JPWO2020111061A1 - プレス成形品の製造方法、金属板セット、プレス装置及びプレスライン - Google Patents

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Abstract

プレス成形品の製造方法は、ダイ、パンチ、並びに、可動金型により複数の金属板をプレス成形品にプレス成形すること、複数の金属板の少なくとも1つに対して、フィードバックプレス成形を行うことを含む。フィードバックプレス成形は、前のプレス成形品の形状を測定すること、前のプレス成形品の形状に基づき、可動金型の初期位置を設定すること、設定された可動金型の初期位置で、プレス成形することを含む。

Description

本発明は、プレス成形品の製造方法、当該製造方法に用いられる金属板セット、プレス装置及びプレスラインに関する。
プレス成形において、金型の一部を可動とし、プレス成形品の寸法精度を向上させる技術がある。例えば、特許第6179696号公報(特許文献1)には、ダイパッドを備えたダイと、ダイと対向して配置され且つインナパッドを備えたパンチと、を含んで構成されたプレス装置が開示されている。
特許第6179696号公報
プレス成形では、予め設定されたプレス条件で複数の金属板、例えば、製造ロット内の全ての金属板がプレス成形される。すなわち、最初のプレス成形品が交差内に入っていれば、最初のプレス成形品のプレス条件と同じプレス条件で後続のプレス成形も行われる。
発明者らは、複数の金属板の特性にばらつきがある場合、最初にプレス成形したプレス成形品の形状が所望の形状であったとしても、後にプレス成形するプレス成形品も所望の形状にならない場合があることに気づいた。
そこで、本発明は、連続するプレス成形で製造される複数のプレス成形品の形状のばらつきを小さくできるプレス成形品の製造方法、金属板セット、プレス装置及びプレスラインを提供することを目的とする。
本発明の実施形態におけるプレス成形品の製造方法は、ダイ、パンチ、並びに、前記ダイ及び前記パンチの両方に対して相対位置を変更可能な可動金型により複数の金属板を連続してプレス成形し複数のプレス成形品を作製することを含む。前記複数のプレス成形の少なくとも1つは、フィードバックプレス成形である。前記フィードバックプレス成形は、前記複数のプレス成形品のうち前記フィードバックプレス成形より前にプレス成形した前のプレス成形品の形状を測定すること、前記前のプレス成形品の形状に基づき、前記可動金型の前記ダイ又は前記パンチに対する初期位置を設定すること、設定された前記可動金型の初期位置でプレス成形することを含む。
本発明の実施形態によれば、連続するプレス成形で製造される複数のプレス成形品の形状のばらつきを小さくできる。
本実施形態におけるプレスラインの構成例を示す図である。 プレス成形の例を示す図である。 プレス成形の例を示す図である。 プレス成形の例を示す図である。 プレス成形の例を示す図である。 プレス成形品の一例を示す断面図である。 コントローラーの動作例を示すフロー図である。 相関データで示される相関関係の一例を示すグラフである。 実施例の突出し量とフランジの位置精度の結果を示すグラフである。 実施例の突出し量とフランジの位置精度の結果を示すグラフである。 実施例の突出し量とフランジの位置精度の結果を示すグラフである。 プレスラインの構成の変形例を示す図である。
(方法1)
本発明の実施形態におけるプレス成形品の製造方法は、ダイ、パンチ、並びに、前記ダイ及び前記パンチの両方に対して相対位置を変更可能な可動金型により複数の金属板を連続してプレス成形し複数のプレス成形品を作製することを含む。前記複数のプレス成形の少なくとも1つは、フィードバックプレス成形である。前記フィードバックプレス成形は、前記複数のプレス成形品のうち前記フィードバックプレス成形より前にプレス成形した前のプレス成形品の形状を測定すること、前記前のプレス成形品の形状に基づき、前記可動金型の前記ダイ又は前記パンチに対する初期位置を設定すること、設定された前記可動金型の初期位置でプレス成形することを含む。
上記製造方法では、プレス成形を複数の金属板に対して繰り返すことで、略同じ形状の複数のプレス成形品を連続して製造することができる。上記製造方法では、複数のプレス成形の少なくとも1回において、フィードバックプレス成形が行われる。フィードバックプレス成形により、前のプレス成形でできた前のプレス成形品の測定された形状を用いて、プレス成形時の可動金型の初期位置を設定することができる。これにより、複数のプレス成形品の形状のばらつきを抑制するように、可動金型の初期位置を適切に調整することができる。その結果、複数の連続するプレス成形で製造される複数のプレス成形品の形状のばらつきを小さくできる。
可動金型の初期位置は、複数のプレス成形の各々の初期における可動金型のダイ又はパンチに対する相対位置である。各プレス成形において、初期位置にある可動金型が金属板に接した状態からダイとパンチを相対的に近づけることで、プレス成形が行われる。
例えば、可動金型は、プレス成形中に、プレス成形品(完成品)の製品となる部分に接してもよい。この場合、可動金型は、プレス成形品(完成品)の製品の形状をコントロールすることになる。可動金型の初期位置により、プレス成形品の製品の部分の微妙な形状をコントロールできる。
可動金型は、1回のプレス成形中に、ダイ又はパンチに対して相対移動するものであってもよい。このタイプの可能金型の例として、パンチパッド、ダイパッド、ブランクホルダ等が挙げられる。或いは、可動金型は、1回のプレス成形中にダイ又はパンチに対する相対位置が固定されるものであってもよい。すなわち、可動金型は、1回のプレス成形中に、ダイ又はパンチに対して移動しない(動作しない)ものであってもよい。なお、1回のプレス成形は、1つのプレス成形品を作るために1組のダイ、パンチ及び可動金型のセットによって行われるプレス成形である。
