JPWO2020049655A1 - 電気めっき浴、電気めっき製品の製造方法、及び電気めっき装置 - Google Patents

電気めっき浴、電気めっき製品の製造方法、及び電気めっき装置 Download PDF

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Abstract

本発明の一態様に係る電気めっき浴は、20〜200g/LのCoイオンと、70〜250g/LのClイオンと、を含み、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンのモル濃度の合計値が1.2mol/L以下である。本発明の別の態様に係る電気めっき製品の製造方法は、可溶性陽極と、陰極に接続された部材とを電気めっき浴に浸漬して通電する工程を備え、電気めっき浴を、上記の電気めっき浴とし、通電において、電流の通電方向を一方向とする。本発明の別の態様に係る電気めっき装置は、可溶性陽極と、陰極と、電気めっき浴と、制御装置とを備え、電気めっき浴が、上記の電気めっき浴であり、制御装置が、電流の通電方向を一方向とするように構成される。

Description

本発明は、電気めっき浴、電気めっき製品の製造方法、及び電気めっき装置に関する。
電気Coめっき方法、及び電気Co−Niめっき方法の形態としては、可溶性陽極を用いる方法、及び不溶性陽極を用いる方法が知られる。可溶性陽極とは、例えばめっき源となる金属から構成されるインゴット、又はめっき源となる金属片とこれを収納する不溶性容器とから構成されるもの(バスケット型陽極と称される場合がある)である。作業性、及びめっきの均一性等を考慮すると、不溶性容器とめっき源とから構成される可溶性陽極の方が好ましいとされている。例えば特許文献1には、めっき浴中でめっき原料粒を収容し、鋼帯の電解めっきに用いられるバスケット型アノードであって、当該バスケット型アノードは、前記鋼帯に対向して配置されるTi製の網状部材を備え、前記網状部材が白金族元素を含有する、バスケット型アノードが開示されている。
可溶性陽極を用いるCoめっき方法に使用するCoめっき浴としては、硫酸コバルトやスルファミン酸コバルトをCo源とし、それらにほう酸や塩化コバルト、塩化ナトリウム等を加えた浴が多く用いられている。また、このようなCoめっき浴にさらにNiを加えて、Co−Ni合金めっきを行うこともできる。非特許文献1では、硫酸Ni、塩化Ni、硫酸Co、ホウ酸からなるめっき浴を用い、Niペレット及びCoペレットをTiバスケットに充填した不溶性バスケット型可溶性陽極で、Ni−Co合金めっきすることが示されている。特許文献2では、硫酸Ni、塩化Ni、硫酸Co、ホウ酸、ラウリル硫酸ナトリウムからなるめっき浴を用い、NiペレットをTiバスケットに充填した不溶性バスケット型可溶性陽極で、Ni−Co合金めっきすることが示されている。
可溶性陽極を用いた電気Coめっき及び電気Ni−Co合金めっきは、高価な金属塩ではなく安価な金属片をめっき源として用いることができるという利点を有する。しかし近年は、めっき製品の生産効率の一層の向上が求められており、それに起因して可溶性陽極を用いた電気めっきには以下に説明する課題が生じていた。
Coめっき製品及びCo−Niめっき製品の生産効率の向上の手段の一つは、電流密度を向上させるために、電気めっき浴中のめっき源のイオン濃度を高めることである。しかしながら、電気めっき浴中のCo濃度を高めると、可溶性陽極を構成する不溶性部品上で、黒色スラッジ反応が進行する場合がある。黒色スラッジ反応とは、電気めっき浴中のCo2+が酸化されてCoO(OH)が生じる反応である。可溶性陽極であっても、不溶性容器を用いず金属Coの板あるいはインゴット等を直接陽極に用いる場合にはこのような反応は起きにくい。可溶性陽極の不溶性容器は、理想的にはめっき源と電源との間の電子伝導を担う働きのみを有し、この表面において黒色スラッジ反応のような電気化学反応は生じないはずである。しかし現実的には、例えば鉄鋼薄板の連続表面処理プロセスに代表される大規模かつ高速のめっき処理においては、不溶性容器の表面において黒色スラッジ反応が生じる。これは、小規模な部品めっきであれば、被めっき材の周囲に多数の陽極を配置することが可能で、めっき電流密度に対して陽極の電流密度を低く抑えることが可能であるものの、連続表面処理プロセスに代表される大規模かつ高速のめっき処理においては、めっき電流密度とほぼ同程度の電流密度が陽極にも負荷されることが一因である。
黒色スラッジが生じうる状態で連続めっきすると、黒色スラッジが浴を汚染することによりめっき浴の特性が変化したり、陽極表面が黒色スラッジに覆われることによって電解抵抗の増大が生じ、電力消費量が増大したり、場合によってはめっき装置の能力を超える高電圧が必要となってしまったりする場合がある。このような場合には、浴及び陽極の交換が必要となるので、めっき製品の生産効率が損なわれる。
Coめっき製品及びCo−Niめっき製品の生産効率の向上の別の手段は、可溶性陽極の金属Coを効率的に溶解させるために、電気めっき浴に塩化物イオンを含有させることである。塩化物イオンは、陽極での金属Coの溶解を促進する働きを有する。可溶性陽極の溶解を促進することで、電気めっき浴中のめっき源のイオン濃度を高め、電流密度を向上させることができる。例えば一般的なWatt浴型Coめっき浴の塩化物イオン濃度は、約10〜20g/Lである。しかし、塩化物イオンを含有する電気めっき浴を用いた電気めっきにおいては、塩素ガスが発生する。例えばこの電気めっき浴を10A/dm超の電流密度の電気めっきに適用した場合、電気めっき装置の周辺に臭気が充満するおそれがある。
不溶性容器を有する可溶性陽極と、Co濃度が高い電気めっき浴とを組み合わせたCoめっき製品及びCo−Niめっき製品の製造方法においては、塩素ガス及び黒色スラッジの発生が問題となる。電流密度を高く保ちながらこれらの問題点を解決する手段は知られていない。
国際公開第2015/198958号パンフレット 特開2007−122940号公報
東洋鋼鈑、vol.39、p17
本発明は、電流密度を高めるために高いCoイオン濃度を有し、且つ可溶性陽極と組み合わせて用いられても塩素ガスの発生を抑制可能な電気めっき浴を提供することを課題とする。さらに本発明は、高いCoイオン濃度を有する電気めっき浴と可溶性陽極とを組み合わせて用い、且つ電流密度を高くしながらも塩素ガス及び黒色スラッジ反応を抑制可能な、電気めっき製品の製造方法及び電気めっき装置を提供することを課題とする。
技術常識によれば、電気めっき浴からの塩素ガスの発生の抑制を試みる場合、電気めっき浴の塩化物イオン濃度の減少、電流密度の減少、及び塩化物イオンを置き換え可能な他の成分の検討などが有効であると予想されるところである。本発明者らはこの予想と全く相違する知見を得た。即ち本発明者らは、鋭意検討した結果、電気めっき浴からの塩素ガスの発生を抑制するためには、電気めっき浴の塩化物イオン濃度を上昇させることが有効であることを発見した。具体的には、電気めっき浴中の塩化物イオン濃度を70g/L以上とした場合、電気めっき中にほとんど臭気が発生しないことが見出された。例えば一般的なWatt浴型Coめっき浴の塩化物イオン濃度は、約10〜20g/Lであり、本発明者らが見出した好適な塩化物イオン濃度は、これの3倍以上の量である。また、本発明者らは、電気めっき浴の塩化物イオン濃度の増大が、黒色スラッジ反応の抑制にも寄与することを見出した。
上述の知見に基づいて得られた電気めっき浴を用いれば、電流密度を高めるために高いCoイオン濃度を有し、且つ可溶性陽極と組み合わせても、塩素ガス及び黒色スラッジの発生を抑制可能である。しかし本発明者らは、電気めっき時の電流パターンをパルス形状にしないこと、及び、可溶性陽極が有する不溶性容器において、電気的絶縁領域と、露出領域との両方を好ましく配置することによって、黒色スラッジ反応を一層効率的に抑制可能であることも知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、その要旨は次の通りである。
