである請求項1〜8の何れか1項に記載の廃液固化剤。
ただし、ゲル流動性は1000mlメスシリンダーを45°傾けて、30秒後の膨潤ゲルの移動距離(mm)で規定される。 - 1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23℃±1℃)に対する廃液固化剤33gの投入後のゲル化後の上下ゲル倍率の比が2倍以内である、請求項1〜9の何れか1項に記載の廃液固化剤。
ただし、上下ゲル倍率の比は1000mlメスシリンダーの最上層約200ml部分に存在する膨潤ゲルと最下層約200ml部分に存在する膨潤ゲルの吸収倍率の比率で規定される。 - さらに水溶性の多価金属カチオン性添加剤を含む、請求項1〜10の何れか1項に記載の廃液固化剤。
- 血液を含む医療廃液を処理する廃液固化剤である、請求項1〜11の何れか1項に記載の廃液固化剤。
- 請求項1〜12の何れか1項に記載の廃液固化剤による廃液の固化方法。
- 廃液を含む容器に、廃液固化剤を添加する、請求項13に記載の廃液の固化方法。
- 廃液固化剤を含む容器に、廃液を添加する請求項13に記載の廃液の固化方法。
- 廃液が、血液を含む医療廃液である請求項13〜15の何れか1項に記載の廃液固化方法。
- さらに、請求項13〜15の何れか1項に記載の廃液の固化方法により固化された廃液を容器ごと廃棄する、廃液の廃棄方法。
- 請求項1〜12の何れか1項に記載の廃液固化剤が、排出口を有する水不溶性容器で包装された廃液固化剤包装体。
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