前のプレス成形品の形状に基づき、後のプレス成形において、可動金型の初期位置を設定することは、可動金型の初期位置をフィードバック制御することに相当する。可動金型の初期位置は、例えば、プレス成形品が目標形状に近づくように設定される。例えば、前のプレス成形品の測定された形状を示す値(例えば、測定形状と目標形状との相違度合いを示す値)を用いて、後のプレス成形における可動金型の初期位置又は初期位置の変化量を決定することができる。フィードバック制御として、例えば、P(proportional)制御、PI(proportional-Integral)制御、又はPID(proportional-integral-differential)制御を用いることができる。
また、複数の前のプレス成形品の形状に基づいて、後のプレス成形における可動金型の初期位置を設定することができる。この場合、複数の前のプレス成形品の形状を示す値を用いて可能金型の初期位置を設定できる。例えば、複数の前のプレス成形品の形状を示す値として、平均又は差分等の代表値、若しくは、複数のプレス成形品の形状から予測される値(予測値)等を用いることができる。
(方法2)
上記方法2において、前記フィードバックプレス成形は、予め求めておいた相関データであって、プレス成形時の前記可動金型の前記ダイ又は前記パンチに対する初期位置とプレス成形品の形状との相関関係を示す相関データを取得することをさらに含んでもよい。この場合、前記初期位置は、前記前のプレス成形品と、前記相関データとに基づいて設定される。これにより、初期位置とプレス成形品との相関関係に応じて、フィードバックプレス成形における可動金型の初期位置を設定できる。そのため、複数のプレス成形品の形状のばらつきを効率良く抑制することができる。
(方法3)
上記方法1又は2において、前記前のプレス成形品は、フィードバックプレス成形の直前の所定回数分のプレス成形のプレス成形品のうち少なくとも1つであってもよい。すなわち、フィードバックプレス成形の直近の所定回数分前のプレス成形のうち少なくとも1つのプレス成形で得られたプレス成形品の形状を基に、可動金型の初期位置を設定することができる。これにより、連続する複数のプレス成形において、近い時期にプレス成形されたプレス成形品の形状を基に、可動金型の位置をフィードバック制御することができる。
一例として、フィードバックプレス成形では、1回前から5回前までのいずれかのプレス成形によるプレス成形品の形状に基づき、可動金型のダイ又はパンチに対する初期位置を設定することができる。また、フィードバックプレス成形の直前の所定回数のプレス成形のうち、連続する2以上又は離散する2以上のプレス成形のプレス成形の形状を、可動金型の初期位置の設定に用いてもよい。例えば、直近の1〜5回前のプレス成形品のうち、3回前、2回前及び1回前のプレス成形品の形状を初期位置の設定に用いてもよいし、1回前、3回前及び5回前のプレス成形品の形状を初期位置の設定に用いてもよい。
(方法4)
上記方法1〜3のいずれかにおいて、前記プレス成形される前記複数の金属板は、同一の圧延コイルから得られる複数の金属板であることが好ましい。同一の圧延コイルから得られる複数の金属板は、特性のばらつきが少ない。そのため、フィードバックプレス成形による可動金型の初期位置調整によるプレス成形品の形状のばらつきの抑制効果がより高くなる。
(方法5)
前記方法2において、前記複数の金属板において、連続してプレス成形される2以上の金属板のうち1つの金属板とこの金属板の次にプレス成形される金属板は、隣接した圧延順であることが好ましい。これにより、金属板と次に成形される金属板の特性の差が小さくなる。すなわち、連続して成形される複数の金属板の特性のばらつきが小さくなる。フィードバックプレス成形による可動金型の初期位置調整によるプレス成形品の形状のばらつきの抑制効果がより高くなる。
(方法6)
上記方法5において、前記圧延順に積み重ねられた複数の金属板を備える金属板セットから、前記金属板を積み重ね順に取り出し、プレス成形することが好ましい。これにより、複数の金属板を圧延順にプレスすることができる。その結果、フィードバックプレス成形による可動金型の初期位置調整によるプレス成形品の形状のばらつきの抑制効果がより高くなる。金属板を積み重ね順に取り出す工程は、積み重ねられた複数の金属板を上から順に取り出しても良いし、下から順に取り出してもよい。
(方法7)
上記方法1〜6のいずれかにおいて、前記金属板の引張強さは980MPa以上としてもよい。引張強さが980MPa以上の高強度の金属板は、連続するプレス成形において、金属板の特性の違いによるプレス成形品の形状のばらつきが大きくなる可能性があることが発明者らによって見出されている。上記方法1〜6により、このような高強度の金属板のプレス成形において、プレス成形品のばらつきを効果的に抑制することができる。
(金属板セット)
本発明の実施形態における金属板セットは、複数の小梱包を備える。前記小梱包のそれぞれは、圧延順に積み重ねられた複数の金属板を含む。前記小梱包のそれぞれには、他の前記小梱包との圧延順の関係を示す情報が記録されている。この金属板セットから、複数のブランクを圧延順に取り出すことができる。そのため、例えば、上記方法1〜7において、この金属板セットから複数のブランクを圧延順に取り出して、上記プレス成形品にプレス成形することができる。前記小梱包に前記圧延順の関係を示す情報が記録される形態としては、例えば、小梱包に前記情報が視認可能に明記される形態、又は、チップ等の記録媒体に情報が記録される形態等が挙げられる。金属板セットの複数の小梱包に含まれる複数の金属板は、いずれも、同一の圧延コイルから得られる複数の金属板であってもよい。
上記方法1〜7において用いられる金属板セットも本発明の実施形態に含まれる。この場合、金属板セットの各小梱包において圧延順に積み重ねられた複数の金属板を、積み重ね順に取りだしてプレス成形をすることができる。さらに、複数の小梱包を圧延順に選択して、各小梱包から金属板を積み重ね順にプレス成形することができる。
(構成1)