(1)本発明に係る電気めっき浴は、20〜200g/LのCoイオンと、70〜250g/LのClイオンと、を含み、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンのモル濃度の合計値が1.20mol/L以下である。
(2)上記(1)に記載の電気めっき浴は、さらに100g/L以下のNiイオンを含んでもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の電気めっき浴では、前記Clイオンの質量濃度/前記Coイオンの質量濃度が1.2以上であってもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の電気めっき浴では、Kイオンのモル濃度が1.0mol/L以下であり、前記アルカリ土類金属イオン及び前記Alイオンのモル濃度の合計値が0.35mol/L以下であってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の電気めっき浴は、前記Coイオンを35g/L以上含んでもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の電気めっき浴は、前記Clイオンを100〜200g/L含んでもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の電気めっき浴では、前記Coイオンが、硫酸コバルト、スルファミン酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、及びフッ化コバルトからなる群から選択される一種以上の水溶性Co塩のCoイオンであってもよい。
(8)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の電気めっき浴では、前記Coイオンが、塩化コバルト、及びフッ化コバルトからなる群から選択される一種以上のハロゲン化合物のCoイオンであってもよい。
(9)本発明の別の態様に係る電気めっき製品の製造方法は、可溶性陽極と、陰極に接続された部材とを電気めっき浴に浸漬して通電する工程を備え、前記電気めっき浴を、上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の電気めっき浴とし、前記通電において、電流の通電方向を一方向とする。
(10)上記(9)に記載の電気めっき製品の製造方法では、前記可溶性陽極が、めっき源と、前記めっき源が充填され、且つ前記めっき源と電気的に接続された、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、及びハステロイから選ばれる一種以上の金属製の不溶性容器と、を備え、前記不溶性容器が、前記不溶性容器の内側と外側とが連通するように構成された通液部を有し、前記部材に対して前記通液部が対向するように前記可溶性陽極を配置してもよい。
(11)上記(10)に記載の電気めっき製品の製造方法では、前記不溶性容器の内面のうち、前記めっき源と接触する部分の全面が露出していてもよい。
(12)上記(10)又は(11)に記載の電気めっき製品の製造方法では、前記不溶性容器の外面の少なくとも一部が電気的絶縁領域とされており、前記不溶性容器の前記外面のうち、前記めっき源よりも前記部材に近い領域の全てを前記電気的絶縁領域とするように、前記部材及び前記可溶性陽極を配置してもよい。
(13)上記(10)〜(12)のいずれか一項に記載の電気めっき製品の製造方法では、前記不溶性容器が略四角柱形状を有し、前記不溶性容器の第一の外側面、その両側の第二の外側面及び第三の外側面、並びに外底面が、前記電気的絶縁領域とされており、前記部材に対して前記第一の外側面が対向するように前記可溶性陽極を配置し、これにより前記めっき源よりも前記部材に近い前記領域の全てを前記電気的絶縁領域としてもよい。
(14)上記(13)に記載の電気めっき製品の製造方法では、前記不溶性容器の前記第一の外側面の反対側の第四の外側面の下部が、前記電気的絶縁領域とされていてもよい。
(15)上記(10)〜(14)のいずれか一項に記載の電気めっき製品の製造方法では「前記不溶性容器の前記内面のうち、前記めっき源と接触しない部分が、前記電気的絶縁領域とされていてもよい。
(16)上記(9)〜(15)のいずれか一項に記載の電気めっき製品の製造方法では、前処理として、前記部材にNiめっき又はNi合金めっきする工程を備えてもよい。
(17)上記(9)〜(16)のいずれか一項に記載の電気めっき製品の製造方法では、前記可溶性陽極の前記めっき源が、Co片、Ni片、及びCo−Ni合金片からなる群から選択される一種以上を含んでもよい。
(18)上記(9)〜(17)のいずれか一項に記載の電気めっき製品の製造方法では、前記部材の形状が板形状であってもよい。
(19)本発明の別の態様に係る電気めっき装置は、可溶性陽極と、陰極と、電気めっき浴と、制御装置とを備え、前記電気めっき浴が、上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の電気めっき浴であり、前記制御装置は、電流の通電方向を一方向とするように構成され、前記可溶性陽極が、めっき源と、前記めっき源が収納され、且つ前記めっき源と電気的に接続された、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、及びハステロイから選ばれる一種以上の金属製の不溶性容器と、を備え、前記不溶性容器が、前記不溶性容器の内側と外側とが連通するように構成された通液部を有し、前記陰極と前記通液部とが対向するように、前記陰極及び前記可溶性陽極が配置され、前記不溶性容器の内面のうち、前記めっき源と接触する部分の全面が露出され、前記不溶性容器が略四角柱形状を有し、前記不溶性容器の第一の外側面、その両側の第二の外側面及び第三の外側面、並びに外底面それぞれが、電気的絶縁領域とされており、前記陰極と前記第一の外側面とが対向するように、前記陰極及び前記可溶性陽極が配置され、これにより前記めっき源よりも前記陰極に近い領域の全てが前記電気的絶縁領域とされ、前記不溶性容器の前記第一の外側面の反対側の第四の外側面の下部が、前記電気的絶縁領域とされ、前記不溶性容器の前記内側のうち、前記めっき源と接触しない部分が、前記電気的絶縁領域とされ、前記めっき源が、Co片、Ni片、及びCo−Ni合金片からなる群から選択される一種以上を含む。
本発明に係る電気めっき浴は、電流密度を高めるためにCoイオン濃度が高められ、且つ可溶性陽極と組み合わせて用いられても、塩素ガスの発生を抑制可能である。本発明に係る電気めっき製品の製造方法、及び本発明に係る電気めっき装置は、高いCoイオン濃度を有する電気めっき浴と可溶性陽極とを組み合わせて用い、且つ電流密度を高くしながらも塩素ガス及び黒色スラッジ反応を抑制可能である。従って本発明によれば、Coめっき製品又はCo−Ni合金めっき製品を高効率で製造することができる。
電気めっき装置の一例を示す概略図である。 不溶性容器の一例を示す概略図である。 不溶性容器の一例を示す側面概略図である。 図3Aの不溶性容器の上面概略図である。 不溶性容器の一例を示す側面概略図である。 図4Aの不溶性容器の上面概略図である。 不溶性容器の一例を示す側面概略図である。 図5Aの不溶性容器の上面概略図である。 不溶性容器の一例を示す側面概略図である。 図6Aの不溶性容器の上面概略図である。 不溶性容器の一例を示す側面概略図である。 図7Aの不溶性容器の上面概略図である。 不溶性容器の一例を示す側面概略図である。 図8Aの不溶性容器の上面概略図である。 不溶性容器の一例を示す側面概略図である。 図9Aの不溶性容器の上面概略図である。 不溶性容器の一例を示す側面概略図である。 図10Aの不溶性容器の上面概略図である。