本発明の実施形態におけるプレス装置は、ダイと、パンチと、前記ダイ及び前記パンチに対して相対位置を変更可能な可動金型と、前記ダイ、前記パンチ、及び前記可動金型を制御するコントローラーとを備える。前記コントローラーは、複数の金属板に対する複数のプレス成形を繰り返すよう前記制御を行う。前記複数のプレス成形は、少なくとも1回のフィードバックプレス成形を含む。前記フィードバックプレス成形は、前記複数のプレス成形のうち前記フィードバックプレス成形より前のプレス成形で作製した前のプレス成形品の測定された形状に基づき、前記可動金型の前記ダイ又は前記パンチに対する初期位置を設定すること、及び、設定された前記可動金型の初期位置でプレス成形することを含む。
(構成2)
上記構成1において、プレス成形装置は、同一の圧延コイルから得られる前記複数の金属板を、圧延順に、前記プレス装置へ供給する供給部をさらに備えてもよい。供給部は、例えば、搬送装置であってもよい。
(構成3)
上記構成1又は2のプレス成形装置を含むプレスラインも、本発明の実施形態に含まれる。このプレスラインは、ペイオフリールと、前記ペイオフリールの下流に配置されたアンコイラーレベラーと、前記アンコイラーレベラーの下流に配置されたブランキング装置と、前記ブランキング装置の下流に配置された搬送装置と、前記プレス装置の中または下流に配置された形状測定装置と、をさらに備える。プレス装置は、前記搬送装置の下流に配置される。
また、下記構成のプレスラインも、本発明の実施形態に含まれる。このプレスラインは、ペイオフリールと、前記ペイオフリールの下流に配置されたアンコイラーレベラーと、前記アンコイラーレベラーの下流に配置されたブランキング装置と、前記ブランキング装置の下流に配置された搬送装置と、前記搬送装置の下流に配置されたプレス装置と、前記プレス装置の中または下流に配置された形状測定装置と、前記形状測定装置と前記プレス装置に接続されたコントローラーとを備える。前記プレス装置は、ダイ、パンチ並びに前記ダイ及び前記パンチに対して相対位置を変更可能な可動金型を備える。前記コントローラーは、プレス成形時の前記可動金型の前記ダイ又は前記パンチに対する初期位置とプレス成形品の形状との相関関係を示す相関データを格納し、さらに、当該相関データと、前記形状測定装置で測定された前記プレス装置でプレス成型されたプレス成形品の形状に基づき、前記プレス装置によるプレス成形時の前記可動金型の前記ダイ又は前記パンチに対する初期位置を設定するプログラムを格納した記憶装置を備える。
上記構成によれば、コントローラーは、プレス装置によるプレス成形でできたプレス成形品の形状と、相関データとを用いて、プレス装置によるプレス成形時の可動金型の初期位置を設定することができる。これにより、プレス成形品の形状のばらつきを抑制するように、可動金型の初期位置を適切に調整することができる。その結果、複数のプレス成形品の形状のばらつきを小さくできる。
一例として、ペイオフリールは、金属帯のコイルを回転可能に支持し、コイルの回転を制御する。ペイオフリールは、コイルを巻き戻して金属帯を払い出す。アンコイラーレベラーは、コイルから払い出された金属帯を平らにする。ブランキング装置は、平らにされた金属帯を打ち抜いてブランクを生成する。搬送装置は、ブランクを搬送する。プレス装置は、ブランクをプレス成形品にプレス成形する。形状測定装置は、プレス成形品の形状を測定する。
コントローラーは、プログラムを実行するプロセッサを有してもよい。プロセッサが記憶装置に格納されたプログラムに従って、プレス装置によるプレス成形時の可動金型のダイ又はパンチに対する初期位置を設定する処理を実行してもよい。コントローラーは、例えば、形状測定装置で形状が測定されたプレス成形品のプレイ成形の後のプレス成形における可動金型の初期位置を、測定された形状を基に、設定してもよい。
[実施形態]
(プレスライン)
図1は、本実施形態におけるプレスライン100の構成例を示す図である。図1に示すプレスライン100は、ペイオフリール1と、アンコイラーレベラー2と、ブランキング装置3と、搬送装置4と、プレス装置5と、形状測定装置10と、コントローラー11を備える。上流から、ペイオフリール1、アンコイラーレベラー2、ブランキング装置3、搬送装置4、プレス装置5、及び、計測装置10の順番で配置される。
ペイオフリール1は、金属帯のコイルAを支持し、コイルから金属帯を払い出す装置である。アンコイラーレベラー2は、コイルAの金属帯Aaをロールで平らにする装置である。ブランキング装置3は、金属帯Aaを打ち抜いて金属板Bを生成する装置である。搬送装置4は、金属板Bを搬送する装置である。搬送装置4は、例えば、コンベア、マニピュレータ又はフォークリフト等であってもよい。搬送装置4は、金属板をプレス装置に供給する供給部の一例である。
プレス装置5は、金属板Bをプレス成形してプレス成形品Cにする。プレス装置5は、金型として、ダイ6、パンチ7、可動金型8、9を有する。可動金型8、9は、ダイ6及びパンチ7の両方に対して相対位置を変化させることができる。プレス装置5は、ダイ6とパンチ7の間に金属板Bを配置して、ダイ6とパンチ7の両方から金属板Bを押すことで、金属板Bをプレス成形する。
具体的には、プレス装置5は、ダイ6とパンチ7との相対的な移動によってダイ6の内側にパンチ7を押し込みながら、ダイ6とパンチ7との間で金属板Bをプレス成形する。1つのプレス成形品を作るためのプレス成形工程には、可動金型8、9が金属板Bに接し且つ可動金型8、9とダイ6又はパンチ7との相対位置を固定した状態で、ダイ6とパンチ7を相対的に近づけて、ダイ6とパンチ7とにより金属板Bを押す工程が含まれる。さらに、このプレス成形工程には、可動金型8、9が金属板Bに接した状態で、可動金型8、9に対するダイ6又はパンチ7の相対位置を変化させて金属板を成形する工程が含まれる。
形状測定装置10は、プレス成形品の形状を測定する。形状測定装置10は、例えば、光学センサを用いて、プレス成形品の形状を測定する構成であってもよい。また、形状測定装置10は、例えば、レーザー変位計でプレス成形品の断面形状を測定する構成であってもよい。この場合、プレス成形品のプレス方向(ダイとパンチの相対位置の変位方向)の変位を測定する形状測定装置10の構成としてもよい。例えば、プレス成形品がハット部材の場合、ハット部材の上方あるいは下方からレーザー変位計によりハット部材の変位を測定することで、ハット部材の断面形状を瞬時に測定することができる。形状測定装置10は、プレス成形品の形状を示す値を出力してもよい。例えば、形状測定装置10は、プレス成形品の形状を測定するセンサ(例えば、カメラ又はレーザー変位計等)と、センサで測定されたプレス成形品の画像等のデータを処理してプレス成形品の形状を示す値を計算するコンピュータ等の演算装置を含んでもよい。又は、形状測定装置10で得られたプレス成形品の画像等のデータを基に、コントローラー11が、プレス成形品の形状を示す値を演算してもよい。
コントローラー11は、プレス装置5及び形状測定装置10と接続される。ここで、コントローラー11とプレス装置5及び形状測定装置10との接続は、有線であっても無線であってもよい。コントローラー11は、プレス装置5及び形状測定装置10と通信可能である。本例では、形状測定装置10は、プレス装置5の下流に設けられるが、プレス装置5の中に形状測定装置10が設けられる場合もあり得る。例えば、プレス装置5は、複数のプレス金型セットを含む場合、複数のプレス金型セットの間に形状測定装置10を設けてもよい。この場合、プレス金型セットの間を搬送されるプレス成形品(中間素材)の形状を形状測定装置10により測定してもよい。
コントローラー11は、例えば、プロセッサ11a及び記憶装置11b(メモリ)を備えるコンピュータで構成することができる。プロセッサ11aが、記憶装置11bに格納されたプログラムを実行することにより、コントローラー11の以下の機能を実現することができる。コントローラー11は、形状測定装置10で計測されたプレス成形品の形状に関するデータを用いて、プレス成形における可動金型8、9のダイ6又はパンチ7に対する初期位置を制御する。具体的には、コントローラー11は、形状測定装置10で計測されたプレス成形品の形状に関するデータと、相関データとに基づき、可動金型8、9のダイ6又はパンチ7に対する初期位置を設定する。
ここで、コントローラー11により設定される初期位置は、例えば、可動金型8、9のダイ6又はパンチ7に対する相対位置を固定し且つ可動金型が金属板に接した状態でダイ6及びパンチ7を相対的に近づけてプレス成形する際の相対位置とすることができる。例えば、1つのプレス成形品を作るためのプレス成形工程において、プレス成形初期設定として、可動金型8、9のダイ6又はパンチ7に対する相対位置(すなわち初期位置)を設定位置に固定した状態で、ダイ6及びパンチ7を相対的に近づけてプレス成形を行い、その後、その相対位置を設定位置から変えて、再度、ダイ6及びパンチ7を相対的に近づけてプレス成形を行うことができる。このプレス成形初期設定における、可動金型8、9のダイ6又はパンチ7に対する相対位置(初期位置)の設定位置が、コントローラー11により設定される。
相関データは、プレス成形時(例えば、プレス成形初期設定における)の可動金型8、9のダイ6又はパンチ7に対する初期位置と、プレス成形品の形状との相関関係を示すデータである。具体的には、相関データは、測定により得られるプレス成形品の形状を示す値と、プレス成形における可動金型8、9のダイ6又はパンチ7に対する初期位置を制御する値との対応関係を示すデータであってもよい。相関データのデータ形式は、特に限定されない。相関データは、プレス成形品の形状を示す値と、可動金型の初期位置を制御するための値とを対応付けるデータ(例えば、テーブルデータ、マップデータ等)であってもよい。又は、相関データは、プレス成形品の形状を示す値を用いて、可動金型の初期位置を制御するための値を算出する手順を示すデータ(例えば、関数、プログラム又はこれらのパラメータ等)であってもよい。相関データは、フィードバックプレス成形の前に予めコントローラー11の記憶装置に格納される。相関データは、例えば、過去に測定された複数のプレス成形品の形状とそれらのプレス成形品のプレス成形における可動金型の初期位置とに基づいて、作成することができる。
例えば、コントローラー11は、形状測定装置10から、プレス成形品の形状を示すデータを取得する。コントローラー11は、相関データを用いて、プレス成形品の形状を示す値を、可動金型8、9のダイ6又はパンチ7に対する初期位置又は変化量を示す制御値に変換する。コントローラー11は、プレス成形時の可動金型8、9が、制御値の示す初期位置又は変化量になるようにプレス装置5を制御する。
プレス装置5は、製造ロットに含まれる複数の金属板Bに対して、プレス成形を繰り返し、複数のプレス成形品を製造する。製造ロットの複数の金属板それぞれのプレス成形において、コントローラー11が、可動金型8、9の初期位置を設定してもよい。コントローラー11は、ある1つの金属板Bのプレス成形における可動金型8、9の初期位置を設定するのに、例えば、その金属板Bのプレス成形の1回前から5回前までのプレス成形で形成されたプレス成形品のうち少なくとも1つのプレス成形品の形状を示すデータを用いる。これにより、可動金型8、9の初期位置のフィードバック制御が可能になる。
なお、コントローラー11は、1回前から5回前のいずれかのプレス成形のプレス成形品の形状に加えて、6回以上前のプレス成形のプレス成形品の形状を用いて、可動金型の初期位置を設定してもよい。例えば、1回前〜n回前の全てのプレス成形のプレス成形品の形状を示す値から計算される代表値(例えば、1回前〜n回前のプレス成形品の形状を示す値の平均値)を用いて、可動金型の初期位置を設定してもよい。
図1に示す例では、1つのコイルから払い出された金属帯を打ち抜いて生成された複数の金属板Bをプレス成形してプレス成形品にしたものを1つの製造ロットとすることが好ましい。すなわち、製造ロットでプレス成形される複数の金属板Bは、同一のコイルから得られる複数の金属板とすることが好ましい。これにより、特性のばらつきが小さい複数の金属板Bから複数のプレス成形品をプレス成形することができる。