本発明者らは、電流密度を高めるために高いCoイオン濃度を有し、且つ可溶性陽極と組み合わせて用いられても塩素ガス及び黒色スラッジの発生を抑制可能な電気めっき浴について鋭意検討を重ねた。その結果、電気めっき浴を全塩化物浴にしたり、電気めっき浴に塩化物を含有させたりすることにより、塩化物イオン濃度を70g/L以上にすると、塩素臭をほとんど感じないレベルまで塩素ガス発生を抑制できることが分かった。塩素ガス源である塩化物イオンの量の増大が塩素ガス発生量を減少させるという、予想とは逆の現象が生じる原因は明らかではない。塩化物イオンの量の増大によって可溶性陽極のめっき源の溶解反応が促進されることが、塩素ガス発生量の抑制に寄与している可能性があると考えられている。
また、塩化物イオン濃度を高くすることが、Co2+からCoO(OH)への酸化反応(黒色スラッジ反応)の抑制にも寄与することがわかった。黒色スラッジ反応は、主に可溶性陽極の不溶性容器の表面において発生するものであるが、塩化物イオン濃度を高めることによって、可溶性陽極のめっき源の溶解反応が優先され、黒色スラッジ反応が不活性化すると考えられている。
上述の特徴点を備える電気めっき浴を用いれば、特に可溶性陽極の種類を限定することなく、塩素ガス及び黒色スラッジの発生を実用的な水準まで低減することが可能である。しかしながら本発明者らはさらなる検討を重ねた。その結果、可溶性陽極を構成する不溶性容器に電気的絶縁領域を設けることが、黒色スラッジ反応の抑制に一層効果的であることがわかった。黒色スラッジ反応は主に不溶性容器の表面で生じるが、電気的絶縁領域ではこの反応が生じないからである。特に、不溶性容器におけるめっき源よりも陰極(又は陰極に接続された部材)に近い領域に電気的絶縁領域を設けた場合、黒色スラッジ反応に伴う電極の変色を防止することができた。また、陰極及び陽極を反転させるパルス状通電を避けるべきであるという知見をも本発明者らは得た。陰極及び陽極を反転させるパルス状通電は、めっきを溶解させることによりめっきの付着効率を低下させ、微小な黒色スラッジのめっき巻き込みに起因すると推定されるめっき不良も引き起こすことがあり、さらに、陽極での金属Coの溶解をも阻害することがわかった。
しかしながら、上述の手段だけでは黒色スラッジ反応を完全に抑制することができなかった。本発明者らは、不溶性容器においてめっき源と接しうる領域には、むしろ電気的絶縁領域を設けないことが黒色スラッジの抑制のために好ましいことを知見した。不溶性容器とめっき源とが接触しうる領域が電気的絶縁領域を含む場合、電流密度の不均一化、及びCoイオン濃度の不均一化が生じ、これが黒色スラッジ反応を促進すると考えられている。
以上の知見に基づいて得られた本実施形態に係る電気めっき浴、本実施形態に係る電気めっき製品の製造方法、及び本実施形態に係る電気めっき装置について、以下に説明する。
1.電気めっき浴について
本実施形態に係る電気めっき浴は、例えば可溶性陽極を用いたCoめっき及びCo−Ni合金めっきのために用いることができる。まず、以下に、本実施形態に係る電気めっき浴について説明する。
本実施形態に係る電気めっき浴としては、水溶性のCo塩をCo源とした電気めっき浴を用いることができる。電気めっき浴中のCoイオン濃度は、20〜200g/Lとする。Coイオン濃度が不足する場合、陰極電流密度を低くする必要が生じるので、めっきの生産効率が減少する。一方、Coイオン濃度が高すぎる場合、電気めっき浴の安定性が低下し、めっき不良が生じるおそれがある。Coイオン濃度を25g/L以上、35g/L以上、40g/L以上、又は60g/L以上としてもよい。Coイオン濃度を180g/L以下、150g/L以下、又は120g/L以下としてもよい。
水溶性の高いCo塩の種類は特に限定されるものではないが、例えば硫酸コバルト、スルファミン酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、及びフッ化コバルトなどからなる群から選択される一種以上である。これらをCo源として用いた電気めっき浴は、硫酸イオン、スルファミン酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、及びフッ化物イオンからなる群から選択される一種以上を含むこととなる。なお、可溶性陽極が有するCo等の可溶性金属の溶解を促進するために、塩化コバルト、及びフッ化コバルト等のハロゲン化合物を電気めっきのCo源として用いることが望ましい。ただし、ハロゲン化物の中でもヨウ化物については、電気めっきのCo源として不適切である。ヨウ化物イオンは、酸化還元電位が比較的低く、陽極で容易に酸化されるからである。ヨウ化物イオンが陽極で酸化された結果として、Co等の金属の溶解が抑制され、さらに、生成したヨウ素が浴安定性及びめっき性状にも悪影響を与える。
一般に電気めっき浴においては、溶液の電気抵抗を下げるために、所謂支持電解質が添加される場合がある。支持電解質とは、水溶液中では電析しがたいカチオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオン等の水溶性塩である。なお、Be及びMgはアルカリ土類金属に分類されない場合があるが、本実施形態に係る電気めっき浴においてアルカリ土類金属はBe及びMgを含むものとみなす。本実施形態に係る電気めっき浴においては、これら支持電解質の含有は許容される。ただし本実施形態に係る電気めっき浴においては、前述したようにめっき浴中のCoイオン濃度が比較的高いため、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンは、めっき浴の粘度を上げる作用があると推定される。その結果として支持電解質は、可溶性陽極での溶解反応を阻害し、塩素ガス発生及び黒色スラッジ反応を引き起こす場合がある。そのため、本実施形態に係る電気めっき浴は原則的に支持電解質を含有しないことが望ましい。本実施形態に係る電気めっき浴に支持電解質を含有させる場合には、支持電解質のカチオン成分であるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンの濃度を可能な限り制限する必要がある。具体的には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンのモル濃度の合計値を1.20mol/L以下とすることが、塩素ガス発生及び黒色スラッジ反応の抑制のために必要である。アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンのモル濃度の合計値を1.20mol/L以下、1.15mol/L以下、1.10mol/L以下、又は1.00mol/L以下としてもよい。
さらに、上述の規定を満たした上で、支持電解質のカチオン成分を構成しうる個別のイオンに関しても濃度の上限値を設けることが好ましい。個別のイオンの許容範囲について具体的に検討すると、以下の通りである。電気めっき浴が、アルカリ金属イオンとして、Liイオン、及びNaイオンの一方又は両方を含有する場合は、Liイオン及びNaイオンの合計濃度は1.20mol/L以下、1.15mol/L以下、1.10mol/L以下、又は、1.00mol/L以下とすることが好ましい。電気めっき浴が、アルカリ金属イオンとしてKイオンを含有する場合には、Kイオンの濃度は1.20mol/L以下、1.10mol/L以下、1.00mol/L以下、0.95mol/L以下、又は0.90mol/L以下とすることが好ましい。アルカリ金属のうちRbイオン、及びCsイオンについては、コストも高く、支持電解質のカチオンとして一般的なものではないことから、その濃度を不純物レベルに抑えるべきである。電気めっき浴が、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンからなる群から選択される一種以上を含有する場合は、その合計濃度は0.50mol/L以下、0.45mol/L以下、0.40mol/L以下、又は0.35mol/l以下とすることが好ましい。
なお、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンを、支持電解質のカチオンとしてではなく、前述の塩化物イオン添加のための塩化物のカチオンとして、電気めっきに添加してもよい。しかし、この場合であっても、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンの合計の濃度を前記の範囲となるようにする。
また、本実施形態に係る電気めっき浴は、さらに、硫酸イオン、スルファミン酸イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、ほう酸イオン及び臭化物イオンからなる群から選択される一種以上をさらに含有してもよい。これらは、めっき時のpHの変動を抑制するための緩衝剤として有効である。その中でもほう酸イオンが、安定性に鑑みて使いやすい。なお、ハロゲンアニオンの中でヨウ化物イオンについては、前述したように使用を避けるべきであることは言うまでもない。また、光沢剤等の他の公知の添加剤も電気めっき浴に添加することができる。
電気めっき浴としては、工業的な利用の観点から、Coめっき浴又はNi−Co合金めっき浴が有効であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
電気めっき浴がNiイオンを含んでもよい。このような電気めっき浴によれば、Co−Ni合金めっきを形成することができる。また、Niイオンが黒色スラッジ反応を促進する等の不具合を生じさせることはないと考えられている。電気めっき浴の安定性を考慮すると、Niイオンの濃度は0〜100g/Lとすることが好ましい。Niイオン濃度を5g/L以上、10g/L以上、又は20g/L以上としてもよい。Niイオン濃度を80g/L以下、50g/L以下、又は40g/L以下としてもよい。Ni源としては特に限定されるものではないが、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、及びフッ化ニッケルなどが挙げられる。Ni及び/又はCoの溶解を促進するために、塩化ニッケル等のハロゲン化合物を用いることが望ましい。この場合にもハロゲン化物としてヨウ化物を用いることを避けるべきであることは言うまでもない。なお、Coめっきの諸特性を向上させるために、微量な合金元素をCoめっきに添加させる場合、電気めっき浴にその合金元素のイオンをさらに含有させることができる。
本実施形態に係る電気めっき浴はClイオンを含む。Clイオンは、可溶性陽極のめっき源の溶解を促進する作用を有する。Clイオンが含まれない場合、Co等のめっき源の溶解の進展速度が遅くなるので、電気めっき浴のイオンバランスが維持できない。
本実施形態に係る電気めっき浴のClイオンの濃度は70〜250g/Lとされる。Clイオンの濃度が70g/L未満である場合、電気めっき中に塩素ガスが大量に発生し、電気めっき装置の周囲に臭気が充満することとなる。この場合、電気めっき装置に排気設備等を設けることが必須となり、電気めっきの経済性及び作業性が損なわれる。従って、Clイオンの濃度は70g/L以上とされる。Clイオンの不足によって塩素ガスが発生する理由は、Co等のめっき源の溶解の進展速度が不十分であるからであると考えられている。Clイオンの濃度を80g/L以上、90g/L以上、100g/L以上、又は120g/L以上としてもよい。一方、Clイオンの濃度が過剰であると、不溶性容器などのめっき設備の腐食が深刻化する。従って、Clイオンの濃度は250g/L以下とする。Clイオンの濃度を200g/L以下、180g/L以下、160g/L以下、150g/L以下、又は130g/L以下としてもよい。
より有利な実施形態として、Clイオン濃度とCoイオン濃度の比率も所定の値に制御することが好ましい。Coイオン濃度が増加するほど、塩素臭の抑制に対しては不利な条件となることから、Clイオン濃度も高くすることが好ましい。具体的には、Clイオンの質量濃度/Coイオンの質量濃度(Clイオンの質量濃度をCoイオンの質量濃度で割って得られる値)を1.2以上とすることが好ましい。Coイオン源のすべてを塩化物とする全塩化物浴については、Clイオンの質量濃度/Coイオンの質量濃度が1.2となるが、ここに更に別の塩化物を添加することによって、Clイオンの質量濃度/Coイオンの質量濃度を増加させることがより好ましい。Clイオンの質量濃度/Coイオンの質量濃度を1.3以上、1.5以上、又は1.8以上としてもよい。Co塩化物以外の塩化物を構成する塩化物イオンは、例えばアンモニウムイオンとすることが好ましい。
2.めっき製品の製造方法(電気めっき方法)について
次に、本実施形態に係る電気めっき製品の製造方法について説明する。本実施形態に係る電気めっき方法は、可溶性陽極11と、陰極に接続された部材12とを電気めっき浴10に浸漬して通電する工程を備え、この電気めっき浴10を、本実施形態に係る電気めっき浴とするものである。電気めっき浴10が20g/L以上のCoイオンを含むので、本実施形態に係る電気めっき製品の製造方法は、高い電流密度で高効率のめっき作業を行うことができる。また、電気めっき浴10がClイオンを70g/L以上含むので、本実施形態に係る電気めっき製品の製造方法は、塩素ガスの発生を抑制することができる。
電気めっきのための電流密度は特に限定されないが、めっき作業の生産性を向上させるためには、高い方が好ましい。少なくとも、10〜30A/dm程度の高い電流密度を、本実施形態に係るめっき製品の製造方法に適用可能である。電流密度の上限は、一般的には100A/dm程度であるが、これら条件に限定されるものではない。
めっき電流は、通常の直流通電とすることが望ましい。いわゆるパルス状通電は避けるべきである。特に、陰極及び陽極を反転させるパルス状通電は、めっきを溶解させることによりめっきの付着効率を低下させる。さらに、通電方向の反転は、微小な黒色スラッジのめっき巻き込みに起因すると推定される、めっき不良も引き起こすことがある。また、通電方向の反転は、陽極での金属Coの溶解をも阻害する。
以上の事情に鑑みて、本実施形態に係るめっき製品の製造方法では少なくとも、電流の通電方向を一方向とすること、即ち、陽極と陰極とを反転させるようなパルス電流パターンを生じさせないことが必要である。陽極と陰極とを反転させることなく電流値を増減させるようなパルス電流パターンは許容される。ただしこの場合でも、電流値の最小値が0Aとなるようなパルス電流パターンは、めっき効率を損なうので好ましくない。
本実施形態に係る電気めっき製品の製造方法を用いるための装置は特に限定されないが、例えば、図1に例示される電気めっき装置1を用いることができる。図1の電気めっき装置1は、電気めっき浴10と、可溶性陽極11と、陰極に接続された部材12とを備え、可溶性陽極11は、不溶性容器100と、めっき源101とを有し、不溶性容器100は、通液部111と、好ましくは電気的絶縁領域112とを有する。本実施形態に係る電気めっき製品の製造方法においては、好ましくは、可溶性陽極11の構成と、陰極に接続された部材12に対する可溶性陽極11の配置とが下記のように規定される。
可溶性陽極11は特に限定されないが、例えば、めっき源101と、めっき源101が収納され、且つめっき源101と電気的に接続された、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、及びハステロイから選ばれる一種以上の金属製の不溶性容器100と、を備え、この不溶性容器100が、不溶性容器100の内側と外側とが連通するように構成された通液部111を有するものとしてもよい。一方、めっき源101からなるインゴットを可溶性陽極11として用いてもよい。この場合、可溶性陽極11とめっき源101とは同視され、可溶性陽極11は不溶性容器100を有しない。