さらに、1つのコイルから払い出された金属帯を打ち抜いて複数の金属板Bを生成し、生成した順番で、金属板Bをプレス成形することが好ましい。これにより、複数の金属板Bを圧延順にプレス成形することができる。すなわち、ある1つの金属板と、この金属板の次にプレス成形される金属板は、隣接した圧延順となる。そのため、より特性のばらつきが小さい複数の金属板Bから複数のプレス成形品をプレス成形することができる。
(プレス成形の例)
可動金型を用いたプレス成形の例を説明する。図2A〜図2Dは、プレス成形の例を示す図である。ここでは、一例として、可動部材として、パンチ側パッド9を備えるプレス装置によるプレス成形例を説明する。図2A〜図2Dに示す例では、ダイ側パッド8は、ダイ6の内側に配置されて、金属板の加圧方向に移動可能である。ここで、金属板の加圧方向は、ダイ6のパンチ7に対する相対移動の方向とする。パンチ側パッド9は、パンチ7の加圧面7aよりも外側に突出された状態で配置されて、パンチ7の加圧面7aと同一の高さまで押し込み可能である。
具体的に、ダイ6は、その内側にプレス成形品の形状に対応した凹部6aを有している。パンチ7は、ダイ6の凹部6aに対応した形状の凸部を有する。この凸部の上面が金属板Bを加圧する加圧面7aとなる。パンチ側パッド9は、油圧シリンダなどの昇降機構(図示略)を介して上下方向(加圧方向)に移動可能とされている。ダイ側パッド8は、油圧シリンダなどの昇降機構(図示略)を介して上下方向に移動可能とされている。さらに、ダイ側パッド8は、金属板Bに押し当てられた状態でパンチ側パッド9と共に上下方向に移動可能となっている。ダイ6の凹部6aの底面には、昇降機構を通す孔部(図示略)が設けられている。パンチ側パッド9は、パンチ7の加圧面7aに形成された凹部の内側に配置されている。また、パンチ側パッド9は、凹部の内側に配置されたガススプリング9sにより上方に向かって付勢されている。このガススプリング9sの付勢により、パンチ側パッド9の上面がパンチ7の加圧面7aよりも外側に突出された状態となっている。
プレス装置5は、パンチ7の加圧面7aよりもパンチ側パッド9が外側に突出された状態で、パンチ側パッド9とダイ側パッド8を金属板Bに押し当てながら、ダイ6とパンチ7とを相対的に近づけて金属板Bをプレス成形する。成形下死点において、パンチ側パッド9がパンチ7の加圧面7aと同一の高さとなるまで金属板Bをプレス成形する。
より具体的には、先ず、図2Aに示すように、パンチ7の加圧面7aよりもパンチ側パッド9が外側に突出された状態で、ダイ側パッド8を金属板Bに押し当てながら、ダイ6及びダイ側パッド8を下降させることによって、ダイ6とパンチ7との間で金属板Bをプレス成形する。このとき、パンチ側パッド9のパンチ7に対する初期位置すなわちパンチ7の加圧面7aに対するパンチ側パッド9の上面の高さ(突出し量)Hは固定される。成形される金属板Bには、パンチ7の加圧面7aに対するパンチ側パッド9の上面の高さ(突出し量)Hに応じて、金属板BにたるみBaが生じる。そして、この状態からさらに、図2Bに示すように、金属板BのたるみBaを所定量に制御しながら、ダイ6を下降させることによってプレス成形を継続する。図2Cに示すように、成形下死点の手前Hまで、ダイ6を下降させる。この時、ダイ側パッド8の加圧機構が縮みながらダイ6が下降する。
図2A〜図2Cに示す工程では、パンチ側パッド9に対するパンチ7の初期位置すなわち突出し量Hが固定された状態で、ダイ6とパンチ7を相対的に近づける。図2Cに示す段階、すなわちダイ側パッド8がダイ6に対して底付きされることで完全に収納された段階(成形下死点から突出し量Hだけ手前の段階)から、パンチ側パッド9の上面とパンチ7の加圧面7aとの距離が縮み始める。図2Cの段階から図2Dの段階に至るまでの間に、パンチ側パッド9に対するパンチ7の相対位置が変化する。図2Dに示すように、パンチ側パッド9の上面が、パンチ7の加圧面7aと同一の高さとなるまで金属板Bをプレス成形する。このとき、金属板Bに形成されたたるみBaが、面内圧縮応力を受けながら、パンチ7およびダイ6間の縦壁部に向かって流出される。これにより、ハット形断面形状のプレス成形品を得ることができる。
図2A〜図2Dに示す例では、金属板Bに形成されたたるみBaを縦壁部に向かって流出させることにより、曲げ領域が拡大する。これにより、プレス成形される被加工材のスプリングバックとスプリングゴーとをバランスさせることができる。その結果、縦壁やフランジ部の形状不良を少なくすることができる。
上記例では、1つの金属板Bに対するプレス成形において、パンチ側パッド9のパンチ7に対する初期位置を固定した状態(プレス初期設定の状態)で、ダイ6をパンチ7に対して相対的に近づけて金属板Bをプレス成形する工程と、パンチ側パッド9のパンチ7に対する相対位置を変化させてダイ6をパンチ7に対して相対的に近づけて金属板Bをプレス成形する工程が含まれる。プレス初期設定におけるパンチ側パッド9とパンチ7との相対位置(初期位置)、すなわちパンチ側パッド9の突出し量Hは、コントローラー11によって制御される。突出し量Hは、可動金型の初期位置の設定値の一例である。
なお、可動金型を用いたプレス成形は、上記例に限られない。例えば、プレス装置において、ダイ側パッド8又はパンチ側パッド9のいずれかを省略することもできる。また、上記例は、予め曲げ成形された中間素材の金属板Bをプレス成形する例であるが、プレス装置は、曲げ成形されていない平板をプレス成形するものであってもよい。