めっき源101は、Coめっきを形成する際は、Co片とすればよい。Co片の形状は、例えば板形状及び粒形状等である。Co−Ni合金めっきを形成する際には、めっき源101をCo片、Co−Ni合金片、及びNi片からなる群から選択される一種以上を含むものとすればよい。めっきの諸特性を向上させるために微量元素をめっきにさらに含有させる場合は、めっき源101に微量元素の金属片、又は微量元素を含有する合金片等を含有させることができる。
不溶性容器100は、不溶性バスケットと称されることもあり、Co片等のめっき源101を電気めっき浴10中に保持し、且つめっき源101と電源とを電気的に接続するために設けられる。この不溶性容器100は、本実施形態に係る電気めっき浴10中に溶解しない導電性材料で構成される必要があり、例えばチタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、及びハステロイから選ばれる一種以上の金属製とすることができる。材料費を考慮すると、Tiを不溶性容器100の材料とすることが好ましい。またTiに微量合金元素(例えばPd、Ru等)を添加した耐食Ti合金も好適に用いられる。
また、この不溶性容器100は、不溶性容器100の内側と外側とが連通するように構成された通液部111を有する必要がある。電気めっき中は、溶解しためっき源101が、この通液部111を介して不溶性容器100の内部から外部へ流出し、陰極に接続された部材12に付着することとなる。この溶解しためっき源101の流れを妨げないようにするために、部材12に対して通液部111が対向するように可溶性陽極11を配置することが好ましい。不溶性容器100の全体を通液部111としても良く、一方、図2に示されるようにその一部を通液部111としても良い。なお、前記通液部111は図2に示されるように網状に形成することが好ましい。なお、ここでの網状とはラス状、エキスパンド状の形態も含むものである。
不溶性容器100の内面においては、不溶性容器100とめっき源101とが導通するように、不溶性容器100とめっき源101とが接触する領域の少なくとも一部が露出されている必要がある。ここで露出とは、不溶性容器100と電気めっき浴10とが接触及び通電するように、不溶性容器100を構成する金属が露出されていることをいう。絶縁皮膜などを用いて、不溶性容器100とめっき源101とが接触する領域の全面を電気的絶縁領域112とした場合、めっき源101と電源とを接続するという不溶性容器100の機能が果たされなくなる。
好ましくは、不溶性容器100とめっき源101とが接触する領域の全面が露出される。不溶性容器100とめっき源101とが接触する領域の一部が電気的絶縁領域112とされ、残りが露出領域とされた場合、露出領域において黒色スラッジが発生するおそれがある。これは、露出領域に電流が集中することにより、電流密度が局所的に増大し、Co2+からCoO(OH)への酸化反応(黒色スラッジ反応)が生じやすくなるからであると推定される。またこの場合、不溶性容器100の内側においては電気めっき浴が滞留し、Co2+の濃度が局所的に増大することも、黒色スラッジ反応の促進に寄与していると推定される。ただし、不溶性容器100とめっき源101とが接触する領域の一部が電気的絶縁領域112とされた可溶性陽極11であっても、本実施形態に係る電気めっき浴と組み合わせて用いる場合は黒色スラッジの発生量を実用上不都合が無い水準に保つことができる。
ただし、後述のように、不溶性容器の内面のうちめっき源101と接触しない部分に関しては、絶縁皮膜等を用いて形成された電気的絶縁領域112としてもよい。めっき源101と接触しない部分における電気的絶縁領域112は、電流の流れの均一性を妨げず、また、後述する黒色スラッジ反応の抑制に寄与するからである。
なお、前述のようにCo2+の濃度が局所的に増大することが黒色スラッジ反応の促進に寄与していると考えられることから、めっき浴を撹拌してCo2+濃度の均一化を図ることが望ましい。撹拌する方法としては、サーキュレーターなどを用いてめっき浴流れを形成する方法、及び不活性ガスバブリングを行う方法などが用いられる。なお、バブリング用のガスとして空気等の酸化作用のあるガスを用いると、これが黒色スラッジ反応を促進するので好ましくない。
不溶性容器100の外面は、絶縁皮膜等を用いて形成された電気的絶縁領域112を有することが好ましい。電気的絶縁領域112においては、Co2+からCoO(OH)への酸化反応が生じないので、黒色スラッジの発生が抑制される。ただし、図3A及び図3Bに例示される可溶性陽極11のように、電気的絶縁領域112を有しない可溶性陽極11であっても、本実施形態に係る電気めっき浴と組み合わせて用いる場合は黒色スラッジの発生量を実用上不都合が無い水準に保つことができる。
黒色スラッジの発生を抑制する観点からは、図5A及び図5Bに例示される可溶性陽極11のように、不溶性容器100の外部全体を電気的絶縁領域112とすることが好ましい。一方、コストの観点から、黒色スラッジが特に発生しやすい箇所のみに電気的絶縁領域112を配置することが、全体的な観点から好ましい場合がある。以下に、電気的絶縁領域112の配置の例を説明する。
可溶性陽極11において最も黒色スラッジ反応が生じやすい箇所は、陰極及び部材12と正対する面である。従って、不溶性容器100の外面のうち、部材12に正対する領域を電気的絶縁領域とするように不溶性容器100を構成し、配置することがよい。例えば、例えば、不溶性容器100が図2に示されるような略四角柱形状を有するものである場合、図4A及び図4Bに示されるように、不溶性容器100の第一の外側面(陰極側から見て前面)を電気的絶縁領域とすることが良い。
電流は、電気めっき浴中で、陰極に接続された部材12と、めっき源101との間を流れる。従って、不溶性容器100の外面のうち、めっき源101よりも部材12に近い領域の全てを電気的絶縁領域とするように不溶性容器100を構成し、配置することがよい。例えば、不溶性容器100が図2に示されるような略四角柱形状を有するものである場合、図6A及び図6Bに示されるように、不溶性容器100の第一の外側面(陰極側から見て前面)と、第一の外側面の両側の第二の外側面及び第三の外側面(陰極側から見て側面)と、外底面とを電気的絶縁領域とし、部材12に対して第一の外側面が対向するように可溶性陽極11を配置することで、不溶性容器100の外面のうち、めっき源101よりも部材12に近い領域を電気的絶縁領域とすることができる。
上述の領域に加えて、本発明者らの実験によれば、不溶性容器100の第一の外側面の反対側の第四の外側面の下部においても黒色スラッジが発生しやすいことが知見された。従って、図7A及び図7Bに示されるように、不溶性容器100の第一〜第三の外側面及び外底面に加えて、不溶性容器100の第一の外側面の反対側の第四の外側面(陰極側から見て背面)の下部(例えば、第四の外側面の下端から、第四の外側面の高さの20%以内の領域)も、電気的絶縁領域112としてもよい。