一般的に、曲げ成形では、ダイ側パッドが、金属板のパンチ側パッドあるいはパンチに対する位置ずれ防止のために設定されることが多い。言い換えると、位置ずれしにくい形状では、ダイ側パッドが省略できる場合もある。図2A〜図2Dに示した成形例においても、ダイ側パッド8を省略できる場合がある。図2A〜図2Dに示した成形例において、ダイ側パッド8を省略する場合、成形初期から図2Cに示す段階に至るまで、ダイ側パッド8に相当する部位は、ダイ6の凹み部に収納された状態でダイと一体となった状態となる。成形初期段階から図2Cに示す段階まで、金属板Bの断面幅方向の中央部は、ダイ側パッド8がある場合と同様に、パンチ側パッド9によって下側から持ち上げられた状態で、プレス成形が進む。図2Cに示す段階の後、パンチ側パッド9はダイ6によって下向きに押し込まれることによって下降し、図2Dと同様にプレス成形が完了する。
(プレス成形品の例)
図3は、プレス成形品の一例を示す断面図である。図3に示すプレス成形品12は、例えば、図2A〜図2Dに示すプレス成形により得られる。プレス成形品12は、断面がハット形状である。プレス成形品12は、図3に示す断面に垂直な方向を長手方向とする長尺部材である。プレス成形品12の幅方向に延在する天板12Aと、天板12Aの幅方向両端に隣接する一対の稜線部12Bとを含む。また、プレス成形品12は、稜線部12Bから天板12Aの裏面側(板厚方向一方側)へ延出した一対の縦壁12Cと、一対の縦壁12Cの先端(下端)に隣接する一対の稜線部12Dとを含む。さらに、プレス成形品12は、一対の稜線部12Dから天板12Aの幅方向両側へそれぞれ延出した一対のフランジ12Eを含む。天板12Aと縦壁12Cのなす角度θ2は、90deg.の場合に限られない。角度θ2は、90〜125deg.が例示できる。この範囲の強加工では、特に、スプリングバック等の課題が顕在化するため、上記フィードバック制御が有効になる。角度θ2が90deg.未満の鋭角だとプレス成形品を金型から取り外すのに支障をきたす場合がある。
形状測定装置10は、プレス成形品12の形状として、例えば、天板12Aとフランジ12Eとのなす角度θ1を測定してもよい。例えば、プレス成形品12を、長手方向正面から撮影した画像において、天板12Aとフランジ12Eを認識してこれらの角度θ1を算出することができる。この例においては、天板12Aとフランジ12Eのなす各θ1が、所望の形状を示す所定の基準値θc、この場合0deg.より大きい場合(θ1>θc=0deg.)はスプリングバックとなり、θ1が基準値θcより小さい場合(θ1<θc=0deg.)は、スプリングゴーとなる。
なお、スプリングバック又はスプリングゴーの度合いを示す値は、上記例の角度θ1に限られない。例えば、天板12Aとフランジ12Eのなす角度θ2、又は、フランジ12Eの底面の垂直方向の高低差T1等を、スプリングバック又はスプリングゴーの度合いを示す値として、測定してもよい。これらの場合、上記の相関データは、例えば、スプリングバック又はスプリングゴーの度合いを示す値と、可動金型のダイ又はパンチに対する初期位置との相関関係を示すデータとなる。形状測定装置10により測定されるプレス成形品の形状は、上記例の値に限られない。
(動作例)
図4は、本実施形態におけるコントローラー11の動作例を示すフロー図である。図4に示す例では、まず、コントローラー11は、プレス条件を初期設定する(S1)。プレス条件には、例えば、可動金型のダイ又はパンチに対する初期位置が含まれる。一例として、上記のパンチ側パッド9の突出し量Hの初期値が設定される。なお、プレス条件は、可動金型の初期位置に限られない。
コントローラー11は、予め求めておいた相関データを取得する(S2)。例えば、コントローラー11は、フィードバック処理に用いる相関データを決定し、アクセス可能な状態とする。例えば、コントローラー11のコンピュータがアクセス可能な記録媒体(コントローラー11に内蔵又は外部の記憶装置)に予め記録されたデータの中から、処理に用いる相関データを抽出し、メモリ(記憶装置11b)に格納する。相関データは、予め作成され、コントローラー11がアクセス可能な記憶媒体に記録される。
図5は、相関データで示される相関関係の一例を示すグラフである。図5に示すグラフは、可動金型(パンチ側パッド9)の突出し量Hと、スプリングバック/スプリングゴーとの関係を示している。グラフの縦軸の角度差は、図3に示すプレス成形品12の天板12Aとフランジ12Eのなす角θ1と基準値θc、この場合0deg.との差(θ1−θc=0deg.)を示す。基準値θcは、スプリングバック及びスプリングゴーがない場合の天板とフランジ12Eのなす角度とする。角度差がプラスの場合スプリングバックであり、角度差がマイナスの場合スプリングゴーである。図5に示すグラフに示す相関関係を用いることで、例えば、角度差が、+1deg.の場合、突出し量Hをどの程度下げるとスプリングバックを解消できるかを計算することができる。図5のグラフに示す相関関係を示すデータは、例えば、様々な角度差と突出し量Hとの対応関係を記録したテーブルデータ又はマップデータであってもよいし、グラフの線の関数を示すデータであってもよい。
図4のS3において、コントローラー11は、プレス装置5を制御して、金属板Bのプレス成形を実行する。また、コントローラー11は、S3でプレス成形されたプレス成形品の形状を形状測定装置10に測定させる(S4)。一例として、形状測定装置10は、図3に示すプレス成形品12の天板12Aとフランジ12Eのなす角度θ1を測定する。
コントローラー11は、S5のフィードバック計算において、S4で測定されたプレス成形品の形状を示す値(例えば、角度θ1)と、相関データとを用いて、次のプレス成形における可動金型の初期位置(例えば、パンチ側パッド9の突出し量H)を算出する。コントローラー11は、S5で算出した値を、プレス条件として、プレス装置5に設定する(S6)。これにより、1回前のプレス成形品の形状測定結果を、次のプレス成形における可動金型の初期位置に、フィードバックすることができる。
図4のS3〜S6の処理は、1つの製造ロットに含まれる複数の金属板について繰り返される。これにより、1つの製造ロットの1回目以外のプレス成形のそれぞれにおいて、フィードバック制御が可能になる。
(実施例)
図6は、パンチ側パッド9の突出し量Hをフィードバック制御した場合のフランジの位置精度を測定した結果を示すグラフである。縦軸は突出し量及びフランジ位置精度を示す。フランジ位置精度は、目標とする基準位置を0.0としている。図6に示す結果から、突出し量Hをフィードバック制御することで、位置精度を0.0に近づけることができる傾向が見られた。図6に示す結果では、位置精度の標準偏差が0.44mmであった。
なお、図6に示す結果は、複数金属板のプレス成形の順番は、圧延順になっていない場合の結果である。すなわち、図6の実験では、各プレス成形の金属板と、次のプレス成形の金属板は、コイルの近接する箇所から採取した金属板か否かが不明である。
これに対して、図7は、同一コイルから採取した複数の金属板を圧延順にプレス成形した場合の突出し量と位置精度の結果を示すグラフである。図7に示す結果では、図6に示す結果に比べて、プレス成形品の形状のばらつきが小さくなっている。図7に示す結果では、位置精度の標準偏差が0.04mmであった。なお、図7に示す実験では、位置精度が±0.15mm以内の場合は、次のプレス成形への突出し量のフィードバック制御はしないこととした。
図8は、同一コイルから採取した複数の金属板を圧延順にプレス成形した場合の突出し量と位置精度の結果を示すグラフである。同一コイル内での特性のばらつきが大きな金属板を使用した。図8に示す結果では、標準偏差が0.10mmであった。これは、プレス成形の順番の隣り合う金属板の特性が大きく変化しないため、フィードバック制御が好適に作用した結果と考えられる。
(変形例)
図9は、プレスラインの構成の変形例を示す図である。図9に示す例では、コイルAから切り出された金属板Bが、切り出された順に積み重ねられて梱包され、プレス装置5のある場所まで運搬される。このように、コイルAから払い出された金属帯Aaの端から順に複数の金属板Bを切り出し、切り出した順に積み重ねることで、複数の金属板Bを圧延順に積み重ねることができる。
圧延順に積み重ねられた複数の金属板Bは、梱包されて小梱包BSとなる。複数の小梱包BSを含む金属板セットが、プレス装置5の場所へ運搬される。複数の小梱包BSのそれぞれには、他の小梱包BSとの圧延順の関係を示す情報13が記録されている。この情報13の記録は、ラベル又は印字のような外観で可視できる形態であってもよいし、ICタグのように電子情報であってもよい。
小梱包BSは、複数の金属板Bをまとめたものである。小梱包BSの形態は、特に限定されない。例えば、小梱包BSは、ラック、箱、帯等であってもよい。
プレス装置5の場所では、金属板セットに含まれる複数の小梱包BSを圧延順或いは圧延逆順に順次選択し、各小梱包BSから、複数の金属板を積載順に取り出してプレス装置5でプレス成形する。これにより、金属板セットに含まれる複数の小梱包BSに含まれる複数の金属板Bが、圧延順に、プレス成形される。複数の小梱包BSの金属板Bを順にプレス成形する際に、1つの小梱包BSの金属板Bの成形が終了し、次の小梱包BSの金属板Bを成形する際に、圧延順が最も近い、すなわち隣り合う圧延順の金属板をプレス成形することができる。すなわち、小梱包BSの切り替わりでも隣り合う圧延順に、金属板Bをプレス成形できる。
上記実施形態は、一例として、熱間圧延で圧延された金属帯のコイルから金属板を切り出してプレス成形する場合に適用することができる。熱間圧延の工程では、熱と張力を加えて熱間圧延された鋼帯は、ランアウトテーブル上で水によって冷却されながら、ダウンコイラーに送られ、巻き取られる。この際、鋼帯の場所によって冷却条件に差異が生じうるため、厳密には鋼帯の特性は均質ではない。しかし、鋼帯上の全ての箇所を細分化して特性値を採取し、それに適したプレス条件を設定することはほぼ不可能である。
発明者らは、圧延された鋼帯における特性の変化は急激には起こらない傾向にあることに注目した。また、鋼板の表面疵(スケール疵)も、その発生原因は様々であるが、圧延方向に徐々に程度が変化する傾向がある。さらに、全幅ではなくある幅位置にスケール疵が発生することが多い。発明者らは、プレス成形のフィードバック制御の精度を高めるには、加工対象の金属板の特性が似ていることが望ましいことを見いだした。
発明者らは、これらの事情を鑑みて、圧延順に金属板をプレス成形することで、成形順が隣り合った金属板では特性とその分布が大きく変わらないことを見いだした。すなわち、似たような特性の金属板を順に成形するには、金属板を圧延順に(あるいはその逆順に)成形するとよいという知見を得た。上記実施形態によれば、似たような特性を有する複数の金属板を順にプレス成形し、フィードバック制御することで、プレス成形品の形状の精度を向上させることができる。
一般に、金属帯のコイルの質量は10〜20トンであることが多い。1個のコイルからプレス成形品を数千〜数万個採取することが可能である。しかし、一度に数千個ものプレス成形品が必要となることは少ない。一つの製造ロットのプレス成形品は数百〜数千個であることが多い。すぐには必要とされないプレス成形品を倉庫に保管する場合、プレス成形品は立体的であるため、膨大な倉庫の容量が必要になる。必要以上のプレス成形品の在庫を持たないように、必要なだけプレス成形品を製造した後、ペイオフリールのコイルを結束してプレスラインから取り出してもよい。しかし、コイルをプレスラインから取り出す際、コイルの巻きが緩む恐れがある。コイルの巻きが緩むと、コイル内の緩んだ箇所で金属帯同士がこすれて擦り傷が発生する恐れがある。このような事情から、ペイオフリールに装入されたコイルの金属帯は、まとめて、カットされた切板か、切板を打ち抜いた金属板にすることが好まれる場合がある。切板や金属板は平坦であり、積み重ねて保管することができるので、プレス成形品を補完するのに比べて倉庫の容量も必要とされない。図9に示す変形例のように、複数の小梱包に圧延順の情報を記録した金属板セットを導入することで、金属板の保管又は運搬が行われる場合でも、圧延順に金属板をプレス成形することが容易になる。なお、本開示では、金属板は、コイルの金属帯をカットした切板、及び、切板を打ち抜いた金属板の双方を含むものとする。