また、本発明者らの実験によれば、不溶性容器100の内面のうちめっき源101と接触しない部分においても黒色スラッジが発生しやすいことが知見された。従って、図8A及び図8B、並びに図9A及び図9Bに示されるように、不溶性容器100の内面のうちめっき源101と接触しない部分を電気的絶縁領域112としてもよい。めっき源101と接触しない部分における電気的絶縁領域112は、電流の流れの均一性を妨げない。図8A及び図8B、並びに図9A及び図9Bに示される構成は、めっき源101が電気めっき浴10の中に完全に没している場合、即ちめっき源101が喫水線以下にのみ存在するように可溶性陽極11が配置された場合に特に有効である。なお、不溶性容器100の内面の、めっき源101と接触しない部分のうち、陰極に近い部分は比較的黒色スラッジが発生しにくい傾向にある。これは、不溶性容器100の、陰極に面した電気的絶縁領域112の作用によるものと考えられる。従って、電気的絶縁領域の面積を小さくすることが望ましい場合、図8A及び図8Bに示されるように、不溶性容器100の内面の、めっき源101と接触しない部分のうち、陰極に遠い部分(例えば第四の外側面の反対側の内面)にのみ電気的絶縁領域112を設けてもよい。一方、図10A及び図10Bに示されるように、電気的絶縁領域112が不溶性容器100とめっき源101とが接触する領域にまで及ぶと、上述のように電流密度及びCoイオン濃度の不均一が生じる恐れがある。ただしこの場合でも、本実施形態に係る電気めっき浴と組み合わせて用いる場合は黒色スラッジの発生量を実用上不都合が無い水準に保つことができる。
なお、電気的絶縁領域112は、Co2+からCoO(OH)への酸化反応を抑制するためのものであるので、Co2+が存在する喫水領域においてのみ形成させればよい。従って、上述した電気的絶縁領域112を形成すべき箇所は、不溶性容器100の喫水領域である。一方、電気めっき浴10の水面の位置が一定しない場合などに備えて、不溶性容器100の非喫水領域に電気的絶縁領域112を設けてもよい。
電気的絶縁領域は、上述のように、絶縁皮膜を用いて形成することが出来る。例えば、アルミナ、イットリア、ジルコニア、チタニア、クロミア等のセラミック溶射や、ゴム、樹脂(例えばふっ素樹脂、ポリイミド樹脂)の被覆により形成することができるが、これらに限定されるものではない。例えば、不溶性容器100を複数の部品からなるものとし、部品同士の間に絶縁材料を挿入する(例えば部品同士を、樹脂ボルトなどの絶縁性樹脂材料で連結する)ことによっても、電気的絶縁領域112を形成することができる。ただし、このような手段で電気的絶縁領域112を形成した場合、不溶性容器100の内面も電気的絶縁領域112となってしまい、上述のように電流密度の局所的な増大、及びCo2+の濃度の局所的な増大などが生じるおそれがある。従って、電気的絶縁領域112を形成するための好適な手段は絶縁皮膜の形成である。
部材12の形状は特に限定されない。本実施形態に係る電気めっき製品の製造方法は、どのような形状の部材12に適用されたとしても、塩素ガスの発生及び黒色スラッジの発生を抑制しながら、電流密度を高めてめっき効率を改善することができる。一方、部材12の形状を板状としてもよい。部材12の形状を板状とした場合、電流密度を向上させてもめっき厚の均一性が保たれるからである。部材12を鋼板とし、不溶性容器100のうち少なくとも鋼板に対向する箇所を平面とし、鋼板と不溶性容器100の該箇所とが平行になるように両者を配置することで、めっきの均一性を一層高めることができる。
部材12の材質も特に限定されず、無垢の金属、Niめっき鋼材、Ni合金めっき鋼材、及びCoの電解精錬としてCo材などを用いることができる。特に、Ni又はNi合金でめっきした鋼材を部材12とすると、鋼材から電気めっき浴10への金属の溶解を抑制でき、好ましい。従って、本実施形態に係る電気めっき製品の製造方法は、前処理として、部材12にNiめっき又はNi合金めっきする工程を備えてもよい。
3.電気めっき装置について
上述の電気めっき方法を実施するための電気めっき装置は、例えば、電気めっき浴10と、可溶性陽極11と、部材12と接続可能に構成された陰極とを備えた電気めっき装置1である。電気めっき浴10は、本実施形態に係る電気めっき浴10であり、例えばめっきセル13内に充填することができる。可溶性陽極11及び陰極は電源に接続されるが、この電源は電気めっき装置1に含まれていてもよいし、電気めっき装置1の外部に設置してもよい。電気めっき装置1は、電圧及び電流を制御するための制御装置をさらに備えてもよい。この制御装置は、電流の通電方向を一方向とするように、即ち、陽極と陰極とを反転させるようなパルス電流パターンを生じさせないように構成される。
電気めっき装置1において、可溶性陽極11は、めっき源101と、めっき源101が収納され、且つめっき源101と電気的に接続された、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、及びハステロイから選ばれる一種以上の金属製の不溶性容器100と、を備えてもよい。めっき源101は、Co片、Co−Ni合金片、及びNi片からなる群から選択される一種以上とすればよい。
電気めっき装置1において、不溶性容器100が、不溶性容器100の内側と外側とが連通するように構成された通液部111を有し、陰極と通液部111とが対向するように、陰極及び可溶性陽極11が配置されてもよい。
電気めっき装置1において、不溶性容器100の内面のうち、めっき源101と接触する部分の全面が露出されていてもよい。不溶性容器100が略四角柱形状を有する場合、不溶性容器100の第一の外側面、その両側の第二の外側面及び第三の外側面、並びに外底面が電気的絶縁領域112とされ、且つ陰極に対して第一の外側面が対向するように可溶性陽極11が配置されていてもよい。これによれば、めっき源101よりも陰極に近い領域の全てが電気的絶縁領域112とされる。
電気めっき装置1において、不溶性容器100の第一の外側面の反対側の第四の外側面の下部が、前記電気的絶縁領域112とされてもよい。また、電気めっき装置1において、不溶性容器100の内面のうち、めっき源101と接触しない部分が電気的絶縁領域112とされていてもよい。
電気めっき装置1には、その他の付帯設備を適宜設けることができる。例えば、めっき作業を継続しながら電気めっき浴を交換するための装置として、めっきセル13と接続された別の溶解槽、及び電気めっき浴10を循環させるためのサーキュレーター等を電気めっき装置1に設けることができる。また、電気めっき浴10のpH、めっき源濃度、及び不溶性容器100中のめっき源101の量等を測定可能な測定手段、めっき源101等を電気めっき浴10及び不溶性容器100内に供給可能な供給手段、並びにこれら測定手段及び供給手段を用いて電気めっき浴10の組成を一定範囲内に制御可能な制御手段等を電気めっき装置1に設けることができる。
(実験結果1:電気めっき浴の組成と塩素臭との関係)
表1−1に示す調合量で種々の電気めっき浴を作成した。調合量に基づいて算出されるCoイオン濃度(g/L)、Niイオン濃度(g/L)、塩化物イオン濃度(g/L)、その他金属カチオンの種類及び濃度(g/L及びmol/L)、並びに塩化物イオンの質量濃度とCoイオンの質量濃度との比率:Cl/Co比を表1−2に示す。濃度の単位は原則的に質量濃度であるが、その他金属カチオンの濃度については、質量濃度とモル濃度とを並記した(括弧が付された数値がモル濃度)。これら電気めっき浴を用いて、以下の実験条件で電気めっき作業を行った。
−陰極に接続された被めっき部材:冷延鋼板
−陽極:Ti製バスケット(後述する表2実験例A)に金属Co板(縦横約10mm、厚さ約5mm)を充てん
Tiバスケットは、前面がTiラス板(縦開口3.2mm、横開口6mm、厚み1mm)、側面、背面、底面がTi板(厚み2mm)で溶接により接合したものである。サイズは幅50mm、厚み30mm、高さ120mm(浴浸漬部分は100mm)。
−浴温:60℃
−電流密度:20A/dm(陽極の見かけ投影面積基準の電流密度)
なお、「陽極の見かけ投影面積」とは、陰極である冷延鋼板を含む仮想面における陽極の投影面積を意味する
−電源:通常直流電源(電流密度は上述の値で一定)
−陽極と陰極との間の浴流れ:あり(オーバーフロー)
−極間:20mm
−めっき時間:30秒
−めっき液量:10L
上述の条件で電気めっき実施中のめっき液開口面(約80mm×70mm)全体から約2リットル/minの速度で雰囲気ガスを吸引し、このガスの臭気官能検査および塩素ガス濃度測定を実施した。評価結果を表1−2に示す。塩素臭が「中」又は「強」である場合、排気設備の設置が必要となるので好ましくない。
塩素臭「弱」=雰囲気中塩素濃度0.20ppm未満
塩素臭「中」=雰囲気中塩素濃度0.20ppm以上0.50ppm以下
塩素臭「強」=雰囲気中塩素濃度0.50ppm超
Figure 2020049655
Figure 2020049655
実験例A1〜A16において用いられた電気めっき浴は、本発明の要件を満たすもの、即ち20〜200g/LのCoイオンと、70〜250g/LのClイオンと、を含み、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンのモル濃度の合計値が1.2mol/L以下となるものであった。これら実験例A1〜A16においては、雰囲気中塩素濃度が0.20ppm未満となり、塩素臭は全くないか、又はごくわずかであった。
一方、実験例B1〜B4においては、電気めっき浴の塩化物イオン濃度が70g/L未満であった。これら実験例B1〜B4においては、雰囲気中塩素濃度が0.20ppm超となり、塩素臭を抑制することができなかった。また、実験例B5及びB6においては、電気めっき浴の塩化物イオン濃度が70〜250g/Lであったものの、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンのモル濃度の合計値が1.2mol/L超であった。実験例B5及びB6においても、実験例B1〜B4と同様に、雰囲気中塩素濃度が0.20ppm超となり、塩素臭を抑制することができなかった。
ここで実験例A1とA11とを比較すると、両者の電気めっき浴のCoイオン濃度及び塩化物イオン濃度は同等であるが、Naイオン濃度はA1の方が大きかった。そして、Naイオン濃度が大きいA1においては、雰囲気中塩素濃度が合格範囲内の0.20ppmであったものの、A11における雰囲気中塩素濃度よりも大きかった。
またここで実験例A11とA12とを比較すると、両者の電気めっき浴のCoイオン濃度及び塩化物イオン濃度は同等であるが、支持電解質に起因するMgイオン濃度はA12の方が大きかった。そして、Mgイオン濃度が大きいA12においては、雰囲気中塩素濃度が合格範囲内の0.20ppmであったものの、A11における雰囲気中塩素濃度よりも大きかった。即ち、実験例A1とA11、実験例A11とA12との比較によれば、電気めっき浴におけるNa、Mg等のカチオンの量が少ないほど、雰囲気中塩素濃度が小さくなる傾向が示された。
また、実験例A2、A13、及びA14を比較すると、これらの電気めっき浴のCoイオン濃度及びその他金属カチオン濃度は同水準であったが、Cl/Co比が相違していた。そして、いずれの実験例A2、A13、及びA14においても雰囲気中塩素濃度が合格範囲内の0.20ppmであったものの、Cl/Co比の増大に従って雰囲気中塩素濃度が低下していた。即ち、実験例A2、A13、及びA14の比較によれば、全塩化物浴に対して更に塩化物を添加することによって塩化物イオンの質量濃度/Coイオンの質量濃度の比を増加させることが、雰囲気中塩素濃度を低下させるという観点から一層好ましいことが示された。
(実験結果2:Coめっきにおける電気的絶縁領域と黒色スラッジとの関係)
電気的絶縁領域の配置を異ならせた種々の不溶性容器(Tiバスケット)を用いて、以下の条件で電気めっきを実施し、黒色スラッジ反応に起因する変色の様子を確認した。下記記載以外は左記の例と同一である。
−電気めっき浴の組成:表1−1及び表1−2に記載の実験例1の組成と同じ
−電源及び電流密度:表2に記載
−連続めっき時間:1時間
−陽極における電気的絶縁領域の配置:表2に記載
(本発明では電気的絶縁領域は各面における一部または全部に設けることができるが、表2において「あり」は、各面における全部に電気的絶縁領域を配置したことを意味する)
−絶縁領域形成方法:アルミナ溶射
−評価基準
試験後のめっき板に黒色スラッジによる異常外観が無いか確認するとともに、Tiバスケット内の金属Coを除去した後、Tiバスケット表面(内外面)に異常がないか確認して、下記基準で評価した。
0:めっき外観に異常あり、めっき液およびTiバスケットともに明らかな変色あり
1:めっき外観に異常なし、めっき液およびTiバスケットともに明らかな変色あり
2:めっき外観に異常なし、めっき液およびTiバスケットに軽微な変色あり
3:めっき外観、めっき液に異常なし、Tiバスケットに軽微な変色あり
4:めっき外観、めっき液、Tiバスケットとも異常なし
なお、「陽極の見かけ投影面積」とは、陰極である冷延鋼板を含む仮想面における陽極の投影面積を意味し、ここでは不溶性容器の電気的絶縁領域も陽極に含まれるものとする。
Figure 2020049655
電気的絶縁領域が設けられなかった実験例Aにおいては、不溶性容器の前面の外側が顕著に変色した。また、実験例Aにおいては、側面、底面、及び背面それぞれの外側にも変色が見られた。さらに、実験例Aにおいては、当初は淡赤色の半透明であった電気めっき浴の色が、茶褐色に変色した。ただし、黒色スラッジの発生量は、めっきを継続することが困難となるほど甚だしいものではなく、めっきの外観にも異常は認められなかった。
前面の外側に電気的絶縁領域が設けられた実験例Bにおいては、不溶性容器の側面、底面、及び背面それぞれの外側のごく一部に軽微な変色が見られたが、電気めっき浴の色に変化は見られなかった。
前面、側面、及び底面それぞれの外側に電気的絶縁領域が設けられた実験例Cにおいては、不溶性容器の背面下端の極一部に極めて軽微な変色が見られたが、電気めっき浴の色に変化は見られなかった。
前面、側面、底面、及び背面それぞれの外側に電気的絶縁領域が設けられた実験例Dにおいては、不溶性容器及び電気めっき浴のいずれにおいても変色が見られなかった。
前面、側面、底面、及び背面それぞれの外側、並びに前面の内側に電気的絶縁領域が設けられ実験例Eにおいては、外面に変色は無いものの、背面の内側と、その近傍のCo板の表面に変色が見られた。また、実験例Eにおいては電気めっき浴がわずかに茶褐色に変色した。
実験例Fは、電源が相違する点を除いて実験例Aと同じ条件であった。実験例Fでは、パルス電源を用いて反転電流を生じさせたことに起因して、実験例Aよりも顕著に黒色スラッジが生じることとなった。
(実験結果3:Co−Ni合金めっきにおける黒色スラッジ評価)
めっき源の構成を異ならせた種々の可溶性陽極を用いて、以下の条件で電気めっきを実施し、黒色スラッジ反応に起因する変色の様子を確認した。
−電気めっき浴の組成:表1−1及び表1−2に記載の実験例10の組成と同じ
−浴温:60℃
−電流密度:20A/dm(陽極の見かけ投影面積基準の電流密度)
−連続めっき時間:1時間
−陰極に接続された被めっき部材:冷延鋼板
−陽極:表2実験例DのTi製バスケットに、表3に記載のめっき源を充填
−陽極における電気的絶縁領域の配置:表2に記載の実験例Dと同じ
−陽極と陰極との間の浴流れ:あり(オーバーフロー)
−評価基準
1:めっき外観に異常あり
2:めっき外観には異状ないもののめっき浴またはTiバスケットに変色あり
3:めっき外観、めっき浴、Tiバスケットともに異常はないものの、めっき浴濃度変動が大きい
4:めっき外観、めっき浴、Tiバスケットともに異常はなく、めっき浴濃度変動もほとんどない
Figure 2020049655
実験例aにおいては、Tiバスケット及び電気めっき浴ともに変色が生じなかった。実験例aにおいては、めっきが進むにつれて電気めっき浴中のCo濃度が増加し、Ni濃度が低下したが、合金めっきの質に悪影響を及ぼさない範囲内であった。
実験例bにおいては、Tiバスケット及び電気めっき浴ともに変色が生じなかった。実験例bにおいては、めっきが進むにつれて電気めっき浴中のCo濃度が低下し、Ni濃度が増加したが、合金めっきの質に悪影響を及ぼさない範囲内であった。
実験例cにおいては、Tiバスケット及び電気めっき浴ともに変色が生じなかった。また、実験例cにおいては、電気めっき浴中のCo濃度及びNi濃度はほとんど変化しなかった。