なお、本発明を適用可能な金属板の材料は特に限定されない。金属板の材料としては、例えば、980MPa級高強度鋼板(ハイテン:High Tensile Strength Steel Sheets)の薄板を用いてもよい。近年、プレス成形品の軽量化のため、プレス成形品の高強度化が進んでいる。それに合わせ、プレス成形品の素材の高強度化も進んでいる。素材が高強度化すると所望の形状にプレス成形するのが困難になる。例えば、スプリングパックは一般に素材が高強度化するほど激しくなる。上記実施形態によれば、980MPa以上の引張強さを有する金属板を用いた場合であっても、製造ロット内の複数のプレス成形品の形状のばらつきを小さくできる。
また、例えば引張強さが270MPa級の鋼板と、1.2GPa級の鋼板とでは、一般的には板厚や引張強さのばらつきは1.2GPa級の鋼板の方が大きい傾向にある。板厚や引張強さのばらつきといった素材の特性のばらつきが大きければ、金型形状を調整し、製造ロットの最初にプレス成形したプレス成形品の形状が所望の形状であったとしても、製造ロット内で後にプレス成形するプレス成形品も所望の形状にならない可能性が高くなる。上記実施形態によれば、素材の特性のばらつきが比較的大きい980MPa以上の引張強さを有する金属板を用いた場合であっても、フィードバック制御によって、製造ロット内の複数のプレス成形品の形状のばらつきを小さくできる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
1:ペイオフリール
2:アンコイラーレベラー
3:ブランキング装置
4:搬送装置
5:プレス装置
6:ダイ
7:パンチ
8:可動金型(ダイ側パッド)
9:可動金型(パンチ型パッド)
10:形状測定装置
11:コントローラー
12:プレス成形品

Claims (11)

  1. プレス成形品の製造方法であって、
    ダイ、パンチ、並びに、前記ダイ及び前記パンチの両方に対して相対位置を変更可能な可動金型により複数の金属板を連続してプレス成形し複数のプレス成形品を作製することを含み、
    前記複数のプレス成形の少なくとも1つは、フィードバックプレス成形であり、
    前記フィードバックプレス成形は、
    前記複数のプレス成形品のうち前記フィードバックプレス成形より前にプレス成形した前のプレス成形品の形状を測定すること、前記前のプレス成形品の形状に基づき、前記可動金型の前記ダイ又は前記パンチに対する初期位置を設定すること、
    設定された前記可動金型の初期位置で、プレス成形することを含む、プレス成形品の製造方法。
  2. 前記フィードバックプレス成形は、
    予め求めておいた相関データであって、プレス成形時の前記可動金型の前記ダイ又は前記パンチに対する初期位置とプレス成形品の形状との相関関係を示す相関データを取得することをさらに含み、
    前記初期位置は、前記前のプレス成形品と、前記相関データとに基づいて設定される、請求項1に記載のプレス成形品の製造方法。
  3. 前記前のプレス成形品は、フィードバックプレス成形の直前の所定回数分のプレス成形のプレス成形品のうち少なくとも1つである、請求項1又2に記載のプレス成形品の製造方法。
  4. 前記プレス成形される前記複数の金属板は、同一の圧延コイルから得られる複数の金属板である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。
  5. 前記複数の金属板において、連続してプレス成形される2以上の金属板のうち1つの金属板と前記1つの金属板の次にプレス成形される前記金属板は、隣接した圧延順である、請求項4に記載のプレス成形品の製造方法。
  6. 前記圧延順に積み重ねられた複数の金属板を備える金属板セットから、前記金属板を積み重ね順に取り出し、プレス成形する、請求項5に記載のプレス成形品の製造方法。
  7. 前記金属板の引張強さは980MPa以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。
  8. 複数の小梱包を備え、
    前記小梱包のそれぞれは、圧延順に積み重ねられた複数の金属板を含み、
    前記小梱包のそれぞれには、他の前記小梱包との圧延順の関係を示す情報が記載されている、金属板セット。
  9. ダイと、
    パンチと、
    前記ダイ及び前記パンチに対して相対位置を変更可能な可動金型と、
    前記ダイ、前記パンチ、及び前記可動金型を制御するコントローラーとを備え、
    前記コントローラーは、複数の金属板に対する複数のプレス成形を繰り返すよう前記制御を行い、
    前記複数のプレス成形は、少なくとも1回のフィードバックプレス成形を含み、
    前記フィードバックプレス成形は、
    前記複数のプレス成形のうち前記フィードバックプレス成形より前のプレス成形で作製した前のプレス成形品の測定された形状に基づき、前記可動金型の前記ダイ又は前記パンチに対する初期位置を設定すること、及び、設定された前記可動金型の初期位置でプレス成形することを含む、プレス装置。
  10. 同一の圧延コイルから得られる前記複数の金属板を、圧延順に、前記プレス装置へ供給する供給部をさらに備える、請求項9に記載のプレス装置。
  11. 請求項9又は10に記載のプレス装置を含むプレスラインであって、
    ペイオフリールと、
    前記ペイオフリールの下流に配置されたアンコイラーレベラーと、
    前記アンコイラーレベラーの下流に配置されたブランキング装置と、
    前記ブランキング装置の下流に配置された搬送装置と、
    前記プレス装置の中、または下流に配置された形状測定装置と、をさらに備え、
    プレス装置は、前記搬送装置の下流に配置される、プレスライン。
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