本発明に係る電気めっき浴は、電流密度を高めるためにCoイオン濃度が高められ、且つ可溶性陽極と組み合わせて用いられても、塩素ガスの発生を抑制可能である。本発明に係る電気めっき製品の製造方法、及び本発明に係る電気めっき装置は、高いCoイオン濃度を有する電気めっき浴と可溶性陽極とを組み合わせて用い、且つ電流密度を高くしながらも塩素ガス及び黒色スラッジ反応を抑制可能である。従って本発明は、Coめっき製品又はCo−Ni合金めっき製品を高効率で製造することができるので、高い産業上の理由可能性を有する。
1 電気めっき装置
10 電気めっき浴
11 可溶性陽極
12 部材
13 めっきセル
100 不溶性容器
101 めっき源
111 通液部
112 電気的絶縁領域

Claims (19)

  1. 20〜200g/LのCoイオンと、
    70〜250g/LのClイオンと、
    を含み、
    アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びAlイオンのモル濃度の合計値が1.20mol/L以下である
    ことを特徴とする電気めっき浴。
  2. さらに100g/L以下のNiイオンを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気めっき浴。
  3. 前記Clイオンの質量濃度/前記Coイオンの質量濃度が1.2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気めっき浴。
  4. Kイオンのモル濃度が1.0mol/L以下であり、前記アルカリ土類金属イオン及び前記Alイオンのモル濃度の合計値が0.35mol/L以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
  5. 前記Coイオンを35g/L以上含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
  6. 前記Clイオンを100〜200g/L含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
  7. 前記Coイオンが、硫酸コバルト、スルファミン酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、及びフッ化コバルトからなる群から選択される一種以上の水溶性Co塩のCoイオンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
  8. 前記Coイオンが、塩化コバルト、及びフッ化コバルトからなる群から選択される一種以上のハロゲン化合物のCoイオンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気めっき浴。
  9. 可溶性陽極と、陰極に接続された部材とを電気めっき浴に浸漬して通電する工程を備え、
    前記電気めっき浴を、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気めっき浴とし、
    前記通電において、電流の通電方向を一方向とする
    ことを特徴とする電気めっき製品の製造方法。
  10. 前記可溶性陽極が、
    めっき源と、
    前記めっき源が充填され、且つ前記めっき源と電気的に接続された、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、及びハステロイから選ばれる一種以上の金属製の不溶性容器と、
    を備え、
    前記不溶性容器が、前記不溶性容器の内側と外側とが連通するように構成された通液部を有し、
    前記部材に対して前記通液部が対向するように前記可溶性陽極を配置する
    ことを特徴とする請求項9に記載の電気めっき製品の製造方法。
  11. 前記不溶性容器の内面のうち、前記めっき源と接触する部分の全面が露出していることを特徴とする請求項10に記載の電気めっき製品の製造方法。
  12. 前記不溶性容器の外面の少なくとも一部が電気的絶縁領域とされており、
    前記不溶性容器の前記外面のうち、前記めっき源よりも前記部材に近い領域の全てを前記電気的絶縁領域とするように、前記部材及び前記可溶性陽極を配置する
    ことを特徴とする請求項10又は11に記載の電気めっき製品の製造方法。
  13. 前記不溶性容器が略四角柱形状を有し、
    前記不溶性容器の第一の外側面、その両側の第二の外側面及び第三の外側面、並びに外底面が、前記電気的絶縁領域とされており、
    前記部材に対して前記第一の外側面が対向するように前記可溶性陽極を配置し、これにより前記めっき源よりも前記部材に近い前記領域の全てを前記電気的絶縁領域とする
    ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の電気めっき製品の製造方法。
  14. 前記不溶性容器の前記第一の外側面の反対側の第四の外側面の下部が、前記電気的絶縁領域とされていることを特徴とする請求項13に記載の電気めっき製品の製造方法。
  15. 前記不溶性容器の前記内面のうち、前記めっき源と接触しない部分が、前記電気的絶縁領域とされていることを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載の電気めっき製品の製造方法。
  16. 前処理として、前記部材にNiめっき又はNi合金めっきする工程を備えることを特徴とする請求項9〜15のいずれか一項に記載の電気めっき製品の製造方法。
  17. 前記可溶性陽極の前記めっき源が、Co片、Ni片、及びCo−Ni合金片からなる群から選択される一種以上を含むことを特徴とする請求項9〜16のいずれか一項に記載の電気めっき製品の製造方法。
  18. 前記部材の形状が板形状であることを特徴とする請求項9〜17のいずれか一項に記載の電気めっき製品の製造方法。
  19. 可溶性陽極と、陰極と、電気めっき浴と、制御装置とを備える電気めっき装置であり、
    前記電気めっき浴が、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気めっき浴であり、
    前記制御装置は、電流の通電方向を一方向とするように構成され、
    前記可溶性陽極が、めっき源と、前記めっき源が収納され、且つ前記めっき源と電気的に接続された、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、及びハステロイから選ばれる一種以上の金属製の不溶性容器と、を備え、
    前記不溶性容器が、前記不溶性容器の内側と外側とが連通するように構成された通液部を有し、
    前記陰極と前記通液部とが対向するように、前記陰極及び前記可溶性陽極が配置され、
    前記不溶性容器の内面のうち、前記めっき源と接触する部分の全面が露出され、
    前記不溶性容器が略四角柱形状を有し、
    前記不溶性容器の第一の外側面、その両側の第二の外側面及び第三の外側面、並びに外底面それぞれが、電気的絶縁領域とされており、
    前記陰極と前記第一の外側面とが対向するように、前記陰極及び前記可溶性陽極が配置され、これにより前記めっき源よりも前記陰極に近い領域の全てが前記電気的絶縁領域とされ、
    前記不溶性容器の前記第一の外側面の反対側の第四の外側面の下部が、前記電気的絶縁領域とされ、
    前記不溶性容器の前記内側のうち、前記めっき源と接触しない部分が、前記電気的絶縁領域とされ、
    前記めっき源が、Co片、Ni片、及びCo−Ni合金片からなる群から選択される一種以上を含む
    ことを特徴とする電気めっき装置。
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